JP2013039912A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 モータジェネレータの回生トルクが使用できない場合であっても、スムーズにアップシフトを行うことが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】 ハイブリッド車両において、有段式自動変速機のアップシフトにおけるイナーシャフェーズ中に動力源を所望の回転数と一致するように制御するとき、バッテリの蓄電量が所定値以上のときは、エンジンの燃料噴射を停止し、第1締結要素の締結トルク容量により制御することとした。
【選択図】 図2
【解決手段】 ハイブリッド車両において、有段式自動変速機のアップシフトにおけるイナーシャフェーズ中に動力源を所望の回転数と一致するように制御するとき、バッテリの蓄電量が所定値以上のときは、エンジンの燃料噴射を停止し、第1締結要素の締結トルク容量により制御することとした。
【選択図】 図2
Description
本発明は、有段式自動変速機を備え、アップシフトにおいて入力側の回転数を制御するハイブリッド車両の制御装置に関する。
ハイブリッド車両の制御装置として特許文献1の技術が開示されている。この公報には、自動変速機の変速制御時において、モータジェネレータが使用できないときにエンジンのスロットル弁を用いて同期制御を行う技術が開示されている。
自動変速機の特にアップシフトでは、自動変速機の入力側の回転数を低下させる必要がある。しかしながら、スロットル弁を制御したとしても、エンジンの出力するトルクは正のままであるため、バッテリの蓄電量が所定値以上であってモータジェネレータの回生トルクが使用できないときは、スムーズにアップシフトを行うことが困難であった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、モータジェネレータの回生トルクが使用できない場合であっても、スムーズにアップシフトを行うことが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、有段式自動変速機のアップシフトにおけるイナーシャフェーズ中に動力源を所望の回転数と一致するように制御するとき、バッテリの蓄電量が所定値以上のときはエンジンの燃料噴射を停止し、第1締結要素の締結トルク容量により制御することとした。
よって、本発明のハイブリッド車両の制御装置にあっては、エンジンの燃料噴射を停止することで、エンジンに負のトルクを発生させることができる。よって、有段式自動変速機の入力側回転数を効果的に低下させることが可能となり、モータジェネレータの回生トルクを使用することなくスムーズなアップシフトを達成できる。
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
〔実施例1〕
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。図1は実施例1の後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。尚、FLは左前輪、FRは右前輪である。
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。図1は実施例1の後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。尚、FLは左前輪、FRは右前輪である。
エンジンEは、例えばガソリンエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。尚、エンジン出力軸にはフライホイールFWが設けられている。
第1クラッチCL1は、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されたクラッチであり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。尚、このモータジェネレータMGのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装されたクラッチであり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
自動変速機ATは、前進5速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機であり、第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。
そして、自動変速機ATの出力軸は、車両駆動軸としてのプロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。尚、前記第1クラッチCL1と第2クラッチCL2には、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチを用いている。
