以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では床下点検口として床部に設けられた開口部の周縁に装着される外枠について説明するが、開口部の設けられる建物の位置は床部に限らず、天井や壁部であってもよく、またその開口部の用途や枠体の名称等について特に限定するものではない。したがって、床部(天井又は壁部)に設けられる開口部の用途として、床下収納(天井収納、壁収納)のための開口部であってもよく、また枠体については内枠が嵌め込まれない単なる枠体であってもよい。
図1は、本実施形態の外枠4を含む床下点検口構造が示された概略図である。図2は、図1のII−II線断面図である。
この床下点検口構造は、床部1に設けられた開口部15に設置されている。この床部1は、建物の基礎上に支柱(不図示)によって支持された基材11と、基材11上に積層された床材12とを備える。
なお、本実施形態では、基材11としてパーティクルボードが用いられているが、この基材11としては、合板やパーティクルボードなどの木質材、硬質繊維板、中質繊維板や高比重繊維板等の木質繊維板、及びこれらの組み合わせたものを用いることができる。また、開口部15は、その形状や大きさ等を特に限定するものではないが、本実施形態では床下を視認できるほどの大きさに設定された矩形状(具体的には一辺が300mmの正方形状)となされている。
この床部1の開口部15には、これを閉塞する蓋体13が設けられている。この蓋体13は、2つの板状部材13a,13bが積層された2層構造を有し、上側の板状部材13aが床材12と同様の床材として構成されている。なお、この蓋体13には、この蓋体13を開閉する際にユーザーが把持する取手13cが設けられている(図1参照)。
この蓋体13の外周縁部及び開口部15の周縁部には、それぞれ枠体3,4が装着されている。具体的には、枠体は、蓋体13の外周縁部に装着されている内枠3と、床部1における開口部15の周縁部に装着される外枠4(本発明の枠体に相当)とを備え、内枠3が外枠4内に嵌合されることにより蓋体13の上面と床部1の上面とが略面一になるように構成されている。
内枠3は、蓋体13の周縁部に取り付けられる内枠本体31と、この内枠本体31を蓋体13に固定するための固定部材32とを備えている。内枠本体31は、蓋体13の角部に嵌め込まれるコーナー部材33と、隣り合う角部間に延びる縁部(蓋体13の一辺に対応する縁部)に装着される直線部材34とを備え、各直線部材34の両端部にそれぞれコーナー部材33が配置連結されることにより枠状に構成されている。固定部材32は、タッピングねじ、ドリルねじなどの各種ねじや釘等から構成され、内枠本体31を適所で蓋体13の周縁部に固定している。本実施形態では、固定部材32として木ねじが用いられ、内枠本体31の各辺に複数個設けられている。
具体的には、内枠本体31の直線部材34は、図2に示すように、蓋体13の側面に沿って配置される内側ベース枠35と、この内側ベース枠35の上端から蓋体13の内側及び外側に延びる内枠上鍔部36と、内側ベース枠35の下端から蓋体13の内側に延びる内枠下鍔部37とを備える。
内側ベース枠35は、蓋体13の側面に沿った縦壁部として構成され、その外側面(蓋体13と反対側の側面)に外方に突出する膨出部35aを有する。膨出部35aの頂部は、外枠4(具体的には外側ベース枠53)の内側面に当接ないしは略当接するようになっており、内外枠3,4間に遊びを設けつつ気密性が確保できるようになっている。
内枠上鍔部36は、蓋体13の内側に延びて蓋体13の周縁部上面に重合される内鍔部36aと、蓋体13の外側に延びて後述する外枠上鍔部54および床部1の上面に重合される外鍔部36bとを備えている。内鍔部36aは、内枠下鍔部37との間に蓋体13の周縁部が嵌め込まれている。外鍔部36bは、下部に外枠上鍔部54が収容可能な偏平空間が設けられ、この偏平空間に外枠上鍔部54を収容して床部1からの浮きを防止してガタつきを抑制するものとなされている。
内枠下鍔部37は、蓋体13の周縁部下面に重合される下鍔本体37aと、この下鍔本体37aの内外両縁部に下方に突設された支持リブ37bとを有し、この支持リブ37bにおいて外枠4の後述する外枠下鍔部55に当接するものとなされている。この支持リブ37bは本実施形態では内外各々2本ずつ設けられ、この内外の支持リブ37b間における下鍔本体37aには上下に貫通する貫通孔37cが設けられている。この貫通孔37cは固定部材32が挿通されるものであり、この貫通孔37cを通して固定部材32が蓋体13の周縁部にねじ込まれることにより、内枠本体31が蓋体13の周縁部に固定されている。
