JP2012199179A - リチウム二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】LiNix1-x2(x=0.6〜0.8、M=Co、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種)を含む正極活物質を用いたリチウム二次電池において、充放電サイクル特性を改善する。
【解決手段】
本発明のリチウム二次電池は、正極集電体1と、LiNix1-x2(x=0.6〜0.8、M=Co、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種)を主成分とする正極活物質粉末とバインダとを含む正極活物質層2と、正極活物質層の上に形成された、金属リチウムを含む保護層3とを有する正極100と、負極の不可逆容量以上のリチウムが予め吸蔵された負極200と、有機溶媒と電解質塩とを含む電解液とを含み、充放電を行う前の、金属リチウムに対する正極100の電位は1.5Vよりも大きく、3.0V未満である。
【選択図】図1

Description

本発明はリチウム二次電池に関する。
携帯用通信機器などの小型電子・電気機器の生産はここ数年で著しく増大し、それらに使用される二次電池の生産量も増加した。次なる商品として電気自動車や家庭用蓄電設備が注目を浴びている。このため、従来からの課題であったコストの低減、体積容量密度の向上、および充放電サイクル特性の向上に加えて、更なる低コスト、軽量化、安全性の向上などの課題もより重要になってきている。
現在市販されているリチウム二次電池は、正極活物質にリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)などのリチウム含有複合酸化物を用い、負極活物質に黒鉛を用いている。
体積容量密度を向上させるために、負極活物質材料として、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Biといったリチウム合金を形成できる金属元素を用いることが検討されている。これらの材料は、充放電時のリチウムの吸蔵・放出によって、その体積が著しく増加・減少する。このような負極活物質の体積変化に起因して負極活物質の剥離などが生じる結果、充放電サイクル特性が低下するという課題がある。これに対し、リチウムに対して不活性な元素を負極活物質に加えて、体積変化率を緩和して充放電サイクル特性を向上させることが検討されている。
また、正極活物質としては、LiCoO2の他に、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn24)などのリチウム含有複合酸化物の開発が進められている。
リチウム含有複合酸化物のうちLiNiO2などのリチウムニッケル酸化物は、LiCoO2で使用される電圧範囲で高い可逆容量(180〜200mAh/g)を有しており、より多量のリチウムを吸蔵・放出できる。このため、LiNiO2を用いると、リチウム二次電池のさらなる高容量化を実現できる。しかしながら、LiNiO2は、LiCoO2と比べて結晶構造の安定性が低いため、充放電サイクル寿命が短くなるという課題もある。これに対し、特許文献1には、リチウムニッケル酸化物の結晶構造を安定化させるために、LiNiO2のNiの一部をコバルト(Co)やアルミニウム(Al)などの他元素に置換した正極活物質を用いることが提案されている。
リチウム含有複合酸化物を正極活物質として含む正極は、通常、正極活物質粉末、バインダおよび導電性粒子などを含むペーストを集電体表面に塗布し、乾燥させることによって形成される(例えば特許文献2〜4など)。
特開平8−213015号公報 特開2010−108624号公報 特開2001−207771号公報 特開2006−66243号公報
ニッケル系リチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いると、リチウム二次電池の高容量化を図ることができるが、高いサイクル特性を実現することが難しいという問題がある。
サイクル特性が低下する要因としては、前述したように、ニッケル系のリチウム含有複合酸化物の結晶構造の安定性が低いために、正極容量が低下(すなわち正極のサイクル特性が低下)することが挙げられる。
しかしながら、本発明者が、ニッケル系リチウム含有複合酸化物を用いたリチウム二次電池において、サイクル特性が劣化する要因を詳細に検討したところ、上記の要因に加えて、負極容量の低下も、サイクル特性の劣化の要因となり得ることを見出した。
負極容量の低下の原因について、本発明者がさらに検討を重ねた結果、以下のことがわかった。リチウム含有複合酸化物を含むペーストを塗布し、乾燥させることによって正極活物質層を形成すると、得られた正極活物質層には微量の水分が不可避的に含まれる。この水分が、充放電中に電解液に放出されると、電解質塩と反応してフッ酸が生成される。生成されたフッ酸は、負極活物質を溶解させ、負極容量の低下(すなわち負極のサイクル特性の低下)を引き起こす可能性がある。
従って、ニッケル系リチウム含有複合酸化物を用いたリチウム二次電池のサイクル特性を高めるためには、正極および負極のサイクル特性をともに向上させる必要がある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ニッケル系リチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池の充放電サイクル特性を向上させることにある。
本発明のリチウム二次電池は、正極集電体と、LiNix1-x2(x=0.6〜0.8、M=Co、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種)を主成分とする正極活物質粉末とバインダとを含む正極活物質層と、前記正極活物質層の上に形成された、金属リチウムを含む保護層とを有する正極と、負極の不可逆容量以上のリチウムが予め吸蔵された負極と、有機溶媒と電解質塩とを含む電解液とを含み、充放電を行う前の、金属リチウムに対する正極の電位は1.5Vよりも大きく、3.0V未満である。
