JP2012047797A - 実体顕微鏡 - Google Patents
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Abstract
【課題】被検物を立体的に良好に観察する。
【解決手段】対物レンズ14を介して、それぞれ異なる方向から標本12を観察する一対の観察光学系13−1および13−2と、観察光学系13−1および13−2の光軸L1およびL2上にそれぞれ配置され、光軸L1およびL2を直交方向に移動させる円筒プリズム15−1および15−2と、円筒プリズム15−1および15−2による光軸L1およびL2の移動方向が互いに逆方向となるように、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度を変更する傾斜機構とを備える。本発明は、例えば、実体顕微鏡に適用できる。
【選択図】図5
【解決手段】対物レンズ14を介して、それぞれ異なる方向から標本12を観察する一対の観察光学系13−1および13−2と、観察光学系13−1および13−2の光軸L1およびL2上にそれぞれ配置され、光軸L1およびL2を直交方向に移動させる円筒プリズム15−1および15−2と、円筒プリズム15−1および15−2による光軸L1およびL2の移動方向が互いに逆方向となるように、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度を変更する傾斜機構とを備える。本発明は、例えば、実体顕微鏡に適用できる。
【選択図】図5
Description
本発明は、実体顕微鏡に関する。
従来、対物レンズを介して、被検物をそのままの状態で観察する実体顕微鏡が知られている(特許文献1参照)。
実体顕微鏡は、比較的に低倍率での観察に用いられ、左右一対の光学系を介して被検物を異なる角度から観察し、それぞれの光学系の像を左右の眼で観察することにより、被検物を立体的に観察することができる。即ち、両目の視差(左右像の違い)などの生理的要因により、人間は、左右像の違いを脳内で処理して両目の像を融合することができ、これにより、被検物を立体的に認識することができる。
一般的な実体顕微鏡では、被検物を異なる角度から観察する一対の光学系どうしの角度は、12度前後に設定されている。これは、眼幅が65mmである人が、明視の距離とされる300mm先の物体を両眼視したときの左右の眼の光軸の角度であり、多数の人にとって左右像を融合することが比較的に容易に達成される角度であるためである。
ところで、両目の像を融合して被検物を立体的に認識するための生理的要因には個人差があり、立体的な認識が得意な人や不得意な人が存在するだけでなく、立体的な認識が全くできない人も存在する。また、このような個人差以外にも、観察対象物の形状によっては、立体的な認識が困難となる場合もある。
このように、被検物を立体的に認識することができない場合には、左右像の違いが二重像として検鏡者に認識されてしまい、検鏡者が疲労感を覚え、観察に集中することが困難であった。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、検鏡者の疲労感を抑制し、被検物を立体的に良好に観察することができるようにするものである。
本発明の実体顕微鏡は、それぞれ異なる方向から標本を観察する一対の観察光学系と、前記一対の観察光学系の光軸上に配置され、それぞれの前記光軸を直交方向に移動させる光学部材と、前記光学部材によるそれぞれの前記光軸の移動方向が互いに逆方向となるように、前記光軸の移動量を変更する変更手段とを備えることを特徴とする。
本発明の実体顕微鏡においては、それぞれ異なる方向から標本を観察する一対の観察光学系の光軸上に、それぞれの光軸を直交方向に移動させる光学部材が配置され、それぞれの光軸の移動方向が互いに逆方向となるように、光軸の移動量が変更される。
本発明の実体顕微鏡によれば、良好な観察を行うことができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した実体顕微鏡の一実施の形態の構成例を示す図である。
実体顕微鏡11は、標本12を異なる角度から観察するための一対の観察光学系13−1および13−2を有している。実体顕微鏡11では、観察光学系13−1および13−2で共通の対物レンズ14が使用され、観察光学系13−1の光軸L1と観察光学系13−2の光軸L2とが、対物レンズ14よりも上側において平行に構成されている。
対物レンズ14は、実体顕微鏡11に対して着脱可能とされており、検鏡者は、観察の対象となる標本12に応じた倍率の対物レンズ14を選択して装着することができる。
観察光学系13−1および13−2の光軸L1およびL2上には、対物レンズ14側から順に、円筒プリズム15−1および15−2、アフォーカルズーム系16−1および16−2、結像レンズ17−1および17−2、並びに、接眼レンズ18−1および18−2がそれぞれ配置されている。
