JP2011111440A - 神経細胞分化促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】神経細胞の分化促進活性を有する、安全性に優れた経細胞分化促進剤を提供すること。
【解決手段】Gly−Pro−Alaで表されるペプチドまたはその塩を有効成分とする神経細胞分化促進剤。該神経細胞分化促進剤は、神経細胞分化促進活性が高く、有効成分であるペプチド(Gly−Pro−Ala)はコラーゲンなどの生体由来のものであるため、安全性も高い。該神経細胞分化促進剤は、ヒトや非ヒト動物の脳内における神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症、うつ病)の治療剤として用いることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、安全性が高く、且つ継続摂取が容易な神経細胞分化促進剤に関するものである。
アルツハイマー病やパーキンソン病など脳の神経変性疾患に対する根本的な治療剤は未だに存在していない。病気の進行を遅らせることができても、疾病そのものを治癒することはできず、また医薬品の副作用も問題になっているのが現状である。その結果、日本においては急速な高齢化に伴い認知症患者数が増加し、社会問題となっている。一方、健常人であっても、加齢に伴い物忘れが多発したり学習能が低下したりするが、やはりこれらの現象も脳における神経変性が一因であるといわれている。これらの機能低下に対し、予防可能な健康食品や医薬品が望まれているが、やはり決定的なものは知られていない。
これらの脳機能異常に起因する疾病や生理現象に対して、神経細胞の分化促進が有効な防御手段であると考えられている。
神経細胞は、その周囲に存在するグリア細胞などから分泌される神経栄養因子(BDNF)などの生理活性物質により、神経細胞の分化、維持、修復が制御されている。神経栄養因子の代表的なものとして神経成長因子(NGF:nerve growth factor)が知られているが、NGFは神経細胞の分化、維持および修復作用を有し、脳神経系の機能回復を促進する重要なタンパク質である。しかしながら、NGFは高分子であるために血液脳関門を通過できず、経口摂取する医薬品や食品としての開発は容易でない。また、効果的な遺伝子治療も実用化には程遠い。したがって、NGF様あるいはNGFの作用を増強する性質を有し、血液脳関門を通過する低分子化合物が望まれている。
ラット副腎褐色細胞腫由来のPC12細胞は、NGFを添加することによりその細胞の増殖が停止し、神経突起を持つ神経様細胞に分化することが知られており、神経細胞分化促進作用を有する化合物の探索に多用されるモデル細胞である。
現在までにも、PC12細胞を対象とする神経細胞の分化を促進する剤が多く特定され開示されている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6)。しかしながら、これらの有効成分は、吸収性や安定性に乏しい高分子なペプチドであったり、化学合成法による非天然物であったり、あるいは天然物であっても微生物による産物であり、人の食経験がないものであり、安全性の観点で問題を有している。食経験のある冬虫夏草由来の新規セスキテルペン(特許文献7)については、冬虫夏草から抽出精製するには希少成分ゆえに大量生産は困難であるし、前駆体からの合成でもコスト面の問題があり、また食品としては使用しにくい。また、神経網の形成促進作用を有する脂肪酸も提示されているが、低濃度での活性は低く、また脂肪酸の多量摂取がカロリー過多になり、さらに脂肪酸が有する他の生理活性により代謝が乱される危険性がある(特許文献8)。
神経細胞分化促進作用を有するペプチドとしては、他にも報告があるが(非特許文献1)、プロテアーゼ耐性を有する構造をとったものは示されていない。
一方、Gly−Pro−Alaの配列からなるペプチドに関しては、創傷治療用組成物としての使用(特許文献9)、コラーゲン産生剤(特許文献10)、調味料(特許文献11)が知れているが、いずれも脳内の神経細胞に関係した技術ではない。
特開2008−189615号公報 特開2006−42684号公報 特開2000−125894号公報 特開平11−49718号公報 特開平9−323928号公報 特許第3990477号公報 特開2003−252876号公報 特開2007−217311号公報 特開平10−310534号公報 特開2003−137807号公報 国際公開第2004/107880号パンフレット
Biosci. Biotech. Biochem.,67(12)、2541−2547,2003
本発明の課題は、神経細胞の分化促進活性を有する、安全性に優れた神経細胞分化促進剤を提供することにある。
