JP6742142B2 - めっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、めっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法に関する。
溶接軽量H形鋼等の様々な軽量形鋼が知られている。このうち、溶接軽量H形鋼は、熱間圧延鋼帯、冷間圧延鋼帯、又は、めっき鋼帯を利用し、連続した高周波抵抗溶接又は高周波誘導溶接の併用によって成形されたH形鋼である。溶接軽量H形鋼は、主に、プレファブ住宅・構造物の柱・梁等の建築構造材として用いられる。近年、溶接軽量H形鋼は、鉄骨造だけでなく、在来工法の木造住宅における柱・梁などの材料としても用いられており、その需要が拡大している。
近年、溶接軽量H形鋼は、太陽光発電の架台部品に代表されるように、厳しい屋外腐食環境での使用検討が進んでいる。このような環境で溶接軽量H形鋼を使用するに際しては、耐食性を確保するために、非めっき鋼材を用いて製造された溶接軽量H形鋼に対し溶融亜鉛めっきを行う方法がある。しかしながら、めっき時の熱による形状変化や外注加工コストの問題があり、例えば下記特許文献1に開示されているような、めっき鋼帯を成形しためっき溶接軽量H形鋼の活用が期待される。
特開2003−275814号公報
上記特許文献1に開示されているようなめっき溶接軽量H形鋼は、予めめっき処理の施されためっき鋼帯を利用し、連続した溶接の併用によって成形されるが、フランジに対応する鋼帯とウェブに対応する鋼帯とを溶接する際に、発生する熱によって溶接部のめっき層が失われてしまう。また、フランジに対応する鋼帯をスリットにより製造する場合には、フランジ端面にはめっき層が存在しなくなる。
めっき層が存在しない溶接部や端面は、腐食による損壊が懸念されるため、用途環境に適した防食処理を施すことが重要であり、めっき層が欠落したこれらの部位を適切に補修可能な技術の確立が希求されている。
一般に、耐用年数はめっき付着量に比例すると考えられており、平面部のめっきと同等の耐食性を確保するためには、平面部のめっきと同等のめっき金属成分を同等の付着量で確保することが重要であると考えられる。このような観点で、十分な耐食性を確保する補修技術候補としては、亜鉛系溶射や亜鉛粉末含有塗装(以下、「ジンクリッチ塗装」ともいう。)が考えられる。しかしながら、乾式工程である溶射は、粉塵対策設備が必要であることから、簡便に処理を行うことができない。そこで、上記特許文献1においても、溶接部に対して亜鉛吹き付け塗装が行われる旨が記載されている。
一方、上記特許文献1にも開示されているようなジンクリッチ塗装は、防食処理仕様として、標準的な施工技術が確立されている。すなわち、ジンクリッチ塗装は、多量の金属亜鉛顔料を含み、残部のバインダ成分が非常に少ないため、付着性に欠け、清浄な鋼表面にしか付着しないという問題がある。そのため、ジンクリッチ塗装を施す際には高度な素地調整が要求されており、ブラスト処理が推奨されている。ブラスト処理に代わる素地調整として、酸洗処理や動力工具による素地調整も考えられるが、付着性はブラスト処理よりもやや劣る。また、一般的な塗装の素地調整として使用されるリン酸亜鉛処理もジンクリッチ塗装の付着性を低下させるため、素地調整としては使用することはできない。
上記のような状況にあるにも関わらず、上記特許文献1では、亜鉛吹き付け処理を実施する際の素地調整については、何も言及されていない。
ジンクリッチ塗膜を形成するために、めっき溶接軽量H形鋼の溶接部や端面の素地調整としてブラスト処理を実施する場合には、溶接部や端面の近傍に位置するめっき面もブラスト処理が施されてしまう。特に、端面に対してブラスト処理を実施した場合、少なくとも表側/裏側いずれかのめっき面がブラスト処理の影響を大きく受けてしまう。従って、溶接部や端面の耐食性を高めるためのジンクリッチ塗膜を施すために、溶接部や端面の近傍に位置するめっき面の耐食性が影響を受ける結果となり、ジンクリッチ塗膜の形成に先立つ素地調整として、ブラスト処理を採用することは好ましくないと考えられる。かかる状況から、特にめっき溶接軽量H形鋼の溶接部について、ブラスト処理に代わる素地調整技術が希求されている。
また、めっき溶接形鋼のめっき層自体も、周囲の環境に応じて劣化し得る。例えば、大気中に含まれる塩分等の電解質や、高温多湿環境下において存在する酸素、水分によってめっき層が酸化し、白錆となる現象が知られている。したがって、めっき層自体の耐食性も向上させることが望ましい。めっき層表面には防錆目的の化成処理を施し、化成処理被膜を設けることがある。そして、本発明者らの検討の結果、溶接部や端面にジンクリッチ塗膜を形成する際に、化成処理被膜がジンクリッチ塗膜の密着性に影響を及ぼすことがわかった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、めっき層の耐食性を向上させるとともに、めっき層が欠落している部位の耐食性を、亜鉛粉末含有塗装の密着性を維持しつつ実現することが可能な、めっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者が鋭意検討を行った結果、めっき層上にジルコニウムと有機酸とを含む被膜を配するとともに、樹脂膜を介して、めっき層の欠落部分に亜鉛粒子を含む有機系の被膜を配することに想到し、以下で詳述するような本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法を完成するに至った。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなるウェブと、
純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなり、前記ウェブに溶接されたフランジと、
前記ウェブと前記フランジとの溶接部位に位置する溶接ビードと、
前記ウェブおよび前記フランジ上に位置し、ジルコニウムと有機酸とを含む第1の被膜と、
前記溶接ビードの少なくとも一部と前記第1の被膜の少なくとも一部を覆うように位置し、樹脂材料を含んで構成される第2の被膜と、
前記溶接ビードを覆い、かつ、前記第2の被膜の少なくとも一部を覆ように位置する、バインダ成分である有機樹脂と亜鉛粒子を含む被膜である有機系の第3の被膜と、
を備える、めっき溶接形鋼。
(2) 前記第2の被膜の厚みは、3〜30μmである、(1)に記載のめっき溶接形鋼。
(3) 前記樹脂材料は、エポキシ樹脂を含んで構成される、(1)または(2)に記載のめっき溶接形鋼。
(4) 前記第1の被膜は、ジルコニウム100質量部に対し、バナジウムを10〜45質量部、リンを5〜100質量部、コバルトを0.1〜20質量部および有機酸を10〜90質量部の比率で含む、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
(5) 前記第3の被膜は、当該第3の被膜の全質量に対して60質量%以上の亜鉛粒子を含む有機系塗膜層である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
(6) 前記第3の被膜の厚みは、5〜200μmである、(1)〜(5)のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
(7) 前記フランジの端面の少なくとも一部および当該端面と隣り合う前記第1の被膜の少なくとも一部には、前記第2の被膜が位置しており、
当該第2の被膜上には、前記フランジの端面を覆うように前記第3の被膜が位置している、(1)〜(6)のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
(8) さらに、前記第3の被膜の少なくとも一部を被覆するように位置する、光輝性顔料を含む塗膜を有する、(1)〜(7)のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
(9) 前記フランジを含む一対のフランジが、前記ウェブを介して対向するように配置されている、めっき溶接H形鋼である、(1)〜(8)のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
