JP2011121943A - Her2末端切断型変異体ctf−611に対する抗体 - Google Patents

Her2末端切断型変異体ctf−611に対する抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】HER2受容体を発現する癌の診断および治療方法を提供する。
【解決手段】HER2受容体末端切断形態CTF-611の、特定の配列に含まれる配列によって規定されるエピトープを認識し、CTF-611と別の配列によって規定されるCTF-616とを識別することができ、好ましくはさらに、CTF-611と前記両配列とは異なる配列で規定されるCTF-613とを識別することができる抗体またはその断片、開示されている抗体を使用して癌を診断する方法であって、患者サンプル中の、特定のアミノ酸配列からなるHER2受容体末端切断形態の存在を検出するステップを含む、方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、HER2受容体の末端切断型変異体CTF-611を発現する癌の、単離サンプルでの診断方法に関する。本発明はまた、癌の早期診断および特定のため、ならびに治療のための化合物を提供する。
背景技術
HER2 (c-erbB2、ErbB2またはNeuとしても知られる)は、上皮細胞成長因子受容体、すなわちEGFRのファミリーに属するI型膜貫通タンパク質であり、HER1またはErbB1としても知られる。2つの追加のメンバーHER3およびHER4でこのファミリーは完成する。HER1、3または4がEGF型リガンドと結合すると、その細胞外ドメインは「開放型」と称されるコンフォメーションをとり、それはホモ二量体およびヘテロ二量体の形成を可能にする。HER2はまた、いかなるリガンドとも結合しない場合でさえ、その細胞外ドメインが構成的に「開放型」コンフォメーションを取るせいで、リガンドと結合した他のHER受容体と相互作用する。
細胞外ドメインによって導かれる二量体化は、HER受容体の細胞内キナーゼの相互作用およびその後の一部のチロシン残基のトランスリン酸化を生じさせる。これらのホスホチロシンは、細胞内ホスホチロシン結合タンパク質の一群の連結器(coupler)として作用する。原形質膜で確立された相互作用は、異なるシグナル伝達経路、例えば***促進因子活性化プロテインキナーゼ(MAPK)によって活性化されるプロテインキナーゼ経路;ストレス(JNK)、ホスホリパーゼCガンマなどによって活性化されるプロテインキナーゼ経路によって細胞核に伝達される。すべてのこれらのシグナル伝達回路は、細胞増殖、遊走、生存および接着などの細胞の状態の決定側面(determining aspects)を改変するために協調して作用する遺伝子の発現をコントロールする。ゆえに、細胞の状況に応じて、HER受容体の活性化は劇的な細胞応答を生じさせ、該細胞応答は形質転換から悪性細胞、早期老化にまで及ぶ。
ヒト***腫瘍では、HER2の膜貫通および細胞質ドメインを含むと思われる一連のカルボキシ末端断片、すなわちCTFが見出されることがよくある。(Molina et al, "NH(2)-terminal truncated HER2 protein but not full-length receptor is associated with nodal metastasis in human breast cancer", Clinical Cancer Research-2002, Vol. 8, pp. 347-353)。HER2 CTF、またはHER2のN末端を含まない同じ末端切断形態(HER2 CTF)になるものを発現する乳癌の患者が、完全形態のHER2を主に発現する患者よりも転移を発症する確率が高く(Molina et al. 2002 - 上記)また予後が悪い(Saez et al., "p95HER2 predicts worse outcome in patients with HER2-positive breast cancer", Clinical Cancer Research-2006, Vol. 12, pp. 424-431)ことも知られる。
したがって、腫瘍中のHER2の存在を遅れずに検出でき、さらにはそれが完全形態であるか末端切断(CTF)形態であるかを決定することが非常に重要である。
今日、通常の臨床試験のレベルでは、問題の***腫瘍のタイプを決定するために、抗体を使用して完全形態のHER2の存在が検出されている。HER2の存在を検出するイベントでは、推奨される治療は、治療用モノクローナル抗体、例えばGenentechのトラスツズマブを投与するステップからなる。癌の治療のための、このモノクローナル抗体の使用は、Genentechを代表して出願WO 8906692に記載されている。WO 8906692は、HER2の細胞外領域に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を記載しており、この細胞外領域は、該タンパク質の外部部分全体に適合し、該外部部分はそのN末端である。以前に記載されるように、WO 8906692に引用される抗体によって認識されるエピトープはHER2完全形態の細胞外ドメインの抗原領域であり、HER2の末端切断形態またはカルボキシ末端断片には含まれない。したがって、WO 8906692に記載の抗体および診断方法を用いて、末端切断型HER2 (CTF)の存在を検出することは不可能である。また、該HER2のCTFが発現されている***腫瘍では、トラスツズマブなどの抗体は治療的ではない。その理由は、それらがいかなるエピトープも認識しないからである。この事実は、HER2の末端切断形態(CTF)を発現する患者で観察される、トラスツズマブでの治療への抵抗性を説明する。
HER2の末端切断形態またはCTFを発現する患者は、Saez et al 2006 (上記)によって観察された不良な予後値を予防するために代替療法で治療すべきである。HER2末端切断形態が発現される腫瘍を有するヒトをできるだけ早期に検出(診断)および治療する目的のために、どの形態のHER2が発現されその結果作用するかを区別できることは非常に興味深い。
文献Anido et al., "Biosynthesis of tumorigenic HER2 C-terminal fragments by alternative initiation of translation", European Molecular Biology Organization (EMBO) Journal - 2006, Vol. 25, pp. 3234-3244では、P95として知られる末端切断形態(CTF)を生じさせるHER2に対するアルファ-セクレターゼの作用によって生成された、該受容体の膜貫通および細胞質断片を含む断片に加えて、HER2の膜貫通ドメインの上流および下流それぞれに位置する2つのメチオニンから出発する翻訳の選択的開始の機構によって2つの末端切断形態(CTF)がさらに生成されることが記載されている。具体的には、翻訳の選択的開始のためのメチオニンは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information (NCBI))のUniGeneデータベースのアクセッション番号M11730.1のアミノ酸配列のメチオニン611およびメチオニン687に相当する。この文献はまた、これらの選択的形態のHER2受容体(CTF)が***腫瘍に存在することを示す。特に、該文献は、最も多いものが、CTF687として知られる形態に相当し、または換言すれば、それが687位のメチオニンから出発する翻訳の選択的開始によって得られるタンパク質に相当することを示す。Anido et al.は、HER2のこれらの末端切断形態を発現する腫瘍の成長を最小化するためにラパチニブなどのHER2のチロシンキナーゼ活性のインヒビターの使用を治療として提唱する。チロシンキナーゼのインヒビターは、完全受容体と、それに由来するかまたは翻訳の選択的開始によって産生されるCTFとの両者に不可欠な様式で存在するHER2受容体のC末端と相互作用することによって作用する。
