JP2013019056A5 - - Google Patents
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Description
本件発明は、表面処理電解銅箔、電解銅箔及び該表面処理電解銅箔を用いて得られる銅張積層板に関する。特に、プリント配線板などに用いた場合にファインパターン配線の形成性に優れる、絶縁層形成材料との接着面のうねりを小さくした表面処理電解銅箔に関する。
金属銅は電気の良導体であり、比較的安価で取り扱いも容易であることから、電解銅箔は、プリント配線板の基礎材料として広く使用されている。そして、プリント配線板が多用される電子及び電気機器には小型化、軽量化等の所謂軽薄短小化が求められている。従来、このような電子及び電気機器の軽薄短小化を実現するためには、信号回路を可能な限りファインピッチ化した配線にする必要があった。そのため、製造者等は、より薄い銅箔を採用して、エッチングで配線を形成する際のオーバーエッチングの設定時間を短縮し、形成する配線のエッチングファクターを向上させることで対応してきた。
そして、小型化、軽量化される電子及び電気機器には高機能化の要求も同時に行われている。従って、部品実装における表面実装方式の普及に伴い要求される、限られた基板面積に可能な限り大きな部品実装面積を確保するためにも、プリント配線板には高密度化が要求され、エッチングファクターを良好にする対応が必要とされてきた。その目的で、特にICチップ等の直接搭載を行う所謂インターポーザー基板である、テープ オートメーティド ボンディング(TAB)基板、チップ オン フィルム(COF)基板には、通常のプリント配線板用途を超える低プロファイル電解銅箔が求められてきた。なお、プロファイルとは、プリント配線板用銅箔に関する規格において、銅箔の絶縁層形成材料との接着面の表面粗さ(Rzjis)を、JIS B 0601−2001に準拠してTD方向に測定した値で規定されるものである。そして、低プロファイルとは、接着面の表面粗さ(Rzjis)が小さいことをいう。
このような問題を解決すべく、特許文献1には、未処理銅箔の析出面の表面粗度Rzが該未処理銅箔の光沢面の表面粗度Rzと同じかそれより小さい箔の析出面上に粗化処理を施して接着面とすることを特徴とする表面処理電解銅箔が開示されている。そして、前記未処理銅箔の製造には、メルカプト基を持つ化合物、塩化物イオン、並びに分子量10000以下の低分子量膠及び高分子多糖類を添加した電解液を用いており、具体的にはメルカプト基を持つ化合物は3−メルカプト1−プロパンスルホン酸塩、低分子量膠の分子量は3000以下、そして高分子多糖類はヒドロキシエチルセルロースであるとしている。
また、特許文献2には、硫酸酸性銅めっき液の電気分解による電解銅箔の製造方法において、ジアリルジアルキルアンモニウム塩と二酸化硫黄との共重合体を含有する硫酸酸性銅めっき液を用いることを特徴とする電解銅箔の製造方法が開示されており、当該硫酸酸性銅めっき液には、ポリエチレングリコールと塩素と3−メルカプト−1−スルホン酸とを含有することが好ましいとされている。そして、絶縁基材との張合わせ面(接着面)とする析出面の粗さが小さく、厚さ10μmの電解銅箔の場合、十点平均粗さRzが1.0μm±0.5μm程度の低プロファイルが得られるとしている。
そして、これらの製造方法を用いて電解銅箔を製造すると、確かに低プロファイルの析出面が形成され、従来の低プロファイル電解銅箔としては十分な特性は有している。
しかしながら、電子又は電気機器の代表であるパーソナルコンピュータのクロック周波数も急激に上昇し、演算速度が飛躍的に速くなっている。そして、用途についても、従来のコンピュータとしての本来の役割である単なるデータ処理に止まらず、コンピュータ自体をAV機器と同様に使用するケースが多くなってきている。即ち、音楽再生機能のみならず、DVDの録画再生機能、TV受像録画機能、テレビ電話機能等が次々に付加されているのである。
上記の背景から、パーソナルコンピュータのモニタに対しても、単なるデータモニタではなく、映画等の画像を写しても長時間の視聴に耐えるだけの画質が要求され、更に、安価に且つ大量に供給することも求められる。そして、現在の当該モニタには液晶モニタが多用されており、この液晶パネルのドライバ素子を実装するに当たっては、前記TAB基板やCOF基板を用いるのが一般的である。よって、モニタのハイビジョン化等を図るためには、前記ドライバ用基板にも、よりファインな配線の形成が求められる。しかし、20μmピッチの配線を視野に入れた評価を実施した場合には、前記先行技術により製造された電解銅箔では、表面粗さにおいて優れた低プロファイル特性を有しているが、形成されたファインパターン配線には配線端面の波打ちが大きいことに起因した不具合が発生する傾向がある。そして、同レベルの配線形成が要求されるプラズマディスプレイパネルの電磁波シールド用途においても、設計通りの配線幅が得られないと画面の解像度等が設計値を満足しないなどの問題に繋がってしまう。
以上のことから、プリント配線板等に用いる表面処理電解銅箔に対しては、従来の、単に低プロファイルであることを特徴とした表面処理電解銅箔ではなく、むしろ、ファインパターンの形成性が良好な表面処理電解銅箔に対する要求が強く存在していた。
そこで、本件発明者らは鋭意研究の結果、Rzjisを指標としている低プロファイル以外に、ファインパターン形成性の良否を判定する指標として接着面のうねりに着目し、この指標を用いた研究開発により、接着面が低プロファイルで、且つ、うねりが小さな表面処理電解銅箔及びその製造方法に想到した。
本件発明に係る表面処理電解銅箔: 本件発明に係る表面処理電解銅箔は、電解銅箔の表面に防錆処理又はシランカップリング剤処理のいずれか一種以上の表面処理を行った表面処理電解銅箔であって、当該表面処理電解銅箔の絶縁層構成材料との接着面は、表面粗さ(Rzjis)が0.1μm〜1.0μmであり、且つ、光沢度[Gs(60°)]が400以上の電解銅箔の表面を用いて得られるものであり、当該接着面のうねりの最大高低差(Wmax)が0.05μm〜0.7μmであることを特徴とする。
本件発明に係る表面処理電解銅箔は、電解銅箔の表面に防錆処理又はシランカップリング剤処理のいずれか一種以上の表面処理を行った表面処理電解銅箔であって、当該表面処理電解銅箔の絶縁層との接着面が備えるうねりの最大高低差(Wmax)が0.05μm〜0.5μmであることを特徴とする。
本件発明に係る表面処理電解銅箔の接着面の表面粗さ(RSm)は、0.1mmより大であることが好ましい。
また、本件発明に係る表面処理電解銅箔は、前記接着面の表面粗さ(Rzjis)が、0.1μm〜1.0μmであることも好ましい。
そして、本件発明に係る表面処理電解銅箔は、前記接着面が電解銅箔の析出面側であることが好ましい。
