JP2012016785A - 超耐熱合金の切削加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】切削液を全く使用しないドライな状態、又は、極めて微量な切削液を噴霧する状態で超耐熱合金を能率よく加工可能な超耐熱合金の切削加工方法を提供する。
【解決手段】本発明の超耐熱合金の切削加工方法は、先端部11の断面が円弧状をなしかつ工具直径Dが4mm〜10mmのエンドミル状工具1を用意し、ドライ状態又は切削液を0.01L/h以下の流量で供給しかつエンドミル状工具1を40m〜120m/minの最大切削速度Vで回転させながら被削材2を切削することを特徴とする。また、工具1の回転方向が被削材2の移動方向に対してダウンカット方向に設定され、工具1の一刃当たりの送り量Sが0.1mm/刃〜0.2mm/刃に設定され、又は/及び、工具1の回転軸Oの傾斜角θが被削材2の加工面2の法線Nに対し0〜5度以内になるように設定されていることが好ましい。
【選択図】図2

Description

本発明は、超耐熱合金の切削加工方法に関するものであり、より詳しく小径エンドミル状工具を用いた超耐熱合金の切削加工方法に関するものである。
超耐熱合金は、Ni、CoおよびFeから選ばれた少なくとも1種を所定割合だけ含む合金からなる金属基材であり、耐酸化性と高温強度の両面で優れた特性を有している。このため、航空機部品やエネルギー関連機器の部品に多用されており、これらは主に切削加工によって製作されている。
しかしながら、超耐熱合金は上述のような優れた特性を有する反面、これを加工する際には加工能率が極めて低いうえ、工具寿命も短く、代表的な難加工材である。例えば、非特許文献1では、工具径φ6〜18mmのエンドミルを使用して例えばインコネル(登録商標)等の超耐熱合金を切削加工する場合、切削速度として16〜30m/minの範囲を推奨しており、これを遵守すると加工能率は低くならざるを得ない。
また、従来の加工法では、上記切削速度が低い上に、加工の際に生じるびびり振動が顕著であり、その影響が被削材加工面に残ってしまう。そのために、切削加工後に研磨仕上げ等の追加作業を必要とし、生産性を著しく阻害する結果を招来していた。
また、一般的な鋼(Fe)の熱伝導率が84W/(m・K)であるところ、超耐熱合金の熱伝導率は10〜25W/(m・K)であり、一般的な鋼の約6分の1〜約4分の1程度に留まる。従って、超耐熱合金を被削材として切削加工する際には、工具の刃先部分に局所的に熱が発生・集中し、この刃先部分は極めて高温になり得る。この熱を適切にコントロールしないと、工具や被削材が熱膨張するため加工精度が低下するとともに、許容しがたい程に工具摩耗が進んでしまう恐れがある。従って、超耐熱合金の切削加工においては、加工時に被削材と工具とで発生する大量の熱を効率的に放散・除去することを念頭に置く必要がある。
超耐熱合金の切削加工方法として、例えば、特許文献1〜3に示すように、先端がボール又はスクエアの断面形状を有するエンドミル状工具を用いた切削加工方法が既に提案されている。しかしながら、これらの特許文献においては、上述の熱の放散・除去のために、クーラント(切削液)の供給(例えば、特許文献1の段落番号「0030」)を講じるなど、従来から一般的に行われている対策程度の言及しか見受けられず、その他の独創的な解決方法・手段についての示唆すらない。
なお、従来のクーラント供給による熱の除去方法では、超耐熱合金を切削する切削加工装置に、例えば特許文献4に示すようなクーラント供給源などの、クーラントを供給・送出する機構を予め搭載する必要があるだけでなく、実際の加工中も常にクーラントを加工箇所に供給する必要があり、設備費用及び加工費用(イニシャルコスト及びランニングコスト)の上昇を余儀なくされていた。
特開2010−017769号公報 特許第4183058号公報 特開2002−036020号公報 特開平6−134648号公報
