JP2011152689A - 印刷装置、印刷装置のメンテナンス方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 目詰まり状態や不安定吐出状態の場合のノズルのメンテナンス方法を最適化する。
【解決手段】 ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定し、インク色毎に設定された第一閾値および第二閾値と前記実測値とを比較することによって、前記第一閾値および前記第二閾値によって区別された、正常状態と、目詰まり状態と、前記正常状態と前記目詰まり状態との間の不安定吐出状態と、の三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを判定し、判定結果に応じて異なるメンテナンスを実施する。
【選択図】図11
【解決手段】 ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定し、インク色毎に設定された第一閾値および第二閾値と前記実測値とを比較することによって、前記第一閾値および前記第二閾値によって区別された、正常状態と、目詰まり状態と、前記正常状態と前記目詰まり状態との間の不安定吐出状態と、の三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを判定し、判定結果に応じて異なるメンテナンスを実施する。
【選択図】図11
Description
本発明は、印刷装置および印刷装置のメンテナンス方法に関する。
特許文献1には、電圧を印加した検出部材をノズル列と平行に設けて、ノズルから吐出されたインク滴が検出部材の傍を通過する際に検出部材に流れる誘導電流を検出することにより、ノズルから吐出されるインク滴の有無や吐出方向を検出する手法が記載されている。特許文献2には、目詰まり状態を検知した場合、インクの吸引を行うが、吸引の動作量を、検査回数に応じて変えることにより、吸引動作で消費されるインクや時間を低減することが記載されている。特許文献3には、目詰まり状態が検出された場合にはフラッシング動作を実施し、インク吐出方向の異常の場合にはワイピング動作を実施することが記載されている。特許文献4には、レーザーによってドット抜けを検出する構成において、ドット抜けの検出精度を高めるために、レーザーの照射角度を変えて複数回ドット抜け検査を行うことが記載されている。
インクがノズルから吐出されない目詰まり状態のときはインクを吸引することにより詰まりを解消する方法が効果的である。目詰まり状態ではないもののインクの吐出方向が不安定な状態である場合にも吸引によるメンテナンスは有効であるが、インク消費量が吸引によるメンテナンスよりも少量で済み時間的にも短くて済む他のメンテナンス方法も有効である。したがって不安定吐出状態の場合は、インク消費量が少なく所要時間も短いメンテナンスが実施される方が望ましい。特許文献1では、インクが吐出されていない目詰まり状態のときも、吐出されているが吐出方向が異常であるときも、同様に吸引とワイピングによってクリーニングが行われる。特許文献2では、目詰まり状態が検出されたときしかメンテナンスが実施されない。特許文献3では、インクの吐出状態に応じて異なるメンテナンス動作が実施されるが、吐出状態の判定基準がインクごとに相違している訳ではない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、目詰まり状態や不安定吐出状態の場合のノズルのメンテナンス方法を最適化することを目的の1つとする。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、目詰まり状態や不安定吐出状態の場合のノズルのメンテナンス方法を最適化することを目的の1つとする。
(1)上記目的を達成するための印刷装置は、ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定手段と、インク色毎に設定された第一閾値および第二閾値と前記実測値とを比較することによって、前記第一閾値および前記第二閾値によって区別された、正常状態と、目詰まり状態と、前記正常状態と前記目詰まり状態との間の不安定吐出状態と、の三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを判定する判定手段と、判定結果に応じて異なるメンテナンスを実施するメンテナンス手段と、を備える。
本発明では、インクの吐出状態を示す実測値と二つの閾値とを比較することにより、二つの閾値によって区別される三つの状態のうちインクの吐出状態がいずれであるかを判定し、判定された状態に相応しいメンテナンス方法として予め決められたメンテナンスを実施する。相応しいメンテナンスとは、メンテナンスに使用されるインクの消費量やメンテナンスに要する時間などのコストと、メンテナンスによって得られる効果とのバランスが適切になるようにコントロールされたメンテナンスを意味する。本発明では、上述の二つの閾値をインク色ごとに設定し、インクごとに実測値を閾値と比較してノズルの吐出状態をとりまとめる。そのため、インク毎に各状態に相応しいメンテナンスを実行することができる。
なお、目詰まり状態は、ノズルからインク滴が吐出していない状態を意味しており、所謂ドット抜けが発生する状態である。不安定吐出状態は、ノズルからインク滴は吐出しているものの、インク滴の飛行方向が異常な状態を意味している。例えば印刷面に対してインク滴が垂直に飛行せずに曲がったり、一つのノズルから複数の方向にインク滴が飛び散ったりしている状態である。
(2)上記目的を達成するための印刷装置において、前記メンテナンス手段は、前記インクの吐出状態が前記目詰まり状態であると判定された場合にインクの吸引動作を含むメンテナンスを実施し、前記不安定吐出状態であると判定された場合にインクの吸引動作を含まないメンテナンスを実施してもよい。
メンテナンスとして実施される手法には、例えば吸引やフラッシングやワイピング等がある。吸引動作は他の手法に比べてインクが多く消費されるが、目詰まり状態を解消しインクの吐出能力を回復させるためには吸引動作は他の手法より確実であり最も適している。本発明では、目詰まり状態と判定された場合にのみ吸引動作を含むメンテナンスを実行する。フラッシング動作でもインクは消費されるもののその消費量は吸引動作に比べると少ない。ワイピング動作ではインクは消費されない。不安定吐出状態と判定された場合は吸引動作を含むメンテナンスを実行しないことにより、目詰まり状態ではないのに吸引動作を含むメンテナンスを実施することによって消費されるインク量が増加してしまうことや、メンテナンスに要する総時間が長くなってしまうことを防ぐことができる。