本件発明に係る電解銅箔: 本件発明に係る電解銅箔は、前記表面処理電解銅箔の製造に用いる電解銅箔であって、当該電解銅箔の光沢面側の表面粗さ(Rzjis)が0.4μm〜2.0μmであることを特徴としている。
そして、本件発明に係る電解銅箔は、光沢面側の光沢度[Gs(60°)]が、70以上であることが好ましい。
また、本件発明に係る電解銅箔は、上述の表面処理電解銅箔の製造に用いる電解銅箔であって、当該電解銅箔の表面処理後に接着面として用いる面の表面粗さ(RSm)が、0.14mm〜0.39mmであることを特徴とする。
本件発明に係る銅張積層板: 本件発明に係る銅張積層板は、前記表面処理電解銅箔を絶縁層構成材料と張合わせて得られることを特徴としている。
前記銅張積層板は、表面の銅を溶解除去した後に露出する絶縁層構成材料表面のうねりの高低差(Wmax)が0.05μm〜0.7μmである。
本件発明に係るプリント配線板: 本件発明に係るプリント配線板は、上述の銅張積層板を用いて得られたことを特徴とする。
本件発明に係る表面処理電解銅箔は、従来市場に供給されてきた低プロファイル表面処理電解銅箔と同等以上のハイレベルな低プロファイル表面処理電解銅箔であって、且つ、接着面のうねりが小さなものである。従って、接着面に対する低プロファイル及びうねりが小さいことへの要求の顕著な、テープ オートメーティド ボンディング(TAB)基板やチップ オン フィルム(COF)基板のファインピッチ配線の形成材料として好適であり、プラズマディスプレイパネルの電磁波シールドパターンの形成材料としても好適である。
本件発明に係る表面処理電解銅箔の形態: 本件発明に係る表面処理電解銅箔は、電解銅箔の表面に防錆処理又はシランカップリング剤処理のいずれか一種以上を行った表面処理電解銅箔であって、絶縁層構成材料との接着面のうねりの最大高低差(Wmax)が0.05μm〜0.7μmである。そして、接着面のうねりの最大高低差(Wmax)のより好ましい範囲は0.05μm〜0.5μmである。
本件発明ではうねりを検出する指標として、うねりの最大高低差(Wmax)を採用した。本件明細書において、うねりの最大高低差(Wmax)とは、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて得られる試料表面の凹凸に係る情報から、うねりに係る波形データをフィルタを用いて抽出したときの波形データの高低差の最大値(波形の最大ピーク高さと最大バレー深さの和)をいう。なお、本件発明者等は、測定機器としてzygo New View 5032(ZYGO社製)を、そして解析ソフトにはMetro Pro Ver.8.0.2を用い、低周波フィルタは11μmに設定して測定した。
具体的には次に示すa)〜c)の手順により測定した。
a)試料片の非測定面を試料台に密着させて固定する。
b)試料片の1cm角の範囲内において108μm×144μmの視野を6点選択して測定する。
c)6箇所の測定点から得られた値の平均値を試料の代表値として採用する。
a)試料片の非測定面を試料台に密着させて固定する。
b)試料片の1cm角の範囲内において108μm×144μmの視野を6点選択して測定する。
c)6箇所の測定点から得られた値の平均値を試料の代表値として採用する。
なお、三次元表面構造解析顕微鏡では、表面形状の実態が面に対する高さの分布として3次元の数値情報で得られる。よって、表面形状の測定装置として採用することが有意義である。また、接着面のうねりだけに着目するのであれば、触針式粗さ計を用いても、得られるうねりの値は線上の高さ変位の分布を表す2次元の数値情報であって、情報不足は否めないが指標たり得る。従って、触針式粗さ計を用いて得られるRSm(JIS B 0601:2001)は、うねりの周期ととらえることが出来るため、RSmが大きいとうねりが小さくて平滑な表面であって、RSmが小さいとうねりが大きく粗い表面であると判断する指標に用いることも出来る。
ところで、TABやCOFの製造等で一般的に用いられているサブトラクティブ法による配線形成における好適なエッチング条件は、配線間にエッチング残が発生しないように設定されており、異なるエッチング時間で試行して好適時間を求める結果、オーバーエッチング時間が設定されている。このオーバーエッチング時間とは、銅張積層板を構成している表面処理電解銅箔が接着面の表面粗さ等にばらつきを持っていることを前提とし、最もエッチングしにくい部分にエッチング残が発生しないように、追加のエッチング時間を設定したものである。しかし、オーバーエッチング時間を設けること自体が配線のサイドウォールを必要以上に溶解してしまうことがあり、エッチングレジストの下部に位置する部分にありながら導体が不必要に溶解してしまう、所謂アンダーカットの原因にもなっている。
また、前述のオーバーエッチング時間の設定が必要な、接着面のうねりの大きい表面処理電解銅箔を用いた配線では配線のボトム部分の幅が制御困難になり、これを鳥瞰すると、図1に模式的に示すようにボトム部分に波打ちが生じる。図1のA−A’部分の断面を、銅箔と絶縁層構成材料との接着界面のうねりを強調して図2に模式的に示した。この配線断面は絶縁層構成材料F上に配線Wが形成され、配線間に接着面Iが露出した形態となっている。この図2に示すように、銅のエッチングでは、溶解していく部分が円又は楕円形状を取ろうとするために、うねりの谷側を向いてエッチングされた部分のサイドウォールSWVはボトム部分に尾を引くような断面形状を取り、反面、頂点側を向いているサイドウォールSWTは切り立った断面形状になる。その結果、配線を上部から平面的に観察すると、図1に示すように配線のボトム端面に波打ちが生じ、直線性に劣るものとなる。一方、図3に示すように、接着面のうねりの小さい表面処理電解銅箔を用いた配線においては、そのような問題は発生せず、直線性が良好な配線形成が可能となる。
そして、電解銅箔に施される防錆処理は、銅張積層板及びプリント配線板の製造過程で支障をきたすことの無いよう、表面処理電解銅箔の表面が酸化腐食することを防止するために実施している。更に、絶縁層構成材料との密着性を阻害せず、可能であれば当該密着性を向上させる構成であることが推奨される。防錆処理に用いられる方法は、ベンゾトリアゾール、イミダゾール等を用いる有機防錆、若しくは亜鉛、クロメート、亜鉛合金等を用いる無機防錆のいずれを採用しても使用目的に適合していれば問題は無い。
次に、防錆処理を施す方法に関して説明する。有機防錆の場合は、有機防錆剤の溶液を用いた浸漬塗布、シャワーリング塗布、電着等の手法を用いることが可能である。無機防錆の場合は、電解法、無電解めっき法、スパッタリング法や置換析出法等を用い、防錆元素を電解銅箔の表面上に析出させることが可能である。
