JP2013031841A - 多孔質中空糸膜の製造方法 - Google Patents

多孔質中空糸膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】慢性腎不全の治療に用いる高透水性能を有する血液浄化器であって、治療における性能が患者の血液の濃度によって変動しないことを特徴とする血液浄化器を提供する。
【解決手段】本発明は、血液の状態に関わらず、一定の性能を発現できる血液浄化器に提供であり、基材ポリマーの充填状態と自由度をコントロールすることで達成できる。このような特徴を持つ血液浄化膜に適した中空糸膜は製膜条件をコントロールすることで得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は高透水性能を有し、性能安定性に優れる中空糸膜およびそれを用いた血液浄化器に関する。より詳しくは、中空糸膜を構成するポリマー間の相互作用を適度に血液等の被処理液により中空糸膜が湿潤した
腎不全治療などにおける血液浄化法では、血液中の尿毒素、老廃物を除去する目的で、天然素材であるセルロース、またその誘導体であるセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、合成高分子としてはポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの高分子を用いた透析膜や限外濾過膜を分離材として用いた血液透析器、血液濾過器あるいは血液透析濾過器などの血液浄化器が広く使用されている。特に中空糸型の膜を分離材として用いた血液浄化器は体外循環にかかわる血液量の低減、血中の物質除去効率の高さ、さらに血液浄化器組立ての生産性などの利点から血液浄化分野での重要度が高い。
中空糸膜を用いた血液浄化器は、通常中空糸膜中空部に血液を流し、外側部に透析液を向流に流し、血液から透析液への拡散に基づく物質移動により尿素、クレアチニンなどの低分子量物質を血中から除くものである。さらに、長期透析患者の増加に伴い、透析合併症が問題となり、近年では透析による除去対象物質は尿素、クレアチニンなどの低分子量物質のみでなく、分子量数千の中分子量から分子量2〜3万の高分子量の物質まで拡大し、これらの物質も除去できることが血液浄化膜に要求されている。特に分子量11700のβ2ミクログロブリンは手根管症候群の蓄積物質であることがわかっており除去ターゲットとなっている。このような高分子量物質除去の治療に用いられる膜はハイパフォーマンス膜と呼ばれ、従来の透析膜より膜の細孔径を大きくしたり、細孔数を増やしたり、空孔率を上げたり、膜厚を薄くするなどにより、中分子量〜高分子量物質の除去効率の向上を可能としている。
ところが、上記のような高性能を追求した膜は、β2ミクログロブリンの除去性能に優れるものの、有用な血中タンパク質であるアルブミン(分子量66000)をも漏出してしまう欠点があった。この欠点を補う方法として、膜の分画特性をシャープにすることが考えられる。シャープな分画特性を有する中空糸膜を製造する方法として、中空糸膜を二層または多層構造にし、少なくとも中空糸膜内面に緻密層を持たせ、水溶液系での篩係数と比較して、血漿系の中大分子の篩係数の低下率をある一定値以下にすると、中大分子の拡散による透過が低下することなく、濾過による透過を減少させることができ、分画特性がシャープである膜が製造できることが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
また、中空糸膜製造工程において、原料の組成を変えて紡糸原液を凝固させる際の凝固速度をコントロールすることで孔径分布の幅を小さくし、均一構造をもたせた膜を作製する方法が開示されており、孔径分布の幅を小さくすることでシャープな分画特性を得ようとした発明が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。
さらに、中空糸膜製膜時の溶媒の選択により、アルブミンとβ2−ミクログロブリンの篩係数の比を一定条件にコントロールすることでシャープな分画特性が得られることが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
これらの発明は、共通して中空糸膜の内表面に緻密な層をもたせることで、血中タンパク質の中空糸膜への吸着による目詰まりを防ぎシャープな分画特性やその特性の維持が達成されるというものである。
また、膜の内表面の構造については、血中タンパクによる目詰まりを防ぐ目的で、平滑性を向上することが開示されており、この技術により分画性能や経時安定性も向上すると記載されている。平滑性を向上するための手段としては、中空糸膜紡糸工程において、中空形成材として気体を用いる乾湿式紡糸とするとされている(例えば、特許文献5参照)。
中空糸膜の孔径と膜を構成する非晶領域と結晶領域とが適度なバランスをとることで、血漿と膜とが接触した時に膜の内表面に血漿タンパクが特定の吸着形態を持つので分離効率がよい膜が開示されている。(例えば、特許文献6参照)。
また中空糸膜の活性層の構造として、細孔径を除去対象物質にあわせた特定の大きさにし、さらに細孔数特定の範囲にすることにより、タンパク透過を抑制しつつ、β2ミクログロブリンなどの物質を効率よく除去できることが開示されている(例えば、特許文献7参照)。
中空糸膜の経時安定性を改善する目的で、中空糸膜の表面を滑らかな構造にし、血流の流速を向上させるために内径を小さくすることが開示されている(例えば、特許文献8参照)。
以上のように、膜の内表面を緻密にしたり、平滑性を向上させたり、細孔径を一定の範囲にしたりすることは、分画特性をシャープにしたり、血中タンパクの吸着を抑制したり、膜性能の経時変化を抑制したりする効果があるとされる。ところが、このような構造的特徴を有する膜であっても、臨床使用においては期待したほどの性能安定性を発現できないことがある。例えば、内表面の平滑性を向上させ血中タンパクの吸着抑制を期待しても、血液浄化療法を受ける患者の血液状態は各々違いがあるし、特に血液浄化においては体内に溜まった過剰の水分を除去する除水を行うため、治療の進行とともに血液中のタンパク濃度が上昇し同じ患者であっても、その治療効果には差が発生する。
また、細孔径を一定の範囲にすることについても同様であり、血液との接触による膜のみかけの細孔径の変化を考慮しない設計では、目的の性能が得られない可能性がある。特に治療の進行に伴う血液性状の変化は、膜性能の経時安定性にも影響を与えることから治療効果の再現性には問題があった。
このような現象は、同じ中空糸膜を用いた膜面積の異なる血液浄化器の製造においても問題となり、血液浄化用中空糸膜の開発においては膨大な血液実験を実施し検証する必要があった。
特開平10−127763号公報 特開平10−165774号公報 特開2000−153134号公報 特開平10−216489号公報 特開平10−108907号公報 特開2000−300973号公報 特公平6−42905号公報 特開平8−970号公報
本発明は、高透水性能を有し、血液系のタンパク濃度影響性の低い性能安定性に優れた血液浄化器を提供することにある。
本発明者らは、前記課題、則ち血液性状・特に除水に伴う血液の濃縮による膜性能低下の問題を解決するために鋭意検討した結果、膜の血液適合性は、膜の凹凸や細孔径のみでなく、膜を構成するポリマー間のネットワーク構造、すなわち相互作用と相互作用点の数、それに関連したポリマーの自由度が大きく影響することを見出し、膜を構成するポリマーの形状と充填形式をコントロールすることで、血液性能安定性に優れた血液浄化器に適した中空糸膜が得られることを突き止めた。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)ポリマーおよび溶媒を含む紡糸溶液を均一に溶解した後、クーリング工程を経てノズルから吐出し、空中走行部を経て凝固浴に浸漬して凝固させ、引続き洗浄、乾燥を経て巻き取る多孔質中空糸膜の製造において、