また、本発明のリチウム二次電池の製造方法は、(A)正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極集電体を用意する工程であって、前記正極活物質層は、LiNix1-x2(x=0.6〜0.8、M=Co、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種)を主成分とする正極活物質粉末を含むペーストを前記表面に塗布し、乾燥することによって形成されている、工程と、(B)前記正極活物質層の上に金属リチウムを含む保護層を形成することにより、金属リチウムに対する正極の電位が1.5Vより大きく、3.0V未満である正極を形成する工程と、(C)珪素酸化物を主成分とする前駆体層が表面に形成された負極集電体を用意し、前記前駆体層に、負極の不可逆容量以上のリチウムを予め吸蔵させることによって、負極を形成する工程と、(D)前記正極と、前記負極と、有機溶媒および電解質塩を含む電解液とを用いて電池を構成する工程とを包含する。
本発明では、ニッケル系リチウム含有複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池において、正極の対リチウム電位(正極の電位)が1.5V以上3.0V以下となるように、正極活物質層の上にリチウムを含む保護層を形成する。正極の電位が3.0V以下となるように保護層に含まれるリチウム量を制御することにより、正極から電解液中に放出される水を減少させることができる。正極からの水分を減少させると、電解液中で発生するフッ酸(HF)の量が減少するため、負極活物質層の溶解による容量低下を抑制できる。また、正極の電位が1.5V以上となるように保護層に含まれるリチウム量を制御することにより、正極活物質層にリチウムが過剰に拡散することを防止できる。この結果、正極活物質粉末の結晶構造の崩壊に起因する正極の容量低下を抑制できる。
従って、正極へのリチウム過剰供給による正極のサイクル特性の低下、および、正極から放出される水分による負極のサイクル特性の低下を抑制して、従来よりもサイクル特性に優れたリチウム二次電池を実現できる。
本発明による第1の実施形態のリチウム二次電池の模式的な断面図である。 本発明による第1の実施形態のリチウム二次電池における負極の一例を示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、それぞれ、本発明による第1の実施形態のリチウム二次電池における負極の他の例を示す模式的な断面図である。 本発明による第1の実施形態において、負極活物質層の形成に用いる蒸着装置を例示する断面図である。 本発明による第1の実施形態のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図である。 実施例および比較例の評価用セルに対する充放電サイクル試験の結果を示すグラフであり、横軸は充放電サイクル数、縦軸は容量維持率をそれぞれ表わしている。 実施例および比較例で使用した正極の対リチウム電位と、実施例および比較例の評価用セルの充放電サイクル試験における50%容量維持サイクル数との関係を示すグラフである。 実施例および比較例で使用した正極の保護層の厚さと、実施例および比較例の評価用セルの充放電サイクル試験における50%容量維持サイクル数との関係を示すグラフである。
上述したように、本発明者は、正極活物質層から水分が電解液に放出されることによって、負極活物質が溶解し、サイクル特性を低下させることを見出した。そこで、正極活物質層からの水分の放出を抑制できる電池構造について検討した。この結果、正極活物質層の上に、金属リチウムを含む層(以下、「保護層」と称する)を形成することによって、正極活物質層からの水分の放出を抑制できるという知見を得た。
その一方で、保護層に含まれる金属リチウムの量が多くなると、正極活物質に過剰にリチウムが供給されて結晶構造の崩壊が生じ、正極容量が低下し、サイクル特性の低下を引き起こす要因となることもわかった。
本発明者は、上記の知見に基づいて、正極活物質層の上に保護層を形成し、かつ、保護層に含まれるリチウム量を制御することによって、正極および負極の両方のサイクル特性の低下を抑制できることを見出し、本願発明に至った。
(実施形態1)
以下、図面を参照しながら、本発明によるリチウム二次電池の第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のリチウム二次電池の模式的な断面図である。リチウムイオン二次電池300は、正極100と、負極200と、負極100および正極200の間に設けられたセパレータ4とを備える。
正極100は、正極集電体1と、正極集電体1の上に形成された正極活物質層2と、正極活物質層2の上に形成された金属リチウムを含む保護層3とを有している。負極200は、負極集電体5と、負極集電体5の上に形成された負極活物質層6とを有している。正極100と負極200とは、保護層3で覆われた正極活物質層2と負極活物質層6とが対向するように配置されている。セパレータ4は、保護層3と負極活物質層6との間に配置されている。正極100とセパレータ4との間、セパレータ4と負極200との間は、特に図示しないが、有機溶媒と電解質塩とを含む電解液で満たされている。
図1では、正極100とセパレータ4とは離れているが、これらは接触していてもよい。同様に、セパレータ4と負極200とは接触していてもよい。
また、特に図示しないが、正極集電体1および負極集電体5には、それぞれ、外部へ電力を取り出すためのリード線が接続されている。リード線は、各集電体の側面側、あるいは各集電体表面のうち正極活物質層2または負極活物質層6が形成されていない部分に配置されている。
正極活物質層2は、LiNix1-x2(M=Co、Mn、Alの少なくとも一種)を主成分とする正極活物質粉末を含むペーストを正極集電体1の表面に塗布し、乾燥させることによって形成されている。このような正極活物質層2は、少なくとも、上記の正極活物質粉末とバインダとを含んでいる。また、導電材粉末も含んでいることが好ましい。さらに、正極活物質層2を正極集電体1に形成するまでの工程において混入する水分や、水分と正極活物質粉末との反応生成物である水酸化リチウム、炭酸リチウム、水酸化ニッケル等が微量ながら不可避に含まれる。