また、電解銅箔に施されるシランカップリング剤処理とは、防錆処理が終了した後に、絶縁層構成材料との密着性を化学的に向上させるための処理である。
そして、用いるシランカップリング剤は、特に限定を要するものではなく、使用する絶縁層構成材料、プリント配線板製造工程で使用するめっき液等の性状を考慮して選択使用すれば良い。シランカップリング剤処理は、シランカップリング剤溶液を用いた浸漬塗布、シャワーリング塗布、電着等の手法により実施することが可能である。
前記表面処理電解銅箔の接着面は、析出面側であることが好ましい。低プロファイルであるという観点だけで見ると、研磨仕上げされている回転陰極表面の転写である光沢面側の方が好ましいように思われる。しかし、回転陰極はその使用中に、酸化物などの化合物皮膜の形成などに起因して、表面状態が不安定になることがあるため、これを防止する目的で表面研磨などの機械加工を実施する必要がある。その結果、表面形状の変化が起こってしまい、同レベルの表面状態を維持することは困難なのである。しかし、平滑めっきを可能とする銅電解液を用いた場合に得られる析出面は、回転陰極表面の凹凸を埋めつつ析出銅被膜が成長するため、回転陰極の表面形状にある程度のばらつきがあっても、安定した表面状態が得られるが故に好ましい。
前記表面処理電解銅箔の絶縁層構成材料との接着面の凹凸の最大高低差(PV)は、0.05μm〜1.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.05μm〜0.8μmである。本件発明で表面形状を検出する指標の一つとして用いている凹凸の最大高低差(PV)とは、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて直接計測された試料表面の最大ピーク高さと最大バレー深さの和である。また、ここで示しているPVと前述のWmaxの下限である0.05μmは、評価の結果が0.05μmを下回った場合に不具合が生じることを意味しているものではなく、本件発明に係る製造方法で得られる表面処理電解銅箔における経験的な下限値として示している。
また、前記表面処理電解銅箔の接着面の表面粗さ(Rzjis)は、0.1μm〜1.0μmであることが好ましく、0.1μm〜0.5μmであることがより好ましい。そして、Rzjisの測定と同時に得られるRSmは0.1を超えていることが更に好ましい。この表面粗さ(Rzjis)は、前述の如くJIS B 0601−2001に準拠してTD方向に測定して得られる数値であるが、本件発明では測定基準長を0.8mmとし、触針には円錐状のダイアモンドスタイラス先端のRが2μmのものを用いている。前述のように、波打ちの程度の指標は接着面のうねりの最大高低差(Wmax)であるが、現実の工程を考えてみると、接着面の表面粗さ(Rzjis)があるレベルを超えるとオーバーエッチング時間を長くせざるを得なくなる。しかし、前述のように、オーバーエッチング時間が長くなるとアンダーカット現象が顕著になる。従って、表面処理電解銅箔の接着面の表面粗さ(Rzjis)も小さいことが好ましく、上記範囲に調整されていることにより、絶縁層構成材料に張合わせたときに実用上十分な密着性を確保することが可能となる。そして、この範囲であれば、プリント配線板として、実用上十分な耐熱特性、耐薬品性、引き剥がし強さを得ることも可能となる。
そして、前記接着面における、うねりの最大高低差(Wmax)と凹凸の最大高低差(PV)の比〔(Wmax)/(PV)〕は、0.8以上であることが好ましい。凹凸の最大高低差(PV)はうねりを有する表面に存在する粗さを含んだ状態で計測されたものである。従って、当該比〔(Wmax)/(PV)〕が1に近い値を示すことは、波形の表面に存在する凹凸は〔(PV)−(Wmax)〕とみなすことが出来ることから、当該凹凸が微細であることを表している。反面、比が小さいことは、当該波形表面に存在している凹凸が大きいことを示す。即ち、比が1に近いほど、絶縁層構成材料に食い込んでいる部分が微細であることを示しており、配線を形成する際に、オーバーエッチングを実質的に必要としないエッチング条件設定が可能となる。
本件発明に係る電解銅箔の形態: 本件発明に係る「電解銅箔」とは、何ら表面処理を行っていない状態のものであり、「未処理銅箔」、「析離箔」等と称されることがある。本件明細書では、これを単に「電解銅箔」と称する。この電解銅箔の製造には、一般的に連続生産法が採用されており、ドラム形状をした回転陰極と、その回転陰極の形状に沿って対向配置された、鉛系陽極又は寸法安定性陽極(DSA)との間に硫酸系銅電解液を流し、銅を回転陰極の表面に電解析出させ、この析出した銅を箔として回転陰極から連続的に引き剥がして巻き取っている。このようにして得られた電解銅箔は、一定幅で巻き取られたロール状となるため、特性の測定などに際して方向を示すには、回転陰極の回転方向(ウェブの長さ方向)をMD(Machine Direction)、MDに対して直角方向である幅方向をTD(Transverse Direction)といっている。
この電解銅箔の、回転陰極と接触した状態から引き剥がされた側の表面形状は、回転陰極表面の形状が転写したものとなり、光沢を有することから、この面を「光沢面」と称する。これに対し、析出側の表面形状は、通常は、析出する銅の結晶成長速度が結晶面ごとに異なるために、山形の凹凸形状を示しており、こちら側を「析出面」と称する。そして、一般的には、電解銅箔に表面処理を施した後の析出面側が、銅張積層板を製造する際の絶縁層構成材料との接着面となる。更に、前述したように、この接着面となる側の表面粗さが小さいほど優れた低プロファイル電解銅箔なのである。
そして、本件発明に係る電解銅箔の、光沢面側の表面粗さ(Rzjis)は、0.4μm〜2.0μmが好ましく、0.4μm〜1.8μmがより好ましい。この表面粗さ(Rzjis)は、析出面同様JIS B 0601−2001に準拠してTD方向に測定して得られる数値である。本件発明では、電解銅箔の光沢面側の表面粗さ(Rzjis)を、回転陰極の表面粗さ(Rzjis)を管理するための二次指標として規定している。電解銅箔の光沢面側の表面形状が、回転陰極の表面形状の転写であることから指標として用いることが出来るのである。二次指標を用いる理由は、後述するように、回転陰極の表面形状が析出面に与える影響が大きいにもかかわらず、量産中には、使用している回転陰極の表面粗さを測定して管理することが事実上不可能であるからである。