外枠4は、図1に実線で示すように、床部1における開口部15の周縁部に取り付けられる外枠本体5と、この外枠本体5を開口部15の周縁部に固定するための固定ユニット6とを備えている。外枠本体5は、床部1の開口部15の周縁部のうち、その角部に装着されるコーナー部材51と、隣り合う角部間に延びる縁部(開口部15の一辺に対応する周縁部)に装着される直線部材52とを備え、各直線部材52の両端部にそれぞれコーナー部材51が配置連結されることにより枠状に構成されている。固定ユニット6は、図2に示すように、直線部材52に着脱自在に取り付けられた取付異形ボルト7(取付ネジ軸部に相当)と、この異形ボルト7に螺合する挟持固定具8(挟持部に相当)とを備え、外枠本体5と協働して開口部15の周縁部を挟持することにより外枠4を開口部15の周縁部に固定するものである。
具体的には、直線部材52は、図2に示すように、外側ベース枠53(ベース枠に相当)と、外枠上鍔部54(一端フランジ部に相当)と、外枠下鍔部55(他端フランジ部に相当)とを備え、断面視クランク状に構成されている。
外側ベース枠53は、開口部15の内周面に沿った縦壁部として構成され、コーナー部材33の側壁部(不図示)とともに床部1の開口部15内に嵌め込まれる。この外側ベース枠53の高さは特に限定されるものではないが、本実施形態では床部1の開口部15における内周面の高さよりも若干短く設定され、外側ベース枠53の下端が開口部15における内周面の下端よりも高い位置に配置されている。
外枠上鍔部54は、外側ベース枠53の上端から開口部15の外側に向かって延在している。この外枠上鍔部54は、開口部15の周縁部上面に載置され、挟持固定具8とともに床部1の開口周縁部を挟んで外枠4を床部1の開口部15に装着させる。
外枠下鍔部55は、外側ベース枠53の下端から開口部15の内側に向かって延在し、上面に内枠3が載置されることにより該内枠3付き蓋体13を支持する。
さらに詳しくは、外枠下鍔部55は、内枠下鍔部37の支持リブ37bが載置される鍔本体部55aと、鍔本体部55aの内外両側縁から下方に向かって延出し互いに対向する一対の対向壁部55bと、各対向壁部55bの下端において互いに近接する方向に延出する係止鍔部55cと備え、これらが開口部15の周縁部に沿って延びている。対向壁部55bのうち外側(開口部15の内側面側)に設けられた対向壁部55bは、上端部が開口部15の内側面に重合するように配置されている。対向壁部55bは、その内壁面同士の間隔が所定の間隔D2(図11参照)に設定され、この間に取付異形ボルト7の後述するヘッド71を配置できるようになっている。係止鍔部55cは、その先端同士が所定の間隔D1(図11参照)をもって配置されており、この先端同士の間隔を通じて固定ユニット6を係脱することができる。
固定ユニット6は、上記のように、外枠本体5を床部1の開口部15に固定するためのものであり、外枠本体5に沿って適宜配置されている。本実施形態では、図1に示すように、左右に二つずつ配置されている。
この固定ユニット6は、上記のように、取付異形ボルト7と挟持固定具8とを備え、取付異形ボルト7に挟持固定具8が螺合されることにより挟持固定具8と外枠上鍔部54との間に床部1を挟持する挟持状態と、取付異形ボルト7と挟持固定具8とを相対的に回転させて上記螺合を解除することにより取付異形ボルト7に対して挟持固定具8が上下昇降可能な昇降フリー状態とを切換可能に構成されている。なお、本実施形態では、挟持固定具8を回転させることにより、挟持状態と昇降フリー状態とを切り換えるものとなされている。
図3は取付異形ボルトを異なる視点から示す斜視図であり、図4は該ボルトの平面図である。また、図5は該ボルトの側面図であり、図6,図7は図5のVI−VI線、VII−VII線断面図である。
取付異形ボルト7は、ヘッド71(頭部に相当)と、ヘッド71の下方に溝部74を介して連設された位置決めフランジ部72と、この位置決めフランジ部72の下方に連設された軸部73とを備え、ヘッド71が外枠下鍔部55の係止鍔部55cに係合されることにより外枠4に取り付けられている。この取付異形ボルト7の材質は、特に限定されるものではなく、鋼材等の金属からなるものであっても良いが、本実施形態ではポリプロピレンなどの合成樹脂の一体成形品からなっている。
