JP2011194410A - コーティングされたPbフリーBi系はんだ合金およびその製造方法 - Google Patents

コーティングされたPbフリーBi系はんだ合金およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 濡れ性および信頼性に優れた高温用のPbフリーはんだ合金とその製造方法を提供する。
【解決手段】 コーティングされたPbフリーはんだ合金は、シート状、ワイヤー状またはボール状であって、Biを50質量%以上99.5質量%以下含有するPbフリーはんだ合金と、その表面にコーティングされたAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1元素からなる厚さ0.05μm以上1.20μm以下のコーティング膜とからなる。このPbフリーはんだ合金は、Znを0.4質量%以上13.5質量%以下および/またはSnを0.01質量%以上1.5質量%以下含有してもよく、さらに加えて、Alを0.02質量%以上2.5質量%以下および/またはPを0.001質量%以上0.500質量%以下含有してもよい。
【選択図】 なし

Description

本発明はコーティングされたPbフリーはんだ合金およびその製造方法に関し、とくにコーティングされるPbフリーはんだ合金が高温用に用いられるBi系のものに関する。本発明は、さらに該コーティングされたPbフリーはんだ合金を用いて電子部品が接合された実装基板、および該実装基板が搭載された各種装置に関する。
近年、環境に有害な化学物質に対する規制がますます厳しくなってきており、これは電子部品を基板に接合する目的で使用されるはんだ材料に対しても例外ではない。Pbは、はんだ材料の主成分として古くから使われ続けてきたが、すでにRohs指令等で規制対象物質になっている。このため、Pb(鉛)を含まないはんだ(以降、Pbフリーはんだと称する)の開発が盛んに行われている。
電子部品を基板に接合する際に用いるはんだは、その使用限界温度によって高温用(約260℃〜400℃)と中低温用(約140℃〜230℃)に大別され、それらのうち中低温用はんだに関してはSnを主成分とするものでPbフリーが実用化されている。例えば、特許文献1にはAgを1.0〜4.0質量%、Cuを2.0質量%以下、Niを0.5質量%以下、Pを0.2質量%以下含有し、残部がSnからなるPbフリーはんだ合金が開示されている。また、特許文献2にはAgを0.5〜3.5質量%、Cuを0.5〜2.0質量%含有し、残部がSnからなる合金組成のPbフリーはんだが記載されている。
一方、Pbを含まない高温用のはんだ材料に関しては、さまざまな機関で開発が行われている。例えば、Bi系はんだでは、特許文献3に、Biを30〜80質量%含み、溶融される温度が350〜500℃であるBi/Agろう材が開示されている。また、特許文献4に、Biを含む共昌合金に2元共昌合金を加え、さらに添加元素を加えたはんだ合金が開示されており、液相線温度の調整とばらつきの減少が可能な生産方法が開示されている。
高温用はんだに一般的に求められる特性としては、上記した適度な液相線温度のほか、はんだと電子部品または基板の濡れ性が良好であることが求められる。このため、特許文献5には、はんだ合金粉末粒子の表面に、当該はんだ合金の構成成分のうちの1種以上によるコーティング層を1層以上設け、且つ当該はんだ合金粉末粒子全体の平均組成が当該はんだ合金の所定の合金組成に等しいことを特徴とするPbフリーはんだ合金粉末が開示されている。そして、当該コーティングによって濡れ広がり性に優れるうえ、予め調整したコーティング材と初期はんだ材の組成がリフロー時に均一に混ざることにより狙いの組成のはんだとなってはんだ付けが可能であると記載されている。
また、特許文献6には、50〜65質量%のCu、15〜29質量%のSn、10質量%のAg、5質量%のBi、5質量%のIn、1質量%以下のZn(Znを含まない場合を含む)からなる合金を溶融して製造した粒子表面にSnで表面処理を施した合金粒子が開示されている。この合金粒子の平均粒子径は、0.1〜20μmであり、各合金粒子は示差走査熱量測定(DSC)によって吸熱ピークが観察される温度として定義される複数の融点を示し、該示差走査熱量測定において少なくとも1つの発熱ピークを示すことが記載されている。
そして、これら複数の融点は、最も低温の吸熱ピークが観察される温度である初期最低融点、および最も高温の吸熱ピークが観察される温度である最高融点を含み、各合金粒子は少なくとも表面部分において該初期最低融点を示し、各合金粒子を、該初期最低融点またはそれ以上の温度で加熱し、これにより各合金粒子について該初期最低融点を示すその少なくとも表面部分を溶融させた後、各合金粒子を室温まで冷却することによって各合金粒子の溶融部分を固化させることが示されている。このように加熱および固化を経た各合金粒子は、初期最低融点より高い上昇最低融点を示すことが記載されている。すなわち、合金粒子の主成分の一つ(Sn)で表面処理(コーティング)を行い、これらが加熱溶融後、初期最低融点よりも高い最低融点になることが示されている。
特開1999−077366号公報 特開平8−215880号公報 特開2002−160089号公報 特開2006−167790号公報 特開2004−090011号公報 特許第4342176号
鉛を含まない高温用のはんだ材料に関しては、上記のようにさまざまな機関で開発されてはいるものの、Biを主成分とするはんだをはじめとして、未だに実用化の面で許容できる特性を有するはんだ材料は見つかっていないのが実情である。
