JP2013089538A - 荷電粒子線装置、及び脱ガス方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで、荷電粒子銃、特に断熱構造を有する荷電粒子銃鏡体内の部材の信頼性の向上をはかりながら、効果的に加熱脱ガス処理することができる荷電粒子線装置、及び脱ガス方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子銃101を備えた荷電粒子線装置100であって、高純度ガスのガス導入器105を備え、荷電粒子銃鏡体1内のチップホルダー32等の部材の加熱脱ガス処理を実行するときには、この高純度ガスの供給系から荷電粒子銃鏡体1内にガスを導入し、ヒーター40にて加熱される荷電粒子銃鏡体1とは断熱構造になっている荷電粒子銃鏡体1内のチップホルダー32等の部材の加熱に、荷電粒子銃鏡体1内にガス導入器105から供給される高純度ガスを介した熱伝導を利用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、荷電粒子線装置に係り、より具体的には断熱構造を有する荷電粒子銃鏡体内の超高真空化を実現するための装置構成、及び脱ガス方法に関する。
電子やイオンといった荷電粒子をプローブとする荷電粒子線装置として、電子顕微鏡やイオン顕微鏡がある。これら装置の荷電粒子銃である電子銃やイオン銃に関しては、特に荷電粒子源としての電子源やイオン源が設けられた荷電粒子銃鏡体内の超高真空の実現が不可欠となっている。
例えば、電子顕微鏡の電子銃の場合、電子を空間に取り出す電子源としては、熱電子源,ショットキー電子源,冷陰極電界放出電子源等が知られている。これら電子源の中、最も高輝度で単色性の良い電子源は冷陰極電界放出電子源であり、超高分解能電子顕微鏡に使用される。冷陰極電界放出電子源は、針状のタングステン製チップを非加熱状態にて用い、高強度の電界をチップ先端に発生させて、トンネル効果により電子を放出させるものである。
一般に、電子源から放出される電子ビームのエネルギー幅は、室温では、チップの表面が理想的な清浄表面である場合においても200meV(半値幅)以上である。その一方で、電子源を極低温で使用すれば、電子源から放出される電子ビームのエネルギー幅を絞ることができる。例えば、タングステン製のチップを極低温(液体窒素温度77K以下)で使用すると、室温の半分程度にまで、放出される電子ビームのエネルギー幅を小さくすることが可能である。この結果、電子顕微鏡の光学系で発生するレンズの色収差が半減することとなり、プローブとしての電子ビームをより小さな光線径にまで絞ることができる。
これに対し、イオン顕微鏡のイオン銃の場合、良く知られた収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置では、ガリウムに代表される液体金属イオン源が用いられている。近年では、ガス電界電離イオン源(GFIS:Gas Field Ionization Ion Source)も用いられるようになってきた。
GFISは、上述の冷陰極電界放出電子源と同様に、極低温としたチップの先端部に強電界を発生させるとともに、チップの近傍に原料ガスを供給して、チップとガス分子との間の電子のトンネル効果により原料ガスをイオン化するものである。原料ガスとしては、通常、希ガスが用いられるが、近年、ヘリウムイオンをプローブとして使用するヘリウムイオン顕微鏡が注目されている。ヘリウムイオンは、電子よりも重いので、短波長化と回折収差の低減が可能であり、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)の分解能と焦点深度とを遥かに凌ぐイオン顕微鏡が得られる。
さらに、上述した電子銃やイオン銃を用いた荷電粒子線装置の性能向上策としては、荷電粒子源のチップ先端にピラミッド構造を作り、その頂部を数原子又は単原子としたナノチップを利用することも行われてきた。このナノチップを用いることで、光源径の縮小と高輝度化を実現し、最終的なプローブ径がより小さく絞れるため、荷電粒子線装置の性能向上が可能となる。
このように、荷電粒子線装置の性能向上策として、チップの極低温使用とナノチップの利用とがある。
ところで、チップの極低温使用に係り、チップを冷却するためには、電子銃やイオン銃といった荷電粒子銃の真空容器を形成し、外壁面が室温雰囲気に臨む荷電粒子銃鏡体と、この荷電粒子銃鏡体内に配置されたチップやこのチップを保持する部品との間が、断熱構造になっている必要がある。そのため、荷電粒子銃鏡体内の雰囲気は、チップの実在表面をコンタミネーションのない清浄表面とする必要もあり、10−8Pa台以下の超高真空環境が求められる。
その一方で、ナノチップの利用に係り、特にピラミッド構造の単原子又は数原子からなる頂部から荷電粒子を放出するナノチップにあっては、真空中の残留ガスの吸着によって、ピラミッド構造の頂部の形成自体が阻害されたり、荷電粒子放出が不安定になったり、長時間使用することができなくなり短寿命化する、という問題がある。
加えて、この真空中の残留ガスの吸着の問題は、荷電粒子源のチップを極低温で使用する場合にはチップへの残留ガスの吸着が増加するため、荷電粒子銃鏡体内すなわち荷電粒子銃内部の超高真空環境を実現するためには、荷電粒子銃の加熱脱ガス処理が必須であり、重要となる。
ここでいう加熱脱ガス処理は、荷電粒子銃内部の適切な真空排気を行いつつ、荷電粒子銃鏡体の内外を加熱し、荷電粒子銃鏡体内の部材内部の吸蔵ガス又は部材表面の吸着ガスを放出せしめ、かつ荷電粒子銃外部に排出する工程を経ることにより、超高真空以下の到達圧力を得るための処理を指す。
そのため、ナノチップを極低温で使用し、GFISのような加熱脱ガス処理を必須とする荷電粒子銃においては、荷電粒子銃内部の、荷電粒子銃外部と断熱された部品の加熱方法が問題となる。
通常の荷電粒子銃の加熱脱ガス処理では、特許文献1のように、荷電粒子銃鏡体の外壁にヒーターを装着したり、ヒーターを備えた箱で荷電粒子銃鏡体をさらに覆ったり等、鏡体外部から荷電粒子銃鏡体に熱を加えることによって鏡体内外を熱伝導にて昇温する方法が取られている。また、鏡体内部の補助的な加熱手段として、特許文献2のように、加熱対象物近傍にヒーターを設置することも行われている。
したがって、荷電粒子銃鏡体とは断熱された、鏡体内部の部品を加熱対象として、ヒーターを設ければ、鏡体内部の対象物の加熱脱ガス処理は可能であり、超高真空以下の達成は既存技術として可能である。
特開平5−128988 特開平9−134861
しかしながら、このような鏡体内部の部品を加熱対象としたヒーターによる加熱脱ガス処理では、ヒーターは真空容器を形成する荷電粒子銃鏡体内に設置され、かつ真空内に設置されることになるため、ヒーターを加熱することによりヒーター自体からも鏡体内部に対してガス放出が起きることになる。そのため、加熱脱ガス処理中の真空排気に長時間を要することになる、という第1の問題点があった。
また、ヒーターによる加熱対象物も、チップやチップホルダーであったり、チップに対向して光学的設計において配置される電極であったりと、何れも荷電粒子銃の運転時には互いに電気的絶縁がなされ、高電圧が印加される部材である。このため、ヒーター自体にも高い絶縁性が求められ、ヒーター自体に、チップや電極に高電圧が印加されても放電しない形状や配線の取り回しが求められる。例えば、電気的絶縁性の信頼性において、確率的に微小ではあっても、放電が起こってしまった場合には、発生した電子やイオンがチップ先端に衝突することでチップの加熱を起こし、チップを破壊してしまう可能性もある。そのため、装置設計上の制約となって設計作業を困難にしがちであり、荷電粒子銃の大型化や信頼性に影響を与える、という第2の問題点があった。
また、これらに伴い、ヒーターは、低放出ガス材料,高抵抗率材料,かつ耐熱材料で構成されることが必要になる。代表的には、発熱体となる金属薄膜を絶縁材料であるセラミックスで挟み込んだ特殊なヒーターが用いられることが多くなる。そのため、荷電粒子銃、ひいては荷電粒子線装置が高コストとなる、という第3の問題点があった。
さらに、ヒーターは複数個用いるとしても、通常限られたスペースに設置せざるを得ないため、加熱箇所は部分的にならざるを得ない。そのため、荷電粒子銃の内部部材、特に断熱構造を均一に加熱することは困難であり、局所的な加熱によって部品の締結ネジの緩みや、光学系を構成する部品の変形等が生じる可能性がある、という第4の問題点があった。
本発明は、上述した問題点を鑑みなされたものであって、低コストで、荷電粒子銃、特に断熱構造を有する荷電粒子銃鏡体内の部材の信頼性の向上をはかりながら、効果的に加熱脱ガス処理することができる荷電粒子線装置、及び脱ガス方法を提供することを目的とする。
本発明は、上述した課題を解決するために、荷電粒子銃を備えた荷電粒子線装置であって、高純度ガスの供給系を備え、荷電粒子銃鏡体内の部材の加熱脱ガス処理を実行するときには、この高純度ガスの供給系から荷電粒子銃鏡体内にガスを導入し、加熱手段にて加熱される荷電粒子銃鏡体とは断熱構造になっている荷電粒子銃鏡体内の加熱対象物の加熱に、荷電粒子銃鏡体内に供給系から供給される高純度ガスを介した熱伝導を利用することを特徴とする。
この場合、高純度ガスの供給系には、荷電粒子線装置に通常具備されている、荷電粒子銃鏡体や試料室のパージガス、典型的には乾燥窒素の導入系を利用すればよい。
また、GFISを備えたイオン銃では、新たに高純度ガスの供給系を追加する必要はなく、本来備えているイオン化するガスの導入系を用い、典型的には、ヘリウム,アルゴン,ネオンといった希ガスを、高純度ガスとして導入すればよい。
また、この高純度ガスの導入は、加熱脱ガス処理の実行時に常に行う必要はなく、加熱脱ガス処理の初期に通常行われる真空排気処理の後に引続き、荷電粒子銃鏡体内部の温度が室温雰囲気に臨む鏡体外壁と同程度になるまでの一定期間行えばよい。これは、一旦、荷電粒子銃鏡体内部の温度が上がってしまえば、内部から外部への熱伝導は小さいため、一定期間の後に、導入した高純度ガスを排出しても、外部からの熱輻射や僅かな熱伝導によるエネルギー供給のみで荷電粒子銃鏡体内部の温度を維持できるからである。
さらに、ガスの導入時期や期間は、加熱脱ガス処理の開始と連動したタイマーによって時間的に管理しても良い。また、ガス導入前の真空排気にて所定の圧力に達したところで開始する等、荷電粒子銃の真空計と連動させてもよく、さらには荷電粒子銃鏡体外壁又は荷電粒子銃鏡体内部の温度が所定値に達したときをトリガーとして開始、終了することもできる。
