以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のベースフィルムは、成形品の表面に、転写法により、立体的な意匠を有する保護層を形成するのに用いられる転写印刷用積層体のベースフィルムであって、ベースフィルム上に、硬化性樹脂層及び印刷層がこの順で積層された転写印刷用積層体の構成要素としてのベースフィルムである。
本発明のベースフィルムは、高低差5〜200μmの凹凸形状を有するものであり、好ましくは高低差10〜170μm、更に好ましくは高低差10〜150μmである。かかる高低差が小さすぎると、立体的な意匠を転写形成することが困難となる。一方、高低差の大きすぎるベースフィルムは、製造することが困難な傾向にある反面、ベースフィルムの凹凸形状の高低差が所定以上に大きくなっても、当該高低差に対応する高低差を有する立体意匠が得られにくい傾向にある。
ここで、フィルムの高低差とは、図1中、「H」(又はH1、H2、H3)で表わされるもので、具体的には、レーザー顕微鏡(キーエンス社製 カラー3Dレーザー顕微鏡 VK−9700)を用いて、ベースフィルムの硬化性樹脂層を形成する面の最大高さの値から最低高さの値を引くことにより測定される。
凹凸形状とは、ベースフィルムの硬化性樹脂層を形成する面の表面の高低差の形状であって、柄・模様を描くことができる高低差である。凹凸の形状は、フィルム幅方向、長手方向のいずれに沿って形成されていてもよく、好ましくはフィルム全体として凹凸形状を形成している。この場合、個々の凹凸は、図1(a)に示すように、断面矩形型の凹凸であってもよいし、図1(b)に示すように断面波型の凹凸であってもよい。さらに図1(c)に示すように、異なる高さの凹凸の組合せであってもよい。図1(c)の例は、3段階の高低差(H1、H2、H3)を有する凹凸形状を有するフィルムである。このような場合、本発明にいう「フィルムの高低差」とは、最大高低差(H3)をいう。さらにまた、凹凸形状における凹部長さ(図1中、「w2」又は「w4」で示す)、凸部長さ(図1中、「w1」又は「w3」で示す)は、フィルム1全体にわたって等しくてもよいし(例えば、連続パターンの場合)、複数の長さが組み合わさったもの(例えば、ランダムパターンの場合)でもよい。従って、描かれる柄、模様の種類は特に限定しないが、例えば、絹目柄、梨地柄、砂目柄、ヘアライン模様、麻柄、皮調の柄等が挙げられる。
以上のような凹凸形状は、例えば、フィルムにエンボス加工などを施すことにより得られる。
本発明のベースフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ビニルアルコール系樹脂フィルム(ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール系樹脂フィルム等)等、各種フィルムが挙げられるが、中でも保護層(硬化性樹脂層が硬化された層)との剥離性の点からビニルアルコール系樹脂フィルムからなるものが好ましく、より好ましくはポリビニルアルコール系樹脂フィルム、最も好ましくはポリビニルアルコールフィルムである。
本発明において、「ビニルアルコール系樹脂フィルムからなる」とは、ビニルアルコール系樹脂フィルムの他に別の層(フィルムや塗膜など)が積層されている場合も含む意味であるが、通常はビニルアルコール系樹脂フィルム単独で、ベースフィルムを構成する。
ビニルアルコール系樹脂フィルムは、ビニルアルコール系樹脂を製膜することにより得られる。ビニルアルコール系樹脂とは、ビニルエステル単位がケン化されてなるビニルアルコール単位を有するものであればよい。従って、ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニルのケン化物であるポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの変性品(変性ポリビニルアルコール)を含むポリビニルアルコール系樹脂;エチレン含有率が20〜60モル%程度のエチレン−ビニルアルコール系樹脂などを挙げることができる。これらのうち、ポリビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ポリビニルアルコールが最も好ましく用いられる。
ビニルアルコール系樹脂に含まれる酢酸ビニル単位のケン化度は通常、75モル%以上、80モル%以上であることが硬化樹脂層との離型性の点から好ましい。
前記変性ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルと他の不飽和単量体との重合体をケン化することにより製造してもよいし、ポリビニルアルコールを後変性することにより製造してもよい。変性量は、10モル%以下であることが好ましく、特には7モル%以下、更には5モル%以下であることが好ましい。
上記で他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エーテル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
また、後変性の方法としては、ポリビニルアルコールをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール結合を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いてもよい。側鎖に1,2−ジオール結合を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ケン化度が75モル%以上のものが好ましく、更には78〜99.7モル%、特には85〜95モル%が好ましい。ケン化度が低すぎると硬化樹脂層との離型性が低下する傾向がある。
また、ポリビニルアルコール系樹脂の20℃における4重量%水溶液の粘度としては10〜70mPa・s(20℃)が好ましく、更には15〜60mPa・s(20℃)、特には20〜50mPa・s(20℃)が好ましい。該粘度が低すぎるとフィルム強度等の機械的物性が低下する傾向があり、高すぎると製膜性が低下する傾向がある。
尚、上記粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
更に、かかるポリビニルアルコール系樹脂はフィルムの着色防止、強度低下防止のために樹脂中に含有される酢酸ナトリウムの量を0.8重量%以下、好ましくは0.5重量%以下に調整するのが有利である。かかる酢酸ナトリウムの含有量の調整については、メタノール等のアルコール又は水により洗浄する方法等が一般的である。
本発明において、ビニルアルコール系樹脂フィルム、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、次のようにして製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを製造するに当たっては、フィラーを含有させることがブロッキング防止性や艶消し等の意匠性や加飾成形品への指紋付着を軽減できる点で好ましく、更には必要に応じて、可塑剤、界面活性剤を適宜配合することも好ましい。
