JP2013004707A - 圧電膜素子及び圧電膜デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板1上に、少なくとも下部電極層2と、非鉛のアルカリニオブ酸化物系の圧電膜4とを配した圧電膜素子10において、前記下部電極層2は、立方晶、正方晶、斜方晶、六方晶、単斜晶、三斜晶、三方晶のいずれかの結晶構造、またはこれら結晶構造のうちの二以上の結晶構造が共存した状態を有し、前記結晶構造の結晶軸のうちの2軸以下のある特定の結晶軸に優先的に配向しており、前記基板1上における少なくとも一つの前記結晶軸を法線とした結晶面のX線回折強度分布において、前記結晶面のX線回折強度の相対標準偏差が57%以下である。
【選択図】図1
Description
例えば、後述する実施例の表2及び図16に示すように、基板上における下部電極層の(111)優先配向分布の指標である(111)X線回折強度の相対標準偏差が57%以下、より好ましくは44%以下の範囲に設定することによって、基板上における圧電定数分布の指標である圧電定数の相対標準偏差を10%以下、もしくは7%以下(111X線回折強度の相対標準偏差が44%以下の場合)にまで、基板上における圧電特性を均一かつ安定的に実現できる。
前記結晶軸を法線とした結晶面のX線回折強度の分布において、前記結晶面のX線回折強度の最小ピーク強度に対する最大ピーク強度の大きさが7倍以下、より好ましくは6倍以下の範囲にある。
例えば、後述する実施例の表3及び図17に示すように、基板上における下部電極層の(111)優先配向分布の指標である(111)X線回折強度の最小ピーク強度に対する最大ピーク強度の大きさを7倍以下の範囲に精密に設定することによって、非鉛圧電体の圧電特性を自由に制御あるいは向上させることができる。そして、より好ましくは、上記X線回折強度の大きさを約6倍以下に設定することによって、圧電定数を各種デバイスへ広く適用できるレベルの70以上に制御することが可能である。尚、このときの圧電定数は、KNN圧電膜のヤング率をバルクで仮定しているために、任意単位で表記しているが、本発明の一実施例として電極面に沿った方向の伸縮の変化量であるd31である。
また、前記下部電極層の材料として、Ru、Ir、Sn、In、これらの酸化物、またはPtと前記圧電膜中に含まれる元素との化合物を使用することによっても、同様にして圧電膜の配向性、圧電膜素子の圧電特性を向上できる。
また、前記基板についても、Si基板、MgO基板、ZnO基板、SrTiO3基板、SrRuO3基板、ガラス基板、石英ガラス基板、GaAs基板、GaN基板、サファイア基板、Ge基板、またはステンレス基板を使用することによって、その上に形成した圧電膜の結晶配向性を制御することができ、圧電特性を向上することができる。
図1に、本発明に係る圧電膜素子の一実施形態を示す。
本実施形態の圧電膜素子10は、図1に示すように、表面に酸化膜を有する基板1と、基板1上に接着層2を介して形成される下部電極層3と、下部電極層3上に形成されるペロブスカイト構造の圧電膜4とを有する。圧電膜4は、(NaxKyLiz)NbO3(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦0.2、x+y+z=1)であり、所定方向に配向し
て形成される下部電極層3に対して、圧電膜4が所定方向に優先配向している。
られる。なお、前記酸化膜を形成せずに、石英ガラス、MgO、SrTiO3、SrRuO3基板などの酸化物基板上に、直接Pt電極などの下部電極層3を形成しても良い。
例として、基板1である4インチSiウェハ上における分布において、下部電極層3は、(111)配向度のばらつきである(111)面のX線回折強度の相対標準偏差が15%であると共に、(111)面優先配向の指標として用いた(111)面のX線回折強度について、(111)面X線回折強度分布における最小ピーク強度に対する最大ピーク強度の大きさを7倍にまで制御した。また、Ptの下部電極層3の(111)優先配向性を評価する上で、下部電極層3のX線回折パターンは、KNN圧電膜を形成する前と後においても、容易に測定できることから、圧電膜形成後の改質処理の前後においても、(111)優先配向性を有するPt下部電極層3を評価することが可能である。(111)面など所定の方向に優先配向した下部電極層3について、その配向度に注目し、X線回折法等(その他の配向方向を見積もることができる構造解析法、例えば、走査型電子顕微鏡による電子線回折を応用した結晶方位解析法等)を用いて、適切な結晶配向性を有する下部電極層3の作製条件の最適化を図る。