(a)クーリング温度が溶解温度よりも20〜100℃低い温度であり、
(b)ノズル温度が50℃以上130℃以下であり、
(c)空中走行部が15℃以下であり、
(d)凝固浴入口の走行速度と巻き取り速度との比が1以上10以下である
ことを特徴とする多孔質中空糸膜の製造方法。
(2)前記ポリマーがセルロース系高分子であることを特徴とする(1)に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
本発明の血液浄化器は高透水性能を有し、血液系性能においてタンパク濃度影響性の低い安定性を有する特性を持つ。そのため、患者の血液状態に関わらず、また治療時間を通して安定した再現性のよい治療効果が期待できるという利点がある。
実施例2で得た中空糸膜の糸試験の結果(S−Sカーブ)を示す図。 比較例1で得た中空糸膜の糸試験の結果(S−Sカーブ)を示す図。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、前記課題を解決するために、血液浄化器に用いられる中空糸膜の製造工程および性能、物理的性質について検討した。従来、高透水性を目指した中空糸膜は、細孔径を大きくしたり、膜全体の空孔部分を多くしたり、膜厚を薄くしたりする方向で開発されてきた。このような高い透水性能のみに着目した中空糸膜は血液濾過透析をおこなった際に血液中のタンパクが膜の表面に吸着し目詰まりを起こしやすくなり、時間とともに濾過効率が悪くなる。特にモデル系(実験室で実施しているクリアランス測定実験はシングルパスであり、CBinは一定である)とは異なり、除水によって経時的に血漿タンパク濃度が上昇する臨床系では顕著である。目詰まりを起こしやすい膜は膜間圧力の変動も大きく、タンパクリーク量の経時変化も大きい。そのため、臨床においては患者の血液の状態によって、その性能が変動する上に経時的にも除去性能が低下するという欠点があった。また、膜全体の空孔部分を多くしたり、膜厚を薄くしたりする方向で開発された中空糸膜は、糸の強力が従来の中空糸膜よりも弱くなり、製造加工工程、輸送工程などにおいても重大な弱点となる。
血液浄化使用中の血液の状態の変化(除水による血液の濃縮など)に依存せずに一定の性能を再現できる中空糸膜を得るためには、血液循環開始直後から血液循環終了時までの血中タンパクによる性能への影響をいかに回避していくかということが重要である。本発明では血液濃縮の影響を回避するために、膜を構成するポリマー間の相互作用および自由度のあり方およびポリマー充填の状態に着目した。ポリマー間相互作用のあり方および自由度などの情報を得る手段として、膜の降伏点の有無を見極めることが有効であることを見出した。目標の性能とハンドリング性を両立する中空糸膜を得るためには、製膜工程におけるドープの擬似ゲル化と、実際のゲル化工程のコントロール、凝固浴以降の延伸とが密接に関係していることを見出し本発明に至った。
本発明における中空糸膜の37℃における水の透水性は150mL/m2/hr/mmHg以上1500mL/m2/hr/mmHg以下の範囲が好ましい。150mL/m2/hr/mmHg未満では本発明の目的とする高透水性とは言えず、一般に血液系における中分子量物質の透過性能も低い。透水性が1500mL/m2/hr/mmHgを超える場合は、細孔径が大きくなり、タンパクリーク量が多くなりすぎることがあるし、本発明の目的とする安定性が得られにくくなることがある。したがって、透水性のより好ましい範囲は200mL/m2/hr/mmHg以上1000mL/m2/hr/mmHg以下、さらに好ましくは250mL/m2/hr/mmHg以上700mL/m2/hr/mmHg以下である。
本発明における中空糸膜の平均膜厚は10μm以上50μm以下が好ましい。膜厚が厚すぎると、透水性は高くても、中〜高分子量物質の透過性が低下することがある。また、大きな膜面積を小さな血液浄化器に収めるという中空糸膜のメリットが損なわれる可能性がある。膜厚は薄い方が物質透過性が高まるため好ましく、45μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましい。
膜厚が薄すぎると、血液浄化器に必要な最低限の膜強力を維持するのが困難になることがある。したがって、平均膜厚は12μm以上がより好ましく、14μm以上がさらに好ましい。
ここでいう平均膜厚とは、ランダムにサンプリングした中空糸膜5本を測定した平均値である。この時、それぞれの値と平均値との差が、平均値の2割を超えないこととする。
本発明において、中空糸膜の内径は100〜300μmであることが好ましい。内径が小さすぎる場合は、中空糸膜を流れる血液の圧力損失が大きくなるため、溶血の恐れがある。また、内径が大きすぎる場合は、中空部を流れる血液のせん断速度が小さくなるため、濾過に伴い血液中のタンパク質が膜の内面に堆積しやすくなる。中空部を流れる血液の圧力損失やせん断速度が適度な範囲となる内径は150〜250μmである。
本発明における中空糸膜は空孔率60%以上の多孔質膜であることが好ましい。本発明が目指す高透水性性能を得るためには、空孔率は65%以上がより好ましい。空孔率が大きすぎると中空糸膜の強力が弱く、ハンドリング性が悪かったり、分離膜として使用する場合、使用形態に耐えることができないことがある。また、空孔率が小さすぎると透水性が低く、本発明の目指す高透水量が得られない可能性がある。したがって、中空糸膜の空孔率は65〜95%がより好ましく、65〜90%がさらに好ましい。
本発明における中空糸膜は、湿潤状態での引っ張り試験で得られるS−Sカーブにおいて明瞭な降伏点が見られない特徴を有する。明瞭な降伏点がみられないということは、弾性変形が無視でき、引っ張り試験開始直後から塑性変形が起こるということである。特に、湿潤状態において基材ポリマー間の相互作用が弱いことを意味している。すなわち、このような特性を有する中空糸膜は、該膜を構成するポリマーネットワークがある程度の自由度(柔軟性)を有していることを示し、血液等の被処理液体と中空糸膜が接触した際にネットワーク間のすき間(柔軟になったところ)を除去溶質が通過しやすくなるという利点がある。また、目詰まりを起こしにくいので経時的な性能の低下を抑制するという効果も有する。
一方、湿潤状態においても、明瞭な降伏点が存在する性質を有するものは、膜の大部分において基材ポリマーが湿潤化によって自由度を増すことができず、固定されたポリマーネットワーク構造を意味し、そのような構造では高分子量物質の通り抜ける細孔が小さく高性分子量物質の効率よい分離が期待できないし、性能の安定性の面からも好ましくない。
本発明において、乾燥状態での中空糸膜の引っ張り試験において得られるS−Sカーブに明瞭な降伏点がみられることが好ましい。乾燥状態においては、透過性能を発現させるために必要な物性よりは、ハンドリング性や加工性(血液浄化器の組立など)が重要であり、弾性変形に対する強度が求められる。
本発明において、乾燥状態で引っ張り試験を行った際に、降伏強力が8.0g/filament以上であることが好ましい。降伏強力が小さすぎると、運搬や血液浄化器への加工の際に降伏強力以上の力によって、中空糸膜の物性が変化してしまい、血液浄化を実施した場合に期待する性能が得られないなどの問題が生じる可能性がある。したがって、乾燥状態での降伏強力は8.5g/filament以上がより好ましく、9.0g/filament以上がさらに好ましい。
