JP2012194099A - 擬似距離誤差推定方法、位置算出方法及び擬似距離誤差推定装置 - Google Patents

擬似距離誤差推定方法、位置算出方法及び擬似距離誤差推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】擬似距離に含まれる誤差を推定するための新たな手法の提案。
【解決手段】衛星から衛星信号を受信して、受信点から当該衛星までの観測擬似距離を求める。また、受信した衛星信号のドップラー周波数を測定し、当該ドップラー周波数を用いて予測擬似距離を算出する。そして、観測擬似距離と予測擬似距離とを用いて、観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定する。その一方で、所与の受信位置を用いて、観測擬似距離に含まれている第2の誤差を推定する。そして、第1の誤差と第2の誤差とを用いて、観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定する。
【選択図】図14

Description

本発明は、観測した擬似距離に含まれている誤差を推定する方法等に関する。
測位用信号を利用した測位システムとしては、GPS(Global Positioning System)が広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等に内蔵されたGPS受信機に利用されている。GPSでは、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星までの擬似距離等の情報を用いた測位計算を行って、GPS受信機の位置(位置座標)や時計誤差(クロックバイアス)を求める。
測位計算としては、複数の測位用衛星それぞれについてGPS受信機において観測される擬似距離(以下、「観測擬似距離」と称す。)に含まれ得る誤差の二乗和を最小化させる、いわゆる最小二乗法を利用した測位計算が広く利用されている(例えば特許文献1。)。
特開2009−97897号公報
従来の最小二乗法を利用した測位計算は、各測位用衛星それぞれについて、観測擬似距離に含まれ得る誤差がゼロ近傍の値になることを想定した手法に基づくものである。数学的に説明すると、捕捉した全ての測位用衛星について、観測擬似距離の誤差が期待値ゼロの正規分布に従うと仮定して測位計算を行っていることになる。ところが、衛星測位システムでは、種々の誤差要因が存在し、観測擬似距離には多種多様の誤差が含まれ得る。
例えば、いわゆるマルチパス環境では、2以上の経路を通って衛星信号がGPS受信機に到達する。GPS受信機が受信する信号は、測位用衛星から送出される衛星信号である直接波信号に、建物や地面等に反射した反射波や障害物を透過した透過波、障害物を回折した回折波等の間接波信号が重畳した信号(マルチパス信号)となる。間接波信号は直接波信号よりも長い経路長でGPS受信機に到達する。このため、観測擬似距離には、間接波信号の存在に起因する大きな誤差が含まれ得る。
従って、観測擬似距離の誤差を期待値ゼロの正規分布と仮定して測位計算を行うことは、実環境に即していない測位計算を行うことになり得る。そのため、マルチパス環境や屋内環境といった、擬似距離の誤差の分布が期待値ゼロの正規分布に従うとは限らない環境では、位置算出の正確性が低下するという問題があった。
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、観測擬似距離に含まれている誤差を推定するための新たな手法を提案することにある。
以上の課題を解決するための第1の形態は、衛星から衛星信号を受信して、受信点から前記衛星までの擬似距離の観測値である観測擬似距離を求めることと、受信した前記衛星信号のドップラー周波数を測定することと、前記ドップラー周波数を用いて、前記擬似距離を予測した予測擬似距離を算出することと、前記観測擬似距離と前記予測擬似距離とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定することと、所与の受信位置を用いて、前記観測擬似距離に含まれている第2の誤差を推定することと、前記第1の誤差と前記第2の誤差とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定することと、を含む擬似距離誤差推定方法である。
また、他の形態として、衛星から衛星信号を受信して、受信点から前記衛星までの擬似距離の観測値である観測擬似距離を求める擬似距離観測部と、受信した前記衛星信号のドップラー周波数を測定するドップラー測定部と、前記ドップラー周波数を用いて、前記擬似距離を予測した予測擬似距離を算出する擬似距離予測部と、前記観測擬似距離と前記予測擬似距離とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定する第1の誤差推定部と、所与の受信位置を用いて、前記観測擬似距離に含まれている第2の誤差を推定する第2の誤差推定部と、前記第1の誤差と前記第2の誤差とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定する真正誤差推定部と、を備えた擬似距離誤差推定装置を構成してもよい。
この第1の形態等によれば、衛星から衛星信号を受信して、受信点から衛星までの観測擬似距離を求める。その一方で、受信した衛星信号のドップラー周波数を測定し、当該ドップラー周波数を用いて予測擬似距離を算出する。そして、観測擬似距離と予測擬似距離とを用いて、観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定する。予測擬似距離の正確性が保証されているのであれば、観測擬似距離に含まれている誤差(第1の誤差)を正しく見積もることができる。しかし、ドップラー周波数には測定誤差が含まれ得るため、予測擬似距離には誤差が重畳されている可能性があり、第1の誤差は必ずしも正確であるとは限らない。
そこで、所与の受信位置を用いて、観測擬似距離に含まれている誤差(第2の誤差)を推定する。受信位置を適切に設定しさえすれば、観測擬似距離に含まれている誤差を、ある程度高い正確性で推定することができる。そして、上記のように異なる方法で推定した第1の誤差及び第2の誤差を用いることで、観測擬似距離に含まれている正しい誤差(真正誤差)を推定することができる。
また、第2の形態として、第1の形態の擬似距離誤差推定方法において、前記真正誤差を推定することは、前記第1の誤差と前記第2の誤差との差分を算出することと、所定期間分の前記差分の算出結果を用いて、前記第1の誤差を補正することと、を含む、擬似距離誤差推定方法を構成することとしてもよい。
この第2の形態によれば、第1の誤差と第2の誤差との差分を算出する。第2の誤差の正確性が保証されていれば、上記の差分は、観測擬似距離に含まれている真正誤差からの第1の誤差のオフセット分とみなすことができる。そのため、所定期間分の差分の算出結果を用いることで、第1の誤差を適切に補正することができる。
また、第3の形態として、第2の形態の擬似距離誤差推定方法において、前記補正することは、前記所定期間分の前記差分の算出結果を平均した結果を用いて、前記第1の誤差を補正することである、擬似距離誤差推定方法を構成することとしてもよい。
この第3の形態によれば、所定期間分の差分の算出結果を平均した結果を用いて第1の誤差を補正することで、観測擬似距離に含まれている真正誤差をより正しく推定することができる。
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の擬似距離誤差推定方法において、前記予測擬似距離を算出することは、前記ドップラー周波数を用いて視線速度を算出することと、前記視線速度を積分することで前記予測擬似距離を求めることと、を含む、擬似距離誤差推定方法を構成することとしてもよい。
この第4の形態によれば、ドップラー周波数を用いて視線速度を算出する。視線速度は、視線方向に対する衛星との間の相対的な速度(相対速度)である。擬似距離は視線方向に対する受信点と衛星間の距離であるため、視線速度を積分することで予測擬似距離を適切に求めることができる。
また、第5の形態として、第1〜第4の何れかの形態の擬似距離誤差推定方法を用いて擬似距離誤差を推定することと、前記推定した擬似距離誤差を期待値とする所定の擬似距離誤差分布と、前記観測擬似距離とを用いて、前記受信点の位置を算出することと、を含む位置算出方法を構成することも可能である。
この第5の形態によれば、上記の形態の擬似距離誤差推定方法を用いて推定した擬似距離誤差を期待値とする所定の擬似距離誤差分布と、観測擬似距離とを用いることで、受信点の位置を適切に求めることができる。