狩野勝吉著、「難削材・新素材の切削加工ハンドブック」、初版、株式会社工業調査会、2002年7月5日
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、従来の技術が有する欠点を排除した超耐熱合金の切削加工方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、切削液を全く使用しないドライな状態、又は、極めて微量な切削液を噴霧する状態で超耐熱合金を能率よく加工可能な超耐熱合金の切削加工方法を提供することを目的とする。
また、本発明では、加工能率を高めるだけでなく、工具寿命を向上しかつ良好な被削材の加工面性状を生成できる超耐熱合金の切削加工方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した後、切削加工において生ずる切屑自体が切削液に代替して熱を運搬する媒体となること、切削条件に応じて切屑の長さやサイズ(熱容量)が変化すること、所定の長さや熱容量を有した切屑を生じるように切削条件を適切に設定すれば、切削の際に、工具と被削材と切屑とにおいて発生する熱の大半を切屑に伝播・吸収させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも次の構成・特徴を採用するものである。
1.先端部の断面が円弧状をなしかつ工具直径が4mm〜10mmのエンドミル状工具を用意し、ドライ状態又は切削液を0.01L/h以下の流量で供給しかつ前記エンドミル状工具を40m〜120m/minの最大切削速度で回転させながら被削材を切削することを特徴とする超耐熱合金の切削加工方法。
2.前記工具の回転方向が前記被削材の移動方向に対してダウンカット方向に設定されていることを特徴とする1記載の超耐熱合金の切削加工方法。
3.前記工具の一刃当たりの送り量が0.1mm/刃〜0.2mm/刃に設定されていることを特徴とする1又は2記載の超耐熱合金の切削加工方法。
4.前記工具の回転軸の傾斜角が前記被削材の加工面の法線に対し0〜5度以内になるように設定されていることを特徴とする1〜3のいずれか1項記載の超耐熱合金の切削加工方法。
ここで、「ドライ状態」の切削加工とは切削液(クーラント)を全く使用せずに工具だけを用いて被削材を切削加工することを意味する。この際、工具刃先と被削材との接触箇所を無風状態にしたまま工具を回転させる場合だけでなく、所定の温度及び圧力に設定された空気や窒素等の気体を上記接触箇所にノズル等を用いて吹き付けながら工具を回転させる場合も含まれる。これにより、生成された切屑を上記接触箇所から吹き飛ばすことができるため、加工面性状を良好に保つことが可能となる。
また、切削液を0.01L/h以下の流量で供給する際には、切削液そのものを単独で上記接触箇所に向けて供給(滴下)する場合だけでなく、上記のような所定の温度及び圧力に設定された空気や窒素等の気体と混合(気液混合)させて上記接触箇所に向けて噴霧する場合も含まれる。
本発明の超耐熱合金の切削加工方法によれば、所定の大きさの工具直径を有したエンドミル状工具を従来の回転速度に比して極めて高速で回転させることにより、工具と被削材との接触時間を短くし、切削の際に生じる熱の発生を抑制することができる。また、この熱を切屑が熱伝播(熱吸収)を許容できる範囲内に抑制して、大半の熱を切屑に逃がすようにすることができる。これにより、工具や被削材への熱流入やこれらの温度上昇を大幅に抑制することが可能となる。
また、本発明の好適な態様によれば、エンドミル状工具の中心刃(先端部の頂点付近)を被削材に押し当てて工具回転軸方向に静的な力の成分を発生させることができる。この静的な力は、超耐熱合金の切削加工の際に発生し易いびびり振動を抑制する効果がある。
