JP2011057903A - ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】衝撃強度、流動性に優れ、フォギング性の抑制が図られ、さらには滞留安定性にも優れたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドであって、当該ポリアミドの環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gであるポリアミドと、
ポリフェニレンエーテルと、
前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤と、を含むポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及びこのポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物からなる成形品に関する。
ポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイは、従来より、自動車外装材料及び自動車エンジンルーム内のジャンクションブロック、ランプ周り部品等、多種多様な用途に使用されている。
一方、近年においては、自動車のヘッドランプが、より高輝度のディスチャージタイプへ移行しており、ランプ周りの温度が高くなっている。
従来の多くのポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイにおいて、ポリアミドとしてポリアミド6又はポリアミド6,6といった比較的低融点のポリアミドが使用されており、このようなポリアミド−ポリフェニレンエーテルアロイでは、上記ランプ周りの温度に対する耐熱性が不十分である。
このようなアロイの耐熱性を向上させるために、例えば、特許文献1〜7には、ポリアミド−ポリフェニレンエーテルとして用いるポリアミド材料として、特定の融点の高い芳香族ポリアミドを使用する技術が開示されており、特許文献8には、脂環構造を有するポリアミドを用いる技術が開示されている。
特開2000−212433号公報 特開2000−212434号公報 特開2004−083792号公報 米国特許出願公開第2005/0038159号明細書 米国特許出願公開第2005/0038171号明細書 米国特許出願公開第2005/0038191号明細書 米国特許出願公開第2005/0038203号明細書 国際公開第2008/149862号パンフレット
しかしながら、これらの従来技術で得られる樹脂組成物を、自動車ランプ周りの部品や液晶プロジェクターランプ周りの部品に適用すると、加熱時に発生した低分子量成分がガラス内面に析出し、ランプの照度を低下させる現象(以下、「フォギング現象」と呼ぶことがあり、フォギング現象を発生させる特性を「フォギング性」と呼ぶ。)が発生し、実用に耐えないという問題がある。
また、融点の高いポリアミドを使用する場合には、加工温度も高くしなければならないため、成形加工時の滞留時間によっては、物性が変化する等の課題もある。
本発明が解決しようとする課題は、衝撃強度、流動性に優れるとともに、上述したフォギング性を抑制し、また成形加工時の滞留安定性にも優れたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させた、環状アミノ末端量が30μ当量/g以上60μ当量/gであるポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤と、を含むポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、
(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンと、
を重合させたポリアミドであって、当該ポリアミドの環状アミノ末端量が、30〜60μ当量/gであるポリアミドと、
ポリフェニレンエーテルと、
前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤と、
を、含むポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔2〕
前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記ポリアミド80〜40質量部と、前記ポリフェニレンエーテル20〜60質量部と、を含む、前記〔1〕に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔3〕
前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔4〕
前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔5〕
前記ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔6〕
前記ポリアミドの融点が270〜350℃である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔7〕
前記ポリアミドにおける前記脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率が50〜85%である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔8〕
前記ポリアミドのアミノ末端量が、20〜100μ当量/gである、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔9〕
前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、さらに結晶造核剤を0.01〜1質量部含む、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔10〕
前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記相溶化剤を0.01〜8質量部含む、前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔11〕
前記相溶化剤が、マレイン酸又はその無水物である、前記〔1〕乃至〔10〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔12〕
強化無機フィラーを、さらに含む前記〔1〕乃至〔11〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔13〕
前記強化無機フィラーを、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物100質量%に対し、10〜60質量%含む、前記〔12〕に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔14〕
前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、さらに衝撃改良材を10〜70質量部含む、前記〔1〕乃至〔13〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
〔15〕
前記〔1〕乃至〔14〕のいずれか一に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて成形した成形品。
〔16〕
SMT対応部品である前記〔15〕に記載の成形品。
〔17〕
ランプリフレクター部品である前記〔15〕に記載の成形品。
本発明によれば、衝撃強度、流動性に優れるとともに、フォギング性の抑制が図られ、また滞留安定性にも優れたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物及び成形品を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物]
本実施形態のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物と言う。」は、ポリアミドと、ポリフェニレンエーテルと、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤とを含有するものである。
以下、これらについて詳細に説明する。
〔ポリアミド〕
本実施形態において用いられるポリアミドは、下記(a)及び(b)を重合させたポリアミドである。
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸。
(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミン。
本実施形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
((a)ジカルボン酸)
本実施の形態に用いられる(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むことにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
(a−1)脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10、好ましくは炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
脂環族ジカルボン酸における、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、低吸水性、及び強度などの観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であることが好ましい。
脂環族ジカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し、一定の比率になることやシス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとしては、トランス体/シス体比がモル比にして、50/50〜0/100であることが好ましく、40/60〜10/90であることがより好ましく、35/65〜15/85であることがさらに好ましい。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。
本実施形態に用いられる(a)ジカルボン酸の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸における、種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を共重合する場合、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性などの観点で、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
中でも、耐熱性及び低吸水性などの観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。
中でも、耐熱性などの観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。
脂環族ジカルボン酸の割合は50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは70〜100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。
脂環族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であること、すなわち50モル
%以上であることにより、耐熱性、低吸水性、及び強度などに優れるポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であり、好ましくは0〜40モル%である。
(a)ジカルボン酸として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、(a−1)脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸0.1〜50モル%であることが好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が60〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸5〜40モル%であることがより好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が80〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸5〜20モル%であることがさらに好ましい。
本実施形態において、(a)ジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
(b)ジアミン
本実施形態に用いられる(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含む。
(b)ジアミンとして、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むことにより、流動性、靭性、及び強度などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
ジアミンにおける主鎖から分岐した置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミンなどの炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
