JP2011212743A - 変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る鋼板の温度予測方法は、熱間圧延プロセスにて冷却又は加熱される鋼板Wの板温度を予測するものであって、鋼板Wの変態に伴う変態発熱量又は変態熱速度から算出される発熱量を加味した上で、鋼板Wと外部との熱収支を計算し、鋼板Wの板温度の予測値を算出する板温度予測工程と、この板温度予測工程を行うにあたり、変態発熱量又は変態熱速度を鋼板Wの過冷却の度合い又は過加熱の度合いに応じて修正する変態因子変更工程と、を有する。
【選択図】図1
Description
例えば、冷却装置での板温度予測及び温度制御に関しては、特許文献1〜特許文献3に示されるような様々な技術が開発されている。
しかしながら、板温度の予測誤差がフィードフォワード制御の精度を左右するなど、予測誤差が温度制御に与える影響は大きい。係る状況を回避するために、制御部において予測結果の学習を行う手段が採用されることがあり、特許文献1は冷却装置を高精度に制御するための冷却制御モデルの学習方法を開示している。
例えば、実際の現場における冷却装置では、種々の要因により圧延速度が変化し、それに伴い冷却装置での搬送速度も変化する。搬送速度が変わると、鋼板の先端部と尾端部とで冷却時間が異なるようになり、ひいては鋼板の冷却温度履歴も変化するようになる。
しかしながら、変態に伴う発熱のメカニズムは複雑であり、実際の現場において特許文献2,3の技術を採用しようとしたとしても、変態発熱量の推定は困難を極めるのが実情である。特に、変態発熱量が大きい高シリコン鋼や高炭素鋼ではその影響が大きい。
特許文献3においては、発熱モデルとして温度に依存するモデルを与えているが、それがどのようにして求められるのか全く記述が無く、実際の操業に適用しようとしても困難を極める。
すなわち、本発明に係る変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法は、熱間圧延プロセスにて冷却又は加熱される鋼板の板温度を予測する温度予測方法において、前記鋼板の変態に伴う変態発熱量(単位変態率当たりの変態発熱量)又は変態熱速度から算出される発熱量を加味した上で、鋼板と外部との熱収支を計算し、鋼板の板温度の予測値を算出する板温度予測工程と、前記した板温度予測工程を行うにあたり、前記変態発熱量又は変態熱速度を、前記鋼板の過冷却の度合い又は過加熱の度合いに応じて修正する変態因子変更工程と、を有することを特徴とする。
なお、本発明における変態とは、A3やA1,Ar’,Ar”変態などの鉄の同素変態や、Acm変態などのセメンタイト変態、鉄の同素変態とセメンタイト変態が同時に起こるパーライト変態やベイナイト変態、A2やA0変態などが該当し、これら変態に伴う変態発熱量(単位変態率当たりの変態発熱量)あるいは変態熱速度を、過冷却の度合い又は過加熱の度合いに応じて変更することで、冷却温度履歴あるいは加熱温度履歴の違いによる変態温度域の変化に対応した高精度な温度予測あるいは制御が可能となる。
・A3変態:α鉄〜γ鉄の変態(加熱時はAc3、冷却時はAr3)
・A2変態:鉄の磁気変態
・A1変態:オーステナイト〜パーライトの変態
(加熱時はAc1、冷却時はAr1)
・Ar’変態:過冷時のオーステナイト→微細パーライトの変態
・Ar”変態:過冷時のオーステナイト→マルテンサイトの変態
・A0変態:セメンタイトの磁気変態
好ましくは、前記した変態因子変更工程は、過冷却の度合い又は過加熱の度合いが大きいほど、変態発熱量又は変態熱速度が大きくなるように修正するとよい。
また、前記した変態因子変更工程は、温度A(例えばT2)で変態した場合の単位変態率当たりの変態発熱量と温度B(例えばT3)で変態した場合の単位変態率当たりの変態発熱量との差を、変態前の比熱と変態後の比熱との差を温度区間A〜B(T2〜T3)で積分した積分値に応じて増加減する操作を行うことで、前記変態発熱量又は変態熱速度を修正するようにしてもよい。