(3)上記目的を達成するための印刷装置において、前記メンテナンス手段は、前記目詰まり状態と判定されたノズルの数が予め決められた所定数以上であるとき、前記吸引動作を含むメンテナンスを実施してもよい。
所定数とは、吸引動作を含むメンテナンスを実施する条件とする数値であり、印刷結果の画質に及ぼす影響とコスト(メンテナンスに要する時間やインク消費量)とを鑑みて予め決められている。目詰まり状態のノズル数が所定数未満であってもその都度吸引動作を含むメンテナンスを実行していると、所定数未満のノズルの目詰まりを解消するためにノズル列全体あるいはヘッド全体に対する吸引動作を含むメンテナンスすることによって得られる画質改善効果が少ないのに対して、コストはかかってしまう。本発明によると、メンテナンスによって得られる画質改善効果とコストとのバランスをコントロールすることができる。
所定数とは、吸引動作を含むメンテナンスを実施する条件とする数値であり、印刷結果の画質に及ぼす影響とコスト(メンテナンスに要する時間やインク消費量)とを鑑みて予め決められている。目詰まり状態のノズル数が所定数未満であってもその都度吸引動作を含むメンテナンスを実行していると、所定数未満のノズルの目詰まりを解消するためにノズル列全体あるいはヘッド全体に対する吸引動作を含むメンテナンスすることによって得られる画質改善効果が少ないのに対して、コストはかかってしまう。本発明によると、メンテナンスによって得られる画質改善効果とコストとのバランスをコントロールすることができる。
(4)上記目的を達成するための印刷装置において、前記第一閾値と前記第二閾値のうち前記目詰まり状態を前記不安定吐出状態および前記正常状態と区別する閾値を用いて、前記インクの吐出状態が前記目詰まり状態であるか否かを前記判定手段より高い頻度で判定し、目詰まり状態である場合に前記メンテナンス手段に前記吸引動作を含むメンテナンスを実行させる高頻度判定手段を備えてもよい。
目詰まり状態の発生頻度は不安定吐出状態の発生頻度より高いことが知られている。そのため、正常状態か不安定吐出状態か目詰まり状態かの三つの状態のうちのいずれであるかを判定する頻度を、目詰まり状態か目詰まり状態以外の状態かを判定する頻度より低くすることで、インクの吐出状態の検査に要する時間を短くすることができるとともに吐出状態のチェックに消費されるインクの量を少なくすることができる。
目詰まり状態の発生頻度は不安定吐出状態の発生頻度より高いことが知られている。そのため、正常状態か不安定吐出状態か目詰まり状態かの三つの状態のうちのいずれであるかを判定する頻度を、目詰まり状態か目詰まり状態以外の状態かを判定する頻度より低くすることで、インクの吐出状態の検査に要する時間を短くすることができるとともに吐出状態のチェックに消費されるインクの量を少なくすることができる。
(5)上記目的を達成するための印刷装置において、前記第一閾値および前記第二閾値のうち少なくともいずれか一方は、印刷媒体の色として想定される色との明度差が小さい色のインクほど、前記メンテナンスの実施条件を緩和する方向に値が設定されてもよい。
印刷媒体そのものの色との明度差が小さい色は大きい色よりインク滴の吐出状態の違いが人の目には識別されにくいことから、明度差が小さい色のインクのノズルは明度差が大きい色のインクのノズルよりメンテナンスの実施条件を緩和する。その結果、メンテナンスに要する時間や消費されるインクなどのコストと、メンテナンスにより得られる効果とのバランスをコントロールすることができる。
印刷媒体そのものの色との明度差が小さい色は大きい色よりインク滴の吐出状態の違いが人の目には識別されにくいことから、明度差が小さい色のインクのノズルは明度差が大きい色のインクのノズルよりメンテナンスの実施条件を緩和する。その結果、メンテナンスに要する時間や消費されるインクなどのコストと、メンテナンスにより得られる効果とのバランスをコントロールすることができる。
(6)上記目的を達成するための印刷装置は、前記メンテナンス手段において、前記メンテナンスは複数回分の前記実測値の代表値に基づいて実施されてもよい。
本発明によると、インクの吐出状態を誤判定してしまうことによって、実際の吐出状態に対して適切でないメンテナンスが実施される可能性を低減することができる。例えば、複数回分の実測値の代表値(中央値、最頻値、平均値など)と閾値とを比較し、インクの吐出状態を判定する。そうすることによって、適切でないメンテナンスが実施されにくくすることができる。
本発明によると、インクの吐出状態を誤判定してしまうことによって、実際の吐出状態に対して適切でないメンテナンスが実施される可能性を低減することができる。例えば、複数回分の実測値の代表値(中央値、最頻値、平均値など)と閾値とを比較し、インクの吐出状態を判定する。そうすることによって、適切でないメンテナンスが実施されにくくすることができる。
(7)上記目的を達成するための印刷装置において、前記測定手段は、前記ノズルの配列面に対し前記インクの吐出方向に対向する平板電極と、前記ノズルの配列面に設けられた平板電極と、の間の静電容量変化に伴う電位変化量を、前記インクの吐出状態を示す前記実測値として測定してもよい。
ノズルの配列面に設けられた平板電極とその電極と対向する平板電極との間の静電容量は、インク滴がノズルから吐出されていない状態のときと、インク滴がノズルから吐出されノズルから離れる直前までの状態とで変化する。静電容量が変化することによって電流が流れ平板電極の電位が変化する。本発明ではこの電位変化量を測定することによって、インクの吐出状態の判断材料とすることができる。
ノズルの配列面に設けられた平板電極とその電極と対向する平板電極との間の静電容量は、インク滴がノズルから吐出されていない状態のときと、インク滴がノズルから吐出されノズルから離れる直前までの状態とで変化する。静電容量が変化することによって電流が流れ平板電極の電位が変化する。本発明ではこの電位変化量を測定することによって、インクの吐出状態の判断材料とすることができる。
(8)上記目的を達成するための印刷装置において、前記メンテナンスはインク毎に異なる動作が実施されてもよい。
本発明によると、メンテナンスが必要な状態のノズルが特定のインクに対応するノズルである場合、全てのインクに対応するノズルを対象としたメンテナンスをすることなくメンテナンスが必要な状態のノズル列に対してのみメンテナンスを実施することができるので、メンテナンスで消費されるインク量を少なくすることができる。すなわち、メンテナンスによる画質改善効果とコストとをより細かくコントロールすることができる。
