以下、本発明の生理用ナプキンを、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン1は、図1〜図3に示すように、液保持性の吸収体4及び該吸収体4の肌当接面側に配置された表面シート2を具備する吸収性本体10と、該吸収性本体10の長手方向に沿う両側部それぞれに配置された一対の防漏壁5,5とを備えている。吸収性本体10は、一方向に長い形状をしており、実質的に縦長である。
尚、本明細書において、肌当接面は、生理用ナプキン又はその構成部材における、生理用ナプキンの着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、生理用ナプキン又はその部材における、生理用ナプキンの着用時に肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面である。また、長手方向は、生理用ナプキン又はその構成部材の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Yで示す方向は、吸収性本体10の長手方向(本体長手方向)であり、符号Xで示す方向は、吸収性本体10の幅方向(本体幅方向)である。
ナプキン1は、図1に示すように、一方向に長い形状をしており、その長手方向を、着用時に着用者の腹寄りに配される前方部bと、中間部cと、着用時に中間部cより着用者の背中側に配される後方部dとに区分される。前方部bには、着用者の***部(膣口)に対向配置される***部対向部aが存しており、前方部bは***部対向部aを含む領域である。中間部cは、***部対向部aよりもナプキン1の長手方向Yの後方に位置している。本実施形態のナプキン1における***部対向部aは、左右に一対のウイング部6,6を有する部分である。
尚、本発明の生理用ナプキンにおいて、***部対向部は、本実施形態のナプキン1のようにウイング部を有する場合には、通常、該生理用ナプキンの長手方向(図中Y方向)においてウイング部を有する領域である。ウイング部を有しない生理用ナプキンにおける***部対向部は、生理用ナプキンが個装形態に折り畳まれた際に生じる、該生理用ナプキンを幅方向(図中X方向)に横断する2本の折線(図示せず)について、該生理用ナプキンの長手方向の前端から数えて第1折線と第2折線とに囲まれた領域と同じか又は狭い領域である。また、生理用ナプキンの長手方向の長さが長く、3本の前記折線が生じる場合には、生理用ナプキンの長手方向の前端から数えて第1折線と第2折線とに囲まれた領域あるいは該前端から数えて第1折線と第3折線とに囲まれた領域と同じか又は狭い領域である。
更に説明すると、吸収性本体10は、図2及び図3に示すように、ナプキン1の肌当接面を形成する表面シート2、ナプキン1の非肌当接面を形成する裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備している。
本実施形態においては、図2及び図3に示すように、表面シート2の長手方向Yに沿う両側縁2s,2sは、吸収体4の長手方向Yに沿う両側縁4s,4sと幅方向Xにおいて同位置か、又は両側縁4s,4sよりも幅方向Xの内方に位置しており、表面シート2が吸収体4の両側縁4s,4sに挟まれた領域内に収まっている。吸収体4の側縁4sは、吸収体4において最も幅方向Xに突出している縁である。従来の生理用ナプキンには、表面シートが、吸収体の長手方向に沿う両側縁を超えて幅方向外方に延び、該表面シートの長手方向に沿う両側縁が、吸収体の長手方向に沿う両側縁よりも幅方向外方に位置しているものがあるが、このような構成では、***された体液が、拡散しナプキンの側部へ至った際、表面シート2上に留まって防漏壁5の後述する起立部52や弾性伸縮部53を汚染し易く、側部における体液の漏れを誘発するおそれがあるところ、本実施形態のように、表面シート2の両側縁2s,2sが吸収体4の両側縁4s,4sと同位置か又は両側縁4s,4sよりも幅方向Xの内方に位置していると、このような従来技術の不都合が回避され、また、ナプキンの構成部材の使用量の低減、製造コストの低下が図られる。前述した効果をより確実に奏させるようにする観点から、表面シート2の側縁2sは、吸収体4の側縁4sから幅方向Xの内方に0mm以上、特に0.5〜4mm離間した位置に存していることが好ましい。
