JP2011021649A - 流体軸受装置 - Google Patents

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栗村  哲弥
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Abstract

【課題】低コストに製作可能で、高い軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置を提供する。
【解決手段】流体軸受装置1は、ラジアル軸受面A1,A2を有する軸受部材7と、軸受部材7の内周に挿入された軸部材2とを備える。軸受部材7のラジアル軸受面A1,A2と軸部材2の外周面2a1との間には、潤滑油で満たされたラジアル軸受隙間が形成され、ラジアル軸受隙間の上端には、軸受部材7の上端開口部で潤滑油の油面を保持するシール隙間Sの下端が繋がっている。軸受部材7は、シール隙間Sに面したシール面7b1を有する焼結金属の多孔質体からなる。軸受部材7のうち、少なくともシール面7b1と外部に露出した面とには、これらの面の表面開孔を封止する封孔部9が設けられている。
【選択図】図2

Description

本発明は流体軸受装置に関するものである。
流体軸受装置は、軸受隙間に形成される潤滑油の油膜で軸部材を回転自在に支持するものである。この流体軸受装置は、高速回転、高回転精度、低騒音等の特徴を有するものであり、近年ではその特徴を活かして、情報機器をはじめ種々の電気機器に搭載されるモータ用の軸受装置として、より具体的には、HDD等の磁気ディスク装置やCD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、PC等のファンモータなどのモータ用軸受装置として好適に使用されている。
例えば特許文献1には、少なくとも軸方向の一端が開口した軸受部材と、軸受部材の内周に挿入された軸部材とを主要な構成部材として備え、軸受部材のラジアル軸受面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に形成される潤滑油の油膜で軸部材がラジアル方向に支持される流体軸受装置が開示されている。特許文献1に開示されているように、軸受部材は、ラジアル軸受面を有する焼結金属製の軸受スリーブと、軸受スリーブを内周に収容した非多孔質のハウジングとで構成される場合が多い。ラジアル軸受隙間の油膜切れ、および軸受外部への潤滑油漏れを防止することができるからである。また、軸受部材(ハウジング)の開口部には、軸部材の外周面との間に一端がラジアル軸受隙間に通じたシール隙間を形成するシール部材が配設される。シール隙間は、いわゆるバッファ機能を有し、流体軸受装置の使用温度範囲内では潤滑油の油面を常にその軸方向範囲内に保持する。これにより、軸受開口部からの潤滑油漏れが防止される。
特開2003−336636号公報
ところで、ディスク装置の低価格化が急速に進展している昨今、流体軸受装置の低コスト化を図る必要が生じている。しかしながら、軸部材の他、ハウジング、軸受スリーブ、シール部材等、数多くの部材で構成される上記特許文献1に記載の流体軸受装置では、部材の製作コストや管理コスト、さらには部材同士の組み付けコストが嵩む。ましてや、かかる構成において所期の軸受性能を安定的に維持可能とするためには、個々の部材の製作精度を高めると共に部材同士の組み付け精度を高める必要があるため、低コスト化を図るのは一層困難となる。
流体軸受装置の低コスト化を図るための一手段として、軸受スリーブをインサート部品とし、ハウジング、さらにはシール部材を樹脂で射出成形することが考えられる。しかしながらこの場合、樹脂で射出成形された部分の成形収縮や温度変化に伴う寸法変動に起因して、モータブラケットに対する固定精度やシール隙間の保油能力、さらにはラジアル軸受隙間の幅精度に悪影響が及ぶおそれがある。そのため、所期の軸受性能を安定的に発揮、さらには維持するのが困難となる。
本発明の課題は、低コストに製作可能でありながら、高い軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明では、内周にラジアル軸受面を有し、少なくとも軸方向の一端が開口した軸受部材と、軸受部材の内周に挿入された軸部材と、軸受部材のラジアル軸受面と軸部材の外周面との間に形成され、潤滑油で満たされたラジアル軸受隙間と、軸方向の一端がラジアル軸受隙間に通じ、軸受部材の一端開口部で潤滑油の油面を保持するシール隙間とを備える流体軸受装置において、軸受部材が、シール隙間に面したシール面を有する焼結金属の多孔質体からなり、かつ、少なくともシール面と外部に露出した面の表面開孔を封止する封孔部を有することを特徴とする流体軸受装置を提供する。なお、ここでいうラジアル軸受面とは、ラジアル軸受隙間を形成する一方側の面を意図しており、この面に動圧溝等のラジアル動圧発生部が形成されているか否かは問わない。
