JP2011507521A - ヒト非抗体ペプチド又はタンパク質ファージライブラリ - Google Patents
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Abstract
本発明は、M13ファージのpIXに由来する操作されたハイブリッドファージベクターを用いて非抗体ペプチド若しくはタンパク質、タンパク質又はペプチドを産生するために、pIXファージディスプレイライブラリを作成及び使用するための組成物及びその方法に関する。
Description
本発明は、M13ファージのpIXに由来する操作されたハイブリッドファージベクターを用いて非抗体ペプチド若しくはタンパク質、タンパク質又はペプチドを産生するために、pIXファージディスプレイライブラリを作成及び使用するための組成物及びその方法に関する。
ファージディスプレイは、ポリペプチドをアフィニティに基づいて選択するために確立された手段である。代表的なファージディスプレイ選択では、ポリペプチドのライブラリは、繊維状ファージM13のコートタンパク質のうちの1つの末端と遺伝学的に融合している。ファージ粒子は、前記ライブラリの各ポリペプチド員とそれをコードする遺伝子との間に物理的な連結をもたらす。その後、所望の標的分子と結合するライブラリのそれら構成員のために、ファージライブラリをアフィニティ選択又はパニングすることができる。ライブラリを標的と混合し、未結合のファージ粒子を洗い出し、残りのファージを溶出させ、大腸菌細胞内で培養することによって増殖させる。
異物ポリペプチドのディスプレイはM13の各コートタンパク質によって達成されてきたが、このうち最も一般的な融合パートナーはpIII及びpVIIIである。pIIIは、大腸菌へのファージ感染に関与する、42kDのマイナーコートタンパク質である。各ファージ粒子は、その表面に、ファージの一端に集結したpIIIタンパク質の複製を5つまで含有している。PVIIIは、ファージの主要なコートタンパク質であり、pVIII(分子量5kD)の何千もの複製は、一本鎖ウィルス性ゲノムの周囲に規則正しく配列されてファージキャプシドを構成する。M13は、pIIIに加えて、12kDのタンパク質であるpVI、並びに短いタンパク質(それぞれ、アミノ酸33個及び32個)であるpVII及びpIXの、3つの別のマイナーコートタンパク質も有しており、これらはアセンブリの開始と安定性の維持とに関与している。pVIタンパク質の5つの複製は、pIIIと同じ側のファージ末端に位置し、一方、それとは反対側のファージ末端には、pVII及びpIXの複製がそれぞれ5つ存在している。
pIII及びpVIIIとの融合をディスプレイするファージライブラリは、多くの場合、産出力があることが分かっており、一方、ファージによってディスプレイされるポリペプチドは、特定の生物学的な制限を受けている。例えば、8以上のアミノ酸長の大部分のペプチドは、pVIIIへの融合ほど十分にディスプレイされない。更に、ファージタンパク質自体と相互作用するか、ないしは別の方法でpIII又はpVIIIの発現、取り込み又は活性に影響を及ぼすポリペプチドは、それらをディスプレイするファージが十分に成長しないことから、ライブラリではディスプレイ不十分となる。最終的に、pIIIはかなり大きなタンパク質であるため、特定の標的部位(例えば、タンパク質表面上の深くて狭い裂け目)へのpIIIディスプレイされたポリペプチドの接近又は多重結合形態で最も効果的に機能するポリペプチドの的確なアセンブリが、立体的に妨害される可能性がある。したがって、他のコートタンパク質を利用するファージライブラリからの選択物であって、異なる構造や生物学的機能を有する故に、ディスプレイされるポリペプチドに様々な制限を与えると予想される可能性のあるものは、配列多様性の上限の調査を確保するのに役立つということになる。構想上の実験の証明では、pVII及びpIXを抗体断片及びペプチドの両方のディスプレイに利用できることが分かった。ポリペプチドとpVII及びpIXのN末端との融合がこれらコートタンパク質を非機能性にすることが以前の研究から示唆されいたため、これらの結果は特に注目すべきことであった。
ファージ上での異物ポリペプチドのディスプレイは、ファージ、ファージミド又はハイブリッドベクターを利用して行われる。ファージベクターを用いると、対象とする遺伝子は、天然のコートタンパク質遺伝子を含むフレーム内融合物としてファージゲノムに導入される。これらベクターは、十分機能的なファージとして別々に増殖し、異物ポリペプチドの多重コピーをディスプレイする。一方、ファージミドベクターは、細菌由来の複製に加えて、ファージ由来の複製及びパッケージシグナルを含有するプラスミドである。ファージミドは、コートタンパク質遺伝子の組換えコピーと融合された対象遺伝子を運搬し、ヘルパーファージによる助けに応じて、ファージコートに組み込まれたディスプレイポリペプチドと共に子孫ウィルスにパッケージされる。ヘルパーファージの要件は、ファージベクターよりもファージミドベクターに多大な労力をかけさせて、任意の特定試料中に存在するファージの数を定量化し難くすることである。更に、ファージ粒子は、野生型コートタンパク質と融合コートタンパク質の両方をアセンブリに活用する可能性があるため、得られるファージの何割かは、対象のポリペプチド配列をディスプレイせず、その結果、ディスプレイ効率の低下をもたらす。ハイブリッドベクターは、融合タンパク質をファージゲノムに運搬するがヘルパーファージを必要としないという点でファージベクターと類似しているだけでなく、それらは、ゲノムが融合タンパク質の野生型コピーをも運搬するという点でファージミド系とも類似している。pIXファージディスプレイについての過去の報告には、ファージミドベクターと関連のある融合が記載されているが、ハイブリッド又はファージベクターからpIX上にポリペプチドをディスプレイすることについては、これまでに報告されていない。ファージベクター由来pVII上でのポリペプチドのディスプレイについては、近年報告されている。