本発明のエンドミル状工具と被削材とを示した説明図である。 工具の回転方向と切削によって生じた切屑を説明した図である。 工具直径と工具寿命との関係を示した図である。 最大切削速度と工具寿命との関係を示した図である。 加工時の切削抵抗の経時変化を説明した図である。 切削抵抗(軸方向成分)の経時変化の実測値とその切削状態を説明した図である。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な
実施形態に何等限定されるものではない。
(工具の構造・形状)
図1は本発明のエンドミル状工具1と被削材2とを示した説明図である。また、図2(a)は、エンドミル状工具1の回転軸Oを当該図面の紙面に対して垂直に向けた方向から観た切削加工状態を示した図である。図1に示すように、エンドミル状工具1は、先端部11の断面が連続的に変化する形状(例えば円弧状)をなしかつ工具直径Dが4mm〜10mmの小径の範囲にあるものを用意する。この工具1として、例えば、上記所定の工具直径Dを有した一般に入手可能なボールエンドミル(ボールノーズ形、テーパシャンクボールノーズ形など)を利用してもよい。また、工具1の材質として、超硬合金製またはサーメット(cermet)製であることが好ましい。
工具直径Dを上記範囲に設定した理由は、図3に示すように、Dが10mmより大きくなると、工具寿命(図3では、切削可能な距離(m))が著しく低下してしまう一方、4mm未満になると、上記工具寿命の著しい低下のみならず径が小さすぎるため加工能率の著しい低下をもたらすことになるためである。なお、図3においては工具直径Dが6mmの工具を用いた場合に最大の工具寿命が得られており、これに加工能率等の他の特性をも考慮すると、6mm〜8mmの工具直径Dを有した工具1を用意することがさらに好ましいといえる。
また、上述の形状やサイズを有したエンドミル状工具1を用意するだけでなく、以下の所定の加工条件に設定して被削材2を切削加工することも重要である。先ず第一の加工条件として、エンドミル状工具1を所定の範囲で高速回転させることが重要である。具体的には、円弧状断面を有した先端部11の最大切削速度Vを40m〜120m/min(但し、minは分)に設定する。なお、図1を参照すると、Vは被削材2に実際に接しながら回転する先端部11の外周面において頂点12から最も離れた位置での接線方向の速度であり、V=π×D×Nと表すことができる(但し、Dは実切削径(m)、Nは工具回転数(rpm)である)。
なお、最大切削速度Vの上記範囲は、後述する図4に示す工具寿命試験の結果と、本発明の課題である加工能率の飛躍的向上と、を熟慮して設定したものである。
図4は、本発明の工具1を用いて超耐熱合金2を実際に加工した場合の最大切削速度Vと工具寿命との関係を示した図である。この図4より、Vが60m/minのときに最大の工具寿命が得られることがわかる。また、Vが40m/min未満になると急激に工具寿命が低下する一方、Vが60m/minを超えると工具寿命は低下するものの低下の度合(勾配)は緩やかである。また、Vが高ければ高い程、加工能率は比例して向上する。従って、最大切削速度Vを上記のように40m〜120m/minとなるように設定した。
なお、本発明者らは切削加工分野の研究開発に長年従事するものであるが、本願の出願時点においては、超耐熱合金2の切削加工するための工具の最大切削速度Vは、非常に低速に抑制させなければならないことが当業者の一般常識であり、工具メーカーのカタログや教科書等においても低速での使用を推奨している。例えば、非特許文献1では、工具径φ6〜18mmのエンドミルを使用して超耐熱合金を切削加工する場合、最大切削速度Vとして16〜30m/minの範囲を推奨しており、これを遵守すると加工能率は低くならざるを得ない。
従って、本発明のVに関する上記速度範囲は、上記カタログ等の推奨速度の約2〜4倍に相当するため、この本願出願時の当該切削加工分野の技術水準や当業者の常識・経験に照らすと、当業者では通常試みない程に超耐熱合金2に対して工具1を超高速に回転させているといえよう。
