JP2013046189A - 圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び電子機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電振動素子1は、矩形の振動領域12、及び支持部13を有する圧電基板10と、励振電極25a、25bと、リード電極27a、27bと、を備えている。支持部13は、第1の支持部14、第2の支持部15、第3の支持部16及び第4の支持部と、を備えている。第2の支持部15は、第2の傾斜部15bと、第2の支持部本体15aと、を備えており、第2の支持部15には、少なくとも一つのスリット20が設けられている。
【選択図】図1
Description
特許文献1には、主面の一部に凹陥部を形成して高周波化を図った、所謂逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板のZ’軸方向の長さが、X軸方向の長さより長い、所謂Z’ロング基板を用いている。
特許文献2には、矩形状の薄肉の振動部の三辺に各々厚肉の支持部が連設され、前記薄肉の振動部の一辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。更に、水晶振動片は、ATカット水晶基板のX軸とZ’軸を、夫々Y’軸を中心に−120°〜+60°の範囲で回転させてなる面内回転ATカット水晶基板であり、振動領域を確保し、且つ量産性に優れた(多数個取り)構造であるという。
特許文献5には、矩形状の薄肉の振動部の隣接する二辺に各々厚肉の支持部が連設され、平面視でL字状に厚肉部が設けられ、前記薄肉の振動部の二辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。水晶基板にはZ’ロング基板が用いられている。
しかしながら、特許文献5においては、L字状の厚肉部を得るために、特許文献5の図1(c)、(d)に記載されているように線分αと、線分βに沿って厚肉部を削除しているが、当該削除はダイシング等の機械加工で削除することを前提としているため、切断面にチッピングやクラック等のダメージを負い、超薄部が破損してしまう問題がある。また、振動領域にスプリアスの原因となる不要振動の発生やCI値の増加等の問題が発生する。
特許文献6には、薄肉の振動部の一辺のみに厚肉の支持部が連設され前記薄肉の振動部の三辺が露出した構造を有する逆メサ構造のATカット水晶振動子が開示されている。
ところで、ATカット水晶振動子の振動領域に励振される厚み滑り振動モードは、弾性定数の異方性により振動変位分布がX軸方向に長径を有する楕円状になることが知られている。特許文献8には、圧電基板の表裏両面に表裏対称に配置された一対のリング状電極を有する厚みすべり振動を励振する圧電振動子が開示されている。リング状電極が対称零次モードのみを励起し、それ以外の非調和高次モードをほとんど励起しないように、リング状電極の外周の径と内周の径との差を設定したものである。
特許文献10には、水晶基板の長手方向(X軸方向)の両端部、及び電極のX軸方向の両端部の形状を共に半楕円状とし、且つ楕円の長軸対短軸の比(長軸/短軸)を、ほぼ1.26とした水晶振動子が開示されている。
特許文献11には、楕円の水晶基板上に楕円の励振電極を形成した水晶振動子が開示されている。長軸対短軸の比は、1.26:1が望ましいが、製造寸法のバラツキ等を考慮すると、1.14〜1.39:1の範囲程度が実用的であるという。
ところで、圧電振動子の小型化を図る際に、接着剤に起因する残留応力により、電気的特性の劣化や周波数エージング特性に不良が生じることがある。特許文献13には、矩形平板状のATカット水晶振動子の振動部と支持部との間に、切り欠きやスリットを設けた水晶振動子が開示されている。このような構造を用いることにより、残留応力が振動領域へ広がるのを抑制できるという。
特許文献14には、マウント歪(応力)を改善(緩和)するために、逆メサ型圧電振動子の振動部と支持部との間に切り欠きやスリットを設けた振動子が開示されている。特許文献15には、逆メサ型圧電振動子の支持部にスリット(貫通孔)を設けることにより、表裏面の電極の導通を確保した圧電振動子が開示されている。
また、特許文献17には、逆メサ型ATカット水晶振動子の薄肉の振動部と、厚肉の保持部との連設部、即ち傾斜面を有する残渣部に、スリットを設けることにより、スプリアスを抑圧する振動子が開示されている。