高アフィニティ及び活性、高産生力、良好な溶液特性並びに人間に投与したときに低免疫反応傾向のヒト治療用ペプチド及びタンパク質の決定的要素を同時に送達する、合成の非抗体ペプチド又はタンパク質ライブラリ及び方法を提供する必要がある。更には、合成ライブラリからの非抗体ペプチド又はタンパク質の単離効率を現行の方法よりも向上させて、非抗体ペプチド又はタンパク質の発見に関する資源コストを削減し、生物学的評価のための非抗体ペプチド又はタンパク質の送達を加速させる必要もある。本発明のライブラリ及び方法は、総合的設計とアセンブリ技術とファージpIXペプチド又はタンパク質ディスプレイとを合わせることによってこれら要求に応じるものである。
本発明は、操作されたpIXファージベクターであって、例えば、所望によりインライン成熟と共に突然変異誘発技術又は他の多様性形成法を利用して、M13ファージ由来pIXを用いてペプチド又はタンパク質ライブラリを作成するためにpVII及びpIXファージディスプレイで使用することで、ペプチド若しくはタンパク質又は非抗体ペプチド若しくはタンパク質断片の産生及び治療用の非抗体ペプチド又はタンパク質の選択に有効で迅速なプラットフォームを供給する、操作されたpIXファージベクターを提供する。本発明によれば、上流のシグナルペプチド及び誘導プロモーターと連結した第2の組換えpIXコード領域を含むように操作されたハイブリッドファージベクターが提供される。
本発明は、ペプチド及びタンパク質を、例えばこれらに限定されないが、スクリーニング、選択、操作、成熟などの用途、又は例えば有望な治療用若しくは診断用ペプチド又はタンパク質を供給する他の用途において、かかるペプチド又はタンパク質をペプチド又はタンパク質ライブラリとして発現する際に使用するためにpIX又はpVIIファージタンパク質との融合物としてディスプレイするための、ファージベクターを提供する。天然遺伝子IXの調節及びコード領域がpVII及びpVIIIの調節及びコード領域と重なり合うため、この遺伝子の末端との単純な融合は、ファージを不活性化するであろう(Hill and Petersen,J.of Virol.44:32〜46,1982)。現行のベクターは、融合を含むと同時に、天然のコートタンパク質の調節領域を保つ。ファージミドよりむしろこのベクターを使用することにより、ヘルパーファージを必要としなくなり、選択及び分析中にファージを培養するのに要する時間及び労力がかなり軽減される。更に、これらのディスプレーシステムの多価性質は、低アフィニティ結合剤の検出をより容易にする。
したがって、本発明は、ポリペプチドアレイの構築においてペプチド又はタンパク質をpIXファージディスプレイ方式で発現する際に使用するための、新規ベクター構成体を提供する。特に、本発明は、融合ポリペプチドをコードする第2の組換えpIXコード配列を含む、操作されたpIXファージベクターについて記載しており、融合ポリペプチドには、繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質のアミノ末端と融合した外因性ポリペプチドが含まれている。好ましくは、ファージ粒子は、ファージ粒子の表面に発現された融合タンパク質を含んでいる。
態様により、本発明は、選択された生物学的に活性なリガンドに結合するファージディスプレイ融合ペプチド又はタンパク質を発現するための、操作された核酸ファージベクターであって、(a)以下に操作可能に連結する、組換えファージリーダーコード核酸配列、(b)以下に操作可能に連結する、組換えタグ、プロモーター、又は選択コード核酸配列、(c)以下に操作可能に連結する、組換えpIX又はpVIIをコードする核酸配列、(d)以下に操作可能に連結する、組換え制限部位、(e)aに操作可能に連結する、ペプチドリンカーをコードする核酸配列、(f)生物学的に活性なリガンドに選択的に結合する第1外因性ペプチド又はタンパク質をコードする配列、(g)pVIIをコードする核酸配列、(h)天然pIXをコードする核酸配列、(i)pIIIをコードする核酸配列、及び(j)pVIをコードする核酸配列、を含む、操作された核酸ファージベクターを提供する。
かかる操作された核酸ファージベクターは、前記ファージリーダーコード配列がpelB配列であるものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、組換えタグ又は選択配列がFLAGタグ配列であるものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、組換えタグ又は選択配列が、配列番号3、4、5又は6から選択されるものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、前記FLAGタグ配列が配列番号2を含むものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、前記プロモーターが誘導プロモーターであるものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、前記誘導プロモーターがlacプロモーターであるものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、前記ペプチドリンカーが配列番号7及び8から選択されるものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、前記第1外因性ペプチド又はタンパク質が、推定の生物学的に活性なタンパク質又はペプチドであるものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、前記生物学的に活性なリガンドが少なくとも1つの生物学的なインビボ活性をもたらすものを含むことができる。かかる操作された核酸ファージベクターは、前記ベクターが、少なくとも1つのファージコートタンパク質と融合した第2外因性ペプチド又はタンパク質をコードするものを含むことができる。