上述したように所定範囲の工具直径Dを有したエンドミル状工具1を用意し、これを所定条件(例えば、所定範囲の最大切削速度V)で高速回転させながら切削加工することで、工具1と被削材(超耐熱合金)2との間の接触時間を極めて短くし、かつ、切削加工の際に単位時間当たりに発生する熱を極めて低く抑えることができる。こうすることにより、この熱のほぼ大半(8割以上)を切屑3に逃がすことができ、工具1や被削材2の温度上昇を著しく抑制することができる。従って、工具1や被削材2の温度上昇をほぼ完全に無くすことができるため、これらの要素1,2へ切削液(クーラント)を全く供給しないドライ状態の切削加工が可能となるか、発生熱のリスク管理のため、たとえ切削液を供給したとしても供給量を超微量(10cc(=10mL/h=0.01L/h))に抑えることができる。
もし仮に、工具1の工具直径Dや最大切削速度Vが上記所定範囲から逸脱してしまうと、工具1と被削材2と切屑3との間で発生する熱と、この熱を受ける切屑3の熱容量と、のバランスが崩れ、大量の熱が工具1や被削材2に流入してしまい、ひいては、工具寿命の早期劣化やクーラントの過剰供給といった不具合や問題を引き起こすことになる。
また、本発明の切削加工条件は、上述した最大切削速度Vの他、他のパラメータを以下のような範囲に設定することがさらに好ましい。
(工具の回転方向と被削材の移動方向)
エンドミル状工具1の回転方向が、図2中の矢印に示すように、被削材2の移動方向に対してダウンカット方向に設定されていることが好ましい。工具1の回転方向で決まる切削の向きと被削材2の送り方向との関係で、通常、アップカットとダウンカットとの二種類の削り方がある。ここで、ダウンカット(下向き削り)とは工具1の刃が未切削の部分に当たり、削り下げる加工のことを意味する一方、アップカット(上向き削り)とは工具1の刃が切削済みの部分に当たり、削り上げる加工のことを意味する。
本発明の切削条件をアップカットではなくダウンカットとすることで、切り込み時の刃先の摩耗や摩擦熱を抑制することができ、工具寿命が向上させることができる。なお、超耐熱合金は元来、加工硬化が著しく起こし易い材料であり、アップカットでは切削厚さの薄い部分(すなわち、被削材2が切削によって加工硬化している部分)から工具1の切れ刃が削り始めることになるため、工具1の切れ刃への負荷やダメージは極めて大きくなってしまう。これに対し、ダウンカットでは、上記現象を起こしにくく、上記問題を回避することが可能となる。
(一刃当たりの送り量)
また、本発明では、エンドミル状工具1の一刃当たりの送り量Sが0.1mm/刃以上0.2mm/刃以下に設定されていることがさらに好ましい。ここで、一刃当たりの送り量Sは、S=F/SN (Sの単位はmm/刃)のように表される。ここで、Fは工具1の切削送り速度(mm/min)、Sは工具1の回転数(rpm)、Nは工具1の刃数である。なお、一刃当たりの送り量Sが0.2mm/刃を超えると工具1自体の曲げ強度及び刃先の強度が問題となり、一方Sが0.1mm/刃より小さくなると、切屑3が薄くなるため切屑3の熱容量も小さくなり、切屑3が上記切削条件において工具1刃先で発生する熱を十分に運搬・吸収できなくなり、ひいては工具1や被削材2の過剰な発熱という問題を引き起こしてしまう。
以上のようにカット方向や切り込み量を適切に設定することにより、所望の形状・熱容量を有した切屑3を形成するとともに、工具1と被削材2と切屑3との間で発生する単位時間当たり熱量を適切な範囲に制限して、この熱のほぼ大半を切屑3に伝播させることができる。
(生成される切屑と熱の移動)