Biを主成分とするはんだにおいて克服すべき課題は、その脆さと融点が約260℃を超えることができるか否かにある。例えば、Biを主成分とするはんだ合金をワイヤーなどに加工しようとすると、その脆さ故にすぐに折れてしまい取り扱いが非常に困難になることがある。そこで、この脆さを改善したり融点を上げたりすることを目的として様々な元素が添加されている。
様々な元素を添加することによってBi合金の脆性的性質や融点の問題はかなり改善されるものの、これが逆にはんだと電子部品または基板との接合性、所謂、濡れ性に悪影響を及ぼすことがあった。つまり、Bi系はんだをより使い易く実用的なはんだにするため、様々な元素を添加することが行われているが、これによりかえって濡れ性が低下してしまい、そのための対策が別途必要になるという問題が生じていた。
また、一般的に電子部品や基板には熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの比較的耐熱温度の低い材料が多用されているため、作業温度を400℃未満、望ましくは370℃以下にする必要がある。しかしながら、例えば特許文献3に開示されているBi/Agろう材では、液相線温度が400〜700℃と高いため、接合時の作業温度も400〜700℃以上になると推測され、接合される電子部品や基板の耐熱温度を超えてしまうことになる。なお、特許文献3には濡れ性についても触れられていない上、はんだの加工性に関する記述もない。特許文献4に開示されているはんだ合金も濡れ性に関して記載されていない。また、液相線の温度調整のみで4元系以上の多元系はんだになる上、Biの脆弱な機械的特性についての有効な改善策が示されていない。
Bi系はんだの濡れ性の問題を克服する手段として、特許文献5に示すように、濡れ性のよい金属をはんだにコーティングすることが提案されている。しかし、はんだへのコーティング技術にも多くの課題があり、例えばコーティング後の表面状態や加熱溶融の際の温度や時間が非常に重要である。これらを考慮に入れてコーティングを行うことは、現実には非常に困難であることが推測される。
特許文献5にはこのような重要な条件であるコーティング条件やリフロー条件が全く示されていない。さらに、実施例1では、初期はんだ材としてのSn−10.2Znはんだにコーティング材としてのSnをコーティングし、溶融後の全体のはんだ組成がSn−9Znになることが記載されている。しかしながら、この組成では、コーティング材と初期はんだ材が均一な合金になるまで相当な加熱時間を要すると考えられる。さらに、実際にはメタライズ層との反応があるため、初期はんだ材とコーティング材のみで反応が起き、これらだけが均一な組成なることはあり得ず、現実的に実施可能な技術とは考えにくい。
また、特許文献6に記載されているような6元系組成において、最低融点が上がる組成はごく一部であり、さらに比較的融点の低いSnによる融点上昇効果は大きくなく、高温用はんだには適用できない。さらに合金粒子主成分の表面処理により接合性を向上させるには、表面処理条件、合金粒子の保管や取り扱い条件、加熱溶融時の雰囲気や温度条件等において極めて厳密な作業や管理が必要となり、コスト的にはかなりデメリットが大きく、実用性に乏しいと考えられる。
以上、述べたように、高温用Pbフリーはんだにおいては、濡れ性をはじめとして多くの課題が残されており、実用化されていないのが実情である。とくに、高温用のPbフリーはんだの候補であるBiを主成分とするはんだにおいては、Bi合金の加工性や融点を上げるために添加される元素により低下する濡れ性を向上させる必要がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、濡れ性および信頼性に優れた高温用のPbフリーのBi系はんだ合金とその製造方法を提供すること、そして該はんだ合金によって接合された実装基板、および該実装基板を搭載する各種装置を提供することを目的としている。
電子部品を基板に実装する際のいわゆる高温用と言われる場合のリフロー温度は約260℃以上である。従って、電子部品と基板とのはんだ付けに使用される高温用はんだの場合、はんだ合金の固相線は約260℃以上であることが求められる。これを実現するためには、Biを主成分としたPbフリーはんだを採用することが考えられる。
しかしながら、Bi合金の加工性の改善や融点の向上のために添加する元素により、濡れ性は逆に低下してしまうことが多い。そこで本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、Bi系はんだに濡れ性がよいAg、Au、CuまたはNiのうちの少なくとも1元素をコーティングすることにより、Bi系はんだの濡れ性を向上させることが可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明が提供するコーティングされたPbフリーはんだ合金は、シート状、ワイヤー状またはボール状であって、Biを50質量%以上99.5質量%以下含有するPbフリーはんだ合金と、その表面にコーティングされたAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1元素からなる厚さ0.05μm以上1.20μm以下のコーティング膜とからなることを特徴としている。