(10) 純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなるウェブと、純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなり、前記ウェブに溶接されたフランジと、前記ウェブと前記フランジとの溶接部位に位置する溶接ビードと、前記ウェブおよび前記フランジ上に形成され、ジルコニウムと有機酸とを含む第1の被膜と、を備えるめっき溶接形鋼に対し、前記溶接ビードの少なくとも一部と前記第1の被膜の少なくとも一部とを覆う、樹脂材料を含んで構成される第2の被膜を形成し、前記第2の被膜が形成された前記めっき溶接形鋼を少なくとも4時間以上養生し、および
前記溶接ビードを覆い、かつ、前記第2の被膜の少なくとも一部を覆う、バインダ成分である有機樹脂と亜鉛粒子を含む被膜である有機系の第3の被膜を形成する、めっき溶接形鋼の製造方法。
以上説明したように本発明によれば、めっき層の耐食性を向上させると同時に、めっき層が欠落している部位(特に、溶接部)の耐食性を、亜鉛粉末含有塗装の密着性を維持しつつ実現することが可能である。
本発明の実施形態に係るめっき溶接形鋼の構造を模式的に示した幅方向断面図である。 同実施形態にめっき溶接形鋼の溶接部の構造を拡大して示した幅方向断面図である。 同実施形態に係るめっき溶接形鋼の端面の構造を拡大して示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の層構造を示すめっき溶接H形鋼の電子顕微鏡写真である。 めっき溶接H形鋼の層構造を示すめっき溶接H形鋼の電子顕微鏡写真である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。 めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(めっき溶接形鋼について)
以下では、図1〜図3を参照しながら、本発明の実施形態に係るめっき溶接軽量形鋼(以下、単に、「めっき溶接形鋼」ともいう。)について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るめっき溶接形鋼の構造を模式的に示した幅方向断面図である。図2は、本実施形態にめっき溶接形鋼の溶接部の構造を拡大して示した幅方向断面図である。図3は、本実施形態に係るめっき溶接形鋼の端面の構造を拡大して示した幅方向断面図である。
<めっき溶接形鋼の全体的な構造について>
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の全体的な構造について、詳細に説明する。
本実施形態に係るめっき溶接軽量形鋼1は、めっき溶接H形鋼である。めっき溶接軽量形鋼1は、例えば、亜鉛系めっき鋼帯を巻き取ったコイルを巻き戻し所定幅にスリットしてフランジ用鋼帯としたものと、亜鉛系めっき鋼帯を巻き取ったコイルを巻き戻してウェブ用鋼帯としたものと、を当接させた状態で、高周波抵抗溶接や高周波誘導溶接等によって連続的に溶接することで、製造される。
このようにして製造されるめっき溶接形鋼1は、図1に模式的に示したように、互いに対向するように設けられた一対のフランジ3と、2つのフランジ3を連結するウェブ5と、から構成されている。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1において、フランジ3又はウェブ5の幅及び厚みについては、特に限定されるものではない。例えば、めっき溶接形鋼1は、典型的なめっき溶接H形鋼として、
フランジ3:幅75mm〜125mm、厚み3.2mm〜6.0mm
ウェブ5:高さ100mm〜300mm、厚み3.2mm〜4.5mm
程度の大きさである。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、先だって説明したように、フランジ3となる亜鉛系めっき鋼帯と、ウェブ5となる亜鉛系めっき鋼帯とが、溶接処理によって連結される。従って、フランジ3とウェブ5との連結部には、図1に模式的に示したように、溶接部7が形成される。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、原材料として亜鉛系めっき鋼帯が用いられるため、母材となる鋼板(以下、単に、「母材鋼板」ともいう。)11の表層には、亜鉛系めっき層13および化成処理被膜101が形成されている。しかしながら、上記の溶接処理によって発生する熱により、溶接部7には、亜鉛系めっき層13および化成処理被膜101が存在していない。また、フランジ3の端面9においても、亜鉛系めっき層13および化成処理被膜101が存在していないことが多い。
従って、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1において、フランジ3とウェブ5との連結部分とその近傍の領域であり、かつ、亜鉛系めっき層13および化成処理被膜101が存在していない部分を、溶接部7として考えることができる。また、フランジ3となる亜鉛系めっき鋼帯と、ウェブ5となる亜鉛系めっき鋼帯とは、圧接されながら溶接処理が施されるため、溶接直後には、ビード15が発生する。本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、溶接後にビード15をローラ等によって押しつぶすことで成形処理が施されており、ビード15は、図1に模式的に示したように、側面から見た形状が略三角形状となっている。従って、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1において、ビード15が略三角形状となって存在している部分を、溶接部7として考えることができる。
なお、ビード15は、主に、母材鋼板11の成分や酸化鉄を主成分とするスケールから構成されており、亜鉛系めっき層13の成分等が含有されることもある。
ここで、母材鋼板11については、特に限定されるものではなく、通常、亜鉛系めっき鋼板の原板として使用される鋼板を適宜利用することが可能である。この原板の製造法、材質等も特に限定されるものではなく、通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造されるものを利用すればよい。
また、亜鉛系めっき層13の種類についても、特に限定されるものではなく、溶融亜鉛めっきや電気亜鉛めっき等といった、公知の亜鉛系めっき処理を利用して、本実施形態に係る亜鉛系めっき層13を形成することが可能である。また、めっき成分についても特に限定されるものではなく、純亜鉛めっきであってもよいし、亜鉛合金系めっきであってもよい。亜鉛合金系めっきの成分としては、例えば、質量%で、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Si、Zn−6%Al−3%Mg、Zn−55%Al、又は、Zn−1〜3%Al−1〜3%Mg等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、上記のような亜鉛系めっき層13の形成された亜鉛系めっき鋼板を原材料として用いることで、亜鉛の犠牲防食能によって、形鋼全体としての耐食性を担保することが可能となる。
なお、亜鉛系めっき層13の厚みや付着量については、特に限定されるものではなく、めっき溶接形鋼1の要求性能やコスト等に応じて適宜設定すればよい。例えば、亜鉛系めっき層13は、片面当たり1μm〜80μmの厚み、より好ましくは片面当たり20μm程度の厚みで、母材鋼板11の表面に形成されていればよい。亜鉛系めっき層13の厚みが1μm未満である場合には、亜鉛の犠牲防食能を具現化することが困難となるため、好ましくない。また、亜鉛系めっき層13の厚みが80μm超過となる場合には、亜鉛系めっき層の加工性が低下し、好ましくない。また、亜鉛系めっき層13の付着量は、片面当たりの金属Zn量で、例えば、7g/m〜560g/mとすることが好ましい。
また、亜鉛系めっき層13の上層には、化成処理被膜(第1の被膜)101が形成されている。化成処理被膜101は、周囲雰囲気に存在する水や空気、塩分等の電解質から亜鉛系めっき層13を保護し、亜鉛系めっき層13の腐食を防止する。これにより、亜鉛系めっき層13の耐食性が向上する。
