JP2007092992A - 流体軸受装置用スリーブ、それを用いた流体軸受装置およびスピンドルモータ並びにスリーブの製造方法 - Google Patents

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勝男 石川
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Abstract

【課題】焼結金属製スリーブにおいて、軸受剛性の低下を防止する。
【解決手段】焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる内部領域48aと、内部領域48aの表面を覆いショットブラスト処理により形成された表面変形領域48bとを備えている。表面変形領域48bがショットブラスト処理により形成されているため、表面近傍の焼結用金属粉末間に形成された気孔を減少させることができる。これにより、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。
【選択図】図7

Description

本発明は、流体軸受装置用スリーブ、特に焼結金属製スリーブ、それを用いた流体軸受装置およびスピンドルモータ並びにスリーブの製造方法に関する。
近年、回転するディスクを用いた記録装置等はそのメモリー容量が増大し、またデータの転送速度が高速化しているため、これらに使用される記録装置の軸受は常にディスク負荷を高精度に回転させるため、高い性能と信頼性が要求されている。そこでこれら回転装置には高速回転に適した動圧流体軸受装置が用いられている。動圧流体軸受装置は、軸とスリーブとの間に潤滑流体である例えばオイルを介在させ、動圧発生溝によって回転時にポンピング圧力を発生し、これにより軸がスリーブに対して非接触で回転するため、機械的な摩擦が無いので高速回転に適している。
以下、図32〜図34を参照しながら、従来の動圧流体軸受装置の一例について説明する。図32は従来例の動圧流体軸受装置の構成の概略を示す断面図である。図32において、動圧流体軸受装置は、軸911、フランジ912、スリーブ913、スラスト板914、オイル915、ロータ916、ベース917を有する。軸911はフランジ912を一体的に有し、軸911はスリーブ913の軸受穴913Cに回転自在に挿入され、フランジ912はスリーブ913の凹部に収納される。軸911の外周面または、スリーブ913の内周面の少なくともいずれか一方には動圧発生溝913A、913Bが設けられ、またフランジ912のスリーブ913との対向面、及びフランジ912とスラスト板914との対向面には動圧発生溝912A、912Bが設けられ、スラスト板914はスリーブ913に固着されている。各動圧発生溝913A、913B、912A、912Bの付近の軸受隙間は少なくともオイル915で充満されている。ロータ916にはディスク918が固定される。
一方、ベース917にスリーブ913は固定され、ロータには図示しないロータ磁石が取り付けられ、またベース917にはロータ磁石に対向する位置に図示しないモータステータが固定される。
以上のように構成された従来の流体軸受式回転装置について、その動作について説明する。図示しないロータ磁石に回転力が与えられると、ロータ916、軸911、フランジ912、ディスク918が回転を始める。回転により、動圧発生溝913A、913B、912A、912Bはオイル915をかき集め、軸911とスリーブ913の間、及びフランジ912とスリーブ913及びスラスト板914の間にポンピング圧力を発生する。これにより、軸911はスリーブ913とスラスト板914に対して非接触で回転し、図示しない磁気ヘッドまたは光学ヘッドにより、ディスク918上のデータの記録再生を行う。
一般的に、流体軸受装置のスリーブは金属材料から切削加工等により製造されるが、さらなる製造コストの低減を目的として焼結金属製スリーブが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。焼結金属とは、例えば銅合金等の金属粉末を成形し焼結した焼結体のことである。スリーブを金属の棒材等から切削加工により製造する場合、多くの切りくずが出て材料に無駄が生じる。しかしスリーブを焼結により製造する場合、金属粉末を成形し焼結するため切りくずが出ることがなく材料の無駄をなくすことができる。またスリーブの内周面に動圧発生用溝を成形する場合、従来は切削加工や電解加工を行う必要があるが、スリーブを焼結により製造する場合は、成形用型にあらかじめ動圧発生用溝に対応する部分を加工しておけば、スリーブを成形すると同時に動圧発生用溝も成形することが可能となる。
以上より、焼結金属製スリーブの製造に要する工数および時間は同じものを切削加工等で製造する場合の数分の1となるため、スリーブを焼結により製造するとスリーブの製造コストを大幅に低減することができる。
特開2003−314536号公報
しかし、焼結金属製スリーブは製造コストを低減できる反面、性能上問題がある。具体的には焼結金属は、金属粉末の集合体であるため多孔質であり、内部に多数の気孔(金属粉末の間に形成される小さな空間)を有している。気孔には、「組織気孔」と呼ばれる焼結体の内部の気孔と、「表面気孔」と呼ばれる焼結体の表面に開口している気孔とがある。通常の焼結金属では表面気孔と組織気孔とが連通しているため、潤滑油が気孔を通って焼結金属の内部を通り抜けることができる。流体軸受装置に焼結金属製スリーブを使用した場合、潤滑油がスリーブを通り抜けて、ラジアル軸受部で発生した支持圧がスリーブの外周側へ抜ける。この結果、例えばラジアル軸受部で発生する支持圧が低下し、ラジアル軸受部の剛性が約30%程度低下してしまう。
また、このようにラジアル軸受部の支持圧がスリーブの外周側へ抜けないようにスリーブの外周側にカップ形状の部材が挿嵌されているものが提案されている。しかし、この場合は流体軸受装置の部品点数が増えるため、焼結金属製スリーブにより製造コストを低減させるという効果に乏しくなる。したがって、焼結金属製スリーブの低コストというメリットを生かすために、軸受剛性を低下させない焼結金属製スリーブが求められている。
そこで、本件発明者は、焼結体軸受に樹脂を含浸させて気孔を封孔する技術を提案し、開発している。
しかしながら、圧粉焼結体軸受に樹脂を含浸させる場合においては、通常の工程におい
て樹脂含浸材が軸受材表面に残留しやすい。このため、樹脂含浸は、寸法精度に悪影響を及ぼしやすい。また、多孔質材である圧粉焼結体の表面及び内部に存在する空孔を完全に埋める事は事実上困難である。さらに、多孔質材である圧粉焼結体の表面付近は残留する表面付着樹脂を除去する必要があるため、表面に樹脂はほとんど残らない。このように樹脂を含浸することの効果は十分に得られないのが実情である。
このため、図33に示すように、多孔質であるスリーブ913の内部には空孔(ポーラス)が存在している。したがって、例えば、最初にオイル915を図中記号Uの位置まで軸受隙間全体に注入しておいても、約500時間放置後にはオイル915Aがスリーブ913内の空孔に入り込み、オイル915の液面高さは図中Vの位置まで下がってしまう。この結果、動圧発生溝913Aが軸911と擦れて焼け付く。
また、図33に示すように、多孔質であるスリーブ913の外部の表面にオイル915Bが滲み出す。このため、オイル915Bが蒸発して、ガス状のオイルが周囲を汚染する。
また、多孔質であるスリーブ913のこのような封孔不足の課題は図示しないビーカに十分な量のオイルを入れ、スリーブ913を単品で、またはスリーブ913に軸911、フランジ912、スラスト板914と組み立てた状態で浸漬放置し、約500時間後に総重量の増加を測定して多孔質材料に染み込んだオイル重量を求めることで診断が可能である。しかし、従来は図34に示すように80℃、500時間の油中浸漬で2〔mg〕以上の変化(重量変化)が認められている。軸受装置に充填される全体のオイル量は10ミリグラム程度であるため、この変化は動圧流体軸受装置にとって大きく信頼性を損なう。
さらに、一般的に動圧流体軸受装置におけるスリーブ913と軸911の隙間は5〔μm〕程度に設定される。このため、封孔処理後の表面処理精度、使用時における熱線膨張係数差における使用環境温度差、および磨耗粉等の問題は、流体軸受装置への不可欠なものである。
本発明の課題は、焼結金属製スリーブにおいて、軸受剛性の低下を防止することにある。
第1の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる内部領域と、内部領域の表面を覆い、焼結用金属粉末からなる表面変形領域とを備えている。表面変形領域の焼結用金属粉末部分の平均密度は、内部領域の焼結用金属粉末部分の平均密度よりも大きい。
