以下に、本発明に係る画像処理装置及び磁気共鳴イメージング装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、磁気共鳴イメージング装置が有する計算機システムに、本発明に係る画像処理装置を適用した場合について説明する。また、以下に示す実施例では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ。また、以下に示す実施例では、MRI装置によって脳のダイナミックスタディが行われる場合について説明する。
最初に、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明する。
図1は、本実施例に係るMRI装置の全体構成を示す図である。図1に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、計算機システム10を有する。
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成され、円筒内の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1は、例えば、永久磁石や超伝導磁石などを用いて形成される。
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成され、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向であることとする。
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて、被検体から発せられるNMR(Nuclear Magnetic Resonance)信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてNMR信号の周波数を変化させるために利用される。
傾斜磁場電源3は、後述する計算機システム10による制御のもと、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを有し、後述する寝台制御部5による制御のもと、天板4aを上下方向又は長手方向へ移動することで、傾斜磁場コイル2の内側にある撮像領域の内外へ被検体を移動する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
寝台制御部5は、後述する計算機システム10による制御のもと、天板4aを長手方向又は上下方向へ移動するように寝台4を駆動する。
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。
送信部7は、後述する計算機システム10による制御のもと、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信RFコイル6によって発生した高周波磁場の影響によって被検体から発せられるNMR信号を受信する。そして、受信RFコイル8は、受信したNMR信号を後述する受信部9に出力する。
受信部9は、後述する計算機システム10による制御のもと、受信RFコイル8から出力されたNMR信号に基づいてNMR信号データを生成する。そして、受信部9は、生成したNMR信号データを計算機システム10に送信する。
計算機システム10は、MRI装置100の全体制御やデータ収集、画像再構成などを行う。この計算機システム10は、インタフェース部11、データ収集部12、画像再構成部13、記憶部14、表示部15、入力部16及び制御部17を有する。
インタフェース部11は、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7及び受信部9に接続され、これらの接続された各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を制御する。
データ収集部12は、インタフェース部11を介して、受信部9から送信されるNMR信号データを収集する。そして、データ収集部12は、収集したNMR信号データを記憶部14に格納する。
画像再構成部13は、記憶部14に記憶されているNMR信号データに対してフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体Pの体内に関する画像を生成する。そして、画像再構成部13は、生成した画像を記憶部14に格納する。
記憶部14は、データ収集部12によって収集されたNMR信号データや、画像再構成部13によって生成された画像などを被検体Pごとに記憶する。例えば、記憶部14は、ハードディスクドライブやDVD(Digital Versatile Disk)ドライブなどである。