円筒プリズム15−1および15−2は、その上面および下面が平行な平面で形成された円筒形状の透明な光学部材である。円筒プリズム15−1および15−2は、ユニット22により保持されており、対物レンズ14とアフォーカルズーム系16−1および16−2との間に、ユニット22ごと挿脱自在となるように構成されている。
アフォーカルズーム系16−1は、アフォーカル光学系を構成するレンズ19−1および20−1と、レンズ19−1および20−1の間に配置される開口絞り21−1とを有して構成される。アフォーカルズーム系16−1は、結像面での結像倍率のみを変化させ、結像位置を変化させないような光学系であり、その上側および下側で観察光学系13−1が平行系となっている。また、アフォーカルズーム系16−2は、アフォーカルズーム系16−1と同様に、レンズ19−2および20−2と開口絞り21−2とを有して構成される。
アフォーカルズーム系16−1および16−2では、レンズ19−1と20−1およびレンズ19−2と20−2の間隔を調整することで、実体顕微鏡11による観察倍率が連続的に変更され、開口絞り21−1および21−2の開口径を調整することで、標本12を観察する際の光量が調整される。
結像レンズ17−1および17−2は、標本12からの観察光を集光して像を形成し、接眼レンズ18−1および18−2は、その像を拡大して、実体顕微鏡11を覗き込む検鏡者の両目による観察を行わせる。
このように実体顕微鏡11は構成されており、検鏡者は、観察光学系13−1および13−2それぞれから接眼レンズ18−1および18−2を介して左右の眼で、それぞれの角度から標本12を見込み、標本12を立体視することができる。
ここで、図1に示すように、光軸L1およびL2の間隔である光軸間距離をDとし、対物レンズ14の焦点距離をf0とし、観察光学系13−1および13−2を介して標本12を見込む角度を2αとすると、光軸間距離D、焦点距離f0、および角度αの関係は次の式(1)で表される。
この式(1)より、角度αは、次の式(2)で求めることができる。
例えば、光軸間距離Dを22mmとし、焦点距離f0を100mmとすると、標本12を見込む角度2αは、次の式(3)で表される。
このような角度2αの視差により、実体顕微鏡11では標本12を立体視することができる。なお、以下、この角度2αを、輻輳角とも称する。
実体顕微鏡11では、対物レンズ14より上側の光軸L1およびL2が、標本12に対して(標本12が載置されるステージに対して)垂直となるように構成されており、図1に示すように、円筒プリズム15−1および15−2の上面および下面が、光軸L1およびL2に対してそれぞれ垂直である場合、観察方向(図1に示されている矢印の方向)は標本12に対して垂直となる。
そして、実体顕微鏡11では、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させることにより、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離を調整することができる。
図2を参照して、光軸間距離の調整について説明する。図2Aには、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離を、円筒プリズム15−1および15−2よりも上側の光軸間距離よりも狭めた状態の実体顕微鏡11が示されており、図2Bには、拡げた状態の実体顕微鏡11が示されている。
例えば、円筒プリズム15−1を、図2Aに示すように時計方向に傾斜させると、円筒プリズム15−1の上面および下面でそれぞれ光線が屈折するため、円筒プリズム15−1の下側の光軸L1は、その上側の光軸L1に対して水平方向(光軸に対して直交する方向)の左側にシフトする。また、円筒プリズム15−2を反時計回りに傾斜させると、円筒プリズム15−2の下側の光軸L2は上側の光軸L2に対して水平方向の右側にシフトする。
このように、光軸L1が左側にシフトするとともに光軸L2が右側にシフトした場合には、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離は、円筒プリズム15−1および15−2よりも上側の光軸間距離よりも狭くなり、輻輳角が狭まることになる。
一方、例えば、円筒プリズム15−1を、図2Bに示すように反時計方向に傾斜させると、円筒プリズム15−1の上面および下面でそれぞれ光線が屈折するため、円筒プリズム15−1の下側の光軸L1は、その上側の光軸L1に対して水平方向の右側にシフトする。また、円筒プリズム15−2を時計回りに傾斜させると、円筒プリズム15−2の下側の光軸L2は上側の光軸L2に対して水平方向の左側にシフトする。
このように、光軸L1が右側にシフトするとともに光軸L2が左側にシフトした場合には、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離は、円筒プリズム15−1および15−2よりも上側の光軸間距離よりも広くなり、輻輳角が広がることになる。