中空糸膜引っ張り試験において、中空糸膜が乾燥している状態と湿潤している状態とを比較した際に、湿潤状態において降伏強力の減少が見られるのに対し、破断強力、破断伸度の変化が少ないのが好ましい。一般的な繊維では引っ張り試験において湿潤化により降伏強力および破断強力が低下し、破断伸度が上昇する、いわゆる可塑化作用が働く。本発明の中空糸膜は水処理や血液の処理など、湿潤状態での使用を想定しており、湿潤化により中空糸膜構造が変化して破断強力や破断伸度が大きく低下しないことが好ましい。反対に一般的な繊維の性質である湿潤化により破断強力が低下する性質や、むやみに伸度が高く伸びやすい糸は使用形態を考慮した場合、設計した性能に変化を及ぼす可能性がある。
本発明において、中空糸膜の引っ張り試験における湿潤状態と乾燥状態の降伏強力比(wet/dry)が0.7以下であることが好ましい。湿潤状態と乾燥状態との降伏強力の差が大きいほど水の存在によるポリマーネットワークの自由度が大きくなることを意味し、ポリマー間の相互作用点が少なく、中分子量〜高分子量物質の通過できる細孔が十分にあると考えられるので、高分子量物質の分離および安定性に有利であるため好ましい。より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.6以下である。降伏強力比が大きすぎるとポリマー間の相互作用が強すぎて高分子量物質が通過できるポリマーネットワークの運動性が十分でなく、高性能を期待できないし安定性の面でも不利になることがある。湿潤状態と乾燥状態の降伏強力比(wet/dry)は0.1以上が好ましい。0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましく、0.35以上がさらにより好ましい。0.1未満では湿潤状態での糸の強力が弱すぎ、血液浄化器の組立時の工程でかかる負荷により糸の物性が変化してしまう可能性がある。ここで、湿潤状態の降伏点は明瞭でない場合でも、可能な範囲で読み取ったものとする。
本発明における中空糸膜の引っ張り試験において、湿潤状態と乾燥状態の破断強力比(wet/dry)のn=5の平均値が0.7〜1.3の範囲であることが好ましい。この比の範囲では、各々の値はほぼ等しく、水の存在による破断強力低下の心配がないので好ましい。より好ましくは0.8〜1.2の範囲、さらに好ましくは0.9〜1.2である。該破断強力比が小さすぎると、水の存在による破断強力の低下が著しく可塑化作用による分離膜性能の安定性や強力の面で使用の際に不都合が生じる可能性がある。また、該破断強力比が大きすぎると、ポリマー間の相互作用強くなり過ぎ、目詰まりしたときに、中空糸膜が伸びて孔の形状が変形して性能低下するなどの可能性がある。
なお、乾燥状態とは、中空糸膜の水分率が30%未満の状態をいう。また湿潤状態とは、中空糸膜の水分率が60%以上の状態をいう。
本発明における中空糸膜は、ガラス転移温度Tgが常温、使用温度よりも20℃以上高いガラス状態にある高分子材料を用いることが好ましい。本発明における中空糸膜は基材ポリマー間の相互作用の度合いやポリマーユニットの充填状態によって分離特性をコントロールしているため、常温や使用温度付近でポリマーユニットの構造が変化してしまっては、製膜時の構造を維持できないしゴム状構造では目的の分離特性が再現できなくなるため好ましくない。
本発明の多孔質中空糸膜は前述したように、湿潤状態で実施した引っ張り試験において得られるS−Sカーブに明瞭な降伏点がみられない。すなわち、該中空糸膜を構成するポリマーのネットワークが自由度(柔軟性)を有しているため、ネットワークの隙間を溶質が通過しやすいという特性を有している。このような特性を有しているために、該中空糸膜を用いて作製されたモジュールは、血液などタンパク成分が多く含まれるような液体を処理した際にも、目詰まりを起こしにくい性質を発現することができる。本願においては、後述するように、各種濃度のβ2ミクログロブリン(β2MG)を含む被処理液を用いてクリアランスを測定することにより目詰まりの起こりにくさを確認している。被処理液中の総タンパク濃度が6.5g/dlであるとは、日本透析医学会の定める血液浄化器の評価法(日本透析医学会雑誌 29巻8号 1996 p.1239−1245)に記載の標準的な測定条件を表す。対して、被処理液中の総タンパク濃度を8.0g/dlとすることにより、より溶質濃度の高い条件にて目詰まりの発生抑制を確認することができるとともに、個々の栄養状態の異なる患者間における性能差の低減を可能としている。
本願発明においては、標準条件(6.5g/dl)に対して、総タンパク濃度が高い条件(8.0g/dl)で測定した際に、クリアランス(β2MG)低下率が20%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下である。
本発明における中空糸膜の素材としては、セルロースアセテート(Tg80〜185℃)、セルローストリアセテート(Tg174℃)などのセルロース系高分子、ポリスルホン(Tg190℃)やポリエーテルスルホン(Tg225℃)などのポリスルホン系高分子、ポリアクリロニトリル(Tg105℃)、ポリメチルメタクリレート(Tg115℃)、エチレンビニルアルコール共重合体(Tg85℃)などが挙げられるが、透水性が150ml/m/hr/mmHg以上の中空糸膜を得ることが容易なセルロース系やポリスルホン系が好ましい。特にセルロース系ではセルロースジアセテートやセルローストリアセテート、ポリスルホン系ではポリスルホン、ポリエーテルスルホンが膜厚を薄くすることが容易なため好ましい。
本発明における思想は、中空糸膜を形成する基材ポリマーがどのような状態で存在していれば目的の性能が得られるかを追求したものである。中空糸膜の全体の姿をイメージした場合には、中空糸膜を形成する基材ポリマーは高透水性を持たせるために一定の空孔率を有するように設計しており、基材ポリマーは一定間隔で相互作用しているような充填構造をとっている。ポリマー間の相互作用をポリマー間のネットワークと考えると、たとえば、網目状のネットワークを想定した場合にはネットワーク点が多いほど、分離したい物質が透過する細孔のサイズが小さくなる。またそのような状態では、ポリマー間の束縛が大きく、湿潤状態のようなポリマーの自由度が増す条件においても、強固にもとの構造を維持しようとするため、ポリマー間のネットワークが切れる寸前までの弾性変形の変化が少ない。弾性変形以上の力が加わった塑性変形では、一旦ポリマーのネットワークが壊れ始めると、連鎖的にネットワークが破壊されてくるので、破断強力が低下すると考えられる。このような状態では、膜とタンパクの相互作用による性能変化が顕著に起こることを見出した点に本発明の根幹がある。
一方、ポリマー間のネットワークを粗くし運動性に富んだようなポリマーの充填構造を持つ中空糸膜を設計した場合、もともと、ポリマー間の束縛が強くないところに、さらに自由度を増すような水の存在があると、弾性変形はほとんどおこらないか、もしくは、降伏点が明瞭でないS−Sカーブから無理に降伏点を読み取った場合には、乾燥状態よりも低い降伏強力を示す。また、ポリマー間のネットワークが粗い場合にはポリマーの充填が密でない状態であり、分離したい物質が通過する細孔のサイズは大きくなり、高分子量物質の分離に有利な膜構造となるし膜とタンパクが相互作用する際にも膜構造に由来する本来の安定した分離性能を発現しうることを見出した。このような膜の塑性変形においては、もともとポリマーの相互作用が弱いのであるから、湿潤状態でも乾燥状態でも構造が壊れていくのに必要な力にはほとんど差が生じず、破断強力のwet/dry比は1に近くなる。