上記本発明の構成によれば、上記特許文献1においてハウジング、軸受スリーブ、およびシール部材という3つの部材で満足していた各種機能を、単一の軸受部材で満足することができる。そのため、部材点数や部材同士の組み付け工数を低減して、流体軸受装置の低コスト化を図ることができる。また、この軸受部材を得る上で部材同士の組み付けが不要であり、焼結金属製とされる軸受部材には温度変化に伴う形状(寸法)変動も殆ど生じないことから、高い軸受性能を安定的に維持することができる。また、外部に露出した面に加えてシール面にも封孔部を設けたことから、シール面の表面開孔からの潤滑油の滲み出しを防止し、所期のシール性能を安定的に維持することができる。
封孔部は、例えば、上記各面に目潰し処理を施すことにより、上記各面の表層部に封孔材を含浸させることにより、あるいは上記各面に被膜を形成することにより得られる。封孔部は、これら何れの手法を用いて得ても構わないが、上記各面に形成した被膜で封孔部を構成する場合には、この被膜を導電性被膜とするのが望ましい。特に、ディスク装置に組み込まれるスピンドルモータ用の流体軸受装置には、運転中に空気との摩擦によってディスク等に帯電する静電気を接地側(一般には、流体軸受装置を内周に保持するモータブラケット)に放電するための導電経路を設ける必要があるからである。すなわち、封孔部を被膜で構成した場合であっても、この被膜に導電性を持たせておくことにより導電経路が遮断されるのを防止することができる。なお、導電性被膜は、例えば導電性充填材を含む樹脂材料で被膜を形成することにより、あるいは、めっき処理で被膜を形成することにより得ることができる。
ところで、軸受性能を向上するには、ラジアル軸受部の軸受スパンを拡大し、モーメント荷重に対する負荷能力(モーメント剛性)を高めることが有効である。しかしながら、軸受部材を焼結金属製とする本発明の構成では、軸受部材の内部空孔でも潤滑油を保持し得る分、シール隙間の容積を大きとる必要が生じる。従って、シール隙間の軸方向の一端がラジアル軸受隙間に通じた、すなわち、シール隙間とラジアル軸受隙間とが軸方向に積み重なった構造を有する流体軸受装置においては、何ら対策を講じることなくラジアル軸受部の軸受スパンを拡大すると流体軸受装置の軸方向寸法が長大化する。
かかる問題は、例えば、軸受部材の密度を高め、軸受部材の気孔率を小さくすることで解消可能である。軸受部材の内部空孔で保持する潤滑油の総量を減じることができ、この油量低減分だけシール隙間の容積(例えば、軸方向寸法)を短縮することができるからである。ここでいう「気孔率」とは、軸受部材の単位体積あたりに占める内部空孔の容積の総和の割合である。しかしながら、軸受部材の気孔率を全体的に小さくすると、ラジアル軸受隙間への潤滑油の滲み出し量が不十分となり、油膜切れが生じるおそれがある。そのため、軸受部材の気孔率を部分的に異ならせる場合には、最も気孔率の高い領域にラジアル軸受面を設けるのが望ましい。
なお、部分的に気孔率が異なる軸受部材を得るための手段としては、例えば、部分的に封孔材を含浸させる、互いに気孔率の異なる複数の圧粉体を一体化する、等が考えられる。
軸受部材は、軸方向の一端のみが開口したコップ状とする他、軸方向の他端も開口した円筒状に形成することもできる。軸受部材を円筒状に形成した場合、軸受部材の他端に蓋部材を固定することにより、この蓋部材で、軸受部材の他端開口部を閉塞すると共に、軸部材をスラスト一方向に支持する第1のスラスト軸受部を形成することができる。
蓋部材で軸受部材の他端開口部を閉塞する場合、軸受部材と蓋部材との間に十分な固定強度を確保する必要がある。上記特許文献1に記載のように蓋部材を軸受部材の内周面に固定する場合、両者間に十分な固定強度を確保するには蓋部材を厚肉化する必要が生じる。しかし、蓋部材を厚肉化すると、流体軸受装置の軸方向寸法が長大化する、ラジアル軸受部の軸受スパンが縮小する等の望ましくない事態を招くおそれがあるため、蓋部材をむやみに厚肉化することはできない。
これに対し、軸受部材の外周面に蓋部材を固定すれば、蓋部材を軸受部材の内周面に固定する場合に比べ、内周面と外周面の径差分だけ固定面積を増すことができるので、軸受部材に対する蓋部材の固定強度(蓋部材の耐抜け強度)を高めることができる。この場合、蓋部材には、開口部を閉塞する円盤状の部分と、外周面に固定される筒状の部分とが必要となるが、両者の固定面積を拡大するには筒状の部分を軸方向に長大化すれば足り、円盤状の部分を厚肉化する必要がない。しかも、筒状の部分を軸方向に長大化しても軸受装置全体の軸方向寸法には影響しない。従って、十分な耐抜け強度を確保するには、蓋部材を軸受部材の外周面に固定するのが望ましい。
軸受部材の外周面に固定される蓋部材をプレス成形品とすれば、円盤状の部分と筒状の部分とを一体に有するコップ状の蓋部材を低コストに製作することができる。
流体軸受装置は、さらに、軸部材をスラスト他方向に支持する第2のスラスト軸受部を備えるものとすることができる。この場合、軸受部材に、第2のスラスト軸受部のスラスト軸受隙間に面したスラスト軸受面を設けることができる。この場合においても、スラスト軸受隙間への潤滑油の滲み出し量が不十分となり、スラスト軸受隙間で油膜切れが生じるのを防止するため、最も気孔率の高い領域にスラスト軸受面を設けるのが望ましい。
以上の構成において、シール隙間の軸方向寸法を流体軸受装置の軸方向寸法の17%以下とすれば、ラジアル軸受部の軸受スパンを従来よりも拡大して軸受性能、特にラジアル方向の回転精度を高めることができる。なお、ここで言う流体軸受装置の軸方向寸法とは、軸部材のうち、軸受部材の開口部から突出した部分の軸方向寸法を除く軸方向寸法をいう。具体的に述べると、図2および図7に示す流体軸受装置1では軸受部材7の軸方向寸法であり、図6に示す流体軸受装置1では、軸受部材7の上端から蓋部材8の外底面に至る軸方向寸法である。