上記フィラーとしては、多糖類および/または無機類があげられる。多糖類の中でも、澱粉が好ましく、例えば、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等);物理的変性澱粉(α−澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等);酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等);化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉等);化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉等)などが用いられる。なお、化学変性澱粉誘導体のうちエステル化澱粉としては、酢酸エステル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、キサントゲン酸エステル化澱粉、アセト酢酸エステル化澱粉など、エーテル化澱粉としては、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉など、カチオン化澱粉としては、澱粉と2−ジエチルアミノエチルクロライドの反応物、澱粉と2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの反応物など、架橋澱粉としては、ホルムアルデヒド架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉などが挙げられる。中でも入手の容易さや経済性点から、生澱粉が好適に用いられる。
また、無機類としては、例えば、タルク、クレー、シリカ、ケイ藻土、カオリン、雲母、アスベスト、石膏、グラファイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ウイスカー状炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドーソナイト、ドロマイト、チタン酸カリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、加工鉱物繊維、炭素繊維、炭素中空球、ベントナイト、モンモリロナイト、銅粉などが挙げられる。
これらのフィラーは単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記フィラーの含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、3〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは4〜25重量部、特に好ましくは5〜20重量部である。フィラーの含有量が少なすぎるとフィルム製造に際してブロッキングが生じやすい傾向にあり、多すぎるとベースフィルムの強度が低下し、転写印刷時に被転写体への追従性が低下する傾向がある。
また、上記フィラーの平均粒子径は、0.1〜30μmであることが好ましく、特には0.3〜25μm、更には0.5〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が小さすぎるとフィルム製造に際してブロッキングが生じやすい傾向にあり、大きすぎると硬化性樹脂層(保護層)をベースフィルム上に塗工する際に気泡などを噛み易くなり、欠点などが増加する傾向にある。
上記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピリングリコール等のアルキレングリコール類やトリメチロールプロパン等があげられる。これらは単独であるいは2種以上併せて用いられる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂に配合される可塑剤の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1〜15重量部である。上記可塑剤の含有量が少なすぎると可塑効果が低く、得られるベースフィルムの破断の原因となる傾向があり、多すぎると放置安定性が低下する傾向がある。
上記界面活性剤は、ポリビニルアルコール系フィルムの製膜装置であるドラムやベルト等の金属表面と製膜したフィルムとの剥離性の向上を目的として、配合されるものであり、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、剥離性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを用いることが好適である。
上記界面活性剤の含有量については、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して0.01〜20重量部であることが好ましく、0.03〜15重量部であることがより好ましい。上記界面活性剤の含有量が少なすぎると、製膜装置のドラムやベルト等の金属表面と製膜したフィルムとの剥離性が低下して製造困難となる傾向があり、逆に多すぎるとフィルム表面にブリードして硬化性樹脂層を塗工する際に厚み斑が生じ易くなる傾向がある。
さらに、本発明の効果を妨げない範囲で、架橋剤、抗酸化剤(フェノール系、アミン系等)、安定剤(リン酸エステル類等)、着色料、香料、増量剤、消泡剤、防錆剤、紫外線吸収剤、さらには他の水溶性高分子化合物(ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)等の他の添加剤を配合してもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂からなるベースフィルムは、例えば、つぎのようにして製造される。
まず、上記ポリビニルアルコール系樹脂、フィラー、可塑剤、界面活性剤等を所定の配合量にて配合しフィルム形成材料を調製する。つぎに、Tダイからフィルム形成材料を製膜ベルト上または製膜ドラム上に流延させ、乾燥させることによりフィルム状化させ、必要に応じてさらに熱処理することにより製造される。
ここで、上記製膜ベルトとは、一対のロール間に架け渡されて走行する無端ベルトを有し、Tダイから流れ出たフィルム形成材料を無端ベルト上に流延させるとともに乾燥させるものである。上記無端ベルトは、例えば、ステンレススチールからなり、その外周表面は鏡面仕上げが施されているものが好ましい。
また、上記製膜ドラムとは、回転するドラム型ロールのことであり、Tダイから流れ出たフィルム形成材料を1個以上の回転ドラム型ロール上に流延し乾燥させるものである。
乾燥温度について、製膜ベルトを用いる場合は、通常、80〜160℃であることが好ましく、特には90〜150℃が好ましい。乾燥温度が低すぎると乾燥不足となり製品外観を低下させる傾向があり、高すぎると熱処理が高く水分率が低くなりすぎる傾向がある。
