以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の寸法比率は図示した比率に限られるものではない。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はそれに対応するメタクリルを意味する。「(メタ)アクリレート」など、(メタ)アクリル構造を有するものについても同様である。
[半導体用積層シート]
図1は、半導体用積層シートを示す図面であり、図1(a)及び図1(c)は、半導体用積層シートの平面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線断面図である。半導体用積層シート100(以下、場合により「積層シート100」という)は、半導体用途に使用される積層シートであり、フィルム状の(A)接着フィルム(半導体用接着フィルム)110と、フィルム状の(B)粘着フィルム120と、基材フィルム130とを備える積層体である。接着フィルム110は、粘着フィルム120の一方の主面120aに貼り付けられた状態で粘着フィルム120上に配置されている。粘着フィルム120は、基材フィルム130の主面130aに貼り付けられた状態で基材フィルム130上に配置されている。
接着フィルム110は、円形状であってもよく(図1(a)参照)、矩形状であってもよい(図1(c)参照)。接着フィルム110の厚みは、1〜100μmが好ましく、5〜75μmがより好ましい。
粘着フィルム120は、矩形状であってもよく(図1(a),(c)参照)、円形状であってもよい。粘着フィルム120の厚さは、1〜100μmが好ましく、2〜60μmがより好ましく、3〜30μmが更に好ましい。
粘着フィルム120の主面120aの面積は、接着フィルム110の主面110aの面積よりも大きいことが好ましい。これにより、積層シート100をエキスパンド装置やダイボンド装置等に設置する時にウェハリングなどの冶具に粘着フィルム120を貼り合わせることが容易となり、取扱い性が向上する。
以下、(A)接着フィルム110及び(B)粘着フィルム120についてそれぞれ詳述する。
<(A)接着フィルム>
(A)接着フィルムは、光硬化性成分を含有している。光硬化性成分としては、例えば、光硬化性樹脂や光ラジカル発生剤が挙げられる。
(A1:熱可塑性樹脂)
(A)接着フィルムは、(A1)熱可塑性樹脂を含有していることが好ましい。(A1)成分としては、熱可塑性樹脂であれば特に制限はないが、低分子量でのフィルム成形性及び基材への密着性を考えると、高極性基を分子骨格中に含有しているものがより好ましく、分子骨格中にイミド骨格を含有する熱可塑性樹脂が更に好ましい。(A1)成分は、イミド骨格を主鎖又は側鎖に有していることが好ましい。熱可塑性樹脂がイミド骨格を有することにより、優れたフィルム成形性及び基材への密着性を得ることができる。
イミド骨格を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。これらの樹脂は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記の熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂が好ましい。
上記ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。
上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合モル比は、テトラカルボン酸二無水物の合計量1.0molに対して、ジアミンの合計量が0.5〜2.0molであることが好ましく、0.8〜1.0molであることがより好ましい。なお、テトラカルボン酸無水物及びジアミンの添加順序は任意でよい。
上記縮合反応においてテトラカルボン酸二無水物の合計量1.0molに対してジアミンの合計量が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂において、アミン末端を有するポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向がある。一方、ジアミンの合計量が0.5mol未満であると、得られるポリイミド樹脂において、酸末端を有するポリイミド樹脂オリゴマーの量が多くなる傾向がある。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合モル比を上記範囲内にすることで、ポリイミド樹脂の重量平均分子量が高くなり、(A)接着フィルムの耐熱性を含む種々の特性が付与され易くなる。
また、上記縮合反応における反応温度は、80℃以下が好ましく、0〜60℃がより好ましい。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、(A)接着フィルムの諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は、無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
ポリイミド樹脂は、上記縮合反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法又は脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記式(2)又は(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド、及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿性、並びに365nm光に対する透明性を付与する観点から、上記式(2)又は(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記ポリイミド樹脂の原料として用いられるジアミンとしては、特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(5)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
[式中、Q
1、Q
2及びQ
3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。上記アルキレン基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。]
[式中、Q
4及びQ
9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基、又はフェニレン基を示し、Q
5、Q
6、Q
7及びQ
8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又はフェノキシ基を示し、cは1〜5の整数を示す。なお、上記フェニレン基は、置換基を有していてもよい。]
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性、有機溶剤可溶性、低温貼付性を付与する点で、上記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製のジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、BASF社製のポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの1〜80mol%であることが好ましく、10〜80mol%であることがより好ましく、10〜60mol%であることが更に好ましい。この量が1mol%未満であると、高温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向があり、一方、上記ジアミンの量が80mol%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて吸湿後の高温接着性が低下する傾向がある。
さらに、上記脂肪族エーテルジアミンは、低温貼付性と耐熱性の両立の観点から、下記一般式(6)で表されるプロピレンエーテル骨格を有していることが好ましく、プロピレンエーテル骨格を有し且つ分子量が300〜600であることがより好ましい。このようなジアミンの含有量は、全ジアミンの80mol%以下であることが好ましく、60mol%以下であることがより好ましい。また、このようなジアミンの含有量は、熱圧着性及び高温接着性の観点から、全ジアミンの10mol%以上であることが好ましく、20mol%以上であることがより好ましい。このようなジアミンの含有量が上記範囲にあることで、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)を10℃以上に調整し易くなり、貼付性、熱圧着性、高温接着性、耐リフロー性を更に向上させることが可能となる。
