熱電変換素子は、一般に熱電変換材料の上部と下部に電極を有する構造であり、電極間に直流電圧が印加され電流が熱電変換材料を流れると、一方の電極で吸熱が生じ、他方の電極で発熱が生じる。例えば上部電極で吸熱が生じた場合、下部電極では発熱が生じる。電流の向きが逆になれば吸熱と発熱も逆になる。ここで、本明細書において、その作用から前者を吸熱作用部、後者を発熱作用部と呼ぶ。また、例えば発電素子として使用する場合、例えば上部電極を低温に、下部電極を高温にすると、この熱電変換素子は、その温度差を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換して発電するので、この作用から前者を低温作用部、後者を高温作用部とも呼ぶ。
本発明の熱電変換素子は、第1電極と、前記第1電極上に絶縁体を挟んで互いに離れて形成されたP型及びN型熱電変換部と、各熱電変換部上にそれぞれ形成された第2及び第3電極とを備え、前記P型及びN型熱電変換部が少なくとも断熱材料よりなる断熱層を有することを特徴とする。
また、本発明の熱電変換素子において、前記P型及びN型熱電変換部が、少なくとも熱電変換材料層及び断熱材料よりなる断熱層とを有し、2層以上に積層された層を有することを特徴とするものであってもよい。
また、本発明の熱電変換素子において、前記P型及びN型熱電変換部が、熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層の順で積層されていることを特徴とするものであってもよい。
本発明の熱電変換素子は、断熱層により高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるため高い熱電変換効率が得られる。
ここで、熱電変換材料は、周知の熱電変換材料であればよく、特に材質を限定するものではない。例えばBi-Te系材料、Bi-Se系材料、Sb-Te系材料、Pb-Te系材料、Ge-Te系材料、Bi-Sb系材料、Zn-Sb系材料、Co-Sb系材料、Ag-Sb-Ge-Te系材料、Si-Ge系材料、Fe-Si系材料、Mg-Si系材料、Mn-Si系材料、Fe-O系材料、Zn-O系材料、Cu-O系材料、Na-Co-O系材料、Ti-Sr-O系材料、Bi-Sr-Co-O系材料等、一般的に知られる熱電変換材料をいう。
なお、これらの熱電変換材料よりなる熱電変換材料層は、所定の原料を溶融して製造した焼結体を切り出した板状の熱電変換材料であっても良いし、多周知の蒸着法、スパッタリング法、CVD法で形成された層であっても良い。また、後述するが、断熱材をBi-Te系材料を溶融した浴槽にディップすることにより断熱層の表面と離面に熱電変換材料層を形成しても良い(溶融ディップ法)。あるいは、熱電変換材料をペースト化し、ペーストを印刷法により塗布印刷し加熱することにより熱電変換材料層を形成してもよい。熱電変換材料層の厚みは0.5〜10mm程度である。印刷法で形成する場合は、所望の厚みのマスク(枠)を準備しペーストを塗布印刷し150℃程度の温度で乾燥後、マスク(枠)を外し高温で加熱焼成を行うことにより層形成する。
断熱層としては、熱伝導率が0.5W/(m・K)以下、好ましくは0.3W/(m・K)以下の断熱材料を使用することが好ましい。また、製造上の制約により発火点550℃以上の耐熱性を有することが好ましい。具体的な断熱材料としては、シリカ、多孔質シリカ、ガラス、ガラスウール、ロックウール、けいそう土、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、或いは中空粒子形状の無機粒子等があげられる。また、断熱層として、市販されているガラスウールやロックウールをフェノール樹脂やメラミン樹脂で固めた断熱材基板をそのまま使用しても良い。
また、本発明の熱電変換素子において、前記断熱層は断熱材料よりなる層であり、該断熱材料よりなる層は貫通孔を有し、貫通孔には熱電変換材料が充填されていることを特徴とするものであってもよい。
上記の断熱材基板に貫通孔を形成して、貫通孔に熱電変換材料を充填する工程を経て、断熱材層と熱電変換材料層を積層した熱電変換素子を作製する。貫通孔に熱電変換材料を充填することで、熱電変換素子としての電気的接触が確保される。貫通孔の形成は機械的にドリル等で貫通孔を設けても良いし、レーザー光の照射で貫通孔を形成してもよい。
このように貫通孔内に熱電変換材料を充填することで、断熱層と熱電変換材料層を経て両電極間の電気的接触が得られ、かつ熱電変換材料を微細な貫通孔を用いて断熱材料で覆ってしまうので、熱電変換材料が元来有する格子振動による熱伝導を抑制する効果が生じる。また、断熱材により熱伝導する熱量:QKを低減できるので高効率な熱電変換素子として駆動することができる。
また、本発明の熱電変換素子において、前記断熱層は断熱材料よりなる層であり、該断熱材料よりなる層は貫通孔を有し、貫通孔には熱電変換材料が充填されていることを特徴とするものであってもよい。
このように孔内(多孔質材)に熱電変換材料を充填することで、断熱層と熱電変換材料層を経て両電極間の電気的接触が得られ、かつ熱電変換材料を微細な孔(多孔質材)を用いて断熱材料で覆ってしまうので、熱電変換材料が元来有する格子振動による熱伝導を抑制する効果が生じる。また、断熱材により熱伝導する熱量:QKを低減できるので高効率な熱電変換素子として駆動することができる。
また、本発明の熱電変換素子において、前記断熱層の多孔質材は、断熱材微粒子及び断熱材料を粉砕して微粒子化した粉末のうち少なくとも1つと、樹脂粒子とを混合し、有機溶媒及び樹脂のうち少なくとも1つを加えて混練することにより作製したペーストを印刷後、焼成して前記樹脂粒子を燃焼消失させることによって形成された多孔質材であることを特徴とするものであってもよい。この製造方法により簡易に断熱性を有する多孔質材を形成することができ熱電変換素子に使用することができる。
また、本発明の熱電変換素子において、前記断熱層を形成する断熱材料が、シリカ、多孔質シリカ、ガラス、ガラスウール、ロックウール、けいそう土、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、或いは中空粒子形状の無機粒子の群より選択されることを特徴とするものであってもよい。
詳細な多孔質材の形成方法としては、上記の断熱材基板やガラス等をボールミル等の粉砕機で粉砕して製造した断熱材粉末、或いは多孔質シリカ粒子、けいそう土、中空粒子形状の無機粒子等の断熱材微粒子に、樹脂粒子と、熱電変換材料粉末を混合後、有機溶媒やバインダーを加えて混練することによりペースト化し、このペーストを断熱材層の形成位置に塗布印刷し、加熱することによりペーストに添加されている樹脂粒子を燃焼消失させることで多孔質な断熱層を形成しても良い。樹脂粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等の粒子を使用することができるが、350℃で略完全に消失するポリメチルメタクリレートが好ましい。また、中空粒子形状の無機粒子としては、中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子や中空チタニア粒子等が知られている。
本発明では貫通孔や孔(多孔質材)に熱電変換材料を充填しているが、貫通孔や孔(多孔質材)に充填する材料としては、半導体の性質を有する導電材料であればよい。金属のような価電子帯と伝導帯が近接している材料を使用した場合、熱電変換材料層との接触部分で発熱が生じ熱電変換効率を低下させてしまう。熱電変換材料の伝導帯はエネルギー的に高い位置に存在するので、熱電変換材料から金属へキャリアが移動する際、エネルギー的に高い伝導帯から低い伝導帯にキャリアが移動することとなり発熱が生じるためである。貫通孔や孔(多孔質材)に充填する材料としては、半導体の性質を有する電荷輸送材料であれば使用することができる。電荷輸送材料を使用する場合、n型熱電変換部には電子輸送材料を、p型熱電変換部には正孔輸送材料を使用することが好ましい。
このような断熱材料からなる微細な孔に熱電変換材料や導電材料を充填する方法は、熱電変換材料や導電材料が元来有する格子振動による熱伝導を抑制する働きが生じるため効果的に熱伝導率を減少させることが可能となる。
また、このような断熱材料からなる微細な孔に熱電変換材料や導電材料を充填する方法は、特に大面積化を図った素子において有効である。ここで大面積化を図った素子とは一つの熱電変換部の断面積が約25cm2以上である熱電変換部を有する熱電変換素子を意味する。この程度の面積を有する場合、熱電変換部に断熱材料を使用した上記の断熱層を形成しても電気伝導性を低下させすぎることなく、熱伝導率の減少を効果的に引き出すことが可能となり熱電変換効率の改善が図れる。
また、本発明の熱電変換素子において、前記各熱電変換部は、さらにグラファイト層を有することを特徴とするものであってもよい。
このグラファイト層の導電異方性を利用することにより、熱電変換素子の高温作用部(発熱作用部)と低温作用部(吸熱作用部)を立体配置的に離間させること、及び熱伝導部分と電気伝導部分を立体配置的に離間させることが可能となる。その立体配置により、高温作用部と低温作用部間を熱伝導する熱量:QKを抑制することができ熱電変換効率が改善され、大面積化を図った素子で構成される熱電変換素子を実現できる。
異方性導電材料層としては、グラファイトが一般的であるが、低導電性材料層の表面に高導電性材料のコート層を形成した異方性導電材料層でもよい。
グラファイトはab面内で高い導電率を示し、c軸方向で低い導電率を示す特性を有する。同様に、低導電性材料層の表面に高導電性材料のコート層を形成した異方性導電材料層もまた、層面上で高い導電率を示し、厚み方向で低い導電率を示す特性を有する。
グラファイトを使用する場合は、一般的に市販されているグラファイトシートを用いて形成してもよい。グラファイトシートには、天然黒鉛から製造したシートと、ポリイミド等の高分子シートをグラファイト化させたシートがあるが、どちらも市販されており特性的にも大きな違いはないので、いずれを用いてもよい。
また、本発明の熱電変換素子において、前記各熱電変換部は、熱電変換材料層、下部グラファイト層、断熱層、上部グラファイト層、熱電変換材料層の順で積層された構造を有し、下部グラファイト層及び上部グラファイト層は断熱層の側面で繋がる一枚のシートからなることを特徴とするものであってもよい。
断熱層とグラファイト層の導電異方性を併用することにより、熱電変換素子の熱伝導部分と電気伝導部分を立体配置的に離間させることが可能となり、高温作用部(発熱作用部)と低温作用部(吸熱作用部)間の熱伝導性を抑制することができる。
また、本発明の熱電変換素子において、前記断熱層は空洞部分を有する筒状の中空構造であることを特徴とするものであってもよい。
空気の熱伝導率はグラスウール等の一般的な断熱材料の熱伝導率よりも低く、中空構造の断熱材料を使用することは熱伝導性の抑制に非常に有効である。
また、空洞部分の内部が真空または断熱性の気体を有するものであってもよい。
また、本発明の熱電変換素子において、前記各熱電変換部は、熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層、グラファイト層の順で積層された構造を有することを特徴とするものであってもよい。
グラファイト層の上部に小さな面積の電極を形成することで、高温作用部(発熱作用部)と低温作用部(吸熱作用部)を立体配置的に離間させることが可能となり熱伝導性を抑制することができる。
また、本発明の熱電変換素子において、前記P型及びN型熱電変換部は、少なくとも断熱層及びグラファイト層を有し、前記グラファイトが積層構造からはみ出してなる延在部を有し、前記延在部上に電極を有することを特徴とするものであってもよい。
グラファイト層の延在部に電極を形成することで、高温作用部(発熱作用部)と低温作用部(吸熱作用部)を立体配置的に離間させることが可能となり、より熱伝導性を抑制することができる。
また、本発明は、熱電変換発電素子とペルチェ素子を組み合わせてなる熱電変換発電装置であり、前記熱電変換発電素子は前記熱電変換素子であり、及び前記ペルチェ素子は、前記熱電変換素子であり、前記ペルチェ素子により前記熱電変換発電素子の低温部を吸熱し、且つ該熱電変換発電素子の高温部あるいは高温部に接触する熱だめとなる対象物に放熱し、該熱電変換発電素子で発電することを特徴とする熱電変換発電装置であってもよい。
本発明の熱電変換発電装置は、本発明のペルチェ素子を使用することにより、熱電変換発電素子の低温作用部から吸熱しつつ、熱電変換発電素子の高温作用部に放熱することが容易にでき、熱電変換発電素子の高温作用部と低温作用部との間に安定した温度差を確保することができるようになる。従来、常温の空間において、温度差が大きくないため高温作用部から低温作用部に熱伝導してきた熱エネルギーは、低温作用部に蓄積されすぐに高温作用部と低温作用部の温度差がなくなってしまう。そのため、常温の空間において温度差を利用する熱電変換発電を行うことは困難であった。しかし、本発明の熱電変換発電装置においては本発明のペルチェ素子を使用することにより、低温作用部に熱伝導してきた熱エネルギーを再び高温作用部に戻してやることができるので、常温の空間において小さな温度差でも確実に温度差を利用して発電することが可能となる。
次に、図面を用いて、実施形態に係る熱電変換素子について説明する。
〔実施形態1〕
図1は本発明の実施形態1に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図1において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるA−A線断面図、(3)が下面図である。