また、製膜ドラムを用いる場合は、製膜第一ドラムが通常、80〜100℃であることが好ましく、特には82〜99℃であることが好ましい。乾燥温度が低すぎると乾燥不足となり製品外観を低下させる傾向があり、高すぎると熱処理が高く水分率が低くなりすぎる傾向がある。ここで、上記製膜第一ドラムとは、Tダイから流れ出たフィルム形成材料が流延される最上流側に位置するドラム型ロールのことである。
上記乾燥の後、必要に応じて熱処理が行われるが、かかる熱処理の方法としては、例えば、熱ロール(カレンダーロールを含む)、熱風、遠赤外線、誘電加熱等の方法があげられる。また、熱処理される面は、製膜ベルトまたは製膜ドラムに接する面と反対側となる面が好ましい。また、熱処理を施すフィルムの水分含有量は、通常、4〜8重量%程度であることが好ましい。さらに、熱処理された後のフィルムの水分含有量は通常、2〜6重量%であることが好ましい。
上記熱処理機による熱処理は、50〜180℃で行うことが好ましく、より好ましくは60〜160℃、特に好ましくは70〜150℃である。すなわち、上記熱処理の温度が低すぎると、製膜ベルトあるいは製膜第一ドラムに接する面のカールが生じることがあり、硬化性樹脂層を形成する工程、および転写工程で不具合となる傾向がみられ、熱処理の温度が高すぎると、フィルムが柔らかくなるため、皺が入り易くなり、品質が低下する傾向にある。さらに、上記熱処理に要する時間は、熱処理ロールの場合、その表面温度にもよるが、通常1〜180秒間、好ましくは10〜120秒間とすることが好ましい。上記熱処理は、通常、フィルム乾燥のための乾燥ロール処理に引き続き、別体の熱処理ロールにして通常行われる。
また、本発明においては、上記熱処理は、ベースフィルムの硬化性樹脂層側の表面に対して行われることが好ましい。
上記方法によりポリビニルアルコール系樹脂のベースフィルムが得られるが、得られたポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率としては、0.5〜10重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜6重量%である。水分率が低過ぎるとフィルムが脆くなり、スリット工程や、硬化性樹脂層の形成工程において、破断しやすくなる傾向があり、逆に水分率が高過ぎるとフィルムが伸びやすく、放置安定性が低下したり、硬化性樹脂層の形成工程において、硬化性樹脂層の厚みに斑ができやすくなる傾向がある。
なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率は、例えば、カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製、「MKS−210」)を用いて測定することができる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率の調整方法としては、例えば、下記に示す方法があげられる。すなわち、下記に示す水分率の調整方法に従い、上記範囲内のポリビニルアルコール系フィルムの水分率に設定することが可能となる。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂を溶解したドープを乾燥して製膜する際の乾燥機温度を上下させてポリビニルアルコール系樹脂フィルムの加湿・除湿を行う方法により水分率の調整を行う。ドープの温度は、その温度により乾燥効率に対して影響を及ぼすため、70〜98℃の範囲内にて調整する。また、乾燥に際しては、好ましくは150〜50℃の間で、より好ましくは145〜60℃の間で温度勾配を有する少なくとも2つ以上の熱風乾燥機中にて行うことが好ましく、さらに1〜15分間、より好ましくは1〜10分間乾燥を行うことが水分調整という観点から好ましい。
上記乾燥温度の勾配範囲が大きすぎたり、乾燥時間が長すぎたりすると、乾燥過多となる傾向があり、逆に乾燥温度の勾配範囲が小さすぎたり、乾燥時間が短すぎたりすると、乾燥不足となる傾向がある。
上記温度勾配は、150〜50℃の間で段階的に乾燥温度を変えていくものであり、通常は、乾燥開始時から温度を徐々に上げていき、所定の含水率になるまで一旦設定した乾燥温度範囲の、最高の乾燥温度に至らせ、つぎに徐々に乾燥温度を低くすることにより最終的に目的とする含水率とすることが効果的である。これは結晶性や剥離性、生産性等を制御するために行われるものであり、例えば、120℃−130℃−115℃−100℃、130℃−120℃−110℃、115℃−120℃−110℃−90℃等の温度勾配設定があげられ、適宜選択され実施される。
(2)ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの巻き取り前に調湿槽に通過させることによりポリビニルアルコール系樹脂フィルムの加湿・除湿を行い、水分率の調整を行う。
(3)ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの巻き取り前、もしくは巻き取り後に、熱処理を行うことによりポリビニルアルコール系樹脂フィルムの除湿を行い、水分率の調整を行う。
以上のようにポリビニルアルコール系樹脂フィルムが得られる。
本発明において、ビニルアルコール系樹脂フィルムの厚み(図1に示すベースフィルム1において、「t」で表わされる)は、5〜150μmであることが好ましく、特には10〜100μmであることが好ましく、特には20〜70μmであることが好ましい。フィルムが分厚くなりすぎると、所望の高低差を有する凹凸形状を付与しにくくなり、薄くなりすぎると、凹凸形状を付与するための加工時に、フィルムが破断したりするおそれがある。
上記のようにして得られるビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、高低差がほとんどない平板状のフィルムである。本発明で使用する高低差5〜200μmの凹凸形状は、原料となる樹脂組成物から製膜されたフィルムに適宜処理を施すことにより、付与することができる。高低差5〜200μmの凹凸形状を付与する方法は特に限定せず、エンボス加工やラビング処理などを採用することができる。また、このようなフィルムの後加工に限定せず、製膜時に用いる製膜ベルトや製膜ドラムに凹凸形状を施すことでフィルム形成時に所望の高低差を有する凹凸形状を形成させることも可能である。しかしながら、所望の高低差を有する凹凸形状、所望の意匠形状が得られやすいという点、種々の意匠(柄、模様)への対応が容易であるという生産設備に関する見地から、エンボス加工により付与する方法が好ましく採用される。
エンボス加工は、エンボスロール及びバックアップロールを用いて、エンボスロールとバックアップロールとの間に、ビニルアルコール系樹脂フィルムを通過させることにより行われ、エンボスロール表面に、付与しようとする意匠形状(凹凸パターン)が形成されている。