また、上記ジアミンの中でも、室温での密着性、接着性を向上させる観点からは、上記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンを用いることが好ましい。
上記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(5)中のcが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、cが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
上記シロキサンジアミンは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記シロキサンジアミンの含有量は、全ジアミンの1〜80mol%であることが好ましく、2〜50mol%であることがより好ましく、5〜50mol%であることが更に好ましい。上記シロキサンジアミンの含有量が1mol%を下回ると、シロキサンジアミンを添加した効果が小さくなる傾向があり、上記シロキサンジアミンの含有量が80mol%を上回ると、他成分との相溶性、高温接着性及び現像性が低下する傾向がある。
また、ジアミンとしては別途、熱硬化時の架橋点を形成するために水酸基やカルボキシル基を含有するジアミンを用いることもできる。このようなジアミンとしては、例えば、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル化合物類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルフォン化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェニル)フェニル]アルカン化合物類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルフォン化合物;3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類を挙げることができる。
上記ポリイミド樹脂の合成時に、下記式(7)、(8)、(9)又は(10)で表される化合物のような単官能酸無水物及び/又は単官能アミンを縮合反応液に投入することによって、ポリマ末端に酸無水物又はジアミン以外の官能基を導入することができ、様々な機能性を付与することが可能となる。
上述したポリイミド樹脂は、1種類を単独で又は必要に応じて2種類以上を混合して用いることができる。
波長400nmの光に対する上記ポリイミド樹脂の透過率は、光硬化性及びピール強度向上の観点から、厚み10μmのフィルム状に成形した場合において1%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記式(2)で表される酸無水物と、上記一般式(4)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(5)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
(A1)成分の含有量は、(A)接着フィルムの全体質量を100質量部として10〜70質量部が好ましく、15〜50質量部がより好ましい。
(A1)成分のガラス転移温度(Tg)は、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上が更に好ましい。このTgが10℃以上であると、半導体チップの実装に適した形状の接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを形成することが更に容易となる。(A1)成分のTgは、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。このTgが150℃を超える場合、熱圧着性が低下する傾向がある。
ここで、(A1)成分の「Tg」とは、(A1)成分をフィルム化したものについて、粘弾性アナライザー(レオメトリックス社製、商品名:RSA−2)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定したときのtanδピーク温度である。
(A1)成分の重量平均分子量は、50万以下が好ましく、30万以下がより好ましく、15万以下が更に好ましく、10万以下が特に好ましい。(A1)成分の重量平均分子量は、5000以上が好ましく、1万以上がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、(A)接着フィルムの強度、可とう性及びタック性が良好となる。また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差(凹凸)に対する良好な埋込性を確保することが可能となる。一方、上記重量平均分子量が5000未満であると、フィルム形成性が十分でなくなる傾向がある。上記重量平均分子量が50万を超えると、熱時流動性及びぬれ性が十分でなくなる傾向がある。ここで、「重量平均分子量」とは、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、商品名:C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
(A1)成分のTg及び重量平均分子量を上記範囲内とすることによって半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(熱圧着温度)を低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制しながら高温接着性を付与することができる。
(A2:光硬化性樹脂)
(A)接着フィルムは、光硬化性成分として(A2)光硬化性樹脂を含有していることが好ましい。(A2)成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基等が挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。
このような(メタ)アクリル基を有する化合物を用いる場合、低温貼付性の付与と硬化性の観点から、単官能(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物を組合せて使用することが好ましい。
単官能(メタ)アクリレート化合物の5%質量減少温度は、熱圧着時のボイド発生を低減すると共に加熱時のアウトガスを抑制することができるため、100℃以上であることが好ましい。上記「5%質量減少温度」とは、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)の条件下で測定したときの5%質量減少温度である。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、特に硬化後の接着性を向上させるため、下記式(11)又は(12)で表される単官能アクリレートを使用することが好ましい。
これらの単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量は、(A1)成分100質量部に対して10質量部以上が好ましく、500質量部以下が好ましい。この含有量が10質量部未満であると、圧着性が低下する傾向があり、上記含有量が500質量部を超えると、耐熱信頼性が低下する傾向がある。
組合わせる多官能(メタ)アクリレート化合物の種類は特に制限はないが、フィルム成型時のタック力調整のために、下記一般式(13)で表されるフルオレン骨格を含有する(メタ)アクリレート化合物を使用することが好ましい。
[式中、Q
10はシアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、Q
11は分岐アルキレン基を示し、Q
12は水素原子又はメチル基を示し、Q
13はアルキル基を示し、fは1以上の整数を示し、gは2〜4の整数を示し、hは0〜4の整数を示す。]
これらのフルオレン骨格を含有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、(A1)成分100質量部に対して5質量部以上が好ましく、100質量部以下が好ましい。この含有量が5質量部未満であると、タック力を制御し難くなる傾向があり、100質量部を超えると、熱圧着性が低下する傾向がある。
これらの単官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能(メタ)アクリレート化合物を組合せることで、露光時のピール強度の向上と分割性の向上を更に高度に両立することが可能となり、効率的に残存させることが可能となる。
