JP4135371B2 - 金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液の製造方法に関し、特にITO(ITOはIndium−Tin−Oxideの略であり酸化インジウム−酸化錫固溶体である。)焼結体スクラップから回収した金属不純物とインジウムとを含む水溶液から金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化錫を2〜20重量%含有するITOの薄膜は、高い導電性と優れた透光性を有するために、液晶ディスプレイの透明電極用の透明導電性膜として利用されている。
ITO薄膜は、主にITOターゲットを用いたスパッタリング法により形成されており、ITOターゲットには、ITO粉末を成形し焼結するかまたは酸化インジウム粉末と酸化スズ粉末の混合粉末を成形し焼結して製造された焼結体が用いられている。
【0003】
ITOターゲットを用いてスパッタリング法により透明導電性膜を形成する際の問題点の一つとして、ITOターゲットの使用効率が低いことが挙げられる。ITOターゲットのITO焼結体はスパッタリングに使用するに従って重量が減少する。一般的に、透明導電性膜の品質を確保するために、ITO焼結体の重量減少が20〜30重量%程度でITOターゲットは新品に交換される。使用済みITOターゲットのITO焼結体(ITO焼結体スクラップ)中には希少資源であり高価なインジウムが多量に含まれていることから、この使用済みITOターゲットから高純度の金属インジウムまたはインジウム化合物が回収されている。
【0004】
例えば、特開平3−75224号公報に、ITO使用済みターゲットを塩酸に溶解し、インジウムと錫を含む水溶液を作製し、アンモニア水または水酸化ナトリウムを添加し、錫含有の沈殿物を生成させて錫とインジウムを分離する方法が開示されている。しかしながらこの方法では錫以外の金属をインジウムから除去することはできなかった。
【0005】
特開平3−82720号公報には、ITOスクラップ溶液を還元処理した後pHを2から5(水素イオン濃度10-2〜10-5mol/L)に調整してインジウム成分を水酸化物として沈殿分離し、さらに水酸化物を酸に溶解してから非キレート型のイオン交換樹脂にインジウムを吸着させた後、吸着したインジウムを脱着させるという複雑な方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液の簡便な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、係る状況下、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、金属不純物とインジウムとを含む水溶液をキレート型のイオン交換樹脂と接触させることにより、または該水溶液を一定範囲の水素イオン濃度に調整し、非キレート型のイオン交換樹脂に接触させることにより、金属不純物を簡便に除去することができ、金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)〜(6)を提供する。
(1)金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄および/またはアルミニウムである。)とインジウムとを含む水溶液の水素イオン濃度を0.5mol/L以上3mol/L以下の範囲に調整し、非キレート型のイオン交換樹脂と接触させることにより金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄および/またはアルミニウムである。)を除去することを特徴とする金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液の製造方法。
(2)非キレート型のイオン交換樹脂がスルホン酸基を交換基に持つ陽イオン交換樹脂である上記(1)に記載の製造方法。
(3)金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅および錫からなる群から選ばれる一種以上である。)とインジウムとを含む水溶液の水素イオン濃度を0.5mol/L以上12mol/L以下の範囲に調整し、該水溶液をキレート型のイオン交換樹脂と接触させることにより金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅および錫からなる群から選ばれる一種以上である。)を除去することを特徴とする金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液の製造方法。
(4)キレート型のイオン交換樹脂がアミノリン酸基またはイミノジ酢酸基を交換基に持つイオン交換樹脂である上記(3)記載の製造方法。