該エンボスロールとしては、彫刻又は旋盤加工等により、その表面が凸状に形成された金属ロール又はセラミックロール等が用いられる。かかる凸部の形状は、付与しようとする意匠パターンに依存する。絹目柄、梨地柄、砂目柄、ヘアライン模様、麻柄、皮調の柄等に応じて、格子状、絹目状、亀甲状、菱型状等の定形の連続パターンの他、種々のサイズの凸部を組み合わせた不定形の凸部の不連続パターンなどが挙げられる。連続パターンの場合、凸部は、通常10〜200メッシュ、好ましくは20〜100メッシュであることが好ましい。かかる凸部のメッシュが小さすぎると、フィルムに凹凸形状が形成されにくい傾向があり、ひいては所望の立体形状を有する意匠を有するフィルムが得られにくい傾向にある。一方、メッシュが大きくなりすぎると意匠性に優れたパターンが得られにくい傾向がある。
また、エンボスロールの凹凸部の高低差としては、30〜500μmであることが好ましく、特には40〜400μm、更には50〜300μmであることが好ましい。高低差が小さすぎると、エンボス加工が施されたフィルムの凹凸部の高低差が小さくなり、ひいては意匠の転写性が低くなり、所望とする意匠が得られにくい傾向がある。一方、エンボスロールの凹凸部の高低差が増大することに伴って、得られるフィルムの凹凸形状の高低差も増大する傾向にあるが、エンボスロールの凹凸部の高低差が所定レベルに達すると、フィルムの凹凸形状の高低差に反映されにくくなる。さらに、エンボスロールの凹凸部の高低差が大きくなりすぎると、エンボス加工後のフィルムに皺などが入り易くなって、フィルムの品質が低下する傾向がある。
一方、バックアップロールとしては、表面硬度が、JIS K 6253に基づくA型硬度計で80以上で、且つD型硬度計で90以下のものが好ましく用いられる。ここで、JIS K 6253に基づいて測定される表面硬度とは、スプリング試験機による押針の押込硬さに基づく硬度であり、数値が高いほど硬いことを示し、D型硬度計は、A型硬度計よりも硬い場合に用いられる。
バックアップロールの表面硬度が低すぎると、エンボスロールが所定の高低差を有する意匠が形成されているにもかかわらず、フィルムに所定の高低差を有するエンボス加工を施すことが困難になる傾向にある。一方、バックアップロールの表面硬度が高くなりすぎると、フィルムにピンホール等が出来やすくなりフィルムの品質が低下する傾向がある。
本発明では、バックアップロールとして、上記範囲のロール表面硬度を有するものであればよく、例えばウレタン系、シリコーン系、フッ素系、オレフィン系等の合成ゴム等が被覆されたロールであることが好ましい。
本発明においては、ビニルアルコール系樹脂フィルムを、上記の如きエンボスロールとバックアップロールの間を通過させることによりエンボス加工を行うことが好ましく、かかるバックアップロールによるビニルアルコール系樹脂フィルムのエンボスロールへの押圧力は、使用するバックアップロールのロール表面硬度及びエンボスロールの凹凸形状によって適宜選択され得るが、通常0.5〜10MPaが好ましく、より好ましくは1〜8MPa、特に好ましくは1〜5MPaである。
かかる押圧力が小さすぎると、十分な深さを有するエンボスロールを使用してもフィルムに所望の高低差を付与できない傾向があり、大きすぎるとエンボス加工後のフィルムの厚みが部分的に薄くなり機械的強度が低下し易くなり、又ピンホールが発生する傾向にある。
また、本発明では、エンボス加工時のエンボスロールの表面温度が100〜180℃であり、かつ、バックアップロールの表面温度が50℃以上であることが好ましい。エンボスロールのより好ましい表面温度は105〜170℃であり、特に好ましくは110〜160℃であり、バックアップロールのより好ましい表面温度は60〜110℃であり、特に好ましくは70〜100℃である。
エンボスロールの表面温度が低すぎると充分な深さを有するエンボス加工が得られない傾向があり、高すぎるとエンボス加工時にフィルムが伸びやすくなりエンボス加工後の意匠が不均一になる傾向がある。バックアップロールの表面温度が低すぎると充分な深さを有するエンボス加工が得られない傾向がある。
更に、エンボス加工を行うに当たり、エンボスロールの加工速度を1〜100m/minとすることが好ましく、特には2〜90m/min、更には3〜80m/min、殊には5〜50m/minとすることが好ましい。かかる加工速度が遅すぎると生産効率が低下する傾向があり、速すぎると皺などができやすく品質が低下する傾向がある。
また、本発明では、エンボス加工が施されるビニルアルコール系樹脂フィルムとしては、含水率が2〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜8重量%、特に好ましくは4〜7重量%である。かかる含水率が上記範囲以外では充分な深さを有するエンボス加工が施されにくい傾向がある。
ビニルアルコール系樹脂フィルムの含水率を上記範囲に調整する方法としては、製膜後乾燥前のビニルアルコール系樹脂フィルムを引き続き乾燥して含水率を調整したり、含水率2重量%未満のビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬あるいは調湿等を施して含水率を調整したりする方法等が挙げられる。
かくして、ベースフィルムとして用いられる高低差が5〜200μmの凹凸形状を有するビニルアルコール系樹脂フィルムが得られる。
ベースフィルムとして用いられるビニルアルコール系樹脂フィルム(ベースフィルム)の破断伸度としては、23℃、50%RH調湿条件下において、150%以上であることが好ましく、さらには180%以上が好ましい。破断伸度が低過ぎるとスリット工程や、硬化性樹脂層を連続的に形成する工程に断紙が発生する傾向がある。
なお、破断伸度の上限としては通常350%である。ここで、フィルムの破断伸度は、JIS K 7127(1999年)に準拠して測定される。
上記ビニルアルコール系樹脂フィルムからなるベースフィルムの見かけ上の厚み(図1中、「T」で表わされ、実質的なフィルム厚みtと高低差Hとの合計量に該当する)は、凹凸形状の付与容易性、転写時の被転写体との追従性の点から、10〜350μmであることが好ましく、特には15〜300μm、更には20〜270μmが好ましい。かかる厚みTが小さいということは、凹凸形状が小さいことを意味し、立体意匠の転写性が劣る傾向がある。厚みTが大きいということは、フィルム厚みに対して凹凸形状の高低差が大きいことを意味し、エンボス加工等によってフィルムが破断しやすくなる傾向にある。さらに転写時に皺などが入り易く、転写物の表面が不均一になる傾向がある。
かくして得られた本発明のベースフィルムは、例えば、従来公知の防湿包装の処理を行い、10〜25℃の雰囲気下、宙づり状態にて保存することが好ましい。
次に、本発明の転写印刷用積層体について説明する。
本発明の転写印刷用積層体は、上記ベースフィルム上に、硬化性樹脂層及び印刷層が積層されたものであり、さらに前記印刷層上に接着層が積層されていてもよい。