文献Scaltriti et al, "Expression of p95HER2, a truncated form of the HER2 Receptor, and response to anti-HER2 therapies in breast cancer", Journal of National Cancer Institute-2007, Vol. 99, pp. 628-368は、HER2受容体末端切断形態の1つの存在を検出するための代替方法論の研究の例を示し、トラスツズマブ(ハーセプチン(Herceptin))での治療への抵抗性の原因のいくつかの候補を列挙する。特に、該文献は、トラスツズマブによって認識される細胞外ドメインを有さないp95HER2断片(アルファ-セクレターゼによるHER2のタンパク質分解の産物)および該受容体の他の末端切断形態の蓄積を強調する。Scaltritiは、p95HER2断片(アルファ-セクレターゼによるタンパク質分解の産物)を検出するための免疫蛍光法を提唱する。この新規検出方法は、臨床プロトコールの後に、パラフィンに包埋されホルマリンで固定された組織切片で実施することができる。この新規方法論は、全体形態の受容体ではなく、末端切断形態p95HER2が細胞の細胞膜および細胞質の両方に位置することの観察に由来する。この方法は、検出した細胞質を、受容体の細胞質ドメインと結合する抗HER2抗体で染色することによってp95HER2の発現が存在するかどうかを比較すること; および、分布が腫瘍の診断のためのツールとして広く使用されているタンパク質である抗サイトケラチン抗体を用いた検出で前記結果を確認することを提唱する。しかし、この方法が、完全形態のHER2を発現する腫瘍を、末端切断形態を発現する腫瘍から効率的に識別するかどうかは不明である。
文献Pedersen et al., "A naturally occurring HER2 carboxy-terminal fragment promotes mammary tumor growth and metstasis", Molecular and Cellular Biology, 2009, Vol. 12, pp. 3319-3331は、HER2受容体のCTF-611末端切断型変異体の機能的重要性を記載している。CTF-611の存在が、MMP1、ANGPTL4、MET、およびIL11などの転移に原因として関与する多数の遺伝子、およびCD44、BCL2A1、ADAM9、PLAUR、およびEPHA1などの悪性発生の種々の側面に寄与する遺伝子の、発現増加を導くことが示される。インビボで、マウス乳腺でのCTF-611の発現は攻撃的腫瘍の発生を導き、それはさらに、高頻度で肺転移を導いた。
発明の要旨
問題の癌のタイプに適切に結び付けられた診断および治療のための新規で効率的な標的を突き止める必要性、および有効でないと思われている療法を始めから捨てて、悪い予後を有する腫瘍を効率的療法で遅れずに治療することを可能にする必要性が存在する。以前の研究を考慮すると、HER2受容体のCTF-611末端切断型変異体を、完全長およびp95-HER2などの他の末端切断型と区別することが必要である。というのも、他のHER2受容体形態と比較して、CTF-611は、転移する傾向が高いより攻撃的な腫瘍の発生に関与するからである。
本発明は、上で引用される問題に関連する利益を提供し、癌、特に乳癌の早期分類の新規解決策を提示する。
翻訳の選択的(alternative)開始によって生成されるHER2の末端切断形態(CTF)の1つの存在が、治療対象の癌のタイプの予測と非常に良く相関し、一連の治療を指示する際の医師の仕事を容易にすることが決定された。このHER2末端切断形態(CTF-611)は配列番号1によって示される配列を有することが特定され見出された。
この配列を使用して、組織サンプル中のその存在を検出し、好ましくはp95-HER2および完全長HER2からそれを区別し、ゆえに通常の臨床手順でも適用可能な新規および確固たる診断セットを提供するためのいくつかのツールが開発されてきた。
本発明は、トラスツズマブによって認識されないこのHER2の末端切断形態CTF-611を認識する新規抗体、またはその断片を提供する。これらの抗体は、配列番号2に含まれる配列によって規定されるエピトープを認識する。本発明はまた、前記抗体の生産に好適なハイブリドーマセルラインを提供する。現在入手可能な抗HER2抗体はCTFおよびHER2、またはHER2のみを認識し、HER2およびCTFを発現する患者からHER2のみを発現する患者を識別することを非常に困難にする。入手可能な抗HER2抗体と対照的に、本明細書中に記載の抗体は、CTF-611と優先的に結合し、このCTFを発現する患者の特定を可能にする。
本発明によって提供される抗体は、配列番号1によって示されるCTF-611を特異的に検出し、CTF-611をCTF-616と識別でき、好ましくはCTF-611をCTF-613と識別できる。ただし、本発明によって提供される抗体は、好ましくは、完全長HER2およびp95-HER2と結合しない。
本発明はまた、患者サンプルにおける癌の診断方法であって、該サンプル中の配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態の存在を検出するステップを含む方法を表す。
本発明はまた、HER2受容体が発現している癌の単離されたサンプルにおける診断および予後の決定のための、本発明の抗体またはその断片の使用を提供する。
本発明は、HER2受容体および/またはC末端断片が発現している癌の、単離されたサンプルでの診断および予後決定のための物質であって、上記の少なくとも1種の抗体またはその断片を含む物質をさらに提供する。
本発明はまた、HER2受容体が発現している癌の単離されたサンプルでの診断および予後決定用キットであって、該サンプル中の、配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態の存在を検出するための手段を含むキットを提供する。
本発明はまた、治療用の、または医薬の製造に使用するための、上記抗体またはその断片を提供する。特に、該医薬は、少なくとも、配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態が発現している癌の治療または予防のための医薬である。
本発明の別の特徴によれば、抗体または断片の使用は、ヒトを含む哺乳類の乳癌を治療または予防するための医薬の製造のための使用である。
別の本発明の目的は、少なくとも、配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態が発現している癌の治療のための医薬組成物であって、上記の抗体またはその断片および少なくとも1種の製薬的に許容される賦形剤および/またはビヒクルを含む医薬組成物である。
図1は、完全HER2受容体の配列、およびアルファ-セクレターゼによるタンパク質分解の産物であるp95 (648-CTF/p95)として知られる末端切断形態と比較した、末端切断形態CTF-611のタンパク質配列の図である。膜貫通ドメインはらせん状の線で表す。残りの分子はグレーのボックスで示す。モノおよびポリクローナル抗体を作製するために使用されるペプチドの配列は下線で示す。さらに、分子内ジスルフィド架橋の位置をシステイン間の連結で示す。 図2は、乳癌サンプルの電気泳動およびウエスタンブロット(膜への転写)を示す。(S)は可溶性フラクションを意味し、(M)は膜フラクションを意味する。完全HER2およびCTF-611形態を検出するために、該タンパク質の細胞質ドメインに対する抗体を使用した。DHL: 乳酸(Lacatate)デヒドロゲナーゼ(コントロールとして使用)。 図3は、完全HER2受容体を発現するトランスジェニックマウスと比較した末端切断形態CTF-611を発現するトランスジェニックマウスで発症した腫瘍の数の評価の結果(図3A); および検出された腫瘍の容積の結果(図3B)を示す。Y軸で、NおよびVはそれぞれ腫瘍の数および腫瘍の容積を意味する。X軸で、Tは週単位の時間を表す。 図4はウエスタンブロットを示す。HER2 (左レーン)、611-CTF (中央レーン)および648-CTF (右レーン)をコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞由来の細胞ライセートを、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11 (A)、214D8c12h4モノクローナル抗体(B)、または226H4e8d10モノクローナル抗体で分析した。214D8c12h4に対応する結果のみを示す。226H4e8d10を用いても類似の結果が得られた。 図5は免疫沈降を示す。HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞由来の細胞ライセートの1:1:1混合物を、CB11、トラスツズマブ(611-CTFを認識しないHER2の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体)、214D8c12h4または226H4e8d10抗体とともにインキュベートした。免疫複合体をプロテインAで回収し、洗浄し、CB11でのウエスタンブロットによって分析した。214D8c12h4に対応する結果のみを示す。226H4e8d10を用いても類似の結果が得られた。 図6はエピトープマッピングを示す。Aは、CTF-611、CTF-613およびCTF-616を説明する模式図を示す。Bはウエスタンブロットを示す。CTF-611、CTF-613およびCTF-616を発現する細胞由来のライセートを、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11 (左)、214D8c12h4モノクローナル抗体(中央)、または226H4e8d10モノクローナル抗体(右)を用いて分析した。 図7は免疫蛍光を示す。HER2 (左カラムの画像)、611-CTF (中央カラムの画像)および648-CTF (右カラムの画像)をコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞を、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11、214D8c12h4モノクローナル抗体、または226H4e8d10モノクローナル抗体を用いた間接免疫蛍光によって分析した。 図8は免疫組織化学を示す。HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞を、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11 (左カラムの画像)、または214D8c12h4モノクローナル抗体(右カラムの画像)、または226H4モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学によって分析した。214D8に対応する結果のみを示す。226D8の場合も類似の結果が得られた。
CTF-611
上記するように、発明者らは、驚くべきことに、配列番号1を有する上記HER2末端切断形態の異なる検出結果が、不良な予後を示す***組織の共通のタイプの癌の兆候と非常に良く相関することを発見した。そして、図3は、末端切断形態CTF-611 (配列番号1)を発現するトランスジェニックマウスで発生した腫瘍の数の評価の結果を示す。
この図3の結果を得るために、マウスの***上皮中で、ヒト配列番号1(CTF-611)をコードし、この図ではM611-CTFとして特定しているcDNA構築物を発現させた。この構築物はマウス乳癌ウイルス(MMTV)のプロモーターの制御下に配列番号1を含む。コントロールとして、HER2の完全形態を発現するマウス系統FVB/N-Tg(MMTVneu)202Jを、やはりMMTVプロモーターの制御下で使用した。図3Aから推定できるように、CTF-611形態(配列番号1)を有するcDNA構築物を発現するマウス中の腫瘍の数は、この図で名称HER2/neuとして特定されたFVB/N-Tg(MMTVneu)202J系統の腫瘍の数よりずっと多い。トランスジェニック動物の腫瘍は、CTF-611を発現するトランスジェニック動物の17週齢の時点で検出された。それはFVB/N-Tg(MMTVneu)202Jマウスでの最初の検出の3か月前である。この事実は、完全形態を発現する腫瘍に対して、HER2断片を発現する腫瘍の攻撃性が高いことを説明している。図3Bはまた、HER2/neuとしても知られる、完全受容体を構成的に発現する動物に対して、配列番号1を有するHER2のCTF末端切断形態を発現する動物で腫瘍の容積がずっと大きいことを示す。この第二の事実もまた、このタイプの腫瘍の高い攻撃性を説明する。発明者らはまた、配列番号1の配列の末端切断形態を発現するそれら腫瘍が、HER2/neuを発現する腫瘍で観察される肺転移指数よりも高い肺転移指数を示すことを決定した。臨床関連性を証明するさらなる実験を以下の実施例7に記載する。
トランスジェニック動物を用いたこのデータのすべては、配列番号1のHER2受容体末端切断形態の、該受容体の完全形態に対して区別された検出がまさに必要であることを明らかにする。
明らかに、該配列番号1は、個体間の対立遺伝子変異から生じるすべての変異体を含み、それは、2または3個程度のアミノ酸などのいくつかのアミノ酸の数およびタイプの変異、または全体的な受容体構造を改変しない別のアミノ酸によるアミノ酸の置換を伴う。
これらのHER2の末端切断形態は、ネオエピトープ、換言すれば、完全受容体の分子中に存在しない新規抗原決定基を含有することができ、これは、完全受容体と同じ方法で該分子(抗体、医薬、など)と相互作用しないことを意味する。
CTF-611に対する抗体
発明者らは、CTF-611に対するモノクローナル抗体を生産することができた。これらの抗体は、配列番号2に含まれる配列によって、好ましくは配列番号3に含まれるかまたは配列番号3によって規定される配列によって規定されるエピトープを認識する。最も好ましいのは、MPIWKFPDEEGAS (配列番号5)に含まれるかまたはそれによって規定されるエピトープを認識する抗体である。
本発明に関して、エピトープは、ペプチドタイプの高分子(または抗原)の一部であって、その配列および/または空間的配置が免疫系(抗体、T細胞、B細胞)によって認識されるものを意味すると理解される。
本発明の抗体はCTF-611を認識可能であり、CTF-611をCTF-616 (配列番号7)から区別することができ、好ましくはCTF-611をCTF-613 (配列番号6)から区別することができる。
本発明の抗体は、好ましくは配列番号1のタンパク質をHER2受容体から区別することができる。さらに、本発明の抗体は、好ましくは、配列番号1のタンパク質をHER2受容体末端切断形態648-CTF/p95から区別することができる。この区別は、免疫蛍光、フローサイトメトリー、培養細胞での免疫組織化学、および患者由来のサンプルでの免疫組織化学のうちの1以上の方法によって視覚化することができる。該区別は、フローサイトメトリーおよび免疫沈降の両方において定量できることが特に好ましい。
該抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであってよい。
本発明の意味において、「ポリクローナル抗体」は、種々のB細胞系統(Bリンパ球)によって産生される抗体の群を意味すると理解されるものとする。ポリクローナル抗体は、抗原(高分子)に対して分泌される免疫グロブリンの混合物であり、これらの免疫グロブリンのそれぞれは異なるエピトープを認識することができるが、というのもそれが異なるB細胞に由来するからである。ゆえに、ポリクローナル抗体に含まれる免疫グロブリンの異なる集団内に、特定の抗原の目的のエピトープまたはエピトープ群を認識する免疫グロブリンのタイプが存在する。
ポリクローナル抗体は、例えば配列番号2、配列番号3、配列番号4または配列番号5のペプチドを、キーホールリンペットヘモシアニンなどの免疫原とコンジュゲートし、このコンジュゲートでウサギを免疫化することによって生産することができる。
同一または類似の免疫原を使用してモノクローナル抗体を生産することができる。当業者に公知の様式でハイブリドーマセルラインを生産することができる。そして、ハイブリドーマセルラインを好適な培養培地中で増殖させ、該培地からモノクローナル抗体を回収することができる。
好ましい実施形態では、ブダペスト条約に基づきアクセッション番号DSM ACC3016 (214D8c12h4)およびDSM ACC3017 (226H4e8d10)でドイツ微生物・細胞コレクションDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)に寄託されたハイブリドーマセルラインによってそれらを生産する。
前記ハイブリドーマセルラインによって生産されたモノクローナル抗体、ならびに機能的に少なくとも等価のモノクローナル抗体が特に好ましい。CTF-611とCTF-616、好ましくはCTF-613、およびCTF-611とHER2とを等しく良好にまたはさらに良好に識別できる抗体は機能的に少なくとも等価である。
