JP2012000811A - 積層フィルム及びその製造方法並びに電子デバイス - Google Patents

積層フィルム及びその製造方法並びに電子デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】酸やアルカリでエッチング処理してもガスバリア性の低下を抑制できる電子デバイス用積層フィルムを提供する。
【解決手段】透明樹脂で構成された基材フィルム24の一方の面に、金属又は金属化合物を含むバリア層23、酸又はアルカリに対して耐性を有するエッチング保護層22、無機化合物で構成された透明導電層21をこの順序で順次形成する。前記エッチング保護層は、ビニル系重合性組成物の硬化物、炭化珪素、炭化フッ素、又は酸化チタンで構成されていてもよい。基材フィルム24の他方の面には、さらに1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状を有する相分離構造で構成された防眩層25が形成されていてもよい。この積層フィルム20は、電子ペーパーのインク層に対して表示面側に配設される。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子ペーパーや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機EL)などの電子(表示)デバイスの視認側に配置するための積層フィルム及びその製造方法並びに電子デバイスに関する。
電子デバイスの一種として、液晶表示装置を有する携帯情報端末(PDA)が今日広く用いられている。このPDAでは表示装置が液晶ディスプレイであり、入力装置としてタッチパネルを備えてタッチペンで入力可能な装置が主流である。このようなPDAにおいて、液晶表示装置は表示装置として優れている一方で、自己発光型や反射光利用型ではないために、消費電力が大きいことが問題となっており、特に携帯に適したように小型化している場合には、消費電力を小さくすることが求められている。このため、液晶ディスプレイ以外の電子デバイスも提案されており、電子ペーパーや有機ELがその代表である。
電子ペーパーは、通常、基板の上にインク層(表示層)が形成され、さらにこのインク層の上に透明電極が積層された構造を有している。このような電子ペーパーは、近年、前記インク層として、電気泳動や磁気泳動などの物理現象を利用した電子インクが開発され、視認性や薄肉性などの特性が向上するとともに急速に普及している。しかし、前記電子インクは水分により機能が低下し易いため、電子ペーパーには水蒸気バリア性が要求される。さらに、紙と同じように反射光を利用して表示を行うため、視野角が広く直射日光に当たっても見易く目に対する負担が少ないように表示層の視認性を向上させる機能も要求される。このような視認性を得るために、電子ペーパーの視認側の最表層には、アンチグレアー機能層(防眩層)を形成するのが一般的である。また、上記の通り視認側は透明電極であり、透明なフィルムでかつ導電性があり、回路を形成することが必要となる。透明電極で回路を形成するためには、部分的にマスキングしたITOなどの導電層をエッチングすることにより形成され、詳細には、マスキングされていない部分の導電層を除去するとともに、マスキングされている部分の導電層が残存して回路が形成される。
現在の技術ではこの電子ペーパー用の視認側のフィルムは複雑な構成となっている。すなわち、視認側の最表層から、防眩層/PET(基材)フィルム(1)、酸化珪素の蒸着膜で形成されたバリア層を有するPETフィルム(2)、ITO層を有するPETフィルム(3)の3枚のフィルムを作成した上で、フィルム(1)とフィルム(2)とを粘着剤で貼り合せ、更にこの積層フィルムにフィルム(3)を貼り合せて形成されている。このような方法では、貼り合せ工程を経る必要があり、製品の生産性が低下する。また、粘着剤での貼り合せ工程の前に貼り合せ面に付着した異物は物理的に除去不可能であり、層間に入り込んだ異物が製品の欠点となる問題点がある。
一方、有機ELでは、陰極及び陽極に電圧を負荷することにより各々の極から電子と正孔を注入する。注入された電子及び正孔は、それぞれの電子輸送層・正孔輸送層を通過し、発光層で結合するのが有機ELの発光原理である。このような有機ELでは、発光体の有機物が通電及び湿気の影響により徐々に劣化するため、輝度が低下する問題がある。このため、有機ELでは、水蒸気バリア性が要求される。さらに、有機ELでは、TFT(薄膜トランジスタ)などのアクティブ素子を各画素に配置して駆動(アクティブ・マトリクス駆動)させる必要があるため、透明なフィルムでかつ導電性があり、回路を形成することが必要となる。さらに、有機ELでの視認性を向上させるためには、視認側の最表層に防眩層を形成することが望ましい。また、有機ELをPDAに使用する場合、タッチペンでの入力に耐えるハードコート層を視認側の最表層に形成することが望ましい。
しかし、このような電子デバイス(特に有機EL)に使用できるフィルム、すなわち透明性が高く、かつ防湿性が高いフィルムは現在まで提案されていない。
WO2004/000920号公報(特許文献1)には、ELディスプレイ用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板として、ポリエチレンナフタレート基板の上に、ポリエステルとアクリル樹脂と濡れ剤とで構成された塗布層、ハードコート層、酸化珪素の蒸着膜で形成されたバリア層、インジウム錫酸化物(ITO)の蒸着膜で形成された透明導電膜を順次積層した積層フィルムが開示されている。
また、特開2008−33095号公報(特許文献2)には、液晶表示パネル、有機又は無機EL表示パネル、電子ペーパーなどの表示部を、表示駆動回路基板と透明電極基板との間に狭持した表示パネルをガスバリア性部材で被覆した表示装置が開示されている。この文献には、好適なガスバリア性フィルムとして、透明樹脂基材上に金属又は金属化合物からなるガスバリア性薄膜、ガスバリア性を有する有機樹脂が形成された積層体が記載されている。
しかし、前述の通り、回路を形成するためにエッチングを施した場合には、エッチングによりITO層の下層にあるバリア層がダメージを受けるためにガスバリア性が低下する。さらに、これらの積層フィルムや表示装置では、防眩層がないため、光の透過性には優れるものの、ギラツキやチラツキが発生し、視認性が十分でない。そして、表示駆動回路基板と透明電極基板との間に狭持した表示パネルをガスバリア性部材で被覆するために、工程も複雑となる。
特開2007−187746号公報(特許文献3)には、ポリマーで構成され、かつ相分離した複数のドメインを有する防眩層を備えたフィルムであって、前記ドメインとマトリックスとの間が凹凸状に形成され、ドメイン内に相分離により生成し、かつ少なくとも1つの凹凸部が形成されている防眩性フィルムが開示されている。しかし、この文献には、単に防眩層の一つの技術が開示されているのみであり、表示デバイスとして用いた場合に好適なバリア性を如何にして得るのかについては全く記載されていない。そして、エッチングによりITOの下層にあるバリア層がダメージを受けるためにバリア性が低下する現象について何ら記載されていない。
WO2004/000920号公報(特許請求の範囲、実施例5) 特開2008−33095号公報(特許請求の範囲、段落[0024][0025]) 特開2007−187746号公報(特許請求の範囲)
従って、本発明の目的は、酸やアルカリでエッチング処理してもガスバリア性の低下を抑制できる積層フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた電子デバイスを提供することにある。
本発明の他の目的は、ギラツキやチラツキが抑制された鮮明な画像を表示可能な積層フィルムを効率良く生産できる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、表面に凹凸構造を有する防眩層を形成したフィルムをロール状に巻き取ってもバリア層の損傷や劣化を抑制できる積層フィルム及びその製造方法並びに前記フィルムを備えた電子デバイスを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、基材フィルムの一方の面(視認側と反対面)に、金属又は金属化合物を含むバリア層、酸又はアルカリに対して耐性を有するエッチング保護層、導電性無機化合物で構成された透明導電層をこの順序で順次形成することにより、酸やアルカリでエッチング処理してもガスバリア性の低下を抑制できる電子デバイス用積層フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の積層フィルムは、透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、金属又は金属化合物を含むバリア層、酸又はアルカリに対して耐性を有するエッチング保護層、導電性無機化合物で構成された透明導電層がこの順序で順次形成されている。前記エッチング保護層は、耐エッチング性ビニル系重合体、炭化珪素、フッ素樹脂、炭化フッ素、又は酸化チタンで構成されていてもよい。前記バリア層は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学的気相法から選択された一種の成膜方法により形成され、かつバリア層の厚みが20〜300nmであってもよい。前記透明導電層において、導電性無機化合物は金属酸化物であってもよい。本発明の電子デバイス用積層フィルムは、前記基材フィルムの他方の面に機能層が形成されていてもよい。前記機能層は、防眩層、例えば、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状を有する相分離構造で構成された防眩層であってもよい。本発明の積層フィルムは、電子デバイスの視認側に配置するためのフィルムであってもよい。
本発明には、基材フィルムの少なくとも一方の面に、バリア層、エッチング保護層、透明導電層を物理的又は化学的気相法でこの順序で順次形成する前記積層フィルムの製造方法も含まれる。この製造方法は、フィルムをロール状に巻き取る工程を含んでいてもよい。
さらに、本発明には、前記積層フィルムを備えた電子デバイスも含まれる。この電子デバイスには、電子ペーパー、有機ELも含まれる。
なお、本願明細書において、「有機EL」とは表示装置としての有機ELディスプレイのみならず、照明用の単純な回路を備えた有機EL照明を含む意味で用いる。
本発明では、基材フィルムの一方の面に、金属又は金属化合物を含むバリア層、酸又はアルカリに対して耐性を有するエッチング保護層、導電性無機化合物で構成された透明導電層が順次形成されているため、酸やアルカリでエッチング処理しても、バリア層の劣化が抑制され、ガスバリア性の低下を抑制できる。また、基材フィルムの他方の面に防眩層を形成することにより、ギラツキやチラツキが抑制された鮮明な画像を表示可能な電子デバイス用積層フィルムを効率良く生産できる。さらに、前記防眩層を相分離構造で凹凸形状を形成することにより、表面に凹凸構造を有する防眩層を形成したフィルムをロール状に巻き取ってもバリア層の損傷や劣化を抑制できる。また、基材フィルムの他方の面にハードコート層を設けることで、タッチペンで入力した場合でも最表面に傷が残り難い。このような積層フィルムは、電子デバイスの視認側に配置するための積層フィルム、例えば、電子ペーパーのインク層(表示層)に対して表示面側に配置するための積層フィルムや、有機ELの視認側フィルムとして配置するための積層フィルムに適している。
図1は、積層フィルムの光透過散乱特性(透過散乱光の角度分布)を測定するための装置を示す概略図である。 図2は、本発明の電子ペーパーの一例を示す概略模式断面図である。
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの一方の面にバリア層、エッチング保護層、透明導電層が順次形成されている。
(基材フィルム)
基材フィルムは、透明で柔軟性を有するフィルムであれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択できるが、通常、透明樹脂で構成される。透明樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。具体的には、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、非晶質ポリオレフィンなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロヘキサンジメタノールをジオール成分として含むPET系共重合体(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12など)、塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロースエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
これらの透明樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのプラスチックのうち、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種のプラスチックが好ましく、PET、PENなどのポリアルキレンアリレート系樹脂がより好ましい。
基材フィルムには、必要に応じて、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤など)、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、補強剤、着色剤、分散剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤などを添加してもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