また、負極活物質層6には、負極の不可逆容量以上のリチウムが予め吸蔵されている。なお、リチウムを「予め吸蔵させる」とは、リチウム二次電池の製造工程において、負極と正極とをセパレータを介して対向させて電極群を形成する前に、負極(負極活物質)または正極(正極活物質)にリチウムを吸蔵させておくことを意味する。このようにすることによって、セルの初期容量を増加させることができる。
本実施形態では、保護層3で覆われた正極のリチウム金属を基準とする電位V(以下、「正極の電位V」と略する。)を3.0V以下とする。正極の電位Vは、例えば、保護層3に含まれるリチウム量(保護層3の厚さなど)によって制御される。保護層3が薄すぎて正極の電位Vが3.0Vを超えると、正極から電解液に放出される水分を十分に低減できない。この結果、電解液中で発生するフッ酸HFによって負極活物質層6が溶解し、その容量が低下するおそれがある。
一方、正極の電位Vを1.5Vより大きくする。保護層3が厚すぎて正極の電位Vが1.5V未満となると、正極へリチウムが過剰に供給され、正極活物質粉末の結晶構造の崩壊を引き起こすおそれがある。
従って、本実施形態によると、正極へのリチウムの過剰供給による正極のサイクル特性の低下、および、正極から放出される水分による負極のサイクル特性の低下の両方を抑制できるので、従来よりも電池のサイクル特性を向上できる。
正極活物質層2の厚さT1は、好ましくは10μm以上100μm以下(10μm≦T1≦100μm)である。10μm未満では電池容量密度が小さく、また100μmより大きいと、極板抵抗やイオンの拡散長が大きくなり、充放電電流を大きく設定できない。
保護層3は、金属リチウムを含む層であればよいが、好ましくは金属リチウム層である。保護層3は多孔質ではないことが好ましい。
また、保護層3として、金属リチウムを主成分とする層(リチウム層)を形成する場合、保護層3(リチウム層)の厚さT2は0μmより大きく、1μm未満であることが好ましい(0μm<T2<1μm)。保護層3が形成されていない(すなわち厚さT2が0μm)場合には、正極100から電解液中に放出される水分を減少させることができないので、本発明の効果が発揮されない。一方、厚さT2が1μm以上では、過剰のリチウムが保護層3の近傍にある正極活物質層2に拡散するおそれがある。この結果、正極活物質層2のうち過剰のリチウムが拡散された部分では、正極活物質粉末の結晶構造が破壊され、正極活物質層2が本来有する充放電の機能を低下させる場合がある。保護層3の厚さT2は、より好ましくは0.2μm以上0.9μm以下(0.2μm≦T2≦0.9μm以下)である。
保護層3の厚さT2が上記範囲内(0μm<T2<1μm)であれば、保護層3の単位面積当たりのリチウムの担持量は例えば10μg/cm2以上47μg/cm2となる。また、保護層3の正極活物質当たりのリチウムの担持量は、例えば0.07wt%以上0.34wt%以下となる。
なお、本願発明とは異なる目的で、正極活物質層にリチウムを蒸着させる技術が開示されている。例えば特許第3291750号明細書、特開2002−231221号公報、特開2004−87251号公報などには、正極に不可逆容量分のリチウムを補填する目的で、正極表面にリチウムを蒸着させることが開示されている。本発明者が検討したところ、不可逆容量分の金属リチウムを補填しようとすると、正極表面のうち金属リチウムに接する部分には過剰な量のリチウムが供給されることになる。具体的には、例えば特許第3291750号明細書では、平均粒径が50〜300μmの金属リチウム粒子を正極表面に付着させている。また、特開2002−231221号公報では、正極表面に、20μmの厚さでリチウムを蒸着している。さらに、特開2004−87251号公報では、金属リチウムを1〜3μmの厚さで正極表面に蒸着させている。このように、不可逆容量分のリチウムを補填しようとすると、本実施形態における保護層3に含まれるリチウムよりも極めて多くのリチウム量を正極表面に付着させる必要があり(リチウム層の厚さ:例えば2μm以上)、正極の電位Vは1.5Vを大幅に下回る。従って、上記の特許文献に開示されたような技術を、ニッケル系リチウム含有複合酸化物を含む正極活物質層に適用すると、正極活物質の結晶構造の崩壊が生じ、正極のサイクル特性が低下すると考えられる。
なお、本願発明では、負極に予め不可逆容量以上のリチウムが吸蔵されている。したがって、正極に不可逆容量分のリチウムを補填する必要も無い。
セパレータ4としては、リチウム二次電池に一般的に使用されるポリプロピレンを使用できる。
負極200は、負極集電体5と、負極集電体5の上に形成された負極活物質層6とを備えている。負極活物質層6は、黒鉛を主成分とする層であってもよいが、ケイ素酸化物を主成分とする層であることが好ましい。ケイ素酸化物は、黒鉛よりも、正極から放出された水分と電解質塩との反応により生じるフッ酸に溶解しやすい。このため、本実施形態をケイ素酸化物を負極活物質として用いた電池に適用すると、保護層3の形成による効果(正極からの水分の放出量を低減し、負極活物質層6の溶解を抑制する効果)がより顕著に得られる。
ケイ素酸化物を主成分とする負極活物質層6は、例えばリチウム珪素酸化物LixSiOyで構成される。この負極活物質層6は、まず、負極集電体5の表面に、前駆体として珪素酸化物(SiOy)からなる層を形成し、次いで、この層に所定量xのリチウムを予め吸蔵させることによって形成され得る。
珪素酸化物の酸化度yは、0.1〜1.4に設定されることが好ましい。y<0.1であれば、充放電による珪素酸化物の体積変化が大きいために、負極活物質層6の形状が維持できず、負極集電体5から脱落して負極容量を低下させるおそれがある。一方、y>1.4であれば、負極の体積容量密度が小さくなるので、珪素を使用するメリットがなくなる。
酸化度yは、負極活物質層6の不可逆容量に強く影響することから、不可逆容量を相殺するために必要なリチウム量xも必然的に酸化度yと強い関連性がある。