さらにまた、高純度ガスの導入は、真空計をモニターして所定圧力を設定して、一定量のみを導入して荷電粒子銃内部に溜め込む方式、換言すれば、ガス導入時は荷電粒子銃鏡体内部を真空排気しない状態で導入ガスを充満させて熱伝導を最大限生かしてもよいし、導入ガスに含まれる不純物の停滞時間短縮をはかって、荷電粒子銃又は荷電粒子線装置に具備されている排気経路を用いて、適度な流量で導入ガスを排気しながら行ってもよい。
以上の方法又は組合せによって、加熱脱ガスに要する時間は若干の違いが生じるが、荷電粒子銃内部を均一に加熱できる効果に変化はない。
また、高純度ガスの導入を終了した後にも、荷電粒子銃鏡体内外の加熱・保温と真空排気を継続するシーケンスとすることで、容易に超高真空以下の真空雰囲気を得る手段となる。
本発明によれば、荷電粒子銃内部にヒーターを設ける必要がなく、無駄な電力を消費することもなく、比較的短時間で均一に荷電粒子銃鏡体内部を加熱脱ガス処理することができる。
この結果、放出ガスの低減が可能であるため、荷電粒子銃の真空度向上がはかれ、チップの形状や荷電粒子線の安定性及び寿命も向上するため、荷電粒子線装置の高性能化が可能となる。
さらに、ヒーターの組込みによる耐電圧性能の低下の懸念や、加熱によって劣化する配線部品等のメンテナンスが不要となり、信頼性の高い、小型の荷電粒子銃が提供可能となる。
なお、本発明は、断熱構造を有する荷電粒子銃のみに制限されるものではなく、通常の荷電粒子銃においても、荷電粒子銃鏡体内部を効率的に、かつ均一に加熱脱ガスが可能になることは明白である。
本発明の一実施の形態に係る荷電粒子線装置の構成断面図である。 荷電粒子源のチップの先端頂部を単原子とした単原子チップの一例の説明図である。 荷電粒子銃の加熱方法を説明する模式図である。 ガスの熱伝導率と圧力の関係、ガスの熱輸送による加熱効果を説明するグラフである。 ガス導入を溜め込み方式で行うときの加熱脱ガス処理のフローチャートである。 ガス導入を排出方式で行うときの加熱脱ガス処理のフローチャートである。
本発明に係る荷電粒子線装置、及び脱ガス方法の実施の形態について、図面に基づき説明する。なお、その説明に当たっては、荷電粒子線装置として電子顕微鏡やイオン顕微鏡を念頭におくが、何れにおいても本発明の課題を解決するための原理、構成は、適用可能である。
図1は、本発明の一実施の形態に係る荷電粒子線装置の構成断面図である。
図1において、荷電粒子線装置(電子顕微鏡又はイオン顕微鏡)100は、荷電粒子(電子又はイオン)を発生させ、荷電粒子線(電子ビーム又はイオンビーム)31を放出する荷電粒子銃(電子銃又はイオン銃)101と、この荷電粒子線31を偏向,収束して試料27に照射する荷電粒子プローブを生成する照射光学系(電子光学系又はイオン光学系)26を有する荷電粒子光学系102と、荷電粒子プローブが照射される試料27が収容される試料室103と、荷電粒子プローブの照射により試料27から放出される荷電粒子を検出する荷電粒子検出系(図示省略)とを有して構成されている。
荷電粒子銃101は、荷電粒子銃鏡体1に、荷電粒子源のチップ30を保持するチップホルダー32と、荷電粒子銃光学系36とを収容して構成されている。
チップホルダー32は、電気絶縁材料によって形成され、荷電粒子銃鏡体1内で、高電圧を印加するチップ30を他部に対して電気絶縁する。チップホルダー32は、断熱スリーブ(断熱部材)33の荷電粒子銃鏡体1内への挿入端に固定支持されている。断熱スリーブ33は、荷電粒子銃鏡体1上部に形成された導入孔に装着された高電圧導入端子部材4に固定支持されている。高電圧導入端子部材4は、導入孔に装着された状態で、荷電粒子銃鏡体1内部を外部に対し気密に保持する。チップホルダー32は、例えばで、外径φ30mm、長さ50mm、質量0.06kg程度のアルミナ製部材で形成されている。
断熱スリーブ33は、例えば、金属又はより熱伝導率の小さいセラミックスの薄肉パイプにより構成されている。断熱スリーブ33は、チップホルダー32と高電圧導入端子部材4との間に介在し、荷電粒子線装置100が配置される室温雰囲気に臨む高電圧導入端子部材4と荷電粒子銃鏡体1内のチップホルダー32とを断熱する。断熱スリーブ33の材料の選択と寸法(断熱経路の長さやパイプの厚み)は、後述する冷却温度や熱流入量に応じて選択、設計されている。
チップ30を保持するチップホルダー32及び断熱スリーブ33は、高電圧導入端子部材4が荷電粒子銃鏡体1に形成された導入孔に気密に装着されることによって、外部との気密を保たれ、荷電粒子銃鏡体1内に収容配置される。チップ30は、チップホルダー32内及び断熱スリーブ33内を挿通し、高電圧導入端子部材4から荷電粒子銃鏡体1の内部と外部との気密を保って引き出された高電圧導入線50を介して、外部の高電圧電源61に接続されている。
また、荷電粒子銃鏡体1内のチップ30下方の、荷電粒子線通過孔25が形成された荷電粒子銃鏡体1の底面300には、荷電粒子銃光学系36が配置されている。荷電粒子銃光学系36は、チップ30下方から荷電粒子線通過孔25に向かって配置された複数の静電レンズによって構成されている。図示の例では、複数の静電レンズは、お互いに電気絶縁された4つの電極により構成され、最上段の最もチップ30寄りの電極が、チップ30に対向して配置された引出電極56になっている。引出電極56は、チップ30に相対的に高電圧を印加することで、荷電粒子線31を発生させる。また、残りの3つの電極も個別に高電圧の印加が可能であり、荷電粒子線31を加速又は減速して集束レンズとして作用する。
照射光学系(電子光学系又はイオン光学系)26並びに荷電粒子検出系(図示省略)は、光学系鏡体2に収容されている。光学系鏡体2には、荷電粒子銃鏡体1が搭載され、荷電粒子銃鏡体1内と光学系鏡体2内との間は荷電粒子線通過孔25を介して連通し、荷電粒子銃101の荷電粒子銃光学系36からの荷電粒子線31が照射光学系26に入射するようになっている。
試料室103は、試料室鏡体3によって装置外部に対して画成されている。試料室鏡体3には、荷電粒子銃鏡体1が搭載された光学系鏡体2が搭載され、照射光学系26の荷電粒子プローブ出力側(放出側)が臨むようになっている。
試料室103には、荷電粒子プローブが照射される試料27を搭載して移動可能なステージ28が設けられている。ステージ28には、ステージ移動機構(図示省略)が付設されている。このステージ移動機構を駆動制御してステージ28の位置を移動変位させることにより、荷電粒子プローブが照射される、搭載された試料27上の照射位置を移動できる構成になっている。
荷電粒子線装置100は、その上で、荷電粒子銃鏡体1が光学系鏡体2の上に載置固定され、光学系鏡体2が試料室鏡体3の上に載置固定された、一体鏡体になっている。荷電粒子線装置100は、この一体鏡体に構成された状態で、荷電粒子銃鏡体1内は、前述した荷電粒子線通過孔25を介して、光学系鏡体2内と直接連通可能になっており、光学系鏡体2内は、照射光学系26のビーム通過部分を介して、試料27の交換が行われる試料室鏡体3内と連通可能になっている。
次に、上述した荷電粒子線装置100に備えられた、性能向上策としての、又は荷電粒子銃101の荷電粒子源としてガス電界電離イオン源(GFIS)を適用する場合の、チップ30の冷却構成について説明する。
荷電粒子銃鏡体1の周壁部の所定位置には冷却用導通孔が形成され、この冷却用導通孔には、フランジ7を介して、極低温冷却装置39が荷電粒子銃鏡体1に気密に支持固定されている。図示の例では、冷媒が貯留された極低温冷却装置39から、冷却用導通孔を介して、低温側冷却経路部材37、及び高温側冷却経路部材38,38が荷電粒子銃鏡体1内に導出された構成になっている。低温側冷却経路部材37は、具体的には、長さ方向の一端側に例えば網線等によって構成された振動伝達緩衝部(図示せず)を有する銅製の棒状部材又は板状部材からなり、基端側が極低温冷却装置39内で冷媒により冷却され、振動伝達緩衝部が備えられた先端側が装置本体外に延設された構成になっている。高温側冷却経路部材38,38も、低温側冷却経路部材37と同様な銅製の棒状部材又は板状部材からなり、基端側が装置本体内で冷媒により冷却され、振動伝達緩衝部が備えられた先端側が装置本体外に延設された構成になっている。なお、上記では、低温側冷却経路部材37、及び高温側冷却経路部材38,38ともに銅製としたが、高い熱伝導率を有する材料であれば銅製に限ることはない。振動伝達緩衝部は、荷電粒子銃鏡体1、並びに低温側冷却経路部材37及び高温側冷却経路部材38,38を介して、外部からの振動がチップホルダー32及びチップ30に伝達するのを低減する。
そして、低温側冷却経路部材37の延設された先端側の振動伝達緩衝部は、チップホルダー32に連結され、チップ30を極低温(60K以下)に直接冷却する。一方、高温側冷却経路部材38,38の延設された先端側の振動伝達緩衝部は、荷電粒子銃鏡体1内に配置された輻射熱シールド34に連結され、輻射熱シールド34を低温側冷却経路部材37の極低温よりも高い(100K以上)高温に直接冷却する。この温度は、極低温冷却装置39の冷媒が低温側冷却経路37から吸熱して温度上昇するが、この後、高温側冷却経路38から吸熱することによって実現される。
輻射熱シールド34は、チップ30を極低温(60K以下)に冷却するために、外面が室温雰囲気に臨んで室温状態にある荷電粒子銃鏡体1の内面からの輻射熱を遮蔽する手段である。輻射熱シールド34は、荷電粒子銃鏡体1内にチップホルダー32を囲むように、荷電粒子銃鏡体1の内面及びチップホルダー32と離間させて、荷電粒子銃鏡体1内の両者間の空間に介在配置されている。輻射熱シールド34は、例えば、銅製で、外径φ60mm、長さ100mm、質量0.25kg程度の円筒部材によって形成され、両端部側には径方向内方に延びる内側フランジが形成されている。図示の例では、輻射熱シールド34は、荷電粒子銃鏡体1内の底面に立設された複数本の小径の薄肉パイプからなる断熱支持部材35によって支持され、荷電粒子銃鏡体1に対し固定されている。断熱支持部材35は、例えば、金属又はより熱伝導率の小さいセラミックスの薄肉パイプにより構成されている。断熱支持部材35は、輻射熱シールド34と荷電粒子銃鏡体1内の底面との間に介在し、輻射熱シールド34と荷電粒子銃鏡体1内の底面との間を断熱する。断熱支持部材35の材料の選択と寸法(断熱経路の長さやパイプの厚み)は、後述する冷却温度や熱流入量に応じて選択、設計されている。
