JP2012054006A - 透明導電性ガスバリヤフィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明導電性ガスバリヤフィルム1は、ガスバリヤ層となる基材フィルム10の裏面に保護フィルム(PPフィルム)20が貼付けられ、表面に透明導電膜30が形成されている。透明導電膜30は、ITO層31、Ag合金からなるAg層32、ITO層33の3層を順次積層してなる積層膜であって、ITO層,Ag層は、スパッタリング法で形成できる。
【選択図】図1
Description
一方、ガスバリヤフィルムの基材として、熱的安定性及びガスバリヤ性に優れるガラス板も用いられている。
この透明導電膜には、可視光の透過率が80%以上であること、並びに電気伝導度が高く、表面抵抗値が10Ω/□以下の低抵抗であることが要求される。
このような透明導電膜を薄板ガラスの表面に形成することによって、ガスバリヤ性が良好で且つ透明性の良好な導電性ガスバリヤフィルムを得ることもできる。また、この透明導電性ガスバリヤフィルムを長尺状に形成してロール状に巻回することもできるので、搬送も容易にできる。
ITOからなる透明導電膜を低抵抗に形成する主な方法として、真空蒸着法とスパッタ法があるが、いずれも低抵抗率の薄膜を得るためには、成膜時に基材の温度を100℃以上の高温に維持し、且つ薄膜の厚みを400nm程度の膜厚にする必要がある。
本発明は、上記課題に鑑み、薄板ガラスの一方の表面に保護フィルムを貼付け他方の面に透明導電膜を形成した透明導電性ガスバリヤフィルムにおいて、保護フィルムとしてPPフィルムのように耐熱性のないものを用いても、導電性の良好な透明導電膜を形成できるようにすることを目的とする。
上記透明導電性ガスバリヤフィルムにおいて、銀層は、Ag−Pd−Cu合金で形成することが好ましい。
また、保護フィルムは、伸縮性の高いPPやPEからなるフィルムを用いることが好ましい。
上記透明導電性ガスバリヤフィルムをロール状に巻回して透明導電性ガスバリヤフィルムロール体を形成してもよい。
そして、ガラス薄板の一方の面に保護フィルムを貼付けられているので、この透明導電性ガスバリヤフィルムを積み重ねたときに、ガラス薄板同士の間に保護フィルムが介在され、それによってブロッキングが防止される。
すなわち、銀層は、基板となるガラス薄板の温度を高温にしなくても低抵抗で形成することができ、この銀層がITOなどの金属酸化物からなる薄膜間に介在した積層構造なので、金属酸化物からなる薄膜の導電性は低くても、銀層によって十分な導電性を確保できる。
従って、保護フィルムとして、PPフィルムのように耐熱性がないものを用いても、ガラス薄板に保護フィルムを貼付けた状態で、その表面に低抵抗の透明導電膜を形成することができる。
特に、保護フィルムとしてPPフィルムを用いれば、低価格で良好な耐ブロッキング性が得られる。
また、本発明にかかる透明導電性ガスバリヤフィルムは、基材であるガラス薄板、保護フィルムの各層がフレキシブル性を有するので、透明導電性ガスバリヤフィルム全体においてもフレキシブル性を有する。
このロール体においても、巻回されたガラス薄板同士の間に、保護フィルムが介挿されているので、ブロッキングが防止され、使用時には透明導電性ガスバリヤフィルムをスムースに繰り出すことができる。
保護フィルムとして、特に表面荒さの粗い保護フィルムを用いれば、ブロッキング防止効果が優れ、透明導電性ガスバリヤフィルムを加工するときに加工しやすくなる。
図1は、実施の形態にかかる透明導電性ガスバリヤフィルム1の断面を模式的に示す図である。
この透明導電性ガスバリヤフィルム1は、例えば有機ELディスプレイのカバーフィルムとして用いられるものであって、ガスバリヤ層となる基材フィルム10の裏面に保護フィルム20が貼付けられ、表面に透明導電膜30が形成されて構成されている。
基材フィルム10:
基材フィルム10は、薄板ガラスからなるフィルムであるため、水蒸気および酸素をはじめとするガスに対して高いガスバリヤ性を有し、可視光透過性も高い。
基材フィルム10にアルカリが含有されていると、表面に陽イオンの置換が発生し、ソーダ吹きの現象が生じて破損し易くなるため、アルカリ含有量が1000ppm以下の無アルカリガラスが好ましい。
