本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
本発明の第1の実施の形態について図1〜図5を参照しながら説明すると、先ず図1において、車両である自動二輪車の車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク11を操向可能に支承するヘッドパイプ12と、該ヘッドパイプ12から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム13…と、両メインフレーム13…の後部に連設されて下方に延びる左右一対のピボットプレート14…とを有しており、ピボットプレート14…に前端が揺動可能に支承されるスイングアーム15の後部に駆動輪である後輪WRが軸支される。しかも前記ピボットプレート14の下部および前記スイングアーム15の前部間にはリンク16が設けられ、前記ピボットプレート14の上部および前記リンク16間にはクッションユニット17が設けられる。
前記メインフレーム13…およびピボットプレート14…には、パワーユニットPAが懸架されており、該パワーユニットPAから出力される回転動力は前後に延びるドライブシャフト18を介して前記後輪WRに伝達される。また前記車体フレームFにおける左側のピボットプレート14の下部にはサイドスタンド19が取付けられる。
図2において、前記パワーユニットPAの一部を構成するエンジンEAのエンジン本体20は、自動二輪車への搭載状態で前方に位置する前部バンクBFと、該前部バンクBFよりも後方に位置する後部バンクBRとを有してV型の水冷式に構成されるものであり、両バンクBF,BRに共通なエンジンケースとしてのクランクケース21に、自動二輪車の左右方向に沿うクランクシャフト22が回転自在に支承される。
前記クランクケース21は、上部ケース半体21aおよび下部ケース半体21bが結合されて成るものであり、前部および後部シリンダブロック23F,23RがV字形をなすようにして上部ケース半体21aに一体に形成され、前記クランクシャフト22の軸線は前記上部ケース半体21aおよび前記下部ケース半体21bの結合面上に配置される。
前部バンクBFは、前部シリンダブロック23Fと、前部シリンダブロック23Fに結合される前部シリンダヘッド24Fと、前部シリンダヘッド24Fに結合される前部ヘッドカバー25Fとで構成され、後部バンクBRは、後部シリンダブロック23Rと、後部シリンダブロック23Rに結合される後部シリンダヘッド24Rと、後部シリンダヘッド24Rに結合される後部ヘッドカバー25Rとで構成され、前記クランクケース21の下部にはオイルパン26が結合される。
図3を併せて参照して、前部バンクBFの前部シリンダブロック23Fには一対のピストン27…が摺動可能に嵌合され、後部バンクBRの後部シリンダブロック23Rにも一対のピストン(図示せず)が摺動可能に嵌合され、それらのピストン27…は前記クランクシャフト22に共通に連接される。
前記クランクケース21には、該クランクケース21の左側面との間に第1クラッチ室31を形成する左カバー28が締結されるとともに、前記クランクケース21の右側面との間に第2クラッチ室32を形成する右カバー29が締結される。また前記クランクシャフト22の一端部は前記クランクケース21を回転自在に貫通して第1クラッチ室31に突出し、前記クランクシャフト22の他端部は前記クランクケース21を回転自在に貫通して第2クラッチ室32に突出する。
前記クランクケース21には、前記クランクシャフト22と平行な軸線を有しつつ同軸に並ぶ第1および第2メインシャフト33,34が回転自在に支承されており、前記クランクケース21の左側壁を回転自在に貫通する第1メインシャフト33の一端部は第1クラッチ室31に突出し、第1メインシャフト33の中間部およびクランクケース21間にはボールベアリング35が介装され、第1メインシャフト33の他端部およびクランクケース間にはシール付きのボールベアリング36が介装される。また第2メインシャフト34はその一端部を第1メインシャフト33の他端部に同軸に対向配置するとともに他端部を第2クラッチ室32に突出させるようにして前記クランクケース21の右側壁を回転自在に貫通するものであり、第2メインシャフト34の一端部および前記クランクケース21間にはシール付きのボールベアリング37が介装され、第2メインシャフト34の中間部および前記クランクケース21の右側壁間にはボールベアリング38が介装される。
前記クランクシャフト22の回転動力は、第1クラッチ室31に配置される第1一次減速ギヤ列39および第1クラッチ41を介して第1メインシャフト33に伝達されるとともに、第2クラッチ室32に配置される第2一次減速ギヤ列40および第2クラッチ42を介して第2メインシャフト34に伝達されるものであり、前記クランクシャフト22から第1および第2メインシャフト33,34に伝達される回転動力を断・接する第1および第2クラッチ41,42は、同軸上に並ぶ第1および第2メインシャフト33,34の相互に反対側の端部に配設される。
前記クランクケース21には、前記クランクシャフト22と平行な軸線を有するカウンタシャフト43が回転自在に支承されるものであり、このカウンタシャフト43の一端部は前記クランクケースの左側壁にボールベアリング44を介して回転自在に支承され、カウンタシャフト43の他端部は前記クランクケース21の右側壁にニードルベアリング45を介して回転自在に支承される。
第1メインシャフト33および前記カウンタシャフト43間には、第1、第3および第5速用ギヤ列G1,G3,G5が択一的に確立可能に設けられ、第2メインシャフト34および前記カウンタシャフト43間には、第2、第4および第6速用ギヤ列G2,G4,G6が択一的に確立可能に設けられる。
前記クランクケース21には、前記カウンタシャフト43と平行な軸線を有するファイナルシャフト48Aが回転自在に支承されており、クランクケース21の左側壁を回転自在に貫通する前記ファイナルシャフト48Aの一端部は、回転動力を駆動輪である後輪WR側に伝達する出力手段であるベベルギヤ機構49を介して前記ドライブシャフト18に連動、連結される。而してファイナルシャフト48Aの一端部および前記クランクケース21の左側壁間にはボールベアリング50が介装され、ファイナルシャフト48Aの他端部および前記クランクケース21の右側壁間にはボールベアリング51が介装される。