本実施形態では、一般に量産実績のある成膜法であるスパッタリング法を用いて、Pt下部電極層の試作を行った。まず、制御パラメータの一つである成膜時のスパッタリング投入電力(Power)については、スパッタリング投入電力を増加させることで、Arイオ
ンなどのエネルギー粒子の衝撃により、多くのスパッタ粒子を強制的に基板上に打ち込み、結果として最適な高配向を有するPt下部電極層を作製する。また、成膜温度も結晶配向性の制御パラメータとして注目し、均一に(111)優先配向となるよう、室温〜800℃の範囲、より好ましくは室温〜300℃の範囲で、最適な(111)優先配向のPt下部電極層を作製する。更に、下部電極層表面の平滑性と基板との密着性も向上するため、下部電極層の形成前に基板上に0.1から数nmの膜厚のTiもしくはTiOxを形成
し、その上にPt下部電極層を形成することで、基板との密着力の強い高配向のPt下部電極層を安定に作製することを可能にした。
実際には、Pt下部電極層の(111)優先配向分布を均一にすべく、赤外線ランプによる熱幅射、レーザー照射あるいは伝熱板等を介したヒータ加熱による熱伝導などを用いて、成膜温度、熱処理温度などが一定の範囲となるように制御する。また、Ptのスパッタリング成膜時の投入電力値を最適制御すること、ターゲット材の形状を変更すること、成膜される側の基板と原料のスパッタリングターゲット間の距離、およびスパッタリングターゲットに対して自転、公転、あるいは自公転させた基板側の速度を適切に制御すること等によって、大きな面積を有する基板(ウェハ)上におけるPt下部電極層の結晶配向性、すなわち(111)優先配向度を均一化する効果が期待できる。更に、上記の設定条件・制御条件に加えて、圧電膜のスパッタリング投入電力、成膜装置内に導入されるガス圧力や流量を制御し、He、Ar、Kr、Xeなどのスパッタ動作ガスに対して、0.1
%以上のO2やN2やH2Oなどを含有させるなど、適切なガス種を選ぶことによって、高い圧電定数を示すニオブ酸リチウムカリウムナトリウム膜を備えた圧電膜素子が安定かつ歩留まり良く得られる。また、マグネトロンスパッタ装置に搭載されるスパッタリングターゲット側に配置される磁石の磁力の強弱や回転数を調節あるいは制御することによっても同様な効果が期待できる。
前記の下部電極層の結晶配向性を正確に定量化し、厳密に制御・管理して作製された図1に示す実施形態の圧電膜素子(ないし圧電膜付き基板)10に対して、更に、図2に示すように、圧電膜4上に上部電極層5を形成することによって、高い圧電定数を示す圧電膜素子20を作製できる。
また、図1に示す圧電膜素子10の圧電膜4上に所定のパターンを備えた電極を形成することで、表面弾性波を利用した圧電膜素子(フィルタデバイス)を形成することができる。表面弾性波を利用する圧電膜素子(フィルタデバイス)などのように、下部電極を必要としない場合には、下部電極層3を圧電膜4の下地層として用いる。
図2に示す実施形態の圧電膜素子20を所定形状に成型し、成型した圧電膜素子の下部電極層3と上部電極層5との間に、電圧印加手段あるいは電圧検出手段を設けることにより、各種のアクチュエータあるいはセンサなどの圧電膜デバイスを作製することができる。これらデバイスにおける下部電極層及び圧電膜の結晶配向性を安定に制御することによって、圧電膜素子や圧電膜デバイスの圧電特性の向上や安定化を実現でき、高性能なマイクロデバイスを安価に提供することが可能になる。また、本発明の圧電膜素子は、鉛を用いない圧電膜を備えた圧電膜素子であるため、本発明の圧電膜素子を搭載することによって、環境負荷を低減させかつ高性能な小型のモータ、センサ、アクチュエータ等の小型システム装置、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)等が実現できる。