本発明によると、メンテナンスが必要な状態のノズルが特定のインクに対応するノズルである場合、全てのインクに対応するノズルを対象としたメンテナンスをすることなくメンテナンスが必要な状態のノズル列に対してのみメンテナンスを実施することができるので、メンテナンスで消費されるインク量を少なくすることができる。すなわち、メンテナンスによる画質改善効果とコストとをより細かくコントロールすることができる。
なお、請求項に記載された各手段の機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、又はそれらの組み合わせにより実現される。また、これら各手段の機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。さらに、本発明は上記の内容を実施する方法や、上記の機能を有し印刷装置を制御する制御プログラムや、当該制御プログラムを記録する記録媒体としても成立する。むろん、その制御プログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体であってもよい。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
1.第一実施形態
1−1.構成
図1は、印刷装置としてのインクジェットプリンター1(以降、単にプリンターという)とパーソナルコンピューター(PC)100とを有する印刷システムを説明するブロック図である。プリンター1は、用紙、布、フィルム等の印刷媒体に向けてインクを吐出し印刷媒体上に画像を形成する(印刷する)。PC100は、プリンター1と通信可能に接続されている。プリンター1に画像を印刷させるため、PC100は、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信する。
1−1.構成
図1は、印刷装置としてのインクジェットプリンター1(以降、単にプリンターという)とパーソナルコンピューター(PC)100とを有する印刷システムを説明するブロック図である。プリンター1は、用紙、布、フィルム等の印刷媒体に向けてインクを吐出し印刷媒体上に画像を形成する(印刷する)。PC100は、プリンター1と通信可能に接続されている。プリンター1に画像を印刷させるため、PC100は、その画像に応じた印刷データをプリンター1に送信する。
プリンター1は、用紙搬送ユニット11、キャリッジユニット12、駆動信号生成回路13、ヘッドユニット14、吐出状態検出部15、キャップユニット16、及び、コントローラー18を有する。用紙搬送ユニット11は、紙送りローラー(不図示)と紙送りモーター(不図示)等を備え、図2に示すように用紙を副走査方向(用紙搬送方向)に搬送させる。キャリッジユニット12はヘッドユニット14が取り付けられたキャリッジCRとキャリッジモーター(不図示)等を備え、キャリッジCRを図2に示すように主走査方向(用紙搬送方向に直交する方向)に移動させる。キャリッジCRには図示しないインクカートリッジを着脱可能に装着するためのカートリッジ装着部が設けられている。インクカートリッジは液体状のインクが収容された箱状の部材であり、各インクカートリッジには異なる色のインクが収容されている。
ヘッドユニット14はヘッドHD等を有する。ヘッドHDは駆動信号生成回路13から出力された駆動信号によって駆動され、インクカートリッジから供給されたインクを印刷媒体に向けて吐出させる。ヘッドHDの用紙対向面(図3および図4、ノズルプレート222)には、インク滴を吐出するための多数のノズルNzが設けられている。ノズルプレート222は導電性を有する板状の部材(例えば薄手の金属板)によって作製され、グランド線に接続されてグランド電位に調整されており、平板電極として機能する。
図3に例示したノズル群は、ノズルNzが1/180インチピッチで設けられたノズル列を複数有する。各ノズル列は、それぞれ吐出するインクの種類を定めることができる。このヘッドHDには6つのノズル列が設けられている。具体的には、図3の左側から順に、ブラックインクノズル列Nk、イエローインクノズル列Ny、シアンインクノズル列Nc、マゼンタインクノズル列Nm、ライトシアンインクノズル列Nlc、及び、ライトマゼンタインクノズル列Nlmである。各ノズル列は、そのノズル列に付した名前と同じ色のインクを吐出する。各ノズル列は同じ数のノズルNzで構成される。このヘッドHDでは、1つのノズル列が180個のノズルNzで構成されている。
駆動信号生成回路13はヘッドHDを駆動するための駆動信号を生成する。駆動信号は用紙への印刷時にヘッドHDに印加される。また、駆動信号はインクの吐出状態を検査する際や、ノズルの吐出能力を回復させるフラッシング動作や後述する微振動動作の際にもヘッドHDに印加される。ヘッドユニット14や駆動信号生成回路13はメンテナンス手段に相当する。
キャップユニット16は、ノズルNzからインク溶媒の蒸発を抑制したり、ノズルNzの吐出能力を回復させるために各ノズルNzからインクを吸引する吸引動作を行う等の役割を果たす。キャップユニット16はメンテナンス手段に相当する。キャップユニット16は、ノズル群が臨む空間を形成するキャップ31(図2および図4参照)と、ワイパー33と、キャップ31を支持するとともにプリンター1の状態に応じてヘッドHDのノズルプレート222に対するキャップ31のポジションを変えるための図示しない機構とを有する。キャップ31は図2に示すように常に非印刷エリアに配置されており、キャリッジCRが非印刷エリアに移動したときキャッピングを行うことができる。キャップ31は、長方形状の底部と底部の周縁から起立する側壁部とを有し、ノズルプレート222と対向する上面が開放された薄手の箱状をしている。そして、キャッピング時には、底部と側壁部とで囲まれた空間にノズル群が臨む。
この底部には、フェルトやスポンジ等の多孔質材で作製されたシート状の保湿部材312が配置される(図5参照)。フラッシング動作時にはこの保湿部材312にインクが着弾する。また、キャッピング時にはこの保湿部材312によってノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制できる。また、保湿部材312の表面には、検出用電極313が配設されている。この検出用電極313は、後述するインクの吐出状態検査に用いられ、検査時に500V〜600V程度の高電位になる。例示した検出用電極313は、二重の矩形枠部と、矩形枠部の対角同士を結ぶ対角線部と、矩形枠部の各辺の中点同士を結ぶ十字部とを有している。この構造によって、広い範囲に亘って一様に帯電される。また、インクは導電性を有する液体であり、保湿部材312が湿った状態で検出用電極313を高電位にすると、保湿部材312の表面も同じ電位になる。そのため、検出用電極313と保湿部材312とが平板電極として機能する。