上記主鎖から分岐した置換基をもつジアミンは、それぞれ、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2,4,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2,4−ジメチル−1,8−ジアミノオクタンとも記される。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、耐熱性及び強度などの観点で、2−メチルペンタメチレンジアミンであることが好ましい。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に用いられる(b)ジアミンの(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミンなどが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミンなどの芳香族構造を有するジアミンが挙げられる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度などの観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらにより好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミンとして、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン中の(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。より好ましくは、80〜100モル%であり、さらに好ましくは85〜100モル%であり、さらにより好ましくは90〜100モル%であり、よりさらに好ましくは100モル%である。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、及び強度に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
(a)ジカルボン酸の添加量と(b)ジアミンの添加量は、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、0.9〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸
ポリアミドは、靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドであってもよい。
本実施形態に用いられる(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
ポリアミドが、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を重合させたポリアミドである場合には、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸がより好ましい。
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)などが挙げられる。
中でも、靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ラウロラクタムなどが好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸などが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などが挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸なども挙げられる。
ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)は、上記(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の各モノマー全体のモル量に対して、0〜20モル%であることが好ましい。
(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンからポリアミドを重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加して重合することができる。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられ、熱安定性の観点で、モノカルボン酸、及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。
上記モノカルボン酸は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン;並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;ピロリジン、ピペリジン、3−メチルピペリジン等の環状アミン;などが挙げられる。
モノアミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンの組み合わせは、下記に限定されるものではなく、(a−1)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミンの組み合わせが好ましく、(a−1)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミンがより好ましい。
これらの組み合わせの(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンをポリアミドの成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度に優れることを同時に満足するポリアミドとすることができる。
ポリアミドにおいて、脂環族ジカルボン酸構造は、トランス体及びシス体の幾何異性体として存在する。
ポリアミド中における脂環族ジカルボン酸構造のトランス異性体比率は、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス体である比率を表し、トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、トランス体/シス体比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸をポリアミドの重合反応の原料に用いることが好ましいが、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンの重合により得られるポリアミドとしては、トランス異性体比率が50〜85モル%であることが好ましい。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性及び強度に優れるという特徴に加えて、高いTgによる熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性を同時に満足するという性質を持つ。
ポリアミドのこれらの特徴は、(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、(b)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミンの組み合わせからなり、かつトランス異性体比率が50〜85モル%であるポリアミドで特に顕著である。
ポリアミドにおける脂環族ジカルボン酸単位のトランス異性体比率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つ脂肪族ジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含む、ポリアミドの製造方法により製造できる。
ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下に例示する方法が挙げられる:
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)。
3)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)。
4)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)。
5)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いたて重合させる方法「溶液法」。
ポリアミドの製造方法において、ポリアミドの流動性の観点から、脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率を85%以下に維持して重合することが好ましく、特に、80%以下に維持することにより、さらに色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドを得ることができる。
ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くしたりする必要が生ずるが、その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下する場合がある。
ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を防止することができるため、脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好適である。
ポリアミドを製造する方法としては、脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率を85%以下に維持することが容易であるため、また、得られるポリアミドの色調に優れるため、1)熱溶融重合法、及び2)熱溶融重合・固相重合法によりポリアミドを製造することが好ましい。
ポリアミドの製造工程における重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
ポリアミドの重合工程において用いる重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載する連続式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒としてポリアミド成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物を押し出してストランドとし、冷却、カッティングし、ペレットとする。
固相重合方法としては、例えば、窒素気流下又は減圧下にて、ポリアミドの融点以下の温度にて加熱することで、溶融させずに脱水縮合させる方法が挙げられる。
このとき、装置内部に攪拌機を取り付けて攪拌してもよいし、タンブラーのように装置自体を回転させることにより攪拌してもよい。攪拌しながら加熱することで、効率よく重合することができる。
ポリアミドのポリマー末端としては、1)アミノ末端、2)カルボン酸末端、3)環状アミノ末端、4)末端封止剤による末端、5)その他の末端でが挙げられる。
ポリアミドのポリマー末端とは、ジカルボン酸とジアミン、場合によりラクタムやアミノカルボン酸が、アミド結合により重合した重合体のポリマー鎖末端部分を意味する。
1)アミノ末端は、ポリマー末端が、アミノ基(−NH2基)であることを意味し、ポリマー鎖末端が原料のジアミンに由来する。
2)カルボン酸末端は、ポリマー末端が、カルボキシル基(−COOH基)であることを意味し、ポリマー鎖末端が原料のジカルボン酸に由来する。
3)環状アミノ末端は、ポリマー末端が環状アミノ基であることを意味する。
なお、環状アミノ基は、下記一般式で表される基である。
下記式中のRは、ピペリジン環を構成する炭素に結合する置換基を示す。
この置換基に特に制限はないが、例えば、水素原子、並びにメチル基、エチル基、及びt−ブチル基等のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、一置換として例示しているが、二置換であっても、三置換以上の多置換であってもよい。
これらの構造は、モノマーとしてペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含む場合にとることがある。
4)末端封止剤による末端は、重合時に添加した末端封止剤で、ポリマー末端が封止されていることを意味し、カルボン酸又はアミンなどの末端封止剤に由来する構造を有する。
5)その他の末端は、1)から4)に分類されないポリマー末端であり、アミノ末端の脱アンモニア反応により生成した末端や、カルボン酸末端から脱炭酸反応して生成した末端などが挙げられる。
ポリアミドの環状アミノ末端量は、30〜60μ当量/gであり、35〜55μ当量/gであることが好ましい。
環状アミノ末端量が上記範囲内であることにより、ポリアミドの靭性、耐加水分解性、及び加工性を向上することができ、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル組成物のフォギング性の向上が図られる。
環状アミノ末端量は、単位重量当りの環状アミノ末端のモル数を意味する。
環状アミノの末端量は、下記実施例に記載するように、1H−NMRを用いて測定することができる。
例えば、窒素の複素環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素の積分比を基に算出することができる。
環状アミノ末端は、環状アミンとカルボン酸末端が脱水反応することによって生成するか、アミノ末端がポリマー分子内で脱アンモニア反応することによって生成する。
環状アミンは末端封止剤として添加することも可能であるし、ポリアミドの原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンが脱アンモニア反応し環化することにより、重合反応系中で生成することも可能である。
環状アミノ末端は、原料のジアミンに由来する末端であることが好ましい。末端封止剤として環状アミンを重合初期に添加することは低分子量のカルボン酸末端を重合初期の段階で封止することになるため、ポリアミドの重合反応速度を低くし結果として高分子量体が得られにくい原因になるのに対して、反応の途中で生成する環状アミンであれば重合後期に生成することによりポリアミドの高分子量体を得ることはより容易になる。