有用な抗体にはまた、ヒト化およびヒト抗体が含まれる。
完全抗体の代わりに、その断片を本発明に従って使用してもよい。該抗体断片はF(ab)、F(ab')およびFvからなる群から選択される。本発明に関して、抗体の断片とは、HER2受容体末端切断形態中に存在するエピトープと結合するために十分なサイズおよび適切な構造であることによりサンプル中のその検出を可能にする、抗体の一部を表す。
実施例3は特異的モノクローナル抗体を示す。明らかに、本発明は、CTF-611とCTF-616、好ましくはCTF-613とを区別できる、配列番号2および配列番号3の配列によって規定されるCTF-611末端切断型のエピトープに対する他のポリクローナルまたはモノクローナル抗体にもおよぶ。その理由は、当業者は、本発明の教示内容に基づいて、それらを直接導き出すことができるからである。同様に、本発明は、F(ab)、F(ab')、Fv、などの、該抗体の断片、またはCTF-611とCTF-616、好ましくはCTF-613とを区別できる、配列番号2および配列番号3のペプチドに対するモノクローナル抗体を生産可能な任意のハイブリドーマセルラインにおよぶ。
診断方法
本発明の診断方法では、HER2受容体末端切断形態の存在の検出は、移動相-固定相系での、配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態の、該HER2受容体の完全形態に対する移動差による検出; および配列番号1を含むHER2受容体末端切断形態の特異的抗体との結合による検出を含む群から独立して選択される手段によって実施することができる。
移動差による検出とは、本発明に関して、化合物の分離を、電気泳動などの特定の移動相-固定相系でのその異なる移動度に基づいて検出できるようにする任意の分析技術を意味すると理解されるべきである。そのような異なる移動度は、化合物の異なる電荷、異なる分子量、または他の化合物に対する異なる親和性によって生じる。
この差示的検出は、当業者に公知の分析技術、例えばタンパク質電気泳動、分子排除クロマトグラフィー、抗体親和性試験、免疫蛍光、免疫細胞化学、免疫組織化学、フローサイトメトリー、などによって実施することができる。免疫組織化学が特に好ましい。1以上の前記方法を組み合わせて信頼性を高めることができる。
本発明でCTF-611とも称される配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態の、全体または完全HER2受容体に対する差示的検出は、図1から所望でありうるように、異なる分子量および異なる配列を有する2つのタンパク質を視覚化できることを意味する。配列番号1を有する末端切断形態は、HER2受容体の完全配列のメチオニン611による翻訳の選択的開始から得られるタンパク質からなる。この形態またはCTFは、ゆえに、新規細胞外ドメイン、膜貫通断片、および細胞質ドメインを含む。膜貫通断片および細胞質ドメインはHER2受容体の完全形態のものと同一である。別の末端切断形態は、p95またはCTF-648と称される図1の1つに相当する。この最後の形態は完全HER2受容体に対するアルファ-セクレターゼの作用の産物であり、細胞外ドメインの大きい部分を分割する。
本発明の別の実施形態では、サンプル中の、配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態の存在を検出するステップは、上記で規定される少なくとも1種の抗体による検出を含む。特定の実施形態では、本発明の診断方法は、配列番号3によって規定されるエピトープを検出するステップを含む。
本発明の一実施形態では、本発明の抗体またはその断片を診断および予後決定のための物質として使用する。該物質は、それ自体のペプチド配列中に(例えば放射性同位体で)直接標識されるか、または間接的に(例えば蛍光物質または、選択された反応媒体中での反応によって蛍光を発生可能な物質の付加または結合によって)標識され、上記のものはすべて、可視シグナルを生成させることを目的とし、可能であれば、定量可能であり、それを用いて、サンプル中の配列番号1の配列からなるHER2受容体末端切断形態の存在を検出するためのものである。
同様に、少なくとも該抗体を含有する診断物質を固体支持体に直接または、スペーサーアームを用いて間接的に接着させることが想定される。この種の物質は、サンプルの配列番号1の配列の形態を捕獲し、後にその存在を他の非特異的抗体(例えばCB11)を用いて決定することを可能にする。
本発明の診断および予後決定のための物質は、免疫組織化学プロトコールにおいて適用することもできる。この趣旨では、(一次または二次)モノクローナルまたはポリクローナル抗体を、それらが試験組織と接触し、かつ検出が意図されるタンパク質と、換言すれば、配列番号1の配列からなるHER2のCTF断片とそれらを相互作用させれば、可視シグナルを発し、最良の場合には定量可能になるように適切に標識しなければならない。
医師の分析、診断および予後決定の仕事を容易にする目的で、キットの形式で診断物質を提供することが想定される。該キットは、抗体に加えて、試薬(例えば免疫組織化学染色に必要な試薬)、サンプル中の配列番号1の末端切断形態の存在を決定するために合わせて作られたバッファーおよび検出溶液、場合により、様々なCTF-611発現レベルを表すコントロールスライド、および場合によりさらに、医師の診断の評価を支援する詳細な使用説明書を含む。このキットは、HER2の測定のための半定量的免疫組織化学アッセイを実施するための手段(例えばHerceptestTM)を含んでもよい。
ゆえに、本発明は、診断および予後決定のためのキットであって、抗体とエピトープとの相互作用を実施するために好適でかつ当業者に広く知られている試薬手段およびバッファーに加えて、少なくとも1種の抗体またはその断片を含み、該抗体または断片は、配列番号2または配列番号3または配列番号5によって規定されるエピトープを認識できるが配列番号6の配列は認識できず、好ましくは配列番号7の配列は認識できないものである、キットを提供する。
本方法の診断方法、および本発明のキットは、リンパ節転移、予後不良、およびHerceptinTMへの抵抗性の予測を可能にする。
同様に本発明の目的である別のタイプのキットは、HER2受容体の完全形態に対して、配列番号1の配列からなるHER2受容体末端切断形態の移動差によって検出を実施するのためのすべての必要な手段を含む。
HER2受容体またはその末端切断型変異体を発現する癌の群内で、乳癌は突出している。これらのタンパク質が同様に発現している他の癌には、肺、膵臓、結腸、胃、前立腺、頭部および頸部、皮膚、腎臓、睾丸、甲状腺、膀胱、子宮、外陰、子宮内膜、卵巣、食道、口、唾液腺、喉頭、腹膜、鼻部および咽頭領域、卵管の癌、そしてウィルムス腫瘍ならびにリンパ腫、スイング肉腫(Swing sarcomas)、滑膜肉腫、髄芽腫、栄養膜腫瘍、グリオーマ(glyomas)、グリオブラストーマ(glyoblastomas)、胆管癌、コレステリン腫、軟骨肉腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経腫、横紋筋肉腫が含まれる。そして本発明の診断方法は、前記の癌の1つの診断に特に好適である。
-CTFのex vivo検出に加えて、該抗体をin vivoイメージングに使用することができる。
治療方法
本発明の抗体、またはその断片はまた、治療、特に癌、特にHER2受容体またはその末端切断型変異体を発現する癌の治療に有用である。ヒト化およびヒト抗体、およびその断片が好ましい。
本発明の抗体は、少なくとも配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態が発現している癌の治療に有用な医薬組成物においても使用される。該組成物は、製薬的に許容されるビヒクルまたは賦形剤、および配列番号2または配列番号3の配列によって規定されるエピトープを認識するが配列番号6の配列は認識せず、好ましくは配列番号7の配列は認識しない少なくとも1種の抗体を含む。該医薬組成物は、本発明の抗体に加えて、HerceptinTMなどのHER2またはその断片に対する他の抗体を含有する抗体混合物を含んでもよい。
本明細書で提供される図面および常に例示のためであって非限定的な実施例に基づき、以下、HER2受容体および/またはそのカルボキシ末端断片(末端切断型変異体)が発現している癌の診断および予後決定の方法; 新規ペプチドおよび該ペプチドに対する特異的抗体; 新規セルライン; 診断用物質および検出のためのキット、を記載する。それらはすべて、本発明の対象である。