このスリーブでは、表面変形領域の焼結用金属粉末部分の平均密度が内部領域の焼結用金属粉末部分の平均密度よりも大きいため、内部領域は気孔の少ない層で覆われている。それに加えて、内部領域の内部に気孔に含浸用樹脂が入り込んでいる。これにより、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。ここでいう平均密度は、重量を体積で除算したものをいい、例えば、スリーブの平均密度は、スリーブの重量を、スリーブの外形から求めた体積で除算したものをいう。
第2の発明に係る流体軸受用スリーブは、焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる内部領域と、内部領域の表面を覆い焼結用金属粉末からなる表面変形領域とを備えている。表面変形領域は、内部領域側から表面側にかけて焼結用金属粉末部分の平均密度が徐々に大きくなる。
このスリーブでは、表面変形領域の焼結用金属粉末部分の密度が内部領域側から表面側にかけて徐々に大きくなるため、表面変形領域の表面の密度が最大となる。これにより、特に表面変形領域の表面において軸受部の支持圧が抜けるのを確実に防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。
第3の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる内部領域と、内部領域の表面を覆いショットブラスト処理により形成された表面変形領域とを備えている。
このスリーブでは、表面変形領域がショットブラスト処理により形成されているため、表面近傍の焼結用金属粉末間に形成された気孔を減少させることができる。これにより、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。
第4の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、焼結用金属粉末を含む内部領域と、内部領域の表面を覆う酸化鉄を含むスチーム処理層と、を備えている。
このスリーブでは、内部領域の表面がスチーム処理によって生成された酸化物により覆われているため、表面付近の気孔は、気孔内壁が前記酸化物によって封孔される。このため、軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができる。
第5の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、第4の発明に係るスリーブにおいて、スチーム処理層の厚みが2〔μm〕以上である。
第6の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、第4または第5の発明に係るスリーブにおいて、内部領域の焼結用金属粉末部分の平均密度が6.8〔g/cm3〕以上である。
このスリーブでは、内部領域の焼結用金属粉末部分の平均密度が6.8〔g/cm3〕以上であるため、軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。
第7の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、第4から第6のいずれかの発明に係るスリーブにおいて、酸化鉄がFe34を含んでいる。
このスリーブでは、スチーム処理層が導電性を有するFe34を含んでいるため、確実にメッキ処理を施すことができ、メッキ処理層の強度を向上させることができる。
第8の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、第4から第7のいずれかの発明に係るスリーブにおいて、スチーム処理層の表面を覆うメッキ処理層をさらに備えている。
このスリーブでは、内部領域がスチーム処理層およびメッキ処理層により覆われている。このため、表面付近の気孔は、スチーム処理によって生成された酸化物およびメッキが気孔内壁を封孔するので、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができる。なお、このスリーブは鉄系の焼結材料を使用する場合に関する。
第9の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、第8の発明に係るスリーブにおいて、スチーム処理層の厚みが2〔μm〕以上であり、メッキ処理層の厚みが2〔μm〕以上である。
このスリーブでは、スチーム処理層およびメッキ処理層の厚みがいずれも2〔μm〕以上であるため、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのをより確実に防止することができる。
第10の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、焼結用金属粉末と、焼結用金属粉末の粒子間に酸化鉄が形成されたスチーム処理領域と、を備えている。
第11の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、流体軸受装置のシャフトに挿入されるスリーブであって、焼結用金属粉末を含む内部領域と、内部領域の表面を覆うように形成された酸化鉄を含むスチーム処理層とを備えている。少なくとも動圧を発生する領域では、スチーム処理層が除去されている。
第12の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、流体軸受装置のシャフトが挿入されるスリーブであって、焼結用金属粉末と、焼結用金属粉末の粒子間に酸化鉄が形成されたスチーム処理領域と、スチーム処理領域の表面を覆うように形成された酸化鉄を含むスチーム処理層とを備えている。少なくとも動圧を発生する表面領域では、スチーム処理層が除去されている。
第13の発明に係る流体軸受装置は、静止部材に対して回転部材を回転自在に支持するための流体軸受装置であって、静止部材および回転部材のうち一方に固定された第4から第12のいずれかの発明に係るスリーブと、静止部材および回転部材のうち他方に固定されスリーブの内周側に相対回転自在に設けられたシャフトと、スリーブおよびシャフトの間に充填された作動流体とスリーブ内周面およびシャフト外周面のいずれか一方に形成された少なくとも1つの第1動圧発生用溝とを有するラジアル軸受部とを備えている。
この流体軸受装置では、第4から第12のいずれかの発明に係るスリーブを備えているため、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。
第14の発明に係る流体軸受装置は、静止部材に対して回転部材を回転自在に支持するための流体軸受装置であって、静止部材に固定された第4から第12のいずれかの発明に係るスリーブと、回転部材に固定され、スリーブの内周側に相対回転自在に設けられたシャフトと、スリーブおよびシャフトの間に充填された作動流体とスリーブ内周面およびシャフト外周面のいずれか一方に形成された少なくとも1つの第1動圧発生用溝とを有するラジアル軸受部と、スリーブの外周側に挿嵌された筒状のカバー部材とを備えている。
この流体軸受装置では、第4から第12のいずれかの発明に係るスリーブを備えているため、循環機能を有する流体軸受装置のスリーブを焼結により製造することができる。これにより、この流体軸受装置では製造コストを低減させることができるとともに、軸受剛性の低下を防止することができる。
第15の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、1次成形体を焼結する焼結工程と、焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、2次成形体に樹脂含浸処理を施す樹脂含浸処理工程と、樹脂含浸処理を施された2次成形体にショットブラスト処理を施すショットブラスト処理工程とを含んでいる。
この製造方法では、2次成形体に樹脂含浸処理を施すため、2次成形体の内部にある気孔に樹脂を入り込ませることができる。また樹脂含浸処理を施された2次成形体にショットブラスト処理を施すため、2次成形体の表面に形成され樹脂が入り込んだ気孔をさらに封じることができる。この結果、焼結用金属粉末部分の平均密度が高く気孔に樹脂が入り込んだ層をスリーブの表面に形成することができる。これにより、この製造方法では気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを確実に防止できるスリーブを製造することができ、軸受剛性の低下を防止することができるとともに製造コストを低減することができる。
