JP2011134617A - 全固体電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電流密度の高い全固体電池を提供する。
【解決手段】本発明の全固体電池は、リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質を含有する固体電解質層と、正極層及び負極層を備え、前記負極が、グラファイトである第2の炭素材料及び放電後においてグラファイトより炭素六角網面の面間隔(d002)が広い第1の炭素材料を含むことを特徴とする。これにより、充分な密度の負極が得られ、このような全固体電池からは高い出力が得られる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の全固体電池は、リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質を含有する固体電解質層と、正極層及び負極層を備え、前記負極が、グラファイトである第2の炭素材料及び放電後においてグラファイトより炭素六角網面の面間隔(d002)が広い第1の炭素材料を含むことを特徴とする。これにより、充分な密度の負極が得られ、このような全固体電池からは高い出力が得られる。
【選択図】図1
Description
本発明は全固体電池および全固体電池の製造方法に関し、特に全固体リチウムイオン電池および全固体リチウムイオン電池の製造方法に関する。
無機固体電解質を使用し、電極においても有機物を使用しない全固体電池は有機電解液の漏液やガス発生の心配がなく安全な電池として期待されている。また、全固体電池は液系の電池と比較して、電池反応以外の反応が生じることが少なく、長寿命化も期待できる。
更に、無機固体電解質として焼結体を使用する場合、無機固体電解質の前駆体と電極の前駆体を積層し、同時に焼成することによって電極や固体電解質の焼結体を作製すると同時にこれらの界面を良好に接合することができる。この方法は製造工程を少なくすることができ、製造コストを低減することが出来ると同時に、電極層一固体電解質層の接合界面におけるイオンの移動抵抗を低減することが期待できる。
しかし、特に高い起電力を有するリチウムイオン電池においては、正極は酸化力の高い物質であり、負極は還元力の高い物質である。従って、これらの物質と固体電解質を同時に焼成する場合、固体電解質層と電極層の界面において両者が反応し、イオン伝導を阻害する化合物が生成されてしまう問題が生じやすい。また、電極内でのイオン伝導性を付与する為に、電極の前駆体中には電極活物質粉末と共に固体電解質粉末を含有させることが好ましいが、両者の粉末間の粒界においても焼成時の反応によって電池反応に寄与しない化合物や、イオン伝導を阻害する化合物が生成されてしまうことがある。
従って、電極層一固体電解質層の界面が焼成によって良好に接合されたとしても、この界面や電極層中の電極活物質と固体電解質間の粒界に生成された化合物によってリチウムイオンの移動抵抗が大きくなり、結局大電流の充放電が実施し得ないこととなる。
このような問題を解決する為に、焼成温度を低温にする方法も提案されているが、電極層や固体電解質層の焼結が不十分となり、大電流の充放電が困難となる。また、電極層の前駆体や固体電解質層の前駆体等からなる積層体を焼成する雰囲気を低酸素雰囲気として、固体電池としての内部抵抗を下げる工夫がされている(例えば、特許文献1)。
一方、電極層一固体電解質層の界面の接合を良好にし、イオン伝導度を下げるような化合物を粒界に生成させないようにしても、電極層や固体電解質層の焼結が不十分で緻密化されない場合は、やはりイオン伝導度は低いままである。そのため、固体電解質グリーンシートの焼成を行う前に、所定の勾配で昇温することによって、焼結後の固体電解質層をより緻密な組織とし、気孔率が小さく、イオン伝導度が高くなるような工夫がなされている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、固体電解質層のイオン伝導度が高くても電極層のイオン伝導度が低いと、固体電池全体としてイオン伝導度が低くなり、大電流を流すことが困難となる。そのため、電極層のイオン伝導度も高くするために電極層の緻密化が必要である。電極層の緻密化は、温度や雰囲気等の焼成条件の最適化により行うことも可能であるが、電極層や固体電解質層等を積層して同時に焼成する場合を考慮すれば、焼成条件以外による緻密化が好ましい。そこで、本願では電極層の材料を工夫して緻密化を図ることを目的とする。また、所定の成分を焼成後の負極層に含ませて、高いイオン伝導度を得ることを目的とする。