図1に示すように、実施形態1に係る熱電変換素子1Aは、導電性基板2(第1電極)と、導電性基板2上に形成されたN型熱電変換部及びP型熱電変換部と、N型熱電変換部上に形成された電極8A及びP型熱電変換部上に形成された電極8B(第2及び第3電極)とで構成されている。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4A、N型熱電変換材料層6Nの順で、P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4B、P型熱電変換材料層6Pの各層の順で、それぞれ導電性基板2上に積層されている。断熱層4Aには貫通孔7Aが、断熱層4Bには貫通孔7Bが形成されている。また、N型熱電変換部とP型熱電変換部は、絶縁層9(絶縁体)を挟み、互いに離れて配置されている。
N型熱電変換材料層3N,6N及びP型熱電変換材料層3P,6Pは、周知の熱電変換材料であれば特にその材質は制限されないが、500K以下の環境ではBi-Te系材料が好ましい。Bi-Te系材料には、N型半導体の材料として、Bi2Te3やBiとTeにSeを加えたBi2Te3-XSeX等があり、P型半導体の材料として、Bi2Te3やBiとTeにSbを加えたBi2-XSbXTe3等があるので、好ましくは、これらの材料でN型熱電変換材料層3N,6N及びP型熱電変換材料層3P,6Pを形成することが好ましい。実施形態1の熱電変換素子1Aでは、Bi-Te系材料が用いられ、具体的には、N型熱電変換材料層3N,6NがBi2Te2.7Se0.3の材料で形成され、P型熱電変換材料層3P,6PがBi0.5Sb1.5Te3の材料で形成されている。
断熱層4A,4Bに使用される具体的な材料としては、シリカ、多孔質シリカ、ガラス、ガラスウール、ロックウール、けいそう土、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、或いは中空粒子形状を有する無機粒子等があげられる。
市販されているガラスウールやロックウールをフェノール樹脂やメラミン樹脂で固めた断熱基板を使用しても良い。断熱基板を使用する場合、断熱基板上に熱電変換材料層を蒸着法や印刷法、あるいは溶融ディップ法で形成する。断熱基板の厚みは1〜20mm程度である。
また、上記の断熱材基板やガラス等をボールミル等の粉砕機で粉砕して断熱材粉末にし、有機溶媒やバインダーを加えてペースト化し、ペーストを印刷法により熱電変換材料層3N,3P上に塗布印刷し加熱することで断熱層4A,4Bを形成してもよい。
また、多孔質シリカ粒子やけいそう土或いは中空粒子形状を有する無機粒子等の断熱材粒子に有機溶媒やバインダーを加えてペースト化し、ペーストを印刷法により熱電変換材料層3N,3P上に塗布印刷し加熱することで断熱層4A,4Bを形成してもよい。中空粒子形状を有する無機粒子としては、中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子や中空チタニア粒子等が知られている。
また、断熱層4A,4Bには、これらの層を貫通する貫通孔7A,7Bが形成されている。この貫通孔7A,7Bは、断熱層4A,4B全体にわたって一様に形成され(各層で複数形成され)、貫通孔の形成は機械的にドリル等で貫通孔を設けても良いし、レーザー光の照射で貫通孔を形成してもよい。貫通孔の内側は、上記で説明した熱電変換材料で埋められている。N型熱電変換材料層3N上の断熱層4Aに形成された貫通孔7Aは、上記のBi2Te2.7Se0.3の材料が充填され、P型熱電変換材料層3P上の断熱層4Bに形成された貫通孔7Bは、上記のBi0.5Sb1.5Te3の材料が充填されている。図15(1)に断熱層に形成された貫通孔の様子を示す。図1に示すように、断熱層4A,4Bに貫通孔7A,7Bを設け、貫通孔内に熱電変換材料を充填することにより、断熱層4A,4Bを挟むように積層されているN型半導体層3N,6N及びP型半導体層3P,6Pにおいて、上下層の電気的接触をとることができる。図15(2)に貫通孔7が形成された断熱層4と半導体層3,6が積層された断面の様子を示す。貫通孔7A,7Bの大きさは、例えば、厚さ5mmの断熱層4A,4Bに対して直径0.3mmの円筒形状の大きさであり、その平面的な分布は、約0.25mm2の面積に対して1個の割合である。その形状は、例えば円筒状、あるいは角形状であっても良い。熱電変換材料の貫通孔への充填は、蒸着法、溶融ディップ法或いは熱電変換材料ペーストの印刷法等で行うことができる。
本実施形態1では、まず、機械的にドリル等で貫通孔が形成されたグラスウール板を用意し、その表面及び裏面にBi-Te系材料を蒸着する。次いで、このグラスウール板を、Bi-Te系材料(N型又はP型熱電変換材料)が溶融した浴槽に浸漬し、浸漬後これを引き上げる。Bi-Te系材料を先に蒸着することで、溶融したBi-Te系材料の濡れ性が良くなり貫通孔がBi-Te系材料で充填される。その後、550℃程度の温度でアニールする。この工程により、貫通孔をBi-Te系材料で埋めるとともに、グラスウール板の表面及び裏面にBi-Te系材料の層を形成する。
このように、実施形態1の熱電変換素子1Aは、貫通孔7A,7Bが断熱層4A,4Bに一様に形成されて電気的接触をとっているので、熱電変換に十分な電気的特性が与えられる。また、断熱材に形成されている貫通孔は、熱効率の高い形状であり、熱効率の高い形状の熱電変換材料が断熱材で覆われる構成となっている。この断熱層により、熱電変換素子1Aの高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるため、熱電変換素子の高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が得られる。
導電性基板2及び電極8A,8Bは、Al基板で構成されている。これらは、電極として機能するように十分な導電性を有する材料で形成されればよく、Alのほか、例えば、銅、銀、白金等で形成される。また、導電性基板2及び電極8A,8Bは、熱電変換素子で吸熱作用部、放熱作用部として機能するので、熱伝導率に優れる材料で形成する。Al基板と熱電変換材料層の接着は、導電性接着剤を使用しても良い。また、熱電変換材料層の電極形成部分に銀ペーストを印刷して加熱後、銀ペースト上に半田をのせAl基板を半田付けする方法でもよい。また、Al基板を熱電変換材料層に熱圧着する方法や、Al蒸着を利用することも可能である。
なお、絶縁層9は、アクリル樹脂で形成され、本実施形態ではアクリル板が用いられている。この絶縁層は、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを電気的に絶縁するための層であるので、必要な絶縁性を考慮して適宜周知の絶縁材料で形成すればよい。
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る熱電変換素子について説明する。図2は、本発明の実施形態2に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図2において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるA−A線断面図、(3)が下面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る熱電変換素子1Bは、実施形態1の熱電変換素子1Aとほぼ同様の構成であるが、熱電変換素子1Aの断熱層4A,4Bが、熱電変換素子1Bでは多孔質の断熱材料で形成された断熱層4C,4Dになっており、断熱層4C、4Dには貫通孔7A,7Bが形成されていない点が異なる。
多孔質材からなる断熱層4C,4Dは、断熱材料と樹脂粒子を混合したペーストを作製し、印刷後、加熱することで樹脂粒子を燃焼消失させることで形成される。断熱材の具体的な材料としては、シリカ、多孔質シリカ、ガラス、ガラスウール、ロックウール、けいそう土、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、或いは中空粒子形状を有する無機粒子等があげられる。ペーストに使用する断熱材料としては、ガラスウールやロックウールをフェノール樹脂やメラミン樹脂或はシリコン樹脂等で固めた断熱材基板、ガラス等を、ボールミル等の粉砕機で粉砕した断熱材粉末、或いは、多孔質シリカ粒子、けいそう土、或いは中空粒子形状の無機粒子等の断熱材粒子を使用する。上記の断熱材粉末或いは断熱材粒子と、樹脂粒子と、熱電変換材料粉末を混合して、有機溶媒やバインダーを加えて混練することによりペースト化し、このペーストを所定の位置に塗布印刷後、加熱することにより樹脂粒子を燃焼消失させて多孔質な断熱層を形成する。樹脂粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等の粒子を使用することができるが、350℃で略完全に消失するポリメチルメタクリレートが好ましい。中空粒子形状を有する無機粒子としては、中空シリカ粒子、中空アルミナ粒子や中空チタニア粒子等が知られている。
多孔質の断熱層4D,4Dの孔部分に熱電変換材料を充填する。熱電変換材料の充填は、熱電変換材料の蒸着或いは熱電変換材料ペーストの印刷等で行うことができる。
本実施形態2では、まず、N型熱電変換材料としてBi2Te2.7Se0.3の組成で調整した原料を、P型熱電変換材料としてBi0.5Sb1.5Te3の組成で調整した原料をそれぞれ使用して、Bi-Te系熱電変換材料の基板を作製し、熱電変換材料層3N、3Pとする。次に、上記グラスウール基板を粉砕した断熱材粉末とポリメチルメタクリレート粒子を混合してペースト化し、熱電変換材料層3N、3P上に印刷し、400℃で加熱してポリメチルメタクリレート粒子を消失させ多孔質の断熱層を形成する。続いて、Bi-Te系材料のペーストを断熱層の表面に印刷するが、このとき断熱層の孔にペーストを充填しかつ断熱層の表面がBi-Te系材料をペーストで覆われるように塗布印刷する。そして580℃で加熱し熱電変換材料層6N、6Pを形成する。
以上のように、実施形態2の熱電変換素子1Bは、多孔質の断熱層4C,4Dが形成されており、断熱層4C,4Dの孔部分に熱電変換材料が充填されて電気的接触をとっている。孔部分の熱電変換材料は断熱材で覆われる構造となるため、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減することができ、熱電変換素子の高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が得られる。
〔実施形態3〕
次に、実施形態3に係る熱電変換素子について説明する。図3は、本発明の実施形態3に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図3において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるB−B線断面図、(3)が下面図である。
図3に示すように、本実施形態に係る熱電変換素子1Cは、実施形態1の熱電変換素子1Aとほぼ同様の構成であるが、N型熱電変換部及びP型熱電変換部の構成においてその積層構造が異なっている。すなわち、実施形態4の熱電変換素子1CにおけるN型熱電変換部は、下層からN型熱電変換材料層3N、断熱層4A、N型熱電変換材料層6N、異方性導電材料(グラファイト)層5Aの順で積層され、P型熱電変換部は、下層からP型熱電変換材料層3P、断熱層4B、P型熱電変換材料層6P、異方性導電材料(グラファイト)層5Bの各層の順で積層されている。
本実施形態3では実施形態1と同様に、貫通孔が形成されたグラスウール板を溶融ディップ法で熱電変換材料層3N,3Pと断熱層4A,4Bと熱電変換材料層6N,6Pの積層構造を形成し、熱電変換材料層6N,6P上に異方性導電材料層を積層してN型熱電変換部とP型熱電変換部とを作製する。
異方性導電材料層5A,5Bは、グラファイトシートを使用する。グラファイトシートは市販されているグラファイトシートを使用し、Bi-Te系材料よりなる熱電変換材料層6N,6Pにグラファイトシートを接着する。接着方法は、グラファイトシートの接着面に、熱電変換材料層6N,6Pと同じ組成のBi-Te系材料を蒸着しBi-Te系材料の層を形成する。次いで熱電変換材料層6N,6Pに、グラファイトシートのBi-Te系材料の層が形成された面を密着させて熱圧着する。以上の工程により、熱電変換材料層3N,3Pと、断熱層4A,4Bと、熱電変換材料層6N,6Pと、グラファイトよりなる異方性導電材料層5A,5Bが積層されたN型熱電変換部とP型熱電変換部とを作製する。
本実施形態3の熱電変換素子1Cでは、グラファイトよりなる異方性導電材料層が有する電気伝導率の異方性を利用して、電極8A,8Bを異方性導電材料(グラファイト)層の一部に配置する。導電性基板2及び電極8A,8Bは、配置、大きさが異なり、図3に示すように、電極8A,8Bの面積を小さくし、かつ導電性基板2と電極8A,8Bとが平面的に重畳しない部分を形成して配置されている。このため、発熱作用部(電極8A,8Bの領域)から吸熱作用部(導電性基板2の領域)への熱伝導が立体配置的に抑制されることになる。また、断熱層4A、4Bが形成されており、この断熱層によっても、発熱作用部から吸熱作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できる。従って、本実施形態においても、高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が実現できる。
〔実施形態4〕
次に、実施形態4に係る熱電変換素子について説明する。図4は、本発明の実施形態4に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図4において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるC−C線断面図、(3)が下面図である。