ヘッド71は、軸心C1を中心に回転させることにより、外枠下鍔部55の係止鍔部55c間を挿通可能な挿通姿勢と、各係止鍔部55cに係合する係合姿勢とに切換可能に構成されている。
具体的には、ヘッド71は、軸心C1を中心に点対称に位置する一対の辺が平行に設定された異形多角形の平面視形状を有する偏平柱状体である。より詳しくは、ヘッド71は、図4に明示するように、軸心C1を中心とする点対称な六角形の平面視形状を有し、対向する辺に向かって下ろした垂線の長さd1〜d3(以下「辺間距離」という)が短中長の3段階に変化するように設定されている。
短尺の辺間距離d1は、外枠下鍔部55の係止鍔部55c間の間隔D1(図11参照)と同等に設定されている。一方、長尺の辺間距離d3は、上記係止鍔部55c間の間隔D1よりも長く設定され、本実施形態では外枠下鍔部55の対向壁部55b間の間隔D2と同等に設定されている。また、中尺の辺間距離d2は、辺間距離d1と辺間距離d3の間に設定されている。
ヘッド71の辺間距離d1〜d3の寸法を上記のように設定することにより、辺間距離d1を係止鍔部55c間の間隔D1と一致させて(挿通姿勢、図11(a)参照)、係止鍔部55c間を通じてヘッド71を対向壁部55b間に挿入することができる。そして、このヘッド71を対向壁部55b間に位置させた状態で軸心C1を中心に回転させ、辺間距離d3を対向壁部55b間の間隔D2と一致させることにより(係合姿勢、図11(c)参照)、ヘッド71の端部を各係止鍔部55cに係合させることができ、これにより取付異形ボルト7を外枠下鍔部55に係止させることができる。
なお、本実施形態のヘッド71は、周側部に肉盗み用の孔部71aが複数個設けられているが、この肉盗み用の孔部71aは適宜省略可能である。
位置決めフランジ部72は、ヘッド71を係止鍔部55c間に挿通させる場合に、係止鍔部55cの下面と干渉してそれ以上の挿入を阻止するものであり、ヘッド71の挿通姿勢において辺間距離d1と一致する方向の幅が係止鍔部55c間の間隔D1よりも大きく設定されている。具体的には、位置決めフランジ部72は、図4において明示するように平面視において円形状に設定され、その径が係止鍔部55c間の間隔D1よりも大きく設定されている。したがって、図2に明示するように、取付異形ボルト7が外枠下鍔部55に取り付けられた状態では、該下鍔部55の係止鍔部55cは溝部74内に配置されている。
軸部73は、位置決めフランジ部72から下方に連設され周方向の一部領域に雄ネジ部761(ネジ部に相当)が刻設された部分ネジ軸部76と、この部分ネジ軸部76の下端に連設され周方向の全領域に雄ネジ部771が刻設された全ネジ軸部77とを備えている。これらのネジ軸部76,77に設けられた雄ネジ部761,771は、谷の径や外径など各種寸法が同一に設定された二条ネジであり、部分ネジ軸部76と全ネジ軸部77との間において連続している。これらの雄ネジ部761,771のリードは、後述のように挟持固定具8によって床部1の下面を十分に圧接する観点から、2mm〜8mmの範囲内で設定されるのが好ましい。本実施形態では、この雄ネジ部761,771のリードは、4mmに設定されている。
具体的には、部分ネジ軸部76は、周方向について、雄ネジ部761が設けられたネジ領域76aと、この雄ネジ部761の外径に対して径方向内側にねじ山の高さ分以上に退入してねじ山が設けられていない無ネジ領域76bとを備え、これらの各領域76a,76bと挟持固定具8の後述のネジ領域85a、無ネジ領域85bとの相対的な位置関係によって挟持固定具8の挟持状態と昇降フリー状態とを切り換えることができるようになっている。
これらの各領域76a、76bは、軸心C1を中心にして点対称位置に設けられ、本実施形態では図7に明示するように、周方向に4分の1ずつ(中心角にして90度ずつ)交互に設けられている。また、これらの各領域76a、76bは、部分ネジ軸部76と全ネジ軸部77との境界部分から位置決めフランジ部72(ヘッド71)の下方にかけて軸方向に連続して設けられ、挟持固定具8の昇降フリー状態で該挟持固定具8が軸方向に沿って昇降可能に構成されている。
