JP2011168716A - ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤及び該剤を含むポリ乳酸系樹脂組成物 - Google Patents

ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤及び該剤を含むポリ乳酸系樹脂組成物 Download PDF

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嘉彦 高瀬
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直樹 近藤
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Yuya Kuroda
裕也 黒田
Asami Fujii
麻美 藤井
Tadashi Harada
征 原田
Hiroshi Iida
浩史 飯田
Kazutaka Nakano
万敬 中野
Hideki Hayashi
英樹 林
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Abstract

【課題】ポリ乳酸系樹脂の持つ熱的特性を維持したまま衝撃特性及び成形加工性を向上させるポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、及び該剤とポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、及びステアリン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸とポリグリセリンとにより構成される、エステル化率が50%未満であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸系樹脂に優れた耐衝撃性を付与するポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤及び該剤とポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物に関する。
植物原料をはじめとする再生可能な資源を用いた材料開発は、循環型社会構築の観点から、緊急に着手すべき社会性の高い研究テーマである。石油を主原料とするプラスチックを、再生可能な原料から製造されたバイオプラスチックに置き換えることができれば、カーボンニュートラル(すなわち、光合成の過程で環境中の二酸化炭素を取り込んだ材料を焼却しても、全体として大気中の二酸化炭素量は増えないという考え方)が実現し、地球温暖化の防止に貢献できる。
バイオプラスチックの中でも、トウモロコシ等の再生可能資源から製造することができるポリ乳酸に対する関心は高く、すでに医療分野での利用は始まっている。さらなる用途展開を目的として2005年の愛知万博において大規模な実証試験が行われるなど、実用材料としての高い潜在性が確認されており、農業用資材(例えば、シート、フィルム)、食品包装用資材(例えば、食品包装フィルム、シート、袋)、その他の包装用資材(例えば、衣料、日用雑貨包装用シート、フィルム、袋)などへの利用が期待されている。
ポリ乳酸は、PET(ポリエチレンテレフタレート)と同程度の引張強度及び透明性を有する結晶性熱可塑性高分子である。燃焼した場合の燃焼カロリーが、PE(ポリエステル)、PP(ポリプロピレン)などの約1/3と小さく、焼却炉を痛めることが少なく、有害なガスの発生もない。加えて、前記のようにポリ乳酸の原料は植物であるため、焼却処理したときの二酸化炭素の増加が環境への負荷となり難いため、地球環境にも優しい。そのような利点のために近年になって製造法や応用用途などの研究開発が盛んになり、今後、用途の多角化とそれに伴う生産量の増加が期待されている。
しかしながら、ポリ乳酸は硬くて脆く、すなわち衝撃特性に乏しいという性質を有するために工業的な用途が制限されてきた。このため、このポリ乳酸の物性を改善するために様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1には、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコリド等の軟質系生分解性脂肪族ポリエステルをポリ乳酸に混合した樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2では、アジピン酸ジ−i−ブチル、セバシン酸ジ−n−ブチル等の可塑剤を添加したポリ乳酸系樹脂組成物、特許文献3には、脂肪族ポリエステル(なかでもポリ乳酸)にポリグリセリン酢酸エステルを可塑剤として配合した脂肪族ポリエステル組成物が開示されている。
さらに、特許文献4及び5には、溶解度パラメータ値と密度値から導きだされる特定の関係をそれぞれ満たす2種のポリマーからなる特定のポリマーがポリ乳酸用の耐衝撃性付与剤として開示されている。
またさらに、本願発明者らの以前の特許出願に係る発明である特許文献6においては、平均重合度、脂肪酸エステル化率が特定のポリグリセリン脂肪酸エステルをポリ乳酸に添加することで、ポリ乳酸の可塑性を改良できることが報告されている。
特開平9−111107号公報 特開平4−335060号公報 特開2003−73532号公報 特開2003−268088号公報 特許第3972615号公報 特開2008−69299号公報
従来技術に拠って、可塑性が向上されたポリ乳酸系樹脂組成物を提供することができるものの、その性能は未だ十分ではないことが判明した。即ち、特許文献1の樹脂組成物ではポリ乳酸の衝撃特性は改善されるものの、脂肪族ポリエステルの添加量が10重量部以上と比較的多いことに加え、この脂肪族ポリエステルのガラス転移温度はポリ乳酸のガラス転移温度よりも低いため、組成物全体として熱的特性に課題が残る。