しかしながら、亜鉛系めっき層13と同様に、化成処理被膜101は、上記の溶接処理によって発生する熱により、溶接部7には存在していない。また、フランジ3の端面9においても、化成処理被膜101が存在していないことが多い。
なお、化成処理被膜101の詳細な構成成分については、後述する。
<溶接部の構造について>
続いて、図2を参照しながら、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7の構造について、具体的に説明する。
先だって説明したように、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、フランジ3とウェブ5とを溶接により連結する際に、母材鋼板11の表面上に形成されている亜鉛系めっき層13および化成処理被膜101が除去されてしまう。そのため、かかる溶接部7の耐食性は、亜鉛系めっき層13が形成されている部分と比べて低下してしまう。
そこで、本発明者らは、ジンクリッチ塗装処理に先立つ素地調整処理としてブラスト処理を行うことなく、溶接部7に対してジンクリッチ塗装を実施するための方法を鋭意検討した。その結果、ビード15を十分に保護するためにはビード15のみならずビード15の周囲の化成処理被膜101までジンクリッチ塗膜を配することが好ましいとの知見に達した。一方で、本発明者らは、溶接部7のビード15のみならず化成処理被膜101に対しても、ジンクリッチ塗膜が密着しづらいという問題に直面した。そして、本発明者らは、樹脂材料を含む樹脂層(第2の被膜)103を介して亜鉛粒子を含む有機系塗膜層(第3の被膜、有機ジンクリッチ塗膜)105をビード15および化成処理被膜101上に配置することにより、有機系塗膜層105のビード15および化成処理被膜101に対する密着性を優れたものとすることができ、ビード15の耐食性を向上させることが可能なことを見出した。
従って、本実施形態に係るめっき溶接H形鋼1の溶接部7では、その断面構成は、図2に示したように、下地である母材鋼板11が存在し、母材鋼板11上にFeを主成分として含有するビード15が存在する。そして、かかるビード15上を覆い、さらにビード15の周囲に存在する化成処理被膜101の一部を覆うようにして樹脂層103が配置され、その樹脂層103上に有機系塗膜層105が形成されている。また、有機系塗膜層105は、ビード15を覆うように配置されている。
上記のような層構成とすることで、亜鉛系めっき層13が存在していない溶接部7であっても、有機系塗膜層105に多量に含有される亜鉛の犠牲防食能により、ビード15の耐食性が担保されることとなる。また、樹脂層103を介して有機系塗膜層105をビード15上および化成処理被膜101上に配することにより、樹脂層103を介した有機系塗膜層105のビード15および化成処理被膜101への密着性を優れたものとすることができる。
<端面の構造について>
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の端面9の構造について、具体的に説明する。
先だって説明したように、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、その製造過程に起因して、端面9についても亜鉛系めっき層13が存在せず、母材鋼板11が露出していることが多い。従って、かかる端面9の耐食性は、亜鉛系めっき層13が形成されている部分と比べて低下してしまう。
そこで、かかる端面9においても、図3に示したように、母材鋼板11の端面9上を覆い、さらに母材鋼板11の端面の周囲に存在する化成処理被膜101の一部を覆うようにして樹脂層103が配置され、その樹脂層103上に有機系塗膜層105が形成されている。また、有機系塗膜層105は、端面9を覆うように配置されている。
上記のような層構成とすることで、端面9に亜鉛系めっき層13が存在していない場合であっても、有機系塗膜層105に多量に含有される亜鉛の犠牲防食能により、端面9における母材鋼板11の耐食性が担保されることとなる。また、樹脂層103を介して有機系塗膜層105を端面9上に配することにより、樹脂層103を介した有機系塗膜層105の端面9および化成処理被膜101への密着性を優れたものとすることができる。
以上、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の全体的な構成について説明した。次に、上述しためっき溶接形鋼1に配置される、化成処理被膜101、樹脂層103および有機系塗膜層105について詳細に説明する。
<化成処理被膜101について>
本実施形態において、化成処理被膜101は、ジルコニウム(Zr)元素と有機酸とを含む複合被膜である。化成処理被膜101は、好ましくは、成分として、ジルコニウム元素および有機酸に加え、バナジウム(V)元素、リン(P)元素およびコバルト(Co)元素を含んで構成される。
このような化成処理被膜101は、緻密な3次元構造を有する、バリアー性に優れ、耐食性が向上した複合被膜である。このような複合被膜は、有機酸と金属イオンが錯体形成により配位することにより、主にZr−Oによって緻密な三次元網目構造が形作られている。そして、三次元網目構造の間にバナジウム、有機酸、リン、コバルトが混ざるとともに、更にめっき表面のエッチングにより遊離した亜鉛などが取り込まれていると考えられる。なお、Zr−Oによる上記の三次元構造においては、一部のZrが他の元素に置換される場合もある。更に、化成処理被膜101を形成する際の有機酸によるめっき表面のエッチングによって、被膜とめっき表面との界面における密着性が増し、耐食性と塗装密着性が向上している。
上述したように、化成処理被膜101は、有機酸を含む。有機酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、蓚酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、デヒドロ安息香酸、デヒドロアスコルビン酸、没食子酸、タンニン酸、フィチン酸などが挙げられる。
また、化成処理被膜101中に、有機酸は、好ましくは、Zr100質量部に対して10〜90質量部存在する。これにより、化成処理被膜101の耐食性、耐アルカリ性を十分なものとすることができる。化成処理被膜101中の有機酸の含有量は、Zr100質量部に対して、好ましくは10〜70質量部、より好ましくは10〜50質量部、特に好ましくは15〜30質量部である。
化成処理被膜101中に、元素のVは、好ましくはZr100質量部に対して10〜45質量部存在する。これにより、化成処理被膜101の耐食性、耐アルカリ性および耐黒変性を十分なものとすることができる。化成処理被膜101中のVの量は、Zr100質量部に対して、好ましくは15〜30質量部、より好ましくは20〜25質量部である。
また、化成処理被膜101中に、元素のPは、好ましくはZr100質量部に対して5〜100質量部存在する。これにより、化成処理被膜101の耐食性、耐アルカリ性および耐黒変性を十分なものとすることができる。化成処理被膜101中のPの量は、Zr100質量部に対して、好ましくは10〜70質量部、より好ましくは10〜40質量部、特に好ましくは12〜20質量部である。
化成処理被膜101中に、元素のCoは、好ましくはZr100質量部に対して0.1〜20質量部存在する。これにより、化成処理被膜101の耐食性、耐アルカリ性および耐黒変性を十分なものとすることができる。特にコバルトの効果としては、皮膜形成時にめっき鋼材の表面の不活性化を促進し、かつ、水、酸素などの外的要因から保護する役割を担っていると考えられる。化成処理被膜101中のCoの量は、Zr100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは0.8〜1.5質量部である。
化成処理被膜101は、好ましくは、Zr元素100質量部に対して有機酸を10〜90質量部、V元素を10〜45質量部、P元素を5〜100質量部、Co元素を0.1〜20質量部の比率で含有する。なお、化成処理被膜101は、上述した成分以外の成分を含むものであってもよい。