図4に示すように、電極の配置の例として挙げる熱電変換素子1Dは、実施形態3,図3の熱電変換素子1Cと同様のN型熱電変換部及びP型熱電変換部を備えているが、導電性基板2及び電極8A,8Bの配置、大きさが異なり、導電性基板2と電極8A,8Bとが平面的に分離されて配置されている。
本実施形態では、異方性導電材料(グラファイト)層5A,5Bとして、熱電変換材料層6N,6Pよりも長く積層構造からはみ出した延在部を有する形状のグラファイトシートを使用する。N型熱電変換部及びP型熱電変換部に、延在部を有する異方性導電材料(グラファイト)5A,5Bが設けられ、異方性導電材料層の延在部に電極8A,8Bが配置される。
ここで延在部について説明する。図4(2)に示したように、異方性導電材料層5Aは、N型熱電変換材料層3N側の第1主要面とそれに対面する側の第2主要面とを有している。N型熱電変換材料層3Nは、第1主要面の一部の上に設けられており、第1主要面には、その上にN型熱電変換材料層が設けられていない表面がある。この表面を有する第1異方性導電材料層5Aの部分を延在部という。熱電変換素子1Eでは、第2主要面のうち延在部の表面上に第2電極8Aが設けられる。
また、図4(2)に示したように、異方性導電材料層5Bは、P型熱電変換材料層3P側の第3主要面とそれに対面する側の第4主要面とを有している。P型熱電変換材料層3Pは、第3主要面の一部の上に設けられており、第3主要面には、その上にP型熱電変換材料層が設けられていない表面がある。この表面を有する第2異方性導電材料層5Bの部分を延在部という。熱電変換素子1Eでは、第4主要面のうち延在部の表面上に第3電極8Bが設けられる。
異方性導電材料(グラファイト)層は、層(ab面)内で高い電気伝導率を示し、厚み(c軸)方向で低い電気伝導率を示す特性を有するので、異方性導電材料(グラファイト)層5A,5Bの延在部上に第2又は第3電極8A、8Bを形成することが可能となる。その結果本実施形態5の熱電変換素子1Eでは、電極8A,8Bの面積を小さくし、かつ導電性基板2と電極8A,8Bが上面からみた配置において互いに重ならないように形成することができ、発熱作用部(電極8A,8Bの領域)から吸熱作用部(導電性基板2の領域)への熱伝導が立体配置によって抑制されることになる。また、断熱層4A、4Bが形成されており、この断熱層によっても、発熱作用部から吸熱作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できる。従って、本実施形態においても、高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が実現できる。
〔実施形態5〕
次に、実施形態5に係る熱電変換素子について説明する。図5は、本発明の実施形態5に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図5において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるC−C線断面図、(3)が下面図である。
図5に示すように、本実施形態に係る熱電変換素子1Eは、実施形態4の熱電変換素子1Dとほぼ同様の構成であり,熱電変換素子1Eにおいても、異方性導電材料(グラファイト)層5A,5Bが、熱電変換材料層6N,6Pよりも長く積層構造からはみ出した延在部を有する形状の素子構造である。相違点は、熱電変換素子1Dの断熱層4A,4Bが、熱電変換素子1Eでは多孔質の断熱材料で形成された断熱層4C,4Dになっており、断熱層4C、4Dには貫通孔7A,7Bが形成されていない点である。
本実施形態5の熱電変換素子1Eにおいても、電極8A,8Bの面積を小さくし、かつ導電性基板2と電極8A,8Bが上面からみた配置において互いに重ならないように形成することができ、発熱作用部(電極8A,8Bの領域)から吸熱作用部(導電性基板2の領域)への熱伝導が立体配置によって抑制されることになる。また、断熱層4C、4Dが形成されており、この断熱層によっても、発熱作用部から吸熱作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できる。従って、本実施形態においても、高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が実現できる。
〔実施形態6〕
次に、実施形態6に係る熱電変換素子について説明する。図6は、本発明の実施形態6に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図6において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるA−A線断面図、(3)が下面図である。
図6に示すように、本実施形態に係る熱電変換素子1Fは、導電性基板2(第1電極)と、導電性基板2上に形成されたN型熱電変換部及びP型熱電変換部と、N型熱電変換部上に形成された電極8A及びP型熱電変換部上に形成された電極8B(第2及び第3電極)とで構成されている。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、グラファイト層5A、断熱層4E、グラファイト層5A、N型熱電変換材料層6Nの順で導電性基板2上に積層されており、グラファイト層5Aは断熱層4Eの側面で繋がっており電気的接触が取れるように配置されている。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、グラファイト層5B、断熱層4F、グラファイト層5B、P型熱電変換材料層6Pの順で導電性基板2上に積層されており、グラファイト層5Bは断熱層4Fの側面で繋がっており電気的接触が取れるように配置されている。また、N型熱電変換部とP型熱電変換部は、絶縁層9(絶縁体)を挟み、互いに離れて配置されている。
本実施形態6の熱電変換素子1Fにおいては、断熱層4E,4Fは断熱材で形成されており熱伝導が抑制される構造であり、断熱層4E,4Fの側面に配置されたグラファイト5A,5Bにより十分な電気伝導性を確保している。この熱電変換素子においても、グラファイトを使用して熱伝導部分と電気伝導部分を立体的に隔離することで高い電気伝導性と低い熱伝導性を確保でき高い熱電変換効率が実現できる。
〔実施形態7〕
次に、実施形態7に係る熱電変換素子について説明する。図7は、本発明の実施形態7に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図7において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるA−A線断面図、(3)が下面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る熱電変換素子1Gは、実施形態6の熱電変換素子1Fとほぼ同様の構成であるが,熱電変換素子1Fの断熱層4E、4Fに対して熱電変換素子1Gの断熱層4G、4Hは内部が空洞になっている点が異なる。断熱層4G、4Hは一般の断熱材で形成されているが、内部が空洞である筒状の中空構造となっている。
本実施形態7の熱電変換素子1Gにおいても、断熱層4G,4Hは断熱材と空気層で形成されており熱伝導が抑制される構造であり、断熱層4G,4Hの側面に配置されたグラファイト5A,5Bにより十分な電気伝導性を確保している。この熱電変換素子においても、グラファイトを使用して熱伝導部分と電気伝導部分を立体的に隔離することで高い電気伝導性と低い熱伝導性を確保でき高い熱電変換効率が実現できる。
〔比較形態1〕
図12は比較形態1に係る従来の熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図4において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるA−A線断面図、(3)が下面図である。
図12に示すように、比較形態1に係る熱電変換素子1Kは、導電性基板2(第1電極)と、導電性基板2上に形成されたN型熱電変換材料層3NよりなるN型熱電変換部、及びP型熱電変換材料層3PよりなるP型熱電変換部と、N型熱電変換部上に形成された電極8A及びP型熱電変換部上に形成された電極8B(第2及び第3電極)とで構成されている。また、N型熱電変換部とP型熱電変換部は、絶縁層9(絶縁体)を挟み、互いに離れて配置されている。熱電変換素子1Kは、従来の素子構造の熱電変換素子であり、断熱層は有さない。
〔比較形態2〕
次に、比較形態2に係る熱電変換素子について説明する。図13は、比較形態2に係る熱電変換素子の上面図、断面図及び下面図である。図2において、(1)が上面図、(2)が上面図におけるC−C線断面図、(3)が下面図である。
図13に示すように、熱電変換素子1Lは、導電性基板2(第1電極)上にN型熱電変換部とP型熱電変換部が配置されている。N型熱電変換部は、下からN型熱電変換材料層3N、異方性導電材料(グラファイト)層5Aの順で積層され、P型熱電変換部は、下からP型熱電変換材料層3P、異方性導電材料(グラファイト)層5Bの順で積層されており、異方性導電材料(グラファイト)層5A,5Bは熱電変換材料層3N,3Pよりも長く積層構造からはみ出した延在部を有する構造である。その延在部上に電極8A,8Bが配置される。本実施形態の熱電変換素子1Lは、断熱層は有していない。
比較形態2の熱電変換素子1Lにおいても、電極8A,8Bの面積を小さくし、かつ導電性基板2と電極8A,8Bが上面からみた配置において互いに重ならないように形成することができ、発熱作用部(電極8A,8Bの領域)から吸熱作用部(導電性基板2の領域)への熱伝導が立体配置によって抑制されることになる。しかし、断熱層が形成されておらず、断熱層によって発熱作用部から吸熱作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減する作用を有さない。
上記で説明した実施形態1〜7の熱電変換素子は、単独で使用されるだけでなく、複数で使用されてもよい。例えば、複数の熱電変換素子が組みあわさって、熱電変換発電装置を構成してもよい。
〔実施形態8〕
次に、実施形態8に係る熱電変換発電装置について説明する。図8は、本発明の実施形態8に係る熱電変換発電装置(複数の熱電変換素子を備える装置)の断面図である。図8に示すように、本実施形態に係る熱電変換発電装置1Hは、図1に示す熱電変換素子1A(実施形態1の熱電変換素子)と、さらに別の熱電変換素子10A,10Bとで構成されている。ここで、熱電変換素子1Aは発電に寄与する熱電変換発電素子であり、熱電変換素子10A,10Bは熱電変換素子1Aを効率よく発電させるためのペルチェ素子である。
ここで熱電変換素子1Aは、第1の電極である導電性基板2の下部に、絶縁層9を挟んでN型熱電変換材料層3N、断熱層4A、N型熱電変換材料層6NよりなるN型熱電変換部と、P型熱電変換材料層3P、断熱層4B、P型熱電変換材料層6PよりなるP型熱電変換部が形成されており、熱電変換材料層6N,6Pの下部に第2,第3の電極8A,8Bが形成されている素子構造の熱電変換発電素子である。熱電変換素子1Aは、第1の電極の導電性基板2が高温作用部として働き、第2、第3の電極8A,8Bが低温作用部として働き、高温作用部と低温作用部の温度差を利用して発電を行う。熱電変換素子1Aは、断熱層4A,4Bを有しており、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるため、熱電変換素子の高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が得られる。
熱電変換発電装置1Hは、第2、第3の熱電変換素子10A,10Bが、熱電変換発電素子1Aに接して配置された構成である。ここで、第2、第3の熱電変換素子10A,10Bは、実施形態4の熱電変換素子1D(図4)と同じ構造の熱電変換素子である。なお、図11に、第2の熱電変換素子10Aの斜視図を示す。図4の熱電変換素子1Dの導電性基板2に相当するのが、図8の電極10AL、10BLであり、熱電変換発電素子1Aの電極8A,8Bに接して配置されている。そして、図8の熱電変換素子10A,10Bは、電極10AL、10BLの下部に順に熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層、異方性導電材料(グラファイト)層が積層されている。その異方性導電材料(グラファイト)層は熱電変換材料層とは接触せず積層構造からはみ出した延在部10AG,10BGを有し、延在部10AG,10BGは、異方性導電材料(グラファイト)層の積層面から、熱電変換発電素子1Aの断熱層4A、4Bの側方に沿って延び、さらに、導電性基板2上方まで延びている。そして電極10AH,10BH(図4の熱電変換素子1Dの電極8A,8Bに対応)は、熱電変換発電素子1Aの導電性基板2に接触する構成で、その延在部の端部上方に配置されている。
なお、熱電変換素子10A,10Bは、それぞれ電極を有するが、これらの電極の表面は絶縁物でカバーされており、接触する他の素子や電極、あるいは接触する対象物との電気的接触はない。ペルチェ素子として熱の出入りが生じるだけである。
ペルチェ素子である第2、第3の熱電変換素子10A,10Bにおいて、電極10AL,10BLは吸熱作用部として働き、電極10AH,10BHは発熱作用部として働く。吸熱作用部である電極10AL,10BLが、熱電変換発電素子1Aの低温作用部である電極8A,8Bに接して配置されているため、熱電変換発電素子1Aの高温作用部から低温作用部へ熱伝導してきた熱量は低温作用部に蓄積されることなく電極10AL,10BLに吸熱される。よって、低温作用部を低温に保持することが可能となる。一方、発熱作用部である電極10AH,10BHは、熱電変換発電素子1Aの高温作用部である導電性基板2に接して配置されているため、電極10AL,10BLで吸熱された熱量が、電極10AH,10BHを通して熱電変換発電素子1Aの高温作用部に放熱される。よって、高温作用部から低温作用部へ熱伝導することで失われた熱量を取り戻すことができ、高温作用部を高温に保持することが可能となる。これらの作用により熱電変換発電素子1Aの高温作用部と低温作用部の温度差が保持されるため、熱電変換発電素子1Aは効率の高い発電を持続的に行うことができる。
