JP2011214040A - α線量が少ない銀又は銀を含有する合金及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】溶解・鋳造した後の試料のα線量が0.002cph/cm2以下である銀。純度3Nレベルの原料銀を硝酸又は硫酸で浸出した後、Ag濃度700g/L以下の電解液を用いて電解精製することにより製造する。
【選択図】図1
Description
最近の半導体装置は、高密度化及び動作電圧やセルの容量が低下しているので、半導体チップ近傍の材料からのα線の影響により、ソフトエラーが発生する危険が多くなってきた。このようなことから、前記はんだ材料及び銀の高純度化の要求があり、またα線の少ない材料が求められている。
さらに問題となるのは、添加する材料としてアルカリ金属元素、遷移金属元素、重金属元素など、半導体に混入しては好ましくない元素が用いられていることである。したがって、半導体装置組立て用材料としてはレベルが低い材料と言わざるを得ない。
この特許文献3には高純度銀を安価に製造できると述べているが、放射性元素及び放射線α粒子のカウント数の制限については、特に言及されておらず、これらについては関心が低いレベルのものと言える。
貴金属の精錬プロセス等において有用であると述べているが、これによって得られる銀は純度4Nレベル以上であり、半導体装置用材料としては期待できるレベルには達していない。また、放射性元素及び放射線α粒子のカウント数の制限については、特に言及されておらず、これらについては関心が低いレベルのものと言える。
この特許文献7の比較例ではPbを<0.01とする記載があるが、その他の不純物が高く、また特許文献7の発明自体には、放射性元素及び放射線α粒子のカウント数に関する記述は一切なく、これらについては関心が低いレベルのものと言える。
1)溶解・鋳造した後の試料のα線量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする銀。
2)溶解・鋳造から1週間後、3週間後、1ヵ月後、2ヵ月後、6ヵ月後及び30ヵ月後の、それぞれのα線量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする銀。
3)試料の第1回目に測定したα線量が0.002cph/cm2以下であって、そのα線量と、それから5ヶ月経過した後に測定したα線量との差が0.001cph/cm2以下であることを特徴とする銀。
4)試料の第1回目に測定したα線量が0.002cph/cm2以下であって、そのα線量と、それから5ヶ月経過した後に測定したα線量との差が0.001cph/cm2以下であることを特徴とする1)又は2)記載の銀。
5)Pb含有量が0.1ppm以下であることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の銀。
6)U,Thのそれぞれの含有量が1ppb以下であることを特徴とする1)〜5)のいずれか一項に記載の銀。
7)前記1)〜6)のいずれか一項に記載の銀を1〜10%含有する合金であって、該合金が、前記1)〜4)に記載する銀と同等のα線量を示すことを特徴とする銀含有合金。
8)純度3Nレベルの原料銀を硝酸又は硫酸で浸出した後、Ag濃度700g/L以下の電解液を用いて電解精製することを特徴とする前記1)〜6)のいずれか一項に記載の銀の製造方法。
9)Ag濃度を30g/L以上として電解することを特徴とする8)記載の銀の製造方法。
半導体用Pbフリーはんだ材料はSn−Ag−Cu、Sn−Ag等が開発されており、低αの銀材料が求められているが、銀中の微量の鉛を完全に除去することは非常に困難であり、通常半導体用の銀材料には10ppmレベル以上の鉛が含有されている。
しかし、ポロニウムの同位体210Poが殆どない状態において、210Pb→210Bi→210Po→206Pbの崩壊が起こる。そして、この崩壊チェーンが平衡状態になるには約27ヶ月(2年強)を要することが分かった(図2参照)。
従って、製品製造直後はα線量が低くても問題は解決せず、時間の経過とともに徐々にα線量が高くなり、ソフトエラーが起こる危険性が高まるという問題が生ずるのである。前記約27ヶ月(2年強)は、決して短い期間ではない。