特定はしないが、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者がそれらに割り当てる意義を有する。本明細書中に記載の方法および材料と類似または等価の方法および材料は、本発明の実施に使用することができる。本明細書および特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」および該単語のバリエーション、例えば「comprising」は、他の技術的な特徴、添加物、成分、またはステップを除外しないものとする。本発明の追加の目的、利点および特徴は、本明細書を考察すると当業者に自明になるか、または本発明の実施によって習得される。以下の実施例および図面は例示のために提供され、本発明の限定であることを意図しない。
また、本発明は、上記の好ましい特定の群のすべての可能な組み合わせを含むことが理解されるものとする。
以下の実施例は、HER2受容体および/またはその末端切断型変異体を発現するタイプの癌の単離されたサンプル中の、配列番号1の配列からなる末端切断形態の存在を検出する種々の方法を示す。
実験手順
細胞。10% FBS (Gibco)、4mM L-グルタミン(PAA Laboratories)、0.2mg/ml G418 (Gibco)および1μg/mlドキシサイクリン(Sigma)を含有するDMEM/F-12 (1:1)(Gibco)中で37℃、5% CO2でMCF7 Tet-Off細胞(BD bioscience)を維持した。FuGENE6 (Roche)を使用することによって種々の発現プラスミドで細胞をトランスフェクトした。pUHD10-3hベースのプラスミドが組み込まれている単一の安定なクローンを0.1mg/mlハイグロマイシンB (Invitrogen)で選択した。ドキシサイクリンを除去することによってpUHD10-3hにコードされるHER2およびCTFのcDNAからの発現を誘導した。まず、該細胞を0.5%トリプシン-EDTA (GIBCO)ではがし、遠心によって3回洗浄し、培養皿への接種の10時間後に培地を変更した。個々のクローンの同質性を、HER2の細胞質ドメインに対する抗体を用いる免疫蛍光共焦点顕微鏡検査によって検査した。2つの独立して選択された安定なクローンを実験に使用した。
ウエスタンブロット。異なるHER2アイソフォームを発現する細胞を改変RIPAバッファー(20mM NaH2PO4/NaOH pH7.4、150mM NaCl、1% Triton X-100、5mM EDTA、100mM PMSF、25mM NaF、16μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび1.3mM Na3VO4)中に溶解し、DCタンパク質アッセイ試薬(BIO-RAD)でタンパク質濃度を測定した。サンプルを、5%βメルカプトエタノールを含むローディングバッファー(終濃度: 62mM Tris pH6.8、12%グリセロール、2.5% SDS)と混合し、99℃で5分インキュベートした後、15μgのタンパク質をSDS-PAGEによって分画した。ウエスタンブロットの特異的シグナルをソフトウェアImageJ 1.38 (NIH)を用いて定量した。
免疫沈降。細胞ライセートを種々の抗体と4℃で1時間インキュベートした。次いで、免疫複合体をプロテインAで精製した。免疫沈降物を溶解バッファーで3回洗浄し、ローディングバッファーと混合し、ウエスタンブロットによって分析した。
カバーガラス上に播種した免疫蛍光顕微鏡検査のための細胞をPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで20分固定し、0.2% Triton X-100で10分透過化処理した。ブロッキングおよび抗体結合のために、発明者らは、1% BSA、0.1%サポニンおよび0.02% NaN3を含むPBSを使用し、マウントにはDAPIを含むVectashield (Vector laboratories)を使用した。抗体は1μg/mlで使用した。
免疫組織化学。HER2、611-CTFまたは648-CTFを発現するMCF7細胞をPBSで4℃で洗浄し、5mMのEDTAを含有するPBS中ではがした。次いで、細胞を遠心し、細胞ペレットを10%中性ホルマリン中で固定し、脱水し、パラフィンに包埋した。細胞ペレットまたはヒト組織由来の厚さ4μmの切片をポリリシンコーティングスライドガラス上に置いた。以下のプロトコールを使用して免疫組織化学分析を実施した。
1. 切片を脱パラフィン化し、再水和する。
1.1 スライドを60℃で30分インキュベートする。
1.2 きれいなキシレンの3回の5分間のインキュベーション、その後の無水エタノールでの2回の3分間の洗浄でスライドを脱パラフィン化する。
1.3 徐々に蒸留水にする: エタノール95℃3分、エタノール70℃3分、エタノール50℃3分、蒸留水。
2. 抗原回復
低pH (6)でのPT Link, ENVISION FLEX TARGET RETRIEVAL SOLUTION HIGH pH 10x. DM 812. 20分95℃。
Envision Flex洗浄バッファーx10 DM 811で15分洗浄する。
3. 免疫組織化学的染色
AUTOSTAINERプラスLink DAKO
キット: ENVISION FLEX + MOUSE, High pH (Link):
Envision Flex Peroxidase Blocking SM801
Envision Flex/ HRP SM 802
Envision Flex DAB+CHROMOGEN DM 807
Envision Flex Substrate Buffer SM 803
Envision Flex Wash Buffer 10x DM 811
Envision Flex Target Retrieval Solution High Ph 10x DM 812
Envision Flex+ Mouse (リンカー) SM 84
ペルオキシダーゼ5分および洗浄バッファーでの洗浄。
Protein Block 5% 15〜20分。
洗浄バッファーで洗浄する。
・214D8c12h4または226H4e8d10を0.2μg/mlで2時間。
・洗浄バッファーで洗浄する。
・二次(Flex HRP, Flex+Mouse/Rabbit) 20分。
・洗浄バッファーで洗浄する。
・DAB 5分。
・洗浄バッファーで洗浄する。
・ヘマトキシリン。
・蒸留水で洗浄する。
3. 脱水およびマウント用媒体での安定化
3.1 漸増濃度のエタノール(50%、70%、95%、各洗浄2分)で徐々に洗浄する。
3.2 徐々に蒸留水にする(エタノール95%、70%、50%、蒸留水、3分の各洗浄)。
3.3 キシレン/ユーカリプトールで洗浄する(各2分の3回の洗浄)。
3.4 DPXでマウントする。
トランスジェニックマウス
pMBベクター(Dr. Marcos Malumbres, CNIO, Madridからの親切な提供物)のラウス肉腫ウイルスで増強されたマウス乳癌ウイルス長末端反復配列の下流のマルチクローニング部位IIに687-CTFおよび611-CTFをコードする配列をクローニングすることによってTG 611およびTG 687マウスを作製した。Centre of Animal Biotechnology and Gene Therapy (Centre de Biotecnologia Animal i Terapia Genica, Universitat Autonoma de Barcelona)で過***FVBマウスから回収された受精した卵母細胞(oozytes)に直線化プラスミドDNAをマイクロインジェクションすることによって創始者系統(Founder lines)を作製した。サザンハイブリダイゼーション分析によって創始者マウスの遺伝子型を特定した。創始者動物の特定後、PCR遺伝子タイピングによって通常のコロニー維持を実施した。雄性および雌性FVB/N-Tg(MMTVneu)202JマウスをJackson Laboratory (Bar Harbor, ME)から得た。
全組織標本(whole mount)および組織学
乳腺をガラススライド上にマウントし、4%パラホルムアルデヒド中で一晩固定し、70%エタノールに移した。スライドを水で5分すすぎ、0.2%カーミンのろ過溶液中で24時間染色した。次いで、腺を漸減濃度のエタノールで順次脱水し、脱脂し、サリチル酸メチル中で保存した。組織学的分析のために、固定された腺をパラフィン中でブロックし、切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
