JP2005095132A - 長日植物の栽培方法および長日植物栽培施設 - Google Patents
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Abstract
【課題】
長日植物のフィトクロームAの吸収波長域である遠赤色光を用いる際に効果的な長日植物の栽培方法およびこの方法を実施するのに好適な長日植物栽培施設を提供する。
【解決手段】
長日植物の栽培方法は、太陽光が照射されない時間帯で、かつ、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に対して照射する工程を具備している。
また、太陽光が照射される時間帯において、少なくとも白色光を長日植物に対して照射する工程を付加することができる。
【選択図】
図1
長日植物のフィトクロームAの吸収波長域である遠赤色光を用いる際に効果的な長日植物の栽培方法およびこの方法を実施するのに好適な長日植物栽培施設を提供する。
【解決手段】
長日植物の栽培方法は、太陽光が照射されない時間帯で、かつ、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に対して照射する工程を具備している。
また、太陽光が照射される時間帯において、少なくとも白色光を長日植物に対して照射する工程を付加することができる。
【選択図】
図1
Description
本発明は、長日植物の栽培方法およびこの栽培方法を実施するのに好適な長日植物栽培施設に関する。
従来、長日植物に属する花卉類を温室などで人工的に栽培する場合、その花卉類の原種の自生地における生育環境(特に日長、温度)に近い条件で栽培するのがよいとされ、温室などの生育環境を人工的に再現可能な植物栽培施設が用いられている。
また、太陽光、蛍光ランプおよび白熱電球の併用により日長時間を長くなるように制御する比較的簡易な植物栽培装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。また、育成に必要な光の波長域と照射量が植物ごとに異なるため、最適な照射を行うためには育成される植物の表面における波長ごとの光量子束密度の比率や波長ごとに光量制御、照射時間の制御を行っている植物栽培装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。そして、この植物栽培装置では、上記の光以外の生育環境である温度、湿度および炭酸ガスも制御している。さらに、具体的に説明すると、光源には、青色(X:400〜500nm)、緑色(G:500〜600nm)、赤色(Y:600〜700nm)および深赤色(Z:700〜800nm)の各波長の発光ダイオードを備え、栽培する植物の種類に応じて各発光ダイオードの照射量を変化させ、X:0〜50%、Y:40〜100%、Z:0〜10%であり、X+Y+Z=100%になるように構成された光源や、(X+Y+Z):G=30〜80%:20〜70%であり、X+Y+Z+G=100%になるような光源を備えている。
そうして、特許文献2においては、長日植物で幼若な株を育てる場合、その育成初期に青色光と赤色光を照射した後、深赤色光を照射してから、全ての光を消すというサイクルで育成し、株が充実した状態では、赤と青のみで深赤色を含まない光を照射して、株が幼若な状態での花芽形成を防止している。また、カーネーションの育成条件は、赤色と緑色と青色のLEDのみを使用し点灯時間を15時間とし、バラの育成条件は赤色と緑色と青色のLEDを15時間点灯し、シャコバシャボテンの育成条件は赤色と緑色と青色のLEDを10時間点灯する旨記載されている。
さらに、植物の光合成促進と、自然光下における生育に近似した植物高さ、葉の面積・形状などの形態形成制御とを図ることができる植物育成用蛍光ランプが知られている(特許文献3参照。)。特許文献3の蛍光ランプは、発光のピーク波長が440〜470nm、540〜560nmおよび600〜620nmにある3種の希土類元素付活蛍光体、ならびにピーク波長が700〜800nmにある遠赤色放射蛍光体からなる蛍光体層を備え、600〜700nmの波長域に含まれる光量子束と、700〜800nmの波長域に含まれる光量子束との比が0.8〜1.2の光放射を行う。
また、波長400〜500nm、500〜600nmおよび600nm以上の発光エネルギー比率を同じにした蛍光ランプも知られている(特許文献4参照。)。
さらに、硫酸銅溶液で太陽光の遠赤色光を吸収させて透過光の赤色光/遠赤色光比を1より大きくした光を照射すると、菊の草丈と節間長が短くなることは、多く報告されている(非特許文献1参照。)。
以上から理解できるように、長日植物の開花を抑制するには、少なくとも波長600〜700nmの赤色光を照射し、あるいはさらに遠赤色光と適当な比率で一緒に照射するのが効果的であるとされてきた。
一方、長日植物に対して夜間に光照射(補光)を行う場合、白色光や赤色光は効果的であるが、遠赤色光は効果的でないと従来考えられてきた。したがって、夜間に補光を行う場合に、遠赤色光のみで補光を行うことは知られていない。
また、従来の補光育成においては、日中の太陽光照射の後に22:00〜02:00にかけて補光を行う「光中断」、日中の太陽光照射に続いて17:00〜22:00にかけて補光を行う「明期延長」など夜間の一部の時間帯にのみ補光を行い、その他の時間帯を暗黒状態にしている方が長日植物の育成に良好な促進効果があると考えられてきた。
近時、長日植物について分かってきたことは、次のとおりである(非特許文献2参照。)。すなわち、
1.フィトクロームA:遠赤色光を吸収してフィトクロームBの作用(開花抑制)を抑制するとともに、開花を促進させる。