前記した変態因子変更工程は、鋼板のCCT線図、TTT線図、あるいは材質モデルに基づいて、変態率、変態率の変化量、変態率の変化速度の少なくとも1つを算出する変態率予測工程を有し、前記変態率予測工程により算出された値を基に、前記変態発熱量、変態熱速度、温度変化量の少なくとも1つを算出する操作を行うことで、前記変態発熱量、変態熱速度、温度変化量のいずれかを修正してもよい。
前記した変態因子変更工程は、所定の鋼種に関する比熱曲線、変態発熱量の曲線、変態熱速度の曲線を予め与えておくと共に、所定の鋼種に関しては、与えられた前記曲線を基に請求項1〜7のいずれかに記載された温度予測方法で板温度の予測を行い、前記曲線が与えられていない鋼種に対しては、前記所定の鋼種の内、成分あるいは圧延条件の近い鋼種を選ぶと共に、選ばれた鋼種の前記曲線を基に請求項1〜7のいずれかに記載された温度予測方法で、前記曲線が与えられていない鋼種の板温度の予測を行うものであってもよい。
なお、磁気変態を考慮するに際しては、常磁性体に対して強磁性体の比熱を大きく与えると共に、強磁性体への変態はフェライト、セメンタイト、マルテンサイトのいずれかの組織に限定し、A2点(セメンタイトではA0点)以下で存在する前記限定した組織が、直ちにあるいはある時間遅れを伴って強磁性体に変態するものとし、該組織の組織分率に応じて強磁性体への変態率、変態熱量、変態熱速度の少なくとも一つを算出することは非常に好ましい。
図1は、熱間連続圧延装置1の圧延機2(最終圧延機)から冷却装置3、巻き取り装置4に至るまでの装置構成を示した図である。なお、鋼板W(圧延材)の移送方向において、巻き取り装置4側を下流側、その圧延機2側を上流側と呼ぶ。
圧延機2の下流側には、冷却装置3が備えられている。冷却装置3は、複数の冷却バンク7を鋼板Wの上下(表裏)面に備え、この冷却バンク7が鋼板移送方向に複数個連なるように配置される構成となっている。冷却バンク7には、鋼板Wに向けて冷却水を吹き付けて鋼板Wの温度を下げる複数の冷却ノズルが備えられ、各冷却ノズルには冷却水の流量をオン・オフ制御可能な冷却バルブが設けられている。この冷却バルブを開状態にすると冷却水が冷却ノズルから噴出するため、開状態の冷却バルブ数を変更することで、冷却ノズルから鋼板Wに吹き付けられる冷却水の量が変わり、板温度の温度降下量が変化する。
冷却装置3で所定の板温度まで冷却された鋼板Wは、巻き取り装置4によりコイル状に巻き取られる。
上述した入側温度計8、中間温度計9、出側温度計10での板温度、ワークロール5,5の周速(通板速度)等の様々な実績値は、熱間連続圧延装置1を制御する制御部11に入力されるようになっている。
[第1実施形態]
第1実施形態(実施例1)の温度予測方法は、熱間圧延プロセスにて冷却又は加熱される鋼板Wの板温度を予測するものであり、鋼板Wの変態に伴う変態発熱量又は変態熱速度から算出される発熱量を加味した上で、鋼板Wと外部との熱収支を計算し、鋼板Wの板温度の予測値を算出する板温度予測工程と、この板温度予測工程を行うにあたり、鋼板Wの変態発熱量又は変態熱速度を、鋼板Wの過冷却の度合い又は過加熱の度合いに応じて修正する変態因子変更工程と、を有することを特徴とする。
まず、鋼板Wの温度予測に用いる温度予測モデル(板温度予測工程で用いられる温度予測モデル)に関しては、様々なものが採用可能である。例えば精緻なモデルとして、熱伝達による鋼板W表面からの熱流束、鋼板Wの変態発熱に加え、厚み方向の温度分布を考慮した式(1a)〜式(1c)を考えることができる。
輻射による放熱については、熱伝達とは別に記述することも可能であるが、輻射による上下面の熱流束QRu(0,t),QRd(0,t)をT(0,t)−Tu(t),T(h,t)−Td(t)で除したものをそれぞれ上下面の熱伝達率αd,αuに加算し、熱伝達に含めることができる(図3参照)。それ故、ここではαd,αuに輻射による熱流束も加算し、表現を簡易にしておくこととする。