表示部15は、制御部17による制御のもと、記憶部14に記憶されている画像や、操作者から撮像条件を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などの各種情報を表示する。例えば、表示部15は、CRT(Cathode Ray Tube)モニタや液晶モニタなどである。
入力部16は、撮像条件などの各種情報や各種操作の入力を操作者から受け付ける。例えば、入力部16は、マウスやキーボード、トラックボール、ポインティングデバイスなどである。
制御部17は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100を総括的に制御する。例えば、制御部17は、操作者から受け付けた撮像条件に基づいて各種のパルスシーケンスを生成し、生成したパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を制御することで、各種の撮像を実行する。
なお、ここでいうパルスシーケンスとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9がNMR信号を検出するタイミングなど、撮像を実行するための手順を定義した情報である。
以上、本実施例に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、MRI装置100では、計算機システム10が、撮像された複数時相の画像ごとに被検体Pの撮像位置を算出し、算出した撮像位置の分布を解析することで、撮像位置の分散が最小となる撮像位置の集合を特定する。また、計算機システム10は、特定した集合に含まれる撮像位置に基づいて、複数時相の画像の中から少なくとも1つの画像をリファレンス画像として選択する。そして、計算機システム10は、選択したリファレンス画像における被検体Pの撮像位置に合わせるように、リファレンス画像以外の画像すなわちターゲット画像の位置を変更する。
すなわち、計算機システム10は、複数時相の画像の中で頻度が高い撮像位置を検出し、検出した撮像位置で被検体が撮像されている画像をリファレンス画像として選択する。これにより、リファレンス画像とターゲット画像との一致度が所定の値に達するまでにターゲット画像を移動させなければならない距離が小さくなるので、位置合せの処理で逐次的に行われる処理の回数を減らすことができる。したがって、本実施例によれば、被検体Pの動き補正の処理にかかる負荷や時間を減少させることができる。
以下では、上述した機能を有する計算機システム10について詳細に説明する。なお、本実施例では、MRI装置100によって、アキシャル像が時系列的に撮像される場合について説明する。
図2は、本実施例に係る計算機システム10の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、計算機システム10は、記憶部14と、表示部15と、入力部16と、制御部17とを有する。なお、図2では、図1に示したインタフェース部11、データ収集部12及び画像再構成部13については図示を省略する。
記憶部14は、画像記憶部14aと、リファレンス選択条件記憶部14bとを有する。
画像記憶部14aは、画像再構成部13によって生成された画像を記憶する。本実施例では、画像記憶部14aは、被検体Pの頭部を時系列的に撮像した複数時相の画像を記憶する。
リファレンス選択条件記憶部14bは、画像の種類又は検査の種類に応じて決められた選択条件を記憶する。ここでいう選択条件は、例えば、撮像される画像の性質や、後述する画像位置合せ部17eによって行われる位置合せ処理のアルゴリズム、検査での解析内容などに応じて設定される。
例えば、位置合せ処理のアルゴリズムの特性は、アルゴリズムで用いられている評価基準や評価関数などに依存する。そして、位置合せ処理のアルゴリズムには、画素値が異なる画像同士の位置合せを行う場合に、位置合せの精度が低くなってしまうものもある。このようなアルゴリズムが用いられる場合には、造影剤が流入しているタイミングの時相の画像がリファレンス画像として選択されてしまうと、造影剤で染まっていない他の時相の画像との位置合せを行う場合に、位置合せ処理の精度が低くなってしまう。
そこで、このような場合には、例えば、解析対象の部位が造影される可能性が高い時相をあらかじめ設定しておき、その時相の画像以外の画像からリファレンス画像を選択するように選択条件が設定される。または、画素値のヒストグラムに基づいて、造影されている時相の画像を自動的に検出し、検出した時相の画像以外の画像からリファレンス画像を選択するように選択条件が設定される。逆に、検査において、造影されている時相が他の時相より重要であるような場合には、造影されている時相の画像からリファレンス画像を選択するように選択条件が設定される。
