JP7076266B2 - 焼結含油軸受の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、焼結含油軸受に関し、特に、流体動圧軸受装置に組み込まれる焼結含油軸受に関する。
流体動圧軸受装置は、軸受部材とその内周に挿入された軸部材との相対回転により、軸部材の外周面と軸受部材の内周面との間のラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油の圧力を高め、この圧力(動圧作用)で軸部材を相対回転自在に非接触支持するものである。流体動圧軸受装置は、回転精度及び静粛性に優れるという特性から、HDDのディスク駆動装置のスピンドルモータ等に好適に使用される。
流体動圧軸受装置に組み込まれる軸受部材として、焼結体の内部気孔に油を含浸させてなる焼結含油軸受が用いられることがある。しかし、焼結含油軸受は、表面に無数の微小な開孔部を有するため、ラジアル軸受隙間に満たされた潤滑油の圧力が高まると、焼結含油軸受の内周面の開孔部から内部気孔に潤滑油が浸入し、ラジアル軸受隙間の潤滑油の圧力(油膜強度)が低下する恐れがある。このような現象は「動圧抜け」と呼ばれ、焼結含油軸受を用いた流体動圧軸受装置において回避すべき課題とされる。
動圧抜けを防止する手段として、焼結体の内周面に回転サイジングを施して表面開孔を減じる方法が知られている(例えば、下記の特許文献1参照)。
また、下記の特許文献2には、焼結体の表面に開口した気孔に封止剤(樹脂)を含浸させて封孔する方法が示されている。
また、下記の特許文献3には、鉄粉の周囲に微細な銅粉を拡散付着させた部分拡散合金粉を含む原料粉を用いることで、焼結体の内部気孔を均一に分散させて粗大気孔の形成を防止する方法が示されている。
特開平10-306827号公報 特開2010-60098号公報 特開2017-150596号公報
しかし、回転サイジングだけでは、軸受面に粗大気孔が残存することがあり、動圧抜けを確実に防止できるとは言えない。また、焼結体の表面に封止剤による封孔処理を施す場合、封止剤およびこれを含浸する工程を要するため、コスト高は避けられない。また、部分拡散合金粉のような特殊な粉末を使用すると、材料コスト高を招くおそれがある。
そこで、本発明は、製造コストを抑えつつ、動圧抜けを確実に防止することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、銅を25質量%以上含む原料粉末を圧縮して圧粉体を成形する工程と、前記圧粉体を焼結して焼結体を得る工程と、前記焼結体の外周面を、0μmより大きく50μm以下の圧縮代で圧縮する工程と、前記焼結体の内周面に動圧発生部を型成形する工程とを有する焼結含油軸受の製造方法を提供する。
このように、本発明では、焼結体の内周面に動圧発生部を型成形する工程(動圧溝サイジング)の前に、焼結体の外周面を50μm以下の微小な圧縮代で圧縮する工程(軽サイジング)を施す。この軽サイジングにより、焼結体の表面(外周面)に露出した銅が塑性変形して焼結体の外周面の粗大気孔に入り込み、焼結体の表面の粗大気孔が減じられる。その後、表面の粗大気孔が減じられた焼結体に対して動圧溝サイジングを施すことにより、焼結体の外周面の粗大気孔がさらに減じられ、軽サイジングを施さずに動圧溝サイジングを施した同密度の焼結体と比べて、焼結体の通油度が大幅に低減される。
ところで、従来の焼結含油軸受の製造方法として、動圧溝サイジングの前に、焼結体の寸法を整える寸法サイジングを施すことがある。この寸法サイジングは、焼結体の寸法がねらい値よりも大幅にずれている場合に、焼結体を圧縮して所定の寸法範囲内に収めることを目的とするものである。具体的に、寸法サイジングにおける金型は、図9に示すように、ダイ101、コアロッド102、上パンチ103、および下パンチ104を備える。ダイ101の内径D2’は、焼結体の許容最大外径とされる。コアロッドの外径D3’は、焼結体の許容最小内径とされる。上パンチ103と下パンチ104との軸方向間隔W’は、焼結体の許容最大軸方向幅とされる。以上のようなダイ101、コアロッド102、上パンチ103、および下パンチ104で区画される空間に焼結体110を押し込むことで、焼結体110の寸法(外径、内径、軸方向幅)の何れかが許容範囲を超えている場合に、許容範囲内となるように成形される。
