JP2012181156A - 時計用ぜんまい及びこれを備えた機械式時計 - Google Patents
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Abstract
【課題】解け(巻戻し)に伴う出力トルクの変動を最低限に抑え得、且つ製造し易い時計用ぜんまい及びこれを備えた機械式時計を提供すること。
【解決手段】機械式時計の時計用ぜんまい1は、弾性材料製の細長い板状体31からなるぜんまい本体30を備える。外周側端部32で香箱に係合され内周側端部33で香箱真に係合される該ぜんまい本体30が、少なくとも一部の長手方向領域Qiにおいて、内周側端部33に近づくほど折曲角θが大きくなるように、長手方向J延在する折曲線Bに沿って折曲げられている。長手方向領域Qiは、ぜんまい本体30のうち香箱真に係合される内周側端部33に近い部分を含む。折曲角θの最大値は25度以下である。
【選択図】図1
【解決手段】機械式時計の時計用ぜんまい1は、弾性材料製の細長い板状体31からなるぜんまい本体30を備える。外周側端部32で香箱に係合され内周側端部33で香箱真に係合される該ぜんまい本体30が、少なくとも一部の長手方向領域Qiにおいて、内周側端部33に近づくほど折曲角θが大きくなるように、長手方向J延在する折曲線Bに沿って折曲げられている。長手方向領域Qiは、ぜんまい本体30のうち香箱真に係合される内周側端部33に近い部分を含む。折曲角θの最大値は25度以下である。
【選択図】図1
Description
本発明は時計用ぜんまい及びこれを備えた機械式時計に係る。
時計用ぜんまいは、細長い板ばねすなわち弾性材料製の細長い板状体からなるぜんまい本体により構成され、この細長い板ばねないし板状体の横断面は、通常は、細長い(幅に比較して厚さが薄い)長方形であり、この長方形の断面形状は、ぜんまい本体のうち香箱に係合される外周側端部から香箱真に係合される内周側端部まで一定(同じ)である。
しかしながら、その場合、内周側端部と外周側端部とでぜんまいの曲がり状態が異なるので、ぜんまいからの出力トルクが異なる。
一方、ぜんまいの解け始めの24時間は一定の出力トルクが得られるように、ぜんまいの「コイリング角度(巻き角度)」及び「厚さ」について、
(コイリング角度)・(厚さ)3=一定 (式1)
になるようにすることは、提案されている(特許文献1)。
(コイリング角度)・(厚さ)3=一定 (式1)
になるようにすることは、提案されている(特許文献1)。
しかしながら、ばね材からなり且つサイズが小さい時計用ぜんまいについて、その厚さを長さ方向に沿って調整ないし制御すること、即ち、長手方向の厚さが上記「式1」になるように制御して時計用ぜんまいを妥当な範囲内の製造コストで製造することは、時計用ぜんまいが長期間大きな力の作用下で適切に動作すべきことを考慮すると、容易ではなく現実的ではない。また、厚さを厚くすると時計用ぜんまいが重くなり、時計が重くなる虞れもある。
なお、厚さ及び幅が一定の帯状ぜんまい本体をもちいた時計用ぜんまいでは、フル巻上げ状態(全巻状態)から完全な解け状態(巻戻し状態)へとぜんまいが解けるにつれて、ぜんまいの出力トルク(該ぜんまいを用いた香箱車の出力トルク)が低下すること、及び出力トルクの低下の程度はぜんまいの解け状態が進行するにつれて大きくなることは周知である(例えば、特許文献2)。
また、香箱車からの出力トルクが大きくなる(小さくなる)程てんぷの振り角が大きくなる(小さくなる)こと、及びてんぷの振り角がある範囲よりも大きくなったり小さくなったりすると歩度(「秒/日」単位で表した時計の進み又は遅れ)が遅れること、換言すれば、てんぷの振り角がある範囲内にあり香箱車の出力トルクが所定の範囲内にある場合は、歩度単位でみた時計の進みや遅れが小さく、香箱車の出力トルクが所定の範囲よりも小さくなっててんぷの振り角がある範囲よりも小さくなると、歩度単位でみた時計の遅れが大きくなることも知られている(例えば、特許文献3の図9〜図11)。すなわち、ぜんまいの解けが進行してぜんまいのフル巻上げ状態(全巻状態)に近い場合の出力トルクと比較して出力トルクがある程度以上小さくなると、歩度の遅れが大きくなるのを無視し難くなる。