而して前記ベベルギヤ機構49は、第1メインシャフト33の軸方向一端部よりも軸方向内方かつ前記カウンタシャフト43の軸方向一端よりも軸方向外方に配置され、前記ファイナルシャフト48Aの前記クランクケース21から突出した一端部に設けられる。
前記カウンタシャフト43の回転動力は、ファイナルギヤ列52と、前記クランクシャフト22から前記後輪WRまでのトルク伝達経路に発生する過大トルクを吸収するトルクダンパ53とを介してファイナルシャフト48Aに伝達される。
而してファイナルギヤ列52は、クランクケース21の右側壁および第2速用ギヤ列G2間に配置されて前記カウンタシャフト43とともに回転するファイナルドライブギヤ54と、該ファイナルドライブギヤ54に噛合して前記ファイナルシャフト48Aに相対回転可能に支承されるファイナルドリブンギヤ55とから成る。
またトルクダンパ53は、前記ファイナルドリブンギヤ55に対向して前記ファイナルシャフト48Aに相対回転不能かつ軸方向相対移動を可能として支承されるカム部材56と、該カム部材56を前記ファイナルドリブンギヤ55側に向けて付勢するダンパスプリング57とを備える。
前記ファイナルドリブンギヤ55の前記カム部材56に対向する側面には凹部58が設けられ、該凹部58の閉塞端に形成される入力側カム部59に当接する出力側カム部60が前記カム部材56に形成される。また前記ダンパスプリング57はファイナルシャフト48Aを囲繞するコイルスプリングであり、ダンパスプリング57の一端を受けるリテーナ61がファイナルシャフト48Aに固定され、ダンパスプリング57の他端が前記ファイナルドリブンギヤ55と反対側から前記カム部材56に当接される。
このようなトルクダンパ53によれば、前記ファイナルドリブンギヤ55および前記カム部材56間に所定トルク以下のトルクが作用するときには前記ファイナルドリブンギヤ55および前記カム部材56を一体的に回転させるものの、自動二輪車のエンジンブレーキ時等のエンジンEAの減速時に前記ファイナルドリブンギヤ55および前記カム部材56間に所定トルクを超えるトルクが作用したときには、前記ファイナルドリブンギヤ55および前記カム部材56間に回転方向での滑りが生じ、前記カム部材56が前記ダンパスプリング57のばね力に抗して前記ファイナルドリブンギヤ55から遠ざかる側に移動しながら前記過大トルクを吸収する。
図4を併せて参照して、前記クランクシャフト22からの回転動力の第1メインシャフト33への伝達を断・接するようにして第1クラッチ室31に収容される第1クラッチ41は、第1メインシャフト33の一端部に相対回転自在に支承される第1クラッチアウタ62と、第1クラッチアウタ62に係合される複数枚の第1摩擦板63,63…と、第1メインシャフト33に相対回転不能に結合される円筒状のボス部64aを有する第1クラッチインナ64と、第1摩擦板63,63…と交互に配置されて第1クラッチインナ64に係合される複数枚の第2摩擦板65,65…と、交互に配置される第1および第2摩擦板63,63…;65,65…のうち軸方向内方の摩擦板に対向して第1クラッチインナ64に一体に設けられる第1受圧板66と、交互に配置される第1および第2摩擦板63,63…;65,65…のうち軸方向外方の摩擦板に対向する押圧部67aを外周に有しつつ第1クラッチインナ64にスプライン係合される第1ピストン67と、第1ピストン67との間に第1液圧室68を形成して前記ボス部64aに固定されるとともに第1ピストン67の軸方向摺動を支持する第1外壁部材69と、第1ピストン67を第1液圧室68との間に挟む第1キャンセラー室70を第1ピストン67との間に形成して第1外壁部材69の軸方向内端部に固定される第1内壁部材71と、第1液圧室68の容積を縮小する側すなわち第1ピストン67を第1受圧板66から離反する側に付勢するばね力を発揮するようにして第1ピストン67および第1内壁部材71間に介設される第1戻しばね72とを備える。
左カバー28と、左カバー28に結合される第1蓋部材73との間に形成される第1液室74は第1液圧室68に液密に通じており、第1液室74から第1液圧室68に高圧の液圧が作用したときには第1ピストン67が第1および第2摩擦板63,63…;65,65…を第1受圧板66との間に圧着する側に移動し、第1クラッチ41は第1クラッチアウタ62と、第1クラッチインナ64すなわち第1メインシャフト33との間を接続することになる。また第1キャンセラー室70には、前記ボス部材64a、第1メインシャフト33内および前記クランクケース21に形成される第1潤滑油路75を介して低圧のオイルが供給されており、これにより第1クラッチ41の回転に伴う遠心力による第1液圧室68の液圧増加分がキャンセルされることになる。
しかも第1メインシャフト33の軸線に直交する平面への第1クラッチ41の投影範囲よりも外方に前記ベベルギヤ機構49が配置され、第1メインシャフト33および前記ファイナルシャフト48Aの軸線に直交する方向で見たときに、前記ベベルギヤ機構49の少なくとも一部が第1クラッチ41と重なるようにして該ベベルギヤ機構49が前記ファイナルシャフト48Aの一端部に設けられる。
ところで第1メインシャフト33には、前記クランクシャフト22からの回転動力が第1一次減速ギヤ列39および第1クラッチ41を介して伝達されるものであり、第1一次減速ギヤ列39は、前記クランクシャフト22の一端部に固定される第1一次ドライブギヤ76と、第1一次ドライブギヤ76に噛合して第1メインシャフト33と同軸に配置される第1一次ドリブンギヤ77とで構成される。第1一次ドリブンギヤ77は第1メインシャフト33に相対回転可能に支承され、第1ダンパスプリング78を介して第1クラッチアウタ62に連結される。