裏面シート3は、図2及び図3に示すように、吸収体4の非肌当接面の全域を被覆し、更に吸収体4の両側縁4s,4sから幅方向Xの外方に延出してサイドフラップ部を形成している。前記サイドフラップ部は、図1に示すように、***部対向部aにおいて幅方向Xの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の左右両側に、一対のウイング部6,6が延設されている。また、前記サイドフラップ部は、後方部dにおいても幅方向Xの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10の左右両側に、一対の後部フラップ部7,7が延設されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、図1に示すように、吸収体4の長手方向Yの前端及び後端それぞれから外方に延出し、それらの延出部において、接着剤やヒートシール等の公知の接合手段によって、互いに接合されてエンドシール部を形成している。
吸収体4は、図1〜図3に示すように、***部対向部a及び後方部dに、周辺部よりも厚みが厚く且つ表面シート2側に突出して形成された中高部41,42を有している。より具体的には、吸収体4は、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で且つ前方部bから中間部cを介して後方部dに亘って延びる、下層吸収体40と、下層吸収体40よりも幅狭で且つ***部対向部aにおいて下層吸収体40の幅方向中央部の肌当接面側に配置された、前方上層吸収体43と、下層吸収体40よりも幅狭で且つ後方部dにおいて下層吸収体40の幅方向中央部の肌当接面側に配置された、後方上層吸収体44とを有しており、前方上層吸収体43及び下層吸収体40における前方上層吸収体43の下方に位置する部分が、前方中高部41を形成し、後方上層吸収体44及び下層吸収体40における後方上層吸収体44の下方に位置する部分が、後方中高部42を形成している。上層吸収体43,44は、それぞれ、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で、その長手方向を下層吸収体40の長手方向に一致させて、下層吸収体40上に配置されている。吸収体4(下層吸収体40、上層吸収体43,44)と表面シート2との間は、接着剤によって接合されていても良い。
一対の防漏壁5,5は、それぞれ、図2及び図3に示すように、吸収体4の上方にて長手方向Yに沿って表面シート2の肌当接面2aに接合されており、その接合部13(図3では図示せず)を起点として着用時に着用者の肌側に向かって起立する起立部52と、該起立部52の上端部52aに連接され、長手方向Yに沿って複数本の弾性部材15が配されている弾性伸縮部53とを含んで構成されている。尚、後方部dにおける防漏壁5(後方防漏壁5B)は、図3に示すように、その弾性伸縮部53の一部が、起立部52と共に吸収性本体10に固定されており、これにより、前方部bにおける防漏壁5(前方防漏壁5A、図2参照)との比較において、断面形状が異なっているが、前方防漏壁5Aと後方防漏壁5Bとは、防漏壁自体の基本構成は同じである。以下、先ず、前方防漏壁5Aと後方防漏壁5Bとで共通する基本構成について説明し、次に、両者の違いについて説明する。
一対の防漏壁5,5は、それぞれ、幅方向Xに一定の幅を有するサイドシート50を含んで構成されており、サイドシート50は、図2及び図3に示すように、基壁部51及びその上端部(起立部52の上端部52a)に弾性伸縮部53が連設された形状を有するように折り返されている。起立部52は、基壁部51の一部であり、基壁部51における起立部52以外の部分(接合部13と同位置及び接合部13よりも下方に位置する部分)は、吸収体4の非肌当接面側に巻き下げられ、吸収体4と裏面シート3との間に介在配置されて、接着剤やヒートシール等の公知の接合手段によって固定されている。このように、サイドシート50を折り返して形成された防漏壁5は、基壁部51(起立部52)及び弾性伸縮部53において2層構造となっており、該2層構造を構成するサイドシート50,50間は、図示しない接着剤によって接合されている。