このように基材フィルム10の厚みを10〜200μmに設定することによって、ガスバリヤフィルム1を曲げたときに基材フィルム10にかかる応力も少なくなり、ガスバリヤフィルム1を長尺物にしてロール状に巻き取ることも可能となる。
保護フィルム20:
保護フィルム20は、粘着層21を介して基材フィルム10に貼付けられている。ただし、保護フィルム20を基材フィルム10に貼付けるのに、必ずしも粘着層を介さなくてもよく、保護フィルム20を基材フィルム10に熱圧着などで直接貼付けることもできる。
PPやPEフィルムは基材フィルム10に貼付けやすく、保護フィルムとしての機能及びブロッキング防止効果が優れ、価格も安価なので、保護フィルム20として好ましい。
粘着層21を形成する粘着剤としては、アクリル系透明樹脂を用いることができる。このアクリル系透明樹脂は、塗工タイプと、共押出成形で粘着層を形成する自己粘着タイプとに大別されるが、透明導電膜30を形成する工程で基材フィルム10にシワや剥離が生じることなく接着していれば、どちらを用いてもかまわない。
透明導電膜30は、ITO層31、Ag層32、ITO層33の3層を順次積層してなる積層膜である。
ITO層31、Ag層32、ITO層33は、いずれも導電層として機能するが、特にAg層32は導電性に優れ、主な導電機能を有している。
Agは、基本的に低抵抗率を有するが、Ag合金は、Ag単独の材料と比べて、耐熱性、耐腐食性に優れ、長期にわたって良好な電気伝導性を維持できるので好ましい。特に、Ag−Pd−Cu系合金(APC合金)は、AgにPdを添加することによって、耐候性が向上し、さらに、Cuを添加することによって、加熱工程における凝集による表面ラフネスやヒロックを抑制する効果を奏する。
Ag層32の膜厚は10〜30nmに調整することが好ましい。
これは、Ag層32の膜厚を10nm以上に設定すれば、Ag層32の表面抵抗(Rs)を10Ω/□以下の低抵抗にすることができ、一方、膜厚を30nm以下にすることによって、Ag層32の透過性を確保できるからである。
ITO層31は、Ag層32の下面側において、基材フィルム10の表面上に直接積層され、基材フィルム10と強固に密着する機能を有している。
このような透明導電性ガスバリヤフィルム1は、有機ELディスプレイの表面にカバーガラスとして貼付けられる。なお、有機ELディスプレイの使用時には保護フィルム20は剥がされる。
[透明導電性ガスバリヤフィルムの製造方法]
透明導電性ガスバリヤフィルム1の製造方法について、以下に例示する。
長尺状の基材フィルム10は、ガラス材料を溶融した後、ダウンドロー法(溶解したガラスを、炉の底に空けたスリットを通して下に引き出す方法)で連続的に板状に成形することによって作製することができる。
そして、基材フィルム10の裏面に、長尺状の保護フィルム20を連続的に貼付け、ロール状に巻き取る。
2.透明導電膜30の形成
裏面に保護フィルム20を貼付けた基材フィルム10の表面に、Ag層32をITO層31,33で挟んだ構造の透明導電膜30を成膜する。
図2は、透明導電膜30を形成するのに用いるスパッタリング装置の概略構成を示す図であって、ITO層31を形成する様子を示している。
スパッタリング装置50は、チャンバー51の中に、主ローラ52、巻出し軸53、巻取り軸54、ガイドローラ55a,55b、ターゲット56などが配置されて構成されている。
3.ITO層31の成膜:
ターゲット56として、酸化インジウム(In2O3)と酸化錫(SnO2)とを混合して焼結させたセラミックターゲットを用いる。
チャンバー51内を1.6×10-3Torr以下に減圧すると共に、ガスノズル59からアルゴンガスと酸素ガスを流し、電源60でDC電圧を印加してプラズマを生成しながら、ロール体41から保護フィルム20付きの基材フィルム10を繰り出し、主ローラ52上を経由して、巻取り軸54で巻き取る。
なお、Arガスと酸素ガスの流量比については、形成する薄膜に対して要求される特性(例えば表面抵抗や透明性)を得るのに適した比率を事前に求めておいて、その比率に設定する。
巻取られたロール体42においては、基材フィルム10の裏面に保護フィルム20が貼付けられ、表面にITO層31が形成されている。
次に、スパッタリング装置50を用いて、上記のようにして形成されたITO層31の上にAg層32を形成する。