キャップ31の空間には、廃液チューブ314が接続されている(図4参照)。また、廃液チューブ314には、図示しない吸引ポンプが接続されている。この吸引ポンプは、コントローラー18によって動作が制御される。キャップ31の上部の開口縁がノズルプレート222に密着した状態で吸引ポンプを動作させると、キャップ31側からノズルNzを通してヘッドHD内のインクや空気を吸引することができる。ワイパー33はヘッドHDのノズル面(ノズルプレート222)を拭き取るワイピング動作を行うためのものであり、キャップ31の傍に設けられている。ワイパー33はコントローラー18の制御に応じて駆動される。
前述したように、キャップ31はプリンター1の動作や状態に応じて非印刷エリアにおいて位置を変える。例えば、通常の印刷動作時では、キャップ31はノズル面に密着する位置あるいは僅かな空隙を開けて対向する位置と比較してノズル面から離れた位置に退避した状態となる。電源オフ時や長期休止時には、キャップ31の上端をノズル面に密着させてノズルNzからのインク溶媒の蒸発を抑制する。ノズルNzの吐出能力を回復させるために各ノズルNzからインクを吸引する吸引動作を行う場合にも、キャップ31の上端をノズル面に密着させて空間の気密性を高める。また、ノズルNzの吐出能力を回復させるために各ノズルNzから連続的にインク滴を吐出させるフラッシング動作を行う際や、後述する吐出状態検査を行う際には、ノズル面とキャップ31との間に僅かな隙間を空ける。図4はフラッシング動作時や吐出状態検査時のキャップ31のポジションを表している。
なお、ノズルNzの吐出能力を回復させるためのメンテナンス手法に関しては、前述した吸引動作およびフラッシング動作の他に、微振動動作がある。微振動動作は、インク滴が吐出されない程度の圧力変化を与えることで、ノズルNzで露出しているインクの自由表面を吐出側と引き込み側とに移動させ、攪拌によってノズル付近の増粘インクを分散させる動作である。これらの吸引動作、フラッシング動作及び微振動動作に関し、ノズルNzの吐出能力を回復させる度合いは、吸引動作が最も高く、微振動動作が最も低い。また、各動作におけるインクの消費量は、吸引動作が最も多く、微振動動作が最も少ない。各メンテナンス動作にはこのような特性の違いがあるため、プリンター1では、状態の違いに応じて各メンテナンス動作を使い分けている。
なお、本実施形態では吸引動作はノズル単位やノズル列単位ではなくノズルプレート222の全てのノズルに対して実施されるものとする。フラッシング動作や微振動動作はノズル単位で実施されてもよいしノズル列単位であってもよいし全てのノズル列のノズルに対して実施されてもよい。ワイピング動作はノズルプレート222全体に対してなされる。
なお、本実施形態では吸引動作はノズル単位やノズル列単位ではなくノズルプレート222の全てのノズルに対して実施されるものとする。フラッシング動作や微振動動作はノズル単位で実施されてもよいしノズル列単位であってもよいし全てのノズル列のノズルに対して実施されてもよい。ワイピング動作はノズルプレート222全体に対してなされる。
吐出状態検出部15は各ノズルNzのインクの吐出状態を検出する。吐出状態検出部15は測定手段に相当する。吐出状態検出部15は、ノズル群を構成する各ノズルNzからのインクの吐出の状況を検査することにより、インクの吐出状態が正常でないノズルNzを特定する。図6に示すように、吐出状態検出部15は、高圧電源ユニット41、抵抗42、コンデンサー44、増幅器45、検出制御部47を有する。
高圧電源ユニット41は、検出用電極313を所定電位にする電源である。本実施形態の高圧電源ユニット41は、500V〜600V程度の直流電源によって構成され、検出制御部47からの制御信号によって動作が制御される。抵抗42は、その一端が、高圧電源ユニット41の出力端子と接続され、その他端は検出用電極313に接続されている。コンデンサー44は、検出用電極313の電位変化成分を抽出するための素子であり、一方の導体が検出用電極313に接続され、他方の導体が増幅器45に接続されている。増幅器45は、コンデンサー44の他端に現れる信号(電位変化)を増幅して出力する。
検出制御部47は、吐出状態検出部15の制御を行う部分である。検出制御部47は、レジスタ群、AD変換部、電圧比較部、制御信号出力部等を有する。レジスタ群は、複数のレジスタによって構成されており、各レジスタには、ノズルNz毎の判定結果や判定用の電圧閾値などが記憶される。AD変換部は、増幅器45から出力された増幅後の電圧信号(アナログ値)をデジタル値に変換する。電圧比較部は、増幅後の電圧信号に基づく振幅値の大きさを電圧閾値と比較する。制御信号出力部は、高圧電源ユニット41の動作を制御するための制御信号を出力する。なお、吐出状態検出部15によって行われる吐出状態検査については、後で説明する。
コントローラー18はプリンター1における全体的な制御を行う。コントローラー18は、PC100から印刷データを取得すると、制御対象部を制御し、用紙に画像を印刷させる。また、コントローラー18は、プリンター1の印刷動作の実行に関連して、あるいは、電源オンに伴う初期動作に伴って、後述する吐出状態検査を実施する。
図1に示すように、コントローラー18は、インターフェイス部18aと、CPU18bと、メモリー18cとを有する。インターフェイス部18aは、PC100との間でデータの受け渡しを行う。CPU18bは、プリンター1の各部と図示しないインターフェイスを介して接続し、全体的な制御を行う。メモリー18cは、制御プログラムを格納する領域や作業領域等を確保する。CPU18bは、メモリー18cに記憶されている制御プログラムに従い、各制御対象部を制御する。例えば、CPU18bは、用紙搬送ユニット11やキャリッジユニット12、キャップユニット16が有する吸引ポンプ等を制御する。また、駆動信号を生成させるための制御信号を駆動信号生成回路13に送信したりする。さらに、吐出状態検出部15の検出制御部47と通信をし、必要な情報の送受信をする。
コントローラー18は、後述するメンテナンス処理Aを実行しているとき高頻度判定手段として機能し、メンテナンス処理Bを実行しているとき判定手段として機能する。
1−2.吐出状態検査について