化成処理被膜101の厚みや付着量については、特に限定されるものではなく、めっき溶接形鋼1の要求性能やコスト等に応じて適宜設定すればよい。例えば、化成処理被膜101の付着量は、片面当たり、例えば、0.01g/m〜2.0g/m、好ましくは0.05g/m〜1.0g/mとすることができる。
<樹脂層103について>
続いて、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9に形成される樹脂層103について、詳細に説明する。
本実施形態に係る樹脂層103は、当該樹脂層103の下層に位置する鋼成分と、上層に位置する有機系塗膜層105との間の密着性を担保するために形成される下地塗膜層である。
樹脂層103を形成する樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂を含有する樹脂を用いることが好ましい。このように、下層に位置する鋼との密着性に特に優れる樹脂を利用することで、有機系塗膜層105と鋼成分との間の密着性を更に向上させることが可能となる。樹脂層103を形成する樹脂として特にエポキシ系樹脂が好ましい。
エポキシ系樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂であるDIC製EPICLON(登録商標) 840、850シリーズを挙げることができる。薄膜を塗布するには低粘度であることが有利であり、このような低粘度のエポキシ系樹脂として、EXA−850CRPが例示できる。
アクリル樹脂の具体例としては、例えば、常温・強制乾燥用アクリル樹脂である、DIC製アクリディック(登録商標)A−1371やA-1381シリーズ等を挙げることができる。
ウレタン系樹脂の具体例としては、例えば、湿気硬化型、ラッカー型、油変性型のウレタン樹脂を挙げることができる。このようなウレタン系樹脂として、例えば、DIC製のウレタン樹脂BURNOCK(登録商標)シリーズが例示できる。
ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂やアルキド樹脂を挙げることができる。このようなポリエステル系樹脂を使用した塗料としては、例えば、神東塗料製のイノバックス(登録商標)PCMシリーズが例示できる。
上記のような樹脂や塗料を少なくとも1種類用いて形成される樹脂層103の厚みは、特に限定されないが、例えば3〜30μm、好ましくは下限を5μm、上限を20μm、より好ましくは下限を8μmとすることができる。上記のような範囲の場合、下層に位置する鋼成分または化成処理被膜101と有機系塗膜層105との間の密着性、及び、有機系塗膜層105が形成されるまでの耐食性を十分に確保することできる。一方で、樹脂層103の厚みが上記範囲内であると、塗装や乾燥などの所要時間を比較的短くできるとともに、樹脂層103形成における作業性が良好となる。なお、上記の厚みは、樹脂層103を形成する際と同様の成膜条件を利用して、樹脂層103を形成するための樹脂液を平板上に塗装した場合に、平板上に実現される厚みである。
また、樹脂層103を形成するための樹脂として、有機系塗膜層105を形成するために用いられる塗料のバインダ樹脂に対して相溶性のある樹脂を利用することで、樹脂層103と有機系塗膜層105との間の密着性を更に向上させることが可能となる。また、樹脂層103を形成するための樹脂として、有機系塗膜層105を形成するために用いられる塗料のバインダ樹脂を利用してもよい。
従って、樹脂層103を形成するための樹脂として、鋼成分との密着性が良好であり、かつ、有機系塗膜層105のバインダ樹脂に対して相溶性のある樹脂を利用することで、有機系塗膜層105の密着性を更に一層向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態に係る樹脂層103は、図1〜図3に模式的に示したように、ビード15や端面9における鋼材11のみならず、化成処理被膜101上にも配置されている。ビード15や端面9における鋼材11のみに樹脂層103を配置すると、樹脂層103の縁部付近において、周囲雰囲気の水分、酸素等が、ビード15や端面9における鋼材11に接触する可能性があるが、上記のように化成処理被膜101上にも樹脂層103を配置することにより、このような接触を防止することができる。化成処理被膜101上に有機系塗膜層105を直接配置することも考えられるが、これらの間に樹脂層103を間に配置することにより、化成処理被膜101と有機系塗膜層105との間の密着性を、より一層優れたものとすることができる。
<有機系塗膜層105について>
続いて、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9に形成される有機系塗膜層105について、詳細に説明する。
上記のようなビード15の上部(好ましくは、上記のような樹脂層103の上層)には、所定量の亜鉛粉末を含有する有機系塗膜層(有機系ジンクリッチ塗膜層)105が形成される。かかる有機系塗膜層105を形成することで、溶接部7や端面9等といった亜鉛系めっき層13が存在しない部分についても、耐食性を向上させることが可能となる。なお、本発明において、有機系塗膜層は、ビード(溶接ビード)を覆い、かつ、樹脂層の少なくとも一部を覆うものであればよいが、さらなる耐食性の向上の観点から、亜鉛系めっき層が存在しない部位すべてを覆うように配置されることが好ましい。本実施形態においては、有機系塗膜層105は、樹脂層103を介してビード15および端面9の亜鉛めっき層欠損部分すべてを覆うようにして、形成されている。
なお、図1〜3に示すように、有機系塗膜層105は、通常、樹脂層103を介してビード15および端面9の亜鉛めっき層欠損部分すべてを覆うが、ビード15および端面9の亜鉛めっき層欠損部分上の有機系塗膜層105の極一部が欠損していていてもよい。しかしながら、このような場合においても、有機系塗膜層105は、ビード15および端面9の亜鉛めっき層欠損部分の好ましくは95%、より好ましくは98%、特に好ましくは99%以上の面積を覆うように形成される。
また、有機系塗膜層105は、直接化成処理皮膜101には接しないように形成されている。このように形成されることにより、有機系塗膜層105の塗膜密着性をより優れたものとすることができる。なお、図示の態様に限定されず、本発明において、有機系塗膜層は、その一部が化成処理皮膜と接していてもよい。
かかる有機系塗膜層105は、所定量の亜鉛粉末と、有機系バインダ成分と、を少なくとも含む有機系ジンクリッチ塗料を用いて形成される。ジンクリッチ塗料は、用いる溶媒に応じて、水系ジンクリッチ塗料と、溶剤系ジンクリッチ塗料と、に大別され、用いるバインダ成分の種別に応じて、有機系ジンクリッチ塗料と、無機系ジンクリッチ塗料と、に大別される。本実施形態に係るめっき溶接形鋼1では、有機系塗膜層105を形成するジンクリッチ塗料として、溶剤系有機ジンクリッチ塗料を用いることが好ましい。
有機系塗膜層105を形成するために用いられる有機系ジンクリッチ塗料には、主成分として、不揮発成分(固形分)の全体に対して60質量%以上の亜鉛粉末が含有されていることが好ましい。ここで、有機系ジンクリッチ塗料に含まれる亜鉛粉末の含有量が、有機系塗膜層105に含有される亜鉛粉末の含有量となる。上記のような含有量の亜鉛粉末が含有されていることで、有機系塗膜層105は、優れた犠牲防食能を具現化することが可能となる。有機系ジンクリッチ塗料に含有される亜鉛粉末の含有量は、より好ましくは、80質量%〜99質量%である。
また、かかる有機系ジンクリッチ塗料には、亜鉛粉末が60質量%以上含有されてさえいれば、その他に、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、鉄、ニッケル等の元素を含む金属、合金、化合物などが更に含有されていてもよい。これらの元素の含有量については、特に限定するものではないが、例えば、5質量%〜40質量%、好ましくは、5質量%〜20質量%とする。
