JP2012214333A - 水酸化インジウムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インジウム酸化物を含有する物質を酸で溶解してインジウム溶液とする工程(A)、該インジウム溶液に酸化剤を添加してORP(銀/塩化銀電位基準)を600〜900mVとする工程(B)、該酸化剤を添加したインジウム溶液を強酸性陽イオン交換樹脂に通して不純物陽イオンを除去する工程(C)、強酸性陽イオン交換樹脂に通した後のインジウム溶液のpHを1.5〜3.0に調整して不純物陰イオンの沈殿物を生成し、これを固液分離によりを除去する工程(D)、工程(D)後のろ液のpHをアルカリ添加により8以上として水酸化インジウムの沈殿物を生成し、固液分離することによって、水酸化インジウムの濾物を得る工程(E)、を含む水酸化インジウムの製造方法。
【選択図】図1
Description
またこれら2種類の酸化物は高密度を得る為に1500℃以上の高温で焼結されており、ITOターゲットは非常に硬く、割れやすい材料である。そこで、ITOターゲットはIn蝋材により一般にCu製のバッキングプレートに接合されている。ITOスクラップはバッキングプレートから熱剥離されて回収に供されるが、蝋材にバッキングプレートからCuが拡散し、Cuが不純物として混入している。
また、ITOスクラップはそのままでは酸にほとんど溶解しないので、ジョークラッシャー及び鬼歯クラッシャー等で粗粉化され、ボールミル又は振動ミル等で微粉化される。ボールミルは一般に硬い材料である強硬度合金鋼等が選定される。この粉砕工程でFe、Ni、Mn、Cr、Zn、Ti等の不純物が混入する。
さらに、Siは地球上でもっとも多い元素であるので、どこからでも混入する可能性があり、アルカリ薬品からも混入する危険性がある。
該インジウム溶液に酸化剤を添加してORP(銀/塩化銀電位基準)を600〜900mVとする工程(B)、
該酸化剤を添加したインジウム溶液を強酸性陽イオン交換樹脂に通して不純物陽イオンを除去する工程(C)、
強酸性陽イオン交換樹脂に通した後のインジウム溶液のpHを1.5〜3.0に調整して不純物陰イオンの沈殿物を生成し、これを固液分離によりを除去する工程(D)、
工程(D)後のろ液のpHをアルカリ添加により8以上として水酸化インジウムの沈殿物を生成し、固液分離することによって、水酸化インジウムの濾物を得る工程(E)、
を含む水酸化インジウムの製造方法である。
本発明においては、水酸化インジウムの原料としてインジウム酸化物を含有する物質を使用する。インジウム酸化物を含有する物質としては、特に制限は無いが、典型的にはITOスクラップが挙げられる。
ITOスクラップは、例えば酸化Inを70〜95質量%、酸化Snを30〜5質量%、その他の不純物を合計で100〜1000質量ppm含有する。その他の不純物としては、Zr、Zn、Fe、Si、Al、Mn、Cr、Ni、Cu、及びTi等が挙げられる。ITOスクラップはそのままでは酸にほとんど溶解しないので、ジョークラッシャー及び鬼歯クラッシャー等の破砕機で粗粉化され、ボールミル又は振動ミル等の粉砕機で微粉化される。従って、本発明の典型的な実施形態においては、原料は粉末状で提供され、好ましくは5mmφアンダー、より好ましくは1mmφアンダー(1mm角のメッシュを持つふるいを通過する)の粉末状で提供される。
工程(A)では原料であるインジウム酸化物を含有する物質を酸で溶解してインジウム溶液とする。酸としては、特に制限は無いが、硫酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、特に塩酸が好ましい。酸濃度や液温は溶解率の観点から適宜調整することができるが、例えば酸水溶液のpHは4以下とし、液温は0℃以上〜100℃以下とする。
工程(B)では、工程(A)の後のインジウム溶液に酸化剤を添加してORP(銀/塩化銀電位基準)を600〜900mVとする。酸化剤を添加して当該範囲にORPを調整することによって、Fe、Mn、Cr、Zn、Al、Zr、Ti、Cu及びNi等の金属不純物を酸化させることで、次工程での陽イオン交換樹脂で除去しやすい化学形態に変化させることができる。