なお、輻射熱シールド34の荷電粒子銃鏡体1に対する支持構成については、チップホルダー32と同様に、荷電粒子銃鏡体1の上面から断熱支持部材を介して吊り下げ構成とすることも可能である。何れの場合も、輻射熱シールド34は、荷電粒子線31への振動伝達を低減するために、前述したチップホルダー32の場合と同様に、荷電粒子銃鏡体1にしっかりと固定されることが望ましい。また、図示の例では、チップ30を冷却するため、積極的に荷電粒子銃鏡体1に対する断熱構造を有しているが、チップ30を冷却しないタイプの荷電粒子銃においても、荷電粒子銃101内部の部品は構造や組み立て方により、必ずしも荷電粒子銃鏡体1との熱伝導が良好ではないことに留意する必要がある。さらに、チップ30を本実施例よりも低い温度に冷却する場合には、引出電極56も輻射熱シールド34と同程度の温度に冷却するのが効果的である。
次に、上述した荷電粒子線装置100における、荷電粒子銃鏡体1内、光学系鏡体2内、試料室鏡体3内それぞれの真空排気構成について説明する。
図示の例では、試料室鏡体3,光学系鏡体2の各周壁部の所定位置にはそれぞれ排気孔が形成され、この排気孔には、排気系配管9(9a,9b)がそれぞれ気密に接続されている。そして、試料室鏡体3内,光学系鏡体2内は、各排気孔に接続された排気系配管9(9a,9b)を介して、試料室用ポンプ13の吸込側に連通されている。試料室用ポンプ13は、例えば、一般的なターボ分子ポンプやスクロールポンプ等、低圧用,高圧用ポンプを組み合わせた高真空用ポンプにより構成されている。試料室鏡体3内,光学系鏡体2内は、この試料室用ポンプ13の駆動によって減圧可能、すなわち排気可能になっている。
また、荷電粒子銃鏡体1の周壁部の所定位置にも同様に排気孔が形成され、この排気孔にも、排気系配管8が気密に接続されている。そして、荷電粒子銃鏡体1内は、排気孔に接続された排気系配管8を介して、超高真空までの排気が可能な荷電粒子銃用ポンプ12の吸込側に連通されている。荷電粒子銃鏡体1内は、この荷電粒子銃用ポンプ12の駆動によって、光学系鏡体2内,試料室鏡体3内とは独立に超高真空レベルまで減圧可能、すなわち排気可能になっている。
さらに、図示の荷電粒子線装置100では、排気系配管8,9間には、開閉バルブからなる粗引きバルブ11が配設された粗引き配管10が接続されている。粗引き配管10は、粗引きバルブ11の開・閉に対応して、荷電粒子銃鏡体1内及び荷電粒子銃用ポンプ12の吸込側と、光学系鏡体2内,試料室鏡体3内及び試料室用ポンプ13の吸込側との間を連通・遮断する。
さらに、この粗引き配管10の粗引きバルブ11に対応して、荷電粒子銃鏡体1の底面に形成された荷電粒子線通過孔25には、荷電粒子線通過孔25を連通・遮断し、荷電粒子銃鏡体1内と光学系鏡体2内及び試料室鏡体3内との間の連通・遮断を行うガンバルブシール24が設けられている。ガンバルブシール24は、ガンバルブ連結棒23により光学系鏡体2の周壁部に取り付けられたガンバルブ駆動装置22に連結され、ガンバルブ駆動装置22の駆動によってガンバルブ連結棒23を光学系鏡体2内の気密を保ちながら変位させ、その変位に連動してガンバルブシール24が荷電粒子線通過孔25に対して進退する。これにより、ガンバルブシール24が荷電粒子線通過孔25上に移動位置している状態では、荷電粒子線通過孔25は気密に閉塞されて、荷電粒子銃鏡体1内と光学系鏡体2内との間の圧力連通は遮断され、荷電粒子線31も通過できなくなる。これに対し、ガンバルブシール24が荷電粒子線通過孔25上から移動退避している状態では、荷電粒子線通過孔25は開放され、荷電粒子銃鏡体1内と光学系鏡体2内との間が圧力連通され、荷電粒子線31が通過可能になる。
次に、上述した荷電粒子線装置100における、荷電粒子銃鏡体1内の加熱脱ガス処理機構について説明する。
図示の荷電粒子線装置100では、加熱脱ガス処理機構として、加熱脱ガス処理工程で荷電粒子銃鏡体1を加熱する加熱器104と、一時的に荷電粒子銃鏡体1内にガスを導入するガス導入器105,光学系鏡体2内や試料室鏡体3内にパージガスを導入するガス導入器106とを有する構成になっている。
加熱器104は、荷電粒子銃鏡体1を加熱する。図示の例では、加熱器104は、荷電粒子鏡体1の外壁面にヒーター40を装着して構成されている。ヒーター40は、ヒーター配線54を介してヒーター電源63に接続されている。ヒーター電源63は、後述する制御・表示装置65により制御駆動され、荷電粒子銃鏡体1若しくはその内部の温度が制御・表示装置65で予め設定された設定温度、例えば523Kを保つように、ヒーター40に駆動電力(駆動電流)を供給する。
なお、ヒーター40の荷電粒子鏡体1に対する取付方法は、その発熱部分及び配線等が荷電粒子銃鏡体1内部に露出しないで荷電粒子銃鏡体1を加熱可能な構成であるならば、例えば、荷電粒子鏡体1の壁部中に発熱素子が一体的に埋設されている構成等であってもよい。
ガス導入器105は、ヒーター40によって加熱された荷電粒子銃鏡体1の熱を荷電粒子鏡体1内の各部に伝導する媒体としてのガスを、加熱脱ガス処理時に一時的に荷電粒子鏡体1内に導入する。図示の例では、ガス導入器105は、ガスボンベ14,ガス供給配管15,ガス導入バルブ16,及びガス導入ノズル17を有する構成になっている。
ガス導入ノズル17は、荷電粒子銃鏡体1の周壁部の所定位置に形成されたガス導入孔に、ガス導入器用フランジ5によって荷電粒子銃鏡体1内の気密を保持しつつ、荷電粒子銃鏡体1に取り付けられている。ガス導入ノズル17は、その先端が輻射熱シールド34で囲まれた荷電粒子銃鏡体1内のチップホルダー32が配置された空間に到って開口し、基端は荷電粒子銃鏡体1外部でガス導入バルブ16に接続された構成になっている。そして、ガス導入バルブ16は、ガス供給配管15を介して、希ガス若しくは不活性ガスを貯留したガスボンベ14に接続され、ガス導入バルブ16の開/閉に応じて、熱伝導媒体としてのガスを、ガス導入ノズル17から荷電粒子銃鏡体1内に導入/導入遮断する構成になっている。
また、ガス導入器106は、照射光学系26等のメンテナンスや試料交換の際に、大気中の水分の吸着等による汚染を回避するため、光学系鏡体2内や試料室鏡体3内にパージガスとしての希ガス若しくは不活性ガスを導入するためのものである。ガス導入器106は、ガス導入器105と同様に、ガスボンベ18,ガス供給配管19,ガス導入バルブ20,及びガス導入配管21を有する構成になっている。
図示の例では、ガス導入配管21は、試料室鏡体3内と連通する光学系鏡体2の周壁部の所定位置に形成されたガス導入孔に、ガス導入器用フランジ6によって光学系鏡体2内の気密を保持しつつ、光学系鏡体2に取り付けられている。ガス導入配管21は、その先端が光学系鏡体2内の空間に到って開口し、基端は光学系鏡体2外部でガス導入バルブ20の流出ポートに接続された構成になっている。ガス導入バルブ20は、例えば電動バルブ又は空圧作動バルブにより構成され、その流入ポートは、ガス供給配管19を介して、パージガスを貯留したガスボンベ18に接続されている。ガス導入バルブ20は、電気配線又は圧縮空気配管からなるガス導入バルブ配線55を介してバルブ駆動装置64に接続され、開弁又は閉弁作動が行われる。ガス導入バルブ20は、メンテナンスや試料交換の際に、後述する制御・表示装置65により制御駆動されるバルブ駆動装置64により、その開弁/閉弁に応じて、光学系鏡体2内や試料室鏡体3内に内部機器等が直接大気に曝されるのを防ぐため、光学系鏡体2内や試料室3内にガスボンベ18から例えば乾燥窒素をパージガスとして導入/遮断する構成となっている。なお、図示の例では、ガス導入配管21を光学系鏡体2に接続した構成で説明したが、ガス導入配管21を、光学系鏡体2の代わりに試料室鏡体3に、又は光学系鏡体2,試料室鏡体3それぞれに接続した構成であっても構わない。
その上で、荷電粒子線装置100がGFISを用いた荷電粒子線装置である場合は、荷電粒子銃101に原料ガス(反応ガス)を供給するガス導入器が備えられており、使用するガスも化学的には不活性な希ガスであることが多いため、このガス導入器を加熱脱ガス処理時における荷電粒子銃鏡体1へのガス導入器105としても用い、原料ガスを加熱脱ガス処理時はそのまま熱伝導媒体のガスとして用いるようにしてもよい。この場合、荷電粒子銃内を汚染することなく、荷電粒子銃鏡体1内に導入したガスは、通常の真空ポンプでの排出も可能なので好適である。
また、GFIS以外のその他の荷電粒子銃101にあっても、荷電粒子線装置100には、通常、メンテナンスや試料交換の際に光学系鏡体2や試料室3に不活性ガスである乾燥窒素をパージガスとして導入して、大気中の水分の吸着等の汚染を回避するための上述したガス導入器106が備えられているので、このガス導入器106を加熱脱ガス処理時における荷電粒子銃鏡体1へのガス導入器105としても用い、そのパージガスとしての希ガス若しくは不活性ガスを加熱脱ガス処理時はそのまま熱伝導媒体としてのガスとして用い、加熱脱ガス処理を行うようにしてもよい。
このように、加熱脱ガス処理時に用いる熱伝導媒体としてのガスを導入するガス導入器105については、荷電粒子線装置100に予め備えられている既存のガス導入器106等を利用するようにすれば、図1に示したように専用のガス導入器105を必ずしも設けなくとも済み、経済的でもある。
また、その際は、ガスボンベ14,18を共通の単一なガスボンベとし、ガス供給配管15,19を分岐配管で構成することも可能である。また、ガス導入バルブ16又は20を、一の流出ポートと複数の流入ポートとを備えた切換方式のガス供給バルブで構成すれば、それぞれガス種が異なる複数のガスボンベを接続することができ、例えば加熱脱ガス処理とそれとは別の処理とで異なる任意のガス種を供給することも可能になる。
上述した構成からなる荷電粒子線装置100は、その作動が制御・表示装置65によって制御される。制御・表示装置65は、例えば、マウス,キーボード等といった入力操作機器、LCDパネル等のディスプレイが付設されたコンピュータ装置によって構成される。制御・表示装置65は、上述した荷電粒子線装置100では、荷電粒子銃光学系36及び高電圧電源61を含む荷電粒子銃101,照射光学系(電子光学系又はイオン光学系)26を含む荷電粒子光学系102,図示省略した荷電粒子検出系,試料室103の図示省略したステージ移動機構をはじめとする各部に加え、荷電粒子銃用ポンプ12、試料室用ポンプ13、極低温冷却装置39、ヒーター40が接続されたヒーター電源63、及びガス導入バルブ16,20が接続されたバルブ駆動装置64といった各機器と接続され、制御信号の供給により各部及び各機器を作動制御し、試料27の観察処理等を含む各種装置処理を実行制御する。そして、制御・表示装置65は、これら各種装置処理の中の一として、上述した加熱脱ガス処理機構の各機器を作動制御して、加熱脱ガス処理の実行制御も行う。