この場合、例えば図示のように、寸法サイジング前の焼結体110の外径D1’が、ダイ101の内径D2’よりも小さければ、焼結体110の外周面110dがダイ101で圧縮されることはない。このように、寸法サイジングでは、焼結体110の外周面110dが圧縮されないことがある。これに対し、本発明の軽サイジングは、焼結体の外周面を、製品ごとの寸法のバラつきに関わらず必ず0μmより大きい圧縮代(好ましくは5μm以上の圧縮代)で圧縮するものであり、従来の寸法サイジングとは異なるものである。
上記のような製造方法により、外周面の粗大気孔が減じられた焼結含油軸受が得られる。具体的には、銅を25質量%以上含み、内周面に動圧発生部が型成形された焼結体からなる焼結含油軸受であって、前記焼結体の外周面における表面開孔率が2%以上15%以下であり、前記焼結体の外周面に開口した各気孔の面積が0.01mm以下であることを特徴とする焼結含油軸受が得られる。
上記の焼結含油軸受の通油度は、例えば0.1g/10min以下とされる。尚、通油度は、焼結体の軸方向両端面に開口した気孔を密封した状態で、焼結体の内周に満たした油に所定圧力(ここでは0.4MPa)を負荷し、この状態で10分間保持したときに、焼結体の外周面に開口した気孔から滲み出した油の総重量とする。
焼結含油軸受と、前記焼結含油軸受の内周に挿入された軸部材と、前記焼結含油軸受の内周面と前記軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる油膜の動圧で前記軸部材を支持するラジアル軸受部とを備えた流体動圧軸受装置は、焼結含油軸受の内周面からの動圧抜けが抑えられるため、優れた軸受剛性及び回転精度を有する。
以上のように、焼結体に、動圧溝サイジングの前に軽サイジングを施すことで、封孔処理や特殊な材料を要することなく、焼結体の通油度を低減して動圧抜けを防止することができる。
スピンドルモータの断面図である。 流体動圧軸受装置の断面図である。 本発明の実施形態に係る焼結含油軸受の断面図である。 上記焼結含油軸受の下面図である。 (A)(B)は、軽サイジング工程を示す断面図である。 (A)は、軽サイジング前の焼結体の表層の断面図であり、(B)は軽サイジング後の焼結体の表層の断面図である。 (A)(B)は、動圧溝サイジング工程を示す断面図である。 焼結体の通油度の試験結果を示すグラフである。 従来の寸法サイジング工程を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるものであり、軸部材2を回転自在に非接触支持する流体動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はケーシング6に取付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3に取付けられる。流体動圧軸受装置1のハウジング7は、ケーシング6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが所定枚数(図示例では2枚)保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力が発生し、この電磁力によってディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
図2に示すように、流体動圧軸受装置1は、軸部材2と、本実施形態に係る焼結含油軸受としての軸受部材8と、軸受部材8を内周に保持するハウジング7と、ハウジング7の軸方向一端の開口部に設けられたシール部9と、ハウジング7の軸方向他端を閉塞する蓋部10とを有する。尚、以下の説明では、便宜上、軸方向でハウジング7の閉塞側を下側、ハウジング7の開口側を上側と言うが、これは流体動圧軸受装置1の使用態様を限定する趣旨ではない。
軸部材2は、軸部2aと、軸部2aの下端に設けられたフランジ部2bとを備える。軸部材2は、ステンレス鋼等の金属材料で形成され、本実施形態では、軸部2aおよびフランジ部2bを含む軸部材2全体が一体に形成される。尚、軸部2aとフランジ部2bを別体に形成することもできる。