制御部17は、撮像位置算出部17a、最頻位置特定部17b、リファレンス画像選択部17c、リファレンス選択画面制御部17d、画像位置合せ部17e及び画像解析部17fを有する。
撮像位置算出部17aは、被検体Pを時系列的に撮像した複数時相の画像を取得し、取得した画像ごとに被検体Pの撮像位置を算出する。
例えば、撮像位置算出部17aは、図1に示した各部が動作することで複数時相の画像が撮像されると、撮像された複数時相の画像を画像記憶部14aから読み出し、読み出した画像をメモリに格納する。そして、撮像位置算出部17aは、メモリに格納された画像それぞれから被検体Pの領域を抽出し、抽出した領域の重心位置を撮像位置として算出する。なお、本実施例では、撮像位置算出部17aは、複数時相の画像に対して平滑化処理を行ったうえで、平滑化された画像から被検体Pの領域を抽出する。
図3及び4は、撮像位置算出部17aによる領域抽出を説明するための図である。図3に示すように、まず、撮像位置算出部17aは、画像記憶部14aから読み出した画像31に対して平滑化フィルターを施すことで、平滑化された画像32を生成する。次に、撮像位置算出部17aは、画像32に対して画素値に関する閾値処理を行うことで、被検体Pの領域33(図3に示す斜線が付された領域)を抽出する。
このように、撮像位置算出部17aが、画像記憶部14aから読み出した画像に対して平滑化処理を行うことによって、被検体Pの領域だけを適切に抽出することができるようになる。ここで、例えば、平滑化処理を省略した場合には、図4に示すように、被検体Pの周囲に描出されていたノイズ成分の領域など、被検体P以外の領域34も抽出されてしまう可能性がある。しかし、この場合でも、例えば、撮像位置算出部17aが、抽出された領域ごとに画素の連結数を検出し、連結数が少ない領域を除去する処理を行うことで、被検体P以外の領域が抽出されないようにすることが可能である。
なお、本実施例では、撮像位置算出部17aは、時系列に撮像された複数時相のアキシャル像について、重心位置を撮像位置として算出する。
最頻位置特定部17bは、撮像位置算出部17aにより画像ごとに算出された撮像位置の分布を解析することで、撮像位置の分散が最小となる撮像位置の集合を特定する。なお、以下では、最頻位置特定部17bによって特定される撮像位置の集合を最頻位置グループと呼ぶ。
例えば、最頻位置特定部17bは、撮像位置算出部17aによって画像ごとに算出された撮像位置の分布をクラスタ解析することで、最頻位置グループを特定する。なお、ここでいうクラスタ解析には、一般的に知られた各種の解析手法を用いることができる。
図5及び6は、最頻位置特定部17bによる最頻位置グループの特定を説明するための図である。図5及び6において、横軸は時相を示しており、縦軸は重心位置を示している。また、図5及び6に示す各点は、撮像位置算出部17aによって画像ごとに算出された撮像位置を示している。最頻位置特定部17bは、例えば、図5に示す範囲51又は図6に示す範囲61に含まれる撮像位置を最頻位置グループとして特定する。
さらに、最頻位置特定部17bは、最頻位置グループを特定したのちに、その最頻位置グループに含まれる撮像位置の代表値を最頻位置として算出してもよい。例えば、最頻位置特定部17bは、最小二乗法を用いて、最頻位置グループに含まれる重心位置と時相との関係を近似する近似関数を求める。また、最頻位置特定部17bは、例えば、最頻位置グループに含まれる時相の範囲内で中間に位置する時相を算出する。そして、最頻位置特定部17bは、算出した時相を近似関数に代入して得られる重心位置を代表値として算出する。または、例えば、最頻位置特定部17bは、撮像位置の平均値を代表値として算出してもよい。
なお、本実施例では、撮像位置特定部17bは、時系列に撮像された複数時相のアキシャル像について、最頻位置グループを特定する。
リファレンス画像選択部17cは、最頻位置特定部17bにより特定された最頻位置グループに含まれる撮像位置に基づいて、複数時相の画像の中から少なくとも1つの画像をリファレンス画像として選択する。
例えば、リファレンス画像選択部17cは、最頻位置グループに含まれる撮像位置の時相の中で最も早い時相を特定し、特定した時相の画像をリファレンス画像として選択する。また、最頻位置特定部17bによって最頻位置が算出されている場合には、リファレンス画像選択部17cは、例えば、最頻位置に被検体Pの撮像位置が最も近い画像をリファレンス画像として選択する。
なお、リファレンス画像選択部17cは、リファレンス画像を選択する際に、画像の種類又は検査の種類に応じて決められた選択条件に基づいて画像を選択する。例えば、リファレンス画像選択部17cは、検査に際して操作者によって設定された撮像条件に基づいて、撮像された画像の種類又は検査の種類を特定する。そして、リファレンス画像選択部17cは、特定した画像の種類又は検査の種類に対応する選択条件をリファレンス選択条件記憶部14bから取得し、取得した選択条件に従ってリファレンス画像を選択する。
