以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語など特定の方向を意味する用語を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係るサイドシル構造を適用したサイドシルを備えた車体を概略的に示す側面図、図2は、前記車体の要部を概略的に示す下面図、図3は、前記車体のサイドシルを示す斜視図、図4は、図3に示すサイドシルの分解斜視図、図5は、図3におけるY5−Y5線に沿った断面図、図6は、図3におけるY6−Y6線に沿った断面図である。なお、図4では、サイドシルに内蔵した補強体を省略して示している。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る車両のサイドシル構造を適用した車体1は、4ドアタイプの乗用車の車体であり、車体の底面を構成する車体フロア部2と、車体の側面を構成する車体側面部10とを備えている。なお、本実施形態では、車体左側の車体側面部10について説明しているが、車体右側の車体側面部についても同様に構成されている。
車体フロア部2は、板状のフロアパネル3を備え、該フロアパネル3上には、車体前後方向に離間して車幅方向に延びる車体前方側から第1のクロスメンバ4、第2のクロスメンバ5及び第3のクロスメンバ6が配設されている。これらクロスメンバ4、5、6はそれぞれ、サイドシル30に結合されている。
車体側面部10は、車体上部において車体前後方向に延びるルーフサイドレール11と、車体下部において車体前後方向に延びるサイドシル30と、前側のドア開口部12の車体前方側に位置して車体上下方向に延びるフロントピラー15、前後のドア開口部12、13の間に位置して車体上下方向に延びるセンタピラー20と、後側のドア開口部13の車体後方側に位置するリアピラー25とを備え、サイドシル30に、フロントピラー15、センタピラー20及びリアピラー25が結合されている。
サイドシル30にはまた、3つのクロスメンバ4、5、6が結合され、第1のクロスメンバ4が車体前後方向におけるフロントピラー15とセンタピラー20との略中間位置において結合され、第2のクロスメンバ5が車体前後方向におけるセンタピラー20と略同位置において結合され、第3のクロスメンバ6が車体前後方向におけるセンタピラー20とリアピラー25との略中間位置において結合されている。
後述するように、本実施形態に係るサイドシル30では、サイドシル30を補強するための補強体40、60、50がクロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9にそれぞれ対応してサイドシル30に内蔵されている。また、サイドシル30には、サイドシル30を補強するための補強体70がサイドシル30の車幅方向外方側の側面部と下面部との間の角部の内側においてサイドシル30内に取り付けられている。
図7は、図3に示すサイドシルの要部を拡大して示す斜視図、図8は、図7に示すサイドシルのクロスメンバとの結合部に内蔵した補強体を示す斜視図、図9は、図7におけるY9a−Y9a線及びY9b−Y9b線に沿ったサイドシルの断面図であり、図9(a)は、Y9a−Y9a線に沿った断面図、図9(b)は、Y9b−Y9線に沿った断面図である。なお、図7では、サイドシルに内蔵した補強体を明瞭に図示するために、サイドシル及びセンタピラーを二点鎖線で示し、これを透過状態で示している。
サイドシル30は、図9(a)に示すように、車幅方向内方側に位置し、車体の内面の一部を構成して車体前後方向に延びるサイドシルインナ31と、車幅方向外方側に位置し、車体の外面の一部を構成して車体前後方向に延びるサイドシルアウタ32とによって閉断面状に形成されている。
具体的には、サイドシルインナ31は、略水平方向に延びる上面部31aと、上面部31aに対向して上面部31aの下方に位置し、略水平方向に延びる下面部31bと、下面部31bから上面部31aまで略垂直方向に延びる側面部31cとを備え、車幅方向内方側(図9では左側である車内側)に側面部31cが膨出するようにして配設されている。
サイドシルインナ31にはまた、上面部31aの車幅方向外方端部に上面部31aから上方へ延びる上フランジ部31dが形成されるとともに、下面部31bの車幅方向外方端部に下面部31bから下方へ延びる下フランジ部31eが形成され、サイドシルインナ31は、断面略ハット状に形成されている。
一方、サイドシルアウタ32は、略水平方向に延びる上面部32aと、上面部32aに対向して上面部32aの下方に位置し、略水平方向に延びる下面部32bと、下面部32bから上面部32aまで略垂直方向に延びる側面部32cとを備え、車幅方向外方側(図9では右側である車外側)に側面部32cが膨出するようにして配設されている。
サイドシルアウタ32もまた、上面部32aの車幅方向内方端部に上面部32aから上方へ延びる上フランジ部32dが形成されるとともに、下面部32bの車幅方向内方端部に下面部32bから下方へ延びる下フランジ部32eが形成され、サイドシルアウタ32は、断面略ハット状に形成されている。