図2Aおよび図2Bに示すように、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させて、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離を変更することで輻輳角を変更すること、即ち、左右眼の視差を変化させることができる。これにより、検鏡者は、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度を操作することで、立体感を調整しながら標本12を観察することができる。
図3を参照して、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度と、光軸間距離および輻輳角との関係について説明する。
図3に示すように、円筒プリズム15−1および15−2の厚みをtとし、光軸L1およびL2それぞれに対する円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度をθとし、円筒プリズム15−1および15−2の屈折率をnとする。このとき、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜に従って光軸L1およびL2がシフトする距離を示す光軸シフト量dは、次の式(4)により求めることができる。
従って、例えば、屈折率nを1.5168とし、厚みtが30mmである円筒プリズム15−1および15−2を使用し、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度θの範囲を±20度とすると、式(4)より、傾斜角度θが−20度のときの光軸シフト量dは-3.74mmとなり、傾斜角度θが20度のときの光軸シフト量dは3.74mmとなる。従って、上述の条件において、実体顕微鏡11では、-3.74mmから3.74mmまでの光軸シフト量dの範囲で、光軸間距離Dを調整することができる。
また、このとき、対物レンズ14の焦点距離f0を100mmとし、光軸間距離Dを22mmすると、上述の式(3)より、輻輳角2αは、12.6度となる。また、上述したように、実体顕微鏡11では、対物レンズ14を交換して倍率を変更することができ、例えば、焦点距離f0が200mmである対物レンズ14を使用する場合、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度θが0度のとき、輻輳角2αは6.3度となる。
このように、焦点距離f0が100mmの対物レンズ14と、焦点距離f0が200mmの対物レンズ14とを切り替えて使用し、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度θの範囲を±20度で調整可能としたとき、実体顕微鏡11では、図4に示すような範囲の輻輳角2αで観察を行うことができる。ここで、円筒プリズム15−1および15−2は対称に傾斜させるものとし、直上から(図1で矢印で示した観察方向から)立体視した状態を維持したまま、光軸L1およびL2の成す角度のみが変化する。
図4に示すように、実体顕微鏡11では、円筒プリズム15−1および15−2を対称に±20度の範囲で傾斜させることで、光軸間距離Dが29.5mmから14.5mmまでの範囲で調整され、対物レンズ14を切り替えることで、輻輳角2αを、16.9度から4.2度までの範囲で連続的に変化させることができる。また、上述したように、円筒プリズム15−1および15−2は、ユニット22ごと挿脱自在となるように構成されているので、ユニット22を着脱するだけで、任意の輻輳角と、規定の輻輳角(光軸間距離Dが22mmで一定であるときの輻輳角)とを容易に切り替えることができる。
次に、図5を参照して、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させる傾斜機構について説明する。
図5に示されている傾斜機構では、円筒プリズム15−1および15−2は、プリズムホルダ31−1および31−2にそれぞれ固定されており、プリズムホルダ31−1および31−2は、ユニット22に対してそれぞれ回転可能に装着されている。プリズムホルダ31−1および31−2は、回転軸を中心とした略円盤形状の円弧部を有しており、その円弧部の外周面の一部に、歯車が形成されている。
そして、プリズムホルダ31−1および31−2の間には、それぞれの歯車に噛み合うように、駆動用ラック32が装着されている。駆動用ラック32は、両側面に歯が形成された平板の棒状の部材であり、いわゆるラックアンドピニオン機構により、駆動用ラック32の直線的な動きが、プリズムホルダ31−1および31−2の回転運動に変換される。