環状アミノ末端を生成する環状アミンはポリアミドの重合反応の際に副生物として生成する。この環状アミンの生成については、反応温度が高いほど反応速度も向上する。
ポリアミドの環状アミノ末端量を一定量にするためには、環状アミンの生成を促す必要があり、ポリアミドの重合の反応温度は300℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがより好ましい。
これら環状アミノ末端をある一定量に調整するためには、重合温度、重合工程中の上記300℃以上の時間や、環状構造を形成するアミンの添加量等を適宜調整することで制御することができる。
アミノ末端量は、20〜100μ当量/gであることが好ましく、25〜70μ当量/gであることがより好ましい。
アミノ末端量が上記の範囲内であることにより、ポリアミドの耐加水分解性、及びポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の熱滞留安定性を向上することができる。
アミノ末端量は、単位重量当りのアミノ末端(−NH2)のモル数を意味する。
アミノ末端量は、下記実施例に記載する方法を用いて測定することができる。
ポリアミドの分子量としては、25℃の相対粘度ηrを指標とした。
ポリアミドの分子量は、靭性及び強度などの機械物性並びに成形性などの観点で、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、1.5〜7.0であることが好ましく、1.7〜6.0であることがより好ましく、1.9〜5.5であることがさらに好ましい。
25℃の相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6810に準じて行うことができる。
ポリアミドの融点は、Tm2として、耐熱性の観点から、270〜350℃であることが好ましい。融点Tm2は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。また、融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
ポリアミドの融点Tm2を270℃以上とすることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、ポリアミドの融点Tm2を350℃以下とすることにより、押出、成形などの溶融加工でのポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
ポリアミドの融解熱量ΔHは、耐熱性の観点から、10J/g以上であることが好ましく、14J/g以上であることがより好ましく、18J/g以上であることがさらに好ましく、20J/g以上であることがさらにより好ましい。
ポリアミドの融点(Tm1又はTm2)及び融解熱量ΔHの測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
ポリアミドのガラス転移温度Tgは、90〜170℃であることが好ましい。
ガラス転移温度は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましい。
また、ガラス転移温度は、170℃以下であることが好ましく、165℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることがさらに好ましい。
ポリアミドのガラス転移温度を90℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。また、ポリアミドのガラス転移温度を170℃以下とすることにより、外観のよい成形品を得ることができる。
ガラス転移温度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
ガラス転移温度の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
〔ポリフェニレンエーテル〕
ポリフェニレンエーテルは、下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有する、単独重合体及び/又は共重合体である。
ここで、上記式(1)中、Oは酸素原子、各RIは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、第一級若しくは第二級の炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、炭素数1〜7のハロアルキル基、炭素数1〜7のアミノアルキル基、炭素数1〜7のヒドロカルビロキシ基もしくはハロヒドロカルビロキシ基(少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てている)からなる群から選ばれるいずれかを示す。
ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)が挙げられる。
さらに、そのポリフェニレンエーテルとして、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、特公昭52−17880号公報に記載されている2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
これらの中で特に好ましいポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体、又はこれらの混合物が挙げられる。
2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体を使用する場合の各単量体ユニットの比率については、ポリフェニレンエーテル共重合体全量を100質量%としたときに、2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールの含有量が10〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは、2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールの含有量が15〜25質量%、さらに好ましくは20〜25質量%である。
また、2,6−ジメチル−1,4−フェノールと2,3,6−トリメチル−1,4−フェノールとの共重合体の好ましい分子量分布[重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)]は、2.5〜4.0である。その分子量分布は、より好ましくは2.8〜3.8であり、さらに好ましくは3.0〜3.5である。
これら重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
具体的には、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21(カラム:昭和電工(株)製K−805Lを2本直列、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、溶媒流量:1.0ml/min、サンプル濃度:0.1質量%クロロホルム溶液)で標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550)を用いて検量線を作成し、測定する。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmである。
ポリフェニレンエーテルの製造方法は、公知の方法であれば特に限定されるものではない。
その製造方法として、例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、特開昭50−51197号公報、特公昭52−17880号公報及び同63−152628号公報等に記載された製造方法が挙げられる。
本実施形態で用いられるポリフェニレンエーテルの還元粘度(ηsp/c:0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.15〜0.70dL/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.60dL/g、より好ましくは0.40〜0.55dL/gである。
ポリフェニレンエーテルとしては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドした混合物を用いてもよい。
その混合物としては、例えば、還元粘度0.45dL/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dL/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物、還元粘度0.40dL/g以下の低分子量ポリフェニレンエーテルと還元粘度0.50dL/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリフェニレンエーテルの安定化のために公知の各種安定剤も好適に用いられる。
安定剤の例としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の金属系安定剤;ヒンダードフェノール系安定剤、リン酸エステル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤等の有機安定剤が挙げられる。樹脂組成物中のこれら安定剤の好ましい配合量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して5質量部未満である。
更に、ポリフェニレンエーテルに添加することが可能な他の公知の添加剤等も、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10質量部未満の量で添加してもよい。
上述した本実施形態の樹脂組成物を構成するポリアミドとポリフェニレンエーテルとの好ましい質量比は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量を100質量部として、ポリアミド20〜90質量部、ポリフェニレンエーテル10〜80質量部であり、より好ましくはポリアミド30〜80質量部、ポリフェニレンエーテル20〜70質量部であり、さらに好ましくはポリアミド40〜80質量部、ポリフェニレンエーテル20〜60質量部であり、さらにより好ましくは、ポリアミド50〜65質量部、ポリフェニレンエーテル35〜50質量部である。
これにより、衝撃強度、流動性に優れるとともに、フォギング性の抑制が図られ、また滞留安定性にも優れたポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる。
〔ポリアミドとポリフェニレンエーテルの相溶化剤〕
ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤としては、国際公開第WO01/81473号パンフレット中に詳細に記載されているものを使用できる。
例えば、マレイン酸、マレイン酸無水物(無水マレイン酸)、フマル酸及びクエン酸からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、マレイン酸及び/又はその無水物がより好ましい。
特に、相溶化剤としてマレイン酸及び/又はその無水物を選択することで、樹脂組成物のウェルド強度を飛躍的に向上させることが可能となるとともに、成形品の表面の光沢度(グロス値)が向上するといった効果が得られる。
ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤の樹脂組成物への配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、0.01〜8質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部がさらに好ましい。
樹脂組成物としての耐衝撃性を低下させず、後述するポリフェニレンエーテルの分散粒子径を適度な分散径以下の大きさに制御するためには、相溶化剤の配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましい。
射出成形時の金型内流動性(スパイラルフロー距離)の悪化を抑制し、ポリフェニレンエーテルの分散粒子径を適度な分散径以上の大きさに制御するためには、相溶化剤の配合量は8質量部以下であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、上記各樹脂の好ましい分散形態は、ポリアミドが連続相を形成し、ポリフェニレンエーテルが分散相を形成する分散形態である。
特に透過型電子顕微鏡で観察した際に、ポリフェニレンエーテル粒子が平均粒子径0.1〜5μmの分散相として存在することが好ましい。このとき、ポリフェニレンエーテル粒子の平均粒子径は、0.3〜3μmであることがより好ましく、0.5〜2μmであることがさらに好ましい。
樹脂組成物の外観を悪化させない為には、ポリフェニレンエーテル粒子の分散粒子径を、上述した数値範囲内にすることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における分散相のポリフェニレンエーテル粒子の平均粒子径は、数平均粒子径として電子顕微鏡写真法により求めることができ、下記のようにして算出できる。
樹脂組成物のペレット又は成型品から切り取った超薄切片の透過電子顕微鏡写真(5000倍)を撮影し、分散粒子径di、粒子数niを求め、ポリフェニレンエーテル粒子の数平均粒子径(=Σdini/Σni)を算出する。
この場合、粒子形状を球形とみなせない場合には、その短径と長径とを測定し、両者の和の1/2を粒子径とみなす。平均粒子径の算出には最低1000個の粒子径を測定する。
〔ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のその他の添加剤〕
(結晶造核剤)
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミドの結晶性を高める目的で結晶造核剤を含有してもよい。
