JP2011125882A - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる絞り成形品の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パンチ11とダイ13を備えるプレス成形装置を用いてGA鋼板14を絞り成形することによって絞り成形品を製造する際に、予め成形荷重が最大となる成形ストロークまたは成形荷重の最大値を求め、求めた成形ストロークまたは成形荷重の最大値に基づき、パンチ11とGA鋼板14とが接触を開始してから成形荷重が最大となる成形ストロークまでの間の少なくとも一部の領域では、直前のパンチ速度を維持し、または成形ストロークとともにパンチ成形速度を増大するようにする。この領域は、成形荷重が成形荷重の最大の90%に到達してから成形荷重が最大となる成形ストロークまでの領域である。
【選択図】図2
Description
特許文献1には、金属板の成形の途中で金属板からパンチを一端離した後に成形を再開することによって割れが金属板に発生する成形限界を向上する方法が開示されている。
図11(a)〜図11(d)は、鋼板1の絞り成形の状況を模式的に示す説明図である。
(1)図11におけるGA鋼板1とパンチ2との摩擦係数が小さいほど、摩擦抵抗力の変動が小さくなりプレス成形性は良好となる。
(2)GA鋼板1とパンチ2との摩擦係数は、GA鋼板1のめっき中のζ相の量により変化し、ζ相の量が少ないほど摩擦係数が小さくなる。
(3)GA鋼板1は、めっき中のζ相の量のばらつきが大きく、その結果、プレス成形の際の摺動性が不安定となる。
(4)GA鋼板1とパンチ2との摩擦係数は、接触面圧により変化し、接触面圧が大きいほど摩擦係数が大きくなる。
(5)GA鋼板1とパンチ2との摩擦係数は、パンチ成形速度により変化し、パンチ成形速度が大きいほど摩擦係数が小さくなる。
(6)したがって、接触面圧が高い、すなわち、成形荷重が高くなる領域、例えば成形下死点の近傍ではパンチ成形速度を大きくすることにより摺動性が向上し、割れが抑制される。
(7)一般的なクランクプレス、すなわち、パンチ速度がサインカーブで表されるプレスによりGA鋼板1をプレス成形すると、成形荷重が高くなる成形過程の後半で成形ストロークとともパンチ速度が著しく低下するため、摩擦係数が大きくなり、摺動性が低下し、割れが発生し易くなる。
(8)サーボプレスやリンクモーション機構を有するクランクプレスでは、成形荷重が高くなる成形過程の後半でパンチ成形速度を高めることが可能となる。これによりGA鋼板1を絞り成形した際の割れの発生を抑制することができる。
これらの本発明では、成形荷重が最大となる成形ストロークは、成形下死点であることが望ましい。
基準速度(mm/s)=2×3.14/(60/SN)×sin(T×2×3.14/(60/SN))×ST/2・・・(1)
ここで、SP=−cos(T.×2×3.14/(60/SN))×ST/2+ST/2であり、Tは、ストローク位置SP(下死点から距離)から下死点までの時間(秒)を意味する。
図1は、従来のクランクプレス方式のパンチ速度パターンの推移を示すグラフである。このクランクプレス方式のパンチ速度は、下死点からのストローク位置をSP(mm)とし、1分間当たりのストローク回数をSN(回数/分)とし、上死点から下死点までの全ストロークをST(mm)とするとき、下記(1)式で表され、成形開始から下死点までの成形領域では、パンチストロークとともにパンチ速度が単調に減少するパターンとなる。なお、式(1)で表されるパンチ速度を基準速度と言う。
基準速度(mm/s)=2×3.14/(60/SN)×sin(T×2×3.14/(60/SN))×ST/2・・・(1)
ここで、SP=−cos(T×2×3.14/(60/SN))×ST/2+ST/2であり、Tは、ストローク位置SP(下死点から距離)から下死点までの時間(秒)である。
図2(a)に示すように、本発明に係る製造装置10は、パンチ11、ホルダ12およびダイ13と、図示しないパンチ成形速度を調節する速度調整手段とを備える。この製造装置14は、GA鋼板14に絞り成形を行って、図2(a)における○印部に示す段差部を有する絞り成形品を製造する。
また、本発明におけるパンチ速度の調整は、予め成形荷重の最大値を求めておき、成形荷重の測定値と成形荷重の最大値に基づき、直前のパンチ速度を維持し、または成形ストロークとともにパンチ成形速度を増大するタイミングを決定し、このタイミングを速度調整手段に伝達することにより行うことができる。すなわち、成形荷重の測定値が成形荷重の最大値に対して所定の値となったとき、パンチ速度の維持または成形速度の増大が行われる。