例えば、駆動用ラック32には、図示しない把持部が設けられており、その把持部が検鏡者により上下方向に操作される。例えば、検鏡者が、把持部を上方向に移動させると、把持部とともに移動する駆動用ラック32の歯を介して、プリズムホルダ31−1が時計方向に回転するとともに、プリズムホルダ31−2が反時計方向に回転する。これにより、図5に示すように、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離が、円筒プリズム15−1および15−2よりも上側の光軸間距離よりも狭くなり、輻輳角が狭まることになる。
なお、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜機構としては、上述のようなラックアンドピニオン機構を利用した構成の機構に限られるものではなく、円筒プリズム15−1および15−2を同一の傾斜角度で、対称となる傾斜方向で傾斜させることができるように構成されていれば、どのような傾斜機構でもよい。即ち、傾斜機構は、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させて、光軸L1とL2とが互いに逆方向にシフトするように構成されていればよい。
また、本発明は、接眼レンズ18−1および18−2を介して検鏡者が直接的に観察するような実体顕微鏡11の他、例えば、接眼レンズを使用せずに、三次元表示の可能なディスプレイ装置を利用した顕微鏡システムに適用することができる。なお、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
次に、図6は、本発明を適用した顕微鏡システムの構成例を示す図である。
図6において、顕微鏡システム51を構成する実体顕微鏡11'は、図1の実体顕微鏡11と同様に構成されており、接眼レンズ18−1および18−2に替えて、撮像素子52−1および52−2を有している。
撮像素子52−1および52−2は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子であり、観察光学系13−1および13−2それぞれの像面位置に配置され、それぞれ視差の異なる画像を撮像する。
撮像素子52−1および52−2により撮像された画像は、パーソナルコンピュータなどにより構成される制御装置54において画像処理され、ディスプレイ装置55に表示される。ディスプレイ装置55は、三次元表示が可能な表示装置であり、例えば、偏光板や液晶シャッタなどを利用した眼鏡方式や、レンチキュラーやパララックスバリアなどを利用した裸眼立体視方式(眼鏡を使用しない方式)などの表示方式で、撮像素子52−1および52−2により撮像された画像を表示する。
また、顕微鏡システム51では、マウスなどの入力装置56を操作し、検鏡者が制御装置54に対して各種の操作信号を入力することができる。例えば、輻輳角を調整する操作信号が制御装置54に入力されると、制御装置54は、その操作信号に従って駆動装置57を制御し、駆動装置57が円筒プリズム15−1および15−2を駆動する。これにより、標本12を観察する輻輳角が調整され、ディスプレイ装置55の画面に表示される画像の立体感が調整される。
図7を参照して、ディスプレイ装置55の画面に表示される画像の立体感の調整について説明する。図7では、標本12として、図7Aに示されている三角柱を例に説明を行い、三角柱の上面にピント面が設定された状態で標本12の観察が行われたときの画像が図7B乃至図7Dに示されている。
実体顕微鏡11'では、観察光学系13−1の光軸L1と観察光学系13−2の光軸L2とで異なる角度から標本12を観察することになるため、撮像素子52−1および52−2では視差のある像がそれぞれ取得される。具体的には、観察光学系13−1を介して撮像する撮像素子52−1では、標本12の右側面が現れるような像(以下、適宜、右像と称する)が撮像され、観察光学系13−2を介して撮像する撮像素子52−2では、標本12の左側面が現れるような像(以下、適宜、左像と称する)が撮像される。
そして、撮像素子52−1および52−2により撮像される右像および左像は、制御装置54により画像処理が施されてディスプレイ装置55に表示される。ディスプレイ装置55に表示される右像および左像は、上述したような表示方式により、撮像素子52−1により撮像された右像が右目に入力されるとともに、撮像素子52−2により撮像された左像が左目に入力され、検鏡者は、ディスプレイ装置55の画面に表示される画像を立体的に認識することができる。
このとき、標本12の三角形の上面にピント面が設定された状態とされているので、その上面は右像と左像とで略同位置に現れており、ディスプレイ装置55の画面では、標本12の三角形の上面が重畳するように表示される。
図7Bには、図1に示したように、円筒プリズム15−1および15−2の上面および下面が、光軸L1およびL2に対してそれぞれ垂直である場合に、撮像素子52−1により撮像された右像、撮像素子52−2により撮像された左像、並びに、右像および左像が表示されるディスプレイ装置55の画面が示されている。
