JP2011101616A - 3色混合光の照射による植物の栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】植物の光反応に最適な波長域の光を最低限必要の光量を照射することで、開花率を促進し、開花までの日数を短縮し、またそれらを所望に制御できる効率的な植物栽培方法を提供すること。
【解決手段】植物に対し、太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nm(遠赤色光)、600〜700nm(赤色光)、及び、400〜500nm(青色光)にあるそれぞれの光の混合光を照射する植物栽培方法であって、遠赤色光の放射照度が赤色光及び青色光の各放射照度以上であることを特徴とする前記方法。
【選択図】図1
【解決手段】植物に対し、太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nm(遠赤色光)、600〜700nm(赤色光)、及び、400〜500nm(青色光)にあるそれぞれの光の混合光を照射する植物栽培方法であって、遠赤色光の放射照度が赤色光及び青色光の各放射照度以上であることを特徴とする前記方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、太陽光が照射されない時間帯に光照射を行って植物を栽培する植物栽培方法、特に、遠赤色光を主体とした赤色光と青色光との3色混合光を照射する植物栽培方法に関する。
切り花類、鉢物類、花壇用苗物類、野菜などでは、開花を制御・促進させる技術は、価格の高い時期に出荷するなど収益性を上げるために重要である。長日植物の開花を促進させる手法としては、通常、白熱電球や蛍光ランプなど、幅広い波長を含む光源を利用した長日処理が行われている。しかしこの場合、開花促進にそれほど有効でない波長も含まれており、効率的とはいえない。
一方で、太陽光が照射されない時間帯に人工光を照射して植物の開花を促進する方法としては、遠赤色光からなる単色光を利用した長日植物の栽培法が知られている(特許文献1)。また、青色光からなる単色光によるもの(特許文献2)や遠赤色光と赤色光からなる2色の混合による方法(特許文献3、特許文献4、特許文献5)が知られている。特許文献5に記載の方法は品質に特化しており開花促進はうたっていない。更に、特許文献6には混色の照射方法が記載されているが、遠赤色光が含まれていないことと、エレクトロルミネッセンスシートの使用を前提としている。また、太陽光の性質を変えて開花調節を行う方法として被覆資材を利用したものがある(特許文献7)がハウス全体を資材で覆う必要があり、コスト的に問題があり、低い透過効率による冬季の生育不良の問題がある。
又、長日植物に対して、遠赤色光及び青色光は開花促進作用、赤色光は開花抑制作用があることが知られていた(非特許文献1)。
又、長日植物に対して、遠赤色光及び青色光は開花促進作用、赤色光は開花抑制作用があることが知られていた(非特許文献1)。
Todd Mockler, Hongyun Yang, XuHong Yu, Dhavan Parikh, Ying-chia Cheng, Sarah Dolan, and Chentao Lin (2003) Regulation of photoperiodic flowering by Arabidopsis photoreceptors. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 100 (4): 2140-2145
植物の栽培においては、低コストで、省力的な栽培方法が求められている。植物生産の大半を占めるハウス栽培で明期の光源を調節するには太陽光の影響を無視できない。そこで、閉鎖系でなく、ハウス栽培でも利用可能な技術開発が望まれており、そのためには昼間は太陽光で生育させ、夜間(暗期)に人工光を照射する技術が利用しやすい。
従って、長日植物の開花および草丈制御に最も適した波長域に発光主波長のある光を用いて、しかも植物の光反応に最低限必要な光量を照射することで、開花制御及び促進、草丈制御及び草丈成長制御などを可能とする技術の出現が望まれていた。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、発光ダイオード(LED)を用いて太陽光が照射されない時間帯に植物に照射する放射エネルギーの波長、照度及び光量と植物の生育、開花の関係を詳細に研究した。その結果、遠赤色光を主体とした赤色光と青色光の混合光を照射することによって、白熱電球(白色光)を使用する場合に比べて開花率が顕著に向上することを見出し、本発明を完成した。