そして、サイドシルインナ31とサイドシルアウタ32とは、上フランジ部31d、32dどうしが接合されるとともに下フランジ部31e、32eどうしが接合され、これにより、サイドシル30は、閉断面状に形成されている。なお、サイドシルインナ31とサイドシルアウタ32とはそれぞれ、鋼板などの金属製の板状素材をプレス加工して形成することができる。
このようにして形成されるサイドシル30には、サイドシルインナ31の上面部31a及び側面部31cによってそれらの間に角部30aが形成され、サイドシルインナ31の下面部31b及び側面部31cによってそれらの間に角部30bが形成され、サイドシルアウタ32の上面部32a及び側面部32cによってそれらの間に角部30cが形成され、サイドシルアウタ32の下面部32b及び側面部32cによってそれらの間に角部30dが形成され、サイドシル30は略矩形閉断面状に形成されている。
以下では、適宜、サイドシルインナ31の側面部31cをサイドシル30の車幅方向内方側の側面部である内側面部31cとして表し、サイドシルアウタ32の側面部32cをサイドシル30の車幅方向外方側の側面部である外側面部32cとして表し、サイドシルインナ31の上面部31a、サイドシルアウタ32の上面部32aをサイドシル30の上面部31a、32aとして表し、サイドシルインナ31の下面部31b、サイドシルアウタ32の下面部32bをサイドシル30の下面部31b、32bとして表す。
また、サイドシル30に結合されるフロントピラー15は、走行時に、車輪を懸架するサスペンション装置と車体1との取付部から車体1に入力されるねじり荷重が伝達されるとともに、該荷重をサイドシル30に伝達することができるようになっている。なお、走行時に、車輪を懸架するサスペンション装置と車体1との取付部から車体1にねじり荷重が入力される際には、該ねじり荷重によってサイドシル30には曲げモーメントの回転軸が車幅方向となるように曲げモーメントが生じることとなる。
フロントピラー15は、車内側に位置するフロントピラーインナ16と、車外側に位置するフロントピラーアウタ17とによって閉断面状に形成され、サイドシル30との結合部18では、フロントピラーインナ16がサイドシル30内、具体的にはサイドシルインナ31とサイドシルアウタ32との間に延在するとともにサイドシルアウタ32の車外側にフロントピラーアウタ17が配設されるように設けられている。
サイドシル30とフロントピラー15との結合部18では、フロントピラーインナ16が、サイドシルインナ31とサイドシルアウタ32とによって形成されるサイドシル30の内部の閉断面部S1を車内側と車外側に区切るように配設され、これにより、図5に示すように、サイドシルインナ31とフロントピラーインナ16によって略断面矩形状の閉断面部S2が形成されるとともに、サイドシルアウタ32とフロントピラーインナ16によって略断面矩形状の閉断面部S3が形成されている。
なお、図4及び図5に示すように、サイドシルアウタ32の側面部32cの車体前方側では、車体上下方向の長さが短く形成され、閉断面部S3は、具体的にはサイドシルアウタ32及びフロントピラーアウタ17とフロントピラーインナ16によって閉断面状に形成されている。
また、サイドシル30に結合されるセンタピラー20は、車内側に位置するセンタピラーインナ21と、車外側に位置するセンタピラーアウタ22とによって閉断面状に形成されており、サイドシル30との結合部23では、センタピラーインナ21がサイドシル30内、具体的にはサイドシルインナ31とサイドシルアウタ32との間に延在するとともにサイドシルアウタ32の車外側にセンタピラーアウタ22が配設されるように設けられている。
サイドシル30とセンタピラー20との結合部23では、センタピラーインナ21が、サイドシルインナ31とサイドシルアウタ32とによって形成されるサイドシル30の内部の閉断面部S1を車内側と車外側に区切るように配設され、これにより、図6に示すように、サイドシルインナ31とセンタピラーインナ21によって略断面矩形状の閉断面部S4が形成されるとともに、サイドシルアウタ32とセンタピラーインナ21によって略断面矩形状の閉断面部S5が形成されている。
本実施形態に係るサイドシル30では、クロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9におけるサイドシル30内にそれぞれ補強体(第1補強体)40、60、50が配設されている。3つのクロスメンバ4、5、6のうち最も車体前方側のクロスメンバ4との結合部7におけるサイドシル30内に取り付けられた補強体40は、図8及び図9に示すように、車幅方向に延び、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る板状の隔壁部41と、車体前後方向に延び、隔壁部41の周囲を覆い、隔壁部41に結合された板状の周壁部42とを備えている。
隔壁部41は、図9に示すように、サイドシル30の内面形状に対応した外形形状を有し、サイドシル30の長手方向と直交する直交断面方向に延びるように形成されている。隔壁部41にはまた、該隔壁部41から車体前方側及び車体後方側に延びる複数の板状のリブ43が設けられている。