一方、温度予測モデルとして、厚み方向の温度分布を考慮しない簡易なモデル(式(2)を採用することもできる。
以降、第1実施形態では、板温度予測工程で用いられる温度予測モデルとして、厚み方向の温度分布を考慮しない簡易なモデルを考えることとする。この式を基に、板温度の降下量ΔTを求めるためには、式(2)を積分することで得られる式(3)を利用するとよい。
しかしながら、特許文献2に示した如く、変態による発熱温度域を固定した上で変態発熱の算出を行う従来技術はあったものの、発熱温度域が変化するなど実際の状況に即しつつ正確に変態発熱を求めたものはなかった。そこで、第1実施形態では、より正確に変態発熱量を求める技術を開示する。
まず、図4には、A3変態前後における、最も一般的な鋼種(S45C)におけるフェライトとオーステナイトの比熱(実線にて示され且つ上側に位置する線)と、オーステナイトステンレス鋼の比熱(破線で示され且つ下側に位置する線)とを示す。
また、図5に、変態発熱を含めた見かけ上の比熱を示す。この図は、図4のA2変態温度TA2以下の箇所を拡大した図であり、高温域で変態した場合の見かけ上の比熱を示している。この図から判るように、一般的に冷却時には冷却速度が緩やかな場合、変態温度域は高くなる。一方、冷却速度が速い場合、変態温度域は低温側に移動する。
なお、式(7)を満たすように定数項を与えた場合、式(9)のように、既知の単位変態率当たりの変態発熱量Qn(TA)に対して、係る積分値(あるいは積分値+定数項)で修正し、単位変態率当たりの変態発熱量予測値を与えていると見ることもできる。
第1実施形態を使用して、冷却装置3での鋼板Wの巻取り温度(CT)を予測したところ、冷却温度履歴に依存しない温度予測が可能になったことを、本願出願人らは確認している。
ただし、a,bは過冷却度あるいは過加熱度に関係のない定数項であり、定数項a、bが式(7)を満たしていない場合、全温度域において変態発熱量予測値のオフセット誤差として現れる。定数項a,bをなるべく適切に設定しようとすれば、式(7)を満たすように与えればよい。
ところで、上記では、式(4)で示されるように、変態前の結晶構造あるいは磁性における比熱(cγ(T))と、変態後の結晶構造あるいは磁性における比熱(cα(T))との差を随時積分し、発熱量予測値Q’n(T)を算出する手順を述べたが、それら比熱は、鋼種毎に(温度依存特性を含め)固定しており、毎回計算する必要はない。
[第2実施形態]
前述した第1実施形態では、cα−cγの積分値によって発熱量予測値Q’n(T)を定めることとしていた。しかしながら、第2実施形態(実施例2)では、cα−cγを厳密に積分値で与えずに、例えば、図12の破線の如く、第1実施形態の発熱量予測値Q’n(T)を区間線形近似した曲線(関数又はテーブル)で与えるようにしている。このような「線形近似曲線」を採用したとしても、従来技術よりも格段に正確な板温度の予測を行えることを本願出願人は確認している。
[第3実施形態]
第2実施形態における発熱量予測値Q’n(T)の線形近似の際には、過冷却度あるいは過加熱度が大きいほどQ’n(T)を発熱方向に増加するように曲線(関数又はテーブル)を与えていた。しかしながら、第3実施形態(実施例3)では、図13のように、過冷却度が増加する領域において発熱がより減少する(吸熱方向に向かう)ように曲線を与えることとしている。この実施形態であっても第2実施形態とほぼ同等の効果を得ることができることを本願出願人は確認している。
[第4実施形態]
第4実施形態(実施例4)では、図14に示す如く、cα>cγの区間においては、過冷却度あるいは過加熱度が大きいほどQ’n(T)を発熱方向に向かうように曲線(関数又はテーブル)を与えてるいる。逆に、cα<cγの区間においては、過冷却度あるいは過加熱度が大きいほどQ’n(T)を吸熱方向に向くように曲線を与えている。
[第5実施形態]