図4は、本発明におけるパンチ成形速度のパターンを例示するグラフである。
また、本発明により、GA鋼板の絞り成形における成形荷重の最大値となる成形ストロークの近傍での摺動性が安定するため、摺動性が異なるGA鋼板とCR鋼板とを同一のプレス金型により安定してプレス成形することが可能になる。
次いで、予め求めた成形荷重−ストローク曲線に基づき、成形開始から成形荷重が最大となるストロークの少なくとも一部の領域の成形速度が前述の式(1)で算出される基準速度より大きくなるように、成形開始から成形荷重が最大となるストロークの一部の区間でストロークとともに成形速度を増速する速度パターンで、各速度パターン毎に5回行い、最大成形荷重、最大成形荷重のバラツキと限界BHFを調査した。なお、一般的に、プレス成形における成形性は、成形不良が発生しないで成形可能な最大のBHFである限界BHFで評価することが可能である。
図10のグラフにおいて、(a)の速度のパターンは,式(1)で算出されるクランクモーションのパターン(比較例)であり、(b)、(c)の速度パターンは,成形開始からのストロークが20mmとなる手前で増速し、ストローク20mmからストローク50mm(成形下死点)間での速度が(a)の速度パターンの速度より大きいパターン(本発明例)であり、(d)の速度パターンは、ストローク30mm手前で増速し、ストローク30mm以降の成形速度が(a)の速度パターンの速度よりも大きいパターン(本発明例)であり、さらに、(e)の速度パターンは、ストローク40mm手前で増速し、ストローク40mm以降の成形速度が(a)の速度パターンの速度よりも大きいパターン(本発明例)である。
2 パンチ
3 ホルダ
4 ダイ
5 プレス金型
6 絞り成形品
6a パンチ部
6b フランジ部
10 本発明の製造装置
11 パンチ
12 ホルダ
13 ダイ
14,14−1 GA鋼板
Claims (5)
- パンチとダイを備えるプレス成形装置を用いて合金化溶融亜鉛めっき鋼板を絞り成形することによって絞り成形品を製造する際に、予め成形荷重が最大となる成形ストロークまたは成形荷重の最大値を求め、求めた前記成形ストロークまたは前記成形荷重の最大値に基づき、前記パンチと前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板とが接触を開始してから成形荷重が最大となる成形ストロークまでの間の少なくとも一部の領域では、直前のパンチ速度を維持し、または成形ストロークとともにパンチ成形速度を増大することを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる絞り成形品の製造方法。
- 前記領域は、前記成形荷重が成形荷重の最大の90%に到達してから成形荷重が最大となる成形ストロークまでの領域である請求項1に記載された合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる絞り成形品の製造方法。
- 成形荷重が最大となる前記成形ストロークは、成形下死点である請求項1または請求項2に記載された合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる絞り成形品の製造方法。
- 前記領域のパンチ成形速度は、下死点からのストローク位置をSP(mm)とし、1分間当たりのストローク回数をSN(回数/分)とし、上死点から下死点までの全ストロークをST(mm)とするときに、下記式(1)で算出される基準速度に比べて大きい請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる絞り成形品の製造方法。
基準速度(mm/s)=2×3.14/(60/SN)×sin(T×2×3.14/(60/SN))×ST/2・・・(1)
ここで、SP=−cos(T.×2×3.14/(60/SN))×ST/2+ST/2
T:ストローク位置SP(下死点から距離)から下死点までの時間(秒) - パンチとダイを備え、合金化溶融亜鉛めっき鋼板にプレス成形を行って絞り成形品の製造する製造装置であって、
前記パンチの成形速度を調整する速度調整手段を備え、
該速度調整手段は、成形荷重が最大となる成形ストロークまたは成形荷重の最大値に基づき、前記パンチと前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板とが接触を開始してから成形荷重が最大となる成形ストロークまでの間の少なくとも一部の領域で、直前のパンチ速度を維持し、または成形ストロークとともにパンチ成形速度を増大する機能を有することを特徴とする絞り成形品の製造装置。
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