1.フィトクロームA:遠赤色光を吸収してフィトクロームBの作用(開花抑制)を抑制するとともに、開花を促進させる。
2.フィトクロームB:赤色光を吸収して開花を抑制する。
3.フィトクロームD:フィトクロームBと同じ作用があるが、主にフィトクロームBを補完するように作用する。
4:フィトクロームE:同上
5:クリプトクロム1:青色光を吸収して開花を促進する。
5:クリプトクロム1:青色光を吸収して開花を促進する。
6:クリプトクロム2:青色光を吸収してフィトクロームBの作用を抑制する。
以上説明した長日植物の生育および開花を促進するための従来技術においては、人工光による光照射を所定時間連続して行っていた。
他方、イチゴに代表されるように、厳冬期の12月から3月の間、植物が休眠状態になるのを防止して覚醒状態を維持させるために、午後10:00〜午前2:00までの間、白熱電球を連続点灯してイチゴに光応答をさせる電照栽培が行われている。この電照栽培の方法は、暗期中断方法と称されている。また、この暗期中断方法において、電照のランニングコストを低減するために、白熱電球の点灯と消灯をサイクリックに照射することも行われている。この場合、30分点灯−30分消灯または45分点灯−15分消灯の周期で行われる。
特開平4−349824号公報
特開平10−178899号公報
特開平5−217556号公報
特開平4−304822号公報
Rajapakse,N.C., M.J.McMahon and J.W.Kelly. 1993. End of day far redlight reverses height reduction of Chrysanthemum induced by CuSO4spectral filters. Scientia Horticulturae. 53:249-259.
Todd Mockler et al.,2003
ところが、太陽光は、紫外光から赤外光までを含む連続スペクトルで、青色光、緑色光、赤色光および遠赤色光など多くの分光エネルギーを含んでいる。そのため、特定のフィトクロームに対しては、効率の悪い制御しかできない。したがって、太陽光のみで長日植物を生育させた場合、天候により開花時期が前後したり、草丈がばらついたりして、花卉製品の安定供給および品質の面で多くの問題を有している。
また、太陽光と人工光の併用は、上述のように主に早朝、夕方の薄明時の時間帯に行われるが、この場合においても、太陽光の分光放射が存在するため、どのフィトクロームでも反応してしまうので、したがって上記と同様の問題を有している。
さらに、太陽光が照射される時間帯には、太陽光を照射し、太陽光が照射されない時間帯(夜間)に人工光を照射することも考えられる。しかし、特許文献1ないし4に見られる従来技術における人工光は、そのいずれにおいても赤色光が存在しているため、フィトクロームB(D、E)の反応が主となる。したがって、開花、草丈成長が抑制されてしまうので、長日植物の促成栽培には適していない。
一方、栽培温度について見ると、長日植物は、長日条件下(春季)に開花させることから、秋季に播種し、冬季の低温期に栽培しなければならない。そして、上記の栽培において、低温期は、花の生育を抑制し、開花到達日数を費やすとともに、草丈の成長も抑制されてしまう。そこで、特許文献2の栽培装置においては、長日植物を栽培する場合に、生育温度を自然界の温度より高くすることで開花および成長を助ける温度条件を提供することができる。しかしながら、長日植物の開花および草丈生育を抑制する赤色光が常に存在しているために、花芽分化が抑制され、花卉に必要な花芽分化促進効果が得られないという問題がある。加えて、長日植物の開花および草丈を促進するためには、600〜700nmの赤色光は既述のように悪影響があるので、このときに発光ダイオードによって赤色光を発光させるのでは、長日植物の開花および草丈の成長促進には不適切である。
また、従来は、長日植物の開花および草丈成長などを促進するためには、太陽光が照射されない時間帯に光中断(22:00〜02:00の間に行う深夜補光。)、明期延長(17:00〜22:00の間に行う夕刻補光。)および明期延長(02:00〜09:00の間に行う早朝補光。)のように数時間光照射することが効果的であると考えられてきた。しかしながら、本発明者の研究における実験によれば、このような光照射技術は、長日植物の開花および草丈成長などを促進するために効果のないことが分かった。
さらに、イチゴに代表される植物栽培において用いられている暗期中断方法は、植物の生育および開花を促進させるものではない。
これに対して、本発明者は、遠赤色光を用いることにより、長日植物の草丈生育および開花を促進するための条件について研究し、その結果、本発明をなすに至った。
また、本発明者は、遠赤色光を用いて照射することによって長日植物の生育および開花を促進する場合に、遠赤色光の照射を断続しても、ある条件下で照射すれば、連続的な照射の場合と同様に育成および開花促進作用が行われる事実を発見した。この発見に基づいて、遠赤色光のサイクリックな照射を行って長日植物の草丈生育および開花を促進するための照射条件についても研究を行い、その結果、本発明をなすに至った。
本発明は、長日植物のフィトクロームAの吸収波長域である遠赤色光を用いる際に効果的な長日植物の栽培方法およびこの方法を実施するのに好適な長日植物栽培施設を提供することを目的とする。
また、本発明は、加えて長日植物のフィトクロームAの吸収波長域である遠赤色光を用いる際に効果的で、かつ、ランニングコストが経済的な長日植物の栽培方法およびこの方法を実施するのに好適な長日植物栽培施設を提供することを他の目的とする。