このように、起立部52が吸収体4の上方に位置する接合部13を起点として起立するようになされていると、例えば特許文献1の図2に記載されているように、起立部が、吸収体の幅方向外方に位置し且つ該吸収体の非肌当接面と略同一平面上に位置する接合部を起点として起立するようになされている場合に比して、起立起点と起立部の上端部との間の距離が、吸収体の厚みに相当する分短いため、使用時に起立部52が倒れるおそれが少なく、防漏壁5による所定の防漏効果がより確実に奏されるようになる。
起立部52と表面シート2との接合部13は、平面視において線状であり、長手方向Yに沿って防漏壁5(吸収性本体10)の略全長に亘って延びている。接合部13は、ホットメルト接着剤等の接着剤が塗布されて形成されている。線状の接合部13は、長手方向Yに沿って接着剤が連続的に塗布された連続線であっても良く、あるいは接着剤が不連続に塗布された破線であっても良く、また、直線でも曲線でも良い。本実施形態における線状の接合部13は、直線且つ連続線である。
弾性伸縮部53は、起立部52の上端部52aの長手方向Yの全長に亘って連接されている。弾性伸縮部53には、複数本の弾性部材15が配されていることによって、弾性伸縮性が付与されており、その伸縮方向は長手方向Yに一致している。弾性部材15は、ナプキン1の長手方向Yの略全長に亘って配されている。また、弾性伸縮部53は、長手方向Yに延びる複数本の弾性部材15が配されていることによって、図1〜図3に示すように面状に形成されており、この面状の部分がナプキン1の着用者の肌に当接する。弾性部材15の本数は、斯かる面状を形成する観点から、好ましくは3本以上、特に5〜7本である。本実施形態における弾性伸縮部53は、6本の弾性部材15を有している。
弾性伸縮部53は、図2及び図3に示すように、起立部52の上端部52aから幅方向Xの内方に略水平に張り出す内方弾性伸縮部53Aと、上端部52aから幅方向Xの外方に略水平に張り出す外方弾性伸縮部53Bとから構成されている。内方弾性伸縮部53A及び外方弾性伸縮部53Bそれぞれには、弾性部材15が1本以上配されて弾性伸縮性が付与されている。弾性部材15は、内方弾性伸縮部53A及び外方弾性伸縮部53Bを構成する2層のサイドシート50,50の間に伸長状態で配されており、図示しない接着剤によって両サイドシート50,50に接合されている。このように、本実施形態においては、内方弾性伸縮部53A及び外方弾性伸縮部53Bは、両者が一体となって平面状に形成され、起立部52と合わせて、幅方向Xに沿う断面視においてT字状を形成するように起立する。
内方弾性伸縮部53Aの張り出し幅と外方弾性伸縮部53Bの張り出し幅との比(前者:後者)は、起立性と身体へのフィット性の観点から、好ましくは3:2〜1:2、更に好ましくは1:1〜2:3である。また、内方弾性伸縮部53Aの長手方向Yに沿った自由端から外方弾性伸縮部53Bの長手方向Yに沿った自由端までの長さ、即ち、面状の弾性伸縮部53の幅W1(図2参照)は、フィット性及び漏れ防止の観点から、15〜30mm、特に17〜25mmが好ましい。
図1に示すように、ナプキン1の前方部bに位置する、防漏壁5の長手方向Yの前端部と、ナプキン1の後方部dに位置する、防漏壁5の長手方向Yの後端部とには、それぞれ、弾性伸縮部53が吸収性本体10に固定されて、端部固定部54(前端部固定部54a,後端部固定部54b)が形成されていると共に、該前端部と該後端部との間(前端部固定部54aと後端部固定部54bとの間)に、弾性伸縮部53の幅方向Xの内方側が吸収性本体10又は起立部52に固定されて、中間部固定部55が局部的に形成されている。
このように、前端部固定部54aと後端部固定部54bとの間に中間部固定部55が局部的に形成されていることにより、中間部固定部55の前後で起立している起立部52の、幅方向Xの動きの自由度が制限され、これにより、防漏壁5の吸収性本体10の肌当接面側への倒れ込み(内倒れ)や、これに起因する体液の漏れが効果的に防止される。
ナプキン1は、吸収性本体10の長手方向Yの略全長に亘って延びる左右一対の弾性伸縮部53,53が、それぞれ、伸長状態で前端部固定部54a及び後端部固定部54bで固定されていることにより、図1に示すように、自然状態において端部固定部54a,54bの間の中間部固定部55の前後で湾曲する。ナプキン1は、弾性伸縮部53の収縮によって、長手方向Yの全体形状が、肌当接面側(表面シート2側)に凹状に湾曲している。
