以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、複数の外刃が並設される方向を前後方向(剃り方向)X、各外刃が延在する方向を左右方向Y、外刃が上方を向くようにヘッド部を配置した状態における上下方向を上下方向Zとして説明する。また、往復式電気かみそりのスイッチ部が設けられている側を前後方向X前方として説明する。
本実施形態にかかる往復式電気かみそり1は、図1に示すように、手で把持するグリップ部2と、グリップ部2に支持されるヘッド部3と、を備えている。
グリップ部2は、合成樹脂製のグリップ部本体21を備えており、このグリップ部本体21には、図1(a)に示すように、回転モータ110(図2参照)の駆動をオン・オフさせるスイッチ部22およびグリップ部本体21内部に内蔵される図示せぬ電池の充電状況を表示する表示部23が形成されている。なお、本実施形態にかかる往復式電気かみそり1にはトリマーユニット4が形成されており、グリップ部本体21の背面側(後側)には、図1(c)に示すように、トリマーハンドル41が上下方向にスライド可能に取り付けられている。このトリマーハンドル41の上端には、トリマー刃41aが形成されている。
そして、ヘッド部3の上方に向けて露出する外刃51の内方(外刃51の下側)に配設された内刃54を外刃51に対して相対移動(左右方向Yへ往復動)させることで、外刃51の刃穴内に挿入された体毛を、外刃51と内刃54とで協働して切断するようにしている。
以下、ヘッド部3の構成について説明する。
ヘッド部3は、図2に示すように、グリップ部本体21に取り付けられるヘッド部本体70と、当該ヘッド部本体70に着脱自在に装着される刃フレーム部30と、を備えている。
本実施形態では、上方に向けて開口したヘッドケース71に形成された駆動機構収容部72内に後述する駆動機構100を収容するとともに、当該駆動機構100を駆動機構収容部72内に収容した状態で上開口部にヘッドケースカバー81を被せ、駆動子防水ゴム82とゴム押さえ板83を介してねじ84で固定することで、ヘッド部本体70を形成している。
このとき、駆動機構100は、内刃54が取り付けられる装着部(本実施形態では、第1および第2駆動子130,140の内刃装着部132a,142aと内刃装着部132a,142aにそれぞれ取り付けられる駆動桿134,144)以外の部位が、駆動機構収容部72内に収容されている。すなわち、駆動機構100は、内刃54が取り付けられる装着部のみがヘッド部本体70の上方に露出している。
具体的には、まず、ヘッドケースカバー81をヘッドケース71の上開口部に被せる際に、第1および第2駆動子130,140の内刃装着部132a,142aをヘッドケースカバー81に形成された挿通孔81a、81bから挿通させて、ヘッドケースカバー81の上方に露出させる。
次に、上方に露出した内刃装着部132a,142aを駆動子防水ゴム82に形成された挿通孔82a,82bから挿通させて、駆動子防水ゴム82の上方に露出させる。このとき、内刃装着部132a,142aの首部が駆動子防水ゴム82にて緊迫され、駆動機構収容部72の内部空間が封止されるようにしている。
そして、駆動子防水ゴム82の上方に露出した内刃装着部132a,142aを、ゴム押さえ板83に形成された挿通孔83a,83bから挿通させてゴム押さえ板83の上方に露出させるとともに、ゴム押さえ板83の上方に露出した内刃装着部132a,142aに、駆動桿134,144をそれぞれ取り付ける。こうして、駆動機構100は、内刃54が取り付けられる装着部のみがヘッド部本体70の上方に露出した状態で駆動機構収容部72内に収容される。
このように、本実施形態では、ヘッドケース71、ヘッドケースカバー81、駆動子防水ゴム82およびゴム押さえ板83により略箱状の防水空間(封止空間)80を形成し、内刃54によって剃られた体毛や内刃54を洗浄する際に使用する水などが、回転モータ110等が収容される防水空間80内に侵入するのを抑制している。
刃フレーム部30は、図2に示すように、複数の外刃51を上下動自在に備えた箱型の外刃カセット50と、当該外刃カセット50を下側から収納して装着させることで外刃カセット50の外刃フレーム59を全周に亘って覆い隠す筒型の外周枠60と、を備えている。
外刃カセット50は、前後方向Xに複数並設された外刃51を備えている。本実施形態では、4枚(複数)の外刃51を備えており、第1のネット刃51a、仕上げ用ネット刃51b、スリット刃51c、第2のネット刃51dが前後方向Xに並設されている(図3参照)。
ネット刃51a,51b,51dはいずれも、図6に示すように、側面視(左右方向Yに外刃を視た状態)で上方が凸となるように前後方向(短手方向)Xに沿って逆U字状に湾曲して形成されている。さらに、ネット刃51a,51b,51dは、正面視(前後方向Xに外刃を視た状態)で上方が凸となるように左右方向(長手方向)Yに沿って若干湾曲して形成されている。なお、本実施形態では、ネット刃51a,51b,51dを、正面視で上方が凸となるように湾曲させているが、必ずしも湾曲させる必要はない。
