JP2011037083A - 塗装金属材およびこれを用いてなる筐体ならびに塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】平面部塗膜耐食性および加工後密着性を有し、しかも高速操業が可能である塗装金属材およびそれを用いた加工品を提供する。
【解決手段】金属基材と、当該金属基材上に設けられた亜鉛系めっき層と、当該亜鉛系めっき層上に設けられたクロムフリー化成皮膜と、当該化成皮膜上に設けられた2〜15μmの厚さの樹脂皮膜とを備え、当該樹脂皮膜は、Tg≧40℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(A)とTg≦0℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(B)を、樹脂固形分比率で(A):(B)=100:0〜40:60で含有する塗料組成物から形成されたものであって、前記樹脂皮膜が顔料を含有する場合には、結晶性かつ平均粒径1mm以上の顔料の含有量が当該皮膜の塗料固形分における5質量%以下である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、加工後の密着性および平面部耐食性に優れた塗装金属材に関するものである。本発明の塗装金属材は、例えば薄型テレビ用パネル、冷蔵庫、ファンヒータ、エアコン室外機などの家電製品、建材、自動車部品などの筐体または素材として好適に使用することができる。本発明において、「筐体」とは、製品またはその内部部品を収容する箱状体を意味する。
通常、塗装金属板(以下の説明では、亜鉛を含むめっき層を有する鋼板である亜鉛系めっき鋼板上に塗膜が形成されてなる塗装鋼板である亜鉛系めっき塗装鋼板を具体例とする。)では、意匠面となる外面塗膜に関しては、下塗り塗膜、上塗り塗膜、または下塗り塗膜、中塗り塗膜、上塗り塗膜といった複数層の塗膜より形成されている。かかる構成の塗膜では、各層毎に役割が存在し、下塗り塗膜は、下地となる鋼板との密着性の確保および耐食性の確保としての役割を担い、上塗り塗膜は、意匠性、耐汚染性、耐候性、耐傷つき性、耐薬品性といった性能を担っている。中塗り塗膜に関しては、下塗り、上塗り塗膜の各塗膜の役割を補充するために用いられることが多い。
また、下塗り塗膜の下層には、通常亜鉛系めっき鋼板と下塗り塗膜との密着性を確保するために薄膜の化成皮膜(化成処理液を鋼板などの基材と接触させることにより生じる化成処理により得られる皮膜)が形成されており、通常、この化成皮膜を含めると、少なくとも片面3コート3ベークの工程を経て塗装鋼板が形成されている。
このような塗装鋼板は、塗装や焼付の際の工程数が多く、製造に要する時間も長くなるため、塗装作業の合理化や省資源化の観点から工程数を減らす改善手段が望まれている。また、塗装設備上、化成処理皮膜を含め2コート2ベークの工程しか塗装できないライン、例えば、溶融亜鉛または電気亜鉛めっきラインのめっき後インラインのコーター設備や、スペースの都合上2コート2ベークのみ塗装可能な塗装ラインなどでは、このような塗装鋼板を製造することができない。
そこで、従来の化成皮膜を含め3コート3ベークの塗装鋼板と同等性能を有しつつ、化成皮膜の上層に1層の皮膜が形成された構成を備え、2コート2ベークの工程で製造可能な塗装鋼板が望まれている。以下、この化成皮膜とその上の皮膜とを総称して塗膜層という。
一方、塗装鋼板を製造するために用いられる塗料組成物については水系塗料を用いることが望まれている。水系塗料は、溶剤系塗料と比較して塗装焼き付け時に発生する有機溶剤を燃焼させるために使用しているインシネレーターの負担を低減することが可能であり、さらに、そこから排出されるCO量を低減することが可能である。その上、完全水系の塗料を用いれば、インシネレーター自体を用いる必要がなくなる。
すなわち、化成皮膜1層を含むトータル2層の構成の塗膜層に対応した水系の塗料組成物を用いることで、塗装工程が与える環境負荷を緩和するとともに塗装作業を合理化することが可能となる。
しかしながら、従来の塗装鋼板用塗料をそのまま単一塗膜として用いた場合には、下塗り塗料のみでは加工性、耐薬品性などが不十分であり、また、上塗り塗料のみでは下地鋼板との密着性、耐食性などが不十分となる。液状体の塗料に代えて粉体塗料を用いることも考えられるが、粉体塗料は膜厚が厚く、硬化に時間がかかる難点がある。したがって、塗装作業の合理化、省資源化などを考慮した場合、塗装鋼板の下塗り層と上塗り層との両方の機能を併せ持ち、且つ短時間で硬化可能な1層の着色塗膜の設計が必要となる。
ところで、プレコート鋼板(一次加工の段階で塗装工程が行われている塗装鋼板をいい、本発明では、「塗装金属材」とはプレコート鋼板をはじめとするプレコート金属材を意味する。)には、高硬度、優れた耐汚染性、優れた耐薬品性、優れた耐水性、優れた耐食性など多くの性能が要求される。
ここで、従来のプレコート鋼板の耐食性としては、主として塗膜層の端部や塗膜の疵部における白錆および/または赤錆発生を抑制する特性(以下、「端部等耐食性」と記す。)が評価されてきた。しかし、塗膜層全体の厚み(総膜厚)は、環境配慮やコスト削減の観点から薄くなる傾向がある(例えば、外装側に使用される面(おもて面)面でも15μm以下)ため、プレコート鋼板の分野では従来問題とされていなかった鋼板平面部における白錆発生を抑制する特性(以下、端部耐食性と区別するために「平面部耐食性」と記す。)が重要視されてきている。
また、塗装鋼板は、塗膜を有する状態で二次加工がなされるため、二次加工性が良好であることが求められる。特に、二次加工の中でも、金型で塗装鋼板を押圧して鋼板に複雑な形状を付与するプレス加工は優れた生産性を有するため、今後ますます多用されることが想定されている。したがって、塗装鋼板は良好なプレス加工性を有することがますます重要になってきている。
ここで「良好なプレス加工性」とは、連続プレスが行われて金型温度が上昇した場合であっても、プレス工程において高面圧が鋼板上の塗膜に加えられたときに塗装鋼板のカジリや塗膜層の剥離など致命的な障害の発生が抑制され、安定したプレス工程が実施可能なことを意味する。
このような塗装鋼板の要求特性に対して、例えば、特許文献1では、硬度、耐汚染性および耐侯性に優れた塗膜を得ることを目的として、特定のポリエステル樹脂、メラミン樹脂(硬化剤)などを配合した塗料組成物及びこれを用いた塗装鋼板が提案されている。
また、特許文献2では、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂(硬化剤)、防錆顔料、有機高分子微粒子などを配合した塗料組成物を塗装することにより、1コートで加工性、耐食性、密着性、耐衝撃性、耐スクラッチ性、意匠性を満足させる塗装鋼板が提案されている。
さらに、特許文献3では、鋼板の両面に、亜鉛系めっき層およびクロムを含有しない化成皮膜を順次形成し、前記鋼板の一方の面の化成皮膜上に、架橋剤により硬化させたポリエステル系樹脂と、平均粒子径が3〜40μm、ガラス転移温度が70〜200℃でかつ前記ポリエステル系樹脂よりも高硬度である樹脂粒子とを含有する単一塗膜が提案されている。
特開昭63−7878号公報 特開昭63−114635号公報 特開2007−269010号公報 特開平9−324282号公報