特許文献2及び3に記載の可塑剤は、ポリ乳酸に柔軟性が付与されるというデータは示されているものの、衝撃特性及び熱的特性についての言及が無く、不明なままである。特許文献4及び5に記載の耐衝撃性付与剤はコハク酸、プロピレングリコール、ヘキサメチレンジイソシアネート等の石油原料を化学合成したもので、当該耐衝撃性付与剤を添加したポリ乳酸のガラス転移温度の低下も抑えられている。しかし、添加量はポリ乳酸に対して10重量%以上と比較的多量である。
特許文献6に記載の方法では、ガラス転移点の低下が抑えられ、透明性も損なうことなくポリ乳酸に可塑性を付与することができ、またポリグリセリン脂肪酸エステルの添加量も比較的少量(〜10重量%程度)である。しかし、特許文献6に記載されている可塑化ポリ乳酸樹脂組成物は、いわゆる溶媒キャスト法による方法で製造されている。つまり、押出機や射出成形機など、通常のプラスチックの成形加工機器による製造が実施されておらず、この可塑化ポリ乳酸組成物についての成形加工特性については不明で、工業生産可能かどうかは不明なままであった。
本発明の課題は、ポリ乳酸系樹脂の持つ熱的特性を維持したまま衝撃特性及び成形加工性を向上させるポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、及び該剤とポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、及びステアリン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸を含み、エステル化率が50%未満のポリグリセリン脂肪酸エステルを耐衝撃性付与剤としてポリ乳酸系樹脂に添加することにより、熱的特性を維持したまま衝撃特性及び成形加工性が向上したポリ乳酸系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
〔1〕 ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、及びステアリン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸とポリグリセリンとにより構成される、エステル化率が50%未満であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、ならびに
〔2〕 ポリ乳酸系樹脂と、前記〔1〕記載の耐衝撃性付与剤を含有してなるポリ乳酸系樹脂組成物
に関する。
本発明のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤は、ポリ乳酸系樹脂の持つ熱的特性を維持したまま、衝撃特性及び成形加工特性を向上させるという優れた効果を奏する。
比較例1(ポリ乳酸)の2500倍のSEM写真である。 実施例9の2500倍のSEM写真である。 実施例21の2000倍のSEM写真である。
本発明のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、該ポリグリセリン脂肪酸エステルは特定の構造を持つことに特徴がある。ポリ乳酸系樹脂は、その分子構造が剛直であるため、硬く、成形体が割れやすい。そこで、本発明者らが検討した結果、特定の構造を有するポリグリセリン脂肪酸エステルをポリ乳酸系樹脂に添加混合させることにより、該ポリグリセリン脂肪酸エステルがミクロンオーダーで分散して、ポリ乳酸系樹脂がマトリックス、ポリグリセリン脂肪酸エステルが微細なドメインとなる海島構造を形成することで、このドメインが外部からの衝撃エネルギーを吸収し、衝撃特性を向上することができると推定される。ドメインはSEM写真にて観察することができる。本発明における該ドメインの形状は、大きいもので直径が5μm以上、小さいもので0.1μm以下であり、衝撃特性を向上させる観点より、0.1〜5μmであることが望ましいが、特に限定されるものではない。また、ドメインの形状は球状構造であることが望ましいがそれに限定するものではない。ドメインの大きさはSEM写真中のドメインを定規で計測することができ、計測した値から写真の縮尺にあわせて容易に算出できる。
本発明のポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤(単に、本発明の耐衝撃性付与剤ともいう)に用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合物であるポリグリセリンと脂肪酸を構成成分として含むものであり、これらの成分は、ポリグリセリンの水酸基と脂肪酸のカルボン酸を介してエステル結合している。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、及びオレイン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上であれば特に限定されない。また、2種以上の場合には、その個数及び組合せも特に限定されない。本発明においては、ポリ乳酸系樹脂の衝撃特性を向上させる観点から、以下の(a)〜(f)組から選ばれるものが好ましい。なお、ステアリン酸は炭素数18の、ラウリン酸は炭素数12の、パルミチン酸は炭素数16の飽和の直鎖脂肪酸であり、オレイン酸が炭素数18の不飽和脂肪酸である。
(a)ステアリン酸のみ
(b)パルミチン酸とステアリン酸
(c)ラウリン酸とステアリン酸
(d)ステアリン酸とオレイン酸
(e)ステアリン酸とパルミチン酸とオレイン酸
(f)ステアリン酸とパルミチン酸とラウリン酸
(b)パルミチン酸とステアリン酸
パルミチン酸とステアリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、パルミチン酸が90〜10重量%、ステアリン酸が10〜90重量%であることが好ましく、パルミチン酸が70〜30重量%、ステアリン酸が30〜70重量%であることがより好ましい。