従って、予め吸蔵させるリチウムの量xは、酸化度yに応じて設定されることが好ましい。リチウム量xは、正極と負極を組み合わせて作製した電池の1回目の充電容量とそれに続く放電容量の差に相当する電気量を元に調整するパラメータである。xの値が小さすぎると、不可逆容量がキャンセルできず電池容量が小さくなる。また、負極に対しては、充電深度が深くなり、負極上への金属リチウムの析出が生じやすくなるなど、サイクル劣化や内部短絡の原因となる。
負極集電体5は、表面に凹凸を有していることが好ましい。図2は、本実施形態における負極200の一例を示す断面図である。図示する例では、表面の凹凸によって、負極活物質層6に対するアンカー効果が発揮されて、負極活物質層6と負極集電体5との接着力を高めることができる。
また、負極集電体5の表面に、斜め蒸着によって負極活物質層6を形成する場合には、負極集電体5が表面に凹凸を有していると、負極活物質層6に、負極活物質の膨張応力を緩和するための空間を形成することが可能になる。以下、図面を参照しながら説明する。
図3(a)および(b)は、それぞれ、本実施形態における負極200の他の例を示す断面図である。図3(a)に示す例では、表面凹凸を有する負極集電体5に対し、斜め蒸着を施すことによって負極活物質層6を形成している。負極活物質層6は、リチウム珪素酸化物を主成分として含んでいる。図示するように、負極活物質層6は、互いに間隔を空けて配置された複数の負極活物質体60で構成されている。隣接する負極活物質体60の間に形成される空間は、負極活物質体60が充電によって膨張する際の予備空間となる。このため、負極活物質体60同士が衝突・破壊することを抑制できる。
より好ましくは、負極集電体5は、表面に規則的に配列された凸部を有する。図3(b)に示す例では、負極集電体5の表面には、規則的に配列された凸部51が形成されている。このような負極集電体5を用いると、斜め蒸着において、負極活物質は凸部51上に選択的に堆積される。従って、各負極活物質体60を、対応する凸部51上に配置することができる。凸部51の形状、大きさ、配列ピッチなどを適宜調整することにより、負極活物質体60の大きさ、および、隣接する負極活物質体60の間の間隔を制御できる。この結果、隣接する負極活物質体60の間に膨張のための空間をより確実に確保でき、負極活物質体60と集電体5との界面にかかる膨張応力を効果的に緩和できる。このような凸部51の形成方法、および、凸部51の高さ・配列ピッチの好ましい範囲については後述する。
<正極100の製造方法>
次に、本実施形態の正極100の製造方法の一例を説明する。
組成式LiNi0.80Co0.15Al0.052の正極活物質粉末100gに、導電材としてのアセチレンブラック2.5g、バインダとしてのポリビニリデンフロライド1.7g、ペースト溶剤(有機溶媒)としてのnメチル2ピロリドン適量を加えてペースト状にする。これを厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布し、圧延、乾燥する。これにより、正極集電体1の表面に正極活物質層2が形成される。
さらに、抵抗加熱式真空蒸着装置を用いて、正極活物質層2の表面に、所定量の金属リチウムを蒸着することにより、正極活物質層2を覆う保護層3を形成する。このようにして、正極100を得る。
得られた正極100は、大気中の水分や二酸化炭素を吸収して、単に保水するだけでなく、正極活物質粉末の一部を分解して水酸化リチウム、炭酸リチウム、水酸化ニッケル等を生成しやすい。このため、最終的には正極活物質粉末重量比で1000〜3000ppmの水分を含有する。
保護層3は、上述したように、正極活物質層2内に含まれる水分が、電池構成後に電解液中に拡散することを抑制する機能を有する。
なお、保護層3は、金属リチウムの薄膜であることから、大気中の極微量の水分と反応しやすい。従って、従来よりもさらに低い露点温度での保管が好ましい。
保護層3は、正極活物質層2の表面と接していることが好ましい。これにより、正極活物質層2内の正極活物質粉末に、保護層3内のリチウムが拡散するので、正極にリチウムを補填できる。また、保護層3の厚さは、正極100の電位V(対金属リチウム)が1.5V<V<3.0Vとなるように設定されているので、正極から電解液への水分の放出量を抑えつつ、リチウムの過剰供給による正極活物質粉末の結晶構造の破壊を抑制できる。正極100の電位Vの範囲は、より好ましくは1.6V≦V≦2.2Vである。保護層3の厚さT2の範囲は、好ましくは0μm<T2<1μm、より好ましくは0.2≦T2≦0.9μmである。
正極活物質層2に用いる導電材、バインダ(結着剤)および有機溶剤は、特に限定されず、リチウム二次電池の分野で常用されるものを適宜使用できる。導電材として、たとえば天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類などが挙げられる。これらの導電剤のうち一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、結着剤として、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらの結着剤のうち1種を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<負極200の製造方法>
次に、図3(b)に示す負極200の製造方法を説明する。
まず、金属箔の表面に凹凸パターンを形成することにより、表面に複数の凸部51を有するシート状の負極集電体5を作製する。
金属箔として、例えば表面が粗化された銅箔を用いることができる。銅箔は、主成分としての銅の他にジルコニウム、チタンなどのリチウムと反応しない元素や、酸素、セレン、テルル等の混入不可避元素が含まれていてもよい。ここでは、例えば厚さが35μm、表面粗さRaが2.0μmの銅箔(古河サーキットフォイル(株)製)を用いる。なお、「表面粗さRa」とは、日本工業規格(JISB 0601―1994)に定められた「算術平均粗さRa」を指し、例えば表面粗さ計や共焦点式レーザ顕微鏡などを用いて測定できる。