(5)水溶液とキレート型のイオン交換樹脂とを接触させる温度が40℃〜100℃の温度範囲である上記(3)または(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)金属不純物とインジウムとを含む水溶液がインジウム含有焼結体および/またはインジウム含有粉末を酸性水溶液に溶解したものである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳しく説明する。
本発明は、金属不純物とインジウムとを含む水溶液(以下、単に「インジウムを含む水溶液」ということがある。)中の金属不純物を除去し、金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液を製造するための、非キレート型のイオン交換樹脂を用いる場合とキレート型のイオン交換樹脂を用いる場合の二通りの製造方法を提供する。非キレート型のイオン交換樹脂を用いる場合においてはインジウムを含む水溶液の水素イオン濃度は0.5mol/L(モル/リットル)以上3mol/L以下の範囲に調整する。インジウムを含む水溶液の水素イオン濃度が0.5mol/L未満の場合、金属不純物だけでなくインジウムイオンも吸着される。また、水溶液中の水素イオン濃度が3mol/Lより大きい場合には、金属不純物の吸着量が少なく除去することができない。本発明者らは、インジウムを含む水溶液の水素イオン濃度を0.5mol/L以上3mol/L以下の範囲に調整することにより、非キレート型のイオン交換樹脂を用いてインジウムを含む水溶液中の金属不純物濃度が低減できることを見出したのである。
キレート型のイオン交換樹脂を用いる製造方法においては、インジウムを含む水溶液の水素イオン濃度は0.5mol/L(モル/リットル)以上12mol/L以下の範囲が好ましい。インジウムを含む水溶液の水素イオン濃度が0.5mol/L未満の場合、金属不純物だけでなくインジウムイオンも吸着されるおそれがある。また、水素イオン濃度が12mol/Lより大きい場合には、金属不純物の吸着量が少なくなるおそれがある。
【0010】
なお、本発明の製造方法で用いるキレート型のイオン交換樹脂は、二つ以上の官能基が一つのイオンと結合することにより該イオンを吸着する機能を有する樹脂であり、イオン交換樹脂の1種である。本発明の製造方法における非キレート型のイオン交換樹脂は、一つの官能基が一つのイオンと結合して該イオンを吸着する機能を有する樹脂である。以下、これらの総称としてイオン交換樹脂という言葉を用いる。
【0011】
原料となるインジウムを含む水溶液について説明する。
本発明の製造方法で使用されるインジウムを含む水溶液は金属不純物を含有している。該水溶液は特に限定するものではないが、ITO焼結体スクラップ(以下スクラップとは使用済みターゲットから回収されたものであることを意味する。)、In−Zn系酸化物焼結体スクラップ、製造時に破損したITO焼結体、製造時に破損したIn−Zn系酸化物焼結体等のインジウム含有焼結体を酸性水溶液に溶解して得られる金属不純物とインジウムとを含む水溶液が好適に用いられる。これらの水溶液には、鉄、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、銅および錫からなる群から選ばれる1種以上が不純物として含まれる。また本発明の製造方法には、ITO焼結体の切削・研削工程で生じた屑、In−Zn系酸化物焼結体の切削・研削工程で生じた屑、10重量ppm以上のFeおよび/または10重量ppm以上のAlおよび/または10重量ppm以上のCuおよび/または10重量ppm以上のZnを含むITO粉末および/または10重量ppm以上のFeおよび/または10重量ppm以上のAlおよび/または10重量ppm以上のCuを含むIn−Zn系酸化物等のインジウム含有粉末を酸性水溶液に溶解して得られる金属不純物とインジウムとを含む水溶液を用いることもできる。
【0012】
本発明の製造方法で使用される金属不純物とインジウムとを含む水溶液の製造において、インジウム酸化物を含有する物質の溶解に用いる酸性水溶液の酸としては塩酸、硫酸、王水、硝酸等が挙げられる。溶解速度が最も速い塩酸が好ましい。
【0013】
インジウム酸化物を含有する物質が、例えば、ITO焼結体スクラップである場合について以下に説明する。
スパッタリングに使用した後のITOターゲットにはITO焼結体スクラップはバッキングプレートと接合されているために、バッキングプレートから取外したITO焼結体スクラップには、バッキングプレートの材料であるCuやロウ材等が付着している場合が多く、このような場合には、これら付着物を予め塩酸、硝酸、王水等の酸性水溶液で除去しておくことが好ましい。
【0014】