この図3に示す直線は、鉛の同位体214Pb、210Pb、209Pb、208Pb、207Pb、206Pb、204Pbの割合によって上下にシフトし、鉛の同位体210Pbの割合が大きいほど上にシフトすることが分かった。
すなわち、鉛の同位体206Pbの存在比を少なくするだけでなく、図1に示すU崩壊チェーンに示す鉛の同位体210Pbも同時に少なくすることが重要である。
具体的には、溶解・鋳造から1週間後、3週間後、1ヵ月後、2ヵ月後、6ヵ月後及び鉛の同位体206Pbへの壊変によるα線を発生させるポロニウムの同位体210Poがない状態において、210Pb→210Bi→210Po→206Pbの崩壊チェーンが平衡状態になる27ヶ月を過ぎた30ヵ月後の、それぞれのα線量が0.002cph/cm2以下である銀を提供する。
これは、5ヶ月間(約150日)のα線量の変化が0.001cph/cm2以下であれば、ポロニウムの同位体210Poから鉛の同位体206Pbへの改変によるα線量の変化から、以降の変化は非常に小さく、0.001cph/cm2を超えることはないためである。
すなわち、この期間(5ヶ月間)でポロニウムの同位体210Poから鉛の同位体206Pbへの改変によるα線量が少ないことは、同位体210Pb自体が十分に低減されていることを意味するからである。したがって、α線量の変化が0.001cph/cm2以下を達成できる。
また、電解法では、鉛電解のアノードスライム等を出発原料とし、これに含有される銀を濃縮して得た品位の低い粗銀板を陽極とし、硝酸を含有する硝酸銀溶液を電解液として電解し、陰極板に銀を析出させて製造している。
鉛中の同位体210Pbの低減化は、α線量を測定することにより、確認することができる。鉛を低減させたことが、必ずしもα線量を低減させたことにはならない。重要なのは鉛中の同位体210Pbの低減化であり、α線量を測定することによってこれを確認できる。特に、一定時間経過後のα線量を測定することが好ましい。
このようにして得た本願発明の高純度銀は、半導体装置のα線の影響によるソフトエラーの発生を著しく減少できるという優れた効果を有する。
また、半導体用配線材等に使用されるAgは高純度であることが必要であり、不純物を極力低減することが必要である。Ag中の不純物を低減させた例として(以下、全てwtppm)、Na<0.005、Mg<0.001、Al<0.001、Si<0.01、P<0.007、S<0.01、Cl<0.01、K<0.005、Ca<0.01、Cr<0.005、Fe<0.009、Co<0.001、Ni<0.005、Cu<0.01、Pd<0.005、Th<0.001、U<0.001を挙げることができる。本願発明は、これらを達成することができる。
さらに、本願発明においては、上記に例示した以外の不純物についても、同様に<0.01、さらには<0.001に低減化が可能である。
純度3Nレベルの原料銀を硝酸で浸出し、Ag濃度:60g/Lの浸出液を電解液とした。
陽極には原料銀を鋳込み板形状のものを、陰極にはチタン製の板を用い、電解温度30°C、電流密度5A/dm2という条件で電解を行った。
陰極に電着する銀の厚さが2mm程度になると一旦電解を停止し、陰極を電解槽から引き上げて陰極から電着銀を剥がして回収した。回収後は陰極を電解槽に戻し、電解を再開し、これを繰り返した。回収した電着銀を洗浄・乾燥し、1000°Cで溶解・鋳造し、銀インゴットとした。
この試料中のPb含有量0.05ppm、U含有量<1ppb、Th含有量<1ppbとなった。
純度3Nレベルの原料銀を硝酸で浸出し、Ag濃度:60g/Lの浸出液を電解液とした。陽極には原料銀を鋳込み板形状のものを、陰極にはチタン製の板を用い、電解温度30°C、電流密度1A/dm2という条件で電解を行った。陰極に電着する銀の厚さが2mm程度になると一旦電解を停止し、陰極を電解槽から引き上げて陰極から電着銀を剥がして回収した。回収後は陰極を電解槽に戻し、電解を再開し、これを繰り返した。回収した電着銀を洗浄・乾燥し、1000°Cで溶解・鋳造し、銀インゴットとした。
この試料中のPb含有量0.05ppm、U含有量<1ppb、Th含有量<1ppbとなった。鉛中の同位体210Pbの低減化は、α線量を測定することにより、確認することができる。