前述したように、このプリンター1では、ノズルプレート222をグランドに接続してグランド電位にし、キャップ31に配置された検出用電極313を500V〜600V程度の高い電位にしている。これらのノズルプレート222と検出用電極313とを、所定間隔d(図6を参照)を空けた状態で配置し、検出対象のノズルNzからインク滴を吐出させる。ノズルプレート222と検出用電極313とを所定間隔dを空けて配置したことにより、コンデンサーが形成される。図6に示すように、グランドに接続されたノズルプレート222に接することでノズルNzから柱状に延びたインクもグランド電位になる。このようなインクの存在は、コンデンサーの電極間隔を局部的に縮めることと同意であり、静電容量を増加させる。静電容量が大きくなると、ノズルプレート222と検出用電極313との間で蓄えることのできる電荷の量が増加する。このように静電容量が増えたり、或いは、減少した静電容量が戻ったりすると、電荷が高圧電源ユニット41から抵抗42等を通って検出用電極313側へ移動する。すなわち、検出用電極313へ向けて電流Iが流れる。電流Iが流れると、検出用電極313の電位が変化する。検出用電極313の電位の変化は、コンデンサー44における他方の導体(増幅器45側の導体)の電位変化としても現れる。従って、他方の導体の電位変化を監視することで、インク滴の吐出状況を判定することができる。
前述したように、このプリンター1では、ノズルプレート222をグランドに接続してグランド電位にし、キャップ31に配置された検出用電極313を500V〜600V程度の高い電位にしている。これらのノズルプレート222と検出用電極313とを、所定間隔d(図6を参照)を空けた状態で配置し、検出対象のノズルNzからインク滴を吐出させる。ノズルプレート222と検出用電極313とを所定間隔dを空けて配置したことにより、コンデンサーが形成される。図6に示すように、グランドに接続されたノズルプレート222に接することでノズルNzから柱状に延びたインクもグランド電位になる。このようなインクの存在は、コンデンサーの電極間隔を局部的に縮めることと同意であり、静電容量を増加させる。静電容量が大きくなると、ノズルプレート222と検出用電極313との間で蓄えることのできる電荷の量が増加する。このように静電容量が増えたり、或いは、減少した静電容量が戻ったりすると、電荷が高圧電源ユニット41から抵抗42等を通って検出用電極313側へ移動する。すなわち、検出用電極313へ向けて電流Iが流れる。電流Iが流れると、検出用電極313の電位が変化する。検出用電極313の電位の変化は、コンデンサー44における他方の導体(増幅器45側の導体)の電位変化としても現れる。従って、他方の導体の電位変化を監視することで、インク滴の吐出状況を判定することができる。
図7Aは、インクがノズルNzから正常に吐出したときに、増幅器45から出力される電圧信号SGを説明する図である。駆動信号生成回路13が検査対象の一つのノズルNzからインクを吐出させるための駆動信号を生成すると、ノズルNzからインク滴が吐出される。これにより、増幅器45から、電圧信号SGが出力される。検出制御部47は、この電圧信号SGの最高電圧VHと最低電圧VLとの差である電位差ΔVと、第一閾値TH1および第二閾値TH2との大小比較を行ってインクの吐出状態を判定する。電位差ΔVは請求項に記載の実測値に相当する。
本実施形態では、インクの吐出状態を次の3つの状態に区別する。正常状態と、ノズルからインク滴は吐出されているがインク滴の吐出方向が異常である不安定吐出状態と、ノズルが目詰まりしてインク滴吐出されない目詰まり状態である。図7Bは不安定吐出状態のノズルからインク滴が吐出したときに、増幅器45から出力される電圧信号SGを説明する図である。インクが印刷媒体の面に対して垂直に着弾しないような不安定吐出状態の場合、ノズルから吐出される直前のインク滴の長さ(インク滴のキャップ31側に最も近い部分からノズルプレート222までの長さ)は正常状態の場合よりも短くなることが知られている。そのため、電位差ΔVも正常状態と比較すると小さくなる。不安定吐出状態のノズルの場合、そのノズルによるインクの着弾部分は、正常状態のノズルの着弾部分よりも色が薄くなっているように見える。図7Cは目詰まり状態のノズルからインク滴を吐出させようとしたときの電圧信号SGを説明する図である。ドット抜けと呼ばれるような、ノズルが目詰まりしていてほとんどインク滴が吐出されないような状態では図7Cに示すように電位差ΔVは不安定吐出状態の場合と比較して小さな値となる。
したがって上記の3つの状態を区別するために第一閾値TH1と第二閾値TH2の2つの閾値を用いる。電位差ΔVが、第一閾値TH1(図8Aを参照)以上であれば、インクが正常に吐出されている正常状態であると判断する。電位差ΔVが、第二閾値TH2より小さければ、インクが吐出されず目詰まり状態であると判断する。電位差ΔVが、第一閾値TH1より低く第二閾値TH2以上であれば、不安定吐出状態であると判断する。なお、本実施形態では、印刷媒体の色として想定される色とインクとの明度差に応じて第一閾値TH1および第二閾値TH2が設定される。具体的には明度差が小さい色のインクの閾値は、明度差が大きい色のインクの閾値よりも小さく設定される。例えば本実施形態のプリンター1では、印刷媒体の色は6種類のインク色より明度の高い色であることが想定されているので、図8Bに示すように、印刷媒体の色との明度差がマゼンダより小さいイエローの第一閾値TH1はマゼンダの第一閾値TH1より小さく設定され、イエローの第二閾値TH2はマゼンダの第二閾値TH2より小さく設定される。これは、印刷媒体そのものの色との明度差が小さい色は大きい色よりインク滴の吐出状態の違いが人の目には識別されにくいことから、明度差が小さい色のインクのノズルは明度差が大きい色のインクのノズルよりメンテナンスの実施条件を緩和することを意図している。そうすることにより、メンテナンスに要する時間や消費されるインクなどのコストと、メンテナンスにより得られる効果とのバランスをコントロールすることができる。
図3で説明したように、このプリンター1で使用されるヘッドHDには、6つのノズル列Nk〜Nlmが設けられている。そして、各ノズル列Nk〜Nlmは、180個のノズルNzで構成されている。このため、1回の吐出状態検査では1080個(180個×6列)のノズルNzが検査対象になる。なお、このプリンター1では、15個のノズルNzが1つのブロックを構成し(1つのノズル列が12個のブロックに分割されている)、吐出状態検査はブロック単位で行われる。
1−3.メンテナンス処理
次に、前述の構成を有するプリンター1について、その動作を説明する。プリンター1のコントローラー18は、PC100から印刷指示を受けて印刷を実行する際、一印刷ジョブ毎にその印刷ジョブに対応する印刷動作の前に図9に示すメンテナンス処理Aを実施する。また、図11に示すメンテナンス処理Bは、印刷動作の複数回に1回(例えば印刷ジョブ10回に1回)の割合で、メンテナンス処理Aに変わって実行される処理である。メンテナンス処理Aは、目詰まり状態であるかそれ以外の状態であるかを判定し目詰まり状態であれば対応するメンテナンスを実施する処理である。メンテナンス処理Bは、目詰まり状態か不安定吐出状態か正常状態のいずれであるかを判定し、正常状態以外の2つの状態であればそれぞれの状態に対応するメンテナンスを実施する処理である。なお、メンテナンス処理Aもメンテナンス処理Bも、印刷動作に関連せず単独でメンテナンスを実施することをPC100から指示された場合に実行されてもよい。まずメンテナンス処理Aから説明する。