(c)ラウリン酸とステアリン酸
ラウリン酸とステアリン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ラウリン酸が90〜10重量%、ステアリン酸が10〜90重量%であることが好ましく、ラウリン酸が70〜30重量%、ステアリン酸が30〜70重量%であることがより好ましい。
(d)ステアリン酸とオレイン酸
ステアリン酸とオレイン酸の2種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸が10〜90重量%、オレイン酸が90〜10重量%であることが好ましく、ステアリン酸が30〜70重量%、オレイン酸が70〜30重量%であることがより好ましい。
(e)ステアリン酸とパルミチン酸とオレイン酸
ステアリン酸とパルミチン酸とオレイン酸の3種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸が5〜30重量%、パルミチン酸が5〜30重量%、オレイン酸が40〜90重量%あることが好ましく、ステアリン酸が20〜30重量%、パルミチン酸が20〜30重量%、オレイン酸が40〜60重量%あることがより好ましい。
(f)ステアリン酸とパルミチン酸とラウリン酸
ステアリン酸とパルミチン酸とラウリン酸の3種類からなる組合せである。その構成割合は特に限定されないが、ステアリン酸が5〜30重量%、パルミチン酸が5〜30重量%、ラウリン酸が40〜90重量%あることが好ましく、ステアリン酸が20〜30重量%、パルミチン酸が20〜30重量%、オレイン酸が40〜60重量%あることがより好ましい。
また、本発明においては、前記脂肪酸以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の脂肪酸を含有してもよい。ただし、前記脂肪酸の総含有量としては、構成脂肪酸中、95重量%以上が好ましく、99重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
他の脂肪酸としては、炭素数6〜22の、飽和あるいは不飽和、直鎖あるいは分岐の脂肪酸、即ち、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、アラキン酸、ノナデカン酸、べヘン酸、パルミトレイン酸、エルカ酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、アラキドン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)等が挙げられる。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一つの構成成分であるポリグリセリンとしては、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸系樹脂組成物における成形加工性の観点から、平均重合度が好ましくは2〜40、より好ましくは4〜20、さらに好ましくは6〜12である。なお、本明細書において、ポリグリセリンの重合度とは、以下に記載の方法により算出される。
<ポリグリセリンの平均重合度>
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
OHV:ポリグリセリンの水酸基価
n :ポリグリセリンの平均重合度
本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、ポリグリセリンと脂肪酸の仕込み比率、反応温度、反応時間、触媒の種類及び添加量等を変化させることにより調整することができるが、ポリ乳酸系樹脂組成物における成形加工性の観点から、50%未満であり、10〜45%が好ましく、20〜40%がより好ましく、30〜40%がさらに好ましい。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、例えば一定量を加水分解後に中和滴定して実測できるが、脂肪酸とポリグリセリンの配合比率から理論計算することも可能である。本発明において、エステル化率は、以下に記載の方法により算出される。
<ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率>
エステル化率(%)=(構成脂肪酸のmol数/ポリグリセリンのmol数)×100(%)
ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、一般的な合成法であれば特に限定されないが、例えば、ポリグリセリンと脂肪酸を、酸触媒(リン酸、p−トルエンスルホン酸等)もしくはアルカリ触媒(苛性ソーダ等)存在下、又は触媒を用いずに、水を除去しなが、好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜260℃の範囲で加熱することにより行うことができる。また、反応は不活性ガスの存在下で行なってもよい。このようにして得られたエステルは目的に応じて精製しても良い。精製には減圧下での蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留といった蒸留技術の他、有機溶剤による抽出、分画や合成吸着剤、ゲル濾過剤を充填したカラムによるクロマト分離も利用できる。
かくして、本発明におけるポリグリセリン脂肪酸エステルが得られる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの耐衝撃性付与剤における含有量は、特に限定されないが、90重量%以上が好ましく、99重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