そして、このネット刃51a,51b,51dには、多数の刃穴(図示せず)が画成されている。さらに、本実施形態では、図6に示すように、仕上げ用ネット刃51bの刃幅(前後方向Xの幅)が、第1及び第2のネット刃51a,51dの刃幅(前後方向Xの幅)よりも小さくなるようにしている。このように、仕上げ用ネット刃51bの刃幅を他のネット刃51a,51dの刃幅に比して小さく、すなわち、仕上げ用ネット刃51bの曲率半径を小さく設けることで、表面に押し付けた肌を刃穴から大きく内側に突出させて体毛を短く剃ることができるようにしている。
スリット刃51cは、図3に示すように、前後方向(短手方向)Xに沿ってコ字状に湾曲形成されており、平坦な上壁から側壁に至る多数のスリット(刃穴)を穿設することで形成されている。
すなわち、スリット刃51cには、多数のスリット(刃穴)が、平坦な上壁から側壁に至る略コ字状の桟および側壁の下部で長手方向(左右方向)Yに沿って延在する桟によって画成されている。
そして、外刃51を成す各ネット刃51a,51b,51dおよびスリット刃51cを、それぞれ専用の外刃枠53a,53b,53dおよび53cに取り付けることで、外刃ユニット52a,52b,52dおよび52cを形成している。
なお、外刃枠53bの第1のネット刃51a側には、肌ガード部材58が取り付けられており、仕上げ用ネット刃51bを前後に挟むスリット刃51cと肌ガード部材58とによって、曲率半径の小さな仕上げ用ネット刃51bに肌が強く押し付けられることを効果的に防止している。
そして、外刃ユニット52a,52b,52cおよび52dを、外刃フレーム59にそれぞれ独立して上下移動可能に係合させることで、外刃カセット50を形成している。この外刃カセット50は、外周枠60に着脱自在に装着されるとともに、ヘッド部本体70に着脱自在に装着されるものである。
内刃54は、外刃51を成す各ネット刃51a,51b,51dおよびスリット刃51cに対して専用のものが設置されている。具体的には、各ネット刃51a,51b,51dの下方(内方)に、対応するネット刃51a,51b,51dの湾曲に沿う逆U字状の内刃54a,54b,54dが配設されている(図2および図3参照)。そして、スリット刃51cの下方(内方)には、このスリット刃51cの湾曲に沿うコ字状のスリット内刃54cが配設されている。
これら内刃54a,54b,54dおよびスリット内刃54cは、駆動機構100(第1および第2駆動子130,140の内刃装着部132a,142aおよび駆動桿134,144)に取り付けられており、駆動機構100を駆動させると、内刃54a,54b,54dおよびスリット内刃54cがそれぞれ左右方向(長手方向)Yに往復動するようになっている。
このように、各ネット刃51a,51b,51dおよびスリット刃51cの下方(内方)に配設された内刃54a,54b,54dおよびスリット内刃54cを、各ネット刃51a,51b,51dおよびスリット刃51cに対してそれぞれ相対移動(左右方向Yへの往復動)させることで、各ネット刃51a,51b,51dの刃穴およびスリット刃51cのスリット内に挿入された体毛を、各ネット刃51a,51b,51dおよびスリット刃51cと、内刃54a,54b,54dおよびスリット内刃54cと、で協働して切断するように構成している。
なお、本実施形態では、外刃カセット50には、仕上げ用内刃54bが基台56bに取り付けられた状態で仕上げ用ネット刃51bに対して往復動可能に装着されるとともに、スリット内刃54cが基台56cに取り付けられた状態でスリット刃51cに対して往復動可能に装着されている(図3参照)。
具体的には、図3に示すように、スリット刃51cを取り付ける外刃枠53cがY方向両端に配置されており、当該外刃枠53cの間に内刃押し上げばね55cを介してY方向に往復動自在に基台56cが取り付けられている。そして、当該基台56cにスリット内刃54cを取り付けるとともに、スリット刃51cを、スリット内刃54cの上方から被せた状態で外刃枠53cに取り付けることで、外刃ユニット52cを形成している。
また、外刃ユニット52bは、仕上げ用ネット刃51bを取り付けた外刃枠53bを肌ガード部材58に取り付けるとともに、基台56bに取り付けた仕上げ用内刃54bを、内刃押し上げばね55cによって上方に付勢させた状態で仕上げ用ネット刃51bの下部に配置することで形成されている(図3参照)。
このように、本実施形態では、ヘッド部本体70の上方に露出した内刃装着部132a,142aに内刃54a,54dをそれぞれ装着するとともに、内刃装着部132a,142aに駆動桿134,144をそれぞれ取り付けた状態で、外刃カセット50がヘッド部本体70に装着されるようになっている。なお、外刃カセット50のヘッド部本体70への装着は、外刃ユニット52a,52dの下部空間に内刃54a,54dが配置されるようにしてなされる。そして、外刃カセット50がヘッド部本体70に装着された際には、外刃カセット50に取り付けられた基台56b,56cが、それぞれ駆動桿134,144に連結されるようになっている。すなわち、外刃カセット50をヘッド部本体70に装着させることで、仕上げ用内刃54bおよびスリット内刃54cを駆動機構100の動きに連動させることができるようにしている。