本発明の中空糸型血液浄化器は、血液透析や血液透析濾過、血液濾過など、腎不全の治療に用いる血液浄化器として好適である。さらに、ポリマー間のネットワークを相対的に緩くする方向で設計しているので、孔径保持剤の浸透にも優れ、孔の形状を安定して保つことができ、輸送時や滅菌などのストレスに対して孔つぶれのリスクが低いので製品安全上好ましい。また、ポリマーの充填状態や湿潤状態におけるポリマーの自由度が高い膜構造を設計しているので、血液などの特殊な環境においても、たとえば、タンパク質が吸着したり細孔に入り込んだりした際に、その自由度故にタンパク質の固定化が起こりにくく、目詰まりや吸着が起こりにくい状態になっているため、患者の健康状態、症状や血液浄化期間中の血漿タンパクの濃縮に関わらず、安定した治療が期待できるという点で好ましい。
このような血液浄化器に用いる中空糸膜の製造方法としては、以下に示す条件が好ましい。高い空孔率と透水性を得るために、紡糸溶液のポリマー濃度は30質量%以下、より好ましくは20質量%以下とする。紡糸溶液の溶解温度は、ポリマーと溶媒および非溶媒の組成の兼ね合いであり、例えば、セルローストリアセテートでは、150℃から190℃の範囲が好ましい。紡糸溶液は混合後、均一溶解させノズルまで押しだされるが、その間一旦クーリング工程を設けることがその後の膜形成をコントロールする上で好ましい。
クーリング工程の効果は明らかではないが、ドープをノズルから突出後に一段階で凝固工程を施した場合、ポリマーネットワークの網の大きさは均一になり、形状がそろっていることで強固なネットワークになると推測できる。一方、凝固工程を2つ以上の条件で2回以上に分けた場合、ポリマーネットワークの大きさは不規則になり前者の場合と比較してその強力も劣ると推測される。たとえば、160℃で溶解したセルローストリアセテートを一旦、130℃までクーリングする。クーリング温度は溶解温度より20℃〜100℃低いことが好ましい。20℃以内のクーリングではクーリングの効果はほとんど見られない。また100℃以上のクーリングでは紡糸原液が完全にゲル化してしまいその後の紡糸原液輸送ラインの詰まりや、フィルターの圧上昇につながるので適切でない。紡糸溶液は、紡糸溶液中の不溶成分やゲルを取り除く目的でノズル吐出直前にフィルターで処理することが好ましい。フィルターの孔径は小さい方がよく、具体的には中空糸膜の膜厚以下のものが好ましく、中空糸膜の膜厚の1/2以下がより好ましい。フィルターが無い場合やフィルターの孔径が中空糸膜の膜厚を超える場合、ノズルスリットの一部に詰まりが生じ、偏肉糸の発生を招くことがある。さらに、フィルター無しやフィルター孔径が中空糸膜の膜厚を超えると、紡糸溶液中の不溶解成分やゲルなどの混入が原因で部分的なボイドや、数十μm単位での表面構造のきめの細かさが乱れる(ひきつれたり、部分的にシワがよるなどの)原因となる。高い空孔率を持つ中空糸膜における部分的なボイドは、膜の物理的強力を低下させる原因になる。また数十μm単位での中空糸膜表面のきめの細かさを著しく乱すことは、例えば血液浄化膜として利用する場合において、血液を活性化させることにつながり血栓、残血を招く可能性が高い。血液を活性化させてしまうことは、性能安定性に影響を与えると考えられる。紡糸原液の濾過は、吐出するまでの間に複数回実施してもよく、フィルターの寿命を延ばすことができるので好ましい。
上記のように処理した紡糸原液を、外側に環状部、内側に中空形成材吐出孔を有するチューブインオリフィス型ノズルを用いて吐出する。ノズルのスリット幅(紡糸原液を吐出する環状部の幅)のばらつきを小さくすることで紡糸された中空糸膜の偏肉を減らすことができる。具体的にはノズルのスリット幅の最大値と最小値の差を10μm以下にすることが好ましい。スリット幅は用いる紡糸原液の粘度や、得られる中空糸膜の膜厚、中空形成材の種類によって異なるが、ノズルスリット幅のばらつきが大きいと、偏肉を招き、肉厚の薄い部分が裂けたり、破裂したりしてリークの原因になるし、偏肉が顕著である場合、血液浄化膜として適切な強力が得られない原因となる。
紡糸原液を吐出する際のノズルの温度は、次工程の空中走行部分での効果を十分に得るために一般的な中空糸膜製造条件よりは低い温度にすることが好ましい。具体的には、50℃以上130℃以下、55℃以上120℃以下がより好ましい。ノズル温度が低過ぎると、ドープの粘度が高くなるためノズルにかかる圧力が高くなり紡糸原液を安定に吐出できないことがある。また、ノズル温度が高過ぎると相分離膜形成時にポリマーユニットの運動性が高いため過大な孔が形成される可能性がある。
吐出した紡糸原液は、空中走行部を経て凝固液に浸漬させる。この時の空中走行部は、外気と遮断する部材(紡糸管)で囲み、低温にすることが好ましい。具体的には、実測で15℃以下にするのが好ましく、さらには13℃以下にするのが好ましい。空中走行部の低温度コントロールは、紡糸管に冷媒を循環させる方法や冷却した風を流し込む方法などで行う。冷媒の冷却や風の冷却には液体窒素やドライアイスなどを用いて制御することが可能である。また、空中走行部の雰囲気は、紡糸原液の相分離に影響を与えるため均一に保たれることが望ましく、囲いなどで覆うことによりムラを生じさせないことが好ましい。空中走行部分の雰囲気にムラがあると、ミクロな膜構造にばらつきができる原因となり、性能発現に問題が生じるため適切でない。空中走行部分の温度や風力にムラを生じさせない方法として、空中走行部の囲いに適度な大きさの穴をあけ、冷却した風が均一に流れるように工夫することが有効である。ノズル温度を適度に低くし、空中走行部の温度を低く保つことで、製膜工程におけるゲル化速度を一定にコントロールできる。また、空中走行部を通常より低温に設定することで、中空糸膜外表面で急激なゲル化が促進されるため、膜の断面構造は中空糸膜内面、外面がそれぞれ中間部と比較して密な層を有する三層構造を形成する。また、ドープを完全溶解後に一旦クーリングを行うことの影響で最内外層を除いたポリマーのネットワーク構造を緩くすることが出来、本願の特性を付与することが出来ていると考えられる。
また、ドラフト比は小さい方が好ましい。具体的には1以上10以下が好ましく、さらには8以下が好ましい。ここで言うドラフト比は、中空糸膜引取り速度に対するノズルから吐出される紡糸原液の吐出線速度の比である。ドラフト比が大き過ぎると、膜の細孔形成時に張力がかかり、細孔の形状が歪み、透過性能が低下することがある。
ノズルから紡糸原液とともに吐出された中空形成材は中空糸膜の内表面の構造形成に重要な影響を与える。理想とする膜構造を設計するには、中空形成材の組成とノズル温度、ドラフト比、紡糸工程における低延伸が重要であることを見出した。これらの条件を整えることで、内表面の相分離がコントロールできると考えられる。中空形成材は使用する紡糸原液にもよるが、相分離を促進したい場合には紡糸原液に対して不活性な液体や気体を用いるのが好ましい。このような中空形成材の具体例としては、流動パラフィンやミリスチン酸イソプロピル、窒素、アルゴンなどが挙げられる。また、緻密な層を形成するためには、紡糸原液の調製に用いた溶媒の水溶液や水などを用いることができる。これらの中空形成材には、必要に応じてグリセリンやエチレングリール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非溶媒、また酸化防止剤や潤滑剤などの添加剤を加えることもできる。また、ポリマーネットワークを制御し、性能をコントロールするには空中走行部の冷却が有効である。ノズルから吐出したドープが空中走行部で急激に冷却されることにより、膜外表面から相分離が進行し形成されるポリマーネットワークの密な層は、第2次の分離層として、分画特性をよりシャープにするために寄与すると考えられる。