また、第6の形態として、第5の形態の位置算出方法において、前記擬似距離誤差分布は、前記擬似距離誤差の期待値及び前記擬似距離誤差の標準偏差で定義される分布であり、前記衛星信号の信号品質と前記標準偏差とを対応付けたモデルを用いて、前記擬似距離誤差分布の標準偏差を設定することを更に含む、位置算出方法を構成することとしてもよい。
この第6の形態によれば、衛星信号の信号品質と標準偏差とを対応付けたモデルを用いることで、擬似距離誤差分布の標準偏差を適切に設定することができ、ひいては位置算出の正確性を向上させることが可能となる。
また、第7の形態として、第6の形態の位置算出方法において、測位環境別に前記モデルが定められており、測位環境を判定することを更に含み、前記設定することは、前記判定した測位環境に対応するモデルを用いて前記標準偏差を設定することを含む、位置算出方法を構成することとしてもよい。
この第7の形態によれば、測位環境を判定する。そして、判定した測位環境に対応するモデルを用いて擬似距離誤差分布の標準偏差を設定することで、測位環境に見合った適切な擬似距離誤差分布を用いて位置算出を行うことができる。
擬似距離誤差分布の説明図。 マルチパスの説明図。 自己相関の一例を示す図。 マルチパス環境における自己相関の一例を示す図。 マルチパス環境における自己相関の一例を示す図。 マルチパス環境における擬似距離誤差実測値の時間変化の一例を示す図。 擬似距離に係る各諸量の説明図。 観測擬似距離及び予測擬似距離の説明図。 第1及び第2の擬似距離推定誤差の説明図。 マルチパス環境における擬似距離誤差推定値の時間変化の一例を示す図。 携帯型電話機の機能構成の一例を示すブロック図。 第1実施例におけるベースバンド処理回路部の回路構成の一例を示す図。 第1のベースバンド処理の流れを示すフローチャート。 擬似距離誤差推定処理の流れを示すフローチャート。 位置算出を行った実験結果の一例を示す図。 第2実施例における記憶部のデータ構成の一例を示す図。 (A)屋内モデルAの一例、(B)屋内モデルBの一例、(C)屋外モデルの一例。 第2のベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
以下、図面を参照して、本発明を適用した好適な実施形態について説明する。本実施形態は、衛星測位システムの一種であるGPS(Global Positioning System)を適用した実施形態である。なお、本発明を適用可能な実施形態が以下説明する実施形態に限定されるわけでないことは勿論である。
1.原理
本実施形態における擬似距離誤差推定方法(擬似距離誤差推定の原理)について説明する。GPSを利用した衛星測位システムにおいて、測位用衛星の一種であるGPS衛星は、エフェメリスやアルマナックといった衛星軌道データを含む航法データを、測位用の衛星信号の一種であるGPS衛星信号に乗せて発信している。
GPS衛星信号は、拡散符号の一種であるC/A(Coarse and Acquisition)コードによって、スペクトラム拡散方式として知られるCDMA(Code Division Multiple Access)方式によって変調された1.57542[GHz]の通信信号である。C/Aコードは、コード長1023チップを1PNフレームとする繰返し周期1msの擬似ランダム雑音符号であり、各GPS衛星に固有のコードである。
GPSでは、複数のGPS衛星の位置や、GPS衛星信号の受信点であるGPSアンテナから各GPS衛星までの擬似距離等の情報を用いた測位計算を行って、受信点(GPSアンテナ)の位置を算出する。本実施形態では、GPSアンテナと、GPSアンテナで受信されたGPS衛星信号を演算処理する演算部分とが一体的に構成されたGPS受信機を想定する。つまり、受信点の位置を算出することは、受信機の位置を算出することと同じ意味であるとして説明する。なお、信号受信点(アンテナ)と演算部分とは、必ずしも一体的に配置・構成されている必要はなく、分離して配置・構成されていてもよい。
擬似距離は、GPS衛星信号を受信した信号に対して、位相方向の相関演算(以下、「位相サーチ」と称す。)を行うことで得られるコード位相を用いて求められる。コード位相は、GPS受信機が受信したGPS衛星信号のC/Aコードの位相である。観念的には、GPS衛星とGPS受信機との間には複数のC/Aコードが並んでいると考えることができる。GPS衛星とGPS受信機との間の距離は、ちょうどC/Aコードの整数倍の長さになるとは限らず、端数部分が生じ得る。この擬似距離の端数部分に相当するのがコード位相である。なお、擬似距離の整数部分は、GPS受信機及びGPS衛星の概略位置から求めることができる。
本実施形態では、「擬似距離」とは、原則としてGPS衛星とGPS受信機との間の観測した距離全体(整数部分+端数部分)を指すこととして説明するが、コード位相(端数部分)のみを指すこととして実施形態を構成することも勿論可能である。
GPSを利用した衛星測位システムでは、種々の誤差要因が存在するため、GPS受信機が観測する観測擬似距離には種々の誤差が重畳する。例えば、衛星クロックの誤差や、衛星軌道情報の誤差、電離層遅延、対流圏遅延、GPS受信機内部で生じるノイズ信号による誤差などである。本明細書では、この観測擬似距離に含まれている誤差のことを「擬似距離誤差」と呼称する。GPSを利用した測位計算では、各GPS衛星に係る擬似距離誤差(残差)の二乗和を最小化させる、いわゆる最小二乗法を利用した測位計算が広く用いられている。この際、擬似距離誤差の分布(以下、「擬似距離誤差分布」と称す。)として正規分布が仮定される。
図1は、擬似距離誤差分布の説明図である。図1では、横軸は擬似距離誤差“ε”であり、縦軸は確率密度“f(ε)”である。擬似距離誤差“ε”の期待値(以下、「擬似距離誤差期待値」と称す。)“μ”及び擬似距離誤差“ε”の標準偏差(以下、「擬似距離誤差標準偏差」と称す。)“σ”を、それぞれ固定値とするのが従来の一般的な手法である。具体的には、“μ=0”、“σ=1”と仮定して計算を行うのが一般的である。しかし、この仮定は必ずしも正しいとは言えない。その典型的な例はマルチパス環境である。
図2は、マルチパス環境の説明図である。直接波信号を点線で示し、間接波信号を一点鎖線で示している。間接波信号の存在により、GPS受信機が観測する観測擬似距離には誤差が生ずる。観測擬似距離は、GPS受信機が位相サーチを行って取得したコード位相を用いて算出されるが、マルチパス環境では、このコード位相に誤差が重畳する。コード位相の誤差は、真のコード位相に対して、正の誤差となる場合及び負の誤差となる場合がある。
図3は、コード位相検出の原理の説明図である。図3では、横軸をコード位相、縦軸を相関値として、C/Aコードの自己相関値の概略例を示している。なお、以下の説明では、相関値というときは、相関値の大きさ(絶対値)を意味するものとする。
C/Aコードの自己相関値は、理想的にはピーク値を頂点とする左右対称の略三角形の形状で表される。この場合に、相関値のピーク値(以下、「相関ピーク値」と称す。)に対応する位相が、受信したGPS衛星信号のC/Aコードの位相である。相関ピーク値を検出するために、あるコード位相に対して、一定量だけ進んだコード位相(以下、「進み位相」と称す。)と、一定量だけ遅れたコード位相(以下、「遅れ位相」と称す。)とを考える。そして、進み位相の相関値と遅れ位相の相関値とが等しくなる相関値を相関ピーク値として検出する。
図3では、相関値は左右対称の略三角形の形状であるため、進み位相の相関値と遅れ位相の相関値との中心のコード位相の相関値が相関ピーク値となり、対応するコード位相が「ピーク位相」として検出される。この検出されたピーク位相のことを「検出ピーク位相」と称する。図3の相関値の形状は理想形状であるが、マルチパス環境では相関値の形状が変化する。
図4及び図5は、マルチパス環境における相関値の形状の一例を示す図である。図4は、間接波信号が直接波信号と同位相で到達した場合の相関値のグラフの一例であり、図5は、間接波信号が直接波信号と逆位相で到達した場合の相関値のグラフの一例である。これらの図には、直接波信号と、間接波信号と、この直接波信号と間接波信号とを合成したマルチパス信号とのそれぞれに対応する相関値のグラフを示している。横軸はコード位相、縦軸は相関値である。
間接波信号に対する相関値は、直接波信号に対する相関値と同様に略三角形の形状をなしているが、間接波信号の相関ピーク値の大きさは、直接波信号の相関ピーク値よりも小さい。これは、GPS衛星から送出されたGPS衛星信号が、建物や地面に反射したり障害物を透過することによって、送出された時点における信号強度が、受信時には弱められていることによるものである。
また、間接波信号のピーク位相は、直接波信号のピーク位相よりも遅れている。これは、GPS衛星から送出されたGPS衛星信号が、建物や地面に反射したり障害物を回折することによって、GPS衛星からGPS受信機までの伝搬距離が長くなったことによるものである。マルチパス信号に対する相関値は、直接波信号の相関値と間接波信号の相関値との和となるため、三角形状が歪んでピーク値を中心とした左右対称とはならない。