上述の課題に鑑みて、本発明者らは電極、特に、負極層の材料について更に研究を重ねた。そして、焼成後の緻密化は、焼成工程だけでなく、焼成前の電極層の前駆体や固体電解質層の前駆体の材料に依存するが、これらの材料によっては、現実的な生産性の高い焼成条件で、十分な緻密化を行うことができることが分かった。即ち、焼成前の負極層の前駆体が所定の材料を含むと、焼成後の負極層中の電解質が緻密となることを見出し、本発明を完成するに至った。更に、負極層が所定の成分を含むと、高いイオン伝導度を安定的に保つことができることが判明した。
具体的には、焼成された負極層(固体電解質層と同時に焼成される場合を含む)において、グラファイトより炭素六角網面の面間隔(d002)が広い第1の炭素材料を含むと、その負極層は高いイオン伝導度を備えることが分かった。このような第1の炭素材料は、焼成前の負極層の前駆体が所定の材料を含むことにより生成することができる。かかる所定の材料は、グラファイトと共に焼成前の負極層の前駆体に含まれてよい。そして、このような負極層及び固体電解質層を含む固体電池においては、多くの電流を流すことができる。
以下、具体的に本発明において提供できるものを述べる。
(1)リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質を含有する固体電解質層と、正極層及び負極層を備える全固体電池において、前記負極層は、放電後においてグラファイトより炭素六角網面の面間隔(d002)が広い第1の炭素材料を含むことを特徴とする全固体電池を提供することができる。
(1)リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質を含有する固体電解質層と、正極層及び負極層を備える全固体電池において、前記負極層は、放電後においてグラファイトより炭素六角網面の面間隔(d002)が広い第1の炭素材料を含むことを特徴とする全固体電池を提供することができる。
一般に、工業的に製造されるグラファイトの面間隔(d002)は、0.33〜0.34nmであり、本発明においてはリチウムイオンがインターカレーションされていない状態で面間隔(d002)が前記範囲のものをグラファイトとする。第1の炭素材料は、低結晶性を持っていてもよい。そして、活性炭を含んでもよい。活性炭は、石炭や、ヤシ殻などの炭素物質を原料として高温でガスや薬品と反応させて作られる微細孔(直径10〜200Å)を持つ炭素を含んでもよい。活性炭は、一般に90%以上が炭素で、炭素の一部は酸素、水素との化合物であり、灰分は原料固有の成分でNa,Si,K,Ca,Fe等が含まれてもよい。フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂を500℃〜1100℃の温度で不活性雰囲気中で焼成しても活性炭を得ることができる。第1の炭素材料はグラファイトのような明確な炭素六角網面構造を持つ必要はなく、X線回折分析(銅のKα線を使用)で2θで23°付近に一応のピークを有すればよい。このピークは山型形状であれば緩やかなピークでもよい。また、放電後においてグラファイトより炭素六角網面の面間隔(d002)が広いとは、X線回折分析で得られるピークがグラファイトのピークよりも低角度側にシフトしている状態であることを言う。すなわち第1の炭素材料の一部がグラファイトの炭素六角網面の面間隔(d002)と同じであっても、第1の炭素材料のd002の面間隔の最頻値がグラファイトの面間隔より広ければよい。第1の炭素材料は、フェノール樹脂を500℃〜1100℃の温度で不活性雰囲気中で焼成して得られる活性炭のみからなることもできる。
(2)前記第1の炭素材料の炭素六角網面の面間隔(d002)が0.344nm〜0.400nmである上記(1)に記載の全固体電池を提供することができる。
第1の炭素材料の炭素六角網面の面間隔(d002)は、好ましくは0.344nm〜0.400nmであり、0.380nm〜0.395nmであると更に好ましい。
(3)前記負極層は更に第2の炭素材料を含む(1)または(2)に記載の全固体電池。
ここで、第2の炭素材料は、グラファイトを含んでよく、グラファイトのみからなる場合も含まれる。負極層にグラファイトを含ませることによって、成型時にガラスと第1の炭素材料が軟化する際の形状を安定化させ、成型体のネットワークを向上させる効果を得ることができる。ここで、グラファイトは、炭素から成る元素鉱物であって、六方晶系(結晶対称性は、P63/mmc)、六角板状結晶である。その構造は、亀の甲状の層状物質で層毎の面内は、強い共有結合(sp2的)で炭素間が繋がっているが、層と層の間(面間)は、弱いファンデルワールス力で結合している。特に、球状グラファイトが好ましい。
(4)前記負極層を構成する炭素材料における前記第1の炭素材料の含有割合が5質量%から100質量%である上記(1)から(3)に記載の全固体電池を提供することができる。