空中走行部を経て、ゲル化した膜は、凝固浴中を通過させることにより凝固させる。凝固浴は紡糸原液を調製する際に使用した溶媒の水溶液が好ましい。凝固浴が水である場合には、急激に凝固し中空糸膜外表面に緻密な層が形成される。急激に凝固した表面は開孔率が低い反面、表面粗さのコントロールが困難である。凝固浴を溶媒と水との混合液にすることで、凝固時間のコントロールや中空糸膜の表面粗さを適度に調節しやすくなるので好ましい。凝固浴の溶媒濃度は70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。また1質量%でも溶媒が含有されていることで、水のみの場合とは構造が大きく変わるので、溶媒濃度の下限は1質量%以上である。凝固浴の温度は凝固速度のコントロールのため4℃以上50℃以下が好ましい。さらには10℃以上45℃以下が好ましい。このように空中走行部と凝固浴で緩やかに中空糸膜を形成することで、細孔の大きさや分布、細孔数が適度な中空糸膜が得られる。凝固浴には、必要に応じてグリセリンやエチレングリール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの非溶媒、また酸化防止剤や潤滑剤などの添加剤を加えることもできる。また凝固浴中では膜が形成された初期段階にあるため、ここでの延伸防止が本願の目的とする膜構造形成に重要である。凝固浴の水流は中空糸膜の走行方向と同じ同一方向に流れているのが好ましい。凝固浴までに設定した諸条件で設計された膜構造を破壊、変形させない目的で、水流が与える中空糸膜への抵抗を軽減する目的である。さらに同様の理由で、凝固浴以降の中空糸膜への延伸は低い方が好ましい。具体的には凝固浴中での延伸比は0以上10以下が好ましく5以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。
凝固浴を経た中空糸膜は洗浄工程を経て溶媒などの不要な成分を洗い流す。このときに用いる洗浄液は水が好ましく、温度は20〜80℃が洗浄効果が高くなるため好ましい。20℃未満では洗浄効率が悪く、80℃超では熱効率が悪いことと、中空糸膜への負担が大きく、保存安定性や性能に影響するため好ましくない。また、膜は凝固浴工程後も活きており、洗浄浴中で外部から力を加えると膜構造や表面形状、孔形状が変形してしまうことがあるので、洗浄浴を走行する中空糸膜になるべく抵抗がかからないような工夫を施す必要がある。中空糸膜から溶媒や添加剤等の不要な成分を除去するためには、液更新を高めるのが好ましく、従来は、例えば洗浄液のシャワーの中を中空糸膜を走行させるとか、洗浄液の流れと中空糸膜の走行を向流にするなどして洗浄効率を高めていた。しかし、このような洗浄方法を採用すると中空糸膜の走行抵抗が大きくなるため、中空糸膜に延伸をかけて弛んだり縺れたりすることを防ぐ必要があった。
本発明者等は、中空糸膜の変形抑制と洗浄性の両立をはかるため鋭意検討した結果、洗浄液と中空糸膜を同一方向(並流)で流すことが有効であることを見出した。
洗浄工程の具体的な態様としては、例えば、洗浄浴に傾きをつけ中空糸膜がその傾斜を下っていくような設備がよい。具体的には、浴の傾斜は1〜3度が好ましい。3度以上では洗浄液の流速が早くなりすぎ中空糸膜からの溶媒洗浄に必要な液浸漬を十分できないことがある。1度未満では、洗浄液の滞留による中空糸膜の洗浄不良が発生することがある。このように洗浄浴での中空糸膜への抵抗を抑制することで、洗浄浴入り口の中空糸膜の走行速度と出口の走行速度をほぼ同じにすることができる。具体的には洗浄浴中での延伸比は0以上10以下が好ましく5以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。また、洗浄効率をより高めるために、洗浄浴は多段に配置されるのが好ましい。段数については洗浄性との兼合いにより適宜設定する必要があり、例えば、本発明に使用される溶媒、非溶媒、親水化剤等の除去を目的とするのであれば、3〜30段程度あれば足りるといえる。
洗浄工程を経た中空糸膜は必要に応じてグリセリン処理を行なう。たとえば、セルロース系高分子からなる中空糸膜の場合はグリセリン浴を通過させた後、乾燥工程を経て巻き取る。この場合グリセリン濃度は30〜80質量%が好ましい。30質量%未満では乾燥時に中空糸膜が縮み易く、保存安定性が悪い。また80質量%超では中空糸膜に余分なグリセリンが付着しやすく、血液浄化器に組み立てる時に中空糸膜端部の接着性が悪くなることがある。グリセリン浴の温度は、40℃以上80℃以下が好ましい。40℃以下ではグリセリン水溶液の粘度が高く、中空糸膜の細孔の隅々までグリセリン水溶液が行き渡らない可能性がある。80℃以上では、中空糸膜が熱で変性してしまう可能性がある。
紡糸工程全般において、中空糸膜にかかる張力は膜の構造に影響を及ぼすため、膜構造を変化させないために、極力延伸しないことが好ましい。膜は凝固浴工程後も活きており、洗浄浴中で外部からの力をかけると膜構造や表面構造、孔形状が変形してしまうからである。特に延伸は膜の細孔の形状を真円から楕円に変形させてしまうことから、透過性能への影響も大きいため、低い方が好ましい。具体的には、凝固浴入り口の中空糸膜走行速度と、紡糸工程最後の巻き取り速度との比は、1以上10以下が好ましく、1.5以上7以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。
このようにして得られた中空糸膜の最内表面の構造は、中間層とは異なり、ポリマーネットワークが密な構造になっており、その部分が第1次の分離層となり、分画特性の大部分を決定する部分となる。また空中走行部分の冷却はポリマーネットワークの均一性に作用するため分画特性をさらにシャープにする機能を有する。一方、膜全体としてみた場合、ポリマーネットワークは形態的には均一であるが緩いネットワーク構造をとっており、そのため、基材ポリマー間の孔が大きく、高い透水性と目詰まりの許容範囲を広げる機能を有する。
以下、本発明の有効性を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.中空糸膜の内径、外径、膜厚の測定
中空糸膜断面のサンプルは以下のようにして得ることができる。測定には中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察することが好ましい。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察することが好ましい。中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられたφ3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon-V-12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、平均値を内径、膜厚とした。
2.偏肉度
中空糸膜100本の断面を200倍の投影機で観察する。一視野中、最も膜厚差がある一本の糸断面について、最も厚い部分と最も薄い部分の厚さを測定する。
偏肉度=最薄部/最厚部
偏肉度=1で膜厚が完璧に均一となる。
3.膜面積の計算
透析器の膜面積は中空糸膜の内径基準として求める。