また、外刃カセット50の外刃フレーム59の左右両側部には、図2に示すように、下方に向けて弾性片59aが延設されており、左右一対の弾性片59aにはそれぞれ左右方向に貫通した貫通孔59bが形成されている。さらに、弾性片59aの下端には、解除ボタン59cが外側方に向けて延設されている。
そして、上下両端が開口した筒型の外周枠60には、下端縁の左右両側部に凹陥部61が形成されており、各凹陥部61の底部からは、内側に向けてフック62(図5参照)が突設されている。
本実施形態では、外周枠60は、上端開口60aが、外刃カセット50の外刃フレーム59の外形よりも小さく、かつ、外刃51の刃面全体の外形よりも大きくなるように形成されている。また、下端開口60bが、外刃フレーム59の解除ボタン59cを除く部分の外形よりも大きくなるように形成されている。
そして、左右両端の解除ボタン59cを凹陥部61に通しながら外刃カセット50を下端開口60bから外周枠60内に挿入していくと、外周枠60から内側に突出させたフック62の先端部が、外刃フレーム59の両弾性片59aの貫通孔59bに外側から係合される(図5参照)。こうして、外刃フレーム59、すなわち、外刃カセット50が外周枠60に装着される。
なお、外刃フレーム59の解除ボタン59cは、図4および図5に示すように、外周枠60を装着した状態において、外周枠60の外側面よりも外方に先端が突出するように設けられている。そのため、左右の解除ボタン59c先端の操作面59dを挟み込むように掴んで内側に没入させれば、両側の弾性片59aが内側に撓み、フック62と貫通孔59bとの係合が解除され、外刃カセット50と外周枠60との装着が解除される。
また、ヘッド部本体70の左右両端には、図5に示すように、解除ボタン90が、ばね91により左右方向Y外側に付勢された状態で突没可能に設けられている。この解除ボタン90上端部の幅方向(前後方向X)の両端には、係合突起90aが設けられている(図2参照)。
そして、外周枠60の左右両側の凹陥部61に解除ボタン90を通しながら、刃フレーム部30をヘッド部本体70に対して上方から被せると、左右方向Y外側に付勢された係合突起90aが、外刃フレーム59の内周側に形成された図示せぬ係合凹部に係合し、外刃フレーム59(外刃カセット50、または、刃フレーム部30全体)が、ヘッド部本体70上端に装着される。
なお、解除ボタン90をばね91の付勢力に抗して内側に没入させると、係合突起90aと係合凹部(図示せず)との係合が解除され、外刃フレーム59とヘッド部本体70との装着が解除される。
次に、駆動機構100について説明する。
本実施形態では、駆動機構100は、図2に示すように、回転モータ110と、当該回転モータ110を支持する支持台120と、支持台120に支持され、互いに逆位相で往復動する第1および第2駆動子130,140と、回転モータ110の回転運動を往復運動に変換して第1および第2の駆動子130,140に伝達する変換機構180と、を備えている。
回転モータ110は、支持台120に垂下した状態で取り付けられている。支持台120は、底壁部121と、底壁部121の左右端から一体に起立した固定側壁部122と、を備えており、固定側壁部122には、ねじ孔122aが形成されている。このねじ孔122aに固定用ねじ190を螺合することで、第1および第2の駆動子130,140とともに、支持台120がヘッドケース71に固定される。
変換機構180は、支持台120の底壁部121から突出させた回転モータ110の回転軸111に回転可能に取り付けられた基台181と、基台181に回転軸111から偏心して設けられた下側偏心軸182と、を備えている。また、下側偏心軸182に取り付けられ、下側偏心軸182と第2の駆動子140とを連結する下側連結アーム183と、下側偏心軸182に取り付けられる基台184と、を備えている。さらに、基台184に回転軸111から偏心して設けられた上側偏心軸185と、当該上側偏心軸185に取り付けられ、上側偏心軸185と第1の駆動子130とを連結する上側連結アーム186と、を備えている。
本実施形態では、下側偏心軸182と上側偏心軸185とが、基台184に、回転モータ110の回転軸111回りに180°の位相差で設けられており、回転モータ110の回転運動を第1駆動子130および第2駆動子140の逆位相の往復運動に変換させている。