ここで、第1の炭素材料の含有割合(R)とは、負極層中の炭素材料に対する相対的な割合をいい、第1及び第2の炭素材料がそれぞれ、A(グラム)及びB(グラム)であれば、R={A/(A+B)}×100 (%)となる。グラファイトの高密度化に寄与すると考えられる第1の炭素材料の含有割合は5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が最も好ましい。一方、第1の炭素材料は100質量%以下でもよいが、成型性と出力を考慮すれば、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が最も好ましい。第1の炭素材料が100質量%の場合は、上記炭素材料は実質的に第1の炭素材料のみからなるということができる。
全固体電池の負極中における第1、及び第2の炭素材料の量は次の方法で測定することができる。TG−DTAの分析により、焼成後試料を粉末にしてAir雰囲気で1000℃まで測定する。炭素分の酸化反応は、炭素六角網面の面間隔(d002)が0.344nm〜0.400nmである炭素材料では350℃程度の低温で、炭素六角網面の面間隔(d002)が0.33〜0.34nmである炭素材料は700℃付近の高温で開始する。重量減少が2段あるいは3段で起こる場合、1段目を第1の炭素材料とし、それ以降を第2の炭素材料とする。この方法により定量的に第1の炭素材料と第2の炭素材料の量と重量比が確認できる。
また、粉末XRDで負極試料を測定すると、負極材料中に存在する固体電解質のピーク以外に炭素六角網面の面間隔(d002)が0.380nmである回折角度付近にピークを有する非常にブロードなピークと炭素六角網面の面間隔(d002)が0.340nmであるグラファイトの回折角度付近にのシャープなピークの混合になる。これより定性的に2種の結晶構造を有する炭素が混合していることが確認できる。仮に、これら2種類のピークが重なった場合でも、市販のいわゆるピーク分離ソフトによりこれらのピークを分離することも可能である。このようなピーク分離により、いわゆる面間隔(d002)の最頻度値(強度が最も高い面間隔値)或いは平均ピーク位置を求めることができる。しかしながら、後述するように、原則として95%高さにおけるピーク幅の中点から平均面間隔d(002)を得る。
(5)前記負極層は、焼成後に第1の炭素材料となる炭素前駆体を含む負極原材料を焼成して高密度化させたものであることを特徴とする上記(1)から(4)に記載の全固体電池を提供することができる。
焼成は、800℃以上で行うのが好ましく、850℃以上がより好ましい。温度が高すぎると、電解質層が変質してしまう可能性があるので、1000℃以下で行うのが好ましく、970℃以下がより好ましい。
ここで、炭素前駆体は、グラファイトと混合して、又は、単独で焼成することにより第1の炭素材料を生成するものを含んでよい。炭素前駆体は、有機化合物であってよく、炭素前駆体となりうる有機化合物としては、石油や石炭から得られるタールの蒸留残留物であるピッチや、ポリアクリロニトリルやポリフルフリルアルコール樹脂、フェノール樹脂などの高分子化合物が挙げられる。炭素前駆体はこれらの高分子化合物をを含んでいてもよい。例えば、球状グラファイト及びフェノール樹脂を混合し、焼成して、負極層を構成してもよい。
一般に、フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒド(HCHO)を原料として触媒下において合成される。原料にはフェノールの他に、クレゾールなどのフェノール類に属する有機化合物を用いても同様の樹脂を合成できる。これらフェノール類の原料を用いたものを含めてフェノール樹脂と称する場合もある。フェノール樹脂は合成時の触媒が酸性であるかアルカリ性であるかにより反応が異なり、用途により触媒が選択される。酸触媒下で縮合重合させると、ノボラックと呼ばれる熱可塑性樹脂が得られる。ほとんどの場合は固形の樹脂である。ノボラック樹脂自身は加熱しても硬化しないため、硬化させて使用する場合にはヘキサメチレンテトラミンなどの硬化剤を用いる必要がある。アルカリ触媒下で合成を行うとレゾール樹脂が得られる。通常、液状であることが多いが、高分子量化させた固形タイプのものもある。レゾール樹脂は自己反応性の官能基を有するため、加熱することによりそのまま硬化させることができる。第1の炭素材料を生成するフェノール樹脂としては、ノボラック樹脂が好ましい。例えば、その状態は25℃で、固体であることが好ましい。また、室温で固体状態である場合、粒子径が小さく、繊維状ではなく球状や塊状であり焼成後に炭素成分以外できるだけ含まないフェノール樹脂が好ましい。
(6)前記負極層は密度が1.0g/cm3以上であることを特徴とする上記(1)から(5)の何れかに記載の全固体電池を提供することができる。