なお、時計用ぜんまいの出力トルクを高めることを目的として、時計用ぜんまいのぜんまい体を、横断面が凸状またな凹状になるように湾曲させることも提案されている(特許文献4)。
しかしながら、この提案の時計用ぜんまいは、実際上、その全長にわたって一定の断面形状になるように凸状(又は凹状)に湾曲させるものである。仮に、時計用ぜんまいの長手方向に沿って湾曲形状を変えようとすると、妥当な製造コストで正確な形状制御は実際上行い難い。
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、解け(巻戻し)に伴う出力トルクの変動を最低限に抑え得、且つ製造し易い時計用ぜんまい及びこれを備えた機械式時計を提供することにある。
本発明の時計用ぜんまいは、前記目的を達成すべく、弾性材料製の細長い板状体からなるぜんまい本体を備えた時計用ぜんまいであって、外周側端部で香箱に係合され内周側端部で香箱真に係合される該ぜんまい本体が、少なくとも一部の長手方向領域において、前記内周側端部に近づくほど折曲角が大きくなるように、長手方向に延在する折曲線に沿って折曲げられている。
本発明の時計用ぜんまいでは、「外周側端部で香箱に係合され内周側端部で香箱真に係合される該ぜんまい本体が、少なくとも一部の長手方向領域において、前記内周側端部に近づくほど折曲角が大きくなるように、長手方向に延在する折曲線に沿って折曲げられている」ので、ぜんまいの解け(巻戻し)の際のぜんまいの出力トルクの大きさが折曲角を変えるだけで制御され得るから、ぜんまいの解けの際の出力トルク変動の制御が容易に行われ得る。その結果、本発明の時計用ぜんまいでは、ぜんまいの出力トルク変動の低減が容易に行われ得る。
ここで、折曲線に沿った折曲は、例えば、プレス加工によりなされ得る。但し、所望ならば、他の手段で折曲線を形成(折曲状態を実現)してもよい。なお、以上において、「ぜんまい本体の外周側端部と香箱との係合」は、香箱の内周面の凹凸部にぜんまい本体の外周側端部が引っかかることによる係合(手巻時計の場合)であっても、香箱の内周面にぜんまい本体の外周側端部が押付けられて両者の間に摩擦力が働くことによる係合すなわち摩擦係合(自動巻時計の場合)であってもよい。
本発明の時計用ぜんまいでは、典型的には、前記長手方向領域がぜんまい本体のうち香箱真に係合される内周側端部に近い部分を含んでいる。
その場合、ぜんまいの解けが進行してぜんまいが完全に解けてしまう状態に近づいても、ぜんまいのトルクがフル巻上げ(全巻)状態の場合のトルクと比較して大幅に低下するのを避け、ぜんまいの解けの進行に伴う歩度の遅れを最低限に抑えることが可能になる。
本発明の時計用ぜんまいにおいて、前記長手方向領域がぜんまい本体のうち香箱に係合される外周側端部に近い部分を含んでいてもよい。
その場合、ぜんまいのフル巻上げ(全巻)状態からぜんまいが実際上解けた状態に至るまでぜんまいの解けの程度にかかわらず、ぜんまいの出力トルクを、実際上又は概ね一定に保ち得、時計の歩度の変動を最低限に抑え得る。
本発明の時計用ぜんまいにおいて、前記長手方向領域が、
(1)ぜんまい本体の全長のうちの一部の部分であっても、
(2)ぜんまい本体の全長であってもよい。
(1)ぜんまい本体の全長のうちの一部の部分であっても、
(2)ぜんまい本体の全長であってもよい。
前記の(1)の場合、前記一部の部分が解ける際に、該部分の解けの際の出力トルクの変動を最低限に抑え得、(2)の場合、ぜんまいが解け始めてから概ね解けきるまでの実際上全期間においてぜんまいの出力トルクの変動を最低限に抑えることが可能になり、それに応じて歩度の変動を最低限に抑え得る。