請求項1に規定する発明の長日植物の栽培方法は、太陽光が照射されない時間帯で、かつ、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に対して照射する工程を具備していることを特徴としている。
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
「太陽光が照射されない時間帯」とは、現実に直射太陽光だけでなく、雲などによって太陽光の直射がない曇天下の日射を広く含むいわゆる日中であることを意味する。したがって、太陽光が照射されない時間帯は、季節および緯度により変化する。また、太陽光が照射されない時間帯は、厳密には日の入り後から日の出までの時間帯をいうが、本発明においては、厳密でなくてもよく、したがって日の出1〜2時間程度および日の入り1時間程度が含まれていてよいし、反対に含まれていなくてもよい。したがって、太陽光が照射されない時間帯を例えば17:00〜09:00とすることができる。
「周囲温度が5〜40℃」とは、本発明の方法により栽培しようとする長日植物の周囲温度が5〜40℃の範囲内にあることをいい、周囲温度を自然環境のみによって上記の範囲内に維持してもよいし、周囲温度を人工的に制御して上記の範囲内に維持してもよい。もちろん、上記の両手段を季節に応じて適宜併用できることはいうまでもない。周囲温度を人工的に制御する場合、例えば冬季の低温期には暖房設備、夏季の高温期には冷房設備などを用いることができる。そうして、周囲温度が5〜40℃の範囲内にあれば、太陽光が照射されない時間帯に本発明所定の条件で遠赤色光を照射することによって、長日植物の開花および草丈の成長を促進することが可能になる。しかし、周囲温度が5℃未満および40℃超の場合には、本発明所定の光照射を行っても発明の目的を達成できないので、不可である。また、周囲温度は、光照射との関係にもよるものの、一般的には上記の範囲内において高い方が、開花開始時期が早くなり、また草丈、節間長が短くなる傾向が見られる。
光照射に関して、「発光主波長」とは、使用する光源の発光における主要な波長であり、したがって最も大きい分光エネルギーを有している。また、使用する光源は、発光主波長を中心とする全波長域が700〜800nmの光であることが望ましいが、相対的に分光エネルギーの少ない波長域が700〜800nm以外において付随的に存在することを許容する。そして、発光主波長が700〜800nmにある波長域の光は、一般に遠赤色光または深赤色光といわれている。
上記の発光主波長の遠赤色光を発生する光源は、本発明において特段限定されない。上記光源としては発光ダイオードが請求項3の発明において説明する理由により最適である。しかし、蛍光ランプ、高圧放電ランプ例えばメタルハライドランプなどであってもよい。ただし、蛍光ランプやメタルハライドランプの場合には、後述するように遠赤色光以外の輝線スペクトルが付随的に発生するものの、発光主波長としての遠赤色光を得ることができる。
遠赤色光を発光するための蛍光ランプは、低圧水銀蒸気放電により放射される主として波長254nmの紫外光によって励起されて遠赤色光を発光する蛍光体を蛍光体層に採用することにより得ることができる。この種の蛍光体としては、例えば鉄付活アルミン酸リチウム蛍光体からなり、波長740nmに発光ピークを有する遠赤色発光を行う蛍光体を用いることができる。上記の蛍光体は、一般式がLiAl2:Feである。なお、蛍光体粒子の表面にMgO、CaO、SrO、BaOおよびY2O3のグループから選択された一種または複数種の金属酸化物微粒子を質量比で0.01〜1.0%付着させることにより、光束維持率を向上させることができる。また、上記の構成に代えて一般式Gd3Ga5O12:Cr蛍光体を含む蛍光体層を備えた蛍光ランプを用いることもできる。
一方、メタルハライドランプは、発光金属の蒸気が放電により発光した際に遠赤色光を放射するような発光金属のハロゲン化物を水銀および希ガスに加えて封入することにより得ることができる。
上述した蛍光ランプやメタルハライドランプにおいては、それらの点灯時に青色光や緑色光が遠赤色光の他に付随的に発生するのは、水銀を放電媒体として含んでいるため、水銀特有の輝線スペクトルが発光に含まれるからである。しかしながら、これらの青色光や緑色光は、遠赤色光に比較して分光エネルギーが小さいので、遠赤色光の照射による主たる作用、効果に本質的な影響はない。それにもかかわらず、本発明において、青色光や緑色光の副次的な光照射は、遠赤色光の光照射に対して邪魔なことに相違ないので、存在しないほうが好ましい。そのためにも、発光主波長域以外の光量を実質的に遮断するために、所望により光源に光フィルタを併用することができる。また、以上から理解できるように、本発明においては、発光主波長が上記の範囲内にあるとともに、その他の波長体に分光エネルギー、例えば600〜700nmの赤色光、500〜600nmの緑色光、および400〜500nmの青色光が、各波長域の全部または一部に副次的に存在したとしても、その存在が上記発光主波長の作用を本質的に阻害しない範囲内であれば、許容される。
ところで、本発明における上記発光主波長域の光量子束密度の下限値は、0.04μmol・m−2・s−1である。これは上記の波長域の光であれば、月明かり程度のわずかな量の光でも長日植物の生育には効果があるからである。なお、上限値に関しては、特段限定されない。一般的には光量子束密度が高い方が生育は早い傾向にある。したがって、光量子束密度を適宜調節することにより、所望の時期(例えば市場価格の高い時期)に出荷できるように出荷時期を調整することも可能になる。
