JP2011222853A - 電磁波遮蔽フィルタの製造方法、及び電磁波遮蔽フィルタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電磁波遮蔽フィルタ10は、透明基材1上の導電体パターン層2として、導電性粒子と樹脂バインダを含む導電性組成物で導電性組成物層3を印刷形成する為の凹版31に、版面の凹状溝32の内面を粗面fcpとした版を用い、印刷と同時に導電体パターン層の表面に粗面fcを賦形する。或いは、凹状溝内の粗面を被覆樹脂組成物で被覆した後、残りの凹状溝の空間に導電性組成物を充填して印刷することで、導電性組成物層表面に被覆樹脂組成物が固化した被覆樹脂層の面として導電体パターン層の粗面を形成する。粗面により外光Laの鏡面反射光Lmが減る。被覆樹脂層は導電性粒子非含有でも良く、また透明、暗色等としても良い。
【選択図】図1
Description
また、導電体パターン層の形成には、金属箔をフォトエッチング法で形成する方法もあるが、コスト面で有利な印刷法も各種提案されている。その中でも特許文献1に開示の凹版印刷法(「引抜プライマ方式凹版印刷法」と呼ぶことにする)は、従来では不可能であった様な線幅が細く且つ精細なパターン形成が可能で、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる点で優れた印刷法である。
ここで、従来の電磁波遮蔽フィルタ20について、図10の断面図を参照して説明する。図10(a)に示す電磁波遮蔽フィルタ20は透明基材1上に導電体パターン層2oが印刷形成されており、従来の導電体パターン層2oでは、その表面に観察者V側から来た日光や電灯光等の外光Laが当たると、鏡面反射光Lmが反射してしまい、その結果、外光存在環境下(明室)に於いて、画像光に該鏡面反射光が混在し、画像の黒輝度に対する白輝度の比、即ち明室コントラストが低下する。そして、従来は、これを防ぐ為に、図10(b)に示す電磁波遮蔽フィルタ20の様に、導電体パターン層2oの表面に、別工程で更に黒化めっき層7などの黒化層を形成して、外光Laを吸収して、鏡面反射光Lmを減らしていた。
(1)導電体パターン層のパターン形状に対応した凹状溝を版面に有する凹版を用いて、該凹版の凹状溝に、導電性粒子と樹脂バインダを含む導電性組成物を充填した後、被印刷物に凹版印刷して、導電性パターン層として該導電性組成物が固化した導電性組成物層を形成する印刷工程を含む、電磁波遮蔽フィルタの製造方法において、
前記凹状溝の内部表面を粗面とした凹版を用いて印刷することで、印刷と同時に導電体パターン層の表面に粗面を賦形する、電磁波遮蔽フィルタの製造方法。
(2)上記凹状溝に導電性組成物を充填する前に、被覆樹脂組成物を凹状溝が完全に充填されない量で充填して凹状溝内部表面の粗面を該被覆樹脂組成物で被覆した後、残りの凹状溝の空間に前記導電性組成物を充填して印刷することで、導電体パターン層として導電性組成物層とその表面に該被覆樹脂組成物が固化した被覆樹脂層とを形成して、該被覆樹脂層の面として導電体パターン層の粗面を形成する、上記(1)の電磁波遮蔽フィルタの製造方法。
(3)上記被覆樹脂組成物が透明であり、上記導電体パターン層の粗面を透明被覆樹脂層の面として形成する、上記(2)の電磁波遮蔽フィルタの製造方法。
(4)上記被覆樹脂組成物が暗色であり、上記導電体パターン層の粗面を暗色被覆樹脂層の面として形成する、上記(2)の電磁波遮蔽フィルタの製造方法。
(5)透明基材上に導電体パターン層が形成され、且つ該導電体パターン層は導電性組成物層と、その表面に形成された被覆樹脂層とを含み、該被覆樹脂層の表面に粗面を有する、電磁波遮蔽フィルタ。
(6)透明基材上に導電体パターン層が形成され、且つ該導電体パターン層は導電性組成物層と、その表面に形成された透明被覆樹脂層とを含み、該透明被覆樹脂層の表面に粗面を有する、電磁波遮蔽フィルタ。
(7)透明基材上に導電体パターン層が形成され、且つ該導電体パターン層は導電性組成物層と、その表面に形成された暗色被覆樹脂層とを含み、該暗色被覆樹脂層の表面に粗面を有する、電磁波遮蔽フィルタ。