軸部2aの外周面には、軸方向に離隔する2箇所に形成された円筒面2a1と、2箇所の円筒面2a1の間に設けられ、円筒面2a1よりも小径な環状凹部2a2とが設けられる。円筒面2a1は、軸受部材8の内周面8aの軸受面8a1と半径方向で対向する軸受対向面として機能する。
ハウジング7は、樹脂あるいは金属で円筒状に形成される。ハウジング7の内周面7aには、軸受部材8の外周面8dが、接着や圧入等の適宜の手段で固定される。
軸受部材8は円筒状をなし、内周面8aにラジアル軸受面が設けられる。図示例では、軸受部材8の内周面8aの軸方向に離隔した2箇所にラジアル軸受面8a1が形成される。各ラジアル軸受面8a1には動圧発生部が形成され、本実施形態では、図3に示すように、各ラジアル軸受面8a1に動圧溝、具体的にはへリングボーン形状に配列された動圧溝G1,G2が設けられる。図中クロスハッチングで示す領域は、周囲より盛り上がった丘部を示している(図4においても同様)。上側の動圧溝G1は軸方向で非対称な形状を成し、下側の動圧溝G2は軸方向で対称な形状を成している。ラジアル軸受面8a1の軸方向間領域には、動圧溝G1、G2の溝底面と連続した円筒面8a2が設けられる。
尚、上下の動圧溝G1,G2の双方を軸方向対称形状としてもよい。また、上下の動圧溝G1,G2を軸方向で連続させたり、上下の動圧溝G1,G2の一方を省略したりしてもよい。また、動圧発生部として、スパイラル形状等の他の形状の動圧溝や、複数の円筒面を組み合わせた多円弧軸受、あるいは複数の軸方向溝を周方向等間隔に配したステップ軸受等を形成してもよい。
軸受部材8の下側端面8bにはスラスト軸受面が設けられる。スラスト軸受面には、図4に示すようなポンプインタイプのスパイラル形状の動圧溝G3が形成される。尚、動圧溝G3の形状として、ヘリングボーン形状や放射溝形状等を採用しても良い。また、軸受部材8の下側端面8bを平坦面として、軸部材2のフランジ部2bの上側端面2b1に動圧溝を形成してもよい。
軸受部材8の上側端面8cには、図3に示すように、環状溝8c1と、環状溝8c1の内径側に設けられた複数の半径方向溝8c2とが形成される。軸受部材8の外周面8dには、複数の軸方向溝8d1が円周方向等間隔に設けられる。これらの軸方向溝8d1、環状溝8c1、及び半径方向溝8c2等を介して、軸部材2のフランジ部2bの外径側の空間がシール空間Sと連通することで、この空間における負圧の発生が防止される。尚、特に必要が無ければ、環状溝8c1や半径方向溝8c2を省略して、軸受部材8の上側端面8cを平坦面としてもよい。
軸受部材8は、銅を25質量%以上含む焼結体で形成され、本実施形態では、銅及び鉄をそれぞれ25質量%以上含む焼結体で形成される。軸受部材8の真密度比は85~95%である。尚、真密度比は、以下の式で定義される。ρ1は軸受部材の密度であり、ρ0は、その軸受部材に気孔が無いと仮定した場合の密度(真密度)である。
真密度比[%]=(ρ1/ρ0)×100
軸受部材8の外周面8dのうち、軸方向溝8d1を除く円筒面領域における表面開孔率は、外周面に軽サイジング(詳細は後述する)を施さない従来品よりも小さくなっている。本実施形態では、軸受部材8の外周面8dの円筒面領域における表面開孔率が、軸受部材8のラジアル軸受面8a1における表面開孔率と同程度となっており、具体的には2~15%となっている。
軸受部材8の外周面8dの円筒面領域には、粗大気孔がほとんど形成されておらず、軸受部材8の外周面8dの円筒面領域に開口した気孔の大きさは、外周面に軽サイジングを施さない従来品よりも小さくなっている。本実施形態では、軸受部材8の外周面8dの円筒面領域に開口した各気孔の面積が、軸受部材8のラジアル軸受面8a1における各気孔の面積と同程度となっており、具体的には0.01mm以下となっている。
シール部9は、図2に示すように、ハウジング7の上端から内径側に突出している。本実施形態では、シール部9がハウジング7と一体に形成されているが、シール部9をハウジング7に対して別体にすることもできる。シール部9の内周面9aは、下方に向けて漸次縮径したテーパ状を成す。シール部9の内周面9aと軸部2aの外周面との間には、下方に向けて半径方向幅を徐々に狭めた断面楔形のシール空間Sが形成される。この他、シール部9の内周面を円筒面とする一方で、軸部2aの外周面に上方に向けて漸次縮径するテーパ面を設け、これらの間に断面楔形のシール空間Sを形成してもよい。シール部9の下側端面9bには、軸受部材8の上側端面8cが当接している。