第16の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、1次成形体を焼結する焼結工程と、焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、1次成形体または2次成形体を高温蒸気に接触させるスチーム処理工程と、スチーム処理工程において1次成形体または2次成形体の表面に形成された酸化鉄皮膜の少なくとも一部を除去する皮膜除去工程とを含んでいる。
この製造方法では、1次成形体または2次成形体を高温蒸気に接触させるため、焼結用金属粉末の粒子間の気孔に蒸気が入り込み、金属粉末の表面に酸化物が形成される。このため、気孔は気孔内壁が前記酸化物によって封孔され、この結果、軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができる。また、皮膜除去工程により酸化鉄皮膜の少なくとも一部が除去されるため、皮膜が衝撃等によって剥離脱落して軸受隙間に入り、シャフトを摩耗させる等の不具合を防止することができる。
第17の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、1次成形体を焼結する焼結工程と、焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、1次成形体または2次成形体を高温蒸気に接触させるスチーム処理工程と、スチーム処理工程において処理された1次成形体または2次成形体に表面処理を施す表面処理工程とを含んでいる。
ここで、表面処理としては、例えばメッキ処理およびDLC膜コーティング処理などが挙げられる。
第18の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、第17の発明に係る製造方法において、表面処理工程では1次成形体または2次成形体に無電解ニッケルメッキ処理またはDLC膜コーティング処理が施される。
第19の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、第16から第18のいずれかの発明に係る製造方法において、2次成形体の焼結用金属粉末部分の平均密度が6.8〔g/cm3〕以上である。
この製造方法では、2次成形体の焼結用金属粉末部分の平均密度が6.8〔g/cm3〕以上であるため、スチーム処理および表面処理の効果を高めることができる。
第20の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、第16から第18のいずれかの発明に係る製造方法において、2次成形体の焼結用金属粉末部分の体積密度が85%以上である。
第21の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、第16から第20のいずれかの発明に係る製造方法において、1次成形体が筒状のスリーブ本体とスリーブ本体から軸方向に突出する筒状突出部とを有している。サイジング処理工程ではスリーブ本体の寸法変化率よりも筒状突出部の寸法変化率が大きい。
この製造方法では、サイジング処理工程においてスリーブ本体の寸法変化率よりも筒状突出部の寸法変化率が大きいため、例えばスリーブ本体と突出部とのつなぎ目の段差等の密度を高くすることができる。このように、サイジング処理時の寸法変化率を部分的に変えることで、サイジング処理により焼結用金属粉末を型に詰めにくい部分の密度を高くすることができ、前述の製造方法の効果を高めることができる。
第22の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、1次成形体を焼結する焼結工程と、焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、1次成形体または2次成形体を600〜700℃の雰囲気温度内において15〜50分の時間で高温蒸気に接触させるスチーム処理工程と、を含んでいる。
第23の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、第22の発明に係る製造方法において、2次成形体の焼結用金属粉末部分の平均密度が6.8〔g/cm3〕以上である。
第24の発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法は、第22の発明に係る製造方法において、2次成形体の焼結用金属粉末部分の体積密度が85%以上である。
第25の発明に係る流体軸受装置用スリーブは、第4から第12のいずれかの発明に係るスリーブにおいて、外周側に形成され軸方向に延びる少なくとも1つの溝部を有している。
第26の発明に係るスピンドルモータは、静止部材としてのベースプレートと、ベースプレートに固定されステータコイルが巻回される環状のステータと、ロータマグネットを有する回転部材としてのロータと、ベースプレート対してロータを回転自在に支持するための第13または第14の発明に係る流体軸受装置とを備えている。
このスピンドルモータでは、第13または第14の発明に係る流体軸受装置を備えているため、製造コストを低減することができる。
本発明に係る流体軸受装置用スリーブであれば、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。
また本発明に係る流体軸受装置用スリーブの製造方法であれば、軸受剛性の低下を防止することができるスリーブを製造することができ、軸受性能を低下させることなく、スリーブの製造コストを低減することができる。
また、本発明に係る流体軸受装置では、上記したように、スリーブは体積密度85%以上(もしくは6.8g/cm3以上)の圧粉成型金属焼結体の多孔質素材に四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成してなり、また圧粉成型金属焼結体の多孔質素材に適切な400〜700℃の雰囲気温度内において水蒸気処理を施すことにより、四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成するようにしたものである。このため、焼結体素材の空孔を通じて内部にまで四三酸化鉄(Fe34)皮膜が生成され、多孔質の空孔が十分に封孔され、かつ機械的強度が増すばかりでなく、焼結体軸受の表面粗さが改善される。とくに、この装置は動圧流体軸受装置として効果的であり、小型スピンドルモータ化にも最適である。
さらに、本発明に係る流体軸受装置では、スリーブの表面にニッケルを含む成分からなる無電解ニッケルメッキまたはDLC膜コーティングを施すことで、表面の磨耗と四三酸化鉄(Fe34)皮膜の剥離を防ぎ、より信頼性の高い軸受部材が得られる。また、焼結体に樹脂または水ガラスを含浸させておけば、例え酸化物皮膜やメッキ等にピンホールがあっても、空孔内へのオイルの染込みを防止できる。
本発明の各実施形態を図面を参照しながら説明する。
〔第1実施形態〕
図1に、本発明の第1実施形態としてのスリーブを採用した流体軸受装置を備えたスピンドルモータ1の縦断面概略図を示す。図1に示すO−Oは、スピンドルモータ1の回転軸線である。なお、本実施形態の説明では、便宜上、図面の上下方向を「軸方向上側」、「軸方向下側」等と表現するが、スピンドルモータ1の実際の取り付け状態を限定するものではない。
スピンドルモータ1は主に、ベースプレート2(静止部材)と、ロータ3(回転部材)と、流体軸受装置4とを備えている。以下に、各部の詳細について説明する。
ベースプレート2は、スピンドルモータ1の静止側の部分を構成しており、例えば記録ディスク装置のハウジング(図示せず)に固定されもしくは構成している。ベースプレート2は、ブラケット部21を有し、ステータ22が装着されている。ブラケット部21は、ベースプレート2の主要部を構成する環状の部材であり、内周側に軸方向上側に延びる筒状部21aを有している。ステータ22は、磁気回路を構成するためのもので、筒状部21aの外周側に固定されている。筒状部21aの内周側には、後述する流体軸受装置4が固定されている。
ロータ3は、磁気回路部で発生する回転力により回転駆動される部分であり、ロータハブ31と、ディスク載置部32と、バックヨーク33と、ロータマグネット34とを有している。ロータハブ31は、ロータ3の主要部を構成する円板状の部分であり、後述するシャフト41と締結されている。ディスク載置部32は、記録ディスク(図示せず)を載置するためのものであり、ロータハブ31の外周側かつ軸方向下側に配置されている。本実施形態では、ロータハブ31とディスク載置部32とは一体成形されている。