本発明はまた、前記本発明の耐衝撃性付与剤とポリ乳酸系樹脂を含有するポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。
本発明におけるポリ乳酸系樹脂は、分子中に乳酸単位〔CHCH(OH)COOH〕を含む脂肪族ポリエステル樹脂であり、分子中に該乳酸単位を少なくとも50モル%、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上含む脂肪族ポリエステル樹脂である。
具体的には、
(1)ポリ乳酸、
(2)乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー、
(3)多官能多糖類、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂、
(4)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂、ならびに
(5)(1)〜(4)の混合物
が挙げられる。
(1)ポリ乳酸
ポリ乳酸とは、実質的にL−乳酸及び/又はD−乳酸がエステル結合で重合している高分子をいう。ここで「実質的」にとは、本発明の効果を損なわない程度範囲で、L−乳酸又はD−乳酸以外の他のモノマー単位を含んでいても良いという意味である。本発明に用いるポリ乳酸としては、構成単位がL−乳酸のみからなるポリ(L−乳酸)、D−乳酸のみからなるポリ(D−乳酸)、及びL−乳酸単位とD−乳酸単位とが種々の割合で存在するポリ(DL−乳酸)等が挙げられる。なお、本明細書において、単に乳酸という場合は、特に断りがない限り、L−体とD−体の両者を意味する。
ポリ乳酸の合成方法としては、L−乳酸、D−乳酸、又はDL−乳酸を直接脱水重縮合する方法、これら各乳酸の環状2量体であるラクチドを開環重合する方法等が挙げられる。また、何れの重合方法においても、重合の途中段階で鎖延長剤を添加して分子量を上げても良い。また開環重合は、高級アルコール、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基を有する化合物の存在下で行ってもよく、何れの方法によって製造されたものでもよい。
ポリ乳酸は、前記方法に従って合成したものを用いてもよいが、入手のし易さから市販されているものを用いてもよい。具体的には、Nature Works社製のIngeo(登録商標)、トヨタ自動車社製のU’z(登録商標)、UCC社製のTONE(登録商標)、島津製作所社製のラクティ(登録商標)、ユニチカ社製のテラマック(登録商標)、三井化学社製のレイシア、カネボウ合繊社製ラクトロン(登録商標)、三菱樹脂社製のエコロージュ(登録商標)、クラレ社製のプラスターチ(登録商標)、東セロ社製のパルグリーン(登録商標)等が挙げられる。
(2)乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー
乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーとは、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸との共重合体のことである。乳酸については前記の通りである。一方、脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーの製造方法としては、上記各乳酸と上記脂肪族ヒドロキシカルボン酸を脱水重縮合する方法、上記各乳酸の環状2量体であるラクチドと上記脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状体を開環共重合する方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーに含まれる乳酸モノマーの量は少なくとも50モル%であることが好ましい。
(3)多官能多糖類、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂
多官能多糖類、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂における多官能多糖類としては、例えば、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガム等、及びこれらの混合物、ならびに、これらの誘導体が挙げられる。これらの内、酢酸セルロース、及びエチルセルロースが好ましい。
多官能多糖類、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、上記多官能多糖類と、上記ポリ乳酸又は乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー等を反応させる方法、上記多官能多糖類と、上記各乳酸及び環状エステル類等を反応させる方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。前記ポリ乳酸系樹脂に含まれる乳酸単位の量は少なくとも50モル%であることが望ましい。
(4)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂
脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂における脂肪族多価カルボン酸単位としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等、及びこれらの無水物が挙げられる。これらは、酸無水物との混合物であってもよい。また、脂肪族多価アルコール単位としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位、及び乳酸単位を含むポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、上記脂肪族多価カルボン酸単位及び上記脂肪族多価アルコール単位と、上記ポリ乳酸又は乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー等を反応する方法、上記脂肪族多価カルボン酸単位及び上記脂肪族多価アルコール単位と、上記各乳酸及び環状エステル類等を反応する方法等が挙げられる。何れの方法によって製造されたものでもよい。前記ポリ乳酸系樹脂に含まれる乳酸単位の量は少なくとも50モル%であることが好ましい。