有機系塗膜層105に含有される亜鉛粉末の形状は、特に限定されるものではなく、球状、棒状、塊状、針状等、任意の形状であってよいし、ブレンドすることもできる。また、有機系塗膜層105に含有される亜鉛粉末の平均粒径は、0.1μm〜100μmであることが好ましく、0.1μm〜50μmであることがより好ましい。なお、亜鉛粉末の平均粒径は、動的光散乱法、誘導回折格子法、レーザー回折・散乱法等の公知の方法を利用して測定することが可能である。
ジンクリッチ塗料に含有されているバインダ成分としては、上記のように有機系バインダ成分を利用することが可能である。
このような有機系バインダ成分としては、特に限定されないが、例えば上述したようなエポキシ系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂および/またはポリエステル系樹脂を含む樹脂することができる。なお、具体例としては、上述した通りである。
なお、有機系塗膜層105の形成に用いられる有機系ジンクリッチ塗料には、必要に応じて、通常の体質顔料、防錆顔料、着色顔料等を塗膜の緻密性を損なわない程度で添加してもよい。体質顔料としては、例えば、シリカ粉、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、シリカバルーン等を挙げることができ、防錆顔料及び着色顔料としては、例えば、酸化チタン、リン化鉄、雲母状酸化鉄、シアナミド鉛、ジンククロメート、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、メタホウ酸バリウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、ベンガラ、シアニン系着色顔料、カーボンブラック、ルチル粉末、ジルコン粉末等を挙げることができる。
また、有機系塗膜層105の形成に用いられる有機系ジンクリッチ塗料には、更に必要に応じて、沈降防止剤、タレ止め剤、湿潤剤、反応促進剤、付着性付与剤等の通常の塗料用添加剤を適宜添加されていてもよい。
以上説明したような有機系ジンクリッチ塗料を用いて形成される有機系塗膜層105の厚みは、母材鋼板11に形成されている亜鉛系めっき層13の厚みの約2倍程度とすることが好ましい。有機系塗膜層105の厚みを、亜鉛系めっき層13の厚みの約2倍程度とすることで、有機系塗膜層105が、亜鉛系めっき層13とほぼ同程度の耐食性を実現することが可能となる。
かかる有機系塗膜層105の厚みは、より詳細には、5μm〜200μmとすることが好ましい。有機系塗膜層105の厚みが5μm未満である場合には、十分な犠牲防食能の具現化が困難になることがある。また、有機系塗膜層105の厚みが200μm超過である場合には、塗膜の乾燥性に劣り、たれが生じることがあり好ましくない。かかる有機系塗膜層105の厚みは、より好ましくは、10μm〜150μmであり、更に好ましくは、20μm〜100μmである。
また、上記のような有機系塗膜層105の厚みを付着量で表わした場合、その付着量は、金属Zn量換算で、18g/m〜700g/mであることが好ましく、35g/m〜700g/mであることがより好ましく、70g/m〜700g/mであることが更に好ましい。
なお、本実施形態に係る有機系塗膜層105は、図1〜図3に模式的に示したように、ビード15や端面9における鋼材11のみならず、化成処理被膜101上にも配置されている。これにより、ビード15および端面9の鋼材11を確実に有機系塗膜層105により覆うことができ、亜鉛系めっき層13が欠損した部位の耐食性を十分に高いものとすることができる。なお、有機系塗膜層105と化成処理被膜101との間の密着性は、これらの間に存在する上述した樹脂層103により十分なものとなっている。
以上、図1〜図3に基づいて、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の構成について説明した。
なお、めっき溶接形鋼1の有機系塗膜層105上には、光輝性顔料を含む塗膜を配置することができる(図示せず)。通常、有機系塗膜層105の光沢は低いため、用途によっては補修塗装箇所が目立ち、意匠性が損なわれることがある。しかしながら、光輝性顔料を含む塗膜を有機系塗膜層105上に配することにより、めっき層が欠落していない健全部と同様のメタリック調の外観に仕上げること可能となる。
このような光輝性顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム等の金属片、ガラスフレーク、シリカフレーク、酸化アルミニウムフレーク等のエフェクト顔料およびパール顔料等が挙げられる。これらのうち、光輝性顔料として、アルミニウム等の金属片を用いると、有機系塗膜層105の存在をより目立たないものとすることができる。
また、上述した光輝性顔料を含む塗膜は、例えば、エポキシ系樹脂等の樹脂材料を含む塗料をスプレー等により塗布することにより形成できる。
なお、このような光輝性顔料を含む塗膜は、上述した有機系塗膜層105のみならず、めっき溶接形鋼1の表面全体に形成することも可能である。
また、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1は、めっき溶接H形鋼であるとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明に係るめっき溶接形鋼は、例えば、溶接T形鋼、溶接溝形鋼、溶接コラムまたは溶接異形形鋼であってもよい。
<めっき溶接形鋼の製造方法について>
次に、めっき溶接形鋼の製造方法について説明する。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼の製造方法では、亜鉛系めっき鋼板よりなるウェブと、亜鉛系めっき鋼板よりなり、前記ウェブに溶接されたフランジと、前記ウェブと前記フランジとの溶接部位に位置する溶接ビードと、前記ウェブおよび前記フランジ上に形成され、ジルコニウムと有機酸とを含む第1の被膜と、を備えるめっき溶接形鋼に対し、前記溶接ビードの少なくとも一部と前記第1の被膜の少なくとも一部とを覆う、樹脂材料を含んで構成される第2の被膜を形成し(第1の工程)、
前記第2の被膜が形成された前記めっき溶接形鋼を少なくとも4時間以上養生し(第2の工程)、および
前記溶接ビードを覆い、かつ、前記第2の被膜の少なくとも一部を覆う、亜鉛粒子を含む有機系の第3の被膜を形成する(第3の工程)。以下、各工程について具体例を説明する。
まず、第1の工程においては、まず、ウェブ5とフランジ3と、ウェブとフランジの溶接部位に位置するビード(溶接ビード)15と、ウェブ5およびフランジ3上に化成処理被膜(第1の被膜)101が配置されためっき溶接形鋼1を準備する。めっき溶接形鋼1は、上述したように、例えば、亜鉛系めっき鋼帯を巻き取ったコイルを巻き戻し所定幅にスリットしてウェブ用鋼帯としたものと、亜鉛系めっき鋼帯を巻き取ったコイルを巻き戻してフランジ用鋼帯としたものと、を当接させた状態で、高周波抵抗溶接や高周波誘導溶接等によって連続的に溶接することで、製造される。
なお、化成処理被膜101は、めっき溶接形鋼1の部品となる亜鉛系めっき鋼帯上に予め形成しておくことができる。化成処理被膜101は、特に限定されないが、例えば上述した化成処理被膜101の各成分を含む水溶液を亜鉛系めっき層13上に塗布し、加熱乾燥して被膜を形成することにより製造することができる。このような水溶液は、例えば、上述の比率でZr、V、P、Co元素及び有機酸を供給する量の塩基性ジルコニウム化合物、バナジル(VO2+)含有化合物、リン酸化合物、コバルト化合物、および有機酸または有機酸塩を含むことができる。
次いで、めっき溶接形鋼1のビード15と、ビード15の周辺の第1の被膜101上を覆う樹脂層(第2の被膜)103を形成する。かかる樹脂層103の形成方法は、特に限定されるものではなく、樹脂層103の形成に用いる樹脂を適切な溶媒に分散させた上で、溶接部7や端面9の表面に樹脂液を所定付着量となるようにスプレーしたり、樹脂液をスプレーしてから、所定付着量となるようにロールやガス吹き付けにより付着量を制御したり、ロールコータ等で樹脂液を塗布したりすればよい。
また、乾燥方法やプレキュア方法についても、分散媒を揮発させることが可能な方法であれば、特定の方法に限定されるものではなく、例えば、80℃程度の温度で60秒程度加熱するなどのような、公知の処理を実施すればよい。