基材フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、延伸(一軸又は二軸)フィルムであってもよい。また、基材フィルムの表面には、接着性を向上させるため、コロナ放電やグロー放電などの放電処理、酸処理、焔処理などの表面処理を施してもよい。
基材フィルムの厚みは、例えば、1〜500μm(例えば10〜500μm)、好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは100〜250μm程度であってもよい。
(バリア層)
バリア層は、通常、金属又は金属化合物を含んでおり、薄膜(特に、透明性薄膜)を形成可能な金属又は金属化合物で構成されているのが好ましい。このような金属には、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル、銅などの遷移元素;亜鉛などの周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなどの周期表3B族元素;珪素、ゲルマニウム、錫などの周期表4B族元素;セレン、テルルなどの周期表6B族元素などが例示できる。また、金属化合物としては、前記金属の酸化物、窒化物、酸化窒化物、ハロゲン化物、又は炭化物などが例示できる。これらの金属又は金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの金属又は金属化合物のうち、ガスバリア性のみならず透明性も向上できる点から、アルミニウムなどの周期表3B族元素、珪素などの周期表4B族元素、チタンなどの遷移元素の金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化物が好ましい。なかでも、酸化アルミニウム[組成式AlxOy(x,y>0)]、珪素窒化物[組成式SixNy(x,y>0)]、珪素酸化窒化物[組成式SixOyNz(x,y,z>0)]が好ましい。
バリア層の厚みは、成膜方法に応じて適宜選択でき、例えば、10〜300nm(例えば20〜300nm)、好ましくは15〜250nm(例えば、20〜200nm)、さらに好ましくは25〜150nm(例えば30〜100nm、特に40〜90nm)程度であってもよい。特に、クラックなどの発生を防止し、均一な膜を形成してガスバリア性を保持する点から、物理的気相法では、バリア層の厚みを10〜100nm(例えば15〜80nm、特に20〜60nm)程度に調整することが好ましく、化学的気相法では、バリア層の厚みを50〜400nm(例えば、60〜350nm、特に100〜300nm)程度に調整することが好ましい。用途に応じて、厚みを選択してもよく、例えば、電子ペーパーの場合、例えば、10〜300nm(特に20〜250nm)程度であってもよく、有機ELの場合、例えば、30〜400nm(特に40〜300nm)であってもよい。
(エッチング保護層)
エッチング保護層は、透明導電層に対するエッチング処理により、前記バリア層が酸又はアルカリにより劣化又は腐食するのを抑制するために形成される。エッチング保護層としては、酸又はアルカリ(特に、酸)に対する耐性を有し、かつ透明であれば特に限定されないが、例えば、耐酸性及び耐アルカリ性樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミドなど)、耐アルカリ性樹脂(例えば、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースエステルなど)、耐酸性樹脂(例えば、ポリカーボネート、フェノール樹脂など)、フッ素化合物(例えば、炭化フッ素など)、珪素化合物(例えば、炭化珪素など)、ホウ素化合物(例えば、炭化ホウ素、窒化ホウ素など)、チタン化合物(例えば、酸化チタンなど)などが挙げられる。
これらのうち、透明性及び耐エッチング性に優れる点から、耐エッチング性ビニル系重合体、炭化珪素(珪素炭化物)、フッ素樹脂、炭化フッ素(フッ素炭化物)、酸化チタンが特に好ましい。好ましい保護層の特性としては全光線透過度が高いことである。また透明度が高く、無色に近い色目の層を形成できる保護層が特に好適である。更には、少なくとも酸性に対する耐性が優れる保護層が特に好適である。
(1)耐エッチング性ビニル系重合体
耐エッチング性ビニル系重合体としては、例えば、ビニル系成分と重合開始剤とを含むビニル系重合性組成物の硬化物(ビニル系硬化物)で構成されていてもよい。
(A)ビニル系成分
ビニル系成分は、モノマーであっても、オリゴマー(又はプレポリマー)であってもよく、モノマー及びオリゴマーを組み合わせて使用してもよい。
ビニル系モノマーには、単官能ビニル系モノマー[単官能(メタ)アクリレート(又はモノ(メタ)アクリレート)類など]、二官能ビニル系モノマー[二官能(メタ)アクリレート(又はジ(メタ)アクリレート)類など]、3官能以上のビニル系モノマー[3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(又はポリ(メタ)アクリレート)類など]が含まれる。
単官能ビニル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート又はC2−10アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのフルオロC1−10アルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート;フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアリールオキシ(ポリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアリールオキシヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールモノ(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
二官能ビニル系モノマーとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類(ビスフェノールA、Sなど)のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;脂肪酸変性ペンタエリスリトールなどの酸変性アルカンポリオールのジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
多官能ビニル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;前記アルカンポリオールのC2−4アルキレンオキサイド付加体のポリ(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどのトリアジン環を有するトリ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
これらのモノマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ビニル系オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート[例えば、多価カルボン酸とポリオールと(メタ)アクリル酸及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応により生成する脂肪族又は芳香族ポリエステル(メタ)アクリレートなど];アルキド樹脂;エポキシ(メタ)アクリレート[例えば、複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物(多価アルコール型、多価カルボン酸型、ビスフェノールA、F、Sなどのビスフェノール型、ノボラック型などのエポキシ樹脂)に(メタ)アクリル酸が開環付加したエポキシ(メタ)アクリレートなど];ウレタン(メタ)アクリレート;シリコーン(メタ)アクリレート;ポリアクリル(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル系単量体とグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体に(メタ)アクリル酸をエポキシ基に開環付加したポリアクリル(メタ)アクリレートなど];ポリエーテル(メタ)アクリレート[ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレートなど];ポリブタジエン系(メタ)アクリレート;メラミン(メタ)アクリレート;ポリアセタール(メタ)アクリレートなどが例示できる。これらのオリゴマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのビニル系成分のうち、柔軟性などの点から、ウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどのオリゴマーが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート成分[又はポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応により生成し、遊離のイソシアネート基を有するプレポリマー]に活性水素原子を有する(メタ)アクリレート[例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど]を反応させることにより得られたウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。
ポリイソシアネート成分としては、脂肪族ポリイソシアネート[例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などの脂肪族ジイソシアネート;1,6,11−ウンデカントリイソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどの脂肪族トリイソシアネートなど]、脂環族ポリイソシアネート[例えば、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどの脂環族ジイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの脂環族トリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどの芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族トリイソシアネートなど]などが例示できる。これらのポリイソシアネート成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリオール成分としては、特に限定されず、例えば、低分子量ポリオール[脂肪族ポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコールなどのC2−10アルカンジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのC3−12脂肪族ポリオールなど)、脂環族ポリオール(1,4−シクロヘキサンジオールなどのシクロアルカンジオール類、水添ビスフェノールAなどの水添ビスフェノール類、又はこれらのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)、芳香族ポリオール(キシリレングリコールなどの芳香脂肪族ジオール、ビスフェノールA、S、Fなどのビスフェノール類、又はこれらのC2−4アルキレンオキサイド付加体など)]、ポリマーポリオール類[例えば、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリC2−4アルキレングリコールなど)、ポリエステルポリオール(アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとのポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール]などが挙げられる。これらのポリオール成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリイソシアネート成分と活性水素原子を有する(メタ)アクリレート(又はポリオール成分)とは、通常、イソシアネート基と活性水素原子が略当量となる割合(イソシアネート基/活性水素原子=0.8/1〜1.2/1程度)で組み合わせて用いられる。
なお、これらのウレタン(メタ)アクリレートの製造方法について、特開2008−74891号公報などが参照できる。
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、500〜10000、好ましくは600〜9000、さらに好ましくは700〜8000程度であってもよい。
シリコーン(メタ)アクリレートとしては、珪素原子と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(硬化性化合物)である限り、特に限定されないが、通常、オルガノシロキサン単位[−Si(−R)−O−](基Rは置換基を示す)を有している。Si原子(又はオルガノシロキサン単位)の数は、1分子中に1以上(例えば、1〜30、好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15程度)であってもよい。また、(メタ)アクリロイル基の数は、1分子中に1以上(例えば、1〜20、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10程度)であってもよい。
シリコーン(メタ)アクリレート成分は、例えば、複数の(−Si−O)結合を有するポリシロキサン系オリゴマーであってもよく、加水分解縮合性基(例えば、メトキシ、エトキシなどのC1−4アルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子など)を有するシリコーン(メタ)アクリレートモノマーの加水分解縮合による2量体、3量体などの多量体であってもよい。