間接波信号が直接波信号と同位相でGPS受信機に到達した場合は、直接波信号と間接波信号とは互いに強め合う。このため、合成波信号の相関値は、直接波信号に対する相関値の大きさと間接波信号に対する相関値の大きさとの合算値となる。この場合、相関値の形状は、例えば図4に示すような形状となる。図4において、検出ピーク位相は、真のピーク位相よりも遅れた位相となる。
それに対し、間接波信号が直接波信号よりも、例えば半周期以上1周期未満の範囲等の逆位相となった場合は、直接波信号と間接波信号とは互いに弱め合う。このため、合成波信号の相関値は、直接波信号に対する相関値の大きさから間接波信号に対する相関値の大きさを減じた値となる。この場合、相関値の形状は、例えば図5に示すような形状となる。図5において、検出ピーク位相は、真のピーク位相よりも進んだ位相となる。
ここで、検出ピーク位相と真のピーク位相との位相差を「コード位相誤差」と定義する。そして、便宜的に、検出ピーク位相が真のピーク位相よりも遅れている場合のコード位相誤差の符号を「正」、検出ピーク位相が真のピーク位相よりも進んでいる場合のコード位相誤差の符号を「負」と定義する。この場合、図4ではコード位相誤差は「正」となり、図5ではコード位相誤差は「負」となる。
前述したように、擬似距離はコード位相を用いて算出されるため、コード位相の誤差は擬似距離に誤差として重畳される。すなわち、図4のようにコード位相に正の誤差が含まれると、擬似距離誤差“ε”として正の誤差が重畳する。一方、図5のようにコード位相に負の誤差が含まれると、擬似距離誤差“ε”として負の誤差が重畳する。
このように、マルチパス環境においては、コード位相誤差の正負に応じて、擬似距離誤差“ε”も正負の値をとり得る。また、コード位相誤差の大きさ(絶対値)も随時変化するため、擬似距離誤差“ε”の大きさも随時変化する。
図6は、マルチパス環境において実際に擬似距離誤差を測定する実験を行った結果を示すグラフである。図6において、横軸は時刻“T”であり、縦軸は擬似距離誤差実測値(単位はメートル)及び信号強度である。擬似距離誤差実測値を黒ダイヤのプロットで示し、信号強度を矩形のプロットで示す。
このグラフを見ると、擬似距離誤差実測値は、信号強度の時間変化に追従するように時間変化していることがわかる。着目すべきは、擬似距離誤差実測値が正負の領域を跨いで変化しており、その振幅も大小変化している点である。
この結果から、マルチパス環境等においては、観測擬似距離の誤差を期待値ゼロの正規分布と仮定したのでは、実環境に即していない誤差の分布を仮定して測位計算を行うことになることがわかる。これを逆に考えると、図6に示した擬似距離誤差実測値に追従(合致)するような擬似距離誤差を推定できれば、実環境に即した誤差の分布を仮定して測位計算を行うことができると言える。
そこで、本実施形態では、以下の手順で擬似距離誤差を推定する。まず、GPS衛星からGPS衛星信号を受信して、GPS受信機から当該GPS衛星までの擬似距離の観測値である観測擬似距離を求める。その一方で、受信したGPS衛星信号のドップラー周波数を測定し、当該ドップラー周波数を用いて、擬似距離を予測した予測擬似距離を算出する。
ドップラー周波数は、GPS衛星及びGPS受信機の移動により生ずるドップラーによる規定搬送波周波数からの受信周波数の周波数のズレ分に相当する。具体的には、受信周波数及びドップラー周波数に関して、次式(1)が成立する。
式(1)において、“f”は受信周波数であり、“f0”は規定搬送波周波数であり、“fd”はドップラー周波数である。規定搬送波周波数“f0”は1.57542[GHz]である。また、ドップラー周波数“fd”は、受信信号に対して周波数方向の相関演算(周波数サーチ)を行うことで取得することができる。よって、受信周波数“f”も定まる。
このとき、ドップラー周波数“fd”を用いて視線速度を算出することができる。本実施形態において、視線速度とは、視線方向に対するGPS受信機とGPS衛星との相対的な速度(相対速度)、言うなれば相対視線速度のことを意味する。具体的には、例えば次式(2)に従って視線速度“VR”を算出することができる。
但し、“c”は光速である。
一方で、擬似距離は、視線方向に沿ったGPS受信機とGPS衛星との間の距離である。従って、擬似距離“ρ(t)”と視線速度“VR(t)”との間には、次式(3)の関係が成立する。
式(3)によれば、視線速度“VR(t)”を積分することで、擬似距離“ρ(t)”が予測できる。つまり、受信したGPS衛星信号のドップラー周波数“fd”を測定し、当該ドップラー周波数“fd”を用いて視線速度“VR”を算出する。そして、算出した視線速度“VR”を積分することで、予測擬似距離(擬似距離の予測値)を求める。
詳細に説明する。離散的な時刻“T=T0,T1,T2,・・・,Tn,・・・”を考える。下付きの添え字は時刻の番号を示す。このとき、時刻“Tn”における予測擬似距離“P(Tn)”を、例えば次式(4)に従って算出する。
式(4)において、“C(T0)”は時刻“T0”における観測擬似距離を示し、“ΔP(Tn)”は時刻“Tn”における予測擬似距離の変化量(以下、「擬似距離変化量」と称す。)を示す。擬似距離変化量“ΔP(Tn)”は、現在時刻における視線速度“VR(Tn)”と前回時刻における視線速度“VR(Tn-1)”とを平均した速度に、現在時刻と前回時刻との時刻差“ΔT=Tn−Tn-1”を乗算することで求められる。
式(4)は、ある基準とする時刻“T0”において観測された擬似距離(以下、「基準観測擬似距離」と称す。)に対して、視線速度を積分及び継ぎ足していくことで、擬似距離を予測することを意味する。この予測手法は、ある時刻から次の時刻へと擬似距離を伝播させるプロパゲーションに基づく手法である。
ここで、観測擬似距離“C(T)”は擬似距離の実際の観測値である。それに対し、予測擬似距離“P(T)”は擬似距離の予測値である。そのため、観測擬似距離“C(T)”と予測擬似距離“P(T)”との差分は、観測擬似距離に含まれている誤差(第1の誤差)であると推定できる。そこで、次式(5)に従って、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”を算出する。
図7は、上記の擬似距離に係る各諸量の説明図である。説明を簡単にするため、GPS受信機が停止している状況(ある一点で静止している状況)を想定する。GPS受信機の位置をAとする。また、あるGPS衛星の時刻“Tn-1”における位置をBとし、時刻“Tn”における位置をCとする。時刻“Tn-1”におけるGPS衛星の速度ベクトルをベクトル表記の“VSV(Tn-1)”として図示し、時刻“Tn”におけるGPS衛星の速度ベクトルをベクトル表記の“VSV(Tn)”として図示する。また、時刻“Tn”と“Tn-1”との時刻差を“Δt=Tn−Tn-1”として図示する。
最初に、時刻“Tn-1”を考える。時刻“Tn-1”においてGPS受信機が観測した観測擬似距離は“BA=C(Tn-1)”で表される。また、GPS受信機は停止しているため、視線方向に対する相対速度ベクトル“VR(Tn-1)”は、GPS衛星の速度ベクトル“VSV(Tn-1)”を視線方向に投影したベクトルとなる。この場合、時刻“Tn-1”において擬似距離を予測した結果、予測擬似距離として“BD=P(Tn-1)”が得られたとする。この場合、式(5)によれば、時刻“Tn-1”における第1の擬似距離推定誤差は“E(Tn-1)=DA=BA−BD=C(Tn-1)−P(Tn-1)”となる。
次に、時刻“Tn”を考える。時刻“Tn”においてGPS受信機が観測した観測擬似距離は“CA=C(Tn)”で表される。また、GPS受信機は停止しているため、視線方向に対する相対速度ベクトル“VR(Tn)”は、GPS衛星の速度ベクトル“VSV(Tn)”を視線方向に投影したベクトルとなる。この場合、視線方向に対して、時刻“Tn-1”において求めた予測擬似距離“BD=P(Tn-1)”と同じ長さの線分“CE=P(Tn-1)”を想定する(BD=CE)。
この場合、式(4)において、視線速度“VR(Tn)”及び“VR(Tn-1)”の平均速度に時刻差“ΔT=Tn−Tn-1”を乗算することで、時刻“Tn”における擬似距離変化量“ΔP(Tn)”が求まる。これが“EF=ΔP(Tn)”で表されるとすると、時刻“Tn”における予測擬似距離“P(Tn)”は、“P(Tn)=CF=CE+EF=P(Tn-1)+ΔP(Tn)”となる。また、式(5)より、時刻“Tn”における第1の擬似距離推定誤差は“E(Tn)=FA=CA−CF=C(Tn)−P(Tn)”となる。