各ネジ領域76a(周方向に二つ設けられたネジ領域76aのそれぞれ)には、図7に明示するように、その周方向中央部における雄ネジ部761の各ねじ山頂部に半球状の凹部762が設けられている。すなわち、この凹部762は、図3(a)に示すように、軸方向に沿って列設されている。この凹部762は、挟持固定具8のネジ領域85aに設けられた後述の突部852が嵌合されるものであるが、その作用についてはこの突部852の説明とともに詳述する。
なお、本実施形態では、この凹部762が設けられた部分から90度回転させた全ネジ軸部77の雄ネジ部771に上記突部852が嵌合される第2凹部772が設けられている(図3,5参照)。
また、各ネジ領域76aにおける雄ネジ部761の各ねじ山は、取付異形ボルト7の締付け方向(図7の矢印A参照)下流側が漸次低くなることによりねじ山テーパー部763が設けられている。本実施形態では、このねじ山テーパー部763の傾斜面は、図7に示すように、断面視においてネジ領域76aと無ネジ領域76bとの境界点の接線方向と一致するようになされている。このねじ山テーパー部763は、噛合時のガイドのため、すなわち雄ネジ部761と後述する雌ネジ部851とをかみ合わせ易くするために設けられている。
一方、無ネジ領域76bは本実施形態では雄ネジ部761の外径に対して径方向に略ねじ山の高さ分だけ退入した状態で形成されており、この無ネジ領域76bに、図6に明示するように、軸方向に所定間隔で肉盗み用孔部766が設けられている。このように肉盗み用孔部766が軸方向に所定間隔で設けられることにより、製造コストを抑えつつ軸部73の強度低下を抑制している。なお、この肉盗み用孔部766は適宜省略可能であり、この場合には無ネジ領域76bは単なる円弧状面として構成される。
全ネジ軸部77は、軸部73の下端部に設けられ、部分ネジ軸部76に対して短い寸法に設定されている。この全ネジ軸部77は、挟持固定具8の脱落を防止するために設けられているものであり、1周以上に設定されている。なお、この全ネジ軸部77は、5周未満に設定されるのが好ましい。また、この全ネジ軸部77は、そのネジ先部772が面取りされている。
次に、挟持固定具8について説明する。
図8は挟持固定具を異なる視点から示す斜視図であり、図9は該挟持固定具の平面図である。また、図10は、図9のX−X線断面図である。
挟持固定具8は、取付異形ボルト7に係脱される固定具本体81と、この固定具本体81の一端部に上方に向かって立設され床部1の下面を押圧する突出押圧部82と、固定具本体81の長手方向中間部及び突出押圧部82の高さ方向中間部を幅方向両端部において連結する補強フランジ83とを備え、これらがポリプロピレンなどの合成樹脂から一体成形されている。なお、この補強フランジ83は、本実施形態では三角形の板状体として構成されているが、具体的構成については特に限定するものではなく、また適宜省略可能である。
固定具本体81は、細長ブロック状に構成され、突出押圧部82が立設された端部と反対側の端部に上下方向に貫通するネジ孔85が設けられている。このネジ孔85は、取付異形ボルト7の軸部73が挿通され、上記のように、この軸部73とネジ孔85の相対的な位置関係により、軸部(具体的には部分ネジ軸部76)の雄ネジ部761と噛合う上記挟持状態と、この噛合いが解除された昇降フリー状態とを切り換えることができるようになっている。
すなわち、ネジ孔85の内周面には、周方向について、取付異形ボルト7の軸部73の各雄ネジ部761,771が噛合う雌ネジ部851が刻設されたネジ領域85aと、この雌ネジ部851の内径に対して径方向外側にねじ溝の深さ分以上に退入してねじ溝が形成されていない無ネジ領域85bとを備える。
これらの各領域85a、85bは、図9に明示するように、軸心C2を中心にして点対称位置に設けられ、本実施形態では図7に明示するように、周方向に4分の1ずつ(中心角にして90度ずつ)交互に設けられている。また、これらの各領域85a、85bは、ネジ孔85の全長に亘って軸方向に連続して設けられている。
具体的には、図9に示すように、平面視において、ネジ孔85に軸心C2を中心とするXY軸線を想定した場合に、第1象限(図9の軸心C2の左下)、第3象限(図9の軸心C2の右上)に無ネジ領域85bが配置され、第2象限(図9の軸心C2の右下)、第4象限(図9の軸心C2の左上)にネジ領域85aが配設されている。そして、各ネジ領域85aは、固定具本体81の長手方向(X軸方向)が開口部15の内側面と垂直な方向に一致している場合に部分ネジ軸部76のネジ領域76aにそれぞれ完全に対向して、ネジ孔85の雌ネジ部851と、部分ネジ軸部76における雄ネジ部761が噛合係合するようになっている(挟持状態)。そして、この状態から挟持固定具8を取付異形ボルト7に対して相対的に90度回転させることにより、各ネジ領域85aが、部分ネジ軸部76の無ネジ領域76bに完全に対向して、ネジ孔85の雌ネジ部851と、部分ネジ軸部76における雄ネジ部761との噛合状態が解除されるようになっている(昇降フリー状態)。