(2)また、導電体パターン層の表面側構成層として被覆樹脂層を印刷と同時に形成して該被覆樹脂層の表面として粗面を形成すれば、導電性組成物の性状に依存しないで該被覆樹脂層のみで粗面を形成できる。
また、被覆樹脂層を透明被覆樹脂層として形成すれば、導電性組成物層の表面色がさほど白味を帯びてなく透明被覆層表面の粗面の鏡面反射防止効果のみで満足できる明室コントラスト効果が得られる場合に、余分の充填材の添加を省略できる。
また、該被覆樹脂層を暗色被覆樹脂層として形成すれば、外光を吸収するので、より効果的に白味を抑制して明室コントラスト低下を防げる。しかも、被覆樹脂層を暗色とする為に導電性への寄与が小さい黒色色材を含有させる場合、それを導電体パターン層の主要部分を占める導電性組成物層に含有させて導電性低下を招かないで、暗色にできる。
先ず、図1は、本発明による電磁波遮蔽フィルタの製造方法の第1の実施形態を概念的に説明する断面図である。
図1(a)の様に、凹版印刷の凹版31として版面の凹状溝32の内部に粗面fcpが形成された版を用意する。なお、通常は凹版31はシリンダ状(円筒状)の版である。そして、図1(b)の様に、通常の凹版印刷と同様に、インキとして導電性組成物3cを凹状溝32の内部に充填する。なお、凹状溝32の内部のみに充填するには、ドクターブレードで版面上の余分のインキを掻き取る。また、導電性組成物3cは、銀等の導電性粒子と樹脂バインダを含む液状の組成物で、固化させた状態で導電性を呈する組成物である。
そして、図1(c)の様に、インキ充填済みの凹版31と被印刷物である透明基材1とを接触させた後、離版すれば、図1(d)の様に、透明基材1上に、導電性組成物3cが固化した導電性組成物層3が導電体パターン層2として印刷形成される。なお、導電性組成物3cの固化は、溶剤乾燥、紫外線照射などで行う。
図2を参照して、本発明による電磁波遮蔽フィルタの製造方法の第2の実施形態を説明する。第2の実視形態では、上記第1の実施形態に対して、凹状溝32の内部の粗面fcpを被覆樹脂組成物4cで被覆してから、導電性組成物3cを充填して、導電体パターン層2が導電性組成物層3に加えて被覆樹脂層4も含む層として製造する点が異なる。またこの際、被覆樹脂組成物4cとして導電性粒子非含有の非導電性樹脂組成物を用いて、被覆樹脂層4として導電性粒子非含有の非導電性樹脂層を形成する。以下、第2の実施形態を説明する。
そして、後は、図2(c)の様に、通常の凹版印刷と同様に、インキとして導電性組成物3cを凹状溝32の内部の残った空間部分に充填する。
そして、図2(d)の様に、インキ充填済みの凹版31と被印刷物である透明基材1とを接触させた後、離版すれば、図2(e)の様に、透明基材1上に、導電性組成物3cが固化した導電性組成物層3と、その表面を被覆する様に該表面上に形成され前記被覆樹脂組成物4cが固化した被覆樹脂層4(非導電性樹脂層)とが導電体パターン層2として印刷形成される。なお、導電性組成物3cと被覆樹脂組成物4cの固化は、被覆樹脂組成物4cも含めて前記実施形態と同様である。
この結果、外光Laが、導電体パターン層2の表面に当たっても、そこでの鏡面反射成分は低減されており鏡面反射光Lmは弱くなっている。この為、外光の悪影響を抑えて明室コントラスト低下を抑制できる。しかも、粗面fcは印刷と同時に賦形されており、印刷後に黒化めっき層の形成工程など追加の工程を増やす必要もない。
また、被覆樹脂層4を導電性粒子を含有しない非導電性樹脂層として形成するので、導電性粒子の添加で高粘度になることもなく、被覆樹脂層4を導電性樹脂層3の表面を被覆する厚さで凹版31の凹状溝32の内面に被覆樹脂組成物4cを充填し易い。又、凹状溝32の粗面を充填する被覆樹脂組成物4cは導電性粒子Cpを含まない為、粗面fcpの形状再現性も良好となる。
図3を参照して、本発明による電磁波遮蔽フィルタの製造方法の第3の実施形態を説明する。第3の実視形態では、前記第1の実施形態に対して、従来技術欄で優れた印刷法として挙げた「引抜プライマ方式凹版印刷法」を適用して製造する点が異なる。以下、第3の実施形態を説明する。