ここで、負極密度とは、いわゆる見かけの密度を意味することができる。例えば、負極材料のみの外形(ノギス等による計測可)及び重量を測定して計算で求めることができる。
(7)前記リチウムイオン伝導性の結晶は、Li1+x+zMx(Ge1−y、Tiy)2−xSizP3−zO12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる1種以上)であることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の全固体電池を提供することができる。
(8)前記リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質を含有する固体電解質層が、酸化物基準のmol%で、
Li2O 10〜25%、
Al2O3及び/又はGa2O3 0.5〜15%、
TiO2及び/又はGeO2 25〜50%、
SiO2 0〜15%、
P2O5 26〜40%
の各成分を含有する上記(1)から(7)のいずれかに記載の全固体電池を提供することができる。
Li2O 10〜25%、
Al2O3及び/又はGa2O3 0.5〜15%、
TiO2及び/又はGeO2 25〜50%、
SiO2 0〜15%、
P2O5 26〜40%
の各成分を含有する上記(1)から(7)のいずれかに記載の全固体電池を提供することができる。
ここで、固体電解質層を構成する固体電解質はLi1+x+zMx(Ge1−y、Tiy)2−xSizP3−zO12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる1種以上)の結晶を含む材料であることが化学的な安定性に優れ、かつイオン伝導性が高い為好ましい。さらに、固体電解質は上記結晶が析出したガラスセラミックスのバルク体、又は上記結晶が析出したガラスセラミックスの粉末もしくは熱処理により上記結晶が析出するガラスの粉末をグリーンシート製法(テープキャスト製法)などにより成型し、焼結した材料であることがより好ましい。
Li1+x+zMx(Ge1−y、Tiy)2−xSizP3−zO12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる1種以上)の結晶が析出したガラスセラミックスは、酸化物基準のmol%で、
Li2O 10〜25%、
Al2O3及び/又はGa2O3 0.5〜15%、
TiO2及び/又はGeO2 25〜50%、
SiO2 0〜15%、
P2O5 26〜40%
の各成分を含有するガラスを熱処理することにより作製することができる。
Li2O 10〜25%、
Al2O3及び/又はGa2O3 0.5〜15%、
TiO2及び/又はGeO2 25〜50%、
SiO2 0〜15%、
P2O5 26〜40%
の各成分を含有するガラスを熱処理することにより作製することができる。
また、「酸化物基準のmol%」とは、ガラスの構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩等が溶融時に全て分解され、それぞれ電荷の釣り合う分だけの酸素と結合した酸化物を生成し、その酸化物の形でガラス中に存在するという仮定を基に、当該生成された酸化物のモル比(%)によって含有される各成分を表記する方法である。また、「ガラスセラミックス」とは、ガラスを熱処理することによりガラス相中に結晶を析出させて得られる材料であり、非晶質固体と結晶からなる材料をいうことができる。
(9)高密度負極部材の製造方法において、少なくとも、液状若しくは固状の炭素前駆体と、固体電解質粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合物とし、前記混合物に溶媒を所定量加えて撹拌しスラリー状混合物とし、前記スラリー状混合物を成形し、乾燥した後、700〜1050℃の温度範囲で焼成することを特徴とする高密度負極部材の製造方法を提供することができる。
液状の炭素前駆体は、炭素前駆体が液体であってもよく、炭素前駆体が溶媒に分散若しくは溶解して流動性がある状態又は液体になっていてもよい。固状とは、粉末、顆粒、小片等の状態を含んでよい。また、固状(又は固体状)である場合、電解質との混合、分散性のため、平均粒径で0.5μm以上が好ましく、1μm以上が最も好ましい。また、分散性とLi挿入速度向上の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下が最も好ましい。焼成雰囲気は、酸化性雰囲気、還元性雰囲気、不活性雰囲気を含んでよく、一回の焼成において、異なる雰囲気を組み合わせてもよい。酸化性雰囲気は、大気等酸素若しくは酸化剤を含む雰囲気を意味することができる。また、還元性雰囲気は、水素等の還元剤を含む雰囲気を意味することができる。不活性雰囲気は、これら酸化剤又は還元剤が実質的に含まれない雰囲気を意味することができる。