バックヨーク33は、ロータハブ31の軸方向下側かつディスク載置部32の内周側に固定される筒状の部材である。ロータマグネット34は、バックヨーク33の内周側に固定されており、前述のステータ22と半径方向に対向して配置されている。ロータマグネット34とステータ22とにより、ロータを回転駆動するための磁気回路部が構成されている。すなわち、ステータ22のコイルに通電することでロータマグネット34に回転力が発生し、ロータ3が回転駆動される。ロータ3は、ベースプレート2に対して流体軸受装置4により回転自在に支持されている。
図2に流体軸受装置4の縦断面概略図を示す。流体軸受装置4は、ベースプレート2に対してロータ3を回転自在に支持するためのもので、スリーブ42と、シャフト41と、スラストプレート44と、スラストフランジ43とを有している。
スリーブ42は、流体軸受装置4の静止側の部材であり、ベースプレート2の筒状部21aの内周側に挿嵌された筒状の焼結金属製部材である。スリーブ42は、さらにスリーブ本体42aと、少なくとも1つの(ここでは複数の)第1動圧発生用溝71a、71bと、筒状突出部42bと、固定部42dと、シール部42eとを有している。スリーブ本体42aは、スリーブ42の主要部を構成する筒状の部分である。第1動圧発生用溝71a、71bは、スリーブ本体42aの内周面に成形され円周方向に均等に配置された溝であり、例えばヘリングボーン形状を有している。筒状突出部42bは、スリーブ本体42aの端部から軸方向に突出する環状の部分である。固定部42dは、筒状突出部42bの端部からさらに軸方向に突出する環状の部分である。固定部42dは、例えば後述するスラストプレート44の外周部と接着もしくはカシメ加工されている。シール部42eは、スリーブ本体42aの軸方向上側端部の内周側に形成されているキャピラリーシール部である。
シャフト41は、流体軸受装置4の回転側の部材であり、スリーブ42の内周側に配置された円柱状の部材である。コニカル軸受においては、シャフト41は円錐形状の部材である。また、シャフト41は凹部41aを有している。凹部41aは、シャフト41の外周面に形成された環状の凹み部分であり、前述の第1動圧発生用溝71a、71bの軸方向間に相当する位置に配置されている。
スラストフランジ43は、流体軸受装置4の回転側の部材であり、シャフト41の端部に固定されている。スラストフランジ43は、スリーブ42の筒状突出部42bの内周側に配置されている。具体的には、スラストフランジ43は、スリーブ42とスラストプレート44との間に形成された空間に微小隙間を介して配置されている。スラストフランジ43は、スラストプレート44と軸方向に対向する面に第2動圧発生用溝72aを有している。またスラストフランジ43は、スリーブ本体42aと軸方向に対向する面に第3動圧発生用溝73aを有している。なお、第2動圧発生用溝72aはスラストプレート44に成形されていてもよいし、第3動圧発生用溝73aはスリーブ42の端部に成形されていてもよい。
以上に述べたように、この流体軸受装置4では、第1動圧発生用溝71a、71bを有するスリーブ42、シャフト41およびその間に介在する作動流体としての潤滑油46により、ロータ3を半径方向に支持するラジアル軸受部71が構成されている。ここで作動流体としては、潤滑油の他に高流動性グリスやイオン性液体も考えることができる。また、第2動圧発生用溝72aを有するスラストフランジ43、スラストプレート44およびその間に介在する潤滑油46により、ロータ3を軸方向に支持するメインスラスト軸受部72が構成されている。さらに、第3動圧発生用溝73aを有するスラストフランジ43、スリーブ42およびその間に介在する潤滑油46により、サブスラスト軸受部73が構成されている。そして各部材が相対回転することで、各軸受部においてシャフト41の半径方向および軸方向の支持力が発生する。したがって、スリーブ42は流体軸受装置4にとって非常に重要な部材であると言える。
前述のように、本発明に係るスリーブ42は焼結金属製である。ここでは、焼結金属の特性についてより詳細に説明する。
焼結金属は内部に多数の気孔(金属粉末の間に形成される小さな空間)を有している。気孔には、「組織気孔」と呼ばれる焼結体の内部の気孔と、「表面気孔」と呼ばれる焼結体の表面に開口している気孔とがある。従来の焼結金属では表面気孔と組織気孔とが連通しているため、潤滑油が気孔を通って焼結金属の内部を通り抜けることができる。流体軸受装置のスリーブを焼結金属製とした場合、潤滑油がスリーブ内部に染み込む。そして潤滑油が気孔を通ってスリーブ内部を通り抜けて、ラジアル軸受部で発生した支持圧がスリーブの外周側へ抜ける。この結果、例えばラジアル軸受部で発生する支持圧が低下し、ラジアル軸受部の剛性が約30%程度低下してしまう。
一般的に、焼結金属の潤滑油の染み込み量は、焼結金属の平均密度と関係している。ここでいう平均密度とは、焼結金属の重量をその外形から算出した体積で除したものであり、例えば、焼結体の表面の開気孔をワックスなどで封孔処理した状態で、焼結体の重量とアルキメデス法による体積から求めた密度である。図3に焼結金属の平均密度と潤滑油の染み込み量との関係を示す。図3の実験結果は、焼結金属を80℃の潤滑油中に約100時間放置した場合のものである。図3に示すように、焼結金属の金属粉末の平均密度が小さい場合、内部に多数の気孔が存在するため、潤滑油の染み込み量は多くなる。逆に、焼結金属の金属粉末の平均密度が大きい場合、内部の気孔の数量が少ないため、潤滑油の染み込み量が少なくなる。
しかし、平均密度を大きくすることで潤滑油の染み込み量を低減させることはできるが、平均密度だけを調整して焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで焼結金属の潤滑油の染み込み量を低減させるのはあまり現実的ではない。そこで、潤滑油の染み込み量をさらに少なくするために、気孔を封じる封孔処理を焼結金属に施すことが考えられる。
例えば、焼結金属にショットブラスト処理を施し、表面近傍の気孔に鋼球を衝突させることで気孔を封じることができる。図4にショットブラスト処理を施した場合の平均密度と潤滑油染み込み量との関係を示す。図3および図4を比較すると、焼結金属にショットブラスト処理を施した場合はショットブラスト処理を施していない場合に比べて潤滑油の染み込み量が少なくなることが分かる。例えば平均密度が7.0〔g/cm3〕以上の場合は、ショットブラスト処理の有無で潤滑油の染み込み量にほとんど差がない。それに対して平均密度が6.8〔g/cm3〕以下の場合は、潤滑油の染み込み量が少なくなり、ショットブラスト処理の効果があることが分かる。しかし、ショットブラスト処理を施しても、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで焼結金属の潤滑油の染み込み量を低減させることができない。
一方、焼結金属に樹脂含浸処理を施すことで、あらかじめ気孔に樹脂を染み込ませることができる。含浸させる樹脂は、例えばアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等である。図5に樹脂含浸処理を施した場合の平均密度と潤滑油染み込み量との関係を示す。図5に示すように、焼結金属を樹脂含浸した場合は樹脂含浸をしていない場合に比べて潤滑油の染み込み量が低減する。(100時間放置時の染み込み量を示す縦軸の絶対値から明らかである)具体的には、密度が6.5〔g/cm3〕未満の場合は、焼結金属内の気孔の割合が大きすぎるため、気孔が樹脂で埋まりきらず、潤滑油の染み込み量を低減させることができない。それに対して密度が6.8〔g/cm3〕以上の場合には、潤滑油の染み込み量を大幅に低減させることができる。しかし、樹脂含浸処理はショットブラスト処理よりも効果はあるものの、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで潤滑油の染み込み量を低減させることができない。
ここで、潤滑油の染み込み量の具体的な目安について説明する。図1に示す流体軸受装置4のスリーブ42の場合、軸受剛性の低下を防止できる染み込み量は1000時間で約20〔mg〕程度である。しかし、スリーブに20〔mg〕の潤滑油が染み込むと、実際には潤滑油の液面が低下する。この結果、例えばラジアル軸受部の潤滑油がなくなり、流体軸受装置が焼きつきを起こす。したがって、流体軸受装置の焼きつきを考慮すると、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できる潤滑油の染み込み量としては、1000時間で約3.0〔mg〕程度となる。そうすると、平均密度を大きくして樹脂含浸処理を施した場合であっても、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで潤滑油の染み込み量を低減することができないことが図5から分かる。なお、この目安の数値はスリーブおよび流体軸受装置のサイズにより変わるため、この数値に限定されるものではない。