負極集電体5は、金属箔の表面に、切削法を用いて所定のパターンの溝を設けることによって作製してもよいし、メッキ法または転写法により、金属箔の表面に複数の凸部51を形成することによって作製してもよい。凸部51の形状、高さ、配列ピッチなどの好適な範囲については後述する。なお、負極集電体5として、市販されている表面粗さの大きい金属箔(凹凸箔)を用いることもできる。
次いで、蒸着によって、リチウム珪素酸化物からなる負極活物質層6を負極集電体5の表面に形成する。ここでは、珪素酸化物からなる前駆体層を負極集電体5の上に形成した後、前駆体層にリチウムを蒸着して珪素酸化物にリチウムを反応させる。これにより、リチウム珪素酸化物からなる負極活物質層6が得られる。
図4は、負極活物質層6の前駆体層を形成する際に用いる蒸着装置の構成を例示する模式的な断面図である。
蒸着装置300は、チャンバー30と、チャンバー30を排気するための排気ポンプ(図示せず)とを備えている。
チャンバー30の内部には、負極集電体5を固定するための固定台40と、固定台40に固定された負極集電体5の表面に珪素を供給するための珪素蒸発源31と、固定台40に設置された負極集電体5を加熱するための集電体加熱用ヒータ35とが設置されている。
珪素蒸発源31は、例えば電子ビーム銃加熱式の銅ルツボである。電子ビーム銃は、加速電圧5〜10kV、照射電流0.3〜1A程度の出力を有していれば良い。電子ビーム銃として、例えば、日本電子株式会社製JEBG−203UB型電子銃、JEBG−303UA型電子銃等が使用できる。
なお、本明細書では、蒸発源とは、蒸着原料を収容するルツボなどの容器と、蒸着原料を蒸発させるための加熱装置とを含む。蒸着原料および容器は適宜着脱可能に構成されていてもよい。蒸着を行う際には、ルツボ内に収容された蒸着原料(ここでは珪素)が上記加熱装置によって加熱されて、その上面(蒸発面)から蒸発し、負極集電体5の表面に供給される。
固定台40と、珪素蒸発源31の蒸発面との間には、シャッター38が配置されている。また、使用する珪素蒸発源31と、シャッター38との間には、蒸発速度を制御するためのレートモニタ36が配置されている。珪素の蒸発速度を制御する際にレートモニタ36を用いる。
図示しないが、必要に応じて、チャンバー30に酸素を導入する酸素導入管およびアルゴンを導入するアルゴン導入管が設けられており、これを用いてチャンバー30にアルゴンを供給することによりチャンバー30のガス圧を調整してもよい。
例えば蒸発源31から蒸発する珪素量は、チャンバー30のガス圧によって変化するので、チャンバー30に所定量のアルゴンを導入して、チャンバー30のガス圧を1×10-4Pa〜1×10-2Paの範囲で一定に保ってもよい。
蒸着装置300を用いて、前駆体層を形成する方法を具体的に説明する。
まず、図4に示すように、珪素蒸発源31を固定台40の下方に配置する。固定台40は、水平面45に対して所定の角度θ(0°<θ<90°、好ましくは20°以上85°以下)だけ傾斜させる。なお、固定台40の水平面45からの傾斜方向によって、負極集電体5の法線方向Nに対する珪素の入射方向E(すなわち蒸着方向)を調整することができる。傾斜角度θの絶対値は、固定台40に設置された負極集電体5に対する珪素の入射方向Eと負極集電体5の法線方向Nとのなす角度(珪素の入射角度)αと等しくなる。従って、固定台40の傾斜角度θを調整することにより、負極集電体5の表面に形成する前駆体層(図示せず)の成長方向を制御できる。
次いで、シャッター38を閉じた状態で、珪素蒸発源31から珪素を蒸発させる。レートモニタ36によって負極集電体5に入射する珪素の成膜速度をモニタリングし、電子ビームの電流を調整することでそれぞれ所定の値となったことを確認した後、シャッター38を開放し、負極集電体5の表面に珪素の蒸気を入射させる。
珪素の蒸気は、負極集電体5の表面の法線方向Nに対して上述した角度αだけ傾斜した方向から、負極集電体5の表面に入射する。
このとき、蒸発させた珪素原子は、負極集電体5の法線方向Nから傾斜した方向Eから負極集電体5の表面に入射するために、負極集電体5の表面における凸部の上に蒸着しやすく、従って、珪素酸化物は凸部の上で柱状に成長する。このため、負極集電体5の表面には、凸部や柱状に成長していく珪素酸化物の影となり、珪素原子が入射せずに珪素酸化物が蒸着しない領域が形成される(シャドウイング効果)。したがって、負極集電体5の表面に、間隔を空けて複数の負極活物質体60を形成することができる。このようにして、前駆体層が得られる。
次いで、前駆体層にリチウムを予め吸蔵させる。
負極にリチウムを吸蔵させる方法としては、電気化学的手法や乾式手法などがある。電気化学的手法では、負極にリチウム金属を貼り付け、電解液を介して局部電池を形成して充電させたり、対極からリチウムを充電させたりすることによって、リチウムを負極に吸蔵させる。乾式手法では、例えば、負極活物質上にリチウム金属を直接接触させ、固相内拡散のみで負極活物質に吸蔵させる。リチウム金属を直接接触させる方法としては、真空蒸着など気相法による負極活物質上への堆積、あるいは別の基板上にリチウム金属を堆積させたものと負極活物質とを密着させて必要に応じて熱をかける方法(転写法)がある。
ここでは、電気化学的手法、あるいは真空蒸着法などの気相法を用いて、不可逆容量以上のリチウムを、前駆体層に予め吸蔵させる。このようにして、本実施形態の負極200が得られる。
負極集電体5に形成される凸部51の形状および大きさを説明する。負極集電体5の表面に複数の凸部51を形成する場合、各凸部51は例えば上面が菱形の四角柱であってもよい。あるいは、負極集電体5の法線方向Nから見た凸部51の正投影像は、菱形、正方形、長方形、台形および平行四辺形などの多角形、円形、楕円形などであってもよい。負極集電体5の法線方向Nに平行な断面の形状は正方形、長方形、多角形、半円形、およびこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、負極集電体5の表面に対して垂直な断面における凸部51の形状は、例えば多角形、半円形、弓形などであってもよい。なお、負極集電体5に形成された凹凸パターンの断面が曲線で構成された形状を有する場合など、凸部51と凸部以外の部分(溝、凹部などともいう)との境界が明確でないときには、凹凸パターンを有する表面全体の平均高さ以上の部分を「凸部51」とし、平均高さ未満の部分を「溝」または「凹部」する。