周壁部42もまた、図9に示すように、サイドシル30の内面形状に対応した外形形状を有し、接着剤27によってサイドシル30に結合されている。補強体40にはまた、後述するサイドシル30の外側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30dの内側に配設される補強体70を取り付けるために、該補強体70の形状に対応して車内側に切り欠かれた断面略L字状の切欠部44が形成され、補強体70は、補強体40の切欠部44において接着剤27によって補強体40と結合されている。
また、3つのクロスメンバ4、5、6のうち最も車体後方側のクロスメンバ6との結合部9におけるサイドシル30内に取り付けられる補強体50についても、第1の補強体40と同様に構成され、サイドシルの内部を車体前後方向に区切る隔壁部と、該隔壁部に結合される周壁部とを備え、補強体70の形状に対応して車内側に切り欠かれた切欠部が形成され、補強体70は、補強体50の切欠部において接着剤27によって補強体50と結合されている。
一方、クロスメンバ5との結合部8におけるサイドシル30内に取り付けられる補強体60は、補強体50と略同様に構成され、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る隔壁部を有しているが、クロスメンバ5との結合部8ではセンタピラーインナ21がサイドシル30内に延在しているので、車幅方向に分割された2つの分割補強体61、66によって構成されている。
車内側に位置する分割補強体61は、センタピラーインナ21によって車幅方向に区切られたサイドシル30の内部の車内側の閉断面部S4に配設され、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る板状の隔壁部62と、車体前後方向に延び、隔壁部62の周囲を覆い、隔壁部62に結合される板状の周壁部63とを備え、周壁部63が、接着剤27を介してセンタピラーインナ21とサイドシルインナ31とに結合されている。
また、車外側に位置する分割補強体66は、センタピラーインナ21によって車幅方向に区切られたサイドシル30の内部の車外側の閉断面部S5に配設され、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る板状の隔壁部67と、車体前後方向に延び、隔壁部67の周囲を覆い、隔壁部67に結合される板状の周壁部68とを備え、周壁部68が、接着剤27を介してセンタピラーインナ21とサイドシルアウタ32とに結合されている。
補強体60においても、後述するサイドシル30の外側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30dの内側に配設される補強体70を取り付けるために、補強体70の形状に対応して車内側に切り欠かれた断面略L字状の切欠部69が形成され、補強体70は、補強体60の切欠部69において接着剤27によって補強体60、具体的には分割補強体66と結合されている。
このようにして、サイドシル30には、車体前後方向に離間して配設され車幅方向に延びる複数のクロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9にそれぞれ対応してサイドシル30内に取り付けられた補強体40、60、50が配設され、補強体40、60、50は、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る隔壁部41、62、67を有している。これにより、サイドシル30に外部から荷重が作用した時にクロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9におけるサイドシル30の断面変形を抑制して前記荷重をクロスメンバ4、5、6に伝達することができる。なお、補強体40、50、60は、樹脂材料を射出成形等によって成形して得ることができる。
本実施形態ではまた、サイドシル30に、サイドシル30の外側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30d、具体的にはサイドシルアウタ32の側面部32cと下面部32bとの間の角部30dの内側に補強体(第2補強体)70が取り付けられている。補強体70は、車体前後方向に延び、クロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9におけるサイドシル30内に取り付けられた複数の補強体40、60、50のうち最も車体前方側の補強体40から最も車体後方側の補強体50まで延びるように設けられている。なお、補強体70は、鋼板などの金属製の板状素材をプレス加工して形成することができる。
図10は、図7に示すサイドシルの要部を拡大して示す要部拡大図、図11は、図10におけるY11a−Y11a線及びY11b−Y11b線に沿った断面図であり、図11(a)は、Y11a−Y11a線に沿った断面図、図11(b)は、Y11b−Y11b線に沿った断面図、図12は、図10におけるY12a−Y12a線及びY12b−Y12b線に沿った断面図であり、図12(a)は、Y12a−Y12a線に沿った断面図、図12(b)は、Y12b−Y12b線に沿った断面図である。