前記クランクシャフト22からの回転動力の第2メインシャフト34への伝達を断・接するようにして第2クラッチ室32に収容される第2クラッチ42は、第2メインシャフト34の他端部に相対回転自在に支承される第2クラッチアウタ82と、第2クラッチアウタ82に係合される複数枚の第3摩擦板83,83…と、第2メインシャフト34に相対回転不能に結合される円筒状のボス部84aを有する第2クラッチインナ84と、第3摩擦板83,83…と交互に配置されて第2クラッチインナ84に係合される複数枚の第4摩擦板85,85…と、交互に配置される第3および第4摩擦板83,83…;85,85…のうち軸方向内方の摩擦板に対向して第2クラッチインナ84に一体に設けられる第2受圧板86と、交互に配置される第3および第4摩擦板83,83…;85,85…のうち軸方向外方の摩擦板に対向する押圧部87aを外周に有しつつ第2クラッチインナ84にスプライン係合される第2ピストン87と、第2ピストン87との間に第2液圧室88を形成して前記ボス部84aに固定されるとともに第2ピストン87の軸方向摺動を支持する第2外壁部材89と、第2ピストン87を第2液圧室88との間に挟む第2キャンセラー室90を第1ピストン67との間に形成して第2外壁部材89の軸方向内端部に固定される第2内壁部材91と、第1液圧室88の容積を縮小する側すなわち第2ピストン87を第2受圧板86から離反する側に付勢するばね力を発揮するようにして第2ピストン87および第2内壁部材91間に介設される第2戻しばね92とを備える。
右カバー29と、右カバー29に結合される第2蓋部材93との間に形成される第2液室94は第2液圧室88に液密に通じており、第2液室94から第2液圧室88に高圧の液圧が作用したときには第2ピストン87が第3および第4摩擦板83,83…;85,85…を第2受圧板86との間に圧着する側に移動し、第2クラッチ42は第2クラッチアウタ82と、第2クラッチインナ84すなわち第2メインシャフト34との間を接続することになる。また第2キャンセラー室90には、前記ボス部材84a、第2メインシャフト34内および前記クランクケース21に形成される第2潤滑油路95を介して低圧のオイルが供給されており、これにより第2クラッチ42の回転に伴う遠心力による第2液圧室88の液圧増加分がキャンセルされることになる。
第2メインシャフト34には、前記クランクシャフト22からの回転動力が第2一次減速ギヤ列40および第2クラッチ42を介して伝達されるものであり、第2一次減速ギヤ列40は、前記クランクシャフト22の右側端部に固定される第2一次ドライブギヤ96と、第2一次ドライブギヤ96に噛合して第2メインシャフト34と同軸に配置される第2一次ドリブンギヤ97とで構成される。第2一次ドリブンギヤ97は、第2メインシャフト34に相対回転可能に支承され、第2ダンパスプリング98を介して第2クラッチアウタ82に連結される。
図5において、前記クランクシャフト22からの回転動力は、前記クランクシャフト22と平行な回転軸線を有する発電機100に伝達され、前記クランクシャフト22には、前記発電機100の回転軸線と平行な回転軸線を有するスタータモータ101からの回転動力が始動用動力として入力されるものであり、発電機100およびスタータモータ101は、前記クランクシャフト22の前方斜め下方に配置される。
前記発電機100は、前記クランクケース21の下部ケース半体21bにおける左側壁に取付けられる発電機ケース102と、前記クランクシャフト22と平行な軸線を有する回転軸103に設けられるロータ104と、前記発電機ケース102内に収容されつつ前記ロータ104を囲繞して発電機ケース102に固定されるステータ105とを備えるものであり、前記クランクシャフト22の軸線に沿う方向で第1クラッチ41と同側に配置される。
前記回転軸103は、ボールベアリング106を介して前記発電機ケース102で回転自在に支承されて前記クランクケース21内に突入されるものであり、該クランクケース21内への前記回転軸103の突入端部および前記クランクケース21間にはボールベアリング107が介装される。
前記発電機100の回転軸103に回転動力を伝達するためのACG駆動用回転部材である駆動スプロケット108が、図3で示すように、クランクシャフト22に設けられ、この駆動スプロケット108は、前記クランクシャフト22から第1メインシャフト33に回転動力を伝達する第1一次減速ギヤ列39の一部を構成して前記クランクシャフト22に固定される第1一次ドライブギヤ76よりも軸方向外方に配置される。
一方、前記回転軸103との間にトルク緩衝機構111を介在させた被動スプロケット109が、前記クランクシャフト22の軸方向で前記駆動スプロケット108に対応する位置で前記回転軸103と同軸に配置されており、前記駆動スプロケット108および前記被動スプロケット109には無端状のチェーン110が巻き掛けられる。
したがって前記クランクシャフト22の回転動力は、前記駆動スプロケット108、前記チェーン110、前記被動スプロケット109および前記トルク緩衝機構111を介して前記回転軸103に伝達される。
前記スタータモータ101のモータケース112は、そのモータ軸113を前記回転軸103と平行に配置して前記クランクケース21に取付けられており、前記モータ軸113に設けられたピニオン114に噛合する被動ギヤ115が、前記回転軸103に相対回転自在に支承され、前記被動ギヤ115および前記回転軸103間に、前記スタータモータ101から前記回転軸103側への動力伝達だけを許容する一方向クラッチ116が介設される。
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、クランクシャフト22から第1メインシャフト33に伝達される回転動力を断・接する第1クラッチ41が第1メインシャフト33の軸方向一端部に配設されるパワーユニットPAにおいて、カウンタシャフト43からの回転動力が伝達され得るファイナルシャフト48Aが第1メインシャフト33と平行な軸線を有してクランクケース21に回転自在に支承され、前記カウンタシャフト43からの回転動力を駆動輪である後輪WR側に伝達するベベルギヤ機構49が、第1メインシャフト33の軸線に直交する平面への第1クラッチ41の投影範囲よりも外方かつ第1メインシャフト33の軸方向一端部よりも軸方向内方に配置されつつ、前記ファイナルシャフト48Aの前記クランクケース21から突出した一端部に設けられるので、第1メインシャフト33の軸方向一端部に配設される第1クラッチ41およびベベルギヤ機構49が第1メインシャフト33の軸方向に沿う同側に配設される構造を採用しても、第1クラッチ41およびベベルギヤ機構49が軸方向で重なることはなく、また第1クラッチ41をクランクケース21とは別のケースに収容する必要もないので、第1クラッチ41およびベベルギヤ機構49の相互干渉を回避するとともに部品点数の削減を図りつつ、第1メインシャフト33の軸方向でパワーユニットPAの小型化を図ることができる。