第1および第2駆動子130,140には、上述したように、内刃54a,54dが着脱可能に取り付けられる内刃装着部132a,142aがそれぞれ設けられている。この第1および第2駆動子130,140は、図12および図13に示すように、幅方向(組み付け状態における左右方向Y)両端に配置される固定ブロック131、141と、固定ブロック131、141の間に配置され、内刃装着部132a,142aを支持する支持フレーム132,142と、を弾性変形可能な一対の弾性脚部(内刃装着部132a,142aを往復動可能に支持する弾性脚部)133,143で連結することにより形成されている。なお、弾性脚部133,143は、左右方向(駆動子の往復動方向)Yから視た状態で、内刃装着部132a,142aの下方に位置するように配置されている(図9参照)。
固定ブロック131、141には、ネジ穴131a、141aがそれぞれ設けられるとともに、互いに係合する係合部(本実施形態では、係合突部131bと係合凹部141b)が設けられている。そして、固定ブロック131を固定ブロック141の上方に載置し、係合突部131bと係合凹部141bとを係合させた状態で、ネジ穴131aとネジ穴141aとが連通するようになっている。そして、連通させたネジ穴131aとネジ穴141aにねじ190を挿通することで、第1および第2駆動子130,140が支持台120を介してヘッドケース71に固定される。
支持フレーム132,142は、略水平に延在する矩形板状をしており、この支持フレーム132,142の上部に内刃装着部132a,142aがそれぞれ突設されている。なお、支持フレーム142の幅方向両端からは、下方に延在する側壁部142iが設けられているとともに、側壁部142iの下端からは、幅方向外側に延在する水平壁部142jが設けられている(図12参照)。
弾性脚部133は、帯状の部材を2つ折りにした形状をしており、一端が固定ブロック131の内側上端に連結されるとともに、他端が支持フレーム132の外側端に連結されている。一方、弾性脚部143は、帯状の部材を2つ折りにした形状をしており、一端が固定ブロック141の内側上端に連結されるとともに、他端が水平壁部142jの外側端に連結されている。すなわち、弾性脚部143は、水平壁部142jおよび側壁部142iを介して固定ブロック141と支持フレーム142と、を連結している。
また、内刃装着部132a,142aには、当該内刃装着部132a,142aに取り付けられた内刃54a、54dを上方(内刃の着脱方向離脱側)に押圧(付勢)するための押上げばね(付勢部材)132b,142bがそれぞれ設けられている。
さらに、本実施形態では、弾性脚部133,143は、外側の厚さが、内側の厚さよりも薄くなるようにしている。このように、弾性脚部133,143は、外側の厚さを薄くすることで、支持フレーム132,142(内刃装着部132a,142aや内刃54)を左右方向Yに揺動させやすくしつつ、上方に付勢された内刃54a,54dから受ける反力を受けやすい内側の厚さを厚くすることで、内刃54a,54dから受ける反力により第1および第2駆動子130,140が変形してしまうのを抑制できるようにしている。
なお、弾性脚部133,143の形状は、図16や図17に示すような形状とすることが可能である。
すなわち、図16に示すように、複数の弾性板を前後方向Xに並設することで、それぞれの弾性脚部133A,143Aを形成することができる。このとき、前後方向Xの回転モーメントによる影響が少ない部位に弾性板を設けないようにすれば、弾性脚部133A,143Aの幅を広くさせて剛性を高めつつ、弾性脚部133A,143Aを容易に変形(支持フレーム132,142を容易に往復動)させることができる。
また、図17に示すように、上部(内刃側)が幅広のテーパ状となるように弾性脚部133B,143Bを形成することもできる。こうすれば、弾性脚部133A,143Aが変形し難くなるのを極力抑制しつつ、前後方向Xの回転モーメントによる影響が大きい上部の剛性を高めることができる。
さらに、本実施形態では、内刃装着部142aに、トリマー刃41aを駆動する駆動桿42が装着される(図8,9参照)。また、上述したように、内刃装着部132a,142aには、駆動桿134,144がそれぞれ連結される。
したがって、第1駆動子130は、内刃54aと駆動桿134に装着される仕上げ用内刃54bとを一体に往復動させ、第2駆動子140は、内刃54d、駆動桿144に装着されるスリット内刃54cならびに駆動桿42を一体に往復動させるようになっている。
すなわち、本実施形態では、内刃(基台56aを含む)54a、駆動桿134、仕上げ用内刃(基台56bを含む)54b、および、後述するバランス調整物150が、第1駆動子130に連結されて第1駆動子130の往復動に連動する連結部材となっている。そして、これらの連結部材と第1駆動子130とで、第1駆動ブロック200を構成している。
一方、内刃(基台56dを含む)54d、スリット内刃(基台56cを含む)54c、駆動桿144、駆動桿42、および、後述するバランス調整物160が、第2駆動子140に連結されて第2駆動子140の往復動に連動する連結部材となっている。そして、これらの連結部材と第2駆動子140とで、第2駆動ブロック210を構成している。