そこで本発明に係る製造方法では、ショットブラスト処理と樹脂含浸処理とを併用することで、両処理を単独で行う場合に比べてより効果の高い封孔処理を可能としている。図6にショットブラスト処理および樹脂含浸処理を併用した場合の平均密度と潤滑油の染み込み量との関係を示す。図6に示すように、焼結金属に対してショットブラスト処理および樹脂含浸処理を施した場合は、それぞれの処理を単独で行った場合(図4、図5)に比べて潤滑油の染み込み量を大幅に低減することができる。この場合、密度が6.5〔g/cm3〕以上(より好ましくは6.8〔g/cm3〕以上)であれば、潤滑油の染み込み量が1000時間で3.0〔mg〕以下であるため、潤滑油の染み込み量をスリーブとして使用できるレベルまで低減することができる。そして図5および図6を比較すると、密度が6.5〔g/cm3〕以上の場合、両処理を併用したときの染み込み量の方は樹脂含浸処理のみを施したときの染み込み量に比べて約8分の1程度になっていることが分かる。すなわち、焼結金属にショットブラスト処理および樹脂含浸処理を併用することで、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで潤滑油の染み込み量を低減させることができる。
以上より、本発明に係るスリーブ42は潤滑油の染み込み量を低減させるために、製造工程においてショットブラスト処理および樹脂含浸処理が施されている。以上のように、軸受寸法が外径φ12、内径φ4、長さL15程度のもので鉄系の燒結金属について説明したが、本発明は後述するスチーム処理のように鉄系材料が必ずしも必要ではないことが利点でもある。よって、他の寸法、他の材質の焼結金属(例えば銅系)でも同様の効果を得ることができる。
以下に、本発明に係るスリーブ42およびその製造方法の詳細について説明する。
図7にスリーブ42の縦断面概略図(左半分)を示す。このスリーブ42は、主に、内部領域48aと、表面変形領域48bとから構成されている。内部領域48aは、焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる筒状の部分である。内部領域48aの焼結用金属粉末部分の平均密度は、6.5〔g/cm3〕以上(より好ましくは6.8〔g/cm3〕以上)である。表面変形領域48bは、内部領域48aの表面を覆っており、焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる。表面変形領域48bは、後述するようにショットブラスト処理により形成される層である。つまり、ショットブラスト処理により形状が変形した領域である。焼結用金属粉末としては、例えば鉄、鉄の合金、銅および銅の合金のうちすくなくとも1つの材料を含有しているものが挙げられる。
このスリーブ42では、表面変形領域48bがショットブラスト処理により形成されているため、表面変形領域48bの気孔の少なくとも一部は封じられ、表面変形領域48b内部の焼結用金属粉末間に形成された気孔が減少する。すなわち、表面変形領域48bの焼結用金属粉末部分の平均密度が内部領域48aの焼結用金属粉末部分の平均密度よりも大きくなり、内部領域48aは気孔の少ない表面変形領域48bで覆われた状態となる。また、表面側の方がショットブラスト処理の効果が高いため、表面変形領域48bの金属粉末部分の密度は内部領域48a側から表面側にかけて徐々に大きくなっている。すなわち、表面変形領域の表面の密度が最大となる。なお、図7では内部領域48aと表面変形領域48bとの境界が明確になるように記載しているが、実際は内部領域48aと表面変形領域48bとの境界は徐々に密度が変化している。またそれに加えて、表面変形領域48bは焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなるため、表面変形領域48bおよび内部領域48aの内部の気孔に樹脂が入り込んでいる。すなわち、このスリーブ42は表面に気孔が少なくかつその気孔に樹脂が入り込んでいる層を有している。これにより、このスリーブ42では、気孔を通ってラジアル軸受部71の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。
またこのスリーブ42では、内部領域48aの焼結用金属粉末部分の平均密度が6.5〔g/cm3〕以上であるため、表面変形領域48bはそれよりさらに密度が高くなり、スリーブ42表面近傍の気孔が少ない。これにより、気孔を通ってラジアル軸受部71の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下をより確実に防止することができる。
次に、このスリーブ42の製造方法について説明する。図8に本発明の第1実施形態としてのスリーブの製造方法のフロー図を示す。図8に示すように、この製造方法は、充填工程S1と、成形工程S2と、焼結工程S3と、ショットブラスト処理工程S4と、サイジング処理工程S5と、樹脂含浸処理工程S6とを含んでいる。
充填工程S1では、例えば鉄や銅を含む金属粉末が1次成形用の型に充填される。成形工程S2では、例えば1次成形用の上型と下型とを用いて充填工程S1で充填された金属粉末材料が圧縮され、1次成形体が成形される。そして、焼結工程S3において1次成形体が高温で焼結される。
次に、ショットブラスト処理工程S4において、焼結された1次成形体にショットブラスト処理が施される。ショットブラスト処理を施すことで、1次成形体の表面に鋼球が衝突する。この結果、1次成形体の表面近傍に形成された気孔が封じられ、1次成形体の表面に気孔のない、あるいは内部(内部領域)に比べて気孔の少ない層が形成される。すなわち、ショットブラスト処理により、内部に比べて気孔が少なく金属粉末部分の平均密度が高い表面変形領域が1次成形体の表面に形成される。ショットブラスト処理の条件としては、例えば鋼球の平均粒径を0.3〔mm〕、鋼球の投射量を60〔kg/min〕鋼球の投射速度を50〔m/s〕とした場合が挙げられる。この場合、他の条件に比べて、潤滑油の染み込み量を低減させる効果がより良好となる。
そしてサイジング処理工程S5において、1次成形体の寸法が矯正される。具体的には、サイジング処理工程S5では、ショットブラスト処理が施された1次成形体が所定位置に配置される内形型および外形型と、昇降自在な上型、下型とからなる2次成形用の金型内にセットされ、1次成形体がこれらの型により圧縮される。この結果、1次成形体の内外周面と両端面との寸法精度が高めら、2次成形体が成形される。サイジング処理を施すことで、1次成形体の寸法が矯正されるとともに、1次成形体の金属粉末部分の平均密度をさらに高めることができる。例えば、この処理により2次成形体の金属粉末部分の平均密度を6.5〔g/cm3〕以上に高めることができる。
サイジング処理工程S5において2次成形体が成形された後、樹脂含浸処理工程S6において2次成形体に樹脂含浸処理が施され、2次成形体がスリーブ42となる。含浸用樹脂としては、例えばアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等が挙げられる。樹脂含浸処理を施すことで、2次成形体の表面および内部に形成された気孔に樹脂が入り込む。この結果、2次成形体の表面および内部に形成された気孔を封じることができる。すなわち、ショットブラスト処理工程S4および樹脂含浸処理工程S6により、スリーブ42の表面には内部に比べて密度が高くかつ気孔が樹脂により封じられている表面変形領域48bを形成することができる。そして、前述のように焼結金属の平均密度がある一定以上のレベルで高い場合は、樹脂含浸を施すことにより潤滑油が焼結金属の内部を通り抜けるのを防止できる。したがって、上記の工程により製造されたスリーブ42は、表面に形成された表面変形領域48bにより潤滑油が気孔を通って内部を通り抜けるのを確実に防止することができる。これにより、この製造方法ではラジアル軸受部71の支持圧がスリーブの外周側へ抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができるとともに製造コストを低減することができる。
また、上記の製造方法では、軸受剛性の低下を防止できる焼結金属製スリーブ42を得ることができるため、スリーブ42の外周側に支持圧が抜けるのを防止するためのカバー用の部材を設ける必要がなく、製造コストをより確実に低減することができる。