そして、図3(c)の様に、インキ充填済みの凹版31と被印刷物である透明基材1とを接触させるのだが、このとき、本実施形態では、透明基材1と凹版31との間に流動状態のプライマであるプライマ流動層5cを介在させて接触させる。このため、紫外線硬化性樹脂液などで液状のプライマを透明基材1の片面に施してプライマ流動層5cを形成した後、この透明基材1を、そのプライマ流動層5cの面で版31と接触させる。そして、これらを接触させて、プライマ流動層5cを凹状溝32内の導電性組成物3cの表面の凹み内部にも流入、充填させた状態で、プライマ流動層5cを透明基材1側等からの紫外線照射で固化させてプライマ層5とした後、離版する。
すると、図3(d)の様に、透明基材1上に、プライマ流動層5cが固化したプライマ層5を介して、導電性組成物3cが固化した導電性組成物層3が、導電体パターン層2として印刷形成される。なお、導電性組成物3cの固化は、溶剤乾燥、紫外線照射などで行う。
また、印刷に「引抜プライマ方式凹版印刷法」を採用した場合は、好ましくは、図4で示す様に、導電性組成物層3の凸部内の導電性粒子Cpの分布が、相対的に、プライマ層5近傍において分布が疎であり頂部P近傍において分布が密である様にするのが良い。また、この導電性粒子Cpの凸部内分布は、図3でも描画しておいた。なお、この様にする方法とその効果の詳細については、後述する。
次に、図6を参照して、本発明による電磁波遮蔽フィルタの製造方法の第4の実施形態を説明する。第4の実視形態では、上記第3の実施形態に対して、凹状溝32の内部の粗面fcpを被覆樹脂組成物4cで被覆してから、導電性組成物3cを充填して、導電体パターン層2が導電性組成物層3に加えて被覆樹脂層4も含む層として製造する点が異なる。或いは、前記第2の実施形態に対して、「引抜プライマ方式凹版印刷法」を適用して製造する点が異なるとも言える。なお、本実施形態においても、前記第2の実施形態と同様に、被覆樹脂組成物4cとして導電性粒子非含有の非導電性樹脂組成物を用いて、被覆樹脂層4として導電性粒子非含有の非導電性樹脂層を形成する。以下、第4の実施形態を説明する。
そして、後は、図6(c)の様に、通常の凹版印刷と同様に、インキとして導電性組成物3cを凹状溝32の内部の残った空間部分に充填する。なお、前記した様に、通常は、前記図3(c)と同様に、充填後の導電性組成物3cの面は凹版31の版面に対して版表面から0.1〜3μm程度凹んでいる。
そして、図6(d)の様に、透明基材1と凹版31とを、間にプライマ流動層5cを介在させて接触させる。通常は、紫外線硬化性樹脂液などで液状のプライマを透明基材1の片面に施してプライマ流動層5cを形成した後、この透明基材1を、そのプライマ流動層5cの面で凹版31と接触させる。そして、これらを接触させた状態で、プライマ流動層5cを透明基材1側等からの紫外線照射で固化させてプライマ層5とした後、離版する。
すると、図6(e)の様に、透明基材1上に、プライマ流動層5cが固化したプライマ層5を介して、導電性組成物3cが固化した導電性組成物層3とその表面を被覆する様に該表面上に被覆樹脂組成物4cが固化した被覆樹脂層4(非導電性樹脂層)とが、導電体パターン層2として印刷形成される。なお、導電性組成物3cと被覆樹脂組成物4cの固化は、被覆樹脂組成物4cも含めて前記第3の実施形態と同様である。
この結果、外光Laが、導電体パターン層2の表面に当たっても、鏡面反射成分が低減され鏡面反射光Lmは弱くなる。この為、外光の悪影響を抑えて明室コントラスト低下を抑制できる。しかも、粗面fcは印刷と同時に賦形されており、印刷後に黒化めっき層の形成工程など追加の工程を増やす必要もない。
次に、本発明の電磁波遮蔽フィルタの製造方法について、さらに詳述する。
凹版31は、いわゆる凹版印刷用の凹版であり、通常は生産性に優れる点からシリンダ状(円筒状)の版を用いるが、平板状の版でも良い。また、版の材質は、通常は鉄、銅等の金属であるが、セラミックス、ガラス等でも良く、セラミックスやガラスの場合は、版を透明にして、版の内側から紫外線や電子線などの電離放射線を照射して、版上で導電性組成物や被覆樹脂組成物のインキを硬化させることも可能である。
凹版31の版面に形成される凹状溝32は、形成する導電体パターン層2の平面視パターン及び、印刷厚みに対応したものとする点は、通常の凹状溝32と同様である。但し、本発明では、凹状溝32の内面を、導電体パターン層2の表面に付与する粗面fcに対応した、該粗面fcと逆凹凸関係の粗面fcpとしておく。