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、高周波化(100〜500MHz帯)を図ると共に、主振動のCI値を低減し、スプリアスCI値比等の電気的要求を満たした圧電振動素子、圧電振動子、電子デバイス、及び本発明の圧電振動子を用いた電子機器を提供することにある。
圧電振動素子1は、薄肉の振動領域12、及び振動領域12に連設された厚肉支持部13を有する圧電基板10と、振動領域12の両主面に夫々対向して形成された励振電極25a、25bと、励振電極25a、25bから夫々厚肉部支持部13に延長形成されたリード電極27a、27bと、リード電極27a、27bの夫々の終端に接続されたパッド電極29a、29bと、を備えている。ここで、振動領域とは振動エネルギーが閉じ込められている領域、即ち振動エネルギーがほぼ零となる領域の内側を言い、X軸方向の振動領域の寸法と、Z’軸方向の振動領域の寸法との比は周知のように、1.26:1である。また、振動部とは振動領域とその周縁部とを含んだ圧電基板全体をいう。
厚肉支持部13は、振動領域12の主面の対向する2つの辺12a、12bに沿って両主面側に夫々突設された第1の支持部14、及び第2の支持部15と、振動領域12の一方の主面側(表面側)において第1及び第2の支持部14、15の夫々の一端部間を連設し且つ該表面側のみに突設された第3の支持部16と、第3の支持部16と対向する振動領域12の他辺12dの他方の主面側(裏面側)に沿って突設された第4の支持部17と、を備えている。前記2つの辺12a、12bは前記振動領域12を挟んで平行に配置された辺を言う。
同様に、第2の支持部15は、薄肉平板状の振動領域12の一辺12bに連設し、両主面に夫々突設されている。振動領域12の一辺12bから外側へ離間するにつれて厚みが漸増する第2の傾斜部15bと、第2の傾斜部15bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第2の支持部本体15aと、を備えている。つまり、第2の支持部15は、図1(c)に示すように、振動領域12の主面の両面(表面、及び裏面)に突設して形成されている。尚、支持部本体(第1、及び第2の支持部本体14a、15a等)とは、Y’軸に平行な厚みが一定の領域をいう。
第4の支持部17は、薄肉の振動領域12の裏面側において、第3の支持部16と対向するように振動領域12の一辺12dに連設し、振動領域12の一辺12dから離間するにつれて厚みが漸増する第4の傾斜部17bと、第4の傾斜部17bの他端縁に連設する厚肉四角柱状の第4の支持部本体17aと、を備えている。また、第4の支持部17は、振動領域の裏面側において第1の支持部14と第2の支持部15の他端部間を連接している。つまり、第4の支持部17の一方の主面は、振動領域12の他方の主面(裏面)よりも突設して形成されている。そして、前記第4の支持部17の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは連続的に連接されており、同一面となるよう構成されている。なお、振動領域にメサ上の突出したエネルギー閉じ込め領域がある場合についても、振動領域の周縁部の主面が前記前記第4の支持部17の他方の主面と連続的に連接されており、同一面となるように構成されていればよい。
第3の支持部16と第4の支持部17とは、振動領域12の中点に対して点対称の関係にあり、第1、第2、第3及び第4の支持部は夫々の端部が連結されて、四角い環状を形成し、その中央部に振動領域12を保持している。
更に、圧電基板10は、第2の支持部15に少なくとも一つの応力緩和用のスリット20が貫通形成されている。図1に示した実施形態例では、スリット20は第2の傾斜部16bと第2の支持部本体16aとの境界部(連接部)に沿って第2の支持部本体16aの面内に形成されている。
このように、スリット20を第2の支持本体15aの前記境界部(連接部)へ寄せて配置したので、第2の支持部本体15aの被支持部(パッド電極)29aの面積を広く確保することができ、塗布する導電性接着剤の径を大きくすることができる。これに対して、スリット20が第2の支持本体15aの被支持部(パッド電極)29a寄りに配置されると、被支持部(パッド電極)29aの面積が狭くなり、導電性接着剤の径を小さくしなければならない。その結果、導電性接着剤内に含まれる導電フィラーの絶対量も減り、導電性が悪化し、圧電振動素子1の共振周波数が安定しなくなり周波数変動(通称、F飛び)が発生しやすくなる虞がある。