この圧電膜デバイス30は、デバイス基板31と、デバイス基板31上に形成された絶縁層32と、絶縁層32上に形成され、図2と同様の構造を有する圧電膜素子20とを備える。デバイス基板31及び絶縁層32は、圧電膜素子20の一方の端部を支持する支持部材として機能する。圧電膜素子20は、基板1上に密着層2、下部電極層3、圧電膜4
及び上部電極層5が形成され、圧電膜素子20のもう一方の端部(自由端部)は、基板1が延出されており、この基板1の延出部には、上部キャパシタ電極36が突出して設けられている。デバイス基板31上には、上部キャパシタ電極36の下に空隙33を介して下部キャパシタ電極34を形成し、下部キャパシタ電極34の表面にSiN等からなる絶縁層35を形成している。
そして、上部電極層5及び下部電極層3に、それぞれボンディングワイヤ18A、18Bを介して電圧を印加すると、圧電膜素子20の先端が変位し、これに伴って上部キャパシタ電極36が上下方向に変位する。上部キャパシタ電極36の変位によって上部キャパシタ電極36と下部キャパシタ電極34との間のキャパシタが変化し、本実施形態の圧電膜デバイス30は可変キャパシタとして動作する。
本実施例では、図1に示す上記実施形態と同様の断面構造を有する圧電膜素子(圧電膜付き基板)を作製した。
2)面の回折ピークのみが観測され、他の(200)面、(220)面、(311)面の回折ピークは確認できなかった。すなわち、基板表面に対して(111)優先配向したPt薄膜が形成されていることが明確になった。
ックターゲットを用いた。膜厚が3μmになるまでKNN膜の成膜を行った。また、成膜後において酸素中や不活性ガス中あるいは両者の混合ガス、または大気中あるいは真空中で加熱処理を行った。
行ったところ、(001)優先配向であることが明らかになった。詳細については、以下の参考文献1,2を参照されたい。更に、図8から、実施例のPt下部電極層の上部にKNN膜を形成した状態でのX線回折測定で、KNN膜の下地であるPt下部電極層の(111)回折ピークや(222)回折ピークを同時に確認することができた。すなわち、KNN膜を形成した後においてもPt下部電極層の(111)優先配向性を見出すことできる。実施例の圧電膜素子における下部電極層の配向性評価について、評価装置であるX線回折装置には、Panalytical社製のMRDを用い、測定時のX線源の出力は1.8kW(45kV、40mA)であり、特性X線源にCuKa線を使用し、Line focusとして10mm×0.1mmのスリットを使用した。また、回折X線の検出器にはシンチレーションカ
ウンターを使用した。配向性の高精度評価として極図形測定も行い、広い面積のX線検出城をもつ2次元検出器を搭載した高出力X線回折装置(Bruker AXS社製の「D8 DISCOVER with Hi STAR、VANTEC2000°」)を用いた。
参考文献1:カリティ著、新版X線回折要論、アグネ、1980年
参考文献2:理学電気編、X線回折の手引き、改訂第4版、理学電気株式会社、1986年
本実施例では、Pt下部電極層の(111)優先配向について、図8で説明したX線回折パターンのPt111回折ピーク強度を参考にした。また、圧電特性の向上と密接に関連するKNN膜の(001)優先配向について、X線回折パターンのKNN001回折ピーク強度を参考にした。図9に、一実施例における、下部電極層のPt111回折強度に対するKNN膜のKNN001回折強度の変化を示す。
図9(a)に示すように、Si基板であるウェハの中心部において、Pt下部電極層の111回折強度が増加するに従い、KNN膜の001回折強度が、約100カウント(counts)から650カウント(counts)へと増加することがわかる。また、Si基板であるウェハの中心から30mm離れた位置においても、図9(b)に示すように、Pt下部電極層の111回折強度の増加に従って、KNN圧電膜の001回折強度が増加している。すなわち、Pt下部電極層の(111)優先配向度が高いほど、KNN圧電膜の(001)優先配向度が高くなることを表している。KNN圧電膜の(001)優先配向と相関のある圧電特性を向上するためには、KNN圧電膜の下地にあたる下部電極層の(111)優先配向度を制御することが重要であることが分かった。