このハイブリッド駆動系には、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて3つの走行モードを有する。第1走行モードは、第1クラッチCL1の開放状態で、モータジェネレータMGの動力のみを動力源として走行するモータ使用走行モードとしての電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」と略称する。)である。第2走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」と略称する。)である。第3走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSC走行モード」と略称する。)である。このモードは、特にバッテリSOCが低いときやエンジン水温が低いときに、クリープ走行を達成可能なモードである。尚、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときは、第1クラッチCL1を締結し、モータジェネレータMGのトルクを用いてエンジン始動を行う。
上記「HEV走行モード」には、「エンジン走行モード」と「モータアシスト走行モード」と「走行発電モード」との3つの走行モードを有する。
「エンジン走行モード」は、エンジンEのみを動力源として駆動輪を動かす。「モータアシスト走行モード」は、エンジンEとモータジェネレータMGの2つを動力源として駆動輪を動かす。「走行発電モード」は、エンジンEを動力源として駆動輪RR,RLを動かすと同時に、モータジェネレータMGを発電機として機能させる。
定速運転時や加速運転時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる。また、減速運転時は、制動エネルギを回生してモータジェネレータMGにより発電し、バッテリ4の充電のために使用する。
また、更なるモードとして、車両停止時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる発電モードを有する。
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。尚、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いの情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続されている。
エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報を入力し、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne:エンジン回転数,Te:エンジントルク)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。尚、エンジン回転数Ne等の情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報を入力し、統合コントローラ10からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm:モータジェネレータ回転数,Tm:モータジェネレータトルク)を制御する指令をインバータ3へ出力する。尚、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態を表すバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14と第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。尚、第1クラッチストロークC1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と車速センサ17と第2クラッチ油圧センサ18と運転者の操作するシフトレバーの位置に応じた信号を出力するインヒビタスイッチからのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令に応じ、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。尚、アクセルペダル開度APと車速VSPとインヒビタスイッチの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19とブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報を入力し、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(摩擦ブレーキによる制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22と、第2クラッチ伝達トルク容量TCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ23と、ブレーキ油圧センサ24と、第2クラッチCL2の温度を検知する温度センサ10aと、前後加速度を検出するGセンサ10bからの情報およびCAN通信線11を介して得られた情報を入力する。