従って、スリット20は第2の支持本体15aの前記境界部(連接部)へ寄せて配置することが好ましい。
なお、第1、及び第2の支持本体14a、15a夫々の一方の面(表面)と、第3の支持本体16aの一方の面(表面)とは同一平面上にあり、第1、第2の支持本体14a、15a夫々の他方の面(裏面)と、第4の支持本体17aの面(裏面)とは同一平面上にある。
尚、本発明に係る圧電基板は、前記角度θが略35°15′のATカットに限定されるものではなく、厚みすべり振動を励振するBTカット、等の圧電基板にも広く適用できるのは言うまでもない。
圧電基板10を駆動する励振電極25a、25bは、図1に示す実施形態例では四角形状であり、振動領域12のほぼ中央部の表裏両面に対向して形成されている。図1(b)に示すように、裏面側の励振電極25bの面積は、表面側の励振電極25aの面積に対し、十分に大きく設定する。これは、励振電極の質量効果によるエネルギー閉じ込め係数を、必要以上に大きくしないためである。つまり、裏面側の励振電極25bの面積を十分に大きくすることにより、プレートバック量Δ(=(fs−fe)/fs、ここでfsは圧電基板のカットオフ周波数、feは圧電基板全面に励振電極を付着した場合の周波数)は、表面側の励振電極25aの質量効果のみに依存する。
表面側に形成した励振電極25aは、振動領域12上から第3の傾斜部16bと、第3の支持部本体16aとを経由するリード電極27aにより、第2の支持部本体15aの表面に形成されたパッド電極29aに導通接続されている。また、裏面側に形成された励振電極25bは、振動領域12上から第4の傾斜部17bと、第4の支持部本体17aとを経由するリード電極27bにより、第2の支持部本体15aの裏面に形成されたパッド電極29bに導通接続されている。
また、図1の実施形態例では、圧電基板10の表裏両面に近接して夫々パッド電極29a、29bを形成する例を示した。圧電振動素子1をパッケージに収容する際に、圧電振動素子1を裏返し、パッド電極29aを固定し、パッド電極29bと、パッケージの電極端子とをボンディングワイヤーで接続する。このように支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
また、圧電振動素子1のパッド電極29a、29bを、上記例よりも大きな間隔をあけて形成してもよい。
即ち、導電性接着剤を用いて圧電振動素子のパッド電極をパッケージに支持する場合には、まず第2の支持部本体15aの被支持部(パッド電極)29aに導電性接着剤を塗布し、これを反転してパッケージ等の素子搭載パッドに載置し、少し押さえる。導電性接着剤を硬化させるために高温の炉内に所定の時間保持する。高温状態では第2の支持部本体16a、及びパッケージも共に膨張し、接着剤も一時的に軟化するので、被支持部(パッド電極)29aには応力は生じない。導電性接着剤が硬化した後、第2の支持部本体16a、及びパッケージが冷却してその温度が常温(25℃)に戻ると、導電性接着剤、パッケージ、及び第2の支持部本体16aの各線膨張係数の差により、硬化した道電性接着剤から生じる応力が被支持部(パッド電極)29aに伝わり、更に第2の支持部本体16aから第1及び第3の支持部14、18、振動領域12へと広がる。この応力の広がりを防止するために応力緩和用のスリット20を設けている。
導電性接着剤としては、シリコーン系、エポキシ系、ポリイミド系、ビスマレイミド系等があるが、圧電振動素子1の脱ガスによる周波数経年変化を考慮に入れて、ポリイミド系の導電性接着剤を用いる。ポリイミド系の導電性接着剤は硬いので、圧電振動素子1を離れた二カ所で支持するよりも一カ所で支持する方が、発生する応力の大きさを低減できる。目標とする490MHz帯の電圧制御型圧電発振器(Voltage Controlled Crystal Oscillator:VCXO)用の圧電振動素子1には、一カ所支持を用いた。
つまり、パッド電極29aに導電性接着を塗布し、反転して収容するパッケージの素子搭載パッドに載置し、乾燥して固定・接続し、他方のパッド電極29bにはボンディングワイヤーを用いて導通・接続することにした。図1(a)に示すように、パッド電極29aと、パッド電極29bとは、ほぼ対向して形成されているので、一カ所支持となる。
また、図1に示した実施形態例では、薄肉の振動領域12は文字通り矩形をしているが、薄肉の振動領域12の第3の支持部16に連接する一辺12cの両端部に相当する両角隅部が面取りされていてもよい。
