JP2012207318A - 人工毛髪用ポリエステル繊維およびその製造方法 - Google Patents

人工毛髪用ポリエステル繊維およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 難燃性を有し、耐熱特性に優れ、さらに繊維表面の状態改質によりアルカリ減量処理等の後加工を施すことで、人毛に近い表面光沢および風合いを付与することができ、しかも特異な装置・設備を要することなく、低コスト、かつ長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産が可能な人工毛髪用ポリエステル繊維と製造方法を提供する。
【解決手段】 平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.4〜5重量%含有し、2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルを含有するポリエステル繊維であって、総繊度、単繊維繊度、乾熱100℃における収縮応力(F(100))、乾熱180℃における収縮応力(F(180))、最大収縮応力を与える温度(T(max))、交絡度(l1)、引裂値(l2)が特定の値を満たすことを特徴とする人工毛髪用ポリエステル繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は人工毛髪用ポリエステル繊維と製造方法に関する。詳しくは難燃性を有し、耐熱特性に優れ、さらに繊維表面の状態改質により、アルカリ減量処理等の後加工を施すことで人毛に近い表面光沢および風合いを付与することができ、しかも特異な装置・設備を要することなく、低コスト、かつ長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産が可能な人工毛髪用ポリエステル繊維およびその製造方法に関するものである。
ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなる繊維は、高融点、高弾性率で優れた耐熱性、耐薬品性を有していることから、カーテン、敷物、衣料、毛布、シーツ地、テーブルクロス、椅子張り地、壁装材、自動車内装資材、屋外用補強材、安全ネットなどに広く使用されている。
一方、かつら、ヘアーウィッグ、エクステンション、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭髪製品においては、従来、人毛や人工毛髪( モダクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維) などが使用されている。しかし、近年は人毛の提供が困難になってきており、人工毛髪の需要が高まってきている。人工毛髪素材としては、難燃性の特長を生かしたモダクリルが多く使用されてきたものの、耐熱温度が不十分であるという問題があったことから、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルを主成分とする繊維を用いた人工毛髪繊維が提案されるようになってきた。しかしながら、人工毛髪素材としてポリエチレンテレフタレートを使用するにあたっては、安全性の観点から難燃性付与が要求されている。また、人工毛髪の需要増加に伴い抗張力、易セット性、セット保持性、櫛通り性、光変褪色などの付加特性も求められている。さらに通常の方法で製糸したポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルを主成分とする繊維では、糸表面が平坦なうえにポリエステル自体の屈折率が高いため表面光沢が強く、人工毛髪に要求される人毛に近い適度な艶消し性と色が得られないという課題が生じている。かかる性能を満足させるために、現在まで人工毛髪用繊維に関するいくつかの提案がなされている。
例えば、ポリエステル繊維の断面がメガネ型で、そのクビレ度が2.5〜8であり、且つ繊維表面に凹凸を有することで肌触りが人毛に酷似しており、また櫛通り性、光沢に優れた人工毛髪繊維を得る方法(例えば、特文献1参照)が提案されているが、この方法で得られた繊維では、製造時の熱処理温度が150℃程度と低いため耐熱特性が悪く、200℃を超える高温のヘアーアイロンなどを使用した際には容易に収縮挙動を示し、耐久性や形状安定性に劣るといった問題を有している。
また、ポリアルキレンテレフタレート繊維の断面が亜鈴型(メガネ型)で、臭素含有難燃剤、アンチモン化合物および光安定剤を含んでなる耐熱性、セット性、触感、櫛通り性、耐候性に優れた人工毛髪を得る方法(例えば、特文献2参照)が提案されている。この方法で得られる繊維は、その製造工程で臭素含有難燃剤を使用するが、近年非ハロゲン化が要求されている。
さらに、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を0.4〜5重量%含有したポリエステルであり、沸水収縮率が4〜25%であることを特徴とした糸長手方向に太細を有する、生糸使用可能で薄地織編物用途に好適で黒発色性に優れたポリエステル太細糸を得る方法(例えば、特文献3参照)が提案されているが、この方法で得られた糸は表面反射量が少なく発色性が良いため風合いが人毛に酷似しているものの、沸水収縮率が4〜25%と大きいため、200℃を超える高温のヘアーアイロンなどを使用した際には容易に収縮挙動を示し、耐久性や形状安定性に劣るといった問題を有している。
さらにまた、平均一次粒子径が150〜500nmであるコロイダルシリカを0.01〜1.0重量%付与されてなる人毛に似た毛髪に適した光沢と風合いを有し、かつその特性が持続できる人工毛髪用ポリエステル繊維を得る方法(例えば、特文献4参照)が提案されているが、この方法で得られた繊維では、ある程度表面反射量が小さく発色性が良くなるが、平均一次粒子径が150〜500nmと大きいため、製糸時の糸切れが多発すると共に、高次加工の際にも糸切れや毛羽の発生などがあり、製品の品位が低下してしまうという問題があった。
上記の通り、従来の技術では難燃性を有し、耐熱性に優れ、さらには人毛に近い表面光沢および風合いを持ちながら、低コスト、かつ長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産を行うこと全てを同時に満足する繊維およびその製造方法は得られていないのが現状である。