図4には、中間部固定部55の幅方向Xに沿う模式的な断面図が示されている。尚、図4では、右側の中間部固定部55のみを示しているが、左側の中間部固定部55も右側と同様に構成されている。中間部固定部55は、図4に示すように、弾性伸縮部53の長手方向Yに沿う内側縁部53saを含む、内方弾性伸縮部53Aの略全域が、折り重ねられた起立部52と共に、吸収性本体10を構成する表面シート2に、接着剤やヒートシール等の公知の接合手段で接合され固定されて形成されている。本実施形態における中間部固定部55は、内方弾性伸縮部53Aをその肌当接面側から加熱加圧(ヒートシール)し、起立部52を介して吸収性本体10に熱融着させることによって形成されている。
中間部固定部55の弾性伸縮部53は、図4に示すように、内方弾性伸縮部53Aの少なくとも内側縁部53寄りの部分は、吸収性本体10に固定されているが、外方弾性伸縮部53Bは、その全域が他の部材に固定されておらず、外側縁部53sbは自由縁部となっている。尚、図示していないが、端部固定部54も、図4に示す中間部固定部55と同様に構成されている。
そして、本実施形態における防漏壁5は、図1に示すように、中間部固定部55を基準として、前記前端部側に位置する(中間部固定部55と前端部固定部54aとの間に位置する)前方防漏壁5Aと、前記後端部側に位置する(中間部固定部55と後端部固定部54bとの間に位置する)後方防漏壁5Bとに区分され、前方防漏壁5Aの方が、後方防漏壁5Bよりも長手方向Yの長さが長くなっている。中間部固定部55は、通常、中間部c又はその近傍(中間部cから長手方向Yに20mm以内の領域)に形成される。前方防漏壁5Aは、***部対向部aを含む領域である前方部bに配されており、後方防漏壁5Bは、後方部dに配されている。
また、図3に示すように、後方防漏壁5Bは、その弾性伸縮部53の幅方向Xの内方側が、その長手方向Yの全長に亘り吸収性本体10又は起立部52に固定されており、且つその固定幅W3は、中間部固定部55における弾性伸縮部53と吸収性本体10又は起立部52との固定幅W2(図4参照)よりも短くなっている。より具体的には、後方防漏壁5Bは、弾性伸縮部53の内側縁部53sa及び外側縁部53sbを除く、該弾性伸縮部53の幅方向Xの中間部が、該中間部(後方防漏壁5B)の長手方向Yの全長に亘り吸収性本体10又は起立部52に固定されている。本実施形態における後方防漏壁5Bは、図3に示すように、内方弾性伸縮部53Aにおける、内側縁部53sa及びその近傍を除く部分が、折り重ねられた起立部52と共に、吸収性本体10を構成する表面シート2に、ヒートシールによって固定されている。
ここで、「後方防漏壁(後方防漏壁の弾性伸縮部の本体幅方向内方側)が、その本体長手方向の全長に亘り固定されている」とは、後方防漏壁(後方防漏壁の弾性伸縮部の本体幅方向内方側)と吸収性本体又は起立部との固定部が、後方防漏壁の本体長手方向の全長に亘って存在していることを意味し、該固定部が、後方防漏壁の本体長手方向の全長に亘って途切れることなく連続して、該固定部全体として本体長手方向に延びる連続直線を形成している形態のみならず、複数の該固定部が本体長手方向に所定間隔を置いて間欠配置されて、該固定部全体として本体長手方向に延びる不連続な破線を形成している形態を含む。また、前記固定部は、平面視において、本体長手方向に延びる直線の他、2本以上の破線、波状線、あるいは本体長手方向の後方に向かうほど外側縁部側が狭くなる傾斜線等とすることができる。特に、前記固定部が平面視において破線や波状線であると、肌との接触部分である該固定部を変化させることができるため、着用時の違和感等を低減することが可能となる。