図8は、図7の状況において観測擬似距離“C(T)”及び予測擬似距離“P(T)”を実際に計測した実験結果の一例を示すグラフである。図8において、横軸は時刻“T(単位は秒)”であり、縦軸は擬似距離(単位はメートル)である。観測擬似距離“C(T)”を丸のプロットで示し、予測擬似距離“P(T)”を矩形のプロットで示す。但し、ここで示す擬似距離は、コード位相に相当する端数部分の距離である。
この図を見ると、観測擬似距離“C(T)”及び予測擬似距離“P(T)”は、何れも時間経過に伴って増加していることがわかる。これは、GPS受信機は停止しているのに対し、GPS衛星は移動しており、GPS衛星がGPS受信機から徐々に遠ざかっていることを示す結果である。また、観測擬似距離“C(T)”は上下に振動する時間変化を示しているが、予測擬似距離“P(T)”は滑らかな時間変化を示していることがわかる。
式(5)により算出される第1の擬似距離推定誤差“E(T)”は、観測擬似距離に含まれている誤差に相当する。しかし、この値を直ちに信用することはできない。予測擬似距離“P(T)”が正しいとは限らないためである。すなわち、GPS受信機が備えるクロック(水晶発振器)の周波数精度により、測定されるドップラー周波数“fd”には測定誤差が含まれ得る。このドップラー周波数“fd”の測定誤差は、予測擬似距離“P(T)”に誤差として重畳される。
その結果、図8に示した予測擬似距離“P(T)”の時間変化は、ドップラー周波数“fd”の測定誤差分だけ全体的に嵩上げされていることになる。そのため、観測擬似距離“C(T)”から予測擬似距離“P(T)”を減算することで得られる第1の擬似距離推定誤差“E(T)”にも、嵩上げされた予測擬似距離“P(T)”の誤差分だけ誤差が重畳されている可能性がある。従って、観測擬似距離“C(T)”に含まれている正しい誤差(真正誤差)を推定するためには、上記の誤差分を補正する必要がある。
そこで、本実施形態では、第1の擬似距離推定誤差(第1の誤差)と、ある程度の確度が保証された第2の擬似距離推定誤差(第2の誤差)とを用いて、観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定する。第2の擬似距離推定誤差は、所与の受信位置を用いて推定する。
GPSでは、例えば次式(6)で表される観測方程式に従って、GPS受信機の位置ベクトル“p”及びクロックバイアス“b”を求める測位計算を行う。
式(6)において、ベクトル“δρ”は、捕捉した各GPS衛星の擬似距離の修正量を成分とする擬似距離修正量ベクトルである。また、右辺の行列“G”は、各捕捉衛星の衛星配置を決定付ける幾何行列である。ベクトル“δp”はGPS受信機の位置ベクトルの修正量である位置修正量ベクトルであり、“δb”はクロックバイアス修正量である。また、ベクトル“ε”は、各捕捉衛星の観測擬似距離の誤差を成分とする擬似距離誤差ベクトルである。なお、式(6)の観測方程式それ自体は公知であるため、その導出過程等については説明を省略する。
測位計算では、位置修正量ベクトル“δp”及びクロックバイアス修正量“δb”を未知数として、例えば最小二乗法やカルマンフィルターを利用して、“δp”及び“δb”を近似的に求める。そして、求めた“δp”及び“δb”を用いて、位置ベクトル“p”及びクロックバイアス“b”を修正する。
測位計算で過去に求めた位置ベクトル“p”、位置修正量ベクトル“δp”、クロックバイアス“b”及びクロックバイアス修正量“δb”を用いれば、式(6)から擬似距離誤差ベクトル“ε”を逆算することができる。つまり、測位計算で得られたGPS受信機の位置を所与の受信位置として、第2の擬似距離推定誤差を推定できる。
この場合、ある1つのGPS衛星について、時刻“Tn”における第2の擬似距離推定誤差“Z(Tn)”は、次式(7)に従って算出される。
式(7)は、式(6)を1つのGPS衛星に係る式に書き直して、擬似距離誤差“ε”について解いた式である。但し、“l”は当該GPS衛星の視線ベクトルである。
図9は、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”及び第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”を実際に測定した実験結果の一例を示すグラフである。図9において、横軸は時刻“T(単位は秒)”であり、縦軸は擬似距離推定誤差(単位はメートル)である。また、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”を三角のプロットで示し、第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”をダイヤのプロットで示す。
図8で図示・説明した実験結果において、観測擬似距離“C(T)”から予測擬似距離“P(T)”を減算することで、図9の第1の擬似距離推定誤差“E(T)”が得られる。また、過去の測位結果を用いて擬似距離誤差“ε”を逆算することで、図9の第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”が得られる。
図9を見ると、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”と第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”とは、ほぼ同様の時間変化の傾向を示していることがわかる。しかし、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”の全体的な値が、第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”の全体的な値と比べて相対的に高くなっている。この相対的な値の差は、図8の予測擬似距離“P(T)”に内在していた誤差分である。
この誤差分を補正するため、本実施形態では、所定期間分の第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”を用いて、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”を補正する。所定期間は、例えば、現在時刻から遡ってN時間分と定めてもよいし、所定時間間隔で擬似距離誤差を推定する場合には、現在タイミングから遡ってN回前までと定めてもよい。“N”の値は適宜設定可能であるが、本願発明者が実験を重ねた結果、例えば1秒間隔で擬似距離誤差を推定するのであれば、“N=10”程度とすることで、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”を効果的に補正できることがわかった。少なくとも“N≧2”とすると好適である。
詳細には、次式(8)に従って、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”と第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”との差分を擬似距離誤差オフセット値“Eoffset(T)”として算出する。
第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”の正確性が十分保証されていれば、式(8)に従って算出される擬似距離誤差オフセット値“Eoffset(T)”は、観測擬似距離に含まれている真正誤差からの第1の擬似距離推定誤差“E(T)”のオフセット分とみなすことができる。
そこで、所定期間分の擬似距離誤差オフセット値“Eoffset(T)”を用いて、例えば次式(9)に従って第1の擬似距離推定誤差“E(T)”を補正する。
式(9)において、“Eestimate(T)”は擬似距離誤差の推定値(擬似距離誤差推定値)を示す。また、“aveEoffset(T)”は擬似距離誤差オフセット平均値を示す。過去N個分の擬似距離誤差オフセット値“Eoffset(T)”を平均した結果を用いて、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”を補正することを示す式である。
図10は、マルチパス環境において実際に擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”を算出した実験結果の一例を示すグラフである。図10において、横軸は時刻“T”であり、縦軸は擬似距離誤差(単位はメートル)である。擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”をダイヤのプロットで示す。
図10のグラフと図6のグラフとを対比すると、図6に示した擬似距離誤差実測値の時間変化に追従するような擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”が得られていることがわかる。従って、上記の擬似距離誤差推定方法を用いることで、マルチパス環境においても擬似距離誤差を正確に推定可能であることが実証された。