これに伴い、荷電粒子線装置100には、制御・表示装置65が加熱脱ガス処理を含む各種装置処理を実行制御する際に、装置状態等を参照する各種検出器が設けられている。荷電粒子線装置100には、制御・表示装置65による加熱脱ガス処理の実行制御に係り、真空計(圧力検出器)60や、低温側温度センサー51,高温側温度センサー52,及び鏡体温度センサー53を有する温度計(温度検出器)62が設けられている。
真空計60は、荷電粒子銃鏡体1に付設され、荷電粒子銃鏡体1内の圧力を検出し、荷電粒子銃鏡体1内の真空度合を測定する。低温側温度センサー51は、チップホルダー32に配置され、極低温冷却装置39により低温側冷却経路部材37を介して冷却されるチップホルダー32の温度を検出する。高温側温度センサー52は輻射熱シールド34に配置され、ヒーター40の発熱によって加熱される輻射熱シールド34の温度を検出する。鏡体温度センサー53は、荷電粒子銃鏡体1に配置され、室温雰囲気に臨む荷電粒子銃鏡体1の温度を検出する。真空計60による荷電粒子銃鏡体1内の圧力測定値、及び温度計62による各部の温度測定値は、装置状態データとして制御・表示装置65に供給される。
以下、上述した構成からなる本実施の形態の荷電粒子線装置100において、その制御・表示装置65によって実行される、荷電粒子銃鏡体1内部の加熱脱ガス処理について説明する。
例えば、冷陰極電子源を用いた電子銃では、電子銃内部の真空中にある残留ガスがその冷陰極電子源のチップに経時的に吸着してしまうことにより、電子銃は汚染されてしまい、放出する電子線の輝度の変化やエネルギー幅の増加が起きる。このように、電子やイオンといった荷電粒子をプローブとする荷電粒子線装置100では、荷電粒子銃101から放出される荷電粒子線の輝度の変化やエネルギー幅の増加を避けるため、荷電粒子銃鏡体1内でいかに残留ガスが低減された超高真空以下の環境を実現するかについて、技術的に注力されてきた。特に、チップの先端頂部が数原子又は単原子からなるナノチップ電子源や、冷却を必要とするGFISでは、その課題の重要性はさらに増している。
図2は、荷電粒子源のチップの先端頂部を単原子とした単原子チップの一例の説明図である。単原子チップは、現用技術において究極的に形成される電子源のナノチップやGFISのチップ形状である。そして、この単原子チップは、図1に示した、本実施の形態に係る荷電粒子線装置におけるチップ30の構成に該当する。
図2(a)は、単原子チップを電子源に用いたときの、単原子チップからの電子放出を表わした図である。
例えば、冷陰極電子源に用いられるチップは、タングステンやモリブデン等の高融点金属を電解研磨して先鋭化し、チップ先端70の概略外径を数100nmレベルの曲率半径とするものであった。さらに、これに加えて、先鋭化したチップに白金やイリジウムのような貴金属を蒸着又はメッキして、真空中での加熱処理や電界蒸発処理を組み合わせて、図2(a)に示すような、ナノピラミッド71をチップ先端に形成するものであった。
このようなナノピラミッド71が形成されたナノチップ30では、チップ先端頂部が単原子の単原子チップであるがため、チップ30が相対的に負の電位となる電圧印加によって、極めて高い電界がチップ先端頂部の単原子に集中し、トンネル効果によってこの単原子から電子が放出される。そのため、光源径が原子レベルで、高い輝度を有する指向性のよい放出電子72を放出可能になっている。
図2(b)は、単原子チップをイオン源に用いたときの、単原子チップからのイオン放出を表わした図である。
例えば、電子の代わりにイオンを発生させるGFISでも、そのチップとして、図2(b)に示した、ナノピラミッド71が形成されたナノチップ30の単原子チップを用いることができる。GFISで用いる場合は、電子源として用いたときとは逆向きの、極めて高い電界がチップ先端頂部の単原子に集中するように、チップ30が相対的に正の電位となる電圧印加を行う。
この場合、イオンとなる原料ガスは、単原子チップを形成する母材(前述したタングステンやモリブデン等の高融点金属)の蒸発電界強度よりも低い電界強度で、イオン化するガスであれば何でも使用可能である。商用的には、イオン顕微鏡やFIBでは、ヘリウム,ネオン,アルゴンといった希ガスに加え、水素も利用されている。
このようなナノピラミッド71が形成されたナノチップ30では、導入された原料ガスのガス分子78は、図2(b)に示すように、確率的に、冷却されたチップ先端70に衝突し、ホッピング73を繰り返しながらその運動エネルギーを消費する。運動エネルギーを消費して低速となったガス分子78は、チップ先端頂部の単原子による高強度の電界領域で、ガス分子78とチップ母材間のトンネル効果によってイオン化したガス分子74となり、チップ先端頂部の単原子に発生した電界に沿って、高輝度で単色性と指向性に優れた放出イオン75を放出する。
その一方で、図2(a)及び図2(b)に示した、ナノピラミッド71が形成されたナノチップ30を用いた電子又はイオンの放出において、チップ先端頂部における単原子の位置安定性や、ナノピラミッド71の形状作成及び維持には、残留ガスの吸着が影響を与えることが分かっている。
図2(c)は、残留ガス吸着によるナノチップの損傷を表した図である。
ナノピラミッド71は荷電粒子源のチップへの高電圧印加により荷電粒子銃鏡体1内で作成されるものでもあるが、図2(c)に示すように、ナノピラミッド71の形成過程において吸着した不純物分子76や、解離吸着した不純物分子77が、単原子チップ30のチップ先端70表面での原子拡散を阻害したり、チップ先端70に位置するはずの原子と置換したりする。また、図2(a)及び図2(b)に示したナノピラミッド71の形成後も、吸着した不純物分子76がチップ30の母材の原子と電界との相互作用で移動したりし、吸着と脱離とを繰り返すため、荷電粒子線31自体の放出が不可能になる恐れもある。
したがって、荷電粒子銃鏡体1内の真空環境は超高真空以下の圧力が要求されるが、その実現には荷電粒子銃101内の部材からの放出ガスを低減することが重要で、特に部材を満遍なく均一に加熱脱ガスすることが効果的である。そのため、従来でも冷却しないタイプの荷電粒子銃においても、荷電粒子銃鏡体1内の加熱脱ガス処理は重要視されていた。
そこで、特に放出された荷電粒子線31が照射され得るチップ周辺部材では、電子衝撃脱離による放出ガスの低減をはかるために、図1において破線で示すように、荷電粒子銃鏡体1内の荷電粒子銃光学系36にヒーター44を組み込む等して、加熱脱ガス処理を行うようにしていた。
しかしながら、加熱脱ガス処理の実施の際は、荷電粒子銃鏡体1自体はその外壁に装着されたヒーター40等によっても加熱されるため、荷電粒子銃鏡体1内のその他の部材は、このヒーター40により加熱された荷電粒子銃鏡体1からの熱伝導により加熱されるものの、構造や組み立て方により必ずしも部品間の熱伝導は良くないこともあった。また、荷電粒子銃光学系36に組み込まれたヒーター44による加熱は、荷電粒子銃光学系36部分の局所加熱に過ぎないため、依然として、荷電粒子銃鏡体1内を満遍なく均一に加熱することは困難であった。そのため、温度の低い部分では荷電粒子銃鏡体1内の部材内部の吸蔵ガス又は部材表面の吸着ガスの放出が効果的に行われず脱ガス効率が低くなり、超高真空レベルの圧力を得るのには長時間の加熱が必要となっていた。
仮に、荷電粒子銃鏡体1内を満遍なく均一に加熱しようとすると、荷電粒子銃鏡体1に設けたヒーター40や、荷電粒子銃光学系36に設けたヒーター44以外にも、図1において破線で示したように、断熱スリーブ(断熱部材)33,チップホルダー32,輻射熱シールド34それぞれにもヒーター41〜43を追加する必要があり、コストの増加,ヒーターの消費電力の増加,ヒーター自体からの不純物ガスの増加が危惧されるとともに、高電圧部におけるヒーター自体や配線の電気絶縁の困難さも問題になる。特に、各ヒーター及びその配線の電気絶縁は、絶縁空間及び沿面距離の確保の必要性から、荷電粒子銃鏡体1自体が大型化し、それに伴う表面積の増加,冷却のための熱負荷の増加等といったデメリットが多い。
そこで、図1に示した、本実施の形態に係る荷電粒子線装置100では、荷電粒子銃鏡体1内の加熱脱ガス処理を実行するときには、ガス導入器105により荷電粒子銃鏡体1内に希ガス若しくは不活性ガスを導入し、荷電粒子銃鏡体1内の、断熱スリーブ(断熱部材)33,チップホルダー32,輻射熱シールド34といった各部材の加熱に、ヒーター40により加熱される荷電粒子銃鏡体1との間での導入ガスを介した熱伝導を利用する。
この場合、導入ガスは、荷電粒子銃鏡体1内を満たし、加熱された荷電粒子銃鏡体1から荷電粒子銃鏡体1内の各部材に熱を伝導する。
図3は、荷電粒子銃の加熱方法を説明する模式図である。なお、図中のブロック矢印は伝熱方向を示す。
図3(a)は、図1に示した荷電粒子線装置100のように、荷電粒子銃鏡体1をその外壁面に装着したヒーター40で直接加熱する加熱方法の模式図である。
この場合、荷電粒子銃鏡体1内部の主要部品の中、断熱スリーブ33,チップホルダー32,輻射熱シールド34,断熱支持部材35は、ヒーター40で加熱された荷電粒子銃鏡体1の輻射熱301aに加え、荷電粒子銃鏡体1内の導入された導入ガス89による伝導熱302aによっても加熱される。
また、荷電粒子銃鏡体1内部の他の主要部品である、断熱されていない荷電粒子銃光学系36は、ヒーター40で加熱された荷電粒子銃鏡体1の輻射熱301b、荷電粒子銃鏡体1の底面部分300からの伝導熱303に加え、電粒子銃鏡体1内の導入ガス89による伝導熱302bによっても加熱される。
これら主要部品の中、特に荷電粒子銃光学系36は、荷電粒子銃鏡体1の底面300に配置されているので、荷電粒子銃鏡体1の底面300を介し、ヒーター40で加熱される外壁面との間で熱伝導可能な構成になっている。そのため、荷電粒子銃光学系36は、荷電粒子銃鏡体1の底面部分300からの伝導熱303によっても加熱可能である。
しかしながら、荷電粒子銃鏡体1の底面部分300は、荷電粒子光学系102の光学系鏡体2に載置されているので、実際は逆に、ヒーター40で加熱されていない光学系鏡体2にその熱を奪われ、荷電粒子銃鏡体1の他の部分よりも温度が低くなる。そのため、引出電極56を含む複数の静電レンズそれぞれを構成する電極が内部に配置された荷電粒子銃光学系36は、荷電粒子銃鏡体1の底面部分300の温度が低いことから、導入ガス89が荷電粒子銃鏡体1内に導入されない場合は、導入ガス89による伝導熱302bによって加熱されなくなり、加熱に寄与するのが荷電粒子銃鏡体1からの平均的な輻射熱301bとこの荷電粒子銃鏡体1の底面300からの伝導熱303とだけになり、加熱脱ガス処理時の加熱温度が不十分になってしまう。