しかしながら、特許文献1および2に記載された塗装鋼板はいずれも、化成皮膜としてクロムを含有するクロメート系皮膜を用いることを想定しており、これは環境上好ましくない。また、使用されているポリエステル樹脂が、薄い塗膜で絞り加工のような厳しいプレス加工時の応力に耐え得る強度の塗膜が得られるようには設計されていないため、十分なプレス加工性が得られない。
また、特許文献3に記載された塗装鋼板については、クロムを含有せず、かつ塗膜が1層ではあるものの、その場合に懸念される塗膜平面部の耐食性の確保についてなんら記載されていない。
そこで、本発明の目的は、上記のような従来技術の課題を解決し、従来の2層塗膜(化成皮膜が形成された金属材上に形成された下塗り層と上塗り層とを有する塗膜層)と同等の平面部塗膜耐食性および加工後密着性を有し、しかも製造する際の高速操業が可能である塗装金属材およびそれを用いた加工品(例えば筐体)を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決して塗膜層における化成皮膜以外の皮膜(樹脂皮膜)が単層の構成でありながら優れた性能を有する塗装金属板を得るために検討を重ねた結果、樹脂皮膜におけるバインダー樹脂をTgが40℃以上の水溶性または水分散のウレタン樹脂および必要に応じTgが0℃以下の水溶性または水分散のウレタン樹脂を適宜添加したものとし、さらに樹脂皮膜が顔料を含有する場合にはその顔料の結晶構造および粒径を特定の範囲にすることにより、平面部耐食性およびプレス加工性に優れた塗装金属材が得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その要旨構成は以下のとおりである。
(1)金属基材と、当該金属基材上に設けられた亜鉛系めっき層と、当該亜鉛系めっき層上に設けられたクロムフリーの化成皮膜と、当該化成皮膜上に設けられた2〜15μmの厚さの樹脂皮膜とを備え、当該樹脂皮膜は、Tg≧40℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(A)およびTg≦0℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(B)を、樹脂固形分比率で(A):(B)=100:0〜40:60で含有する塗料組成物から形成されたものであって、前記樹脂皮膜が顔料を含有する場合には、その含有される顔料のうち、結晶性かつ平均粒径1μm以上のものの含有量が当該皮膜の塗料固形分における5質量%以下であることを特徴とする塗装金属材。
(2)前記亜鉛系めっき層は、ニッケル含有量が11質量%以上15質量%以下である亜鉛−ニッケル合金めっきからなるとともに、前記化成皮膜との界面にクラックを有し、前記樹脂皮膜を除去して得られる、少なくとも前記金属基材と前記亜鉛系めっき層とを備える部材の表面を走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数が2000個/mm以上150000個/mm以下である、上記(1)記載の塗装金属材。
(3)前記化成皮膜の付着量が20mg/m以上1000mg/m以下であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の塗装金属材。
(4)表面色調がJIS Z8729のL*、a*、b*表色系でL*≦50であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の塗装金属材。
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の塗装金属材をその樹脂皮膜が形成された面が外側になるように用いてなることを特徴とする筐体。
(6)上記(1)に記載される塗装金属材が備える樹脂皮膜を形成するための塗料組成物であって、Tg≧40℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(A)およびTg≦0℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(B)を、樹脂固形分比率で(A):(B)=100:0〜40:60で含有するとともに、当該塗料組成物に含有される水分量の3質量%以上の含有量で、沸点が160℃以上の物質を媒体として含有する塗料組成物。
本発明に係る樹脂皮膜は、Tgが比較的高いウレタン樹脂を含有するため、表面の硬度が比較的高く摺動性に優れる。このためプレス加工においてカジリが発生しにくい。しかも、金属基材を腐食させる物質(水分など)が樹脂皮膜を透過しにくい、すなわちバリア性が高い。このため、耐食性に優れる。
しかも、樹脂皮膜が顔料を含有する場合には、その含有される顔料には結晶性で粒径の大きなものが含まれていない。このような顔料は、プレス加工時に樹脂皮膜内において破壊され、破壊された顔料は樹脂皮膜の凝集破壊の基点となり、カジリなどの不具合を発生させる。したがって、本発明に係る塗料金属材には、顔料が適正化されていることによりプレス加工性が向上されている。なお、顔料の粒径が大きい場合には平面部耐食性が低下する傾向が見られるため、本発明のように粒径の大きな顔料を含まないことは平面部耐食性の向上にも資する。
さらに、樹脂皮膜を形成するための塗料組成物が媒体(溶媒・分散媒)として高沸点の物質を含有する場合には、塗膜層の外観不良の発生が抑制され、優れた外観の塗膜を安定的に得ることが可能となる。
(a)亜鉛−ニッケル亜鉛めっき鋼板の表面SEM像の一例と、(b)クラック領域数の測定方法を示す図である。 亜鉛−ニッケル亜鉛めっき鋼板の表面SEM像の別の例である。 亜鉛−ニッケル亜鉛めっき鋼板の表面SEM像の別の例である。 亜鉛−ニッケル亜鉛めっき鋼板の表面SEM像の別の例である。 亜鉛−ニッケル亜鉛めっき鋼板の表面SEM像の別の例である。
以下、本発明に係る塗装金属材およびこれを用いてなる筐体ならびに塗料組成物について詳しく説明する。
本発明に係る塗装金属材は、金属基材と、この金属基材上に設けられた亜鉛系めっき層と、この亜鉛系めっき層上に設けられたクロムフリーの化成皮膜と、この化成皮膜上に設けられた2〜15μmの厚さの樹脂皮膜とを備える。樹脂皮膜は、Tg≧40℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(A)およびTg≦0℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(B)を、樹脂固形分比率で(A):(B)=100:0〜40:60で含有する塗料組成物から形成されたものである。また、樹脂皮膜が顔料を含有する場合には、その含有される顔料のうち、結晶性かつ平均粒径1mm以上のものの含有量が樹脂皮膜の塗料固形分における5質量%以下である。
1.金属基材
本発明に係る塗装金属材の基材をなす金属基材の材質は、後述する亜鉛系めっき層による犠牲防食の効果が得られる材料であれば、特に限定されない。典型的な金属基材は鉄を主成分とする鋼材である。金属基材の形状は特に限定されないが、本発明に係る塗装金属材は塗膜層を有する状態でプレス加工などの二次加工が施されるため、典型的には板状である。板材の場合における厚み(板厚)は特に限定されない。二次加工、特にプレス加工のしやすさを考慮すると2mm程度を上限とすることが好ましい。
2.亜鉛系めっき層