第5実施形態(実施例5)では、過冷却時又は過加熱時の比熱を求める際に、過冷却時以外あるいは過加熱時以外の比熱曲線を一次以上の直線や曲線で近似し、該近似曲線を延長することによって、過冷却又は過加熱時の比熱を算出し、算出された過冷却時又は過加熱時の比熱を基に前記積分値を求めるようにしている。
まず、図15には、一般的な鋼種のフェライト及びオーステナイトの定圧比熱が示されている。この図における実線部分は計測した比熱であり、緩冷却・緩加熱による比熱計測により計測可能な値である。
一方、過冷却や過加熱では図15の実線部以外の温度域の比熱も必要となる。一般に比熱は格子振動による格子比熱、電子振動による電子比熱、磁気エネルギエネルギによる比熱などの和で表わされる。
特に、オーステナイトは比熱測定で実測可能な温度域がTA3からTA4の高温域しかなく、低温域での比熱はデバイモデルによって与える。また低温部での定圧比熱を得るためには、デバイ比熱に加え、下記に記述するP×ΔVや電子比熱や磁気エネルギによる比熱変化の影響分を加える必要がある。それら影響分は低温部では微少であり、省略しても良い。但しオーステナイトでは極低温で反強磁性体となる磁気変態点が存在し比熱ジャンプを起こすが、鉄鋼の製造プロセスにおける鋼板Wの冷却・加熱温度域外であり、上述の実施例では必要としない温度域での比熱であり、本実施例では考慮する必要はない。
磁気エネルギによる比熱変化の定量的なモデルは与えられていない。一般に高温域での比熱は、温度範囲を区切ると一次式あるいは二次式で近似可能とされており、上記デバイ模型とP×ΔVと電子比熱を合算した比熱と実測した比熱を滑らかに結ぶように磁気エネルギによる比熱変化を与えると、図15のオーステナイト比熱の破線部のような曲線を得る。同様に常磁性体フェライトの比熱も、図15の破線部のように与えることができる。
なお、第5実施形態によらない比熱算出方法としては、熱力学データベースに基づくソフトウエアを活用した比熱や、比熱実測値の一次式あるいは二次式による近似モデルが存在する。しかしながら、係るソフトウエアによる比熱は、成分が異なる各種鋼板Wにおいて実測値と乖離する場合がある。これに対して本実施形態では各種鋼板Wの実測値を使用し、それらを滑らかに結ぶため、比較的正確な比熱を得ることができる。
図17から、オーステナイト(γ鉄)では高温での比熱測定であるため、比熱測定値にも誤差があるため、温度依存性の影響を表現できず、低温部において本実施例と大きく乖離している。それに対して本実施例ではデバイモデルによる近似式に基づいているため、より実際に近い近似となっている。また常磁性体ではα鉄とδ鉄それぞれに対して一次あるいは二次式近似を与えているため、その間のTA3からTA4の間の比熱において、本実施例と乖離している。本実施例ではTA3からTA4の間を滑らかに結んでおり、より実際に近い比熱を与えている。
[第6実施形態]
ところで、第5実施形態で説明した手法においては、成分の違いによるデバイモデルや電子比熱の違いを考慮していなかった。第6実施形態(実施例6)では、その違いを考慮することにする。
また、特殊な添加成分を含み、そのデバイ比熱や電子比熱が不明な場合、その添加材のカーボン等度に応じてカーボン濃度を増加減させ、デバイ比熱や電子比熱を算出することで特殊な添加材にも対応可能である。
[第7実施形態]
以上、第1実施形態〜第6実施形態に亘り、変態熱速度qや変態発熱量Qを正確に求める手法を説明してきたが、現実には、少しずつ成分が異なる全ての鋼種について、比熱を実測するのは非常に手間と時間を要し、事実上困難である。
今、比熱曲線が与えられていない鋼種Bと選ぶと共に、成分、強度、冷却停止温度の少なくとも一つ以上が近い鋼種Aを選ぶ。