一方で、H+イオン濃度を高くし過ぎると、工程(D)における中和時に多量の塩が生成し、水酸化インジウムからこの塩を洗い流すために多量の純水が必要となるので、2モル/L以下(pH≧−0.3)に抑えることが好ましい。
工程(C)では、酸化剤を添加したインジウム溶液を強酸性陽イオン交換樹脂に通して不純物陽イオンを除去する。前述したように、通液する前にH+イオン濃度を調整しておくことが好ましい。強酸性陽イオン交換樹脂としては特に制限は無いが、例えばスルホン酸基(−SO3H)を交換基として持つ樹脂が挙げられる。
工程(C)により、陽イオン交換樹脂にインジウム溶液中の陽イオンが吸着し除去されたが、Siは除去されない。そこで、強酸性陽イオン交換樹脂に通した後のインジウム溶液のpHを1.5〜3.0に調整して不純物陰イオンの沈殿物を生成し、これを固液分離によりを除去する工程(D)を実施する。
工程(E)では、工程(D)後のろ液のpHをアルカリ添加により中和し、pH7以上として水酸化インジウムの沈殿物を生成し、固液分離することによって、水酸化インジウムの濾物を得る。
殿物中の水酸化InからNaClを除去するために、中和のpHをまず7から9とする好ましくは7.5から8.5とする。pHが7未満の場合、既に述べたとおり、沈降性およびろ過性が悪化する。一方、pH9以上にするとNaが除去されづらい。次に純水により最低2回ほどリパルプ水洗を行う。この水洗において、リパルプ液がpH7以下になった場合はアンモニア水によりpHを8±0.5に戻す。
このリパルプ水洗の方法により、Naイオンを水酸化Inからまず除去する。
次にリパルプ水洗回数3回もしくは4回目に、リパルプ液のpHを10超、好ましくは10を超えて11以下にする。pH10以下ではClが除去されないし、pH11超では多量のアンモニア水が必要となる。この水洗において、リパルプ液がpH9.5以下になればアンモニア水によりpH10超に調整し、リパルプ水洗を繰り返す。
硝酸銀チェックにより白濁がなくなればリパルプ水洗を終了する。
以上の工程により水酸化InからClを除去する。
NH4ClのNH4イオンはインジウム水酸化物を後に酸化する工程で除去されるので、Clのみの除去方法を以下に述べる。
殿物中の水酸化InからClを除去するために、中和のpHをまず10超、好ましくは10を超えて10.5以下にする。pH10以下ではClが除去されにくく、pH10.5超では多量のアンモニア水が必要となる。
引き続きリパルプ水洗を行い、この水洗において、リパルプ液がpH8以下になった場合はアンモニア水によりpHを9〜9.5に戻す。
リパルプ水洗を繰り返し、硝酸銀チェックにより白濁がなくなればリパルプ水洗を終了する。
中和pHを10以上にすると、中和液中に多量の塩化アンモニウムが含まれているため、pHを上昇させるために、多量のアンモニア水が必要となる。
そこで中和のpHをまず8〜9とし、リパルプ水洗を2もしくは3回ほど行う。
リパルプ液がpH8以下になった場合はアンモニア水によりpHを9±0.5に戻す。
その後リパルプ水洗回数が2もしくは3回目にリパルプ液のpHを10超、好ましくは10を超えて11以下にする。pH10以下ではClが除去されにくく、pH11超では多量のアンモニア水が必要となる。
その後リパルプ液がpH9.5以下になればアンモニア水によりpH10超に調整し、リパルプ水洗を繰り返す。
硝酸銀チェックにより白濁がなくなればリパルプ水洗を終了する。
以上の工程により水酸化InからClを除去することができる。
(塩酸溶解:工程A)
粒径を1mmφアンダーまでITOスクラップを機械粉砕した。粉砕はジュークラッシャー又は鬼歯クラッシャー等で粗粉砕し、次にボールミル又は振動ミルにて微粉砕する手順とした。次にITOスクラップ粉100gを、濃塩酸(35.5重量%)250mLで溶解した。温度は80℃から85℃とし、総液量は蒸発水を純水補給しながらおよそ400mLとした。強攪拌により、およそ1日で95%のITOスクラップ粉が溶解した。
一方、不純物除去試験用に塩酸溶解液を静置してITOスクラップの溶け残りを沈降させた後の上澄液(インジウム溶液)を86mL採取し、これに36重量%過酸化水素水を2mL添加した。過酸化水素水添加前のORP(銀/塩化銀電位基準)はおよそ300mVであったが、過酸化水素水2mL添加後はORPはおよそ800mVまで上昇した。過酸化水素水添加前のH+イオン濃度は1.77モル/Lであった。