また、実施形態8の熱電変換発電装置1Hにおいて、熱電変換発電素子1Aの高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:Qkは、ペルチェ素子10A,10Bによって熱電発電素子1Aに対しほぼ完結した循環を成しているので、熱電変換発電素子1Aは熱量:Qkを考慮して面積の小さい素子構造である必要がなく大面積化が図れる。大面積化を図ることで、より発電量の大きい熱電変換発電を行うことができる。
本実施形態8の熱電変換発電装置1Hは、高温作用部と低温作用部にΔTの温度差がある場合、熱電変換発電素子1Aはその温度差に比例して熱起電力を発生し、出力:Poutが得られるが、同様に、温度差に比例して高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:Qkが生じ、このQkを低温作用部から高温作用部に戻すために第2、第3の熱電変換素子(ペルチェ素子)10A,10Bを駆動する入力:Pinが必要となる。熱量:Qkは熱電変換材料の熱伝導率や熱電変換発電素子の素子構造に依存するが、熱電変換材料にBi-Te系材料を使用し、従来の素子構造の熱電変換発電素子1K(図12:比較形態1を参照)を使用した熱電変換発電装置1L(図13:比較形態2を参照)は、出力:Poutを100%として、入力:Pinは60%程度で駆動する温度差:ΔTにおいて、本実施形態8の熱電変換発電装置1Hは、出力:Poutを100%として、入力:Pinは40%程度まで低減できる。熱電変換発電素子1Aは断熱層4A,4Bを有し、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるので、ペルチェ素子10A,10Bを動作させるために入力される電力量を低減することができる。
熱電変換発電装置1Hにおいて、熱電変換発電素子1Aは断熱層4A,4Bを有するので、高温作用部と低温作用部の温度差:ΔTを大きく保つことができ、かつ熱電変換発電装置1Hは、ペルチェ素子10A,10Bの動作により、熱電変換発電素子1Aの高温作用部と低温作用部の温度差:ΔTを持続して保持できる。また、熱電変換発電素子1Aは断熱層4A,4Bを有し、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるので、ペルチェ素子10A,10Bを動作させるために入力される電力量を低減することができる。また、熱電変換発電素子1Aは広い面積で温度差を利用することができる。
結果として、より大きな温度差を広い面積で持続して利用することが可能となり大きい出力が得られる。
〔実施形態9〕
次に、実施形態9に係る熱電変換発電装置について説明する。図9は、本発明の実施形態9に係る熱電変換発電装置の断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る熱電変換発電装置1Iは、その構成が実施形態8の熱電変換発電装置1Hとほぼ同じである。熱電変換発電装置1Hでは、熱電変換発電素子1A(実施形態1の熱電変換素子)と、ペルチェ素子として使用される熱電変換素子10A,10B(実施形態4の熱電変換素子1D)とで構成されていたが、本実施形態の熱電変換発電装置1Iは、本発明の熱電変換発電素子1B(実施形態2の熱電変換素子)と、ペルチェ素子として使用される本発明の熱電変換素子20A,20B(実施形態5の熱電変換素子1E)とで構成される。
ここで熱電変換素子1Bは、第1の電極である導電性基板2の下部に、絶縁層9を挟んでN型熱電変換材料層3N、断熱層4C、N型熱電変換材料層6NよりなるN型熱電変換部と、P型熱電変換材料層3P、断熱層4D、P型熱電変換材料層6PよりなるP型熱電変換部が形成されており、熱電変換材料層6N,6Pの下部に第2,第3の電極8A,8Bが形成されている素子構造の熱電変換発電素子である。熱電変換素子1Bは、第1の電極の導電性基板2が高温作用部として働き、第2、第3の電極8A,8Bが低温作用部として働き、高温作用部と低温作用部の温度差を利用して発電を行う。熱電変換素子1Bは、断熱層4C,4Dを有しており、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるため、熱電変換素子の高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が得られる。
熱電変換発電装置1Iは、第2、第3の熱電変換素子20A,20Bが、熱電変換発電素子1Bに接して配置された構成である。ここで、第2、第3の熱電変換素子20A,20Bは、実施形態5の熱電変換素子1E(図5)と同じ構造の熱電変換素子である。図5の熱電変換素子1Eの導電性基板2に相当するのが、図9の電極20AL、20BLであり、熱電変換発電素子1Bの電極8A,8Bに接して配置されている。そして、図9の熱電変換素子20A,20Bは、電極20AL、20BLの下部に順に熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層、異方性導電材料(グラファイト)層が積層されている。その異方性導電材料(グラファイト)層は熱電変換材料層とは接触せず積層構造からはみ出した延在部20AG,20BGを有し、延在部20AG,20BGは、異方性導電材料(グラファイト)層の積層面から、熱電変換発電素子1Bの断熱層4C、4Dの側方に沿って延び、さらに、導電性基板2上方まで延びている。そして電極20AH,20BH(図5の熱電変換素子1Eの電極8A,8Bに対応)は、熱電変換発電素子1Bの導電性基板2に接触する構成で、その延在部の端部上方に配置されている(図9参照)。
なお、熱電変換素子20A,20Bは、それぞれ電極を有するが、これらの電極の表面は絶縁物でカバーされており、接触する他の素子や電極、あるいは接触する対象物との電気的接触はない。ペルチェ素子として熱の出入りが生じるだけである。
実施形態9の熱電変換発電装置1Iにおいても実施形態8の熱電変換発電装置1Hと同様に、熱電変換発電素子1Bは断熱層4C,4Dを有するので、高温作用部と低温作用部の温度差:ΔTを大きく保つことができ、かつ熱電変換発電装置1Iは、ペルチェ素子20A,20Bの動作により、熱電変換発電素子1Bの高温作用部と低温作用部の温度差:ΔTを持続して保持できる。また、熱電変換発電素子1Bは断熱層4C,4Dを有し、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるので、ペルチェ素子20A,20Bを動作させるために入力される電力量を低減することができる。また、熱電変換発電素子1Bは広い面積で温度差を利用することができる。
結果として、より大きな温度差を広い面積で持続して利用することが可能となり大きい出力が得られる。
〔実施形態10〕
次に、実施形態10に係る熱電変換発電装置について説明する。図10は、本発明の実施形態10に係る熱電変換発電装置の断面図である。
図10に示すように、本実施形態に係る熱電変換発電装置1Jは、その構成が実施形態8の熱電変換発電装置1Hとほぼ同じである。熱電変換発電装置1Hでは、熱電変換発電素子1A(実施形態1の熱電変換素子)と、ペルチェ素子として使用される熱電変換素子10A,10B(実施形態4の熱電変換素子1D)とで構成されていたが、本実施形態の熱電変換発電装置1Jは、本発明の熱電変換発電素子1F(実施形態6の熱電変換素子)と、ペルチェ素子として使用される本発明の熱電変換素子20A,20B(実施形態5の熱電変換素子1E)とで構成される。
N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、グラファイト層5A、断熱層4E、グラファイト層5A、N型熱電変換材料層6Nの順で導電性基板2上に積層されており、グラファイト層5Aは断熱層4Eの側面で繋がっており電気的接触が取れるように配置されている。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、グラファイト層5B、断熱層4F、グラファイト層5B、P型熱電変換材料層6Pの順で導電性基板2上に積層されており、グラファイト層5Bは断熱層4Fの側面で繋がっており電気的接触が取れるように配置されている。
ここで熱電変換素子1Fは、第1の電極である導電性基板2の下部に、絶縁層9を挟んでN型熱電変換材料層3N、グラファイト層5A、断熱層4E、グラファイト層5A、N型熱電変換材料層6Nの順でなり、グラファイト層5Aは断熱層4Eの側面で繋がっており電気的接触が取れるように配置されているN型熱電変換部と、P型熱電変換材料層3P、グラファイト層5B、断熱層4F、グラファイト層5B、P型熱電変換材料層6Pの順でなり、グラファイト層5Bは断熱層4Fの側面で繋がっており電気的接触が取れるように配置されているP型熱電変換部が形成されている。そして熱電変換材料層6N,6Pの下部に第2,第3の電極8A,8Bが形成されている素子構造の熱電変換発電素子である。熱電変換素子1Fは、第1の電極の導電性基板2が高温作用部として働き、第2、第3の電極8A,8Bが低温作用部として働き、高温作用部と低温作用部の温度差を利用して発電を行う。熱電変換素子1Fは、断熱層4E,4Fを有しており、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるため、熱電変換素子の高温作用部と低温作用部間の温度差を十分に確保して高い熱電変換効率が得られる。
熱電変換発電装置1Jは、第2、第3の熱電変換素子20A,20Bが、熱電変換発電素子1Fに接して配置された構成である。ここで、第2、第3の熱電変換素子20A,20Bは、実施形態5の熱電変換素子1E(図5)と同じ構造の熱電変換素子である。図5の熱電変換素子1Eの導電性基板2に相当するのが、図10の電極20AL、20BLであり、熱電変換発電素子1Cの電極8A,8Bに接して配置されている。そして、図10の熱電変換素子20A,20Bは、電極20AL、20BLの下部に順に熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層、異方性導電材料(グラファイト)層が積層されている。その異方性導電材料(グラファイト)層は熱電変換材料層とは接触せず積層構造からはみ出した延在部20AG,20BGを有し、延在部20AG,20BGは、異方性導電材料(グラファイト)層の積層面から、熱電変換発電素子1Fの断熱層4E、4Fの側方に沿って延び、さらに、導電性基板2上方まで延びている。そして電極20AH,20BH(図5の熱電変換素子1Eの電極8A,8Bに対応)は、熱電変換発電素子1Fの導電性基板2に接触する構成で、その延在部の端部上方に配置されている(図10参照)。
なお、熱電変換素子20A,20Bは、それぞれ電極を有するが、これらの電極の表面は絶縁物でカバーされており、接触する他の素子や電極、あるいは接触する対象物との電気的接触はない。ペルチェ素子として熱の出入りが生じるだけである。
実施形態10の熱電変換発電装置1Jにおいても実施形態8の熱電変換発電装置1Hと同様に、熱電変換発電素子1Fは断熱層4E,4Fを有するので、高温作用部と低温作用部の温度差:ΔTを大きく保つことができ、かつ熱電変換発電装置1Jは、ペルチェ素子20A,20Bの動作により、熱電変換発電素子1Fの高温作用部と低温作用部の温度差:ΔTを持続して保持できる。また、熱電変換発電素子1Fは断熱層4E,4Fを有し、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できるので、ペルチェ素子20A,20Bを動作させるために入力される電力量を低減することができる。また、熱電変換発電素子1Fは広い面積で温度差を利用することができる。
結果として、より大きな温度差を広い面積で持続して利用することが可能となり大きい出力が得られる。
〔比較形態3〕
次に、比較形態3に係る熱電変換発電装置について説明する。図14は、本発明の比較形態3に係る熱電変換発電装置の断面図である。
図14に示すように、熱電変換発電装置1Mは、その構成が実施形態8の熱電変換発電装置1Hとほぼ同じである。熱電変換発電装置1Hでは、熱電変換発電素子1A(実施形態1の熱電変換素子)と、ペルチェ素子として使用される熱電変換素子10A,10B(実施形態4の熱電変換素子)とで構成されていたが、比較形態の熱電変換発電装置1Mは、従来の熱電変換発電素子1K(図12、比較形態1の熱電変換素子)と、ペルチェ素子として使用される40A,40B(図13、比較形態2の熱電変換素子)とで構成される。
比較形態3の熱電変換発電装置1Mにおいて、熱電変換発電素子1Kは断熱層を有していないので、高温作用部と低温作用部の温度差を大きく保つことは困難である。しかし、熱電変換発電装置1Mは、ペルチェ素子40A,40Bの動作により、熱電変換発電素子1Kの高温作用部と低温作用部の温度差:ΔTを持続して保持できる。また、熱電変換発電素子1Kは広い面積で温度差を利用することができる。しかし、熱電変換発電素子1K及びペルチェ素子40A,40Bは断熱層を有しておらず、高温作用部から低温作用部へ熱伝導する熱量:QKを低減できないので、ペルチェ素子40A,40Bを動作させるために入力される電力量を低減することは困難である。
〔熱電変換部の作製と評価〕
まず、熱電変換素子として評価する前に、N型熱電変換部、P型熱電変換部の性能(熱電特性)の評価を行った。
性能評価用の試料は、Bi-Te系材料の基板を使用して製造したN型,P型熱電変換部を、必要な寸法に切り出して研磨し評価用試料を作製した。N型,P型熱電変換部の評価用試料のサイズは、熱電特性評価用試料:角20mm×20mm,厚さ7mm〜8mm程度、熱伝導率測定用試料:角50mm×50mm,厚さ7mm〜8mm程度とした。