(5)(1)〜(4)の混合物
(1)〜(4)の混合物としては、前記(1)〜(4)のポリ乳酸系樹脂を含むものであれば、その構成割合も限定されない。
これらの(1)〜(5)のポリ乳酸系樹脂群のうち、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物に用いる場合にはどの樹脂を利用しても良く、特に限定されるものではないが、熱的特性及び透明性の維持という観点から、(1)ポリ乳酸及び(2)乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーが好ましく、(1)ポリ乳酸がより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の分子量としては特に限定されるものではなく、目的とする用途に応じて適宜選択すれば良い。樹脂の一般的な考え方として、分子量が高ければ高いほど物性も高くなるが成形加工が困難になり、一方で分子量が低いと成形加工は容易になるものの、物性に乏しいものとなる。かかる点を考慮すると、本発明におけるポリ乳酸系樹脂の分子量としては、1万〜100万程度の範囲が好ましく、5万〜50万がより好ましく、10万〜30万がさらに好ましい。なお、本明細書における樹脂の分子量とは、特に断りがない限り、重量平均分子量を指すこととする。
本発明の組成物には、前記ポリ乳酸系樹脂以外に、他の生分解性樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の生分解性樹脂としては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンテレフタレートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート等が挙げられる。前記ポリ乳酸系樹脂の含有量は、特に限定されないが、組成物を構成する樹脂の総重量中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物中、ポリグリセリン脂肪酸エステルとポリ乳酸系樹脂の含有量は、目的とする用途に応じて適宜選択すれば良く、特に限定されるものではないが、好ましくはポリ乳酸系樹脂が99.9〜90重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.1〜10重量%の割合である。耐衝撃性、成形加工性の観点からは、ポリ乳酸系樹脂が99.5〜95重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが0.5〜5重量%であることがより好ましく、ポリ乳酸系樹脂が99.0〜97.0重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルが1.0〜3.0重量%であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて以下の添加物を配合してもよい。添加物としては、アンチブロッキング剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、抗菌剤、安定剤、静電剤、結晶核剤、充填剤、顔料、難燃剤、各種フィラー等が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、チタニア、マイカ、タルク等が挙げられる。
滑剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス等の炭化水素類、ステアリン酸等の脂肪酸類、オキシ脂肪酸類、脂肪酸アミド類、アルキレンビス脂肪酸アミド類、脂肪酸低級アルコールエステル類、脂肪酸多価アルコールエステル類、脂肪酸ポリグリコールエステル類、脂肪族アルコール類、多価アルコール類、ポリグリコール類、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類等が挙げられる。
帯電防止剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン及び脂肪族アマイド硫酸塩類、脂肪族アルコ−ルリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、脂肪族アミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、イミダゾリン誘導体、高級アルキルアミン類等が挙げられる。
防曇剤としては、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等のソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる
紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類や、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、サリチル酸p−tert−ブチルフェニル等のサリチル酸誘導体等が挙げられる。
熱安定剤、酸化防止剤、及び着色防止剤としては、パラメトキシフェノール等のフェノール系化合物、トリフェニルホスファイト等のホスファイト系化合物、2−メルカプトベンズイミダゾール等の硫黄系化合物、フェニルナフチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