また、かかる樹脂層103を溶接部7に対して形成する際には、ビード15の表面に主に存在するスケールやビード15そのものに対して、樹脂層103を形成するための樹脂液が浸透していくことが好ましい。樹脂層103がビード15に浸透していくことで、有機系塗膜層105の密着性を更に向上させることが可能となる。そのためには、樹脂層103の形成に用いられる樹脂の粘性やぬれ性が所定の条件を満たすことが好ましい。具体的には、樹脂層103の形成に用いる樹脂液の粘性は、3.0 Pa・s以下であることが好ましく、ぬれ性は、接触角が90度以下であることが好ましい。
次に、第2の工程においては、樹脂層103が形成されためっき溶接形鋼1を少なくとも4時間以上養生する。このように樹脂層103の形成後に養生を行うことにより、樹脂層103中の樹脂材料が十分に乾燥または硬化することができる。この結果、めっき溶接形鋼1を取り扱う場合において、樹脂層103が剥離したり、隣接する他のめっき溶接形鋼1の樹脂層103とブロッキングを起こしたりすることが十分に防止される。なお、ブロッキングが起こると、樹脂層103の剥離強度が低下したり、樹脂層103にブロッキングの対象となったものの跡形が形成される。このような場合、樹脂層103の剥離強度の低下に伴う耐腐食性の低下や、跡形の形成による意匠性の低下が懸念される。しかしながら、本実施形態においては、所定時間養生することにより、このような問題が十分に防止されている。
本工程における養生の時間は、上述したように4時間以上であれば、特に限定されないが、好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上である。これにより、十分に樹脂層103中の樹脂材料を乾燥、硬化させることができるとともに、養生に伴う周囲雰囲気下における水分、酸素等のめっき溶接形鋼1への接触を十分に少ないものとすることができる。
なお、具体的な養生の方法としては特に限定されず、例えば樹脂層103を形成後、樹脂層103が他の部材と極力触れない状態とし、周囲雰囲気下に静置することにより、養生を行うことができる。
次に、第3の工程では、ビード15を覆い、かつ、樹脂層103の少なくとも一部を覆う、有機系塗膜層105を形成する。なお、本実施形態では、有機系塗膜層105は、樹脂層103を介して、ビード15と、その周縁部の化成処理被膜101を覆うようにして形成される。
かかる有機系塗膜層105の形成方法についても、特に限定されるものではなく、溶接部7や端面9における樹脂層103の表面に対して、上記のような有機系ジンクリッチ塗料をスプレー塗装することにより形成することができる。また、所定付着量となるようにロールやガス吹き付けにより付着量を制御したり、ロールコータ等で有機系ジンクリッチ塗料を塗布したりすればよい。有機系ジンクリッチ塗料を塗布した後、乾燥させることで、有機系塗膜層105が形成される。
以上により、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1が製造される。このようなめっき溶接形鋼1は、化成処理被膜101、樹脂層103および有機系塗膜層105により、めっき溶接形鋼1の耐腐食性が十分に高いものとなっている。また、有機系塗膜層105は、樹脂層103を介して形成されるため、めっき溶接形鋼1に対する密着性が優れている。さらに、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の製造方法においては、第2の工程において樹脂層103を養生するため、樹脂層103のビード5や鋼材11および化成処理被膜101との密着性が十分に高いものとなっている。
<測定方法等について>
続いて、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の化成処理被膜101ならびに、溶接部7や端面9における樹脂層103及び有機系塗膜層105に関する各種の測定方法について、簡単に言及する。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1の溶接部7や端面9に形成される樹脂層103及び有機系塗膜層105の存在は、製造されためっき溶接形鋼から切り出したサンプルの断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて観察することで確認することができる。また、SEMによる断面観察を実施することで、有機系塗膜層105を形成するための素地調整として、ブラスト処理が行われていないことも、あわせて確認することができる。また、SEMによる断面観察を実施することで、樹脂層103および有機系塗膜層105の厚みおよび存在範囲も計測することが可能となる。
なお、場合によっては、ビード15(又は、ビード15を構成するスケール)と樹脂層103との間のコントラストや、樹脂層103と有機系塗膜層105との間のコントラストが明瞭ではなく、樹脂層103の存在が確認できないことも考えられる。しかしながら、樹脂層103を形成したことが既知であるサンプルについては、有機系塗膜層105に含まれる亜鉛粒子とビード15との間の距離を計測・評価することで、間接的に樹脂層103の存在を確認することが可能である。
本実施形態に係るめっき溶接形鋼1のウェブ5およびフランジ3上に形成される化成処理被膜101の存在は、SEMに付属する電子線マイクロアナライザ(Electron Probe MicroAnalyser:EPMA)を用いた元素分析によって確認することができる。具体的には、上記同様に製造されためっき溶接形鋼から切り出したサンプルの断面をSEMによって観察し、亜鉛系めっき層13と樹脂層103との間において、化成処理成分元素を元素分析することで化成処理被膜101の存在を確認することができる。
また、本実施形態に係るめっき溶接形鋼1のウェブ5およびフランジ3上に形成される化成処理被膜101の付着量は、例えば重量の減少量として測定できる。具体的には樹脂層103が形成されていない非塗装部を切り出し、クロム酸溶液等に浸漬して化成処理被膜101を溶解させ、前後の重量差を測定し、化成処理被膜101の付着量とする。
また、化成処理被膜101の付着量を変化させた試料を作成し、化成処理成分の特定元素の検量線試料を作成すれば、蛍光X線等の分析で化成処理付着量の定量が可能である。具体的には、化成処理被膜101を溶解させたクロム酸溶液等を誘導結合高周波プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectro−metry:ICP−AES)及び誘導結合高周波プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma−Mass Spectro−metry:ICP−MS)を用いて定量する。この定量値と前記重量値を用いて検量線試料とする。作成した検量線試料と溶接形鋼1より切り出した化成処理被膜101の特定元素を比較分析することで、X線分析によっても、化成処理被膜101の付着量を測定できる。
具体的な確認方法としては、例えば、以下のような方法を挙げることができる。
ここでは、より具体的な例として、亜鉛系めっき鋼帯を素材とするウェブ及びフランジとを接合しためっき溶接H形鋼の、ブラスト処理をせずスケールを有したままの溶接部に対し、膜厚が約10μmとなるように燐片状のアルミニウム金属片を含むエポキシ樹脂を塗装した。その後、かかるエポキシ樹脂上に、粒状の亜鉛粉末を含有した有機系ジンクリッチ塗装を施した。なお、亜鉛系めっき鋼帯は、化成処理により化成処理膜が形成されたものを使用した。
化成処理被膜は、塩基性ジルコニウム化合物、バナジル(VO2+)含有化合物、リン酸化合物、コバルト化合物および有機酸塩を含有する水溶液を、ロールコートによって亜鉛系めっき鋼帯の両面に塗布、乾燥することにより、形成した。
この溶接H形鋼から溶接ビード部を含むサンプルを切り出した。切り出したサンプルの表面を保護するために、表面を速乾性の塗料で保護し、その後、埋め込み用樹脂に埋め込んだ。埋め込み用樹脂が凝固した後、断面をバフ研磨仕上げとした。その後、チャージアップ防止のためC蒸着を施した。SEM観察した結果を、以下の図4Aに示す。図4AのSEM写真の倍率は、20倍である。