本発明は、植物の光反応に最適な波長域の光を最低限必要の光量を照射することで、開花率を促進し、開花までの日数を短縮し、またそれらを所望に制御できる効率的な植物栽培方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の主な各態様は以下の通りである。
[態様1] 植物に対し、太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nm(遠赤色光)、600〜700nm(赤色光)、及び、400〜500nm(青色光)にあるそれぞれの光の混合光を照射する植物栽培方法であって、遠赤色光の放射照度が赤色光及び青色光の各放射照度以上であることを特徴とする前記方法。
[態様2] 上記の植物栽培方法に使用するための栽培装置。
[態様1] 植物に対し、太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nm(遠赤色光)、600〜700nm(赤色光)、及び、400〜500nm(青色光)にあるそれぞれの光の混合光を照射する植物栽培方法であって、遠赤色光の放射照度が赤色光及び青色光の各放射照度以上であることを特徴とする前記方法。
[態様2] 上記の植物栽培方法に使用するための栽培装置。
本発明の植物栽培方法によって、長日植物の開花を効率的に促進させて開花率を向上させ、開花までの日数を短縮することが可能となる。また、合計の放射照度や各波長の光の混合割合を調節することで、開花までの日数の制御が可能になる。更に、光源としてLEDを用いることで白熱電球と同等以上の効果を省エネルギーで実現することができるし、LED以外の光源でも同じ効果が得られる。
従来技術においては、長日植物に対して、遠赤色光及び青色光は開花促進作用、赤色光は開花抑制作用があることが知られていた(非特許文献1)。従って、本発明方法において、これら3色からなる混合光を照射することによって、それぞれの単色光を照射する以上に開花が促進されることは、従来の技術からは容易に予測できない顕著な効果である。
本発明は、植物に対し、太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nm(遠赤色光)、600〜700nm(赤色光)、及び、400〜500nm(青色光)にあるそれぞれの光の混合光を照射する植物栽培方法であって、遠赤色光の放射照度が赤色光及び青色光の各放射照度以上であることを特徴とする前記方法に係る。
尚、本発明方法において、上記の各色光における分光分布曲線において、上記の各主波長範囲だけでなく、それより短波長域及び/又は長波長域にわたっていることが許容される。
植物は、その光周性のタイプで分類すると、長日植物、短日植物及び中性植物に分けられるが、本発明において栽培の対象となる植物は、上記のいずれであってもよい。しかし、長日植物で最も大きな効果が得られるので、本発明は長日植物に対して特に好適である。なお、長日植物とは1日のうちの昼(明期)が長いとき、つまり夜(暗期)が短いときに開花が促進される植物である。短日植物とは1日のうちの昼(明期)が短いとき、つまり夜(暗期)が長いときに開花が促進される植物である。中性植物とはある程度成長すれば日長にあまり関係なく開花する植物である。
本明細書において、「太陽光が照射されない時間帯」とは、現実に直射太陽光だけでなく、雲などによって太陽光の直射がない曇天下の日射を広く含むいわゆる日中であることを意味する。したがって、太陽光が照射されない時間帯は、季節および緯度により変化する。また、太陽光が照射されない時間帯は、厳密には日の入り後から日の出までの時間帯をいうが、本発明においては、厳密でなくてもよく、したがって日の出前後1〜2時間程度及び日の入り前後1〜2時間程度が含まれていてよいし、反対に含まれていなくてもよい。したがって、太陽光が照射されない時間帯を例えば17:00〜09:00とすることができる。更に、例えば、所謂「植物工場」のように、光源として太陽光を利用せずに人工照明だけで栽培するような環境下においては、栽培の全期間が「太陽光が照射されない時間帯」に該当するものと考えられる。
太陽光が照射される時間帯においては、植物の栽培に太陽光照射を利用することができるので、本発明による照射を植物に対して行う必要がない。しかし、太陽光が不足するときに行う補光照射法においては効果的である。
本発明において、植物に光照射される際の放射照度は、植物体の茎頂部または栽培ベッド面上で計測した値で示される。なお、放射照度は、各波長のエネルギー強度を積分したものである。なお、放射照度は、複数箇所の測定値の平均値により求める。
本発明方法において、遠赤色光、赤色光及び青色光の各放射照度の大きさは、対象となる植物の種類及び栽培環境・目的等に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、遠赤色光の放射照度は、赤色光及び青色光の各放射照度の通常、夫々、1〜100倍、好ましくは1〜10倍である。