凸部51の高さは、斜め蒸着の際にシャドウイング効果によって空隙を確保するためには3μm以上であることが好ましい。一方、凸部51の強度を確保するためには20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下である。凸部51の上面の幅(最大幅)は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、これにより、負極活物質体60の膨張応力による負極100の変形をより効果的に抑制できる。より好ましくは20μm以下である。一方、凸部51の上面の幅が小さすぎると、負極活物質体60と集電体1との接触面積を十分に確保できない可能性があるため、凸部51の上面の幅は1μm以上であることが好ましい。
さらに、凸部51が、集電体1の表面に垂直な側面を有する柱状体である場合には、隣接する凸部51の間の距離、すなわち溝の幅は、好ましくは凸部51の幅の30%以上、より好ましくは50%以上である。これにより、負極活物質体60の間に十分な空隙を確保して膨張応力を大幅に緩和できる。一方、隣接する凸部51の間の距離が大きすぎると、容量を確保するために負極活物質体60の高さが増大してしまうため、距離は凸部51の幅の250%以下であることが好ましく、より好ましくは200%以下である。なお、凸部51の上面の幅および隣接する凸部51の距離は、それぞれ、負極集電体5の表面に垂直で、かつ、負極活物質体60の成長方向を含む断面における幅および距離を指すものとする。
各凸部51の上面は平坦であってもよいが、凹凸を有することが好ましく、その表面粗さRaは0.3μm以上5.0μm以下であることが好ましい。凸部51の上面が、表面粗さRaが0.3μm以上の凹凸を有していれば、凸部51の上に負極活物質体60が成長しやすく、その結果、負極活物質体60の間に十分な空隙を確実に形成できる。一方、凸部51の表面粗さRaが大きすぎると集電体5が厚くなってしまうため、表面粗さRaは5.0μm以下であることが好ましい。さらに、集電体5の表面粗さRaが上記範囲内(0.3μm以上5.0μm以下)であれば、集電体5と負極活物質体60との付着力を十分に確保できるので、負極活物質体60の剥離を防止できる。
<リチウム二次電池の構成>
次に、図面を参照しながら、正極100および負極200を用いたサンプルセルの構成の一例を説明する。
図5は、コイン型のリチウムイオン二次電池を例示する模式的な断面図である。リチウムイオン二次電池600は、正極62と、負極64と、負極64および正極62の間に設けられたセパレータ63とを有する電極群とを有している。電極群にはリチウムイオン伝導性を有する電解質(図示せず)が含浸されている。正極62として、図1を参照しながら前述した正極100を用い、負極64として、図2または図3を参照しながら前述した負極200を用いることができる。正極62は、正極端子を兼ねた正極ケース61と電気的に接続されており、負極64は、負極端子を兼ねた封口板66と電気的に接続されている。また、正極ケース61の開口端部は、封口板66の周縁部に設けられたガスケット65にかしめられ、これによって電池全体が密閉されている。
なお、図5ではコイン型電池の一例を示したが、本発明のリチウム二次電池の形状は、コイン型に限定されず、ボタン型、シート型、シリンダー型、扁平型、角型などであってもよい。正極の集電体の材料としては、Al、Al合金、Tiなどを用いることができる。正極活物質層および負極活物質層は、活物質材料のみから構成されていてもよいし、活物質材料と結着剤と導電剤とを含む合剤を含んでいてもよい。さらに、負極活物質層を複数の柱状の負極活物質体から構成することもできる。リチウムイオン伝導性の電解質には、様々なリチウムイオン伝導性の固体電解質や非水電解液が用いられる。非水電解液には、非水溶媒にリチウム塩を溶解したものが好ましく用いられる。非水電解液の組成は特に限定されない。さらに、セパレータ63の材料も特に限定されず、様々な形態のリチウム二次電池に用いられている材料を適用できる。
(実施例および比較例)
以下、保護層の厚さを異ならせて実施例および比較例の正極を作製し、これらの正極の電位V、およびこれらの正極を用いた電池のサイクル特性を評価した。
実施例1、実施例2および実施例3では、それぞれ、厚さが0.2μm、0.4μmおよび0.9μmの保護層を有する正極を作製した。また、比較例1では、保護層を有しない正極を作製し、比較例2では、厚さが1μmの保護層を有する正極を作製した。
(1)正極の対リチウム電位測定
<正極の作製>
まず、実施例および比較例の正極の作製方法を説明する。
組成式LiNi0.80Co0.15Al0.052の正極活物質粉末100gに導電材としてのアセチレンブラック2.5g、バインダとしてのポリビニリデンフロライド1.7g、ペースト溶剤としてのnメチル2ピロリドン適量を良く混合して得られるペーストを、厚さ15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥することにより、集電体1に厚さ60μmの正極活物質層2を形成した。
さらに、抵抗加熱式蒸着装置を用いて、厚さが0.2μm、0.4μm、0.9μmの金属リチウムからなる保護層3を正極活物質層2の上に形成した。得られた正極を、それぞれ、実施例1〜3の正極とした。
また、正極活物質層2の上に金属リチウムを蒸着しなかった正極を比較例1の正極とした。さらに、厚さが1.0μmの金属リチウムからなる保護層3を正極活物質層2の上に形成した正極を、比較例2の正極とした。
<正極電位の測定方法および結果>
上記方法で作製した実施例1〜3および比較例1、2の正極の金属リチウムに対する電位を計測した。