最終的に求めた擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”を、図1で図示・説明した擬似距離誤差期待値“μ=μ(T)”として設定する。そして、設定した擬似距離誤差期待値“μ=μ(T)”で定義される擬似距離誤差分布を用いて、最小二乗法を適用した測位計算を行う。
上記の擬似距離誤差推定方法は、各衛星に個別に適用すると効果的である。つまり、衛星毎に擬似距離誤差を推定して擬似距離誤差期待値を設定することで、擬似距離誤差分布を衛星毎に個別に定義する。そして、各衛星それぞれについて定義された擬似距離誤差分布と、各衛星それぞれについて観測された観測擬似距離とを用いて、例えばニュートンラフソン法に基づく収束演算を行って、GPS受信機の位置ベクトル及びクロックバイアスの近似解を求める。
2.実施例
次に、上記の原理に基づいて擬似距離誤差推定及び位置算出を行う擬似距離誤差推定装置及び位置算出装置の実施例を説明する。ここでは、擬似距離誤差推定装置及び位置算出装置を具備する電子機器として、携帯型電話機を例に挙げて説明する。最初に、各実施例に共通する携帯型電話機の構成について説明する。
図11は、実施例における携帯型電話機1の機能構成の一例を示すブロック図である。携帯型電話機1は、GPSアンテナ5と、GPS受信部10と、ホスト処理部30と、操作部40と、表示部50と、携帯電話用アンテナ60と、携帯電話用無線通信回路部70と、記憶部80と、時計部90とを備えて構成される。
GPSアンテナ5は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF(Radio Frequency)信号を受信する受信点(アンテナ)であり、受信信号をGPS受信部10に出力する。
GPS受信部10は、GPSアンテナ5から入力した信号に基づいて携帯型電話機1の位置等を算出・演算する演算部分である。本実施例では、このGPS受信部10が、擬似距離誤差推定装置及び位置算出装置に相当する。
GPS受信部10は、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とを備えて構成される。なお、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部20とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造することも可能である。
RF受信回路部11は、RF信号の受信回路である。回路構成としては、例えば、GPSアンテナ5から出力されたRF信号をA/D変換器でデジタル信号に変換し、デジタル信号を処理する受信回路を構成してもよい。また、GPSアンテナ5から出力されたRF信号をアナログ信号のまま信号処理し、最終的にA/D変換することでデジタル信号をベースバンド処理回路部20に出力する構成としてもよい。
後者の場合には、例えば、次のようにRF受信回路部11を構成することができる。すなわち、所定の発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ5から出力されたRF信号に乗算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジタル信号に変換して、ベースバンド処理回路部20に出力する。
ベースバンド処理回路部20は、RF受信回路部11から出力された受信信号に対して、キャリア除去や相関演算等を行ってGPS衛星信号を捕捉する。そして、捕捉したGPS衛星信号から抽出した時刻情報や衛星軌道情報等を利用して、携帯型電話機1の位置及び時計誤差を算出する。
ホスト処理部30は、記憶部80に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御するプロセッサーであり、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有して構成される。ホスト処理部30は、ベースバンド処理回路部20から取得した位置座標をもとに、表示部50に現在位置を指し示した地図を表示させたり、その位置座標を各種のアプリケーション処理に利用する。
操作部40は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、押下されたキーやボタンの信号をホスト処理部30に出力する。この操作部40の操作により、通話要求やメール送受信要求、位置算出要求等の各種指示入力がなされる。
表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホスト処理部30から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部50には、位置表示画面や時刻情報等が表示される。
携帯電話用アンテナ60は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地局との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
携帯電話用無線通信回路部70は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで、通話やメールの送受信等を実現する。
記憶部80は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置を有して構成され、ホスト処理部30が携帯型電話機1を制御するためのシステムプログラムや、各種アプリケーション処理を実行するための各種プログラムやデータ等を記憶する。
時計部90は、携帯型電話機1の内部時計であり、水晶振動子及び発振回路でなる水晶発振器等を有して構成される。時計部90の計時時刻は、ベースバンド処理回路部20及びホスト処理部30に随時出力される。時計部90は、ベースバンド処理回路部20により算出された時計誤差を用いて較正される。
2−1.第1実施例
2−1−1.ベースバンド処理回路部の構成
図12は、第1実施例におけるベースバンド処理回路部20の回路構成及び記憶部のデータ構成の説明図である。ベースバンド処理回路部20は、主要な機能構成として、処理部21と、記憶部23とを備える。
処理部21は、ベースバンド処理回路部20の各機能部を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサーを有して構成される。処理部21は、衛星捕捉部211と、擬似距離誤差推定部213と、位置算出部215とを機能部として有する。
衛星捕捉部211は、GPS衛星の捕捉を行う機能部である。具体的には、RF受信回路部11から出力されるデジタル化された受信信号に対して、キャリア除去及び相関演算のデジタル信号処理を実行して、GPS衛星を捕捉する。そして、相関演算結果に対するピーク判定を行い、受信キャリア信号のドップラー周波数や受信C/Aコードのコード位相をメジャメント情報として取得する。
また、衛星捕捉部211は、相関演算結果に基づいて航法データを復号する。受信キャリア信号の位相(キャリア位相)と、受信C/Aコードの位相(コード位相)とが検出され、相関がとれた状態になると、相関値の時間変化をもとに、航法データを構成する各ビット値をデコードすることができる。この位相同期は、例えば位相ロックループとして知られるPLL(Phase Locked Loop)により実現される。
衛星捕捉部211は、GPS衛星からGPS衛星信号を受信して、受信点からGPS衛星までの擬似距離の観測値である観測擬似距離を求める擬似距離観測部や、受信したGPS衛星信号のドップラー周波数を測定するドップラー測定部に相当する。
擬似距離誤差推定部213は、上記の原理に従って、衛星捕捉部211により捕捉された各GPS衛星それぞれについて、携帯型電話機1(GPSアンテナ5)から当該GPS衛星までの擬似距離に含まれる誤差(擬似距離誤差)を推定する。
擬似距離誤差推定部213は、衛星捕捉部211により測定されたドップラー周波数を用いて、擬似距離を予測した予測擬似距離を算出する擬似距離予測部や、観測擬似距離と予測擬似距離とを用いて、観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定する第1の誤差推定部に相当する。また、所与の受信位置を用いて、観測擬似距離に含まれている第2の誤差を推定する第2の誤差推定部や、第1の誤差と第2の誤差とを用いて、観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定する真正誤差推定部に相当する。