本発明に係る塗装金属材は、金属基材上に亜鉛系めっき層を有する。亜鉛系めっき層とは、亜鉛を含有するめっきからなるめっき層である。亜鉛を含有するめっきは、溶融亜鉛系めっき、合金化溶融亜鉛系めっき、および電気亜鉛系めっきに分類され、これらのいずれを用いてもよい。めっき組成も亜鉛を含有する以外は特に限定されず、純亜鉛でもよいし、亜鉛合金でもよい。亜鉛合金の場合における合金元素およびその含有量も特に限定されない。合金元素としてアルミニウム、鉄、およびニッケルが例示され、合金元素の含有量のほうが亜鉛の含有量より高くてもよい。
本発明に係る亜鉛系めっき層の好ましい態様は電気亜鉛系めっきである。電気亜鉛系めっきの場合には、めっき厚のばらつきが少ないため、その上に形成される塗膜層の厚みが均一となりやすい。
本発明に係る亜鉛系めっき層における付着量は特に限定されない。付着量が過度に少ない場合にはめっき層が均一に形成されず、高い耐食性を金属材の全面にわたり実現することが困難となる。一方、付着量が過度に多い場合には、製造コストが高くなるとともに、パウダリングが発生しやすくなって加工性が低下する等の問題を生ずることが懸念される。したがって、付着量は2g/m2以上25g/m2以下であることが好ましい。生産性、加工性および耐食性を高度に兼ね備える観点からは、5g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。
亜鉛系めっき層のさらに好ましい態様は、塗膜層との界面、具体的には化成皮膜との界面においてクラックを有する電気亜鉛系めっき層である。かかるクラック内に塗膜層、特に化成皮膜をなす成分が入り込むことにより、塗膜層がめっき層上に強固に固定されるアンカー効果が得られ、密着性が向上すると推測される。塗膜層とめっき層との密着性が向上すると、プレス加工において変形量が大きい場合でも、金属基材の変形に塗膜層が追随できずに塗膜が剥離してしまう事態が起こりにくい。
界面におけるクラックの密度が過度に低い場合には、このアンカー効果が得られず、密着性の向上が得られにくくなる。一方、界面におけるクラック密度が過度に高い場合には、めっき層と金属基材との間の密着力が低下し、結果的にめっき層を含んだ塗膜層が剥離しやすくなってしまう。したがって、界面におけるクラックの密度には適正な範囲がある。
本発明では、本発明に係る塗装金属材から樹脂皮膜を除去して、少なくとも金属基材と亜鉛系めっき層とを備える部材の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察可能とし、その表面の観察像に見られるクラックで囲まれる領域数を求め、単位面積(1mm)当たりのその領域の個数によって、この界面におけるクラック密度を評価する。ここで、「クラックに囲まれた領域」とは、SEMによる観察像において見られる、クラックにより島状に区画された領域のことである。
具体的には、次のようにしてクラック密度を評価する。
まず、塗装金属材から樹脂皮膜を除去する。樹脂皮膜を除去することにより、少なくとも金属基材と亜鉛系めっき層とを備える部材の表面を露出させることができる。ここで、樹脂皮膜とめっき層との間にある化成皮膜については、必ずしも除去されていなくともよい。化成皮膜は一般的に極めて薄く、後述するようにシランカップリング剤からなる場合には単層膜として存在している場合もあり、その後のSEMによるクラック観察にとって障害とならない。もちろん、化成皮膜が厚く、しかも導電性が低い場合には、クラック観察の障害となるため、除去しておくことが好ましい。
樹脂皮膜の除去方法は、特に限定されない。加熱して溶融または揮発させてもよいし、化学的に溶解してもよい。あるいは、めっき層に影響を与えない程度のブラスト処理をして物理的に除去してもよい。ブラスト処理であれば、多くの場合は化成皮膜も除去されるため、クラック観察を安定的に行うことができ、好ましい。
こうして得られた表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察する。SEMの種類、加速電圧などは特に限定されないが、FE−SEMなどのような高解像度を実現しうる顕微鏡を用いることが好ましい。
SEMにより上記の表面を観察し、クラックにより囲まれた領域の個数を計測する。このときの視野は特に限定されないが、過度に広い場合、つまり低倍率の場合には、解像度が低くなるため領域数が低めに計測される傾向があり、過度に狭い場合、つまり高倍率の場合には、解像度は高いものの測定点ごとのばらつきが大きくなり、領域数の信頼性が低下する傾向がある。したがって、次の方法により計測することが好ましい。すなわち、サンプルのめっき層表面における任意の場所30点について、倍率を1000倍として表面観察を行う。得られた30枚の観察像について任意に設定した0.1mm×0.05mmの視野中にあるクラックに囲まれた領域の個数(クラック個数)を計数する。計数方法は特に限定されず、適切な画像解析手段を用いればよい。30枚の観察像から求めたクラック個数の平均値を算出し、これを200倍した値をクラック密度(1mm当たりのクラック領域の個数)とする。
こうして求められたクラック密度が2000個/mm以上150000個/mm以下の場合には、密着性に優れた塗装金属材が得られる。クラック密度の好ましい範囲は3000個/mm以上100000個/mm以下であり、3000個/mm以上50000個/mm以下であれば特に好ましい。
なお、厳密にいえば、観察像を得たときのSEMの加速電圧といった装置上の影響、観察した表面に残留する非導電性材料(例えば化成皮膜を構成する材料)の濃度といった試料上の影響などにより、測定されるクラック密度は変動する可能性がある。しかしながら、そのような変動要因を通常考えられる範囲で考慮しても、クラック密度が上記の範囲であれば、密着性に優れた塗装金属材が安定的に得られる。
本発明に係る亜鉛系めっき層におけるクラック形成方法は特に限定されない。化学的な処理によりクラックを形成させてもよいし、熱的または物理的な処理によりクラックを形成させてもよい。
クラックの形成しやすさおよび形成されるクラックのクラック密度の制御性の高さの観点から、化学的な処理によりクラックを形成することが好ましい。化学的な処理では、酸やアルカリのようなめっき層を構成する材料、特に亜鉛、を溶解させる処理液とめっき層とを接触させることにより、亜鉛の溶解に伴ってめっき層内に蓄積された応力が緩和されてクラックが形成される。
このようなクラックを発生させることが可能な亜鉛系めっきとして、具体的に、Ni:3質量%以上18質量%以下、Co:0.02質量%以上3質量%以下、Mn:25質量%以上45質量%以下、Cr:8質量%以上20質量%以下からなる群から選ばれた一種または二種以上を含む亜鉛合金めっきが例示される。
これらの中でも、ニッケル含有量が11質量%以上15質量%以下である亜鉛―ニッケル合金めっきが特に優れた耐食性を有する塗装金属材が得られるため、好ましい。より好ましいニッケル含有量の範囲は、11.5質量%以上13.5質量%以下である。
なお、亜鉛系めっき層が亜鉛―ニッケル合金めっきから構成される場合には次のような方法でクラックを発生させることが好ましい。すなわち、このめっきは、一般的に酸性浴を用いて処理が行われる。そのような処理では、特許文献4に記載されるように複数種のめっきセルからなる設備が使用される場合が多い。そこで、最終の1または2セルを通電せず、無通電でめっき液中に浸漬することにより、めっき液に含まれる酸がめっき層表面から亜鉛を溶解し、めっき層の表面にクラックを簡便にかつ安定的に発生させることができる。