また、ITO焼結体スクラップは酸性水溶液への溶解を行うに先立って、酸性水溶液への溶解を促進させるために、粉砕することが好ましい。粉砕方法は特に限定されないが、公知のジョークラッシャー、ロールクラッシャー、ロールミル、ハンマーミル、スタンプミルや振動ミル等を用いることができる。粉砕機の材質としてはアルミナ、ジルコニア等の耐摩耗のものが好ましいが、AlまたはZrが不純物としてITOに混入してくることは避けられない。粉砕後のITOスクラップの粒径は一般的には10mm以下、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0015】
次いで、粉砕したITO焼結体スクラップを酸性水溶液に溶解することにより、本発明の製造方法に使用する金属不純物とインジウムとを含む水溶液を製造することができる。溶解に用いる酸性水溶液の酸として塩酸を用いる場合、水溶液中の塩酸濃度は一般的には5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。高濃度の塩酸水溶液を用いる程、ITO焼結体スクラップの溶解速度が向上する。
【0016】
ITO焼結体スクラップの溶解方法は特に限定されるものではないが、加熱、攪拌下で行うことが好ましい。溶解温度は30℃以上100℃以下の範囲、好ましくは50℃以上100℃以下の範囲、更に好ましくは60℃以上90℃以下の範囲である。溶解時間は溶解量、酸性水溶液の濃度および温度等に依存する。
【0017】
以上の溶解工程にて得られたITO溶解液(金属不純物とインジウムとを含む水溶液)に未溶解のITO焼結体が含まれる場合には、濾過によって未溶解のITO焼結体を除去することもできる。
【0018】
本発明の製造方法においては、上記に例示した方法等によって得られたITO溶解液の水素イオン濃度を調整した後イオン交換樹脂と接触させることにより金属不純物を除去する。水素イオン濃度を調整する方法は特に限定されるものではないが、水素イオン濃度を低減させる場合には該溶解液にイオン交換水またはアルカリを添加する方法がある。ただし、アルカリに含まれる陽イオンは陽イオン交換樹脂への不純物の吸着を阻害するおそれがあり、陽イオン交換樹脂を用いる場合はイオン交換水添加が好ましい。水素イオン濃度を上昇させる場合には該溶解液に酸を添加する方法がある。また、ITO焼結体スクラップを酸性水溶液に溶解する際の酸とITO焼結体スクラップの重量比を変える方法によっても得られる溶解液の水素イオン濃度を調整することができる。本発明の製造方法において金属不純物とインジウムとを含む水溶液をイオン交換樹脂と接触させる実施態様としては、イオン交換樹脂を円筒状の容器に充填し、インジウムを含む水溶液を円筒状容器の一方からもう一方へ通過させてインジウム含有水溶液の精製を連続的に行う方法が好適である。
【0019】
本発明の製造方法に用いられる非キレート型のイオン交換樹脂としては、例えば、市販の商品名「ダウエックス モノスフィアー650C」(ザ・ダウ・ケミカルカンパニー製)、「ダウエックス50W」(ザ・ダウ・ケミカルカンパニー製)、「ダイヤイオンSK1B」(三菱化学株式会社製)、「デュオライトC255LFH」(住友化学工業株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、非キレート型の陽イオン交換樹脂は、塩酸、硫酸等の酸にて洗浄することによって繰り返し再生利用することが可能である。
【0020】
本発明の製造方法において、非キレート型のイオン交換樹脂により大きく低減する不純物は鉄およびアルミニウムであるので、鉄および/またはアルミニウムを金属不純物として含むインジウム含有水溶液の鉄および/またはアルミニウムの濃度を低減するために本発明の製造方法は好適である。非キレート型の陽イオン交換樹脂としては、スルホン酸基を交換基として持つ陽イオン交換樹脂が不純物濃度を低減する効果が高く好ましい。
【0021】
本発明の製造方法において、キレート型のイオン交換樹脂としては、例えば、市販の商品名「デュオライトC467」(住友化学工業株式会社製)、「スミキレートMC700」(住友化学工業株式会社製)、「ムロキレートA−1」(室町化学工業株式会社)、「ダイヤイオンCR11」(三菱化学株式会社製)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、キレート型のイオン交換樹脂は、塩酸、硫酸等の酸または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリにて洗浄することによって繰り返し再生利用することが可能である。
【0022】
本発明の製造方法において、キレート型のイオン交換樹脂により大きく低減する不純物は鉄および亜鉛およびジルコニウムおよび銅および錫であるので、鉄と亜鉛とジルコニウムと銅と錫からなる群から選ばれる一種以上を金属不純物として含む、インジウムと金属不純物とを含む水溶液の該金属不純物の濃度を低減するために本発明の製造方法は好適である。キレート型のイオン交換樹脂としては、特にアミノリン酸基またはイミノジ酢酸基を官能基としてもつものが不純物濃度を低減する効果が高く好ましい。さらに、キレート型のイオン交換樹脂を用いて不純物を吸着する際には、温度を40℃〜100℃の範囲にすることが吸着能力の観点から好ましい。