後方防漏壁5Bの弾性伸縮部53においては、図3に示すように、内方弾性伸縮部53Aは、内側縁部53sa及びその近傍を除いて、吸収性本体10(表面シート2)に固定されているが、外方弾性伸縮部53Bは、中間部固定部55の外方弾性伸縮部53Bと同様に、その全域が他の部材に固定されておらず、外側縁部53sbは自由縁部となっている。後方防漏壁5Bの弾性伸縮部53と中間部固定部55の弾性伸縮部53とは、吸収性本体10との固定幅が異なっている。そして、このように、内方弾性伸縮部53Aが起立部52を介して吸収性本体10に固定され、外方弾性伸縮部53Bが他の部材に固定されていないことにより、外方弾性伸縮部53B、特に、内方弾性伸縮部53Aと吸収性本体10との固定部から最も離れている外側縁部53sbが、弾性部材15による収縮力によって、図3に示すように、上側(着用時における着用者の肌側)に向けて持ち上がり、内方弾性伸縮部53Aよりも肌側に近接する。そのため、後方防漏壁5Bの弾性伸縮部53は、外側縁部53sbの方が、該外側縁部53sbとは反対側に位置する該弾性伸縮部53の内側縁部53saよりも、表面シート2からの高さが高くなっており、図3において、内側縁部53saの高さT1<外側縁部53sbの高さT2となっている。
一方、前方防漏壁5Aにおいては、図2に示すように、その弾性伸縮部53は、吸収性本体10又は起立部52に固定されておらず、後方防漏壁5Bのように、起立部52の起立は阻害されていない。このように、本実施形態のナプキン1においては、前方防漏壁5Aと後方防漏壁5Bとで、図2及び図3に示すように、幅方向Xに沿う断面形状が異なっている。
このように、前方防漏壁5Aと後方防漏壁5Bとで、幅方向Xに沿う断面形状が異なるように設計したのは、主として、前述した、***部付近とお尻の後部とでの違い〔前記1)〜5)〕を考慮し、***部付近とお尻の後部とで防漏壁5の役割分担を図った結果である。本実施形態のナプキン1においては、着用者の***部付近には、主として、***部対向部aを含む前方部bに配された前方防漏壁5Aが対応し、着用者のお尻の後部には、主として、後方部dに配された後方防漏壁5Bが対応する。前記1)を考慮すると、前方防漏壁5Aは、変形し易く、着用者の動きに追従し易いことが好ましいが、後方防漏壁5Bは、前方防漏壁5Aほどの変形容易性は必要ない。また、前記2)を考慮すると、後方防漏壁5Bは、ナプキン1の長手方向Xにさほどカーブする必要はない。また、前記3)を考慮すると、後方防漏壁5Bは、前方防漏壁5Aほどの起立高さ(表面シート2の肌当接面2aと弾性伸縮部53との離間距離)は必要ない。また、前記4)を考慮すると、特に後方防漏壁5Bについては、ナプキン1の装着時に内倒れしないように工夫する必要がある。また、前記5)を考慮すると、特に後方防漏壁5Bについては、伝い漏れを効果的に防止し得る工夫が必要である。このような観点から、本実施形態においては、防漏壁5を、中間部固定部55を基準として、前方防漏壁5Aと後方防漏壁5Bとに区分し、前方防漏壁5Aを、***部付近の対応に特化させると共に、後方防漏壁5Bを、お尻の後部の対応に特化させ、斯かる防漏壁5の役割分担によって、ナプキン1全体として、フィット性及び漏れ防止性の向上を図っている。
防漏壁5による作用効果を一層確実に奏させるようにする観点から、防漏壁5の各部の寸法等は、それぞれ、下記範囲内にあることが好ましい。
前方防漏壁5Aの長さL1と後方防漏壁5Bの長さL2との比(L1/L2、図1参照)は、好ましくは1.1〜3、更に好ましくは1.2〜2である。また、長さL1は、好ましくは100〜170mm、更に好ましくは120〜150mmである。
後方防漏壁5Bにおいて、内側縁部53saの表面シート2からの高さT1と、外側縁部53sbの表面シート2からの高さT2との比(T1/T2、図3参照)は、好ましくは0.1〜0.9、更に好ましくは0.3〜0.7である。また、高さT1は、好ましくは0〜5mm、更に好ましくは1〜4mmである。
後方防漏壁5Bにおける弾性伸縮部53の吸収性本体10又は起立部52との固定幅W3(図3参照)と、中間部固定部55における弾性伸縮部53の吸収性本体10又は起立部52との固定幅W2(図4参照)との比(W3/W2)は、好ましくは0.2〜1、更に好ましくは0.3〜0.6である。また、固定幅W3は、好ましくは1〜7mm、更に好ましくは2〜5mmである。