また、統合コントローラ10は、エンジンコントローラ1への制御指令によるエンジンEの動作制御と、モータコントローラ2への制御指令によるモータジェネレータMGの動作制御と、第1クラッチコントローラ5への制御指令による第1クラッチCL1の締結・開放制御と、ATコントローラ7への制御指令による第2クラッチCL2の締結・開放制御と、を行う。
〔アップシフト制御処理〕
次に、アップシフト制御処理について説明する。図2,3は統合コントローラ10内で行われるアップシフト制御処理を表すフローチャートである。尚、本制御フローはHEV走行モードにおいてアップシフト要求が出力され、更にSOCが高くモータジェネレータMGにおいて回生トルクが使用できない場合の制御である。基本的には第1クラッチCL1が完全締結されたままで制御が開始されるものとする。そして、自動変速機AT側では、第2クラッチCL2を含む複数の摩擦締結要素の掛け換え制御によってアップシフト変速が実行されるものとする。
次に、アップシフト制御処理について説明する。図2,3は統合コントローラ10内で行われるアップシフト制御処理を表すフローチャートである。尚、本制御フローはHEV走行モードにおいてアップシフト要求が出力され、更にSOCが高くモータジェネレータMGにおいて回生トルクが使用できない場合の制御である。基本的には第1クラッチCL1が完全締結されたままで制御が開始されるものとする。そして、自動変速機AT側では、第2クラッチCL2を含む複数の摩擦締結要素の掛け換え制御によってアップシフト変速が実行されるものとする。
ステップS101では、HEV走行モードか否かを判断し、HEV走行モードのときはステップS102へ進み、それ以外のときは他の制御を実行する。他の制御とは、具体的にはWSC走行モードやEV走行モードにおける変速制御である。
ステップS102では、アップシフト要求が行われているか否かを判断し、アップシフト要求があるときはステップS103へ進み、それ以外のときは他の制御を実行する。この場合の他の制御とは、具体的にはHEV走行モードにおけるダウンシフト制御、あるいは変速段を維持する制御である。
ステップS103では、SOCが所定値以上か否かを判断し、所定値以上のときはステップS104へ進み、それ以外のときは他の制御を実行する。この場合の他の制御とは、具体的にはモータジェネレータMGの回生トルクを使用した回転数制御である。本ステップでは、モータジェネレータMGが回生トルクを使用できるか否かを判断するステップであり、SOCの所定値とは、これ以上発電・充電を行うとバッテリ4が過充電となり発熱や蓄電量過多による耐久性の低下を招くおそれがある所定の高SOC状態に相当する値である。
ステップS104では、イナーシャフェーズが開始したか否かを判断し、開始したときはステップS105へ進み、それ以外のときはステップS101へ進む。ここで、イナーシャフェーズとは、有段式自動変速機において、変速時に実ギヤ比が変速前変速段に相当するギヤ比から変速後変速段に相当するギヤ比に向けて変化する状態を表す。よって、実ギヤ比の変化等に基づいてイナーシャフェーズの検知を行えばよい。
ステップS105では、エンジンの燃料噴射を停止する所謂フューエルカットを実行する。
ステップS106では、モータジェネレータMGの制御をトルク制御から回転数制御に切り換える。ここで、トルク制御とは、運転者のアクセルペダル開度等に基づいて決定された要求駆動力に応じたトルクをエンジンE及びモータジェネレータMGから構成された動力源から自動変速機ATに出力する制御である。一方、回転数制御とは、自動変速機ATに出力する回転数(すなわち動力源の回転数)を設定された目標回転数と一致するように制御するものである。
図3は回転数制御を表すフローチャートである。尚、図3に示す回転数制御は、HEV走行モードであって、アップシフト要求が出力され、SOCが所定値以上のときに、エンジンEのフューエルカットを実行したときの回転数制御である。回転数制御としては主にモータジェネレータMGにより行われる。
ステップS201では、モータジェネレータMGの回転数Nmが所定回転数に到達したか否かを判断し、所定回転数に到達したときはステップS300へ進み、到達していないときはステップS202へ進む。尚、この所定回転数とは、主にイナーシャフェーズ開始後、素早く回転数を低下させる区間である第1回転数制御区間を表す回転数である。よって、アップシフト前変速段(低変速段)に相当するモータジェネレータMGの回転数Nm(n-1)からアップシフト後変速段(高変速段)に相当するモータジェネレータMGの回転数Nm(n)の間であって、Nm(n-1)とNm(n)の中間よりもNm(n)寄りに設定された回転数である。
ステップS202では、モータジェネレータMGの回転数Nmが第1勾配で低下するように目標回転数を設定する(第1回転数制御)。この第1勾配は、変速種(1速→2速、2速→3速等),アクセルペダル開度及び車速等に応じて適宜設定される値であり、イナーシャトルクが出力軸に影響を与えない範囲で適宜設定される。