位置算出部215は、衛星捕捉部211により捕捉された各GPS衛星に係るメジャメント情報や航法データ、時刻情報、衛星情報といった諸量や、擬似距離誤差推定部213により推定された擬似距離誤差を用いて、最小二乗法を適用した測位計算を行って携帯型電話機1の位置(位置座標)や時計誤差(クロックバイアス)を算出する。そして、算出した位置をホスト処理部30に出力するとともに、算出した時計誤差で時計部90を較正する。位置算出部215は、擬似距離誤差推定部213により推定された擬似距離誤差を期待値とする所定の擬似距離誤差分布と、観測擬似距離とを用いて、受信点の位置を算出する位置算出部に相当する。
記憶部23は、ベースバンド処理回路部20のシステムプログラムや、衛星捕捉機能、擬似距離誤差推定機能、位置算出機能といった各種機能を実現するための各種プログラム、データ等を記憶する。また、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを有する。
記憶部23には、プログラムとして、処理部21により読み出され、第1のベースバンド処理(図13参照)として実行される第1のベースバンド処理プログラム231が記憶されている。また、第1のベースバンド処理プログラム231は、擬似距離誤差推定処理(図14参照)として実行される擬似距離誤差推定プログラム2311をサブルーチンとして含む。
また、記憶部23には、主要なデータとして、捕捉した各GPS衛星に係る衛星別データ234と、測位結果データ239とが記憶される。各衛星別データ234には、当該GPS衛星に係るメジャメント情報235と、衛星情報236と、擬似距離誤差推定用諸量237と、擬似距離誤差分布238とが含まれる。
メジャメント情報235は、当該GPS衛星について、受信したGPS衛星信号のコード位相やドップラー周波数といった情報である。衛星情報236は、当該GPS衛星の位置や速度、移動方向といった情報である。
擬似距離誤差推定用諸量237は、擬似距離誤差の推定で用いる各諸量である。原理で説明した観測擬似距離“C(T)”や予測擬似距離“P(T)”、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”、第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”、擬似距離誤差オフセット値“Eoffset(T)”、擬似距離誤差オフセット平均値“aveEoffset(T)”、擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”といった諸量がこれに含まれる。
擬似距離誤差分布238は、図1で図示・説明した擬似距離誤差分布238であり、擬似距離誤差期待値238Aと、擬似距離誤差標準偏差238Bとがこれに含まれる。擬似距離誤差期待値238Aには、擬似距離誤差推定処理で推定された擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”が設定される。また、擬似距離誤差標準偏差238Bには、固定値(例えば“1”)が設定される。
測位結果データ239は、測位計算の結果として得られたデータであり、携帯型電話機1の位置や時計誤差がこれに含まれる。
2−1−2.処理の流れ
図13は、記憶部23に記憶されている第1のベースバンド処理プログラム231が処理部21により読み出されることで、ベースバンド処理回路部20において実行される第1のベースバンド処理の流れを示すフローチャートである。
最初に、処理部21は、捕捉対象衛星選定処理を行う(ステップA1)。具体的には、時計部90で計時されている現在時刻において天空に位置するGPS衛星を、アルマナックやエフェメリス等の衛星軌道データを用いて判定して、捕捉対象衛星に選定する。そして、衛星捕捉部211は、各捕捉対象衛星それぞれについてループAの処理を行う(ステップA3〜A17)。
ループAの処理では、衛星捕捉部211は、当該捕捉対象衛星について、RF受信回路部11から入力した受信信号に対してキャリア除去や相関演算等のデジタル信号処理を行ってGPS衛星信号を捕捉する(ステップA5)。そして、相関演算の結果を用いて、捕捉したGPS衛星信号に係るコード位相やドップラー周波数を測定し、メジャメント情報235として衛星別データ234に記憶させる(ステップA7)。
また、衛星捕捉部211は、GPS衛星信号を捕捉することで取得した航法データと時刻情報とを用いて、当該捕捉対象衛星の位置や速度、移動方向といった衛星情報236を算出し、衛星別データ234に記憶させる(ステップA9)。そして、処理部21は、記憶部23に記憶された擬似距離誤差推定プログラム2311に従って、擬似距離誤差推定処理を行う(ステップA11)。
図14は、擬似距離誤差推定処理の流れを示すフローチャートである。
擬似距離誤差推定部213は、メジャメント情報235に含まれるコード位相を用いて擬似距離を求め、観測擬似距離“C(T)”として擬似距離誤差推定用諸量237に記憶させる(ステップB1)。
また、擬似距離誤差推定部213は、メジャメント情報235に含まれるドップラー周波数を用いて、式(2)に従って視線速度“VR”を算出する(ステップB3)。そして、算出した視線速度“VR”を用いて、式(4)に従って擬似距離を予測し、予測擬似距離“P(T)”として擬似距離誤差推定用諸量237に記憶させる(ステップB5)。
次いで、擬似距離誤差推定部213は、観測擬似距離“C(T)”と予測擬似距離“P(T)”とを用いて、式(5)に従って観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定し、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”として擬似距離誤差推定用諸量237に記憶させる(ステップB7)。
その後、擬似距離誤差推定部213は、測位結果データ239に含まれる位置及び時計誤差を用いて、式(7)に従って観測擬似距離に含まれている第2の誤差を推定し、第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”として擬似距離誤差推定用諸量237に記憶させる(ステップB9)。
次いで、擬似距離誤差推定部213は、第1の擬似距離推定誤差“E(T)”及び第2の擬似距離推定誤差“Z(T)”を用いて、式(8)に従って擬似距離推定誤差の差分を算出し、擬似距離誤差オフセット値“Eoffset(T)”として擬似距離誤差推定用諸量237に記憶させる(ステップB11)。
そして、擬似距離誤差推定部213は、擬似距離誤差推定用諸量237に記憶された所定のオフセット平均期間分の擬似距離誤差オフセット値“Eoffset(T)”を平均し、その結果を擬似距離誤差オフセット平均値“aveEoffset(T)”として擬似距離誤差推定用諸量237に記憶させる(ステップB13)。
最終的に、擬似距離誤差推定部213は、擬似距離誤差オフセット平均値“aveEoffset(T)”を用いて、式(9)に従って第1の擬似距離推定誤差“E(T)”を補正し、その結果を擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”として擬似距離誤差推定用諸量237に記憶させる(ステップB15)。そして、擬似距離誤差推定部213は、擬似距離誤差推定処理を終了する。
図13の第1のベースバンド処理に戻り、処理部21は、擬似距離誤差推定処理で求めた擬似距離誤差推定値“Eestimate(T)”を擬似距離誤差期待値238Aとして設定する(ステップA13)。そして、処理部21は、設定した擬似距離誤差期待値238Aと、所定の擬似距離誤差標準偏差238Bとに基づき、当該捕捉対象衛星の擬似距離誤差分布238を設定した後(ステップA15)、次の捕捉対象衛星へと処理を移行する。全ての捕捉対象衛星についてステップA5〜A15の処理を行ったならば、処理部21は、ループAの処理を終了する(ステップA17)。
その後、位置算出部215が、位置算出処理を行う(ステップA19)。具体的には、各捕捉対象衛星についてステップA15で設定した擬似距離誤差分布238と、各捕捉対象衛星についてステップB1で求めた観測擬似距離とを用いて、最小二乗法を適用した測位計算を行って携帯型電話機1の位置(位置座標)及び時計誤差(クロックバイアス)を近似的に求める。そして、測位結果を測位結果データ239に記憶させる。
次いで、処理部21は、位置算出処理で算出した位置をホスト処理部30に出力する(ステップA21)。そして、処理部21は、処理を終了するか否かを判定し(ステップA23)、まだ終了しないと判定した場合は(ステップA23;No)、ステップA1に戻る。また、処理を終了すると判定した場合は(ステップA23;Yes)、第1のベースバンド処理を終了する。
2−1−3.実験結果