なお、本実施形態では、内刃54が、回転モータ110の回転軸線Cを挟んで前後方向にそれぞれ2つずつ配置されるとともに、前方の2つの内刃と後方の2つの内刃をそれぞれ逆位相で往復動させている。このように、第1駆動子130と第2駆動子140とを逆位相で往復動させることで、往復動方向の慣性力(X軸回りに生じるモーメント)による振動を軽減させている。
しかしながら、逆位相で往復動させると、X軸回りに生じるモーメントを低減させることはできるが、回転モータ110の回転軸線C回りに同方向(図11(b)では、ともに時計回り)のモーメント(図11(b)におけるM1とM2)が生じてしまうという問題があった。
そこで、本実施形態では、第1および第2駆動ブロック200,210が、回転モータ110の回転軸線Cに対して、第1および第2駆動子130,140の反対側に配置されるバランス調整部220,230を有するようにした。
具体的には、第1および第2駆動子130,140に、保持アーム132c,142cを介してバランス調整物150、160を取り付けている。
このように、第1および第2駆動子130,140にバランス調整物150、160を取り付けることで、第1および第2駆動ブロック200,210のそれぞれの重心G1,G2を、バランス調整部220,230を有さない場合の第1および第2駆動ブロックの重心よりも回転モータ110の回転軸線Cに近づかせることができ、回転軸線C回りの振動を抑制することができる。さらに、第1および第2駆動子130,140にバランス調整物150、160を取り付けた状態で、第1および第2駆動ブロック200,210を逆位相で往復動させると、バランス調整物150、160には、第1および第2駆動子130,140の回転軸線C回りに生じるモーメントM1、M2とは、反対側のモーメント(図11(b)におけるM3とM4)が生じる。すなわち、それぞれのモーメント(M1とM3、M2とM4)が相殺されて、回転軸線C回りの振動を抑制することができる。
なお、バランス調整物150、160は、第1および第2駆動子130,140とは別体に形成されている。
また、本実施形態では、第1および第2駆動ブロック200,210のそれぞれの重心G1,G2が、左右方向(駆動子の往復動方向)Yから視た状態で、弾性脚部133と弾性脚部143との間(図9のd3に示す範囲)に位置するように、バランス調整部220,230を設けている。
こうすれば、第1および第2駆動ブロック200,210のそれぞれの重心G1,G2をより回転モータ110の回転軸線Cにより近づけることができ、駆動時に、回転モータ110の回転軸線C回りに生じるモーメントをより低減させ、振動の発生を抑制することができる。
特に、第1および第2駆動ブロック200,210のそれぞれの重心G1,G2が回転モータ110の回転軸線Cと一致するように第1および第2駆動ブロック200,210を設計すれば、回転モータ110の回転軸線C回りに生じるモーメントをゼロとすることができ、振動発生のさらなる抑制を図ることが可能となる。
また、本実施形態では、バランス調整物150は、支持フレーム132の幅方向(左右方向Y)両端からそれぞれ対向する相手側に向けて(前後方向X後方に向けて)水平に延設された保持アーム(アーム部)132cに取り付けられている。
一方、バランス調整物160は、支持フレーム142の水平壁部142jの幅方向(左右方向Y)両端からそれぞれ対向する相手側に向けて(前後方向X前方に向けて)水平に延設された保持アーム(アーム部)142cに取り付けられている。
このように、第1駆動子130から延設される保持アーム(アーム部)132cと、第2駆動子140から延設される保持アーム(アーム部)142cとは、上下方向(第1および第2駆動子130,140の並設方向Xおよび往復動方向Yと直交する方向)Zの位置が異なっている。すなわち、本実施形態では、保持アーム(アーム部)132cと保持アーム(アーム部)142cとを上下方向の高さが異なるように前後方向Xに沿って延設させている。このように、保持アーム(アーム部)132cと保持アーム(アーム部)142cとを上下方向の高さが異なるように配置することで、第1および第2駆動ブロック200,210の小型化を図っている。
さらに、本実施形態では、保持アーム(アーム部)132cと保持アーム(アーム部)142cのうち、保持アーム(アーム部)142cを、変換機構180と上下方向Zでオーバーラップさせている。このように、保持アーム(アーム部)132cと保持アーム(アーム部)142cのうち、少なくともいずれか一方を、変換機構180と上下方向Zでオーバーラップさせることで、第1および第2駆動ブロック200,210のより一層の小型化(高さ方向の小型化)を図ることができる。