本発明は、操作された核酸ファージベクターを含む細菌宿主細胞を更に含む。宿主細胞は、生物学的に活性な融合タンパク質を発現することができる。
本発明は、本発明による細菌宿主細胞によって発現された、生物学的に活性な融合タンパク質にも関連する。本発明は、前記融合タンパク質に由来する生物学的に活性な外因性ペプチド又はタンパク質にも関連する。
本発明は、本発明による複数の操作された核酸ファージベクターを含む、細菌宿主細胞のファージライブラリにも関する。ファージライブラリには、前記第1外因性ペプチド又はタンパク質の変異体を発現するものを含むことができる。
本発明は、所望の生物活性を有する外因性ペプチド又はタンパク質を得るためにファージペプチド又はタンパク質ライブラリをスクリーニングする方法であって、(a)ファージライブラリから外因性ペプチド又はタンパク質を発現する工程と、(b)前記所望の生物活性を有する外因性ペプチド又はタンパク質を発現する細菌細胞を選択する工程と、を含む、方法を更に提供する。本発明は、かかる方法から得た外因性ペプチド又はタンパク質をコードする核酸も提供する。
一実施形態では、ファージベクターは第2融合ポリペプチドを更にコードしており、第2融合ポリペプチドには、pIX又はpVIIタンパク質のアミノ末端と融合した第2外因性ポリペプチドが含まれており、また、第1融合ポリペプチド内の第1外因性ポリペプチドは、pIX又はpVIIタンパク質のアミノ末端と融合している。一実施形態では、第1及び第2融合ポリペプチドが結合することで、ヘテロ二量体タンパク質複合体、例えば、標的タンパク質、受容体、核酸結合タンパク質、又は酵素を形成することができる。
別の実施形態では、本発明は、融合タンパク質を発現するためのカセットを含む繊維状ファージの表面で融合タンパク質を発現するためのベクターについて説明している。カセットには、挿入断片DNAの定方向性連結に適したヌクレオチドの配列、すなわちポリリンカーを介して操作可能に連結された上流及び下流の翻訳可能なDNA配列が含まれており、上流の配列は、原核生物の分泌シグナルをコードし、下流の配列は、pVII又はpIX繊維状ファージタンパク質をコードする。翻訳可能なDNA配列は、翻訳可能なDNA配列を融合ポリペプチドの一部分として発現するために一連のDNA発現シグナルと操作可能に連結されている。好ましい変形形態では、ベクターは、所望により、繊維状ファージの表面に第2融合タンパク質を発現するための第2カセットを更に含んでおり、第2カセットは、第1融合タンパク質発現カセットがpIX又はpVIIタンパク質をコードし及び/あるいは第2融合タンパク質発現カセットがpIX又はpVIIタンパク質をコードするという条件で、第1カセットの構造を有する。ベクターをファージゲノムとして利用することで、ヘテロ二量体の2つの外因性ポリペプチドが第1及び第2ファージタンパク質pVII及び/又はpIXとの融合によってファージ粒子に固定されているヘテロ二量体タンパク質複合体をファージ粒子の表面に発現する。
別の実施形態では、本発明は、ライブラリ中の代表的な粒子がそれぞれ異なる融合タンパク質をディスプレイする、操作されたpIXファージベクターに基づく本発明によるファージ粒子のライブラリ、すなわちコンビナトリアルライブラリについても検討している。粒子がヘテロ二量体タンパク質複合体をディスプレイする場合、ライブラリには、Fv分子のライブラリの形態の非抗体ペプチド又はタンパク質のような、ヘテロ二量体のコンビナトリアルライブラリが含まれている。好ましいライブラリは、少なくとも103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013又はこの中の任意の範囲若しくは値の融合ペプチド又はタンパク質の組み合わせ多様性を有する。
関連する実施形態には、本発明の操作されたpIXファージベクターから発現した第1及び第2ポリペプチドを含む融合タンパク質であって、第1ポリペプチドが外因性タンパク質であり、第2ポリペプチドが繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質であり、外因性タンパク質が繊維状ファージタンパク質のアミノ末端と融合している、融合タンパク質が記載されている。
更に本発明は、本発明の操作されたpIXファージベクターから発現したタンパク質又はペプチドを、ファージのコンビナトリアルライブラリを作成するために発現する様々な方法についても検討しており、外因性ポリペプチドをコードする遺伝子レパートリーを本発明のベクターにクローニングすること、ライブラリ中の外因性ポリペプチドの構造を突然変異誘発によって、第1及び第2融合タンパク質ライブラリ集団の無作為な組み合わせによって、標的及びアフィニティの選択(「パニング」)によって変性してライブラリの多様性を変更すること等が挙げられる。
改善された又は新規の機能を有するタンパク質の設計は、様々な医療用途、工業用途、環境用途及び基本調査用途にとっては重要な目標である。操作されたpIXファージベクターを用いて非抗体ペプチド又はタンパク質のコンビナトリアルライブラリを作成した後に続く、効果的な次の工程は、人工的な非抗体ペプチド又はタンパク質構成体並びに二量体種が未変性であるか又は機能的であり得る他のタンパク質モチーフへの進化である。