特開2007−146306 特開2006−316395 特開2003−105628 特開2008−274453
本発明は人工毛髪用ポリエステル繊維およびその製造方法に好適であって、前記従来技術の有する問題を解決し、難燃性を有し、耐熱特性に優れ、さらに繊維表面の状態改質によりアルカリ減量処理等の後加工を施すことで、人毛に近い表面光沢および風合いを付与することができ、しかも特異な装置・設備を要することなく、低コスト、かつ長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産が可能な人工毛髪用ポリエステル繊維およびその製造方法を提供することを課題とする。
上記目的課題を達成するために本発明によれば、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.4〜5重量%含有し、2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルを含有するポリエステル繊維であって、下記特性(1)〜(5)を満足することを特徴とする人工毛髪用ポリエステル繊維が提供される。
(1)総繊度 : 560〜3300dtex
(2)単繊維繊度 : 15〜85dtex
(3)乾熱100℃における収縮応力(F(100)):0.01〜0.06cN/dtex
乾熱180℃における収縮応力(F(180)):0.03〜0.1cN/dtex
最大収縮応力を与える温度(T(max)) :200〜240℃
(4)交絡度(l1) :1≦l1≦5
(5)引裂値(l2) :0<l2≦1。
なお、本発明の人工毛髪用ポリエステル繊維においては、
単繊維断面の形状がメガネ型であり、クビレ度(b/c)が1.1〜2.3であること、
2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルを含有するポリエステル繊維全体の重量を100重量%としたときにリン原子の量が0.3〜1.0重量%であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
また、上記本発明の人工毛髪用ポリエステル繊維の製造方法は、紡糸口金から押し出された繊維に冷却装置を用いて冷却処理を施した後、延伸熱処理する直接紡糸延伸法において、熱処理温度が200〜250℃であることを特徴とする。
本発明の人工毛髪用ポリエステル繊維は、難燃性を有し、耐熱特性に優れ、さらに繊維表面の状態改質によりアルカリ減量処理等の後加工を施すことで、人毛に近い表面光沢および風合いを付与することができる。本発明の製造方法は特異な装置・設備を要することなく、低コスト、かつ長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産が可能であるため、本発明の製造方法で得られたポリエステル繊維は人工毛髪として好適に使用することができる。
図1は本発明の人工毛髪用ポリエステル繊維の一例を示す繊維断面図である。 図2は交絡付与装置の一例を示すもので糸条の走行方向に平行な平面で切断した際の断面図である。 図3は図2における交絡処理部の詳細を示した糸条の走行方向に垂直な平面で切断した断面図である。
本発明におけるポリエステルとしては、主たる酸成分がテレフタル酸またはそのエステル形成誘導体、主たるグリコール成分がエチレングリコールからなるものが好ましく、本発明の人工毛髪用ポリエステル繊維は、コロイダルシリカ微粒子を含有し、2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルを含むポリエステル繊維からなるものである。
また、本発明に用いるポリエステル繊維には、必要に応じて、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、クレーなどの艶消し剤、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、耐熱剤、耐蒸熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、蛍光剤、可塑剤などを含むことができる。
本発明において、ポリエステルに添加するコロイダルシリカ微粒子は、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであり、より好ましくは0.03〜0.09μm、さらに好ましくは0.04〜0.08μmである。平均一次粒子径が0.1μmより大きくなると、アルカリ減量処理後に形成されるポリエステル繊維表面のボイド径が大きくなりすぎて、繊維表面反射光を充分に抑制することができず、人毛に近い適度な艶消し性と十分な黒発色性が得られないだけでなく、アルカリ処理後の繊維の破断強度も著しく低下してしまう。
さらに、コロイダルシリカ微粒子により、ガイド類の摩耗が引き起こされ、毛羽発生などの製糸性悪化を誘発し工業生産上問題が生じる。逆に、平均一次粒子径が0.02μm未満では、コロダルシリカ微粒子が凝集を起こしてしまうため製糸時糸切れなどを誘発し、安定製糸が困難となる。
なお、コロイダルシリカ微粒子の平均一次粒子径は、HORIBA製粒径分析装置(LA−700)を用いて、コロイダルシリカ(日産化学工業社製)をエチレングリコールスラリー100重量%としたときに20重量%含有し十分に攪拌したエチレングリコールスラリー分散液中に存在する粒子に光を照射した際に発生する散乱光(光は粒子径により前方・側方・後方の何れかに散乱)をMie散乱理論で解析し、得られた値である。
本発明の目的である人毛に近い適度な艶消し性と色を十分に発現させるためには、コロイダルシリカ微粒子の添加量が、繊維全体を100重量%としたときに0.4〜5重量%であり、より好ましくは0.7〜4.5重量%、さらに好ましくは1〜4重量%である。コロイダルシリカ微粒子の添加量が5重量%を超えると、人毛に近い適度な艶消し性と色は得られるが、ガイド類の摩耗が引き起こされ、製糸性、高次工程通過性が低下するという問題が発生する。逆に、添加量が0.4重量%未満になると、ガイド類の摩耗は改善されるものの、人毛に近い適度な艶消し性と色が得られないという問題が生じる。