ここでは、実施例1〜3および比較例1、2の正極を用いて、電位測定用セルとして、図5に示すコイン型電池を作製した。コイン型電池では、実施例および比較例の正極を、電位測定用セルの正極(以下、「セル用正極」とする)62とし、金属リチウムを電位測定用セルの負極(以下、「セル用負極」とする)64とした。
まず、実施例1の正極を、直径が略16.4mmの円形に切り出して、セル用正極62とした。また、直径が略16.9mmの円形で切り出した金属リチウムをセル用負極64とした。電解液としては、1モルのLiPF6を、30体積%のエチレンカーボネートと50体積%のメチルエチルカーボネートと20体積%のジエチルカーボネートとの混合溶媒に溶解させて1リットルに調整した非水電解液を用いた。セパレータ63を挟んでセル用正極62とセル用負極64を相対させることにより、図5に示す電池600を作製し、電位測定用セルとした。同様にして、実施例2、3および比較例1、2の正極についても、電位測定用セルを作製した。
次いで、電位測定用セルの開回路正負極間電圧を計測した。表1は、各実施例および比較例の正極の対リチウム電位(充放電サイクル前の正極の対リチウム電位)を計測した結果の一覧表である。
Figure 2012199179
表1に示す結果から、保護層の厚さ、すなわち正極活物質層上に蒸着させるリチウム量が多いほど、正極の電位Vが低くなることがわかった。また、実施例1〜3の正極の電位Vは、1.5V〜3.0Vの範囲内、比較例1、比較例2の正極の電位Vはその範囲外であった。
(2)サイクル特性の評価
上記の実施例および比較例の正極を用いて、サイクル特性を評価するための評価用セルを作製した。評価用セルでは、負極として以下に説明する参照負極を用いた。
<参照負極の作製>
負極集電体5として、芯材厚さが35μmの電解銅箔(古河サーキットフォイル(株)製、Ra:2.0μm)を用いた。この電解銅箔の上に、図4に示す蒸着装置300を用いて、負極活物質層6を形成した。
再び図4を参照する。まず、蒸着装置300の珪素蒸発源31には、純度が99.9999%の珪素50gを収容した。また、固定台40に負極集電体5を設置し、負極集電体5の法線方向Nに対して70°の角度で珪素が負極集電体5の表面に入射するように(α=70°)、固定台の傾斜角度θを調整した(θ=70°)。この後、チャンバー30の蓋を閉めた。
チャンバー30の内部を7×10-5Paまで減圧した後、マスフローコントローラを通じて酸素を導入し、チャンバー30内の圧力が4.5×10-3Paとなるように調整した。また、集電体加熱用ヒータ35を用いて負極集電体5が300℃となるように加熱した。
次に、珪素蒸発源31に対して電子を照射して珪素を加熱・蒸発させ、レートモニタ36で珪素の蒸発速度を調節することにより、SiOx(x=0.2)となる前駆体層を形成した。
さらに、得られた前駆体層に対して、抵抗加熱式蒸着装置を用いて、厚さが8μmの金属リチウムを蒸着した。これにより、負極集電体5の上にリチウム珪素酸化物Li0.16SiO0.2からなる負極活物質層6を得た。このようにして作製された負極を参照負極とした。
<評価用セルの作製方法>
上記(1)で説明した方法で作製した正極を用いて、実施例1〜3および比較例1、2の評価用セルを作製した。
ここでは、評価用セルとして、図5に示すコイン型電池を作製した。評価用セルでは、各実施例および比較例の正極を、評価用セルの正極(以下、「セル用正極」とする)62とし、上記の参照負極を評価用セルの負極(以下、「セル用負極」とする)64とした。
まず、実施例1の正極を、直径が略16.4mmの円形に切り出して、セル用正極62とした。また、参照負極を直径16.9mmに打ち抜いて、セル用負極64とした。電解液として、1モルのLiPF6を、30体積%のエチレンカーボネートと50体積%のメチルエチルカーボネートと20体積%のジエチルカーボネートとの混合溶媒に溶解させて1リットルに調整した非水電解液を用いた。セパレータ63を挟んでセル用正極62とセル用負極64を相対させることにより、図5に示す電池600を作製し、評価用セルとした。同様にして、実施例2、3および比較例1、2の正極を用いて評価用セルをそれぞれ作製した。
<評価用セルの評価方法および結果>
実施例1〜3および比較例1、2の評価用セルに対して、下記の条件で充放電サイクル試験を行い、サイクル数と容量維持率の関係を測定した。「容量維持率」とは、充放電サイクル試験において観測される1サイクル目の実測充電容量を基準容量として、基準容量に対する各サイクルにおける放電容量の割合をいう。
充放電サイクル試験では、表2に示す充放電をこの順で実施して1サイクルとし、これを繰り返した。
Figure 2012199179
また、各サイクルにおいて、充電あるいは放電で終止電圧に達するまでの電気量をそれぞれ計測し、これらの電気量を合算した値をそのサイクルにおける実測充電容量あるいは実測放電容量とした。
各評価用セルのサイクル数と容量維持率の関係を図6に示す。この結果から、実施例1〜3及び比較例1では、容量維持率は、300サイクル後も初期容量の50%以上を維持するのに対し、比較例2では、容量維持率は36サイクル目で50%を下回ることがわかった。
図7は、各評価用セルの50%容量維持サイクル数と、各評価用セルに用いた正極の電位(対リチウム電位)Vとの関係を示すグラフである。この結果から、正極の電位Vが1.5V<V<3Vの範囲であれば(実施例1〜3)、50%容量維持サイクル数が400回近い値となることがわかった。これに対し、正極の電位Vが1.5V以下になると(比較例2)、50%容量維持サイクル数が急激に低下することがわかった。また、正極の電位Vが3V以上になると(比較例1)、50%容量維持サイクル数が300回を下回ることがわかった。
図8は、各評価用セルの50%容量維持サイクル数と、各評価用セルに用いた正極の保護層の厚さとの関係を示すグラフである。この結果から、保護層の厚さT2が0μm<T2<1μmの範囲であれば(実施例1〜3)、50%容量維持サイクル数が400回近い値となるが、保護層の厚さT2が上記範囲を外れると(比較例1、2)、50%容量維持サイクル数が大幅に低下することがわかった。