そして、立体感を弱めたい場合には、図2Aに示したように、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させて、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離を狭めた状態とする。図7Cには、この状態で撮像素子52−1により撮像された右像、撮像素子52−2により撮像された左像、並びに、右像および左像が表示されるディスプレイ装置55の画面が示されている。図7Cに示されている像では、図7Bの像よりも、標本12の側面が見える範囲が狭くなっており、立体感が弱まることになる。
一方、立体感を強めたい場合には、図2Bに示したように、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させて、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離を広げた状態とする。図7Dには、この状態で撮像素子52−1により撮像された右像、撮像素子52−2により撮像された左像、並びに、右像および左像が表示されるディスプレイ装置55の画面が示されている。図7Dに示されている像では、図7Bの像よりも、標本12の側面が見える範囲が広くなっており、立体感が強まることになる。
このように、実体顕微鏡11'では、標本12を観察する際の視差を調整した像を取得することができ、ディスプレイ装置55の画面に表示される画像の立体感を調整することができる。そして、光軸間距離を狭めた状態で観察される像(図7C)は、光軸間距離を広げた状態で観察される像(図7D)よりも、観察光軸を1つしか持たない一般的な顕微鏡に近い像となり、一般的に、立体的な認識が苦手な検鏡者にとって疲労感が抑制され、集中して良好な観察を行うことができる。また、例えば、立体的に認識することが困難な形状の標本12が観察対象となった場合でも、検鏡者は立体的な認識を行いやすいように、視差を調整する(弱める)ことができる。
ところで、図7を参照して説明したように、標本12の上面にピント面が設定されている場合には、標本12の上面は、右像および左像ともに略中央に表示され、ディスプレイ装置55の画面において重畳して表示される。これに対し、ピント面を標本12の下方(ステージ側)に移動させた場合、標本12の上面のピントがボケるとともに、実体顕微鏡11では標本12を斜め方向から観察していることより、右像では上面が左方向に移動し、左像では上面が右方向に移動する。従って、この場合、ピントがボケている標本12の上面は、ディスプレイ装置55の画面で重畳されずに異なる位置に表示されるため、検鏡者は、標本12の上面を単なる二重像とし認識することになり、標本12を立体的に認識することが困難になる。
なお、検鏡者が対物レンズを覗き込んで標本12を観察する場合には、ピントがボケた上面が横方向に移動しても、両眼輻輳(視線の交差角、つまり眼球の回転)によって補正されるため、標本12を立体的に認識することが困難になることは、ある程度は回避される。
図8を参照して、標本12の下面にピント面が設定されている場合の像について説明する。
図8Aには、従来の実体顕微鏡と同様に構成された、即ち、円筒プリズム15−1および15−2が取り外され、光軸間距離の調整が行われないように構成された実体顕微鏡11'が示されている。
図8では、ピントが合致している標本12の底面の輪郭が太線で示されており、ピントが合致していない、ボケた標本12の上面および側面の輪郭が細線で示されている。図8Aに示すように、右像では標本12の上面は中央より左側に現れ、左像では標本12の上面は中央より右側に現れている。そして、ディスプレイ装置55の画面では、ピントが合致している標本12の底面が中央で重畳するように表示され、右像における標本12のボケた上面と、左像における標本12のボケた上面とが離れた位置に表示される。
このように、標本12のボケた上面が離れた位置に表示されているときでも、標本12において上面がピント方向で最も情報量の多い面であるため、その上面を検鏡者が目で追ってしまう傾向が生理的に存在する。これにより、ディスプレイ装置55の画面に表示された標本12を立体的に認識することが困難になり、検鏡者が疲労感を覚える原因となる。特に、ディスプレイ装置55が、裸眼立体方式により立体表示を行う場合には、見る位置(ディスプレイ装置55に対する検鏡者の頭の位置)により左右の眼に入力される像を確実に分離することができないため、検鏡者は、ディスプレイ装置55に表示された右像および左像を視差像として認識することが困難となる。これにより、検鏡者は単なる二重像として認識してしまい、標本12を立体視することができない。
そこで、実体顕微鏡11では、図8Bに示すように、円筒プリズム15−1および15−2を傾斜させて、円筒プリズム15−1および15−2と対物レンズ14との間の光軸間距離を狭めることで輻輳角を小さくして、ディスプレイ装置55の画面に表示される標本12の上面の間隔を近接させることができる。即ち、検鏡者は、ディスプレイ装置55の画面に表示された標本12を立体的に認識し易くなるように、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度を調整することで、良好な観察を行うことができる。