本発明におけるコロイダルシリカとは、ケイ素酸化物を主体とし、単粒子状で存在する微粒子が水または単価のアルコール類またはジオールまたはこれらの混合物を分散媒とし、コロイドとして存在するものをいう。
コロイダルシリカをポリマ中に添加する方法としては、コロイダルシリカをエチレングリコールによく分散させたスラリーで添加する方法が好ましい。スラリーの添加時期はポリエステルのエステル化あるいはエステル交換反応、重縮合反応のいずれの時期でも良く適宜選択可能である。
本発明のポリエステル繊維は、難燃性を付与する目的でポリマ分子中には2官能性リン化合物が共重合されたポリエステルを含むものである。2官能性リン化合物としては、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドが好ましく使用されるが、その限りではない。
ホスホネート類としては、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル等が好ましく使用される。ホスフィネート類としては、(2−カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2−メトキシカルボニルエチル)メチルホスフィン酸メチル、(2−カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2−メトキシカルボニルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4−メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステルなどが好適に使用される。ホスフィンオキシド類としては、(1,2−ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィンオキシド、(2,3−ジカルボキシプロピル)ジメチルホスフィンオキシド、(1,2−ジメトキシカルボニルエチル)ジメチルホスフィンオキシド、(2,3−ジメトキシカルボニルエチル)ジメチルホスフィンオキシド、[1,2ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]ジメチルホスフィンオキシド、[2,3ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]ジメチルホスフィンオキシドなどが好適に使用される。
これらの化合物の中でも、ホスフィンオキシド類がポリエステルとの共重合反応性が良いこと、および重合反応時の飛散が少ないことなどから好適に使用される。
本発明で用いるポリエステル繊維は、上記2官能性リン化合物を共重合したポリエステル(共重合ポリエステル)を含むポリエステル繊維であり、全量を共重合ポリエステルとしてもよいし、共重合ポリエステルとポリエステルの混合物であってもよい。
さらにこのポリエステル繊維には、2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルを含有するポリエステル繊維全体の重量を100重量%としたときにリン原子の量が0.3〜1.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.35〜0.95重量%、さらに好ましくは0.4〜0.9%である。リン原子の量が1.0重量%を超えると、得られる繊維の機械的特性、耐熱性が損なわれる傾向があり、逆に、0.3重量%未満では難燃効果が得られにくい傾向がある。
前記リン化合物を共重合ポリエステルの製造工程で添加する方法については、ポリエステル製造工程の任意の段階で添加することができ、エステル化もしくはエステル交換反応時、重縮合反応時のいずれであってもよく、エステル化反応缶の汚れの問題や重縮合反応後期の添加では重縮合時間が延長するなどの点から、エステル化反応終了後から重縮合初期の間に添加することが好ましい。また、リン化合物をあらかじめエチレングリコールなどのジオール成分あるいは他の溶媒に混合又は溶解あるいは加熱縮合しておいて添加する方法も好ましい。
また、コロイダルシリカは共重合ポリエステル、あるいはポリエステルの重合前、重合中の段階で添加することも可能であるし、重合後添加してもよいが、繊維重量に対するコロイダルシリカの含有量や2官能性リン化合物の共重合量が所望の範囲となるよう適宜調整する。
本発明のポリエステル繊維は、総繊度が560〜3300dtexであり、好ましくは700〜2500dtex、さらに好ましくは830〜1840dtexであるのが低コスト、かつ長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産を可能にする。総繊度が560dtex未満の場合には、単位時間当たりの生産性が悪くなり量的生産性が損なわれるばかりか、ウィッグなどを作成するのに必要なポリエステル繊維の本数が多くなるため作業効率が悪くなる傾向があり、逆に3300dtexを超える場合には紡出後の冷却工程で均一な冷却性を得ることが困難となり、品位悪化が懸念される。
本発明のポリエステル繊維は、単繊維繊度が15〜85dtexであることが必要であり、好ましくは30〜70dtexであるのが人工毛髪に好適である。単繊維繊度が15dtex未満の場合には、耐摩耗性が悪くなり櫛通り性などに問題が生じる。逆に単繊維繊度が85dtexを超える場合には、糸条のコシが強いため、人毛に近い触感、風合いが得られないという問題がある。
本発明のポリエステル繊維の熱収縮応力は、乾熱100℃における収縮応力F(100)、乾熱180℃における収縮応力F(180)、それぞれ0.01〜0.06cN/dtex、0.03〜0.1cN/dtexであり、また、最大収縮応力を与えるときの温度T(max)は200〜240℃であることが必須である。乾熱100℃における収縮応力F(100)、乾熱180℃における収縮応力F(180)、それぞれが0.01cN/dtex、0.03cN/dtex未満の場合は耐熱性に優れ熱的寸法安定性が高いものの、人工毛髪に要求される美容熱器具(高温ヘアーアイロンなど)によるカールセット性を得ることが現行技術では困難である。逆に、乾熱100℃における収縮応力F(100)、乾熱180℃における収縮応力F(180)、それぞれが0.06cN/dtex、0.1cN/dtexを超える場合は、耐熱性に劣るため、美容熱器具(ドライヤーなど)で寸法変化してしまうという問題がある。また、最大収縮応力を与えるときの温度T(max)が200℃未満である場合は、前述同様に耐熱性に劣り、熱により寸法変化を起こしてしまい人工毛髪として取り扱うには問題がある。逆に最大収縮応力を与えるときの温度T(max)が240℃を超える場合は、ポリエステル成分の熱特性(融点)上技術的に困難であるだけでなく、人工毛髪に要求される美容熱器具(高温ヘアーアイロンなど)によるカールセット性を得ることが困難である。