そして、前記回転陰極の表面粗さが大きくなると、得られる電解銅箔の析出面の表面粗さが大きくなる傾向があることが経験的に把握されている。即ち、厚い電解銅箔を製造するのであれば、平滑な析出面が得られる銅電解液を用いると回転陰極表面の凹凸を埋めつつ厚くなっていくため大きな問題にはならない。しかし、厚さ20μm以下の電解銅箔において、析出面側の表面粗さ(Rzjis)が1.0μm以下の析出状態を得るためには、回転陰極表面の表面粗さ(Rzjis)が2.0μmを超えることは好ましくない。そして、厚さ12μmで、光沢面側表面粗さ(Rzjis)が2.0μmを超える電解銅箔を用いて得られる表面処理電解銅箔では、その析出面のうねりの最大高低差(Wmax)を測定してみると、0.7μmを超えてしまう傾向があり好ましくない。
そして、前記電解銅箔は光沢面側の光沢度[Gs(60°)]は、70以上であることが好ましい。本件発明では、電解銅箔の析出面の滑らかさの差異を明瞭にとらえるため、光沢度も指標としている。ここでいう光沢度には[Gs(60°)]を採用しており、これは、被検体の表面に入射角60°で測定光を照射し、反射角60°で跳ね返った光の強度を測定したものである。本件発明における光沢度は、JIS Z 8741−1997に基づき、日本電色工業株式会社製光沢計VG−2000型で測定している。
電解銅箔の光沢面では、表面粗さが大きくなるほどTDとMDの異なる方向から見た凹凸形状の違いが大きくなる。光沢面が回転陰極の表面形状のレプリカ形状であり、回転陰極の製造方法及び回転させながら切削や研磨を行うという機械的表面仕上げ手法等が影響して、回転陰極表面の形状に方向性を持ってしまうためである。従って、回転陰極表面に析出する電解銅箔にTD/MD方向差を発生させないためには、この回転陰極面のTD/MD方向差を小さくする必要があり、光沢面側の表面粗さ(Rzjis)は小さく、光沢度[Gs(60°)]は大きい状態で管理されることが好ましい。具体的には、光沢面側の表面粗さ(Rzjis)は、0.4μm〜2.0μm、光沢度[Gs(60°)]は、70以上となるように回転陰極の表面を調整することが好ましい。そして、光沢面側の表面粗さ(Rzjis)は0.4μm〜1.8μmが、光沢度[Gs(60°)]は100以上がより好ましい。そして、光沢面側の光沢度[Gs(60°)]の上限は経験的に500程度である。
また、前記電解銅箔の析出面側の表面粗さ(Rzjis)は、0.1μm〜1.0μmが好ましく、当該析出面側の光沢度[Gs(60°)]は、400以上であることが好ましい。そして、析出面側の表面粗さ(Rzjis)は0.1μm〜0.5μm、光沢度[Gs(60°)]は、600以上がより好ましく、光沢度[Gs(60°)]のTD/MD比が90%〜110%であることが更に好ましい。良好な表面状態を有する表面処理電解銅箔を得るためには、ベースである電解銅箔析出面の表面状態が平滑且つ均一であることが必須である。そして、析出面側の光沢度[Gs(60°)]の上限は経験的に800程度である。
また、前記電解銅箔は、結晶組織の異なる複数層の析出銅層を有することも好ましい。ここで形成されている複数層の析出銅層は、後述する、電流密度の水準を変えた2ステップ以上を備える電解工程で得られたものであり、図4に見られるように、光沢面側に、より緻密な結晶構造を持つ析出銅層を有する。そして、この緻密な結晶構造を有する銅層が光沢面の全面に亘って一定の厚みで存在していることが、その後の電解ステップで均一で平滑な析出を得るために好ましいのである。
一般的な電解銅箔製造に使用している回転陰極の表面は、酸化物などの化合物皮膜が形成されているなどの理由により不均一であり、結果として電析銅の析出サイトに偏りが生じてしまう。即ち、銅が電析している部分には更に優先的に銅析出が進行し、電解銅箔の析出面側にうねりが生じてしまう。特に薄い電解銅箔を製造しようとした場合には、銅電解の開始時から開始直後までの第1ステップ電解工程で形成する銅の初期析出層で、回転陰極の表面を銅で均一に覆ってしまうことが、析出面が低プロファイルで、且つ、うねりの小さな電解銅箔を得るには有効になる。なお、本件発明では、第3ステップ電解以降の電解工程を設けることも可能ではあるが、これらの工程は必要に応じて実施すれば良い。通常は、2層の析出銅層を持つ構成とすれば本件発明の目的は達成される。このようにして得られた電解銅箔には、酸化防止などの理由により前述の表面処理が施されるが、本件発明の目的に沿うためには粗化処理は施さないのが好ましい。
本件発明に係る電解銅箔の製造方法の形態: 本件発明に係る電解銅箔の製造方法は、硫酸系銅電解液を用いた電解法により、回転陰極表面に析出させた銅を剥取って電解銅箔を製造する方法であって、連続する第1ステップ電解から第nステップ電解(n≧2)までを、異なる2水準以上の電流密度で実施する構成としている。この電解法構成を採用することにより、第1ステップ電解で好ましい形態の初期析出層を形成でき、析出面が低プロファイルで、且つ、うねりの小さな電解銅箔の安定生産が可能になる。
そして、前記第1ステップ電解の電流密度は50A/dm2〜400A/dm2であることが好ましい。この電流密度が50A/dm2を下回った場合には、前記初期析出層を均一な電析銅皮膜として得ることが困難になり、400A/dm2を上回った場合には、例えば陰極付近で水素が発生し、回転陰極の表面性状の劣化が早まってしまう。そして、効果を一層高めるためには、電流密度を71A/dm2以上の設定とすることが好ましい。ところで、ここでいう電流密度は、用いる銅電解液に応じて設定される陽極電流密度(DA)のことである。本来であれば、析出状態は陰極電流密度(DK)に左右されるためDKで管理すべきであるが、現実的にはDKの測定が困難であるため、DAを管理指標としている。
また、前記第2ステップ電解以降の電流密度は15A/dm2〜90A/dm2であって、第1ステップ電解の電流密度よりも小さいことが好ましい。電流密度が15A/dm2を下回ると工業的生産性が極度に乏しくなり、そして電流密度が90A/dm2を超える場合には得られる電解銅箔の析出面の粗さが大きくなって、低プロファイルで、且つ、うねりの小さな析出面を有する電解銅箔の生産が困難になる傾向にある。そして、より好ましい電流密度は50A/dm2〜70A/dm2である。
本件発明に係る電解銅箔の製造方法で用いる硫酸系銅電解液は、膠、チオ尿素、ポリアルキレングリコール、アミン化合物、メルカプト基を持つ化合物、塩素イオン、高分子多糖類、ジアリルジアルキルアンモニウム塩と二酸化硫黄との共重合体、オキシエチレン系界面活性剤、ポリエチレンイミン又はその誘導体、活性硫黄化合物のスルフォン酸塩、環状構造を持つ4級アンモニウム塩重合体から選択された1種類以上の添加剤を含んでいる。そして、連続する第1ステップ電解から第nステップ電解までを、異なる2水準以上の電流密度で実施する電解工程と、この組成の硫酸系銅電解液との組み合わせにより、本件発明に係る、析出面が低プロファイルであり、且つ、うねりの小さな電解銅箔の安定製造が可能になる。ここで、複数ステップの電解工程における個別の電解条件は、選択した添加剤の構成ごとに予察試験を実施して好適化すべきである。