また前記ベベルギヤ機構49が、前記カウンタシャフト43の軸方向一端よりも軸方向外方に配置されるので、カウンタシャフト43およびファイナルシャフト48Aを近接配置しても前記ベベルギヤ機構49およびカウンタシャフト43が相互に干渉することはなく、パワーユニットPAをより小型化することができる。
また第1メインシャフト33および前記ファイナルシャフト48Aの軸線に直交する方向で見たときに、前記ベベルギヤ機構49の少なくとも一部が第1クラッチ41と重なるようにして該ベベルギヤ機構49が前記ファイナルシャフト48Aの一端部に設けられるので、前記ベベルギヤ機構49を第1クラッチ41に近接配置させつつ、クランクケース21からの前記ベベルギヤ機構49の軸方向突出量を抑えることができる。
さらに前記クランクシャフト22の軸線に沿う方向で第1クラッチ41と同側に配置される発電機100の回転軸103に回転動力を伝達するための駆動スプロケット108が、前記クランクシャフト22から第1メインシャフト33に回転動力を伝達する第1一次減速ギヤ列39の一部を構成して前記クランクシャフト22に固定される第1一次ドライブギヤ76よりも軸方向外方で前記クランクシャフト22に設けられるので、駆動スプロケット108が第1一次ドライブギヤ76よりも軸方向内方に配置される場合に比べて、第1メインシャフト33に設けられる第1一次ドリブンギヤ77および第1クラッチ41を軸方向内方に配置することができ、第1メインシャフト33の軸長を短くし、パワーユニットPAの更なる小型化を図ることができる。
なお前記発電機100および前記スタータモータ101が、図2の鎖線で示すように、前部バンクBFおよび後部バンクBR間に配置されるようにしてもよい。
本発明の第2の実施の形態として、図6で示すように、ACG駆動用回転部材である駆動スプロケット108が、図3で示すように、第1一次減速ギヤ列39の一部を構成してクランクシャフト22に固定される第1一次ドライブギヤ76よりも軸方向内方で前記クランクシャフト22に設けられてもよく、また本発明の第3の実施の形態として、図7で示すように、クランクシャフト22に固定される第1一次ドライブギヤ76よりも軸方向内方に配置される駆動スプロケット108が、第1一次減速ギヤ列39の一部を構成して第1メインシャフト33と同軸に配置される第1一次ドリブンギヤ77に一体に設けられるようにしてもよい。
本発明の第4の実施の形態として、図8で示すように、クランクシャフト22(第1の実施の形態参照)の軸線に沿う方向で第1クラッチ41(第1の実施の形態参照)と同側に配置される発電機118に、クランクシャフト22(第1の実施の形態参照)からの回転動力がギヤ列119およびダンパスプリング120を介して伝達されるようにしてもよい。
前記発電機118の発電機ケース121はクランクケース21に固定され、この発電機118の回転軸122に同軸にかつ相対回転不能に結合される伝動軸123が、ボールベアリング124を介して前記発電機ケース121に回転自在に支承されるとともに、前記クランクケース21に取付けられるカバー125にボールベアリング126を介して回転自在に支承される。
前記ギヤ列119は、第1一次減速ギヤ列39における第1一次ドライブギヤ76と、第1一次ドライブギヤ76に噛合する第1アイドルギヤ127と、第1アイドルギヤ127に噛合する第2アイドルギヤ128と、第2アイドルギヤ128に噛合して前記伝動軸123に相対回転自在に支承される被動ギヤ129とから成り、ダンパスプリング120は、前記被動ギヤ129および前記伝動軸123間に介設される。
図9は本発明の第5の実施の形態を示すものであり、第1〜第4の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
ボールベアリング131,132を介してクランクケース21に回転自在に支承されるファイナルシャフト48Bの一端部には、回転動力を駆動輪である後輪WR(第1の実施の形態参照)側に伝達する出力手段である駆動スプロケット133が第1メインシャフト33の軸線に直交する平面への第1クラッチ41の投影範囲よりも外方に配置されるようにして設けられ、該駆動スプロケット133には無端状のチェーン134が巻き掛けられる。
而して前記駆動スプロケット133は、第1メインシャフト33の軸方向一端部よりも軸方向内方かつカウンタシャフト43の軸方向一端よりも軸方向外方に配置され、前記ファイナルシャフト48Bの前記クランクケース21から突出した一端部に設けられる。
しかもクランクシャフト22から第1メインシャフト33に回転動力を伝達する第1一次減速ギヤ列39の一部を構成して第1メインシャフト33に同軸に連動、連結される第1一次ドリブンギヤ77は、第1メインシャフト33に沿う方向で前記駆動スプロケット133よりも軸方向外方位置に配置される。
前記ファイナルシャフト48Bには、前記カウンタシャフト43の回転動力がファイナルギヤ列135を介して伝達されるものであり、該ファイナルギヤ列135は、前記クランクケース21の右側壁および第2速用ギヤ列G2間で前記カウンタシャフト43に固定される駆動ギヤ136と、該駆動ギヤ136に噛合するようにして前記ファイナルシャフト48Bに固定される被動ギヤ137とから成る。
この第5の実施の形態によれば、カウンタシャフト43からの回転動力を駆動輪である後輪WR側に伝達する駆動スプロケット133が、第1メインシャフト33の軸線に直交する平面への第1クラッチ41の投影範囲よりも外方かつ第1メインシャフト33の軸方向一端部よりも軸方向内方に配置されつつ、前記ファイナルシャフト48Aの前記クランクケース21から突出した一端部に設けられるので、第1メインシャフト33の軸方向一端部に配設される第1クラッチ41および駆動スプロケット133が第1メインシャフト33の軸方向に沿う同側に配設される構造を採用しても、第1クラッチ41および駆動スプロケット133が軸方向で重なることはなく、また第1クラッチ41をクランクケース21とは別のケースに収容する必要もないので、第1クラッチ41および駆動スプロケット133の相互干渉を回避するとともに部品点数の削減を図りつつ、第1メインシャフト33の軸方向でパワーユニットPAの小型化を図ることができる。