なお、保持アーム(アーム部)132cおよび保持アーム(アーム部)142cは、それだけでバランス調整部220,230として機能するものである。このように、本実施形態では、バランス調整部220,230は、第1および第2駆動子130,140から回転モータ110の回転軸線Cに対して、第1および第2駆動子130,140の反対側に延設された保持アーム132c,142cを有するものである。
したがって、第1および第2駆動子130,140に、バランス調整物150、160を設けず、保持アーム132c,142cをそれぞれ設ければ、第1および第2駆動ブロック200,210のそれぞれの重心G1,G2が、バランス調整部220,230を有さない場合の第1および第2駆動ブロックの重心よりも回転モータ110の回転軸線Cに近づけることができる。すなわち、バランス調整物150、160を設けず、保持アーム132c,142cの長さや重さを適宜設定することでも、振動の発生を抑制することができる。
また、第1駆動子130の保持アーム132cの先端面には、ねじ孔132eが形成されており、バランス調整物150には、ねじ孔132eに対応した位置に取付孔151が形成されている。そして、第1駆動子130のねじ孔132eにバランス調整物150の取付孔151を連通させた状態でねじ171をねじ込むことによりバランス調整物150が第1駆動子130に固定されて抜け止めされる。すなわち、バランス調整物150は、第1および第2駆動子130,140の並設方向X前方から第1駆動子130に取り付けられている。
また、第2駆動子140の保持アーム142cの前端部には、保持アーム142c同士を連結する連結アーム142kが左右方向Yに延在するように設けられており、当該連結アームの幅方向中央部にねじ孔142eが設けられている。そして、バランス調整物160のねじ孔142eに対応した位置に取付孔161が形成されており、第2駆動子140のねじ孔142eにバランス調整物160の取付孔161を連通させた状態でねじ172をねじ込むことによりバランス調整物160が第2駆動子140に固定されて抜け止めされる。すなわち、バランス調整物160は、第1および第2駆動子130,140の並設方向X後方から第2駆動子140に取り付けられている。
このように、第2駆動子140に対するバランス調整物160の取り付けを、第1駆動子130の後側(前後方向X前方)から行い、第1駆動子130に対するバランス調整物150の取り付けを、第2駆動子140の後側(前後方向X後方)から行うようにすることで、第1駆動子130,第2駆動子140および回転モータ110を組み立てた後に、バランス調整物150,160を取り付けることができるため、バランス調整物150,160の取り付けが容易となり、組立性を向上させることができる。
ここでは、バランス調整物150,160を取り付ける場合について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、バランス調整物に限らず、駆動子と一体で往復運動するに何らかの部品(付加部品)を取り付ける場合は、駆動子の並設方向から付加部品を取り付けることで、その組立性を向上させることができる。付加部品としては、例えば、駆動子の剛性向上や摺動性向上を目的とした部品を挙げることができる。
また、ここでは、駆動子の並設方向から付加部品を取り付けることとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、駆動子の数が1個の場合、付加部品は、“駆動子の往復運動方向に垂直、かつ、外刃に対して内刃を押し付ける方向に垂直な方向”から駆動子に取り付けられることになる。もちろん、ここでいう“駆動子の往復運動方向に垂直、かつ、外刃に対して内刃を押し付ける方向に垂直な方向”は、駆動子の数が2個以上の場合にいう“駆動子の並設方向”に相当する。
また、バランス調整物150、160は、それぞれの駆動子130,140の最外部(前後方向X両端)に位置するように設けられている。本実施形態では、バランス調整物150、160は、図9に示すように、それぞれ、第2および第1駆動子(他方の駆動子)140,130の第1および第2駆動子(一方の駆動子)130,140とは反対側から少なくとも一部が突出するように第1および第2駆動子(一方の駆動子)130,140に設けられている。したがって、第1および第2駆動ブロック200,210が大型化するのを抑制しつつ、バランス調整物150、160の距離(回転軸線Cと重心との距離)を極力長くすることができる。そのため、バランス調整物150、160の重量を軽くすることができる。しかも、バランス調整物150、160の重量が軽くなることで、バランス調整物150、160のさらなる小型化が可能となるため、第1および第2駆動ブロック200,210が大型化するのをより一層抑制することができる。
なお、各バランス調整物150、160の一部は、図10に示すように、それぞれの駆動子130,140の最外部(前後方向X両端)よりも内側に配置されており、バランス調整物150、160が第1および第2駆動子130,140の外側に大きく突出してしまうのを抑制している。さらに、各バランス調整物150、160の一部だけ第1および第2駆動子130,140の内側に配置させることで、各バランス調整物150、160の作用点(重心)の位置が内側にずれてしまうのを抑制することができる。