本発明のポリエステル繊維は、交絡度(l1)が1≦l1≦5であり、引裂値(l2)が0<l2≦1であることが必須である。本発明でいう交絡度(l1)とはJIS L1013の方法に準じ、垂直方向に張った原糸に荷重の付いたフックを掛け、フックが止まるまでに移動した距離から交絡数を求める、いわゆるフックドロップ法より得られた値を指し、引裂値(l2)とは、l2=1000/L2の関係式で得られる値を指す。ここでいうL2とは、糸の任意の箇所においてフィラメントを概ね半数ずつになるように原糸を長手方向に割り、左右の指で半分ずつに分けられたフィラメントを引き裂きながら広げていったときに一定の力でそれ以上引き裂けなくなったときの引裂長(絡み合った交絡点間の距離に等しい)の平均値(mm、50回測定)を指す。なお、本発明でいう交絡度(l1)と引裂値(l2)は似て非なるものであり、その明確な違いは、交絡度(l1)測定は原糸繊度(tex)に0.22を乗じたごく軽い荷重(mN)を使用し計測するため、交絡の数を計測することに優位な手法であるといえる。一方、引裂値(l2)測定は糸に軽い収束を与えている程度の軽度の交絡は破壊しながら評価を行うため引裂長で評価される原糸1m当たりの交絡点数は、一般的な交絡付与されたポリエステル繊維を例に挙げても、交絡度(l1)で求められる交絡点数の1/2〜1/20と相当に小さくなることから、交絡の強度を計測することに優位な手法であるといえる。なお、引裂長の測定は人間の手で行うことが多いことから、測定者によって測定値が異なる懸念があるが、絡み合いにより繊維が引き裂けなくなる際には引き裂く力に対する抵抗が急激に大きくなるので測定者によって結果に重大な差異を生じることはない。本発明の交絡度(l1)1≦l1≦5、引裂値(l2)0<l2≦1を満足する場合には、工程通過時には収束性を維持(糸条綾落ち抑制、単糸パラケ抑制)しながら量的生産が可能となり、人の手のような高荷重が加わる櫛通し時には問題なく解舒できるという、人工毛髪の生産性と人工毛髪に要求される品質・品位の両立が可能であることを見出したのである。さらに製造工程における交絡処理装置を適切に制御することでこのような繊維特性を満足できることも見出した。交絡度(l1)が1未満の場合は工程通過時の収束性が得られず製糸性、高次通過性が低下するという問題があり、一方で、交絡度(l1)が5を超える場合は、工程通過時の収束は十分得られるものの交絡付与数が過多となり、本発明の如き引裂値(l2)を得ることが現在の技術では困難となる。引裂値(l2)が0の場合は理論上満足することは不可能であり、一方で、引裂値(l2)が1を超える場合は、高い交絡の強度を有しているため人工毛髪に要求される櫛通り性が極端に悪くなるという問題がある。
本発明のポリエステル繊維の効果を阻害しない範囲であれば単繊維断面の形状は特に限定されず、例えば丸、楕円、メガネ型、三角、T、Y、H、+、−、5葉、6葉、7葉、8葉などの多葉形状、正方形、長方形、ひし形、馬蹄型などを挙げることができ、また、これらの形状を一部変更したものであってもよいが、人毛に近い艶消し性の点からは、図1に示すようなメガネ型を使用することが好ましい。また、メガネ型断面のクビレ度(b/c)は1.1〜2.3を好ましい範囲として例示することができる。メガネ型断面のクビレ度が上記範囲を満足する場合は櫛通り性が良く、人毛に近い適度な艶消し性と色が得られ、さらにメガネ部が割れるなど実用上の問題も発生しないため好ましい。なお、使用に当たっては、本発明のポリエステル繊維の効果を阻害しない範囲であれば各種断面形状のフィラメントを適宜組み合わせて用いることができる。ここでいうクビレ度とは図1に示すようなメガネ断面形状において、短径部長さ(b)/最狭部長さ(c)で表した値である。
次に、本発明のポリエステル繊維の製造方法について説明するが、製造方法は特に限定されず公知の紡糸方法を採用することができるものの、低コスト、かつ長期間の生産において、毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産が可能なポリエチレンテレフタレート溶融紡糸を採用することが好ましいことから、以下に一例を説明する。
まず、紡糸ホッパーに貯留しているコロイダルシリカ微粒子を含有したベースポリエステルチップと、2官能性リン化合物が共重合されてなるマスターポリエステルチップとを混合し、1軸エクストルーダー型溶融紡糸装置に供給して溶融紡糸した。この溶融ポリマをギヤポンプにてマルチフィラメントの最終繊度に合わせて計量したのち、紡糸パック中で金属不織布フィルターにて濾過し、口金から紡出する。この紡出した繊維を冷却装置にて冷却固化した後、熱延伸する直接紡糸延伸法にて製造した。各工程における詳細を以下に説明する。
本発明で用いるポリエステルの固有粘度(IV)は、破断強伸度を制御する点から特定範囲にあることが好ましく、上述したベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップの場合には、固有粘度は0.5〜1.3の範囲が好ましく、より好ましくは0.6〜1.0である。
窒素雰囲気中でホッパーに充填されたコロイダルシリカ微粒子を含有したベースポリエステルチップと2官能性リン化合物が共重合されてなるマスターポリエステルチップを、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.4〜5重量%となるような割合で、1軸エクストルーダーにて溶融混練し、この溶融ポリマを計量ポンプにてマルチフィラメントの最終繊度に合わせて計量したのち、紡糸パックに導入し紡糸パック中で金属不織布フィルターにて濾過し、口金より吐出する方法で得ることができる。前記1軸エクストルーダー以外にも、本発明のポリエステル繊維が得られる範囲であれば、2軸エクストルーダー、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどで溶融混練しても良い。なお、用いるポリエステルチップとしては、コロイダルシリカ微粒子を含有した、2官能性リン化合物共重合ポリエステルチップであってもよいし、コロイダルシリカ微粒子を含有した、2官能性リン化合物共重合のマスターポリエステルチップとポリエステルチップの組み合わせであってもよい。さらに、前述の添加剤等を添加する際は、エクストルーダーにて直接混合する方法や、あらかじめ添加剤等を高濃度に含有したポリエステルチップを作成して、溶融前にチップをブレンドする方法が採用できる。