本発明は、単量体又は二量体ペプチド種又はタンパク質種を発現する融合タンパク質をディスプレイするためにpVII及び/又はpIXが使用されるポリペプチドのコンビナトリアルアレイの構築において、操作したpIXファージベクターを用いたファージディスプレイ方式を提供することにより、これら課題に取り組むものである。
単量体又は二量体の相互作用に関与し得る様々なタンパク質をディスプレイする能力は、前記技術の範囲及び能力に特有のものである。これらには、非抗体ペプチド又はタンパク質だけでなく、幾つかの酵素、ホルモン及びホルモン受容体類、並びにDNA−結合タンパク質も含まれる。本明細書に記載のディスプレイ技術は、非抗体ペプチド又はタンパク質フレームワーク領域をコンビナトリアル技術で変更するために、及び非抗体ペプチド又はタンパク質の構造を再編成し小型化するために、又はレプレッサー等のDNA結合タンパク質を臨床上及び治療上重要な特定のDNA配列と比較して選択するためのヘテロ二量体のライブラリとしてディスプレイするために、利用することができる。
したがって、本発明の技術は、ペプチド又はタンパク質のライブラリや、構成員が単量体アレイ、ホモ二量体アレイ又はヘテロ二量体アレイからなるコンビナトリアルライブラリをディスプレイ及び選択するために提供する。
上記の概要及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも、単に例として説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の本発明を制限するものではないと理解されるべきである。
本発明は、操作されたpIXファージベクターであって、例えば、所望によりインライン成熟と共に突然変異誘発技術又は他の多様性形成法を利用して、M13ファージ由来pIXを用いてペプチド又はタンパク質ライブラリを作成するためにpVII及びpIXファージディスプレイで使用することで、ペプチド若しくはタンパク質又は非抗体ペプチド若しくはタンパク質断片の産生及び治療用の非抗体ペプチド又はタンパク質の選択に有効で迅速なプラットフォームを供給する、操作されたpIXファージベクターを提供する。本発明によれば、上流のシグナルペプチド及び誘導プロモーターと連結した第2の組換えpIXコード領域を含むように操作された、ハイブリッドファージベクターが提供される。
本発明は、ペプチド及びタンパク質を、例えばこれらに限定されないが、スクリーニング、選択、操作、成熟などの用途、又は例えば有望な治療用若しくは診断用ペプチド又はタンパク質を供給する他の用途において、かかるペプチド又はタンパク質をペプチド又はタンパク質ライブラリとして発現する際に使用するためにpIX又はpVIIファージタンパク質との融合物としてディスプレイするための、ハイブリッドベクターを提供する。天然遺伝子IXの調節及びコード領域がpVII及びpVIIIの調節及びコード領域と重なり合うため、この遺伝子の末端との単純な融合は、ファージを不活性化するであろう(Hill and Petersen,J.of Virol.44:32−46,1982)(8)。それどころか、M13mp19の誘導体は、操作することで、上流のシグナルペプチド及び誘導プロモーターと連結した第2の組換えpIXコード領域を含んでいた。ファージミドよりむしろこのベクターを使用することにより、ヘルパーファージを必要としなくなり、選択及び分析中にファージを培養するのに要する時間及び労力がかなり軽減される。更に、このベクターを用いて成長させたファージの数は、ファージミドから成長させたファージの数よりも容易に測定できる。
したがって、本発明は、ポリペプチドアレイの構築においてペプチド又はタンパク質をpIXファージディスプレイ方式で発現する際に使用するための、新規ベクター構成体を提供する。特に、本発明は、融合ポリペプチドをコードする第2の組換えpIXコード配列を含む、操作されたpIXファージベクターについて記載しており、融合ポリペプチドには、繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質のアミノ末端と融合した外因性ポリペプチドが含まれている。好ましくは、ファージ粒子は、ファージ粒子の表面に発現された融合タンパク質を含んでいる。
本明細書に記載のかかる操作されたpIXファージベクターを用いて作成されるヒトペプチド又はタンパク質の新たな(de novo)ライブラリは、M13遺伝子ファージのpIX遺伝子を介してそれをディスプレイすることによる現行の非抗体ペプチド又はタンパク質ライブラリ最新技術とは異なる。
繊維状ファージ
本発明は、本明細書に記載の操作されたpIXファージベクターを、少なくとも1つの組換え融合ペプチド又はタンパク質をコードするpIX又はpVIIファージと共に用いることを意図している。融合タンパク質は、繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質のアミノ末端と融合した外因性ポリペプチド部分を含む。
本発明は、本明細書に記載の操作されたpIXファージベクターを、少なくとも1つの組換え融合ペプチド又はタンパク質をコードするpIX又はpVIIファージと共に用いることを意図している。融合タンパク質は、繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質のアミノ末端と融合した外因性ポリペプチド部分を含む。
「外因性」とは、ファージタンパク質に融合したポリペプチドが、野生型の繊維状ファージ中のファージpVII又はpIXタンパク質と通常は関与しておらず、正常なファージタンパク質と無関係であることを指す。