また、第1実施形態の変形例1として、上記の工程に最終処理工程S7を加えた製造方法も考えられる。具体的には図8に示すように、最終処理工程S7では、樹脂含浸処理が施された2次成形体に対してショットブラスト処理およびサイジング処理の少なくともいずれか一方が施される。最終処理工程S7においてショットブラスト処理およびサイジング処理の両方が施されてもよい。この場合、樹脂含浸処理の後に再度ショットブラスト処理およびサイジング処理の少なくともいずれか一方が施されるため、樹脂含浸処理後のスリーブ42の表面荒さを改善することができる。
また、第1実施形態の変形例2として、第1実施形態の製造工程の順番を入れ替えた場合も考えられる。図9に本発明の第1実施形態の変形例2としてのスリーブの製造方法のフロー図を示す。図9に示すように、この製造方法は充填工程S11と、成形工程S12と、焼結工程S13と、サイジング処理工程S14と、樹脂含浸処理工程S15と、ショットブラスト処理工程S16とを含んでいる。この製造方法では、焼結工程S13の後にサイジング処理工程S14により1次成形体の寸法矯正が行われ、ショットブラスト処理を施す前に樹脂含浸処理工程S15において2次成形体に樹脂含浸処理が施される。そして樹脂含浸処理が施された後に、ショットブラスト処理工程S16において2次成形体にショットブラスト処理が施される。
この製造方法の場合であっても、スリーブ42の表面に気孔が少なくかつその気孔に樹脂が入り込んだ表面変形領域48bを形成することができる。したがって、前述の第1実施形態の製造方法と同等あるいはそれに近い効果を得ることができる。また、樹脂含浸処理の後にショットブラスト処理を施すため、樹脂含浸処理後の2次成形体の表面荒さを改善することができる。すなわち、この製造方法では、前述の製造方法よりも少ない工程で工程S1〜S7と同等あるいはそれに近い効果を得ることができ、軸受剛性の低下を防止できるとともに製造コストをより低減することができる。
〔第2実施形態〕
また、第1実施形態では、ショットブラスト処理および樹脂含浸処理を併用して封孔効果の高いスリーブを製造しているが、別の封孔処理および製造方法も考えられる。本発明の第2実施形態としてのスリーブの封孔処理およびその製造方法について説明する。なお、本実施形態は、主として鉄系の焼結材料を使用する場合に関する。
前述のショットブラスト処理および樹脂含浸処理以外に、焼結金属を高温のスチームに接触させ表面を高温酸化させることで封孔処理を行うことが考えられる。図10にスチーム処理を施した場合の平均密度と潤滑油染み込み量との関係を示す。図10はスチーム処理により形成された皮膜の厚みが2〔μm〕の場合を示している。図3および図10を比較すると、焼結金属にスチーム処理を施した場合はスチーム処理を施していない場合に比べて潤滑油の染み込み量が少なくなることが分かる。例えば100時間で比較すると、平均密度が6.8〔g/cm3〕以上の場合は潤滑油の染み込み量が少なくなり、スチーム処理の効果があることが分かる。しかしスチーム処理のみでは、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで潤滑油の染み込み量を低減することができない。これはスチーム処理により形成された皮膜の厚みが2〜5〔μm〕程度と薄いためである。
一方潤滑油の染み込み量を少なくするために、焼結金属にメッキ処理を施し、あらかじめ表面にメッキ処理層を形成することが考えられる。図11にメッキ処理を施した場合の平均密度と潤滑油染み込み量との関係を示す。図11はメッキ処理層の厚みが10〔μm〕の場合を示している。図11に示すように、焼結金属にメッキ処理を施した場合はメッキ処理を施していない場合に比べて潤滑油の染み込み量が少なくなる。しかしメッキ処理のみでは、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで潤滑油の染み込み量を低減することができない。なぜならメッキ処理を施す場合、あらかじめ脱脂や錆取を行う必要があるため、脱脂や錆取に使用する液体が焼結金属の気孔に入り込んでしまい、メッキ液が気孔に入り込まないためである。
そこで本発明に係る製造方法では、スチーム処理とメッキ処理とを併用することで、両処理を単独で行う場合に比べてより効果の高い封孔処理を可能としている。図12にスチーム処理およびメッキ処理を併用した場合の平均密度と潤滑油の染み込み量との関係を示す。図12に示すように、焼結金属に対してスチーム処理およびメッキ処理を施した場合は、それぞれの処理を単独で行った場合(図10、図11)に比べて潤滑油の染み込み量を大幅に低減することができる。この場合、密度が6.8〔g/cm3〕以上(より好ましくは7.0〔g/cm3〕以上)であれば、潤滑油の染み込み量を1000時間で3.0〔mg〕以下に低減することができ、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで潤滑油の染み込み量を低減することができる。そして図11および図12を比較すると、密度が6.8〔g/cm3〕以上の場合、両処理を併用したときの染み込み量はメッキ処理のみを施したときの染み込み量に比べて少なくなることが分かる。すなわち、焼結金属にスチーム処理およびメッキ処理を併用することで、焼結金属製スリーブを流体軸受装置に使用できるレベルまで潤滑油の染み込み量を低減させることができる。
以上より、本発明に係るスリーブ142は潤滑油の染み込み量を低減させるために、製造工程においてスチーム処理およびメッキ処理が施されている。以下に、本発明に係るスリーブ142およびその製造方法の詳細について説明する。
図13に、本発明の第2実施形態としてのスリーブ142の縦断面概略図(左半分)を示す。図13に示すように、スリーブ142は内部領域148aと、スチーム処理層148bと、メッキ処理層148cとから構成されている。内部領域148aは、焼結用金属粉末からなる筒状の部分である。スチーム処理層148bは、内部領域148aの表面を覆っている酸化鉄を含んだ層である。酸化鉄としては、例えばFe34等が挙げられる。メッキ処理層148cは、スチーム処理層148bの表面を覆っている層である。メッキ処理としては、例えば無電解ニッケルメッキ処理等が挙げられる。またスチーム処理層148bの厚みとしては2〔μm〕以上、メッキ処理層148cの厚みとしては2〔μm〕以上が好ましい。
このスリーブ142では、スチーム処理層148bの酸化鉄が導電性を有するものである場合、メッキ処理が可能となる。この結果、メッキ処理層148cのみを備えている場合に比べてメッキ処理層148cの強度を向上させることができる。特に、スチーム処理層148bが導電性を有するFe34を含んでいる場合、電気化学的に一方の電極を形成するので確実にメッキ処理を施すことができ、メッキ処理層148cの強度を向上させることができる。これにより、このスリーブ142では、気孔を通ってラジアル軸受部71の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を確実に防止することができる。
またこのスリーブ142では、内部領域148aの焼結用金属粉末部分の平均密度が6.8〔g/cm3〕以上(より好ましくは7.0〔g/cm3〕以上)であるため、スチーム処理およびメッキ処理の効果を高めることができ、メッキ処理層148cの強度をより向上させることができる。
さらにスリーブ142では、スチーム処理層148bおよびメッキ処理層148cの厚みがいずれも2〔μm〕以上であるため、スチーム処理およびメッキ処理の効果を高めることができ、気孔を通ってラジアル軸受部71の支持圧が抜けるのをより確実に防止することができる。
次に、このスリーブ142の製造方法について説明する。図14に本発明の第2実施形態としてのスリーブの製造方法のフロー図を示す。図14に示すように、この製造方法は、充填工程S21と、成形工程S22と、焼結工程S23と、スチーム処理工程S24と、サイジング処理工程S25と、メッキ処理工程S26とを含んでいる。
充填工程S21では、例えば鉄や銅を含む金属粉末材料が1次成形用の型に充填される。成形工程S22では、例えば1次成形用の上型と下型とを用いて充填工程S21において充填された金属粉末材料が圧縮され、1次成形体が成形される。そして、1次成形体が焼結工程S23にて焼結される。
スチーム処理工程S24では、焼結された1次成形体にスチーム処理が施される。具体的には、例えば1次成形体を約500℃の高温蒸気に接触させ、1次成形体の表面を高温酸化させる。この結果、1次成形体の表面には酸化鉄を含んだスチーム処理層148bが形成される。スチーム処理層148bに含まれる酸化鉄としては、例えばFe34等が挙げられる。