そこで、図1に示した荷電粒子線装置100においては、荷電粒子銃光学系36は、荷電粒子銃鏡体1内への導入ガス89の導入によって、この導入ガス89による伝導熱302bの供給も受けることが可能になっているため、断熱された輻射熱シールド34やチップホルダー32と同様に、効率的にかつ荷電粒子銃鏡体1内部を荷電粒子銃光学系36を含めて均一に加熱できるようになっている。
なお、この荷電粒子銃光学系36については、チップホルダー32に断熱構造を備えていない荷電粒子銃においても適用される構成である。
したがって、荷電粒子銃鏡体1内の加熱脱ガス処理を実行するときに、荷電粒子銃鏡体1内にガス89を導入し、荷電粒子銃鏡体1内の各部材の加熱に、ヒーター40により加熱される荷電粒子銃鏡体1との間での導入ガス89を介した熱伝導を利用するといった、本実施の形態に係る荷電粒子線装置100の特徴は、チップホルダー32に断熱スリーブ33のような断熱構造を備えた荷電粒子銃に限定されるものではない。
さらに、荷電粒子線装置100の運転状態では、図1に示したチップ30から放出される荷電粒子線31が荷電粒子銃光学系36の引出電極56に照射されて、その吸着ガスや部材表面内部の不純物ガスを叩き出し、チップ30を汚染する。これを避けるため、図1において破線で示すように、荷電粒子銃光学系36に積極的にヒーター44を付加して、引出電極56を加熱することも行われるが、そのヒーター44も不要となる。
図3(b)は、図1に示した荷電粒子線装置100とは別の実施の形態に係る荷電粒子線装置の、荷電粒子銃の加熱方法を説明する模式図である。
図3(b)に示した荷電粒子線装置100’では、図1及び図3(a)示した荷電粒子線装置100のように、荷電粒子銃鏡体1を荷電粒子銃鏡体1に装着したヒーター40で直接加熱するのではなく、荷電粒子銃鏡体1全体を、ヒーター87が備えられているオーブン88の筐体内に収容し、オーブン88の筐体で覆った構成になっている。そして、ヒーター87の作動によりオーブン88の筐体内に生じる空気の対流熱304によって、荷電粒子銃鏡体1の外壁面をその全体に亘って均一に間接的に加熱する構成になっている。
この荷電粒子線装置100’においても、図1及び図3(a)示した荷電粒子線装置100の場合と同様に、荷電粒子銃鏡体1内部の主要部品である、断熱スリーブ33,チップホルダー32,輻射熱シールド34,断熱支持部材35は、オーブン88の筐体内に生じる空気の対流熱304で加熱された荷電粒子銃鏡体1の輻射熱301aに加え、荷電粒子銃鏡体1内の導入された導入ガス89による伝導熱302aによっても加熱される。
また、荷電粒子銃鏡体1内部の他の主要部品である、断熱されていない荷電粒子銃光学系36は、オーブン88の筐体内に生じる空気の対流熱304で加熱された荷電粒子銃鏡体1の輻射熱301b、荷電粒子銃鏡体1の底面部分300からの伝導熱303に加え、電粒子銃鏡体1内の導入ガス89による伝導熱302bによっても加熱される。
次に、これら荷電粒子線装置100,100’に係り、加熱脱ガス処理時における荷電粒子銃鏡体1内のガス導入による加熱の効果について、図4に基づき説明する。
図4は、ガスの熱伝導率と圧力の関係、ガスの熱輸送による加熱効果を説明するグラフである。
図4(a)は、導入ガスのガス圧力と熱伝導率との関係を表わしたグラフである。
図4(a)に示すように、導入ガス89の熱伝導率310の大きさは、そのガス圧力が低いときにはガス圧力の値に比例するのに対し、ガス圧力がある程度高くなった後はガス圧力の値変化に依存しなくなり、略定の値になる特性を示す。
この特性変化の境界、すなわち図中の閾値311については、この導入ガス89を介して熱の授受を行う部材間の距離に代表される代表値が、この導入ガス89のガス分子の平均自由行程と同程度になる圧力であることが知られている。
一方で、荷電粒子銃101のサイズについては、真空性能,電気絶縁性能の観点からなるべく小型化し、性能を満たす改良が、荷電粒子線装置100に関する製造業者においてなされてきた歴史があり、各製造業者間でサイズの差異は殆どない。そのため、前記代表値は倍半分も異なることはなく数cmオーダーであり、導入ガス89の圧力の閾値311としては、0.5〜2Pa程度と考えてよい。
したがって、導入するガス89の圧力は、熱伝導率を最大限に生かしつつ、排気時のポンプへの負荷を最小限とする観点から、閾値311若しくはその近傍値をガス導入圧力とすればよい。本実施の形態では、導入ガス89として例えばヘリウムを用いた場合について説明するが、その場合、導入ガス89の圧力値は1Paに相当するが、前記観点からも好適な圧力である。
図4(b)は、断熱された部品である輻射熱シールドとチップホルダーの経時温度変化を表わしたグラフである。
その温度特性の取得に当たっては、輻射熱シールド34は、銅製で、外径φ60mm、長さ100mm、質量0.25kg程度の円筒部材によって形成され、両端部側には径方向内方に延びる内側フランジが形成されているものを使用した。また、チップホルダー32は、アルミナ製で、外径φ30mm、長さ50mm、質量0.06kg程度の円柱状のものを使用した。
図4(b)において、90は、荷電粒子銃鏡体1に装着したヒーター40、若しくは荷電粒子銃鏡体1を覆うオーブン88によって、一定温度(例えば、523K)に一定経過時間(例えば、3単位時間)に亘って加熱保持された、荷電粒子銃鏡体1の外壁温度特性を示す。
91は、上述した荷電粒子銃鏡体1の外壁温度の特性に対し、荷電粒子銃鏡体1内に導入ガス89としてヘリウムガスを導入し、荷電粒子銃鏡体1内を所定のガス圧力(例えば、1Pa)に保った場合の輻射熱シールド34の温度特性を示したものである。
92は、上述した荷電粒子銃鏡体1の外壁温度の特性に対し、荷電粒子銃鏡体1内に導入ガス89としてヘリウムガスを導入し、荷電粒子銃鏡体1内を所定のガス圧力(例えば、1Pa)に保った場合のチップホルダー32の温度特性を示したものである。
93は、上述した荷電粒子銃鏡体1の外壁温度の特性に対し、荷電粒子銃鏡体1内に導入ガス89を導入せず、荷電粒子銃鏡体1内を真空排気して所定の真空度に保った場合の輻射熱シールド34の温度特性を示したものである。
94は、上述した荷電粒子銃鏡体1の外壁温度の特性に対し、荷電粒子銃鏡体1内に導入ガス89を導入せず、荷電粒子銃鏡体1内を真空排気して所定の真空度に保った場合のチップホルダー32の温度特性を示したものである。
図4(b)に示す、導入ガス89としてヘリウムガスを導入した場合の輻射熱シールド34の温度特性91、及びチップホルダー32の温度特性92によれば、導入ガス89としてヘリウムガスを導入した場合は、輻射熱シールド34の温度及びチップホルダー32の温度は速やかに上昇し、輻射熱シールド34及びチップホルダー32は、共に約1単位時間で略荷電粒子銃外壁温度(例えば、523K)に到達することが理解できる。
これに対し、図4(b)に示す、導入ガス89としてヘリウムガスを導入しない場合の輻射熱シールド34の温度特性93、及びチップホルダー32の温度特性94によれば、輻射熱シールド34の温度、及びチップホルダー32の温度が何れも略荷電粒子銃外壁温度(例えば、523K)に達するまで、3単位時間以上が必要になることが理解できる。
本実施の形態においては、図4(b)の1単位時間は約2時間となるが、ガス導入を行わなければ、輻射熱シールド34及びチップホルダー32の加熱に6時間以上を費やすことになる。そのため、荷電粒子銃鏡体1内に導入ガスを導入しない場合は、典型的な荷電粒子銃の加熱脱ガス時間である8時間程度の中の殆どが温度の低い状態となり、十分な脱ガスが期待できない。
以上では、荷電粒子銃鏡体1内部の加熱脱ガス処理に係り、ガス導入による加熱原理と効果について説明したが、以下では加熱脱ガス処理工程における最適なガス導入方法、手順と新規に得られる効果について、図1,図3(a)に示した荷電粒子線装置100を基に、図5及び図6を用いて説明する。
図5は、ガス導入を溜め込み方式で行うときの加熱脱ガス処理のフローチャートである。
ここで、ガス導入に係る溜め込み方式とは、粗引きバルブ11及びガンバルブシール24を閉じて、荷電粒子銃鏡体1を光学系鏡体2及び試料室鏡体3を含め鏡体外部に対して封じた状態で、熱伝導媒体としてのガス、を荷電粒子銃鏡体1内に導入する方式を指す。
加熱脱ガス処理の脱ガスシーケンスは、脱ガスシーケンス開始フラグの発生(セット)により開始される。
脱ガスシーケンス開始フラグは、荷電粒子銃鏡体1内部のメンテナンス、例えば、チップ30の交換時に荷電粒子銃鏡体1を大気開放した後の超高真空立上げ処理の場合に自動的に、又は荷電粒子線装置の操作者が任意に加熱脱ガスを開始したい場合に操作者による入力操作機器の所定操作に基づいて等、制御・表示装置65内に発生する。制御・表示装置65は、脱ガスシーケンス開始フラグが発生すると、脱ガスシーケンスの開始にあたって、まず高真空排気処理S101を実行する。
高真空排気処理S101では、制御・表示装置65は、まず、粗引きバルブ11を開放して、荷電粒子銃鏡体1内を試料室用ポンプ13の吸込口に連通させるとともに、ガンバルブ駆動装置22を介してガンバルブシール24を開放して、荷電粒子線通過孔25を介して荷電粒子銃鏡体1内を光学系鏡体2内に連通させる。そして、制御・表示装置65は、試料室用ポンプ13を起動して、荷電粒子銃鏡体1内及び光学系鏡体2内の雰囲気の排気を行う。試料室用ポンプ13による排気が開始されると、制御・表示装置65は、ヒーター通電開始判定処理S102を実行する。
ヒーター通電開始判定処理S102では、制御・表示装置65は、真空計60から供給される荷電粒子銃鏡体1内部の圧力を監視し、真空計60により測定された荷電粒子銃鏡体1内の圧力の値を、予め設定されている規定値、例えば1×10−4Paと比較する。この圧力比較により、制御・表示装置65は、荷電粒子銃鏡体1の内圧が規定値1×10−4Pa以下になったのを判別したならば、高真空排気処理S101の実行による荷電粒子銃鏡体1内及び光学系鏡体2内の試料室用ポンプ13による排気は継続させたまま、ヒーター通電処理S103を開始する。