また、上記混合物にはさらにグラファイト粉末を含んでもよい。焼成前のグラファイトの平均粒径は作製方法と電解質との混合、分散性のため0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上が最も好ましい。また、焼成前のグラファイトの平均粒径は反応界面向上と分散性、塗工性のため、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が最も好ましい。また、電気伝導性と反応界面の両方を向上させるため、2つ以上の平均粒径が混合している形がより好ましい。
ここで、平均粒径は、レーザー回折法によって測定した時のD50(累積の体積分率50%径)の値であり、使用する測定装置を具体的には日機装株式会社製の粒度分析計マイクロトラックMT3300EXII又はベックマン・コールター社製サブミクロン粒子アナライザーN5によって測定した値を用いることができる。なお、前記平均粒子径は体積基準で表わした値である。前記の測定装置は被測定物の粒径によって使い分けをする。被測定物の最大粒径が3μm未満の場合はサブミクロン粒子アナライザーN5のみを用いて測定する。被測定物の最小粒子径が0.4μm以上の場合はMT3300EXIIを用いて測定する。
(10)全固体電池の製造方法において、正極または正極前駆体、及び固体電解質または固体電解質前駆体を準備し、少なくとも液状若しくは固状の炭素前駆体と、固体電解質粉末とを含む混合スラリーを成形し乾燥させて負極前駆体とし、前記正極または正極前駆体、前記固体電解質または固体電解質前駆体、及び前記負極前駆体を重ねて、700〜1050℃の温度範囲で焼成することを特徴とする全固体電池の製造方法を提供することができる。
ここで、正極前駆体とは、焼成後正極層を構成する材料を意味してよい。例えば、正極活物質の粉末及び有機バインダー、さらに必要に応じて固体電解質の粉末または焼成後に固体電解質層となるガラスの粉末等のイオン伝導助材、アセチレンブラックなどの電子伝導助剤、分散剤等を溶媒と共に混合してスラリーとし、このスラリーをグリーンシート法(テープキャスト法)により成形および乾燥したグリーンシートであってよい。
また、負極前駆体とは、焼成後負極層を構成する材料を意味してよい。例えば、負極活物質の粉末及び有機バインダー、さらに必要に応じて固体電解質の粉末または焼成後に固体電解質層となるガラスの粉末等のイオン伝導助材、アセチレンブラックなどの電子伝導助剤、分散剤等を溶媒と共に混合してスラリーとし、このスラリーをグリーンシート法(テープキャスト法)により成形および乾燥したグリーンシートであってよい。
そして、固体電解質前駆体とは、焼成後固体電解質層を構成する材料を意味してよい。例えば、固体電解質の粉末または焼成後に固体電解質層となるガラスの粉末及び有機バインダー、さらに必要に応じて分散剤等を溶媒と共に混合してスラリーとし、このスラリーをグリーンシート法(テープキャスト法)により成形および乾燥したグリーンシートであってよい。
正極および負極中のイオン伝導を担う固体電解質は、電子導電性も付与されているとより好ましいが、固体電解質層を構成する固体電解質として使用できる材料であればよい。
以上のように、本発明の全固体電池は、負極層または負極層と共に焼成される固体電解質層の密度を高くすることができるので、イオン伝導度が向上し、出力の増大が可能となる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について詳しく説明するが、以下の記載は、本発明の実施例を説明するためになされるもので、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。また、同一若しくは同種類の要素については、同一若しくは関連性のある符号を用い、重複する説明は省略する。
以下に述べるような正極層、負極層、及び電解質層によって全固体電池を構成すると、負極層又は負極と共に焼結される固体電解質層の密度が高くなり、高い電流密度が得られることが分かった。
(電解質の作製)
原料としてH3PO4、Al(PO3)3、Li2CO3、SiO2、TiO2を使用し、これらを酸化物換算のmol%でP2O5を35.0%、Al2O3を7.5%、Li2Oを15.0%、TiO2を38.0%、SiO2を4.5%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃でガラス融液を撹拌しながら4時間加熱熔解した。その後、ガラス融液を流水中に滴下させることにより、フレーク状ガラスを得た。