図4Aから明らかなように、溶接H形鋼の溶接ビード部の上層には、薄い樹脂層が観察されており、樹脂層の膜厚が評価可能であった。更に、樹脂層の上層には、有機系塗膜層としてジンクリッチ塗膜層が観察された。また、ジンクリッチ塗膜層の上層には、サンプルを調整する際に、保護のために実施したエポキシ樹脂塗装が確認された。
また、図4Bに溶接ビード部の中央を倍率500倍でSEM観察した結果を示す。
図4Bから明らかなように、溶接H形鋼の溶接ビード部の上層には、薄いスケールが観察され、更に、スケールの上層には、樹脂層が観察されており、樹脂層の膜厚が評価可能であった。このように、ジンクリッチ塗装の前に施した樹脂層の存在が確認されたとともに、スケールの存在も確認され、ブラスト処理が行われていないことも確認された。
また、元素マッピング像から、化成処理に含まれているりん酸成分由来のPがめっき層由来のZn上に存在していることが確認された。このように、ビードの周縁部の鋼上には化成処理被膜、樹脂層およびジンクリッチ塗膜層がこの順番に配置されていることが確認された。
また、本実施形態に係るめっき溶接H形鋼1の端面9についても、上記と同様にして観察用のサンプルを作製し、その断面をSEM観察することで、化成処理被膜101、樹脂層103および有機系塗膜層105の存在範囲および厚みを計測することが可能となる。
以上、本実施形態に係るめっき溶接H形鋼1の溶接部7や端面9における化成処理被膜101、樹脂層103および有機系塗膜層105に関する各種の測定方法について、簡単に説明した。
以下では、実施例を示しながら、本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法について、具体的に説明する。なお、以下に示した実施例は、本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法のあくまでも一例にすぎず、本発明に係るめっき溶接形鋼及びめっき溶接形鋼の製造方法が下記の例に限定されるものではない。
以下では、一般的な亜鉛系めっき鋼帯を用いて製造されためっき溶接H形鋼を利用し、かかるめっき溶接H形鋼のウェブとフランジとの溶接部に対して、以下のような処理を実施した。なお、用いた亜鉛系めっき鋼帯に形成されている亜鉛合金系めっき層の成分は、質量%で、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Siである。亜鉛系めっき鋼帯の亜鉛合金系めっき層の付着量は片面あたり140g/mのものを用いた。また、以下で用いためっき溶接H形鋼の溶接部には、母材鋼板の成分や酸化鉄を主成分とするスケールから構成されたビードが存在していることを確認している。
また、用いられた亜鉛系めっき鋼帯上には化成処理被膜が形成されている。化成処理被膜は、塩基性ジルコニウム化合物、バナジル(VO2+)含有化合物、リン酸化合物、コバルト化合物および有機酸塩を含有する水溶液を、ロールコートによって亜鉛系めっき鋼帯の両面に塗布、乾燥することにより、形成した。化成処理被膜の付着量は100mg/mとした。
ここで、めっき溶接H形鋼のウェブとフランジとの溶接部は、溶接により、めっきおよび化成処理被膜が消失し、スケールが形成されている。
なお、実施例で用いためっき溶接H形鋼に形成されているめっき層におけるめっき成分は、上記のようにZn−11%Al−3%Mg−0.2%Siであるが、溶接部においてはめっきおよび化成処理被膜が消失してスケールが存在していることから、本発明においてめっき種は、Zn−11%Al−3%Mg−0.2%Siに限定されるものではない。以下に示す実施例では、上記亜鉛合金めっき以外に、片面あたり140g/mの付着量の純亜鉛めっき層を有する亜鉛めっき鋼帯も使用して、検証を行っている。
上記めっき溶接形鋼を、ウェブの中央で切断し、T形の試験片とした。この試験片の溶接ビード部および端部に関して防錆膜(樹脂層および有機系塗膜層)を形成した。
上記樹脂層の形成に際し、光輝性顔料として燐片状のアルミニウム片を3質量%程度含有している神東塗料製のエポキシ系樹脂塗料(商品名:エスバ(登録商標)99シルバー)を用いた。樹脂膜厚が表1に記載した値および位置となるようにスプレーで塗布を行った後、乾燥させ、樹脂層を形成した。
上記樹脂層を形成後、実施例1〜15および17、18に関しては、室温で18時間の養生を行った後、有機系塗膜層を形成した。有機系塗膜層の形成には、有機系ジンクリッチ塗料である神東塗料製の有機ジンクリッチプライマー(商品名:ジンクプライマーR)を用いた。これらの塗料を用い、有機系塗膜層の膜厚が表1に記載した値および位置となるようにスプレーで塗布を行った後、乾燥させ、有機系塗膜層(塗膜層)を形成した。一方、実施例16に関しては、上記樹脂層形成後に室温で1時間の養生を行った後、同様に有機系塗膜層を形成した。
なお上記樹脂層および有機系塗膜層の塗布範囲を変えて、試験片を作成した。この塗布範囲のパターンを表1中の塗膜層パターンに記載した。塗布範囲に関し、図5A〜図5Hを参照しつつ説明する。図5A〜図5Hは、めっき溶接H形鋼の試験片の積層パターンを模式的に示した幅方向断面図である。図5A〜図5Hにおいて、フランジ上の化成処理被膜101の溶接ビードに近い側の端部をa、フランジ上の樹脂層103a〜103hの溶接ビードから遠い側の端部をb、フランジ上の有機塗膜層105a〜105hの溶接ビードから遠い側の端部をcで表す。
図5Aにおいては、ビード15から遠い左側から順に、樹脂層103aの端部b、次いで有機塗膜層105aの端部c、次いで化成処理被膜101の端部aが配置された、塗布範囲が示されている(パターンA)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯の化成処理被膜101上に、その一部およびビード15を覆うように樹脂層103aを形成し、その樹脂層103aの一部を覆うように、かつ、溶接ビード15すべてを覆うように、有機塗膜層105aを樹脂層103の上に塗装した。
図5Bにおいては、有機塗膜層が省略されており、ビード15から遠い左側から順に、樹脂層103bの端部b、次いで化成処理被膜101の端部aが配置された、塗布範囲が示されている(パターンB)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯の化成処理被膜101上に、その一部およびビード15を覆うように樹脂層103bを形成した。
図5Cにおいては、樹脂層が省略されており、ビード15から遠い左側から順に、有機塗膜層105cの端部c、次いで化成処理被膜101の端部aが配置された、塗布範囲が示されている(パターンC)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯の化成処理被膜101上に、その一部およびビード15を覆うように有機塗膜層105cを塗装した。
図5Dにおいては、ビード15から遠い左側から順に、有機塗膜層105dの端部c、次いで樹脂層103dの端部b、次いで化成処理被膜101の端部aが配置された、塗布範囲が示されている(パターンD)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯の化成処理被膜101上に、その一部およびビード15を覆うように樹脂層103dを形成し、その樹脂層103d全てを覆うように、かつ、樹脂層103dの端部b付近の化成処理皮膜101を直接覆うように、有機塗膜層105dを塗装した。
図5Eにおいては、ビード15から遠い左側から順に、有機塗膜層105eの端部c、次いで化成処理被膜101の端部a、次いで樹脂層103eの端部bが配置された、塗布範囲が示されている(パターンE)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯のビード15の一部のみを覆うようにして樹脂層103eを形成し、その樹脂層103d、ビード15を覆い、ビード15に隣接する化成処理皮膜101の一部を直接覆うように、有機塗膜層105eを塗装した。