結晶造核剤の含有量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましい。
結晶造核剤としては特に制限はないが、例えば、タルク、シリカ、グラファイト、窒化ホウ素などの無機微粒子;酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物;カプロラクタム二量体などのポリアミドオリゴマーが挙げられる。これらの中では、タルク、シリカ、窒化ホウ素などの無機微粒子が好ましく、特にタルクが好ましい。結晶造核剤としてタルクを用いる際、タルクの平均粒子径は30μm以下であることが好ましいく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径の下限値は1μmであることが好ましい。
結晶造核剤が存在することで、樹脂組成物の吸水率を大幅に低下させることが可能となる。また、本実施形態の樹脂組成物からなる成形体の加熱時の発泡現象を抑制することもできる。
結晶造核剤を、ポリアミド相中に、樹脂組成物を製造する前段階として予め存在させておくと、上述の各効果をより高めるだけではなく、成形品の耐熱性の指標である荷重たわみ温度を向上させることも可能となるので好ましい。
結晶造核剤を樹脂組成物のポリアミド相中に存在させる方法としては特に制限はなく、単軸押出機、二軸押出機又はニーダー等でポリアミドと結晶造核剤とを溶融混練する方法、ポリアミドの重合段階で結晶造核剤を添加する方法、ヘンシェルミキサー等の強制混合機でポリアミドと結晶造核剤とを混合した後、その混合物を圧縮してマスターバッチとする方法が挙げられる。
結晶造核剤を予め存在させておく方法は、もちろんこれらに制限されるものではない。
結晶造核剤としての効果があるか否は、示差走査熱量(DSC)測定装置を用いて、結晶造核剤を含むポリアミドの結晶化ピーク温度と、結晶造核剤を含まないポリアミドの結晶化ピーク温度とを測定し、比較することで確認できる。
具体的な結晶化ピーク温度の測定方法としては、ポリアミドの融点以上の温度に試料をいったん加熱し、溶融状態にして、少なくとも10分間保持した後、その試料を20℃/minの降温速度で冷却し、その冷却プロセスで観測される発熱ピークのピークトップを測定する方法が例示できる。両者のピークトップの温度差が2℃以上であれば、結晶造核剤の効果が認められると判断できる。その効果が認められる結晶造核剤を、5℃以上のピークトップの温度差の生じる量で上記ポリアミドに配合することが、より望まれる態様である。
(その他のポリアミド)
本実施形態の樹脂組成物中には、上述した(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミド以外の、その他のポリアミドを本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
その他のポリアミドとしては、脂肪族ポリアミドが挙げられる。
具体的には、炭素数4〜8の脂肪族ジアミン単位と炭素数4〜8の脂肪族ジカルボン酸単位とからなる脂肪族ポリアミド、炭素数6〜8のラクタム単位からなる脂肪族ポリアミド、及びアミノカルボン酸単位からなる脂肪族ポリアミドからなる群より選ばれる1種以上の脂肪族ポリアミドが好ましい。これにより、耐熱性の制御や、機械的物性と成形流動性とのバランスの向上という効果が得られる。
具体的には、脂肪族ポリアミドとして、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6/6,6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6/6,6、ポリアミド6/6,12が挙げられる。
あるいは、複数の脂肪族ポリアミドを押出機等で共重合化して得られる脂肪族ポリアミドであってもよい。好ましい脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11、及びポリアミド12からなる群より選ばれる1種以上の脂肪族ポリアミドが挙げられ、特にポリアミド6、ポリアミド6,6、又はこれら両者の混合物がより好ましい。
(リン元素)
本実施形態の樹脂組成物は、リン元素を含むことが好ましい。
リン元素の含有量は、樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、1〜500質量ppmが好ましく、5〜250質量ppmがより好ましく、50〜200質量ppmがさらに好ましい。
なおリン元素の含有量については、樹脂組成物を用いた成形品の製造工程において成形機での滞留安定性を悪化させないために、リン元素の含有量を1質量ppm以上とすることが好ましく、樹脂組成物の流動性(ここではMVR等の溶融流動時の流動性)の悪化を抑制するために、リン元素の含有量を500質量ppm以下とすることが好ましい。
リン元素は、1)リン酸類、亜リン酸類及び次亜リン酸類、2)リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類及び次亜リン酸金属塩類、並びに3)リン酸エステル及び亜リン酸エステル等の、リン酸化合物、亜リン酸化合物、及び次亜リン酸化合物からなる群より選ばれる1種以上のリン元素含有化合物として添加されることが好ましい。
上記1)のリン酸類、亜リン酸類及び次亜リン酸類としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸が挙げられる。
上記2)のリン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類及び次亜リン酸金属塩類としては、例えば、上記1)のリン元素含有化合物と、周期律表第1族及び第2族の金属、マンガン、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、ジアミンとの塩が挙げられる。
上記3)のリン酸エステル及び亜リン酸エステルは下記一般式で表される。
リン酸エステル;(ORinPO(OH)3-n
亜リン酸エステル;(OORinP(OH)3-n
上記式中、nは1、2又は3を表し、ORiはアルキル基、フェニル基、又はそれらの基の一部を炭化水素基などで置換した基からなる群から選ばれるいずれかを表す。
nが2以上の場合、上記一般式中の、複数の(ORiO)基は同じでも異なっていてもよい。
上記ORiとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ステアリル基、オレイル基などの脂肪族基;フェニル基、ビフェニル基などの未置換の芳香族基;ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基などの置換基を有する芳香族基が挙げられる。
本実施形態で添加できる好ましいリン元素含有化合物は、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類及び次亜リン酸金属塩類からなる群より選ばれる1種以上である。特に、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸からなる群より選ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2族の金属、マンガン、亜鉛、及びアルミニウムからなる群より選ばれる金属との塩であるリン化合物が好ましく、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸からなる群より選ばれるリン化合物と周期律表第1族の金属とからなる金属塩がより好ましく、亜リン酸又は次亜リン酸と周期律表第1族の金属とからなる金属塩がさらに好ましく、次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)又はその水和物(NaH2PO2・nH2O)がさらにより好ましい。
また、リン酸エステルとしては、フェニルホスホン酸が特に好ましい。
上述したリン元素含有化合物も、上述した結晶造核剤と同様に、予めポリアミドの相中に存在させておくことが好ましい。
リン元素含有化合物を予めポリアミドの相中に存在させることにより、流動性と耐衝撃性とのバランスをより高めることが可能となる。
これらリン元素含有化合物を予めポリアミドの相中に存在させておく方法としては、例えば、ポリアミドの製造段階でリン元素含有化合物を添加する方法、ポリアミドの相中にリン元素含有化合物を溶融混練しマスターペレットを作製することで、予め存在させておく方法等が挙げられる。
リン元素含有化合物を予めポリアミドの相中に存在させる場合、ポリアミドの相中におけるリン元素含有化合物の量は、リン元素含有化合物を含むポリアミドを100質量%としたとき、リン元素として1〜500質量ppmが好ましく、30〜400質量ppmがより好ましく、150〜400質量ppmがさらに好ましい。
樹脂組成物中及びポリアミドの相中におけるリン元素の定量は、例えば、測定装置としてThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により、波長213.618(nm)で行うことが可能である。
(金属系安定剤)
また、本実施形態の樹脂組成物において、低フォギング特性を更に高める目的で、特開平1−163262号公報に記載されているような金属系安定剤を使用することが好ましい。
樹脂組成物中に金属系安定剤を配合することにより、フォギングの発生を効果的に抑制することができる。
金属系安定剤としては、例えば、ヨウ化銅、塩化第二銅、酢酸銅、ステアリン酸セリウムが挙げられる。それらの中でも、ヨウ化銅、酢酸銅等に代表される銅化合物がより好ましく、ヨウ化銅がさらに好ましい。
樹脂組成物中の上記銅化合物の好ましい下限の配合量は、樹脂組成物中のポリアミドの全量を100質量%としたとき、銅元素として10質量ppmであり、より好ましくは50質量ppmであり、さらに好ましくは100質量ppmである。好ましい上限の配合量は、1000質量ppmであり、より好ましくは800質量ppmであり、さらに好ましくは500質量ppmである。
銅元素の定量は、リン元素の定量同様に、例えば、装置としてThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により行うことができる。
また、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等に代表されるハロゲン化アルキル金属化合物も金属系安定剤として好適に使用することができ、銅化合物とハロゲン化アルキル金属化合物とを併用して樹脂組成物に添加することが好ましい。
(衝撃改良材)
本実施形態の樹脂組成物には、耐衝撃性を更に向上させる目的で、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して10〜70質量部の量の衝撃改良材を添加してもよい。
衝撃改良材としては、例えば、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックとからなるブロック共重合体及びその水素添加物、並びにエチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」とは、当該ブロックにおいて、少なくとも50質量%以上が芳香族ビニル化合物単位であるブロックを指す。この場合、芳香族ビニル化合物単位は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましい。
また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックにおける「主体とする」に関しても同様で、少なくとも50質量%以上が共役ジエン化合物単位であるブロックを指すものとし、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上が共役ジエン化合物単位のブロックである。
この場合、例えば、芳香族ビニル化合物ブロック中にランダムに少量の共役ジエン化合物又は他の化合物単位が結合されているブロックの場合であっても、該ブロック中の50質量%以上が芳香族ビニル化合物単位から形成されていれば、芳香族ビニル化合物を主体とするブロック共重合体であるものとみなす。また、共役ジエン化合物の場合においても同様である。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でもスチレンが特に好ましい。
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。それらの中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。
ブロック共重合体の共役ジエン化合物ブロック部分のミクロ構造は、1,2−ビニル含量、又は1,2−ビニル含量と3,4−ビニル含量との合計量が、5〜80%であることが好ましく、10〜50%であることがより好ましく、15〜40%であることがさらに好ましい。
上記ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロック[A]と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック[B]とが、A−B型、A−B−A型、又はA−B−A−B型から選ばれる結合形式を有するブロック共重合体であることが好ましく、これらの混合物であってもよい。これらの中でも、A−B−A型、A−B−A−B型、又はこれらの混合物がより好ましく、A−B−A型がさらに好ましい。
また、上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、水素添加されたブロック共重合体であることがより好ましい。水素添加されたブロック共重合体とは、上述の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を水素添加処理することにより、もとの共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの脂肪族二重結合のうち、0%を超えて100%以下の範囲を水素添加したものをいう。この水素添加されたブロック共重合体の水素添加率(上記脂肪族二重結合の水素添加された割合)は80%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