代表的なシリコーン(メタ)アクリレート成分としては、1分子中に1つのSi原子を有するシリコーンモノ乃至テトラ(メタ)アクリレート、1分子中に2つのSi原子を有するシリコーンテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
これらのシリコーン(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリコーン(メタ)アクリレート成分のうち、1分子中に複数(例えば、2〜10個、好ましくは2〜8個、さらに好ましくは2〜6個程度)の(メタ)アクリロイル基と、1又は複数(例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜6個程度)のSi原子を有するシリコーン(メタ)アクリレート成分[例えば、シリコーンジ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート、好ましくはシリコーンジ乃至テトラ(メタ)アクリレート、特にシリコーンジ(メタ)アクリレートなどのシリコーンジ乃至トリ(メタ)アクリレート]が好ましい。なお、シリコーンジ(メタ)アクリレートは、商品名「EBECRYL350」(ダイセル・サイテック(株)製)などとして入手でき、シリコーンヘキサ(メタ)アクリレートは、商品名「EBECRYL1360」(ダイセル・サイテック(株)製)などとして入手できる。
(B)重合開始剤
重合開始剤は、熱重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物などの熱ラジカル発生剤)であってもよく光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、フェニルケトン類[例えば、アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなど)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのアルキルフェニルケトン類;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのシクロアルキルフェニルケトン類など]、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類、ホスフィンオキサイド類(例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなど)などが例示できる。これらの光重合開始剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
重合開始剤の割合は、ビニル系成分100重量部に対して0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜2.5重量部程度である。
なお、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、慣用の成分、例えば、第3級アミン類[例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミルなどのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンなど]、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類、N,N−ジメチルトルイジンなどのトルイジン類、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどのアントラセン類などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
光増感剤の使用量は、前記光重合開始剤100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部程度であってもよい。
ビニル系重合性組成物はウレタン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーなどを含む組成物であってもよく、ビニル系硬化物は、特開2009−23284号公報に記載のフラッシュ蒸着で形成された硬化層であってもよい。
(2)炭化珪素
炭化珪素としては、各種の結晶形を有する慣用の炭化珪素[組成式SixCy]を利用でき、例えば、アチソン法により作製される六方晶系のα−炭化珪素、2000℃以下の温度条件で作製される立方晶系のβ−炭化珪素、これらの炭化珪素の混合物などを利用できる。炭化珪素は、例えば、特許第3928989号公報、特許第4178339号公報に記載の炭化珪素であってもよい。さらに、炭化珪素は、慣用の方法により製膜化でき、例えば、前記文献に記載の方法で製膜化してもよい。
さらに、炭化珪素は、珪素含有カーボン、珪素含有グラファイト、珪素含有ダイアモンドライクカーボン(DLC)などであってもよい。これらのうち、珪素含有DLCが好ましい。珪素含有DLCは、黒鉛(グラファイト)構造とダイアモンド構造との中間であるアモルファス構造を有するDLCに珪素を含有させた化合物であり、珪素含有DLC中における珪素の含有割合は、例えば、1〜50原子%、好ましくは2〜40原子%、さらに好ましくは5〜30原子%程度であってもよい。珪素含有DLCは、例えば、特開2009−221518号公報、特開2001−140608号公報に記載の珪素含有DLCであってもよい。さらに、珪素含有DLCは、慣用の方法により製膜化でき、例えば、前記文献に記載された方法、例えば、テトラメチルシランを原料として用いる方法などで製膜化してもよい。
(3)フッ素樹脂
フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)などの単独重合体;テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示される。これらのフッ素樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのフッ素樹脂の中で、PTFE、PFA、FEPなどが汎用される。
(4)炭化フッ素
炭化フッ素は、フッ素含有カーボン、フッ素含有グラファイト、フッ素含有ダイアモンドライクカーボン(DLC)などであってもよい。これらのうち、フッ素含有DLCが好ましい。フッ素含有DLC中におけるフッ素の含有割合は、例えば、1〜50原子%、好ましくは2〜40原子%、さらに好ましくは5〜30原子%程度であってもよい。フッ素含有DLCは、例えば、特開2007−213715号公報に記載のフッ素含有DLCであってもよい。さらに、フッ素含有DLCは、慣用の方法により製膜化でき、例えば、前記文献に記載された方法、例えば、フッ素化炭化水素を含むガスを原料として用いる方法などで製膜化してもよい。
(5)酸化チタン
酸化チタンとしては、慣用の酸化チタン[組成式TixOy]を利用でき、二酸化チタン、Ti、Tiなどを利用できるが、通常、二酸化チタンを主成分とする。さらに、酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などの結晶系であってもよいが、ルチル型の二酸化チタンが好ましい。このような酸化チタンは、例えば、特開2010−37648号公報、特開2007−185641号公報、特開2008−137888号公報に記載の酸化チタンであってもよい。さらに、酸化チタンは、慣用の方法により製膜化でき、例えば、前記文献に記載の方法で製膜化してもよい。
耐エッチング性ビニル系重合体、炭化珪素、フッ素樹脂、炭化フッ素、酸化チタンを物理気相成長法、化学気相成長法を用いて形成する場合、エッチング保護層の厚みは、材質や成膜方法に応じて適宜選択でき、炭化珪素や炭化フッ素、酸化チタンなどの無機化合物の場合、例えば、1〜50nm、好ましくは2〜30nm、さらに好ましくは3〜25nm(特に5〜20nm)程度である。例えば、ビニル系硬化物では、例えば、100〜2000nm、好ましくは150〜1000nm、さらに好ましくは180〜700nm(特に200〜600nm)程度である。
(透明導電層)
透明導電層は、透明電極として利用されている慣用の透明導電層、例えば、金属酸化物[例えば、酸化インジウム(InO、In、In−SnO複合酸化物(ITO)など)、酸化錫(SnO、SnO−Sb複合酸化物、フッ素ドープ酸化錫(FTO)など)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO−Al複合酸化物など)]、金属(例えば、金、銀、白金、パラジウム)などの導電性無機化合物で構成されている。このような透明導電層は、例えば、特開2009−76544号公報、特許4165173号公報、特開2004−149884号公報に記載の透明導電層であってもよい。
透明導電層の表面抵抗は、例えば、10〜1000Ω、好ましくは15〜500Ω、さらに好ましくは20〜300Ω程度であってもよい。
透明導電層の厚みは、特に限定されず、1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜400nm(特に20〜300nm)程度であってもよい。
(機能層)
本発明の積層フィルムは、前記基材フィルムの他方の面に、さらに機能層が形成されていてもよい。機能層としては、慣用の機能層、例えば、光散乱層、防眩層、反射防止層、ハードコート層、低屈折率層などが挙げられる。これらのうち、ハードコート層、防眩層などが汎用される。ハードコート層としては、透明で耐擦傷性の高い材質であれば特に限定されないが、硬化性樹脂が好ましく、例えば、前記エッチング保護層のビニル系重合性組成物の硬化物で例示されたビニル系成分及び重合開始剤を含む組成物などを利用できる。さらに、前記ビニル系成分のうち、電子デバイスに要求される透明性、柔軟性(フレキシブル性)、耐擦傷性を兼ね備える点から、ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
さらに、本発明では、電子デバイスの視認性を向上できる点から、機能層として防眩層を形成するのが特に好ましい。防眩層(アンチグレア層)は、透明で防眩性を有している限り、特に限定されないが、表面に凹凸構造を有する層が好ましい。本発明では、防眩層を形成することにより、電子デバイスの表示部におけるギラツキやチラツキを抑制でき、視認性を向上できる。表面に凹凸構造を有する防眩層としては、例えば、複数のポリマー成分(又はその前駆体)の相分離により凹凸構造を形成した層(相分離を利用した防眩層)、ポリマー成分(又はその前駆体)中に粒子を配合することにより凹凸構造を形成した層(粒子を配合した防眩層)、鋳型を用いて凹凸構造を形成した層などが挙げられる。これらのうち、簡便に高い防眩性を発現できる点から、相分離を利用した層、粒子を配合した層が好ましい。
(1)相分離を利用した防眩層
相分離を利用した層は、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状(凹凸構造)を有する相分離構造で構成されていてもよい。防眩層の相分離構造は、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成されている。すなわち、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とで構成された樹脂組成物を用い、この樹脂組成物の液相(又は均一溶液やその塗布層)から、溶媒を乾燥などにより除去する過程で、濃縮に伴って、スピノーダル分解による相分離が生じ、相間距離が微細で比較的規則的な相分離構造を形成できる。より具体的には、前記湿式スピノーダル分解は、通常、1又は複数のポリマーと1又は複数の硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液又は樹脂組成物(均一溶液)を基材フィルムにコーティングし、形成された塗布層から溶媒を蒸発させることにより行うことができる。このような相分離構造による凹凸構造は、微粒子による凹凸構造と比較して微細であり、かつ硬質な微粒子を用いなくとも凹凸構造を形成できる。さらに、この凹凸構造は、微細な構造に加えて、規則的で滑らか(又はなだらか)な表面構造を有しているため、ロール状に巻き取って巻き締めても防眩層と接触したバリア層が損傷又は劣化されるのを抑制できる。
(A)ポリマー成分
ポリマー成分としては、通常、熱可塑性樹脂が使用される。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6−キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)などが例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの熱可塑性樹脂のうち、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマーなどが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂としては、通常、非結晶性であり、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶な樹脂が使用される。特に、成形性又は製膜性、透明性や耐候性の高い樹脂、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類など)などが好ましい。