また、軸受部材の外周面の円筒度(JISB0621参照)は10μm以下に、軸受部材のラジアル軸受面の円筒度は0.7μm以下とするのが望ましい。これにより、ラジアル軸受隙間の幅精度を高めてラジアル方向の回転精度を高めることができ、しかもモータブラケットに対する軸受部材(流体軸受装置)の固定精度を高めて高いモータ性能を確保することができる。
以上より、本発明によれば、低コストに製作可能でありながら、高い軸受性能を安定的に維持可能な流体軸受装置を提供することができる。
ディスク装置用のスピンドルモータを概念的に示す断面図である。 本発明の第1実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。 (a)図は軸受部材の断面図、(b)図は軸受部材の下側端面を示す図である。 蓋部材の上側端面を示す図である。 図2の要部拡大断面図である。 本発明の第2実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。 本発明の第3実施形態に係る流体軸受装置を示す断面図である。 図7に示す軸受部材の製造工程を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、流体軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に支持する流体軸受装置1と、軸部材2の一端に設けられたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5と、モータブラケット6とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取り付けられる。流体軸受装置1の軸受部材7は、モータブラケット6の内周に固定される。ディスクハブ3には磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚(図示例は2枚)載置され、ディスクDは図示しないクランプ機構で固定される。以上の構成において、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによって、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る流体軸受装置1を示すものである。この流体軸受装置1は、軸方向の両端が開口した軸受部材7と、軸受部材7の内周に挿入された軸部材2と、軸受部材7の一端開口を閉塞する蓋部材8とを構成部材として備え、内部空間には潤滑油が充満されている。なお、以下では、便宜上、蓋部材8が設けられた側を下側、その軸方向反対側を上側として説明を進める。
軸部材2は、軸部2aとフランジ部2bとを有する。軸部2aおよびフランジ部2bは高剛性かつ耐摩耗性に富む金属材料、例えばステンレス鋼で形成される。軸部2aの下端には小径部2a2が形成されており、この小径部2a2を穴あき円盤状のフランジ部2bの内周に嵌合固定することで軸部材2が形成される。軸部とフランジ部の固定方法は任意であり、圧入、接着、溶接(特にレーザ溶接)等を採用することができる。軸部材2として、軸部2aとフランジ部2bを鍛造等で一体成形したものを使用することもできる。
軸受部材7は、軸方向の両端が開口した略円筒状をなし、スリーブ部7aと、スリーブ部7aの上側に配置されたシール部7bと、スリーブ部7aの下側に配置された固定部7cとを一体に有する。
図3(a)に示すように、スリーブ部7aの内周面7a1には、対向する軸部2aの外周面2a1との間にラジアル軸受隙間を形成する円筒状のラジアル軸受面A1,A2が軸方向の二箇所に離隔して設けられる。ラジアル軸受隙間の幅精度、すなわちラジアル軸受部R1,R2の軸受性能を高める観点から、ラジアル軸受面A1,A2の円筒度は、それぞれ0.7μm以下に形成される。ラジアル軸受面A1,A2には、それぞれ、複数の動圧溝Aa1,Aa2をヘリングボーン形状に配列してなるラジアル動圧発生部が形成される。本実施形態において、上側の動圧溝Aa1は、軸方向中心m(上下の傾斜溝間領域の軸方向中央)に対して軸方向非対称に形成されており、軸方向中心mより上側領域の軸方向寸法X1が下側領域の軸方向寸法X2よりも大きくなっている。一方、下側の動圧溝Aa2は軸方向対称に形成され、その上下領域の軸方向寸法はそれぞれ上記軸方向寸法X2と等しくなっている。かかる構成により、軸部材2の回転時には、スリーブ部7aの内周面7a1と軸部2aの外周面2a1との間に介在する潤滑油が下方に押し込まれる(ポンピング能力のアンバランス)。なお、ラジアル動圧発生部は、対向する軸部2aの外周面2a1に形成しても良い。
スリーブ部7aの下側端面7a2には、対向するフランジ部2bの上側端面2b1との間に第2スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する環状のスラスト軸受面Bが設けられ、該スラスト軸受面Bにはスラスト動圧発生部が形成される。スラスト動圧発生部は、図3(b)に示すように、スパイラル形状に配列された複数の動圧溝Baと、これを区画する図中クロスハッチングで示す丘部とを円周方向で交互に配して構成される。このスラスト動圧発生部は、対向するフランジ部2bの上側端面2b1に形成しても良い。