原料としてH3PO4、Al(PO3)3、Li2CO3、SiO2、TiO2を使用し、これらを酸化物換算のmol%でP2O5を35.0%、Al2O3を7.5%、Li2Oを15.0%、TiO2を38.0%、SiO2を4.5%といった組成になるように秤量して均一に混合した後に、白金ポットに入れ、電気炉中1500℃でガラス融液を撹拌しながら4時間加熱熔解した。その後、ガラス融液を流水中に滴下させることにより、フレーク状ガラスを得た。
前記フレーク状ガラスをそれぞれラボスケールのジェットミルにより粉砕して、ジルコニア製の回転ローラーにより分級を行い、平均粒子径20μmの粉末とした。この粉末を遊星ボールミル、アトライター、ビーズミル等で更に粉砕し、平均粒子径0.6μmを有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスの原ガラス粉末(以後原ガラス粉末とする)を得た。
また、上記フレーク状ガラスを950℃で12時間の熱処理により結晶化を行うことにより、ガラスセラミックスを得た。析出した結晶相は粉末X線回折法により、Li1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)が主結晶相であることが確認された。また、このガラスセラミックスのリチウムイオン伝導度は1×10−3S/cm程度であった。
このようにして得られたガラスセラミックスのフレークをそれぞれラボスケールのジェットミルにより粉砕して、ジルコニア製の回転ローラーにより分級を行い、平均粒子径20μmの粉末とした。得られた粉末を遊星ボールミル、アトライター、ビーズミル等で更に粉砕し、平均粒子径0.6μmを有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉末を得た。
(電解質層前駆体の作製)
96gのリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉末に、4gの焼結助剤(Li3PO4、平均粒子径1μm日本化学製)、20gのバインダー(ユケン工業社製・N-3046)、0.3gの分散材(ユケン工業社製・N−1005)、25gの水を調合し、φ10mmアルミナボールで混合した。さらに、0.5gの消泡剤(ユケン工業社製・N−3301)を加えハイブリッドミキサーで消泡した後に塗工機にてギャップ100μmで離型フィルム上に成膜し、厚さ40μmのグリーンシート状の電解質層前駆体とした。
96gのリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス粉末に、4gの焼結助剤(Li3PO4、平均粒子径1μm日本化学製)、20gのバインダー(ユケン工業社製・N-3046)、0.3gの分散材(ユケン工業社製・N−1005)、25gの水を調合し、φ10mmアルミナボールで混合した。さらに、0.5gの消泡剤(ユケン工業社製・N−3301)を加えハイブリッドミキサーで消泡した後に塗工機にてギャップ100μmで離型フィルム上に成膜し、厚さ40μmのグリーンシート状の電解質層前駆体とした。
(負極層前駆体の作製)
負極材料であるSECカーボン製の球状グラファイト粉末(SGL3、平均粒径3μm)とフェノール樹脂(旭有機材、BEAPS4、平均粒径4μm)、原ガラス粉末を表1の組成比(重量)で混合し、得られた混合物(P1からP6)に30gのカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業製・1105)1%水溶液、6gのスチレンブタジエンゴム溶液(日本エイアンドエル社製・XR−9026)を加えてφ10mmアルミナボールで混合した。塗工機にてギャップ200μmで離型フィルム上に成膜し、厚さ66μmのグリーンシート状の負極層前駆体とした。
負極材料であるSECカーボン製の球状グラファイト粉末(SGL3、平均粒径3μm)とフェノール樹脂(旭有機材、BEAPS4、平均粒径4μm)、原ガラス粉末を表1の組成比(重量)で混合し、得られた混合物(P1からP6)に30gのカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業製・1105)1%水溶液、6gのスチレンブタジエンゴム溶液(日本エイアンドエル社製・XR−9026)を加えてφ10mmアルミナボールで混合した。塗工機にてギャップ200μmで離型フィルム上に成膜し、厚さ66μmのグリーンシート状の負極層前駆体とした。
(電解質層前駆体、負極層前駆体の積層・焼成)
5枚の負極層前駆体、5枚の固体電解質前駆体を積層した。積層体の形状はφ30mmの円盤状であり、厚さは0.5mmであった。この積層体をSUS板で挟み、ゴムシートで包んで、真空パック処理をして、冷間静水圧プレスで196MPaに加圧した。N2雰囲気中で950℃、10分間焼成し、試料1〜6を作製した。