蓋部10は、黄銅等の金属や樹脂で形成され、ハウジング7の内周面7aの下端部に、圧入、接着等の適宜の手段で固定される。これによりハウジング7の内部の空間がシール空間Sでのみ大気に開放された密閉空間となる。蓋部10は、ハウジング7と一体に形成することもできる。
蓋部10の端面10aにはスラスト軸受面が形成される。このスラスト軸受面には、例えばポンプインタイプのスパイラル形状の動圧溝が形成される(図示省略)。尚、動圧溝の形状として、ヘリングボーン形状や放射溝形状等を採用しても良い。また、蓋部10の端面10aを平坦面として、軸部材2のフランジ部2bの下側端面2b2に動圧溝を形成してもよい。
上記の構成の流体動圧軸受装置1の内部に油が注入され、シール空間S内に油面が形成される(図2参照)。本実施形態の流体動圧軸受装置1は、ハウジング7の内周の空間(シール空間Sよりも内部側の空間)が、軸受部材8の内部気孔を含めて油で満たされた、いわゆるフルフィルタイプである。
軸部材2が回転すると、軸受部材8の内周面8aのラジアル軸受面8a1と軸部2aの外周面(円筒面2a1)との間にラジアル軸受隙間が形成され、動圧溝G1,G2によりラジアル軸受隙間の油膜の圧力が高められることで、軸部材2がラジアル方向に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1及び第2ラジアル軸受部R2が構成される。これと同時に、軸受部材8の下側端面8bとフランジ部2bの上側端面2b1との間、及び、蓋部10の端面10aとフランジ部2bの下側端面2b2との間に、それぞれスラスト軸受隙間が形成される。そして、軸受部材8の下側端面8bの動圧溝G3及び蓋部10の端面10aの動圧溝により、各スラスト軸受隙間に形成された油膜の圧力が高められ、これにより軸部材を両スラスト方向に非接触支持する第1スラスト軸受部T1及び第2スラスト軸受部T2が構成される。
以下、上記の軸受部材8の製造方法を説明する。軸受部材8は、主に原料粉末混合工程、フォーミング工程、焼結工程、軽サイジング工程、回転サイジング工程、および、動圧溝サイジング工程を順に経て製造される。以下、各工程について詳細に説明する。
原料粉末混合工程では、複数種の粉末を混合することにより、軸受部材8の原料粉末を作製する。原料粉末は、金属粉末として、例えば鉄系粉末と、銅系粉末と、低融点金属粉末とを含む。この原料粉末には、必要に応じて、各種成形潤滑剤(例えば、離型性向上のための潤滑剤)や固体潤滑剤(例えば黒鉛粉)等を添加しても良い。
鉄系粉末としては、鉄粉(純鉄粉)の他、鉄合金粉(例えばステンレス鋼粉)を用いることができる。鉄粉としては、還元鉄粉やアトマイズ鉄粉を使用することができる。銅系粉末としては、銅粉(純銅粉)の他、銅合金粉を用いることができる。銅粉としては、電解銅粉やアトマイズ銅粉を使用することができる。低融点金属粉としては、錫、亜鉛、リン等を含む粉末を使用することができ、本実施形態では錫粉が用いられる。
原料粉末は、金属粉末として、25質量%以上の銅を含み、例えば鉄及び銅をそれぞれ25質量%以上含む。本実施形態の原料粉末中の金属粉末が、25~70質量%の銅粉、1~3質量%の錫粉を含み、残部を鉄粉(あるいは鉄合金粉)及び不可避不純物とされる。
フォーミング工程では、フォーミング金型(図示省略)のキャビティに上記の原料粉末を投入して圧縮することにより、図3に示す軸受部材8に近似した円筒形状の圧粉体を得る。フォーミング工程において、圧粉体の外周面には軸方向溝8d1(図3参照)が形成される。
焼結工程では、圧粉体を所定の焼結温度で焼結して、焼結体を得る。原料粉末に流体潤滑剤等の各種成形潤滑剤を添加した場合、成形潤滑剤は焼結に伴って揮散する。
軽サイジング工程では、図5に示す軽サイジング金型20により、焼結体28のうち、少なくとも外周面28dを圧縮する。本実施形態では、図5(A)に示すように、焼結体28の内周にコアロッド21を極微小な隙間を介して挿入した状態で、図5(B)に示すように、焼結体28を上パンチ22で下方に押し込んでダイ24の内周に圧入する。これにより、ダイ24により焼結体28の外周面28dが圧縮されると共に、焼結体28の内周面28aがコアロッド21の円筒面状の外周面に押し付けられて圧迫される。