(0.5%Cu−3%Ag−残部Snからなる合金)
実施例1で作製した銀を準備した。また、市販の錫及び銅を電解により高純度化し、5N−Sn及び6N−Cuとした。添加元素である銀と銅を錫に添加し、260°Cで溶解・鋳造し、0.5%Cu−3%Ag−残部SnからなるSn−Cu−Ag合金インゴットを製造した。
この試料中のPb含有量0.05ppm、U含有量<1ppb、Th含有量<1ppbとなった。
(3.5%Ag−残部Snからなる合金)
実施例1で作製した銀を準備した。また、市販のSnを電解により高純度化し、5N−Snとした。添加元素である銀を錫に添加し、260°Cで溶解・鋳造し、3.5%Ag−残部SnからなるSn−Ag合金インゴットを製造した。
この試料中のPb含有量0.05ppm、U含有量<1ppb、Th含有量<1ppbとなった。
(0.5%Cu−3%Ag−残部Snからなる合金)
市販の銀(3Nレベル)を準備した。また、市販の錫及び銅を電解により高純度化し、5N−Sn及び6N−Cuとした。添加元素である銀と銅を錫に添加し、260°Cで溶解・鋳造し、0.5%Cu−3%Ag−残部SnからなるSn−Cu−Ag合金インゴットを製造した。この試料中のPb含有量6.9ppm、U含有量10ppb、Th含有量10ppbとなった。合金中のPbの含有は、主としてAg中に含有される不純物由来のものであった。
また、同一試料について、1ヶ月後と6ヶ月後の5ヶ月間の、経時変化を見た場合、α線量の差は0.004cph/cm2であり、これも本願発明の条件を満たしていなかった。
(3.5%Ag−残部Snからなる合金)
市販の銀(3Nレベル)を準備した。また、市販のSnを電解により高純度化し、5N−Snとした。添加元素である銀を錫に添加し、260°Cで溶解・鋳造し、3.5%Ag−残部SnからなるSn−Ag合金インゴットを製造した。
この試料中のPb含有量5.3ppm、U含有量7ppb、Th含有量6ppbとなった。合金中のPbの含有は、主としてAg中に含有される不純物由来のものであった。
また、同一試料について、1ヶ月後と6ヶ月後の5ヶ月間の、経時変化を見た場合、α線量の差は0.002cph/cm2であり、これも本願発明の条件を満たしていなかった。
Claims (9)
- 溶解・鋳造した後の試料のα線量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする銀。
- 溶解・鋳造から1週間後、3週間後、1ヵ月後、2ヵ月後、6ヵ月後及び30ヵ月後の、それぞれのα線量が0.002cph/cm2以下であることを特徴とする銀。
- 試料の第1回目に測定したα線量が0.002cph/cm2以下であって、そのα線量と、それから5ヶ月経過した後に測定したα線量との差が0.001cph/cm2以下であることを特徴とする銀。
- 試料の第1回目に測定したα線量が0.002cph/cm2以下であって、そのα線量と、それから5ヶ月経過した後に測定したα線量との差が0.001cph/cm2以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の銀。
- Pb含有量が0.1ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の銀。
- U,Thのそれぞれの含有量が1ppb以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の銀。
- 前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の銀を1〜10%含有する合金であって、該合金が、請求項1〜4に記載する銀と同等のα線量を示すことを特徴とする銀含有合金。
- 純度3Nレベルの原料銀を硝酸又は硫酸で浸出した後、Ag濃度700g/L以下の電解液を用いて電解精製することを特徴とする前記請求項1〜6のいずれか一項に記載の銀の製造方法。
- Ag濃度を30g/L以上として電解することを特徴とする請求項8記載の銀の製造方法。
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