本発明の時計用ぜんまいにおいて、折曲角の最大値が
(1)25度以下であっても、
(2)20度以下であっても、
(3)15度以下であってもよい。
(1)25度以下であっても、
(2)20度以下であっても、
(3)15度以下であってもよい。
折曲角の最大値が大きい程、大きなトルク変化を解消し得る。但し、折曲角が大きくなると、ぜんまいの巻上げに際して捻れなどを伴う変形が生じ易くなったり長期間の安定な動作が期待し難くなる虞れがあるので、折曲角の上限は、適切な巻上げが長期間安定に行われ得る範囲に設定される。また、折曲角が大きくなると、香箱内に収容されるぜんまい本体の長さが短くなるので、折曲角の上限は、ぜんまい本体の所望の長さ(換言すれば、全巻から完全巻戻しに至るまでのぜんまいの動作時間)が確保される範囲内に設定される。
本発明の時計用ぜんまいにおいて、典型的には、折曲線は一つである。但し、所望ならば、二つ以上の折曲線が平行にあってもよい。なお、折曲線近傍の折曲部分は、円弧で近似され得る。
本発明の機械式時計は、前記目的を達成すべく、上記のような時計用ぜんまいを有する。
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
本発明の好ましい実施例の時計用ぜんまい1の本体30を展開して示した図1の(a)及び(b)並びにその横断面を示した図1の(c)〜(g)に基づいて説明する前に、該時計ぜんまい1が組み込まれてなる香箱車2について、図3の(a)〜(d)に基づいて、簡単に、説明する。
図3の(a)〜(d)からわかるように、機械式時計5の香箱車2は、時計用ぜんまい1と、香箱10と香箱真20とを有する。なお、図3の(a)〜(d)では、機械式時計5のうち香箱車2のみを示し、他の部分は省く。
香箱車2において渦巻状のぜんまい本体30は、外周側端部32の端に位置する折曲係合部Hfにおいて香箱10の内周壁11の係合部12に係合され、内周側端部33の端に位置する取付部Heにおいて香箱真20の取付部に取付けられている。
ぜんまい1は、図3の(a)に示したフル巻上げ(全巻)状態Sfから図3の(b)に示したような少しだけ解けた乃至巻戻された状態Saを経て解けないし巻戻されていき、図3の(c)に示したようなほとんど解けた状態Sbを経た後、図3の(d)に示したように完全に解けた状態(完全巻戻し状態)Seに達する。
ぜんまいのこのような解け過程(巻戻し過程)において、従来の典型的な幅及び厚さが一定の帯状体からなるぜんまいの場合、ぜんまいの出力トルクTは、典型的には、図5において破線Tpで示したように変化する。すなわち、巻数Nが小さくなると、トルクTpが大きく落ちていく。ここで、以下の説明の簡明化のために、出力トルクTがトルクレベルTc以下になると無視し難い程度の歩度の遅れが生じるものと想定する。また、このような従来のぜんまいの場合においては、図3の(c)のような相当程度の巻戻し状態Sbに達すると、このような出力トルクTがレベルTcを下回り、歩度の顕著な遅れが生じるものと想定する。
本発明の好ましい一実施例の時計用ぜんまい1の本体30は、図1の(a)及び(b)の展開図において示したように、概ね細長い板状の形態を有する。また、ぜんまい本体30は、図1の(c)〜(g)の断面図並びにその夫々に対応する断面拡大図である図2の(a)〜(e)に示したように、板状体31が折曲線Bに沿って折り曲げられた形態を有する。
ぜんまい本体30を構成する板状体31は、一定の幅Wと厚さtとを有する直方体形状の横断面Dを有する。
すなわち、ぜんまい本体30の板状体31は、部位A0よりも内周側端部33に近い領域Qiにおいて、折曲線Bに沿って折曲げられている(説明及び図示の簡明化のために、図1の(a)及び(b)では、ぜんまい本体30のうち香箱10への折曲係合部Hf及び香箱真20への取付部Heは省かれた状態で示されている)。