Pt下部電極層の(111)優先配向度の制御方法の一つとして、スパッタリング成膜時の温度制御がある。図10に成膜温度(基板温度)に対するPt下部電極層の111回折強度の変化を示す。図10(a)に、111回折強度のウェハ上の分布が比較的に均一なサンプルについて、ウェハのオリフラ側からトップ側にかけて5点測定した結果を示している。Pt下部電極層の成膜温度が高くなるに従い、Pt111回折強度が増加することがわかる。また、図10(b)に、当該サンプルウェハについて、オリフラ側を下にして、左から右側に5点測定した結果を示す。図10(a)と同じように、成膜温度が高くなるに伴ってPt111回折強度が高くなる温度依存性を示す。すなわち、ウェハ全体にわたって、成膜温度とPt111回折強度の間に正の相関がある。成膜温度の適切な制御がPt下部電極層の(111)優先配向度を向上させ、その結果、KNN圧電膜の(001)優先配向度を最適化することができることを表している。
11(a)は、ウェハのオリフラ側からトップ側にかけて5点測定した結果、図11(b)はオリフラ側を下にして、左から右側に5点測定した結果を示している。図11に示すように、Powerが300Wから500Wへと大きくなるに従い、111回折強度が高くな
ることがわかる。ウェハ面上においてほぼ一様に、Powerが大きくなるに従い111回折
強度が大きくなる。また、Power(スパッタリング投入電力)の大きさに関係なく、成膜
時に150℃で加熱した時は、非加熱の時に比べてPt111の回折強度が高くなることがわかる。言い換えると、Powerも成膜温度と同じく、Pt下部電極層の(111)優先
配向を制御するパラメータであると考えられる。
ここで本発明の実施例について、基板、例えばSiウェハ上における、Pt下部電極層の(111)優先配向度の分布について説明する。図12はSiウェハ上のPt下部電極層の(111)優先配向度の分布を示したものである。尚、横軸はオリフラ側からトップ側へ多点測定したときのX線回折の測定位置、縦軸はPt下部電極層の111X線回折強度である。図12(a)は、4インチSiウェハ上に成膜したPt下部電極層の111回折強度分布が不均一な状態を表した図である。図12(a)の場合、111回折強度の分布指標であるSiウェハ上の111回折強度の相対標準偏差は約59%である。一方、図12(b)は、Pt下部電極層の111回折強度分布が均一な分布を実現した状態を表し
た図である。図12(b)と図12(a)を比較すると、図12(a)の111回折強度の凸状分布が図12(b)では平坦化していることがわかる。図12(b)の場合、Siウェハ上の111回折強度の相対標準偏差は14%であり、ウェハ上におけるPt下部電極層の(111)優先配向性分布の大きさを約1/4にまで改善できることを示している。
次に、Pt下部電極層の(111)優先配向性分布が異なる基板上にKNN圧電膜を形成し、これらKNN圧電膜の格子歪分布を比較し、下部電極層の配向性分布の均一性に対する、KNN圧電膜の格子歪分布の均一性について調べた。図13にKNN圧電膜の格子歪c/aのウェハ上分布を示す。ここで、格子歪c/aとは、KNN圧電膜の基板面に垂直な法線方向の格子定数cと、基板面に平行な方向の格子定数aとの比である。c/a<1のときは、基板面に対して平行な方向の格子間距離が法線方向の格子間距離に対して長く、KNN圧電膜は面内において引張状態にあり、c/a>1のときは、基板面に対して平行な方向の格子間距離が法線方向の格子間距離に対して短く、KNN圧電膜は面内において圧縮状態にあることを表している。