本発明者らは、神経細胞の分化促進活性を有する成分について鋭意検討を重ねた結果、Gly−Pro−Alaが優れた神経細胞分化促進活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕Gly−Pro−Alaで表されるペプチド、またはその塩を有効成分とする神経細胞分化促進剤、
〔2〕経口投与される前記〔1〕記載の神経細胞分化促進剤、
〔3〕非経口投与される前記〔1〕記載の神経細胞分化促進剤
に関する。
本発明の神経細胞分化促進剤は、神経細胞分化促進活性が高く、有効成分であるペプチド(Gly−Pro−Ala)はコラーゲンなどの生体由来のものであるため、安全性も高い。
また、ヒトや非ヒト動物の生体内に存在するほとんどのプロテアーゼは、X−Pro結合を切断することは困難であり、またPro−Y結合を切断することも比較的困難であることが知られている。したがって、本発明の神経細胞分化促進剤の有効成分であるペプチドは3残基であり、生体内のプロテアーゼに対する耐性は高いため、生体内でも安定して存在できる。
また、従来から、医薬品としての生理活性ペプチドは、高い生理活性が失われないように静脈内注射などの非経口投与などにより投薬されており、さらに、経粘膜吸収されやすい低分子のペプチドに限っては、実際に経粘膜吸収型のインスリン製剤などに見られるように医療現場で広く実地に応用されている。したがって、本発明の神経細胞分化促進剤の有効成分であるペプチドは3残基の低分子であることから、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与などの非経口投与だけでなく、経口投与した場合でも、口腔粘膜、胃壁、腸壁などを経て生体内へ吸収されやすい。
以上のように、本発明の神経細胞分化促進剤は、生体内に吸収されやすい低分子を主成分としており、吸収後に血液中や組織・器官でできる限り安定に存在することが予想され、投与経路に関わらず、血流を通じて脳内に有効量が到達することができるため、少ない量でも生理活性(神経細胞分化促進活性)を発揮することが可能な神経細胞分化促進剤である。
また、本発明の神経細胞分化促進剤は、有効成分であるペプチドは3残基の低分子であることから低アレルゲン性である。
また、本発明の神経細胞分化促進剤は、水に可溶なペプチドであり、さらに加熱処理などによっても酸化や分解が起こりにくい安定性の高いペプチドであることから、保存性や加工適性に優れる。
なお、Gly−Pro−Alaを部分配列とする生理活性ペプチドが種々報告されているが、ペプチドは一残基欠失あるいは改変するだけで、生理活性は消失もしくは増強されることは公知のことであるから、Gly−Pro−Alaの神経細胞分化促進活性を類似ペプチドから推定することは極めて困難である。
図1は、実施例における、PC12細胞の分化促進作用の結果を示すグラフである。 図2は、実施例において、NGFのみを添加したPC12細胞の顕微鏡で観察したときの状態を示す図である。 図3は、実施例において、NGFとペプチドGPAを添加したPC12細胞の顕微鏡で観察したときの状態を示す図である。 図4は、実施例において、NGFとペプチドGPMを添加したPC12細胞の顕微鏡で観察したときの状態を示す図である。 図5は、実施例において、NGFとペプチドGPSを添加したPC12細胞の顕微鏡で観察したときの状態を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、Gly−Pro−Alaのアミノ酸配列からなるペプチドが、神経細胞の分化促進活性を有することを初めて見出し、完成させたものである。
即ち、本発明の神経新生促進剤は、Gly−Pro−Alaで表されるアミノ酸配列からなるペプチド(以下、本発明で用いるペプチドと略する)またはその塩を含有する。本明細書においては、特に断わらない限り、アミノ酸残基は、L型アミノ酸残基を意味する。
本発明で用いるペプチドの塩としては、食品としての使用が可能なナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、リジン、オルニチンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
本発明の有効成分であるGly−Pro−Alaで表されるペプチドまたはその塩は、水和物、各種溶媒和物として、または結晶多形の物質として単離される場合もあり、本発明にはこれらの単離されたものおよび混合物の全てが包含される。
本発明で用いるペプチドまたはその塩は、タンパク質の酵素分解物から公知の方法によって製造することもできるし、該ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、公知のペプチド合成法に準じて製造することもできる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。