〔第1評価用熱電変換部の作製〕
まず、実施形態1(図1参照)のN型熱電変換部とP型熱電変換部を以下の工程で作製した。
グラスウール板は、グラスウールを圧縮しメラミン樹脂で固めてシート状(板状)に成型したもので、角100mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板を用意し、グラスウール板の全面に、φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチでドリルにより形成した。
まず、Bi,Te,その他の添加物等の所定の粉末原料を混合して溶融し、溶融後できた母材を粉砕して、粉末状のN型若くはP型熱電変換材料の原料を得た。N型熱電変換材料としてBi2Te2.7Se0.3の組成で調整したBi-Te系材料を、P型熱電変換材料としてBi0.5Sb1.5Te3の組成で調整したBi-Te系材料を、それぞれ使用した。
貫通孔を形成した、グラスウール板の表・裏面にN型或いはP型のBi-Te系材料を蒸着した。その後、蒸着したBi-Te系材料と同じBi-Te系材料の原料を浴槽に入れて溶融温度570℃〜620℃程度で再溶融し、原料が溶融している浴槽に、上記のBi-Te系材料を蒸着したグラスウール板をディップし、グラスウール板に形成した貫通孔をBi-Te系材料で埋めてしまうと共に、グラスウール板の表・裏面にそれぞれ厚さ約1mmのBi-Te系材料層を形成した。
このようにして作製された熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層の3層構造のN型とP型の熱電変換部を、熱電特性評価用試料:角20mm×20mm、熱伝導率測定用試料:角50mm×50mmの評価用試料のサイズに切り出して切削面を研磨し第1評価用熱電変換部を作製した。作製したそれぞれの評価用熱電変換部の上部と下部に厚さ0.2mmのAl電極を半田で取り付け評価用試料とした。
〔第2評価用熱電変換部の作製〕
次に、上記のように作製した第1評価用熱電変換部の熱電変換材料層6N,6P上に、角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシート(大塚商会社製)を積層し実施形態3(図3参照)の熱電変換部を作製した。グラファイトシートの接着面に、熱電変換材料層6N,6Pと同じ組成のBi-Te系材料を抵抗加熱蒸着して100nm程度のBi-Te系材料層を形成し、熱電変換材料層6N,6Pとグラファイトシートを密着させて熱圧着することにより積層し、熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層、グラファイト層の4層構造の熱電変換部を作製した。
このようにして作製されたN型とP型の熱電変換部を、上記の評価用試料のサイズに切り出して切削面を研磨し第2評価用熱電変換部を作製し、それぞれの評価用熱電変換部の下部に、角20mm×20mm,厚さ0.2mmと、角50m×50m,厚さ0.2mmのAl電極を、それぞれの評価用熱電変換部の上部端に角5mm×5mm,厚さ0.2mmと、角5mm×5mm,厚さ0.2mmのAl電極を半田で取り付け評価用試料とした。
〔第3評価用熱電変換部の作製〕
実施形態2(図2参照)のN型熱電変換部とP型熱電変換部を以下の工程で作製した。
まず、N型熱電変換材料としてBi2Te2.7Se0.3の組成で調整した原料を、P型熱電変換材料としてBi0.5Sb1.5Te3の組成で調整した原料をそれぞれ使用し、Bi-Te系熱電変換材料の基板を作製した。Bi,Te,その他の添加物の粉末原料を混合して溶融し、溶融後できた母材を粉砕して、粉末状のN型若くはP型熱電変換材料の原料を得た。そして、得られた粉末を300mm×300mm×50mmの整形部材に加圧して詰め、ゾーンメルト法を用いて溶融温度570℃〜620℃程度で再溶融したあと、350〜450℃で5時間焼鈍し焼結体を製造した。製造した焼結体をワイヤソーで切り出して、角100mm×250mm,厚さ1.5mmのBi-Te系熱電変換材料の基板を製造した。
次に、上記グラスウール基板を粉砕した断熱材粉末(平均粒径:約10μm)とポリメチルメタクリレート(平均粒径:約10μm、東洋紡社製)を混合後、有機溶媒を加えて混練して断熱層形成用ペースト1を作製した。下記に断熱層形成用ペースト1の配合を示す。熱電変換材料層3N、3PとなるBi-Te系熱電変換材料の基板上に断熱層形成用ペースト1を塗布印刷し、400℃で加熱してポリメチルメタクリレート粒子を燃焼消失させて多孔質の断熱層4C,4Dを形成する。多孔質の断熱層4C,4Dの厚みは5mm程度になるように形成した。
〔断熱層形成用ペースト1の配合(重量部)〕
・グラスウール基板の断熱材粉末:100部
・ポリメチルメタクリレート:40部
・テレピネオール:11部
・エチルセルロース:3部
続いて、Bi-Te系材料のペーストを断熱層の表面に印刷する。上記Bi-Te系材料の母材を粉砕したBi-Te系材料粉末(平均粒径:約5μm)を使用してペースト化したものであり、n型熱電変換材料としてBi2Te2.7Se0.3の組成で調整したBi-Te系熱電変換材料粉末を、p型熱電変換材料としてBi0.5Sb1.5Te3の組成で調整したBi-Te系熱電変換材料粉末をそれぞれ使用した。下記にBi-Te系材料のペーストの配合を示す。このとき断熱層の孔にペーストを充填しかつ断熱層の表面がBi-Te系材料をペーストで覆われるように塗布印刷する。そして580℃で加熱し熱電変換材料層6N、6Pを形成する。熱電変換材料層6N、6Pの厚みは0.5mm程度になるように形成した。
〔Bi-Te系材料層形成用ペーストの配合(重量部)〕
・Bi-Te系材料粉末:100部
・テレピネオール:8部
・エチルセルロース:2部
このようにして作製された熱電変換材料層、断熱層、熱電変換材料層の3層構造のN型とP型の熱電変換部を、上記の評価用試料のサイズに切り出して切削面を研磨し、N型とP型の第3評価用熱電変換部を作製した。それぞれの評価用熱電変換部の上部と下部に厚さ約0.2mmのAl電極を半田で取り付け評価用試料とした。
〔第4評価用熱電変換部の作製〕
実施形態6(図6参照)のN型熱電変換部とP型熱電変換部を以下の工程で作製した。
まず、角20mm×20mm,厚さ0.4mmのAl基板と、角50m×50m,厚さ0.3mmのAl基板を用意し、上記のBi-Te系材料のペーストをそれぞれのAl基板上に塗布印刷後、580℃で焼成することにより断熱材を含む熱電変換材料層3N,3Pをそれぞれ形成した。熱電変換材料層3N,3Pの厚みは1mm程度になるように形成した。
次に、熱電変換材料層3N,3P上に、角20mm×45mm,厚さ50μmのグラファイトシート(パナソニック社製)と、角50mm×105mmさ50μmのグラファイトシート(パナソニック社製)をそれぞれ積層する。グラファイトシートの接着面に、熱電変換材料層3N,3Pと同じ組成の上記のBi-Te系材料のペーストを0.1mm程度の厚みになるように塗布印刷し、グラファイトの酸化を防ぐために減圧化で580℃程度の熱をかけて、熱電変換材料層3N,3Pとグラファイトシートを接着した。
続いて角20mm×20mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板と、角50mm×50mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板を用意し、図6のようにグラスウール板の下面・側面・上面に前記グラファイトシートを接着する。接着には上記のBi-Te系材料のペーストを使用し、同ペーストを0.1mm程度の厚みになるように塗布印刷し、グラファイトの酸化を防ぐために減圧化で580℃程度の熱をかけて接着した。
続いてグラファイト層5A,5Bの上面に、上記のBi-Te系材料のペーストを1mm程度の厚みになるように塗布印刷し、グラファイトの酸化を防ぐために減圧化で580℃程度の熱をかけて、熱電変換材料層6N,6Pをそれぞれ形成した。熱電変換材料層6N,6Pの上部に厚さ0.2mmのAl基板を半田で取り付けた。このようにして作製された熱電変換材料層、グラファイト層、断熱層、グラファイト層、熱電変換材料層の5層構造のN型とP型の熱電変換部を評価用試料とした。
〔第5評価用熱電変換部の作製〕
実施形態7(図7参照)のN型熱電変換部とP型熱電変換部を以下の工程で作製した。
第5評価用熱電変換部の作製方法は上記の第4評価用熱電変換部の作製方法とほぼ同じであるが、用いる断熱材の形状が異なる。ここで使用する断熱材は、厚さ1mmの板状のグラスウール板で四方を囲んだ角20mm×20mm,厚さ5mmの形状で中が角20mm×18mm,厚さ3mmの空洞となっているものと、厚さ1mmの板状のグラスウール板で四方を囲んだ角50mm×50mm,厚さ5mmの形状で中が角50mm×48mm,厚さ3mmの空洞となっている筒状の中空体をそれぞれ使用した。それ以外は第4評価用熱電変換部の作製方法と同様にして第5評価用熱電変換部を作製し、熱電変換材料層、グラファイト層、断熱層、グラファイト層、熱電変換材料層の5層構造のN型とP型の熱電変換部を評価用試料とした。
〔比較用熱電変換部の作製〕
まず、比較形態1(図12参照)のN型熱電変換部とP型熱電変換部を以下の工程で作製した。
まず、N型熱電変換材料としてBi2Te2.7Se0.3の組成で調整した原料を、P型熱電変換材料としてBi0.5Sb1.5Te3の組成で調整した原料をそれぞれ使用し、Bi-Te系熱電変換材料の基板を作製した。Bi,Te,その他の添加物の粉末原料を混合して溶融し、溶融後できた母材を粉砕して、粉末状のN型若くはP型熱電変換材料の原料を得た。そして、得られた粉末を300mm×300mm×50mmの整形部材に加圧して詰め、ゾーンメルト法を用いて溶融温度570℃〜620℃程度で再溶融したあと、350〜450℃で5時間焼鈍し焼結体を製造した。製造した焼結体をワイヤソーで切り出して、角100mm×250mm,厚さ7mmのBi-Te系熱電変換材料の基板を製造した。
このようにして作製されたN型とP型の熱電変換部を、熱電特性評価用試料:角20mm×20mm、熱伝導率測定用試料:角50mm×50mmの評価用試料のサイズに切り出して切削面を研磨し比較用熱電変換部を作製した。作製したそれぞれの比較用熱電変換部の上部と下部に厚さ0.2mmのAl電極を半田で取り付け比較用試料とした。
[評価方法]
熱電変換部の性能の評価方法は、以下のようにして行った。
1)電気伝導率:アルバック理工社製の熱電特性評価装置ZEM−3を使用して測定した。円柱状に処理した熱電変換材料に白金線を装着し、直流四端子法により室温で電気伝導率を測定した。
2)ゼーベック係数:アルバック理工社製の熱電特性評価装置ZEM−3を使用して測定した。測定条件は、電気伝導率評価と同様の測定条件とした。
3)熱伝導率:アルバック理工社製の定常法熱伝導率測定装置GH−1を使用して測定した。
上記のように作製した第1〜第5評価用熱電変換部と比較用熱電変換部の評価結果を表1に示す。表1の結果より、本発明の断熱層を有する熱電変換部は全て熱伝導率が低下する。それに対して電気伝導率も低下するが電気伝導率の低下の程度以上に熱伝導率の改善ができており、本発明の断熱層を有する熱電変換部の性能指数は、比較用熱電変換部の性能指数に比べて高い値を示す。これは断熱材で熱電変換材料を微細に包括することや、グラファイトを使用して熱伝導部分と電気伝導部分を立体的に隔離することによる効果であり、熱電変換部全体として格子振動による熱伝導性を低下させることができたためである。
〔実施例1〕
以下の(1−1)〜(1−4)のように、実施形態1(図1)の態様の熱電変換素子1Aを作製した。基本的な作製方法は、上記の第1評価用熱電変換部の作製方法と同じである(第1評価用熱電変換部の作製を参照)。
(1−1)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角100mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を貫通孔に充填すると共に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4A及びN型熱電変換材料層6Nの3層構造である。
(1−2)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角100mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を貫通孔に充填すると共に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4B及びP型熱電変換材料層6Pの3層構造である。
(1−3)角100mm×505mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置した。なお、N型及びP型熱電変換部とAl基板との接着には半田を使用した。
(1−4)100mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層6N及びP型熱電変換材料層6Pの上部にそれぞれ配置した(以上、図1参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Aに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図1に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−19Kであった。
〔実施例2〕
以下の(2−1)〜(2−4)のように、実施形態2(図2)の態様の熱電変換素子1Bを作製した。基本的な作製方法は、上記の第3評価用熱電変換部の作製方法と同じである(第3評価用熱電変換部の作製を参照)。