また、前記硫酸系銅電解液は、MPS及びSPSから選択された少なくとも1種と、環状構造を持つ4級アンモニウム塩重合体とを含むものであることがより好ましい。その場合において、前記硫酸系銅電解液中のMPS及び/又はSPSの合算濃度は、0.5ppm〜200ppmであることが好ましい。そして、より好ましい濃度範囲は0.5ppm〜50ppm、更に好ましい濃度範囲は1ppm〜20ppmである。このMPS及び/又はSPSの合算濃度が0.5ppm未満の場合には、電解銅箔の析出面が粗くなり低プロファイル電解銅箔を得ることが困難となる。一方、MPS及び/又はSPSの合算濃度が200ppmを越えても得られる電解銅箔の析出面が平滑化する効果は向上せず、むしろ電析状態が不安定化する。従って、析出面が、低プロファイルと小さなうねりとを両立するためには、MPSとSPSの両方を用いる場合にも、濃度の合算値を上記の範囲とすることが推奨される。
なお、本件発明でいうMPS又はSPSとは、それぞれの塩をも含む意味で使用しており、濃度の記載値は、便宜的に、入手の容易なナトリウム塩としてのMPSナトリウム(本件出願では以降「MPS−Na」と称する)に換算した値としている。そしてMPSは本件発明に係る硫酸系銅電解液中では2量体化することでSPS構造を取り得るものであり、従ってMPS及び/又はSPSの合算濃度とは、MPS単体やMPS−Na等塩類の他、SPS−Naとして添加されたもの及びMPSとして電解液中に添加された後SPS等に重合化した変性物をも含み、それらのNa塩としての換算値である。MPSの構造式を化1として、SPSの構造式を化2として以下に示す。これら構造式の比較から、SPSはMPSの2量体であることがわかる。
また、前記硫酸系銅電解液中の環状構造を持つ4級アンモニウム塩重合体濃度は、1ppm〜100ppmが好ましく、より好ましい濃度範囲は10ppm〜50ppmである。
前記環状構造を持つ4級アンモニウム塩重合体としては種々のものを用いることが可能であるが、低プロファイルで、且つ、うねりの小さな析出面を形成する効果を考えると、DDAC重合体を用いることが最も好ましい。DDACは、重合体構造を取る際に環状構造を成すものであり、環状構造の一部は4級アンモニウムの窒素原子で構成されることになる。そして、DDAC重合体には、前記環状構造が5員環や6員環のものなどの複数の形態が存在している。実際に用いる重合体は、合成条件によりそれらのいずれか又は混合物となると考えられているため、ここでは、これら重合体のうち5員環構造を取っている化合物を代表とし、塩素イオンを対イオンとした場合について化3として以下に示す。このDDAC重合体とは、化3により明らかなように、DDACが2量体以上の重合体構造を取っているものである。重合体を構成する直鎖部分は、炭素と水素のみから構成されることがより好ましい。
そして、このDDAC重合体の、硫酸系銅電解液中の濃度は、1ppm〜100ppmであることが好ましく、より好ましい濃度範囲は10ppm〜50ppmである。DDAC重合体の硫酸系銅電解液中の濃度が1ppm未満の場合には、MPS及び/又はSPSの濃度を如何に高めても電析銅の析出面が粗くなり、低プロファイルと小さなうねりとを両立させた析出面を有する電解銅箔を得ることが困難となる。DDAC重合体の硫酸系銅電解液中の濃度が100ppmを超えても銅の析出状態が不安定になり、低プロファイルと小さなうねりとを両立させた析出面を有する電解銅箔を得ることが困難となる。
また、前記硫酸系銅電解液中の塩素濃度は、5ppm〜100ppmが好ましく、更に好ましい濃度範囲は10ppm〜60ppmである。この塩素濃度が5ppm未満の場合には、電解銅箔の析出面が粗くなり低プロファイルを維持出きなくなる。一方、塩素濃度が100ppmを超えても電析状態が安定せず、電解銅箔の析出面が粗くなり、低プロファイルな析出面を形成できなくなる。
上記硫酸系銅電解液を用いることにより、製造された電解銅箔は上述のように確かに低プロファイルであり、且つ、高光沢度を有することになる。但し、電解銅箔の析出面側のうねりを低減させることを目的とした場合には電解液の工夫のみで対応できる範囲には限界があるため、前述の如く回転陰極の表面状態の調整や、連続する第1ステップ電解から第nステップ電解までを、異なる2水準以上の電流密度で実施する電解法を採用することが重要なのである。
本件発明に係る銅張積層板の形態: 本件発明に係る銅張積層板は、前記表面処理電解銅箔を絶縁層構成材料と張合わせてなる銅張積層板である。そして本件発明にいう銅張積層板は、片面銅張積層板、両面銅張積層板、内部に内層回路を備える多層銅張積層板の全てを含む概念として記載している。
前記絶縁層構成材料が骨格材を含有するものであれば、リジッド銅張積層板となる。従来のリジッド銅張積層板で用いられていた骨格材は、ガラス織布又はガラス不織布が大半を占めてきた。一方、近年では、前述の様に従来無かったレベルのファインパターンを有する配線板を用いてBGAやCSPを作成するために、銅張積層板用の骨格材として、ガラス繊維よりも細いアラミド繊維を不織布で用いるなどして、表面の平坦化を図っている。その結果として、表面処理電解銅箔の接着面粗さが大きい場合には、エッチング後の表面の凹凸が電気特性等に与える影響がクローズアップされてしまう。従って、本件発明に係るリジッド銅張積層板は、特に電気特性の制御が重要なプリント配線板の作成用途に好適である。そして、前記絶縁層構成材料が可撓性を有するフレキシブル素材であれば、フレキシブル銅張積層板となる。
前記銅張積層板は、全面の銅を溶解除去した後の絶縁層構成材料表面のうねりの高低差(Wmax)が0.05μm〜0.7μmとなる。前記表面処理電解銅箔には銅粒の付着などの粗化処理は施しておらず、接着面のうねりの高低差(Wmax)を0.05μm〜0.7μmとしている。この時、全面の銅を溶解除去した後の絶縁層構成材料の表面は、表面処理電解銅箔の接着面のレプリカであり、そのうねりの高低差(Wmax)も0.05μm〜0.7μmの一致した範囲を示す。
プラスチックフィルムを用いたフレキシブル銅張積層板では、プラスチックフィルム自体の表面が平滑であるため、用いた表面処理電解銅箔の接着面のうねりの高低差(Wmax)と、全面の銅を溶解除去した後の絶縁層構成材料の表面のうねりの高低差(Wmax)との一致性が最も得られやすい。しかし、リジッド銅張積層板では、骨格材を用いているため、骨格材の凹凸が表面形状に影響を与える場合がある。しかしながら、前述のように銅張積層板用の骨格材として、ガラス繊維よりも細いアラミド繊維の不織布を用いるなどして表面の平坦化を図ったり、樹脂付銅箔を用いた場合には、骨格材の影響を考える必要が無くなり、用いた表面処理電解銅箔の接着面のうねりの高低差(Wmax)と、全面の銅を溶解除去した後の絶縁層構成材料の表面のうねりの高低差(Wmax)との良好な一致性が得られやすい。