図4に示す実施形態例は、図中表面側の励振電極25aが楕円形であり、図中裏面側の励振電極25bは、励振電極25aより十分に面積が大きい四角形である。弾性定数の異方性によりX軸方向の変位分布と、Z’軸方向の変位分とが異なり、変位分布をX−Z’平面に平行な面で切った切断面は、楕円形になる。そのため、楕円形状の励振電極25aを用いた場合が最も効率よく、圧電振動素子1を駆動できる。即ち、圧電振動素子1の容量比γ(=C0/C1、ここで、C0は静電容量、C1は直列共振容量)を最小にできる。
また、励振電極25aは長円形であってもよい。
圧電振動素子2が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、応力緩和用のスリット20を設ける位置にある。本実施例では、スリット20が薄肉の振動領域12の一辺12bより離間した第2の傾斜部15b内に形成されている。振動領域12の一辺12bに沿って、スリット20の一方の端縁が、辺12bに接するように第2の傾斜部15b内にスリット20を形成するのではなく、第2の傾斜部15bの両端縁より離間してスリット20を設けている。つまり第2の傾斜部15bには、振動領域12の一辺12bの端縁と連接する極細の細片15b’が残されている。換言すれば、一辺12aとスリット20との間に極細の細片15b’が形成されている。
圧電振動素子3が図1に示す圧電振動素子1と異なる点は、第2の支持部15に2個の応力緩和用のスリットが並行に設けられている点である。即ち、第2の支持部本体15aの面内に第1のスリット20aが設けられると共に、第2の傾斜部15bの面内に第2のスリット20bが形成されている。第2の支持部本体15aの面内、及び第2の傾斜部15bの面内に夫々個別のスリットを形成することは、既に説明したので、ここでは省略する。
図6(a)に示す平面図のように、第1のスリット20a、及び第2のスリット20bを単にX軸方向に並置するのではなく、図7(a)の平面図に示すように、Z’軸方向に互い違いになるようにずらして配置してもよい。2個のスリット20a、20bを設けた圧電振動素子3の方が、導電性接着剤に起因して生じる応力を、振動領域12まで広げないように抑圧する効果を高めることが可能である。また、図7(b)に示す変形例の構成は、図1、図6に夫々示すスリット20の効果を合わせ持つようにした圧電振動素子であり、スリット20は、第2の傾斜部15bと第2の支持本体15aとに跨って構成されている。
工程S2では、表裏面の金属膜Mの上に夫々フォトレジスト膜(レジスト膜と称す)Rを両面に塗布する。工程S3では、露光装置とマスクパターンを用いて、表裏面の凹陥部に相当する部位のレジスト膜Rを露光する。感光したレジスト膜Rを現像して感光したレジスト膜を剥離すると、表裏面の凹陥部に相当する位置の金属膜Mが夫々露出する。夫々のレジスト膜Rから露出した各金層膜Mを王水等の溶液を用いて溶かして除去すると、表裏面の凹陥部に相当する位置の水晶面が露出する。
工程S8では、露光装置と所定のマスクパターンを用いて、圧電基板10の外形とスリット(図示せず)とに相当する部位の各レジスト膜Rを表裏両面から感光し、現像して、各レジスト膜Rを剥離する。更に、露出した金属膜Mを王水等の溶液で溶かして除去する。
工程S10が終了した後、水晶ウェハー10Wに格子状に規則的に並んだ各圧電基板10の振動領域12の厚さを、例えば光学的手法を用いて計測する。計測した各振動領域12の厚さが所定の厚さより厚い場合には、夫々厚さの微調整を行って所定の厚さの範囲に入るようにする。
そこで、本発明者は、本発明に係る圧電振動素子をフォトリソグラフィー技法と、ウェットエッチング技法とを用いて製造するに当たり、エッチングシミュレーションと、試作実験、並びにナノレベルでの表面分析と、観察とを繰り返し、本発明に係る圧電振動子は以下の態様となることが判明したので、以下詳細に説明をする。
上側の凹陥部11の底面と、下側の凹陥部11’との底面により形成される振動領域12の両面は、水晶ウェハーの元の平面と平行にエッチングされる。つまり、振動領域12は表裏面が平行な平板状となる。
図10(e)は、水晶ウェハー10Wに形成した折り取り用の溝部の断面図で、図8の工程S9におけるエッチング工程で形成される。X軸に直交して形成された溝部の断面は楔型を呈している。これは基板10の上側の溝部の壁面X3が、−X軸方向の壁面X1と、+X軸方向の壁面X2とで形成されるために、楔型となるのである。基板10の下側の溝部は、ほぼ振動領域12の中心に関し、上側の溝と点対称に形成される。