図15は、上記の位置算出方法で測位計算を行った実験結果の一例を示すグラフである。グラフの横方向は東西方向の位置算出精度を示し、縦方向は南北方向の位置算出精度を示す。グラフの中心が位置誤差“0[メートル]”に相当し、グラフの中心に近いほど位置算出精度が高いことを意味する。従来の手法で測位計算を行った場合の位置誤差を白ダイヤのプロットで示し、本実施形態の手法で測位計算を行った場合の位置誤差を黒ダイヤのプロットで示す。
図15のグラフを見ると、従来の手法では、位置誤差を示すプロットが全体的に広くばらついており、位置算出精度が低くなっていることがわかる。それに対し、本実施形態の手法では、位置誤差を示すプロットが全体的に中心部分に集中しており、従来の手法と比べて位置算出精度が向上していることがわかる。これにより、本実施形態の位置算出方法の有効性が実証された。
2−1−4.作用効果
ベースバンド処理回路部20において、衛星捕捉部211は、GPS衛星から受信したGPS衛星信号を用いて、GPSアンテナ5からGPS衛星までの観測擬似距離を求める。また、衛星捕捉部211は、受信したGPS衛星信号のドップラー周波数を測定する。擬似距離誤差推定部213は、衛星捕捉部211により測定されたドップラー周波数を用いて予測擬似距離を算出し、観測擬似距離と予測擬似距離とを用いて、観測擬似距離に含まれている第1の擬似距離推定誤差を推定する。
その一方で、擬似距離誤差推定部213は、位置算出部215が測位計算を行って取得した携帯型電話機1の位置及び時計誤差を用いて、観測擬似距離に含まれている第2の擬似距離推定誤差を推定する。そして、推定した第1及び第2の擬似距離推定誤差を用いて、観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定する。測位結果を利用することで、観測擬似距離に含まれている誤差を高い正確性で推定することができる。その上で、第2の擬似距離推定誤差を用いて第1の擬似距離推定誤差を補正することで、観測擬似距離に含まれている真正誤差を正しく推定することができる。
また、GPS衛星毎に擬似距離誤差を推定して擬似距離誤差の期待値を設定することで、GPS衛星毎に擬似距離誤差分布を定義することができる。そして、各GPS衛星それぞれについて定義された擬似距離誤差分布と、各衛星それぞれについて観測された観測擬似距離とを用いて、例えば最小二乗法を適用した測位計算を行う。これにより、マルチパス環境や屋内環境といった、擬似距離誤差の分布が期待値ゼロの正規分布に従うとは限らない環境においても、位置算出を正確に行うことが可能となる。
2−2.第2実施例
2−2−1.記憶部のデータ構成
図16は、第2実施例に係るベースバンド処理回路部20の記憶部23のデータ構成の一例を示す図である。なお、第1実施例に係る図12のベースバンド処理回路部20の記憶部23と同一のデータについては、同一の符号を付して説明を省略する。
記憶部23には、プログラムとして、処理部21により読み出され、第2のベースバンド処理(図18参照)として実行される第2のベースバンド処理プログラム231Bが記憶されている。第2のベースバンド処理プログラム231Bは、擬似距離誤差推定プログラム2311をサブルーチンとして含む。
また、記憶部23には、主要なデータとして、擬似距離誤差標準偏差モデルデータ232と、モデル選択条件テーブル233と、衛星別データ234と、測位結果データ239とが記憶される。
擬似距離誤差標準偏差モデルデータ232は、擬似距離誤差分布238の擬似距離誤差標準偏差238Bとして設定する擬似距離誤差標準偏差に係るモデル(以下、「擬似距離誤差標準偏差モデル」と称す。)が定義されたデータである。
本実施例では、擬似距離誤差標準偏差モデルは、GPS衛星信号の信号品質と擬似距離誤差標準偏差とを対応付けたモデルとして定義される。信号品質は、GPS衛星信号を受信した信号の品質であり、例えば信号対雑音比SNR(Signal to Noise Ratio)や交差偏波比XPR(Cross Polarization Power Ratio)、IQ相関値から算出可能な相関パワー値といった信号品質指標値で表される。
SN比は、例えば次式(10)に従って算出される。
SNR=PS/PN ・・・(10)
但し、「PS」は相関演算の結果として得られる相関値のうちのピーク相関値である。「PN」はピーク位相から所定位相(例えば1チップ)離れた位相における相関値である。SN比が大きいほど、信号品質が高いことを意味する。
また、XPRは、例えば次式(11)に従って算出される。
XPR=(PS−PN)/PS ・・・(11)
但し、XPRは“1”に近いほど信号品質が高いことを意味する。
図17は、擬似距離誤差標準偏差モデルの一例を示す図である。図17(A)は、屋内で衛星の見通しが悪い環境に対応する屋内モデルAの一例である。図17(B)は、屋内で衛星の見通しが良い環境に対応する屋内モデルBの一例である。また、図17(C)は、屋外環境に対応する屋外モデルの一例である。
各図において、横軸は信号品質指標値(ここではSNR)であり、縦軸は擬似距離誤差標準偏差“σ”(単位はメートル)である。信号品質指標値の数値範囲は、測位環境に応じて概ね定まる。測位環境が良好であるほど、信号品質指標値はより大きな値をとり得るため、信号品質指標値の数値範囲は広くなる。そのため、図17では、横軸の信号品質指標値のスケールをモデル毎に変えて図示している。
図17を見ると、何れの擬似距離誤差標準偏差モデルも、信号品質指標値が大きくなるほど、擬似距離誤差標準偏差が減衰する変化傾向を示すことがわかる。しかし、その減衰の程度は測位環境に応じて異なる。屋外モデルでは、信号品質指標値が増加すると、擬似距離誤差標準偏差はほぼゼロまで減少するため、減衰の程度は大きいと言える。屋内モデルBも、屋外モデルほどではないものの、擬似距離誤差標準偏差がゼロ近傍まで減衰する。しかし、屋内モデルAでは、信号品質指標値が増加しても、擬似距離誤差標準偏差はそれほど減衰しないことがわかる。
このように、擬似距離誤差標準偏差の減衰の程度は測位環境毎に異なり得るため、測位環境別に擬似距離誤差標準偏差モデルを定めることが適切である。具体的には、測位環境別に、擬似距離誤差のサンプルデータを収集する。そして、収集した擬似距離誤差のサンプルデータを、信号品質別に複数の正規分布に分類し、各正規分布の標準偏差を求めることで、信号品質指標値対擬似距離誤差標準偏差のモデルを得る。
モデル選択条件テーブル233は、何れの測位環境において何れの擬似距離誤差標準偏差モデルを選択するかの条件が定められたテーブルである。
2−2−2.処理の流れ
図18は、記憶部23に記憶されている第2のベースバンド処理プログラム231Bが処理部21により読み出されることで、ベースバンド処理回路部20において実行される第2のベースバンド処理の流れを示すフローチャートである。なお、図13の第1のベースバンド処理と同一のステップについては同一の符号を付して説明を省略し、第1のベースバンド処理とは異なるステップを中心に説明する。
処理部21は、ステップA1の後、例えば前回のGPS衛星の捕捉結果に基づいて、現在の測位環境を判定する(ステップC2)。測位環境の判定は、例えば、(A)信号強度、(B)衛星天空配置、(C)可視衛星数、といった複数の要素を総合的に考慮することで実現すると好適である。
(A)信号強度は、受信したGPS衛星信号の強さである。(B)衛星天空配置は、天空におけるGPS衛星のばらつき具合を示す指標値であり、例えばPDOP(Position Dilution Of Precision)値で表される。GPS衛星のばらつきが大きいほど、PDOP値は小さくなる。(C)可視衛星数は、受信点の天空に位置し、受信点で観測可能なGPS衛星の数である。信号強度が強く、衛星天空配置が良く、可視衛星数が多いほど、測位環境は良好であると判断できる。
処理部21は、各捕捉対象衛星について行うループAの処理において、擬似距離誤差期待値238Aを設定した後(ステップA13)、記憶部23のモデル選択条件テーブル233を参照し、記憶部23に記憶された擬似距離誤差標準偏差モデルデータ232の中から、ステップC2で判定した測位環境に対応する擬似距離誤差標準偏差モデルを選択する(ステップC10)。
次いで、処理部21は、当該捕捉対象衛星から受信したGPS衛星信号の信号品質指標値を算出する(ステップC12)。そして、処理部21は、ステップC10で選択した擬似距離誤差標準偏差モデルと、ステップC12で算出した信号品質指標値とを用いて、擬似距離誤差標準偏差238Bを設定する(ステップC14)。
その後、処理部21は、ステップA13で設定した擬似距離誤差期待値238Aと、ステップC14で設定した擬似距離誤差標準偏差238Bとに基づき、当該捕捉対象衛星の擬似距離誤差分布238を設定する(ステップC16)。そして、処理部21は、次の捕捉対象衛星へと処理を移行する。
2−2−3.作用効果