シール部7bの内周面にはシール面7b1が設けられ、このシール面7b1と対向する軸部2aの外周面2a1との間に、上端が大気に開放し、下端がラジアル軸受隙間に通じたシール隙間Sが形成される。軸部2aの外周面2a1は径一定の円筒面状に形成される一方、シール面7b1は下方に向かって漸次縮径したテーパ面状に形成される。従って、シール隙間Sは下方に向けて隙間幅を漸次縮小させたテーパ形状を呈する。
固定部7cの内周面7c1には、金属材料で円盤状に形成された蓋部材8が圧入、接着、圧入接着等の適宜の手段(ここでは圧入接着)で固定される。蓋部材8の上側端面8a1には、対向するフランジ部2bの下側端面2b2との間に第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間を形成する環状のスラスト軸受面Cが設けられ、該スラスト軸受面Cにはスラスト動圧発生部が形成される。本実施形態において、スラスト動圧発生部は図4に示すようなヘリングボーン形状であり、V字状に屈曲した複数の動圧溝Caと、これを区画する図中クロスハッチングで示す凸状の丘部とを円周方向で交互に配して構成される。このスラスト動圧発生部は、対向するフランジ部2bの下側端面2b2に形成しても良い。
以上の構成からなる軸受部材7は、焼結金属の多孔質体、特に銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で形成される。この軸受部材7のうち、シール面7b1および外部に露出した面(ここでは、シール部7bの上端面と外周面、スリーブ部7aの外周面、固定部7cの外周面と下端面と内周チャンファ)には、これらの面の表面開孔を封止する封孔部9が形成される。一方、ラジアル軸受面A1,A2が設けられたスリーブ部7aの内周面7a1や、スラスト軸受面Bが設けられたスリーブ部7aの下側端面7a2には封孔部9を形成しない。ラジアル軸受面A1,A2やスラスト軸受面Bの表面開孔からの潤滑油の滲み出しを可能とし、ラジアル軸受隙間および第2スラスト軸受隙間に形成される油膜の破断(いわゆる油膜切れ)を防止するためである。
なお、後述するように、本実施形態では、上記の各面上に形成した樹脂被膜で封孔部9が構成される。かかる封孔部9を固定部7cの内周面7c1に形成すると、蓋部材8を固定部7cの内周面7c1に接着(圧入接着)する本実施形態においては、蓋部材8と軸受部材7との間に十分な接着力を確保することができないおそれがある。かかる観点から、固定部7cの内周面7c1に封孔部9を形成していない。但し、例えば、めっき処理や目潰し処理を施すことで封孔部9を形成する場合には、蓋部材8と軸受部材7との間に十分な接着強度を確保することができるので、固定部7cの内周面7c1に封孔部9を形成しても構わない。
本実施形態において、封孔部9は、シール面7b1および外部に露出した面を覆うような被膜状に形成される。被膜状の封孔部9は、上記の各面上に、例えばエポキシ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂をベース樹脂とし、これに少なくとも導電性充填材を適量配合した樹脂材料を適宜の手段で塗布した後、これを硬化させることで形成される。ベース樹脂に配合する導電性充填材に特段限定はないが、例えば、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉等の繊維状又は粉末状のものが使用可能である。このように、導電性充填材を含む樹脂材料で被膜状の封孔部9を形成することにより、封孔部9が導電性を有するものとなる。
さらに、軸受部材7は、その気孔率が部分的に異なっている。ここでは、軸受部材7のうち、ラジアル軸受面A1,A2やスラスト軸受面Bが設けられたスリーブ部7aの内径側領域の気孔率を相対的に高くする一方、その他の領域の気孔率を相対的に小さくしている。なお、気孔率とは、軸受部材7の単位体積当たりに占める各内部空孔の容積の総和の割合をいい、以下の数式によって算出される。
気孔率[%]=100−密度比[%]={1−(ρ1/ρ0)}×100
ρ1:軸受部材7の密度 ρ0:軸受部材7と同一組成の物質の真密度
本実施形態では、軸受部材7のうち、外径側領域の内部空孔に封孔材を含浸させ、これを固化させることによって上記構成を得ている。封孔材は、流体軸受装置1の使用温度範囲内で溶融しないもの(固体の状態を保っているもの)であれば特段限定はなく、例えば、錫合金や亜鉛合金などの低融点金属、低融点ガラス、樹脂材料が使用可能である。
上記の構成を具備する軸受部材7は、例えば次のようにして製作される。