上述したこれらのブロック共重合体は、水素添加されていないブロック共重合体と水素添加されたブロック共重合体との混合物であっても、問題なく使用可能である。
これら芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、本発明の趣旨に反しない限り、結合形式の異なるもの、芳香族ビニル化合物種の異なるもの、共役ジエン化合物種の異なるもの、1,2−結合ビニル含有量と3,4−結合ビニル含有量との合計量の異なるもの、芳香族ビニル化合物単位の含有量の異なるもの等を混合して用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物に対して用いられるブロック共重合体としては、低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との混合物が好ましい。具体的には、数平均分子量120000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量120000以上の高分子量ブロック共重合体との混合物が好ましく、数平均分子量120000未満の低分子量ブロック共重合体と、数平均分子量170000以上の高分子量ブロック共重合体との混合物がより好ましい。
各ブロック共重合体の数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(GPC)を用いて、紫外分光検出器で測定し、標準ポリスチレンで換算した数平均分子量を指す。この時、重合時の触媒失活による低分子量成分が検出されることがあるが、その場合は分子量計算に低分子量成分を含めない。
また、上記ブロック共重合体は、該ブロック共重合体中の一つの芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの分子量が、15000〜50000であるブロック共重合体であることが好ましい。
1種類のブロック共重合体において、芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量は、上述のブロック共重合体の数平均分子量を用いて、下記式により求めることができる。
Mn(a),n={Mn×a/(a+b)}/N(a)
上記式中において、Mn(a),nは、ブロック共重合体nの芳香族ビニル化合物を主体とする一つの重合体ブロックの数平均分子量、Mnはブロック共重合体nの数平均分子量、aはブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、bはブロック共重合体n中の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの質量%、及びN(a)はブロック共重合体n中の芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックの数を表す。
上述した低分子量ブロック共重合体と高分子量ブロック共重合体との質量比(低分子量ブロック共重合体/高分子量ブロック共重合体)は、95/5〜5/95であること好ましく、90/10〜10/90であることがより好ましい。
本実施形態で用いられるブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55質量%以上90質量%未満の量で含有するブロック共重合体と、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを20質量%以上55質量%未満の量で含有するブロック共重合体とから構成される2種類以上のブロック共重合体の混合物も好ましく使用可能である。
衝撃改良材であるブロック共重合体として、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを55質量%以上90質量%未満の量で含有するブロック共重合体のみを用いた場合、高い衝撃性を有しつつ、耐熱性の低下が抑制された樹脂組成物が得られる。
また、本実施形態で用いられるブロック共重合体は、全部が変性されたブロック共重合体であっても、未変性のブロック共重合体と変性されたブロック共重合体との混合物であってもよい。
ここでいう変性されたブロック共重合体とは、分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する、少なくとも1種の変性化合物で変性されたブロック共重合体を指す。
ここでいう分子構造内に少なくとも1個の炭素−炭素二重結合又は三重結合、及び少なくとも1個のカルボン酸基、酸無水物基、アミノ基、水酸基、又はグリシジル基を有する変性化合物としては、例えば、マレイン酸、マレイン酸無水物(無水マレイン酸)、フマル酸及びクエン酸が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物における衝撃改良材の好ましい配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対し、耐熱性及び流動性の観点から、1〜35質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましい。
(スチレン系重合体)
本実施形態の樹脂組成物は、スチレン系重合体をさらに含んでいてもよい。
スチレン系重合体としては、例えば、ホモポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)が挙げられる。
樹脂組成物がスチレン系重合体を含むことにより、本発明の課題とは別に、耐候性の向上を図ることができる。
スチレン系重合体の配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対し、50質量部未満であることが好ましい。
(強化無機フィラー)
本実施形態の樹脂組成物には、剛性及び耐熱性を高める観点から、強化無機フィラーを添加してもよい。
強化無機フィラーとしては、例えば、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、クレイ、炭素繊維、カオリン、ゾノトライト、酸化チタン、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛が挙げられる。それらの中でも、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、マイカ、クレイ、炭素繊維、カオリン、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛が好ましく、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、炭素繊維、カオリン、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛がより好ましく、ガラス繊維、ウォラストナイト、タルク、炭素繊維がさらに好ましい。これらは1種を単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において使用することができるウォラストナイトについて説明する。
ウォラストナイトは、珪酸カルシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また、人工的に合成したウォラストナイトも使用可能である。
ウォラストナイトの大きさ、形状としては、平均粒子径2〜9μm、アスペクト比(重量平均繊維長/平均粒子径)5以上のものが好ましく、平均粒子径3〜7μm、アスペクト比5以上のものがより好ましく、平均粒子径3〜7μm、アスペクト比8以上30以下のものがさらに好ましい。
ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、数平均繊維径を平均粒子径とする。ウォラストナイトの数平均繊維径、数平均粒子径及び重量平均繊維長の測定は、組成物のペレット、成形品等を、電気炉等を用いて焼却し、得られた残渣から、例えば100本以上のウォラストナイトを任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、求めることができる。
本実施形態で使用することができるタルクについて説明する。
タルクとは、珪酸マグネシウムを成分とする天然鉱物を精製、粉砕及び分級したものである。また広角X線回折によるタルクの(002)回折面の結晶子径が57nm以上であることがより好ましい。
ここでいうタルクの(002)回折面の結晶子径は、広角X線回折装置(例えば、RAD−RX型広角X線回折装置(理学電機(株)製))を用いて測定した、約9.39Åにおけるピークの半値幅より決定される。
タルクの大きさ、形状については、平均粒子径が1〜20μmであり、粒子径の小さい方から25%の粒径(d25%)と75%の粒径(d75%)との比(d75%/d25%)が1.0〜2.5である粒径分布を有するものであるが好ましい。更には、(d75%/d25%)が1.5〜2.2であることがより好ましい。
タルクの平均粒子径は1〜16μmであるものが好ましく、3μmよりも大きく9μm未満であるものがより好ましい。
タルクの平均粒子径及び粒子径分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて、体積基準の粒子径として測定できる。なお、測定の際には、分散溶媒としてはエタノールを用いることができる。
本実施形態で使用することができる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維が挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
炭素繊維の繊維径は5〜20μmであることが好ましく、5〜13μmであることがより好ましい。そのアスペクト比は10以上であることが好ましい。
炭素繊維の数平均繊維径、数平均粒子径及び重量平均繊維長の測定は、組成物のペレット、成形品等を、電気炉等を用いて焼却し、得られた残渣から、例えば100本以上の炭素繊維を任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、求めることができる。
本実施形態で使用することができるガラス繊維としては、繊維径が5〜20μmのチョップドストランドが、機械的特性及び取り扱い性の観点より好ましい。繊維径は8〜15μmであることがより好ましい。
ガラス繊維の数平均繊維径、数平均粒子径及び重量平均繊維長の測定は、組成物のペレット、成形品等を、電気炉等を用いて焼却し、得られた残渣から、例えば100本以上のガラス繊維を任意に選択し、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで観察し、求めることができる。
また、上述した強化無機フィラーには、表面処理剤としての高級脂肪酸又はそのエステル、塩等の誘導体(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸エチルエステル等)やカップリング剤(例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等)を用いて、必要により表面処理を施してもよい。
表面処理剤の使用量は、強化無機フィラーを100質量部としたとき、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における強化無機フィラーの配合量は、本発明の課題解決を阻害しない範囲で剛性及び耐熱性を高める観点から、樹脂組成物の全量を100質量%としたとき10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、18〜45質量%であることがさらに好ましい。
上述した強化無機フィラーは、取り扱い性を高める目的で、あるいは、樹脂組成物との密着性を改善する目的で、集束剤により集束されていてもよい。
集束剤としては、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/アミン変性系の化合物が好ましく使用でき、2種以上を併用してもよい。
また、この集束剤としては、分子構造内に複数のエポキシ基を有するエポキシ系化合物が好ましく使用可能である。エポキシ化合物の中でも、ノボラック型エポキシ化合物がより好ましい。
集束剤として分子構造内に複数のエポキシ基を有するエポキシ系化合物を用いることにより、吸水率を低減させ、ガラス繊維と樹脂成分との密着性を向上させることができ、機械的特性を高めることが可能となる。
本実施形態の樹脂組成物において、強化無機フィラーは、ポリアミド又はポリフェニレンエーテルの重合段階から樹脂組成物の成形段階までの任意の段階で添加することができる。特に、樹脂組成物の押出工程及び成形工程(ドライブレンドを含む)の段階で添加することが好ましい。
具体的な強化無機フィラーの添加方法としては、押出工程において、溶融した樹脂組成物中に強化無機フィラーを添加し溶融混練する方法が挙げられる。また、強化無機フィラーを、予めポリアミドやポリフェニレンエーテル中に配合してマスターバッチを調製し、そのマスターバッチを樹脂組成物に添加することも有用である。この際のマスターバッチの調製方法に制限はなく、ポリアミド又はポリフェニレンエーテルと強化無機フィラーとを溶融することなく混合し、押出機等にて溶融混練する方法、溶融したポリアミド又はポリフェニレンエーテル中に強化無機フィラーを添加する方法等が好ましく使用される。特に、強化無機フィラーが繊維状フィラーの場合、溶融したポリアミド又はポリフェニレンエーテル中にそのフィラーを添加して溶融混練する方法がより好ましい。
(導電性付与材)
本実施形態の樹脂組成物は、導電性付与材をさらに含んでいてもよい。
導電性付与材の配合量は、本発明の課題解決を阻害しない範囲で導電性を確保する観点から、樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。
導電性付与材は、導電性カーボンブラック、グラファイト及びカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、導電性カーボンブラック及び/又はカーボンナノチューブがより好ましい。