図2(b)は、本発明の工具1の一刃が生成する切屑3の形状を示した概略図である。この図に示すように、切屑3は、点A、点A’、点B、点Cを結合して画定された扇形をなす。ここで、図2(a)で示した一刃当たりの送り量Sは、図2(b)では点Aと点A’と点Cとで画定された面(厚さ)に対応する。そして、点A−A’の線分から点Cに向かってこの厚さが減少しているのは、切屑3の点C部分は工具1の先端部11の頂点12付近で削られているためである。
切屑3が生じる切削加工の際には、点Cから、この点Cから最も離れた面(A−A’−B)に向かうに従って切削速度は零から最大切削速度Vにまで連続的に変化することになる。この際、切削によって発生する熱は切削速度に比例することから、切屑3は、上記面(A−A’−B)近傍において最も高くかつ点Cに向かって低くなるよう局所的な温度勾配が生じる。これにより、切削時に上記面において発生した熱は直ちに点Cに向かって移動することになり、上記面付近での熱の飽和は抑制されるため、工具1や被削材2への熱の流入ひいてはこれらの温度上昇を抑制することが可能となる。
次に上記切削加工条件によって実際に生成された切屑3の具体例を示す。超耐熱合金2として用意したインコネル718(登録商標)に対し、工具直径D=6mmを有した工具1を用いて、最大切削速度V=60m/min、一刃当たりの送り量S=0.15mm/刃に設定して切削加工した際に生成された切屑3を10個分採取して実測したところ、平均重さは約0.2mgであり、寸法については図2(b)に示すような線分ACまたは線分BCの平均長さは約1.3mmであり、線分ABの平均長さは約0.5mmであった。なお、切削加工の際にドライ状態及び上記微量の切削液噴霧状態(セミドライ状態)のどちらの状態においても、生成される切屑3の重さや寸法に変化は無かった。
また、本発明のエンドミル状工具1として、例えば刃数2のボールエンドミルを使用した場合の切削抵抗の経時変化の概略を図5に示す。図5に示すように、切削時間Tonと非切削時間Toffとが生じる断続的な切削となっていることがわかる。これにより、工具1や被削材2では十分な冷却時間が得られる。また、切削時間中においても切削抵抗の経時変化は、傾きを有した直線になるため、工具1と被削材2との間の衝撃力を緩和し、切削抵抗の軽減を図ることができる。なお、本発明の工具1と被削材2と切屑3との間で発生する熱の効果的制御の面からは、実削直径Dにおける切削時間Tonが5.0×10−3秒を超えないように設定されていることが好ましい。
なお、上述した工具直径Dが一刃当たりの送り量Sとの関係においても上記所定の範囲に入っていることが重要である。工具直径Dが上記所定範囲を超えて大きい場合(以下、「比較例」と呼ぶ。)には、実切削径Dやその半径も図2(a)の工具1に示すように大きくなり(半径Rを参照)、一刃当たりの送り量Sや切り込み量Rが同一量でも生成される切屑3の形状は図示のように変化する。
特筆すべきは、形成される接触距離の違いである。比較例の場合には、工具1と被削材2との接触距離L(つまり、生成される切屑の長さ)は、工具1の場合の接触距離Lに比べて非常に長くなる。つまり、接触距離がLと長い分だけ、切屑3が形成される際に発生する熱(摩擦熱)は増大することになる。しかしながら、比較例のように比較的大きな径を有した工具1によって形成される切屑3のサイズ(熱容量)は、図2(a)から明らかなように、増大する熱量と比例する程には増大しない。従って、比較例の場合には、小径工具1の場合には保つことが出来た加工面2で発生する熱と切屑3の熱容量とのバランスが崩れてしまうため、切屑3に効率的に熱を伝播させることができず、工具1や被削材2への熱の流入及びこれらの温度上昇を許してしまうことになる。
また、本発明においては、エンドミル状工具1は、コレットチャック等の工具保持具(図示せず)によって、被削材2(被削材)の加工面2に対してほぼ垂直に近い状態になるように固定・保持されていることが好ましい。具体的には、図1に示すように、エンドミル状工具1の回転軸Oの傾斜角θが加工面2の法線Nに対し0〜5度以内になるように設定されていることが好ましい。これにより、先端部11の頂点が加工面2に押し当てられ、工具1の回転軸方向成分に静的な力が加わるようになる。この静的な力は切削加工時のびびり振動を抑制する効果をもたらすため重要である。