また、バランス調整物150、160を、それぞれの駆動子130,140の最外部に位置するように設けることで、第1および第2の駆動子130,140の形状の制約を受けることなくバランス調整物150、160を取り付けることができるようになるため、第1および第2の駆動子130,140の形状自由度の向上を図ることができるという利点もある。
さらに、本実施形態では、第1および第2駆動ブロック200,210に対して最適な重心位置となるように、バランス調整物150,160の形状を異ならせている。具体的には、バランス調整物150は、略Y字状の板状部材を折り曲げて形成されており、幅方向両端の上部に上述した取付孔151が形成されている。一方、バランス調整物160は、正面視略T字状の板状部材であって、略中央部に上述した取付孔161が形成されている。このようにすれば、バランス調整物150,160の形状を第1および第2駆動子130,140に対して最適な形状とすることができる。
さらに、それぞれの取付穴151,161の高さ位置を異ならせることで、第1および第2駆動子130,140に対する固定構造の自由度が向上する。これにより、第1および第2駆動子130,140に取り付けた際に、バランス調整物150,160の高さ位置がほぼ同じになるように設計し、第1および第2駆動ブロック200,210の小型化を図っている。
さらに、全ての駆動子(第1および第2駆動子130,140)に対して、少なくとも1個以上のバランス調整物(バランス調整物150,160)が取り付けられている。これにより、バランス調整物1個あたりの体積を小さくすることができる。
さらに、一方のバランス調整物160は第1駆動子130の後側(駆動子の並設方向前方)から取り付け、他方のバランス調整物150は第2駆動子140の後側(駆動子の並設方向後方)から取付けている。これにより、第1および第2駆動子130,140の構造を制約させることなくバランス調整物150,160を確実に固定することができる。
さらに、本実施形態では、金属(第1および第2駆動子130,140よりも密度の大きい材料)によってバランス調整物150,160を形成している。そのため、バランス調整物150,160のさらなる小型化を図ることができる。これにより、ヘッド部3全体の小型化を図ることが可能となり、また、第1および第2駆動子130,140の往復動作により発生する振動を低減することが可能となる。
さらに、バランス調整物150,160は、ネジ171,172によって第1および第2駆動子130,140に取付けられている。これにより、確実にバランス調整物150,160を固定できるとともに、ネジ171,172の重量もバランス調整物に含めることができるため、バランス調整物150,160の重量を軽減することができる。
そして、本実施形態では、板状のバランス調整物150,160の厚さ方向が前後方向Xとなるように、当該バランス調整物150,160を第1および第2駆動子130,140に取り付けている。このため、前後方向Xの寸法増加を抑制しつつ、バランス調整物150,160の作用点の距離(重心から回転軸線Cまでの距離)を極力長くすることができ、第1および第2駆動ブロック200,210の小型化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、バランス調整物150には、切り欠き152が左右両側に形成されており、バランス調整物160にも切り欠き162が左右両側に形成されている。
これに対し、第1駆動子130の保持アーム132cには、突起132dが形成されており、バランス調整物150の切り欠き152に係合されるようになっている。また、第2駆動子140の保持アーム142cには、突起142dが形成されており、バランス調整物160の切り欠き162に係合されるようになっている。この係合により、バランス調整物150、160は、上下左右に動かないように位置決めされた状態で、それぞれの駆動子130、140に固定されることとなる。
なお、図18に示すように、保持アーム132cに、突起132dではなくフック部132iを形成し、当該フック部132iにてバランス調整物150を係合するようにしてもよい。また、ヒートシールによりバランス調整物を駆動子に取り付けるようにしてもよい。さらに、切り欠きの換わりに穴を設け、当該穴に保持アームの突起を係合させるようにすることも可能である。
また、本実施形態では、第1および第2駆動子(一方の駆動子)130,140に設けられるバランス調整部220,230を、保持アーム132c、142cおよびバランス調整物150、160の一部(バランス調整部220,230少なくとも一部)が、第2および第1駆動子(他方の駆動子)140,130に形成される空間部に配置されるようにすることで、保持アーム132c、142cと相対する駆動子130,140の干渉を回避したり、一対の駆動子130,140の大型化を抑制している。