補強体70は、サイドシル30から離間した状態でサイドシル30の角部30dの内面に沿って延在する基部71と、基部71と一体的に形成されてサイドシル30の長手方向及び該長手方向と直交する方向(直交断面方向)に配列され、基部71からサイドシル30に向けて突出して四角錐台状に形成される複数の凸部72とを備えている。
図13は、サイドシルの外側面部と下面部との間の角部の内側に取り付けられた補強体の凸部の配列を説明するための説明図であり、補強体70の要部を示す正面図である。図13に示すように、複数の凸部72は、頂面部72aが四角形である四角錐台状に形成され、サイドシル30の長手方向及び直交断面方向において周期的に配列されている。
複数の凸部72はそれぞれ、頂面部72aの四角形の対角線がサイドシル30の長手方向及び直交断面方向に略平行になるように配置され、サイドシル30の長手方向に隣り合う凸部72が互いにサイドシル30の直交断面方向に重なりL1を有するとともに、サイドシル30の直交断面方向における隣り合う凸部72が互いにサイドシル30の長手方向に重なりL2を有している。
図13に示すように、符号72を付した凸部について、該凸部72にサイドシル30の長手方向に隣接する凸部72Aが互いにサイドシル30の直交断面方向に重なりL1を有し、サイドシル30の直交断面方向に隣接する凸部72Bが互いにサイドシル30の長手方向に重なりL2を有している。
これにより、補強体70では、隣り合う凸部72によって該凸部72の間に溝部75が形成され、具体的には隣り合う凸部72の側面部72bと基部71とによって溝部75が形成され、この溝部75は、サイドシル30の長手方向に対して所定角度、本実施形態では45度傾斜して網目状に形成されている。このようにして、補強体70では、図10に示すように、複数の凸部72は、サイドシル30の長手方向及び直交断面方向に直線状に連続した基部71が形成されないように設けられている。
また、複数の凸部72は、図11及び図12に示すように、基部71からの凸部72の高さH1がサイドシル30の長手方向及び直交断面方向において略一定の高さで形成され、凸部72の頂面部72aがサイドシルアウタ32の側面部32c及び下面部32bと当接されている。これにより、基部71は、サイドシル30から所定距離離間するように設けられている。
また、補強体70は、図10に示すように、サイドシルアウタ32の側面部32cに沿って延在する部分とサイドシルアウタ32の下面部32bに沿って延在する部分とが対称に形成されており、サイドシルアウタ32の側面部32cと下面部32bとの間の稜線に対向する凸部72は、サイドシルアウタ32の側面部32cと下面部32bに当接されるとともに、その頂面部72aが湾曲して形成されている。
図10ではまた、補強体70において、サイドシルアウタ32の側面部32cと結合する凸部72に黒丸(●)印を付して示している。この図10に示すように、補強体70は、サイドシルアウタ32の側面部32cと下面部32bとの間の稜線近傍のサイドシルアウタ32の側面部32cと当接する凸部72が、該側面部32cと結合されている。
補強体70は、サイドシルアウタ32の下面部32b側に沿って延在する部分についても同様に、サイドシルアウタ32の側面部32cと下面部32bとの間の稜線近傍のサイドシルアウタ32の下面部32bと当接する凸部72が、該下面部32bと結合されている。なお、補強体70とサイドシル30とは、スポット溶接等によって結合することができる。
補強体70はまた、サイドシル30の直交断面方向における両端部が、サイドシル30と離間するように設けられている。図11(b)に示すように、サイドシル30の直交断面方向における一方の端部73aがサイドシルアウタ32の側面部32cから所定角度傾斜した状態で該側面部32cと離間するように設けられ、図11(a)に示すように、基部71よりもサイドシル30から離間するように設けられている。
サイドシル30の直交断面方向における他方の端部73bについても同様に、図11(b)に示すように、サイドシルアウタ32の下面部32bから所定角度傾斜した状態で該下面部32bと離間するように設けられ、図11(a)に示すように、基部71よりもサイドシル30から離間するように設けられている。
このように、補強板70は、サイドシル30の直交断面方向における該補強体70の端部73a、73bがサイドシル30と離間するように形成されていることにより、サイドシル30の直交断面方向における補強体70の端部がサイドシル30と接している場合に比べて、サイドシル30の長手方向における変形を抑制することができ、サイドシル30の曲げ強度を向上させることができる。
このようにして、サイドシル30には、サイドシル30の外側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30dの内側に補強体70が取り付けられている。これにより、サイドシル30に外部から荷重が作用した時にサイドシル30の角部30dが座屈して断面変形することを抑制することができる。