軽サイジング工程における焼結体28の外周面28dの圧縮代、すなわち、軽サイジング前の焼結体28の外径D1とダイ24の内径D2との差は、後述する動圧溝サイジング工程における焼結体28の外周面28dの圧縮代よりもはるかに小さく、例えば1/5程度とされる。本実施形態では、軽サイジング工程における焼結体28の外周面28dの圧縮代が50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下とされる。また、軽サイジング工程では、焼結体28の製品ごとの寸法公差を踏まえて、焼結体28の外周面28dが必ず0μmより大きい圧縮代、好ましくは5μm以上の圧縮代で圧縮されるように、ダイ24の内径D2が設定される。尚、図5では、軽サイジング金型20による焼結体28の外周面28dの圧縮代の大きさを誇張して示している。
焼結体28の内周面28aとコアロッド21の外周面との間の隙間は、なるべく小さく設定される。具体的には、焼結体28の外周面28dがダイ24の内周面で圧縮されたときに、焼結体28の製品ごとの寸法公差を踏まえて、焼結体28の内周面28aが必ずコアロッド21の外周面に押し付けられて圧迫されるように、コアロッド21の外径D3が設定される。この他、コアロッド21の外径D3を焼結体28の許容最小外径に設定し、焼結体28の内径がコアロッド21の外径D3よりも小さい場合のみに、焼結体28の内周面28aをコアロッド21の外周面で圧迫するようにしてもよい。
本実施形態では、上パンチ22と下パンチ23とで、焼結体28が軸方向両側から圧迫される。具体的には、焼結体28の製品ごとの寸法公差を踏まえて、上パンチ22と下パンチ23とで焼結体28が軸方向両側から必ず圧迫されるように、軽サイジング完了時の上パンチ22と下パンチ23との軸方向間隔Wが設定される。尚、上下パンチ22,23の軸方向間隔Wを焼結体28の許容最小軸方向幅に設定し、焼結体28の軸方向幅が上下パンチ22,23の軸方向幅よりも大きい場合のみに、上下パンチ22,23で焼結体28を軸方向両側から圧迫するようにしてもよい。
以上のように、焼結体28を、外周側、内周側、および軸方向両側の全方向から圧迫することで、焼結体28の体積(みかけ体積)が減少する。この体積減少は、焼結体28の内部気孔で吸収される。
軽サイジング前の焼結体28の表面(外周面28d)には、図6(A)に示すように、鉄粉11及び銅粉12が露出しており、比較的大きな気孔(粗大気孔P)が形成されている。そして、焼結体28に軽サイジングを施して外周面28dを微小な圧縮代で圧縮することにより、図6(B)に示すように、焼結体28の外周面28dに露出した銅粉12が塑性流動して、粗大気孔Pに入り込む。こうして、焼結体28の外周面28dに開口した粗大気孔が減じられることで、外周面28dにおける表面開孔率、および、外周面28dに開口した各気孔の面積が低減される。尚、図6(A)(B)の鎖線は、軽サイジング後の焼結体28の表面(外周面28d)を表している。
回転サイジング工程では、治具(サイジングピン)を焼結体の内周面に締め代をもって押し付け、この状態で、焼結体の内周面の周方向に沿って治具を回転させる(図示省略)。これにより、焼結体の内周面の表層の材料が冶具で圧延され、内周面の開孔部が押しつぶされ、内周面における表面開孔率、及び、内周面に開口した各気孔の面積が低減される。
動圧溝サイジング工程では、図7に示す動圧溝サイジング金型30により、焼結体28の内周面28aに動圧溝を型成形する。具体的には、図7(A)に示すように、焼結体28の内周にコアロッド31を極微小な隙間を介して挿入すると共に、焼結体28の軸方向幅を上下パンチ32,33で拘束する。この状態を維持しながら、図7(B)に示すように、焼結体28をダイ34の内周に圧入する。これにより、焼結体28が外周から圧迫され、焼結体28の内周面28aが、コアロッド31の外周面に形成された成形型31aに押し付けられ、焼結体28の内周面28aに成形型31aの形状が転写されて動圧溝G1,G2(図3参照)が成形される。その後、焼結体28、コアロッド31、及び上下パンチ32,33を上昇させ、ダイ34の内周から焼結体28及びコアロッド31を取り出す。このとき、焼結体28の内周面28aがスプリングバックにより拡径し、コアロッド31の外周面の成形型31aから剥離する。そして、焼結体28の内周からコアロッド31を引き抜く。