各ネジ領域85a(周方向に二つ設けられたネジ領域85aのそれぞれ)には、図9に明示するように、その周方向中央部における雌ネジ部851の各ねじ溝の底部に半球状の突部852が設けられている。すなわち、この突部852は、図8(a)に示すように、軸方向に沿って列設されている。この突部852は、上記のように、取付異形ボルト7のネジ領域76aに設けられた凹部762が嵌合されるものである。
これらの突部852及びこの突部852が嵌合される凹部762がそれぞれ各領域76a、86aの周方向中央部に設けられているので、これらの突部852,凹部762が嵌合されることによりネジ孔85のネジ領域85aと部分ネジ軸部76のネジ領域76aとが完全に対向し、両ネジ領域85a、76aに設けられたネジ部851,761が噛合うので、確実に取付異形ボルト7と挟持固定具8とを係合させることができる。しかも、これらの突部852と凹部762とが嵌合する際に、クリック感を得ることができ、これにより外枠4の装着者の技量にかかわらず、取付異形ボルト7と挟持固定具8との相対的な位置関係を視認していない状態でも両者の最適な係合状態を認知することができ、外枠4を適切に床部1の開口部15の周縁部に装着することができる。また、これらの突部852と凹部762との嵌合により、取付異形ボルト7の雄ネジ部761と挟持固定具8の雌ネジ部851との噛合の緩みを効果的に防止することができる。
一方、無ネジ領域85bは本実施形態では雌ネジ部851の内径に対して径方向外側に略ねじ溝の深さ分だけ退入した状態で形成されている。したがって、本実施形態では、無ネジ領域85bは、その内径がネジ領域85aの内径に比べて大きく設定され、軸心C2を中心とする円弧平滑面として構成されている。
なお、固定具本体81の底部には、図8(b)に示すように、肉盗み用の孔部81aが設けられており、あわせて軽量化が図られている。
突出押圧部82は、固定具本体81の一端部上面に突設された柱状体である。この突出押圧部82は、突出ボス部821と、この突出ボス部821の上端部に膨出したドーム状押圧部822と、このドーム状押圧部822の上方から突出ボス部821の軸方向(上下方向)に延びる肉盗み用軸孔823とを備える。この肉盗み用軸孔823は、突出ボス部821の軸心を中心に点対称位置に配置され、突出ボス部821及びドーム状押圧部822を上下に貫通して設けられている。このため、この突出ボス部821及びドーム状押圧部822は、全体として平面視放射状に各辺の中央部に延びるリブ部を有する角筒状に形成されている。
このドーム状押圧部822は、上方に向かって球状に突出しており、これにより床部1の下面との摺接抵抗を減少させて、この挟持固定具8の後述する回転動作を行い易くしている。
上記のように構成された外枠4は、次の方法で床部1における開口部15周縁に固定される。
まず、外枠4の外枠本体5を床部1の開口部15に配置する。具体的には、外枠本体5の外側ベース枠53をコーナー部材51の側壁部とともに床部1の開口部15内に嵌め込み、外枠上鍔部54を開口部15の周縁部に載置する。
次に、固定ユニット6を外枠本体5に取り付ける。具体的には、まず固定ユニット6の取付異形ボルト7に挟持固定具8を組み付ける。この組付は、取付異形ボルト7の軸部73における全ネジ軸部77を挟持固定具8のネジ孔85に螺入することにより行う。このように取付異形ボルト7の軸部73には、全ネジ軸部77を有し、取付異形ボルト7と挟持固定具8の組付にあたって、全ネジ軸部77を挟持固定具8のネジ孔85に螺入するので、挟持固定具8の取付異形ボルト7からの不測の脱落を確実に防止することができ、この不測の脱落による作業効率の悪化を効果的に防止することができる。