従って、折曲領域Qiにおいては、ぜんまい本体30の実効幅Weffは、実際には、多少変動している。但し、折曲角θは典型的には25〜30度程度以下と比較的小さいので、幅Weff(図2の(a)参照)がぜんまい本体30の全長にわたって実質的に一定(Weff〜W)であるとみなしてもよい。また、所望ならば、折曲状態において、ぜんまい本体30の幅が全長にわたって一定になるように、当初の板状体31の幅が領域Qiにおいて変動していても(すなわち、折曲角θが大きくなる端部33側ほど板状体31の当初(折曲前)の幅が広くなっていても)よい。
より詳しくは、板状体31は、図1の(a)、(b)及び(c)〜(f)並びに図2の(a)〜(d)からわかるように、ぜんまい本体30の幅方向中央部34において、部位A0から内周側端部33まで板状体31の長手方向Jに延在する折曲線Bに沿って折曲げられている。折曲線Bに沿った折曲角θは、部位A0においては0度で、内周側端部33においては20度であり、部位A0から内周側端部33に近づくほど大きくなっている。すなわち、例えば、図1の(b)の部位A0,A1,A2,A3,A4におけるIG−IG線断面、IF−IF線断面、IE−IE線断面、ID−ID線断面、IC−IC線断面での断面形状は、夫々、図1の(g),(f),(e),(d),(c)に示した通り、又はこれらの夫々を拡大して示した図2の(a),(b),(c),(d),(e)に示した通りである。長手方向部位A4は、実際上、端部33に一致する。
図2の(a)〜(e)の夫々において、「○」で示した部位Gは、ぜんまい本体30の各長手方向部位A0,A1,A2,A3,A4における横断面D0,D1,D2,D3,D4の重心位置Pg0,Pg1,Pg2,Pg3,Pg4である。図2の(a)〜(d)において、折曲前の板状体31の状態ないし折曲角θが0(折曲がない場合)のぜんまい本体30の横断面(横断面D0に相当)の状態は想像線で示されている。
ぜんまい本体30の部位A0,A1,A2,A3,A4における断面二次モーメントMは、該部位A0,A1,A2,A3,A4において折曲角θの大きさが異なることから、図4に示したように変化する。すなわち、図4には、断面二次モーメントMの折曲角θに対する依存性が示されており、折曲角θが0度から、5度、10度、15度、20度と増していくにつれて、断面二次モーメントMが急激に増大する。これは、定性的には、折曲線Bに沿った折曲角θの折曲に伴って、図2の紙面(図の面)で見て横断面の上下方向の実効厚さが増し、該実効厚さの3乗に依存して断面二次モーメントが増大することによる。
より詳しくは、図1に示したぜんまい1では、図4に示した通り、巻数Nの少ない領域程断面二次モーメントMが大きくなるように、折曲角度θが増大し、例えば、部位A0,A1,A2,A3,A4における折曲角度θが0度,5度,10度,15度,20度となっているので、部位A1,A2,A3,A4においては、折曲角θの増大に応じて、断面二次モーメントMが、
ΔM1=M(5)−M(0)
ΔM2=M(10)−M(0)
ΔM3=M(15)−M(0)
ΔM4=M(20)−M(0)
だけ増大する。
ΔM1=M(5)−M(0)
ΔM2=M(10)−M(0)
ΔM3=M(15)−M(0)
ΔM4=M(20)−M(0)
だけ増大する。
すなわち、折曲線Bに沿って長手方向位置に応じて異なる大きさの折曲角θで折曲げられたぜんまい本体30を備えたぜんまい1では、厚さ一定の従来のぜんまいと異なり、図2の(a)〜(e)に示したように、長手方向位置に応じて重心位置Pg0,Pg1,Pg2,Pg3,Pg4に関し実効厚さの大きな変化があり、それにより、部位A1,A2,A3,A4における断面二次モーメントMが、ΔM1,ΔM2,ΔM3,ΔM4だけ増大するので、相当程度の解け状態Sbに近付いた状態よりもぜんまい1の解け(巻戻し)が進行する際に、図5に示したように出力トルクTが巻数Nに対して破線Tpの如く変化する厚さ一定の従来のぜんまいと異なり、断面二次モーメントMの増大ΔM1,ΔM2,ΔM3,ΔM4に応じて出力トルクTが高められ得る。