また前記駆動スプロケット133が、前記カウンタシャフト43の軸方向一端よりも軸方向外方に配置されるので、カウンタシャフト43およびファイナルシャフト48Aを近接配置しても前記駆動スプロケット133およびカウンタシャフト43が相互に干渉することはなく、パワーユニットPAをより小型化することができる。
さらに第1一次減速ギヤ列39の一部を構成して第1メインシャフト33に同軸に連動、連結される第1一次ドリブンギヤ77が、第1メインシャフト33に沿う方向で前記駆動スプロケット133よりも軸方向外方位置に配置されるので、駆動スプロケット133を第1一次ドリブンギヤ77よりも軸方向外方に突出させることなく、コンパクトに配置することができる。
図10は本発明の第6の実施の形態を示すものであり、第1〜第5の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
ボールベアリング139,140を介してクランクケース21に回転自在に支承されるファイナルシャフト48Cの一端部には、回転動力を駆動輪である後輪WR(第1の実施の形態参照)側に伝達する出力手段である駆動スプロケット133が第1メインシャフト33の軸線に直交する平面への第1クラッチ41の投影範囲よりも外方に配置されるようにして設けられ、該駆動スプロケット133には無端状のチェーン134が巻き掛けられる。
而して前記駆動スプロケット133は、第1メインシャフト33の軸方向一端部よりも軸方向内方かつカウンタシャフト43の軸方向一端よりも軸方向外方に配置され、前記ファイナルシャフト48Cの前記クランクケース21から突出した一端部に設けられる。
しかもクランクシャフト22から第1メインシャフト33に回転動力を伝達する第1一次減速ギヤ列39の一部を構成して第1メインシャフト33に同軸に連動、連結される第1一次ドリブンギヤ77は、第1メインシャフト33に沿う方向で前記駆動スプロケット133よりも軸方向外方位置に配置される。
前記カウンタシャフト43および前記ファイナルシャフト48C間には、択一的に確立することを可能として変速比を異ならせた複数のファイナルギヤ列が設けられるものであり、この第6の実施の形態では、一対である第1および第2ファイナルギヤ列141,142が前記カウンタシャフト43および前記ファイナルシャフト48C間に設けられている。
第1ファイナルギヤ列141は、前記カウンタシャフト43に固定される第1駆動ギヤ143と、第1駆動ギヤ143に噛合するようにして前記ファイナルシャフト48Cに相対回転可能に支承される第1被動ギヤ144とから成り、第2ファイナルギヤ列142は、前記カウンタシャフト43に固定される第2駆動ギヤ145と、第2駆動ギヤ145に噛合するようにして前記ファイナルシャフト48Cに相対回転可能に支承される第2被動ギヤ146とから成る。
また第1および第2ファイナルギヤ列141,142に対応した第1および第2シフタ147,148が、前記ファイナルシャフト48Cに相対回転不能かつ軸方向相対移動可能に装着されており、第1シフタ147を第1被動ギヤ144に係合したときには第1ファイナルギヤ列141を介してカウンタシャフト43からファイナルシャフト48Cに回転動力が伝達され、第2シフタ148を第2被動ギヤ146に係合したときには第2ファイナルギヤ列142を介してカウンタシャフト43からファイナルシャフト48Cに回転動力が伝達される。
しかも第1および第2シフタ147,148は、第1および第2ファイナルギヤ列141,142を同時に確立することも可能であり、第1および第2ファイナルギヤ列141,142を同時に確立すると、パーキングブレーキ状態を得ることが可能である。
この第6の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様の効果を奏することができる上に、第1および第2メインシャフト33,34とカウンタシャフト43との間に設けられる複数変速段のギヤ列G1〜G6と、第1および第2ファイナルギヤ列141,142とで変速段数をより多段化し、変速トルクの自由度を高めることができる。また第1および第2ファイナルギヤ列141,142を利用してパーキングブレーキ状態を得ることが可能であるので、特別なパーキングブレーキ機構を設けることを不要として部品点数の増加を回避しつつパーキングブレーキ状態を得ることができる。
本発明の第7の実施の形態について、図11〜図13を参照しながら説明すると、先ず図11において、この車両用パワーユニットPBは、単気筒のエンジンEBと、該エンジンEBのエンジン本体151に内蔵される歯車変速機Tとを有して自動二輪車等の車両に搭載されるものであり、エンジン本体151は、車両の左右方向に延びるクランクシャフト152を回転自在に支承するエンジンケースとしてのクランクケース153と、ピストン158を摺動自在に嵌合せしめるシリンダボア159を有してクランクケース153に結合されるシリンダボディ154と、前記ピストン158の頂部を臨ませる燃焼室160を前記シリンダボディ154との間に形成して該シリンダボディ154に結合されるシリンダヘッド155と、該シリンダヘッド155の上部に結合されるヘッドカバー156とを備え、クランクケース153の下部にはオイルパン157が結合される。
前記クランクケース153は、前記シリンダボディ154と一体である上ケース半体161と、下ケース半体162とが結合されて成るものであり、前記クランクシャフト1552は、前記上ケース半体161および前記下ケース半体162の合わせ面163に軸線の延長線を配置するようにして前記クランクケース153で回転自在に支承される。
前記シリンダヘッド155の後部側面には、スロットル弁164を有する吸気装置165が接続され、前記シリンダヘッド155の前部側面には、エンジン本体1551の下方を通って後方に延出される排気装置166が接続される。
図12を併せて参照して、前記歯車変速機Tは、前記クランクシャフト1552と平行な軸線を有して同軸に配置される第1および第2メインシャフト167,168と、第1および第2メインシャフト167,168と平行な軸線を有するカウンタシャフト169と、選択的に確立されるようにして第1および第2メインシャフト167,168と前記カウンタシャフト169との間に設けられる複数変速段のギヤ列たとえば第1〜第6速用ギヤ列G1,G2,G3,G4,G5,G6とで構成されており、第1メインシャフト167、第2メインシャフト168およびカウンタシャフト169はクランクケース153で回転自在に支承される。