そして、挟持固定具8と組み付けた取付異形ボルト7を外枠本体5の外枠下鍔部55に取り付ける。具体的には、図11(a)に示すように、まず取付異形ボルト7のヘッド71の短尺辺間距離d1を外枠下鍔部55の係止鍔部55cの間隔D1と一致させた姿勢(挿通姿勢)で、該ヘッド71を係止鍔部55c間の隙間に対向させる(図12(a)参照)。この状態で取付異形ボルト7を上方に持ち上げ、ヘッド71を係止鍔部55c間の隙間に挿入して対向壁部55b間に配置する。
続いて、ヘッド71を反時計回りに回転させる(図11(b)参照)。この反時計回りの回転が不能になる状態にまでヘッド71を回転させると、ヘッド71の辺間距離d3が対向壁部55b間の間隔D2と一致した状態になる(図11(c)参照)。この状態では、ヘッド71の辺間距離d3が係止鍔部55c間の間隔D1よりも大きく設定されているので、ヘッド71が両側の係止鍔部55cに係合する係合姿勢となる(図12(b)参照)。このようにして固定ユニット6を外枠本体5に取り付ける。
図1に示すように、本実施形態の外枠4には、固定ユニット6が左右に二つずつ設けられているので、上記の取付作業を繰り返して、各固定ユニット6を外枠本体5に取り付ける。
なお、この固定ユニット6の外枠本体5の取付は、外枠4の床部1の開口部15の取付前に行っても良い。この場合には固定ユニット6が適所に取り付けられた外枠4を床部1の開口部15に取り付けることになる。
このように、本実施形態の外枠4は、外枠本体5と、この外枠本体に着脱可能な固定ユニット6とを備えるので、この外枠4の運搬や保管の際には両者5,6を分離しておくことができるので、嵩張らず、また不測の接触による破損も防止することができ、利便性を向上させることができる。
また、取付異形ボルト7のヘッド71の形状を上記のように適宜設定することにより、軸心C1を中心に取付異形ボルト7を回転させるだけで、係止鍔部55c間を挿通可能な挿通姿勢と係止鍔部55cに係合する係合姿勢とに切り換えることができ、現場における作業を効率的に行うことができる。
次に、挟持固定具8を上昇させて床部1の下面に圧接させる。具体的には、まず挟持固定具8を回転することにより取付異形ボルト7と挟持固定具8との相対位置関係を調整して挟持固定具8を昇降フリー状態に調整する。
図12(b)の状態では、取付異形ボルト7のネジ領域76aと挟持固定具8のネジ領域85aとは、各ネジ領域76a、85aのネジ部761、851とが噛合状態にあり(図13(b)参照)、この状態から、挟持固定具8を図12(b)、図13(b)に示す矢印の方向(時計方向)に90度回転させることにより、図13(a)に示すように、各ネジ領域76a、85aを対応する無ネジ領域85b、76bに対向させる。この状態では、取付異形ボルト7のネジ領域76aが挟持固定具8の無ネジ領域85bに、挟持固定具8のネジ領域85aが取付異形ボルト7の無ネジ領域76bに対向して、各ネジ部761,851の噛合状態が解除され、これにより挟持固定具8は上下昇降可能な昇降フリー状態となる。
この挟持固定具8の昇降フリー状態で一気に該挟持固定具8を取付異形ボルト7の軸部73に沿って上昇させ、ドーム状押圧部822の頂部を床部1の下面に対応する位置に配置する。この状態で、挟持固定具8を反時計方向に回転させると(図13(a)の矢印参照)、取付異形ボルト7と挟持固定具8の各ネジ部761,851が噛み合い、各ネジ部761,851の螺旋にしたがって挟持固定具8が上昇しながらそのドーム状押圧部822と外枠上鍔部54との間に床部1の開口周縁部が挟持される(図12(c)参照)。
そして、取付異形ボルト7のネジ領域76aが挟持固定具8のネジ領域85aに完全に対向することにより(図13(b)参照)、挟持固定具8の突部852が取付異形ボルト7の凹部762に嵌合してクリック感を得ることができる。このクリック感を得ることにより、挟持固定具8と外枠本体5の外枠下鍔部55との間に床部1の開口周縁部を確実かつ強固に挟持することができる。このとき、挟持固定具8(具体的には固定具本体81)は、その長手方向が開口部15の対応する内周面の法線方向と一致(ないしは略一致)した姿勢となっている。
これを各固定ユニット6について、繰り返すことにより、外枠4を床部1の開口周縁部に安定した状態で固定することができる。