例えば、リファレンス画像選択部17cは、最頻位置グループに含まれる撮像位置の時相の画像のうち、解析対象の部位が造影される可能性が高い時相の画像以外からリファレンス画像を選択する。または、リファレンス画像選択部17cは、最頻位置グループに含まれる撮像位置の時相の画像における画素値のヒストグラムに基づいて、造影されている時相の画像を自動的に検出し、検出した時相の画像以外からリファレンス画像を選択する。または、リファレンス画像選択部17cは、検査において、造影されている時相が他の時相より重要であるような場合には、最頻位置グループに含まれる撮像位置の時相の画像のうち、造影されている時相の画像からリファレンス画像を選択する。
そして、リファレンス画像選択部17cは、リファレンス画像を選択すると、選択したリファレンス画像を示す情報を後述するリファレンス選択画面制御部17dに通知する。なお、本実施例では、リファレンス画像選択部17cは、時系列に撮像された複数時相のアキシャル像、アキシャル像から生成されたサジタル像及びコロナル像それぞれについて、リファレンス画像を選択し、各リファレンス画像を示す情報をリファレンス選択画面制御部17dに通知する。
リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス画像選択部17cにより選択されたリファレンス画像を表示部15に表示させるとともに、入力部16を介して、複数時相の画像の中から任意の画像を選択する操作を操作者から受け付ける。
例えば、リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス画像選択部17cによってリファレンス画像が選択されると、各種のGUI(Graphical User Interface)を有するリファレンス選択画面を表示部15に表示させる。そして、リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス選択画面を介して、各種画像の表示や各種操作の受け付けを行う。
図7は、リファレンス選択画面制御部17dにより表示されるリファレンス選択画面の一例を示す図である。図7に示すように、例えば、リファレンス選択画面70は、アキシャル像表示領域71、サジタル像表示領域72、コロナル像表示領域73、撮像位置表示領域74、Accptボタン75及びManualボタン76を有する。
また、リファレンス選択画面70は、アキシャル像表示領域71の横に設けられた垂直スクロールバー71aと、アキシャル像表示領域71の下に設けられた水平スクロールバー71bとを有する。また、リファレンス選択画面70は、サジタル像表示領域72の横に設けられた垂直スクロールバー72aと、サジタル像表示領域72の下に設けられた水平スクロールバー72bとを有する。また、リファレンス選択画面70は、コロナル像表示領域73の横に設けられた垂直スクロールバー73aと、コロナル像表示領域73の下に設けられた水平スクロールバー73bとを有する。
そして、リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス画像選択部17cからリファレンス画像を示す情報が通知されると、通知された情報に基づいて、アキシャル像、サジタル像及びコロナル像のリファレンス画像をそれぞれメモリから読み出す。続いて、リファレンス選択画面制御部17dは、アキシャル像のリファレンス画像をアキシャル像表示領域71に表示する。また、リファレンス選択画面制御部17dは、サジタル像のリファレンス画像をサジタル像表示領域72に表示する。また、リファレンス選択画面制御部17dは、コロナル像のリファレンス画像をコロナル像表示領域73に表示する。
その後、リファレンス選択画面制御部17dは、垂直スクロールバー71aのノブを上下に移動する操作を受け付けた場合には、ノブの移動量に応じて、スライス位置が異なるアキシャル像をメモリから読み出してアキシャル像表示領域71に表示する。また、リファレンス選択画面制御部17dは、水平スクロールバー72bのノブを左右に移動する操作を受け付けた場合には、ノブの移動量に応じて、時相が異なるアキシャル像をメモリから読み出してアキシャル像表示領域71に表示する。
ここで、リファレンス選択画面制御部17dは、アキシャル像のリファレンス画像を表示させる際には、図7に示すように、表示中のアキシャル像がリファレンス画像であることを示すアイコン71cを当該アキシャル像の上に重ねて表示する。また、リファレンス選択画面制御部17dは、表示されているアキシャル像のスライス番号を当該アキシャル像に重ねて表示する。例えば、図7に示す「Sliece 05/23」は、23枚のアキシャル像のうち5番目のアキシャル像が表示されていることを示している。また、リファレンス選択画面制御部17dは、表示中のアキシャル像の時相をアキシャル像に重ねて表示する。例えば、図7に示す「Phase 15/167」は、167時相のうち15番目の時相のアキシャル像が表示されていることを示している。