これら銅張積層板の製造方法に関しては、従来技術を用いることが可能である。具体的には、リジッド銅張積層板又はフレキシブル銅張積層板を製造する場合には、ホットプレス方式や連続ラミネート方式を用いて製造することが可能であり、本件発明に係る表面処理電解銅箔、FR−4クラスのプリプレグ等のリジッド絶縁層形成材又はポリイミド樹脂フィルム等のフレキシブル絶縁層形成材、鏡板を用いて、所望のレイアップ状態としたブックを形成し、当該ブックを170℃〜200℃に加熱した熱板に挟んで加圧し成形する。
一方、フレキシブル銅張積層板の製造には、ロールラミネート方式やキャスティング方式が採用可能である。このロールラミネート方式とは、本件発明に係る表面処理銅箔のロールと、ポリイミド樹脂フィルムやPETフィルム等の樹脂フィルムロールとを用いて、Roll to Roll方式で圧力をかけた加熱ロールの間を重ねて通し、熱圧着させる方法である。そして、キャスティング方式とは、本件発明に係る表面処理銅箔の表面に、ポリアミック酸等の加熱することによりポリイミド樹脂化する樹脂組成膜を形成し、加熱して縮合反応を起こさせることで表面処理銅箔の表面にポリイミド樹脂皮膜を直接形成する方法である。
本件発明に係る、前記リジッド銅張積層板を用いて得られたリジッドプリント配線板、又は前記フレキシブル銅張積層板を用いて得られたフレキシブルプリント配線板は、上記から明らかなように、ファインパターンが狙い通りに形成され、且つ、配線端部の波打ちが少なく、配線の直線性が良いという点から、特に、電気特性の安定したプリント配線板である。また、本件発明に係る表面処理電解銅箔の接着面に存在する表面凹凸は、析出面のうねりに沿って存在している微細なもののみであるため、薄い絶縁層構成材料を用いることの多い高多層プリント配線板の製造用途にも好適である。
ここで、上記リジッド銅張積層板又はフレキシブル銅張積層板(以下、単に「銅張積層板」と称する。)のいずれかを用いてプリント配線板に加工する場合の、一般的加工方法の一例を念のために述べておく。最初に、銅張積層板表面へエッチングレジスト層を形成し、エッチング配線パターンを露光し、現像し、エッチングレジストパターンを形成する。このときのエッチングレジスト層は、ドライフィルム、液体レジスト等の感光性樹脂が用いられる。その他、露光はUV露光が一般的であり、定法に基づいたエッチングレジストパターンの形成方法が採用できる。
そして、銅エッチング液を用いて電解銅箔を配線形状にエッチング加工し、エッチングレジスト剥離を行うことで、リジッド基材又はフレキシブル基材の表面に所望の配線形状を形成する。このときのエッチング液に関しても、酸性銅エッチング液、アルカリ性銅エッチング液等の全ての銅エッチング液の使用が可能である。
従って、両面銅張積層板及び多層銅張積層板を用いる場合には、エッチングなどによる配線形成途中で、その層間での導通を確保することが必要な場合がある。係る場合には、定法によるスルーホール、ビアホール等の形状形成を行い、その後層間導通を得るための導通めっき処理が施される。一般的に、この導通めっき処理には、パラジウム触媒による活性化処理を行い銅無電解めっきが施され、その後電解銅めっきで膜厚成長を行うものである。
そして、銅エッチングによる配線形成が終了すると十分に水洗を行い、乾燥、その他必要に応じて防錆処理等が施されて、リジッドプリント配線板又はフレキシブルプリント配線板となる。
<電解銅箔の製造>
この実施例では、各種添加剤濃度を表1に記載の濃度に調整した電解液7種類を用い、電解銅箔を作成した。具体的には、硫酸系銅電解液として、硫酸銅(試薬)と硫酸(試薬)とを純水に溶解し、銅濃度80g/L、フリー硫酸濃度140g/Lに調製し、基本溶液とした。そして、この基本溶液に、活性硫黄化合物のスルフォン酸塩としてMPS−Na又はSPS−Na、環状構造を持つ4級アンモニウム塩重合体としてDDAC重合体3種(センカ(株)製ユニセンス:FPA100L、FPA101L、FPA102L)及び塩酸を添加した。なお、用いたDDAC重合体の分子量はFPA100L<FPA101L<FPA102Lである。
この実施例では、各種添加剤濃度を表1に記載の濃度に調整した電解液7種類を用い、電解銅箔を作成した。具体的には、硫酸系銅電解液として、硫酸銅(試薬)と硫酸(試薬)とを純水に溶解し、銅濃度80g/L、フリー硫酸濃度140g/Lに調製し、基本溶液とした。そして、この基本溶液に、活性硫黄化合物のスルフォン酸塩としてMPS−Na又はSPS−Na、環状構造を持つ4級アンモニウム塩重合体としてDDAC重合体3種(センカ(株)製ユニセンス:FPA100L、FPA101L、FPA102L)及び塩酸を添加した。なお、用いたDDAC重合体の分子量はFPA100L<FPA101L<FPA102Lである。
電解銅箔の作成に当たっては、表面を#2000の研磨紙を用いて研磨し表面粗さ(Ra)を0.20μmに調整したチタン板電極を回転陰極に用い、陽極にはDSAを用いて、液温を50℃とし、第1ステップ電解の陽極電流密度(DA)を74A/dm2、第2ステップ電解の陽極電流密度(DA)を52A/dm2として電解した。実施例1では、15μm厚さの電解銅箔を得、実施例2では、厚さ12μm厚さの電解銅箔を得た。実施例3では、実施例1と同一の液を用いて電解時間を調節し厚さ70μmの電解銅箔を得た。そして、実施例4及び実施例5では、MPS−Naを用いずSPS−Naを用いた以外は実施例1及び実施例3とほぼ同等の電解液を用い、厚さ15μmの電解銅箔を得た。SPS−Naを用いた実施例6及び実施例7では、分子量が大きいDDAC重合体を使用し、その他の添加剤濃度が最適になるよう調整して厚さ12μmの電解銅箔を得た。以上の実施例1〜実施例7から得られた電解銅箔の評価結果等を、表2に示す。
次に、実施例8〜実施例11として、全面の銅を溶解除去した後の絶縁層構成材料表面を評価することを目的とし、前述の実施例1〜実施例7と同じ基本溶液を用いて表3に示す電解液4種類を調製した。この電解液を用い、電解条件は実施例1〜実施例7と共通とした条件で、厚さ15μmの電解銅箔を4種類作成した。
<表面処理電解銅箔の製造>
そして、実施例1〜実施例11で得られたそれぞれの電解銅箔の両面に防錆処理を施した。ここでは以下に述べる条件の無機防錆を採用した。硫酸亜鉛浴を用い、フリー硫酸濃度70g/L、亜鉛濃度20g/Lとし、液温40℃、電流密度15A/dm2とした亜鉛防錆処理を施した。更に、前記亜鉛防錆を施した後に、電解でクロメート防錆処理を施した。このときの電解条件は、クロム酸濃度5.0g/L、pH 11.5、液温35℃、電流密度8A/dm2、電解時間5秒とした。