而して第1メインシャフト167は、前記下ケース半体162の左側壁を回転自在に貫通するものであり、第1メインシャフト167および前記左側壁間にはボールベアリング171が介装される。また第2メインシャフト168は、クランクケース153における下ケース半体162の右側壁を回転自在に貫通するものであり、第2メインシャフト168および前記右側壁間にはボールベアリング172が介装され、このボールベアリング172は、クランクケース153の下ケース半体162および第1メインシャフト167間に介装される前記ボールベアリング171よりも大径に形成される。
一方、カウンタシャフト169の一端部は、前記下ケース半体162の左側壁にボールベアリング173を介して回転自在に支承され、カウンタシャフト169の他端部は、前記下ケース半体162の右側壁にニードルベアリング174を介して回転自在に支承される。
さらに前記下ケース半体162には、前記カウンタシャフト169からの回転動力が伝達されるファイナルシャフト170が、前記カウンタシャフト169と平行な軸線まわりに回転自在に支承される。このファイナルシャフト170の一端部は下ケース半体162の左側壁を回転自在に貫通するものであり、前記ファイナルシャフト170および前記左側壁間にはボールベアリング175および環状のシール部材176が介装され、前記ファイナルシャフト170の他端部は下ケース半体162の右側壁にニードルベアリング177を介して回転自在に支承される。
また前記下ケース半体162の左側壁から突出した前記ファイナルシャフト170の突出端部には、図示しない駆動輪(後輪)に回転動力を伝達する出力部材としての駆動スプロケット133が設けられ、該駆動スプロケット133にはチェーン134が巻き掛けられる。
図13を併せて参照して、第1および第2メインシャフト167,168の相互に反対側の端部には、前記クランクシャフト152から第1および第2メインシャフト167,168に伝達される回転動力を断・接する第1および第2クラッチ181,182が配設されており、第1および第2メインシャフト167,168の第1および第2クラッチ181,182とは反対側の端部が相対回転を可能として相互に嵌装、支持される。
第2メインシャフト168は、大径部168aと、第1メインシャフト167に嵌合される小径部168bとが同軸にかつ一体に連なって成るものであり、第2メインシャフト168の小径部168bおよび第1メインシャフト167間には複数たとえば一対のニードルベアリング183,183が介装される。
第1メインシャフト167および前記カウンタシャフト169間には、6変速段のギヤ列のうち偶数段のギヤ列である第2、第4および第6速用ギヤ列G2,G4,G6が択一的に確立し得るようにして設けられ、第2メインシャフト168の大径部168aおよび前記カウンタシャフト169間には、6変速段のギヤ列のうち奇数段のギヤ列である第1、第3および第5速用ギヤ列G1,G3,G5が択一的に確立し得るようにして設けられ、る。
しかも第1メインシャフト167および前記カウンタシャフト169間に設けられる第2、第4および第6速用ギヤ列G2,G4,G6と、第2メインシャフト168および前記カウンタシャフト169間に設けられる第1、第3および第5速用ギヤ列G1,G3,G5とは、前記クランクシャフト152の軸方向でのエンジンセンターCの両側に分かれて配置される。
第1メインシャフト167および下ケース半体162の左側壁間に介装されるボールベアリング171と、第2メインシャフト168および前記下ケース半体162の右側壁間に介装されるボールベアリング172とは、6変速段のギヤ列G1〜G6を相互間に挟むように配置されるものであり、第2メインシャフト168の第2クラッチ182とは反対側の端部すなわち小径部168bの端部は、第1メインシャフト167内で、第1メインシャフト167および下ケース半体162間のボールベアリング171に対応する部分まで延出される。
前記クランクシャフト152からの回転動力の第1メインシャフト167への伝達を断・接する第1クラッチ181は、第1メインシャフト167の左端部に相対回転自在に支承される第1クラッチアウタ184と、第1クラッチアウタ184に係合される複数枚の第1摩擦板185,185…と、第1メインシャフト167に相対回転不能に結合される第1クラッチインナ186と、第1摩擦板185,185…と交互に配置されて第1クラッチインナ186に係合される複数枚の第2摩擦板187,187…と、交互に配置される第1および第2摩擦板185,185…;187,187…のうち軸方向内方の摩擦板に対向して第1クラッチインナ186に一体に設けられる第1受圧板188と、第1クラッチインナ186に相対摺動可能に嵌合されるようにして有底円筒状に構成されるとともに交互に配置される第1および第2摩擦板185,185…;187,187…のうち軸方向外方の摩擦板に対向する第1押圧部189aが半径方向外方に張り出すようにして一体に設けられる第1押圧部材189と、第1押圧部189aが第1受圧板188から離反する側に第1押圧部材189を付勢するようにして第1クラッチインナ186および第1押圧部材189間に介装される第1係合解除用スプリング190と、第1押圧部材189からの離脱が阻止されるようにして第1押圧部材189内に同軸に挿入される円板状の第1伝達部材191と、第1伝達部材191を第1押圧部材189の開口端側に付勢するばね力を発揮して第1押圧部材189および第1伝達部材191間に設けられる第1プッシュスプリング56と、第1伝達部材191と同軸に配置されるとともに第1伝達部材191に第1レリーズベアリング194を介して連結される第1作動部材193とを備え、第1作動部材193が図示しないアクチュエータによって軸方向に駆動される。
このような第1クラッチ181では、アクチュエータの非作動状態では、第1押圧部材189が第1係合解除用スプリング190で係合解除側に付勢されているので、第1クラッチ181は動力伝達を遮断した切断状態にある。次いでアクチュエータを作動せしめて第1作動部材193を軸方向に作動せしめると、その駆動力が、第1レリーズベアリング194から第1伝達部材191、第1プッシュスプリング192を介して第1押圧部材189に伝達され、第1押圧部材189が第1係合解除用スプリング190を圧縮しながら第1および第2摩擦板185,185…;187,187…を第1受圧板188側に押圧して相互に摩擦係合せしめ、第1クラッチアウタ184および第1クラッチインナ186が結合された接続状態となる。