上記硬化性樹脂層は、ベースフィルムを剥離した際に、被転写体(加飾成形品)の最外面となる層であり、ベースフィルムを剥離するまでの間に、または、ベースフィルムを剥離した後に、かかる硬化樹脂層は硬化され、被転写体の表面を保護するための保護層となる。材質としては、例えば、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ゴム樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂等が用いられる他に、紫外線硬化性樹脂組成物や電子線硬化性樹脂組成物などの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物や熱硬化性樹脂組成物も好ましく用いられる。本発明においては、成形品の耐薬品性、耐磨耗性の点で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。
また、かかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、熱硬化性でもある性能も有させしめておくことも好ましい。
かかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、例えば、アクリル系樹脂及びウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有してなるもの、好ましくは更に光重合性モノマーを含有してなるものであることが好ましい。
かかるアクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル系モノマーの単独重合体又は共重合体や、その他のエチレン性不飽和モノマーを共重合成分とするアクリル系共重合体などが挙げられる。
アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でもアルキル基の炭素数が1〜12のアクリル酸アルキルエステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の脂肪族アクリル酸アルキルエステルが特に好ましく用いられる。
その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の水酸基含不飽和モノマー;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有不飽和モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)アクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)メタクリルアミド等のアミド基含有不飽和モノマー;アクリルアミド−3−メチルブチルメチルアミン、ジメチルアミノアルキルアクリルアミド、ジメチルアミノアルキルメタクリルアミド等のアミノ基含有不飽和モノマー;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等のスルホン酸基含有不飽和モノマー;スチレン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
かかるアクリル酸エステル系モノマー及びその他のエチレン性不飽和モノマーの含有割合(共重合比)は特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル系モノマーを20〜100重量%、その他のエチレン性不飽和モノマーを0〜80重量%とすることが好ましく、特にはアクリル酸エステル系モノマーを40〜100重量%、その他のエチレン性不飽和モノマーを0〜60重量%、更にはアクリル酸エステル系モノマーを80〜100重量%、その他のエチレン性不飽和モノマーを0〜20重量%とすることが好ましい。アクリル酸エステル系モノマーの含有割合が少なすぎると硬化膜の耐水性・耐湿熱性等の耐久性が低下する傾向がある。
上記のアクリル系樹脂は、前記重合成分を有機溶剤中でラジカル共重合させる如き、当業者周知の方法によって容易に製造される。
かくして本発明で用いるアクリル系樹脂が得られるわけであるが、かかるアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が20〜130℃であることが好ましく、特に好ましくは30〜120℃、更に好ましくは40〜110℃である。ガラス転移点(Tg)が低すぎると活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂層が粘着性を帯びて後加工を施す際に不具合(工程中でも巻き付き・印刷不良等)を生じる原因となる傾向があり、高すぎると活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂層を硬化させ保護層としたときに脆くなる傾向がある。
また、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が、10,000〜500,000であることが好ましく、更には20,000〜100,000、特には30,000〜80,000であることが好ましい。
かかるアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が小さすぎると硬化前の硬化性樹脂層)が柔軟化および粘着性を帯びてしまうために、この層の上に後加工を施す際に不具合(工程中での巻き付き・印刷不良等)を生じる原因となる傾向があり、大きすぎると硬化性樹脂層の塗工時の膜厚均一性が得難くなると共に乾燥後の硬化性樹脂層の硬度が必要以上に高くなり後加工を施す際に不具合(硬化性樹脂層の亀裂が生じる・層間剥離等)を生じる原因となる傾向がある。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系化合物であり、水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を、更に、必要に応じてポリオールを反応させて製造できる。
上記水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、中でも3個以上のアクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル系化合物が好ましく用いられる。また、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系、脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが挙げられ、中でもトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物又は多量体化合物、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)、又は、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等が挙げられる。
かかるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール;該多価アルコール又はポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール;カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール;ポリオレフィン系ポリオール;水添ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。
更には、かかるポリオールとして、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ホモゲンチジン酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、1,4−ブタンジオールスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基又はスルホン酸塩基含有ポリオール等も挙げられる。
ポリイソシアネートとポリオールの反応生成物を用いる場合は、例えば、上記ポリオールと上記ポリイソシアネートを反応させて得られる末端イソシアネート基含有ポリイソシアネートとして用いればよい。かかるポリイソシアネートとポリオールの反応においては、反応を促進する目的でジブチルスズジラウレートのような金属触媒や、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のようなアミン系触媒等を用いることも好ましい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の製造方法としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート化合物を不活性ガス雰囲気で混合し、通常、30〜80℃、2〜10時間反応させる方法が挙げられる。この反応では、オクテン酸スズ、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ、オクチル酸鉛、オクチル酸カリウム、酢酸カリウム、スタナスオクトエート、トリエチレンジアミン等のウレタン化触媒を用いるのが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物の重量平均分子量は、好ましくは300〜4000、更に好ましくは1000〜3500、特に好ましくは1200〜3000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると硬化性樹脂層を硬化した後に凝集力不足となる傾向があり、大きすぎると粘度が高くなりすぎ、製造が困難となる傾向がある。
なお、上記の重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(昭和電工社製、「Shodex GPC system−11型」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定される。
また、光重合性モノマーとしては、紫外線等の光線が照射された際に、それ自身が重合しポリマーを形成するものであって、一般に、官能基が一つある単官能性モノマーと、官能基が二つ以上ある多官能性モノマーとがある。かかる光重合性モノマーとしては、例えば、以下のものが例示される。
上記単官能モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリルレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテルアクリレート等があげられる。
また、上記多官能モノマーのうち2官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等があげられる。
そして、上記多官能モノマーのうち3官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等があげられる。
さらに、その他アクリル酸のミカエル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルもあげられ、アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等があげられる。また、2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、特定の置換基をもつカルボン酸であり、例えば2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等があげられる。さらに、その他オリゴエステルアクリレートもあげられる。
本発明において、上記アクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、光重合性モノマーの含有割合としては、アクリル系樹脂100重量部に対して、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物が20〜300重量部が好ましく、特に40〜250重量部、更に60〜200重量部が好ましく、光重合性モノマーが5〜80重量部が好ましく、特に10〜60重量部、更に15〜50重量部が好ましい。
かくして、アクリル系樹脂とウレタン(メタ)アクリレート系化合物、好ましくは更に光重合性モノマーを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が得られるが、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が紫外線硬化性樹脂組成物の場合には、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物の場合には光重合開始剤は不要である。
かかる光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;などが挙げられる。なお、これらの光重合開始剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記光重合開始剤の含有量は、用いるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(光重合性モノマーを配合する場合はその合計量)100重量部に対して、0.5〜15重量部であることが好ましく、特には0.5〜10重量部、さらには1〜8重量部であることが好ましい。
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
本発明において、硬化性樹脂層の厚みは、耐磨耗性、耐薬品性の点で1〜150μmであることが好ましく、特には2〜120μm、更には2〜100μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎると耐磨耗性や耐薬品性が低下することとなる傾向があり、厚すぎると転写後の膜切れが不充分となり、バリ等の原因となる傾向がある。