上述の作用効果を、図6を参照しながら詳しく解説する。図6(a)は、工具1の回転軸方向(図6(b)又は(c)においてz方向)における工具1の切削抵抗P(単位:N)の実測値を示した結果である。ここで、図6(a)の時間Tにおける工具1と被削材2との位置関係を図6(b)に示し、図6(a)の時間Tにおける位置関係を図6(c)に示す。
図6(a)に示すように、時間Tにおいては、一定した静的な力成分が加わっていることがわかる。つまり、工具1の先端部11の頂点12付近が被削材2の加工面2に接することで、工具1の回転軸方向zに一定の静的な成分が、切れ刃の回転によって生じる変動成分に重畳された切削抵抗Pが得られることになる。この回転軸方向zに生じる静的な力は、切削加工の際のびびり振動を抑制する効果をもたらす。
なお、従来方法による超耐熱合金2の切削加工では、切削時における切削力の変動が大きいために鋸刃状の切屑が生じやすく、これにより、びびり振動が生じやすかった。従って、従来方法では、切削加工だけでは良好な加工面性状を得ることが困難であり、これを解決するために、生産性を著しく阻害する追加的な研磨仕上げが行う必要があった。
なお、上記エンドミル状工具1を取り付け、上記好適な切削加工条件を設定して実際に超耐熱合金2の加工を実際に行う加工装置として、X軸とY軸とZ軸との移動が数値制御可能なNC3軸加工機や、上記三つの軸にさらに二つの回転軸の移動制御を付加したNC5軸加工機が挙げられる。これにより、プログラムされた所望の形状・寸法に超耐熱合金2を、高精度にかつ自動化して切削加工を行うことができるため、高品位の加工製品の大量生産が可能である。
超耐熱合金は、上述したように耐酸化性と高温強度の両面で優れた特性を有している。このため、航空機部品やエネルギー関連機器の原材料として多用されており、また今後、航空産業に限らず、別の用途においても大きな利用が見込まれている。この超耐熱合金を、初期費用・ランニング費用を抑えつつ、加工能率を著しく向上し、工具寿命の向上と加工性状の高品位化をも図れる本発明の切削加工方法は、産業上の価値は非常に高く、当然、産業上の利用可能性は高い。
1 エンドミル状工具
2 超耐熱合金(被削材)
被削材の加工面
3 切屑
11 エンドミル状工具の先端部
12 エンドミル状工具の先端部の頂点
O 工具回転軸
N 加工面の法線
θ 工具の傾斜角(工具回転軸と加工面の法線とのなす角)
工具直径
実削直径
一刃当たりの送り量
L、L 接触距離
最大切削速度
θ 傾斜角

Claims (4)

  1. 先端部の断面が円弧状をなしかつ工具直径が4mm〜10mmのエンドミル状工具を用意し、ドライ状態又は切削液を0.01L/h以下の流量で供給しかつ前記エンドミル状工具を40m〜120m/minの最大切削速度で回転させながら被削材を切削することを特徴とする超耐熱合金の切削加工方法。
  2. 前記工具の回転方向が前記被削材の移動方向に対してダウンカット方向に設定されていることを特徴とする請求項1記載の超耐熱合金の切削加工方法。
  3. 前記工具の一刃当たりの送り量が0.1mm/刃〜0.2mm/刃に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の超耐熱合金の切削加工方法。
  4. 前記工具の回転軸の傾斜角が前記被削材の加工面の法線に対し0〜5度以内になるように設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の超耐熱合金の切削加工方法。
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