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体など)、スチレン系単量体と他の重合性単量体[(メタ)アクリル系単量体、無水マレイン酸、マレイミド系単量体、ジエン類など]との共重合体などが含まれる。スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体など]、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。好ましいスチレン系樹脂には、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル系単量体との共重合体[スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレンとメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体]、AS樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが含まれる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体などが使用できる。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、前記エッチング保護層におけるビニル系成分(A)として例示された単官能ビニル系モノマーなどが例示できる。共重合性単量体には、前記スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸イソボルニルなどが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特にメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。さらに、(メタ)アクリル系樹脂は、シリコーン含有(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
脂環式オレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなど)の単独又は共重合体(例えば、立体的に剛直なトリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する重合体など)、前記環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)などが例示できる。脂環式オレフィン系樹脂は、例えば、商品名「トパス(TOPAS)」、商品名「アートン(ARTON)」、商品名「ゼオネックス(ZEONEX)」などとして入手できる。
ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレートやポリC2−4アルキレンナフタレートなどのホモポリエステルなどであってもよいが、溶媒溶解性の点から、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を用いた芳香族コポリエステル[C2−4アルキレンアリレート単位(C2−4アルキレンテレフタレート及び/又はC2−4アルキレンナフタレート単位)を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステルなど]などが好ましい。コポリエステルとしては、ポリC2−4アルキレンアリレートの構成単位のうち、C2−4アルキレングリコールの一部を、ポリオキシC2−4アルキレングリコール、C5−10アルキレングリコール、脂環式ジオール(シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなど)、芳香環を有するジオール(9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、ビスフェノールA、ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加体など)などで置換したコポリエステル、芳香族ジカルボン酸の一部を、フタル酸、イソフタル酸などの非対称芳香族ジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族C6−12ジカルボン酸などで置換したコポリエステルが含まれる。ポリエステル系樹脂には、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリエステル、ε−カプロラクトンなどのラクトンの単独又は共重合体も含まれる。好ましいポリエステル系樹脂は、通常、非結晶性コポリエステル(例えば、C2−4アルキレンアリレート系コポリエステルなど)などのように非結晶性である。
セルロース誘導体のうち、セルロースエステル類としては、例えば、脂肪族有機酸エステル(セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート;セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのC1−6有機酸エステルなど)、芳香族有機酸エステル(セルロースフタレート、セルロースベンゾエートなどのC7−12芳香族カルボン酸エステル)、無機酸エステル類(例えば、リン酸セルロース、硫酸セルロースなど)が例示でき、酢酸・硝酸セルロースエステルなどの混合酸エステルであってもよい。セルロース誘導体には、セルロースカーバメート類(例えば、セルロースフェニルカーバメートなど)、セルロースエーテル類(例えば、シアノエチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース;メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−6アルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース又はその塩、ベンジルセルロース、アセチルアルキルセルロースなど)も含まれる。
ポリマー成分としては、硬化反応に関与する官能基(又は硬化性化合物と反応可能な官能基)を有するポリマーを用いることもできる。前記ポリマーは、官能基を主鎖に有していてもよく、側鎖に有していてもよい。前記官能基は、共重合や共縮合などにより主鎖に導入されてもよいが、通常、側鎖に導入される。このような官能基としては、縮合性基や反応性基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基など)、重合性基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリルなどのC2−6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニルなどのC2−6アルキニル基、ビニリデンなどのC2−6アルケニリデン基、又はこれらの重合性基を有する基((メタ)アクリロイル基など)など)などが挙げられる。これらの官能基のうち、重合性基が好ましい。
重合性基を側鎖に導入する方法としては、例えば、反応性基や縮合性基などの官能基を有する熱可塑性樹脂と、前記官能基との反応性基を有する重合性化合物とを反応させる方法を用いることができる。
官能基を有する熱可塑性樹脂としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂、ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂、アミノ基を有する熱可塑性樹脂、エポキシ基を有する熱可塑性樹脂などが例示できる。また、官能基を有さない熱可塑性樹脂に、前記官能基を共重合やグラフト重合で導入した樹脂であってもよい。
重合性化合物としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂の場合は、エポキシ基やヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基などを有する重合性化合物などを用いることができる。ヒドロキシル基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やイソシアネート基などを有する重合性化合物などが挙げられる。アミノ基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やエポキシ基、イソシアネート基などを有する重合性化合物などが挙げられる。エポキシ基を有する熱可塑性樹脂の場合は、カルボキシル基又はその酸無水物基やアミノ基などを有する重合性化合物などが挙げられる。
前記重合性化合物のうち、エポキシ基を有する重合性化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレートなどのエポキシシクロC5−8アルケニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが例示できる。ヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1−4アルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのC2−6アルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが例示できる。アミノ基を有する重合性化合物としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノC1−4アルキル(メタ)アクリレート、アリルアミンなどのC3−6アルケニルアミン、4−アミノスチレン、ジアミノスチレンなどのアミノスチレン類などが例示できる。イソシアネート基を有する重合性化合物としては、例えば、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレートやビニルイソシアネートなどが例示できる。カルボキシル基又はその酸無水物基を有する重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸や無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物などが例示できる。
代表的な例としては、カルボキシル基又はその酸無水物基を有する熱可塑性樹脂とエポキシ基含有化合物、特に(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート(エポキシシクロアルケニル(メタ)アクリレートやグリシジル(メタ)アクリレートなど)の組み合わせが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂のカルボキシル基の一部に重合性不飽和基を導入したポリマー、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートのエポキシ基を反応させて、側鎖に光重合性不飽和基を導入した(メタ)アクリル系ポリマー(サイクロマーP、ダイセル化学工業(株)製)などが使用できる。
熱可塑性樹脂に対する硬化反応に関与する官能基(特に重合性基)の導入量は、熱可塑性樹脂1kgに対して、0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、さらに好ましくは0.02〜3モル程度である。
これらのポリマーは適宜組み合わせて使用できる。すなわち、ポリマーは複数のポリマーで構成されていてもよい。複数のポリマーは、液相スピノーダル分解により、相分離可能であってもよい。また、複数のポリマーは、互いに非相溶であってもよい。複数のポリマーを組み合わせる場合、第1の樹脂と第2の樹脂との組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶な複数のポリマー、例えば、互いに非相溶な2つのポリマーとして適当に組み合わせて使用できる。例えば、第1の樹脂がスチレン系樹脂である場合、第2の樹脂は、セルロース誘導体、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などであってもよい。また、例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体である場合、第2のポリマーは、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(特に、重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂)、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂などであってもよい。複数の樹脂の組合せにおいて、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースC2−4アルキルカルボン酸エステル類)を用いてもよい。
なお、スピノーダル分解により生成された相分離構造(***した表面の凹凸形状)は、活性光線(紫外線、電子線など)や熱などにより最終的に硬化し、硬化樹脂を形成する。そのため、硬化樹脂で構成された防眩層の存在により、基材フィルムがポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックである場合、基材フィルムの内部から熱によりオリゴマーなどの低分子成分が析出することも抑制できる。
硬化後の耐久性(耐擦傷性)などの観点から、複数のポリマーのうち、少なくとも一つのポリマー、例えば、互いに非相溶なポリマーのうち一方のポリマー(第1の樹脂と第2の樹脂とを組み合わせる場合、特に両方のポリマー)が硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマーであるのが好ましい。
第1のポリマーと第2のポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10程度の範囲から選択でき、通常、20/80〜80/20程度、特に30/70〜70/30程度である。
なお、相分離構造を形成するためのポリマーとしては、前記非相溶な2つのポリマー以外にも、前記熱可塑性樹脂や他のポリマーが含まれていてもよい。
ポリマーのガラス転移温度は、例えば、−100〜250℃、好ましくは0〜200℃、さらに好ましくは50〜180℃程度(特に100〜170℃程度)であってもよい。ポリマーの重量平均分子量は、例えば、1,000,000以下、好ましくは1,000〜500,000程度の範囲から選択できる。
(B)硬化性樹脂前駆体