凹状溝32の内面を所定の粗面fcpとする方法は特に限定はなく、サンドブラスト法、マットめっき法、エッチング法などで、表面を荒らせば良い。なお、この際、凹版31の版面上は平滑面として残す必要があるが、その為には、例えば次の様にすると良い。
先ず、図8(a)の様に、凹状溝32の内面に粗面が形成されてない通常の凹版31Aを用意する。次に、図8(b)の様に、サンドブラスト粒子34で版面全体をサンドブラストすると、版面上と凹状溝32の内面との両方の表面がサンドブラストによって粗面化される。その後、図8(c)の様に、版面上に形成された粗面は、表面研磨35によって平滑面とすれば、粗面fcpが凹状溝32の内面のみに形成された凹版31が得られる。なお、サンドブラスト粒子は、例えば、ダイアモンド粒子、アルミナ粒子、シリカ粒子等である。
なお、粗面fcpの粗さの程度であるが、次に様にして決めることができる。
すなわち、最終的に印刷後の導電体パターン層2の表面の状態で、該導電体パターン層2の主切断面に於ける断面形状を顕微鏡で撮影した画像上で、表面の粗面fcを与える凹凸の隣接する頂部と谷部との段差(高低差)を3箇所以上、好ましくは10箇所以上平均した値で評価できる。この平均値を粗度として、該粗度を0.4〜5μm、より好ましくは0.8〜5μmとすると良い。但し、導電体パターン層2、より詳しくはその導電性組成物層3の線幅にもよるので、該線幅の1/5未満の条件を満たす範囲内とするのが良い。粗度が小さ過ぎると、可視光線(波長0.38〜0.78μm)に対して乱反射を起こすに足りる凹凸とは成らずに、逆に粗度が大き過ぎても、乱反射を起こす効果が飽和する他、導電体パターン層2の線幅との関係で自ずと制約(線幅の1/5未満)がある。また、線幅の1/5以上となると、被覆膜として厚くなり過ぎて、導電体パターン層2の体積(乃至は主切断面形状に於ける断面積)に占める導電性組成物層3の割合が小さくなり、光透過性と電磁波遮蔽性の両立が損なわれてくる。
導電体パターン層2は、少なくとも導電性組成物層3を含み、更に、被覆樹脂層4を含む形態もある。先ず、導電体パターン層2の主要な体積を占める導電性組成物層3から説明する。
なお、主要な体積とは、最低限、51体積%以上、乃至は主切断面の断面積で51面積%以上のことを言う。但し、被覆樹脂層はスキン層として形成し、又導電体パターン層2としての電磁波遮蔽性能を維持する観点から、導電体パターン層2中の導電性組成物層3は、体積基準で70体積%以上、乃至は断面積基準で70面積%以上が良い。
導電性組成物層3は、被印刷物である透明基材1上に、パターン状に形成された電磁波遮蔽機能を担う層であり、kHz〜GHz帯域の所謂電波領域の電磁波は遮蔽し可視光線は透過するフィルタ機能を有する。また、導電性組成物層3は、導電性粒子Cpとバインダ樹脂とを含む層である。導電性組成物層3は、導電性粒子と樹脂バインダとを含む液状の導電性組成物3c(導電性ペースト、導電性インキ等とも呼ばれる)を用いて形成でき、導電性組成物3cを溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化手段によって固化させて得られる。
導電性組成物層3の厚さは、電磁波遮蔽性能等の観点から、通常は2〜100μm、より好ましくは5〜20μm程度である。
なお、導電性組成物層3を透明基材1上にパターン状に形成する方法は凹版印刷法であれば特に限定はない。公知の凹版印刷によるパターン形成法を用途、要求物性等に応じて適宜採用すれば良い。凹版印刷法の中でも、特許文献1として挙げた、国際公開第2008/149969号のパンフレットで開示された凹版印刷の一種である「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能となる点で好ましい印刷方式の一種であり、しかも、優れた電磁波遮蔽性と優れた光透過性とを高度に両立できる。そこで、以下この印刷方式について説明する。
なお、プライマ層5の厚さは、導電性組成物層3の形成部3aの厚さTaを、通常は、該層の非形成部3bの厚さTbに比べて、1〜10μm程度厚く形成される。