上記本発明のコーティングされたPbフリーはんだ合金は、さらにZnを0.4質量%以上13.5質量%以下および/またはSnを0.01質量%以上1.5質量%以下含有しているのが好ましく、そのうえさらに、Alを0.02質量%以上2.5質量%以下および/またはPを0.001質量%以上0.500質量%以下含有してもよい。
本発明は、また、上記コーティングされたPbフリーはんだ合金のコーティング膜をメッキ法または蒸着法によりコーティングする方法を提供する。さらに、上記コーティングされたPbフリーはんだ合金を用いて電子部品が接合されている実装基板、およびこの実装基板が搭載されている装置を提供する。
本発明によれば、環境に有害であって様々な規制を受けているPbを使うことなく、電子部品と基板の接合のための高温用のはんだを提供することができる。このはんだは、所望の強度と信頼性を確保すべく作製されたBiを主成分とするはんだ合金に、Ag、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1つがコーティングされている。これにより、約260℃以上のリフロー温度に十分耐えることができる上、濡れ性や信頼性にも優れたはんだ材料が得られる。その結果、従来不可能であった高温でのはんだ付けが可能となるので、本発明による工業的な貢献度は極めて高い。
本発明のコーティングされたPbフリーはんだ合金は、シート状、ワイヤー状またはボール状であって、Biを50質量%以上99.5質量%以下含有するPbフリーはんだ合金と、その表面にコーティングされたAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1元素からなる厚さ0.05μm以上1.20μm以下のコーティング膜とからなることを特徴としている。
具体的に説明すると、コーティング対象となるPbフリーはんだ合金は、シート状、ワイヤー状またはボール状の形状を有している。シート状のPbフリーはんだ合金は、主にパワーモジュールのチップ接合の用途に使用され、一般的には幅約3〜30mm、長さ約3〜30mm、厚み約0.05〜0.5mmに成形される。
ワイヤー状のPbフリーはんだ合金は、主にトランジスタのチップ接合の用途に使用され、一般的には線径約0.3〜1.0mmに成形される。ボール状のPbフリーはんだ合金は、主にBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Package)、フリップチップ等のリードレスパッケージにおけるバンプ形成に使用され、一般的には粒径約0.2〜1.0mm程度に成形される。
本発明においては、これらシート状、ワイヤー状またはボール状に成形されたPbフリーはんだ合金の表面に、Ag、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1元素からなるコーティング膜がコーティングされている。コーティング膜の材料をこのようにAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1元素とする理由は、これらは、はんだ材料の濡れ性や接合性、信頼性等を向上させる効果が大きいからである。つまり、Ag、Auは濡れ性や接合性を向上させるためにSiチップの最上層に保護層として形成されることが多い材料である。また、Niはチップの接合性向上を目的として基板上に形成される材料であり、Cuは基板の材料であるため、これらと同じ金属をはんだ合金の表面にコーティングすることによって、接合性や信頼性等を向上させることができる。
上記コーティング膜は、0.05μm以上1.20μm以下の厚さを有している。コーティング膜の厚さをこの範囲に限定することにより、Pbフリーはんだ合金の特性を損なうことなく良好な濡れ性を得ることができる。0.05μm未満では、膜厚が薄すぎて均一な膜を形成することができず、濡れ性が不十分になる。一方、膜厚が1.20μmを超えてしまうと膜が厚くなりすぎて加工が困難になる。また、はんだ合金に対するコーティング膜の割合が高くなりすぎて、接合後のはんだの組成が企図したはんだの組成からずれて所望の特性が得られなくなるおそれがある。さらに、コーティング膜が厚くなることによって、材料費が嵩むうえ、成膜に時間がかかりコストアップに繋がってしまう。
本発明のPbフリーはんだ合金はBiを主成分としている。その理由は、Biは融点が271℃であり、高温用はんだの使用条件である約260℃のリフロー温度を超えているからである。しかしながら、BiはVa族元素(N、P、As、Sb、Bi)に属し、その結晶構造は、対称性の低い三方晶(菱面体晶)で非常に脆い金属であり、引張試験などを行うとその破面は脆性破面であることが容易に見て取れる。つまり純Biは延性的な性質に乏しく、ワイヤーなどに加工することが困難な金属である。
そこで、各種添加元素を添加することによって、このBiの脆さを克服することを行った。添加する元素の種類や量は、Biが有する脆さ等の特性の内、どの特性の改善を目的としているかによって異なる。添加する元素の種類や添加量に応じて、必然的にBiの含有量は変化するので、本発明ではBiの含有率を50質量%以上99.5質量%以下としている。Biの含有量が50質量%未満では、融点、加工性、濡れ性等の特性をバランスよく満たすことが困難になる。一方、Biの含有量が99.5質量%を超えると、Bi成分が多くなりすぎて脆さを改善できなかったり十分な接合性を得られなかったりする。
本発明のPbフリーはんだ合金に添加される元素としては、Zn、Sn、AlおよびPを挙げることができる。Znは、Biを主成分とするPbフリーはんだ合金に添加されると、結晶微細化の効果により脆さを克服することができる上、Bi中にZnが固溶することによっても加工性を改善する。ZnをBiとの共晶点よりも多く添加する場合は、Znリッチな相が発現されることになって、より一層加工性が向上する。