好ましい実施形態では、繊維状ファージは、第1及び/又は第2融合タンパク質をコードするゲノムを封入しており、第1融合タンパク質には、pVII又はpIXと融合した第1外因性ポリペプチドが含まれており、第2融合タンパク質には、pIX又はpIXと融合した第2外因性ポリペプチドが含まれている。
繊維状ファージは、本明細書に記載されているように、ファージ粒子の表面にディスプレイされた融合タンパク質(類)を更に含有する。したがって、少なくとも第1融合タンパク質及び第2融合タンパク質が存在する場合、ファージはこれらタンパク質を、第1外因性ポリペプチドと第2外因性ポリペプチドとがヘテロ二量体として相互に作用することでファージ表面に機能的な2本鎖タンパク質複合体が形成され得るような機能的方式でディスプレイすることができる。
本発明のファージに存在する融合タンパク質において、外因性ポリペプチドと繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質との間の「融合」には、一般的なアミド連結が含まれてもよく、又は実施例に記載されているようなリンカーポリペプチド(すなわち、「リンカー」)が含まれてもよい。一般に一続きの約5〜50アミノ酸長の任意の種類のリンカーを使用することができる。特に好ましいリンカーは、そのリンカーの位置で融合タンパク質に対して大きな可動度を付与する。
ライブラリ設計:従来の合成ライブラリは、次の性質のうち幾つかを組み込んでいたが、全てを包括的に包含しているものはなかった。
配列多様性の位置及びと性質。配列多様性は、高いアフィニティの選択的結合実体をもたらすヒトタンパク質が内生的に供給される方法を証明するものである。この配列多様性の発生及び累積は無作為ではない。ゲノム配列のヌクレオチド突然変異の部位と種類は、DNA配列及び機序によって影響されるが、結合及び機能上の利点を与える突然変異だけが、多くの場合は中性の置換基と共に、選択されて蓄積される。機序からは予想され難いが、既知のヒトペプチド又はタンパク質配列のデータベース及び構造−機能解析により、タンパク質とペプチドと小さな分子の抗原との差異化を含む所望の標的又は抗原の認証と最も頻繁に結びつく位置及びアミノ置換基が確認される。本発明のライブラリは、設計された縮重オリゴヌクレオチドを利用して、発現するペプチド又はタンパク質配列の推定の結合領域及び機能的領域に置換基を組み込むことによって、この自然なヒト多様性がもたらされる。
発現、並びに生化学的及び生物物理学的性質。好ましいヒト非抗体ペプチド又はタンパク質は、所望の生物活性及び結合活性を有しているだけでなく、様々な宿主からも効率良く産生され、安定であり、また、優れた溶液特性をも有している。高頻度の生殖細胞系遺伝子の利用(1d)も、哺乳類系での良好な発現を示唆している。その上、バクテリアファージディスプレイ法の選択又はスクリーニングによってライブラリから回収された非抗体ペプチド又はタンパク質は、細菌宿主内で十分に発現するはずである。本発明のライブラリは、標準的な組換え哺乳類宿主(例えば、HEK 293及びCHO細胞)並びに細菌宿主から十分に発現して精製されたヒト生殖細胞由来のテンプレートを基礎としており、高い安定性と優れた溶液特性とを有する。
ライブラリアセンブリ技術。多様性が高度であり(>1010)、調整し易く、アセンブルが容易で、しかも不要な配列のバックグラウンドが低い、新たな非抗体ペプチド又はタンパク質ライブラリが好ましい。これらバックグラウンド配列には、親テンプレート、及び目標値を低く設定した多様性が含まれる。以下の手法を併用することで、ライブラリアセンブリが加速され、低バックグラウンドとなる:(a)クンクル法による(Kunkle-based)一本鎖突然変異誘発、(b)制限部位によるパリンドローム(Palindromic)ループ、(c)メガプライマー。
pIXペプチド又はタンパク質ファージディスプレイ。先行する繊維状の新たなヒト非抗体ペプチド又はタンパク質ライブラリはいずれも、ディスプレイのためにpIII又はpVIIIファージコートタンパク質を利用する。pIXと、選択されたペプチド又はタンパク質テンプレートとの組み合わせは、mAbs及びその他の関連分子への転換後にそれらの選択された特性を維持している非抗体ペプチド又はタンパク質を回収するのに更に有効な選択システムである。
ペプチド又はタンパク質ディスプレイ。ペプチド又はタンパク質は、ヒト非抗体ぺプチド又はタンパク質の天然セグメントであり、それらは、完全な非抗体のぺプチド又はタンパク質に操作されたときに、それらの活性をより高度に再現する。ペプチド又はタンパク質の効率の良い繊維状ディスプレイには、細菌宿主内での良好な発現以上の特性が要求されることがある。本発明のライブラリで使用したペプチド配列は、pIXによって繊維状ファージ上に効率良くディスプレイするために選択された。
ファージミドディスプレイ。ペプチド又はタンパク質分子は、ファージpIXコートタンパク質よりも大きい場合があるため、細菌細胞内で産生される全てのpIXタンパク質と連結すると、組換えファージ粒子のアセンブリを妨害する可能性がある。この妨害を回避する1つの方法は、pIXファージミド系を利用することであり、それによって、野生型のpIXタンパク質とペプチド又はタンパク質と連結したpIXタンパク質とを共に組換えファージ粒子中に組み込むことができる。好ましい応用では、本発明のライブラリは、ファージミド系内でpIXによってディスプレイされる。