【0023】
本発明の製造方法によれば、インジウムと金属不純物とを含む水溶液中の金属不純物濃度を、イオン交換樹脂に接触させるという簡便な方法で低減させ金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液を得ることができる。本発明の製造方法によるインジウムの回収率は90%以上と高収率である。また、本発明の製造方法における工程を2回以上繰り返して行うことによって、回収液中のインジウムに対する不純物濃度をさらに低減することもできる。
【0024】
本発明の製造方法においては金属不純物とインジウムとを含む水溶液としてインジウム濃度の非常に高い水溶液を使用することができ、金属不純物の低減されたインジウム水溶液を原料にしてITO粉末を製造する際、濃縮などの工程が不要であり、高い容積効率が得られるという利点も本発明の製造方法は有しているのである。
【0025】
本発明の製造方法により得られる金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液とアルカリ水溶液とを混合し、中和してインジウムを含む沈殿を得ることができる。沈澱を得る方法としては、金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液中にアルカリ水溶液を添加する方法、あるいは40℃以上100℃未満の水中に、反応中のpHが4〜6の範囲で一定に維持されるように、金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液とアルカリ水溶液とを同時に供給して反応させる方法が挙げられる。
【0026】
【実施例】
次に,本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。
なお、実施例の水素イオン濃度は、インジウムを含む水溶液を100倍に希釈し、pHメーター(東亜電波工業株式会社製、HM−20S)で測定し、その値から算出したものである。また、各金属不純物濃度はICP発光分析装置によって測定したものである。なお、以下に記載のppmはすべて重量ppmである。
【0027】
実施例1
ITO焼結体をアルミナ製2Lポット(株式会社ニッカトー社製)およびジルコニアボール(株式会社ニッカトー社製、15mmφ、YTZボール)を用いて振動ミル(安川電気製作所社製、Vibo−Pot)にて粉砕して60メッシュ以下とした粉末300gを35%塩酸水溶液700gに添加し、攪拌しながら80℃で9.5時間溶解処理を行い、吸引濾過により未溶解ITOを除去することによりITO溶解液、すなわち金属不純物とインジウムとを含む水溶液を調製した。水溶液の水素イオン濃度を測定したところ1.2mol/Lであった。該水溶液中の各金属イオン濃度はIn=345g/L、Sn=17.6g/L、Fe=0.0081g/L,Al=0.0037g/Lであった。陽イオン交換樹脂(住友化学工業株式会社製デュオライトC255LFH)40mLを充填した20mmφのカラムに該溶液200mLを1.5mL/分の流量で通液し、流出してきたインジウム含有水溶液を回収した。表1に精製前後でのFe/In、Al/Inおよび各イオンの除去率を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例2
ITO焼結体を1から2cmほどの大きさに粉砕した塊1075gを35%塩酸水溶液948gに添加、攪拌下、80℃で82時間溶解処理を行い、吸引濾過により未溶解ITOを除去することによりITO溶解液、すなわち金属不純物とインジウムとを含む水溶液を調製した。溶解液にイオン交換水を加え、水素イオン濃度を1.2mol/Lに調整した。該水溶液中の各金属イオン濃度はIn=191g/L、Sn=19.8g/L、Zr=0.0297g/L、Fe=0.0183g/L、Zn=0.0025g/Lであった。キレート型のイオン交換樹脂(住友化学工業株式会社製 デュオライトC467)70mLを充填した20mmφのカラムに、イオン交換水350mLを1.5mL/分の流量で通液して洗浄した。該溶液270mLを1.5mL/分の流量で通液し、流出してきたインジウム含有水溶液を回収した。さらにイオン交換水200mLを1.5mL/分の流量で通液してカラム液相中に残った金属イオンを押し出して回収した。Zr/Inは156ppmから0.2ppmに低減し、Fe/Inは96ppmから15ppmに低減した。イオン交換水溶出液中に含まれるInを含めたIn回収率は95%であった。
【0030】
実施例3