硬化性樹脂前駆体は、熱や活性エネルギー線(紫外線や電子線など)などにより反応する官能基を有する化合物であり、熱や活性エネルギー線などにより硬化又は架橋して樹脂(特に硬化又は架橋樹脂)を形成可能な種々の硬化性化合物、例えば、熱硬化性化合物又は樹脂[エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基などを有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂など)]、活性光線(紫外線など)により硬化可能な光硬化性化合物(光硬化性モノマー、オリゴマーなどの紫外線硬化性化合物など)などが例示でき、光硬化性化合物は、EB(電子線)硬化性化合物などであってもよい。なお、光硬化性モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい光硬化性樹脂などの光硬化性化合物を、単に「光硬化性樹脂」という場合がある。
光硬化性化合物には、例えば、単量体、オリゴマー(又は樹脂、特に低分子量樹脂)が含まれる。単量体は、例えば、1つの重合性基を有する単官能単量体と、少なくとも2つの重合性基を有する多官能単量体とに分類できる。
単官能単量体としては、例えば、前記エッチング保護層におけるビニル系成分(A)として例示された単官能ビニル系モノマー、ビニルピロリドンなどのビニル系単量体などが挙げられる。多官能単量体には、2〜8程度の重合性基を有する多官能単量体が含まれ、2官能単量体としては、例えば、前記エッチング保護層におけるビニル系成分(A)として例示された二官能ビニル系モノマーなどが挙げられる。3〜8官能単量体としては、例えば、前記エッチング保護層におけるビニル系成分(A)として例示された多官能ビニル系モノマーなどが挙げられる。
オリゴマー又は樹脂としては、前記エッチング保護層におけるビニル系成分(A)として例示されたビニル系オリゴマーなどが例示できる。これらのビニル系オリゴマー又は樹脂には、前記ポリマー成分における(メタ)アクリル系樹脂の項で例示された共重合性単量体が含まれていてもよい。これらの光硬化性化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
さらに、硬化性樹脂前駆体は、ヘイズ値を低下できるとともに、層の強度も向上できる点から、透明性や強度を向上する点などから、フッ素原子や無機粒子を含有していてもよい。フッ素原子を含有する前駆体(フッ素含有硬化性化合物)としては、前記単量体及びオリゴマーのフッ化物、例えば、フッ化アルキル(メタ)アクリレート[例えば、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートやトリフルオロエチル(メタ)アクリレートなど]、フッ化(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、フルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フルオロプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、フッ素含有エポキシ樹脂、フッ素含有ウレタン系樹脂などが挙げられる。無機粒子を含有する前駆体としては、例えば、表面に重合性基を有する無機粒子(例えば、重合性基を有するシランカップリング剤で表面を修飾したシリカ粒子など)などが例示できる。表面に重合性基を有するナノサイズのシリカ粒子としては、例えば、JSR(株)製から、多官能ハイブリッド系UV硬化剤(Z7501)が市販されている。
好ましい硬化性樹脂前駆体は、短時間で硬化できる光硬化性化合物、例えば、紫外線硬化性化合物(モノマー、オリゴマーや低分子量であってもよい樹脂など)、EB硬化性化合物である。特に、実用的に有利な樹脂前駆体は、紫外線硬化性樹脂である。さらに、繰り返しの使用(打鍵)に対する耐久性を向上させるため、光硬化性樹脂は、2官能以上(好ましくは2〜10官能、さらに好ましくは3〜8官能程度)の光硬化性化合物、特に、多官能(メタ)アクリレート、例えば、3官能以上(特に4〜8官能)の(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。
さらに、本発明では、硬化性樹脂前駆体は、5〜7官能(メタ)アクリレートと、3〜4官能(メタ)アクリレートとを組み合わせてもよい。両者の割合(重量比)は、例えば、前者/後者=100/0〜10/90、好ましくは99/1〜30/70、さらに好ましくは90/10〜50/50(特に80/20〜40/60)程度である。
また、多官能(メタ)アクリレートと前記フッ素含有硬化性化合物(特に、フッ化アルキル鎖を含む(メタ)アクリレートなどのフッ素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体)とを組み合わせる場合、フッ素含有硬化性化合物の割合は、多官能(メタ)アクリレート100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部程度である。
硬化性樹脂前駆体の分子量としては、ポリマーとの相溶性を考慮して5000以下、好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下程度である。
硬化性樹脂前駆体は、その種類に応じて、硬化剤を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂では、アミン類、多価カルボン酸類などの硬化剤を含んでいてもよく、光硬化性樹脂では光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類などが例示できる。光硬化剤などの硬化剤の含有量は、硬化性樹脂前駆体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部(特に1〜5重量部)程度であり、3〜8重量部程度であってもよい。
さらに、硬化性樹脂前駆体は硬化促進剤を含んでいてもよい。例えば、光硬化性樹脂は、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステルなど)、ホスフィン系光重合促進剤などを含んでいてもよい。
少なくとも1つのポリマー及び少なくとも1つの硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分が、加工温度付近で互いに相分離する組み合わせで使用される。相分離する組み合わせとしては、特に限定されないが、通常、複数のポリマー同士の組み合わせや、ポリマーと硬化性樹脂前駆体との組み合わせであり、特に、複数のポリマー同士の組み合わせが好ましい。相分離させる両者の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程で両者が有効に相分離せず、防眩層としての機能が低下する。
なお、ポリマーと硬化性樹脂前駆体(又は硬化樹脂)とは、互いに相溶であってもよく、非相溶であってもよい。ポリマーと硬化性樹脂前駆体とが非相溶で相分離する場合に、ポリマーとして複数のポリマーを用いてもよい。複数のポリマーを用いる場合、少なくとも1つのポリマーが樹脂前駆体(又は硬化樹脂)に対して非相溶であればよく、他のポリマーは前記樹脂前駆体と相溶してもよい。
ポリマーを互いに非相溶な複数のポリマーで構成して相分離する場合、硬化性樹脂前駆体は、非相溶な複数のポリマーのうち、少なくとも1つのポリマーと加工温度付近で互いに相溶する組合せで使用される。すなわち、互いに非相溶な複数のポリマーを、例えば、第1のポリマーと第2のポリマーとで構成する場合、硬化性樹脂前駆体は少なくとも第1の樹脂又は第2の樹脂のどちらかと相溶すればよく、好ましくは両方のポリマー成分と相溶してもよい。両方のポリマー成分に相溶する場合、第1の樹脂及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物と、第2の樹脂及び硬化性樹脂前駆体を主成分とした混合物との少なくとも二相に相分離する。
具体的には、複数のポリマーがセルロース誘導体と重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂の組み合わせであり、かつ硬化性樹脂前駆体が多官能(メタ)アクリレートである場合、ポリマー同士が非相溶で相分離するとともに、重合性基を有する(メタ)アクリル系樹脂と多官能(メタ)アクリレートとの組み合わせも非相溶で相分離し、セルロース誘導体と多官能(メタ)アクリレートとが相溶であってもよい。
選択した複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体の相溶性が高い場合、溶媒を蒸発させるための乾燥過程でポリマー同士又はポリマーと前駆体とが有効に相分離せず、防眩層としての機能が低下する。複数のポリマーや前駆体の相分離性は、双方の成分に対する良溶媒を用いて均一溶液を調製し、溶媒を徐々に蒸発させる過程で、残存固形分が白濁するか否かを目視にて確認することにより簡便に判定できる。
さらに、ポリマーと硬化又は架橋樹脂との屈折率の差、複数のポリマーの屈折率の差(第1の樹脂と第2の樹脂との屈折率の差)は、例えば、0.001〜0.2、好ましくは0.05〜0.15程度であってもよい。
スピノーダル分解において、相分離の進行に伴って共連続相構造を形成し、さらに相分離が進行すると、連続相が自らの表面張力により非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状などの独立相の海島構造)となる。従って、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(上記共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。防眩層の相分離構造は、海島構造(液滴相構造、又は一方の相が独立または孤立した相構造)、共連続相構造(又は網目構造)であってもよく、共連続相構造と液滴相構造とが混在した中間的構造であってもよい。これらの相分離構造により溶媒乾燥後には防眩層の表面になだらかで微細な凹凸構造を形成できる。
このように、相分離によって表面に凹凸形状を形成した防眩層のヘイズは、用途に応じて、0.1〜50%程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜30%、好ましくは0.5〜20%、さらに好ましくは1〜15%(特に2〜8%)程度である。例えば、電子ペーパーの場合、1〜30%、好ましくは5〜20%、さらに好ましくは10〜15%程度であってもよい。
さらに、相分離を利用した防眩層は、粒子を配合する方法で形成した防眩層と異なり、層の内部で散乱を引き起こすような微粒子を防眩層内に含まない。このため、層の内部におけるヘイズ(層の内部で散乱を引き起こす内部ヘイズ)は低く、例えば、0〜1%程度であり、好ましくは0〜0.8%(例えば、0.01〜0.8%)、さらに好ましくは0〜0.5%(例えば、0.1〜0.5%)程度である。なお、内部ヘイズは、防眩層の表面凹凸を平坦化するように上から樹脂層をコートするか、透明粘着層を介して平滑な透明フィルムと防眩層の表面凹凸を貼り合わせて、ヘイズを測定することにより測定できる。
前記相分離構造において、表面凹凸構造を形成し、かつ表面硬度を高める点からは、少なくとも島状ドメインを有する液滴相構造であるのが有利である。なお、ポリマーと前記前駆体(又は硬化樹脂)とで構成された相分離構造が海島構造である場合、ポリマー成分が海相を形成してもよいが、表面硬度の観点から、ポリマー成分が島状ドメインを形成するのが好ましい。なお、島状ドメインの形成により、乾燥後には防眩層の表面に微細な凹凸を形成できる。
さらに、前記相分離構造のドメイン間の平均距離は、通常、実質的に規則性又は周期性を有している。例えば、ドメインの平均相間距離は、例えば、1〜70μm(例えば、1〜40μm)、好ましくは2〜50μm(例えば、3〜30μm)、さらに好ましくは5〜20μm(例えば、10〜20μm)程度であってもよい。
ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、特に制限されず、例えば、前者/後者=5/95〜95/5程度の範囲から選択でき、表面硬度の観点から、好ましくは5/95〜60/40程度であり、さらに好ましくは10/90〜50/50、特に10/90〜40/60程度である。特に、ポリマーの全部又は一部にセルロース誘導体を用いる場合、ポリマーと硬化性樹脂前駆体との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=10/90〜80/20、好ましくは20/80〜70/30、さらに好ましくは30/70〜50/50程度である。
(2)粒子を配合した防眩層
粒子を配合した防眩層は、前記相分離を利用した防眩層で例示されたポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体中に粒子を配合することにより、粒子由来の凹凸構造が形成されている。前記ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体としては、透明性及び機械的特性などの点から、ビニル系重合組成物が好ましく、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートなどが好ましい。