実施例1: 移動差による配列番号1の断片の検出。
電気泳動ゲルおよびその後のウエスタンタイプの転写(ウエスタンブロット)の画像に対応する図2では、乳癌の異なるサンプル(108、114、101、103、131、134および145)をトラックに積載した。各サンプルから、細胞ライセートの可溶性フラクション(S)および膜フラクション(M)の両者を分析し、どのタイプのHER2分子がどのフラクション中に存在するかを視覚化した。原則として、完全受容体および配列番号1の形態はともに細胞膜中であることが予測される。完全HER2およびCTF-611形態の検出のために、両タンパク質形態に共通のドメインである該タンパク質の細胞質ドメインに対する抗体(CB11)を使用した。分析コントロールとして、乳酸デヒドロゲナーゼ(DHL)酵素の存在を検出した。ほとんどのサンプル中で、完全HER2受容体に対応するバンド、および膜フラクション中では配列番号1のCTF-611形態に対応するバンドが現れる。
したがって、図2は、HER2受容体の末端切断形態のタイプの検出をタンパク質電気泳動分析によって実施できることを示す。さらに、配列番号1の配列からなるHER2の断片の存在は、特定のタイプの癌、この実施例では乳癌を示し、該癌は、HER2を発現する癌の中で個別の症例として評価および治療する必要がある。
実施例2: 配列番号2または配列番号3によって規定されるネオエピトープに対するモノクローナル抗体での、配列番号1の配列からなるHER2断片の存在の検出
配列番号4の配列を有するペプチドを使用して、モノクローナル抗体を取得した。このペプチドは、CTF-611形態または配列番号1のN末端の32アミノ酸に相当し、該ペプチドでは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)として知られる免疫原とコンジュゲートする目的のためにほとんどのシステインがセリンによって置換されている。
したがって、配列番号4は、配列番号3の配列に等価のペプチドに相当するが、免疫化技術を実施するために適合化されている。当業者は、配列番号4の合成ペプチドに対する抗体が、HER2受容体の末端切断形態(配列番号1またはCTF-611)中に存在する配列番号3によって規定されるエピトープも認識するであろうことを理解する。同様に、当業者は、免疫化に使用される合成ペプチドが配列番号2からなり、細胞外領域に位置するCTF-611受容体のすべてのアミノ酸を含む場合、該他のペプチドに対する抗体での結果は等価であり、したがって同一の目的のために有用であることを理解することができる。
アクセッション番号DSM ACC3016を有するハイブリドーマセルラインによって産生されたモノクローナル抗体214D8c12h4およびアクセッション番号DSM ACC3017を有するハイブリドーマセルラインによって産生されたモノクローナル抗体226H4e8d10を選択した。この抗体を用いて得られた結果を図4および図5に示す。
HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞由来の細胞ライセートを用いるSDS-PAGEおよびその後のウエスタン転写を実施した。これらを、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11、または214D8c12h4または226H4e8d10モノクローナル抗体を用いて分析した。CB11抗体はHER2、611-CTFおよび648-CTFを認識する(図4)。モノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10は、ウエスタンブロットによって分析された場合に、完全長HER2および611-CTFを認識する。いずれのモノクローナル抗体も、該エピトープを欠いている648-CTFを認識しない。214D8に対応する結果のみを示す。226D8の場合も類似の結果が得られた。
CTF-611は、実際には、類似の分子量の2つの断片として出現した。タンパク質からN-グリカンを除去する酵素であるグリコシダーゼ-Fを用いて実施された試験(示されていない)から導かれるように、断片CTF-611は翻訳後修飾の基質である。特に、約110 kDaを有する断片は、合成されその後にそれがN-グリコシル化されるようになる分泌経路に入る形態に対応する。
さらに、抗体CB11 (該受容体のサイトゾルドメインを認識する)およびトラスツズマブ抗体(本発明の抗体によって認識されるエピトープと異なるHER2の細胞外ドメイン中のエピトープを認識するが、CTF-611を認識しない)と比較して、モノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10を用いて免疫沈降アッセイを実施した。HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞由来の細胞ライセートの1:1:1混合物をCB11、トラスツズマブ、214D8c12h4または226H4e8d10抗体とともにインキュベートした。免疫複合体をプロテインAを用いて回収し、洗浄し、CB11を用いたウエスタンブロットによって分析した(図5)。214D8c12h4に対応する結果のみを示す。226H4e8d10を用いても類似の結果が得られた。
CB11は3種のcDNA構築物由来のHER2種を免疫沈降させるが、トラスツズマブは完全長HER2を免疫沈降させるだけである。214D8c12h4および226H4e8d10はCTF-611と優先的に結合し、このことは、これらの抗体がこのHER2断片に特異的であり、それらが認識するエピトープは完全長分子ではマスキングされていることを示す。
モノクローナル抗体214D8c12h4での免疫沈降物に対応するトラック(図5、右レーン)では、CTF-611切断形態のグリコシル化および非グリコシル化型のバンドのみが区別されうる。モノクローナル抗体226H4e8d10を用いても類似の結果が得られた。ゆえに、モノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10はCTF-611を免疫沈降させることが可能であるが、完全長HER2およびCTF-648を免疫沈降させることはできない。このことから、モノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10はCTF-611を特異的に認識し、完全長HER2およびCTF-648とのいかなる反応性も示さないと結論づけることができる。したがって、単離された腫瘍組織サンプル中でどの型のHER2受容体が発現しているかの、区別された非常に選択的な検出にそれらを使用することができる。
N末端の32アミノ酸長のCTF-611の配列に対応するペプチドに対するモノクローナル抗体の特徴付けにより、完全長HER2ではマスキングされているがCTF-611では露出しているエピトープ(群)の存在が確認される。これらのエピトープは可溶化分子および無傷の細胞ではともにマスキングされている。
実施例3: CTF-611のN末端に対するモノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10によって認識されるエピトープの特徴付け
図6Aは、CTF-611の膜付近の領域の一次配列を表す模式図を示す。この分子のN末端およびC末端を示す。膜貫通ドメインおよびキナーゼドメインをそれぞれ破線およびグレーのボックスによって示す。欠失構築物CTF-613およびCTF-616の配列を示す。
214D8c12h4および226H4e8d10抗体によって認識されるエピトープを特徴付けるために、CTF-611、CTF-613またはCTF-616を発現するcDNA構築物でトランスフェクトされた細胞を使用した。HER2の細胞質ドメインに対する抗体であるCB11 (図6B、左パネル)、214D8c12h4 (図6B、中央パネル)または226H4e8d10 (図6B、右パネル)を用いたウエスタンブロットによって細胞ライセートを分析した。
結論。CTF-611、CTF-613およびCTF-616を発現する細胞由来のライセートのウエスタンブロット分析では、214D8c12h4および226H4e8d10抗体が異なるエピトープを認識することが示される。214D8c12h4によって認識されるエピトープはCTF-613構築物中では破壊されている。対照的に、226H4e8d10によって認識されるエピトープは同構築物中で保存されている。