而して第1作動部材193の軸方向作動に応じて第1プッシュスプリング192が圧縮され、第1プッシュスプリング192の弾発力が第1係合解除用スプリング190の弾発力を超えると、第1プッシュスプリング192の圧縮量に応じた推力で第1押圧部材189が駆動されて第1および第2摩擦板185,185…;187,187…にクラッチ圧着力が作用し、そのクラッチ圧着力に応じたクラッチ容量で第1クラッチ181が接続状態となる。すなわち第1作動部材193の位置と、第1クラッチ181のトルク伝達容量との間にリニアな関係を持たせることができ、アクチュエータの作動制御によって第1クラッチ181のトルク伝達容量を高精度に制御することが可能となる。
ところで第1メインシャフト167には、前記クランクシャフト152からの回転動力が第1一次減速ギヤ列195および第1クラッチ181を介して伝達されるものであり、第1一次減速ギヤ列195は、前記クランクシャフト152の左側端部に固定される第1一次ドライブギヤ196と、第1一次ドライブギヤ196に噛合して第1メインシャフト167と同軸に配置される第1一次ドリブンギヤ197とで構成される。第1一次ドリブンギヤ197は、ボールベアリング171と、第1クラッチ181の第1クラッチアウタ184との間に配置されて第1メインシャフト167に相対回転可能に支承され、第1ダンパゴム198を介して第1クラッチアウタ184に連結される。
而して前記クランクケース153から突出した前記ファイナルシャフト170の一端部に前記駆動スプロケット133が設けられるのであるが、この駆動スプロケット133は、第1メインシャフト167の軸線に直交する平面への第1クラッチ181の投影範囲よりも外方かつ第1メインシャフト167の軸方向一端部よりも軸方向内方に配置されるとともに、前記カウンタシャフト169の軸方向一端よりも軸方向外方に配置される。また第1メインシャフト167および前記ファイナルシャフト170の軸線に直交する方向で見たときに、前記駆動スプロケット133の少なくとも一部が第1クラッチ181と重なるようにして該駆動スプロケット133が前記ファイナルシャフト170の一端部に設けられる。
しかも第1一次減速ギヤ列195の一部を構成して第1メインシャフト167に同軸に連動、連結される第1一次ドリブンギヤ197の一部は、第1クラッチ181、前記カウンタシャフト169の軸方向一端部および前記ファイナルシャフト170で囲まれる部分に配置される。
前記クランクシャフト152からの回転動力の第2メインシャフト168への伝達を断・接する第2クラッチ182は、第2メインシャフト168の右端部に相対回転自在に支承される第2クラッチアウタ201と、第2クラッチアウタ201に係合される複数枚の第3摩擦板202,202…と、第2メインシャフト168に相対回転不能に結合される第2クラッチインナ203と、第3摩擦板202,202…と交互に配置されて第2クラッチインナ203に係合される複数枚の第4摩擦板204,204…と、交互に配置される第3および第4摩擦板202,202…;204,204…のうち軸方向内方の摩擦板に対向して第2クラッチインナ203に一体に設けられる第2受圧板205と、第2クラッチインナ203に相対摺動可能に嵌合されるようにして有底円筒状に構成されるとともに交互に配置される第3および第4摩擦板202,202…;204,204…のうち軸方向外方の摩擦板に対向する第2押圧部206aが半径方向外方に張り出すようにして一体に設けられる第2押圧部材206と、第2押圧部206aが第2受圧板205から離反する側に第2押圧部材206を付勢するようにして第2クラッチインナ203および第2押圧部材206間に介装される第2係合解除用スプリング207と、第2押圧部材206からの離脱が阻止されるようにして第2押圧部材206内に同軸に挿入される円板状の第2伝達部材208と、第2伝達部材208を第2押圧部材206の開口端側に付勢するばね力を発揮して第2押圧部材206および第2伝達部材208間に設けられる第2プッシュスプリング209と、第2伝達部材208と同軸に配置されるとともに第2伝達部材208に第2レリーズベアリング211を介して連結される第2作動部材210とを備え、第2作動部材210が図示しないアクチュエータによって軸方向に駆動される。
このような第2クラッチ182は、第1クラッチ181と同様に断・接作動するものであり、第2作動部材210の位置と、第2クラッチ182のトルク伝達容量との間にリニアな関係を持たせることができ、アクチュエータの作動制御によって第2クラッチ182のトルク伝達容量を高精度に制御することが可能となる。
第2メインシャフト168には、前記クランクシャフト152からの回転動力が第2一次減速ギヤ列212および第2クラッチ182を介して伝達されるものであり、第2一次減速ギヤ列212は、前記クランクシャフト152の右側端部に固定される第2一次ドライブギヤ213と、第2一次ドライブギヤ213に噛合して第2メインシャフト168と同軸に配置される第2一次ドリブンギヤ214とで構成される。第2一次ドリブンギヤ214は第2メインシャフト168に相対回転可能に支承され、第2ダンパゴム215を介して第2クラッチアウタ201に連結される。
前記カウンタシャフト169および前記ファイナルシャフト170間には、前記カウンタシャフト169から前記ファイナルシャフト170に回転動力を伝達するファイナルギヤ列216が設けられており、このファイナルギヤ列216は、前記カウンタシャフト169に一体に設けられたファイナルドライブギヤ217と、該ファイナルドライブギヤ217に噛合して前記ファイナルシャフト170に相対回転不能に設けられるファイナルドリブンギヤ218とから成る。
しかも前記ファイナルドライブギヤ217は、前記カウンタシャフト169の両端部のうち前記駆動スプロケット133側の一端部寄りに設けられるものであり、この第7の実施の形態では、前記クランクケース153における下ケース半体162の左側壁および前記カウンタシャフト169の一端部間に介装されるボールベアリング173と、第2速用ギヤ列G2との間で前記カウンタシャフト169に前記ファイナルドライブギヤ217が一体に設けられる。