その他に使用可能な光硬化性樹脂としては、特に制限はないが、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましい。このような(メタ)アクリレート化合物としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートウレタンアクリレート、トリス(2−ヒドロキシブチル)イソシアヌレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
これらの(A2)成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。2種類の組み合わせの中でも、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で、ウレタンアクリレート及びメタクリレートの組み合わせ、イソシアヌル酸ジアクリレート及びメタクリレートの組み合わせ、イソシアヌル酸トリアクリレート及びメタクリレートの組み合わせは、硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
(A2)成分としては、硬化後の接着性をより向上させることができると共に加熱時のアウトガスを抑制することができるため、3官能以上のアクリレート化合物が好ましい。この時、硬化後の耐熱性を十分に付与できる点で、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートやイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートを含有することがより好ましい。
(A2)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して5〜300質量部が好ましく、10〜250質量部がより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、上記含有量が5質量部以上であると、露光による架橋密度が高くなり易く、半導体チップ間の空隙部において(A)接着フィルムをピックアップ時に分割することが更に容易となる。
(A3:光ラジカル発生剤)
(A)接着フィルムは、光硬化性成分として(A3)光ラジカル発生剤を含有していることが好ましい。(A3)成分の波長365nmの光に対する分子吸光係数は、感度向上の点から、1000ml/g・cm以上が好ましく、2000ml/g・cm以上がより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:U−3310)を用いて吸光度を測定することによって求められる。
(A3)成分は、感度向上及び内部硬化性向上の観点から、光照射によってブリーチングするものが好ましい。このような(A3)成分としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド等の中からUV照射によって光退色する化合物が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
(A3)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
(A4:熱硬化性樹脂)
(A)接着フィルムは、(A4)熱硬化性樹脂(但し、(A2)光硬化性樹脂に該当する樹脂を除く)を更に含有することが好ましい。
(A4)成分としては、特に制限はないが、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものがより好ましく、硬化性や硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が更に好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記の中でも、下記式(14)で表されるエポキシ樹脂は、熱圧着性及び硬化後の接着性の観点から特に好ましい。
また、これらのエポキシ樹脂には、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン(特に塩素イオンや加水分解性塩素)等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止のために好ましい。
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、オキサゾリン基やマレイミド基を有する樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類を単独で又は2種類以上を組合せて使用することができる。
また、(A4)成分(例えばエポキシ樹脂)の5%質量減少温度は、150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上が更に好ましく、260℃以上が特に好ましい。5%質量減少温度が150℃以上であると、低アウトガス性、高温接着性、耐リフロー性が向上する。
上記「5%質量減少温度」とは、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名:TG/DTA6300)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/min)の条件下で測定したときの5%質量減少温度である。
また、(A4)成分(例えばエポキシ樹脂)の含有量は、(A1)成分100質量部に対して5〜300質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、フィルム形成性が低下し脆くなる傾向があり、上記含有量が5質量部未満であると、十分な熱圧着性及び高温接着性が得にくくなる傾向がある。
(A5:フィラ)
(A)接着フィルムは、(A5)フィラを更に含有していてもよい。(A5)成分としては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラ;アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラ;カーボン、ゴム系フィラ等の有機フィラなどが挙げられ、種類や形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
上記(A5)成分は、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラは、接着フィルムに導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与することができる。非金属無機フィラは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与することができる。有機フィラは、接着フィルムに靭性等を付与することができる。
これら金属フィラ、無機フィラ又は有機フィラは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等が付与されるため、金属フィラ、無機フィラ及び絶縁性フィラが好ましい。さらに、無機フィラ又は絶縁性フィラの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好であり、且つ、熱時の高い接着力を付与できるため、シリカフィラがより好ましい。
(A5)成分としては、フィラ表面をカップリング剤で被覆したものを使用することが好ましい。カップリング剤で被覆することにより、その他構成成分とフィラを混合しワニス化する時にワニス中でのフィラの凝集を防ぐことが可能になり、かつ、適宜被覆するカップリング剤を変更することで(A)接着フィルムの特性を向上させることが可能になる。カップリング剤としては、後述するものを用いることができる。本実施形態では、メタクリルシランで処理したカップリング剤でフィラを被覆すると、ピール強度が更に向上して分割性が向上する傾向がある。
上記(A5)成分の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが好ましい。また、上記(A5)成分は、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、且つ、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、取り扱い性の観点から、どちらも0.001μm以上が好ましい。
上記(A5)成分の含有量は、付与する特性、又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラの合計に対して0〜90質量%が好ましく、1〜80質量%がより好ましく、3〜70質量%が更に好ましい。フィラを増量させることによって、低アルファ化、低吸湿化、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。