(2−1)角100mm×250mm,厚さ1.5mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板上に、約5.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4C及びN型熱電変換材料層6Nの3層構造である。
(2−2)角100mm×250mm,厚さ1.5mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板上に、約5.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4D及びP型熱電変換材料層6Pの3層構造である。
(2−3)角100mm×505mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置した。なお、N型及びP型熱電変換部とAl基板との接着には半田を使用した。
(2−4)角100mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層6N及びP型熱電変換材料層6Pの上部にそれぞれ配置した(以上、図2参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Bに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図1に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−21Kであった。
〔実施例3〕
以下の(3−1)〜(3−4)のように、実施形態3(図3)の態様の熱電変換素子1Cを作製した。基本的な作製方法は、上記の第2評価用熱電変換部の作製方法と同じである(第2評価用熱電変換部の作製を参照)。
(3−1)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角100mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を貫通孔に充填すると共に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成し、その片面に角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4A、N型熱電変換材料層6N、グラファイト層5Aの4層構造とした。
(3−2)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角100mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を貫通孔に充填すると共に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成し、その片面に角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4B、P型熱電変換材料層6P、グラファイト層5Bの4層構造とした。
(3−3)角100mm×505mm、厚さ1.0mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置した。なお、N型及びP型熱電変換部とAl基板との接着には半田を使用した。
(3−4)角50mm×50mm、厚さ0.3mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、グラファイト層5A及びグラファイト層5Bの上部にそれぞれ配置した(以上、図3参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Cに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図2に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−21Kであった。
〔実施例4〕
以下の(4−1)〜(4−4)のように、実施形態4(図4)の態様の熱電変換素子1Dを作製した。基本的な作製方法は、上記の第2評価用熱電変換部の作製方法と同じである(第2評価用熱電変換部の作製を参照)。
(4−1)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角100mm×200mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を貫通孔に充填すると共に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成し、その片面に角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4A、N型熱電変換材料層6N、グラファイト層5Aの4層構造とした。この構造の場合、グラファイト層は断熱層やN型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Aには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(4−2)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角100mm×200mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を貫通孔に充填すると共に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成し、その片面に角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4B、P型熱電変換材料層6P、グラファイト層5Bの4層構造とした。この構造の場合、グラファイト層は断熱層やP型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Bには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(4−3)角100mm×405mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部材とP型熱電変換部材とを対向するように導電性基板2上に配置した。なお、N型及びP型熱電変換部とAl基板との接着には半田を使用した。
(4−4)角50mm×50mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、グラファイト層5A及びグラファイト層5Bの延在部分にそれぞれ配置した(以上、図4参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Dに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図3に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−25Kであった。
〔実施例5〕
以下の(5−1)〜(5−4)のように、実施形態5(図5)の態様の熱電変換素子1Eを作製した。基本的な作製方法は、上記の第3評価用熱電変換部の作製方法と同じである(第3評価用熱電変換部の作製を参照)。
(5−1)角100mm×200mm,厚さ1.5mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板上に、約5.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成し、その上に角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4C、N型熱電変換材料層6N、グラファイト層5Aの4層構造とした。この構造の場合、グラファイト層は断熱層やN型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Aには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(5−2)角100mm×200mm,厚さ1.5mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板上に、約5.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成し、その上に角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4D、P型熱電変換材料層6P、グラファイト層5Bの4層構造とした。この構造の場合、グラファイト層は断熱層やP型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Bには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(5−3)角100mm×405mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部材とP型熱電変換部材とを対向するように導電性基板2上に配置した。なお、N型及びP型熱電変換部とAl基板との接着には半田を使用した。
(5−4)角50mm×50mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、グラファイト層5A及びグラファイト層5Bの延在部分にそれぞれ配置した(以上、図5参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Eに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図3に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−26Kであった。
〔実施例6〕
以下の(6−1)〜(6−4)のように、実施形態6(図6)の態様の熱電変換素子1Fを作製した。基本的な作製方法は、上記の第4評価用熱電変換部の作製方法と同じである(第4評価用熱電変換部の作製を参照)。
(6−1)角100mm×505mm、厚さ0.4mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのグラスウール板よりなる絶縁層9を形成した。グラスウール板とAl基板の接着にはAlペーストを使用し600℃で焼成することで接着した。
(6−2)上記グラスウール板で隔てられたAl基板上の一方の角100mm×250mmの部分に、約1mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成し、その上に角100mm×505mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層し、続いて角100mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板の下面・側面・上面に前記グラファイトシートを接着し、最上部のグラファイト層の上面に、約1mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、グラフィト層5A、断熱層4E、グラファイト層5A、N型熱電変換材料層6Nの5層構造とした。
(6−3)上記グラスウール板で隔てられたAl基板上の他方の角100mm×250mmの部分に、約1mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成し、その上に角100mm×505mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層し、続いて角100mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板の下面・側面・上面に前記グラファイトシートを接着し、最上部のグラファイト層の上面に、約1mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、グラフィト層5B、断熱層4F、グラファイト層5B、N型熱電変換材料層6Pの5層構造とした。
(6−4)角100mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層6N及びP型熱電変換材料層6Pの上部にそれぞれ配置した(以上、図6参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Fに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図3に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−29Kであった。
〔実施例7〕
以下の(7−1)〜(7−4)のように、実施形態7(図7)の態様の熱電変換素子1Gを作製した。基本的な作製方法は、上記の第5評価用熱電変換部の作製方法と同じである(第5評価用熱電変換部の作製を参照)。
(7−1)角100mm×505mm、厚さ0.4mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのグラスウール板よりなる絶縁層9を形成した。グラスウール板とAl基板の接着にはAlペーストを使用し600℃で焼成することで接着した。
(7−2)上記グラスウール板で隔てられたAl基板上の一方の角100mm×250mmの部分に、約1mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成し、その上に角100mm×505mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層し、続いて厚さ1mmの板状のグラスウール板で四方を囲んだ角100mm×250mm,厚さ5mmの形状で中が角100mm×248mm,厚さ3mmの空洞となっている筒状のグラスウール板の下面・側面・上面に前記グラファイトシートを接着し、最上部のグラファイト層の上面に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、グラフィト層5A、断熱層4G、グラファイト層5A、N型熱電変換材料層6Nの5層構造とした。