前記タンパク質としては、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、人参タンパク質などが挙げられる。
前記タンパク質の酵素分解については、タンパク質の種類や酵素の種類、反応条件など、特に限定されるものではなく、基質となるタンパク質中にGly−Pro−Ala配列が1箇所以上存在しており、1段階以上の酵素消化あるいは複数種類の酵素消化により、Gly−Pro−Alaが生じる条件であればよい。例えば、コラーゲンあるいはゼラチンのコラゲナーゼ消化が該当する。酵素消化後は、通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられるペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、化学的な合成反応後も上記と同様な公知の精製法が適用できる。
また、本発明で用いられるペプチドを遺伝工学的な手法で製造する方法として、例えば、前記ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、好ましくはDNAを作製して行うことができる。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した原料由来のcDNA、前記した原料由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
前記のポリヌクレオチドは、例えば、DNAリガーゼ、制限酵素などの公知の方法を用いてベクターに組み込み、次いでそのベクターを宿主細胞中で増幅させることも可能である。ベクター、宿主細胞などについては公知のものであれば特に限定はない。培養した宿主細胞から本発明のペプチドを分離精製することで、本発明に用いられるペプチドを大量に得ることができる。分離精製方法としては、公知の方法であれば特に限定はない。
これらの中でも、タンパク質の酵素分解物を用いることは、安定して大量生産をし易い観点から好ましい。
本発明の神経細胞分化促進剤は、前記ペプチドまたはその塩を有効成分とするものであり、前記ペプチドまたはその塩は、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、人参タンパク質などの食経験のある生体由来の成分であるため、安全性が高く、低毒性のものである。
本発明の神経細胞分化促進剤は、例えば、ヒトおよび非ヒト動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明の神経細胞分化促進剤は、前記のヒトや非ヒト動物の脳における神経細胞の分化を促進することから、前記の動物において脳内における神経疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症、うつ病)の治療剤として用いることができる。
神経疾患治療剤としては従来から種々の合成系の試薬が市販されているが、これらの市販された試薬は、種々の副作用を伴うことが報告されている。また、神経疾患治療剤は副作用を起こさないよう、投薬という行為にも熟練を要するという問題もある。
これに対して、本発明の神経細胞分化促進剤は、有効成分である前記ペプチドまたはその塩がわずか3残基の低分子ペプチドであることから内因性ホルモン様の強力な生理活性を示すものではないと考えられる。したがって、マイルドに作用すると考えられる点で安全性に優れている。また古来より食品中の一成分として食経験がある点からも、安全性に優れるという利点がある。
本発明の神経細胞分化促進剤を治療剤として用いる場合、前記ペプチドまたはその塩を、単独または賦形剤あるいは担体と混合して、経口投与剤、注射剤、点滴剤あるいは坐剤などとすることができる。
前記賦形剤や担体としては薬剤学的に許容されれば問題なく、投与経路や投与方法によりその種類および組成は異なる。
経口投与剤としては、目的に応じていろいろな基材を選択でき、例えば、錠剤、カプセル、飴、グミ、飲料などが挙げられる。中でも、前記ペプチドまたはその塩を少量で継続的に摂取する場合は、おいしさや手軽さを付与することが出来、継続して摂取するにはより効果的であるため、味覚を感じる基材である飴、グミあるいは飲料といった基材が望ましい。しかし、有効成分をある程度の量を含有させると、そのおいしさを損なうことや、場合によってはその基材そのものの物性を変化させてしまうこともある。したがって、数gといったある一定量の有効成分を継続的に摂取する場合は、いわゆるサプリメントといわれるような形が望ましく、水やお湯で服用するような固体組成物であることが好ましい。