ヒーター通電処理S103では、制御・表示装置65は、荷電粒子銃鏡体1内及び光学系鏡体2内の試料室用ポンプ13による排気は継続させたまま、荷電粒子銃鏡体1に備えられたヒーター40を作動する。その際、ヒーター40は、ヒーター配線54を介して接続されたヒーター電源63により駆動(ON)される。そして、制御・表示装置65は、温度計62から供給される鏡体温度センサー53の検知出力に基づく鏡体温度を監視しながら、鏡体温度が設定値、例えば523Kを保つようにヒーター電源63の出力を制御して、荷電粒子銃鏡体1の鏡体温度を温度調整する。なお、この設定温度は、操作者による入力操作機器の所定操作に基づき、予め設定・変更が可能になっている。
このようにして、荷電粒子銃鏡体1では、その内圧が減圧され、鏡体温度が上昇させられる。そして、このヒーター通電処理S103が実行されると、制御・表示装置65は、次にガス導入開始判定処理S104を実行する。
ガス導入開始判定処理S104では、制御・表示装置65は、温度計62から供給される鏡体温度センサー53の検知出力に基づく鏡体温度、及び真空計60から供給される荷電粒子銃鏡体1内部の圧力を監視しながら、鏡体温度及び内圧を規定温度及び規定圧力、例えば500K,5×10−4Paと比較する。この温度比較及び内圧比較により、制御・表示装置65は、鏡体温度が規定温度500K以上で、かつ荷電粒子銃鏡体1の内圧が規定圧力5×10−4Pa以下になったのを判別したならば、高真空排気停止処理S105及びガス導入処理S106を実行する。
高真空排気停止処理S105では、制御・表示装置65は、粗引きバルブ11を閉塞して、荷電粒子銃鏡体1内と試料室用ポンプ13の吸込口との間の連通を遮断するとともに、ガンバルブシール24をガンバルブ駆動装置22により閉塞して、試料室用ポンプ13による荷電粒子銃鏡体1内の高真空排気を停止させる。これにより、試料室用ポンプ13による荷電粒子銃鏡体1内の高真空排気が停止され、荷電粒子銃鏡体1は、光学系鏡体2及び試料室鏡体3を含め、鏡体外部に対して高真空状態に封じられる。
ガス導入処理S106では、制御・表示装置65は、ガス導入バルブ配線55を介して接続されたバルブ駆動装置64を制御し、ガス導入器105のガス導入バルブ16を開放する。これにより、鏡体外部に対して高真空状態で封じられた荷電粒子銃鏡体1内には、ガスボンベ14に貯留されている導入ガス、例えばヘリウムガスが、ガス供給配管19及びガス導入バルブ16を介して流入開始することになる。そして、荷電粒子銃鏡体1内へのヘリウムガスの流入を開始すると、制御・表示装置65は、導入停止判定処理S107を実行する。
導入停止判定処理S107では、制御・表示装置65は、真空計60から供給される荷電粒子銃鏡体1内部の圧力を監視し、真空計60により測定された荷電粒子銃鏡体1内の圧力の値を、予め設定されている規定値、例えば1Paと比較する。この圧力比較により、制御・表示装置65は、荷電粒子銃鏡体1の内圧が規定値1Paに達したのを判別したならば、ガス導入停止処理S108を実行する。
ガス導入停止処理S108では、制御・表示装置65は、ガス導入器105のガス導入バルブ16を、ガス導入バルブ配線55を介して接続されたバルブ駆動装置64により閉塞する。これにより、荷電粒子銃鏡体1は、内部に導入ガスとしてのヘリウムガスが規定値1Paだけ存在する状態で、光学系鏡体2及び試料室鏡体3を含め、鏡体外部に対して封じられる。
ここで、これまでの処理S101〜108に示した手順により、導入ガスとしてのヘリウムガスを荷電粒子銃鏡体1内に導入する前に、ヒーター40を作動して、荷電粒子銃鏡体1内の規定値以下の真空排気を行ったのは、次に述べる理由のためである。
まず、チップ30は、図2(a)又は(b)に示したように、チップ先端にナノピラミッド71が形成されたナノチップであり、特にチップ先端頂部が単原子の単原子チップであるため、チップ先端頂部における単原子の位置安定性を含む構造の安定性は、図2(c)で説明したように、吸着ガスの影響を受ける。
チップ30は、荷電粒子銃鏡体1に搭載される前にその構造が完成されているが、加熱脱ガス処理の初期工程、つまり高真空排気処理S101の段階やヒーター通電処理S103の開始以前に導入ガスの荷電粒子銃鏡体1内への導入を行うと、加熱された荷電粒子銃鏡体1内部のアウトガスが不純物として高濃度で鏡体内に停滞し続けるために、チップ30のナノピラミッド71を破壊する原因となる。
また、後述する後工程で、この加熱脱ガス処理の初期工程で導入した導入ガスを排出して、加熱脱ガスを続けても、高濃度で存在した不純物はチップ30に大量に吸着しているため、この加熱脱ガスでは排除しきれない虞も生じる。
さらに、チップ30は、軽度の損傷であれば、荷電粒子銃101内での通常の再生処理である電界蒸発やアニールで再生可能であるが、このように汚染が酷い場合には、吸着ガスがチップ30先端に拡散移動して再生できないことも起こり得る。
したがって、脱ガスシーケンス開始フラグS100からガス導入停止処理S108の手順が守られるのは重要なことであり、かつ、これら手順は、導入ガスによる加熱原理を適用した加熱脱ガス処理においてのガス導入方法の特徴でもある。
図5に戻り、ガス導入停止処理S108以降の、制御・表示装置65が実行する加熱脱ガス処理の各処理について説明する。
制御・表示装置65は、ガス導入停止処理S108を実行した際も、その後、加熱対象部品の温度が脱ガス効果の得られる規定温度、例えば500Kに達するまで、導入ガスを封入した状態で、鏡体温度が設定値、例えば523Kを保つようにヒーター40の作動制御による加熱を継続している。
そして、制御・表示装置65は、ガス導入停止処理S108の実行後は、加熱対象部品の温度が脱ガス効果の得られる規定温度、例えば500Kに達したか否かを判断するため、導入ガス排気開始判定処理S109を行う。
導入ガス排気開始判定処理S109では、制御・表示装置65は、加熱対象部品の温度として、荷電粒子銃鏡体1内のチップホルダー32及び輻射熱シールド34を監視する。制御・表示装置65は、温度計62から供給されるチップホルダー32の温度及び輻射熱シールド34の温度を監視しながら、それぞれ温度が規定温度、例えば両方とも500Kに達しているか否かを判別する。チップホルダー32の温度は、温度計62に接続されたチップホルダー32に配置された低温側温度センサー51の検知出力に基づくものである。また、輻射熱シールド34の温度は、温度計62に接続された輻射熱シールド34に配置され高温側温度センサー52の検知出力に基づくものである。
その上で、制御・表示装置65は、チップホルダー32及び輻射熱シールド34それぞれ温度が規定温度、例えば両方とも500Kに達しているか否かを判別する。なお、この判別条件は、図1に示した荷電粒子線装置100は、チップホルダー32には低温側温度センサー51,輻射熱シールド34には高温側温度センサー52といった具合に、加熱対象部品毎に対応してそれぞれ温度センサーが設けられていることによるものである。したがって、温度センサーの配置や判別条件は、これに限るものではなく、例えば、或る加熱対象部品に配置された温度センサーで、他の加熱対象部品には温度センサーを配置することなく、加熱対象部品全体を代表させることも可能であり、その判別条件も温度センサーを配置した対象等によって適宜変更される。さらには、各部品の温度が規定値となるまでの時間が予め分かっていれば、判別条件は温度でなく、加熱時間を判別条件としてもよい。この場合は、加熱対象部品に温度センサーを配置する必要もなくなる。
そして、制御・表示装置65は、加熱対象部品の温度に係る上述した判別条件を満たすことを判別したならば、導入ガス排気処理S110を実行する。
導入ガス排気処理S110では、粗引きバルブ11、又は粗引きバルブ11及びガンバルブシール24を開放することにより、加熱脱ガス処理中も運転されている試料室用ポンプ13によって、荷電粒子銃鏡体1内に貯留されている導入ガスを、荷電粒子銃鏡体1内から吸引排気する。
この際、導入ガスとして荷電粒子銃鏡体1内に封入されているヘリウムガスは1Pa程度なので、試料室用ポンプ13には大きな負荷がかかることはない。また、この導入ガスのガス排出後も、荷電粒子銃鏡体1内のチップホルダー32,輻射熱シールド34等の加熱対象部品の温度は、断熱部材33,35等による断熱効果も手伝って、ヒーター40によって加熱されている荷電粒子銃鏡体1からの輻射熱と伝導熱で供給されるエネルギーのみで、荷電粒子銃鏡体1内の加熱対象部品の温度の保持が可能である。
制御・表示装置65は、導入ガス排気処理S110の実行により、荷電粒子銃鏡体1内から導入ガス89の排出が開始されると、超高真空排気開始判定処理S111,繰り返し判断処理S112を実行する。
超高真排気開始判定処理S111では、制御・表示装置65は、真空計60から供給される荷電粒子銃鏡体1内部の圧力を監視し、真空計60により測定された荷電粒子銃鏡体1内の圧力の値が予め設定された規定圧力以下、例えば1×10−4Pa以下になったか否かを判別する。
そして、制御・表示装置65は、荷電粒子銃鏡体1の内圧が規定圧力以下になったのを判別したならば、高真空排気処理S101の実行による荷電粒子銃鏡体1内、光学系鏡体2内の試料室用ポンプ13による排気は継続させたまま、繰り返し判断処理S112を実行する。
繰り返し判断処理S112では、制御・表示装置65は、例えば、脱ガスシーケンス開始フラグの発生に伴い予めリセットされた導入ガスの導入回数カウンタをインクリメントし、そのカウント値を予め設定されている規定回数と比較する。そして、制御・表示装置65は、カウント値が規定回数に達していない場合は、粗引きバルブ閉処理S113を実行した後、前述したガス導入処理S106から超高真排気開始判定処理S111までの一連の処理を繰り返し、ヒーター40によって加熱された荷電粒子銃鏡体1に対しての、熱伝導媒体としての導入ガスの導入・排気処理を繰り返す。
粗引きバルブ閉処理S113では、制御・表示装置65は、先の導入ガス排気処理S110で開放した粗引きバルブ11、又は粗引きバルブ11及びガンバルブシール24を閉塞して、試料室用ポンプ13による荷電粒子銃鏡体1内の高真空排気を停止させる。これにより、試料室用ポンプ13による荷電粒子銃鏡体1内の高真空排気が停止され、荷電粒子銃鏡体1は、再び、光学系鏡体2及び試料室鏡体3を含め、鏡体外部に対して高真空状態に封じられる。
ここで、繰り返し判断処理S112を行って、ヒーター40によって加熱された荷電粒子銃鏡体1に対しての、熱伝導媒体としての導入ガスの導入・排気処理を規定回数(複数回)行える構成になっているのは、導入ガスの導入による荷電粒子銃鏡体1内の加圧によって、導入ガス分子が荷電粒子銃鏡体1内部の部材表面に吸着した不純物ガスをスパッタすることと、スパッタされた不純物ガスを速やかに排出することを繰り返せることにより、脱ガス効果を高めることが期待できることによる。加えて、導入ガスは加熱されて運動エネルギーが大きい状態になっているので、不純物ガスのスパッタ効率が向上することも期待できる。