A=n×π×d×L
ここで、nは透析器内の中空糸膜本数、πは円周率、dは中空糸膜の内径(m)、Lは透析器内の中空糸膜の有効長(m)である。
4.空孔率
1時間以上純水に浸漬した中空糸膜束を900rpmの回転数で5分間遠心脱液し、重量を測定する。その後、乾燥機中で絶乾し重量を測定する(Mp)。
Wt(空孔に詰まっている水の重量)=遠心後の糸束の重量−Mp
体積空孔率(Vt)%=Wt/(Wt+Mp/ポリマー密度)×100
5.降伏強力、破断強力、破断伸度
東洋ボールドウイン社製テンシロンUTMIIを用いて、引っ張り速度100mm/min、チャック間距離100mmで測定した。サンプルはn=5で測定し、平均値を用いた。
6.透水性
37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温した透析器の血液流路側へ純水を送り、透析液側から流出した単位時間あたりの純水透水速度ml/hrを測定した。尚、この際、透析器の血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子で挟んで封止しストップ法による透水性の測定とする。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(ml/hr/mmHg)を算出した。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.99以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜の透水性は透析器の透水性を膜面積換算して算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜の透水性(ml/m2/hr/mmHg)、UFR(D)は透析器の透水性(ml/hr/mmHg)、Aは透析器の膜面積(m2)である。
7.クリアランス(β2ミクログロブリン)
クエン酸とヘパリンナトリウムを添加して採血した(凝固を抑制した)牛血液から、遠心分離にて血漿を分離する。透析実験用血漿として、ヘパリンナトリウム、β2ミクログロブリン(遺伝子組み換え品 和光純薬製)を約0.01mg/dl添加する。循環用血漿には、ヘパリンナトリウムのみを添加する。尚、分離した血漿は総タンパク濃度をそれぞれ6.5g/dlと8.0g/dlになるように希釈ないし濃縮の操作を実施した。循環用血漿は測定する血液浄化器1本あたりに少なくとも2L準備する。1時間前にプライミングした血液浄化器(膜面積(A)1.5m2)に循環用血漿を200ml/minの流量で流す。この時、透析液側の片方には栓をし、片方からはQf15ml/minで濾過をかけながら透析液側にろ液を充填する。ろ液が充填した後、栓をして血液側のみに血漿を1時間循環させる。循環後、透析実験用血漿に切り替え、Qbin200ml/min、Qbout185ml/minとなるよう濾過をかけながらシングルパスで血漿を流しつつ、透析液をQdin500ml/minで流す。透析濾過開始4分後にQboutをサンプリングする。血漿原液のβ2MG濃度(Cbin)と血液浄化器を通って出てきた液のβ2MG濃度(Cbout)、流量から、血液浄化器のクリアランス(CLβ2)を算出する。全ての操作は37℃で実施する。
CLβ2=(Cbin×Qbin−Cbout×Qbout)/Cbin
尚、血液性能、透過性能の安定性の測定は、それぞれ総タンパク濃度6.5g/dlと8.0g/dlになるように調整した抗凝固剤添加血漿を用いて実施した。
透析医学会の評価基準では評価に用いる血漿の総タンパク濃度は6.5±0.5g/dlとなっているが、臨床における患者の栄養状態や透析中の総タンパク濃度の変化を想定して8.0g/dlの濃度についても評価を行った。
8.タンパクリーク量の計算
クエン酸を添加し、凝固を抑制した牛血液をヘマトクリット25〜30%、タンパク濃度6〜7g/dlに調製し、37℃で血液浄化器に200mL/minで送液し、一定の流速(Qf:ml/min)で血液をろ過する。このとき、ろ液は血液に戻し、循環系とする。15分毎に濾過流速を測定し、血液浄化器のろ液を採取する。ろ液に含有するタンパクの濃度を測定する。血漿中のタンパク濃度の測定は、体外診断用のキット(マイクロTP−テストワコー、和光純薬工業社製)を用いて行う。2時間までのデータをもとに、下の式から平均タンパクリーク量を求め、3L除水換算時のタンパクリーク量(TPL)を算出する。
積算濾過量(ml)=t1(min)×Ct1(ml/min)+(t2-t1)(min)×Ct2(ml/min)+(t3-t2)(min)×Ct3(ml/min)・・・・(t120-tn)(min)×C120min(ml/min)
t:測定時間(min)
C:濾過流速(ml/min)
ろ液のタンパク濃度=a×Ln(積算濾過量)+b
各測定点におけるろ液のタンパク濃度とLn(積算濾過量)からa、bを求める。
TPL(平均)=-a+b+a×Ln(積算濾過量×2)
TPL(3L除水換算)(g)=TPL(平均)×30/1000
血液性能の再現性や性能安定性の評価には3L除水換算のTPL値を指標とした。
9.Tgの測定
TgはDSCにて測定もしくは、文献を参照した。
参照文献:セルロースの辞典((株)朝倉書店 2000年11月10日初版)
DSCは昇温速度10℃/minで測定した。
10.中空糸膜の水分率の測定
測定する中空糸膜の質量を測定後、105℃のオーブンで3時間乾燥させた後再び秤量する。
次式より算出する。
水分率(%)=(乾燥前の質量−乾燥後の質量)/乾燥後の質量×100
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)を75対25の割合で混合後、ニーダーにて175℃に加温しながらに均一溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を溶解温度と比較して30℃低い、145℃の熱媒で保温したラインでエージングし、10μmの焼結フィルターに供給して濾過を実施した後、110℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、12℃に調整された70mmのエアーギャップ部を通過後、40℃の20質量%NMP/TEG(75/25)の凝固液に供した。凝固浴中で50cm走行させた後、ガイドを介し、この時の凝固浴内の水流は中空糸膜に負担を掛けないように膜の走行方向と同一方向に循環させ、次いで30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度70m/minで巻き上げた。製膜溶液のドラフト比は6であった。ノズルスリット幅の最大値と最小値の差は7μmであった。また、水洗浴は、傾きを2.5度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、水を中空糸膜と同じ方向に流れる並流に流し、洗浄浴は5段とした。凝固浴での延伸比は2.0%、水洗浴での延伸比は0.1%であった。凝固浴入り口から巻き上げまでの延伸比は3.5%であった。得られた中空糸膜の内径は200.3μm、膜厚は15.8μm、偏肉度は0.7、空孔率は74.5%であった。中空糸膜の糸質を測定した結果を表1に示した。なお、用いたセルローストリアセテートのTgは174℃であった。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。モジュールに充填された中空糸膜の有効長は、22.5cmであった。この血液浄化器について、透水性、タンパク濃度が異なる血液によるクリアランス(β2ミクログロブリン)、タンパクリーク試験について実施した。結果を表2に示した。タンパク濃度が異なる系でのクリアランス値は再現性が良好であり、双方とも55ml/min以上であった。また、タンパクリーク値は0.7gと十分に低値であった。