また、太陽光が照射されない時間帯における遠赤色光の光照射の時間は、当該時間帯を通じて連続して行うものとする。このような照射時間方式は、日長延長方式ともいわれる。なお、「連続して」とは、完全な連続だけでなく、短時間の中断が途中あるいは開始時または終了時に存在しても、長日植物の生育すなわち開花および草丈制御に大きな支障が出ない程度、例えば1時間程度以内であれば許容されることを意味する。また、本発明において、上記「遠赤色光の照射」の意味の中には、遠赤色光の照射と非照射と1周期中に含むサイクリック照射を含むものとする。
次に、本発明においては、太陽光が照射される時間帯の光照射条件などが特段限定されない。例えば、太陽光を直接または太陽光を素通ししたり光質変換したりする被覆体を介して間接的に長日植物に照射することができる。後者の場合、定植した長日植物が太陽光を光質変換する被覆体を透過した太陽光を照射される関係にあるとともに、その光質変換が赤色/遠赤色の光量子束密度の比が1より小さくなるように構成することができる。しかし、使用する長日植物栽培施設は、その具体的な構造を問わない。また、被覆体は、フィルム状または板状などであることを許容する。フィルム状をなす被覆体は、光質変換合成樹脂フィルムとして容易に入手することができる。板状をなす被覆体は、ガラス板や透光性構成樹脂板に光質変換薄膜を被着したり、ガラスや透光性構成樹脂板自体に光質変換特性を付与したりしたものであってもよい。さらに、被覆体は、例えば温室などの植物栽培構体の内部において長日植物を被覆するように配置されてもよいし、植物栽培構体の壁面(天井を含む。)をなしていてもよい。
また、太陽光が照射される時間帯の光照射条件として人工光源による光照射を行うこともできる。この場合の光照射は、太陽光に類似する分光分布であってもよいし、異なる分光分布であってもよい。
本発明において、光照射する長日植物は、どのような態様をなしていてもよいが、定植した状態の長日植物であることが好ましい。なお、「定植した長日植物」とは、一般的には播種後、発芽してから定植可能な状態まで苗が生育してから定植するが、定植工程なしに圃場に生育した直播き苗であってもよいことを意味する。また、長日植物は、花卉類、特に草丈の比較的高い切り花類だけでなく、要すれば観葉植物や野菜などであってもよい。さらに、定植は、鉢やポットを用いてもよい。
そうして、本発明においては、上記の構成を具備していることにより、太陽光が照射されない時間帯において連続的に所定量照射された遠赤色光が効果的にフィトクロームAを吸収して、フィトクロームBの作用を抑制するので、長日植物の開花到達日数が早くなり、草丈および節間長の成長を促進することができる。
また、上記光照射の光量が増大するに従い反比例的に長日植物の開花到達日数が短縮する。このように長日植物に照射する遠赤色光の光量を調整することにより、光照射処理日数を制御することができるので、例えば光量を多くすれば、所望により2期作、3期作などの多期作も可能になる。また、冬季の暖房費の節約にもなる。
請求項2に規定する発明の長日植物の栽培方法は、太陽光が照射される時間帯において、少なくとも白色光を長日植物に対して照射する第1の工程と;太陽光が照射されない時間帯で、かつ、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に対して照射する第2の工程と;を具備していることを特徴としている。
本発明は、請求項1の発明に比較して太陽光が照射される時間帯において、少なくとも白色光を長日植物に対して照射する第1の工程を具備している。「白色光」とは、太陽光および人工光のいずれであってもよい。また、人工光は、例えば高圧キセノン放電ランプのような連続発光スペクトルの白色光を発生する光源や少なくとも青色光、緑色光および赤色光などの加法混色による白色光であってもよい。もちろん、太陽光および人工光の混合であってもよいことはいうまでもない。この場合、人工光は遠赤色光であることを許容する。したがって、遠赤色光の光源を終日点灯し続けるように構成することもできる。
そうして、本発明においては、上記の構成を具備していることにより、太陽光が照射されない時間帯における遠赤色光の連続照射に加えて、太陽光が照射される時間帯において白色光を長日植物に照射することによって、さらに長日植物の開花と草丈の成長を促進することができる。
請求項3に規定する発明の長日植物の栽培方法は、請求項1または2記載の長日植物の栽培方法において、太陽光が照射されない時間帯に長日植物に照射する発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光は、発光ダイオードによって発生されることを特徴としている。
本発明は、太陽光が照射されない時間帯に照射する遠赤色光を発生する光源の好適な構成を規定している。遠赤色光の光源となる発光ダイオードとしては、例えばアルミニウム・インジウム・ガリウム・リン(AlInGaP)からなる4元混晶またはAlGaAs、GaAsPなど3元結晶で、波長700〜800nmの範囲内に発光主波長を有する発光ダイオード素子(チップ)具備した発光ダイオードを用いることができる。また、所望の光量子束密度を得るとともに、取扱いを容易にするために、複数の発光ダイオードをまとめて発光ダイオードモジュールを構成したものを用いることができる。
発光ダイオードモジュールは、どのような構造でもよい。例えば、配線基板の表面に多数の発光ダイオード素子を実装するとともに、配線基板の背面側にヒートシンクを配設して発光ダイオードの発生熱を速やかに放散させるように構成することができる。ヒートシンクを配線基板の背面に熱的に接続するとともに、電気的に絶縁関係を維持するために、配線基板とヒートシンクとを熱伝導性にして絶縁性の合成樹脂で接着させることができる。