凹陥部11、11’が形成された面に電極を設ける場合は、+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面に注意する必要がある。電極膜の断裂が起り易いので避ける方が望ましい。
図11(d)は外形加工が施された後の圧電基板10の外形断面図であり、同図(c)の2つの破線Zc1、Zc2の所からエッチングにより外形加工されたものである。図8の工程S9のエッチング工程で外形が形成され、−Z’軸方向(図中左方)の端部に第3の支持部本体16a及び第3の傾斜部16bからなる第3の支持部16が形成され、+Z’軸方向(図中左右方)の端部に第4の支持部本体17a及び第4の傾斜部17bからなる第4の支持部17が形成される。第3の支持部16と第4の支持部17とは、振動領域12の中心に関しほぼ点対称に形成される。
X軸方向、Z’軸方向に折り取り用溝部を形成すると、その断面形状は楔型となり、折り取りが容易である。
本発明の特徴は、圧電基板10の両主面よりエッチングを進め、両主面に夫々対向する凹陥部11、11’を形成して振動領域12とした点にあり、エッチングに要する加工時間を半減することが可能となった。また、図11(d)に示すように、Zc1、Zc2で示す2つの破線の図中外側を共にエッチングにより取り去ることにより、圧電基板の小型化が図れたことも特徴の一つである。圧電基板10の両主面よりエッチングを進めるので、圧電基板10の夫々の主面からエッチングにより掘られる深さを浅くすることができるので、製造時に、ウェハー内の各個片がレイアウトされている領域間で、或いはウェハー間において、薄肉となる振動部の厚みのバラツキを低減することができた。この理由として、圧電基板10をエッチング溶液の中に長時間、浸していると、エッチング溶液内での溶液の濃度に差が生じる虞があり、当該濃度差に起因して、圧電基板10に対するエッチングの均一性が保てなくなる虞があり、ウェハー内の各個片がレイアウトされている領域間で、或いはウェハー間で前記振動部の厚みのバラツキが発生してしまい、厚みの制御が困難となる問題があるからである。
また、更に前述したように、ATカット水晶基板のX軸方向の両端に力を加えた(実装に起因した応力・歪みを前記力として説明している)ときの周波周変化と、Z’軸方向の両端に同じ力を加えたときの周波周変化と、を比べると、Z’軸方向の両端に力を加えたときの方の周波周変化量を小さくできるため、圧電基板10のX軸方向の長さをZ’軸方向の長さより長い、所謂Xロングとしたので、X軸方向に振動部の面積を広く確保することができた。
また、本発明に係る圧電振動素子1の振動部の全周に亘って、振動部の主面に対して表裏のうちの少なくともどちらか一方には厚肉の支持部を設けているので、振動部の端部が外部に露出することがないので、圧電振動素子1の製造時や、圧電振動素子1を容器に実装し、圧電振動子を製造する過程、等で圧電振動素子1を何かにぶつけてしまう等による圧電振動素子1の耐衝撃性等の信頼性の観点でも、強度を高く維持しているので、信頼性を高く維持することができている。
この結果、振動領域に励振される厚み滑り振動モードの変位分布が、弾性定数の異方性によりX軸方向に長径を有する楕円状となることを十分に考慮して設計することが可能となり、長軸対短軸の比を、1.26:1、製造寸法のバラツキ等を考慮して、1.14〜1.39:1の範囲程度となるように十分設計可能となった。
また、傾斜面1、2共に、圧電基板の主表面と交わる付近には、図10(b)、(e)に示すような+X軸方向に形成される壁面X2の垂直の壁面は現出していない。この理由は、凹陥部11を形成するのに要するエッチング時間に比べて、傾斜面1と傾斜面2の形成に要する時間は、圧電基板(水晶基板)を表裏からエッチングし、貫通するまでエッチングするので、エッチング時間が十分に長いため、オーバーエッチングの作用により垂直の壁面が現出しないのである。
傾斜面1を構成する傾斜面a1、a2は、X軸に対してほぼ対称関係にあり、傾斜面2を構成する傾斜面b1、b2、b3、b4では、b1とb4、b2とb3とが、各々X軸に対してほぼ対称関係にあることが判明した。更に、傾斜面a1、a2のX軸に対する傾斜角度αと、傾斜面b1、b4のX軸に対する傾斜角度βとは、β<αの関係にあることが分かった。
また、圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