特に、立体的な認識が困難な形状の標本12が観察対象となっているとき、検鏡者は、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度を適宜調整して、自身が立体的に認識し易くなるように立体感を調整することで、良好な観察を行うことができる。
以上のように、顕微鏡システム51では、ディスプレイ装置55を利用した観察において、円筒プリズム15−1および15−2の傾斜角度を調整することで、立体的な認識が不得意な検鏡者であっても、立体的な認識が困難な形状の標本12が観察対象であっても、良好な立体像を得ることができるので疲労感が抑制され、検鏡者は、標本12を立体的に良好に観察することができる。
また、顕微鏡システム51では、撮像素子52−1および52−2により撮像された画像がディスプレイ装置55に三次元的に表示されるので、検鏡者は、実体顕微鏡11を覗きこむよりも大きな画面で、標本12を詳細に観察することができる。また、複数の検鏡者により標本12を同時に観察することができる。
なお、本実施の形態において、実体顕微鏡11(図1)では、対物レンズ14とアフォーカルズーム系16−1および16−2との間に、円筒プリズム15−1および15−2が挿入されているが、円筒プリズム15−1および15−2の挿入箇所は光路が平行系であればよく、対物レンズ14とアフォーカルズーム系16−1および16−2との間に限定されるものではない。例えば、アフォーカルズーム系16−1および16−2と結像レンズ17−1および17−2との間の平行系である箇所に円筒プリズム15−1および15−2を挿入してもよい。
また、本発明は、観察光学系13−1および13−2が平行部分を有する平行系の顕微鏡の他、一対の観察光学系が内向角をもって配置される内斜系の顕微鏡にも適用することができる。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
11 実体顕微鏡, 12 標本, 13−1および13−2 観察光学系, 14 対物レンズ, 15−1および15−2 円筒プリズム, 16−1および16−2 アフォーカルズーム系, 17−1および17−2 結像レンズ, 18−1および18−2 接眼レンズ, 19−1および19−2 レンズ, 20−1および20−2 レンズ, 21−1および21−2 開口絞り, 22 ユニット, 31−1および31−2 プリズムホルダ, 32 駆動用ラック, 51 顕微鏡システム, 52−1および52−2 撮像素子, 54 制御装置, 55 ディスプレイ装置, 56 入力装置, 57 駆動装置
Claims (6)
- それぞれ異なる方向から標本を観察する一対の観察光学系と、
前記一対の観察光学系の光軸上に配置され、それぞれの前記光軸を直交方向に移動させる光学部材と、
前記光学部材によるそれぞれの前記光軸の移動方向が互いに逆方向となるように、前記光軸の移動量を変更する変更手段と
を備えることを特徴とする実体顕微鏡。 - 前記光学部材は、透明な平行平面板であり、
前記変更手段は、前記光学部材の平面を前記光軸に対して傾斜させる傾斜角度を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の実体顕微鏡。 - 前記光学部材は、前記観察光学系の光軸上に挿脱自在である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の実体顕微鏡。 - 前記観察光学系の像面にそれぞれ配置される撮像素子と、
前記撮像素子により撮像された画像を、検鏡者により立体視可能となるように表示する表示手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の実体顕微鏡。 - 前記光学部材は、前記一対の観察光学系における各光軸の移動量が逆方向に同一となるように前記光軸を対象に移動させる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の実体顕微鏡。 - 結像面での結像倍率のみを変化させ、結像位置を変化させないように構成されたアフォーカルズーム光学系
をさらに備え、
前記光学部材は、前記アフォーカル光学系の上側または下側に形成される前記観察光学系の光路が平行系となる箇所に挿入される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の実体顕微鏡。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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