本実施形態のナプキン1について更に説明すると、図1に示すように、ナプキン1の肌当接面(表面シート2の肌当接面2a)における、該ナプキン1の平面視において吸収体4と重なる領域には、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3に向かって一体的に凹陥した、線状の溝部8が形成されている。溝部8においては、表面シート2及び吸収体4が熱融着等により一体化している。溝部8は、中高部41,42を包囲するように形成されている。このように、ナプキン1の肌当接面側に、表面シート2と吸収体4とが一体化された溝部8が形成されていることにより、吸収体4の平面方向の液の拡散が効果的に抑制されるようになり、また吸収体4のヨレを防止できる。溝部8の形成は、経血等の***液の拡散防止、着用時の身体に対する密着性の向上等に特に有効である。溝部8は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。
ナプキン1における各部の形成材料について説明すると、表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。表面シート2としては、例えば、親水化処理が施された各種不織布や開孔フィルム等の液透過性のシートを用いることができる。また、裏面シート3としては、液不透過性でも液透過性でも良く、例えば透湿性を有しない樹脂フィルムや、微細孔を有し、透湿性を有する樹脂フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等を用いることができる。
吸収体4(下層吸収体40、上層吸収体43,44)を構成する材料としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、木材パルプ、合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の高吸水性樹脂を保持させたもの等を用いることができる。また吸収体4は、該繊維集合体等からなる液保持性の吸収性コア(図示せず)と、該吸収性コアを被覆する液透過性のコアラップシート(図示せず)とを含んで構成されていても良く、その場合、吸収性コアとコアラップシートとの間は、所定の部位においてホットメルト粘着剤等の接合手段により接合されていても良い。吸収性コアを被覆するコアラップシートとしては、例えば、ティッシュペーパー等の紙や各種不織布、開孔フィルム等を用いることができる。
防漏壁5〔基壁部51(起立部52)、弾性伸縮部53〕を構成するサイドシート50としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、例えば、撥水性の不織布、樹脂フィルム製のシート、不織布と樹脂フィルムとのラミネート体等を用いることができる。特に撥水性のエアスルー不織布を用いることが、肌触りのよさと横モレ防止の点から好ましい。また、弾性伸縮部53に配される弾性部材15としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、糸状でも帯状でも良い。
本実施形態のナプキン1は、公知のウイング部を有する生理用ナプキンと同様に下着に装着して使用する。本実施形態のナプキン1によれば、着用者の***部付近に対向する***部対向部aを含む、前方部bでは、前方防漏壁5Aが、表面シート2から着用者の肌側に向かって起立する起立部52及び面状の弾性伸縮部53を有しているため、該弾性伸縮部53が着用者の身体に追従性良くフィットする。また、お尻の後部を含む後方部dでは、後方防漏壁5Bの弾性伸縮部53において、幅方向Xの外方側(外側縁部53sb)の方が、内方側(内側縁部53sa)よりも肌側に持ち上がっていて、該内方側の方が該外方側よりも起立高さが低くなされているため、後方防漏壁5Bと表面シート2との間に隙間が発生し難く、幅方向Xへの液の漏れ出し(横漏れ)が効果的に防止され、伝い漏れを起こし難い。また、後方防漏壁5Bの起立高さは、前方防漏壁5Aとの比較において低くなされているため、後方防漏壁5Bは、お尻の後部にフィットし易く且つ内倒れを起こし難い。
本発明に係る前方防漏壁、後方防漏壁は、それぞれ、前述した実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態のものを採用することができる。図5には、本発明に係る前方防漏壁の他の実施形態が、図6には、本発明に係る後方防漏壁の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前述した実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態についての説明が適宜適用される。尚、以下では、主として生理用ナプキンの長手方向Yに沿う右側について説明するが、特に断らない限り、左側についても右側と同様に構成されている。