(実施例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)17.5質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)を70対30の割合で混合後、ニーダーにて180℃に加温しながらに均一溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を溶解温度と比較して30℃低い、150℃の熱媒で保温したラインでエージングし、10μmの焼結フィルターに供給して濾過を実施した後、105℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、11℃に調整された70mmのエアーギャップ部を通過後、35℃の30質量%NMP/TEG(70/30)の凝固液に供した。凝固浴中で50cm走行させた後、ガイドを介し、この時の凝固浴内の水流は中空糸膜に負担を掛けないように膜の走行方向と同一方向に循環させ、次いで30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度70m/minで巻き上げた。製膜溶液のドラフト比は7であった。ノズルスリット幅の最大値と最小値の差は7μmであった。また、水洗浴は、傾きを2度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、水を中空糸膜と同じ方向に流れる並流に流し、洗浄浴は5段とした。凝固浴での延伸比は1.5%、水洗浴での延伸比は1.5%であった。凝固浴入り口から巻き上げまでの延伸比は2.0%であった。得られた中空糸膜の内径は200.7μm、膜厚は15.5μm、偏肉度は0.7、空孔率は83.5%であった。中空糸膜の糸質を測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。モジュールに充填された中空糸膜の有効長は、22.5cmであった。この血液浄化器について、透水性、タンパク濃度が異なる血液によるクリアランス(β2ミクログロブリン)、タンパクリーク試験について実施した。結果を表2に示した。タンパク濃度が異なる系でも再現性は良好で、クリアランス値は双方64ml/minと高く高性能であった。また、タンパクリーク値は1.4gと低値であった。
(実施例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)20.0質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)を70対30の割合で混合後、ニーダーにて180℃に加温しながらに均一溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を溶解温度と比較して20℃低い、160℃の熱媒で保温したラインでエージングし、10μmの焼結フィルターに供給して濾過を実施した後、120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、12℃に調整された70mmのエアーギャップ部を通過後、40℃の20質量%NMP/TEG(70/30)の凝固液に供した。凝固浴中で50cm走行させた後、ガイドを介し、この時の凝固浴内の水流は中空糸膜に負担を掛けないように膜の走行方向と同一方向に循環させ、次いで30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度70m/minで巻き上げた。製膜溶液のドラフト比は6であった。ノズルスリット幅の最大値と最小値の差は7μmであった。また、水洗浴は、傾きを2度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、水を中空糸膜と同じ方向に流れる並流に流し、洗浄浴は5段とした。凝固浴での延伸比は2.0%、水洗浴での延伸比は2.0%であった。凝固浴入り口から巻き上げまでの延伸比は4.0%であった。得られた中空糸膜の内径は200.5μm、膜厚は15.3μm、偏肉度は0.8、空孔率は68.0%であった。中空糸膜の糸質を測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。モジュールに充填された中空糸膜の有効長は、22.5cmであった。この血液浄化器について、透水性、タンパク濃度が異なる血液によるクリアランス(β2ミクログロブリン)、タンパクリーク試験について実施した。結果を表2に示した。タンパク濃度が異なる系でも再現性は良好で、クリアランス値は双方50ml/minと高く高性能であった。また、タンパクリーク値は0.4gと低値であった。
(実施例4)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)16.5質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)を80対20の割合で混合後、ニーダーにて175℃に加温しながらに均一溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を溶解温度と比較して30℃低い、145℃の熱媒で保温したラインでエージングし、10μmの焼結フィルターに供給して濾過を実施した後、105℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、10℃に調整された70mmのエアーギャップ部を通過後、35℃の30質量%NMP/TEG(70/30)の凝固液に供した。凝固浴中で50cm走行させた後、ガイドを介し、この時の凝固浴内の水流は中空糸膜に負担を掛けないように膜の走行方向と同一方向に循環させ、次いで30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度70m/minで巻き上げた。製膜溶液のドラフト比は6であった。ノズルスリット幅の最大値と最小値の差は7μmであった。また、水洗浴は、傾きを2度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、水を中空糸膜と同じ方向に流れる並流に流し、洗浄浴は5段とした。凝固浴での延伸比は1.5%、水洗浴での延伸比は1.5%であった。凝固浴入り口から巻き上げまでの延伸比は2.0%であった。得られた中空糸膜の内径は200.8μm、膜厚は15.6μm、偏肉度は0.7、空孔率は86.2%であった。中空糸膜の糸質を測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。モジュールに充填された中空糸膜の有効長は、22.5cmであった。この血液浄化器について、透水性、タンパク濃度が異なる血液によるクリアランス(β2ミクログロブリン)、タンパクリーク試験について実施した。結果を表2に示した。タンパク濃度が異なる系でも再現性は良好で、クリアランス値は双方74ml/minと高く高性能であった。また、タンパクリーク値は2.5gであった。