上記(A5)成分の含有量が90質量%を超えると、フィルム成形性、熱圧着性が得られにくくなる傾向にある。求められる特性のバランスをとるべく、最適なフィラ含有量を決定する。フィラを用いた場合の混合・混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。
((A)接着フィルムのその他の含有成分)
(A)成分は、各種カップリング剤を更に含有することもできる。上記カップリング剤を用いることで、異種材料間の界面結合性が向上する。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等のものが挙げられ、中でも、効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基等の熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレート等の放射線重合性基を有する化合物又は、ヘテロ原子を含有する化合物がより好ましい。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性、及びコストの面から、(A1)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
(A)接着フィルムは、イオン捕捉剤を更に含有することもできる。上記イオン補足剤によって、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性が向上する。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物;フェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すことを防止するための銅害防止剤として知られる化合物;粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。
イオン捕捉剤の具体例としては、特に限定はしないが、東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤として、商品名:IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは1種類を単独で又は2種類以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A1)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
本実施形態では、必要に応じて増感剤を用いることができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4’−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
(A4)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、(A)接着フィルムは、エポキシ樹脂硬化剤を更に含有することが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン等のアミン類;ポリアミド;脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物等の酸無水物;ポリスルフィド;三フッ化ホウ素;ビスフェノールA、ビスフェノールF,ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール化合物;フェノール系樹脂;ジシアンジアミド;有機酸ジヒドラジド;三フッ化ホウ素アミン錯体;イミダゾール類;第3級アミン等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
フェノール系樹脂の好ましい例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂が挙げられ、中でも、吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂が好ましい。フェノール系樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170、本州化学(株)製の商品名:TrisP−PAが挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
上記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、上記エポキシ樹脂硬化剤と共に硬化促進剤を用いることが好ましい。硬化促進剤としては、特に制限は無く、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレートを用いることができる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
硬化促進剤を添加した場合の添加量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の総量100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましい。添加量が0.1質量部未満であると、硬化性が低下する傾向があり、添加量が5質量部を超えると、保存安定性が低下する傾向がある。
(A4)熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いた場合、(A)接着フィルムは、エポキシ樹脂の重合及び/又は付加反応などの硬化反応を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。このような光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤等が挙げられ、光塩基発生剤が特に好ましい。光酸発生剤としては、例えばスルホニウム塩やヨードニウム塩などが挙げられる。
放射線としては、例えば、電離性放射線や非電離性放射線が挙げられ、具体的には、ArF及びKrF等のエキシマレーザー光;電子線極端紫外線;真空紫外光;X線;イオンビーム;i線及びg線等の紫外光が挙げられる。
光塩基発生剤を用いることで、生成した塩基が(A4)成分として用いられるエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用する。その結果、接着フィルムの架橋密度がより一層高まり、分割性が向上する。
光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体;ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体;プロリン誘導体;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体;4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体;ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体;ジヒドロピリジン誘導体;トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体;ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 1999年、12巻、313〜314頁や、Chemistry of Materials 1999年、11巻、170〜176頁等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、放射線照射によって高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
また、Journal of American Chemical Society 1996年、118巻 12925頁や、Polymer Journal 1996年、28巻 795頁等に記載されているカルバミン酸誘導体も用いることができる。
さらに、放射線照射によって1級のアミノ基を発生するオキシム誘導体、光ラジカル発生剤として市販されている2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア369)、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン(チバ ジャパン社製、商品名:イルガキュア379)、3,6−ビス−(2メチル−2モルホリノ−プロピオニル)−9−N−オクチルカルバゾール(ADEKA社製、商品名:オプトマーN−1414)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