動圧溝サイジング工程では、焼結体28の内周面28aをコアロッド31の外周面に押し付ける必要があるため、動圧溝サイジング金型30による焼結体28の外周面28dの圧縮代、すなわち、動圧溝サイジング前の焼結体28の外径D4とダイ34の内径D5との差が、軽サイジング金型20における焼結体28の外周面28dの圧縮代よりも大きな値に設定され、例えば100~200μmとされる。尚、図7では、動圧溝サイジング金型30による焼結体28の外周面28dの圧縮代の大きさを誇張して示している。
上記のように、軽サイジング工程で、焼結体28の外周面28dを微小な圧縮代で圧縮して粗大気孔を減じた後、この焼結体28に、比較的大きい圧縮代による動圧溝サイジングを施すことで、焼結体28の外周面28dに開口した粗大気孔がさらに減じられる。これにより、軽サイジングを施さずに動圧溝サイジングを施した焼結体と比べて、焼結体28の通油度が大幅に(例えば35%以上)低減され、例えば0.1g/10min以下とされる。
こうして形成された焼結体28の内部気孔に真空含浸等の手法で潤滑油を含浸させると、図1に示す軸受部材8が完成する。
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、以上の実施形態では、ハウジング7の内部空間が潤滑油で満たされた、いわゆるフルフィル構造の流体動圧軸受装置1を示したが、これに限らず、ハウジング7の内部空間に潤滑油で満たされていない空隙部を設けたパーシャルフィル構造の流体動圧軸受装置に本発明を適用してもよい(図示省略)。
また、以上の実施形態では、軸部材2を回転側、ハウジング7及び軸受部材8を固定側とした場合を示したが、これとは逆に、軸部材2を固定側、ハウジング7及び軸受部材8を回転側としてもよい。
また、以上の実施形態では、流体動圧軸受装置1をHDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに適用した場合を示したが、これに限らず、例えばレーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータや、電子機器の冷却ファンモータ等に、本発明に係る流体動圧軸受装置を適用することもできる。
本発明の効果を確認するために、材質の異なる3種類の原料粉末を用いて、それぞれ上記の実施形態の製造方法(軽サイジング有)で作製した試験片(実施例1~3)と、上記の実施形態の製造方法のうち、軽サイジング工程を省略した試験片(比較例1~3)とを用意して、各試験片の通油度の評価を行った。軽サイジングにおける焼結体の外周面の圧縮代は20μmとし、動圧溝サイジングにおける焼結体の外周面の圧縮代は200μmとした。各試験片の組成、真密度比、および、通油度を下記の表1及び図8に示す。
Figure 0007076266000001
表1及び図8に示すように、軽サイジングを施した実施例は、軽サイジングを施さなかった同じ組成の比較例と比べて、通油度が大幅に(35%以上)低減した。以上より、軽サイジングを施すことが、通油度の低減、ひいては動圧抜けの抑制に非常に有効であることが確認された。
1 流体動圧軸受装置
2 軸部材
7 ハウジング
8 軸受部材(焼結含油軸受)
9 シール部
10 蓋部
11 鉄粉
12 銅粉
20 軽サイジング金型
21 コアロッド
22 上パンチ
23 下パンチ
24 ダイ
28 焼結体
30 動圧溝サイジング金型
G1,G2,G3 動圧溝(動圧発生部)
P 粗大気孔
R1,R2 ラジアル軸受部
T1,T2 スラスト軸受部
S シール空間

Claims (2)

  1. 銅を25質量%以上含む原料粉末を圧縮して圧粉体を成形する工程と、前記圧粉体を焼結して焼結体を得る工程と、前記焼結体を外周側、内周側、及び軸方向両側の全方向から圧迫することで、前記焼結体の外周面を、製品ごとの寸法のバラつきに関わらず必ず0μmより大きく50μm以下の圧縮代で圧縮する工程と、前記焼結体の内周面に動圧発生部を型成形する工程とを有する焼結含油軸受の製造方法。
  2. 前記圧縮代が5μm以上である請求項に記載の焼結含油軸受の製造方法。
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