前述したように、補強体40、50、60にはそれぞれ、補強体70の形状に対応して車内側に切り欠かれた切欠部44、69が設けられ、補強体70は、該切欠部44、69を通じて車体前後方向に延びるとともに該切欠部44、69において接着剤27を介して補強体40、50、60と結合されている。
また、補強体70は、補強体40、50、60のうち最も車体前方側の補強体40から最も車体後方側の補強体50まで延びていることにより、サイドシル30に外部から荷重が作用した時に前記荷重をサイドシル30の長手方向に伝達して分散させることができる。
更に、補強体70は、サイドシル30から離間した状態でサイドシル30の角部30dの内面に沿って延在する基部71と、基部71と一体的に形成されてサイドシル30の長手方向及び直交断面方向に配列され、基部71からサイドシル30に向けて突出してサイドシル30と当接する複数の凸部72とを備えていることにより、サイドシル30の長手方向及び直交断面方向にサイドシル30と基部71との間にサイドシル30と溝部75によって閉断面部を形成してサイドシル30の角部30dを効果的に補強することができるので、外部から荷重が作用した時に角部30dの変形をより有効に抑制することができる。
なお、サイドシル30内においてサイドシル30の外側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30dの内側に取り付ける補強体として、補強体70に代えて、断面略L字状に形成された板状の補強体やパイプ状に形成された補強体を用いることも可能である。
図14は、サイドシルの外側面部と下面部との間の角部の内側に取り付けられた別の補強体を説明するための説明図であり、サイドシル30の図9に対応する断面について示している。図14に示すように、補強体70に代えて、車体前後方向に延び、サイドシル30の外側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30dの内側においてサイドシル30内に、四角筒形状の補強体75を取り付けるようにすることも可能である。
かかる場合においても、補強体40、50、60にはそれぞれ、補強体75の形状に対応して車内側に切り欠かれた切欠部44’が設けられ、補強体75は、切欠部44’を通じて車体前後方向に延びるとともに切欠部44’において接着剤27を介して補強体40、50、60と結合されている。
サイドシル30にはまた、サイドシル30のセンタピラー20との結合部23近傍にサイドシル30を補強するための補強体80、90が内蔵されている。サイドシル30のセンタピラー20との結合部23では、センタピラーインナ21がサイドシル30内に延在し、補強体80及び90はそれぞれ、サイドシル30内におけるセンタピラー20との結合部23の車体前方側及び車体後方側、具体的にはサイドシル30内のセンタピラーインナ21の前端部21aよりも車体前方側及びセンタピラーインナ21の後端部21bよりも車体後方側において該結合部23近傍に取り付けられている。
センタピラー20との結合部23の車体前方側及び車体後方側においてそれぞれ該結合部23近傍のサイドシル30内に取り付けられる補強体(第3補強体)80及び補強体(第4補強体)90は、図2に示すように、クロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9においてサイドシル30内に取り付けられる3つの補強体40、60、50の間に配設されている。すなわち、補強体80が、車体前後方向において補強体40と補強体60の間に配設され、補強体90が、車体前後方向において補強体60と補強体50との間に配設されている。
補強体80及び90は共に、補強体40と同様に構成され、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る隔壁部と、該隔壁部に結合される周壁部とを備え、補強体70の形状に対応して車内側に切り欠かれた切欠部が形成されている。そして、補強体70は、補強体80及び90の切欠部において接着剤27によって補強体80及び90と結合されている。
このように、サイドシル30内におけるセンタピラー20との結合部23の車体前方側及び車体後方側の該結合部23近傍にサイドシル30の内部を車体前後方向に区切る隔壁部を有する補強体80及び90が配設され、補強体80及び90が3つの補強体40、60、50の間に配設されていることにより、補強体80と90とによって3つの補強体40、60、50の間のサイドシル30の断面変形を抑制することができる。
また、車体1にねじり荷重が作用した時に生じる曲げモーメントによって断面変形が生じ易いサイドシル30のセンタピラー20との結合部23近傍において、隔壁部によってサイドシル30を効果的に補強することができるので、車体1にねじり荷重が作用した時にサイドシル30の曲げ変形を抑制して車体のねじり剛性を向上させることができる。