図5Fにおいては、ビード15から遠い左側から順に、樹脂層103fの端部b、次いで化成処理被膜101の端部a、次いで有機塗膜層105fの端部cが配置された、塗布範囲が示されている(パターンF)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯の化成処理被膜101上に、その一部およびビード15を覆うように樹脂層103fを形成し、その樹脂層103fの一部およびビード15の一部のみを覆うように、有機塗膜層105fを樹脂層103fの上に塗装した。
図5Gにおいては、ビード15の端部cからビード15の内側へ向けて、樹脂層103gの端部b、次いで有機塗膜層105gの端部cが配置された、塗布範囲が示されている(パターンG)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯のビード15の一部のみを覆うように樹脂層103gを形成し、その樹脂層103gの一部のみを覆うように、有機塗膜層105gを樹脂層103gの上に塗装した。
図5Hにおいては、ビード15の端部cからビード15の内側へ向けて、有機塗膜層105hの端部c、次いで樹脂層103hの端部bが配置された、塗布範囲が示されている(パターンH)。この場合、より具体的には、フランジ材を構成する亜鉛系めっき鋼帯のビード15の一部のみを覆うように樹脂層103hを形成し、その樹脂層103gの全ておよびビード15の一部のみを覆うように、有機塗膜層105hを塗装した。
また、実施例17に関しては、上記有機塗膜層を塗装した後、18時間室温で養生を行ったのちに、色合わせ塗装として、光輝性顔料を含む塗膜層を上塗り塗装した。この上塗り塗膜層は、神東塗料製のエポキシ系樹脂塗料(商品名:エスバ(登録商標)99シルバー)を、膜厚15μmとなるようにスプレー塗装した後、乾燥させ、上塗り塗膜層を形成した。この上塗り塗膜層は、有機系塗膜層105全体を覆うように塗装した。
以上のようにして得られた各試料に対して、塗膜層密着性、耐食性および塗装後の外観という3つの観点から評価を行った。評価方法は以下の通りである。
塗膜層密着性は、温度50℃、湿度98RH以上の環境で120時間、湿潤環境に晒した試料に関して、カッターナイフで2mmの碁盤目傷を付与した後、市販のセロハンテープ(商品名:セロテープ(登録商標))を用いて剥離試験を行った。1/2マス以上塗膜層が残存したマス目の数密度で評価し、80/100以上を合格とし、表1には「○」を記載した。1/2マス以上塗膜層が残存したマス目の数密度が90/100以上のものは、塗膜層密着性に特に優れているため、表1には「◎」を記載した。また、上記数密度が79/100以下であったものは不合格とし、表1には「×」を記載した。
耐食性は、塗膜層にきずを付与することなく、JIS H8502に記載された腐食試験に供することで評価し、赤錆発生時間が75サイクル以上であったものを合格とし、表1には「○」を記載した。赤錆発生時間が90サイクル以上のものは、耐食性に特に優れているため、表1には「◎」を記載した。また、赤錆発生時間が75サイクル未満であったものは不合格とし、表1には「×」を記載した。
塗装後の外観は、形成した塗膜層の外観を目視評価し、良好なものをより好ましい外観として「◎」を記載し、色むらおよび塗膜層の垂れが生じているものに関しては「○」を記載した。
上記表1から明らかなように、本発明例に対応する試料は、素地調整処理であるブラスト処理を行わなくとも、優れた塗膜層密着性、耐食性および塗装後外観を示すことが明らかとなった。なお、養生を十分な時間行った試料No.3〜7、12、13、15、17〜18は、養生を比較的短時間しか行わなかった試料No.16と比較してより優れた外観を示した。一方で、比較例に対応する試料は、優れた塗膜層密着性と耐食性とを実現することが出来なかった。また、試料No.3〜7、12〜18については、樹脂層を、1液型変性エポキシ樹脂塗料である神東塗料製クイックエポプライマーIIをスプレーで塗布を行った後、乾燥させることにより形成し、上述したエポキシ系樹脂塗料(商品名:エスバ(登録商標)99シルバー)以外の塗料を樹脂層の材料として使用した際にも同等の効果が得られることを確認した。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 めっき溶接H形鋼(めっき溶接軽量H形鋼)
3 フランジ
5 ウェブ
7 溶接部
9 端面
11 母材鋼板
13 亜鉛系めっき層
15 ビード
101 化成処理被膜
103 樹脂層
105 有機系塗膜層(有機系ジンクリッチ塗膜層)

Claims (10)

  1. 純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなるウェブと、
    純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなり、前記ウェブに溶接されたフランジと、
    前記ウェブと前記フランジとの溶接部位に位置する溶接ビードと、
    前記ウェブおよび前記フランジ上に位置し、ジルコニウムと有機酸とを含む第1の被膜と、
    前記溶接ビードの少なくとも一部と前記第1の被膜の少なくとも一部を覆うように位置し、樹脂材料を含んで構成される第2の被膜と、
    前記溶接ビードを覆い、かつ、前記第2の被膜の少なくとも一部を覆うように位置する、バインダ成分である有機樹脂と亜鉛粒子を含む被膜である有機系の第3の被膜と、
    を備える、めっき溶接形鋼。
  2. 前記第2の被膜の厚みは、3〜30μmである、請求項1に記載のめっき溶接形鋼。
  3. 前記樹脂材料は、エポキシ樹脂を含んで構成される、請求項1または2に記載のめっき溶接形鋼。
  4. 前記第1の被膜は、ジルコニウム100質量部に対し、バナジウムを10〜45質量部、リンを5〜100質量部、コバルトを0.1〜20質量部および有機酸を10〜90質量部の比率で含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
  5. 前記第3の被膜は、当該第3の被膜の全質量に対して60質量%以上の亜鉛粒子を含む有機系塗膜層である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
  6. 前記第3の被膜の厚みは、5〜200μmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
  7. 前記フランジの端面の少なくとも一部および当該端面と隣り合う前記第1の被膜の少なくとも一部には、前記第2の被膜が位置しており、
    当該第2の被膜上には、前記フランジの端面を覆うように前記第3の被膜が位置している、請求項1〜6のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
  8. さらに、前記第3の被膜の少なくとも一部を被覆するように位置する、光輝性顔料を含む塗膜を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
  9. 前記フランジを含む一対のフランジが、前記ウェブを介して対向するように配置されている、めっき溶接H形鋼である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のめっき溶接形鋼。
  10. 純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなるウェブと、純亜鉛めっき層または亜鉛合金めっき層を有するめっき鋼板である亜鉛系めっき鋼板よりなり、前記ウェブに溶接されたフランジと、前記ウェブと前記フランジとの溶接部位に位置する溶接ビードと、前記ウェブおよび前記フランジ上に形成され、ジルコニウムと有機酸とを含む第1の被膜と、を備えるめっき溶接形鋼に対し、前記溶接ビードの少なくとも一部と前記第1の被膜の少なくとも一部とを覆う、樹脂材料を含んで構成される第2の被膜を形成し、
    前記第2の被膜が形成された前記めっき溶接形鋼を少なくとも4時間以上養生し、および
    前記溶接ビードを覆い、かつ、前記第2の被膜の少なくとも一部を覆う、バインダ成分である有機樹脂と亜鉛粒子を含む被膜である有機系の第3の被膜を形成する、めっき溶接形鋼の製造方法。
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