また、発光ダイオードモジュールは、ヒートシンクやヒートパイプなどのようなパッシブな放熱手段に代えるか、またはこれらに加えて、アクティブな放熱手段を配設することができる。アクティブな放熱手段としては、例えば発光ダイオードモジュールを冷却するファンやペルチエ素子などを用いることができる。なお、これらのアクティブな放熱手段は、発光ダイオードモジュールに対して分離していてもよいし、一体的に結合されていてもよい。
そうして、本発明においては、遠赤色光を発光ダイオードにより発生させているが、発光ダイオードは、所望の発光主波長帯のみの光を効率よく、しかも容易に得られるばかりでなく、さらに以下の利点を有している。すなわち、光照射装置がコンパクトになる、長寿命である、機械的強度が大きい、水銀などの環境負荷の大きい物質を用いていない、発光主波長の光に対する発光効率が高い。
請求項4の発明の長日植物の栽培方法は、請求項1ないし3のいずれか一記載の長日植物の栽培方法において、太陽光が照射されない時間帯において長日植物に対して行われる発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光の照射は、1時間以下の非照射と非照射時間以上の照射とを1周期中に含むサイクリック照射によって行われることを特徴としている。
本発明において、遠赤色光の「サイクリック照射」とは、遠赤色光の照射および非照射を所定時間間隔で周期的に繰り返しながら行う光照射をいう。また、サイクリック照射において、非照射時間を1時間以下に規定する理由は、以下のとおりである。すなわち、非照射時間が1時間以下であれば、上記遠赤色光を連続照射する場合の長日植物の生育および開花を促進する効果に近い効果が得られるが、1時間を超えると上記のような効果が得られなくなる。また、非照射時間は、1時間以下の範囲内であっても、短い方がより効果的である。
これに対して、照射時間は、非照射時間以上であればよい。例えば、非照射時間が1時間であれば、照射時間は、1時間または1時間より長い時間に設定することができる。同様に非照射時間が15分であれば、照射時間は、15分またはそれ以上に設定することができる。したがって、照射時間は、上記の条件内において主として経済性すなわち省電力の観点から設定することができる。例えば、照射時間を非照射時間以下に設定すれば、省電力率(非照射時間/周期)を0.5以下にすることができるので、経済的であり好ましいことである。
人工光源を用いて発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光の照射をサイクリック照射により行う場合、人工光源をタイマやコンピュータなどを用いることができる。これにより、サイクリック照射を自動的に行うことができる。
そうして、本発明においては、以上の構成を具備していることにより、長日植物の生育および開花が自然日長による栽培より促進されて遠赤色光を連続して照射する場合に近い生育および開花の促進効果が得られ、しかも大幅な省電力を図ることができる。したがって、連続照射に比較してランニングコストが低減される。
請求項5の発明の長日植物栽培施設は、長日植物を収容する施設構体と;太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して長日植物に対して照射するように施設構体に配設された人工光源と;長日植物の周囲温度を5〜40℃に保持する温度管理手段と;を具備していることを特徴としている。
本発明は、請求項1の発明の実施に好適な長日植物栽培施設の構成を規定している。本発明において、「施設構体」とは、長日植物を収容するための空間を画成する構造体であり、光透過性の部材からなる壁面がない枠組体や、透光性パネルやシート状の被覆体を枠組に組み付けてなる温室(ハウス)構造体などが該当する。枠組体は、金属パイプやアルミニウムなどの押出し形枠を組んで形成したものや複数の合成樹脂管を弾力に抗して湾曲させて長手方向に離間してトンネル状に敷設したいわゆるプラスチックトンネルなどであることを許容する。
光源は、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、太陽光が照射されない時間帯において、上記主波長の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光をほぼ連続して長日植物に照射するように配設されていればよく、それ以上は特段限定されない。なお、「ほぼ連続して」とは、連続した態様およびサイクリック照射を連続的に行う態様を含む。具体的には請求項1および4において説明したような構成であることを許容する。
さらに、光源は、包囲体の内外いずれに配置してもよいが、包囲体の内部に配置した方が包囲体を透過する際の光の損失を生じないとともに、長日植物に近いため、照射照度を高くして、照射効率を向上させることができるので、好適である。また、光源は、発光ダイオード、蛍光ランプおよびメタルハライドランプなどどのような光源であってもよい。なお、発光ダイオードの場合、多数の発光ダイオード素子をまとめて一体化した発光ダイオードモジュールを用いると取扱いが容易になるので、便利である。蛍光ランプの場合、比較的栽培規模の小さい長日植物栽培施設であれば、電球形蛍光ランプの方が使いやすいが、長日植物栽培規模が大きければ、直管形蛍光ランプなどを用いると効果的である。特に電球形蛍光ランプは、ねじ込み形ランプソケットを取り付け、当該ソケットに電球形蛍光ランプの口金をねじ込むだけで配設できるので、植物栽培装置の構造および取扱いが簡単、かつ、容易になる。