導電性付与材を含有させることにより、耐衝撃性や面衝撃強度などの機械的物性の低下を抑制しつつ、導電性を付与できるという効果が得られる。
導電性付与材として導電性カーボンブラックを用いる場合、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が250mL/100g以上のものが好ましく、DBP吸油量が300mL/100g以上のものがより好ましく、350mL/100g以上のものがさらに好ましい。
DBP吸油量は、ASTM D2414に定められた方法で測定できる。
導電性カーボンブラックは、BET比表面積(JIS K6221−1982)が200m2/g以上のものが好ましく、400m2/g以上のものがより好ましい。市販されている導電性カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラックインターナショナル社より入手可能なケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JDが挙げられる。
導電性付与材として用いられるグラファイトは、無煙炭、ピッチ等をアーク炉で高温加熱して得られるものの他、天然に産出される石墨も包含される。グラファイトの重量平均粒子径は0.1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
導電性付与材として用いられるカーボンナノチューブとしては、米国特許4663230号明細書、米国特許5165909号公報、米国特許5171560号公報、米国特許5578543号明細書、米国特許5589152号明細書、米国特許5650370号明細書、米国特許6235674号明細書等に記載されている繊維径が75nm未満で中空構造をした分岐の少ないカーボンナノチューブが挙げられる。
これらは、単層(SWCNT)でも多層(MWCNT)でもよい。
また、1μm以下のピッチでらせんが一周するコイル状形状のカーボンナノチューブも含まれる。
市販されているカーボンナノチューブとしては、ハイペリオンキャタリシスインターナショナル社から入手可能なカーボンフィブリル(BNフィブリル)が挙げられる。
これら導電性付与材の樹脂組成物への添加方法は、特に限定されるものではないが、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの溶融混合物中に導電性付与材を添加して溶融混練する方法、所定の樹脂中に導電性付与材を予め配合してマスターバッチを調製し、そのマスターバッチを樹脂組成物に添加する方法が挙げられる。
特に、樹脂中に導電性付与材を配合してなるマスターバッチの形態で樹脂組成物に添加することが好ましい。
導電性付与材がカーボンナノチューブの場合、マスターバッチとして、ハイペリオンキャタリストインターナショナル社から入手可能なポリアミド/カーボンナノチューブマスターバッチを使用することができる。これらマスターバッチ中の導電性付与材の配合量は、マスターバッチを100質量%としたとき、導電性付与材の配合量が5〜25質量%であることが好ましい。
導電性付与材として導電性カーボンブラックを使用する場合、マスターバッチ中の導電性付与材の配合量は5〜15質量%であることが好ましく、8〜12質量%であることがより好ましい。
また、導電性付与材としてグラファイト又はカーボンナノチューブを使用する場合、マスターバッチ中の導電性付与材の配合量は15〜25質量%であることが好ましく、18〜23質量%であることがより好ましい。
導電性付与材を配合するマスターバッチに適用される所定の樹脂としては、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び上記衝撃改良材からなる群より選ばれる1種以上が挙げられ、ポリアミドが好ましい。
このポリアミドは、脂環構造を有するポリアミドであることがより好ましく、固有粘度[η]は0.7〜1.1dL/gであることが好ましい。固有粘度を上述の範囲とする脂環構造を有するポリアミドを採用することにより、該マスターバッチ生産時の効率を向上(単位時間あたりの生産量の増加)させ、更には該マスターバッチを用いて得られる樹脂組成物の面衝撃強度を高めることが可能となる。
上述した導電性付与材を配合してなるマスターバッチの製造方法については、特に限定されるものではない。その製造方法としては、例えば、(1)ポリアミドと導電性付与材とを溶融することなく混合したのち、樹脂温度がポリアミドの融点以上となる温度で溶融混練する方法、(2)溶融したポリアミド中に導電性付与材を添加して溶融混練する方法、(3)ポリアミドの一部と導電性付与材とを溶融することなく両者の混合物を作製し、該混合物を溶融した残余のポリアミド中に供給し溶融混練する方法、(4)溶融したポリアミド中に導電性付与材を供給し溶融混練した後、更にポリアミドを供給し溶融混練する方法が挙げられる。
これらの中で特に好ましい態様は、(3)ポリアミドの一部と導電性付与材とを溶融することなく両者の混合物を作製し、該混合物を溶融した残余のポリアミド中に供給し溶融混練する方法である。
この特に好ましい製造方法を採用することにより、導電性付与材を配合してなるマスターバッチの製造時の樹脂温度を大幅に低下させることが可能となり、樹脂組成物を作製した後の、モールドデポジット(以下、本明細書において「MD」を略すことがある。)の抑制に非常に効果的である。
また、上述したように、マスターバッチを製造する際の加工機械のシリンダー設定温度は特に制限はなく、ポリアミドの融点以上の温度であれば問題ない。シリンダー設定温度は290〜350℃であることが好ましく、300〜330℃であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物に導電性付与材を添加して樹脂組成物を製造するにあたり、好ましい製造方法としては、以下の工程(1)〜(3)をその順に行う方法が挙げられる。 工程(1):ポリアミドの一部と導電性付与材とを溶融することなく両者の混合物を作製し、該混合物を、溶融した残余のポリアミドに供給し、溶融混練して、ポリアミドと導電性付与材とのマスターバッチを製造する工程。
工程(2):上記マスターバッチを、上記ポリフェニレンエーテルと、上記相溶化剤との溶融混合物と溶融混練して溶融混合物ペレットを得る工程。
工程(3):上記溶融混合物ペレットの水分を除去する工程。
上述の工程(1)〜(3)をこの順に経ることにより、導電性樹脂組成物の射出成形時の、MDの抑制、シルバーストリークス発生の抑制、及びシート・フィルム押出時のダイリップ部への目ヤニ生成の抑制効果が得られる。
(難燃剤)
本実施形態の樹脂組成物には、難燃剤を添加してもよい。
難燃剤としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩類が挙げられる。特に、ホスフィン酸塩類が好ましい。
以下、具体的に、好ましいホスフィン酸塩類について説明する。
好適なホスフィン酸塩類は、下記一般式(I)で表されるホスフィン酸塩、及び/又は下記一般式(II)で表されるジホスフィン酸塩、並びにこれらの縮合物(本明細書中では、ホスフィン酸塩及びその縮合物をまとめてホスフィン酸塩類と略記することがある。)である。
上記式(I)、(II)中、R1及びR2は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基及び/又はアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、炭素数6〜10のアルキルアリーレン基、炭素数6〜10のアリールアルキレン基からなる群から選ばれるいずれかを示し、Mはカルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種又は2種以上を示す。
mは1〜3の整数を示し、nは1〜3の整数を示し、xは1又は2を示す。
上述したホスフィン酸塩類は、ヨーロッパ特許出願公開第699708号明細書や、特開平08−73720号公報に記載されているように、ホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物を用いて水溶液中で製造できる。
これらホスフィン酸塩類は、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3の縮合物であるポリマー性ホスフィン酸塩も含まれる。
ホスフィン酸塩類は、より高い難燃性の発現、及びMD発生の抑制の観点から、下記式(III)で表されるホスフィン酸塩を90質量%以上含むものが好ましく、95質量%以上含むものがより好ましく、98質量%以上含むものがさらに好ましい。
ここで、上記式(III)中、R1及びR2は、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基及び/又はアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
Mは、カルシウム(イオン)、マグネシウム(イオン)、アルミニウム(イオン)、亜鉛(イオン)、ビスマス(イオン)、マンガン(イオン)、ナトリウム(イオン)、カリウム(イオン)及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上を示す。
mは1〜3の整数を示す。
ホスフィン酸の具体例としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸及びこれらの混合物が挙げられる。
上記ホスフィン酸塩類が有する陽イオンは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及び亜鉛イオンから選ばれる1種以上がより好ましい。
ホスフィン酸塩類の具体例としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
特に高い難燃性の発現、MD抑制の観点から、ホスフィン酸塩類としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム及びジエチルホスフィン酸亜鉛からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
ホスフィン酸塩類の配合量については、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましく、2〜25質量部であることがより好ましく、2〜15質量部であることがさらに好ましく、3〜10質量部であることがさらにより好ましい。
十分な難燃性を発現させるためには、ホスフィン酸塩類の配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましく、押出加工により適した溶融粘度を実現するには、ホスフィン酸塩類の配合量はポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対し50質量部以下とすることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物を成形した成形品の機械的強度、成形品外観を考慮し、上述したホスフィン酸塩類は、数平均粒子径の下限値が、0.1μmであることが好ましく、0.5μmであることがより好ましい。
ホスフィン酸塩類の数平均粒子径の上限値は40μmであることが好ましく、20μmであることがより好ましく、10μmであることがさらに好ましい。
ホスフィン酸塩類の数平均粒子径を0.1μm以上とすると、溶融混練等の加工時において、取扱い性や押出し機等への噛み込み性が向上し好ましい。
また、その数平均粒子径を40μm以下とすることにより、樹脂組成物の機械的強度が発現しやすくなり、かつ成形品外観が良好なものとなる。
ホスフィン酸塩類の数平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、島津製作所社製、商品名:SALD−2000)を用い、水中にホスフィン酸塩類を分散させ測定解析することができる。
より詳しくは、超音波拡散機及び/又は攪拌機を備えた攪拌槽に水及びホスフィン酸塩類を加える方法により、水中にホスフィン酸塩類を分散させた分散液を、ポンプを介して測定セルへ送液し、レーザー回折により粒子径を測定する。
測定によって得られる粒子径と粒子数の頻度分布から、数平均粒子径を計算することができる。
また、ホスフィン酸塩類は、本実施形態の効果を損なわなければ、未反応物又は副生成物が残存していてもよい。
本実施形態で使用可能なホスフィン酸塩類は、予めポリアミドを混合した難燃剤マスターバッチの形態で樹脂組成物に添加してもよい。難燃剤マスターバッチ中のホスフィン酸塩類の配合割合は、難燃剤マスターバッチの全量を100質量%としたとき、10〜60質量%であることが好ましく、20質量%〜50質量%であることがより好ましい。
この難燃剤マスターバッチの製造方法は、特に制限はないが、具体例として、(1)脂環構造を有するポリアミドとホスフィン酸塩類とを溶融することなく予め混合した混合物を溶融混練する方法、(2)ホスフィン酸塩類を溶融した脂環構造を有するポリアミド中に添加して、更に溶融混練する方法、が挙げられる。
前記(2)の方法は、難燃剤の分散性が向上するため好ましい。
〔その他の付加的成分〕
本実施形態の樹脂組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で必要に応じて下記の付加的成分を添加してもよい。
付加的成分としては、例えば、上記以外の難燃剤(ハロゲン化された樹脂、シリコーン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ポリ燐酸アンモニウム、赤燐など)、滴下防止効果を示すフッ素系ポリマー、流動性改良材(オイル、低分子量ポリオレフィン、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、帯電防止剤、各種過酸化物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料、添着剤が挙げられる。