前記固体組成物には、錠剤、丸剤、カプセル剤、細粒剤、顆粒剤などが挙げられる。このような固体組成物においては、前記ペプチドまたはその塩が、少なくとも一つの不活性な希釈剤、例えば、ショ糖、乳糖、ぶどう糖などの各種糖類、マンニトール、ソルビトールなどの各種糖アルコール、さらにはヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、各種でんぷんなどと混合される。固体組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤、繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、ラクトースのような安定化剤、グルタミン酸またはアスパラギン酸のような溶解剤乃至溶解補助剤を含有してもよい。場合によっては、香料、甘味料などといった添加物も使用できる。また、錠剤、丸剤、顆粒剤、顆粒を含有するカプセル剤の顆粒は、必要により、ショ糖などの糖類、マルチトールなどの糖アルコールで糖衣を施したり、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどでコーティングを施したりすることもできる。また、固体組成物を胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆してもよい。また、製剤の溶解性を向上させるために、公知の可溶化処理を施すこともできる。
注射剤または点滴剤としては、生理食塩水、各種緩衝液、グルコース、イノシトール、マンニトール等の糖類溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類に前記ペプチドまたはその塩を配合することが望ましい。
また、坐剤としては、前記ペプチドまたはその塩を、油脂性基剤、水溶性基剤などの基剤、必要であれば乳化剤、懸濁化剤などと混和して均等にした後、適当な形状にし、溶解法、冷圧法、手工法によって調製したものが挙げられる。
前記治療剤としての製剤中における前記ペプチドまたはその塩の含有量は、製剤の種類により異なるが、通常0.1〜100重量%、好ましくは1〜98重量%である。例えば、注射剤として用いる場合には、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%の有効成分を含むことが望ましい。
治療剤の場合、前記ペプチドまたはその塩の投与量は、ヒトであれば通常成人一日当たり、経口投与で10mg〜30g、好ましくは100mg〜10gが好適であり、これを1日1回あるいは2〜数回に分けて投与される。また、注射液などの非経口投与であれば、ヒトであれば通常成人一日当たり、前記ペプチドまたはその塩の投与量は、2mg〜6g、好ましくは20mg〜2gが好適であり、これを1日1回あるいは2〜数回に分けて投与される。
なお、投与量は、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。被検体がヒト以外の非ヒト動物であれば上記のヒトに準じて投与量を調整すればよい。
また、本発明の神経細胞分化促進剤は、安全性に優れるために、他の脳機能改善効果を有するといわれている化合物や素材と組み合わせて使用することも可能である。このような化合物や素材の例として、脳の栄養源であるブドウ糖、神経系に作用するカフェイン等のプリン誘導体、脳の構成成分であるフォスファチジルセリン、フォスファチジルコリン、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸等の脂質、血流改善作用を有するイチョウ葉エキスなどの組成物、補酵素であるピロロキノリンキノン(PQQ)、酸化型コエンザイムQ10、還元型コエンザイムQ10などが挙げられる。組み合わせ方は何ら制限されるものではなく、期待する効果の程度、味などの呈味面、コスト、加工適性や安定性などから適したもの1種以上を組み合わせて用いることができる。この場合、本発明の神経細胞分化促進効果と、併用する化合物や素材が奏する効果との相加効果に留まらず、想定される以上の治癒速度や治療効果までもが得られることが考えられる。これは、作用メカニズムが異なる複数の素材の組み合わせ効果によるものである。
また、本発明の神経新生促進剤は、ヒトおよび非ヒト動物における神経疾患の予防を目的に使用することができる。
本発明の神経細胞分化促進剤は、神経疾患の予防を期待して使用する場合は、前記のような経口投与剤、注射剤、点滴剤、坐剤などの形態で、その有効量をヒトまたは非ヒト動物に対して投与することができる。