硬化性樹脂層の形成に際しては、上記の原料樹脂又は原料樹脂組成物をグラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法により積層すればよい。
上記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた場合には、ベースフィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層(硬化性樹脂層)を積層した後から、被転写体に印刷層が転写され、ベースフィルムが剥離されるまでの間の任意の段階に、あるいはベースフィルムが剥離された後の任意の段階に、活性エネルギー線を照射し硬化させ、保護層(ハードコート層)とすればよく、または、ベースフィルムを剥離した後に、活性エネルギー線を照射し硬化させ、保護層(ハードコート層)としてもよい。
例えば、(1)ベースフィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物層を積層した後、活性エネルギー線を照射し硬化させたり、(2)ベースフィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物層を積層した後、後述の印刷層を形成し、その後ベースフィルム側より活性エネルギー線を照射して硬化させたり、(3)更に後述の接着層まで積層した後にベースフィルム側より活性エネルギー線を照射して硬化させたり、(4)本発明の転写印刷用積層体を被転写体に接着させた後にベースフィルム側より活性エネルギー線を照射して硬化させたり、(5)本発明の転写印刷用積層体を被転写体に接着させた後に、ベースフィルムを剥離し活性エネルギー線を照射して硬化させたりする方法などが挙げられる。中でも熱転写時の被転写体への追従性の点で(4)または(5)の方法が好適である。
なお、活性エネルギー線を照射して硬化性樹脂層を硬化させるに際して、活性エネルギー線としては、例えば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。
紫外線照射により硬化させる方法としては、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、0.01〜10J/cm2程度照射すればよい。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
本発明において、印刷層は意匠を形成する層となるものであり、印刷層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。
印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いることができる。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が好適である。また、離型性を有するフィルムに上記の印刷法を用いて印刷層を設け、印刷面と、ベースフィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層(硬化性樹脂層)とが接するように配置し、ドライラミネーション法により貼り合わせても良い。
本発明の転写印刷用積層体は、上記の、ベースフィルム、硬化性樹脂層、印刷層が積層されたものであるが、好ましくは印刷層の上層に、接着層が積層される。
接着層は、被転写体面に上記の積層体を接着させるためのものである。印刷層と成形品との接着力が弱い場合に形成するとよい。接着層の材質としては、被転写体の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用すればよく、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。
接着層の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法が挙げられる。また、上記材質よりなる接着性をもつシートをラミネート法などにより貼り合わせて接着層とすることも可能である。また、接着層が、印刷層を兼ねていてもよい。
接着層の厚みは、被転写体への追従性の点で0.5〜50μmであることが好ましく、特には1〜40μm、更には2〜30μmであることが好ましい。かかる厚みが薄すぎると転写時の被転写体への追従性が低下する傾向があり、厚すぎるとコスト高となる傾向があり不経済である。
本発明の転写印刷用積層体を用い、転写法を利用して被転写体面に装飾を行う方法について説明する。
まず、被転写体面に、転写印刷用積層体の、接着層がある場合は接着層側、あるいは接着層がない場合は印刷層側を密着させる。次に、シリコンラバーなどの耐熱ゴム状弾性体を備えたロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用い、温度80〜270℃程度、圧力490〜1960Pa程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体を介して転写印刷用積層体のベースフィルム側から熱と圧力とを加える。これにより、接着層あるいは印刷層が被転写体表面に接着する。
冷却後に、活性エネルギー線照射等により硬化性樹脂層を硬化させ保護層(ハードコート層)とした後、最後に、ベースフィルムを剥がすと、ベースフィルムと保護層(硬化された硬化性樹脂層:ハードコート層)との境界面で剥離が起こり、転写が完了する。
なお、上記工程において、かかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は熱により多少硬化されたものとなっていることもある。
次に、本発明の転写印刷用積層体を用い、射出成形による成形同時転写法を利用して被転写体である樹脂成形品の面に装飾を行う方法について説明する。
まず、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写印刷用積層体を送り込む。その際、枚葉の転写印刷用積層体を1枚づつ送り込んでもよいし、長尺の積層体の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の転写印刷用積層体を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、転写印刷用積層体の印刷層と成形用金型との見当が一致するようにするとよい。また、転写印刷用積層体を間欠的に送り込む際に、転写印刷用積層体の位置をセンサーで検出した後に転写印刷用積層体を可動型と固定型とで固定するようにすれば、常に同じ位置で転写印刷用積層体を固定することができ、印刷層の位置ずれが生じないので便利である。