図6の実施形態例に示すように、第2の支持部に2つのスリットを設けることにより、圧電振動素子を接着・固定する際に生じる応力の広がりを、よりよく抑圧することができるため、周波数再現性、周波数温度特性、CI温度特性、及び周波数エージング特性に優れ圧電振動素子が得られるという効果がある。
また、図1、図5、図6のように振動領域に接してその端部に突設部を設けることにより圧電振動素子の耐衝撃性、耐振動性が強化されるという効果がある。
また、圧電基板に水晶ATカット水晶基板を用いることにより、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技法に関する永年の実績・経験が活用できるので、圧電基板の量産が可能であるのみならず、高精度の圧電基板が得られ、圧電振動素子の歩留まりが大幅に改善されるという効果がある。
また、図1に示すように、第2の支持部15が、振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部15bと、この第2の傾斜部15の他方の端縁に連設する第2の支持部本体15aと、を有するように構成すれば、高周波で基本波の圧電振動素子が小型化されると共に、振動部の支持が強固であり、振動、衝撃等に強い圧電振動素子が得られるという効果がある。
パッケージ本体40は、図14に示すように、第1の基板41と、第2の基板42と、第3の基板43とを積層して形成されており、絶縁材料として、酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し、箱状とした後で、焼結して形成される。実装端子45は、第1の基板41の外部底面に複数形成されている。第3の基板43は中央部が除去された環状体であり、第3の基板43の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング44が形成されている。
圧電振動子5を固定する際にはまず、圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤30を塗布し、これを反転してパッケージ本体40の素子搭載パッド47に載置して荷重をかける。導電性接着剤30の特性として、接着剤30に起因する応力(∝歪)の大きさは、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤の順で大きくなる。また、脱ガスは、ポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤の順で大きくなる。導電性接着剤30としては経年変化を考慮して脱ガスの少ないポリイミド系接着剤を用いることにした。
アニール処理を施した後、励振電極25a、25bに質量を付加するか、又は質量を減じて周波数調整を行う。パッケージ本体40の上面に形成したシールリング44上に、蓋部材49を載置し、真空中か窒素N2ガス中で蓋部材49をシーム溶接して密封する。または、パッケージ本体40の上面に塗布した低融点ガラスに蓋部材49を載置し、溶融して密着する方法もある。パッケージのキャビティ内は真空にするか、又は窒素N2ガス等の不活性ガスで充填して、圧電振動子5は完成される。
パッド電極29bとパッケージの電極端子48とをボンディングワイヤーを用いて電気的に接続している。このように圧電振動素子1を支持する部位が一点になると、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。
以上の圧電振動子5の実施の形態例では、パッケージ本体40に積層板を用いた例を説明したが、パッケージ本体40に単層セラミック板を用い、蓋体に絞り加工を施したキャップを用いて圧電振動子を構成してもよい。
また、図15の実施形態例に示すように、二点支持の圧電振動子を構成することにより、低背化した圧電振動子5を得ることができるという効果がある。スリットを2つ設けることで二点支持に起因した支持応力の振動部への影響を抑圧できる。
また、圧電振動素子1とサーミスタThとをパッケージ40aに収容した例を説明したが、パッケージ40aに収容する電子部品としては、サーミスタ、コンデンサー、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つを収容して電子デバイスを構成することが望ましい。
また、電子部品に可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかを用いて電子デバイス(圧電デバイス)を構成すると、要求仕様により適した電子デバイスが、小型で且つ低コストで実現できるという効果がある。