また、本発明の神経細胞分化促進剤は、極めて優れた安全性、吸収性、低アレルゲン性、物性面の安定性や優れた加工適性を兼ね備えていることから、調製粉乳、離乳食など乳幼児用食品に用いることもでき、さらに、高齢者向けの咀嚼や嚥下困難者向けのゼリー状の栄養食品の原料の一部として用いることもできる。
神経疾患の予防のための前記ペプチドまたはその塩の投与量としては、被検体の年齢、体重、症状、治療効果、投与ルート等により異なり、これらを考慮して適宜設定されるが、例えば、ヒトであれば通常成人一日当たり、0.1mg〜30g、好ましくは1mg〜10gが好適であり、これを1日1回あるいは2〜数回に分けて投与される。投与量は予防目的やその他の種々の条件によって変動するので、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。被検体が非ヒト動物であれば上記のヒトに準じて投与量を調整すればよい。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これにより本発明を限定するものではない。
(実験設計)
PC12細胞を用い、ペプチドの神経細胞分化促進作用を検討した。この目的は、神経幹細胞が神経細胞へと分化する過程(以降、神経分化という)において、被験物質の分化促進作用について検討するものである。実験系としては、PC12細胞を利用する。PC12細胞は副腎髄質由来の褐色細胞腫であり、神経成長因子(NGF)の存在下で神経突起の形成と伸長がおこり、カテコールアミン性の神経様細胞に分化することが知られている(Green and Tschler, 1976)。この系は、比較的容易に幹細胞様の細胞株から神経様細胞へと分化する過程が観察できることから、神経分化の分子メカニズムを究明する上で世界的に利用されている。
(被験試料の合成・精製)
被験試料として用いた3種類のペプチド、Gly−Pro−Ala(以下GPAと記す)、Gly−Pro−Met(以下GPMと記す)、Gly−Pro−Ser(以下GPSと記す)は和光純薬株式会社から購入した。全て、F−moc法にてそれぞれ化学合成され、全てHPLCにより純度が99%以上になるように精製されたものである。
(神経細胞分化促進活性の測定)
PC12細胞を培養するにあたり、培養液は85%RPMI1640(Invitorogen社、品番72400−047)、10%馬血清(Invitorogen社、品番16050−122)、5%仔牛血清(Sigma社、品番F9423)、および50unit/mlペニシリン・50μg/mlストレプトマイシン(Invitorogen社、品番15140−122)を含む培地を、培養皿はタイプIVコラーゲン(TypeIV Collagen)でコーテ
ィングされた60mm径の細胞培養用プラスチックディッシュ(Iwaki社、品番12−018−004)を用いた。PC12細胞はDSファーマバイオメディカル社より入手し(品番88022401)、細胞を5mlの培養液を含んだ培養皿に入れて、インキュベータで37℃、5%CO2の条件で増殖状態を維持し、週に1−2度の培地交換および週に1度の継代培養を行った。
分化誘導に際しては、顕微鏡観察の便宜上、コラーゲン(1mg/ml、Roche社、品番1 179 179)でコーティングしたカバースリップ(径15mmの円形ガラス薄片、Matsunami社、品番15、No.1)上で細胞を培養した。分化誘導の前日、コーティングされたカバースリップが入った12ウェルプレート(TPP社、品番92412)に、細胞密度が2.5〜10×104cells/cm2になるようにPC12細胞懸濁液を注ぎ(0.6ml細胞懸濁液/ウェル)、培養液中で1日間前培養を行った。分化誘導の当日、12ウェルプレートの培養液を除き、RPMI1640培地で1回洗浄したのち(培養液中の血清やカバースリップに付着しなかった細胞を除去する目的)、各種の分化誘導培地を添加した。分化誘導培地は、99%RPMI1640培地、1%馬血清、50unit/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを基本組成とし、分化誘導剤としてNGFを終濃度が50ng/mlになるように添加した。ネガティブコントロールにはNGFを含まない培地を用い、通常この条件下ではPC12細胞の神経分化は誘導されない。また、NGFと共に各種の合成ペプチド(GPA、GPM、GPS)を終濃度10μM含有する分化誘導培地を調製し、各ペプチドの分化促進に対する作用を比較した。これら各種の分化誘導培地でPC12細胞をさらに1週間インキュベータで培養し、神経様細胞への分化を誘導した。1回の実験につき、各サンプルあたり少なくとも2つのウェルを使用し、複数回実験を行った。