また液の色は無色透明から茶褐色に変化した。この過酸化水素水の添加されたインジウム溶液を純水にて186mLにメスアップした。この時のインジウム溶液中のIn濃度は80g/Lであり、H+イオン濃度(フリーの塩酸濃度)は0.8モル/Lであった。
この液を強酸性陽イオン交換樹脂塔(三菱化学製ダイヤイオンSKIB、200mL)にSV2.5で通液した。陽イオン交換樹脂塔に残った塩酸溶解液を押し出すために、0.1モル/Lの塩酸を200mL使用した。その後純水にて1,000mLにメスアップした。陽イオン交換樹脂塔に通液した後のインジウム溶液中のIn濃度は15g/L、H+イオン濃度(=フリーの塩酸濃度)は0.15モル/Lであった。
次にアルカリ薬品により、インジウム溶液のpHを2.5とし、Snの共沈作用によりSiを沈澱させた。澱物にはSn及びSiが含まれ、これをろ別して除去した。ろ過後液には不純物はほとんど含まれていなかった。
次にアルカリ薬品(アンモニア水)により中和し、pH10とし、水酸化インジウムの沈殿を得た。
それをろ別し、濾物をリパルプ水洗することにより、中和時に生成した塩を水酸化インジウムから除去した。
アルカリ薬品がアンモニア水の場合、中和により生成する殿物には多量のNH4Clが含まれる。濾物を水でリパルプ水洗し、リパルプ液がpH8以下になった場合はアンモニア水によりpHを9〜9.5に戻し、また、水洗の後半にはpHを10を超えて11以下にする段階を経ながら、リパルプ水洗を繰り返した。硝酸銀チェックにより白濁がなくなったときにリパルプ水洗を終了した。リパルプ水洗回数は6回であった。水酸化物の分析値(質量%又は質量ppm)を表1(#2)に示す。表1の#2の分析値からみて、一般に上市されているITOターゲット用原料として使用可能な純度の水酸化インジウムが得られていることが分かった。
ここでは、実施例1の過酸化水素水の添加及び陽イオン交換樹脂の処理両方を省略した場合の比較例を説明する。
Claims (8)
- インジウム酸化物を含有する物質を酸で溶解してインジウム溶液とする工程(A)、
該インジウム溶液に酸化剤を添加してORP(銀/塩化銀電位基準)を600〜900mVとする工程(B)、
該酸化剤を添加したインジウム溶液を強酸性陽イオン交換樹脂に通して不純物陽イオンを除去する工程(C)、
強酸性陽イオン交換樹脂に通した後のインジウム溶液のpHを1.5〜3.0に調整して不純物陰イオンの沈殿物を生成し、これを固液分離によりを除去する工程(D)、
工程(D)後のろ液のpHをアルカリ添加により8以上として水酸化インジウムの沈殿物を生成し、固液分離することによって、水酸化インジウムの濾物を得る工程(E)、
を含む水酸化インジウムの製造方法。 - 工程(B)におけるインジウム溶液中のH+イオン濃度が0.1〜2.0モル/Lである請求項1に記載の水酸化インジウムの製造方法。
- 工程(B)で、酸化剤を添加してORP(銀/塩化銀電位基準)を600〜900mVとした後、工程(C)の前に、インジウム溶液中のH+イオン濃度を0.6〜1.2モル/Lに調整する請求項1又は2に記載の水酸化インジウムの製造方法。
- 工程(C)は、SV値(通液量を樹脂量で割った値)を3以下として実施する請求項1〜3の何れか一項に記載の水酸化インジウムの製造方法。
- 工程(E)によって得られた水酸化インジウムの濾物を水洗する工程を更に含む請求項1〜4の何れか一項に記載の水酸化インジウムの製造方法。
- 水洗時に、使用する水洗液のpHをアルカリ添加により10超にすることにより、水酸化インジウムの濾物に含まれる塩の少なくとも陰イオンを除去する工程(F)を更に含む請求項5に記載の水酸化インジウムの製造方法。
- 工程(A)で添加する酸が、塩酸であり、インジウム溶液が塩化インジウム溶液である請求項1〜6の何れか一項に記載の水酸化インジウムの製造方法。
- インジウム酸化物を含有する物質がITOスクラップである請求項1〜7の何れか一項に記載の製造方法。
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