そして、実施例1〜実施例11で得られたそれぞれの電解銅箔の両面に防錆処理を施した。ここでは以下に述べる条件の無機防錆を採用した。硫酸亜鉛浴を用い、フリー硫酸濃度70g/L、亜鉛濃度20g/Lとし、液温40℃、電流密度15A/dm2とした亜鉛防錆処理を施した。更に、前記亜鉛防錆を施した後に、電解でクロメート防錆処理を施した。このときの電解条件は、クロム酸濃度5.0g/L、pH 11.5、液温35℃、電流密度8A/dm2、電解時間5秒とした。
以上の防錆処理及び水洗後、直ちに析出面側にシランカップリング剤の吸着を行った。このときの溶液組成は、純水を溶媒として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5g/Lの濃度となるよう加えたものとした。そして、この溶液をシャワーリングにて吹き付けることにより吸着処理し、水分を気散させて11種類の表面処理電解銅箔を得た。
実施例1〜実施例7では表面処理電解銅箔に関する評価を実施した。評価結果を表4に示す。そして、うねり成分と粗さ成分との分離を実施例1で得られた表面処理電解銅箔の析出面に対して実施した。具体的には、三次元表面構造解析顕微鏡(zygo New View 5032)の観察データから、面内において任意に選択された直線データを用いて解析した。結果を図5に示す。
また、実施例8〜実施例11では表面処理電解銅箔の他、該表面処理電解銅箔を用いて作成した銅張積層板の銅を全面溶解して、その後の絶縁層構成材料表面を評価した。具体的には、各実施例から得られた表面処理電解銅箔の析出面側に、ポリイミド樹脂前駆体を塗布し、350℃で加熱することにより、厚さ38μmのポリイミドフィルム層を表面処理電解銅箔上に積層させた。このようにして得られたフレキシブル銅張積層板を、塩化第二銅エッチング液を用いて銅箔を全面エッチングした。銅エッチング後の絶縁層構成材料表面は、三次元表面構造解析顕微鏡(zygo New View 5032)を使用して、張合わせた表面処理電解銅箔と同じ設定で評価した。以上の実施例8〜実施例11から得られた評価結果等を、表3に示す。
比較例は、特許文献1に記載された実施例4のトレース実験である。陰極には本願実施例と同様のチタン板を用いた。具体的には、硫酸銅(試薬)と硫酸(試薬)とを純水に溶解して銅濃度90g/L、フリー硫酸濃度110g/Lとし、特許文献1に記載の硫酸系銅電解液の基本溶液を調製した。これに、3−メルカプト1−プロパンスルホン酸ナトリウム濃度4ppm、ヒドロキシエチルセルロース濃度5ppm、低分子量膠(平均分子量1000)濃度5ppmとなるように添加し、更に塩化ナトリウムを用いて塩素濃度を30ppmになるように調整し、硫酸系銅電解液を得た。電解条件は特許文献1に準じ、厚さ12μmの電解銅箔を得た。得られた電解銅箔の評価結果を表2に示す。そして得られた電解銅箔の両面に実施例と同様に防錆処理を施した。得られた表面処理電解銅箔の評価結果を表4に示す。更に、得られた表面処理電解銅箔の析出面について、実施例1で得られた表面処理電解銅箔と同様にしてうねり成分と粗さ成分とを分離した。結果を図6に示す。
<電解銅箔及び表面処理電解銅箔の対比>
以降、表2、表3及び表4に記載の電解銅箔及び表面処理電解銅箔から得られたデータを用い、本件実施例と比較例に係る電解銅箔、表面処理電解銅箔を対比して説明する。
以降、表2、表3及び表4に記載の電解銅箔及び表面処理電解銅箔から得られたデータを用い、本件実施例と比較例に係る電解銅箔、表面処理電解銅箔を対比して説明する。
実施例1と実施例3との対比: 表2に見られるように、電解銅箔の析出面の評価特性比較においては、実施例1の厚さ15μm電解銅箔に対し、実施例3の厚さ70μm電解銅箔の方が、Wmaxは0.37μmに対して0.065μm、表面粗さ(Rzjis)が0.32μmに対して0.17μm、光沢度は(TD/MD)で(659/665)に対して(691/686)といずれも優れており、本件発明に係る電解銅箔では、厚みを増すに従って優れた平滑性を有する析出面が得られる傾向がある。
実施例1〜実施例7(除:実施例3)の対比: 表2に見られるように、厚さ70μmである実施例3を除き実施例1〜実施例7で得られた電解銅箔では、析出面のうねりの最大高低差(Wmax)が0.27μm〜0.58μm、凹凸の最大高低差(PV)は0.30μm〜0.66μm、(Wmax/PV)比は0.869〜0.959、表面粗さ(Rzjis)は0.29μm〜0.71μm、RSmは0.14μm〜0.22μm、光沢度[Gs(60°)]は(TD/MD)で(608〜790/640〜790)であり、全ての項目において若干のレベル差はあるものの、優れた平滑性と小さなうねりを両立した析出面を有する電解銅箔となっている。また、TD/MDの方向差は見られておらず、均質である。
実施例1と実施例4の対比: ここでは、活性硫黄化合物のスルフォン酸塩としてのMPS−NaとSPS−Naの比較を電解銅箔で実施する。表2を見ると、実施例1で得られた電解銅箔と実施例4で得られた電解銅箔では、析出面のうねりの最大高低差(Wmax)は0.37μmと0.27μm、凹凸の最大高低差(PV)は0.39と0.30、(Wmax/PV)比は0.949と0.904、表面粗さ(Rzjis)は0.32μmと0.29μm、RSmは0.19μmと0.18μm、光沢度[Gs(60°)]は(TD/MD)で(659/665)と(790/790)であり、実施例4のようにSPS−Naを用いると光沢度に若干の優位性が見られるものの、実施例1と実施例4で得られた電解銅箔は、ともに優れた平滑性と小さなうねりを両立した析出面を有する電解銅箔となっている。
そして、表4に示す表面処理電解銅箔においても、実施例3で得られた厚さ70μm銅箔を例外とすると、実施例1〜実施例7で得られた表面処理電解銅箔では、析出面のうねりの最大高低差(Wmax)は0.23μm〜0.57μm、凹凸の最大高低差(PV)は0.27μm〜0.64μm、(Wmax/PV)比は0.852〜0.930、表面粗さ(Rzjis)は0.28μm〜0.70μm、RSmは0.14μm〜0.21μm、光沢度[Gs(60°)]は(TD/MD)で(507〜629/479〜627)であり、全ての項目において若干のレベル差はあるものの、接着面に優れた平滑性と小さなうねりを両立した表面処理電解銅箔となっている。また、TD/MDの方向差は見られておらず、均質である。
全面の銅を溶解除去した後の絶縁層構成材料表面の評価: 表3を見ると、実施例8〜実施例11で得られた表面処理電解銅箔と、該表面処理電解銅箔を張合わせた後に銅を全面エッチングした絶縁層構成材料との表面形状の比較において、うねりの高低差(Wmax)は(表面処理箔接着面/絶縁層構成材料表面)が(0.27μm〜0.36μm/0.28μm〜0.39μm)であり、表面粗さ(Rzjis)は(表面処理箔接着面/絶縁層構成材料表面)が(0.23μm〜0.42μm/0.25μm〜0.37μm)と、ほぼ同等であった。