3.化成皮膜
本発明に係る塗装金属材は、上記のめっき層上に化成皮膜(化成処理により形成された皮膜)を有する。本発明において、化成皮膜は、環境の観点よりクロムを全く含有しない、いわゆるクロムフリー化成皮膜とする。
この化成皮膜の組成、膜厚は限定されない。めっき層と塗膜との密着性を確保するものであればどのような組成でもかまわないが、密着性に加え、耐食性を向上させるものがより好ましい。
このような密着性および耐食性の双方を向上させる観点から、化成皮膜として無機化成皮膜または無機有機複合化成皮膜を適宜設定すればよい。そのような化成皮膜は、次の成分を有する化成処理液を用いて化成処理を行うことにより得られる。
無機化成皮膜の場合には、シランカップリング剤、シリカ微粒子、バナジウム化合物やチタン化合物、ジルコニウム化合物、リン酸化合物などから選ばれる1種以上の無機系材料を含有する化成処理液を用いればよい。これらのなかでも、シランカップリング剤およびシリカ微粒子から選ばれる1種または2種の無機系材料を含有する化成処理を用いて得られる化成皮膜が特に好ましい。
一方、無機有機複合化成皮膜の場合には、上記の無機化成皮膜のための化成処理液に含有される無機系材料に加え、水溶性または水分散のウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などから選ばれる1種以上の有機系材料を含有する化成処理液を用いればよい。
シランカップリング剤は、アルコキシ基が加水分解して水酸基となり、水酸基同士が縮合することで、架橋シロキサン結合を骨格とする皮膜を形成する。アルコキシ基が少ないと、架橋反応が遅延し、めっき層との密着性が低下することがある。一方、有機官能基が少ないと、塗膜との密着性が低下することがある。これらの点から、シランカップリング剤はトリアルコキシル型であることが好ましい。本発明で使用するのに適したシランカップリング剤の具体例としては、下記の化合物(慣用名も含む。)を例示することができるが、これらに限定されるものではない:
ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、N-(2-アミノメチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノメチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、およびテトラメトキシシラン。
シリカ微粒子としては、液相シリカ、気相シリカの2種類が存在するが、これらのいずれかを用いてもかまわない。なお、シリカ微粒子は、化成皮膜を形成する化成処理液に分散させた状態での粒径が小さければ小さいほど、シリカ微粒子とめっき層との相互作用が生じやすくなるため、好ましい。
バナジウム化合物としては、バナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
チタン化合物としては、Tiアルコキシド、あるいは塩基性Ti炭酸塩、Tiフッ化物、Ti含有有機キレート、Ti含有カップリング剤(Tiアルコキシドにエポキシ基、ビニル基、アミノ基、メタクリロキシ基などの有機官能基が結合した化合物)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
ジルコニウム化合物としては、Zrアルコキシド、あるいは塩基性Zr炭酸塩、Zrフッ化物、Zr含有有機キレート等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
リン酸化合物としては、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
化成皮膜の付着量は20mg/m以上1000mg/m以下であれば良好な密着性、耐食性を安定的に確保できる。付着量が過度に少ない場合にはめっき層上の化成皮膜が十分に存在しておらず、優れた密着性を発現するのが困難になる。一方、付着量が過度に多い場合には化成皮膜自体が凝集破壊してしまう可能性がある上、コストが高くなってしまう。
化成皮膜の製造方法は限定されない。化成皮膜を形成する化成処理液に適した処理方法を適宜実施すればよい。
4.樹脂皮膜
本発明に係る塗装金属材は、化成皮膜の上に設けられる皮膜として樹脂皮膜を備える。ここで、「樹脂皮膜」とは、皮膜を形成するための塗料組成物を構成する成分の一つであるバインダー成分が主として樹脂から構成されるものをいう。
樹脂皮膜を形成するための塗料組成物は、バインダー成分のほかに、必要に応じて、顔料および樹脂粒子などの他の成分を有し、これらが媒体に溶解および/または分散したものである。以下に塗料組成物を構成する成分について説明する。
(1)バインダー成分
バインダー成分は、バインダー成分の主成分となる樹脂であるバインダー樹脂、硬化剤、およびその他の成分から構成される。以下に各成分について詳しく説明する。
A)バインダー樹脂
本発明に係るバインダー樹脂は、主樹脂が水溶性または水分散のウレタン樹脂からなる。ここで、「主樹脂」とは、含有量が全バインダー樹脂に対して60質量%以上をなし、バインダー樹脂の主成分となる樹脂をいう。水分散のウレタン樹脂の場合、エマルジョン粒子径として、10nm以上100nm以下、より好ましい範囲としては、20nm以上60nm以下である。粒子径が過度に小さいものはコスト高になることが懸念される。一方、粒子径が過度に大きいものは、塗膜化した際にエマルジョン同士の隙間が大きくなり塗膜としてのバリア性が低下するが懸念される。ウレタン樹脂のタイプとしては、エーテル系、ポリカーボネイト系、エステル系、アクリルグラファイトタイプ等あるが、これらの単独または、混合系を用いてもよい。
本発明に係る樹脂皮膜におけるバインダー樹脂は、水溶性または水分散のウレタン樹脂のうちTg≧40℃のものを含有する。Tgが比較的高いため、樹脂皮膜における表面の硬度が比較的高く摺動性に優れる。このためプレス加工においてカジリが発生しにくい。また、硬度が高いことから耐疵付き性、耐プレッシャーマーク性にも優れる。しかも、バリア性が高いため、耐食性にも優れる。
このようにTgが高い水溶性または水分散のウレタン樹脂を用いることにより優れた特性を有する樹脂皮膜が得られるが、二次加工の程度によっては、加工部における塗膜の割れを抑制したり塗膜密着性を高めたりする必要がある場合がある。そのような場合の具体例として、変形量の大きいプレス加工や曲げ量の多い曲げ加工があげられる。そのような用途の場合には、目的に応じてTgの低い水溶性または水分散のウレタン樹脂を適量含有させて、塗膜自体の加工性および加工部における塗膜密着性を高めてもよい。具体的には、Tg≧40℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(A)およびTg≦0℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(B)を、樹脂固形分比率で(A):(B)=100:0〜40:60で含有させればよい。
B)硬化剤