具体的には、第1駆動子130の保持アーム132cが第2駆動子140の肩部空間(水平壁部142jの上方)を通過する一方、第2駆動子140の保持アーム142cが第1駆動子130の下部空間(一対の弾性脚部133の間の空間:本実施形態では、後述の窓部132hに相当する)を通過するようにして、第1および第2駆動子130,140を組み付けるようにしている。
さらに、本実施形態では、第1駆動子130に、変換機構180を目視可能な窓部132hを設けている。
具体的には、第1駆動子130の一対の弾性脚部133と支持フレーム132とを門形に形成することで、3方を一対の弾性脚部133と支持フレーム132とで囲まれる窓部132hを形成し、前後方向Xから内部(変換機構180)を目視できるようにしている。このように、窓部132hを設けることで、駆動ブロックの組立作業および変換機構180の連結状態の確認作業が容易になる。
さらに、本実施形態では、第1駆動子130には、支持フレーム132と保持アーム132cとで、上下方向Zから内部(変換機構180)を目視できる窓部132gが形成されている。また、第2駆動子140にも、保持アーム142cと連結アーム142kとで、上下方向Zから内部(変換機構180)を目視できる窓部142gが形成されている。このように、上下方向Zからも内部(変換機構180)を目視できるようにすることで、組立および確認作業をより一層行いやすくしている。
なお、本実施形態では、上述したように、バランス調整物150,160は、内刃54によって剃られた体毛や内刃54を洗浄する際に使用する水などが侵入しないように封止された防水空間(封止空間)80内に配置されている。そのため、金属製のバランス調整物150,160が錆びてしまうのを抑制することができる。
また、本実施形態では、左右方向(駆動子の往復動方向)Yから視た状態で、弾性脚部133,143の前後方向X中央部(往復動方向および着脱方向に直交する方向における中間線:図9に示すセンターラインD)が、回転モータ110の回転軸線Cよりも押上ばね(付勢部材)132b,142bにより生じる反力の作用線Eに近く(d1<d2)なるように、弾性脚部133,143を配置している。このように、押上ばね132b,142bによる反力の作用線E側に弾性脚部133,143を設けることで、押上ばね132b,142bによる反力によって弾性脚部133,143に生じるY軸回りのモーメントを低減させることができ、弾性脚部133,143が応力集中によって破断してしまうのを抑制している。なお、弾性脚部133,143を回転モータ110の回転軸線Cから離れるようにすることで、弾性脚部133,143に生じる回転軸線C回りのモーメントが大きくなってしまうが、本実施形態では、押上ばね132b,142bによる反力が大きいため、d1<d2とした方が、装置全体に与える振動の影響を低減することができる。
また、駆動子130,140のそれぞれには、補強用の壁部132f、142fが形成されている。本実施形態では、壁部132fは、押上ばね132bによる反力の作用線Eよりも内側(前後方向X後方)に形成されており、壁部142fは、押上ばね142bによる反力の作用線Eよりも内側(前後方向X前方)に形成されている。
このように、壁部132f、142fを、押上ばね132b,142bによる反力の作用線Eよりも内側に形成することで、壁部132f、142fを設けたことにより生じるY軸回りのモーメントの影響を低減させつつ、押上ばね132b,142bからの反力による駆動子130,140の変形を抑制できるようにしている。
なお、壁部132fは、窓部132hを塞いでしまわないように弾性脚部133よりも短めに形成されている。また、この窓部132hは、バランス調整物160を取り付けることで塞がれるため、駆動子が発する音が外部に漏れてしまうのを抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態では、第1および第2駆動ブロック200,210が、回転モータ110の回転軸線Cに対して、第1および第2駆動子130,140の反対側に配置されるバランス調整部220,230を有するようにした。
そのため、第1および第2駆動ブロック200,210の重心G1,G2を、バランス調整部220,230を有さない場合に比べ、回転モータ110の回転軸線Cに近づけることができる。すなわち、回転モータ110の回転軸線Cから各駆動ブロックの重心までの距離を短くすることができ、それぞれの駆動子に生じる回転モータ110の回転軸線C回りのモーメントを低減させることができる。したがって、複数の駆動子を並設した往復式電気かみそり1の振動を抑制することができるようになる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。