上記により、鋼種Bに近い鋼種Aが選ばれれば、鋼種Aの比熱曲線を鋼種Bの比熱曲線とする。更に鋼種Aの比熱曲線をデバイ比熱モデルや電子比熱の差分だけ増加減し、鋼種Bの比熱曲線とすれば、より実際に近い比熱を得ることができる。デバイ比熱の差ΔcD(T)や電子比熱の差ΔcE(T)は、鋼種Bのデバイ比熱cDB(T)及び電子比熱cEB(T)、鋼種Aのデバイ比熱cDA(T)及び電子比熱cEA(T)を用い、式(17)で与えられる。なお、デバイ比熱cDB(T)、電子比熱cEB(T)、デバイ比熱cDA(T)、電子比熱cEA(T)は、式(15)、式(16)などから算出可能である。
なお、鋼板Wに添加された添加物が固溶したオーステナイト比熱も、何も固溶していないオーステナイト比熱が分かっていれば、上記にて算出可能である。
[第8実施形態]
次に、第8実施形態(実施例8)について述べることとする。第8実施形態では、磁気変態を考慮した上で、変態発熱量Q、変態熱速度qを算出し、鋼板Wの予測温度を算出する方法について説明する。
A4あるいはA3あるいはA1変態で起こるオーステナイト〜フェライトの相変態は一次相転移と呼ばれ、変態温度TA4あるいはTA3あるいはTA1で潜熱による冷却時発熱あるいは加熱時吸熱が発生する。加えて、組織変化に伴い比熱が不連続に変化する。
また、A2あるいはA0変態(あるいはオーステナイトの反強磁性体への磁気変態)などの磁気変態は固体物理学において二次相転移と呼ばれ、潜熱は発生せず比熱だけが変態温度TA4あるいはTA3で比熱が不連続変化するとされている。
鋼板冷却あるいは加熱プロセスにおける従来の鋼板度予測あるいは温度制御分野では、熱物性測定や熱力学データベースに沿ってモデル構築を行っており、実測された見かけ上の比熱を真とするのみで、過冷却あるいは過加熱時の挙動はモデル化されていない。
・過冷却時にA2点以下に存在する常磁性フェライトは直ちにあるいはある時間遅れを伴って強磁性フェライトに変態する。
・あるいは、過加熱時にA2点以上に存在する強磁性フェライトは直ちに、あるいはある時間遅れを伴って常磁性フェライトに変態する。
・過冷却時にA2点より低いAr3点でオーステナイトからフェライトに変態する際は、直ちに強磁性フェライトに、あるいは一旦常磁性フェライトに変態した後にある時間遅れを伴って強磁性フェライトに変態する。
・あるいは過加熱時にA2点より高いAc3点でオーステナイトからフェライトに変態する際は、直ちに強磁性フェライトに、あるいは一旦常磁性フェライトに変態した後にある時間遅れを伴って強磁性フェライトに変態する。
以上の結果として、図18に、式(18)に基づくA3変態における過冷却及び過加熱時の変態熱予測値を示す。図19に、式(19)に基づくA2変態における過冷却及び過加熱時の変態熱予測値を示す。
一方、TA2以下で過冷却によりオーステナイトが常磁性体フェライトに変態し、その後、ある時間後に強磁性体フェライトに変態するとすれば、A3変態で式(18)の変態熱が発生した後、A2変態で式(19)の変態熱が発生することになる。
[第9実施形態]
第9実施形態(実施例9)では、A1変態における変態発熱量Q、変態熱速度qをより正確に算出する手法について述べる。
また、式(22)のようにA1変態の変態熱をフェライトとセメンタイトの変態熱から算出するのではなく、式(21)〜式(23)からセメンタイトがxc%含んだパーライトの比熱をcXc(T)とし、式(24a)〜式(24c)と与えてもよい。
[第10実施形態]
第1実施形態〜第9実施形態では、冷却あるいは加熱プロセスで温度予測する上で必須の比熱のみを用いて変態発熱量を変更することにより、簡便で高精度に変態熱を予測可能とすることとしていた。一方、変態の開始終了温度を予測するに際しCCT線図やTTT線図に基づく手法などもあり簡便ではあるが、今後、計算機パワーの向上により材質予測モデルに基づいて変態の開始終了温度を予測することも可能となる。
すなわち、材質予測モデルではギブスの自由エネルギを算出しており、このギブスの自由エネルギを用いると、式(14)は、次式で与えられる。