又、波長域の植物体の茎頂部または栽培ベッド面上の遠赤色光の放射照度は、通常、0.1 〜100 W/m2、好ましくは、1〜20 W/m2、赤色光の放射照度は、通常、0.001〜100 W/m2、好ましくは、0.1〜20 W/m2、並びに、青色光の放射照度は、通常、0.001〜100 W/m2、好ましくは、0.1〜20 W/m2の範囲となるように光を照射する。
更に、波長域の植物体の茎頂部または栽培ベッド面上の遠赤色光、赤色光及び青色光の放射照度の合計は、通常、0.1〜300 W/m2、好ましくは、1〜60 W/m2の範囲となるように光を照射する。尚、上記の範囲以上の放射照度を用いることもできる。
本発明による光照射は、照射時間帯の中において、連続照射および断続照射のいずれの態様であってもよい。連続照射の場合、明期延長法、暗期中断法、早朝照明法等を適用することができ、断続照射の場合、照射と消灯を繰り返すように光照射を行うことができる。これにより植物栽培効果を奏しながら省エネルギーを図ることができる。
本発明による光照射を行うために用いる光源としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたような当業者に公知の任意のものを使用することができる。波長選択が容易で、有効波長域の光エネルギーの占める割合が大きな光を放射する発光ダイオード等の人工光源が好適である。しかし、所望により発光ダイオード以外の放射源を用いることができる。
発光ダイオード以外の光源としては、例えば直管形およびコンパクト形の蛍光ランプや電球形蛍光ランプ、高圧放電ランプ、メタルハライドランプ等の当業者に公知の任意のもののほかに、今後開発される任意の光源を用いることが許容される。この場合、所望により所定波長域の光を選択的に利用するために光フィルタを組み合わせることが許容される。
尚、本発明において、太陽光が照射される時間帯において、太陽光照射が少ないときに、太陽光照射に加えて所望により本発明による光照射を並行して行うこともできる。この照射法は、補光照射法として知られているが、本発明の光照射の場合にも効果的である。
本発明による光照射を開始する時期は、特段限定されない。しかし、一般的には定植後からである。なお、所望により育苗中からの光照射、あるいは生育途中からの光照射も許容され、このような場合においても本発明の効果を得ることができる。
太陽光照射と本発明による光照射を、それぞれの時間帯において行うための本発明の栽培装置に特別の構造は要求されない。すなわち、本発明による光照射用の光源は植物から十分に離間した位置に人工光源を取り付けることが可能になるので、人工光源を配置しても太陽光が十分に照射されるので、人工光源が上記照射の障害にならない。したがって、太陽光の照射のために特別な構造の栽培装置を採用する必要がない。
また、本発明による光照射は、太陽光照射の時間が短い時期や温度が植物の生育温度とかけ離れている時期に行うのが効果的である。したがって、本発明はハウス栽培と併用する場合に適している。すなわち、ハウス内の栽培しようとする植物の上方の離間した位置に人工光源、例えば発光ダイオードモジュール(照明装置)を配置することができる。なお、人工光源と植物の離間距離は、植物体の茎頂部または栽培ベッド面上において所定の放射照度が得られ、かつ太陽光が植物に照射され得る距離とするのがよい。
従って、本発明の栽培装置は、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載された装置に準じて構成することができる。
本発明においては、既述のように植物の栽培において所定波長域に発光主波長を有し、かつ所定放射照度の光を照射することにより、所期の効果が得られるものである。したがって、それ以外の栽培方法の条件に特に制約はなく、当業者が適宜設定(例えば、栽培温度5〜40℃の範囲等)することができる。
例えば、栽培装置として、照明装置のほかに、暖房装置及び冷房装置が付設されていて植物の周囲温度を植物の生育に好ましい5〜40℃の範囲内に保持できるように構成されているガラス温室やプラスチックハウスなどを利用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明方法を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の理解をより確実にするためのものであって、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