なお、リファレンス選択画面制御部17dは、サジタル像表示領域72及びコロナル像表示領域73についても、アキシャル像表示領域71と同様の表示制御を行う。これにより、操作者は、スクロールバーを操作することで、アキシャル像、サジタル像及びコロナル像それぞれについて、リファレンス画像としてどの画像が選択されているかを容易に確認することができる。
また、リファレンス選択画面制御部17dは、アキシャル像、サジタル像及びコロナル像を表示するとともに、いずれかの画像について、撮像位置算出部17aによって算出された撮像位置を撮像位置表示領域74に表示する。なお、図7に示す例では、アキシャル像の撮像位置を撮像位置表示領域74に表示した場合を示している。
例えば、図7に示すように、リファレンス選択画面制御部17dは、アキシャル像における重心位置を示す2次元の座標(axi_x,axi_y)を、それぞれ時相ごとに撮像位置表示領域74に表示する(図7に示すひし形の点)。
ここで、リファレンス選択画面制御部17dは、図7に示すように、最頻位置特定部17bによって特定された最頻位置グループに含まれる撮像位置については、他の撮像位置とは異なる色を付けて表示する(図7に示す網掛けのひし形の点)。また、リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス画像選択部17cによって選択されたリファレンス画像の撮像位置については、最頻位置グループに含まれる撮像位置とは異なる色を付けて表示する(図7に示す黒色のひし形の点)。
さらに、リファレンス選択画面制御部17dは、最頻位置グループ及びリファレンス画像を特定するための根拠となった情報を撮像位置表示領域74に表示する。例えば、図7に示すように、リファレンス選択画面制御部17dは、造影剤の濃度の経時的な変化を示す曲線のグラフを撮像位置表示領域74の上に重ねて表示する。なお、このとき、リファレンス選択画面制御部17dは、曲線のグラフにおいて、最頻位置グループに含まれる時相の範囲については、他の時相とは異なる色を付けて表示する(図7に示す斜線の範囲)。また、リファレンス選択画面制御部17dは、最頻位置グループを示す範囲の中で、リファレンス画像の時相については、さらに異なる色を付けて表示する(図7に示す格子状の網掛けの範囲)。
ここで、例えば、リファレンス選択画面制御部17dは、Manualボタン76を押下する操作を操作者から受け付けた場合には、撮像位置表示領域74に表示されている時相の中から任意の時相を選択する操作を受け付け可能にする。そして、時相を選択する操作を受け付けた場合には、リファレンス選択画面制御部17dは、選択された時相の画像をメモリから読み出して表示する。例えば、撮像位置表示領域74にアキシャル像の撮像位置が表示されていた場合には、リファレンス選択画面制御部17dは、選択された時相のアキシャル像をメモリから読み出してアキシャル像表示領域71に表示する。
また、リファレンス選択画面制御部17dは、Acceptボタン75を押下する操作を受け付けた場合には、その時点で選択されている時相の画像をリファレンス画像として設定する。そして、リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス画像を設定すると、設定したリファレンス画像を示す情報を後述する画像位置合せ部17eに通知する。ここで、操作者によってリファレンス画像が変更されなかった場合には、リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス画像選択部17cによって選択されたリファレンス画像を示す情報を画像位置合せ部17eに通知する。
なお、本実施例では、リファレンス選択画面制御部17dは、アキシャル像、サジタル像及びコロナル像それぞれについて、リファレンス画像を示す情報をリファレンス選択画面制御部17dに通知する。
このように、本実施例では、リファレンス選択画面制御部17dが、操作者による操作に基づいて、画像位置合せ部17eによって行われる動き補正で基準となるリファレンス画像を設定する。したがって、操作者は、リファレンス画像選択部17cによってリファレンス画像が選択された後でも、リファレンス画像を選択し直すことができる。例えば、操作者は、何らかの原因で画像にノイズ成分が含まれてしまった場合に、リファレンス画像を選択し直すことができる。また、操作者は、リファレンス画像を選び直す際に、撮像位置表示領域74に表示された最頻位置グループの範囲内でリファレンス画像を選択すれば、動き補正の処理にかかる負荷や時間を大きく増大させることなくリファレンス画像を選択し直すことができる。