すなわち、導電性組成物層3の形成部3aである導電性組成物層3の凸部の内部では、図4で概念的に示す様に、導電性粒子Cpが一様な均一な分布ではなく、導電性粒子Cpの分布が、相対的に、凸部の頂部P(頂上部)の近くが密で、頂部Pから遠いプライマ層5の近くが疎である分布を持つ内部構造が好ましい。密とは単位体積中の導電性粒子Cpの粒子数で見た数密度(体積密度)である。つまり、凸部内部の導電性粒子Cpの数密度が、プライマ層5近くに比べて頂部P近くの方が大きくなる分布である。数密度が大きい方が導電性粒子Cp同士の電気的接触が行われ易い。従って、例え導電性組成物層3中の導電性粒子Cpの平均濃度が同じであっても、同じ数の導電性粒子Cpを数密度一様で分布させた場合に比べて、数密度が大きい部分での体積抵抗率の低下が寄与して全体として体積抵抗率が下がり、電磁波遮蔽性能が向上する。また、プライマ層5との境界近傍での導電性粒子Cpの数密度が小さいことによって、導電性組成物層3とプライマ層5との密着性が向上する。また、電磁波遮蔽フィルタ10の透明基材1側(図4或いは図9に於いては下側)から入射する光が導電性組成物層3とプライマ層5との界面に於いて反射する場合に、拡散反射成分が増加し鏡面反射成分が減少する。この為、画像表示装置から入射する画像光が該界面と画面とで多重反射することによる画像コントラスト低下を軽減させることが出来る。
尚、プライマ層5との界面に隣接する領域に於ける導電性粒子Cpの数密度を1としたときの導電性組成物層3の頂部Pに於ける導電性粒子Cpの数密度の比は、大きいほど上記の様な導電性粒子Cpの数密度の分布による効果を奏する上では有利である。一方、当該数密度の比を大きくするほど、その製造条件が制約され且つ実現の際の難度も増大し、又、導電性粒子Cpの粒径による高密度化の物理的限界も有る。これらを考慮すると、前記の如き、導電性粒子Cpの材料と平均粒径、導電性組成物層3の線幅、製造方法、及び現状PDP等の分野で通常要求される電磁波遮蔽性能を勘案した場合、当該比は、1.5〜10程度の範囲が好ましい。
この様に凸部の頂部Pの方に導電性粒子Cpを偏在させるには、例えば、プライマ流動層5c形成済みの透明基材1を版面に圧着する圧着力を強くすると共に、導電性組成物3cは粘度を低めにして且つ凹版凹部内では固化させずに版面から離版後に固化させると良い。この他、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差、固化前の導電性組成物3cの粘度(樹脂材料及び樹脂量、溶剤量、その他添加剤量、導電性粒子の形状、粒度分布、含有量など関係)、固化条件などにも依存するので、これらは適宜実験的に決定すると良い。
なお、導電性粒子Cpと樹脂バインダとの比重差については、通常は金属粒子である導電性粒子Cpの比重>樹脂バインダの比重、となる為、プライマ層5に対して頂部Pを重力の向きと同じ向きにして導電性組成物層3を固化させると良い。
被覆樹脂層4、及び該層を形成する為の被覆樹脂組成物4cについて説明する。
被覆樹脂層4は、その名のとおり導電性組成物層3の表面を被覆する層(スキン層)であり、また、印刷最中では、該層形成用の被覆樹脂組成物4cが凹版31の凹状溝32の内面の粗面fcpを被覆する。
また、これと同時に、該被覆樹脂層4乃至は被覆樹脂組成物4cは、導電性組成物層3乃至は導電性組成物3cの様に、導電性粒子Cpを必須成分として含んでなくても良いし、含んでいても良い。したがって、導電性粒子Cpを含んでいない場合は、被覆樹脂層4は、非導電性被覆樹脂層乃至は非導電性樹脂層と呼ぶこともでき、被覆樹脂組成物4cは非導電性被覆樹脂組成物乃至は非導電性樹脂組成物と呼ぶこともできる。ただ、被覆樹脂層が非導電性である場合は、本来ならば導体パターン層2に含めないという考え方もあるが、被覆樹脂層4は導電性組成物層3の表面を被覆するのみであり、導電体パターン層2の主要な体積を占めず、導電体パターン層2と同じ平面視パターン形状で形成され、また、導電体パターン層2に導電性組成物層3に代わって粗面fcを提供するなどの点から、本発明では、導電体パターン層2に属する層として扱う。
従って、被覆樹脂層4の形成に用いる被覆樹脂組成物4cは、上記導電性組成物3cで列記した様な導電性粒子Cpは含ませないことができるが、少なくとも樹脂バインダは含む組成物である。