溶融紡糸温度は固有粘度、ポリマ種類等により適宜変更することができるが、270〜330℃であることが好ましい。270℃未満で紡糸を行なった場合には、ポリマの溶融時に十分な流動性が得られず品質バラツキが発生する可能性があり、逆に330℃を越える温度では、ポリマが分解してしまい本発明のポリエステル繊維を得られない可能性がある。紡糸口金の直下は、紡糸口金面より0〜15cmを上端とし、その上端から5〜60cmの範囲を加熱筒および/または断熱筒で囲み、紡出糸条を250〜350℃ に加熱せしめた雰囲気を通過させたのち、10〜80℃ 、好ましくは15〜50℃ の冷却風にて冷却固化することが好ましい。冷却風が10℃未満の場合には通常装置とは別に大型の冷却装置が必要となるため好ましくない。また、冷却風が80℃を超える場合には、紡糸時の単繊維が十分に冷却されず糸条のウースター糸斑が大きくなり、品質・品位低下に繋がるため好ましくない。かかる空冷装置は横吹き出しタイプ(ユニフロー型)でも良いし、環状型吹きだしタイプを用いても良い。また、モノフィラメントの様に高い冷却効果が求められる際には、水冷等の冷却方法を採用することができる。かかる温度履歴を経ることで人工毛髪用に好適な直線強伸度などの機械的特性を有す繊維を品位良く製造することができる。
冷却固化された未延伸糸条は、次いで給油装置で油剤が付与される。油剤は、水系であっても非水系であっても良い。平滑剤を主成分とし、界面活性剤、制電剤、極圧剤成分等を含み、ポリエステル樹脂に活性な成分を除いた油剤組成とすることが好ましい。例えば、平滑剤成分としてアルキルエーテルエステル、界面活性剤成分として高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物、極圧剤成分として有機ホスフェート塩等を鉱物油で希釈した非水系油剤であることがより好ましい。
油剤を付与された未延伸糸条は、引取ロールに捲回して引取る。引取ロールの表面速度、即ち引取速度は300m/分以上が好ましく、さらに好ましくは500m/分以上である。300m/分未満の引取速度でもポリエステル繊維は得られるが、生産効率が低いため採用し難い。引取速度に特に上限は無いものの、工業的に安定して、本発明の如きポリエステル繊維を生産する場合には引取り速度は4000m/分以下が好ましく、より好ましくは3000m/分以下である。4000m/分を超える引取速度の場合には、単繊維が十分に冷却されず糸条のウースター糸斑が大きくなり品質・品位低下に繋がるうえに、問題回避には大型の冷却装置などが必要となり好ましくない。
前記引取速度で引き取られた未延伸糸条は、通常の熱延伸が採用されれば良く、その延伸倍率は未延伸糸の複屈折、延伸温度、および多段延伸する際の延伸比率分配によって変化させ得るが、一旦巻き取った後、若しくは一旦巻き取ることなく連続して1〜5倍の延伸倍率で熱延伸するのが好ましく、より好ましくは1.5〜4.5倍、さらに好ましくは2〜4倍である。延伸倍率が1倍未満の場合は現状技術では製造困難であり、逆に延伸倍率が5倍を超える場合には、糸条の強度・弾性率が高くなり過ぎ、糸条のコシが強く人毛に近い触感、風合いが得られないという問題がある。
例えば延伸方法としては、引取りロール(1FR)と同様に、2ケのロールを1ユニットとするネルソン型ロールを給糸ロール(2FR)、第1延伸ロール(1DR)、熱セットロール(2DR)および弛緩ロール(RR)と並べて配置し、順次糸条を捲回して上記条件にて延伸熱処理を行うが、この時、延伸段数、ロール数、ロール間での延伸比率に特に決まりはない。
通常、1FRと2FR間では糸条を集束させるためにストレッチを行う。ストレッチ率は全体の延伸比率を100%とした際の1〜8%の範囲が好ましい。1FRは50〜90℃に加熱し、引取糸条を予熱して次の延伸工程に送る。
延伸は2FRと2DR間で行い、2FRの温度は70〜120℃とし、その後1DR(100〜140℃)にて全体の延伸比率を100%とした際の60〜80%の範囲で糸条の熱延伸を行うことが好ましく、2DRにて全体の延伸比率を100%とした際の12〜39%の範囲で糸条の延伸を行いながら熱処理を行なうことが好ましい。延伸された糸条は、本発明のポリエステル繊維の場合、200℃を超える高温のヘアーアイロンなどを使用した際に熱的寸法安定性を付与させるために、2DRの表面温度(熱処理温度)を200〜250℃、特に230〜250℃とするのが有効である。延伸後には2DRとRR間で弛緩熱処理を施すが、本発明のポリエステル繊維の場合は弛緩率を比較的高く、具体的には0.5〜5%程度に設定するのが良い。弛緩処理では熱延伸によって生じた歪みを取るだけでなく、非晶領域の配向を緩和させ熱収縮率を下げ、熱的寸法安定性を上げることができる。RRは非加熱ロールまたは、150℃以下に過熱したロールを用いることが好ましい。これら条件の弛緩熱処理を施すことで、本発明の如き熱収縮応力を満足し、かつ耐熱性に優れ熱的寸法安定性を有す繊維が得られやすくなる。