次に、温度管理手段は、太陽光が照射されない時間帯において、長日植物の周囲温度を5〜40℃に保持する手段であれば、暖房および冷房が可能な各種エアコンディショナ、換気扇、窓または扉などの通風手段といったようなものであってもよい。また、長日植物栽培施設が設置されている場所の緯度および稼動する季節により自然条件で長日植物の周囲温度を5〜40℃に保持することができれば、当該緯度および/または季節をもって温度管理手段が配設されていると見ることができる。
そうして、本発明においては、以上説明した構成を具備していることにより、長日植物のフィトクロームAの吸収波長域である遠赤色光を用いる際に効果的な長日植物栽培施設を提供でき、特に請求項1ないし3の各発明方法を実施するのに好適である。
請求項1の発明によれば、太陽光が照射されない時間帯、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nm、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に照射する工程を具備していることにより、開花到達日数が早く、草丈および節間長の成長が促進される長日植物の栽培方法を提供することができる。
請求項2の発明によれば、太陽光が照射される時間帯において、少なくとも白色光を長日植物に対して照射する第1の工程と、太陽光が照射されない時間帯、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nm、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に照射する第2の工程とを具備していることにより、長日植物の開花と草丈の成長をより一層促進する長日植物の栽培方法を提供することができる。
請求項3の発明によれば、加えて太陽光が照射されない時間帯に長日植物に照射する発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光は、発光ダイオードによって発生されることにより、所望の発光主波長帯のみの光を効率よく、しかも容易に得られるのに加えて、光照射装置がコンパクトになる、長寿命である、機械的強度が大きい、水銀などの環境負荷の大きい物質を用いていない、発光主波長の光に対する発光効率が高い長日植物の栽培方法を提供することができる。
請求項4の発明によれば、加えて太陽光が照射されない時間帯において長日植物に対して行われる発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光の照射が、1時間以下の非照射と非照射時間以上の照射とを1周期中に含むサイクリック照射によって行われることにより、長日植物の生育および開花が自然日長による栽培より促進されて遠赤色光を連続照射する場合に近い生育および開花の促進効果が得られ、しかも大幅な省電力を図ることができるので、連続照射に比較してランニングコストが低減される長日植物の栽培方法を提供することができる。
請求項5の発明によれば、施設構体と、太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nm、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して長日植物に対して照射するように施設構体に配設された人工光源と、長日植物の周囲温度を5〜40℃に保持する温度管理手段とを具備していることにより、長日植物のフィトクロームAの吸収波長域である遠赤色光を用いる際に効果的な長日植物栽培施設を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
図1ないし図3は、本発明の長日植物の栽培方法および長日植物栽培施設を実施するための第1の形態を示し、図1は長日植物栽培施設の概念図、図2は遠赤色光を発生する発光ダイオードの分光分布特性を示すグラフ、図3は発光ダイオードモジュールの側面図である。図1において、Hは長日植物栽培施設、Fは栽培ベッド、Pは長日植物である。
まず、長日植物栽培施設Hについて説明する。長日植物栽培施設Hは、施設構体1、支持枠2、光源3からなる。施設構体1は、外側枠組体からなり、長日植物栽培施設Hの輪郭を画成する。
支持枠2は、複数の光源3を長日植物栽培施設Hの天井側に支持するとともに、後述する実験の遂行のために、各光源3に対応する複数の処理区を区画するのに利用されている。そして、各処理区は、光反射性シート4によって区切られている。
光源3は、長日植物の遠赤色光の照射量が、光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように配設されている。そして、遠赤色発光の発光ダイオードからなり、図2に示すような分光分布特性を有しているとともに、支持枠2に下向きに支持され、各処理区に対向して配設されている。すなわち、光源3は、その発光主波長が740nmであるとともに放射エネルギーの殆どが遠赤色発光である。なお、極一部の放射エネルギーが波長700nmに近い赤色光であるが、その量は極めて少ない。
また、光源3は、図3に示すような平板状の発光ダイオードモジュールLMを構成している。すなわち、発光ダイオードモジュールLMは、多数の発光ダイオード素子LED、配線基板PCB、熱伝導性合成樹脂TCRおよびヒートシンクHSを具備している。多数の発光ダイオード素子LEDは、チップ状の表面実装形であり、配線基板PCBの表面に実装されている。配線基板PCBは、平板状をなしていて、プリント配線方式を採用している。熱伝導性合成樹脂TCRは、熱伝導性であると同時に絶縁性であり、多数の発光ダイオード素子LEDを実装した配線基板PCBの背面を被覆するように配設されている。また、熱伝導性合成樹脂TCRは、配線基板PCBの導電部を被覆してこれらを絶縁するように構成されている。ヒートシンクHSは、アルミニウム製の放熱フィンを形成していて、熱伝導性合成樹脂TCRに支持されているとともに、熱伝導性合成樹脂TCRを介して発光ダイオード素子LEDに熱結合している。