硬化剤は水溶性のものを用いることが好ましく、具体的には、メラミンを用いることが好ましい。硬化剤の添加量は、樹脂固形分100質量部に対して5質量部以上30質量部以下とすることが好ましい。ここで、「樹脂固形分」とは、塗料組成物を焼き付けた際の固形分(樹脂皮膜)のうち、バインダー成分に由来する固形分をいう。したがって「樹脂固形分に対する質量%」とは、実質的に、バインダー成分のみを硬化させたときの重量計測値を100%としたときの質量割合をいう。
添加量が5質量部未満の場合には、主樹脂がポリエステル樹脂のときには特に、樹脂と硬化剤との十分な架橋反応が期待できず、樹脂皮膜としての性能が不十分となることが懸念される。一方、添加量が30質量部より多くなると架橋反応が進みすぎて樹脂皮膜が過度に硬くなり、加工性の低下が懸念されるようになる。なお、好ましい硬化剤の種類としては、優れた加工性と適度な硬度との両立の観点から、樹脂皮膜表面に濃化しやすい表面自由エネルギーの比較的小さい硬化剤を用いることが好ましい。具体的には、メチル化メラミンやブチル化メラミン等が挙げられる。
C)硬化触媒
バインダー成分は硬化触媒を含むことが好ましい。硬化触媒の役割の一つとして、硬化剤同士の自己縮合反応の促進や硬化剤と樹脂との架橋反応の促進等が挙げられる。また上記の表面自由エネルギーの小さなメチル化メラミンやブチル化メラミンを用いることで、樹脂皮膜表面に硬化剤が表面に濃化し、架橋反応、自己縮合反応も促進される。このため、表面近傍の樹脂皮膜は耐溶剤性および耐薬品性が特に向上する。しかも、樹脂皮膜が後述する樹脂粒子を含有する場合には、表面に濃化した硬化剤によって樹脂皮膜の表面近傍の硬度が上昇し、プレス加工時に樹脂粒子が欠落しにくくなる。
さらに、表面に硬化剤が濃化することで、樹脂皮膜の表面部は硬質であるが樹脂皮膜内部は相対的に軟質となる構成が実現される。このため、プレス加工時に樹脂皮膜表面部の変形することに起因する不具合(カジリ)を抑制しつつ、プレス加工に伴う金属基材の変形に樹脂皮膜全体が追随できないこと起因する不具合(樹脂皮膜の割れ)を抑制することが可能となる。しかも、樹脂皮膜の表面部は硬質であるから優れたバリア性が確保される。したがって、1層の着色塗膜でありながら平面部耐食性および二次加工性、特にプレス加工性をバランスよく向上させることが実現される。
硬化触媒としては、ドデシルベンゼンスルフォン酸または、パラトルエンスルフォン酸が適しており、これらの触媒の中でも、アミンブロック化触媒を用いることが硬化剤をより表面濃化させる観点から特に好ましい。硬化触媒の添加量は、塗料100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下とすることが好ましい。添加量が過度に少ない場合には、硬化触媒としての効果、すなわち硬化の促進が十分に行われないことが懸念される。一方、添加量が過度に多い場合には、架橋等が進みすぎて樹脂皮膜の外観に不具合が発生するなど新たな問題を生ずることが懸念される。
(2)顔料
本発明に係る樹脂皮膜に含有される顔料は、必要に応じ着色顔料、防錆顔料および光輝顔料、さらには熱放射性などの他の機能を有する顔料も含有する。
本発明では、樹脂皮膜に含有される顔料のうち、結晶性かつ平均粒径1mm以上のものの含有量が、当該皮膜の塗料固形分における5質量%以下である。
ここで、顔料における「平均粒径」とは、樹脂皮膜中に存在する顔料が単独で存在する場合は平均1次粒径を指し、顔料同士が凝集して存在する場合は凝集時の顔料の粒径を表す平均2次粒径を意味し、次の計測方法で求めることが好ましい。まず、塗膜層が形成された塗装鋼板を切断してその断面を露出させ、その断面をさらに研摩する。こうして得られた断面をSEMで観察して、樹脂皮膜中の断面の観察像を得る。その観察像の視野に存在する顔料から数個を選び出し、それぞれの顔料の長辺長さと短辺長さを測定し、これら長辺の平均値と短辺の平均値を算出し、さらにこれらを平均して平均1次粒径を算出する。
なお、平均1次粒径の数値は計測方法によって若干変動する。例えば、粒度分布計を用いる場合には測定原理によって、画像解析の場合には画像処理方法によって変動しうる。しかしながら、本発明において規定される顔料の粒径の範囲はこうした変動を考慮したものであり、いずれの方法によって得られた粒径であっても、本発明に規定される範囲であれば、所期の効果を得ることが安定的に実現される。
また、「塗料固形分」とは樹脂皮膜を形成するための塗料からなる塗料層を焼き付けた際の固形分を意味し、この「塗料」には化成皮膜を形成するための化成処理液は含まれない。塗料固形分の質量は次のようにして計測される。すなわち、所定量の塗料または塗料原料(バインダー樹脂等)をオーブンに入れ、その質量を計測しながらオーブン内を加熱して塗料または塗料原料を固化させる。オーブン内の質量変化がなくなるまで固化させたときの固化物の質量計測値を塗料固形分の質量と定義する。したがって、「塗料固形分に対する質量%」とは、この重量計測値を100%としたときの質量割合をいう。この塗料固形分を構成する成分として、バインダー成分、顔料、および樹脂粒子などの他の成分が挙げられる。
本発明において樹脂皮膜に含有される顔料を分類すると、次のa)〜c)のようになる。
a)結晶性を有さない、すなわち非晶質であって、平均粒径および含有量は任意、
b)結晶性を有し、平均粒径が1μm未満であって、含有量は任意、
c)結晶性を有し、平均粒径が1μm以上であって、含有量は塗料固形分比で5質量%未満。
顔料がこれらの態様に分類される理由は、次のとおりである。
塗装鋼板にプレス等による加工が施される場合、金型との接触によるに摺動により、樹脂皮膜に大きな剪断力が加わる。この剪断力が過大であると、カジリと呼ばれる樹脂皮膜の破壊(疵付き)が発生する。従って、樹脂皮膜としての凝集力が大きいことが必要となるが、発明者等が検討した結果、樹脂皮膜が顔料を含有する場合には、含有する顔料によっては、上記の剪断力によって顔料の凝集破壊が生じることがあり、これが樹脂皮膜の凝集力を低下させることが明らかとなった。具体的には、結晶性で劈開性を有する顔料の場合に、顔料の凝集破壊が生じ易い。従って、結晶性を有さない(非晶質)のものであれば、劈開性を有さないので、樹脂皮膜に含有させる顔料として好適である。
樹脂皮膜に含有される顔料が結晶性で劈開性を有する場合であっても平均粒径が1μm未満であれば、これを含有させても、樹脂皮膜の凝集破壊に与える影響は軽微である。これは次の理由であると推測される。すなわち、顔料の平均粒径が1μm未満であれば、顔料が凝集破壊したことによって樹脂皮膜内に発生する破断面は小さい。このため、顔料の凝集破壊に起因する樹脂皮膜の凝集力の低下は少ない。それゆえ、顔料において生じた破断が樹脂皮膜の他の領域、特にバインダー成分内に進展して樹脂皮膜の凝集破壊に至る事態になりにくい。なお、顔料の破断により顔料のかけらが樹脂皮膜から脱落してプレス金型と樹脂皮膜との間に入り込み、この顔料のかけらがプレス加工における剪断力によってプレス金型と樹脂皮膜との間を移動することがあっても、生成した顔料のかけらは1μmよりも十分に小さいため、樹脂皮膜が顔料によってアブレシブ摩耗される可能性は十分に低いと考えられる。