そしてサイジング処理工程S25において、1次成形体の寸法が矯正される。具体的には、サイジング処理工程S25では、スチーム処理が施された1次成形体が所定位置に配置される内形型および外形型と、昇降自在な上型、下型とからなる2次成形用の金型内にセットされ、1次成形体がこれらの型によりプレスされる。この結果、1次成形体の内外周面と両端面との寸法精度が高められ、2次成形体が成形される。サイジング処理を施すことで、1次成形体の寸法が矯正されるとともに1次成形体の金属粉末部分の平均密度がさらに高められる。例えば、この処理により1次成形体の平均密度を6.8〔g/cm3〕以上に高めることができる。
サイジング処理工程S25において2次成形体が成形された後、メッキ処理工程S26において2次成形体に表面処理であるメッキ処理が施され、2次成形体がスリーブ142となる。メッキ処理としては、例えば無電解ニッケルメッキ処理等が挙げられる。メッキ処理を施すことで、2次成形体の表面に形成されたスチーム処理層148bの気孔にメッキ用金属が入り込む。このとき、スチーム処理層148bにFe34が含まれている場合、Fe34は導電性を有しているため、気孔にメッキ用金属が入り込みやすくなり、メッキ層がより強固に形成される。この結果、2次成形体の表面に形成された気孔を確実に封じることができる。すなわち、スチーム処理工程S24およびサイジング処理工程S25により、スリーブ142の表面には気孔がメッキ用金属により封じられている強固なメッキ処理層148cを形成することができる。したがって、上記の工程により製造されたスリーブ142は、表面に形成されたスチーム処理層148bおよびメッキ処理層148cにより潤滑油が気孔を通って内部を通り抜けるのを確実に防止することができる。これによりこの製造方法では、ラジアル軸受部71の支持圧がスリーブ142の外周側へ抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができるとともに、製造コストを低減することができる。
また、上記の製造方法では、軸受剛性の低下を防止できる焼結金属製スリーブ142を得ることができるため、スリーブ142の外周側に支持圧が抜けるのを防止するためのカバー用の部材を設ける必要がなく、製造コストをより低減することができる。
さらにこの製造方法では、サイジング処理後の2次成形体の平均密度が6.8〔g/cm3〕以上であるため、スチーム処理およびメッキ処理の気孔を通ってラジアル軸受部71の支持圧が抜けるのを防止できるとともに、製造コストをより確実に低減することができる。
〔第3実施形態〕
以上に述べた第1および第2実施形態のスリーブでは、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができる。しかし、シャフトがスラストフランジを有している場合、スリーブの端部の形状は図2に示すように複雑になる。具体的には、スリーブ本体と筒状突出部とのつなぎ目部分は入り組んだ形状となり、成形用型の形状も複雑になる。この結果、充填工程において、この部分に金属粉末を詰めにくくなり、金属粉末の密度を高くすることができなくなる。そこで、本発明の第3実施形態としてのスリーブの製造方法について第1実施形態の製造方法をもとに説明する。
この製造方法は、サイジング処理工程に特徴を有している。図15に本発明の第3実施形態としての製造方法のサイジング処理の概略図を示す。図15(a)はサイジング処理前の1次成形体42’、図15(b)はサイジング処理後の2次成形体42’’を示している。図15に示すように、このサイジング処理工程では、スリーブ本体42aに相当する部分の寸法変化率よりも筒状突出部42bに相当する部分の寸法変化率を大きく設定している。例えば、スリーブ本体42a、筒状突出部42bおよび固定部42dに相当する部分のサイジング処理前の軸方向寸法をL1、L2、L3、サイジング処理後の軸方向寸法をL4、L5、L6とすると、L1/L4<L2/L5、L1/L4<L3/L6を満たすように1次成形型および2次成形型の寸法が決定されている。なお、L1/L4<L3/L6の代わりに、L2/L5<L3/L6を満たすように型の寸法が決定されていてもよい。
この製造方法では、例えばスリーブ本体42aと筒状突出部42bとのつなぎ目および筒状突出部42bと固定部42dとのつなぎ目の段差等の金属粉末の密度を高くすることができる。このように、サイジング処理時の寸法変化率を部分的に変えることで、サイジング処理により焼結用金属粉末を型に詰めにくい部分の密度を高くすることができ、前述の第1および第2実施形態における製造方法の効果をより高めることができる。
〔第4実施形態〕
また、前述の第1および第2実施形態では、循環機能を有していない流体軸受装置について記載している。したがって、第4実施形態として循環機能付き流体軸受装置ついて説明する。
図16に本発明の第4実施形態としての流体軸受装置204の縦断面概略図を示す。図16に示すように、流体軸受装置204は、ベースプレート202に対してロータ203を回転自在に支持するためのもので、スリーブ242と、シャフト241と、スラストプレート244と、スリーブカバー245とを有している。
スリーブ242は、流体軸受装置204の静止側の部材であり、ベースプレート202の筒状部221aの内周側に挿嵌された筒状の部材である。このスリーブ242は、前述の実施形態の製造方法を用いて製造された焼結金属製のスリーブである。スリーブ242は、さらにスリーブ本体242aと、複数の第1動圧発生用溝271a、271bと、第1凹部242cと、第2凹部242fと、循環溝242gとを有している。スリーブ本体242aは、スリーブ242の主要部を構成する筒状の部分である。第1動圧発生用溝271a、271bは、スリーブ本体242aの内周面に成形され円周方向に均等に配置された溝であり、例えばヘリングボーン形状を有している。第1凹部242cは、スリーブ本体242aの軸方向上側端部に形成された環状の凹み部分である。第2凹部242fは、スリーブ本体242aの軸方向下側端部に形成された環状の凹み部分である。循環溝242gは、潤滑油を循環させるためのものであり、スリーブ本体242aの外周側および軸方向端部に形成された溝状の部分である。循環溝242gの詳細については後述する。シャフト241は、流体軸受装置204の回転側の部材であり、スリーブ242の内周側に配置された円柱状の部材である。
スラストプレート244は、スリーブ242の端部に配置された円板状の部材であり、第2動圧発生用溝272aを有している。第2動圧発生用溝272aは、例えばスパイラル形状やヘリングボーン形状を有しており、シャフト241の軸方向下側端部に対向する位置に形成されている。
スリーブカバー245は、スリーブ242の外周側に配置された環状の部材である。具体的には、スリーブカバー245は、カバー本体245aと、円板部245bと、固定部245cとを有している。カバー本体245aは、軸方向に延びる筒状の部分であり、内周側にスリーブ242が挿嵌されている。円板部245bは、カバー本体245aの軸方向上側端部に設けられた環状の部分であり、カバー本体245aから内周側へ延びている。固定部245cは、カバー本体245aの端部からさらに軸方向下側に突出する環状の部分である。固定部245cは、例えばスラストプレート244の外周部をスリーブ242との間に挟み込んでいる。
円板部245bはスリーブ本体242aの外周部と軸方向に当接しており、円板部245bと第1凹部242cとの間には環状の第1油室(または作動流体室)261が形成されている。スラストプレート244は、スリーブ本体242aの外周部と軸方向に当接しており、スラストプレート244と第2凹部242fとの間には、環状の第2油室262が形成されている。そして、シャフト241、スリーブ242、スラストプレート244およびスリーブカバー245の間には、作動流体としての潤滑油246が充填されている。
以上に述べたように、この流体軸受装置204では、第1動圧発生用溝271a、271bを有するスリーブ242、シャフト241およびその間に介在する潤滑油246により、ロータ203を半径方向に支持するラジアル軸受部271が構成されている。また、第2動圧発生用溝272aを有するスラストプレート244、シャフト241およびその間に介在する潤滑油246により、ロータ203を軸方向に支持するスラスト軸受部272が構成されている。
ここで、循環溝242gの詳細について説明する。循環溝242gは、少なくとも1つの(ここでは複数の)第1溝部242hと、少なくとも1つの(ここでは複数の)第2溝部242iと、少なくとも1つの(ここでは複数の)第3溝部242jとから構成されている。第1溝部242hは、スリーブ本体242aの外周側に形成された軸方向に延びる溝状の部分である。第2溝部242iは、軸方向上側の端部に形成された半径方向に延びる溝状の部分である。第2溝部242iは、第1溝部242hから半径方向内側へ延びており、第1溝部242hと第1凹部242cとを連結している。第3溝部242jは、軸方向下側の端部に形成された半径方向に延びる溝状の部分である。第3溝部242jは、第1溝部242hから半径方向内側へ延びており、第1溝部242hと第2凹部242fとを連結している。