(7−3)上記グラスウール板で隔てられたAl基板上の他方の角100mm×250mmの部分に、約1mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成し、その上に角100mm×505mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層し、続いて厚さ1mmの板状のグラスウール板で四方を囲んだ角100mm×250mm,厚さ5mmの形状で中が角100mm×248mm,厚さ3mmの空洞となっている筒状のグラスウール板の下面・側面・上面に前記グラファイトシートを接着し、最上部のグラファイト層の上面に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、グラフィト層5B、断熱層4H、グラファイト層5B、N型熱電変換材料層6Pの5層構造とした。
(7−4)角100mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層6N及びP型熱電変換材料層6Pの上部にそれぞれ配置した(以上、図7参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Gに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図7に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−30Kであった。
〔比較例1〕
以下のように、比較形態1(図12)の態様の熱電変換素子1Kを作製した。基本的な作製方法は、上記の比較用熱電変換部の作製方法と同じである(比較用熱電変換部の作製を参照)。
N型熱電変換部として、角100mm×250mm,厚さ7mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板を用意し、P型熱電変換部として、角100mm×250mm,厚さ7mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板を用意し、角100mm×505mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置し、N型熱電変換部とP型熱電変換部の上部に、角100mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを配置した(以上、図12参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Kに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図1に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−15Kであった。
〔比較例2〕
以下のように、比較形態2(図13)の態様の熱電変換素子1Lを作製した。
100mm×200mm,厚さ7mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板に、角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してN型熱電変換部を作製した。角100mm×200mm,厚さ7mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板に、角100mm×250mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してP型熱電変換部を作製した。
角100mm×405mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央に、角100×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置し、N型熱電変換部とP型熱電変換部の延在部分に、角50mm×50mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを配置した(以上、図13参照)。
以上の工程で作製された熱電変換素子1Lに電圧・電流を流し、そのときの温度変化を調べて素子の評価を行った。熱電対を図3に示す温度測定点にセットし、室温25℃、湿度50%RHの環境で、電極8Aと電極8Bとの間に8V・8Aの電圧・電流を流した。そのときの温度測定点の温度変化は、ΔT:−19Kであった。
〔実施例8〕
実施形態8(図8)の態様の熱電変換発電装置1Hを作製し熱電発電の評価を行った。
熱電変換発電装置1Hは、実施形態8で述べたように、発電に寄与する第1の熱電変換素子1Aと、第1の熱電変換素子に安定した温度差を与えるためにペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子10A,10Bを組み合わせたものである。
第1の熱電変換素子1Aは、実施例1(実施形態1,図1)の態様の素子であり、以下の(8−1)〜(8−4)のように作製した。図8及び図1を参照しながら説明する。
(8−1)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角105mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を貫通孔に充填すると共に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4A及びN型熱電変換材料層6Nの3層構造である。
(8−2)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角105mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を貫通孔に充填すると共に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4B及びP型熱電変換材料層6Pの3層構造である。
(8−3)角105mm×505mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央下部に、角105×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2下部に配置した。
(8−4)角105mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層6N及びP型熱電変換材料層6Pの下部にそれぞれ配置し、電極8A,8B下部に接触するようにペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子10A,10Bを配置した(以上、図8、図1参照)。
また、図8の装置のペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子10A,10Bは、以下の(8−5)〜(8−8)のように作製した。このペルチェ素子10A,10Bは、実施例4(実施形態4,図4)と基本的な構造が同じであるので、図4を参照しながら説明する。なお、作製したペルチェ素子10Aの斜視図を図11に示す。
(8−5)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角50mm×230mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を貫通孔に充填すると共に、N型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成し、その片面に角50mm×500mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4A、N型熱電変換材料層6N、グラファイト層5Aの4層構造とした。この構造の場合、グラファイトシートは断熱層やN型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Aには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(8−6)φ0.3mmの貫通孔を0.5mmピッチで全面に有する角50mm×230mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を貫通孔に充填すると共に、P型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)よりなる約1.0mmの層をグラスウール板の表裏面に形成し、その片面に角50mm×500mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4B、P型熱電変換材料層6P、グラファイト層5Bの4層構造とした。この構造の場合、グラファイト層は断熱層やP型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Bには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(8−7)角105mm×230mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2(図8、図11では10AL,10BL)の中央部に、角5mm×230mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んでN型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置した。
(8−8)角50mm×250mm,厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A,8B(図8、図11では10AH,10BH)を、グラファイト層5A,5Bの積層よりはみ出た延在部の端にそれぞれ配置した(以上、図4参照)。
以上の工程で製造したペルチェ素子10A,10Bの表面・裏面を、厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)社製)でカバーし絶縁した。
なお、図8参照、ペルチェ素子10A,10Bの吸熱作用部(電極10AL,10BL)は、発電に寄与する熱電変換素子1Aの低温作用部(電極8A,8B)に接触して配置され、ペルチェ素子10A,10Bの発熱作用部(電極10AH,10BH)は、熱電変換素子1Aの高温作用部(導電性基板2)に接触して配置され、熱電変換発電装置1Hを構成する。
以上の工程で作製された熱電変換発電装置1Hの熱電発電特性を評価した。平均気温25℃の日中12:00から16:00までの間、南向きにパネルを設置し、それぞれのペルチェ素子10A,10Bに2V・3Aの電圧・電流を供給し駆動させ続け、その間に熱電変換発電素子1Aの電極8Aと電極8B間で発電される電圧・電流を検知し評価した。合計12Wの入力に対して平均して約16.1Wの出力を検知することができた。
〔実施例9〕
実施形態9(図9)の態様の熱電変換発電装置1Iを作製し熱電発電の評価を行った。
熱電変換発電装置1Iは、実施形態9で述べたように、発電に寄与する第1の熱電変換素子1Bと、第1の熱電変換素子に安定した温度差を与えるためにペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子20A,20Bを組み合わせたものである。
第1の熱電変換素子1Bは、実施例2(実施形態2,図2)の態様の素子であり、以下の(9−1)〜(9−4)のように作製した。図9及び図2を参照しながら説明する。
(9−1)角105mm×250mm,厚さ1.5mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板上に、約5.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4C及びN型熱電変換材料層6Nの3層構造である。
(9−2)角105mm×250mm,厚さ1.5mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板上に、約5.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4D及びP型熱電変換材料層6Pの3層構造である。
(9−3)角105mm×505mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央下部に、角105×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2下部に配置した。
(9−4)角105mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層6N及びP型熱電変換材料層6Pの下部にそれぞれ配置し、電極8A,8B下部に接触するようにペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子20A,20Bを配置した(以上、図9、図2参照)。
また、図9の装置のペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子20A,20Bは、以下の(9−5)〜(9−8)のように作製した。このペルチェ素子20A,20Bは、実施例5(実施形態5,図5)と基本的な構造が同じであるので、図5を参照しながら説明する。なお、参考に作製したペルチェ素子の斜視図を図11に示す。