なお、ここでは、リファレンス選択画面制御部17dは、最頻位置グループ及びリファレンス画像を特定するための根拠となった情報を撮像位置表示領域74に表示する場合について説明した。しかし、例えば、解析内容等に依存した選択条件が用いられている場合には、選択条件に関連する情報をグラフ中にさらに表示してもよい。例えば、リファレンス選択画面制御部17dは、造影剤で染まっている時相と染まっていない時相とを区別できるように、時相ごとの画素値を表示してもよい。これにより、例えば、操作者は、造影されている時相の中からリファレンス画像を選択したいと考えた場合に、所望のリファレンス画像を容易に選択することができる。
画像位置合せ部17eは、リファレンス画像における被検体Pの撮像位置に合わせるようにリファレンス画像以外の画像の位置を変更することで、被検体Pの動き補正を行う。
例えば、画像位置合せ部17eは、リファレンス画像を示す情報がリファレンス選択画面制御部17dから通知されると、通知された情報に基づいてリファレンス画像を内部メモリから読み出す。さらに、画像位置合せ部17eは、リファレンス画像以外の任意の画像をターゲット画像としてメモリから読み出し、読み出したターゲット画像とリファレンス画像との一致度を計算する。なお、ここでいう一致度とは、比較対象の画像がどの程度類似しているかを示す評価基準である。例えば、一致度は、相互情報量などである。
続いて、画像位置合せ部17eは、一致度が増す移動方向を探しながらターゲット画像を移動する処理を逐次的に行い、両画像の一致度が所定の値に達したところで、当該ターゲット画像に関する位置合せ処理を終了する。画像位置合せ部17eは、リファレンス画像以外の全ての画像について、かかる位置合せ処理を行う。そして、画像位置合せ部17eは、位置合せ処理を行った全ての画像を動き補正済みの画像としてメモリに格納する。
画像解析部17fは、画像位置合せ部17eによって動き補正が行われた画像に関する画像解析処理を行う。例えば、画像位置合せ部17eによって動き補正が行われたのちに、検査対象の画像の種類に対応する画像解析アプリケーションを起動する。ここでいう画像解析アプリケーションとは、例えば、fMRI画像を解析するためのアプリケーションや、PWI(Perfusion Weighted Imaging)画像を解析するためのアプリケーションなどである。そして、起動されたアプリケーションは、メモリに格納されている動き補正済みの画像を用いて、各種の画像解析処理を行う。
次に、本実施例に係る計算機システム10による動き補正処理の処理手順について説明する。
図8は、本実施例に係る計算機システム10による動き補正処理の処理手順を示すフローチャートである。図8に示すように、本実施例に係るMRI装置100では、被検体Pに関する複数時相の画像が撮像されると(ステップS101,Yes)、撮像位置算出部17aが、撮像された画像ごとに被検体Pの撮像位置を算出する(ステップS102)。
続いて、最頻位置特定部17bが、撮像位置算出部17aにより画像ごとに算出された撮像位置の分布を解析することで、撮像位置の分散が最小となる撮像位置の集合である最頻位置グループを特定する(ステップS103)。そして、リファレンス画像選択部17cが、最頻位置特定部17bにより特定された最頻位置グループに含まれる撮像位置に基づいて、複数時相の画像の中からリファレンス画像を選択する(ステップS104)。
続いて、リファレンス選択画面制御部17dが、リファレンス選択画面70を介して、リファレンス画像選択部17cにより選択されたリファレンス画像を表示部15に表示させる(ステップS105)。そして、操作者によってManualボタン76が押された場合には(ステップS106,Yes)、リファレンス選択画面制御部17dは、撮像位置表示領域74に表示されている時相の中から任意の時相を選択する操作を受け付ける(ステップS107)。
その後、リファレンス選択画面制御部17dは、Acceptボタン75を押下する操作を操作者から受け付けるまでの間は(ステップS108,No)、任意の時相を選択する操作を継続して受け付ける。そして、Acceptボタン75を押下する操作を操作者から受け付けた場合には(ステップS108,Yes)、リファレンス選択画面制御部17dは、その時点で選択されている時相の画像をリファレンス画像として設定する(ステップS109)。
一方、Manualボタン76が押されずに(ステップS106,No)、Acceptボタン75が押された場合には(ステップS108,Yes)、リファレンス選択画面制御部17dは、リファレンス画像選択部17cにより選択された画像をリファレンス画像として設定する(ステップS109)。