ステップS203では、モータジェネレータMGによるフィードバック制御を実行する。このフィードバック制御とは、目標回転数と実モータジェネレータ回転数との偏差に応じたトルクをモータジェネレータに付与し、これにより目標回転数と実モータジェネレータ回転数とを一致させるものである。エンジンEのフューエルカットによってエンジントルクが負側に大きく低下していることから、この状態でモータジェネレータMGによるフィードバック制御を行ったとしても、常時力行トルクを使用することになる。よって、SOCが所定値以上であっても、モータジェネレータMGが力行トルクを使用する分には問題がない。
ステップS300では、第1回転数制御を終了すると共に、エンジンEのフューエルカットを終了する。これにより、エンジンEは正トルクの出力を再開する。
ステップS301では、モータジェネレータMGの回転数Nmが第2勾配で低下するように目標回転数を設定する(第2回転数制御)。この第2勾配は、第1勾配よりも緩やかな勾配に設定されており、変速時に回転数が変化する回転メンバ等のイナーシャトルクを吸収することでアップシフト完了時における締結ショック等を緩和する。実施例1では、第2回転数制御として、一旦所定回転数に維持し、その後ランプ状に低下するようにしているが、第2回転数制御に移行してからイナーシャフェーズが完了するまでの平均勾配が第1勾配より小さければよい。
ステップS302では、モータジェネレータ回転数Nmがアップシフト後変速段(高変速段)に相当するモータジェネレータMGの回転数Nm(n)に到達したか否かを判断し、到達したと判断したときはイナーシャフェーズの完了と判断してステップS304へ進み、それ以外のときはイナーシャフェーズ中と判断してステップS303へ進む。
ステップS303では、第2回転数制御によるフィードバック制御を継続してステップS302へ戻る。
ステップS304では、イナーシャフェーズが完了したと判断して回転数制御からトルク制御に切り換える。
上記フローチャートに基づく作用について説明する。図4はHEV走行モードにおいてアップシフト要求が出力され、更にSOCが高くモータジェネレータMGにおいて回生トルクが使用できない場合のタイムチャートである。
時刻t1において、アップシフト要求が出力されると、変速後の変速段を達成する締結側締結要素の締結圧Apply_PRSはクラッチのガタ詰めを行うプリチャージ圧の供給が開始され、一方、変速前の変速段を達成する解放側締結要素の締結圧Release_PRSは完全締結可能な締結圧から変速比が変化しないギリギリの締結圧に低下させる(前処理)。
時刻t2において、前処理が終了すると、締結側締結要素の締結圧Apply_PRSを徐々に増加させると共に、解放側締結要素の締結圧Release_PRSを徐々に減少させる(AC21)。
時刻t3において、実ギヤ比が変化を開始し、イナーシャフェーズの開始が確認されると、締結側締結要素の締結圧Apply_PRS及び解放側締結要素の締結圧Release_PRSを保持状態として、イナーシャフェーズを進行させる。尚、締結側締結要素の締結圧Apply_PRSは、アップシフト後のギヤ比にこの締結圧Apply_PRSに相当するトルクを乗算した値が、アップシフト後の目標駆動トルクを達成する値に保持することが好ましい。また、締結圧によってイナーシャフェーズを進行させるのではなく、動力源(エンジンE+モータジェネレータMG)の回転数制御によってイナーシャフェーズを進行させる。
このイナーシャフェーズの進行は第1回転数制御によって実行される。具体的には、エンジンEをフューエルカットすると共に、動力源の制御をトルク制御から回転数制御に切り換える。これにより、動力源は、第1勾配が設定された目標回転数と一致するように制御される(AC31)。特に、この第1回転数制御では、モータジェネレータMGの回転数を素早く低下させることで、素早いアップシフトを達成させる。
時刻t3から時刻t4の間は、エンジントルクが負側であり、この区間で回転数制御を行ったとしても、モータジェネレータMGは回生トルクを必要とせず、基本的に力行トルクのみでフィードバック制御を達成できる。これにより、エンジン回転数が大きく低下して逆回転するのを防止しつつ、バッテリ4が過充電となることを防止する。
時刻t4において、モータジェネレータMGの回転数が所定回転数に到達すると、十分にイナーシャフェーズが進行し、その後は、自動変速機AT側で第2クラッチCL2等を完全締結する際の締結ショックを回避する必要がある。そのため、フューエルカットを停止して燃料噴射を再開すると共に、第2回転数制御に切り換える(AC41)。第2回転数制御では、第1勾配よりも緩やかな第2勾配が設定された目標回転数と一致するように制御される。これにより、イナーシャトルクの出力軸トルクへの影響を回避する。