上記光塩基発生剤としては、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いてもよい。この場合のエポキシ樹脂の重量平均分子量は、接着剤としての接着性、流動性、及び耐熱性の観点から、1000〜10万が好ましく、5000〜3万がより好ましい。
(A)接着フィルムは、必要に応じて熱ラジカル発生剤を更に含有することもできる。熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物の1分間半減期温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。有機過酸化物は、感光性接着剤組成物の調製条件、製膜温度、硬化(貼り合せ)条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択することができる。
使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種類を単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
上記熱ラジカル発生剤の含有量は、(A1)成分100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が更に好ましい。この含有量が0.01質量部未満であると、硬化性が低下し、添加効果が小さくなる傾向がある。また、上記含有量が20質量部を超えると、アウトガス量が増加し、保存安定性が低下する傾向にある。
上記熱ラジカル発生剤としては、1分間半減期温度が120℃以上の化合物が好ましく、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)等が挙げられる。
(A)接着フィルムは、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤、又は酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で更に含有していてもよい。これにより、保存安定性、プロセス適応性、又は酸化防止性が付与される。
<(B)粘着フィルム>
(B)粘着フィルムは、光硬化性成分を含有している。光硬化性成分としては、例えば、(B1)アクリル系共重合ポリマや(B2)光ラジカル発生剤が挙げられる。
(B)粘着フィルムは、粘着性を有している。「粘着性」は、(B1)成分と(B2)成分との混合物から構成される粘着剤層を(B)粘着フィルムとして基材フィルム上に形成した際に、(B)粘着フィルムが室温で(A)接着フィルムに密着ができることを意味している。粘着剤層の30℃におけるタック強度は、1g以上の強さをもつことが好ましい。
ここで、タック強度は、直径5.1mmのSUS304に対するタック強度である。タック強度は、タッキング試験機(株式会社レスカ製、商品名「TAC−II」)を用い、温度:30℃、押し込み速度:2mm/秒、引き上げ速度:10mm/秒、停止加重:100gf/cm2、停止時間:1秒の条件にて測定される。
(B1:アクリル系共重合ポリマ)
(B1)成分は、粘着性のアクリル系共重合ポリマである。ここで、「アクリル系共重合ポリマ」は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を必須成分として重合された共重合体を意味する。
(B1)成分は、種々のモノマーの組み合わせにより製造することができるが、例えば、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、架橋性官能基含有モノマーと、さらに必要に応じて、共重合可能なその他のモノマーとを、常法により共重合することにより得ることができる。
アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシルなどが挙げられる。また、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル等の脂環族基又は芳香族基を有するアルキルエステルであってもよい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
架橋性官能基含有モノマーは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するモノマーであり、好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物である。このような官能基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸アセトアセトキシメチル;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
必要に応じて使用される共重合可能なその他のモノマーとしては、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。このような単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸プロピルや、アクリロニトリル、アクリルアミド、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステルなどが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B1)成分として、上記の共重合可能なその他のモノマーを導入することにより、(B)粘着フィルムのガラス転移温度(Tg)を制御することができる。例えば、粘着剤層自身の粘着力や凝集力を変化させ、チップの保持力やピックアップ性を調整することができる。
(B1)成分のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、−5℃以下がより好ましく、−10℃以下が更に好ましい。このTgが0℃以下であると、半導体チップの実装に適した形状の接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを形成することが更に容易となる。(B1)成分のTgは、−50℃以上が好ましく、−40℃以上がより好ましい。
ここで、(B1)成分の「Tg」とは、(B1)成分をフィルム化したものについて、粘弾性アナライザー(レオメトリックス社製、商品名:RSA−2)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定したときのtanδピーク温度である。
(B1)成分の重量平均分子量は、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましい。(B1)成分の重量平均分子量が200万以下であると、粘着剤を塗布するために必要な粘度を得ることができる。(B1)成分の重量平均分子量は、10万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましい。(B1)成分の重量平均分子量が10万以上であると、残留モノマーによる臭気や被着体に対する汚染などの悪影響を排除することができる。(B1)成分の重量平均分子量は、後述するように(A1)成分の重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。
(B1)成分の含有量は、(B)粘着フィルムの全体質量を100質量部として30〜90質量部が好ましく、40〜80質量部がより好ましい。
(B2:光ラジカル発生剤)
(B2)成分としては、(A)接着フィルムの構成成分として上記した光ラジカル発生剤を使用し得る。
(B2)成分の含有量は、(B1)成分100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、十分な保存性を得るため、50質量部以下が好ましい。
(B3:(メタ)アクリレート化合物)
(B)粘着フィルムは、光反応性樹脂として(メタ)アクリレート化合物((メタ)アクリル基を有する化合物)を更に含有することが好ましい。このような(メタ)アクリレート化合物としては、接着フィルム(A)の構成成分として上記した樹脂を使用し得る。
(メタ)アクリレート化合物の中でも、単官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。このような単官能(メタ)アクリレート化合物としては、接着フィルム(A)の構成成分として上記した樹脂を使用し得る。また、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(15)で示される単官能(メタ)アクリレートを使用してもよい。
(B)粘着フィルムが、上記一般式(15)で示される単官能(メタ)アクリレートを含有すると、(B)粘着フィルムに光を照射することにより(B)粘着フィルムが変色するため、工程通過中に露光前後の区別がつきやすくなる。さらに、後述する光によって色彩が変化する添加剤を更に加える必要性がないため、(B)粘着フィルムの特性を制御しやすい。