ディスプレイ用のファージコートタンパク質pIX。pIIIと同様に、pIXは、少ない複製数でファージ上に存在しており、ディスプレイされたペプチド又はタンパク質のアフィニティ選択の影響を受け易い。しかし、pIIIタンパク質は、感染過程に非常に関与しており、このタンパク質上にディスプレイされるタンパク質が、感染効率を妨害する可能性がある。それに加えて、重鎖Fd又は軽鎖セグメントのどちらかが、ディスプレイ用のpIXと融合する可能性がある。pIXタンパク質上にディスプレイされる本発明のライブラリは、効率良く複製され、選択及び/又はスクリーニングのために提示されると予想される。
ペプチド又はタンパク質−pIXの発現。ファージライブラリから回収されたペプチド又はタンパク質をスクリーニングする1つの方法は、ディスプレイのためにペプチド又はタンパク質分子と連結しているファージコートタンパク質を取り除くことである。小さな寸法のpIXタンパク質は、この工程を利用しないで直接ペプチド又はタンパク質をスクリーニングするという、製造に関する選択肢を与える。
ファージ構造。好適なM13又は似た種類のファージベクターは、本発明に従って操作されたまま使用することができる。このようなベクターは、好適な調節部位、選択部位、制限部位、並びにその他の必要とされる部位及び配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、リーダー(例えばpelB)、リボソーム結合部位(例えば、シャイン・ダルガノ(Shine-Delgano))、タグ(例えば、FLAGタグ)、転写ターミネーター(例えばtrpA)、選択部位(例えばLACZ)、制限部位(例えば、HindIII、EcoRI)、ペプチドリンカー等)によってpIX又はpVII融合タンパク質をコードするものであり、既知の方法に従って変性することで、上流のシグナルペプチドをコードする配列及び誘導プロモーター(例えばLacZa)と連結した第2のpIX及び/又はpVIIをコードする配列を更に含む。この操作は、ヘルパーファージの必要性をなくし、更には、選択及び/又は解析工程中にファージを培養又は成長させるのに要する時間及び労力をも大きく削減する。その上、成長させる(groan)のに必要なファージの数も、他のベクターを利用するよりも容易に求めることができる。
非限定例として、M13mp19の誘導体であるM13KEは、組換えpIX遺伝子を挿入することによって本発明の操作されたpIXファージベクターを供給するために使用可能な、既知のファージベクターである。組換え領域は、ファージゲノムの遺伝子間領域では、例えばM13mp19のlacZα領域に挿入可能であるため、lacプロモーターにより、組換え遺伝子IX融合物の転写が促進される。挿入断片(図1)は、シャイン・ダルガノ配列(リボソーム−結合部位)、ペクチン酸リアーゼB(pelB)からのシグナル配列、今後のクローン化のための二重BbsI制限酵素認識部位、pIXコード領域、及びtrpA転写ターミネーターを含むことができる。FLAGタグペプチドDYKDDDDK、及び5アミノ酸長のリンカー(M13−99:GGTKT)又は9アミノ酸長のリンカー(M13−99L:SGGSGGTKT)が、pelBと遺伝子IXとの間に含まれていた。
様々な長さ及び電荷を有する追加のペプチド(限定されないが、例えば、表1中のもの)を、9アミノ酸長のリンカーによってpIXのアミノ末端にディスプレイすることで、特定のポリペプチドを発現するためにどのリンカーが最も好適であるかを見つけ出すことも可能である。その上、1つ以上の外因性融合タンパク質がpIX又はpVII上にディスプレイされる。
最終ファージベクターは、例えばELISA実験では、ペプチドタグをディスプレイするために組換えpIX遺伝子を含有させて分析することができる。固定標的ペプチド又はタンパク質と結合したファージは、抗M13/標的複合体を用いて又は外因性の発現ペプチドのいずれかの他の検出により、検出することもできる。
利点。pIX上のペプチド及びタンパク質をディスプレイするためのファージシステムは、既に開発されたファージミドシステムに比べて、結合活性、速度、及び便宜性といった利点を提供する。結合活性効果により、ファージミド又はハイブリッドシステムのいずれと比べても、結合シグナルは有意に増大する。そのため、これは、大きな供給源から弱い結合剤を識別するのに理想的なシステムとして機能し得る。このような結合シグナルの増幅は、アフィニティ成熟がなければ本質的に弱いアフィニティを有する傾向がある、ペプチドには極めて重要であり得る。異なる長さ、電荷、線状、及び環状のペプチド並びに小型球状タンパク質のpIX上へのディスプレイが成功し、本明細書に開示される。また、ファージベクターの時間の節約も有意である。ファージは、宿主細胞に感染させて、午後に、本質的に単一工程で増幅することができる。一方、ファージミドの増幅には、ファージミドの感染と増殖、規定の培養密度でのヘルパーファージによる重複感染、及び取り出したファージの増幅が必要である。したがって、手順には、追加工程、オペレータ入力、及び(最低でも)一晩の培養が必要となる。反復選択サイクル及び一般的な選択実験に伴う多重スクリーニング期間にわたり、ファージシステムの時間節約は有意である可能性がある。更に、ファージシステムによってヘルパーファージ感染の必要性が無くなるため、ファージ粒子にパッケージ可能な一種類のファージゲノムのみが存在する。これによってファージの均質集団が生じて、融合ゲノムを含有するウィルス粒子の精密測定を可能にする。
本発明は一般論として記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
実施例1:代表的な操作されたファージベクター構造