但し、形成する被覆樹脂層4の表面に凹状溝32から粗面fcを賦形させる機能を担う関係上、無溶剤乃至は溶剤分を少なくできる、紫外線や電子線で硬化させる電離放射線硬化性樹脂は好ましい樹脂の一種である。導電性組成物3cと被覆樹脂組成物4cの樹脂バインダは各々異なる材料とすることも、或いは同じ材料とすることも出来る。但し、両者とも同じ樹脂バインダを用いると、導電性組成物層3と被覆樹脂層4との密着が良好となり、又導電性組成物層3と被覆樹脂層4との界面での光反射も低減する為、好ましい。
用いる色材は、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄(鉄黒)、弁柄、黄鉛、群青、緑青、朱、コバルトブルー、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、ポリアゾレッド、ポリアゾイエローなどを用いることができる。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。
なお、色材の添加量は、例えば、樹脂100質量部に対して5〜50質量部程度である。
また、被覆樹脂層4に導電性粒子Cpを添加する場合は、その添加量は、導電性組成物層3と同じ導電性とするならば、追加の被覆樹脂層4を設ける必要はないが、その場合でも、被覆樹脂層4のみを暗色とする色材を添加して、表面層(スキン層)のみ暗色にして、導電体パターン層2の表面での外光の鏡面反射に加えて光吸収により反射光を低減しても良い。また、暗色としないまでも、導電性粒子Cpの添加量を導電性組成物層3よりも少量にして、或る程度の導電性は確保しつつ、被覆樹脂組成物4cの粘度をより最適化して、凹状溝32の粗面fcpの形状を再現し易い様にしても良い。
なお、プライマ層5は、透明な樹脂層で、その樹脂には熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用い、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができるが、凹版31上での固化が迅速な点で、紫外線照射や電子線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、導電性組成層3で列記したバインダ樹脂などを使用できる。
導電体パターン層2の印刷対象物(被印刷物)は、ディスプレイ用途等、光透過性を確保する意味で、透明な基材が好ましい。
透明基材1としては、公知の透明な材料を使用すれば良く、樹脂フィルムの様な有機系基材、ガラス、セラミックスの様な無機系基材があるが、可視光線領域での透明性、耐熱性、機械的強度、取扱性等を考慮すると、樹脂フィルム(乃至シート)が代表的である。樹脂フィルム(乃至シート)の樹脂は例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材1の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は、12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
なお、透明基材1は、生産性に優れたロール・ツー・ロール方式での生産適性の点で、フレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂フィルムが好ましい。更に、この点では、透明基材1は、ロールに巻き取り可能な程度に長手方向に連続して長い連続帯状の樹脂フィルムを用いるのが好ましい。代表的な物は2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである。
本発明による電磁波遮蔽フィルタの製造方法材及び電磁波遮蔽フィルタでは、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、上記形態等で説明した以外の、その他の工程及び層等を含む形態でもよい。