実施例1と同様の手順でITO焼結体を粉砕・溶解した後、イオン交換水を添加して金属不純物とインジウムとを含む水溶液の水素イオン濃度を0.9mol/Lに調整した。該水溶液中の各金属イオン濃度はIn=211g/L、Sn=23.0g/L、Zr=0.0280g/L、Fe=0.0179g/L、Zn=0.0023g/Lであった。キレート型のイオン交換樹脂(住友化学工業株式会社製 デュオライトC467)を5NHCl水溶液とイオン交換水で洗浄した後、樹脂10mLを20mmφのカラムに充填した。カラムに該水溶液120mLを1.5mL/分の流量で通液し、流出してきたインジウム含有水溶液を回収した。さらにイオン交換水30mLを1.5mL/分の流量で通液してカラム液相中に残った金属イオンを押し出して回収した。Zr/Inは133ppmから3ppmに低減し、Zn/Inは11ppmから3ppmに低減した。イオン交換水溶出液中に含まれるInを含めたIn回収率は91%であった。
【0031】
実施例4
キレート型のイオン交換樹脂(住友化学工業株式会社製 デュオライトC467)40mLを20mmφのカラムに充填し、5NHCl水溶液とイオン交換水で洗浄した。Feが混入した金属インジウムの塩酸溶解液(In=320g/L、Fe=0.030g/L、水素イオン濃度3.0mol/L)1041mLを該カラムを60℃に保持して1.5mL/分の流量で通液し、流出してきたインジウム含有水溶液を回収した。Fe/Inは93ppmから8ppmに低減した。また、In回収率は100%であった。
【0032】
実施例5
実施例1と同様の手順でITO焼結体を粉砕・溶解した後、イオン交換水を添加して金属不純物とインジウムとを含む水溶液の水素イオン濃度を0.6mol/Lに調整した。該水溶液中の各金属イオン濃度はIn=75g/L、Sn=5.5g/L、Zr=0.0054g/L、Fe=0.0007g/L、Zn=0.0003g/L、Cu=0.0056g/Lであった。キレート型のイオン交換樹脂(住友化学工業株式会社製 スミキレートMC700)70mLを20mmφのカラムに充填し、イオン交換水で洗浄した。カラムに該水溶液460mLを1.5mL/分の流量で通液し、流出してきたインジウム含有水溶液を回収した。さらにイオン交換水200mLを1.5mL/分の流量で通液してカラム液相中に残った金属イオンを押し出して回収した。Cu/Inは74ppmから27ppmに低減した。イオン交換水溶出液中に含まれるInを含めたIn回収率は100%であった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、金属不純物とインジウムとを含む水溶液から簡便な方法で金属不純物を除去して金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液を得ることができる。本発明の製造方法を用いれば、特に使用済みITOターゲットのITO焼結体スクラップから金属不純物の低減されたITO粉末を低コストで再生することが可能となるので、工業的に極めて有用である。
Claims (6)
- 金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄および/またはアルミニウムである。)とインジウムとを含む水溶液の水素イオン濃度を0.5mol/L以上3mol/L以下の範囲に調整し、該水溶液を非キレート型のイオン交換樹脂と接触させることにより金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄および/またはアルミニウムである。)を除去することを特徴とする金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液の製造方法。
- 非キレート型のイオン交換樹脂がスルホン酸基を交換基に持つ陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- 金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅および錫からなる群から選ばれる一種以上である。)とインジウムとを含む水溶液の水素イオン濃度を0.5mol/L以上12mol/L以下の範囲に調整し、該水溶液をキレート型のイオン交換樹脂と接触させることにより金属不純物(ここで、金属不純物は、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅および錫からなる群から選ばれる一種以上である。)を除去することを特徴とする金属不純物の低減されたインジウム含有水溶液の製造方法。
- キレート型のイオン交換樹脂がアミノリン酸基またはイミノジ酢酸基を交換基に持つイオン交換樹脂である請求項3記載の製造方法。
- 水溶液とキレート型のイオン交換樹脂とを接触させる温度が40℃〜100℃の温度範囲である請求項3または4に記載の製造方法。
- 金属不純物とインジウムとを含む水溶液がインジウム含有焼結体および/またはインジウム含有粉末を酸性水溶液に溶解したものである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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