また、Znの添加により、Biと基板を構成するNi層との反応の抑制や、Bi系はんだ中へのNi層の拡散の抑制が可能となる。これは、ZnはNiとの反応においてBiよりも反応性が高く、Ni層の上面に薄いZn−Ni層を作り、これがバリアーとなってNiとBiの反応を抑えることによるものである。その結果、脆いBi−Ni合金が生成されず、さらにはNiがBi中に拡散することもなく、強固な接合性を実現することができる。
このような優れた効果を発揮するZnの最適な添加量は、Ni層の厚さやリフロー温度、リフロー時間等に左右されるものの、概ね0.4質量%以上、13.5質量%以下である。Znの添加量が0.4質量%未満では、Ni拡散の抑制が不十分であったり、Ni拡散の抑制にZnが消費されて良好な加工性が得られなかったりする。一方、Znを13.5質量%より多く添加すると、液相線温度が400℃を超えてしまい、良好な接合ができなくなってしまう。さらにこの組成範囲内のZnが含まれるはんだ合金に後述するAlを適宜調整して添加することによって、Znリッチ相の加工性をより一層改善することが可能となり、Znの効果をより大きく引き出すことができる。
Snは、Pbフリーはんだ合金自身の濡れ性を向上させることができる上、Niの拡散も抑制することができる。これは、SnはZnよりもイオン半径が小さく、3元共晶を引き起こし易いため、Niとの反応性に富んでいることによる。加えて、SnはZnより還元性が弱く酸化しにくいため、Znの一部と置換すべくZnに比べて少量のSnを添加することによって、Ni拡散の抑制効果を確保しながら濡れ性を向上させることができる。
また、微量のSnを添加することによって、比較的多数の拡散サイトが形成され、これによりZnのZn−Ni合金化が促進される。その結果、Ni層の上に効率的にZn−Ni合金が形成され、Bi中へのNi拡散が抑制される。なお、当然のことながら、Sn自身もNi層の上面で合金化し、Ni拡散の防止に寄与する。
以上のように、Snを少量添加することによってZnの添加量を減らすことができ、その結果、Pbフリーはんだ合金自身の濡れ性を向上させることができる。なお、Bi−Snの2元系合金の場合は、Znを単独で添加するよりも少量でNi拡散を抑制できる。しかし、発明者は、Snが1.5質量%より多く含まれると、合金が脆くなってしまうことを確認している。その理由は、Bi中へのSnの固溶量が少ないため、Snのリッチなβ−Sn相が出現し、これが悪影響を及ぼしていると推測している。したがって、Snを添加する場合はZnと合わせて添加することが好ましい。
最適なSnの添加量は、0.01質量%以上、1.5質量%以下である。0.01質量%未満では少なすぎてNi拡散抑制効果や濡れ性向上効果が現れない。一方、1.5質量%より多いと、加工性が低下することを確認しており、その理由は、脆いβ−Snの割合が増加するからではないかと推測している。加えて、Snの融点が低いことも考慮すると、添加量は1.5質量%以下が好ましい。
Pは、必要に応じて添加することによって、Bi/Zn/Sn合金の濡れ性および接合性をさらに向上させることができる。この効果は、Alが添加されている場合においても同様に発揮される。Pの添加によりBi/Zn/Sn合金の濡れ性向上の効果が大きくなる理由は、Pは還元性が強く、自ら酸化することによりはんだ合金表面の酸化を抑制することによる。とくに、酸化しやすいZnがBiとの合金における共晶点である2.7質量%よりもZnリッチ側に添加されることがある場合は、P添加による濡れ性向上の効果は大きい。
Pの添加は、さらに接合時にボイドの発生を低減させる効果がある。すなわち、前述したように、Pは自らが酸化しやすいため、接合時にはんだの主成分であるBi、さらにはZnよりも優先的に酸化が進む。その結果、はんだ母相の酸化を防ぎ、濡れ性を確保することができる。これにより良好な接合が可能となり、ボイドの生成も起こりにくくなる。
Pは、前述したように非常に還元性が強いため、微量の添加でもPbフリーはんだ合金自身の濡れ性向上の効果を発揮する。逆にある量以上では添加しても濡れ性向上の効果は変わらず、過剰な添加ではPの酸化物がはんだ表面に生成されたり、Pが脆弱な相を作り脆化したりするおそれがある。したがって、Pは微量添加が好ましい。
具体的には、Pの添加量は0.001質量%以上が好ましく、その上限値は0.500質量%以下である。Pがこの上限値を超えると、その酸化物がはんだ表面を覆い、逆に濡れ性を落とすおそれがある。さらに、PはBiへの固溶量が非常に少ないため、添加量が多いと脆いP酸化物が偏析するなどして信頼性を低下させる。とくにワイヤー状に加工される場合に、断線の原因になりやすいことを確認している。一方、Pの添加量が0.001質量%未満では期待する還元効果が得られず、添加する意味がない。
Alは、必要に応じて添加することによって、Pbフリーはんだ合金自身の濡れ性向上の効果と、加工性向上効果と、融点調整効果とを得ることができる。Pbフリーはんだ合金自身の濡れ性が向上する理由は、AlはBiやZnよりの還元性が強いため、少量の添加であっても自らが酸化して濡れ性を改善するからである。