(B3)成分の含有量は、(B1)成分100質量部に対し、0.01〜50質量部が好ましく、0.1〜30質量部がより好ましく、0.5〜20質量部が更に好ましい。この含有量が0.01質量部未満であると、ピール強度を向上させるための機能発現性が低下する傾向があり、上記含有量が50質量部を超えると、露光前のピール強度が高くなりすぎるため、ピックアップ性が低下する傾向にある。
(B4:フィラ)
(B)粘着フィルムは、(B4)フィラを更に含有していてもよい。(B4)成分としては、(A)接着フィルムの構成成分として上記したフィラを使用し得る。その中でも、表面をシランカップリング剤で処理したフィラが好ましく、(メタ)アクリルシランで処理したシリカフィラがより好ましい。このようなフィラを用いることで露光後のピール強度を更に向上することが可能となる。(B4)成分の含有量は、(B1)成分100質量部に対して5質量部以上が好ましく、50質量部以下が好ましい。
((B)粘着フィルムのその他の含有成分)
(B)粘着フィルムは、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、従来アクリル系粘着剤組成物に慣用されている各種添加成分を含有していてもよい。例えば、必要に応じて増感剤を用いることができる。この増感剤としては、(A)接着フィルムの構成成分として上記した増感剤を使用し得る。
(B)粘着フィルムは、(B1)成分が架橋性を有するため、(B1)成分と架橋剤を併用することが好ましい。これにより凝集力を付加し、粘着力を制御することができる。架橋剤の使用量は、(B1)成分100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。
(B)粘着フィルムは、露光後に色が変化することが好ましい。この場合、(B)粘着フィルムに配合される材料は特に制限はなく、(B)粘着フィルムは、光を照射した後に色が変化する化合物を含有することができる。このような化合物としては、アゾベンゼン;スピロピラン、ジアリールエテンから誘導される化合物;1,4−ジヒドロキシナフタレンから誘導される下記一般式(16)で示される化合物が好ましく、耐熱性が高いことから、一般式(16)で示される化合物がより好ましい。
[Q
14及びQ
15は各々独立に、H、CH
3、アクリル基又はメタクリル基を示す。]
接着フィルム110が(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分を含有すると共に粘着フィルム120が(B1)成分及び(B2)成分を含有する積層シート100を露光した場合、積層体界面における露光部のピール強度(接着フィルム110及び粘着フィルム120の剥離強度)は、当該積層体界面における露光前のピール強度と比較し高くなる傾向がある。これにより、接着フィルム110が粘着フィルム120から剥離する方向の力が露光部に対して加えられる場合に、接着フィルム110及び粘着フィルム120が互いに剥離してしまうことを抑制し易くなる。
この理由について本発明者は以下のように推測している。すなわち、接着フィルム110が(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分を含有すると共に粘着フィルム120が(B1)成分及び(B2)成分を含有することにより、接着フィルム110の含有成分の一部が接着フィルム110及び粘着フィルム120の界面近傍における粘着フィルム120の領域に流れ込む。そして、このような界面近傍の領域に光が照射されると、界面近傍の領域に存在する成分が反応して界面近傍の微細な部分が一体化する。これにより、露光部においてピール強度が向上するものと推測される。
一方、積層シート100における未露光部においても、接着フィルム110の含有成分の一部が接着フィルム110及び粘着フィルム120の界面近傍における粘着フィルム120の領域に流れ込む。しかしながら、未露光部では、光が照射されないことから界面近傍の微細な部分が一体化することが抑制されている。この場合、接着フィルム110が粘着フィルム120から剥離する方向の力が未露光部に対して加えられると、接着フィルム110が粘着フィルム120から剥離するものの、接着フィルム110の含有成分の一部が粘着フィルム120の領域に流れ込んでいるため、接着フィルム110のバルク破壊が起こり、接着フィルム110の一部が粘着フィルム120に貼り付けられた状態で残存すると共に、接着フィルム110の残部が粘着フィルム120から剥離することとなる。
ここで、接着フィルム110の含有成分の一部が粘着フィルム120の領域に流れ込まない場合には、接着フィルム110が粘着フィルム120から剥離する方向の力が未露光部に対して加えられると、接着フィルム110及び粘着フィルム120の界面において界面剥離する傾向がある。この場合、粘着フィルム120から剥離した接着フィルム110において界面剥離により露出した面は、粘着フィルム120の含有成分が転写されて接着力が低下している傾向がある。一方、積層シート100では、粘着フィルム120から剥離した接着フィルム110においてバルク破壊により露出した面は、粘着フィルム120の含有成分が転写されていないことから十分な接着力を有している。
さらに、(B1)成分の重量平均分子量が(A1)成分の重量平均分子量よりも大きいと、接着フィルム110の含有成分の流動性が高まることにより、接着フィルム110の含有成分の一部が接着フィルム110及び粘着フィルム120の界面近傍における粘着フィルム120の領域に流れ込み易くなる。これにより、粘着フィルム120から剥離した接着フィルム110においてバルク破壊により露出した面に十分な接着力を付与することが容易となる。
界面近傍の微細な部分で生じる反応は、接着フィルム110及び粘着フィルム120の界面付近の剥離面をTOF−SIMSなどを使用して分析することが可能である。
このような積層シート100では、光(例えば紫外線)照射前に接着フィルム110及び粘着フィルム120の未露光部を剥離した時には、接着フィルム110及び粘着フィルム120の界面近傍における接着フィルム110の領域で微細な破壊が起こっていることが好ましく、光(例えば紫外線)照射後に接着フィルム110及び粘着フィルム120の露光部を剥離した時には、接着フィルム110及び粘着フィルム120の界面近傍における粘着フィルム120の領域で破壊が起こっていることが好ましい。
(半導体用積層シートの製造方法)
積層シート100は、例えば、(工程1)基材フィルム130上に粘着フィルム120を積層した後、(工程2)粘着フィルム120上に接着フィルム110を積層することにより得ることができる。
接着フィルム110は、以下の手順により得ることができる。まず、(A1)成分、(A2)成分及び(A3)成分を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製する。ワニスは、必要に応じて任意成分である(A4)成分、(A5)成分及び他の成分を含有していてもよい。次に、上記ワニスを基材フィルムの表面に常法により塗工してワニスの層を形成した後に当該ワニスの層を加熱乾燥する。そして、基材フィルムを除去することにより接着フィルム110を得ることができる。なお、上記ワニスを粘着フィルム120の表面に常法により塗工してワニスの層を形成した後にワニスの層を加熱乾燥することにより、接着フィルム110を得ることもできる。
粘着フィルム120は、以下の手順により得ることができる。まず、(B1)成分及び(B2)成分を有機溶媒中で混合、混練してワニスを調製する。ワニスは、必要に応じて任意成分である(B3)成分、(B4)成分及び他の成分を含有していてもよい。次に、上記ワニスを基材フィルム130の表面に常法により塗工してワニスの層を形成した後に当該ワニスの層を加熱乾燥することにより、基材フィルム130上に積層された粘着フィルム120を得ることができる。
接着フィルム110及び粘着フィルム120の作製において、上記の混合、混練は、通常の攪拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。ワニスの塗工方法としては、スピンコート、印刷法、スプレーコート法などが挙げられる。上記の加熱乾燥の条件は、使用した溶媒が充分に揮散する条件であることが好ましく、通常60〜200℃で0.1〜90分間加熱して行う。
上記ワニスの調製に用いる有機溶媒は、材料を均一に溶解、混練又は分散できることが好ましく、従来公知のものを使用することができる。このような有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。