充填剤としては、硫酸バリウム、酸化チタン、カオリン、カーボンブラック等が挙げられる。
難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル等のハロゲン系化合物、三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物等が挙げられる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤を含有するものであれば特に限定なく調製することができる。例えば、ポリ乳酸系樹脂及びポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、必要により他の添加剤を含む原料を、高速攪拌機又は低速攪拌機等を用いて均一に混合した後、十分な混練能力を有する一軸あるいは多軸の押出機を用いて加熱溶融混練して、調製することが出来る。
加熱溶融混合の方法については特に限定されるものではないが、工業的には連続的に処理できる方法が好ましい。具体的には、例えば、上記のポリ乳酸系樹脂とポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤を所定の割合で混合したものを一軸混練押出機や二軸混練押出機などで溶融し、直ちに成形して成形品とすることができる。Tダイが装着された押出機を用いることにより、ポリ乳酸系樹脂、及びポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤、必要により他の添加剤を溶融混練したものを、そのまま押出してシート・フィルム等に成形することができる。なお、溶融混練したものをそのまま成形した場合、通常、非晶状態の成形体が得られるが、該成形体に熱処理を施すことによって結晶化を促進させて、結晶化させた成形体も得ることができる。
また、シート・フィルム等の成形体には、必要に応じて、シート表面に帯電防止性、防曇性、粘着性、ガスバリヤー性、密着性、易接着性等の機能を有する層を形成することができる。これらの層を形成する方法としては、塗布法、ラミネート法等が挙げられる。
塗布法としては、スプレーコート方式、エアーナイフ方式、リバースコート方式、キスコート方式、グラビアコート方式、マイヤーバー方式、ロールブラッシュ方式等の公知の方法が挙げられ、例えば、シートの片面あるいは両面に帯電防止剤等を含む塗工液を、前記方法に従って、塗布、乾燥することによって帯電防止層を形成することができる。ラミネート法としては、押出ラミネート法、ドライラミネート法等の公知の方法を用いることができ、前記機能を有するフィルムを積層することができる。
粘着層を形成する方法としては、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステルに対し、他のビニルモノマー類を共重合して得られたコポリマー等のアクリル系樹脂を含む塗布液を、シートに塗布、乾燥する方法が挙げられる。塗布液は、上記コポリマーの有機溶剤溶液でも良いし、水エマルジョンでも良い。
かくして得られる、本発明の成形体は、特定の脂肪酸を構成脂肪酸とするポリグリセリン脂肪酸エステルが配合されているため可塑性に優れ、熱的特性を維持したまま衝撃特性及び成形加工性を向上させることができる。また、本発明の成形体は、ポリグリセリン脂肪酸エステルが良好に分散しているため、JIS規格 K7136に準拠した曇り度(Haze)が好ましくは5%未満である。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
〔樹脂の重量平均分子量(Mw)〕
ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準としてShodex GPC SYSTEM−21(示差屈折率検出器)により、カラム温度40℃、クロロホルム溶離液で測定する。
〔ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率〕
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率は、(構成脂肪酸のmol数/ポリグリセリンのmol数)×100(%)の式に基づいて計算される。
〔ポリグリセリンの平均重合度〕
ポリグリセリンの重合度は、以下の式に基づいて、水酸基価より決定される。
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
OHV:ポリグリセリンの水酸基価
n :ポリグリセリンの重合度
ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造例1
表1又は2に示すポリグリセリンと、表1又は2に示す構成脂肪酸を混合したものとを、不活性ガス中、リン酸、p−トルエンスルホン酸、又は苛性ソーダの存在下で、120〜260℃で加熱し生成水を系外に除去することによって、ポリグリセリン脂肪酸エステルを得た。
実施例1〜28及び比較例1〜20
表1又は2に示す量のポリ乳酸(トヨタ自動車社製U’z S−17)、及び表1又は2に示す種類と量のポリグリセリン脂肪酸エステルをドライブレンドし、ストランドダイを装着した二軸押出機を使ってシリンダ温度200℃で溶融混練を行った。得られたストランドを水冷したのち、ペレタイザーでペレット化を行った。得られたペレットは、除湿型乾燥器を使い、50℃で24時間乾燥を行った。
なお、表1〜2における原料は以下の通りである。
DAIFATTY−101:アジピン酸エステル、大八化学工業社製
プラメートPD−150:ポリ乳酸/ジオール・ジカルボン共重合体、DIC社製
ポエムG−002:酢酸モノグリセライド、理研ビタミン製