第2実施例では、測位環境別に定義された擬似距離誤差標準偏差モデルと、受信したGPS衛星信号の信号品質とに基づいて、擬似距離誤差標準偏差を設定する。これにより、測位環境に見合った適切な擬似距離誤差分布を設定することができる。また、擬似距離誤差期待値及び擬似距離誤差標準偏差を衛星毎に個別に設定することで、擬似距離誤差分布を衛星毎に適正化し、位置算出の正確性をより一層向上させることができる。
3.変形例
本発明を適用可能な実施例は、上記の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明する。
3−1.予測擬似距離の算出
受信周波数には、ドップラー周波数の他に、GPS受信機のクロックのドリフトによる周波数ズレが含まれる。そのため、ドップラー周波数だけではなく、クロックドリフトも考慮して予測擬似距離“P(T)”を算出すると好適である。この場合は、式(1)及び(2)において、ドップラー周波数“fd”と併せてクロックドリフト“fdrift”を加味して視線速度“VR”を算出し、式(4)に従って予測擬似距離“P(T)”を算出すればよい。
また、上記の実施形態では、測定したドップラー周波数“fd”を用いて視線速度“VR”を算出したが、測位結果を利用して視線速度“VR“を算出することも可能である。つまり、過去に測位結果として取得したGPS受信機の位置ベクトルを時間微分してGPS受信機の速度ベクトルを算出する。そして、算出したGPS受信機の速度ベクトルとGPS衛星の速度ベクトルとを用いて、GPS受信機とGPS衛星との相対速度ベクトルを算出する。そして、相対速度ベクトルを視線方向に投影することで、視線速度(視線速度ベクトル)“VR”が算出できる。このようにして算出した視線速度“VR”を用いることによっても、式(4)から予測擬似距離“P(T)”を算出することができる。
3−2.所与の受信位置
上記の実施形態では、測位計算で求められたGPS受信機の位置を所与の受信位置として、観測擬似距離に含まれている第2の誤差(第2の擬似距離推定誤差)を推定した。しかし、所与の受信位置として用いる位置がこれに限られないことは勿論である。
例えば、サーバーアシストを利用して取得した位置(基地局位置や受信点位置)を所与の受信位置として、第2の擬似距離推定誤差を推定してもよい。また、電子機器の使用者(ユーザー)によって操作入力された地点や場所に相当する位置を所与の受信位置として、第2の擬似距離推定誤差を推定してもよい。ある程度の正確性が保証される受信位置であれば、任意の受信位置を用いて第2の擬似距離推定誤差を推定可能である。
また、上記の実施形態では、受信位置の他にクロックバイアスも加味して第2の擬似距離推定誤差を推定したが、クロックバイアスの値を知ることができない場合には、式(7)において受信位置のみを用いて第2の擬似距離推定誤差を推定することとしてもよい。
3−3.第1の擬似距離推定誤差の補正
上記の実施形態では、所定期間分の擬似距離誤差オフセット値を単純に算術平均した擬似距離誤差オフセット平均値を用いて第1の擬似距離推定誤差を補正したが、補正方法はこれに限られない。例えば、所定期間分の擬似距離誤差オフセット値に重み付けをして加重平均を行い、その加重平均結果を用いて補正してもよい。この場合、GPS衛星信号の信号強度や受信環境等に基づいて擬似距離誤差オフセット値の信頼性を判定し、信頼性が高いと判定した擬似距離誤差オフセット値の重みを高く設定して加重平均すると効果的である。また、平均値を用いるのではなく、所定期間分の擬似距離誤差オフセット値のうちの中央値を用いて補正するなどしてもよい。
3−4.電子機器
上記の実施例では、電子機器の一種である携帯型電話機に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明を適用可能な電子機器はこれに限られるわけではない。例えば、カーナビゲーション装置や携帯型ナビゲーション装置、パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)、腕時計といった他の電子機器についても同様に適用することが可能である。
3−5.処理の主体
上記の実施例では、擬似距離誤差推定処理をベースバンド処理回路部の処理部が実行するものとして説明したが、擬似距離誤差推定処理を電子機器のホスト処理部が実行することとしてもよい。この場合は、GPS受信部が擬似距離誤差推定装置に相当するのではなく、電子機器が擬似距離誤差推定装置に相当することになる。
また、衛星捕捉処理や擬似距離誤差推定処理はベースバンド処理回路部の処理部が実行し、位置算出処理は電子機器のホスト処理部が実行するといったように、処理を分散させることとしてもよい。
3−6.衛星測位システム
また、上記の実施形態では、衛星測位システムとしてGPSを例に挙げて説明したが、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の他の衛星測位システムであってもよい。
1 携帯型電話機、 10 GPS受信部、 11 RF受信回路部、 20 ベースバンド処理回路部、 21 処理部、 23 記憶部、 30 ホスト処理部、 40 操作部、 50 表示部、 60 携帯電話用アンテナ、 70 携帯電話用無線通信回路部、 80 記憶部、 90 時計部

Claims (8)

  1. 衛星から衛星信号を受信して、受信点から前記衛星までの擬似距離の観測値である観測擬似距離を求めることと、
    受信した前記衛星信号のドップラー周波数を測定することと、
    前記ドップラー周波数を用いて、前記擬似距離を予測した予測擬似距離を算出することと、
    前記観測擬似距離と前記予測擬似距離とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定することと、
    所与の受信位置を用いて、前記観測擬似距離に含まれている第2の誤差を推定することと、
    前記第1の誤差と前記第2の誤差とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定することと、
    を含む擬似距離誤差推定方法。
  2. 前記真正誤差を推定することは、
    前記第1の誤差と前記第2の誤差との差分を算出することと、
    所定期間分の前記差分の算出結果を用いて、前記第1の誤差を補正することと、
    を含む、
    請求項1に記載の擬似距離誤差推定方法。
  3. 前記補正することは、前記所定期間分の前記差分の算出結果を平均した結果を用いて、前記第1の誤差を補正することである、
    請求項2に記載の擬似距離誤差推定方法。
  4. 前記予測擬似距離を算出することは、
    前記ドップラー周波数を用いて視線速度を算出することと、
    前記視線速度を積分することで前記予測擬似距離を求めることと、
    を含む、
    請求項1〜3の何れか一項に記載の擬似距離誤差推定方法。
  5. 請求項1〜4の何れか一項に記載の擬似距離誤差推定方法を用いて擬似距離誤差を推定することと、
    前記推定した擬似距離誤差を期待値とする所定の擬似距離誤差分布と、前記観測擬似距離とを用いて、前記受信点の位置を算出することと、
    を含む位置算出方法。
  6. 前記擬似距離誤差分布は、前記擬似距離誤差の期待値及び前記擬似距離誤差の標準偏差で定義される分布であり、
    前記衛星信号の信号品質と前記標準偏差とを対応付けたモデルを用いて、前記擬似距離誤差分布の標準偏差を設定することを更に含む、
    請求項5に記載の位置算出方法。
  7. 測位環境別に前記モデルが定められており、
    測位環境を判定することを更に含み、
    前記設定することは、前記判定した測位環境に対応するモデルを用いて前記標準偏差を設定することを含む、
    請求項6に記載の位置算出方法。
  8. 衛星から衛星信号を受信して、受信点から前記衛星までの擬似距離の観測値である観測擬似距離を求める擬似距離観測部と、
    受信した前記衛星信号のドップラー周波数を測定するドップラー測定部と、
    前記ドップラー周波数を用いて、前記擬似距離を予測した予測擬似距離を算出する擬似距離予測部と、
    前記観測擬似距離と前記予測擬似距離とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている第1の誤差を推定する第1の誤差推定部と、
    所与の受信位置を用いて、前記観測擬似距離に含まれている第2の誤差を推定する第2の誤差推定部と、
    前記第1の誤差と前記第2の誤差とを用いて、前記観測擬似距離に含まれている真正誤差を推定する真正誤差推定部と、
    を備えた擬似距離誤差推定装置。
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