PC12細胞の神経分化は、神経突起の形成の有無をもって判定した。神経突起は通常、分化細胞あたり1本から数本観察され、直径が1μm程度、長さが数μmから数百μmと細長い構造を有し、分岐もみられる。本実験では、神経突起を明瞭に観察するために、神経突起を構成する主要な構造タンパク質であるチュブリンに注目し、抗チュブリン抗体をもちいて蛍光抗体染色を行った。即ち、1週間の分化誘導後、12ウェルプレートの分化誘導培地を除去し、4%パラホルムアルデヒドを含むPBS(リン酸塩緩衝生理食塩水)を注いで、室温で15分間細胞を固定した。次に、100%メタノールに置換して−20℃で20分間放置することで、細胞膜を溶解し抗体の浸透を高める処理を行い、その後PBSで洗浄した。さらに、抗体の非特異的吸着を防ぐために3%の血清を含むPBS(ブロッキング溶液)で10分間処理を行った。抗体溶液は、ブロッキング溶液に蛍光物質Cy3で化学標識された抗チュブリン−マウスモノクローナル抗体(600倍希釈、Sigma社、品番C4585)と核染色剤であるSYTO13green(1,000倍希釈、Molecular probe社、品番S7575)を加えて調製し、これを前処理した細胞に加えて室温で1時間反応させた。その後、PBSによる洗浄で反応していない抗体を除去し、最後に封入剤(50%グリセリン)を用いてプレパラートを作製した。
観察は、LSM510レーザー操作共焦点顕微鏡(Zeiss社)を用い、アルゴンレーザー(488nm)およびヘリウムネオンレーザー(543nm)による励起光で、SYTO13greenの緑色蛍光(509nm)およびCy3の赤色蛍光(568nm)を観察した。20倍(20×)の対物レンズを用いて200倍で蛍光観察を行い、カバースリップの異なる領域にある細胞を無作為に撮影した(およそ10細胞/画像)。それぞれのサンプルにつき、細胞数が少なくとも150個以上になるように観察を行った。画像解析では、SYT13green核染色により正常な細胞核を有する細胞を計測して細胞数とし、Cy3標識−抗チュブリン抗体で染色された長さ5μm以上の神経突起を有する細胞を計測して分化細胞数とした。各画像について分化細胞の割合(分化細胞数/全細胞数のパーセント表示)を算出して統計解析(SPSS)を行い、各ペプチドの神経細胞の分化における促進活性を検討した。
(結果)
分化誘導1週間後、NGFを添加していないネガティブコントロールではCy3標識−抗チュブリン抗体で陽性の5μm以上の神経突起を有する分化細胞はみられなかった(データ省略)。一方、図1に示すように、NGF(終濃度50ng/ml)を添加した検体では神経突起を有する細胞が観察され、全細胞数に対する分化細胞の割合は21.3%であった(分化細胞数:372、未分化細胞数:1376、合計1748;図1中にNGFとして示す)。次に、NGF(終濃度50ng/ml)と共に3つの異なる合成トリペプチド(GPA、GPM、およびGPS)を終濃度が10μMになるように加えたサンプルについて解析を行った(図1中にNGF+GPA、NGF+GPM、NGF+GPSとして示す)。分化細胞の割合は、それぞれのペプチドについて28.8%(分化細胞:46、未分化細胞:114、合計:160)、21.1%(分化37、未分化138、合計175)、23.2%(分化57、未分化189、合計246)であった。また、NGFのみに対してχ2検定を行ったところ、NGFとNGF+GPAとの比較では、両側有意確率がp<0.05となり、GPAが10μMの濃度でPC12細胞の神経分化を促進させることが判明した。しかし、10μMのGPMとGPSの両ペプチドについてもχ2検定をしたところ、有意差がなかったことから(それぞれp値が1.00と0.508)、神経分化の促進作用がみられないことが分かった。すなわち、GPAは特異的にPC12細胞の分化を促進していることが考えられ、このことから、一般的な神経幹細胞(例えば、ヒトの成人の脳組織にみられる神経幹細胞)に対しても、GPAは神経分化を促進する可能性が高いと推測される。
なお、図2〜5に前記染色後のPC12細胞の写真を示した。図3に示すようにGPAを添加したPC12細胞では、神経突起を長く伸ばしている状態が観察され、分化が促進されている状態が良く分かる。
また、GPAを添加したPC12細胞は、培養状態がよく、細胞毒性などの兆候は見られなかった。
本発明の神経細胞分化促進剤は、抗アルツハイマー病、抗パーキンソン病、抗筋萎縮性側索硬化症、抗抗認知症、抗うつ病などの、神経疾患用治療剤、予防剤として好適に使用される。

Claims (3)

  1. Gly−Pro−Alaで表されるペプチドまたはその塩を有効成分とする神経細胞分化促進剤。
  2. 経口投与される請求項1記載の神経細胞分化促進剤。
  3. 非経口投与される請求項1記載の神経細胞分化促進剤。
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