成形用金型を閉じた後、ゲートから溶融した成形樹脂を金型内に射出充満させ、被転写体を形成するのと同時にその面に転写印刷用積層体を接着させる。成形樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用できる。これらの樹脂成形品は、透明、半透明、不透明のいずれでもよい。また、成形品は着色されていても、着色されていなくてもよい。
被転写体である樹脂成形品を冷却した後、成形用金型を開いて樹脂成形品を取り出す。そして、活性エネルギー線照射等により硬化性樹脂層を硬化させ保護層(ハードコート層)とした後、最後に、ベースフィルムを剥がすと、ベースフィルムと保護層(硬化された硬化性樹脂層:ハードコート層)との境界面で剥離が起こり、転写が完了する。また、成形用金型を開いて樹脂成形品を取り出し、ベースフィルムを剥離した後、活性エネルギー線照射等により硬化性樹脂層を硬化させ保護層とし、転写を完了させることもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
実施例1
〔ベースフィルムの製造〕
ケン化度88モル%、20℃における4%水溶液粘度23mPa・sのポリビニルアルコール樹脂100部、フィラーとして澱粉(平均粒子径15μm)5部、界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)0.5部、可塑剤としてグリセリン5部からなる20%水溶液をTダイより表面温度が90℃に調整された回転するステンレス製エンドレスベルトに吐出して流延製膜し、引き続き95℃に調整された熱ロールにて、アンチカール処理を兼ねた熱処理を行い、厚み40μmのポリビニルアルコールフィルムを得た。
得られたポリビニルアルコールフィルムを120℃に加熱されたエンボスロール(凹凸形状:絹目、高低差:250μm、80メッシュ)と80℃に加熱されたバックアップロール(ロールの表面硬度:JIS K6253に基づくA型硬度計で90)との間を押圧力2MPaにて、5m/minの加工速度で通過させてエンボス加工を施すことにより、凹凸形状を有するポリビニルアルコールフィルム(ベースフィルム)を得た。得られたポリビニルアルコールフィルムの表面をキーエンス社製 レーザー顕微鏡にてフィルム表面の凹凸の高低差を計測したところ、130μmであった。
上記エンボス加工を施したポリビニルアルコールフィルムを転写印刷用積層体のベースフィルムとして用いた。
〔硬化性樹脂の製造〕
下記の通り、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
株式会社カネカ製、ポリメチルメタクリレート「MN」の固形分50部に対し、日本合成化学工業社製、ウレタンアクリレート「UV−3520」の固形分40部および大阪有機化学工業社製、光重合性モノマー「ビスコート#300」10部を、全固形分濃度50%となるように2−ブタノンにより希釈混合した溶液に、光重合開始剤として長瀬産業社製「イルガキュア819」を固形分100部に対し3部となるように混合した。
〔意匠印刷用インキの製造〕
黒色顔料10部、ニトロセルロース5部、アルキッド樹脂15部、トルエン30部、酢酸エチル30部、イソプロピルアルコール10部からなるグラビア印刷用インキを調製した。
〔熱圧着接着層用塗布液の製造〕
日本合成化学工業社製、ポリエスター「SP−185」(ポリエステル樹脂)をトルエンと2−ブタノンの4:1(重量比)の混合溶媒に対して20%となるように加熱環流条件下で撹拌溶解した。
<転写印刷用積層体の製造>
上記で製造したベースフィルムの熱処理面上に、上記の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を厚さ160μmとなるようにバーコーターにて塗布し、これを80℃で15分間乾燥することで、ベースフィルム上に厚さ80μmの硬化性樹脂層を積層した積層体(α)を作製した。
積層体(α)の硬化性樹脂層面上に、上記の印刷用インキを用いて、格子状の絵柄をグラビア印刷法により形成し、ベールフィルム/硬化性樹脂層/印刷層からなる積層体(β)を得た。
更に、積層体(β)の印刷層面上に、上記の熱圧着接着層用塗布液を厚さ100μmとなるようにバーコーターで塗布し、これを80℃で15分乾燥することで、厚さ20μmの熱圧着接着層を形成し、ベールフィルム/硬化性樹脂層/印刷層/接着層からなる積層体(γ)を得た。
得られた積層体(γ)を用いて、以下の通り評価用サンプルを作製し、以下の評価を行った。
〔評価用サンプルの作製〕
得られた積層体(γ)と青板ガラス基板(厚さ2.8mm)とを130℃に暖めた乾燥機内で3分間予熱し、積層体(γ)の熱圧着接着剤を融解させ、この接着層面を青板ガラス基板にハンドローラーで押しつけて貼合サンプルを作製した。
得られた貼合サンプルに対し、ベースフィルム越しに紫外線を1000mJ照射し、硬化性樹脂層を硬化させて保護層(硬化された硬化性樹脂層:ハードコート層)とし、評価用サンプルとした。
〔評価用サンプルの評価:立体意匠性〕
評価用サンプルにおいて、ベースフィルムを剥離した後、保護層(硬化された硬化性樹脂層)の表面の高低差を、キーエンス社製のレーザー顕微鏡を用いて計測した。
実施例2〜5、比較例1
エンボス加工の条件を、表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコールからなるベースフィルムを得た。
得られたポリビニルアルコール製ベースフィルムを用いて、実施例1と同様にして積層体(γ)を製造し、立体意匠性を評価した。実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。尚、表1中、バックアップロールの表面硬度について、A型硬度計で測定した値を「A○○」と表記し、D型硬度計で測定した値を「D○○」(「○○」は硬度値を示す)と表記する。
上記実施例及び比較例の結果から、実施例については、所望の高低差の凹凸形状を有するベースフィルムを用いているため、ベースフィルムと保護層(硬化性樹脂層が硬化された層)との剥離性に優れるとともに、立体意匠を認識できる保護層を形成することができた。これに対して、比較例1においては、ベースフィルムの高低差が小さいために、得られた保護層において、認識できるような立体意匠(柄)が形成されていなかった。
また、実施例2と比較例1との比較からわかるように、エンボス加工に用いるバックアップロールの表面硬度が小さすぎると、同じエンボスロールを使用し、さらにエンボスロール及びバックアップロールの表面温度が等しくても、ベースフィルムに付与できる凹凸形状の高低差が小さくなり、ひいては立体意匠の転写に有効な転写印刷用積層体を得ることができなかった。一方、実施例1と実施例4との比較から、凸部の高低差が大きいエンボスロールを用いることに対応して、ベースフィルムの凹凸形状の高低差を大きくすることはできる(実施例1)が、ベースフィルムの凹凸形状の高低差が所定以上大きくなると、得られる保護層の立体意匠の高低差には反映されにくい傾向にあった。従って、立体意匠を効率よく転写するためには、ベースフィルムの高低差を、5〜200μmとすることが有効であることがわかる。