また、糸条を収束させ、かつ毛羽の発生を少なくして高品位のポリエステル繊維を得るために、2FRと1DR間、2DRとRR間に繊維糸条に高圧流体を吹き付けて、該繊維を構成する糸条に交絡を付与し、糸条を集束させながら延伸を行うことが好ましく、流体圧力は糸条の総繊度、単繊維繊度、延伸速度などによって変化させることができるが、0.3〜0.8MPaの範囲に設定することが好ましい。前述の通り本発明の如き、交絡度(l1)1≦l1≦5、引裂値(l2)0<l2≦1を満足するための糸条を交絡、集束させるための交絡付与装置は、周囲が壁面によって囲まれ、両端が開放された空洞からなる交絡処理部に糸条を走行させ、該交絡処理部の壁面から3つの噴射ノズルを介して流体を噴出させて前記走行糸条を処理するようにした糸条の交絡処理装置において、糸条導入部から交絡処理端部までの形状が、導入部が広く交絡処理端部が狭くなるような円錐台形状であって、かつ、交絡処理端部以降糸条の出口までが円筒形状であることが好ましく、例えば、図2〜図3に示した形状および機能などを有することが好ましい。すなわち、周囲が壁面1によって囲まれ、両端が開放された空洞からなる交絡処理部2に糸条Yを走行させ、該交絡処理部2の壁面から該交絡処理部2に複数の噴射ノズル4を介して圧縮空気3を噴出させて前記走行糸条Yを処理するようにした糸条の交絡処理装置において、糸条導入部5から交絡処理部2までの形状が、該導入部5が広く交絡処理部2が狭くなるような円錐形状であって、かつ、交絡処理部2以降糸条の出口6までが円筒形状である交絡付与装置である。このような形状であれば、糸条が気体乱流中を通過する際にバックフロー作用により局所的に糸条張力を低下させることができ、さらに交絡付与後の圧縮空気を効率良く外部に排出させることができる。該交絡付与装置を用いることで、本発明の如き交絡度(l1)1≦l1≦5、引裂値(l2)0<l2≦1を満足することができる。該交絡付与装置は1段目の延伸時に用いるのが効果的であるが、1段目に加え、2段目および3段目の延伸時に用いても良い。さらに、弛緩熱処理を施した糸条は巻き取る直前において、流体圧力0.6〜0.9MPaの範囲に設定した前記交絡処理装置を通過させることが好ましい。かかる範囲の流体圧力で交絡付与することで巻取製品からの糸条解舒性、および糸条の工程通過性が良好になり、高次加工工程におけるトラブルを回避することができる。かくして本発明のポリエステル繊維が得られる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、明細書本文および実施例に用いた特性の定義および各物性の測定、算出法は次の通りである。
[総繊度]:
JIS L1013(1999)8.3.1a)A法に基づき、中山電気産業(株)社製検尺機を用いて、表示繊度×0.45mN/dtexの初荷重を加え測定し、総繊度とした。
[単繊維繊度]:
総繊度を単繊維数で除することにより算出した。ここで、単繊維数は、JIS L1013(1999)8.4により算出した。
[固有粘度]:
オルソクロロフェノール100mLに対し試料8.0gを加え160℃・10分間加熱溶解した溶液の相対粘度ηrをオストワルド粘度計を用いて25℃で測定し、次の近似式に従い算出した。
固有粘度=0.0242ηr+0.2634
[コロイダルシリカの平均一次粒子径]:
HORIBA製粒径分析装置(LA−700)を用いて、コロイダルシリカ(日産化学工業社製)をエチレングリコールスラリー100重量%としたときに20重量%含有し十分に攪拌したエチレングリコールスラリー分散液中に存在する粒子に光を照射した際に発生する散乱光(光は粒子径により前方・側方・後方の何れかに散乱)をMie散乱理論で解析し、算出した。
[収縮応力および最大収縮応力を与えるときの温度T(max)]:
試料を東洋ボールドウィン社製SS−207D−UE歪み測定機に取り付け、東洋ボールドウィン社製TKC−IIIS加熱炉を用い昇温しながら温度−熱収縮応力曲線を描き、各温度での収縮応力および最大収縮応力を与えるときの温度を読みとった。このときの試料長は250mm、初荷重として0.045cN/dtexの荷重をかけた。測定温度範囲は25℃〜260℃とし、昇温速度を5℃/minに設定した。各試料について2回測定を行い、平均値を求めた。
[交絡度]:
JIS L1013(1999)8.15に従って、おもりの重量を0.22mN/tex×表示テックス数、フックの他端に所定荷重表示テックス数/フィラメント数×1.09mN、下降速度10〜20mm/secで下降させ、次式により算出した。
交絡度(l1)=1000(mm)/下降距離(mm)
[引裂値]:
糸条の任意の箇所においてフィラメントを概ね半数ずつになるように原糸を長手方向に割り、左右の指で半分ずつに分けられたフィラメントを引き裂きながら広げていき、一定の力でそれ以上引裂けなくなったときの引裂長(mm)を用いて次式により算出した。なお、測定は50回行い得られた平均値を使用する。
引裂値(l2)=1000(mm)/引裂長(mm)
[工程通過性]:
生産開始後ガイド、ロール類の交換を行わず、連続製糸によって得られた24時間後と240時間後のポリエステル繊維について、500m/分の速度で解舒しつつ、大広(株)製光感知式毛羽検知装置で糸条に含まれる毛羽(単糸破断)を検知し、糸条の長さ10万m当たりの毛羽数から以下の基準により評価した。
毛羽数(個/10万m)
◎ : 0〜1
○ : 1〜5
△ : 5〜50
× : 50以上
[難燃性]:
JIS L1091(2002)繊維製品の燃焼性試験方法D法(接炎試験)により、筒編み機にて作製されたサンプルの接炎回数を測定した。接炎回数が2以下を×、3回以上を○とし必要とされる難燃性を評価した。
[耐熱性]:
所定荷重として表示テックス数/フィラメント数×1.09mNかけた状態で、150℃および190℃に設定したTestrite Ltd.製Testrite Patent Thermal Shrinkage Oven Mk 3(T.S.10 AB3)内で5分間熱処理を施した後テストライトの針が指す数値(乾熱収縮率)を確認し、次式により算出した。なお、温度ごとに3回測定を行い得られた平均値を使用する。
寸法変化量(%)=190℃時の乾熱収縮率(%)−150℃時の乾熱収縮率(%)
それぞれの評価基準は以下の通りである。
◎ : 耐熱性に優れている(寸法変化量(%)<2)
○ : 耐熱性にやや優れている(2≦寸法変化量(%)<4)
△ : 耐熱性にやや劣る(4≦寸法変化量(%)<6)
× : 耐熱性に劣る(6≦寸法変化量(%))
[艶消し性と色調]:
実施例および比較例記載の紡糸法で得たポリエステル繊維をハイドロサルファイト1.5g/L、苛性ソーダ1g/L、アミラジン1g/Lを含む水溶液中(15%o.w.f)にて80℃、20分間アルカリ減量処理を行った後、Diaix Black BG−FS(三菱化学社製、分散染料)15%o.w.fに調製した染浴にて130℃60分間の条件で染色したものを直射日光の当たる室内の窓際にて、日光の入射角10〜55°での視覚による判定を実施し、艶消し性と色調を評価した。それぞれの評価基準は以下の通りである。