粒子には、有機微粒子及び無機微粒子が含まれる。有機微粒子を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンやスチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂など)、架橋熱可塑性樹脂[例えば、架橋オレフィン系樹脂(例えば、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレンなど)、架橋スチレン系樹脂(例えば、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、架橋ポリビニルトルエン、架橋スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)、架橋アクリル系樹脂(例えば、架橋ポリメタクリル酸メチルなど)など]、熱硬化性樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、アミノベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなど)などが例示できる。これらの有機微粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
無機微粒子を構成する無機化合物としては、例えば、金属単体、金属酸化物、金属硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、アルミノ珪酸マグネシウムなど)、金属リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等)、金属炭酸塩(炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、ケイ素化合物(ホワイトカーボン、ガラスなど)、天然鉱物(ゼオライト、ケイソウ土、焼成珪成土、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、クレーなど)などが挙げられる。
これらの粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの粒子のうち、透明性やポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体との親和性など点から、(架橋)スチレン系樹脂粒子、(架橋)アクリル系樹脂粒子、ポリカーボネート粒子などが好ましい。
粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形などが挙げられるが、表面に均一な凹凸構造を形成する点から、略球状などの等方形状が好ましい。
粒子の屈折率は、ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体の種類に応じて選択できるが、例えば、1.40〜1.60、好ましくは1.42〜1.59、さらに好ましくは1.45〜1.58程度であってもよい。
粒子の平均粒径は、例えば、0.1〜10μm、好ましくは1〜8μm、さらに好ましくは2〜6μm(特に3〜5μm)程度である。
粒子の割合は、ポリマー成分又は硬化性樹脂前駆体中100重量部に対して、例えば、1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜30重量部(特に10〜20重量部)程度である。
粒子を配合した防眩層は、溶融混練や溶媒を用いて混合する方法などの慣用の方法で製造でき、例えば、特開平6−18706号公報に記載の製造方法で製造してもよい。
本発明では、前記防眩層のうち、均一で滑らかな凹凸形状を形成でき、防眩性に優れるとともに、ロール状に巻き取ってもバリア層の劣化を抑制できる点から、相分離を利用した防眩層が特に好ましい。
防眩層には、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などが含まれていてもよい。
防眩層の厚み(凹凸形状における凸部の頂点との間の厚み)は、例えば、0.3〜20μm程度、好ましくは1〜18μm(例えば、3〜16μm)程度であってもよく、通常、5〜15μm(特に7〜13μm)程度である。なお、防眩層以外の機能層の厚みも同程度の厚みであってもよい。
(積層フィルムの特性)
本発明の積層フィルムは、ガスバリア性(特に、水蒸気バリア性)に優れる。例えば、温度40℃、湿度90%RH雰囲気下での水蒸気透過度は、1.5g/m・day以下、好ましくは1.0g/m・day以下、さらに好ましくは0.5g/m・day以下(特に0.01〜0.3g/m・day)程度であってもよい。なお、水蒸気透過度は、慣用の測定装置[例えば、「PERMATRAN」「AQUATRAN」(mocon社製)など]により測定できる。
本発明の積層フィルムは、透明性にも優れており、全光線透過率は、JIS K7105に準拠して、80%以上(例えば80〜99.9%程度)、好ましくは82%以上(例えば82〜99%程度)、さらに好ましくは85%以上(例えば85〜98%程度)であってもよい。
さらに、防眩層を形成した本発明の電子デバイス用積層フィルムは、表面に凹凸構造が形成されており、防眩性を発現するが、特に、表面に前記相分離構造に対応した微細な凹凸構造が多量に形成された防眩層の場合、透過像の鮮明性も高いため、電子デバイスの表示部に対して、ギラツキやチラツキが抑制された鮮明な画像を表示できる。
さらに、前記のように、相分離を利用した防眩層は、相分離構造において、ドメインの平均相間距離は実質的に規則性又は周期性を有している。そのため、積層フィルムに入射して透過する光は、相間平均距離(又は表面凹凸構造の周期性)に対応したブラッグ反射により、直進透過光とは離れた特定角度に散乱光極大を示す。すなわち、相分離を利用した防眩層を備えた積層フィルムは、入射光を等方的に透過して散乱又は拡散するものの、散乱光(透過散乱光)は、散乱中心からシフトした散乱角[例えば、0.1〜10°、好ましくは0.2〜8°、さらに好ましくは0.3〜5°(特に、0.5〜3°)程度]で光強度の極大値を示す。従って、直進透過光のプロファイルに対して表面凹凸による散乱光が悪影響を及ぼすことがなく、画像に対してギラツキも解消できる。
透過光散乱強度の極大値の判定としては、散乱光強度の角度分布プロファイルにおいて、ピーク状に分離した場合に加えて、ショルダー状ピークや平坦状ピークである場合も極大値を有するとみなして、その角度をピーク角度とした。
防眩層を有する積層フィルムのヘイズは、0.1〜50%程度の範囲から選択でき、例えば、1〜40%、好ましくは2〜35%、さらに好ましくは3〜30%(特に5〜25%)程度であってもよい。
防眩層を有する積層フィルムの写像(透過像)鮮明度は、0.5mm幅の光学櫛を使用した場合、例えば、10〜70%であり、好ましくは15〜60%、さらに好ましくは20〜50%(特に25〜45%)程度である。0.25mm幅の光学櫛を使用した場合は、例えば、10〜70%であり、好ましくは20〜60%、さらに好ましくは25〜50%程度である。
透過像鮮明度とは、膜を透過した光のボケや歪みを定量化する尺度である。透過像鮮明度は、膜からの透過光を移動する光学櫛を通して測定し、光学櫛の明暗部の光量により値を算出する。すなわち、膜が透過光をぼやかす場合、光学櫛上に結像されるスリットの像は太くなるため、透過部での光量は100%以下となり、一方、不透過部では光が漏れるため0%以上となる。透過像鮮明度の値Cは光学櫛の透明部の透過光最大値Mと不透明部の透過光最小値mから次式により定義される。
C(%)=[(M−m)/(M+m)]×100
すなわち、Cの値が100%に近づく程、積層フィルムによる像のボケが小さい[参考文献;須賀、三田村,塗装技術,1985年7月号]。
防眩層を有する積層フィルムは、表面の凹凸構造について、前述の規則に加えて、均一で微小な凹凸構造が形成されている。JIS B 0601に準拠した測定方法において、算術平均粗さRaは、例えば、0.005〜0.5μm、好ましくは0.01〜0.4μm、さらに好ましくは0.03〜0.3μm(特に0.05〜0.25μm)程度である。凸部の頂部間平均間隔Smは、例えば、10〜500μm、好ましくは20〜300μm、さらに好ましくは30〜200μm程度である。
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムは、慣用の方法を利用して製造でき、積層構造に応じて積層順序も特に限定されず、機能層を形成する場合、機能層を形成した後にバリア層を形成してもよく、またバリア層などを形成した後に防眩層を形成してもよいが、得られた積層フィルムを連続的にロール状に巻き取り易い点から、基材フィルムの一方の面に機能層を形成した後、他方の面にバリア層、エッチング保護層、透明導電層を順次形成する方法であってもよい。
(相分離を利用した防眩層の形成方法)
機能層として、相分離を利用した防眩層を形成する場合、防眩層は、ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む液相(又は液状組成物)から、前記溶媒の蒸発に伴うスピノーダル分解により、相分離構造を形成する相分離工程と、前記硬化性樹脂前駆体を硬化させ、防眩層を形成する硬化工程とを経て製造できる。
前記相分離工程は、通常、前記ポリマーと硬化性樹脂前駆体と溶媒とを含む混合液(特に均一溶液などの液状組成物)を前記支持体に塗布又は流延する工程と、塗布層又は流延層から溶媒を蒸発させて規則的又は周期的な平均相間距離を有する相分離構造を形成する工程とで構成されている。好ましい態様では、前記混合液として、前記熱可塑性樹脂と、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、前記熱可塑性樹脂及び光硬化性化合物を可溶な溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することにより防眩層が形成される。また、他の好ましい態様では、前記混合液として、前記互いに非相溶な複数のポリマーと、光硬化性化合物と、光重合開始剤と、溶媒とを含む組成物が使用でき、スピノーダル分解により形成された相分離構造の光硬化成分を光照射により硬化することにより防眩層が形成される。
湿式スピノーダル分解において、溶媒は、前記ポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択でき、少なくとも固形分(複数のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)など)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。
これらの溶媒のうち、常圧で沸点100℃以上の溶媒を用いるのが好ましい。さらに、表面に微細で規則的な凹凸構造を形成する点から、溶媒が少なくとも2種類の沸点の異なる溶媒で構成されているのが好ましい。また、高沸点の溶媒の沸点は100℃以上であり、通常、100〜200℃程度であり、好ましくは105〜150℃、さらに好ましくは110〜130℃程度である。特に、沸点100℃以上の溶媒を少なくとも1種と、沸点100℃未満の溶媒を少なくとも1種とを組み合わせて用いるのが好ましい。このような混合溶媒を用いると、低沸点の溶媒が、蒸発に伴う上層と下層との温度差を発生させ、高沸点の溶媒が塗膜中に残留し、流動性を維持する。
常圧で沸点100℃以上の溶媒としては、例えば、アルコール類(ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどのC4−8アルキルアルコールなど)、アルコキシアルコール類(メトキシプロパノール、ブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコールなど)、アルキレングリコール類(エチレングリコールやプロピレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなど)、ケトン類(シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ブタノールなどのC4−8アルキルアルコール、メトキシプロパノールやブトキシエタノールなどのC1−6アルコキシC2−6アルキルアルコール、エチレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなどが好ましい。
沸点の異なる溶媒の比率としては、特に限定されないが、沸点100℃以上の溶媒と、沸点100℃未満の溶媒を併用した場合(それぞれ、2種以上併用した場合は合計の重量比として)、例えば、前者/後者=10/90〜70/30、好ましくは10/90〜50/50、さらに好ましくは15/85〜40/60(特に20/80〜40/60程度)である。
また、混合液又は塗布液を基材フィルムに塗布する場合、基材フィルムの種類に応じて、基材フィルムを溶解や侵食、又は膨潤させない溶媒を選択してもよい。例えば、基材フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを用いる場合、混合液又は塗布液の溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、イソプロパノール、トルエンなどを用いると、フィルムの性質を損なうことなく、積層フィルムを形成できる。
混合液中の溶質(ポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、相分離が生じる範囲及び流延性やコーティング性などを損なわない範囲で選択でき、例えば、1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは15〜40重量%(特に15〜35重量%)程度である。
塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
溶液の塗布厚みは、例えば、10〜200μm、好ましくは15〜100μm、さらに好ましくは20〜50μm程度である。
前記混合液を流延又は塗布した後、溶媒の沸点よりも低い温度(例えば、溶媒の沸点よりも1〜120℃、好ましくは5〜80℃、さらに好ましくは10〜60℃、特に10〜50℃程度低い温度)で溶媒を蒸発させることにより、スピノーダル分解による相分離を誘起することができる。溶媒の蒸発は、通常、乾燥、例えば、溶媒の沸点に応じて、例えば、30〜200℃(例えば、30〜100℃)、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは50〜80℃程度の温度で乾燥させることによリ行うことができる。