そして、リファレンス画像が設定されたのちに、画像位置合せ部17eが、設定されたリファレンス画像における被検体Pの撮像位置に合わせるようにリファレンス画像以外の画像の位置を変更することで、被検体Pの動き補正を実行する(ステップS110)。そして、画像解析部17fが、画像位置合せ部17eによって動き補正が行われた画像に関する画像解析処理を行う(ステップS111)。
なお、本実施例では、リファレンス選択画面制御部17dがリファレンス画像を表示部15に表示させ、操作者によってAcceptボタン75が押下された場合に、画像位置合せ部17eが画像の位置合せを行うこととした。しかし、例えば、リファレンス画像選択部17cによってリファレンス画像が選択された後に、画像位置合せ部17eが、操作者による確認を待つことなく、選択されたリファレンス画像を用いて画像の位置合せを行うようにしてもよい。
これにより、例えば、選択条件が固定化されている検査が行われる場合や、画像にノイズが混入する可能性が低いことが検査前に分かっている場合に、検査を迅速に完了させることができる。なお、この場合でも、どのリファレンス画像が選択されたのかを操作者が確認できるように、リファレンス選択画面制御部17dが、画像の位置合せが終わったのちに、リファレンス選択画面70などを介してリファレンス画像を表示させるようにするのが望ましい。
上述したように、本実施例では、撮像位置算出部17aが、被検体Pを時系列的に撮像した複数時相の画像を取得し、取得した画像ごとに被検体Pの撮像位置を算出する。また、最頻位置特定部17bが、画像ごとに算出された撮像位置の分布を解析することで、撮像位置の分散が最小となる最頻位置グループを特定する。また、リファレンス画像選択部17cが、特定された最頻位置グループに含まれる撮像位置に基づいて、複数時相の画像の中から少なくとも1つの画像をリファレンス画像として選択する。そして、画像位置合せ部17eが、選択されたリファレンス画像における被検体Pの撮像位置に合わせるように、リファレンス画像以外の画像すなわちターゲット画像の位置を変更する。これにより、リファレンス画像とターゲット画像との一致度が所定の値に達するまでにターゲット画像を移動させなければならない距離が小さくなるので、位置合せの処理で逐次的に行われる処理の回数を減らすことができる。したがって、本実施例によれば、被検体Pの動き補正の処理にかかる負荷や時間を減少させることができる。
また、本実施例では、最頻位置特定部17bが、最頻位置グループを特定したのちに、最頻位置グループに含まれる撮像位置の代表値を算出する。そして、リファレンス画像選択部17cが、算出された代表値に被検体Pの撮像位置が最も近い画像をリファレンス画像として選択する。したがって、本実施例によれば、頻度が高い撮像位置にばらつきがあるような場合でも、最適なリファレンス画像を選択することができる。
また、本実施例では、リファレンス画像選択部17cが、画像の種類又は検査の種類に応じて決められた選択条件に基づいてリファレンス画像を選択する。したがって、本実施例によれば、画像の種類や検査の種類に応じて適切なリファレンス画像を選択することができる。
また、本実施例では、表示部15が、選択されたリファレンス画像を表示する。また、入力部16が、複数時相の画像の中から任意の画像を選択する操作を操作者から受け付ける。そして、画像位置合せ部17eが、画像を選択する操作が受け付けられた場合には、操作者により選択された画像をリファレンス画像として、そのリファレンス画像以外の画像の位置を変更する。したがって、本実施例によれば、ノイズ等の影響で最適なリファレンス画像が選択されなかった場合でも、操作者が適宜にリファレンス画像を変更することができる。
また、本実施例では、撮像位置算出部17aが、複数時相の画像に対して平滑化処理を行ったうえで、平滑化された画像から被検体Pの領域を抽出し、抽出した領域の重心位置を撮像位置として算出する。したがって、本実施例によれば、解析対象の領域だけを適切に抽出することができるので、リファレンス画像をより正確に選択することができる。
なお、上記実施例では、撮像位置算出部17aが、時系列に撮像された複数時相のアキシャル像、サジタル像及びコロナル像それぞれについて撮像位置を算出することとした。しかしながら、検査の種類によっては、特定の断面像のみについて撮像位置が算出されればよい場合もある。例えば、fMRIでは、撮像時に被検体が動かないように被検体の頭部が横から固定されるので、撮像時に被検体が首を左右に振る動作が生じることは少なく、首を上下に振る動作のみが生じやすい。したがって、fMRIでは、サジタル像のみについて撮像位置が算出されればよい。
図9は、サジタル像からの領域抽出を示す図である。例えば、撮像位置算出部17aは、fMRIが行われる場合には、撮像されたサジタル像91に対して画素値に関する閾値処理を行うことで、被検体Pの領域92(図9に示す斜線が付された領域)を抽出する。そして、撮像位置算出部17aは、抽出した領域の重心位置を撮像位置として算出する。