すなわち、本実施形態の外枠4によれば、取付異形ボルト7及び挟持固定具8のネジ孔85には、それぞれ挟持固定具8による床部1の挟持状態において互いに噛み合うネジ部761,851が設けられたネジ領域76a、85aと、取付異形ボルト7及び挟持固定具8が相対的に回転することにより他方のネジ部761,851と対向して該ネジ部761,851との噛合を解除する無ネジ領域76b、85bとがそれぞれ軸方向に連続して設けられているので、取付異形ボルト7及び挟持固定具8の各ネジ領域76a、85aと無ネジ領域85b、76bとを対向させることにより互いのネジ部761,851の噛合を解除して挟持固定具8を床部1の下面に相当する位置にまで一気に上昇させることができる。そして、この状態で挟持固定具8を取付異形ボルト7に対して相対的に回転させることにより、互いのネジ部851,761を噛合させることができ、これにより外枠上鍔部54との間に床部1を挟持した状態で挟持固定具8を固定することができる。
従って、本実施形態の外枠4によれば、従来の外枠のように、固定具を上昇させるにあたって取付ねじの回転だけで行う必要がなく、取付異形ボルト7の軸部73の長さにかかわらず、挟持固定具8を適正位置にまで一気に上昇させることができ、作業効率を向上させることができる。
また、この際、各ネジ領域76a、85aにおけるネジ部761,851の噛合により挟持固定具8が取付異形ボルト7に固定されるので、相対的な回転に際して挟持固定具8が各ネジ部761,851の螺旋によって上昇し、挟持固定具8を床部1の下面に適切に圧接させることができる。
しかも、取付異形ボルト7と挟持固定具8とのそれぞれにネジ領域76a、85aと無ネジ領域76b、85bとが設けられているので、締め付けすぎた場合には各ネジ領域76a、85aと無ネジ領域76b、85bとが対向してネジ部761,851同士の噛合が解除されるので、過度の締付けを防止することができ、外枠上鍔部54とともに挟持固定具8を床部1に適正な状態で強固に挟持させることができる。
なお、以上に説明した外枠4は、本発明に係る床開口部用の枠体の一実施形態であり、その具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、その変形例を説明する。
(1)上記実施形態において、取付異形ボルト7と挟持固定具8との各ネジ領域76a、85a及び無ネジ領域76b、85bは、周方向に4分の1ずつ(中心角で90度ずつ)交互に設けられたものとなっているが、各ネジ領域76a、85aのネジ部761,851の噛合状態とその解除状態とを切換可能であれば、その周方向の範囲について特に限定するものではない。
従って、例えば上記実施形態の取付異形ボルト7について、ヘッド71に対して軸部73を反時計方向に45度回転変位させて、噛合位置を変更したものであってもよい(図14参照)。
このように噛合位置を変更することによって、外枠4の取付にあたって以下のような作用効果を奏する。なお、この他の実施形態に係る取付異形ボルト107は、ネジ領域と無ネジ領域とが上記実施形態に係る取付異形ボルト7と45度変位している点を除けば、その構成は同様であるので、同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
すなわち、上記実施形態と同様に、固定ユニット106が取り付けられた外枠本体5を床部1の開口部15に配置する。なお、このとき、上記実施形態では、挟持固定具8を取付異形ボルト7の部分ネジ軸部76に対応する位置にまで螺入しているが、例えば図15に模式的に示すように、全ネジ軸部77に対応する位置にまで螺入するものであってもよい。また、このとき、図15に示すように、挟持固定具8の突部852が全ネジ軸部77の第2凹部773に嵌合するようにしておけば、挟持固定具8の取付異形ボルト107からの不測の脱落を効果的に防止することができる。
図16(a)の状態では、取付異形ボルト107の全ネジ軸部77と挟持固定具8のネジ孔85とが噛み合いつつ、第2突部773が挟持固定具8の凹部852に嵌り込んだ状態にある(図15参照)。この状態から、挟持固定具8を図16(a)に示す矢印の方向に回転させることにより、各ネジ領域76a、85aを対応する無ネジ領域85b、76bに対向させる。この状態では、取付異形ボルト107のネジ領域76aが挟持固定具8の無ネジ領域85bに、挟持固定具8のネジ領域85aが取付異形ボルト107の無ネジ領域76bに対向して、各ネジ部761,851の噛合状態が解除され、これにより挟持固定具8は上下昇降可能な昇降フリー状態となる(図16(b)参照)。