有機溶媒の使用量として、例えば、接着フィルム110の製造後の残存揮発分は、接着フィルム110の全質量基準で0.01〜3質量%であることが好ましく、耐熱信頼性の観点から、0.01〜2.0質量%がより好ましく、0.01〜1.5質量%が更に好ましい。
基材フィルム130としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢ビフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、フッ素樹脂フィルム等のプラスチックフィルムが用いられる。
基材フィルム130は、これらのプラスチックフィルムの複層フィルムであってもよく、架橋されたフィルムであってもよい。また、基材フィルム130は、有色であっても無色であってもよい。基材フィルム130の厚みは、30〜300μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。
基材フィルム130と粘着フィルム120とが作業中に剥離しないように基材フィルム130と粘着フィルム120の界面の密着性を向上させるため、基材フィルム130の片面(主面130a)に、サンドブラストや溶剤処理による凹凸化処理、あるいは、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理、プライマー処理などを施すことができる。
接着フィルム110が積層される後述の基材フィルム140としては、特に制限はないが、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。基材フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを用いることができる。基材フィルムとしては、2種以上のフィルムを組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたフィルムであってもよい。
<接着剤層付き半導体チップの製造方法>
[第1実施形態]
第1実施形態に係る接着剤層付き半導体チップの製造方法は、個片化工程と、貼り付け工程と、露光工程と、ピックアップ工程とをこの順に備える。以下、各工程について説明する。
(個片化工程)
図2を用いて個片化工程を説明する。個片化工程では、まず、半導体ウェハ21を用意する。半導体ウェハ21としては、例えば、ロジックIC、メモリーIC、イメージセンサが挙げられる。続いて、粘着性を有し剥離可能なダイシングテープ23を半導体ウェハ21の一方の主面21aに貼り付けて積層体25を得る。
次に、半導体ウェハ21の他方の主面21bが上を向いた状態で積層体25をダイシング装置のステージに固定する。続いて、半導体ウェハ21が当該半導体ウェハ21の主面21aから主面21bにかけて切断(フルカット)されるように半導体ウェハ21をダイシングして、複数の半導体チップ27を得る。具体的には、図2(a)、(b)に示すように、半導体ウェハ21の主面21b側から積層体25をダイシングすることにより積層体25に格子状に溝29を形成し、半導体ウェハ21を複数の半導体チップ27に切り分ける。この場合、溝29の底面は、少なくとも半導体ウェハ21とダイシングテープ23との界面に達していればよい。例えば、図2では、ダイシングテープ23に形成された凹部の底面を溝29の底面が構成しており、ダイシングテープ23の厚さ方向の一部が切断されずに残存している。
積層体25は、図2(a)、(b)に示すようにダイシングブレード31によりダイシングされてもよく、レーザによりダイシングされてもよい。ダイシングに際しては、例えば、ディスコ社製ダイシング装置を用いることができる。半導体チップ27の厚さは、例えば5〜700μmである。
個片化工程により、図2(c)に示すように、剥離可能な粘着材に固定されると共に空隙部を有するチップ集合体として、互いに間隔をおいて配置された複数の半導体チップ27と、当該複数の半導体チップ27の一方の主面27aに貼り付けられたダイシングテープ23とを備える積層体35が得られる。積層体35において半導体チップ27の他方の主面27bは露出している。
(貼り付け工程)
図3を用いて貼り付け工程を説明する。貼り付け工程では、半導体チップ27の主面27bを積層シート100の接着フィルム110に貼り付ける。貼り付け方法としては、例えばロールラミネータや真空ラミネータを用いる方法が挙げられる。例えば、まず、半導体チップ27の主面27bが上を向いた状態で積層体35をラミネータ41に固定し、その周囲を取り囲むようにウェハリング43を設置する。なお、図3(a)では、ウェハリング43の図示を省略している。続いて、半導体チップ27の主面27bと積層シート100の接着フィルム110、及び、ウェハリング43と積層シート100の粘着フィルム120がそれぞれ接するように、半導体チップ27に積層シート100をラミネートすることにより積層体45を得る。
ところで、上記特許文献2のように、未硬化状態のペーストからなる接着剤層を半導体チップに接着すると、ペースト状の接着剤が半導体チップの側面や表面に付着する場合があり、接着剤層付き半導体チップを形成することが妨げられる場合がある。一方、上記貼り付け工程では、フィルム状の接着フィルム110に半導体チップ27を貼り付けているため、半導体チップ27の側面や表面に接着フィルム110の接着剤が付着することが抑制されており、接着剤層付き半導体チップを容易に形成することができる。
(露光工程)
図4,5を用いて露光工程を説明する。露光工程では、まず、ダイシングテープ23が上を向いた状態で積層体45を配置した後、図4に示すように、ダイシングテープ23を半導体チップ27から剥離して積層体55を得る。積層体55における各半導体チップ27の間には空隙部51が形成されている。
次に、半導体チップ27が接着フィルム110の一方面に貼り付けられていると共に、接着フィルム110を挟んで半導体チップ27の反対側において粘着フィルム120が接着フィルム110の他方面に貼り付けられている状態で、半導体チップ27の主面27a側から半導体チップ27を介して接着フィルム110及び粘着フィルム120に光源61からの光Lを照射する。この場合、光源61と接着フィルム110及び粘着フィルム120との間に半導体チップ27が介在しているため、半導体チップ27がマスクとなって、接着フィルム110及び粘着フィルム120における半導体チップ27に被覆されている領域に光Lが照射されることが抑制される。一方、接着フィルム110及び粘着フィルム120におけるチップ集合体の空隙部51に対応する領域(半導体チップ27間から露出する領域)や、半導体チップ27の周囲の領域には光Lが照射される。
これにより、図5に示すように、接着フィルム110における光Lが照射された領域に格子状の光反応部分115aが形成されると共に、粘着フィルム120における光Lが照射された領域に格子状の光反応部分125aが形成される。これにより、互いに接触した状態で積層された光反応部分115a及び光反応部分125aを備える積層体65が得られる。接着フィルム110において光反応部分115aを構成する各直線状部分の間には、未露光部分115bが配置されている。粘着フィルム120において光反応部分125aを構成する各直線状部分の間には、未露光部分125bが配置されている。
光Lとしては、紫外線や放射線等の活性光線が挙げられる。露光量は、10〜5000mJが好ましい。露光に際しては、例えば、オーク製作所製の露光機を用いることができる。また、半導体チップ27とは別に、チップ集合体の空隙部51に対応する開口を有するマスクを設けてもよい。
(ピックアップ工程)
図6を用いてピックアップ工程を説明する。ピックアップ工程では、図6に示すように、半導体チップ27と、当該半導体チップ27と同一サイズ(同一面積)の未露光部分115bと、を備える接着剤層付き半導体チップ75をピックアップする。例えば、ピックアップする対象の接着剤層付き半導体チップ75の配置位置に対応する基材フィルム130の下側の部位をピン71で突き上げつつ、コレット73により接着剤層付き半導体チップ75をピックアップする。これにより、チップ集合体の空隙部51に位置する接着フィルム110の光反応部分115aが同伴されることなく、接着剤層付き半導体チップ75の未露光部分115bが未露光部分125bから剥離して、半導体チップ27と未露光部分115bとが積層された接着剤層付き半導体チップ75を得ることができる。
また、上記製造方法では、ピックアップに際して未露光部分115bの内部でバルク破壊が生じる傾向があり、ピックアップされた接着剤層付き半導体チップ75が配置されていた位置には、未露光部分115bの一部が残存する傾向がある。この場合、接着剤層付き半導体チップ75の未露光部分115bにおいてバルク破壊により露出した面は、未露光部分125bの含有成分が転写されていないことから十分な接着力を有している。