さらに、式(14a)に式(25)、式(14c)を代入し整理すると、予測値Q’n(T)は、式(26)のように、ギブスの自由エネルギの差とエントロピの差によって与えられ、比熱の代わりに自由エネルギとエントロピを用いれば、式(26)から予測値Q’n(T)を直接算出することも可能である。
[第11実施形態]
第11実施形態(実施例11)では、鋼板WのTTT線図に基づいて、変態率、変態率の変化量、変態率の変化速度の少なくとも1つを算出し(変態率予測工程)、それを基に、変態発熱量Q、変態熱速度q、それらによる温度変化量Q/cの少なくとも一つを算出して、その上で、鋼板Wの予測温度を算出する方法について説明する。
今、温度TAでの変態率当たりの変態熱、あるいは図21の温度TAでの変態熱の総和、あるいは図21の温度TAでの変態熱の発熱パターン(熱量と時間の関係)などが与えられているとする。
第11実施形態では、過冷却度あるいは過加熱度に応じて発熱速度q(T,t)を修正するため、与えられたパターン関数Pがどの温度での発熱パターンであるかが重要であり、例えばパターン関数PがTAでの発熱パターンであるとすれば、発熱速度q(T,t)は、式(28)となる。
また、パターン関数Pが変態率自体のパターンを与えているとすれば、変態率の変化速度g(T,t))は当然ながら変態率パターンの時間微分となり、式(30)のようになる。
第12実施形態(実施例12)では、鋼板WのCCT線図に基づいて、変態率、変態率の変化量、変態率の変化速度の少なくとも1つを算出し(変態率予測工程)、それを基に、変態発熱量Q、変態熱速度q、それらによる温度変化量Q/cの少なくとも一つを算出して、その上で、鋼板Wの予測温度を算出する方法について説明する。
今、冷却速度VAでの変態率当たりの変態熱、あるいは図23の冷却速度VAでの変態熱の総和、あるいは図23の冷却速度VAでの変態熱の発熱パターン(熱量と時間の関係)などが与えられているとする。
またパターン関数PあるいはテーブルPが与えられた場合の冷却速度Vにおける発熱速度qや発熱量Qや温度変化量Q/cの算出方法も第11実施形態と同様であるが、CCT線図では冷却速度一定としているため、時間よって温度が変化する。したがって例えばパターンPが冷却速度VAでの発熱パターンであるとすれば発熱速度q(T,t)は、式(31a),式(31b)となる。
つまり、第11実施形態では、TTT線図を用い、パターンを(t−tS)/(tE−tS)のパターン関数あるいはテーブルとしたが、第12実施形態では、CCT線図を用い、変態開始温度TSと終了温度TEが与えられた場合、パターンを(T−TS)/(TE−TS)の関数としてもよい。
例えば、実施形態の説明においては、冷却装置3における鋼板Wの冷却プロセスを念頭に置きつつ、鋼板Wの温度予測手法について説明を行ったが、加熱装置で行われる加熱プロセスも関しても全く同じモデル、同様の考え方が採用可能である。
2 圧延機(最終圧延機)
3 冷却装置
4 巻き取り装置
5 ワークロール
6 バックアップロール
7 冷却バンク
8 入側温度計
9 中間温度計
10 出側温度計
11 制御部
W 鋼板
Claims (10)
- 熱間圧延プロセスにて冷却又は加熱される鋼板の板温度を予測する温度予測方法において、
前記鋼板の変態に伴う変態発熱量又は変態熱速度から算出される発熱量を加味した上で、鋼板と外部との熱収支を計算し、鋼板の板温度の予測値を算出する板温度予測工程と、
前記した板温度予測工程を行うにあたり、前記変態発熱量又は変態熱速度を、前記鋼板の過冷却の度合い又は過加熱の度合いに応じて修正する変態因子変更工程と、
を有することを特徴とする変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。 - 前記した板温度予測工程が、変態発熱量に基づく温度変化量又は変態熱速度から算出される温度変化量を加味した上で、鋼板と外部との熱収支を計算し、鋼板の板温度の予測値を算出する場合には、