また、樹脂皮膜に含有される顔料が結晶性で劈開性を有し、かつ平均粒径が1μm以上である場合であっても、その含有量が塗料固形分として5質量%以下であれば、これを含有させても、樹脂皮膜の凝集破壊に与える影響はやはり軽微である。これは次の理由であると推測される。すなわち、顔料の含有量が塗料固形分として5質量%以下であれば、樹脂皮膜内に分散する顔料同士は互いに十分に離間しており、個別にバインダー成分により保持された状態となっている。このため、一つの顔料が凝集破壊したとしてもこれに起因する樹脂皮膜としての凝集力の低下は局所的であり、その周囲にある他の顔料までが凝集破壊する可能性は低い。それゆえ、個々の顔料の破壊は生じるものの、それが樹脂皮膜全体の大規模な凝集力低下をもたらしていないものと推測される。
なお、上記のa)およびb)においては顔料の含有量は任意であり、a)では平均粒径も任意であるが、耐食性など他の特性を安定的に得る観点から、それらの上限は顔料の特性に応じて適宜設定される。
A)着色顔料
樹脂皮膜を特定の色調に調色するために添加する着色顔料として、安価、安全、耐水性、耐候性に優れる無機系の顔料を用いることが好ましい。また着色顔料に加え、カーボンブラックまたは、チタニアのいずれか一方または両方の顔料が含有されていると、樹脂皮膜自体の熱放射性が向上する。したがって、熱放射性が求められる電気・電子機器の筐体に適用する場合にはこれらの顔料を含有させることが好ましい。
また、樹脂皮膜の加工性、薄膜での隠蔽性等を確保する上で、これら着色顔料の粒径は0.5μm以下であることが好ましい。
本発明の好適態様によれば、塗装金属板の表面色調を測定したときに、JIS Z8729に規定されるL*a*b*表色系でL*≦50であることが、金属基材を完全に隠蔽することができるため好ましい。このような色調をもたらす好ましい樹脂皮膜は、着色顔料としてカーボンブラックを含有する樹脂皮膜である。さらに、60°鏡面光沢度が50を超えると,擦り傷等の表面欠陥が目立ち易くなるため,この光沢度は50以下であることが望ましい。
B)体質顔料
樹脂皮膜は体質顔料を含有してもよい。体質顔料は、それ自体に着色力、隠蔽力はないものの、他の顔料の希釈や増量の目的や樹脂皮膜の強度向上の目的で使用される顔料であり、具体的には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリンなどが例示される。これらは結晶性であり、特にタルクやカオリンは劈開性を有しているため、これらを用いる場合には平均粒径および/または含有量を適切にする必要がある。
C)光輝顔料
メタリック調などの意匠性が求められる用途に適用する場合には、マイカやアルミフレーク等の光輝顔料を添加することで、メタリック調を発現させることができる。これら光輝顔料についての顔料の平均粒径は、樹脂皮膜厚の4倍以下程度が好ましい。また、添加量としては、加工性、特にプレス加工性を確保する上で、光輝顔料と上記防錆顔料の総量(平均平均粒径0.5μm以上の顔料)として、塗料固形分に対して15質量%以下にすることが好ましい。
なお、放熱性を損なわないためには、アルミフレークよりも熱放射性の比較的高いマイカが適している。なお、これら光輝顔料については、要求されるメタリック調の種類により、マイカ、アルミフレーク2種類をブレンドして使用してもかまわない。
また、これら光輝顔料については、0.5μmよりも大きな粒径となっており、添加量を増大することで、加工性、平面部の耐食性が低下することが懸念される。好ましい添加量としては、上記性能を確保する上で、光輝顔料を含む0.5μmよりも大きい顔料全体として、塗料固形分に対して20質量%以下とすることが好ましい。
D)防錆顔料
樹脂皮膜に添加する防錆顔料として、吸油量が50ml/100g以上1000ml/100g以下であって平均粒径が10μm以下である多孔質シリカが適している。他のリン酸系防錆顔料、イオン交換シリカを単独で用いた場合には、多孔質シリカと同添加量入れた際に十分な耐食性向上効果が得られず、また、多孔質シリカと同じような耐食性性能を発現するために大量に防錆顔料を添加すると樹脂皮膜自体の加工性を損なうとともに、意匠性を損なうという問題もある。
吸油量を50ml/100g以上1000ml/100g以下としたのは、50ml/100g未満の場合には十分な耐食性が得られず、1000ml/100gを越える場合には塗料粘度の上昇が著しくなってしまうためである。また、平均粒径が10μmを越えると、樹脂皮膜の厚さに比べて過度に大きいため顔料の脱落の可能性が高まり、耐食性への悪影響を及ぼすことが懸念される。なお、平均粒径の下限は特に限定されない。
多孔質シリカの塗膜への適切な添加量は、塗料固形分に対して5質量%以上15質量%以下であり、より好ましい範囲は、塗料固形分に対して5質量%以上10質量%未満である。5質量%未満であると十分な耐食性効果は得られず、15質量%より多くなると、樹脂皮膜の加工性を損なうとともに樹脂皮膜中に添加可能な着色顔料の添加量が減少するため、意匠性、特に隠蔽性、色調安定性を損なう。
なお、防錆顔料については、色調安定性、隠蔽性、プレス加工性等が確保できる範囲であれば、多孔質シリカ以外の他のリン酸系防錆顔料、イオン交換シリカ等を併用することも可能であるが、加工性、特にプレス加工性を確保する上で、防錆顔料を含む0.5μmよりも大きい顔料全体として、塗料固形分の20質量%以下であることが好ましい。
(3)その他の成分
上記のバインダー成分および顔料以外に樹脂皮膜中に含まれる成分として、レベリング剤、樹脂粒子、溶接性や電磁波シールド性を向上させるための導電粉、耐候性を改善するのに有効な紫外線吸収剤および光安定剤、プレス加工性の改善に有効なワックス等が挙げられ、これらを必要に応じて適宜含有させてもよい。
これらの中でも、樹脂皮膜は樹脂粒子を含有することが好ましい。この樹脂粒子は、プレス加工時に樹脂皮膜と金型との接触面積を減らし、潤滑性を向上させる役割と、樹脂皮膜と金型とが直接接触して塗膜が傷つくことを抑制する役割を有する。樹脂粒子の種類としては、アクリル樹脂ビーズ、PTFE樹脂等が挙げられる。これら樹脂粒子は、主樹脂であるポリエステル、ウレタン樹脂よりも硬度が高く、かつTgも高いために、連続プレス時に金型が高温になった際も安定した潤滑性と樹脂皮膜の保護が可能である。樹脂粒子の平均粒径としては、特に制限はないが、好ましくは、樹脂皮膜の厚さの2倍以内であることが好ましい。2倍以上であれば、プレス加工時に樹脂粒子が欠落しやすくなる。このため、樹脂皮膜に傷を付ける可能性、および塗装時にロールギャップを通過しない可能性が高まる。なお、アクリル樹脂、PTFE樹脂に関しては、プレス条件にもよるが、2種類共に塗料中に添加することが好ましい。樹脂粒子の添加量としては、塗料固形分に対して、0.5質量%以上15質量%未満、より好ましい範囲としては、1質量%以上10質量%未満である。また、金型との潤滑性を向上させる手法としては、上記樹脂に加え、ポリオレフィン系、マイクロクリスタリン等の低Tgのワックス樹脂を添加しても良い。
(4)樹脂皮膜の厚さ
樹脂皮膜の厚さは、2μm以上15μm以下の範囲であることが好ましい。2μm未満では、樹脂皮膜の隠蔽性が劣るほか、平面部の耐食性も低下することが懸念され、15μmを超える場合にはコスト面において不利となる。樹脂皮膜の厚さは3μm以上10μm以下であればさらに好ましく、4μm以上9μm以下が特に好ましい。
5.溶媒・分散媒
化成皮膜を形成するための処理液、および樹脂皮膜を形成するための塗料組成物における媒体(溶媒・分散媒)は、水を主成分とする。溶質・分散質の溶解・分散を良好にするために、水に対する溶解度が高い極性を有する液状有機物(極性有機溶媒)、例えばアルコール、エーテル、ケトンなどを水とともに使用してもよい。