次いで、比較例1および比較例2の評価用セルの容量低下の原因を調べた。まず、サイクル試験を終えた評価用セルを分解して、正極と負極の容量を調べたところ、比較例1では、正極の容量は設計容量の90%を維持していたが、負極の容量は設計容量の50%に減少していた。一方、比較例2では、正極の容量が設計容量の50%に減少し、負極の容量は設計容量の75%を維持していた。
従って、比較例1の評価用セルの容量低下は、主に負極の容量低下によるものである。本発明者が考察したところ、比較例1における負極の容量低下機構は次のように考えられる。保護層である金属リチウムが正極活物質層に装荷されていないので、正極活物質層に含まれる水分が電解液中に放出されて、電解液中のLiPF6と反応する。この反応で生成されたフッ酸によって、負極活物質層に含まれるリチウム珪素酸化物が溶解する。この結果、負極の機械的強度が低下し、負極の形状を維持できなくなるものと考えられる。なお、ここでは負極活物質としてケイ素酸化物を用いているが、黒鉛系の活物質材料を用いた場合でも、ケイ素酸化物ほどではないものの、フッ酸による溶解による負極容量の低下が生じ得る。
一方、比較例2の評価用セルの容量低下は、主に正極の容量低下によるものである。同様に容量低下機構を考察したところ、比較例2における正極の容量低下機構は次のように考えられる。正極活物質層に、保護層として過剰な量のリチウムを装荷したことにより、正極活物質層に多量のリチウムが拡散する。このリチウムが、正極活物質層の重要な構成要素である正極活物質粉末の結晶構造を崩壊させ、この結果、正極容量が急速に低下したと考えられる。
これらの結果から、正極活物質層の上に、所定量の金属リチウムを装荷することにより、負極および正極の容量低下を抑制でき、高い充放電サイクル特性を実現できることがわかった。また、保護層として装荷する金属リチウムの量は、充放電サイクルを行う前の正極の対リチウム電位Vと相関関係があることが確認された。具体的には、保護層として装荷する金属リチウムの量を、充放電サイクルを行う前の正極の対リチウム電位Vが1.5Vより大きく3V未満となるように設定すると、上記効果が得られることがわかった。
本発明のリチウム二次電池は、高い充放電サイクル特性が要求されるリチウム二次電池に適用すると有利である。また、リチウムイオン移動型の電気化学キャパシタの極板としても有用である。
本発明を適用可能なリチウム二次電池の形状は、特に限定されず、例えばコイン型、ボタン型、シート型、円筒型、偏平型、角型などの何れの形状であってもよい。また、正極、負極およびセパレータからなる極板群の形態は、捲回型でも積層型でもよい。さらに、電池の大きさは、小型携帯機器などに用いる小型であっても、電気自動車等に用いる大型であってもよい。本発明によるリチウム二次電池は、例えば携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源に用いることができるが、用途は特に限定されない。
1 正極集電体
2 正極活物質層
3 保護層
100 正極
4 セパレータ
5 負極集電体
6 負極活物質層
200 負極
51 凸部
60 負極活物質体
300 蒸着装置
30 チャンバー
31 珪素蒸発源
35 負極集電体加熱用ヒータ
36 珪素蒸発速度計測用レートモニタ
38 シャッター
40 固定台
45 水平面
61 正極ケース
62 正極
63 セパレータ
64 負極
65 ガスケット
66 封口板
600 コイン型リチウムイオン二次電池

Claims (7)

  1. 正極集電体と、LiNix1-x2(x=0.6〜0.8、M=Co、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種)を主成分とする正極活物質粉末とバインダとを含む正極活物質層と、前記正極活物質層の上に形成された、金属リチウムを含む保護層とを有する正極と、
    負極の不可逆容量以上のリチウムが予め吸蔵された負極と、
    有機溶媒と電解質塩とを含む電解液と
    を含み、
    充放電を行う前の、金属リチウムに対する正極の電位は1.5Vよりも大きく、3.0V未満であるリチウム二次電池。
  2. 前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の表面に形成された珪素酸化物を主成分とする負極活物質層とを有する請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 金属リチウムに対する前記正極の電位は1.69V以上2.05V以下である請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記保護層の厚さは1μm未満である請求項1から3のいずれかに記載のリチウム二次電池。
  5. 前記保護層の厚さは0.2μm以上0.9μm以下である請求項4に記載のリチウム二次電池。
  6. 前記電解質塩はLiPF6またはLiBF4である請求項1から5のいずれかに記載のリチウム二次電池。
  7. (A)正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極集電体を用意する工程であって、前記正極活物質層は、LiNix1-x2(x=0.6〜0.8、M=Co、Mn、Alから選ばれる少なくとも1種)を主成分とする正極活物質粉末を含むペーストを前記表面に塗布し、乾燥することによって形成されている、工程と、
    (B)前記正極活物質層の上に金属リチウムを含む保護層を形成することにより、金属リチウムに対する正極の電位が1.5Vより大きく、3.0V未満である正極を形成する工程と、
    (C)珪素酸化物を主成分とする前駆体層が表面に形成された負極集電体を用意し、前記前駆体層に、負極の不可逆容量以上のリチウムを予め吸蔵させることによって、負極を形成する工程と、
    (D)前記正極と、前記負極と、有機溶媒および電解質塩を含む電解液とを用いて電池を構成する工程と
    を包含するリチウム二次電池の製造方法。
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