ところで、高温用のはんだ合金においては、Ni拡散の防止対策や濡れ性の向上は重要な課題であり、当然のことながら、高いリフロー温度に耐えうることも重要な課題である。加えて、加工性がよいこともはんだ材料の実用化には欠かせない課題である。Alを添加することによって、このはんだの加工性が向上し、より使い易いはんだ材料が得られる。つまり、AlはZnと共晶組成付近でとくに効果が大きく、この理由は結晶の微細化によるものである。なお、Znを添加しても加工性はある程度確保できるわけであるが、製造の際に課される制約条件が多くなり、場合によっては加工性が不十分になることがある。この際、Alの添加が有効である。
Alの添加によってはんだの加工性が向上する理由は、Bi−Zn−Snの3元系状態図、またはBi−Znの2元系状態図を見れば分かるように、Bi/Zn/Sn系合金には、Znの添加量を適宜調整することによって、Znリッチな相を発現させることができ、AlはこのZnリッチな相の加工性を変えることができるからである。また、AlはZnに固溶して加工性を向上させるとともに、共晶組成付近では結晶を微細化して加工性をさらに向上させることもできる。このため、Alの添加量はBi等への固溶量も加味し、Znに対し質量比で数分の1〜20分の1程度の添加が最適となり、これにより加工性を向上させることができる。
Alの添加によって得られる効果は、上記した濡れ性向上および加工性向上に留まることなく、さらに融点調整にも大きな効果を発揮する。つまり、Bi−Al状態図から分かるように、Alの融点上昇効果は非常に大きく、少量の添加で融点を上げることが可能である。
このように、Alの添加は加工性、融点そして濡れ性の3つの特性を考慮しながら少量添加することになる。具体的なAlの添加量は0.02質量%以上が好ましく、その上限値は2.5質量%以下である。2.5質量%より多く添加すると、融点の高いAlが偏析してしまい、接合性を落とすなどの問題を生じてしまう。
一方、下限値の0.02質量%は、AlとZnの共晶組成が重量比でAl=1に対しZn=20程度で、Zn添加量の下限値が0.4質量%程度あることに加え、要求される加工性を加味して実験を行って得られた数値である。0.02質量%未満では期待した加工性や融点上昇の効果は実質的にないことを確認している。なお、Alの添加量が0.02質量%以上2.5質量%以下であれば、はんだ合金全体に比べてさほど多くはないため、はんだに要求される他の特性に悪影響を及ぼすことはない。
次に、本発明のコーティングされたPbフリーはんだ合金の製造方法を説明する。シート状、ワイヤー状またはボール状のはんだ合金を加工する場合は、まずはんだ母合金を作り、得られたはんだ母合金を、シート状、ワイヤー状またはボール状ごとに異なる加工装置にセットして加工する。その後、各形状に加工されたはんだ合金の表面にコーティングを施す。以下、この製造方法を各工程ごとに説明する。
(はんだ母合金の製造)
まず、はんだ母合金の製造方法について説明する。母合金の製造方法はとくに限定されず、例えば、溶解法、連続鋳造法、還元拡散法、電解法などが挙げられる。このうち、高周波による電磁誘導作用を利用した高周波溶解法は、装置が小型であり、金属に電磁誘導による渦電流を発生させるため非常に短時間で金属を加熱溶解できるため好ましい。以下、高周波溶解法による金属試料の製造方法について説明する。
まず原料金属を所定量秤量する。その際、各原料金属は適当な大きさに加工することが好ましい。原料金属が大きな塊状であると、とくに高融点金属が含まれる場合などにおいて、他の金属と溶融しづらくなって溶け残る可能性があるからである。秤量した各原料金属をグラファイト坩堝に投入し、さらに高周波溶解炉のコイル中にセットする。坩堝には溶融金属の酸化防止のため不活性ガスを流す。酸化しやすい金属の場合は還元性ガス、例えば水素を不活性ガスに10vol%以上混ぜた混合ガスを用いてもよい。ガス流量は原料1kg当たり0.7L/分以上流すことが好ましい。ガス流量が少なすぎると大気が混入し合金が酸化してしまい、多すぎるとコストアップになってしまう。
次に合金投入量、各金属の融点を考慮に入れた適当な温度になるようにコイルに電流を流し加熱する。電流を流しすぎると温度が高くなりすぎて、蒸気圧の高い金属成分が蒸発して企図した組成からずれが生じるので好ましくない。一方、電流が少ないと高融点金属などが十分に溶融せず偏析してしまう。金属が溶融したことを確認したうえでガラス棒で溶融金属を攪拌する。十分に混ざったところで高周波電源を切り、速やかにグラファイト坩堝を取り出してその中の溶融金属を鋳型に流し込む。十分に冷却して金属が固まったことを確認した後、鋳型から取り出す。これにより、母合金のインゴットが得られる。
(シート状はんだ合金の加工)
シート状のはんだ合金は、組成に適した条件で圧延機に数回通して所定の厚みに加工することによって得られる。具体的には、圧延機を用いて前述した方法で作製した例えば厚さ5mmの板状インゴットから0.10mmまで圧延することができる。その際、インゴットの送り速度が適切でないと、シートが反ったり厚みにバラツキがでたりしてしまうので、適宜速度を調整しながら圧延していく。その後、スリッター加工により所定の幅に裁断し、シート状のはんだ合金が出来上がる。
(ワイヤー状はんだ合金の加工)
ワイヤー状のはんだ合金は、はんだ母合金を押出機に用いて所定の径のワイヤーに加工することによって得られる。具体的には、あらかじめ押出機をはんだ組成に適した温度に加熱しておき、前述した母合金のインゴットをセットし、ワイヤー状に押し出していく。