時刻t5において、モータジェネレータMGの回転数がNm(n)に到達し、イナーシャフェーズが完了すると、締結側締結要素の締結圧Apply_PRSを完全締結となるまで徐々に増加させると共に、解放側締結要素の締結圧Release_PRSを完全解放となるまで徐々に減少させる。
時刻t6において、解放側締結要素が完全解放となると、更に締結側締結要素の締結圧を上昇させて完全締結状態とする(後処理)。そして、時刻t7においてアップシフトが完了する。
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)回転数制御において、SOCが所定値以上のときはエンジンEの燃料噴射を停止してモータジェネレータMGの力行トルクにより回転数制御することとした。
(1)回転数制御において、SOCが所定値以上のときはエンジンEの燃料噴射を停止してモータジェネレータMGの力行トルクにより回転数制御することとした。
よって、エンジンに負のトルクを発生させることで、有段式自動変速機ATの入力側回転数を効果的に低下させることが可能となり、モータジェネレータの回生トルクを使用することなくスムーズなアップシフトを達成できる。
(2)動力源(エンジンE+モータジェネレータMG)の回転数をイナーシャフェーズ開始から所定回転数まで第1の勾配で低下させる第1回転数制御において燃料噴射を停止し、所定回転数からアップシフト終了後の回転数まで前記第1の勾配よりも小さな第2の勾配で低下させる第2回転数制御において燃料噴射を再開することとした。
よって、イナーシャフェーズの初期においては効果的に動力源の回転数を低下させ、イナーシャフェーズの後期においてはイナーシャトルクの出力軸トルクへの影響を回避することができる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため異なる点についてのみ説明する。
実施例1では、イナーシャフェーズの初期においてモータジェネレータMGの回転数を制御する際、モータジェネレータMGの力行トルクを用いて回転数制御を実行した。これに対し、実施例2では、モータジェネレータMGのトルクを0に設定し、フューエルカット時の負のエンジントルクをどの程度モータジェネレータMGに伝達するかによって、すなわち第1クラッチCL1の締結トルク容量制御によってモータジェネレータMGの回転数制御を実行する点が異なる。
図5は実施例2の回転数制御を表すフローチャートである。尚、ステップS201〜S202、及びステップS300,S301〜S304については実施例1と同じであるため、異なるステップについてのみ説明する。
ステップS213では、モータジェネレータMGのトルクTmを0に設定する。これにより、無駄なエネルギ消費を回避する。
ステップS214では、第1クラッチCL1の締結トルク容量を制御し、モータジェネレータMGの回転数と実モータジェネレータ回転数とが一致するようにフィードバック制御を実行する。
すなわち、エンジントルクはフューエルカットに伴い、大きな負トルクを発生している。この負トルクは、第1クラッチCL1の締結トルク容量が大きいときはそのままモータジェネレータMGに伝達され、モータジェネレータMGの回転数を大きく引き下げようとする。一方、第1クラッチCL1の締結トルク容量が小さいときは、さほどモータジェネレータMGに伝達されず、モータジェネレータMGの回転数を大きく引き下げようとはしない。
この関係を利用して、実モータジェネレータ回転数が目標回転数よりも低いときは第1クラッチCL1の締結トルク容量を小さくしてモータジェネレータMGの回転数の低下速度を抑制し、実モータジェネレータ回転数が目標回転数よりも高いときは第1クラッチCL1の締結トルク容量を大きくしてモータジェネレータMGの回転数の低下速度を大きくする。
ステップS310では、実モータジェネレータ回転数Nmと実エンジン回転数Neが略一致しているか否かを判断し、略一致していると判断したときはステップS311へ進んで第1クラッチCL1を完全締結する。一致していないときは一致するまで待機する。これにより、第1クラッチCL1の完全締結に伴う締結ショックを回避する。尚、フューエルカットの終了に伴い、エンジントルクTeが急激に立ち上がってくる。このとき、仮にエンジン回転数Neが吹け上がろうとしても、第1クラッチCL1がスリップ状態であるため、エンジン回転数変動を滑らかに吸収できる。
上記フローチャートに基づく作用について説明する。図6はHEV走行モードにおいてアップシフト要求が出力され、更にSOCが高くモータジェネレータMGにおいて回生トルクが使用できない場合のタイムチャートである。時刻t1〜t3までは実施例1と同じであるため説明を省略する。
時刻t3において、イナーシャフェーズの開始が検知されると、モータジェネレータトルクTmを0に設定すると共に、第1クラッチCL1による回転数制御に切り換える。
時刻t31において、モータジェネレータトルクTmが0になり、更に目標回転数に一致させるためにエンジントルクTeよりも大きなトルクが必要と判断されると、第1クラッチCL1の締結トルク容量を低下させる。これにより、エンジンEからモータジェネレータMGに伝達される負のトルクは小さくなる。その後、エンジン回転数Neはモータジェネレータ回転数Nmよりも大きく低下していく。