◎ : 人毛と極めて似た光沢・色調
○ : 人毛に似たくすんだ光沢・色調
△ : やや強い光沢・色調
× : 強い光沢・色調
[櫛通り性]:
長さ250mm、総繊度1万dtexとしたマルチフィラメントの最上部を片手で持ち、垂直に垂らした状態で櫛通しを100回行い、櫛通し性評価を実施した。それぞれの評価基準は以下の通りである。
◎ : 全く抵抗がない
○ : ほとんど抵抗がない
△ : 若干抵抗がある
× : かなり抵抗がある、または、櫛通しできない
[カールセット性]:
温度20℃、湿度65%に設定した温調室内に一昼夜放置した初期糸長400mmのフィラメントを、200℃に設定されたヘアーアイロンの一定長の区間に巻き付け10秒間保持し、その後ヘアーアイロンからフィラメントを外し、カールしたフィラメントの一端を固定して垂直に釣り下げカールの状態を目視評価した。それぞれの評価基準は以下の通りである。
○ : 形良くカールが付いている
△ : 若干カールが伸びている
× : カールが伸びて形が崩れている、または、収縮して寸法変化している
[実施例1]
高純度テレフタル酸(三井化学社製)と平均一次粒子径0.06μmのコロイダルシリカ(日産化学工業社製)を、エチレングリコールスラリー100重量%としたときに20重量%含有し十分に攪拌されたエチレングリコールスラリー、さらに反応触媒として酢酸マグネシウムおよび酸化アンチモンを全てエステル交換缶に仕込み、窒素雰囲気下で150℃から250℃に徐々に加熱し、エステル交換反応を行った。なお、得られたコロイダルシリカ含有低重合体を100重量%としたときにコロイダルシリカが6重量%となるようにエステル交換反応をコントロールした。
さらに、重合反応系を1時間30分かけて徐々に13.3Paに減圧すると共に、280℃まで昇温し、目標とする固有粘度に達するまでこの減圧度及び温度を維持し、反応により得た固有粘度0.7のチップを真空下で水分量200ppm以下になるように乾燥することでベースポリエステルチップを得た。
次に、高純度テレフタル酸(三井化学社製)とエチレングリコール(日本触媒社製)を直接エステル化して得たビスーβ−ヒトロキシエナルテレフタレートおよびその低重合体を100重量%としたときに2官能性リン化合物である2−メチル−2,5−ジオキソ−1,2−オキサホスホランを、リン原子が1.6重量%となるように調整しながら加え、250℃より、30分で285℃に昇温し、同時に反応系を常圧から30分間で66.7Paに減圧し、目標とする固有粘度に達するまでこの温度及び減圧度を維持し、反応を行うことにより得た固有粘度0.7のチップを、真空下で水分量200ppm以下になるように乾燥することでマスターポリエステルチップを得た。
上記方法で得たベースポリエステルチップとマスターポリエステルチップの重量比を50:50の割合で混合し、295℃の1軸エクストルーダー型押出機に連続的に供給し溶融した。該溶融ポリマを295℃の配管を通じて8段のスタティックミキサーで混練し、計量ポンプにて吐出量375g/分となるように調整した後、295℃の紡糸パックに導き、パック内で20ミクロンカットのフィルターを通過させた後、孔径0.6mmφ、孔長0.78mmの丸型単孔が30個開けられた口金より紡出した。
紡出された糸条は、口金下に設けた長さ300mm、雰囲気温度285℃の加熱筒を通過させた後、環状型チムニーを用いて40℃の冷風を30m/分の速度で吹き付け固化させた。次に、冷却糸条に油剤ロールにて油剤(三洋化成社製:サンオイルF)を付与し、得られた糸条を625m/分の表面速度を有する1FR(70℃)で巻き取り、連続して延伸工程に供した。
1FRを通過させた糸条を、一旦巻き取ることなく速度675m/分の2FR(100℃)、速度2000m/分の1DR(110℃)、速度2500m/分の2DR(230℃)、速度2450m/分のRR(非加熱)に連続して供することにより延伸を行った。交絡処理装置(図2、3記載)は2FR−1DR間、2DR−RR間、RR−巻取機間に設置し、それぞれ0.4、0.5、0.7MPaの設定で高圧流体を噴射することで交絡処理を施し巻取機にて巻取り、1500dtex−30フィラメントの人工毛髪用ポリエステル繊維を得た。
[実施例2]
表1の実施例2に示す配合比率となるように実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、計量ポンプにて吐出量250g/分となるように調整したこと、孔径0.6mmφ、孔長0.78mmの丸型単孔が25個開けられた口金を使用したこと、速度2500m/分の2DR(200℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で1000dtex−25フィラメントの人工毛髪用ポリエステル繊維を得た。
[実施例3]
表1の実施例3に示す配合比率となるように実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、速度2500m/分の2DR(250℃)に変更したこと以外は、実施例2と同様に行った。
[実施例4]
表1の実施例4に示す配合比率となるように実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、交絡処理装置(図2、3記載)を2FR−1DR間、1DR−2DR間、2DR−RR間、RR−巻取機間に設置し、それぞれ0.4、0.5、0.6、0.7MPaの設定で高圧流体を噴射することで交絡処理を施したこと以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例5]
表1の実施例5に示す配合比率となるように実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、孔径0.6mmφ、孔長0.78mmのメガネ型単孔が25個開けられた口金を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で1500dtex−25フィラメント(クビレ度1.7)の人工毛髪用ポリエステル繊維を得た。
[実施例6]