ここで、後述するように、樹脂皮膜の焼付け温度は水の沸点よりも十分に高い温度となる場合が多い。このため、媒体の沸点が100℃以下の場合には、焼付け工程において塗料の主たる媒体である水(沸点は100℃)を含め媒体全体が速やかに蒸発し、塗装時に発生した塗膜表面の凹凸が平滑化する前に、塗料が固化してしまうことが懸念される。このとき、外観は平滑性に優れず、しかも色調が局所的に異なる領域がスポット状に形成されてしまう。
このような不具合を回避するためには、水よりも沸点が高い物質を媒体として含有させて、媒体全体の沸点を高めることが好ましい。そのような高沸点媒体としてブチルセロソルブが例示される。高沸点媒体の水に対する添加量は、添加される高沸点媒体の特性や塗料組成物の他の成分の含有量を考慮して、外観不良の発生を抑制しつつ焼付けのための投入エネルギーが最小になるように、適宜設定すればよい。例えば、沸点が160℃以上の物質を媒体として含有させる場合には、その含有量を塗料組成物に含有される水分量の3質量%以上とすれば、良好な外観を有する樹脂皮膜を安定的に得ることが実現される。
6.製造方法
本実施形態に係る塗膜層の製造方法は特に限定されない。まず、常法にしたがって、金属基材に上記の化成処理液を接触させ、引き続いてこれを焼き付けて化成皮膜が表面に形成された金属材を得る。金属基材と化成処理液との具体的な接触方法として、浸漬、スプレー、ロールコートなどが例示される。
次に、上記の塗料組成物を、化成皮膜が形成された金属材の上に任意の方法で所定の厚さで塗布し、化成皮膜上に塗料層が形成された金属材を得る。具体的な塗布方法として、浸漬、スプレー、ロールコート、バーコーターやドクターブレードによるコーティングが例示される。
続いて、この塗料層が形成された金属材の焼付けを行って、媒体を揮発させるとともにバインダー成分を硬化させると、固体の樹脂皮膜を備える金属材、すなわち塗装金属材が得られる。
化成皮膜および樹脂皮膜の焼付け温度は、化成処理液、塗料の組成や求められる特性に応じて最適な温度を適宜選択すればよい。
化成皮膜の焼き付け温度は特に限定されない。例えばPMT(基板の最高到達温度)を80℃以上とするなどにより皮膜を乾燥させることで、一般的には十分な耐食性、導電性、塗膜密着性等の要求性能を満足する化成皮膜が得られる。
一方、樹脂皮膜の焼き付け温度に関しては、PMTで170℃以上であることが好ましい。170℃未満であると、樹脂皮膜の架橋開始温度に十分に達していないため樹脂皮膜が未硬化な状態になる可能性がある。
化成皮膜および樹脂皮膜の焼付け時間は、それぞれ、焼付け温度との兼ね合いで適宜選択すればよい。
なお、本実施形態の塗装金属材上に、さらに付加機能を有するクリア塗料および/または着色塗料を塗布してもよい。そのような塗料を塗布することで、従来の3コート3ベークの塗装工程で、従来の塗装金属材にない新たな性能を有する塗装金属材を安価で製造することが可能となる。付加機能としては、光触媒機能等を有する耐汚染性、防臭、消臭性等が挙げられるが、これに限らない。
7.筐体
本発明に係る塗装金属材に対して適宜二次加工、具体的には切断加工、曲げ加工、プレス加工など、を行うことにより、製品またはその内部部品を収容する箱状体である筐体を形成することができる。この筐体において、上述のめっき層および塗膜層を有する面が外側、すなわちおもて面をなすことが好ましい。
この場合における筐体の内部側を向いた面、すなわちうら面における表面処理は特に限定されない。耐食性などの観点からは、うら面についても、金属基材の表面にはめっき層および/または化成皮膜、さらには樹脂皮膜が形成されていることが好ましい。うら面が化成皮膜を備える場合において、その付着量は、次に示すように、用途に応じて適宜設定すればよい。
i)おもて面と同様に化成皮膜上に一層の樹脂皮膜を有する場合
この場合、おもて面と同様の化成処理を施すことで、良好な密着性、耐食性を確保できる。すなわち、この場合における好ましい付着量は20mg/m以上1000mg/m以下である。
ii)化成処理のみの場合
導電性等が要求される場合に使用されることが好ましく、この場合、好ましい化成皮膜の付着量としては、100mg/m以上1000mg/m以下であり、良好な導電性および耐食性を確保できる。付着量が過度に少ない場合にはめっき表面上の化成皮膜が十分に存在しておらず、優れた密着性を発現するのが困難になる。一方、付着量が過度に多い場合には化成皮膜自体の凝集破壊してしまう可能性がある上、コストが高くなってしまう。また、化成処理液自身も、耐食性を考慮して防錆機能を有する材料(防錆添加剤:バナジウム化合物,チタン化合物,マンガン化合物,リン酸化合物等)を含んだ系とすることが好ましく、プレス性を確保のためにワックス等を添加した系を用いることも可能である。
1.鋼板サンプルの作製
(1)めっき鋼板
基材の亜鉛系めっき鋼板として、下表に示す亜鉛−ニッケル合金電気めっき鋼板(SZ)、電気亜鉛めっき鋼板(EG)を使用した。鋼板はいずれも250×300mmのサイズであった。
亜鉛−ニッケル合金電気めっき鋼板については、次の方法でその表面にクラックを発生させた。
すなわち、電気めっきラインでの最終の1,2セルを無通電浸漬処理することで,クラックを発生させた。また、ラインスピード、めっき液pH、および無通電セルの数を調整することでクラック密度を増減させた。
クラックを有する亜鉛−ニッケル合金電気めっき鋼板の表面におけるクラック密度を、次の方法で測定した。
SEM観察で用いたSEMは、(株)日立ハイテクサイエンスシステムズ社製S−3400N型走査電子顕微鏡で、加速電圧25.0kVのSE像にてクラックを観察し、1000倍の画像を用いて、無作為に30枚撮影し、各写真にて無作為に選択した0.1mm×0.05mmの範囲で、クラックに囲まれた領域(クラック領域)の個数、すなわちクラック個数を測定した。
クラック個数は、次のようにして求める。図1(a)は、クラックを有する亜鉛−ニッケルめっき鋼板のある表面SEM像の一例である(クラック密度4000個/mm)。このSEM像で、0.1mm×0.05mmの範囲(計測範囲)にクラック領域の全体が入っている場合には、図1(b)のように、そのクラック領域を囲むクラックを実線で表す。一方、計測範囲にクラック領域の一部が入っている場合には、そのクラック領域を囲むクラックのうち、計測範囲外へと延びるものおよび計測範囲外にあるものを、図1(b)のように点線で囲む。こうして計測範囲内に少なくとも一部が含まれるクラック領域を特定したのち、実線のみで囲まれているクラック領域、すなわち全体が計測範囲に含まれるクラック領域の個数(第1のクラック個数)および一部が点線で囲まれているクラック領域、すなわち一部が計測範囲外にあるクラック領域の個数(第2のクラック個数)を求める。そして、第1のクラック個数+第2のクラック個数/4を一つの計測範囲におけるクラック個数とする。
上記の測定方法によれば、図1(b)に示される計測範囲におけるクラック個数は、15+22/4=205個となる。
さらに、30枚の写真の各計測範囲におけるクラック領域数の平均値を算出し、200倍した値をクラック密度とした。図1の写真の鋼板のクラック密度は、4000個/mmであった。
参考までに、図2〜図5に、それぞれクラック密度が300個/mm、2000個/mm、3000個/mm、10000個/mmのサンプルについての30か所の写真のうちの代表的な表面SEM像を示す。