(9−5)角50mm×230mm,厚さ1.5mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板上に、約5.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成し、その上に角50mm×500mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、断熱層4C、N型熱電変換材料層6N、グラファイト層5Aの4層構造とした。この構造の場合、グラファイト層は断熱層やN型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Aには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(9−6)角50mm×230mm,厚さ1.5mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板上に、約3.0mmの厚みのグラスウール基板を粉砕した断熱材粉末よりなる多孔質断熱層を形成し、その上からP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)を断熱層の孔部分に埋め込むように印刷して、断熱層の上に約0.5mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成し、その上に角50mm×500mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、断熱層4D、P型熱電変換材料層6P、グラファイト層5Bの4層構造とした。この構造の場合、グラファイト層は断熱層やP型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Bには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(9−7)角105mm×230mm、厚さ1.0mmのAl基板よりなる導電性基板2(図9では20AL,20BL、図11では10AL)の中央部に、角5mm×230mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んでN型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置した。
(9−8)角50mm×250mm,厚さ0.3mmのAl基板よりなる電極8A,8B(図9では20AH,20BH、図11では10AH)を、グラファイト層5A,5Bの積層よりはみ出た延在部の端にそれぞれ配置した(以上、図5参照)。
以上の工程で製造したペルチェ素子20A,20Bの表面・裏面を、厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)社製)でカバーし絶縁した。
なお、図9参照、ペルチェ素子20A,20Bの吸熱作用部(電極20AL,20BL)は、発電に寄与する熱電変換素子1Bの低温作用部(電極8A,8B)に接触して配置され、ペルチェ素子20A,20Bの発熱作用部(電極20AH,20BH)は、熱電変換素子1Bの高温作用部(導電性基板2)に接触して配置され、熱電変換発電装置1Iを構成する。
以上の工程で作製された熱電変換発電装置1Iの熱電発電特性を評価した。平均気温25℃の日中12:00から16:00までの間、南向きにパネルを設置し、それぞれのペルチェ素子20A,20Bに2V・3Aの電圧・電流を供給し駆動させ続け、その間に熱電変換発電素子1Bの電極8Aと電極8B間で発電される電圧・電流を検知し評価した。合計12Wの入力に対して平均して約16.6Wの出力を検知することができた。
〔実施例10〕
実施形態10(図10)の態様の熱電変換発電装置1Jを作製し熱電発電の評価を行った。
熱電変換発電装置1Jは、実施形態10で述べたように、発電に寄与する第1の熱電変換素子1Fと、第1の熱電変換素子に安定した温度差を与えるためにペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子20A,20Bを組み合わせたものである。
第1の熱電変換素子1Fは、実施例6(実施形態6,図6)の態様の素子であり、以下の(10−1)〜(10−4)のように作製した。図10及び図6を参照しながら説明する。
(10−1)角105mm×505mm、厚さ0.4mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央下部に、角100×5mm,高さ7.5mmのグラスウール板よりなる絶縁層9を形成した。グラスウール板とAl基板の接着にはAlペーストを使用し600℃で焼成することで接着した。
(10−2)上記グラスウール板で隔てられたAl基板上の一方の角105mm×250mmの部分に、約1mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成し、その上に角105mm×505mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層し、続いて角105mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板の下面・側面・上面に前記グラファイトシートを接着し、最上部のグラファイト層の上面に、約1mmの厚みのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)層を形成してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、グラフィト層5A、断熱層4E、グラファイト層5A、N型熱電変換材料層6Nの5層構造とした。
(10−3)上記グラスウール板で隔てられたAl基板上の他方の角105mm×250mmの部分に、約1mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成し、その上に角105mm×505mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層し、続いて角105mm×250mm,厚さ5mmの板状のグラスウール板の下面・側面・上面に前記グラファイトシートを接着し、最上部のグラファイト層の上面に、約1mmの厚みのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)層を形成してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、グラフィト層5B、断熱層4F、グラファイト層5B、N型熱電変換材料層6Pの5層構造とした。
(10−4)角105mm×250mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層6N及びP型熱電変換材料層6Pの上部にそれぞれ配置した(以上、図10、図6参照)。
また、図10の装置のペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子20A,20Bは、実施例9のペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子20A,20Bと全く同じものを使用した。よってペルチェ素子20A,20Bの製造工程は上記の(9−5)〜(9−8)の製造工程を参照されたし。
なお、図10参照、ペルチェ素子20A,20Bの吸熱作用部(電極20AL,20BL)は、発電に寄与する熱電変換素子1Fの低温作用部(電極8A,8B)に接触して配置され、ペルチェ素子20A,20Bの発熱作用部(電極20AH,20BH)は、熱電変換素子1Fの高温作用部(導電性基板2)に接触して配置され、熱電変換発電装置1Jを構成する。
以上の工程で作製された熱電変換発電装置1Jの熱電発電特性を評価した。平均気温25℃の日中12:00から16:00までの間、南向きにパネルを設置し、それぞれのペルチェ素子20A,20Bに2V・3Aの電圧・電流を供給し駆動させ続け、その間に熱電変換発電素子1Cの電極8Aと電極8B間で発電される電圧・電流を検知し評価した。合計12Wの入力に対して平均して約17.7Wの出力を検知することができた。
〔比較例3〕
比較例3(図14)の態様の熱電変換発電装置1Mを作製し熱電発電の評価を行った。
熱電変換発電装置1Mは、比較形態3で述べたように、発電に寄与する第1の熱電変換素子1Kと、第1の熱電変換素子に安定した温度差を与えるためにペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子40A,40Bを組み合わせたものである。
第1の熱電変換素子1Kは、比較例1(比較形態1,図12)の態様の素子であり、以下の(11−1)〜(11−4)のように作製した。図14及び図12を参照しながら説明する。
(11−1)N型熱電変換部として、角105mm×250mm,厚さ7mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板を用意した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3Nのみである。
(11−2)P型熱電変換部として、角105mm×250mm,厚さ7mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板を用意した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3Pのみである。
(11−3)角105mm×505mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2の中央下部に、角105×5mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んで、N型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2下部に配置した。
(11−4)角105mm×250mm、厚さ0.3mmのAl基板よりなる電極8A及び電極8Bを、N型熱電変換材料層3N及びP型熱電変換材料層3Pの下部にそれぞれ配置し、電極8A,8B下部に接触するようにペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子40A,40Bを配置した(以上、図14、図12参照)。
また、図14の装置のペルチェ素子として使用する第2、第3の熱電変換素子40A,40Bは、以下の(11−5)〜(11−8)のように作製した。このペルチェ素子40A,40Bは、比較例2(比較形態2,図13)と基本的な構造が同じであるので、図13を参照しながら説明する。
(11−5)角50mm×230mm,厚さ7mmのN型熱電変換材料(Bi2Te2.7Se0.3)の基板に、角50mm×500mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してN型熱電変換部を作製した。N型熱電変換部は、N型熱電変換材料層3N、グラファイト層5Aの2層構造とした。この構造の場合、グラファイト層はN型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Aには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(11−6)角50mm×230mm,厚さ7mmのP型熱電変換材料(Bi0.5Sb1.5Te3)の基板に、角50mm×500mm,厚さ50μmのグラファイトシートを積層してP型熱電変換部を作製した。P型熱電変換部は、P型熱電変換材料層3P、グラファイト層5Bの2層構造とした。この構造の場合、グラファイト層はP型熱電変換材料層よりも幅が長いので、グラファイト層5Bには、積層よりはみ出た延在部分が存在する。
(11−7)角105mm×230mm、厚さ0.2mmのAl基板よりなる導電性基板2(図14では40AL,40BL)の中央部に、角5mm×230mm,高さ7.5mmのアクリル板よりなる絶縁層9を形成し、絶縁層9を挟んでN型熱電変換部とP型熱電変換部とを対向するように導電性基板2上に配置した。
(11−8)角50mm×250mm,厚さ0.2mmのAl基板よりなる電極8A,8B(図14では40AH,40BH)を、グラファイト層5A,5Bの積層よりはみ出た延在部の端にそれぞれ配置した(以上、図13参照)。
以上の工程で製造したペルチェ素子40A,40Bの表面・裏面を、厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)社製)でカバーし絶縁した。
なお、図14参照、ペルチェ素子40A,40Bの吸熱作用部(電極40AL,40BL)は、発電に寄与する熱電変換素子1Kの低温作用部(電極8A,8B)に接触して配置され、ペルチェ素子40A,40Bの発熱作用部(電極40AH,40BH)は、熱電変換素子1Kの高温作用部(導電性基板2)に接触して配置され、熱電変換発電装置1Mを構成する。
以上の工程で作製された熱電変換発電装置1Mの熱電発電特性を評価した。平均気温25℃の日中12:00から16:00までの間、南向きにパネルを設置し、それぞれのペルチェ素子40A,40Bに2V・3Aの電圧・電流を供給し駆動させ続け、その間に熱電変換発電素子1Kの電極8Aと電極8B間で発電される電圧・電流を検知し評価した。合計12Wの入力に対して平均して約14.3Wの出力を検知することができた。
以上の実施形態で示した断熱層と熱電変換材料層は3層よりも多層に積層することもできる。また、実施形態で示した種々の特徴は、互いに組み合わせることもできる。例えば、実施形態8に係る熱電変換発電装置において、同装置に使用される実施形態1に係る熱電変換発電素子1Aを実施形態7に係る熱電変換素子1Gに置き換えてもよい。