これら付加的成分のそれぞれの配合量は、ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して20質量部を超えない範囲とすることが好ましく、合計量としては50質量部を超えない範囲とすることが好ましい。
〔樹脂組成物を製造する加工機械〕
本実施形態の樹脂組成物を得る際に用いられる具体的な加工機械としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等が挙げられる。
特に、二軸押出機が好ましく、上流部供給口と1カ所以上の下流部供給口とを備えたスクリュー直径25mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機がより好ましく、スクリュー直径45mm以上でL/Dが30以上の二軸押出機がさらに好ましい。
スクリュー直径の上限は、樹脂温度の上昇を抑制する観点より120mmであることが好ましい。
この際の加工機械のシリンダー設定温度は、特に限定されるものではなく、通常240〜360℃の中から所望の樹脂組成物が得られる条件を任意に選ぶことができるが、300〜350℃が好ましい。
[樹脂組成物の成形品]
本実施形態の樹脂組成物は従来公知の成形方法により各種成形品とすることができる。
例えば、フィルム状の形態に成形できる。
なお、当業者によっては、シートとフィルムとをその厚みにより便宜上、区別することもあるが、フィルムとシートとを明確に区別するための厚みに関する閾値はない。本明細書においては、シート及びフィルムを総称して、単にフィルムと称する。
本実施形態の樹脂組成物よりなるフィルムは、厚みが1〜200μmである。
フィルムを構成する樹脂組成物の材料であるポリアミド、ポリフェニレンエーテル、及びポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤については、本実施形態の樹脂組成物の詳細な説明と同様であるので、ここでは説明を省略する。
また、本実施形態のフィルムは、本実施形態の樹脂組成物を原料とするものであってもよく、樹脂組成物に添加してよい各成分を全て添加可能である。
本実施形態のフィルムは、本実施形態の樹脂組成物を原料とし、押出フィルム成形等により製造できる。
あるいは、本実施形態の樹脂組成物を構成する各々の成分を押出フィルム成形機に直接投入し、混練とフィルム成形とを同時に実施することによっても製造できる。
また、本実施形態のフィルムは、押出しチューブラー法、場合によってはインフレーション法とも呼ばれる方法によっても製造可能である。この場合、円筒から出てきたパリソンがすぐに冷却されないように、50〜310℃の温度範囲の中から適宜選択して、パリソンを温度制御することがフィルム厚みを均一にし、層剥離のないフィルムを製造する上で極めて重要である。
多層インフレーション方法により、本実施形態のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物と他の樹脂との多層フィルムを得ることも可能である。
また、本実施形態のフィルムを、Tダイ押出成形によっても製造することができる。この場合、押出成形によって得られたフィルムを無延伸のまま用いてもよいし、更に1軸延伸又は2軸延伸して本実施形態のフィルムを得てもよい。フィルムの強度を高めたい場合は、延伸することが好ましい。また、多層Tダイ押出成形方法により、本実施形態の樹脂組成物と他の樹脂との多層フィルムを得ることができる。
本実施形態のフィルムは、耐熱性、衝撃強度、流動性に優れると共に、フォギング性の抑制が図られている。
また、本実施形態のフィルムは、低吸水性、耐薬品性、耐引き裂き性、耐熱強度及び後工程で真空成形を行う際の真空成形性に優れている。
さらに、本実施形態のフィルムは熱収縮率が小さく、難燃性、機械的強度、絶縁性や誘電率や誘電正接などに代表される電気特性にも優れ、耐加水分解性にも優れる。したがって、本実施形態のフィルムは、これらの特性が要求される用途に用いられる。
本実施形態の樹脂組成物を用いた成形品の製造においては、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、一般に用いられている種々の成形方法や成形装置を使用できる。
その成形方法及び成形装置は何ら限定されるものではないが、本実施形態の樹脂組成物を用いて、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの任意の成形法によって成形品を製造でき、また、それらの成形技術を複合して用いてもよい。
さらに、本実施形態の樹脂組成物と、各種熱可塑性樹脂又はその組成物、熱硬化性樹脂、紙、布帛、金属、木材、セラミックスなどの各種の材料との複合成形体とすることもできる。
〔成形品の用途〕
本実施形態の樹脂組成物の成形品は、上述のような成形プロセスを経て、自動車部品、工業材料、産業資材、電気電子部品、機械部品、事務機器用部品、家庭用品、フィルム(シート)、繊維、その他の任意の形状及び用途の各種成形品の製造に有効に使用することができる。
例えば、ランプリフレクター部品などの自動車のランプを構成する部品、液晶プロジェクター等のランプ部分を構成する部品、リレーブロック材料等に代表されるオートバイ・自動車の電装部品、ICトレー材料、各種ディスクプレーヤー等のシャーシー、キャビネット、SMT(表面実装技術)コネクターに代表されるSMT対応部品等の電気・電子部品、各種コンピューター及びその周辺機器等のOA部品や機械部品、さらにはオートバイのカウルや、自動車のバンパー・フェンダー・ドアーパネル・各種モール・エンブレム・アウタードアハンドル・ドアミラーハウジング・ホイール、キャップ・ルーフレール及びそのステイ材・スポイラー等に代表される外装品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックス、トリム等に代表される内装部品、自動車アンダーウード部品、自動車エンジン周り部品等に好適に使用できる。
特に、本実施形態の樹脂組成物の低線膨張性と低吸水性とを活かし、自動車の外装材に好ましく使用することもできる。
更に、本実施形態の樹脂組成物は、鉛フリーはんだ対応リフロー炉に耐えうる耐熱性を有するため、SMTコネクターに代表されるSMT対応部品等の電気・電子部品にも好ましく用いることができる。
また、優れた低フォギング性を有することより、自動車ランプ周りの耐熱部品、液晶プロジェクター等のランプ部分を構成する部品に好ましく使用可能である。
上述のSMT対応部品、ランプリフレクター部品などの成形品は、本実施形態の樹脂組成物を原料として用いる以外は、その形状、寸法等、従来のものと同様であればよい。
本実施形態の樹脂組成物を用いた成形品は、耐熱性、衝撃強度、流動性に優れると共に、フォギング性を抑制したものとなる。また、この成形品は、低吸水性、離型性、成形外観、真空成形性にも優れたものである。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
[原材料]
本実施例において下記化合物を用いた。
1 ポリアミド原料
<(a)ジカルボン酸>
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)
イーストマンケミカル社製 商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75)
(2)テレフタル酸(TPA)(和光純薬工業社製 商品名 テレフタル酸)
(3)ドデカン二酸(C12DA)(和光純薬工業社製 商品名 ドデカン二酸)
<(b)ジアミン>
(4)2−メチルペンタンジアミン(2MPD)(東京化成工業社製 商品名 2−メチルペンタンジアミン)
(5)ヘキサメチレンジアミン(HMD)(和光純薬工業社製 商品名 ヘキサメチレンジアミン)
添加剤
(6)ギ酸(和光純薬工業社製 商品名 ギ酸(90%))
2.ポリフェニレンエーテル(PPE)
(7)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)
還元粘度:0.41dL/g(0.5g/dL、クロロホルム溶液、30℃測定)
3.ポリアミドとポリフェニレンエーテルとの相溶化剤
(8)無水マレイン酸(MAH)
日本油脂社製 商品名:CRYSTALMAN−AB
4.結晶造核剤
(9)タルク
日本タルク社製 商品名:ミクロエースL−1
平均粒子径5.0μm
5.衝撃改良材
(10)スチレンーブタジエン系ブロック共重合体(SEBS)
クレイトンポリマー社製 商品名:クレイトン(登録商標)G1651E
6.強化無機フィラー
(11)ガラス繊維(GF)
日本電気硝子社製 商品名:ECS03T−747H
ノボラックエポキシ系化合物で集束された平均繊維径10μm、カット長3mm
7.難燃剤
(12)ジエチルホスフィン酸アルミニウム(DEP)
クラリアントジャパン社製 商品名:Exolit(登録商標)OP930
平均粒子径5μm
8.金属系安定剤
(13)ヨウ化銅(CuI)(和光純薬工業社製 商品名 ヨウ化銅)
(14)ヨウ化カリウム(KI)(和光純薬工業社製 商品名 ヨウ化カリウム)
[ポリアミド成分量の計算]
<(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%>
(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
<(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル%>
(原料モノマーとして加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、重合時に追添分として加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数は含まれないものとした。
[物性の測定方法]
(1)融点Tm1、Tm2(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。
測定条件は、窒素雰囲気下、測定試料約10mgを昇温速度20℃/minで、測定試料の融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最高ピーク温度を融点Tm2(℃)とし、その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。
なお、ピークが複数ある場合には、ΔHが1J/g以上のものをピークとみなした。
例えば、融点295℃、ΔH=20J/gと融点325℃、ΔH=5J/gの二つのピークが存在する場合、融点Tm2は325℃とし、ΔH=25J/gとした。
(2)トランス異性体比率
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積と、シス異性体に由来する1.77ppm及び1.86ppmのピーク面積との比率から、トランス異性体比率を求めた。
(3)ガラス転移温度Tg(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。
測定条件は、試料をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて得られた溶融状態の試料を、液体窒素を用いて急冷し、固化させ、測定用サンプルとした。その測定用サンプル10mgを用いて、昇温スピード20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度を測定した。
(4)環状アミノ末端量
ポリマー末端に結合する環状アミノ基の量は、1H−NMRを用いて測定した。
窒素の複素環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素のシグナル(化学シフト値3.5〜4.0ppm)とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素のシグナル(化学シフト値3.0〜3.5ppm)の積分比を用いて算出した。
その際に使用する、総末端数は、GPC(東ソー株式会社製HLC−8020、ヘキサフルオロプロパノール溶媒、PMMA標準サンプル(ポリマーラボラトリー社製)換算 )で測定したMn(数平均分子量)を用いて、2/Mn×1000000(μ当量/g)として計算した。
(5)アミノ末端量
ポリマー末端に結合するアミノ基の量は、中和滴定により測定した。ポリアミド3.0gを90%フェノール水溶液100mLに溶解し、0.025規定塩酸で滴定を行い、アミノ末端量を求めた。終点はpH計の指示値から決定した。
(6)25℃の相対粘度ηr
JIS−K6810に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
(7)メルトボリュームレイト:MVR
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、窒素気流中で乾燥し、水分を約200ppmにした後、ISO 1133に準拠し、温度がポリアミドのTm2+20℃、荷重5kgの条件でMVRを測定した。
MVRは相対値として比較・評価した。
(8)フォギング性
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、窒素気流中で乾燥し、水分を約200ppmにした後、IS−80EPN成形機(東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度:ポリアミドのTm2+20℃、金型温度:130℃の条件で成形して、ISO 294−1に準拠した、多目的試験片(A型)を成形した。
得られた多目的試験片の両端を切断し、厚み4mm、幅10mm、長さ50mmの直方体成形片を作製し、この成形片2本を、外径25mm、高さ約70mmの内容量50cm3のガラス瓶に入れ、ガラス瓶上部にガラス板を乗載置し、蓋をした。
成形片の入ったガラス瓶を210℃に設定した熱風オーブン中に入れ、約100時間静置した。
その後、室温まで冷却し、成形片を取り出し、成形片の曇り度をヘーズメーターで測定した。
フォギング性は相対値として比較・評価した。
(9)シャルピー衝撃強度
下記(9−1)〜(9−3)の一連の操作を行い、シャルピー衝撃強度の測定を行った。
(9−1)樹脂組成物ペレットの水分調整