5号鉢に植えたシュッコンカスミソウを用いて栽培試験を行い、本発明方法による開花率の変動を観察した。実験は温度を生育に好適に調節したガラス温室内で行った。
試験区として、発光主波長700〜800nmの遠赤色(FR)発光ダイオード、発光主波長600〜700nmの赤色(R)発光ダイオード、及び発光主波長400〜500nmの青色(B)発光ダイオードを栽培ベッド面から100〜150cmの位置に設置した。昼間(9:00〜17:00)は自然光下で栽培し、夜間の太陽光が照射されない時間帯(17:00〜9:00)は被覆して太陽光を完全に遮光し、各光源で電照し、毎週、開花率を求めた。各光の放射照度は次の通りである。(図1の上図:D)FR:3.5, R:1.0, B:0.2(単位:W/m2)。(図1の下図:E)FR:10, R:6, B:4,白熱電球:25(単位:W/m2)。ここで、「開花率」は以下のように計算して得られる値である:
開花率(%)= (開花個体数/供試個体数)×100
尚、対照区として、無電照区を設けた。
開花率(%)= (開花個体数/供試個体数)×100
尚、対照区として、無電照区を設けた。
[実験結果]
その結果を図1に示した。上図(D)から、3色混合(FR+R+B)が2色混合(FR+B、又は、FR+R)よりも優れていることがわかる。更に、FR+Bの開花は非常に遅く、図の範囲内では開花率はゼロである。更に、3色光を適当な割合で混合することによって、白熱電球を上回る開花促進効果を得ることができた(下図:E)。Eの3色混合では、白熱電球より低い放射照度で白熱電球より高い開花率を示している(消費電力は、さらにかなり低くなる)。更に、図2として、図1(D)において、2色(FR+R)混合光を用いて栽培したシュッコンカスミソウ(図2:左)、及び、3色混合光を用いて栽培したシュッコンカスミソウ(図2:右)を撮影した写真を示す。明らかに、3色混合光を用いて栽培したシュッコンカスミソウの開花が促進されていることがわかる。
その結果を図1に示した。上図(D)から、3色混合(FR+R+B)が2色混合(FR+B、又は、FR+R)よりも優れていることがわかる。更に、FR+Bの開花は非常に遅く、図の範囲内では開花率はゼロである。更に、3色光を適当な割合で混合することによって、白熱電球を上回る開花促進効果を得ることができた(下図:E)。Eの3色混合では、白熱電球より低い放射照度で白熱電球より高い開花率を示している(消費電力は、さらにかなり低くなる)。更に、図2として、図1(D)において、2色(FR+R)混合光を用いて栽培したシュッコンカスミソウ(図2:左)、及び、3色混合光を用いて栽培したシュッコンカスミソウ(図2:右)を撮影した写真を示す。明らかに、3色混合光を用いて栽培したシュッコンカスミソウの開花が促進されていることがわかる。
切り花類や野菜などでは、開花を制御する技術は、価格の高い時期に出荷するなど収益性を上げるために重要である。本発明はそのための効率的な開花促進方法である。さらに、省エネの面で問題があり、生産が中止となる白熱電球を用いた電照栽培にかわり、適切な電照方法を提案する発明でもある。
Claims (7)
- 植物に対し、太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nm(遠赤色光)、600〜700nm(赤色光)、及び、400〜500nm(青色光)にあるそれぞれの光の混合光を照射する植物栽培方法であって、遠赤色光の放射照度が赤色光及び青色光の各放射照度以上であることを特徴とする前記方法。
- 遠赤色光の放射照度が、赤色光及び青色光の各放射照度の1〜100倍である、請求項1記載の植物栽培方法。
- 波長域の植物体の茎頂部または栽培ベッド面上の遠赤色光、赤色光、及び、青色光の放射照度が0.001〜100 W/m2である、請求項1又は2記載の植物栽培方法。
- 波長域の植物体の茎頂部又は栽培ベッド面上の遠赤色光、赤色光及び青色光の放射照度の合計が0.1〜300 W/m2である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物栽培方法。
- 各色光の光源として発光ダイオード、蛍光ランプ、高圧放電ランプ、有機エレクトロルミネッセンス、又は、レーザー光を用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物栽培方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物栽培方法に使用するための栽培装置。
- 各色光の光源として発光ダイオードを含む照明装置、暖房装置及び冷房装置を有する、請求項6記載の栽培装置。
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