圧電振動素子1のパッド電極29aに導電性接着剤(ポリイミド系)30を塗布し、これを反転してパッケージ本体40bの素子搭載パッド47に載置し、パッド電極29aと素子搭載パッド47との導通を図る。上面側になったパッド電極29bと、パッケージ本体40bの他の電極端子48とをボンディングワイヤーにて接続し、IC部品51の1つの電極端子55との導通を図る。IC部品51をパッケージ本体40bの所定の位置に固定し、IC部品51の端子と、パッケージ本体40bの電極端子55とをボンディングワイヤーBWにて接続する。また、電子部品52は、パッケージ本体40bの所定に位置に載置し、金属バンプ等を用いて接続する。パッケージ本体40bを真空、あるいは窒素等の不活性気体で満たし、パッケージ本体40bを蓋部材49で密封して圧電発振器7を完成する。
パッド電極29aとパッケージの電極端子とをボンディングワイヤーBWで接続する工法は、圧電振動素子1を支持する部位が一点になり、導電性接着剤に起因して生じる応力を小さくすることが可能である。また、パッケージに収容するに当たり、圧電振動素子1を裏返して、より大きな励振電極25bを上面にしたので、電子デバイス(圧電発振器)7の周波数微調が容易となる。
本発明の電子デバイス(圧電発振器)7は、圧電振動素子1と、IC部品51及び電子部品52とを分離し、圧電振動素子1を単独で気密封止しているために、圧電発振器7の周波数エージングに優れている。
また、圧電デバイスとして圧電発振器、温度補償型圧電発振器、及び電圧制御型圧電発振器等を構成することが可能であり、周波数再現性、エージング特性が優れた圧電発振器、周波数温度特性に優れた温度補償圧電発振器、周波数が安定で可変範囲の広く且つS/N比(信号雑音比)の良好な電圧制御型圧電発振器を構成することが得られるという効果がある。
図19の模式図に示すように、本発明の圧電振動子を電子機器の用いることにより、高周波で周波数安定度に優れ、S/N比の良好な基準周波数源を備えた電子機器が構成できるという効果がある。
圧電振動素子の実装に起因した応力を更に軽減、抑圧する手法として、以下に示すごとき構造を採用することができる。
図20(a)の実施形態における圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、前記薄肉部の周縁に設けられ、当該薄肉部よりも厚い厚肉部とを備えた圧電基板10であって、圧電基板においては、厚肉支持部13には、縁辺の方向に緩衝部Sを介してマウント部Fが横並びで接続され、緩衝部Sは、マウント部と厚肉支持部との間にスリット20を有し、マウント部Fは、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、面取り部21を有していることを特徴とする。
図20(b)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられ、薄肉部よりも厚い厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sを介してマウント部Fが横並びで接続され、緩衝部Sは、マウント部Fと厚肉支持部13との間にスリット20を有し、マウント部は、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に切欠き部22を有し、スリット20の長手方向は直交方向と平行であり、マウント部Fの直交方向の幅を、スリットの長手方向の幅より狭く、スリットの長手方向の両端部は、マウント部Fの両端部よりも緩衝部Sの直交方向の外周寄りにあることを特徴とする。
図20(c)の圧電基板10は、振動領域12を有する薄肉部と、薄肉部の周縁に設けられた厚肉支持部13とを備えた圧電基板10であって、厚肉支持部13には、緩衝部Sとマウント部Fが順に連結され、緩衝部Sは、マウント部Fと厚肉支持部13との間にスリット20を有し、マウント部Fは、マウント部Fと緩衝部Sと厚肉支持部13との並ぶ方向に対して直交方向の両端部に、切欠き部22を有していることを特徴とする。
なお、図20、図21においては、厚肉支持部13の各支持部14、15、16の内壁に傾斜部が図示されている一方で、また厚肉支持部13の外側の側壁面には図12に示した如き傾斜面が図示されていないが、これらの傾斜部、傾斜面は図12に示しているように対応する部位に形成されることになる。
なお、図20、図21中の各符号は、上記各実施形態の同じ符号が示す部位と対応している。