例えば、導電体パターン層2によるパターンの凹凸を平坦化する平坦化樹脂層、導電体パターン層2が形成された側とは反対側の透明基材1の面に、ディスプレイ前面板などの被着体に貼り付ける為の粘着剤層、その面を一時的に保護するセパレータフィルムなどの層乃至はこれを設ける工程である。また、各種光学フィルタ、光学フィルタ以外のその他の機能層及びこれらを設ける工程などである。例えば、光学フィルタは、近赤外線吸収層、紫外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、微小ルーバによる外光反射防止層(特開2007−272161号公報など参照)などであり、光学フィルタ以外の機能層は、保護層、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、粘着剤層などである。なお、これらの層には公知のものを適宜使用すれば良い。
本発明による電磁波遮蔽フィルタは、特に、テレビジョン受像器、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP、CRT、LCD、ELなどの各種画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にPDP用として好適である。又、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車輛、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジ等の各種家電製品の窓等に於ける電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
2 導電体パターン層
2o 従来の導電体パターン層
3 導電性組成物層
3c 導電性組成物
4 被覆樹脂層
4c 被覆樹脂組成物
4C 透明被覆樹脂層
4D 暗色被覆樹脂層
5 プライマ層
5c プライマ流動層
6 開口部
7 黒化めっき層
10 電磁波遮蔽フィルタ
31 凹版
32 凹状溝
33 レジスト層
34 サンドブラスト粒子
35 表面研磨
Cp 導電性粒子
fc 粗面
fcp 凹状溝内の粗面
La 外光
Lm 鏡面反射光
P 頂部
Claims (7)
- 導電体パターン層のパターン形状に対応した凹状溝を版面に有する凹版を用いて、該凹版の凹状溝に、導電性粒子と樹脂バインダを含む導電性組成物を充填した後、被印刷物に凹版印刷して、導電性パターン層として該導電性組成物が固化した導電性組成物層を形成する印刷工程を含む、電磁波遮蔽フィルタの製造方法において、
前記凹状溝の内部表面を粗面とした凹版を用いて印刷することで、印刷と同時に導電体パターン層の表面に粗面を賦形する、電磁波遮蔽フィルタの製造方法。 - 上記凹状溝に導電性組成物を充填する前に、被覆樹脂組成物を凹状溝が完全に充填されない量で充填して凹状溝内部表面の粗面を該被覆樹脂組成物で被覆した後、残りの凹状溝の空間に前記導電性組成物を充填して印刷することで、導電体パターン層として導電性組成物層とその表面に該被覆樹脂組成物が固化した被覆樹脂層とを形成して、該被覆樹脂層の面として導電体パターン層の粗面を形成する、請求項1記載の電磁波遮蔽フィルタの製造方法。
- 上記被覆樹脂組成物が透明であり、上記導電体パターン層の粗面を透明被覆樹脂層の面として形成する、請求項2記載の電磁波遮蔽フィルタの製造方法。
- 上記被覆樹脂組成物が暗色であり、上記導電体パターン層の粗面を暗色被覆樹脂層の面として形成する、請求項2記載の電磁波遮蔽フィルタの製造方法。
- 透明基材上に導電体パターン層が形成され、且つ該導電体パターン層は導電性組成物層と、その表面に形成された被覆樹脂層とを含み、該被覆樹脂層の表面に粗面を有する、電磁波遮蔽フィルタ。
- 透明基材上に導電体パターン層が形成され、且つ該導電体パターン層は導電性組成物層と、その表面に形成された透明被覆樹脂層とを含み、該透明被覆樹脂層の表面に粗面を有する、電磁波遮蔽フィルタ。
- 透明基材上に導電体パターン層が形成され、且つ該導電体パターン層は導電性組成物層と、その表面に形成された暗色被覆樹脂層とを含み、該暗色被覆樹脂層の表面に粗面を有する、電磁波遮蔽フィルタ。
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