次に、前述の構成を有するプリンター1について、その動作を説明する。プリンター1のコントローラー18は、PC100から印刷指示を受けて印刷を実行する際、一印刷ジョブ毎にその印刷ジョブに対応する印刷動作の前に図9に示すメンテナンス処理Aを実施する。また、図11に示すメンテナンス処理Bは、印刷動作の複数回に1回(例えば印刷ジョブ10回に1回)の割合で、メンテナンス処理Aに変わって実行される処理である。メンテナンス処理Aは、目詰まり状態であるかそれ以外の状態であるかを判定し目詰まり状態であれば対応するメンテナンスを実施する処理である。メンテナンス処理Bは、目詰まり状態か不安定吐出状態か正常状態のいずれであるかを判定し、正常状態以外の2つの状態であればそれぞれの状態に対応するメンテナンスを実施する処理である。なお、メンテナンス処理Aもメンテナンス処理Bも、印刷動作に関連せず単独でメンテナンスを実施することをPC100から指示された場合に実行されてもよい。まずメンテナンス処理Aから説明する。
1−3−1.メンテナンス処理A
図9を参照しながらメンテナンス処理Aについて説明する。はじめに、コントローラー18は各インクに対応する吐出状態検査処理で比較対象として用いる閾値として第二閾値TH2を設定し(ステップS100)、吐出状態検査処理を実行する(ステップS105)。ここで、第二閾値TH2はインク色ごとに設定される。本実施形態では6色のインクを用いているので、第二閾値TH2として6つの値が設定される。第二閾値TH2は、印刷媒体との明度差が大きい色のインクに対応する第二閾値よりも、明度差の小さい色のインクに対応する第二閾値の方が、小さい値に設定されている。吐出状態検査処理の詳細な流れについては後述するが、動作の内容は前述した通りである。
図9を参照しながらメンテナンス処理Aについて説明する。はじめに、コントローラー18は各インクに対応する吐出状態検査処理で比較対象として用いる閾値として第二閾値TH2を設定し(ステップS100)、吐出状態検査処理を実行する(ステップS105)。ここで、第二閾値TH2はインク色ごとに設定される。本実施形態では6色のインクを用いているので、第二閾値TH2として6つの値が設定される。第二閾値TH2は、印刷媒体との明度差が大きい色のインクに対応する第二閾値よりも、明度差の小さい色のインクに対応する第二閾値の方が、小さい値に設定されている。吐出状態検査処理の詳細な流れについては後述するが、動作の内容は前述した通りである。
そしてコントローラー18は、吐出状態検査処理を実行した結果、電位差ΔVが第二閾値TH2未満のノズルの数が所定数以上であるか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、6つのノズル列の全てのノズルを検査した結果、目詰まり状態のノズルが所定数以上存在しているか否かが判定される。所定数とは、吸引動作を含むメンテナンスを実施する条件とする数値であり、印刷結果の画質に及ぼす影響とコスト(メンテナンスに要する時間やインク消費量)とを鑑みて予め決められている。目詰まり状態のノズル数が所定数未満であってもその都度吸引動作を含むメンテナンスを実行していると、所定数未満のノズルの目詰まりを解消するためにヘッド全体(全てのノズル)に対する吸引動作を含むメンテナンスすることによって得られるメンテナンス前後の画質改善効果が少ないのに対して、コストはかかってしまう。したがって本実施形態では、ステップS110で電位差ΔVが第二閾値TH2未満のノズル数が所定数以上でないと判定された場合はメンテナンス動作を行わずにそのままメンテナンス処理Aを終了し、所定数以上であると判定された場合は、コントローラー18は吸引動作を含むメンテナンスを実行してから(ステップS115)メンテナンス処理Aを終了する。吸引動作を含むメンテナンスは、前述した吸引動作を少なくとも含むメンテナンスであり、本実施形態では吸引動作とフラッシング動作とワイピング動作とを実施する。
1−3−2.吐出状態検査処理
次に、図9のステップS115の吐出状態検査処理の具体的手順を、図10を参照しながら説明する。吐出状態検査は、キャリッジCRを検査用の位置(図2に示す非印刷エリア)まで移動させた状態で行われる。吐出状態検査処理では、検出制御部47がまず検査対象となるノズル列を決定する(ステップS200)。図3で説明したように、ヘッドHDにはノズル列が6つ設けられている。これら6つのノズル列のうち、1つのノズル列が検査対象となるノズル列として決定される。
次に、図9のステップS115の吐出状態検査処理の具体的手順を、図10を参照しながら説明する。吐出状態検査は、キャリッジCRを検査用の位置(図2に示す非印刷エリア)まで移動させた状態で行われる。吐出状態検査処理では、検出制御部47がまず検査対象となるノズル列を決定する(ステップS200)。図3で説明したように、ヘッドHDにはノズル列が6つ設けられている。これら6つのノズル列のうち、1つのノズル列が検査対象となるノズル列として決定される。
検査対象のノズル列が決定されると、検出制御部47は検査対象となるブロックを決定する(ステップS205)。前述したように、1つのブロックは15個のノズルNzで構成されている。このため、1つのノズル列には12個のブロックが含まれる。ここでは、12個のブロックのうち、検査対象となる1つのブロックが決定される。例えば、1番目から15番目のノズルNzで構成される1番目のブロックが選択される。
検査対象のブロックが決定されると、検出制御部47はそのブロックについてインク滴の吐出および電圧信号SGの検出を行う(ステップS210)。具体的には対象ブロックに属するノズルNzについてノズル一つ一つからインク滴を吐出させ、インク滴の吐出に起因して生じる電気的な変化、具体的には個々のノズルNzに対応付けて電位差ΔVを取得する。