次にこの第7の実施の形態の作用について説明すると、第1および第2メインシャフト167,168の第1および第2クラッチ181,182とは反対側の端部が相対回転を可能として相互に嵌装、支持されるので、第1および第2メインシャフト167,168とは反対側でクランクケース153と第1および第2メインシャフト167,168との間に軸受を設けることが不要であり、部品点数を低減することができるとともに、第1および第2メインシャフト167,168の全体軸長を短くすることができ、第1および第2メインシャフト167,168の軸方向で車両用パワーユニットPBの小型化を図ることができる。
また第1メインシャフト167およびカウンタシャフト169間に設けられる第2、第4および第6速用ギヤ列G2,G4,G6と、第2メインシャフト168およびカウンタシャフト169間に設けられる第1、第3および第5速用ギヤ列G1,G3,G5とが、前記クランクシャフト152の軸方向でのエンジンセンターCの両側に分かれて配置されるので、クランクシャフト152の軸方向での重量バランスを良好なものとすることができる。
また第2メインシャフト168が第1メインシャフト167に相対回転自在に嵌合され、第1メインシャフト167およびクランクケース163間に介装されるボールベアリング171と,第2メインシャフト168およびクランクケース153間に介装されるボールベアリング172とが、第1〜第6速用ギヤ列G1〜G6を相互間に挟む位置に配置され、第2メインシャフト168の第2クラッチ182とは反対側の端部が、第1メインシャフト167内でボールベアリング171に対応する部分まで延出されるので、第2メインシャフト168の第2クラッチ182とは反対側の端部ならびに第1メインシャフト167の第1クラッチ181とは反対側の端部を相互に安定的に支持しつつ第1および第2メインシャフト167,168の全体軸長を短くして、車両用パワーユニットPBを第1および第2メインシャフト167,168の軸方向でより小型化することができる。
また第2メインシャフト168が、大径部168aと、第1メインシャフト167に嵌合される小径部168bとが同軸にかつ一体に連なって成るものであるので、第1メインシャフト167が大径化することを回避することができる。しかも第2メインシャフト168の小径部168bおよび第1メインシャフト167間にニードルベアリング183…が介装されるので、小径部168bの磨耗を防止しつつ第1メインシャフト167および第2メインシャフト168の相互支持を可能とし、小径部168bおよび第1メインシャフト167間にボールベアリングが介装される場合に比べて、第1メインシャフト167の小径化を図ることができる。
またカウンタシャフト169からの回転動力を後輪WR側に伝達する駆動スプロケット133が、カウンタシャフト169からの回転動力が伝達されるようにして第1メインシャフト167と平行な軸線を有しつつクランクケース153に回転自在に支承されるファイナルシャフト170の前記クランクケース153から突出した一端部に設けられ、第1メインシャフト167の軸線に直交する平面への第1クラッチ181の投影範囲よりも外方かつ第1メインシャフト167の軸方向一端部よりも軸方向内方に配置されるので、第1メインシャフト167の軸方向一端部に配設される第1クラッチ181および前記駆動スプロケット133が第1メインシャフト167の軸方向に沿う同側に配設される構造を採用しても、第1クラッチ181および駆動スプロケット133が軸方向で重なることはなく、また第1クラッチ181をクランクケース153とは別のケースに収容する必要もないので、第1クラッチ181および駆動スプロケット133の相互干渉を回避するとともに部品点数の削減を図りつつ、第1メインシャフト167の軸方向でパワーユニットPBの小型化を図ることができる。
また前記駆動スプロケット133が、前記カウンタシャフト169の軸方向一端よりも軸方向外方に配置されるので、カウンタシャフト169およびファイナルシャフト170を近接配置しても駆動スプロケット133およびカウンタシャフト169が相互に干渉することはなく、パワーユニットPBをより小型化することができる。
また前記クランクシャフト152から第1メインシャフト167に回転動力を伝達する第1一次減速ギヤ列195の一部を構成して第1メインシャフト167に同軸に連動、連結される第1一次ドリブンギヤ197の一部が、第1クラッチ181、前記カウンタシャフト169の軸方向一端部および前記ファイナルシャフト170で囲まれる部分に配置されるので、クランクシャフト152の軸方向でエンジンEBが大型化することを回避して第1一次ドリブンギヤ197を配置することができる。
また第1メインシャフト167および前記ファイナルシャフト170の軸線に直交する方向で見たときに、前記駆動スプロケット133の少なくとも一部が第1クラッチ181と重なるようにして該駆動スプロケット133が前記ファイナルシャフト170の一端部に設けられるので、駆動スプロケット133を第1クラッチ181に近接配置させつつ、クランクケース153からの駆動スプロケット133の軸方向突出量を抑えることができる。
さらに前記カウンタシャフト169から前記ファイナルシャフト170に回転動力を伝達するファイナルギヤ列216の一部を構成するファイナルドライブギヤ217が、前記カウンタシャフト169の両端部のうち前記駆動スプロケット133側の一端部寄りに設けられるので、ファイナルシャフト170の軸方向長さを必要最小限として軽量化を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
たとえば上述の各実施の形態では、同軸に配置される第1および第2メインシャフト33,34;167,168の相互に反対側の端部にクラッチ41,42;181,182が設けられるようにしたパワーユニットPA,PBについて説明したが、本発明は、クランクシャフトおよびメインシャフト間に介装されるクラッチと、メインシャフトと平行な軸線を有するファイナルシャフトの一端部に設けられるベベルギヤ機構49や駆動スプロケット133等の出力手段とが、メインシャフトの軸方向同側に配置されるパワーユニットに関して広く実施することができる。