サイドシル30にはさらに、フロントピラー15との結合部18近傍に補強体100が内蔵されている。図15は、図3に示すサイドシルのフロントピラーとの結合部近傍に内蔵した補強体を示す斜視図、図16は、図15に示す補強体をY16a−Y16a線及びY16b−Y16b線に沿った断面で切断した図であり、図16(a)は、Y16a−Y16a線に沿った断面で切断した図、図16(b)は、Y16a−Y16a線に沿った断面で切断した図、図17は、図3におけるY17−Y17線に沿ったサイドシルの断面図、図18は、図3におけるY18−Y18線に沿ったサイドシルの断面図、図19は、図3におけるY19−Y19線に沿ったサイドシルの断面図である。
図16に示すように、補強体100は、サイドシル30の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成される板状のS字状部101と、サイドシル30の長手方向と直交する直交断面において逆S字状に形成される板状の逆S字状部102と、サイドシル30の長手方向と直交する直交断面方向である車幅方向に延び、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る板状の隔壁部103とを有している。
S字状部101は、図16(a)及び図17に示すように、サイドシル30の上面部31a、32aに略沿って車幅方向に延在し、接着剤27を介して上面部31a、32aに当接して接合される上面接合部101aと、上面接合部101aの車幅方向内方端部から角部30aにおけるサイドシル30の内側面部31c側に略沿って下方へ延び、上面接合部101aに連続して接着剤27を介して角部30aにおける内側面部31c側に当接して接合される内側面接合部(第1の内側面接合部)101bを有している。
また、S字状部101は、サイドシル30の下面部31b、32bに略沿って車幅方向に延在し、接着剤27を介して下面部31b、32bに当接して接合される下面接合部101cと、下面接合部101cの車幅方向外方端部から角部30dにおけるサイドシル30の外側面部32c側に略沿って上方へ延び、下面接合部101cに連続して接着剤27を介して角部30dにおける外側面部32c側に当接して接合される外側面接合部(第2の外側面接合部)101dを有している。
さらに、S字状部101は、内側面接合部101bと外側面接合部101dとを連結する第1の連結部101eを有している。第1の連結部101eは、車内側から車外側に向かうにつれて下方側へ傾斜し、車内側から車外側に向かうにつれて上面接合部101aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに車外側から車内側に向かうにつれて下面接合部101cとの離間距離が大きくなるように形成されている。
S字状部101はまた、サイドシル30の内側面部31cと当接しない内側面非当接部101fと、サイドシル30の外側面部32cと当接しない外側面非当接部101gとを有している。
一方、逆S字状部102は、図16(b)及び図18に示すように、サイドシル30の上面部31a、32aに略沿って車幅方向に延在し、接着剤27を介して上面部31a、32aに当接して接合される上面接合部102aと、上面接合部102aの車幅方向外方端部から角部30cにおけるサイドシル30の外側面部32c側に略沿って下方へ延び、上面接合部102aに連続して接着剤27を介して角部30cにおける外側面部32c側に当接して接合される外側面接合部(第1の外側面接合部)102bを有している。
また、逆S字状部102は、サイドシル30の下面部31b、32bに略沿って車幅方向に延在し、接着剤27を介して下面部31b、32bに当接して接合される下面接合部102cと、下面接合部102cの車幅方向内方端部から角部30bにおけるサイドシル30の内側面部31c側に略沿って上方へ延び、上側接合部102cに連続して接着剤27を介して角部30bにおける内側面部31c側に当接して接合される内側面接合部(第2の内側面接合部)102dを有している。
さらに、逆S字状部102は、内側面接合部102dと外側面接合部102bとを連結する第2の連結部102eを有している。第2の連結部102eは、車外側から車内側に向かうにつれて下方側へ傾斜し、車外側から車内側に向かうにつれて上面接合部102aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに車内側から車外側に向かうにつれて下面接合部102cとの離間距離が大きくなるように形成されている。
逆S字状部102はまた、サイドシル30の内側面部31cと当接しない内側面非当接部102fと、サイドシル30の外側面部32cと当接しない外側面非当接部102gとを有している。
また、隔壁部103は、図16及び図18に示すように、接着剤27を介してサイドシル30の内面形状に対応した外形形状を有し、サイドシル30の直交断面方向に延びるように形成されている。なお、図16では、S字状部101、逆S字状部102及び隔壁部103を明瞭に図示するために、二点鎖線によって分離して示している。
補強体100は、S字状部101、逆S字状部102及び隔壁部103をそれぞれ複数有しており、S字状部101と逆S字状部102とが、サイドシル30の長手方向である車体前後方向に隔壁部103を介して交互に配置されている。また、補強体100では、S字状部101、逆S字状部102及び隔壁部103が一体的に成形されている。なお、補強体100は、樹脂材料を射出成形等によって成形して得ることができる。