まず、銅粉末を主成分とする原料粉を圧粉して圧粉体を得た後、この圧粉体を焼結して焼結体を得る。次いで、焼結体にサイジングを施して、焼結体の各面の面精度や各部の寸法精度を所定の精度に矯正すると共に、焼結体のうちでラジアル軸受面A1,A2およびスラスト軸受面Bとなる部分にそれぞれ動圧発生部を型成形し、完成品形状をなす軸受部材7を得る。次いで、この軸受部材7の外径側領域の内部空孔に封孔材を含浸させ、含浸させた封孔材を固化させる。これにより、気孔率を部分的に異ならせた、詳細には、スリーブ部7aの内径側領域で相対的に気孔率が高くその他の領域で相対的に気孔率が低い軸受部材7が得られる。その後、この軸受部材7のうち、シール面7b1と外部に露出する面とに封孔部9を形成することにより、図2および図3に示す軸受部材7が完成する。但し、封孔部9のうち、軸受部材7の外周面を構成する部分は、軸受部材7の外周面の円筒度が10μm以下となるように仕上げる。モータブラケット6に対する固定精度を確保するためである。
以上のようにして製作された軸受部材7は組立工程に供給され、軸部材2および蓋部材8が組み付けられる。蓋部材8の組み付けに際しては、まず、軸受部材7の内周に軸部材2を挿入した状態で、軸受部材7の固定部7cの内周面7c1あるいは蓋部材8の外周面に接着剤を塗布し、固定部7cの内周面7c1に蓋部材8の外周面を嵌合(圧入)する。そのまま蓋部材8を押し進め、フランジ部2bの両端面2b1,2b2に、軸受部材7のスリーブ部7aの下側端面7a2及び蓋部材8の上側端面8a1をそれぞれ当接させる(すなわち両スラスト軸受隙間の隙間幅を0にする)。次いで、両スラスト軸受隙間の隙間幅の合計量分だけ軸部材2を押し下げて蓋部材8の軸方向の位置決めを行った後、軸受部材7と蓋部材8との間に介在する接着剤を固化させる。これにより、蓋部材8の組み付けとスラスト軸受隙間の幅設定、すなわち流体軸受装置1の組立が完了する。組立完了後、軸受部材7の内部空孔を含め、流体軸受装置1の内部空間に流体としての潤滑油を満たすことにより、図2に示す流体軸受装置1が完成する。
以上の構成からなる流体軸受装置1において、軸部材2が回転すると、スリーブ部7aの内周面7a1の上下2箇所に離隔して設けたラジアル軸受面A1,A2と、これに対向する軸部2aの外周面2a1との間にそれぞれラジアル軸受隙間が形成される。そして軸部材2の回転に伴って両ラジアル軸受隙間の油膜圧力が動圧溝Aa1,Aa2の動圧作用によって高められ、その結果、軸部材2をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部R1,R2が軸方向の二箇所に離隔形成される。これと同時に、フランジ部2bの下側端面2b2と蓋部材8の上側端面8a1に設けたスラスト軸受面Cとの間、およびスリーブ部7bの下側端面7b2に設けられたスラスト軸受面Bとフランジ部2bの上側端面2b1との間に、それぞれ第1および第2スラスト軸受隙間が形成される。そして、軸部材2の回転に伴って両スラスト軸受隙間の油膜圧力が動圧溝Ca,Baの動圧作用によってそれぞれ高められ、その結果、軸部材2をスラスト一方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1とスラスト他方向に支持する第2スラスト軸受部T2が形成される。
また、シール隙間Sが、軸受部材7の内部側に向かって径方向寸法を漸次縮小させたテーパ形状を呈しているため、シール隙間S内の潤滑油は毛細管力による引き込み作用によって軸受部材7の内部側に引き込まれる。さらに、シール隙間Sは、軸受部材7の内部空間を満たす潤滑油の温度変化に伴う容積変化量を吸収するバッファ機能を有し、想定される温度変化の範囲内で潤滑油の油面を常にシール隙間S内に保持する。これらの構成から、軸受部材7内部からの潤滑油漏れが効果的に防止される。
図5に拡大して示すように、軸部材2には、フランジ部2bの上側端面2b1と下側端面2b2とに開口する連通路10が設けられる。このような連通路10を設けることにより、軸部材2の回転中には連通路10を介して第1スラスト軸受隙間と第2スラスト軸受隙間との間で潤滑油を流通させることができる。これにより、第1スラスト軸受隙間と第2スラスト軸受隙間との間で圧力バランス(特にモータ起動時の圧力バランス)をとることができる。
図5に示す連通路10は、径方向部10a及び軸方向部10bを有するもので、動圧溝Ba,Caが設けられたスラスト軸受面B,Cを避けてこれらの内径側に開口させるため、屈曲した形状をなしている。より詳細には、径方向部10aの外径端がフランジ部2bの上側端面2b1、軸受部材7の内周チャンファ、および軸部2aの下端部に設けられたヌスミ部2a3で形成される空間に開口し、径方向部10aの内径端につながった軸方向部10bが軸部2aの小径部2a2の外周面に沿って延び、スラスト軸受面Cに設けたスラスト動圧発生部の内径側の空間に開口している。なお、連通路10は、円周方向の一箇所に設ける他、複数箇所に設けることもできる。
軸部材2の回転中は、軸方向の二箇所に離隔して設けたラジアル動圧発生部のポンピング能力のアンバランス(図3(a)参照)により、軸受部材7のスリーブ部7aの内周面7a1と軸部2aの外周面2a1との間の潤滑油が下方に押し込まれる。そのため、軸受内部の閉塞側の空間、特に第1スラスト軸受部T1のスラスト軸受隙間よりも内径側の空間で圧力が高くなる傾向にある。このような場合に、第1スラスト軸受部T1の動圧溝Caを従来品で多用されるポンプインタイプのスパイラル形状にすると、第1スラスト軸受隙間に介在する潤滑油が内径側に押し込まれるため、第1スラスト軸受隙間よりも内径側の空間の圧力増大を助長することになる。これを回避するため、第1スラスト軸受隙間に動圧作用を発生させる動圧溝Caは、上記のとおりへリングボーン形状(図4参照)にするのが望ましい。