(比較例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)を70対30の割合で混合後、ニーダーにて175℃に加温しながらに均一溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を145℃の熱媒で保温したライン並びに20μmの焼結フィルターに供給して濾過を実施した後、105℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、12℃に調整された70mmのエアーギャップ部を通過後、40℃の20質量%NMP/TEG(70/30)の凝固液に供した。凝固浴中で50cm走行させた後、ガイドを介し凝固浴内の循環と逆方向に走行させ、次いで30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度85m/minで巻き上げた。製膜溶液のドラフト比は11であった。ノズルスリット幅の最大値と最小値の差は7μmであった。また、水洗浴は、傾きを0.5度とし、洗浄水が緩やかに上っていくように調整し、水を中空糸膜と逆方向に流れる向流に流し、洗浄浴は7段とした。凝固浴での延伸比は12%、水洗浴での延伸比は12%であった。凝固浴入り口から巻き上げまでの延伸比は20%であった。得られた中空糸膜の内径は198.9μm、膜厚は14.8μm、偏肉度は0.7、空孔率は75.7%であった。中空糸膜の糸質を測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。モジュールに充填された中空糸膜の有効長は、22.5cmであった。この血液浄化器について、透水性、タンパク濃度が異なる血液によるクリアランス(β2ミクログロブリン)、タンパクリーク試験について実施した。結果を表2に示した。延伸をかけたため、透水性が282mL/hr/mmHg/m2であったのに対して、クリアランス値は49、42ml/minと低かった。
(比較例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)を70対30の割合で混合後、ニーダーにて175℃に加温しながらに均一溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を145℃の熱媒で保温したライン並びに20μmの焼結フィルターに供給して濾過を実施した後、135℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、20℃に調整された70mmのエアーギャップ部を通過後、40℃の20質量%NMP/TEG(70/30)の凝固液に供した。凝固浴中で50cm走行させた後、ガイドを介し凝固浴内の循環と逆方向に走行させ、次いで30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度70m/minで巻き上げた。製膜溶液のドラフト比は7であった。ノズルスリット幅の最大値と最小値の差は7μmであった。また、水洗浴は、傾きを2.0度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、水を中空糸膜と同じ方向に流れる並流に流し、洗浄浴は5段とした。凝固浴での延伸比は1.5%、水洗浴での延伸比は1.5%であった。凝固浴入り口から巻き上げまでの延伸比は2.0%であった。得られた中空糸膜の内径は200.4μm、膜厚は15.3μm、偏肉度は0.7、空孔率は76.4%であった。中空糸膜の糸質を測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。モジュールに充填された中空糸膜の有効長は、22.5cmであった。この血液浄化器について、透水性、タンパク濃度が異なる血液によるクリアランス(β2ミクログロブリン)、タンパクリーク試験について実施した。結果を表2に示した。ノズルから空中走行部の温度が高かったことなどから、タンパクリーク量が2.4gと高値であったとともに、血液中のタンパク濃度によってクリアランス値が45〜54ml/minまで変化する結果となった。
(比較例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)17.5質量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)を70対30の割合で混合後、ニーダーにて180℃に加温しながらに均一溶解し、ついで製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を180℃の熱媒で保温したライン並びに20μmの焼結フィルターに供給して濾過を実施した後、120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として予め脱気処理した流動パラフィンとともに同時に吐出し、紡糸管により外気と遮断され、13℃に調整された70mmのエアーギャップ部を通過後、40℃の20質量%NMP/TEG(70/30)の凝固液に供した。凝固浴中で50cm走行させた後、ガイドを介し凝固浴内の循環と同一方向に走行させ、次いで30℃の水洗浴を経た後、50℃、60質量%のグリセリン浴に通過させ、ドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。製膜溶液のドラフト比は7であった。ノズルスリット幅の最大値と最小値の差は7μmであった。また、水洗浴は、傾きを2.0度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、水を中空糸膜と同じ方向に流れる並流に流し、洗浄浴は5段とした。凝固浴での延伸比は2.0%、水洗浴での延伸比は1.5%であった。凝固浴入り口から巻き上げまでの延伸比は3.5%であった。得られた中空糸膜の内径は200.4μm、膜厚は14.9μm、偏肉度は0.7、空孔率は85.7%であった。中空糸膜の糸質を測定した結果を表1に示した。
得られた中空糸膜を用いて膜面積が1.5m2となるように血液浄化器を組み立てた。モジュールに充填された中空糸膜の有効長は、22.5cmであった。この血液浄化器について、透水性、タンパク濃度が異なる血液によるクリアランス(β2ミクログロブリン)、タンパクリーク試験について実施した。結果を表2に示した。ドープのクーリング、エージング工程を設けなかったので、ポリマーのネットワーク構造が理想系にならず、クリアランス値が50ml/min台であるのに対して、タンパクリーク量が1.5gと高値であったり、血液中のタンパク濃度によってクリアランス値が50〜59ml/minまで変化する結果となった。
本発明の中空糸型血液浄化器は高透水性能を有し、血液性能の安定性を有する特性を持つ。そのため、患者の血液の濃度変化に依存しない安定した治療効果が期待できるという利点がある。したがって、産業の発展に大きく寄与できる。

Claims (2)

  1. ポリマーおよび溶媒を含む紡糸溶液を均一に溶解した後、クーリング工程を経てノズルから吐出し、空中走行部を経て凝固浴に浸漬して凝固させ、引続き洗浄、乾燥を経て巻き取る多孔質中空糸膜の製造において、
    (a)クーリング温度が溶解温度よりも20〜100℃低い温度であり、
    (b)ノズル温度が50℃以上130℃以下であり、
    (c)空中走行部が15℃以下であり、
    (d)凝固浴入口の走行速度と巻き取り速度との比が1以上10以下である
    ことを特徴とする多孔質中空糸膜の製造方法。
  2. 前記ポリマーがセルロース系高分子であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質中空糸膜の製造方法。
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