より詳しくは、ぜんまい1を備えた香箱車2を有する機械式時計5では、ぜんまい1が解け乃至巻戻されて、図3の(b)のようにぜんまい1が少しだけ解けた(巻戻された)状態Saから図3の(c)のようにぜんまい1が相当程度又はほとんど解けた(巻戻された)状態Sbに近づく前に、ぜんまい本体30のうち、香箱真20に巻かれていた部位A1の領域が解け(巻戻され)始める。
なお、ぜんまい1を備えた香箱車2では、ぜんまい1は端部33に近い長手方向領域Qiにおいて端部33から離れるほど折曲角θが小さくなるように折り曲げられているので、香箱真20のまわりに巻かれるぜんまい1の領域Qiは、外周側程折曲角θが小さいから、折曲線Bに沿った折曲は最下層(一巻き目)を除いて径方向に余分なスペースを要せず、ぜんまい自体の厚さを全幅に亘って厚くする特許文献1の場合と異なり、香箱10内に収容可能なぜんまい1の長さが折曲線Bに沿った折曲によって大きく低下する虞れがない。
ぜんまい1の解け(巻戻し)において、部位A1,A2,A3,A4が解ける際の出力トルクTとして、断面二次モーメントの増大ΔM1,ΔM2,ΔM3,ΔM4に相当する分だけ余分の増分トルクΔT1,ΔT2,ΔT3,ΔT4が得られ、結果としてより大きい出力トルクT=Ta=Tp+ΔT(ここで、ΔT=ΔT1,ΔT2,ΔT3,ΔT4等)が得られる。なお、出力トルクTは実際上断面二次モーメントMにリニアに依存するから、断面二次モーメントの増分ΔM1,ΔM2,ΔM3,ΔM4がそのまま出力トルクの増分ΔT1,ΔT2,ΔT3,ΔT4に寄与する。
その結果、図5において、実線Taで示したように、巻数が小さい領域すなわちぜんまい1がほとんど解けた状態Sb近傍の状態Sであって従来のぜんまいではトルクTが所望レベルTcよりも小さくなって、歩度の遅れが大きくなるような場合であっても、トルクTaが広い範囲において該レベルTcよりも高く保たれ得るから、歩度の遅れが最低限に抑えられ、ぜんまい1がほとんど解けた状態を含めて広範囲で歩度の変動を最低限に抑え得るに十分な出力トルクを与え、機械式時計5が歩度の遅れの少ない状態で正確に時を刻み得る。
なお、曲げが大きくなると、断面二次モーメントの演算が複雑化するので、実際には、例えば、図6に示したように、複数の領域に分けて断面二次モーメントを求め、それを合算する。例えば、図6おいては、部位A4における横断面D4(折曲角θ=20度)の状態が示されている。横断面D4は、例えば、領域ないし区分K1,K2,K3,K4に分けられる。ここで、領域ないし区分K1は横断面D4の角部(隅部)41,41を結ぶ線U1よりも下の領域、領域ないし区分K2は折曲部42の内面が内周側円弧R1で近似される部位43の両端44,44を結ぶ線U2と上記の線U1との間の領域、領域ないし区分K3は折曲部42の外面が外周側円弧R2で近似される部位45の端46,46の夫々と部位43の端44,44の夫々とを結ぶ線U3,U3と線U2との間の領域、領域ないし区分K4は線U3,U3によって囲まれた円弧状折曲部42の領域である。「○」は重心Gの位置Pg4である。
全体の断面二次モーメントMは、
M=2(MK1+MK2+MK3)+MK4
である。ここで、MK1,MK2,MK3,MK4は、区分ないし領域K1,K2,K3,K4の断面二次モーメントである。部位A4ないし横断面D4のように折曲角θが大きくなると、区分K1,K2の寄与が大きくなる。ここで、
MK1=(t4/24)・(cos2θ)/(tanθ)
MK2=〔t/(12・sinθ)〕
・〔(h・sinθ−t・cosθ)2+3h2sin2θ〕
である。なお、「h」は、図6からわかるように、折曲領域K4以外の領域の幅方向の長さ(の半分)である。断面二次モーメントMは、ほかの手段乃至手順で演算してもよい。
M=2(MK1+MK2+MK3)+MK4