得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業社製SE−18S)を用いて、シリンダ温度200℃、金型温度30℃で引張試験片(全長110mm、厚み2mm、平行部分の長さ30mm、平行部分幅5mm)、衝撃試験片(4×10×80mm)の作製を行い、その物性を、以下の試験例1〜5の方法に従って調べた。結果を表1及び2に示す。また、試験例5の試験結果については、比較例1、実施例9、実施例21を代表例として、図1〜3にそれぞれ示す。
<試験例1>〔衝撃特性〕
衝撃特性は、アイゾット衝撃試験(JIS K7110:プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法)により評価を行った。衝撃試験機(CEAST社製、6546、2Jハンマー)を用い、ノッチ無しの衝撃試験片について、打撃方向をエッジワイズで試験を行った。ポリ乳酸のみの場合のアイゾット衝撃値を100%とした場合の、相対衝撃値を算出し、以下に示す評価基準に従って、衝撃特性を評価した。
〔衝撃特性の評価基準〕
◎:相対衝撃値が120%以上のもの
○:相対衝撃値が110%以上、120%未満のもの
△:相対衝撃値が105%以上、110%未満のもの
×:相対衝撃値が105%未満のもの
<試験例2>〔可塑性〕
可塑性は、引張試験(JIS K7161:プラスチックの引張試験方法)における引張呼びひずみにより評価を行った。具体的には、万能材料試験機(インストロンジャパン社製、model5582)を用い、射出成形により作製した引張試験片を、引張速度5mm/min、つかみ具間距離55mmの条件で試験を行った。なお、引張呼びひずみはJIS K7161に倣い、以下の式により算出し、以下に示す評価基準に従って、可塑性を評価した。
引張呼びひずみ(%)=試験片破断までのつかみ具移動距離(mm)/55(mm)×100
〔可塑性の評価基準〕
◎:引張呼びひずみが20%以上のもの
○:引張呼びひずみが10%以上、20%未満のもの
△:引張呼びひずみが5%以上、10%未満のもの
×:引張呼びひずみが5%未満のもの
<試験例3>〔成形加工適性〕
成形加工適性としては、A:ブリード特性、B:射出成形特性、C:成形品の出来、の3つの項目により評価を行った。なお、この成形加工適性はポリ乳酸単独の場合の評価(ブリード○、成形性◎、成形品出来◎)と同等ほど好ましく、製品化という観点からは、ブリードは○、射出成形特性は○以上、成形品出来は○以上であることが好ましい。
A:ブリード特性
二軸押出機を使ったポリ乳酸系樹脂組成物の調製において、押出時の樹脂ストランドを目視により観察し、ブリードの有無を確認し、ブリードが無い場合を「○」、ブリードがある場合を「×」とした。なお、樹脂ストランドは水冷により冷却されるため、ポリグリセリン脂肪酸エステルがブリードしていれば水面に浮かび、これによりブリードの有無を判別することができる。
B:射出成形特性
射出成形の際の成形状況を観察し、以下の評価基準に従って射出成形特性を評価した。具体的には、評価用の射出成形機として、住友重機械工業製SE−18S(径20mmの標準スクリュー装備)を使用し、ポリ乳酸を単独で成形するときの計量時におけるスクリュー回転数(70回転/分)及び背圧(5MPa)と、各実施例又は比較例の組成物の成形時におけるスクリュー回転数及び背圧とをそれぞれ比較し、各値の乖離程度を観察することによって評価を行った。ポリ乳酸を単独で成形した場合の成形条件から離れれば離れるほど成形が困難であることを意味する。なお、温度条件としては、すべてのサンプルにおいて、シリンダ温度200℃、金型温度30℃で試験を行った。
〔射出成形特性の評価基準〕
◎:成形容易なもの
○:若干の工夫を要するものの、特に問題なく成形できるもの
△:成形にかなりの労力を要するもの
×:成形ができないもの
C:成形品の出来
射出成形によって得られた衝撃試験片を目視により観察を行い、以下の評価基準に従って成形品の出来を評価した。
〔成形品の出来の評価基準〕
◎:ポリ乳酸単独の成形品と同等かそれ以上のもの
○:成形品表面にわずかに荒れ、又はわずかなヒケ等が観察されるもの
△:成形品表面が若干の荒れ、又は若干のヒケ等が観察されるもの
×:成形品表面にかなりの荒れ、又はかなりのヒケが観察されるもの
<試験例4>〔ガラス転移点(Tg)の測定〕
ガラス転移点(Tg)は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準拠し、示唆走査熱量測定器(リガク製、XRD−DSCII)を用い、昇温速度20℃/minで測定を行った。
<試験例5>〔モルフォロジー評価〕
環境制御型電子顕微鏡(FEI社製Quanta200、以下SEMとする)を使い、衝撃試験後の試験片の破断面の観察を行った。
表1の結果より、以下のことが確認できる。なお、表1はポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸についてステアリン酸とパルミチン酸についての実施例と比較例の試験結果を示したものである。
まず、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造としては、エステル化率が50%未満のものであれば加工適性に優れ、ポリ乳酸単品よりも衝撃特性が高いことがわかる。具体的には、実施例4、9、14と比較例2、3とを比較すると(これらは全てポリグリセリンの重合度が10で、且つ、脂肪酸がステアリン酸とパルミチン酸が等量(50:50)のポリグリセリン脂肪酸エステル3重量%をポリ乳酸に添加したもので、エステル化率だけが異なるものである)、エステル化率が50%未満の実施例4、9、14においては加工適性に優れ、衝撃特性も優れているのに対し、エステル化率が60%の比較例2は加工適性も衝撃特性も共に劣っており、エステル化率が70%で比較例2よりもさらに高い比較例3に至っては射出成形特性が悪いために成形することができていない(成形できないために衝撃試験も実施できない)。