タイプ−9ファージベクターの構成:M13mp19の誘導体であるM13KEファージゲノム内のpVII遺伝子とpIX遺伝子との間に挿入された、ペクチン酸リアーゼB(pelB)からのシグナル配列、及び今後のクローン化のための二重BbsI制限酵素認識部位を含有する、M13−9ベクターの試作品、PHPEP208が構成された。未変性の(unmodified)M13KEファージゲノム内では、pVII遺伝子の最後のアミノ酸コドンの末端ヌクレオチド塩基は、pIXのATG開始コドンの最初のヌクレオチド塩基である。この、pVIIとpIX遺伝子との間の最後及び最初のヌクレオチドの共有は、PHPEP 208において、pVII遺伝子とpelBシグナル配列のATG開始コドンとの間に保存された。インフルエンザ(HA)ペプチドYPYDVPDYA及び9アミノ酸長のリンカーSGGSGGTKTが、pelBシグナル配列と遺伝子pIXとの間に含まれていた。様々の長さ及び電荷を有する3つの他のペプチド(表1)並びに小型球状タンパク質、上皮成長因子(EGF)(配列番号6)、がPHPEP208にサブクローン化され、9アミノ酸長のリンカーを有するpIXのアミノ末端上にディスプレイされた。
タイプ−9ファージベクターの構成:M13mp19の誘導体であるM13KEファージゲノム内のpVII遺伝子とpIX遺伝子との間に挿入された、ペクチン酸リアーゼB(pelB)からのシグナル配列、及び今後のクローン化のための二重BbsI制限酵素認識部位を含有する、M13−9ベクターの試作品、PHPEP208が構成された。未変性の(unmodified)M13KEファージゲノム内では、pVII遺伝子の最後のアミノ酸コドンの末端ヌクレオチド塩基は、pIXのATG開始コドンの最初のヌクレオチド塩基である。この、pVIIとpIX遺伝子との間の最後及び最初のヌクレオチドの共有は、PHPEP 208において、pVII遺伝子とpelBシグナル配列のATG開始コドンとの間に保存された。インフルエンザ(HA)ペプチドYPYDVPDYA及び9アミノ酸長のリンカーSGGSGGTKTが、pelBシグナル配列と遺伝子pIXとの間に含まれていた。様々の長さ及び電荷を有する3つの他のペプチド(表1)並びに小型球状タンパク質、上皮成長因子(EGF)(配列番号6)、がPHPEP208にサブクローン化され、9アミノ酸長のリンカーを有するpIXのアミノ末端上にディスプレイされた。
方法。BsrGI及びBspHI酵素認識部位が側面に配置された、pVII−PelB−HA−pIXカセットをコードするDNA(図1d)は、N−末端及びC−末端断片を得るためにHAカセット(MOM 60)を含有するM13−99ファージゲノムから2つのシリーズのPCR増幅によって生成された。次いで、2つの断片が重複PCR組換え反応によって結合された。MOM 60は、M13mp19の誘導体であるファージゲノムM13KEに挿入された組換えpIX遺伝子を含有する(図2)。組換え領域は、ファージゲノムの遺伝子間領域内にある、M13mp19のlacZα領域に挿入されたため、lacプロモーターが組換え遺伝子IX融合の転写を促進する。
挿入断片には、シャイン・ダルガノ配列(リボソーム−結合部位)、ペクチン酸リアーゼB(pelB)からのシグナル配列、今後のクローン化のための二重BbsI制限酵素認識部位、pIXコード領域、及びtrpA転写ターミネーターが含まれていた。HAペプチドYPYDVPDYA(配列番号2)及び9アミノ酸長のリンカーSGGSGGTKT(配列番号7)が、pelBと遺伝子IXとの間に含まれていた。N−末端断片を生成するために、BsrGI部位及びpVII遺伝子を含む一続きのDNAがMOM60ゲノムからPCR増幅された(図1a)。次いで、pelBシグナル配列の一部がそのC−末端終端にPCR増幅によって追加され、それによって18−bp相補的塩基対合部位がその後のC−末端断片との組換え反応のために提供された(図1b)。C−末端断片は、pelBシグナル配列、HAエピトープ、及びMOM60ファージゲノムのHAカセットからのpIX遺伝子の組換えコピーを含有する一続きのDNAのPCR増幅によって生成された(図1c)。逆オリゴヌクレオチドプライマーはBspHI制限部位を含有していた。
N及びC−末端PCR断片は相補的領域で共にアニールされ、PCRによって増幅された(図1d)。カセットはBsrGI及びBspHI酵素によって制限消化され、BsrGI及びBspHIで消化されたM13KE RF DNAに結合された。最終ファージベクターであるM13−9(配列番号1)を図3に示す。その他のペプチドでは、優遇(complimentary)オリゴを一緒にアニールして、適切なDNA配列を生成した。アニールしたオリゴは、ペプチドタグDNA及びベクターの結合を可能にする、BbsI消化したM13−9ベクターに相当する適合性オーバーハングを含有していた。PHPEP 190は、可溶性EGFR受容体に対してアフィニティを有するペプチドである。8つのアミノ酸残基がジスルフィド結合に抑制されたループ内にある。EGFは、PCR法で増幅し、BbsI制限エンドヌクレアーゼで消化し、BbsI消化したM13−9に結合された。組換えファージは、XL−1ブルー(XL-1 Blue)大腸菌宿主細胞(ストラタジーン(Stratagene))の菌叢にプレーティングしてシングルプラークを単離した。ファージプラークを培地に再懸濁し、ファージを寒天から拡散させた。ファージをXL−1ブルーに感染させ、37℃で4.5時間培養した。ファージを成長させて誘発させた後、細菌を遠心分離によって除去し、培養上清から4%のPEG−8000と0.5MのNaClとを用いてファージを沈殿させ、4℃で一晩インキュベートした。ファージ粒子を遠心分離によって回収し、ファージペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。