表面に微細な凹凸構造を形成するためには、基材フィルム上に塗布して流延又は塗布させた後、直ちにオーブンなどのなどの乾燥機に投入して乾燥させるのではなく、一定時間(例えば、1秒〜1分間、好ましくは3〜30秒間、さらに好ましくは5〜20秒間程度)、常温又は室温(例えば、0〜40℃、好ましくは5〜30℃程度)で放置した後に、乾燥機に投入してもよい。また、乾燥風量は、特に限定されないが、風量が強すぎると、凹凸構造が形成される前に乾燥して固化するため、乾燥風量は50m/分以下(例えば、1〜50m/分)、好ましくは1〜30m/分、さらに好ましくは1〜20m/分程度であってもよい。
このような溶媒の蒸発を伴うスピノーダル分解により、相分離構造のドメイン間の平均距離に規則性又は周期性を付与できる。
スピノーダル分解により形成された相分離構造は、硬化工程において、前駆体を硬化させることにより直ちに固定化できる。前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱、光照射など、あるいはこれらの方法の組合せにより行うことができる。加熱温度は、前記相分離構造を有する限り、適当な範囲、例えば、50〜150℃程度から選択でき、前記相分離工程と同様の温度範囲から選択してもよい。
光照射は、光硬化成分などの種類に応じて選択でき、通常、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線などの光エネルギー線、電子線などが利用できる。汎用的な露光源は、通常、紫外線照射装置である。紫外線照射装置としては、例えば、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm、好ましくは70〜7000mJ/cm、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm程度であってもよい。なお、光照射は、必要であれば、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
(バリア層の形成方法)
バリア層は、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な方法であれば、特に限定されず、慣用の成膜方法を利用して形成できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、スパッタリング法、プラズマCVD法(特にスパッタリング法)が好ましい。
さらに、エッチング保護層、透明導電層もバリア層と同様の方法で形成できる。なお、エッチング保護層をビニル系重合性組成物の硬化物で形成する場合、フラッシュ蒸着法やコーティング法などで形成してもよい。
コーティング法の場合、重合性組成物の塗布方法は特に限定されず、前述の防眩層の塗布方法と同様の方法を利用できる。塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、50〜150℃、好ましくは60〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃程度の温度で行ってもよい。
重合性組成物は、重合開始剤の種類に応じて加熱して硬化させてもよいが、通常、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線として、熱及び/又は光エネルギー線を利用でき、特に光エネルギー線を利用するのが有用である。光エネルギー線の照射方法は、前述の防眩層の照射方法と同様の方法を利用できる。
なお、機能層として、粒子を配合した防眩層、ハードコート層、低屈折率層などを形成する場合、ビニル系重合性組成物の硬化物で構成されたエッチング保護層と同様のコーティング法などで形成できる。
(透明導電層のエッチング処理)
エッチング保護層の上に形成された透明導電層は、通常、サイズの調整やパターンの形成などのために、慣用のエッチング処理を行い、透明導電層の一部を除去する。エッチング処理は、酸又はアルカリを用いて行われ、通常、酸性又はアルカリ性溶液に積層フィルムを浸漬することにより行われる。酸性溶液に含まれる酸としては、例えば、酢酸などの有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸などが挙げられる。アルカリ性溶液に含まれるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。透明導電層がITO膜である場合、塩酸溶液でエッチングする場合が多い。エッチング処理液中における酸又はアルカリの濃度は、例えば、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%程度である。浸漬時間は、例えば、10秒〜30分、好ましくは20秒から10分、さらに好ましくは30秒〜5分(特に40秒〜3分)程度である。エッチング処理の温度は、例えば、0〜80℃、好ましくは10〜60℃、さらに好ましくは15〜40℃程度である。本発明では、このような条件でエッチング処理してもバリア層が劣化せず、積層フィルムのエッチング後の水蒸気透過度は、エッチングの前の水蒸気透過度に対して、例えば、80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは90%以上(例えば、90〜100%以上)、さらに好ましくは99%以上(例えば、99〜100%)である。
なお、水蒸気透過度の測定方法としては、慣用のカルシウム腐食法を用いて測定できる。カルシウム腐食法としては、特開2006−119069号公報、特開2006−250816号公報、特許第4407466号公報などに記載の測定方法を利用できる。
(ロール巻き取り)
本発明では、表面凹凸構造を有する防眩層を形成した場合に、積層フィルムの製造工程においてロール状に巻き取る工程を含んでいても、バリア層の劣化が抑制される。従って、本発明では、機能層をコーティングで形成したフィルムをそのままロール・ツー・ロール方式で連続的に巻き取って製造できるため、生産性が高い。例えば、ロール・ツー・ロール方式で生産する場合、グラビアコーティング法により、防眩層を形成したフィルムのアンカー層に、スパッタ法などでバリア層、エッチング保護層、透明導電層を順次形成して生産されるが、本発明の積層フィルムは、例えば、引張強度5〜20kgf(特に7〜15kgf)程度で巻き締められても、バリア層の損傷又は劣化が抑制される。具体的には、巻き取りの前後で水蒸気透過度の低下が少なく、積層フィルムの巻き取り後の水蒸気透過度は、巻き取りの前の水蒸気透過度に対して、例えば、80%以上(例えば、80〜100%)、好ましくは90%以上(例えば、90〜100%以上)、さらに好ましくは99%以上(例えば、99〜100%)である。さらに、巻き締められたロールを高温多湿の条件下で長時間保管してもバリア層の劣化を抑制できる。
[電子デバイス]
本発明の電子デバイスは、前記積層フィルムをガスバリア性部材として含んでいる。このような電子デバイスは、例えば、液晶素子、薄膜太陽電池素子、電子ペーパー、有機ELなどであってもよい。これらのうち、水蒸気バリア性が極めて高く、光学特性にも優れる点から、電子ペーパー、有機ELに特に好適である。
(電子ペーパー)
本発明の電子ペーパーは、前記積層フィルムを、インク層(表示層)に対して表示面側に備えている。図2は、本発明の電子ペーパーの一例を示す概略模式断面図である。この例では、薄膜トランジスタ(TFT)基板11の上に、マイクロカプセルなどで構成されたインク(表示)層12が積層され、このインク層12の上に積層フィルム20が配置されている。さらに、この積層フィルム20は、インク層12と接触させて配置された透明電極21、エッチング保護層22、バリア層23、基材フィルム24及び防眩層25をこの順序で順次積層して形成されている。
前記電子ペーパーにおいて、マイクロカプセルで構成されたインク層は、マイクロカプセル中に油成分とともに封入された顔料粒子を電界によって移動させる電気泳動方式を採用しているが、前記インク層は、電気泳動方式に限定されず、例えば、電子粉流体方式、液晶方式、エレクトロウェッティング方式、化学変化方式などの方式であってもよい。本発明の積層フィルムは、ガスバリア性に優れるため、前記方式のうち、水分により表示機能が劣化し易い方式、例えば、電気泳動法式、電子粉流体方式のインク層を有する電子ペーパーに特に有効である。電気泳動方式のインク層としては、例えば、Eink社の電子インクなどが市販され、電子粉流体方式のインク層としては、ジリコンメディア社のジリコンビーズなどが市販されている。
(有機EL)
有機ELは、発光層が有機化合物からなる発光ダイオード(LED)を構成しており、有機化合物中に注入された電子と正孔の再結合によって生じた励起子(エキシトン)によって発光する。発光層に使用される発光材料は、ポリマー状の分子を用いた高分子材料であってもよく、低分子材料であってもよい。また、有機ELは、各画素ごとに発光素子が構成されており、この発光素子は、通常、金属などの陰電極/電子注入層/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層/ITOなどの陽電極/ガラス板や透明のプラスチック板などの基板で形成されている。さらに、有機ELは、ヘテロ構造を有しており、電子と正孔とをそれぞれ別の層に閉じ込めている。各層の材料としては、通常、ジアミン、アントラセン、金属錯体などの有機物などが使用される。電極間の各層の厚みは数nmから数百nmであり、全体で1μm以下程度の厚みを有していればよい。駆動方式としては、TFT(薄膜トランジスタ)などのアクティブ素子を各画素に配置して駆動するアクティブ・マトリクス駆動方式か、直交させたストライプ電極にタイミングを合わせて電流を流すことでその交点の各画素を順次駆動するパッシブ・マトリクス駆動方式のいずれかの駆動方式を用いることができる。電極としては、通常、陽極としてITOなどが用いられ、陰極としてAl、Mg、AgやLI合金などが用いられる。デバイス構造はヘテロ構造であればよく、ダブルへテロ構造であってもよい。正孔輸送材料としてはオキサジアゾール・トリアゾールなどでよく。正孔阻止層としてはフェナントリン誘導体であってもよい。ドーパント材料としてはDCM2[4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン]、クマリン6、ペリレンなどであってもよい。
有機ELの製造方法としては、素子を構成する材料に応じて、慣用の方法を利用でき、例えば、低分子化合物を材料とする発光素子の薄膜を製造する場合、真空のチャンバー内で、原料化合物を加熱し蒸発させることで製造できる。すなわち、真空チャンバー内に置かれた基板の上に、低分子化合物を数nm〜数百nm程度の薄膜状に蒸着してもよく、赤、緑、青と塗り分ける際にはスリットを用いてもよい。高分子化合物を材料とする発光素子では、インクジェット技術などの印刷技術を利用し、インク状にした発光材料を基板上で薄膜にして発光素子を作製成してもよく、画素の区分けはシャドーマスクを用いてもよい。本発明の有機ELは、例えば、このようにして基板上に形成された発光素子に対して、本発明の積層フィルムを貼り合せることより作製してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られた積層フィルムを以下の項目で評価した。
[ヘイズ及び全光線透過率]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、商品名「NDH−5000W」)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。なお、ヘイズの測定は、凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置して測定した。
[表面構造]
JIS B0601に準拠して、接触式表面粗さ計(東京精密(株)製、サーフコム570A)を用いて、走査範囲3mm、走査回数2回の条件で、算術平均粗さRaを測定した。
[写像鮮明度]
写像鮮明度を、写像測定器(スガ試験機(株)製、商品名「ICM−1T」)を用いて、光学櫛(櫛歯の幅=0.5mm)で、JIS K7105に基づいて測定した。
[防眩性]
防眩性については、外光の照らす光環境下で、得られた積層フィルムを、それぞれ、E−ink方式の電子ペーパーパネル(アマゾン・ドット・コム・インク社販売「Kindle DX」)の表面に実装し、以下の基準で目視評価した。
○:映り込みがない
△:わずかな映り込みがある
×:映り込みが激しい。
[水蒸気透過度(WVTR)]
水蒸気透過度は、MOCON水蒸気透過率測定装置(mocon社製「PERMATRAN−W3/33」)を用いて測定した。なお、測定条件は40℃、相対湿度90%RHである。
実施例1
側鎖に重合性不飽和基を有するアクリル樹脂[(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のカルボキシル基の一部に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチルアクリレートを付加させた化合物;ダイセル化学工業(株)製、サイクロマーP(ACA)320M、固形分44.2重量%、溶剤:1−メトキシ−2−プロパノール(MMPG)(沸点119℃)]6.11重量部、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル化度=2.5%、プロピオニル化度=46%、ポリスチレン換算数平均分子量75,000;イーストマン社製、CAP−482−20)0.8重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセル・サイテック(株)製、DPHA)3.9重量部、多官能アクリル系UV硬化モノマー(ダイセル・サイテック(株)製、PETIA)2.6重量部、光開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、イルガキュア184)0.5重量部をメチルエチルケトン(MEK)24.3重量部、1−ブタノール(BuOH)4.8重量部、1−メトキシ−2−プロパノール5.1重量部に溶解した。この溶液を、グラビアコーティング法により、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4300」、厚み188μm)ロールから巻き出したPETフィルム上にウエット(WET)膜厚が30μmになるように塗布し、70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥して、表面凹凸構造を有する厚さ約10μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、メタルハライドランプにより300mJの紫外線を照射させて、UV硬化処理した後にロールに巻き取って、ハードコート性及び表面凹凸構造を有する防眩性フィルムロールを作製した。