押出機の出口から押し出されるワイヤー状のはんだ合金は、まだ熱く酸化が進行し易いため、押出機の出口は密閉構造にしてその内部に不活性ガスを流すことが好ましい。すなわち、押出機の出口では可能な限り酸素濃度を下げてはんだ合金の酸化が進まないようにするのが好ましい。この状態で油圧の圧力を上げていき、はんだ母合金をワイヤー状の形状に押し出していく。その際、ワイヤーの押出速度を調整してワイヤーの切断や変形が生じないようにし、同じ速度でワイヤーを巻き取る。
(ボール状はんだ合金の加工)
ボール状はんだ合金は、気中や液中でのアトマイズ法等によって略均一な粒径を有するボール状のはんだ合金を作製することができる。液中アトマイズ法は金属に合わせ液温を調整でき、高品質のボールを得やすく、とくに油は調整温度幅が広いため好ましい。金属を溶融させるためのヒーターには短時間で加熱溶融でき、スペースをとらない高周波溶解式のものがよい。
一方、気中アトマイズ法でもボール状はんだ合金を製造可能である。例えば、均一液滴噴霧法は、はんだ母合金のインゴットを還元雰囲気にした坩堝内で溶解して溶湯とし、溶湯に一定周波数の振動を与えながら不活性ガスを流した隣接するチャンバー内に勢いよく供給することによって、溶湯をボール状にする方法である。はんだ合金組成や粒径、製造量等に応じて、限定するものではないが、上記のような製造方法を適宜選択すればよい。
このようにして得たシート状、ワイヤー状またはボール状のはんだ合金に対して、次にAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1元素からなるコーティング膜をコーティングする。コーティングの方法としては、メッキ法または蒸着法を挙げることができる。メッキ法は、シート状、ワイヤー状およびボール状のはんだ合金のいずれのコーティングにも使用することができるが、蒸着法はシート状およびワイヤー状のはんだ合金のコーティングにとくに適している。以下、メッキ法および蒸着法でコーティングされるはんだ合金として、それぞれシート状およびワイヤー状のはんだ合金を例にとって説明する。
(はんだ合金へのメッキ)
まず、作製したはんだ合金に均一かつ密着性よくメッキが施されるようにするため、前処理を行う。具体的には、上記加工法で得られたシート状のはんだ合金をエアーブローし、付着している異物を取り除く。次に、このはんだ合金を水洗し、さらに酸洗浄する。これらを必要に応じて数回繰り返してはんだ合金の表面をきれいに仕上げる。その後、速やかに乾燥して前処理を完了する。
次に、上記前処理を終えたはんだ合金をシアン浴に浸してAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1つからなるストライクメッキを行い、さらにその上にAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1つからなるメッキを施す。メッキが施されたはんだ合金は、続いて付着した溶液を洗い流してから速やかに乾燥する。これによりコーティングされたはんだ合金が出来上がる。出来上がったはんだ合金は、酸化したり水分が付着したりしないように密閉性のある容器に保管する。
(はんだ合金への蒸着法)
はんだ合金に蒸着する方法としては、例えば、ガラス板等の支持材にコーティング対象となるはんだ合金を取り付け、この支持材を、はんだ合金を支持している面が下を向くように蒸着機内に設置して蒸着させる方法を挙げることができる。蒸着の際、はんだ合金の表面にコーティング膜を均一に蒸着させるため、コーティングされるはんだ合金は、取り付け部を除いて支持材から離間しているのが好ましい。蒸着用金属を飛ばす方法としては、電子ビーム法または抵抗加熱法のどちらであっても構わない。
例えば、電子ビーム法の場合は、アルミナ製の皿(ハースライナー)に蒸着用金属を載せ、所定の位置にセットする。蒸着機の釜を閉じて粗引き用のローターリーポンプで絶対圧力で10Pa以下まで真空引きした後、ターボ分子ポンプに切り替えて高真空まで真空引きする。ここで良好な真空引きができずに大気が残っていると、金属が酸化して高純度の金属膜を形成できなくなる。したがって、少なくとも1.0×10−3Pa以下まで真空度を上げるのが望ましい。次に膜厚計の電源を入れる。コーティング膜が均一に形成されるように、支持材が取り付けられているステージを回転させる。電子ビームのスイッチを入れ、ガラス窓から蒸着用金属の加熱具合を観察するとともに膜厚計で膜厚形成速度を監視しながら電流を少しずつ上げていく。
蒸着速度は5(Å/秒)以上、50(Å/秒)未満が好ましい。5(Å/秒)未満ではコーティングに時間がかかるとともに膜の酸素濃度が高くなる傾向がある。50(Å/秒)以上では蒸着速度が速すぎて膜が不均一になってしまう。所定の膜厚に達した時点で電子ビーム電源のスイッチを切る。ターボ分子ポンプを停止し、蒸着機内に不活性ガスを導入する。蒸着機内の圧力が大気圧に達したことを確認した後、コーティングされたはんだ合金を取り出す。これによりコーティングされたはんだ合金が出来上がる。
以上説明した本発明のコーティングされたPbフリーはんだ合金を、電子部品と基板との接合に使用することによって、良好な濡れ性が得られるので、ヒートサイクルが繰り返される環境などの過酷な条件下で使用される場合であっても、耐久性のある信頼性の高い電子基板を提供することができる。よって、この電子基板を、例えば、サイリスタやインバータなどのパワー半導体装置、自動車などに搭載される各種制御装置、太陽電池などの過酷な条件下で使用される装置に搭載することによって、それら各種装置の信頼性をより一層高めることができる。
以下、実施例により本発明のコーティングされたPbフリーはんだ合金に関してより具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら制限されるものではない。