である。ここで、MK1,MK2,MK3,MK4は、区分ないし領域K1,K2,K3,K4の断面二次モーメントである。部位A4ないし横断面D4のように折曲角θが大きくなると、区分K1,K2の寄与が大きくなる。ここで、
MK1=(t4/24)・(cos2θ)/(tanθ)
MK2=〔t/(12・sinθ)〕
・〔(h・sinθ−t・cosθ)2+3h2sin2θ〕
である。なお、「h」は、図6からわかるように、折曲領域K4以外の領域の幅方向の長さ(の半分)である。断面二次モーメントMは、ほかの手段乃至手順で演算してもよい。
以上のような形状に、ぜんまい1の領域を折曲線に沿って折り曲げるには、例えば、上下の金型間において折曲加工を行うプレス加工によって折り曲げればよい。なお、この場合、折曲領域42において、実際上円弧R1,R2を形成する折曲が行われるので、特許文献2のような全体が湾曲面になる場合と異なり、正確な折曲制御が行われ得る。なお、ばね材による多少のスプリングバックは避け難いので、材料の種類や厚さや幅や各部の折曲角度に応じて且つプレス圧を考慮して該スプリングバックの量を見込んだ角度の金型にしておいてプレス加工を行えばよい。ただし、材料次第では、所望ならば、例えば、溶融状態のばね合金が凝固する際に所望の曲げ形状を備えるようにして鋳造しておいてもよい。
なお、従来の時計用ぜんまいの如く例えばS字状に湾曲するように癖付けされていてもよいけれども、少なくとも折曲がある部分では、湾曲状態の癖付けが予めされていなくてもよい。
以上においては、部位A0よりも香箱真20側端部33に近い領域Qiのみにおいて折曲線Bに沿った折曲が行われたぜんまい本体30を備えたぜんまい1を具備する香箱車2の例について説明したけれども、図7の(a)〜(h)に示したように、ぜんまい本体30Aが端部32から端部33までの実際上全長において、折曲線Bに沿って折り曲げられていてもよい。この場合、折曲角θ=0度の部位A0が図7の(b)及び(h)に示したように、実際上端部32と一致する香箱10側端部32に位置し、反対側の端部33は、折曲角θ=25度の部位A5になっている。なお、部位A0と部位A5との間は、所望の間隔で部位A1,A2,A3,A4が位置決めされている(実際には、断面二次モーメントMが所望の巻数依存性を有するように部位A1,A2,A3,A4に相当する折曲角θ=5度,10度,15度,20度の部位が規定されている)。なお、図7の(c)の断面図を拡大した詳細な図は、図2の(f)に示した通りである。
このぜんまい1Aでは、香箱10側の端部32から香箱真20側の端部33までの実際上その全長にわたって折曲角θが0度から25度の範囲で単調に変動していて、断面二次モーメントMが香箱10側の端部32から香箱真20側の端部33までの実際上その全長にわたって増加しているので、図8の破線で示したような従来のぜんまいにおける出力トルクTpの巻数Nに対する依存性に対して、出力トルクTが香箱10側の端部32から香箱真20側の端部33までの実際上その全長にわたって且つ端部33に近付くほど増分が大きくなるように調整され得る。
その結果、実際上全長において所定レベルTcを上回る出力トルクTbが得られるだけでなく、実際上全長にわたって、概ね一定Tb=TxのトルクTを得ることが可能になる。
以上においては、説明の簡単化のために、図7の(d)〜(g)の断面が、夫々、図1の(c)〜(f)の断面と一致するとして説明したけれども、所望の特性Tb(N)を実現するためには、端部32から端部33に近付くほど折曲角θが大きくなるという定性的な条件が満たされる限り、その他の点、例えば具体的な角度の大きさ等は当然ながら異なっていてもよい。
また、以上においては、折曲線Bが一つである例について説明したけれども、折曲線が複数平行に又は部位A0から端部33に向かって広がるように形成されていてもよい。
1,1A 時計用ぜんまい
2 香箱車
5 機械式時計
10 香箱
11 内壁
12 係合部