実施例4: CTF-611のN末端に対するモノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10の、免疫蛍光による特徴付け
HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞を、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11、214D8c12h4モノクローナル抗体または226H4e8d10モノクローナル抗体を用いる間接免疫蛍光によって分析した(図7)。
予測されるとおり、CB11抗体は3種のセルラインすべてを染色する。モノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10はCTF-611を染色するだけである。この結果は、214D8c12h4および226H4e8d10抗体が、完全長分子中ではマスキングされているCTF-611構築物中のエピトープを認識することを示す。ゆえに、これらの抗体はCTF-611の存在を特異的に検出するための有用なツールである。
実施例5: CTF-611のN末端に対するモノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10の、免疫組織化学による特徴付け
HER2、CTF-611および648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞を、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11、214D8c12h4モノクローナル抗体または226H4e8d10モノクローナル抗体を用いる免疫組織化学によって分析した。その結果を図8に示す。214D8c12h4に対応する結果のみを示す。226H4e8d10の場合も類似の結果が得られた。
結論。予測されるとおり、CB11抗体は3種のセルラインすべてを染色する。モノクローナル抗体214D8c12h4および226H4e8d10はCTF-611を染色するだけである。この結果は、214D8c12h4および226H4e8d10抗体が、完全長分子中ではマスキングされているCTF-611構築物中のエピトープを認識することを示す。ゆえに、この抗体はCTF-611の存在を特異的に検出するための有用なツールである。この結果は特に重要であり、免疫組織化学(imunohistochemistry)がクリニックでのほとんどの通常の検査に選択されうる技術であることを示す。
実施例6: インビボでのCTF発現の影響を特徴付けるための動物モデルの作製
マウスモデルは、腫瘍の進行に関するHER2の発癌性および関連性を示すために役立った。その発癌性を特徴付けるために、発明者らは、乳腺で優先的に活性なマウス乳癌ウイルス長末端反復配列の制御下でCTF-611を発現するトランスジェニック(TG)マウスを確立した。細胞モデルは可溶性細胞内CTFが不活性であることを示したが、これらの断片の発現の結果をさらに調査するために、発明者らはまた、687-CTFを発現するTG動物を作製した。コントロールとして、発明者らは、野生型HER2を発現する、従来の十分に特徴付けれているモデル(すなわちrat neu)を使用した。
7週齢の時点で、ヘテロ接合性TG 611系統F3およびF2で発現されたCTF-611のレベルは、それぞれ、内因性HER2のレベルと、ほぼ等しい〜1/3であったが、F1でのレベルは検出閾値未満であった。開発されたホモ接合性系統での687-CTFのレベルは、TG 687系統F2およびF1それぞれでHER2のレベルの約2倍〜半分で変動した。
TG動物の乳腺は7週齢の時点で目に見える異常性を示さなかった。しかし、カーミン染色全組織標本の形態学的検査では、TG HER2マウスの乳管ツリー(mammary ductal trees)での過形成の異常性が示された。それほど顕著ではないが、TG 611マウスの全3系統に類似の異常性が存在した。対照的に、TG 687マウスの腺は野生型マウスの腺と区別できなかった。
実施例7: CTF-611発現は攻撃的な乳癌の発生を導く
TG HER2マウスでの、より顕著な過形成にもかかわらず、3系統のTG 611動物は、腫瘍の数/動物、腫瘍成長および腫瘍発症に関して、より攻撃的な腫瘍を発生した。
乳腺
Figure 2011121943
(毎週の触診によって乳癌の出現をモニターした。)
TG 687動物では、1年を超える追跡調査後でさえ、腫瘍または異常は観察されなかった。
腫瘍の組織学的分析では、TG 611マウスでHER2によって誘発される同一の典型的な浸潤性固形結節性癌腫が示された。HER2およびCTF-611によって主導された腫瘍間の唯一の組織学的差異は、TG 611マウス由来の腫瘍で有糸***画像の数が多いことであった。
以前に示されるように、TG HER2マウスは肺転移を発生した。腫瘍の検出の3〜6週間後に、約1/4のTG HER2動物は肺に検出可能な小結節を有した。
Figure 2011121943
(触診による腫瘍検出の3〜6週間後にマウスを犠牲にし、免疫組織化学によって転移の出現をモニターした)。
肺転移の組織学的分析によってHER2の発現が確認され、サイトケラチン18での染色によって細胞が原発腫瘍由来であることが確かめられた。TG HER2と比較して、検出可能な転移を有するCTF-611を発現する動物の数は2倍以上であった。このことは、このCTFによって主導された腫瘍が、肺に浸潤する傾向をより顕著に有することを示す。
配列
配列番号1
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配列番号2
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配列番号3
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配列番号4
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配列番号5
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配列番号6
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配列番号7
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抗体: 214D8c12h4, 226H4e8d10
寄託番号: DSM ACC3016 (214D8c12h4), DSM ACC3017 (226H4e8d10)
ウエスタンブロット(図1)
HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞由来の細胞ライセートを、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11、または214D8または226H4モノクローナル抗体を用いて分析した。
両抗体はウエスタンブロットにより完全長HER2および611-CTFを認識する。それらのいずれも、該エピトープを欠いている648-CTFを認識しない。
214D8に対応する結果のみを示す。226D8の場合も類似の結果が得られた。
免疫沈降(図2)
HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞由来の細胞ライセートの1:1:1混合物を、CB11、トラスツズマブ(611-CTFを認識しないHER2の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体)、214D8または226H4抗体とともにインキュベートした。免疫複合体をプロテインAを用いて回収し、洗浄し、CB11でのウエスタンブロットによって分析した。
CB11は3種のcDNA構築物由来のHER2種を免疫沈降させるが、トラスツズマブは完全長HER2を免疫沈降させるだけである。214D8および226H4は優先的に611-CTFと結合し、このことは、これらの抗体がこのHER2断片に特異的であり、それらが認識するエピトープが完全長分子ではマスキングされていることを示す。
214D8に対応する結果のみを示す。226D8の場合も類似の結果が得られた。