このようにして、補強体100では、第1の内側面接合部101bと第2の内側面接合部102dとは、サイドシル30の長手方向に重ならないように設けられるとともに、第1の外側面接合部102bと第2の外側面接合部101dとが、サイドシル30の長手方向に重ならないように設けられている。
また、補強体100では、内側面接合部101b、102dを曲げモーメントの回転軸M方向にサイドシル30の外側面部32cに投影した領域において外側面部102cと接合しないように設けられるとともに、外側面接合部101d、102bを曲げモーメントの回転軸M方向にサイドシル30の内側面部31cに投影した領域において内側面部31cと接合しないように設けられている。
さらに、補強体100では、第1の連結部101eは、サイドシル30の内側面部31cから外側面部32cに向かうにつれて上面接合部101aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに外側面部32cから内側面部31cに向かうにつれて下面接合部101cとの離間距離が大きくなるように形成され、第2の連結部102eは、サイドシル30の外側面部32cから内側面部31cに向かうにつれて上面接合部102aとの離間距離が大きくなるように形成されるとともに内側面部31cから外側面部32cに向かうにつれて下面接合部102cとの離間距離が大きくなるように形成されている。これにより、補強体100を、例えば射出成形によって成形する場合など成形型を用いて成形する場合に、成形時の型抜きを容易に行うことができる。
補強体100はまた、図3及び図15に示すように、サイドシル30とフロントピラー15との結合部18では、フロントピラーインナ16によって車幅方向に区切られたサイドシル30の内部の車外側の閉断面部S3内に配設されるように、車体前方側において車幅方向における長さが短く形成されている。
補強体100は、車体前方側に配設される部分においても同様に、サイドシル30の長手方向と直交する直交断面においてS字状に形成される板状のS字状部101と、サイドシル30の長手方向と直交する直交断面において逆S字状に形成される板状の逆S字状部102と、サイドシル30の直交断面方向である車幅方向に延び、サイドシル30の内部、具体的にはサイドシル30の内部の閉断面部S3を車体前後方向に区切る板状の隔壁部103とを備え、S字状部101と逆S字状部102とが、サイドシル30の長手方向である車体前後方向に隔壁部103を介して交互に配置されている。
図5では、フロントピラー15との結合部18におけるサイドシル30に内蔵した補強体100の逆S字状部102が示されているが、この図5に示すように、補強体100の車体前方側では、逆S字状部102は、閉断面部S3内において、上面接合部102a、外側面接合部(第1の外側面接合部)102b、下面接合部102c、内側面接合部(第2の内側面接合部)102d、及び第2の連結部102eを有し、サイドシル30の長手方向と直交する断面において逆S字状に形成されている。
しかしながら、上面接合部102aがサイドシルアウタ32の上面部32aに接合され、外側面接合部102bがサイドシルアウタ32の上面部32aと側面部32cとの角部30cにおける側面部32c側に接合され、下面接合部102cがフロントピラーアウタ17の略水平方向に延びる下面部17aに接合され、内側面接合部102dがフロントピラーアウタ17の下面部17aとフロントピラーインナ16との角部におけるフロントピラー16側に接合されている。
なお、図示されていないが、補強体100の車体前方側においても、閉断面部S3内において、S字状部101は、サイドシル30の長手方向と直交する断面においてS字状に形成され、隔壁部103は、サイドシル30の長手方向と直交する直交断面方向である車幅方向に延びるように形成されている。
このようにして、サイドシル30には、フロントピラー15との結合部18の車体後方側において該結合部18近傍のサイドシル30内に補強体100が配設され、補強体100は、サイドシル30の内部を車体前後方向に区切る隔壁部103を有している。これにより、車体1にねじり荷重が作用した時に生じる曲げモーメントによって断面変形が生じ易いサイドシル30のフロントピラー15との結合部18近傍において、隔壁部103によってサイドシル30を効果的に補強することができるので、車体1にねじり荷重が作用した時にサイドシル30の曲げ変形を抑制して車体のねじり剛性を向上させることができる。
以上のように、本実施形態に係る車両のサイドシル構造によれば、サイドシル30内における複数のクロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9に対応してサイドシル30の内部を車体前後方向に区切る隔壁部41、62、69を備えた複数の第1補強体40、60、50が取り付けられ、サイドシル30の車幅方向外方側の側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30dの内側に第2補強体70が取り付けられ、第1補強体40、60、50と第2補強体70とが結合されている。