1ブロックに属する全てのノズルに対してステップS210の処理が終了すると、検出制御部47はインク滴の吐出と信号の検出が1ノズルあたり所定回数実行されたか否かを判定する(ステップS215)。所定回数未満の場合は所定回数に達するまでステップS210を繰り返し実行する。複数回分のΔVの検出結果は上書きされて消えてしまうことなく複数回分それぞれ保持される。所定回数実行された後、検出制御部47はノズルごとに複数回分の電位差ΔVの代表値(中央値、最頻値、平均値など)を導出し、当該代表値と閾値(吐出状態検査処理を呼び出した処理で設定されたインク毎の閾値)とを比較する(ステップS220)。具体的には、比較対象ノズルNzが属するノズル列に対応するインクに応じた閾値と比較対象ノズルの電位差ΔVの代表値との比較が電圧比較部によって行われる。例えば比較に用いる閾値として第一閾値TH1が設定された状態でこの吐出状態検査処理が呼び出されており検査対象ノズルがイエローに対応している場合は、イエローの第一閾値と検査対象ノズルのΔVの体表値とが比較される。比較結果は、検出制御部47のレジスタに記憶される。例えば、比較結果として「閾値以上」あるいは「閾値未満」を示す値が記憶される。このように一つのノズルに対する複数回の検査結果の代表値を比較に用いることにより、インクの吐出状態を誤判定してしまうことにより適切でないメンテナンスが実施される可能性を低減することができる。
続いて検出制御部47は検査対象のブロックが検査対象のノズル列における最終ブロックであるかを判定し(ステップS225)、最終ブロックでなければステップS205に戻り、次のブロックについて前述の処理を行う。最終ブロックであれば、検出制御部47は検査対象ノズル列が複数のノズル列のうちの最終ノズル列であるか否かを判定する(ステップS230)。最終ノズル列でなければコントローラー18はステップS200に戻り次のノズル列について前述の処理を行う。最終ノズル列であれば、これまでの判定結果を保持したままこの吐出状態検査処理を終了し、呼び出し元の処理に復帰する。
1−3−3.メンテナンス処理B
次にメンテナンス処理Bの処理内容を図11を参照しながら説明する。まず、コントローラー18は、各インクに対応する第一閾値TH1を設定し(ステップS300)、吐出状態検査処理を実行する(ステップS305)。具体的には、インク6色分の第一閾値TH1として6個の値が設定され、図10に示す吐出状態検査処理が呼び出される。第一閾値TH1は、印刷媒体との明度差が大きい色のインクに対応する第一閾値よりも、明度差の小さい色のインクに対応する第一閾値の方が、小さい値に設定されている。吐出状態検査処理を実行した後、コントローラー18は、第一閾値TH1未満のノズルの個数が所定数以上であるか否かを判定する(ステップS310)。第一閾値TH1未満のノズル数が所定数以上である場合、すなわち正常状態でない(不安定吐出状態か目詰まり状態の)ノズル数が所定数以上である場合は、コントローラー18は、各インクに対応する第二閾値TH2を設定して(ステップS315)、吐出状態検査処理を実行する(ステップS320)。具体的には、メンテナンス処理Aと同様にインク6色分の第二閾値TH2として6個の値が設定され、図10に示す吐出状態検査処理が呼び出される。
次にメンテナンス処理Bの処理内容を図11を参照しながら説明する。まず、コントローラー18は、各インクに対応する第一閾値TH1を設定し(ステップS300)、吐出状態検査処理を実行する(ステップS305)。具体的には、インク6色分の第一閾値TH1として6個の値が設定され、図10に示す吐出状態検査処理が呼び出される。第一閾値TH1は、印刷媒体との明度差が大きい色のインクに対応する第一閾値よりも、明度差の小さい色のインクに対応する第一閾値の方が、小さい値に設定されている。吐出状態検査処理を実行した後、コントローラー18は、第一閾値TH1未満のノズルの個数が所定数以上であるか否かを判定する(ステップS310)。第一閾値TH1未満のノズル数が所定数以上である場合、すなわち正常状態でない(不安定吐出状態か目詰まり状態の)ノズル数が所定数以上である場合は、コントローラー18は、各インクに対応する第二閾値TH2を設定して(ステップS315)、吐出状態検査処理を実行する(ステップS320)。具体的には、メンテナンス処理Aと同様にインク6色分の第二閾値TH2として6個の値が設定され、図10に示す吐出状態検査処理が呼び出される。
吐出状態検査処理を実行した後、コントローラー18は、第二閾値TH2未満のノズルの個数が所定数以上であるか否かを判定する(ステップS325)。第二閾値TH2未満のノズル数が所定数以上である場合、すなわち目詰まり状態のノズル数が所定数以上である場合は、コントローラー18は吸引動作を含むメンテナンスを実施する。具体的には、吸引動作とフラッシング動作とワイピング動作を含むメンテナンスを実施する(ステップS330)。第二閾値未満のノズル個数が所定数以上でない場合、コントローラー18は吸引動作を含まないメンテナンスを実施する(ステップS335)。吸引動作を含まないメンテナンスとして例えば、フラッシング動作とワイピング動作とをコントローラー18は実施する。微振動動作が行われてもよい。このように、不安定吐出状態と判定された場合は吸引動作を含むメンテナンスを実行しないことにより、目詰まり状態ではないのに吸引動作を含むメンテナンスを実施することによって消費されるインク量が増加することや、メンテナンスに要する総時間が長くなってしまうことを防ぐことができる。
1−4.まとめ
本実施形態では、このメンテナンス処理Bは、メンテナンス処理Aより低い頻度で実施される。なぜなら、目詰まり状態の発生頻度は不安定吐出状態の発生頻度より高いことが知られているためである。前述したように、目詰まり状態か否かだけを検査するメンテナンス処理Aは、目詰まり状態か不安定吐出状態か正常状態かの3つの状態のいずれであるかを判定するメンテナンス処理Bよりも、検査回数が少ないため処理時間が少なく、また、検査で消費されるインク量も少ない。したがってメンテナンス処理Aをメンテナンス処理Bより高頻度で実施することにより、インクの吐出状態検査に要する時間が毎回長くなってしまうことを防止することができるとともに、吐出状態検査で消費されるインクの量を少なくすることができる。また、メンテナンス処理Aより低頻度ではあるがメンテナンス処理Bを実行することにより、目詰まり状態ではないが正常状態でもない不安定吐出状態を検出することができ、不安定吐出状態のノズルの吐出能力を回復するために効果とコストとのバランスが最適なメンテナンスを実行することができる。
本実施形態では、このメンテナンス処理Bは、メンテナンス処理Aより低い頻度で実施される。なぜなら、目詰まり状態の発生頻度は不安定吐出状態の発生頻度より高いことが知られているためである。前述したように、目詰まり状態か否かだけを検査するメンテナンス処理Aは、目詰まり状態か不安定吐出状態か正常状態かの3つの状態のいずれであるかを判定するメンテナンス処理Bよりも、検査回数が少ないため処理時間が少なく、また、検査で消費されるインク量も少ない。したがってメンテナンス処理Aをメンテナンス処理Bより高頻度で実施することにより、インクの吐出状態検査に要する時間が毎回長くなってしまうことを防止することができるとともに、吐出状態検査で消費されるインクの量を少なくすることができる。また、メンテナンス処理Aより低頻度ではあるがメンテナンス処理Bを実行することにより、目詰まり状態ではないが正常状態でもない不安定吐出状態を検出することができ、不安定吐出状態のノズルの吐出能力を回復するために効果とコストとのバランスが最適なメンテナンスを実行することができる。