上記のPt下部電極層の111回折強度のばらつきは、KNN圧電膜を形成する前のPt下部電極形成ウェハにおいて、ウェハの移動あるいはX線源の移動によって、ウェハ上の任意の位置を多数点測定したPt下部電極層の111X線回折強度の標準偏差であって、それを平均値で割った百分率、すなわち相対標準偏差である。次に、KNN圧電膜のウェハ上での格子歪の分布との相関関係を明確にするために、前述したPt下部電極層の111回折強度のばらつきを求めたウェハ上にKNN圧電膜を形成したウェハを作製した。このKNN圧電膜のウェハ上の任意の位置について、Out of plane(面外)X線回折法とIn-plane(面内)X線回折法によって、KNN圧電膜の面外(膜厚)方向の格子定数cと面内方向の格子定数aを多数点測定し、ウェハ上での任意の位置における格子歪量c/aを求めた。実施例に記載したKNN圧電膜の格子歪c/aのばらつきは、前述したウェハ
上で多数点測定して得られたc/aの標準偏差であって、それを平均値で割った百分率、すなわち相対標準偏差である。尚、当該Pt下部電極層の111X線回折強度のばらつき、及びKNN圧電膜の格子歪c/aのばらつきは、一枚のウェハ上におけるばらつきの均一・不均一に基づく標準偏差や相対標準偏差には限定されず、ウェハ上の任意の一点を測定して得られたPt下部電極層の111X線回折強度やKNN圧電膜の格子歪c/aについて、異なるウェハ間あるいはロット間に基づく標準偏差や相対標準偏差であっても良い。
実際に、Pt下部電極層の(111)優先配向分布の状態が異なる基板(4インチSiウェハ)上に形成したKNN圧電膜について、圧電定数の分布を評価した結果を図15に示す。図15(a)は図12(a)で示した(111)優先配向性の分布が不均一な状態のPt下部電極層上に形成したKNN圧電膜の圧電定数の分布を示した図である。Pt下部電極の(111)優先配向性の分布が不均一な場合、KNN圧電膜の圧電定数が不均一であることがわかる。このとき、ウェハ上において圧電定数が約70〜110(任意単位)まで分布をもっており、相対標準偏差は約14.3%であった。一方、図15(b)に
図12(b)で示した(111)優先配向性の分布を均一化させたPt下部電極上に形成したKNN圧電膜の圧電定数の分布を示した。Pt下部電極の(111)優先配向性の分布を均一に制御した場合、その上部に形成したKNN圧電膜について、その圧電定数の分布が均一化した。この圧電定数分布の相対標準偏差は約4.1%であり、約1/4にまで
ウェハ上での圧電定数のばらつきが低減できることがわかる。すなわち、KNN圧電膜の下地であるPt下部電極層の構造制御、具体的には(111)優先配向性の精密な制御によって、KNN圧電膜の高性能化と安定生産を両立させることができる。
図16に、Pt下部電極層の(111)優先配向性のばらつきに対する、KNN圧電膜の圧電定数のばらつきの変化を検討した結果を示す。図16の横軸はPt下部電極層の(111)優先配向性のばらつきに相当する(111)X線回折強度の相対標準偏差、縦軸はKNN圧電膜の圧電定数のばらつきに相当する圧電定数の相対標準偏差である。Pt下部電極層の(111)優先配向性の基板上でのばらつきが大きくなるに従い、結果としてKNN圧電膜の基板上での圧電定数のばらつきが大きくなることがわかる。すなわち、Ptの下部電極の(111)優先配向分布を均一化することによって、Siウェハ上で均一な圧電特性を有するKNN圧電膜を製造することができる。
表3に、Pt下部電極層の(111)優先配向性の均一性が異なる基板上に形成したKNN圧電膜に関し、Pt下部電極層の(111)面のX線回折強度の最小ピーク強度に対する最大ピーク強度の大きさ(X線回折強度の最小ピーク強度に対する最大ピーク強度の大きさを、単に「X線回折強度の倍率」と記す)、及びそれに対応したKNN圧電膜の圧電定数−d31をまとめている。また、表3をもとに作成した図17に、Pt下部電極層の(111)面のX線回折強度の倍率と、KNN圧電膜の圧電定数−d31との関係を図示する。Pt下部電極層の(111)面のX線回折強度の倍率(ばらつき)が大きくなるに従い、KNN圧電膜の圧電定数−d31が低下し、Pt下部電極層の(111)面のX線回折強度の倍率を6倍以下にすることで、圧電定数−d31を各種デバイスへ広く適用できるレベルの70以上に制御できることが分かる。
2 接着層
3 下部電極層(Pt下部電極層)
4 圧電膜(KNN膜)
5 上部電極層
10 圧電膜素子