接着剤層付き半導体チップ75のピックアップは、ルネサス東日本セミコンダクタ社製のフレキシブルダイボンダー等のダイボンド装置(ピックアップ装置)を用いて行うことができる。なお、露光工程の後且つピックアップ工程の前に、エキスパンドにより半導体チップ27間の間隔を広げてもよい。
接着シート100を用いた上記の方法では、露光工程において、半導体チップ27を介して接着フィルム110及び粘着フィルム120に対して光を照射することにより、接着フィルム110には、光反応部分115a及び未露光部分115bが形成され、粘着フィルム120には、光反応部分125a及び未露光部分125bが形成される。この場合、光反応部分115a及び光反応部分125aにおいて光硬化性成分の反応(樹脂成分の架橋等)が進行することにより、光反応部分115aと光反応部分125aとが互いに剥離し難くなると共に、光反応部分115aが未露光部分115bに比して脆性化し、光反応部分125aが未露光部分125bに比して脆性化する。これにより、接着フィルム110が粘着フィルム120から剥離する方向の力が未露光部分115b及び未露光部分125bに対して加えられる場合に、未露光部分115bと当該未露光部分115bに接する光反応部分115aとが互いに剥離し易い状態となると共に、未露光部分125bと当該未露光部分125bに接する光反応部分125aとが互いに剥離し易い状態となる。
このような製造方法では、ピックアップ工程において、未露光部分115bを備える接着剤層付き半導体チップ75をピックアップする場合、未露光部分115bが半導体チップ27に貼り付けられた状態を維持しつつ未露光部分115bを未露光部分125bから剥離させることが容易であると共に、光反応部分115a及び光反応部分125aを所望の形状(例えば、空隙部51と同様の格子形状)に残存させることが容易である。したがって、上記製造方法では、半導体チップ27の実装に適した形状の接着剤層(未露光部分115b)を備える接着剤層付き半導体チップ75を容易に形成することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る接着剤層付き半導体チップの製造方法では、個片化工程が第1実施形態と異なり、その他の工程(貼り付け工程、露光工程、ピックアップ工程等)については第1実施形態と同様である。図7,8を用いて個片化工程を説明する。個片化工程は、ダイシング工程と、グラインド工程とをこの順に有する。
ダイシング工程では、まず、第1実施形態と同様に積層体25を得た後、半導体ウェハ21の主面21bが上を向いた状態で積層体25をダイシング装置のステージに固定する。
続いて、半導体ウェハ21の厚さ方向の少なくとも一部が切断されずに残るように半導体ウェハ21を当該半導体ウェハ21の主面21b側からダイシング(ハーフカット)する。具体的には、図7(a)、(b)に示すように、半導体ウェハ21の主面21b側から積層体25をダイシングすることにより半導体ウェハ21に格子状に溝29aを形成する。この場合、溝29aの底面は、半導体ウェハ21とダイシングテープ23との界面に達することなく、半導体ウェハ21の主面21a及び主面21b間に位置している。
積層体25は、図7(a)、(b)に示すようにダイシングブレード31によりダイシングされてもよく、レーザによりダイシングされてもよい。ダイシングに際しては、例えば、ディスコ社製ダイシング装置を用いることができる。
上記ダイシングにより、溝29aを介して互いに間隔をおいて形成された複数の***部21cを有する半導体ウェハ21と、半導体ウェハ21の主面21aに貼り付けられたダイシングテープ23とを備える積層体が得られる。続いて、ダイシングテープ23を半導体ウェハ21から剥離すると共に、バックグラインドテープ81を半導体ウェハ21の主面21bに接着することにより、図7(c)に示すように積層体83が得られる。積層体83において、半導体ウェハ21の主面21bはバックグラインドテープ81に接しており、半導体ウェハ21の主面21aは露出している。
グラインド工程では、まず、図8(a)、(b)に示すように、半導体ウェハ21の主面21aが上を向いた状態で積層体83を固定する。次に、半導体ウェハ21を主面21a側から溝29aの底面の位置に研削面が達するまでグラインダー85によりバックグラインド(研削)して、図8(c)に示すように複数の半導体チップ27を得る。バックグラインドに際しては、例えば、ディスコ社製バックグラインド装置を用いることができる。半導体チップ27の厚さは、例えば5〜700μmである。
以上の個片化工程により、互いに間隔をおいて配置された複数の半導体チップ27と、当該複数の半導体チップ27の主面27aに貼り付けられたバックグラインドテープ81とを備える積層体89が得られる。後続の貼り付け工程では、第1実施形態における積層体35に代えて積層体89が用いられ、積層体89における半導体チップ27の主面27bに積層シート100が貼り付けられる。
[第3実施形態]
第3実施形態に係る接着剤層付き半導体チップの製造方法では、貼り付け工程が第1,2実施形態と異なり、その他の工程(個片化工程、露光工程、ピックアップ工程等)については第1実施形態や第2実施形態と同様である。図9,10を用いて貼り付け工程を説明する。貼り付け工程は、第1貼り付け工程と、第2貼り付け工程とを有している。貼り付け工程では、第1貼り付け工程において、接着フィルム110を半導体チップ27に貼り付けた後に、第2貼り付け工程において、粘着フィルム120を接着フィルム110に貼り付ける。以下、各工程について説明する。
第1貼り付け工程では、まず、基材フィルム140と、基材フィルム140に貼り付けられた接着フィルム110とを備える積層シート200を準備する。また、第1実施形態における積層体35、又は、第2実施形態における積層体89を準備する。以下では、一例として、積層体35を用いた工程について説明する。
次に、積層体35の半導体チップ27の主面27bが上を向いた状態で積層体35をラミネータ41にウェハリング43を用いて固定する。続いて、図9(a)、(b)に示すように、半導体チップ27の主面27bと積層シート200の接着フィルム110とが接するように、半導体チップ27に積層シート200をラミネートして積層体91を得る。そして、図9(c)に示すように、接着フィルム110から基材フィルム140を剥離することにより積層体93を得る。
第2貼り付け工程では、まず、基材フィルム130と、基材フィルム130に貼り付けられた粘着フィルム120とを備える積層シート300を準備する。次に、積層体93の接着フィルム110が上を向いた状態で積層体93をラミネータ41に固定する。続いて、図10(a)、(b)に示すように、接着フィルム110と積層シート300の粘着フィルム120とが接するように、接着フィルム110に積層シート300をラミネートして積層体95を得る。積層体95において、粘着フィルム120は、接着フィルム110を挟んで半導体チップ27の反対側において接着フィルム110に貼り付けられている。
そして、図10(c)に示すように、半導体チップ27からダイシングテープ23を剥離することにより、図4に示す積層体の構造と同様の構造を有する積層体55が得られる。後続の露光工程及びピックアップ工程は、第1実施形態や第2実施形態と同様である。
なお、接着剤層付き半導体チップの製造方法は上記に限られるものではない。例えば、露光工程においては、半導体チップ27における光源61側の主面にダイシングテープ23やバックグラインドテープ81が貼り付けられた状態で接着フィルム110及び粘着フィルム120に光Lを照射してもよい。この場合、ダイシングテープ23やバックグラインドテープ81として光Lを透過するテープを用いればよい。
[半導体装置の製造方法]
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上記接着剤層付き半導体チップの製造方法により上記接着剤層付き半導体チップ75を得る工程と、実装工程と、を備える。実装工程では、図11に示すように、接着剤層付き半導体チップ75の半導体チップ27を、当該接着剤層付き半導体チップ75の未露光部分115b(接着剤層)を介して実装基板(半導体搭載用支持部材)97に接着して半導体装置99を得る。実装工程は、例えば、50〜150℃で0.1〜10秒間加熱する条件で行われる。
実装基板97としては、例えば、他の半導体チップ;42アロイリードフレーム及び銅リードフレーム等のリードフレーム;エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びマレイミド系樹脂等から形成された樹脂フィルム;ガラス不織布、又はガラス織布にエポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂及びマレイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸しこれを硬化させて得られる基板;ガラス基板;アルミナ等のセラミックス基板が挙げられる。