さらに、光源3を構成する発光ダイオードモジュールLMには、図示を省略している点灯回路が付設され、この点灯回路を介して電源に接続するように構成されている。なお、点灯回路は、多数の発光ダイオード素子LEDを付勢してこれを点灯するとともに、光源3の点滅を制御し、さらに多数の発光ダイオード素子LEDを外部信号に応じて調光制御することが可能なように構成されている。
栽培ベッドFは、人工光源3の下方に配置されて、長日植物Pを地面から離間させることによって床面を提供している。
長日植物Pは、植木鉢内に定植されたものを栽培ベッドF内に整列配置され、太陽光が照射される時間帯においては、施設構体1を透過した太陽光によって白色光が照射される。そして、太陽光が照射されない時間帯においては、光源3により連続して遠赤色光を照射される。
さらに、長日植物栽培施設Hは、図示を省略している暖房装置および冷房装置によって長日植物の周囲温度を5〜40℃の範囲内に保持できるように構成されている。
以下、実験結果について説明する。まず、実験仕様を以下に示す。
1.光源3などの仕様
(1)光源3:発光ダイオードモジュール(東芝ライテック(株)製)、分光分布特性は図2のとおり。
(2)光反射性シート4:(商品名:シルバーポリフィルム)
2.実験条件
(1)長日植物:シュッコンカスミソウ「ブリストルフェアリー」
(2)実験方法
(2−1)シュッコンカスミソウの苗を5号鉢に1株ずつ植えて3本仕立てにし、1処理区に9株ずつ供試した。処理区は、枠が幅80cm、奥行76cm、高さ113cmまたは160cmであり、発光ダイオードモジュールLMが支持枠2の天井部に位置するように設定した。また、栽培ベッドFから高さ90cmの位置に発光ダイオードモジュールLMが位置するように配置した。
1.光源3などの仕様
(1)光源3:発光ダイオードモジュール(東芝ライテック(株)製)、分光分布特性は図2のとおり。
(2)光反射性シート4:(商品名:シルバーポリフィルム)
2.実験条件
(1)長日植物:シュッコンカスミソウ「ブリストルフェアリー」
(2)実験方法
(2−1)シュッコンカスミソウの苗を5号鉢に1株ずつ植えて3本仕立てにし、1処理区に9株ずつ供試した。処理区は、枠が幅80cm、奥行76cm、高さ113cmまたは160cmであり、発光ダイオードモジュールLMが支持枠2の天井部に位置するように設定した。また、栽培ベッドFから高さ90cmの位置に発光ダイオードモジュールLMが位置するように配置した。
9:00から17:00まで自然光下で栽培し、17:00から翌朝の9:00まで連続して光源3により補光して24時間日長とした。試験は、2002年5月16日に処理を開始し、処理開始後20週目の10月9日に打ち切った。
処理区は、昼/夜温(6:00〜18:00/18:00〜6:00)が17/12℃、24/19℃、30/25℃の3段階の栽培温度で、太陽光が照射されない時間帯において、前記光源3を用いて光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続照射した。
3.実験結果
以下、図4ないし図7を参照して、実験結果を説明する。
3.実験結果
以下、図4ないし図7を参照して、実験結果を説明する。
図4ないし図7は、本発明の長日植物の栽培方法を実施するための第1の形態における実験結果を示し、図4は葉数の変化を示すグラフ、図5は開花側枝の草丈の変化を示すグラフ、図6は開花側枝の草丈の変化を示すグラフ、図7は開花側枝率の変化を示すグラフである。また、各図において、曲線A、B、Cは、その順に照射光量が大きい供試品を示している。
(1)開花側枝の葉数:図4に示すような結果が得られた。図から理解できるように、照射光量の影響およびその大小の影響が殆どなかった。なお、図示しないが、温度によって推移が異なった。
(2)開花側枝の草丈:図5に示すような結果が得られた。図から理解できるように、光照射による効果が顕著に現れ、照射される光量が少なくても十分な草丈の伸張促進効果が得られた。また、光量が多いほど草丈は大きくなった。さらに、図示しないが、温度が低い方が草丈が大きくなり、温度が高くなるにしたがって草丈が小さかった。
(3)開花側枝の節間長:図6に示すような結果が得られた。図から理解できるように、光照射による効果が顕著に現れ、照射される光量が少なくても十分な節間長の伸張促進効果が得られた。また、光量が多いほど節間長は大きくなった。さらに、図示しないが、温度が低い方が節間長の成長が大きくなり、温度が高くなるにしたがって節間長が小さかった。
(4)開花側枝率:図7に示すような結果が得られた。図から理解できるように、照射光量が大きいほど開花側枝率の高まりが大きかった。また、図示しないが、開花開始時期は、温度が高いほど早く、照射光量の影響は殆どなかった。
(5)切花品質:実験の結果、本発明方法により得られた切花は、品質が優れていた。
(1)開花側枝の葉数:図4に示すような結果が得られた。図から理解できるように、照射光量の影響およびその大小の影響が殆どなかった。なお、図示しないが、温度によって推移が異なった。
(2)開花側枝の草丈:図5に示すような結果が得られた。図から理解できるように、光照射による効果が顕著に現れ、照射される光量が少なくても十分な草丈の伸張促進効果が得られた。また、光量が多いほど草丈は大きくなった。さらに、図示しないが、温度が低い方が草丈が大きくなり、温度が高くなるにしたがって草丈が小さかった。