以上に示すように、本発明の構成によれば、上記特許文献1においてハウジング、軸受スリーブ、およびシール部材という3つの部材で満足していた各種機能を単一の軸受部材7で満足することができる。そのため、部品点数や組立工数を低減して、流体軸受装置1の低コスト化を図ることができる。また、この軸受部材7を得る上で部材同士の組み付けが不要であり、焼結金属製とされる軸受部材7には温度変化に伴う形状(寸法)変動も殆ど生じないことから、高い軸受性能を安定的に維持することができる。
また、軸受部材7が焼結金属の多孔質体で形成される構成上、シール部7bのシール面7b1に封孔処理等を施さない場合には、シール面7b1の表面開孔からシール隙間Sに潤滑油の滲み出しが生じて所期のシール性能を確保できないおそれがある。これに対し、本発明では、シール面7b1にも封孔部9を設けたことから、シール隙間Sへの潤滑油の滲み出しを防止して高いシール性能を安定的に維持することができる。
また、軸受部材7の気孔率を部分的に異ならせるようにしたので、軸受部材7の内部空孔で保持し得る潤滑油の総量を減じることができ、この油量低減分だけシール隙間Sの軸方向寸法を短縮することができる。そのため、流体軸受装置1の軸方向寸法を長大化することなくラジアル軸受部R1、R2のスパンを拡大して、軸受性能(特にモーメント剛性)を高めることができる。その一方、軸受部材7のうち、最も気孔率が高い領域(本実施形態では相対的に気孔率が高い領域)にラジアル軸受面A1,A2およびスラスト軸受面Bを設けたので、軸受運転中には、ラジアル軸受隙間や第2スラスト軸受隙間に対して潤滑油を積極的に滲み出させることができる。そのため、各軸受隙間に介在する潤滑油量不足に起因して油膜切れが生じるような事態を防止することができ、高い軸受性能を安定的に維持することができる。
なお、本願発明者が検証したところ、上記構成を採用することにより、シール隙間S(シール部7b)の軸方向寸法Lsは、流体軸受装置1の軸方向寸法(ここでは、軸受部材7の軸方向寸法)Lの17%以下にすることができる。例えば、上記特許文献1の構成では、シール隙間の軸方向寸法Lsが軸受部材の軸方向寸法Lの20%程度であるから、本発明の構成を採用することでシール隙間Sの軸方向寸法を十分に短縮することができる。
ところで図1にも示すように、流体軸受装置1はモータブラケット6の内周に組み込んで使用される。このとき、軸受部材7の外周面の表面開孔を被膜状の封孔部9で封止した本実施形態において、被膜状の封孔部9を一般には絶縁材料である樹脂材料のみで形成すると、ディスクDの回転中に帯電した静電気を効率的に接地側に逃がすことができず、最悪の場合ディスククラッシュを招くおそれがある。これに対し、導電性充填材を含む樹脂材料で被膜状の封孔部9を形成することにより、軸受部材7の外周面の表面開孔を封止するようにしたので、ディスクDが回転することによって帯電した静電気を、軸部材2→軸受部材7→モータブラケット6という経路を介して確実に接地側に放電することができる。
但し、軸受部材7をモータブラケット6に対して接着固定するような場合には、接着剤によって上記の導電経路が遮断されるおそれがあるため、必要に応じて軸受部材7の下端外径端部とモータブラケット6の下端内径端部とにまたがって適当な導電材を塗布し、導電性被膜を形成するのが望ましい。
上記の導電経路を確保する観点から言えば、封孔部9は、軸受部材7の上記所定面にめっき処理を施すことによって被膜状に形成することもできる。但し、封孔部9は、必ずしも被膜状に形成する必要はない。例えば、軸受部材7の上記所定面に目潰し処理を施すことにより、あるいは上記所定面の表層部分に封孔材を含浸させることにより、表面開孔を封止することができる。これらの場合には、モータブラケット6と焼結金属製とされる軸受部材7との間で導電経路を構成することができる。
以上、本発明に係る流体軸受装置1の一実施形態について説明を行ったが、本発明はこれに限定されない。以下、本発明の他の実施形態について説明を行うが、以上で説明した流体軸受装置1と異なる点についてのみ詳細に説明を行い、実質的に同一の部材等には共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る流体軸受装置1を示すものである。同図に示す流体軸受装置1が図2に示すものと異なる主な点は、蓋部材8を軸受部材7の外周面に固定した点にある。詳細に述べると、蓋部材8を、円盤状のプレート部8aと、プレート部8aの外径端から上方に延びる円筒状の筒部8bとを一体に有するコップ状に形成し、筒部8bの内周面8b1を軸受部材7に設けた小径外周面7a3に固定している。なお、蓋部材8は、ステンレス鋼等の金属板をプレス加工することによってプレート部8aと筒部8bとを一体に有するコップ状に形成される。これにより、かかる形状の蓋部材8を低コストに製作することができる。