さらに、前述したガス導入処理S106から超高真排気開始判定処理S111までの一連の処理を繰り返し、ヒーター40によって加熱された荷電粒子銃鏡体1に対しての、熱伝導媒体としての導入ガスの導入・排気処理を繰り返す場合、導入停止判定処理S107,導入ガス排気開始判定処理S109,超高真排気開始判定処理S111それぞれの判別条件は、予め繰り返し毎に異なる値条件に設定しておいてもよい。
例えば、3回繰り返す場合には、最初の2回について、導入停止判定処理S107の判別条件は5Pa、導入ガス排気開始判定処理S109の判別条件は400K、超高真排気開始判定処理S111の判別条件は5×10−4Paとし、短時間のスパッタ繰り返しによる効果を主眼とし、最後の3回目については、導入停止判定処理S107の判別条件は1Pa、導入ガス排気開始判定処理S109の判別条件は500K、超高真排気開始判定処理S111の判別条件は1×10−4Paとし、仕上げとして温度と真空度に重きをおいて実施することも可能である。
なお、この繰り返し判断処理S112における規定回数は、操作者による入力操作機器の所定操作に基づき、予め設定・変更が可能になっている。例えば、規定回数を2以上に予め設定しておけば、ヒーター40によって加熱された荷電粒子銃鏡体1に対しての、熱伝導媒体としての導入ガスの導入・排気処理を繰り返すように構成することができる。逆に、規定回数を1に設定しておけば、ヒーター40によって加熱された荷電粒子銃鏡体1に対しての、熱伝導媒体としての導入ガスの導入・排気処理を繰り返すことなく、実質的に繰り返し判断処理S112自体を実行しないことも可能になる。
一方、制御・表示装置65は、繰り返し判断処理S112で、カウント値が規定回数に達している場合には、ヒーター40によって加熱された荷電粒子銃鏡体1に対しての、熱伝導媒体としての導入ガスの導入・排気処理を繰り返すことなく、タイマー積算開始処理S114及び超高真空排気処理S115を実行する。
タイマー積算開始処理S114では、制御・表示装置65は、例えば内蔵タイマーの計時カウンタをリセット・スタートする。
超高真空排気処理S115では、制御・表示装置65は、先の導入ガス排気処理S110で開放した粗引きバルブ11、又は粗引きバルブ11及びガンバルブシール24を閉塞して、試料室用ポンプ13による荷電粒子銃鏡体1内の高真空排気を停止させる。この高真空排気の停止に伴い、制御・表示装置65は、荷電粒子銃用ポンプ12を駆動し、荷電粒子銃鏡体1内の排気を、荷電粒子銃用ポンプ12による超高真空までの排気に切り替える。そして、制御・表示装置65は、ヒーター通電終了判定処理S116を行う。すなわち、タイマー積算開始処理S114以降の工程では、通常行われる荷電粒子銃101の加熱脱ガス工程と類似の工程を行うことになる。
ヒーター通電終了判定処理S116では、制御・表示装置65は、内蔵タイマーのカウントアップ若しくはカウントダウンを進め、内蔵タイマーによる予め加熱脱ガス時間として設定された設定時間、例えば6時間の計時が完了したか否かを判別する。そして、制御・表示装置65は、この加熱脱ガス時間の計時を完了すると、内蔵タイマーによる計時を停止させ、ヒーター通電終了処理S117を行う。
ヒーター通電終了処理S117では、制御・表示装置65は、超高真空排気処理S115の実行による荷電粒子銃鏡体1内の荷電粒子銃用ポンプ12による排気、及び高真空排気処理S101の実行による荷電粒子銃鏡体1内及び光学系鏡体2内の試料室用ポンプ13による排気は継続させたまま、荷電粒子銃鏡体1に備えられたヒーター40による荷電粒子銃鏡体1の加熱を停止する。その際、ヒーター40は、ヒーター配線54を介して接続されたヒーター電源63の遮断により停止(OFF)される。そして、制御・表示装置65は、高真空排気処理S101の実行による光学系鏡体2内及び試料室鏡体3内の試料室用ポンプ13による排気、荷電粒子銃鏡体1内の荷電粒子銃用ポンプ12による排気は継続させたまま、脱ガスシーケンス終了判定処理S118を行う。
脱ガスシーケンス終了判定処理S118では、制御・表示装置65は、チップホルダー32に配置された低温側温度センサー51、及び輻射熱シールド34に配置された高温側温度センサー52それぞれによる温度が、規定温度、例えば予め設定された室温以下に達しているか否かを判別する。なお、この判別条件は、図1に示した荷電粒子線装置100は、チップホルダー32には低温側温度センサー51,輻射熱シールド34には高温側温度センサー52といった具合に、加熱対象部品毎に対応してそれぞれ温度センサーが設けられていることによるものである。なお、この場合の温度センサーによる判別条件は、これに限るものではなく、例えば、低温側温度センサー51又は高温側温度センサー52の何れかの一方の温度センサーで、他方をも代表させることも可能であり、その判別条件も対象となる温度センサーに応じて適宜変更してもよい。また、規定温度としての室温は、脱ガスシーケンス開始フラグの発生(セット)後、ヒーター通電処理S103の開始前に、温度計62に接続された鏡体温度センサー53の検知出力に基づき自動設定することも可能である。
さらには、その判別対象も温度に限ることはなく、例えば、加熱が終了して荷電粒子銃が室温に戻るときには、荷電粒子銃鏡体1内は超高真空レベル、例えば1×10−8Paに到達することから、真空計60の測定圧力が規定値、例えば実用的な2×10−8Pa以下になっているか否かを比較して判別したりすることも可能である。また、規定温度、例えば500Kに加熱されたチップホルダー32及び輻射熱シールド34の温度が、ヒーター通電終了後に室温状態に戻るのに必要な時間を規定時間として管理することも可能である。
そして、制御・表示装置65は、脱ガスシーケンス終了を判定したならば、この状態をもって、脱ガスシーケンス開始フラグに代えて脱ガスシーケンス終了フラグを発生(セット)するとともに、ディスプレイに終了メッセージを表示させる等して、加熱脱ガス処理の終了をユーザーに認知させる。
次に、上述した加熱脱ガス処理の別の実施の形態として、ガス導入を排出方式で行うときの加熱脱ガス処理について説明する。
図6は、ガス導入を排出方式で行うときの加熱脱ガス処理のフローチャートである。
ここで、ガス導入に係る排出方式とは、粗引きバルブ11及びガンバルブシール24の中の何れか一方を開放して、荷電粒子銃鏡体1内の雰囲気を排気しながら、熱伝導媒体としてのガスを荷電粒子銃鏡体1内に導入する方式を指す。
なお、図6に示したガス導入に係る排出方式の加熱脱ガス処理の場合、そのガス導入開始判定処理S204以前の処理工程、及びタイマー積算開始処理S211以降の処理工程については、図5に示したガス導入に係る溜め込み方式のガス導入開始判定処理S104以前の処理工程、及びタイマー積算開始処理S114以降の処理工程と同様なのでその説明を省略し、変更点であるガス導入処理S206から排気開始準備処理S210までについて説明する。
また、その荷電粒子線装置100の構成も、図1及び図3に示した荷電粒子線装置100,100'と同一であるが、本実施の形態に係る排出方式では、図1に示した荷電粒子線装置100のガス導入器105において、そのガス導入バルブ16は、ガス流量の調整が可能な可変流量バルブ、又は流体の質量流量を計測し流量制御を行えるマスフローコントローラによって構成されている。
制御・表示装置65は、ガス導入開始判定処理S204で、温度計62から供給される鏡体温度センサー53の検知出力に基づく鏡体温度、及び真空計60から供給される荷電粒子銃鏡体1内部の圧力を監視しながら、鏡体温度が規定温度500K以上で、かつ荷電粒子銃鏡体1の内圧が規定圧力5×10−4Pa以下になったのを判別したならば、高真空排気停止処理S205及びガス導入処理S206を実行する。
高真空排気停止処理S205では、制御・表示装置65は、ガス導入処理S206で開放した粗引きバルブ11を閉塞して、荷電粒子銃鏡体1内と試料室用ポンプ13の吸込口との間の連通を遮断する一方、同じくガス導入処理S206で開放したガンバルブシール24は開放状態のままにして、試料室用ポンプ13による荷電粒子銃鏡体1内の粗引きバルブ11を介した高真空排気を停止させる。これにより、試料室用ポンプ13による荷電粒子銃鏡体1内の高真空排気が停止され、荷電粒子銃鏡体1内は、荷電粒子線通過孔25を介してのみ光学系鏡体2と連通された状態になる。
ガス導入処理S206では、制御・表示装置65は、上述した可変流量バルブ又はマスフローコントローラからなるガス導入バルブ16の開放量調整処理S206−1と、その開放量判定設定処理S206−2とを適宜繰り返し行い、荷電粒子銃鏡体1の内圧が規定値(例えば1Pa)で一定になるようにフィードバック調整する。
そのために、制御・表示装置65は、まず、開放量調整処理S206−1では、ガス導入バルブ16を例えば現在の開放状態(すなわち、調整当初は閉塞状態)から予め設定されたデフォルト開放量だけ開放する。この開放量調整処理S206−1の実行によって、荷電粒子銃鏡体1内は、ガスボンベ14に貯留されている導入ガス、例えばヘリウムガスのガス導入が行われながら、試料室用ポンプ13によって、荷電粒子線通過孔25介して光学系鏡体2内や試料室鏡体3内を経由して、ガスの排気が行われるようになる。また、その際における荷電粒子銃鏡体1内からのガスの排気は、荷電粒子線通過孔25は比較的小さい流量、例えば3sccm(なお、この値は、荷電粒子銃鏡体1内が高真空状態、例えば略1Paで、荷電粒子銃鏡体1内と光学系鏡体2内との差圧により生じる流量に対応)程度に絞られており、荷電粒子銃鏡体1内と光学系鏡体2内とのこの荷電粒子線通過孔25を介しての差動排気となるため、通常運転にある試料室用ポンプ13に大きな負荷をかけることなく排気が可能である。