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造のうち、グリセリン部分はモノグリセリンではなく、ポリグリセリンである方が衝撃特性に優れていることがわかる。具体的には実施例3、8、9、と比較例5とを比較すると(これらは脂肪酸組成とエステル化率が同じポリグリセリン脂肪酸エステル3重量%をポリ乳酸に添加したものであるが)、ポリグリセリンの重合度が高い実施例3、8、9では衝撃特性が優れているのに対し、モノグリセリンである比較例5では衝撃特性がポリ乳酸単品よりも劣っていることが分かる。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造のうち、構成する脂肪酸としては、ステアリン酸とパルミチン酸を組み合わせたものの方が、ステアリン酸又はパルミチン酸を単独で用いるよりも、さらに衝撃特性に優れ、より好ましいことがわかる。具体的には、実施例1、15と、実施例9とを比較すると、パルミチン酸又はステアリン酸のみで構成されたポリグリセリン脂肪酸エステルよりも、パルミチン酸とステアリン酸とを組み合わせたポリグリセリン脂肪酸エステルの方が、加工適性により優れており、さらに衝撃特性にもより優れていることが確認できる。
表2の結果より、以下のことが確認できる。なお、表2はポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸について、主にラウリン酸とオレイン酸についての実施例と比較例の試験結果を示したものである。
表1の場合と同様に、ポリグリセリン脂肪酸エステルの構造としては、脂肪酸種としてラウリン酸又はオレイン酸を用いた場合でも、エステル化率が50%未満のものであれば加工適性に優れ、ポリ乳酸単品よりも衝撃特性が高いことがわかる。具体的に示すと、実施例17と比較例7(ラウリン酸の場合)を比較すればエステル化率が50%未満である実施例17の方が比較例7よりも加工適性に優れ、ポリ乳酸単品よりも衝撃特性が高いことがわかる。また、実施例21、23と比較例9(オレイン酸の場合)からも同様の事実が認められる。さらに、実施例19と比較例8とからも同様である。
また、実施例21と実施例25,26を比較すれば、オレイン酸だけを用いた実施例21でも衝撃特性は向上するが、ステアリン酸を併用した実施例26、もしくはステアリン酸とパルミチン酸を併用した実施例25は、さらに衝撃特性が高いことがわかる。更には実施例25,26においてより加工適正が良好である。
実施例18と実施例27、28においては、ラウリン酸のみを用いる実施例18でも十分に優れた衝撃特性を示すものの、ラウリン酸とステアリン酸とを組み合わせた実施例27、及びラウリン酸とパルミチン酸とステアリン酸とを組み合わせた実施例28の方が、ラウリン酸を単独で用いた場合よりも、さらに衝撃特性に優れることが確認できる。
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステル以外の添加剤を使用した場合の特性を比較例15〜20に示した。比較例15〜20で用いた添加剤は既に上市された製品であるが、比較例15〜20において、加工適正には優れるものの、衝撃特性が高いものはないことがわかる。加えて本発明以外の脂肪酸エステルに該当する比較例15、16、20では、ガラス転移温度が著しく低下しており、衝撃特性に劣るだけでなく、熱的特性に問題があることもわかる。
また、図1にポリ乳酸(比較例1)のSEM写真、図2に実施例9、図3に実施例21のSEM写真を示したが、図1と図2及び3とを比較すれば明らかなように、ポリグリセリン脂肪酸エステルがポリ乳酸中でドメインを形成して微分散し、いわゆる海島構造となっていることが確認できる。該ドメインの大きさ(直径)は、SEM写真にあるドメインの最も長い辺を定規で計測し、計測した値から写真の縮尺にあわせて容易に算出できる。該ドメインは、大きいもので直径が約5μm以上、小さいもので0.1μm以下の球形であることがわかり、このようなポリグリセリン脂肪酸エステルがミクロンオーダーで分散することによって、衝撃特性の向上に寄与したと推定される。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、例えば、農業用資材、食品包装資材、その他の包装資材等に好適に用いられる。

Claims (5)

  1. ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、及びステアリン酸からなる群より選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸とポリグリセリンとにより構成される、エステル化率が50%未満であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、ポリ乳酸系樹脂用耐衝撃性付与剤。
  2. 脂肪酸が、(a)ステアリン酸、(b)ステアリン酸及びパルミチン酸、(c)ステアリン酸及びラウリン酸、(d)ステアリン酸及びオレイン酸、(e)ステアリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸、又は(f)ステアリン酸、パルミチン酸及びラウリン酸、である請求項1記載の耐衝撃性付与剤。
  3. ポリグリセリンの平均重合度が2〜40である、請求項1又は2記載の耐衝撃性付与剤。
  4. ポリ乳酸系樹脂と、請求項1〜3いずれか記載の耐衝撃性付与剤を含有してなるポリ乳酸系樹脂組成物。
  5. ポリ乳酸系樹脂と耐衝撃性付与剤の重量比(ポリ乳酸系樹脂/耐衝撃性付与剤)が、99.9/0.1〜90/10である、請求項4記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
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