更に、図22(a)は圧電振動素子1の平面図であり、同図(b)は圧電振動素子1のパッド電極29a(マウント部F)の実施形態例の拡大図平面図を示し、同図(c)はマウント部Fの断面図を示している。このマウント部Fにおいては、接着強度を向上させるために凹凸状とすることによって面積を稼いでいる。
Claims (14)
- 振動領域を含む振動部と、
当該振動部と一体化され、前記振動部の厚みよりも厚い支持部と、
を有する圧電基板と、
前記振動領域に表裏で対向するように配置された一対の励振電極と、
を有する圧電振動素子であって、
前記支持部は、
前記振動部の主面の対向する2つの辺に沿って前記振動部を挟むように夫々設けられた第1の支持部と第2の支持部と、
当該第1、第2の支持部の各々の一方の端部を連設する第3の支持部と、
前記第1、第2の支持部の各々の他方の端部を連設する第4の支持部と、
を備え、
前記第1、第2の支持部の表裏の主面は前記振動部の表裏の主面よりも突設され、
前記第3の支持部の一方の主面は前記振動部の一方の主面よりも突設され、
前記第3の支持部の他方の主面と前記振動部の他方の主面とは同一面であり、
前記第4の支持部の一方の主面は前記振動部の他方の主面よりも突設され、
前記第4の支持部の他方の主面と前記振動部の一方の主面とは同一面であることを特徴とする圧電振動素子。 - 前記圧電基板は、
水晶の結晶軸である電気軸としてのX軸と、機械軸としてのY軸と、光学軸としてのZ軸と、からなる直交座標系の前記X軸を中心として、
前記Z軸を前記Y軸の−Y方向へ所定の角度だけ傾けた軸をZ’軸とし、
前記Y軸を前記Z軸の+Z方向へ前記所定の角度だけ傾けた軸をY’軸とし、
前記X軸と前記Z’軸に平行な面で構成され、
前記Y’軸に平行な方向を厚みとする水晶基板であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。 - 前記第3の支持部の突設部が、前記Z’軸のプラス側にあり、
前記第4の支持部の突設部が、前記Z’軸のマイナス側にあることを特徴とする請求項2に記載の圧電振動素子。 - 前記第2の支持部は、
前記振動部と連設した一方の端縁から他方の端縁に向かって離間するにつれて厚みが増加する第2の傾斜部と、
当該第2の傾斜部の前記他方の端縁に連設する第2の支持部本体と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項に圧電振動素子。 - 前記第2の支持部には、
少なくとも一つのスリットが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の圧電振動素子。 - 前記スリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。 - 前記スリットは、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。 - 前記スリットは、
前記第2の支持部本体に配置された第1のスリットと、
前記第2の傾斜部内に前記振動領域の一辺から離間して配置された第2のスリットと、
を備えていることを特徴とする請求項5に記載の圧電振動素子。 - 前記第1のスリットは、
前記第2の傾斜部と前記第2の支持部本体との境界部に沿って前記第2の支持部本体に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の圧電振動素子。 - 請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、
該圧電振動素子を収容するパッケージと、
を備えたことを特徴とする圧電振動子。 - 請求項1乃至9のうち何れか一項に記載の圧電振動素子と、
電子部品と、
をパッケージに備えたことを特徴とする電子デバイス。 - 前記電子部品は、
可変容量素子、サーミスタ、インダクタ、コンデンサーのうちの何れかであることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。 - 前記圧電振動素子を励振する発振回路を前記パッケージに備えたことを特徴とする請求項11又は12に記載の電子デバイス。
- 請求項10に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器。
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