20 香箱真
30,30A ぜんまい体
31 板状体
32 外周側(香箱側)端部
33 内周側(香箱真側)端部
34 幅方向中央部
41 角部(隅部)
42 折曲部
43,45 円弧状部位
44,46 端
A0,A1,A2,A3,A4,A5 部位
B 折曲線
D0,D1,D2,D3,D4,D5 横断面
G 重心
He 取付部
Hf 折曲係合端部
K1,K2,K3,K4 区分(領域)
M 断面二次モーメント
Pg0、Pg1,Pg2,Pg3,Pg4 重心位置
Qi 折曲領域(折曲線のある長手方向領域)
R1,R2 円弧
Sa 少しだけ解けた状態
Sb ほとんど解けた状態
Se 完全に解けた(完全巻戻し)状態
Sf フル巻上げ(全巻)状態
T 出力トルク
Tp 従来のぜんまいの出力トルク
Ta,Tb 改良されたぜんまいの出力トルク
Tc 時計の遅れを生じ易くなる出力トルクレベル
W 幅
Weff 実効幅
t 厚さ
U1,U2,U3 境界線
ΔM1,ΔM2,ΔM3,ΔM4 断面二次モーメントの増分
ΔT1,ΔT2,ΔT3,ΔT4 出力トルクの増分
θ 折曲角
2 香箱車
5 機械式時計
10 香箱
11 内壁
12 係合部
20 香箱真
30,30A ぜんまい体
31 板状体
32 外周側(香箱側)端部
33 内周側(香箱真側)端部
34 幅方向中央部
41 角部(隅部)
42 折曲部
43,45 円弧状部位
44,46 端
A0,A1,A2,A3,A4,A5 部位
B 折曲線
D0,D1,D2,D3,D4,D5 横断面
G 重心
He 取付部
Hf 折曲係合端部
K1,K2,K3,K4 区分(領域)
M 断面二次モーメント
Pg0、Pg1,Pg2,Pg3,Pg4 重心位置
Qi 折曲領域(折曲線のある長手方向領域)
R1,R2 円弧
Sa 少しだけ解けた状態
Sb ほとんど解けた状態
Se 完全に解けた(完全巻戻し)状態
Sf フル巻上げ(全巻)状態
T 出力トルク
Tp 従来のぜんまいの出力トルク
Ta,Tb 改良されたぜんまいの出力トルク
Tc 時計の遅れを生じ易くなる出力トルクレベル
W 幅
Weff 実効幅
t 厚さ
U1,U2,U3 境界線
ΔM1,ΔM2,ΔM3,ΔM4 断面二次モーメントの増分
ΔT1,ΔT2,ΔT3,ΔT4 出力トルクの増分
θ 折曲角
Claims (10)
- 弾性材料製の細長い板状体からなるぜんまい本体を備えた時計用ぜんまいであって、
外周側端部で香箱に係合され内周側端部で香箱真に係合される該ぜんまい本体が、少なくとも一部の長手方向領域において、前記内周側端部に近づくほど折曲角が大きくなるように、長手方向に延在する折曲線に沿って折曲げられている時計用ぜんまい。 - 前記長手方向領域が、ぜんまい本体のうち香箱真に係合される内周側端部に近い部分を含む請求項1に記載の時計用ぜんまい。
- 前記長手方向領域が、ぜんまい本体のうち香箱に係合される外周側端部に近い部分を含む請求項2に記載の時計用ぜんまい。
- 前記長手方向領域がぜんまい本体の全長のうちの一部の部分である請求項1又は2に記載の時計用ぜんまい。
- 前記長手方向領域がぜんまい本体の全長である請求項1から3までのいずれか一つの項に記載の時計用ぜんまい。
- 折曲角の最大値が25度以下である請求項1から5までのいずれか一つの項に記載の時計用ぜんまい。
- 折曲角の最大値が20度以下である請求項6に記載の時計用ぜんまい。
- 折曲角の最大値が15度以下である請求項7に記載の時計用ぜんまい。
- 折曲線が一つである請求項1から8までのいずれか一つの項に記載の時計用ぜんまい。
- 請求項1から9までのいずれか一つの項に記載の時計用ぜんまいを備えた機械式時計。
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Legal Events
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