[実施例1]
(はんだ母合金の製造)
まず、はんだ母合金を以下に示す高周波溶解法で製造した。Snを僅かに含んだBi/4%Zn(「%」表記は質量%を表しており、「%」表記がないものは残部を意味する。以下同様。)のはんだ組成を狙い、原料としてそれぞれ純度99.9質量%以上のBi、ZnおよびSnを準備した。これらを所定量秤量し、グラファイト坩堝に投入した後、高周波溶解炉のコイル中にセットした。グラファイト坩堝には溶融金属の酸化防止のため、水素を不活性ガスに10vol%以上混ぜた混合ガスを用いた。この混合ガスを原料1kg当たり0.8L/分の流量で供給した。
次に合金投入量および各金属の融点を考慮した適当な温度になるようにコイルに電流を流して加熱した。金属が溶融したことを確認してからガラス棒で溶融金属を攪拌した。十分に混ざったところで高周波電源を切り、速やかにグラファイト坩堝を取り出して、グラファイト坩堝内の溶融金属を鋳型に流し込んだ。十分に冷却した後、金属が固まったことを確認してから鋳型から取り出した。
このようにして厚さ5mmの板状インゴットである試料1のはんだ母合金を作製した。さらに試料1と同様にして試料2〜33のはんだ母合金を作製した。これら試料1〜33のはんだ母合金の組成をICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて分析した。
(シート状加工またはワイヤー状加工)
次に、上記表1の試料1〜33のはんだ母合金のうち、試料1〜9および17〜25についてはシート状に加工した。具体的には、上記にて作製した厚さ5mmの板状インゴットから、圧延機を用いて厚さ0.10mmまで圧延した。その際、インゴットの送り速度を調整しながら圧延した。その後、スリッター加工により25mm幅に裁断した。
一方、試料10〜16および26〜33のはんだ母合金については、押出機にセットして外径0.80mmのワイヤー状に加工した。具体的には、あらかじめ押出機をはんだ組成に適した温度に加熱しておき、母合金のインゴットをセットした。押出機の出口は密閉構造にしてその内部に不活性ガスを流し、酸化が進まないように可能な限り酸素濃度を下げた。この状態で油圧を用いて圧力をかけてはんだ母合金をワイヤー形状に押し出していった。その際、ワイヤーが切れたり変形しないように、ワイヤーの押出速度と巻き取り速度とを調整しながら巻き取った。
(メッキまたは蒸着によるコーティング)
次に、シート状に加工した試料1〜9および17〜25のはんだ合金に対して、それぞれメッキ法で様々な厚みのコーティング膜を表面に施した。具体的には、まず前処理として、各シート状のはんだ合金をエアーブローし、はんだ合金の表面に付着していた異物を取り除いた。次に、水洗および酸洗浄を数回繰り返した。その後、速やかに乾燥して前処理を完了した。
次に、前処理を終えたシート状のはんだ合金をシアン浴に浸し、Ag、Au、Cu、またはNiのいずれかでストライクメッキを行った。さらに、その上にストライクメッキで使用した金属と同じ種類の金属でメッキを施した。メッキ後は、シートに付着している溶液を洗い流し、速やかに乾燥した。出来上がったシート状のはんだ合金は、酸化や水分の付着が起きないように、密閉性のある容器に保管した。
一方、ワイヤー状に加工した試料10〜16および26〜33のはんだ合金には、それぞれ蒸着法で様々な厚みのコーティング膜を表面に施した。具体的には、まず、ワイヤー状に加工された各試料を貼り付けて蒸着するためのガラス板を用意し、その片面側に、ワイヤー状に加工された各試料の両端部をそれぞれ支持するための高さ10mm程度の支持台を2つ設けた。ワイヤー状に加工された各試料を所定の長さに切断し、その両端部をそれぞれ上記2つの支持台に貼り付けた。尚、試料や装置が汚染されないように、作業時は保護手袋、保護マスク等を着用し、試料はピンセットで取り扱った。
このガラス板を、電子ビーム法による蒸着が可能な蒸着機内に、各試料を支持している面が下を向くようにセットした。さらに、アルミナ製の皿(ハースライナー)に蒸着用金属としてAg、Au、Cu、またはNiを載せ、これを所定の位置にセットした。蒸着機の釜を閉じてローターリーポンプで粗引きを行った後、さらにターボ分子ポンプに切り替えて高真空まで真空引きした。コーティング膜が均一に形成されるように、ガラス板をセットしているステージは回転させた。
この状態で電子ビームのスイッチを入れ、ガラス窓から蒸着金属の加熱具合を観察するとともに膜厚計の膜厚形成速度を監視しながら電流を少しずつ上げていった。約10(Å/秒)の速度で所定の膜厚まで金属膜を蒸着させていった。所定の膜厚に達したところで電子ビーム電源のスイッチを切った。ターボ分子ポンプを停止させ、蒸着機内に不活性ガスを入れて大気圧に達した後、試料を取り出した。
上記の方法で設けられたコーティング膜の膜厚を、EPMAライン分析により測定した。具体的に説明すると、コーティングされたはんだ合金を各々樹脂に埋め込み、研磨機を用い粗い研磨紙から順に細かいものを用い、最後にバフ研磨を行った。その後、EPMA(装置名:SHIMADZU EPMA−1600)を用いてライン分析を行い、コーティング膜の膜厚を測定した。膜厚は任意に3箇所、膜厚が薄いものに関しては5箇所測定し、平均値を採用した。このようにして測定した各試料のコーティング膜の膜厚を、コーティング膜の材質、はんだ合金の形状および組成と共に下記の表1に示す。
Figure 2011194410