2.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では第一閾値TH1も第二閾値TH2もインク色ごとに異なる値に設定されている形態を説明したが、どちらか片方、例えば第一閾値TH1だけインク毎に異なる値であるとして、第二閾値TH2はインクごとに共通の値が設定されてもよい。すなわち、目詰まり状態を判定する第二閾値TH2は全インク共通の値にし、不安定吐出状態と正常状態の境界を定義する第一閾値TH1のみ、インク色ごとに設定するようにしてもよい。
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では第一閾値TH1も第二閾値TH2もインク色ごとに異なる値に設定されている形態を説明したが、どちらか片方、例えば第一閾値TH1だけインク毎に異なる値であるとして、第二閾値TH2はインクごとに共通の値が設定されてもよい。すなわち、目詰まり状態を判定する第二閾値TH2は全インク共通の値にし、不安定吐出状態と正常状態の境界を定義する第一閾値TH1のみ、インク色ごとに設定するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、吸引動作は全てのノズルに対して実施される構成を説明したが、例えばノズル列(インク)ごとに吸引動作を実施することができる構成であれば、ノズル列ごとにメンテナンス方法を設定してもよい。そうすることによってメンテナンスによる画質改善効果とコストとをより細かくコントロールすることができる。具体的には例えば、目詰まり状態のノズルが所定数以上存在するノズル列に対しては吸引動作を行うとともに目詰まり状態のノズルに対してフラッシング動作を行って最後にワイピング動作を実施し、不安定吐出状態のノズルが所定以上存在し目詰まり状態のノズルは所定数未満であるノズル列に対しては不安定吐出状態のノズルに対するフラッシング動作を実施し最後にワイピング動作を実施し、不安定吐出状態のノズルが所定数以上で目詰まり状態のノズルがないノズル列に対しては不安定吐出状態のノズルに対する微振動動作を実施して最後にワイピング動作を実施する、などのようにしてもよい。
1:インクジェットプリンター、11:用紙搬送ユニット、12:キャリッジユニット、13:駆動信号生成回路、14:ヘッドユニット、15:吐出状態検出部、16:キャップユニット、18:コントローラー、18a:インターフェイス部、18c:メモリー、31:キャップ、33:ワイパー、41:高圧電源ユニット、42:抵抗、44:コンデンサー、45:増幅器、47:検出制御部、222:ノズルプレート、312:保湿部材、313:検出用電極、314:廃液チューブ、CR:キャリッジ、HD:ヘッド、Nc:シアンインクノズル列、Nk:ブラックインクノズル列、Nlc:ライトシアンインクノズル列、Nlm:ライトマゼンタインクノズル列、Nm:マゼンタインクノズル列、Ny:イエローインクノズル列、Nz:ノズル、TH1:第一閾値、TH2:第二閾値、ΔV:電位差。
Claims (9)
- ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定手段と、
インク色毎に設定された第一閾値および第二閾値と前記実測値とを比較することによって、前記第一閾値および前記第二閾値によって区別された、正常状態と、目詰まり状態と、前記正常状態と前記目詰まり状態との間の不安定吐出状態と、の三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを判定する判定手段と、
判定結果に応じて異なるメンテナンスを実施するメンテナンス手段と、
を備える印刷装置。 - 前記メンテナンス手段は、前記インクの吐出状態が前記目詰まり状態であると判定された場合にインクの吸引動作を含むメンテナンスを実施し、前記不安定吐出状態であると判定された場合にインクの吸引動作を含まないメンテナンスを実施する、
請求項1に記載の印刷装置。 - 前記メンテナンス手段は、前記目詰まり状態と判定されたノズルの数が予め決められた所定数以上であるとき、前記吸引動作を含むメンテナンスを実施する、
請求項2に記載の印刷装置。 - 前記第一閾値と前記第二閾値のうち前記目詰まり状態を前記不安定吐出状態および前記正常状態と区別する閾値を用いて、前記インクの吐出状態が前記目詰まり状態であるか否かを前記判定手段より高い頻度で判定し、目詰まり状態である場合に前記メンテナンス手段に前記吸引動作を含むメンテナンスを実行させる高頻度判定手段を備える、
請求項2または請求項3に記載の印刷装置。 - 前記第一閾値および前記第二閾値のうち少なくともいずれか一方は、印刷媒体の色として想定される色との明度差が小さい色のインクほど、前記メンテナンスの実施条件を緩和する方向に値が設定される、
請求項2〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。 - 前記メンテナンス手段において、前記メンテナンスは複数回分の前記実測値の代表値に基づいて実施される、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の印刷装置。 - 前記測定手段は、前記ノズルの配列面に対し前記インクの吐出方向に対向する平板電極と、前記ノズルの配列面に設けられた平板電極と、の間の静電容量変化に伴う電位変化量を、前記インクの吐出状態を示す前記実測値として測定する、
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の印刷装置。 - 前記メンテナンスはインク毎に異なる動作が実施される、
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の印刷装置。 - ノズルから吐出されるインクの吐出状態を示す実測値を測定する測定工程と、
インク色毎に設定された第一閾値および第二閾値と前記実測値とを比較することによって、前記第一閾値および前記第二閾値によって区別された、正常状態と、目詰まり状態と、前記正常状態と前記目詰まり状態との間の不安定吐出状態と、の三つの状態のうち前記インクの吐出状態がいずれであるかを判定する判定工程と、
判定結果に応じて異なるメンテナンスを実施するメンテナンス工程と、
を含む印刷装置のメンテナンス方法。
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