このように、軸受部材7の外周面(ここでは小径外周面7a3)に蓋部材8を固定すれば、蓋部材8を軸受部材7の内周面に固定する場合(図2参照)に比べ、内周面と外周面の径差分だけ固定面積を増すことができるので、軸受部材7に対する蓋部材8の固定強度(蓋部材8の耐抜け強度)を高めることができる。この場合、蓋部材8には、軸受部材7の下端開口部を閉塞するプレート部8aと、小径外周面7a3に固定される筒部8bとが必要となるが、軸受部材7に対する蓋部材8の固定面積を拡大するには筒部8bを軸方向に長大化すれば足り、プレート部8aを厚肉化する必要がない。しかも、筒部8bを軸方向に長大化しても流体軸受装置1全体の軸方向寸法には影響しない。従って、流体軸受装置1の軸方向寸法やラジアル軸受部R1、R2の軸受スパンに影響を与えることなく、蓋部材8の耐抜け強度を高めることができる。
加えて、蓋部材8の筒部8bを、モータブラケット6に対する取り付け部として活用することができる。蓋部材8とモータブラケット6は何れも金属製であるので、両部材間で高い接着強度を得ることができる。従って、軸受部材7の外周面に樹脂被膜からなる封孔部9を形成する場合でも、流体軸受装置1がモータブラケット6から脱落するような事態を防止することができる。
さらに、蓋部材8は金属材料で形成されているので、軸受装置の運転に伴ってディスクD等に帯電した静電気を、軸部材2→蓋部材8→モータブラケット6という経路を介して確実に接地側に放電することができる。蓋部材8とモータブラケット6とを接着固定する場合、接着剤(通常は絶縁体である)によって上記導電経路が遮断される事態を防止するため、必要に応じて、蓋部材8の下端の外径端とモータブラケット6の下端の内径端とに跨って導電材を塗布し、導電性被膜を形成する。このように蓋部材8で導電経路を構成すれば、軸受部材7の導電性が不要となるので、封孔部9を樹脂被膜で構成する場合であっても封孔部9自体に導電性は不要となる。そのため、封孔部9を形成する樹脂材料中への導電性充填材の配合を不要とし、あるいは配合量を少なくすることができる。これにより、被膜状の封孔部9を形成する際の材料コストを抑えることができる。
図6に示す流体軸受装置1では、軸受部材7のうち、スリーブ部7aの内周面7a1に設けたラジアル軸受面A2の一部又は全部と、蓋部材8の筒部8bとが軸方向でオーバーラップしている。このような場合に金属製の蓋部材8の筒部8bを軸受部材7の外周面7a3に圧入すると、軸受部材7のラジアル軸受面A2に変形が生じ、ラジアル軸受部R2の軸受性能に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、蓋部材8の筒部8bは、軸受部材7の小径外周面7a3に対して隙間接着(筒部8bの内周面8b1と軸受部材7の小径外周面7a3との間に半径方向の隙間を形成し、この半径方向隙間を満たす接着剤で固定)している。これにより、ラジアル軸受部R2の軸受性能が低下するような事態を回避することができる。ラジアル軸受面A2に変形が生じないのであれば、軸受部材7の小径外周面7a3に蓋部材8の筒部8bを軽圧入するようにしても良い。
なお、図6では、小径外周面7a3の表面開孔から潤滑油が滲み出すのを防止する観点から小径外周面7a3の軸方向全長に亘って封孔部9を形成しているが、小径外周面7a3のうちで蓋部材8の筒部8bが嵌合される領域には、必ずしも封孔部9を形成する必要はない。特に、蓋部材8を小径外周面7a3に接着固定する本実施形態において、この封孔部9を図2に示す第1実施形態と同様に樹脂被膜で構成する場合には、小径外周面7a3のうちで蓋部材8の嵌合領域にはむしろ封孔部9を形成しないのが望ましい。軸受部材7と蓋部材8との間に十分な接着強度を確保するためである。
図7は、本発明の第3実施形態に係る流体軸受装置1を示すものである。同図に示す流体軸受装置1は、蓋部材8を軸受部材7の内周面に固定した点において図2に示す流体軸受装置1と共通しているが、気孔率が互いに異なる第1領域71と第2領域72とを一体化することによって軸受部材7を形成した点において図2に示す実施形態と構成を異にしている。
具体的に述べると、第1領域71の気孔率は、第2領域72の気孔率よりも高く設定されている。第1領域71は、軸受部材7のスリーブ部7aの内径側一部領域を構成する円筒状を呈し、内周面には円筒状のラジアル軸受面A1,A2が軸方向に二箇所に離隔して設けられ、また下側端面には環状のスラスト軸受面Bが設けられている。ラジアル軸受面A1,A2、およびスラスト軸受面Bには、例えば図3(a)(b)に示すようなラジアル動圧発生部およびスラスト動圧発生部がそれぞれ形成されている。一方、第2領域72は、第1領域71と一体化されたときにシール部7bを構成する小径筒部72aと、スリーブ部7aの外径側一部領域および固定部7cを構成する大径筒部72bとを一体に有する断面略L字形状を呈し、封孔部9は、小径筒部72aで構成されるシール面7b1と外部に露出した面とに形成されている。
以上の構成からなる軸受部材7は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、図8に示すように、金属粉末を主成分とする原料粉末を圧縮成形し、相対的に高気孔率(低密度)の第1領域71に対応する第1圧粉体71’と、相対的に低気孔率(高密度)の第2領域72に対応する第2圧粉体72’とを個別に製作する。互いに密度の異なる圧粉体71’,72’は、例えば、互いに粒径の異なる原料粉末を用いることにより、あるいは同一の原料粉末を用いて圧縮率を互いに異ならせることにより得ることができる。この段階で、第1圧粉体71’にラジアル動圧発生部およびスラスト動圧発生部は形成されておらず、第2圧粉体72’に封孔部9は形成されていない。嵌合時における両圧粉体71’,72’の欠損等を防止すべく、第1圧粉体71’の外径寸法d1は、第2圧粉体72’の内径寸法d2以下に形成される。