次に、上記表1に示す試料1〜33のコーティングされたはんだ合金に対して、それぞれ下記に示す濡れ性評価(接合性評価)、ヒートサイクル試験、および大気中耐熱試験を行った。
<濡れ性評価(接合性評価)>
Cu基板(板厚:約0.80mm)にNiメッキ(膜厚:約1.2μm)したものと各コーティングされたはんだ合金を準備した。濡れ性試験(装置名:雰囲気制御式濡れ性試験機)において、試験対象を載せて加熱するヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。ヒーター温度を330℃に設定し温度が安定するまで保持した。
温度が安定した後、NiメッキしたCu基板を載せて25秒加熱し、その後、各コーティングされたはんだ合金をCu基板の上に載せ、25秒加熱する。加熱が終了した後、ヒーター部分の横の窒素フローによる窒素雰囲気が保たれている箇所にCu基板をずらして冷却した。十分に冷却した後、Cu基板を大気中に取り出した。接合できなかった場合を「×」、接合できたが濡れ広がりが悪かった場合を「△」、接合でき濡れ広がった場合を「○」と評価した。
<ヒートサイクル試験>
上記濡れ性評価に使用したはんだが接合されたCu基板を用いて以下のヒートサイクル試験を行った。すなわち、はんだが接合された各Cu基板を−40℃の冷却と135℃の加熱を1サイクルとして、これを200、400、600回繰り返した。その後、上記した膜厚測定時と同様にはんだが接合された各Cu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(装置名:HITACHI S−4800)により接合面の観察を行った。接合面にはがれが生じていたり、あるいははんだにクラックが入っていた場合を「不良」、そのような「不良」がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「良」とした。
<大気中耐熱試験>
濡れ性評価ではんだを基板に接合した試料に対して、オーブンを用いて大気雰囲気中で160℃、100、300、500時間の耐熱試験を行った。所定時間経過後、試料を取り出して冷却した。その後、試料を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(装置名:HITACHI S−4800)により接合面の観察を行った。接合面にはがれが生じていたり、はんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。
これら濡れ性評価(接合性評価)、ヒートサイクル試験、および大気中耐熱試験の結果を下記の表2に示す。
Figure 2011194410
上記表2の結果より、試料1〜16のコーティングされたはんだ合金は全ての評価項目において優れた特性を示していることが分かる。一方、コーティング膜厚に関して本発明の要件から外れる試料17〜33のコーティングされたはんだ合金ではいずれかの評価項目において好ましくない結果となった。
[実施例2]
原料に純度99.9質量%以上のAlおよびPを追加し、原料の混合比率を変えた以外は上記実施例1と同様にして試料34〜43のはんだ母合金を作製した。これら試料34〜43のはんだ母合金に対して、実施例1と同様にして組成分析およびコーティング膜の膜厚測定を行った。その結果を下記の表3に示す。
Figure 2011194410
上記表3の試料34〜43のコーティングされたはんだ合金に対して、実施例1と同様に濡れ性評価(接合性評価)、ヒートサイクル試験、および大気中耐熱試験を行った。その結果を下記の表4に示す。
Figure 2011194410
上記表4の結果より、試料34〜40のコーティングされたはんだ合金は全ての評価項目において優れた特性を示していることが分かる。一方、Biの含有率に関して本発明の要件から外れる試料41〜43のコーティングされたはんだ合金ではいずれかの評価項目において好ましくない結果となった。

Claims (6)

  1. シート状、ワイヤー状またはボール状であって、Biを50質量%以上99.5質量%以下含有するPbフリーはんだ合金と、その表面にコーティングされたAg、Au、CuおよびNiのうちの少なくとも1元素からなる厚さ0.05μm以上1.20μm以下のコーティング膜とからなることを特徴とするコーティングされたPbフリーはんだ合金。
  2. 前記Pbフリーはんだ合金は、さらにZnを0.4質量%以上13.5質量%以下および/またはSnを0.01質量%以上1.5質量%以下含有していることを特徴とする、請求項1に記載のコーティングされたPbフリーはんだ合金。
  3. 前記Pbフリーはんだ合金は、さらにAlを0.02質量%以上2.5質量%以下および/またはPを0.001質量%以上0.500質量%以下含有していることを特徴とする、請求項2に記載のコーティングされたPbフリーはんだ合金。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング膜をメッキ法または蒸着法によりコーティングすることを特徴とするPbフリーはんだ合金のコーティング方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のコーティングされたPbフリーはんだ合金を用いて電子部品が接合されていることを特徴とする実装基板。
  6. 請求項5に記載の実装基板が搭載されていることを特徴とする装置。
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