エピトープマッピング(図3)
214D8および226H4抗体によって認識されるエピトープを特徴付けるために、611-CTF、613-CTFまたは616-CTFを発現するcDNA構築物でトランスフェクトされた細胞を使用した(模式図を参照のこと)。
611-CTF、613-CTFおよび616-CTFを発現する細胞由来のライセートのウエスタンブロットによる分析では、214D8および226H4抗体が異なるエピトープを認識することが示される。214D8によって認識されるエピトープは、613-CTF構築物では破壊されている。対照的に、226D8によって認識されるエピトープは同構築物で保存されている。
免疫蛍光(図4)
HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞を、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11、または214D8または226H4モノクローナル抗体を用いる間接免疫蛍光によって分析した。
予測されるとおり、CB11抗体は3種のセルラインを染色する。モノクローナル抗体214D8および226H4は611-CTFを染色するだけであった。この結果は、214D8および226H4抗体が、完全長分子ではマスキングされている611-CTF構築物中のエピトープを認識することを示す。ゆえに、この抗体は、611-CTFの存在を特異的に検出するための有用なツールである。
免疫組織化学(図5)
HER2、611-CTFおよび648-CTFをコードするcDNA構築物で安定にトランスフェクトされたMCF7細胞を、市販の、HER2の細胞内ドメインに対するモノクローナル抗体であるCB11、または214D8または226H4モノクローナル抗体を用いる免疫組織化学によって分析した。
予測されるとおり、CB11抗体は3種のセルラインを染色する。モノクローナル抗体214D8および226H4は611-CTFを染色するだけであった。この結果は、214D8および226H4抗体が、完全長分子ではマスキングされている611-CTF構築物中のエピトープを認識することを示す。ゆえに、この抗体は、611-CTFの存在を特異的に検出するための有用なツールである。
214D8に対応する結果のみを示す。226D8の場合も類似の結果が得られた。
配列番号1 ヒトタンパク質HER2の末端切断形態またはカルボキシ末端断片(CTF)
配列番号2 ヒトHER2タンパク質の末端切断形態のエピトープ
配列番号3 ヒトHER2タンパク質の末端切断形態のエピトープ
配列番号4 ヒトHER2タンパク質の末端切断形態のエピトープから由来する合成ペプチド
配列番号5 ヒトHER2タンパク質の末端切断形態のエピトープから由来する合成ペプチド
配列番号6 ヒトタンパク質HER2のカルボキシ末端断片(CTF) CTF-613
配列番号7 ヒトタンパク質HER2のカルボキシ末端断片(CTF) CTF-616

Claims (25)

  1. HER2受容体末端切断形態の、配列番号2に含まれる配列によって規定されるエピトープを認識する抗体またはその断片であって、該抗体が、配列番号1によって表される、HER2の末端切断型変異体CTF-611と、配列番号7によって表されるCTF-616とを識別可能である、抗体またはその断片。
  2. エピトープが配列番号3に含まれるものである、請求項1に記載の抗体またはその断片。
  3. 該抗体が、さらに、配列番号1によって表される、HER2の末端切断型変異体CTF-611と、配列番号6によって表されるCTF-613とを識別可能である、請求項1または2に記載の抗体またはその断片。
  4. 該抗体またはその断片が、配列番号1のタンパク質をHER2受容体から区別するのに適している、先行する請求項の一項以上に記載の抗体または断片。
  5. 該抗体またはその断片が、配列番号1のタンパク質をHER2受容体末端切断型648-CTF/p95から区別するのに適している、先行する請求項の一項以上に記載の抗体または断片。
  6. 免疫蛍光、フローサイトメトリー、培養細胞での免疫組織化学、および患者由来のサンプルでの免疫組織化学のうちの1以上によって区別を視覚化することができる、請求項4または5に記載の抗体または断片。
  7. ポリクローナル抗体である、先行する請求項の一項以上に記載の抗体またはその断片。
  8. モノクローナル抗体またはその断片である、先行する請求項の一項以上に記載の抗体またはその断片。
  9. アクセッション番号DSM ACC3016でドイツ微生物・細胞コレクションDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellen)に寄託されたハイブリドーマセルラインまたはアクセッション番号DSM ACC3017でドイツ微生物・細胞コレクションDSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellen)に寄託されたハイブリドーマセルラインによって産生される、請求項8に記載の抗体またはその断片。
  10. 断片が、F(ab)、F(ab')およびFvによって形成される群から選択されるものである、先行する請求項の一項以上に記載の抗体または断片。
  11. 請求項8または9に記載のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ。
  12. 請求項1〜109の一項以上に記載の抗体を生産する方法であって、場合により免疫原とコンジュゲートされている配列番号3または配列番号4からなるペプチドで免疫化するステップを含む、方法。
  13. 請求項11に記載のハイブリドーマセルラインを好適な培養培地中で増殖させ、この培地からモノクローナル抗体を回収する、モノクローナル抗体を取得するための請求項12に記載の方法。
  14. 癌診断の方法であって、請求項1〜10の一項以上で規定される1種以上の抗体を使用して患者サンプル中の配列番号1のアミノ酸配列からなるHER2受容体末端切断型の存在を検出するステップを含む、方法。
  15. 腫瘍成長および/または転移の進行の予後診断を可能にする予後診断方法である、請求項14に記載の方法。
  16. HER2受容体が発現している癌の、単離されたサンプルでの診断および予後決定のための、請求項1〜10のいずれかに記載の抗体またはその断片の使用。
  17. HER2受容体またはその末端切断型変異体を発現するタイプの癌の、単離されたサンプルでの診断および予後決定用の物質であって、請求項1〜10のいずれかに記載の少なくとも1種の抗体またはその断片を含む、物質。
  18. 抗体またはその断片が固体支持体上に配置されている、請求項17に記載の診断用の物質。
  19. HER2受容体またはその末端切断型変異体を発現するタイプの癌の、単離されたサンプルでの診断および予後決定用のキットであって、検出の手段が、請求項17または18に記載の少なくとも1種の物質を含む、キット。
  20. 治療的使用のための、請求項1〜10の一項以上に記載の抗体またはその断片。
  21. 少なくとも配列番号1からなるHER2受容体末端切断形態が発現している癌の治療または予防用の、請求項20に記載の抗体または断片。
  22. ヒトを含む哺乳類の乳癌の治療または予防用の、請求項20または21に記載の抗体または断片。
  23. 肺、膵臓、結腸、胃、前立腺、頭部および頸部、皮膚、腎臓、睾丸、甲状腺、膀胱、子宮、外陰、子宮内膜、卵巣、食道、口、唾液腺、喉頭、腹膜、鼻部および咽頭領域、ファロピウス管の癌、ウィルムス腫瘍ならびにリンパ腫、スイング肉腫(Swing sarcomas)、滑膜肉腫、髄芽腫、栄養膜腫瘍、グリオーマ(glyomas)、グリオブラストーマ(glyoblastomas)、胆管癌、コレステリン腫、軟骨肉腫、上衣細胞腫、神経鞘腫、神経腫、横紋筋肉腫を含む群から選択される癌の治療または予防用の、請求項20〜22の一項以上に記載の抗体または断片。
  24. 癌の治療のための医薬の製造のための、請求項1〜10の一項以上で規定される抗体またはその断片の使用。
  25. 配列番号1を含有するHER2受容体末端切断形態が少なくとも発現している癌の治療用の医薬組成物であって、請求項1〜10のいずれかに記載の抗体またはその断片および少なくとも1種の製薬的に許容される賦形剤および/またはビヒクルを含むことを特徴とする、医薬組成物。
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