次いで、第2圧粉体72’の内周に第1圧粉体71’を嵌合した後、所定温度で加熱することにより第1圧粉体71’と第2圧粉体72’の互いに対向する面同士が焼結結合される。これにより、両圧粉体71’,72’が一体化してなり、かつ、第1圧粉体71’の配置領域の気孔率が、第2圧粉体72’の配置領域のそれよりも高い焼結体が得られる。次いで、上記の焼結体に寸法サイジングを施して各部の寸法等を矯正する。また、溝サイジングを施して、ラジアル動圧発生部およびスラスト動圧発生部をそれぞれ成形する。その後、焼結体の所定の面に封孔部9を形成することによって図7に示す軸受部材7が完成する。
以上のように、個別に製作した第1領域71と第2領域72とを一体化することによって焼結金属製の軸受部材7を形成すれば、各領域の気孔率(密度)の制御を容易かつ精度良く行うことが可能となる。そのため、ラジアル軸受面A1,A2およびスラスト軸受面Bが形成される第1領域71の内部空孔で十分量の潤滑油を保持可能とする一方、第2領域の内部空孔で保持可能な潤滑油の量を少なくした軸受部材7が容易に得られる。
以上では、ラジアル動圧発生部として動圧溝を設けることにより、ラジアル軸受部R1,R2を動圧軸受で構成した場合について説明を行ったが、ラジアル動圧発生部として多円弧面、ステップ面、および波状面を設けることにより、いわゆる多円弧軸受、ステップ軸受、および波型軸受等、公知のその他の動圧軸受でラジアル軸受部を構成することも可能である。また、ラジアル軸受隙間を介して対向する二面の双方を円筒面とした、いわゆる真円軸受でラジアル軸受部を構成することもできる。
また、以上では、スラスト動圧発生部として動圧溝を設けることにより両スラスト軸受部T1,T2を動圧軸受で構成した場合について説明を行ったが、スラスト軸受面にステップ面や波状面を設けることにより、いわゆるステップ軸受や波型軸受等、公知のその他の動圧軸受でスラスト軸受部T1,T2の何れか一方又は双方を構成することもできる。また、第1スラスト軸受部T1は、軸部材2の下端を接触支持するいわゆるピボット軸受で構成することもできる。この場合には、第2スラスト軸受部T2は基本的に不要となる。
以上では、軸部材2が回転側を構成し、軸受部材7が静止側を構成する流体軸受装置1に本発明を適用した場合について説明を行ったが、これとは逆に軸受部材7が回転側を構成し、軸部材2が静止側を構成するいわゆる軸固定型の流体軸受装置に本発明を適用することも可能である。詳細な図示は省略するが、軸固定型の流体軸受装置では、軸受部材にディスクハブ3が固定され、軸部材がモータブラケット6に固定される。
1 流体軸受装置
2 軸部材
7 軸受部材
7b シール部
7b1 シール面
8 蓋部材
9 封孔部
A1、A2 ラジアル軸受面
B、C スラスト軸受面
S シール隙間
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
L 流体軸受装置の軸方向寸法
Ls シール隙間の軸方向寸法

Claims (10)

  1. 内周にラジアル軸受面を有し、少なくとも軸方向の一端が開口した軸受部材と、軸受部材の内周に挿入された軸部材と、軸受部材のラジアル軸受面と軸部材の外周面との間に形成され、潤滑油で満たされたラジアル軸受隙間と、軸方向の一端がラジアル軸受隙間に通じ、軸受部材の一端開口部で潤滑油の油面を保持するシール隙間とを備える流体軸受装置において、
    軸受部材が、シール隙間に面したシール面を有する焼結金属の多孔質体からなり、かつ、少なくともシール面と外部に露出した面の表面開孔を封止する封孔部を有することを特徴とする流体軸受装置。
  2. 封孔部を導電性被膜で構成した請求項1記載の流体軸受装置。
  3. 軸受部材の気孔率を部分的に異ならせ、最も気孔率の高い領域にラジアル軸受面を設けた請求項1又は2記載の流体軸受装置。
  4. 軸受部材の軸方向の他端を開口させ、この他端開口部を閉塞する蓋部材で、軸部材をスラスト一方向に支持する第1スラスト軸受部を形成した請求項1〜3の何れか一項に記載の流体軸受装置。
  5. 軸受部材の外周面に蓋部材を固定した請求項4記載の流体軸受装置。
  6. 蓋部材をプレス成形品とした請求項5記載の流体軸受装置。
  7. さらに、軸部材をスラスト他方向に支持する第2スラスト軸受部を備え、
    軸受部材が、第2スラスト軸受部のスラスト軸受隙間に面したスラスト軸受面を有する請求項4〜6の何れか一項に記載の流体軸受装置。
  8. 軸受部材の気孔率を部分的に異ならせ、最も気孔率の高い領域にスラスト軸受面を設けた請求項7記載の流体軸受装置。
  9. シール隙間の軸方向寸法を、流体軸受装置の軸方向寸法の17%以下とした請求項1〜8の何れか一項に記載の流体軸受装置。
  10. 軸受部材の外周面の円筒度が10μm以下、軸受部材のラジアル軸受面の円筒度が0.7μm以下である請求項1〜9の何れか一項に記載の流体軸受装置。
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