得られた防眩性フィルムの防眩層が形成された側と反対の面に、ロールから巻き出しながら、スパッタリング法により酸化アルミニウム[組成AlxOy]薄膜(厚み50nmのバリア層)、珪素含有ダイアモンドライクカーボン[組成SixCy]薄膜(厚み15nmのエッチング保護層)、ITO薄膜(厚み30nmの透明導電層)を連続的に順次形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取って、電子デバイス用積層フィルムロールを作成した。
得られた積層フィルムの特性を評価した結果を表1に示す。また、得られた積層フィルムロールについて、ロール状に巻き取る前後の水蒸気透過度を測定した結果を表2に示す。さらに、得られた積層フィルムを4重量%水溶液の塩酸水溶液に1分間浸漬した後、引き上げて水洗し、酸を洗い流した。酸に浸漬した前後における積層フィルムの水蒸気透過度を測定した結果を表3に示す。
実施例2
ウレタンアクリレート系モノマー(新中村化学工業(株)製、商品名「U6HA」)50重量部に、平均粒子径4μmのポリスチレンビーズ8重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」)2重量部を混合し、トルエンにて固形分35重量%となるように希釈し、粒子分散塗工溶液を作成した。この分散液を、グラビアコーティング法により、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4300」、厚み188μm)ロールから巻き出したPETフィルム上にウエット膜厚20μmになるように塗布し、70℃の乾燥炉を通過させて乾燥させて、表面凹凸構造を有する厚さ約7μmのコート層を形成した。そして、コート層に、メタルハライドランプにより300mJの紫外線を照射させて、UV硬化処理した後に、ロールに巻き取って、防眩層を有するフィルムロールを作製した。得られた防眩性フィルムに対して、実施例1と同様に、バリア層、エッチング保護層及び透明導電層を形成し、電子デバイス用積層フィルムを製造した。得られた電子デバイス用積層フィルムの特性、ロール状に巻き取る前後の水蒸気透過度及び酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表1〜3に示す。
Figure 2012000811
表1の結果から、実施例1の電子デバイス用積層フィルムは、実施例2の電子デバイス用積層フィルムに対して、優れた光学特性を示す。
実施例3
エッチング保護層として、珪素含有ダイアモンドライクカーボン薄膜の代わりに、酸化チタン[組成TiO]薄膜(厚み15nmのエッチング保護層)をスパッタリングで形成する以外は、実施例1と同様にして電子デバイス用積層フィルムを製造した。得られた電子デバイス用積層フィルムの酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表3に示す。
実施例4
実施例1と同様にして得られた防眩性フィルムの防眩層が形成された側と反対の面(PETフィルム面)に、ロールから巻き出しながら、プラズマCVD法により珪素酸化窒化物[組成SixOyNz](厚み100mのバリア層)を蒸着させた後、ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取り、さらにロールから巻き出しながら、スパッタリング法により、珪素含有ダイアモンドライクカーボン[組成SixCy]薄膜(厚み15nmのエッチング保護層)、ITO薄膜(厚み30nmの透明導電層)を連続的に順次形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取って、電子デバイス用積層フィルムロールを製造した。得られた電子デバイス用積層フィルムの酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表3に示す。
実施例5
実施例1と同様にして得られた防眩性フィルムの防眩層が形成された側と反対の面(PETフィルム面)に、ロールから巻き出しながら、真空蒸着により珪素窒化物[組成SixNy](厚み60nmのバリア層)を蒸着させた後、ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取り、さらにロールから巻き出しながら、プラズマCVD法により酸化チタン[組成TiO]薄膜薄膜(厚み15nmのエッチング保護層)を蒸着させた後、ロールに10kgf程度の引張強度で再度巻き取り、さらにロールから巻き出しながら、スパッタリング法によりITO薄膜(厚み30nmの透明導電層)を形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取って、電子デバイス用積層フィルムロールを製造した。得られた電子デバイス用積層フィルムの酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表3に示す。
実施例6
ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、「EBECRYL1290」)と、重合開始剤(チバジャパン(株)製、「イルガキュア184」)と、メチルエチルケトン(MEK)とを、40/1/59の割合(重量比)で混合したコーティング液を、グラビアコーティング法により、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4300」、厚み188μm)ロールから巻き出したPETフィルム上にウエット(WET)膜厚が10μmになるように塗布し、70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥して、厚み4μmのコート層を形成させた。そして、コート層に、メタルハライドランプにより300mJの紫外線を照射させて、UV硬化処理した後にロールに巻き取って、ハードコート性を有するフィルムロールを作製した。得られたフィルムロールに対して、実施例1と同様に、バリア層、エッチング保護層及び透明導電層を形成し、電子デバイス用積層フィルムを製造した。得られた電子デバイス用積層フィルムの酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表3に示す。
実施例7
実施例6と同様にして得られたハードコート層を有するフィルムロールに対して、実施例6と同様に、バリア層を形成した後、ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取り、さらにロールから巻き出しながら、ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製、「EBECRYL1290」)と、重合開始剤(チバジャパン(株)製、「イルガキュア184」)と、メチルエチルケトン(MEK)とを、4/0.1/96(重量比)の割合で混合したコーティング液を、グラビアコーティング法により、フィルムロールから巻き出したバリア層上にウエット(WET)膜厚が5μmになるように塗布し、70℃の乾燥炉を通過させることにより乾燥して、厚さ約0.2μm(200nm)のコート層を形成した。そして、コート層に、メタルハライドランプにより300mJの紫外線を照射させて、エッチング保護層を有するフィルムロールを作製した。得られたフィルムロールに対して、実施例6と同様に、透明導電層を形成し、電子デバイス用積層フィルムを製造した。得られた電子デバイス用積層フィルムの酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表3に示す。
比較例1
ウレタンアクリレート系モノマー(新中村化学工業(株)製、商品名「U6HA」)50重量部に、平均粒子径4μmのポリスチレンビーズ8重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」)2重量部を混合し、トルエンにて固形分35重量%となるように希釈し、粒子分散塗工溶液を作成した。この分散液を、グラビアコーティング法により、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4300」、厚み188μm)ロールから巻き出したPETフィルム上にウエット膜厚20μmになるように塗布し、70℃の乾燥炉を通過させて乾燥させて、表面凹凸構造を有する厚さ約7μmのコート層を形成した。そして、コート層に、メタルハライドランプにより300mJの紫外線を照射させて、UV硬化処理した後に、ロールに巻き取って、防眩層を有するフィルムロールを作製した。
得られた防眩性フィルムの防眩層が形成された側と反対の面に、ロールから巻き出しながら、スパッタリング法により酸化アルミニウム[組成AlxOy]薄膜(厚み40nmのバリア層)、ITO薄膜(厚み30nmの透明導電層)を連続的に順次形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取って、電子デバイス用積層フィルムロールを作成した。得られた電子デバイス用積層フィルムのロール状に巻き取る前後の水蒸気透過度及び酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表2及び表3に示す。
比較例2
実施例1と同様にして得られた防眩性フィルムの防眩層が形成された側と反対の面(PETフィルム面)に、ロールから巻き出しながら、スパッタリング法により酸化アルミニウム[組成AlxOy]薄膜(厚み40nmのバリア層)、ITO薄膜(厚み30nmの透明導電層)を連続的に順次形成した後に、再度ロールに10kgf程度の引張強度で巻き取って、電子デバイス用積層フィルムロールを作成した。なお、バリア層及び透明導電層のスパッタリングの条件は実施例1と同様である。得られた電子デバイス用積層フィルムの酸浸漬処理前後の水蒸気透過度を評価した結果を表3に示す。
Figure 2012000811
表2の結果から、実施例はロール状に巻き取り前後で水蒸気透過度に変化がないのに対して、比較例ではロール状に巻き取ると水蒸気透過度が低下する。
Figure 2012000811
表3の結果から、実施例は酸による浸漬処理前後で水蒸気透過度に変化がないのに対して、比較例では酸で浸漬処理すると水蒸気透過度が低下する。
本発明の積層フィルムは、水蒸気バリア性に優れ、透明性も高いため、ガスバリア性部材として電子デバイス(例えば、液晶素子、薄膜太陽電池素子、有機EL素子、電子ペーパー、タッチパネルなど)に利用できる。特に、光の透過性を妨げることなく、ギラツキやチラツキを抑制して、画像の視認性を向上させるとともに、外部からの水蒸気を遮断できるため、電子ペーパー(特に、電気泳動法式などの電子インクを利用した電子ペーパー)のインク層に対して表示面側に配置するための透明電極基板、有機ELの視認側フィルムとして配置するための透明電極基板として有用である。
1…白色平行光源
2…NDフィルター
3…試料
4…検出器
11…TFT基板
12…インク層
20…積層フィルム
21…透明電極
22…エッチング保護層
23…バリア層
24…基材フィルム
25…防眩層

Claims (11)

  1. 透明樹脂で構成された基材フィルムの一方の面に、金属又は金属化合物を含むバリア層、酸又はアルカリに対して耐性を有するエッチング保護層、導電性無機化合物で構成された透明導電層がこの順序で順次形成された積層フィルム。
  2. エッチング保護層が、耐エッチング性ビニル系重合体、炭化珪素、フッ素樹脂、炭化フッ素、又は酸化チタンで構成されている請求項1記載の積層フィルム。
  3. バリア層が、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学的気相法から選択された一種の成膜方法により形成され、かつバリア層の厚みが20〜300nmである請求項1又は2記載の積層フィルム。
  4. 導電性無機化合物が金属酸化物である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 基材フィルムの他方の面に機能層が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 機能層が防眩層である請求項5記載の積層フィルム。
  7. 防眩層が、1又は複数のポリマーと、1又は複数の硬化した硬化性樹脂前駆体とを含み、かつ表面に凹凸形状を有する相分離構造で構成されている請求項6記載の積層フィルム。
  8. 電子デバイスの視認側に配置するためのフィルムである請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
  9. 基材フィルムの少なくとも一方の面にアンカー層をコーティングで形成した後、バリア層、エッチング保護層、透明導電層を物理的又は化学的気相法でこの順序で順次形成する請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
  10. フィルムをロール状に巻き取る工程を含む請求項9記載の製造方法。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルムを備えた電子デバイス。
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