ターゲット56としてAg合金を用い、ガスノズル59からアルゴンガスを流し、電源60でDC電圧を印加してプラズマを生成しながら、ロール体42から保護フィルム20付きの基材フィルム10を繰り出し、主ローラ52上を経由して巻き取る。
これによって、ITO層31上にAg層32が形成される。
形成するAg層32の厚みは10〜30nmになるよう電力および走行速度を調整する。
このように基材フィルム10を低温度にしてAg層32を形成しても、形成されるAg層32は低抵抗な薄膜となる。
5.ITO層33の成膜:
Ag層32の上にITO層33を形成する。このITO層33は、上記ITO層31の成膜方法と同様にして形成することができる。
なお、以上の説明では、ITO層31の成膜工程、Ag層32の成膜工程、ITO層33の成膜工程ごとに、繰り出し及び巻き取りを行ったが、スパッタリング装置に3つのターゲットを設けておいて、1回の繰り出し及び巻き取りで、ITO層31の成膜、Ag層32の成膜、ITO層33の成膜を連続して行うことがより好ましい。
上記のように、透明導電性ガスバリヤフィルム1は長尺上に形成されているが、ロール状に巻回されているので容易に搬送することができる。
ここで、透明導電性ガスバリヤフィルム1は、基材フィルム10の裏面に保護フィルム20が貼付けられているので、透明導電性ガスバリヤフィルム1を長尺状に形成してロール状に巻回したときに、基材フィルム10同士が直接接触することがなく、保護フィルム20が間に介在するので、ブロッキングが防止される。
また、製造途中のロール体41、ロール体42においても、基材フィルム10同士が直接接触することがなく、保護フィルム20が間に介在するので、ブロッキングが防止される。
また、Ag層32がITO層31とITO層33によって挟まれているので、Ag層32の安定性も良好である。すなわち、Ag層が単独で存在する場合は、特に湿熱環境において水分が侵入し、腐食及び劣化されやすいが、 ITO層31とITO層33で挟まれていることによって、水分の侵入が抑えられるので、腐食及び劣化が防止される。
さらに、透明導電膜30は積層構造であるため、光干渉効果(基材表面に屈折率の異なる層を形成して各層の境界面での反射光の干渉効果)を利用して反射光を打ち消し合うように設計することができ、それによって良好な透明性が得られる。
一方、比較例として透明導電膜をITO層だけで形成する場合、低抵抗の薄膜を形成するためには基板を250℃〜300℃程度の高温に設定することが必要である。従って、基材フィルムにPPフィルムのような耐熱性のない保護フィルムが貼付けられている場合には、基材フィルムの表面に導電性の良好なITO層を形成することは難しい。
[実施例]
基材フィルム10として、厚さ50μmのガラス薄板(日本電気硝子(株)製 OA−10G、無アルカリガラス)を用い、保護フィルム20として、粘着塗工タイプPPフィルム(厚さ75μm、日立化成工業(株)製ヒタレックスDP−1010)を、粘着層(粘着剤はアクリル系樹脂)を介して、基材フィルム10の裏面に貼付け、表面にITO層31を圧力4×10-4Torr、電力密度1.74W/cm2の条件にて厚さ35nmで、APCからなるAg層32を圧力3×10-3Torr、電力密度0.31W/cm2の条件にて厚さ10nmで、ITO層33を厚さ35nmで形成することによって、実施例にかかる透明導電性ガスバリヤフィルム1を作製した。
作製した透明導電性ガスバリヤフィルムは、表面抵抗値が7.98Ω/□(三菱化学(株)製ロレスターFPで測定)であり、全光線透過率は84.10%、ヘイズは0.27%であった(日本電色工業(株)製NDH−5000でASTM D 1003準拠にて測定)。また、透明導電膜の総厚が80nm程度と薄く、カールは発生せず良好であった。
作製した各透明導電性ガスバリヤフィルムについて、以下のようにブロッキングテストを行った。
スパッタ装置での実走行をライン速度1m/minの条件で行いながら、巻き出し軸の回転状態を観察することによって、ブロッキングが発生しているか否かを判定した。ブロッキングが起ると、回転はスムースではなくフィルム同士がくっつくため間欠的な回転となるので、明らかに判定できる。
一方、保護フィルムを設けない透明導電性ガスバリヤフィルムについても同様にブロッキングテストを行ったところブロッキングが発生した。
(静摩擦係数の測定)