図10は、サジタル像における重心位置の変化を示す図である。図10に示すように、例えば、サジタル像における部位の重心位置を2次元の座標(sag_i,sag_j)で表した場合に、重心位置の時系列的な変化は、sag_i及びsag_jの分布で表される。この場合には、最頻位置特定部17bは、sag_iの分布をクラスタ解析することでsag_iの最頻位置グループを特定する。また、最頻位置特定部17bは、sag_jの分布をクラスタ解析することでsag_jの最頻位置グループを特定する。
そして、例えば、リファレンス画像選択部17cは、sag_iの最頻位置グループ及びsag_jの最頻位置グループのいずれにも含まれる時相の画像の中から、リファレンス画像を選択する。
このように、例えば、被検体の動きが特定の方向に制限されるような場合には、撮像位置算出部17aが、特定の断面像のみについて撮像位置を算出するようにしてもよい。その場合には、撮像位置特定部17bは、特定の断面像のみについて最頻位置グループを特定する。また、リファレンス画像選択部17cは、特定の断面像のみについてリファレンス画像を選択する。これにより、被検体の動き補正の処理にかかる負荷や時間をさらに減少させることができる。
また、上記実施例では、リファレンス選択画面制御部17dが、撮像位置算出部17aによって算出された撮像位置をリファレンス選択画面70の撮像位置表示領域74に表示する場合について説明した。しかしながら、例えば、リファレンス選択画面制御部17dは、撮像位置算出部17aによって算出された撮像位置に加えて、画像位置合せ部17eによって動き補正が行われた後の撮像位置をさらに表示するようにしてもよい。
図11は、動き補正後の撮像位置を表示する場合のリファレンス選択画面の一例を示す図である。図11に示すように、この場合には、例えば、リファレンス選択画面70には、動き補正前の撮像位置を表示する補正前位置表示領域74aと、補正後位置表示領域74bとがそれぞれ設けられる。
そして、リファレンス選択画面制御部17dが、まず、撮像位置算出部17aによって算出された撮像位置を補正前位置表示領域74aに表示する。さらに、リファレンス選択画面制御部17dは、画像位置合せ部17eによって画像の位置合せが行われたのちに、位置合せが終わった後の複数時相の画像における撮像位置を補正後位置表示領域74bに表示する。
このように、リファレンス選択画面制御部17dが動き補正の前後における撮像位置をそれぞれ表示部15に表示させることで、操作者は、動き補正の結果を容易に確認することができる。
また、上記実施例では、MRI装置によって脳のダイナミックスタディが行われる場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、X線CT(Computed Tomography)装置やSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置など、他の画像診断装置にも同様に適用することができる。
また、MRI装置やX線CT装置、SPECT装置など、各種の画像診断装置によって撮像された画像を処理する画像処理装置にも同様に適用することができる。ここでいう画像処理装置は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)などの通信システムに接続される。そして、画像処理装置は、ネットワークを介して画像診断装置から画像データを取得し、取得した画像を自装置内の記憶部に格納する。
なお、一般的に、画像診断装置によって撮像される画像は、画像診断装置や撮像方法、撮像部位の種類などによって性質が異なる。例えば、X線CT装置によって脳を撮像した場合には、頭蓋骨が明りょうに描出された画像が得られる。そのため、X線CT装置によって撮像された画像からは、頭蓋骨の領域を簡便かつ正確に抽出することができる。
そこで、例えば、画像処理装置が、X線CT装置によって撮像された脳の画像を処理する場合には、処理対象の画像から頭蓋骨の領域を抽出し、抽出した頭蓋骨の領域に基づいて撮像位置を算出するようにしてもよい。これにより、より容易かつ正確に位置合せを行うことができるようになる。また、例えば、腎臓のパーフュージョン検査では、画像処理装置が、撮像範囲に含まれる骨盤などの抽出しやすい部位をメルクマールとして設定し、そのメルクマールに基づいて撮像位置を算出するようにしてもよい。
すなわち、撮像位置を算出する基準となる部位は、解析の対象となる部位に限られない。さらには、撮像位置を算出するための基準は、必ずしも被検体の一部でなくてもよい。例えば、撮像前に被検体にマーカーを付けておき、画像処理装置が、撮像された画像からマーカーを抽出し、そのマーカーを基準として撮像位置を算出するようにしてもよい。