20 圧電膜素子
30 圧電膜デバイス
41 成膜容器
42 スパッタリング用ターゲット
Claims (11)
- 基板上に、少なくとも下部電極層と、非鉛のアルカリニオブ酸化物系の圧電膜とを配した圧電膜素子において、
前記下部電極層は、
立方晶、正方晶、斜方晶、六方晶、単斜晶、三斜晶、三方晶のいずれかの結晶構造、またはこれら結晶構造のうちの二以上の結晶構造が共存した状態を有し、前記結晶構造の結晶軸のうちの2軸以下のある特定の結晶軸に優先的に配向しており、前記基板上における少なくとも一つの前記結晶軸を法線とした結晶面のX線回折強度の分布において、前記結晶面のX線回折強度の相対標準偏差が57%以下である
ことを特徴とする圧電膜素子。 - 基板上に、少なくとも下部電極層と、非鉛のアルカリニオブ酸化物系の圧電膜とを配した圧電膜素子において、
前記下部電極層は、
立方晶、正方晶、斜方晶、六方晶、単斜晶、三斜晶、三方晶のいずれかの結晶構造、またはこれら結晶構造のうちの二以上の結晶構造が共存した状態を有し、前記結晶構造の結晶軸のうち2軸以下のある特定の結晶軸に優先的に配向しており、前記基板上における少なくとも一つの前記結晶軸を法線とした結晶面のX線回折強度の分布において、前記結晶面のX線回折強度の最小ピーク強度に対する最大ピーク強度の大きさが7倍以下の範囲にある
ことを特徴とする圧電膜素子。 - 請求項1または2に記載の圧電膜素子において、前記基板上における前記圧電膜の圧電定数の分布は、相対標準偏差が10%以下にあることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の圧電膜素子において、前記下部電極層は、柱状構造の粒子で構成された集合組織を有していることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の圧電膜素子において、前記下部電極層が、(001)優先配向結晶粒、(110)優先配向結晶粒および(111)優先配向結晶粒のうち、主に一つの優先配向結晶粒で構成された構造、または二以上の優先配向結晶粒が共存した構造であることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の圧電膜素子において、前記下部電極層は、Pt層またはPtを主成分とする合金層からなる単層構造、あるいはPt層またはPtを主成分とする合金層を含む積層構造であることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の圧電膜素子において、前記下部電極層は、Ru、Ir、Sn、In、これらの酸化物、またはPtと前記圧電膜中に含まれる元素との化合物からなる層の単層構造、または前記層を含む積層構造であることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の圧電膜素子において、前記圧電膜上に、上部電極層が設けられ、前記上部電極層は、Pt層またはPtを主成分とする合金層からなる単層構造、あるいはPt層またはPtを主成分とする合金層を含む積層構造であることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項8に記載の圧電膜素子において、前記上部電極層は、Ru、Ir、Sn、In、これらの酸化物、またはPtと前記圧電膜中に含まれる元素との化合物からなる層の単層構造、または前記層を含む積層構造であることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の圧電膜素子において、前記基板は、Si基板、MgO基板、ZnO基板、SrTiO3基板、SrRuO3基板、ガラス基板、石英ガラス基板、GaAs基板、GaN基板、サファイア基板、Ge基板、またはステンレス基板であることを特徴とする圧電膜素子。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の圧電膜素子を備えたことを特徴とする圧電膜デバイス。
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