ディスプレイされたペプチドの解析。ペプチド又はタンパク質を含有したファージを、ディスプレイに関してELISA実験で試験した。固定モノクローナル抗体又は可溶性EGFR−ミメティボディに結合したファージが、抗M13/HRP複合体で検出された。HA挿入断片を有するM13−9は、抗flag抗体よりも抗HA抗体に特異的に結合することが確認されたことから、組換えpIX(図4a)上でのHAタグのディスプレイに成功したことが示された。他のペプチド及びEGFのELISAデータが、図4b、4c、4d、及び4eに示される。抗his及び抗flag抗体は適切なファージの標的として機能した。可溶性EGFR−ミメティボディがPHPEP 190ペプチド及びEGFタンパク質のディスプレイを試験するために使用された。ヒトIgG1 FcスカフォールドがPHPEP 190及びEGFファージELISAの陰性対照として使用された。これらの結果は、これらのペプチド及びEGFタンパク質も組換えpIX上へのディスプレイに成功したことを示す。
方法。マキシソープ(Maxisorp)ELISAプレート(NUNC製)のウェルに500ngのモノクローナル抗体又は可溶性EGFR−ミメティボディをPBS中5μg/mLで、4℃において一晩コーティングした。ウェルを、0.1%Tween−20含有トリス緩衝生理食塩水(TBS−T)で2回すすぎ、スターティングブロック(Starting Block)(ピアース(Pierce)製)を用いて室温で1時間ブロッキングした。ウェルを再度すすいだ。スターティングブロック(Starting Block)に希釈したPEG沈殿ファージ(108〜1010pfu)をウェルに加え、振盪させながら室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBS−Tで3回すすぎ、そのウェルにスターティングブロック(Starting Block)で1:5000に希釈した抗M13/西洋わさびペルオキシダーゼ複合体(GEヘルスケア(GE Healthcare)製)を加えて、振盪させながら室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBS−Tで3回すすぎ、POD化学発光基板(ロシェ(Roche)製)を追加して、テカン(Tecan)プレートリーダーで検出した。
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Claims (15)
- 選択された生物学的に活性なリガンドに結合するファージディスプレイ融合ペプチド又はタンパク質を発現するための、操作された組換え核酸ファージベクターであって、
a.以下に操作可能に連結する、組換えpVIIファージコード核酸配列、
b.以下に操作可能に連結する、組換えファージリーダーコード核酸配列、
c.以下に操作可能に連結する、組換え制限部位、
d.aに操作可能に連結する、ペプチドリンカーをコードする核酸配列、
e.生物学的に活性なリガンドに選択的に結合する第1外因性ペプチド又はタンパク質をコードする配列、
f.天然pIXをコードする核酸配列、
g.成熟pVIIIをコードする核酸配列、及び
h.成熟pIIIをコードする核酸配列、
を含む、操作された組換え核酸ファージベクター。 - 前記ファージリーダーコード配列が、pelB配列である、請求項1に記載の操作された核酸ファージベクター。
- 組換えタグ又は選択配列が、HAタグ配列である、請求項1に記載の操作された核酸ファージベクター。
- 組換えタグ又は選択配列が、配列番号3、4から選択される、請求項1に記載の操作された核酸ファージベクター。
- 前記ペプチドリンカーが、配列番号6、7及び8から選択される、請求項1に記載の操作された核酸ファージベクター。
- 前記外因性第1ペプチド又はタンパク質が、推定の生物学的に活性なタンパク質又はペプチドである、請求項1に記載の操作された核酸ファージベクター。
- 前記生物学的に活性なリガンドが、少なくとも1つの生物学的インビボ活性をもたらす、請求項7に記載の操作された核酸ファージベクター。
- 前記ベクターが、少なくとも1つのファージコートタンパク質と融合した第2の外因性ペプチド又はタンパク質をコードする、請求項1に記載の操作された核酸ファージベクター。
- 請求項1に記載の操作された核酸ファージベクターを含む、細菌宿主細胞。
- 請求項9に記載の細菌宿主細胞によって発現する、生物学的に活性な融合タンパク質。
- 請求項10に記載の前記融合タンパク質に由来する、生物学的に活性な外因性ペプチド又はタンパク質。
- 請求項1に記載の複数の操作された核酸ファージベクターを含む、細菌宿主細胞のファージライブラリ。
- 前記第1の外因性ペプチド又はタンパク質の変異体を発現する、請求項12に記載のファージライブラリ。
- 所望の生物活性を有する外因性ペプチド又はタンパク質を得るためにファージペプチド又はタンパク質ライブラリをスクリーニングする方法であって、(a)請求項13に記載のファージライブラリから外因性ペプチド又はタンパク質を発現する工程と、(b)前記所望の生物活性を有する外因性ペプチド又はタンパク質を発現する細菌細胞を選択する工程と、を含む、方法。
- 請求項14に記載の方法から得た、外因性ペプチド又はタンパク質をコードする核酸。
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JPN6013027125; PNAS vol.96, 1999, pp.6025-6030 * |
JPN6013027128; PNAS vol.99 no.20, 2002, pp.12612-12616 * |
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