これにより、サイドシル30に外部から荷重が作用した時にクロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9におけるサイドシル30の断面変形を抑制して前記荷重をクロスメンバ4、5、6に伝達するとともにサイドシル30の角部30dが座屈して断面変形することを抑制することができ、サイドシル30の車幅方向内方側への曲げ変形を抑制し、重量の増加を抑制しつつサイドシルの曲げ強度を高めることができる。また、重量の増加を抑制することにより燃費が改善され、省エネルギー効果を高めることができる。
さらに、車体下部に配設されるサイドシル30では、例えば側突時には、外部から荷重が作用するとともにサイドシル30に結合されたピラー15、20、25の車幅方向内方側への変形に伴ってねじり変形が生じ得るが、サイドシル30の角部30dを補強することで、サイドシル30の断面変形を効果的に抑制することができる。
本実施形態ではまた、本発明の実施形態に係るサイドシル構造を適用したサイドシル30を備えた車体1について、側突性能をシミュレーション解析により評価した。この解析では、補強体100を取り除き、補強体40、50、60、70、80、90を内蔵したサイドシル30を備えた車体1を実施例として用い、実施例の車体からサイドシル30の補強体40、50、60、70、80、90を取り除いた車体を比較例として用いて評価した。
具体的には、サイドシルを備えた車体について圧子としてのバリアを車体側方から荷重Fで押圧し、バリアの荷重Fに対する反力F’とエネルギー吸収量EAについて評価した。エネルギー吸収量EAは、車体が吸収できるエネルギーであり、荷重Fに対する反力F’とバリアのストロークとの積で表されるものである。
図20は、本発明の実施形態に係るサイドシル構造を適用したサイドシルを備えた車体について、該車体に荷重を付加するバリアのストロークと該荷重に対する反力及びエネルギー吸収量との関係を示すグラフであり、図20では、バリアが車体に接触した位置からのストロークを横軸にとり、バリアの荷重に対する反力F’を左側縦軸にとって表示し、エネルギー吸収量EAを右側縦軸にとって表示している。また、図20では、実施例の解析結果を実線で示し、比較例の解析結果を破線で示している。
図20に示すように、実施例及び比較例ともに、バリアのストロークが大きくなると、バリアの荷重に対する反力F’が大きくなりエネルギー吸収量EAが大きくなっているが、実施例は、比較例に比して、バリアの荷重に対する反力F’が大きくなりエネルギー吸収量EAが大きくなるという結果が得られた。
このように、サイドシル30内におけるクロスメンバ4、5、6との結合部7、8、9に補強体40、60、50を取り付けるとともにサイドシル30の外側面部32cと下面部31b、32bとの間の角部30dの内側に補強体70を取り付け、且つ、サイドシル30内におけるセンタピラー20との結合部23の車体前方側及び車体後方側に補強体80、90を取り付けることで、重量の増加を抑制しつつサイドシルの曲げ強度を高めることができる。
なお、本実施形態における接着剤27としては、例えば、所定温度に加熱することにより発泡する所定厚さのシート状の熱硬化性接着剤を用いることができ、該接着剤を発泡前に補強板40、50、60、80、90、100に取り付け、その後、所定温度に加熱することにより発泡させて、サイドシル30と補強体40、50、60、80、90、100との間に充填させて結合させることができる。
補強体40、50、60、80、90と補強体70とを結合する際に用いる接着剤27についても、所定温度に加熱することにより発泡する所定厚さのシート状の熱硬化性接着剤を用いることができ、該接着剤を発泡前に補強板40、50、60、80、90の切欠部44、69に取り付け、その後、所定温度に加熱することにより発泡させて、補強体40、50、60、80、90と補強体70との間に充填させて結合させることができる。
また、補強体40、50、60、80、90と補強体70とを結合する際に用いる接着剤27として、シート状の熱硬化性接着剤を用いる場合には、補強体40、50、60、80、90に取り付けた接着剤27の発泡倍率が一定となるように補強体70の凹凸形状に対応してシート状の接着剤27を凹凸形状に形成することが好ましい。
これに代えて、補強体40、50、60、80、90と補強体70とを結合する際に用いる接着剤27として、所定厚さを有するシート状の熱硬化性接着剤を用い、補強体40、50、60、80、90に取り付けた接着剤27の発泡倍率が一定となるように補強体70の凹凸形状に対応して補強板40、50、60、80、90の切欠部44、69を凹凸形状に形成するようにすることも可能である。
なお、本実施形態では、第1補強体40、60、50と第3補強体80又は第4補強体90とが別体で構成されているが、第1補強体40、60、50がクロスメンバ4、5、6の位置に応じて第3補強体80又は第4補強体90と一体的に形成するようにすることも可能である。
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。