5枚の負極層前駆体、5枚の固体電解質前駆体を積層した。積層体の形状はφ30mmの円盤状であり、厚さは0.5mmであった。この積層体をSUS板で挟み、ゴムシートで包んで、真空パック処理をして、冷間静水圧プレスで196MPaに加圧した。N2雰囲気中で950℃、10分間焼成し、試料1〜6を作製した。
焼成した試料の負極面をXRD測定した。試料1のd(002)は0.338nmの位置にシャープなピークを示しグラファイト相の存在が確認された。グラファイトを入れていない試料6はブロードなピークが観測され、95%高さにおけるピーク幅の中点から得た平均面間隔d(002)は0.388nmであった。試料2〜5においては、ブロードなピーク中にグラファイトのシャープなピークが確認できた。
(結果)
作製した試料の密度測定、リチウムイオン伝導率測定を行った。密度は、マイクロメータ、ノギス、電子天秤で測定した嵩密度。伝導率は負極対面の電解質に対してAuスパッタ処理を施してインピーダンス測定を行い測定した。伝導率の測定に使用する電解質の厚みは測定後試料のSEM観察により、直径はスパッタ面積とした。
作製した試料の密度測定、リチウムイオン伝導率測定を行った。密度は、マイクロメータ、ノギス、電子天秤で測定した嵩密度。伝導率は負極対面の電解質に対してAuスパッタ処理を施してインピーダンス測定を行い測定した。伝導率の測定に使用する電解質の厚みは測定後試料のSEM観察により、直径はスパッタ面積とした。
表2に結果を示す。半電池焼成による直径収縮はグラファイト含有量0の試料6が最も高くなった。フェノール樹脂による収縮と考えられる。
電解質層のLiイオン伝導率は試料5、試料6が最も高く0.42×10−4S/cmを示した。グラファイト単独の試料1に比べて40倍以上向上している。直径の収縮がまったくない試料1に比べて、試料5、試料6が高く、電解質が収縮して粒界抵抗が減少したためと考えられる。
負極面を粉末X線回折測定で測定したところ、グラファイトとアモルファス状のカーボン以外にLi1+x+yAlxTi2−xSiyP3−yO12(0≦x≦0.4、0<y≦0.6)のピークが確認された。負極に混ぜた原ガラスは、作製条件で結晶化し、リチウムイオン伝導性を示す結晶化ガラスになったことを確認した。
全固体電池を図1に示すように構成して、電池特性確認を実施した。即ち、全固体電池10は、無機固体電解質12を挟んで図中上下に負極14及び正極16を配し、それぞれに負極集電体18及び正極集電体20からリード線をつないだ。このようにして、全固体電池10は、電流を放電若しくは充電することができる。
(正極層前駆体の作製)
正極材料である高純度化学研究所社製のLiNiPO4を遊星ボールミルで平均粒子径0.5μmまで粉砕した。5gのLiNiPO4に、2.5gの20%スクロース水溶液を加え混合しながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をしてカーボンが被覆されたLiNiPO4を得た。
正極材料である高純度化学研究所社製のLiNiPO4を遊星ボールミルで平均粒子径0.5μmまで粉砕した。5gのLiNiPO4に、2.5gの20%スクロース水溶液を加え混合しながら乾燥させた。乾燥させた粉末を黒鉛坩堝内に入れ、試料に触れないように坩堝上部にグラファイト粉末を配置し、N2雰囲気650℃1時間熱処理をしてカーボンが被覆されたLiNiPO4を得た。
2gの得られたLiNiPO4に、0.85gの原ガラス、正極導電助剤として0.15gのアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック 平均粒子径35nm)、0.9gのバインダー(ユケン工業社製、N−3046)、0.12gの分散材(ユケン工業社製、セランダーF)、2.25gのカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業社製、XR−9026)1%溶液を調合し、φ10mmのアルミナボール、ポットミルで混合し、正極スラリーとした。塗工機にてギャップ200μmで離型フィルム上に成膜し、厚さ60μmのグリーンシート状の正極層前駆体とした。
(正極層前駆体、電解質層前駆体、負極層前駆体の積層・焼成)
表3で示すように負極層前駆体と電解質層前駆体、正極層前駆体から全固体電池を次のように作製した。負極層前駆体2枚、電解質層前駆体2枚、正極層前駆体3枚を積層した。積層体の形状はφ30mmの円盤状であり、厚さは0.4mmであった。この積層体をSUS板で挟み、ゴムシートで包んで、真空パック処理をして、冷間静水圧プレスで196MPaに加圧した。N2雰囲気中で950℃、10分間焼成した。