実施例と比較例との対比: 比較例で得られた電解銅箔は、表2に示すとおり、特許文献1の再現はほぼ出来ているものの、明らかに本願実施例に係る電解銅箔には劣るものとなっている。そして、光沢度[Gs(60°)]はTDで324、MDでも383と、測定方向による違いが見られる。
そして、比較例で得られた表面処理電解銅箔でも、表4に示すとおり、配線端面の直線性に大きく影響を与える接着面のうねりの最大高低差(Wmax)の値が、本件実施例で得られた同じ厚さの表面処理電解銅箔よりも大きな値を示すものとなっている。従って、電解銅箔同様、比較例の表面処理電解銅箔は明らかに本願実施例に係る表面処理電解銅箔には劣るものとなっている。そして、光沢度[Gs(60°)]はTDで272、MDでは322と測定方向による違いが見られる。更に、図5と図6の比較からも明らかであるが、本願実施例で得られた表面処理電解銅箔の析出面では、うねり成分の変位に対して、粗さ成分の変位が明らかに小さくなっている。これに対し、比較例で得られた表面処理電解銅箔では、うねり成分の変位そのものが、本願実施例で得られた表面処理電解銅箔のうねり成分の変位よりも大きくなっている。また、それ以上に粗さ成分の変位が大きく、うねり成分と同レベルの変位を示している。そして、触針式粗さ計を用いて得られるRSmの値からも、本件発明に係る表面処理電解銅箔の方が、比較例で得られた表面処理電解銅箔よりもうねりのピッチが狭いことが明らかである。この点からも、触針式粗さ計を用いた測定は指標となり得ることがわかる。この比較から、本件発明に係る表面処理電解銅箔が、20μmピッチレベルの微細配線形成用途に好適であることの理由が、一層明らかとなっている。そして、基本的には、良好な特性を有する表面処理電解銅箔を得るためには、良好な電解銅箔が必要であることが伺える。
なお、上記実施例では、本件発明に係る電解銅箔の製造に際して、硫酸系銅電解液の銅濃度を50g/L〜120g/L、フリー硫酸濃度を60g/L〜250g/L程度とした電解液組成により良好な結果を得ている。しかし、実操業に当たっては、第1ステップ電解の電流密度と第2ステップ電解以降の電流密度はもとより、液組成の範囲や液温等も含め、その設備仕様に合った、好適な範囲に変更をしてもかまわないのである。そして、上記実施例及び比較例に記載の、MPS、SPSやDDAC重合体等の添加方法又は添加形態にはこだわらず、例えばMPSを添加する場合には、MPS−Naの代わりに他のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を用いてもかまわない。この時、SPS−Cu塩を用いることは、Naの蓄積を防ぐことが出来るために好ましい。そして、本件発明に係る硫酸系銅電解液は、その他の添加剤類の存在を否定しているものでもなく、上記添加剤類の効果を更に際だたせたり、連続生産時の品質安定化に寄与できること等が確認されているものであれば任意に添加してかまわない。
本件発明に係る表面処理電解銅箔は、従来市場に供給されてきた低プロファイル表面処理電解銅箔と同レベル以上の低プロファイルを有しており、且つ、接着面のうねりが小さいものである。よって、テープ オートメーティド ボンディング(TAB)基板やチップ オン フィルム(COF)基板のファインピッチ配線、特に20μmピッチレベルの微細配線の形成に好適である。同様に、プラズマディスプレイパネルの電磁波シールドパターンの形成材料としても好適であり、また、キャパシタ内蔵プリント配線板の内蔵キャパシタの下部電極形成材料としても好適である。更に、リチウムイオン二次電池の負極集電体としても好適に用い得るものである。
F 絶縁層構成材料
I 接着面
SWT うねりの頂点側を向いて形成されたサイドウォール
SWV うねりの谷側を向いて形成されたサイドウォール
W 配線
I 接着面
SWT うねりの頂点側を向いて形成されたサイドウォール
SWV うねりの谷側を向いて形成されたサイドウォール
W 配線
Claims (11)
- 電解銅箔の表面に防錆処理又はシランカップリング剤処理のいずれか1種以上の表面処理を行った表面処理電解銅箔であって、
当該表面処理電解銅箔の絶縁層構成材料との接着面は、表面粗さ(Rzjis)が0.1μm〜1.0μmであり、且つ、光沢度[Gs(60°)]が400以上の電解銅箔の表面を用いて得られるものであり、
当該接着面のうねりの最大高低差(Wmax)が0.05μm〜0.7μmであることを特徴とする表面処理電解銅箔。 - 電解銅箔の表面に防錆処理又はシランカップリング剤処理のいずれか1種以上の表面処理を行った表面処理電解銅箔であって、
当該表面処理電解銅箔の絶縁層との接着面が備えるうねりの最大高低差(Wmax)が0.05μm〜0.5μmであることを特徴とする表面処理電解銅箔。 - 当該接着面の表面粗さ(RSm)が、0.1mmより大である請求項1又は請求項2に記載の表面処理電解銅箔。
- 前記接着面の表面粗さ(Rzjis)が、0.1μm〜1.0μmである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面処理電解銅箔。
- 前記接着面は、電解銅箔の析出面側を用いて得られたものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の表面処理電解銅箔。
- 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の表面処理電解銅箔の製造に用いる電解銅箔であって、
当該電解銅箔の光沢面側の表面粗さ(Rzjis)が、0.4μm〜2.0μmであることを特徴とする電解銅箔。 - 光沢面側の光沢度[Gs(60°)]が、70以上である請求項6に記載の電解銅箔。
- 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の表面処理電解銅箔の製造に用いる電解銅箔であって、
当該電解銅箔は、表面処理後に接着面として用いる面の表面粗さ(RSm)が、0.14mm〜0.39mmであることを特徴とする電解銅箔。 - 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の表面処理電解銅箔を絶縁層構成材料と張合わせて得られたことを特徴とする銅張積層板。
- 表面の銅を溶解除去した後に露出する絶縁層構成材料表面のうねりの高低差(Wmax)が0.05μm〜0.7μmである請求項9に記載の銅張積層板。
- 請求項9又は請求項10に記載の銅張積層板を用いて得られたことを特徴とするプリント配線板。
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