(3)開花側枝の節間長:図6に示すような結果が得られた。図から理解できるように、光照射による効果が顕著に現れ、照射される光量が少なくても十分な節間長の伸張促進効果が得られた。また、光量が多いほど節間長は大きくなった。さらに、図示しないが、温度が低い方が節間長の成長が大きくなり、温度が高くなるにしたがって節間長が小さかった。
(4)開花側枝率:図7に示すような結果が得られた。図から理解できるように、照射光量が大きいほど開花側枝率の高まりが大きかった。また、図示しないが、開花開始時期は、温度が高いほど早く、照射光量の影響は殆どなかった。
(5)切花品質:実験の結果、本発明方法により得られた切花は、品質が優れていた。
図8は、本発明の長日植物の栽培方法を実施するための第2の形態における蛍光ランプの分光分布特性を示すグラフである。すなわち、本形態は、発光主波長が700〜800nmの遠赤色光を発生する光源として蛍光ランプを用いている。すなわち、蛍光ランプは、その蛍光体層が鉄付活アルミン酸リチウム蛍光体を主体として構成されており、波長740nmに発光ピークを有する遠赤色発光を行う。しかし、この蛍光ランプは、放電媒体の低圧水銀蒸気放電によって波長254nmの紫外光に加えて青色光および緑色光の輝線スペクトルがわずかな量だが副次的に発生する。なお、波長254nmの紫外光は、蛍光体層を照射して遠赤色光に波長変換される。なお、蛍光ランプによる照射は、連続照射により行われる。
図9は、本発明の長日植物の栽培方法を実施するための第2の形態における実験結果のうち開花側枝率の変化を示すグラフである。図において、横軸は処理開始後週数(週)を、縦軸は開花側枝率(%)を、それぞれ示している。なお、図中、曲線Dは14W形蛍光ランプ、曲線Eは28W形蛍光ランプ、曲線Eは56W形蛍光ランプを用いて光照射した場合のデータを示している。したがって、各曲線は、蛍光ランプのW数に相応して照射される光量が大きいことを示している。
図から理解できるように、光量が大きい方が開花側枝率の立ち上がりが早くなるとともに、開花側枝率が大きくなった。
図10は、本発明の長日植物の栽培方法を実施するための第3の形態における実施例および比較例の実験結果のうち、開花率の変化を示すグラフである。本形態は、請求項4に規定する発明に対応するものであり、発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光の照射を、1時間以下の非照射と非照射時間以上の照射とを1周期中に含むサイクリック照射によって行う。なお、図において、横軸は処理開始後の経過週を、縦軸は開花率(%)を、それぞれ示している。また、図中の複数の曲線は、そこに付された符号と、以下に示す表1中に付された符号とがそれぞれ対応している。そして、図および表において、いずれも○で囲んだ符号2、3および4は実施例であり、符号1、5、6および7は比較例である。
本実験の条件は、次のとおりである。すなわち、長日植物としてシュッコンカスミソウ「ブリストルフェアリー」を使用し、これに対して太陽光および遠赤色光を照射して経過週に対する開花率を調査した。太陽光は、午前9時から午後5時までの間にその日の天候に応じて照射された。遠赤色光は、発光ダイオードから放射され、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように予め設定されている。この遠赤色光を午後5時から翌日午前9時までの時間帯に実施例および比較例に対してそれぞれ個別に決定されていて、表1に示す照射条件にしたがって照射された。また、実験環境は、日中温度24℃、夜間19℃に温度管理が行われた。
1…施設構体、2…支持枠、3…光源、4…光反射性シート、F…栽培ベッド、H…長日植物栽培施設、P…長日植物
Claims (5)
- 太陽光が照射されない時間帯で、かつ、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に対して照射する工程を具備していることを特徴とする長日植物の栽培方法。
- 太陽光が照射される時間帯において、少なくとも白色光を長日植物に対して照射する第1の工程と;
太陽光が照射されない時間帯で、かつ、周囲温度が5〜40℃において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して前記長日植物に対して照射する第2の工程と;
を具備していることを特徴とする長日植物の栽培方法。 - 太陽光が照射されない時間帯に長日植物に照射する発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光は、発光ダイオードによって発生されることを特徴とする請求項1または2記載の長日植物の栽培方法。
- 太陽光が照射されない時間帯において長日植物に対して行われる発光主波長が700〜800nmにある遠赤色光の照射は、1時間以下の非照射と非照射時間以上の照射とを1周期中に含むサイクリック照射によって行われることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の長日植物の栽培方法。
- 長日植物を収容する施設構体と;
太陽光が照射されない時間帯において、発光主波長が700〜800nmにあり、かつ、上記主波長域の光量子束密度が0.04μmol・m−2・s−1以上になるように遠赤色光を連続して長日植物に対して照射するように施設構体に配設された人工光源と;
長日植物の周囲温度を5〜40℃に保持する温度管理手段と;
を具備していることを特徴とする長日植物栽培施設。
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