各基材めっき鋼板の両面に、常法に従ってアルカリ脱脂及び水洗を行った後、下記に示す工程を行い、塗装鋼板を作製した。
(2)化成処理液
化成処理液については、市販の薬液(日本ペイント(株)製 EC2330)を用いた。この薬液は、シランカップリング剤、気相シリカ、V系化合物、Zr系化合物、ウレタン樹脂等を含む無機有機複合化成処理液である。
(3)着色塗料
使用した水分散または水溶性樹脂に関しては、表2記載のとおりである。
これら樹脂にメラミン系の硬化剤(住友化学社製 スミマールM−50W)を塗料固形分に対して15質量%添加したベース樹脂を作製し、そのベース樹脂に着色顔料、防錆顔料等を添加して、表3に示される着色塗料を作製した。なお、作製した着色塗料には、塗料重量に対して0.2質量%の硬化触媒(三井サイテック社製 キャタリスト4050)を添加した。媒体(溶媒・分散媒)は水であった。
また、高沸点媒体としてブチルセロソルブ(沸点171℃)を、塗料に媒体として添加された水分の重量に対して表4に示す量を添加した着色塗料を、ロールコートにより塗装し、焼き付けを行うことで塗装金属板を得た。これらの塗装外観を評価した。
なお、表3に示される塗料に含有された顔料は具体的には次のとおりである。
・CB:三菱化学(株)製カーボンブラック MA100
・シリカ:富士シリシア化学社製 サイロマスク(Ca0%タイプ)吸油量50ml/100g以上、平均粒径1.0μ以上
・タルクA:平均粒径8μm
・タルクB:平均粒径4μm
・タルクC:平均粒径0.8μm
また、表3中、樹脂添加量は塗料固形分に対する質量%を表す。
(3)おもて面(意匠面)のサンプル作製
上記の化成処理薬液を作製し、めっき鋼板上にバーコーターを用いて塗布し、板の最高到達温度(PMT)が10秒で80℃になるように加熱し、おもて面の化成処理皮膜を形成した。
化成処理付着量は、各処理液50mg/mになるようにバーコーターの番手、希釈等で調整した。
次に表3に記載の着色塗料を用い、化成処理皮膜が形成された鋼板サンプルにバーコーターを用いて塗布し、板の到達温度が50秒で180℃となるように加熱し、おもて面の上塗り塗膜を形成した。溶剤の添加、バーコーター番手変更をすることで膜厚調整した。
基材、化成処理、着色塗膜の組合せで作製したサンプルを表3に示す。
2.評価方法
(1)曲げ加工性
試験片に対して0T折り曲げ試験(23℃)を行い、180°密着曲げ塗膜についてクラック発生有無について10倍ルーペを用いて調査した。評価基準は下記の通りであり、○を合格とした:
○ : クラックなし
× : クラックあり
(2)摺動性
プレス加工性の代用特性として、ピンオンディスク型摩耗試験器を用い塗膜の摺動性を評価した。試験条件は次の通りであった:
ピン先端形状 : 直径3/16inchの球形状
ディスクにおけるピン接触位置 : 中心から10mm
温度 : 75℃
加重 : 30N
回転速度 : 1rpm
15周回転させた後のディスク表面を目視で観察し、下記の判定基準で評価した。◎、○を合格とした:
◎ : 15周で塗膜かじりなし
○ : 10〜15周で塗膜かじり発生
× : 9周以下で塗膜かじり発生
なお、「塗膜カジリ」とは、塗膜のピンへの凝着、塗膜の局所的な割れなどによって、摺動面の面性状が著しく低下した状態をいう。
(3)加工部塗膜密着性
サンプルを常温密着曲げ実施し、曲げ部をセロハンテープで貼付、常温で1hr静置後テープを剥離:
テープの粘着面に付着している塗膜を目視で観察し、下記の判定基準で評価した。○以上を合格とした:
◎ : 塗膜剥離無し
○ : 一部塗膜剥離発生、
△ : 塗膜発生、素地露出
× : 曲げ部全体で塗膜剥離
(4)耐食性
70mm×150mmサイズの試験辺の4辺をシールし、JIS2371に指定された条件で塩水噴霧試験を実施し、試験後サンプルの平面部の腐食面積率を求めて評価した。判定基準は下記の通りであり、◎および○を合格とした:
◎ : 240時間後白錆発生無し、
○ : 120時間後白錆発生無し、240時間後白錆発生有り
△ : 120時間後白錆発生有り(点状)
× : 120時間後赤錆発生有り、全面白錆発生有り。
(5)塗装外観
◎ : ロール目が目立たない
○ : ロール目が目立つ部分がある
× : ロール目が目立つ上に、色調のムラが顕著である
結果を表3および4に示す。本発明に規定のものは、加工性、摺動性、加工部塗膜密着性、耐食性に優れた。また、着色塗料の媒体が高沸点媒体を適切な量含む場合には、ロール目が特に目立たなくなり、特に好ましい結果が得られた。

Claims (6)

  1. 金属基材と、
    当該金属基材上に設けられた亜鉛系めっき層と、
    当該亜鉛系めっき層上に設けられたクロムフリーの化成皮膜と、
    当該化成皮膜上に設けられた2〜15μmの厚さの樹脂皮膜とを備え、
    当該樹脂皮膜は、Tg≧40℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(A)およびTg≦0℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(B)を、樹脂固形分比率で(A):(B)=100:0〜40:60で含有する塗料組成物から形成されたものであって、
    前記樹脂皮膜が顔料を含有する場合には、その含有される顔料のうち、結晶性かつ平均粒径1mm以上のものの含有量が当該皮膜の塗料固形分における5質量%以下であること
    を特徴とする塗装金属材。
  2. 前記亜鉛系めっき層は、
    ニッケル含有量が11質量%以上15質量%以下である亜鉛−ニッケル合金めっきからなるとともに、
    前記化成皮膜との界面にクラックを有し、前記樹脂皮膜を除去して得られる、少なくとも前記金属基材と前記亜鉛系めっき層とを備える部材の表面を走査型電子顕微鏡により観察したときに、観察像に見られるクラックで囲まれる領域数が2000個/mm以上150000個/mm以下である、
    請求項1記載の塗装金属材。
  3. 前記化成皮膜の付着量が20mg/m以上1000mg/m以下であることを特徴とする請求項1または2記載の塗装金属材。
  4. 表面色調がJIS Z8729のL*、a*、b*表色系でL*≦50であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の塗装金属材。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の塗装金属材をその樹脂皮膜が形成された面が外側になるように用いてなることを特徴とする筐体。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載される塗装金属材が備える樹脂皮膜を形成するための塗料組成物であって、Tg≧40℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(A)およびTg≦0℃である水溶性または水分散のウレタン樹脂(B)を、樹脂固形分比率で(A):(B)=100:0〜40:60で含有するとともに、当該塗料組成物に含有される水分量の3質量%以上の含有量で、沸点が160℃以上の物質を媒体として含有する塗料組成物。
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