表3で示すように負極層前駆体と電解質層前駆体、正極層前駆体から全固体電池を次のように作製した。負極層前駆体2枚、電解質層前駆体2枚、正極層前駆体3枚を積層した。積層体の形状はφ30mmの円盤状であり、厚さは0.4mmであった。この積層体をSUS板で挟み、ゴムシートで包んで、真空パック処理をして、冷間静水圧プレスで196MPaに加圧した。N2雰囲気中で950℃、10分間焼成した。
(結果)
作製した試料7〜9に対して充放電特性の評価試験を行った。評価温度は25℃で実施した。結果を表3および図2に示す。
作製した試料7〜9に対して充放電特性の評価試験を行った。評価温度は25℃で実施した。結果を表3および図2に示す。
試料7では、充電後の開回路電圧が2.0V、放電電流6μA・cm2時に放電容量が0.8mAh/gであった。放電電流密度を6μA/cm2、9μA/cm2に上げると放電容量は低下した。
試料8は、6μA/cm2時の放電容量が試料中で最も高く3.8mAh/gを示した。放電電流密度が上がると放電容量は低下したが15μAh/gまで、2.5mAh/gを示した。
試料9は、6μA/cm2時の放電容量が3.3mA/gを示した。試料8と試料9は、試料の面収縮により電解質層と負極層中の電解質が収縮して高密度化、広い範囲までイオン伝導可能になって反応面積が増え、容量と放電可能な電流密度が上がったと考えらえる。試料8については、グラファイトの充放電は早く進行すると推定できるので、収縮した条件でさらにグラファイトが混在することで効果的な電極が形成されていると推定できる。
10 全固体電池 12 固体電解質層 14 負極層
16 正極層 18 負極集電体 20 正極集電体
16 正極層 18 負極集電体 20 正極集電体
Claims (10)
- リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質を含有する固体電解質層と、
正極層及び負極層を備える全固体電池において、
前記負極層は、放電後においてグラファイトより炭素六角網面の面間隔(d002)が広い第1の炭素材料を含むことを特徴とする全固体電池。 - 前記第1の炭素材料の炭素六角網面の面間隔(d002)が0.344nm〜0.390nmである請求項1に記載の全固体電池。
- 前記負極層は更に第2の炭素材料を含む請求項1または2に記載の全固体電池。
- 前記負極層を構成する炭素材料における前記第1の炭素材料の含有割合が5質量%から100質量%である請求項1から3に記載の全固体電池。
- 前記負極層は、焼成後に第1の炭素材料となる炭素前駆体を含む負極原材料を焼成して高密度化させたものであることを特徴とする請求項1から4に記載の全固体電池。
- 前記負極層は密度が1.0g/cm3以上であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の全固体電池。
- 前記リチウムイオン伝導性の結晶は、Li1+x+zMx(Ge1−y、Tiy)2−xSizP3−zO12(但し、0≦x≦0.8、0≦y≦1.0、0≦z≦0.6、M=Al、Gaから選ばれる1種以上)であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の全固体電池。
- 前記リチウムイオン伝導性の結晶を含む無機物質を含有する固体電解質層が、酸化物基準のmol%で、
Li2O 10〜25%、
Al2O3及び/又はGa2O3 0.5〜15%、
TiO2及び/又はGeO2 25〜50%、
SiO2 0〜15%、
P2O5 26〜40%
の各成分を含有する請求項1から7のいずれかに記載の全固体電池。 - 高密度負極部材の製造方法において、
少なくとも液状若しくは固状の炭素前駆体と、固体電解質粉末とをそれぞれ所定量秤量し、混合物とし、前記混合物に溶媒を所定量加えて撹拌しスラリー状混合物とし、
前記スラリー状混合物を成形し、乾燥した後、
700〜1050℃の温度範囲で焼成することを特徴とする高密度負極部材の製造方法。 - 全固体電池の製造方法において、
正極または正極前駆体、及び固体電解質または固体電解質前駆体を準備し、
少なくとも液状若しくは固状の炭素前駆体と、固体電解質粉末とを含む混合スラリーを成形し乾燥させて負極前駆体とし、
前記正極または正極前駆体、前記固体電解質または固体電解質前駆体、及び前記負極前駆体を重ねて、700〜1050℃の温度範囲で焼成することを特徴とする全固体電池の製造方法。
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-
2009
- 2009-12-24 JP JP2009293564A patent/JP2011134617A/ja active Pending
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