後述する実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、窒素気流中で乾燥し、水分を約200ppmにした。
その後、このペレットを23℃、50RH%の恒温恒湿室中に放置し、水分を調整した。 適宜水分を測定し、約700ppmのペレットを調整した。
上記操作により、水分が約200ppmの樹脂組成物ペレットと、約700ppmの樹脂組成物ペレットとが得られた。
(9−2)試験片の成形
上記(9−1)により水分調整した、水分の異なる2種類のペレットを、それぞれ、日精樹脂工業(株)製 FE120成形機(シャットオフノズル対応)を用いて、シリンダー温度:ポリアミドのTm2+20℃、金型温度:130℃の条件で成形して、多目的試験片(A型)を作製した。
このとき、射出時間+保圧時間:20秒(内、射出時間3秒)、冷却時間:20秒、インターバル時間(型開き+成形品取り出し):5秒とし連続成形した。これを「通常成形」とする。
続いて、5分間成形を停止した後、上記条件にて連続成形を再開し、3ショット成形した。これを「5分停止成形」とした。
続いて、5ショット連続成形してパージし、10分間成形を停止した後、連続成形を再開し、3ショット成形した。これを「10分停止成形」とした。
(9−3)シャルピー衝撃強度
上記(9−1)のようにして水分調整を行った後、さらに上記(9−2)のように滞留時間を変化させて成形して得られた多目的試験片(A型)を切削し、長さ80mm×巾10mm×厚さ4mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、ISO 179に準拠しシャルピー衝撃強度を測定した。
上記のように滞留時間を変化させて成形した試験片のシャルピー衝撃強度の測定値を比較することにより滞留安定性の評価を行った。
(10)難燃性(UL−94VB)
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法により、1サンプル当たり、それぞれ5本ずつ測定を行った。
なお、試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)は、実施例及び比較例で得られた樹脂組成物ペレットを、窒素気流中で乾燥し、水分を約200ppmにした後、射出成形機(東芝機械(株)製:IS−80EPN)を用いて成形して得た。
成形はシリンダー温度:ポリアミドのTm2+20℃、金型温度:130℃の条件で実施した。
難燃等級には、UL94垂直燃焼試験によって分類される難燃性のクラスを示した。ただし、全てのサンプルで試験を5回行い、平均燃焼時間と最大燃焼時間とを算出した。また、得られた結果に基づき、UL94VBに従い判定した。
(11)耐リフロー性
上記(10)の難燃性(UL−94VB)測定用に成形した試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)を、熱風リフロー炉で加熱して、試験片の形状変化と、変色の度合いとを確認し、以下の基準で判定した。
変化なし:試験片の変形なし。試験片のごくわずかな変色が認められる。
変色あり:試験片の変形なし。試験片の明らかな変色が認められる。
なお、このときに使用した熱風リフロー炉は、鉛フリーハンダ対応リフロー炉(UNI−6116H、日本アントム社製)であり、温度設定について、プレヒートゾーンの温度を180℃、ソルダリングゾーンの温度を280℃に設定した。
また、リフロー炉内のコンベア−ベルト速度は0.3m/分に設定した。この条件下において、炉内の温度プロファイルを確認したところ、140℃〜200℃の熱暴露時間が90秒、220℃以上の熱暴露時間が48秒、260℃以上の熱暴露時間が11秒であり、最高到達温度は265℃であった。
[ポリアミドの製造例]
<製造例1>
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA896g(5.20モル)、及び(b)2MPD604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、等モルの原料モノマーを含む50質量%水溶液を作製した。
得られた水溶液と、溶融重合時の添加物である、2MPD21g(0.18モル)を、内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。
液温約50℃からオートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm2になるまで加熱を続けた(このときの液温度は、約145℃であった。)。
槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため、水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約85%になるまで濃縮した。
水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた。
槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、液温の最終温度−50℃(ここでは295℃)になるまで加熱を続けた。
さらに加熱は続けながら、槽内の圧力を60分間かけて30kg/cm2から大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで降圧した。
水が除去されて樹脂となった状態の液温(樹脂温度)の最終温度が約345℃になるようにヒーター温度を調整した。
上記樹脂温度は、その状態のまま、槽内を真空装置で100torrの減圧下に10分維持した。
その後、窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し、水分率を約0.2質量%未満になるように調整してから、上記測定方法に基づいて行った測定結果(融点Tm2、ガラス転移温度Tg、トランス異性体比率、25℃の相対粘度、環状アミノ末端量、及びアミノ末端量を、下記表1に示す。
<製造例2>
製造例1において、槽内の圧力を30kg/cm2から大気圧に下げるのにかけた時間を90分としたことと、溶融重合の最終温度を345℃としたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表1に示す。
<製造例3、4>
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び溶融重合時の添加物として、下記表1に記載の化合物を、下記表1に記載の量に従って用いた。
また、溶融重合の最終温度を下記表1に記載の温度にした。その他の条件は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表1に示す。
<比較製造例1>
製造例1において、槽内の圧力を30kg/cm2から大気圧に下げるのにかけた時間を120分としたことと、溶融重合の最終温度を350℃としたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表1に示す。
<比較製造例2>
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び溶融重合時の添加物として、下記表1に記載の化合物を、下記表1に記載の量に従って用いた。
また、溶融重合の最終温度を下記表1に記載の温度にした。その他の条件は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表1に示す。
[ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造例]
<実施例1〜8、比較例1〜4>
製造例のポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整して用いた。
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口、9番目のバレルに下流側第2供給口を有した、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口から下流側第1供給口の手前までを320℃、下流側第1供給口からダイまでを製造例にて製造したポリアミドの融点Tm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量15kg/hとした。
下記表2、表3に記載されている割合となるように、各原料を供給して溶融混練し、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物ペレットを作製した。
得られたポリアミド組成物を窒素気流中で乾燥し水分を調整した後、成形し、各種評価を実施した。
物性値を樹脂組成物の組成と共に、下記表2及び表3に示した。
表2の結果から、実施例1〜4は比較例2に対し、MVRが高く流動性に優れ、ヘイズが小さいことからフォギング性に優れることがわかる。また、通常成形時のシャルピー衝撃強度も高いことから衝撃強度にも優れる。
また、実施例1〜4は比較例1に対し、通常成形時のシャルピー衝撃強度と滞留成形時のシャルピー衝撃強度の差が小さいことから滞留安定性に優れることがわかる。
表3の結果から、難燃剤、ガラス繊維等を添加した場合も実施例5〜8と比較例4の対比から、流動性とフォギング性に優れることがわかり、また難燃性と耐リフロー性に優れることもわかる。
本発明の樹脂組成物は、衝撃強度、流動性に優れるとともに、フォギング性の抑制が図られており、また滞留安定性にも優れ、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、並びに日用及び家庭用品などの各種部品の成形材料として、特に、鉛フリーはんだ対応リフロー炉に耐え得る耐熱性を有するため、SMT対応部品として、さらには自動車ランプ周りの耐熱部品等として、産業上の利用可能性がある。

Claims (17)

  1. (a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、
    (b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンと、
    を重合させたポリアミドであって、当該ポリアミドの環状アミノ末端量が、30〜60μ当量/gであるポリアミドと、
    ポリフェニレンエーテルと、
    前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの相溶化剤と、
    を、含むポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  2. 前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記ポリアミド80〜40質量部と、前記ポリフェニレンエーテル20〜60質量部と、を含む、請求項1に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  3. 前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、請求項1又は2に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  4. 前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  5. 前記ジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミドの融点が270〜350℃である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  7. 前記ポリアミドにおける前記脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率が50〜85%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  8. 前記ポリアミドのアミノ末端量が、20〜100μ当量/gである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  9. 前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、さらに結晶造核剤を0.01〜1質量部含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  10. 前記ポリアミドと前記ポリフェニレンエーテルとの合計量100質量部に対して、前記相溶化剤を0.01〜8質量部含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  11. 前記相溶化剤が、マレイン酸又はその無水物である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  12. 強化無機フィラーを、さらに含む請求項1乃至11のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  13. 前記強化無機フィラーを、ポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物100質量%に対し、10〜60質量%含む、請求項12に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  14. 前記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、さらに衝撃改良材を10〜70質量部含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  15. 請求項1乃至14のいずれか一項に記載のポリアミド−ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて成形した成形品。
  16. SMT対応部品である請求項15に記載の成形品。
  17. ランプリフレクター部品である請求項15に記載の成形品。
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