図5(a)に示す前方防漏壁5A1及び図5(b)に示す前方防漏壁5A2は、何れも、弾性伸縮部53が、起立部52の上端部52aから幅方向Xの外方に張り出す外方弾性伸縮部のみから構成されている点で、第1実施形態と異なる。但し、前方防漏壁5A1,5A2における弾性伸縮部53は、長手方向Yに沿って複数本の弾性部材15が配されているという点では、第1実施形態における弾性伸縮部53と同じである。前方防漏壁5A1における弾性伸縮部53は、図5(a)に示すように、肌側(上側)に向けて凸に屈曲していて、断面視において略く字状であるのに対し、前方防漏壁5A2における弾性伸縮部53は、図5(b)に示すように、屈曲しておらず、断面視において略直線状である。また、前方防漏壁5A1,5A2それぞれにおいて、起立部52は、表面シート2との接合部13を起点として、幅方向Xの内方且つ上方に向かって起立しており、やや内側に倒れた状態となっている。
図6(a)〜図6(c)に示す後方防漏壁は、何れも、断面視においてT字状の防漏壁の変形例であり、前述した図1〜図4に示す実施形態における後方防漏壁5Bの変形例である。
図6(a)に示す後方防漏壁5B1においては、弾性伸縮部53の幅方向Xの内方側が、起立部52のみに固定されている。即ち、後方防漏壁5B1においては、内方弾性伸縮部53Aにおける少なくとも内側縁部53sa及びその近傍部分は、折り重ねられた起立部52にヒートシールによって固定されているものの、弾性伸縮部53は、表面シート2(吸収性本体10)には固定されていない。
図6(b)に示す後方防漏壁5B2においては、起立部52が折り畳まれ、弾性伸縮部53の内側縁部53sa及びその近傍が、折り畳まれた起立部52よりも幅方向Xの内方にて、表面シート2にヒートシールによって固定されている。後方防漏壁5B2においては、起立部52は表面シート2(吸収性本体10)に固定されていない。
図6(c)に示す後方防漏壁5B3は、起立部52の折り畳み形態の点で、図6(b)に示す後方防漏壁5B2と異なる。即ち、後方防漏壁5B2における起立部52は、図6(b)に示すように、接合部13よりも幅方向Xの内方の位置において、幅方向Xの外方に向けて折り返されているだけで、起立部52の折り返し部は1つであるが、後方防漏壁5B3における起立部52は、図6(c)に示すように、更に、接合部13よりも幅方向Xの外方の位置において、幅方向Xの内方に向けて折り返されており、起立部52の折り返し部は2つである。
図6(d)に示す後方防漏壁5B4は、図5(a)に示す前方防漏壁5A1及び図5(b)に示す前方防漏壁5A2に対応する後方防漏壁であり、前方防漏壁5A1又は5A2と組み合わされて用いられる。図6(d)に示す後方防漏壁5B4は、起立部52の上端部52aの近傍に位置する内側縁部53saが、該上端部52aと共に、表面シート2(吸収性本体10)にヒートシールによって固定されている。
図6(a)〜図6(d)に示す後方防漏壁であっても、その表面シート2からの起立高さは、前方防漏壁の該起立高さとの比較において低くなされており、また、外側縁部53sbの方が、内側縁部53saよりも肌側に持ち上がっているため、前述した図1〜図4に示す実施形態と同様の効果が奏される。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、図3に示す後方防漏壁5Bにおいては、内側縁部53sa及びその近傍は、表面シート2(吸収性本体10)又は起立部52に固定されていなかったが、これらに固定されていても良い。また、前記実施形態では、表面シート2の両側縁2s,2sは、吸収体4の両側縁4s,4sと同位置か又は両側縁4s,4sよりも幅方向Xの内方に位置していたが、吸収体4の両側縁4s,4sよりも幅方向Xの外方に位置していても良い。また、ナプキン1は、ウイング部6を有しないものであっても良く、後部フラップ部7を有しないものであっても良く、ウイング部6及び後部フラップ部7を有しないものであっても良い。また、本発明の生理用ナプキンは、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等であっても良い。