表1の実施例6に示す配合比率となるように実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、計量ポンプにて吐出量750g/分となるように調整したこと、孔径0.6mmφ、孔長0.78mmの丸型単孔が40個開けられた口金を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で3000dtex−40フィラメントの人工毛髪用ポリエステル繊維を得た。
実施例1〜5で得られたポリエステル繊維を用いて、繊度、単繊維繊度、収縮応力および最大収縮応力を与えるときの温度T(max)、交絡度、引裂値、工程通過性、難燃性、耐熱性、艶消し性・色調、櫛通り性、カールセット性を評価した結果を表1に示す。
[比較例1〜3]
表1の比較例1〜3に示す配合比率となるように、実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと以外は、実施例1と同様に行った。ただし、比較例3に関しては、製糸性が低下してしまいポリエステル繊維が得られなかったため、以下の評価は行わなかった。
[比較例4]
表1の比較例4に示す配合比率となるように、実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、速度2500m/分の2DR(180℃)に変更したこと以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例5]
表1の比較例5に示す配合比率となるように、実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、計量ポンプにて吐出量875g/分となるように調整したこと、孔径0.6mmφ、孔長0.78mmの丸型単孔が40個開けられた口金を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で3500dtex−40フィラメントの人工毛髪用ポリエステル繊維の製糸を試みるも冷却工程で均一な冷却性が得られず、毛羽が多発、品位悪化によりポリエステル繊維が得られなかったため以下の評価は行わなかった。
[比較例6]
表1の比較例6に示す配合比率となるように、実施例1記載の方法でベースポリエステルチップおよびマスターポリエステルチップを作成したこと、交絡処理装置(ヘバーライン社製 PS−1600パラレルジェット)を2FR−1DR間、1DR−2DR間、2DR−RR間、RR−巻取機間に設置し、それぞれ0.6、0.8、1.0、1.0MPaの設定で高圧流体を噴射することで交絡処理を施したこと以外は、実施例1と同様に行った。
Figure 2012207318
表1の結果から明らかなように、本発明のポリエステル繊維ではない比較例1および3、5は、人工毛髪とした際に艶消し性や色調に劣るといった問題や、工程通過性が低くポリエステル繊維が得られないという問題があり、比較例2では難燃性が損なわれるという問題がある。また、比較例4および6は、それぞれ、耐熱性に劣り寸法変化を起こしてしまうといった問題や、櫛通り性が極端に悪いため人工毛髪として取り扱うには問題がある。
これに対し、本発明の範囲を満足する人工毛髪用ポリエステル繊維は、難燃性を有し、耐熱特性に優れ、さらに繊維表面の状態改質によりアルカリ減量処理等の後加工を施すことで、人毛に匹敵する優れた表面光沢および風合い、櫛通り性を有しているため、人工毛髪として有効に用いることが可能である。
本発明の人工毛髪用ポリエステル繊維は、人毛に匹敵する優れた特性を有しており、特にかつら、ヘアーウィッグ、エクステンション、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの毛髪あるいは頭髪製品において寄与するところが大きい。
a 長径部長さ
b 短径部長さ
c 最狭部長さ
Y 糸条
1 壁面
2 交絡処理部
3 圧縮空気
4 噴射ノズル
5 導入部
6 糸条出口

Claims (4)

  1. 平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであるコロイダルシリカ微粒子を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.4〜5重量%含有し、2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルを含有するポリエステル繊維であって、下記特性(1)〜(5)を満足することを特徴とする人工毛髪用ポリエステル繊維。
    (1)総繊度 : 560〜3300dtex
    (2)単繊維繊度 : 15〜85dtex
    (3)乾熱100℃における収縮応力(F(100)):0.01〜0.06cN/dtex
    乾熱180℃における収縮応力(F(180)):0.03〜0.1cN/dtex
    最大収縮応力を与える温度(T(max)) :200〜240℃
    (4)交絡度(l1) :1≦l1≦5
    (5)引裂値(l2) :0<l2≦1
  2. 単繊維断面の形状がメガネ型であり、クビレ度(b/c)が1.1〜2.3であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル繊維。
  3. 2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルを含有するポリエステル繊維全体の重量を100重量%としたときにリン原子の量が0.3〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル繊維。
  4. 紡糸口金から押し出された繊維に冷却装置を用いて冷却処理を施した後、延伸熱処理する直接紡糸延伸法において、熱処理温度が200〜250℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017078245A (ja) * 2015-10-22 2017-04-27 帝人株式会社 人工毛髪用合成繊維
JP2018532895A (ja) * 2015-12-29 2018-11-08 江蘇恒力化繊股▲ふん▼有限公司 難燃性ポリエステル繊維及びその製造方法

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