数値評価をするため表面性測定機(HEIDON(新東化学(株))製Type 14FW)を用いて、63.5×63.5mmのサンプルを用意し、下面に薄板ガラスを置き、上面には薄板ガラスに保護フィルムを貼り付けたサンプルを、保護フィルムを下側にして設置する。上面から200gの加重をかけた状態で200mm/minの速度で滑らせて静摩擦係数を調べた。この静摩擦係数が高いとブロッキング発生しやすいことは経験的に得ている。
静摩擦係数の測定結果は表1に示すとおりである。表中のトレテック7332は、東レフィルム加工(株)製の自己粘着タイプのPE保護フィルムである。
いずれの保護フィルムにおいても、保護フィルムを貼り付けることによって静摩擦係数が低くなりブロッキングしないことがわかる。
各保護フィルムの接着強度について、Peeling Tester(HEIDON(新東化学(株))製 HEIDON−17)を用いて測定した。25mm幅×150mm程度の短冊状の薄板ガラスに各保護フィルムを貼り付けたサンプルを用意し、薄板ガラスを水平に設置して、保護フィルムを180度方向に200mm/minの速度で引き剥がす際の力を測定することで剥離強度を求めた。その結果を表2示す。
[比較例]
基材フィルム10として、厚さ50μmのガラス薄板を用い、保護フィルムを貼り付けず、枚葉にて150℃の成膜温度で厚み400nmのITO膜を形成して比較例にかかる透明導電性ガスバリヤフィルムを作製した。成膜温度を150℃としたのは、150℃以下の低温では、10Ω/□以下の表面抵抗値を有するITO膜を形成することが困難であることを考慮している。
この比較例にかかる透明導電性ガスバリヤフィルムにおいては、カールが発生した。これは、ITO膜の膜厚が厚く、膜応力が強いためと考えられる。
表3に、上記実施例と比較例の透明導電性ガスバリヤフィルムについて、その電気特性および光学特性、カールの有無を示している。
上記製法においては、スパッタリング装置50において、電源60でDC電圧を印加する例を示したが、RF電圧を印加することによってスパッタリングしても、ITO層31,Ag層32,ITO層33を形成することができる。
ITO層31,33及びAg層32を成膜するのにスパッタリング法を用いる例を示したが、ITO層31,33およびAg層32を形成するのに、EB蒸着法、イオンプレーティング、CVD法などを用いてもよい。
また、上記金属酸化物薄膜以外にポリ(エチレンジオキシ−チオフェン)−ポリスチレンスルホン酸(PDOT:PSS)などの透明導電性高分子薄膜でも良い。
2 巻芯
10 基材フィルム
20 保護フィルム
21 粘着層
30 透明導電膜
31,33 ITO層
32 Ag層
41,42 ロール体
50 スパッタリング装置
51 チャンバー
52 主ローラ
53 巻出し軸
54 巻取り軸
56 ターゲット
59 ガスノズル
60 電源
Claims (6)
- ガラス薄板からなる基材フィルムの一方の面に保護フィルムが配され、他方の面に透明導電膜が形成された透明導電性ガスバリヤフィルムであって、
前記透明導電膜は、
金属酸化物からなる薄膜どうしの間に、銀又は銀合金からなる銀層が挟まれた積層構造であることを特徴とする透明導電性ガスバリヤフィルム。 - 前記薄膜を構成する金属酸化物はITOであることを特徴とする請求項1記載の透明導電性ガスバリヤフィルム。
- 前記銀層は、
Ag−Pd−Cu合金からなることを特徴とする請求項1又は2記載の透明導電性ガスバリヤフィルム。 - 前記保護フィルムは、ポリプロピレンまたはポリエチレンからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の透明導電性ガスバリヤフィルム。
- 請求項1〜4のいずれか記載の透明導電性ガスバリヤフィルムがロール状に巻回されてなる透明導電性ガスバリヤフィルムロール体。
- 一方の面に保護フィルムが配されたガラス薄板の他方の面に、金属酸化物からなる薄膜を形成する第1工程と、
前記第1工程で形成した薄膜上に銀を主成分とする材料で銀層を薄膜形成する第2工程と、
前記第2工程で形成した銀層上に金属酸化物からなる薄膜を形成する第3工程とを備えることを特徴とする透明導電性ガスバリヤフィルムの製造方法。
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