時刻t4において、モータジェネレータ回転数Nmが所定回転数に到達すると、フューエルカットを停止する。このとき、エンジン回転数Neとモータジェネレータ回転数Nmとが略一致しているため、同時に第1クラッチCL1を完全締結に移行させる。尚、仮に、エンジン回転数Neが大きく低下し、実モータジェネレータ回転数と一致していない場合であっても、燃料噴射を再開しているため、若干待機すれば、すぐにエンジン回転数Neとモータジェネレータ回転数Nmとは一致する。このように、略一致するまで待機し、その後第1クラッチCL1を完全締結することで、締結ショックを回避することができる。
時刻t5以降は実施例1と同じであるため説明を省略する。
以上説明したように、実施例2にあっては実施例1に記載の効果に加えて下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(3)SOCが所定値以上のときはエンジンの燃料噴射を停止して第1クラッチCL1の締結トルク容量制御により回転数制御することとした。
(3)SOCが所定値以上のときはエンジンの燃料噴射を停止して第1クラッチCL1の締結トルク容量制御により回転数制御することとした。
よって、エンジンに負のトルクを発生させることで、有段式自動変速機ATの入力側回転数を効果的に低下させることが可能となり、モータジェネレータの回生トルクを使用することなくスムーズなアップシフトを達成できる。また、フューエルカットの終了に伴い、エンジントルクTeが急激に立ち上がってくる。このとき、仮にエンジン回転数Neが吹け上がろうとしても、第1クラッチCL1がスリップ状態であるため、エンジン回転数変動を滑らかに吸収できる。
(4)燃料噴射を停止しているときはモータジェネレータMGのトルクTmを0に設定することとした。よって、無駄なエネルギ消費を回避することができる。
以上、実施例1,2に基づいて説明したが、上記構成に限られず本発明の範囲を逸脱しない範囲で他の構成を取り得る。
例えば、実施例1,2では、FR型のハイブリッド車両について説明したが、FF型のハイブリッド車両であっても構わない。
また、実施例1では第1クラッチCL1を完全締結とし、その状態でモータジェネレータMGの力行トルクによって回転数制御を行い、実施例2では、モータジェネレータMGを用いず第1クラッチCL1の締結トルク容量制御によって回転数制御を行うこととしたが、これらを適宜組み合わせて制御してもよい。例えば、第1クラッチCL1の締結トルク容量制御は応答性に限界があるため、その限界を補う形でモータジェネレータに適宜力行トルクを発生させてもよい。また、力行トルクを発生させた状態で第1クラッチCL1の制御性が良好な範囲に調節し、その範囲で第1クラッチCL1の締結トルク容量制御を実行してもよい。
E エンジン
CL1 第1クラッチ
MG モータジェネレータ
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
CL1 第1クラッチ
MG モータジェネレータ
CL2 第2クラッチ
AT 自動変速機
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 ATコントローラ
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
Claims (3)
- エンジンとモータジェネレータとが直列に配置された動力源と、
前記エンジンと前記モータジェネレータとの間に介装され前記エンジンと前記モータジェネレータとを断接する第1締結要素と、
前記モータジェネレータと駆動輪との間に介装された有段式自動変速機と、
前記モータジェネレータとの間で充放電を行うバッテリと、
該バッテリの蓄電量を検出するバッテリ状態検出手段と、
前記有段式自動変速機のアップシフトにおけるイナーシャフェーズ中に、前記蓄電量が所定値以上のときは、前記エンジンの燃料噴射を停止して前記第1締結要素の締結トルク容量制御により前記モータジェネレータの回転数を所望の回転数と一致するように制御するアップシフト制御手段と、
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記アップシフト制御手段は、燃料噴射を停止しているときは前記モータジェネレータのトルクを0に設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記アップシフト制御手段は、前記動力源の回転数をイナーシャフェーズ開始から所定回転数まで第1の勾配で低下させる第1回転数制御において燃料噴射を停止し、前記所定回転数からアップシフト終了後の回転数まで前記第1の勾配よりも小さな第2の勾配で低下させる第2回転数制御において燃料噴射を再開することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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