この挟持固定具8の昇降フリー状態で、図16(c)に示すように、一気に該挟持固定具8を取付異形ボルト107の軸部73に沿って上昇させ、ドーム状押圧部822の頂部を床部1の下面に当接する位置に配置する。この他の実施形態に係る固定ユニット106では、ヘッド71に対して軸部73を反時計方向に45度回転変位させて、噛合位置を変更することにより、挟持固定具8の昇降フリー状態で該挟持固定具8を平面視において床部1の開口周縁部と干渉する位置に配置することができる(図16(c)参照)。このため、挟持固定具8を昇降フリー状態で上昇させると、ドーム状押圧部822の頂部が床部1の下面に当接することになるので、挟持固定具8の上昇位置についてわざわざ床部1の下面に対応する位置であるか否かの確認が不要となり、作業効率が一層向上する。
そして、この当接状態で、挟持固定具8を図16(c)の矢印方向に回転させると、取付異形ボルト107と挟持固定具8の各ネジ部761,851が噛み合い、各ネジ部761,851の螺旋にしたがって挟持固定具8が上昇しながらそのドーム状押圧部822と外枠上鍔部54との間に床部1の開口周縁部が挟持される。
そして、取付異形ボルト107のネジ領域76aが挟持固定具8のネジ領域85aに完全に対向することにより、挟持固定具8の突部852が取付異形ボルト107の凹部762に嵌合してクリック感を得ることができる。このとき、挟持固定具8(具体的には固定具本体81)は、その長手方向が開口部15の対応する内周面の法線に対して45度傾いた姿勢となっている。
また、上記構成に代えて、例えば上記実施形態において、取付異形ボルト7のネジ領域75aについて中心角を減じて45度等に設定するものであってもよく、また逆に挟持固定具8のネジ孔85のネジ領域85aについて中心角を減じて45度等に設定するものであっても良い。この場合、各ネジ部761,851の噛合状態となる領域が減ることになるが、この場合も、挟持固定具8の昇降フリー状態で該挟持固定具8を平面視において床部1の開口周縁部と干渉する位置に配置することができる。
(2)上記実施形態において、取付異形ボルト7と挟持固定具8との各無ネジ領域76b、85bは、それぞれ円弧状周面として構成されているが、各ネジ領域76a、85aと対向している場合にそのネジ部761,861との干渉を回避できれば、その具体的形状を特に限定するものではない。従って、例えば、これらの無ネジ領域76b、85bを平面として構成するものであってもよい。
(3)上記実施形態において、取付異形ボルト7は、部分ネジ軸部76と全ネジ軸部77とを備えているが、全ネジ軸部77は省略してもよい。ただし、上記のように挟持固定具8の不測の脱落を防止する観点から、全ネジ軸部77を設けるのが好ましい。
また、部分ネジ軸部76と位置決めフランジ部72との間、或いは位置決めフランジ部72が省略されているものについては部分ネジ軸部76とヘッド71との間に雄ネジ部761が刻設されていない首部を設けるものとしてもよい。例えば、本実施形態と異なり、取付ネジ軸部のネジ部を切削等により構成する場合には、床部1の厚みを考慮して首部を設定することにより製造コストを抑制することができる。
(4)上記実施形態では、挟持固定具8の挟持状態と昇降フリー状態との切換を挟持固定具8を回転させることにより行っているが、取付ネジ軸部を回転させることにより上記切換を行うものであってもよい。
(5)上記実施形態において、取付異形ボルト7のヘッド71における短尺辺間距離d1は係止鍔部55c間の間隔D1と同等に設定されているが、これよりも小さく設定してもよく、例えば軸部73の径と同等に構成するものであってもよい。
(6)上記実施形態において、各ネジ領域76a、85aに設けられた凹部762及び突部852は、各ネジ領域76a、85aの周方向の中央部に設けられているが、これらの凹部、突部は、取付異形ボルト7の雄ネジ部761と、挟持固定具8の雌ネジ部851とが噛合状態にある場合に嵌合するものであれば、その具体的位置は特に限定されない。
ただし、本実施形態のように、取付異形ボルト7のネジ領域76aと、挟持固定具8のネジ領域85aとが完全に対向している状態で嵌合するように位置設定されているのが各ネジ部761,851の確実な噛合の観点から好ましい。
(7)上記実施形態において、ドーム状押圧部822は、ドーム状に突設されているが、突出ボス部821と別個に押圧部を設けなくてもよく、また設ける場合でもその形状はドーム状に限定されない。例えば、突出ボス部821よりも外形が小さく設定された円柱状のもの等であってもよい。