前記した変態因子変更工程は、前記変態発熱量に基づく温度変化量又は変態熱速度から算出される温度変化量を、前記鋼板の過冷却の度合い又は過加熱の度合いに応じて修正することを特徴とする請求項1に記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。 - 前記した変態因子変更工程は、過冷却の度合い又は過加熱の度合いが大きいほど、変態発熱量又は変態熱速度が大きくなるように修正することを特徴とする請求項1又は2に記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。
- 前記した変態因子変更工程は、オーステナイト比熱がフェライト比熱よりも低い温度域において、過冷却の度合い又は過加熱の度合いが大きいほど、A3変態による変態発熱量が大きくなるように修正することを特徴とする請求項3に記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。
- 前記した変態因子変更工程は、温度Aで変態した場合の単位変態率当たりの変態発熱量と温度Bで変態した場合の単位変態率当たりの変態発熱量との差を、変態前の比熱と変態後の比熱との差を温度区間A〜Bで積分した積分値に応じて増加減する操作を行うことで、前記変態発熱量又は変態熱速度を修正することを特徴とする請求項1又は2に記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。
- 前記した変態因子変更工程は、
過冷却時又は過加熱時の比熱を求める際に、過冷却あるいは過加熱以外の比熱曲線を一次以上の直線や曲線で近似し、該近似曲線を延長することによって、過冷却又は過加熱時の比熱を算出し、算出された過冷却又は過加熱時の比熱を基に前記積分値を求めることを特徴とする請求項5に記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。 - 前記した変態因子変更工程は、
鋼板のCCT線図、TTT線図、あるいは材質モデルに基づいて、変態率、変態率の変化量、変態率の変化速度の少なくとも1つを算出する変態率予測工程を有し、
前記変態率予測工程により算出された値を基に、前記変態発熱量、変態熱速度、温度変化量の少なくとも1つを算出する操作を行うことで、前記変態発熱量、変態熱速度、温度変化量のいずれかを修正することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。 - 前記した変態因子変更工程は、
所定の鋼種に関する比熱曲線、変態発熱量の曲線、変態熱速度の曲線を予め与えておくと共に、所定の鋼種に関しては、与えられた前記曲線を基に請求項1〜7のいずれかに記載された温度予測方法で板温度の予測を行い、
前記曲線が与えられていない鋼種に対しては、前記所定の鋼種の内、成分あるいは圧延条件の近い鋼種を選ぶと共に、選ばれた鋼種の前記曲線を基に請求項1〜7のいずれかに記載された温度予測方法で、前記曲線が与えられていない鋼種の板温度の予測を行うことを特徴とする変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。 - 前記した変態因子変更工程は、
磁気変態を考慮した上で、前記変態発熱量、変態熱速度を算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。 - 磁気変態を考慮するに際しては、
常磁性体に対して強磁性体の比熱を大きく与えると共に、強磁性体への変態はフェライト、セメンタイト、マルテンサイトのいずれかの組織に限定し、
A2点(セメンタイトではA0点)以下で存在する前記限定した組織が、直ちにあるいはある時間遅れを伴って強磁性体に変態するものとし、該組織の組織分率に応じて強磁性体への変態率、変態熱量、変態熱速度の少なくとも一つを算出することを特徴とする請求項9に記載の変態発熱量を考慮した鋼板の温度予測方法。
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