そして、制御・表示装置65は、この開放調整処理S206−1を行うと、開放量判定設定処理S206−2を併せて行う。制御・表示装置65は、開放量判定設定処理S206−2では、真空計60から供給される荷電粒子銃鏡体1内部の圧力、又はガス導入バルブ16にマスフローコントローラが用いられている場合にはこのマスフローコントローラによる導入ガスの測定流量の中の少なくとも何れかを監視し、真空計60により測定された荷電粒子銃鏡体1の内圧、又はマスフローコントローラによる導入ガスの測定流量が規定値(例えば1Pa,3sccm)に達し、一定になっているか否かを判定する。そこで、制御・表示装置65は、真空計60により測定された荷電粒子銃鏡体1の内圧、又はマスフローコントローラによる導入ガスの測定流量が規定値(例えば1Pa,3sccm)に達し、一定になっていない場合は、真空計60により測定された荷電粒子銃鏡体1の内圧変化の度合に応じて規定値に収束するように、又はマスフローコントローラから供給される導入ガスの流量が規定値で一定となるように、ガス導入バルブ16の現在の開放量を調整し直す。すなわち、制御・表示装置65は、このような開放量調整処理S206−1と開放量判定設定処理S206−2とを適宜繰り返しながら、荷電粒子銃鏡体1の内圧をガスの導入を続けながら、荷電粒子銃鏡体1の内圧、又は導入ガスの測定流量が規定値で一定になるようにする。これに対し、制御・表示装置65は、開放量判定設定処理S206−2で、真空計60により測定された荷電粒子銃鏡体1の内圧、又はマスフローコントローラによる導入ガスの測定流量が規定値(例えば1Pa,3sccm)に達し、一定になっている場合は、現在の開放量を保ち、導入ガス排気開始判定処理S207を行う。
このため、荷電粒子銃鏡体1内は内部部品を加熱可能な圧力レベルを維持することが可能となり、かつガスは該荷電粒子銃鏡体1に充満し、荷電粒子光学系36の中心孔を抜けて荷電粒子線通過孔25から排出されるので、満遍なく均一な加熱が可能である。
さらに、導入されたガスの一部は、定常的に排出され、放出された不純物ガスも排出され続けるため、図5に示した溜め込み方式の実施の形態よりも清浄度は高くなることが期待できる。このとき、ガスの流量を大きくして荷電粒子銃鏡体1内の不純物ガスの排出効率を上げたい場合には、ガス導入処理S206においてガンバルブシール24と同時に粗引きバルブ11を部分的に開放してもよく、粗引きバルブ11に開度調整可能なバルブを用いれば、ガス導入バルブ16と併せて排出流量の調整も可能になる。
加えて、加熱されたガスは、光学系鏡体2内や試料室鏡体3内を経由するため、ガスの流路、特に荷電粒子線31の通過経路は加熱及びスパッタによる脱ガス効果が少なからず得られるため、荷電粒子線装置全体の清浄度、到達圧力の向上も期待できる。
ただし、本方式ではガスの消費量が増加するので、ヘリウムガスのように高価なガスを用いる場合には、試料室用ポンプ13の排気口にガスの回収装置を設けても良い。
さて、ガス導入量の調整が終了すると、制御・表示装置65は、導入ガス排気開始判定処理S207,導入ガス排気処理S208,超高真排気開始判定処理S209を行うが、これらは図5で説明した導入ガス排気開始判定処理S109,導入ガス排気処理S110,超高真排気開始判定処理S111と同様である。
ただし、超高真排気開始判定処理S209の後続処理は、本実施の形態の場合は図5で説明した繰り返し判断処理S112に対応する処理は行わずに、制御・表示装置65は排気開始準備処理S210を行う。排気開始準備処理S210では、制御・表示装置65は、ガンバルブ駆動装置22を駆動させることでガンバルブシール24を閉塞する。
その後、制御・表示装置65は、タイマー積算開始処理S211以降の処理を行うが、図5に示したタイマー積算開始処理S114以降の処理工程と同様となり、加熱脱ガス工程が終了する。
なお、本発明に係る荷電粒子線装置、及び脱ガス方法の実施の形態は、以上詳述したとおりであるが、その各部の構成の具体的態様、手順の具体的内容については、説明中で述べた以外でも種々の変形例の適用が可能である。例えば、荷電粒子銃鏡体1内に導入ガスを供給するガス導入器105は、光学系鏡体2内又は試料室鏡体3内へパージガスを導入するガス導入器106とそのパージガスを利用してもよい。
1・・・荷電粒子銃鏡体、 2・・・光学系鏡体、 3・・・試料室鏡体、 4・・・高電圧導入端子部材、 5・・・ガス導入器用フランジ、 6・・・ガス導入器用フランジ、 7・・・冷却装置用フランジ、 8・・・排気系配管、 9・・・排気系配管、 10・・・粗引き配管、 11・・・粗引きバルブ、 12・・・荷電粒子銃用ポンプ、 13・・・試料室用ポンプ、 14・・・ガスボンベ、 15・・・ガス供給配管、 16・・・ガス導入バルブ、 17・・・ガス導入ノズル、 18・・・ガスボンベ、 19・・・ガス供給配管、 20・・・ガス導入バルブ、 21・・・ガス導入配管、 22・・・ガンバルブ駆動装置、 23・・・ガンバルブ連結棒、 24・・・ガンバルブシール、 25・・・荷電粒子線通過孔、 26・・・照射光学系、 27・・・試料、 28・・・ステージ、 30・・・チップ、 31・・・荷電粒子線、 32・・・チップホルダー、 33・・・断熱スリーブ、 34・・・輻射熱シールド、 35・・・断熱支持部材、 36・・・荷電粒子銃光学系、 37・・・低温側冷却経路部材、 38・・・高温側冷却経路部材、 39・・・極低温冷却装置、 40・・・ヒーター、 41・・・ヒーター、 42・・・ヒーター、 43・・・ヒーター、 44・・・ヒーター、 50・・・高電圧導入線、 51・・・低温側温度センサー、 52・・・高温側温度センサー、 53・・・鏡体温度センサー、 54・・・ヒーター配線、 55・・・ガス導入バルブ配線、 56・・・引出電極、 60・・・真空計、 61・・・高電圧電源、 62・・・温度計、 63・・・ヒーター電源、 64・・・バルブ駆動装置、 65・・・制御・表示装置、 70・・・チップ先端、 71・・・ナノピラミッド、 72・・・放出電子、 73・・・ホッピング、 74・・・イオン化したガス分子、 75・・・放出イオン、 76・・・吸着した不純物分子、 77・・・解離吸着した不純物分子、 78・・・原料ガスの分子、 87・・・ヒーター、 88・・・オーブン、 89・・・導入ガス、 100,100’・・・荷電粒子線装置、 101・・・荷電粒子銃、 102・・・荷電粒子光学系、 103・・・試料室、 104・・・加熱器、 105・・・ガス導入器、 106・・・ガス導入器。

Claims (11)

  1. 荷電粒子銃鏡体に、荷電粒子を放出する冷却可能なチップと荷電粒子を荷電粒子線に成形する光学系とを有し、チップ周辺部材が断熱構造となっている荷電粒子銃を設けた荷電粒子線装置であって、
    前記荷電粒子銃鏡体を加熱するヒーターと、
    前記荷電粒子銃に不活性ガスを導入するガス導入器と、
    前記ヒーターによる前記荷電粒子銃鏡体の加熱開始時に、前記ガス導入器を作動して前記荷電粒子銃鏡体内に不活性ガスを導入する制御手段と
    を設け、
    前記荷電粒子銃の加熱脱ガス時に、前記ガス導入器から前記荷電粒子銃鏡体内に導入された不活性ガスを熱伝導媒体として、前記ヒーターにより加熱された前記荷電粒子銃鏡体の熱を前記チップ周辺部材に伝える
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  2. 請求項1記載の荷電粒子線装置であって、
    前記チップの先端がナノピラミッド構造である
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  3. 請求項1又は2記載の荷電粒子線装置であって、
    前記ガス導入器により導入される不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴンといった希ガスである
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 請求項1又は2記載の荷電粒子線装置であって、
    前記ガス導入器により導入される不活性ガスは、乾燥窒素である
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  5. 請求項1又は2記載の荷電粒子線装置であって、
    前記ガス導入器から前記荷電粒子銃鏡体内に導入された不活性ガスの前記荷電粒子銃鏡体内におけるガス圧力は、前記荷電粒子銃の加熱脱ガス時に熱交換が行われる代表長さとガス分子の平均自由行程に略等しくなる圧力である
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  6. 請求項1又は2記載の荷電粒子線装置であって、
    前記ガス導入器は、前記荷電粒子銃から放出された荷電粒子線を試料に照射する荷電粒子プローブにする光学系が設けられた光学系鏡体内、又は試料が収納される試料室へのパージガスのガス導入器と共用である
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  7. 請求項1又は2記載の荷電粒子線装置であって、
    前記荷電粒子銃はGFISを備えた荷電粒子銃であり、
    前記ガス導入器により導入される不活性ガスは、イオンの原料ガスと同じである
    ことを特徴とする荷電粒子線装置。
  8. 荷電粒子銃鏡体に、荷電粒子を放出する冷却可能なチップと荷電粒子を荷電粒子線に成形する光学系とを有し、チップ周辺部材が断熱構造となっている荷電粒子銃を設けた荷電粒子線装置における、荷電粒子銃の加熱脱ガス方法であって、
    前記荷電粒子銃鏡体のヒーターによる加熱時に、
    前記荷電粒子銃内に、不活性ガスからなる導入ガスをガス導入器から導入し、前記荷電粒子銃内に、規定圧力で、かつ規定期間の間、前記ヒーターにより加熱された前記荷電粒子銃鏡体の熱を前記チップ周辺部材に伝える熱伝導媒体として封入状態しておく導入・封入工程と、
    前記荷電粒子銃内に貯留された導入ガスを排気する排気工程と
    を含むことを特徴とする荷電粒子銃の加熱脱ガス方法。
  9. 請求項8記載の荷電粒子銃の加熱脱ガス方法であって、
    前記導入・封入工程は、規定期間の間、随時、前記荷電粒子銃内からの導出量に相当する導入ガスを前記荷電粒子銃内へ導入して前記荷電粒子銃内を規定のガス圧力状態又はガス流量状態にしている
    ことを特徴とする荷電粒子銃の加熱脱ガス方法。
  10. 請求項8記載の荷電粒子銃の加熱脱ガス方法であって、
    前記導入・封入工程と、前記排気工程を繰り返し行う
    ことを特徴とする荷電粒子銃の加熱脱ガス方法。
  11. 請求項8記載の荷電粒子銃の加熱脱ガス方法であって、
    前記導入・封入工程の実行は、前記荷電粒子銃の予備加熱と前記荷電粒子銃鏡体内の真空排気の後に実行される
    ことを特徴とする荷電粒子銃の加熱脱ガス方法。
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