以上の構成をまとめると、スリーブ242、スリーブカバー245およびスラストプレート244の間には、循環溝242gにより循環流路270が形成されている。そして循環流路270は、前述の第1油室261および第2油室262を連結している。第1油室261および第2油室262は、シャフト241の外周面およびスリーブ242の内周面との隙間を介して連通している。すなわちこの流体軸受装置204では、シャフト241およびスリーブカバー245の間の潤滑油246が第2油室262、循環流路270および第1油室261を通って循環可能となっている。
このスリーブ242では、軸方向に貫通する循環孔の代わりに循環溝242gを有しているため、スリーブ242に循環孔を形成しなくても循環流路270を確保することができる。この結果、従来のようにスリーブを軸方向に貫通する循環孔を成形する必要がなくなり、循環機能付き流体軸受装置用スリーブを焼結により製造することが可能となる。これにより、循環機能付き流体軸受装置用スリーブの製造コストを低減することができる。
またこのスリーブ242では、前述の実施形態の製造方法により製造されているため、表面には表面変形領域やスチーム処理層およびメッキ処理層が形成されている。そのため、気孔を通って軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を防止することができる。また、循環流路270を流れる潤滑油がスリーブ242の内部を通り抜けるのを防止することができ、循環機能の低下を防止することができる。前述の特許文献1に記載のスリーブは従来の多孔質の焼結金属からなるため、軸受剛性および循環機能が低下するが、このスリーブでは軸受剛性および循環機能の低下を防止できるため、焼結によりスリーブを製造することができ、スリーブの製造コストを確実に低減することができる。
〔第5実施形態〕
図17〜図19は本発明の動圧流体軸受装置の構成の概略を示す断面図である。図17に示すように、動圧流体軸受装置は主に、軸301と、フランジ302と、スリーブ303と、潤滑流体である潤滑油(またはオイル)304と、上カバー305と、下カバー306と、ロータ307と、ベース308とから構成されている。軸301は、フランジ302を一体的に有しており、スリーブ303の軸受穴303Aに相対的に回転自在に挿入されている。フランジ302はスリーブ303の下面に対向している。軸301の外周面およびスリーブ303の内周面のうち少なくともいずれか一方には動圧発生溝303Bが設けられている。スリーブ下面およびフランジ302のスリーブ303の下面303Cの対向面のうち少なくともいずれか一方には、動圧発生溝302Aが設けられている。上カバー305と下カバー306とはスリーブ303またはロータ307に固着されている。各動圧発生溝302A、303Bの付近の軸受隙間は少なくともオイル304で充満されている。ロータ307にはディスク309が固定されており、ベース308には軸301が固定されている。ロータ307には図示しないロータ磁石が取り付けられており、ベース308にはロータ磁石に対向する位置に図示しないモータステータが固定されている。ロ−タ磁石は、軸方向に吸引力を発生しており、スリーブ303をフランジ302の方向に約10〜50〔g〕の力で押し付けている。
図18に示すように、スリーブ303は、全体の80重量%以上が鉄成分からなる圧粉成型金属焼結体であり、体積密度が85%以上の多孔質材料である(尚、材質が純鉄の場合は体積密度が100%の時比重は約7.86になる)。ここでいう体積密度とは、焼結密度ともいわれ、焼結体の表面の開気孔をワックスなどで封孔処理した状態で、焼結体の重量とアルキメデス法による体積から求めた密度を、焼結体の通常成分の、真の密度で除したものを意味する。
スリーブ303の表面には厚さが2〜10〔μm〕の四三酸化鉄(Fe34)皮膜が形成されており、この四三酸化鉄(Fe34)皮膜により圧粉成型金属焼結体の表面に残留する空孔(ポーラス)を埋めることができている。また、スリーブ303の軸受穴303Aは1〔μm〕以下の高い加工精度が要求されるため、四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成する前および後のうち少なくともいずれか一方において、サイジング加工が施される。具体的には、軸受穴303Aの金型内にスリーブ303が挿入されて、プレス機械によりサイジング加工が施される。このサイジング加工は四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成する前に行う方が、サイジングが軽荷重で容易に行える。一方、四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成する後で行う方が、四三酸化鉄(Fe34)皮膜の厚さのばらつきをサイジング工程で補正できるため、仕上がり精度が良好となる。
さらに図20に示すように、必要に応じて四三酸化鉄(Fe34)皮膜303Gのオーバーコートとしてニッケル系の無電解メッキ303HまたはDLC皮膜(例えば株式会社栗田製作所のプラズマイオン注入式の立体物用3DパックDLCコーティング等が用いられる。)を施す事で、スリーブ303の耐摩耗性の向上と同時に完全な表面封孔効果が得られる。また、オーバーコート303Hや四三酸化鉄(Fe34)皮膜303Gにピンホ−ルや表面欠陥がある場合において、スリーブ303の封孔効果を完璧に行うためには、焼結体素材303Fとしてのスリーブ303の内部に確率的に残留する内部空孔に対して、オーバーコート303H加工前に低圧環境下で樹脂303Jを必要に応じて含浸しておく。
図19はロータ307を示している。ここではスリーブだけでなく、ロータもしくはハブを燒結金属で製造する例を示す。
ロータ307はステンレス材料、銅系材料等の金属、硬質樹脂、または鉄あるいは銅を主成分とする体積密度が85%以上の圧粉成型金属焼結体である。ロータ307が圧粉成型金属焼結体である場合は、その表面は2〜10〔μm〕の厚さに四三酸化鉄(Fe34)皮膜が形成されており、この四三酸化鉄(Fe34)皮膜により圧粉成型金属焼結体の表面に残留する空孔(ポーラス)を埋めることができる。ロータ307はスリーブ303と一体に組み立てられる。スリーブ303の外周面およびロータ307の内周面のうち少なくともいずれか一方には、潤滑流体が循環可能な縦方向循環路303Eが設けられている。ロータ307はディスク等を固定し易いように段部307Aを有している。
尚、スリーブ303およびロータ307が全体の80重量%以上が鉄成分からなる圧粉成型金属焼結体であり、体積密度が85%以上の多孔質材料である場合には、両部品を別々に焼結後にロータ307を軽く圧入し、その後にその表面に2〜10〔μm〕の厚さの四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成すれば製造コストが安価となる。しかも、スリーブ303とロータ307との材料の熱線膨張係数が同じであるため、温度が変化しても部材に歪が生じたり変形したりせず、動圧流体軸受の性能が良好となる。
尚、スリーブ303とロータ307は一体的に圧粉成型金属焼結体として加工され、縦溝303Eはドリル加工で1ケ所ないし4ケ所程度縦穴加工を行っても同じことである。
以上のように構成された従来の流体軸受式回転装置について、その動作について説明する。
図示しないロータ磁石に回転力が与えられると、図17においてロータ307、スリーブ303、上カバー305、下カバー306、ディスク309が回転を始める。スリーブ303の回転により、動圧発生溝303B、302Aはオイル304をかき集め、軸301とスリーブ303との間およびフランジ302とスリーブ303との間にポンピング圧力が発生する。これにより、軸301はスリーブ303とフランジ302に対して非接触で回転し、図示しない磁気ヘッドまたは光学ヘッドにより、ディスク309上のデータの記録再生が行われる。スリーブ303の縦溝303Eにより、オイルが循環可能である。このため、オイルが不足する部分に必要なオイルが供給され易くなり、油膜切れを防止できる。
オイル304はフランジ302と下カバー306との間の隙間に表面張力により保持される。軸受が回転中であれば、オイル304に遠心力が作用しオイル漏れはさらに強力に防止される。またオイル304は上カバー305とスリーブ303との上部に設けられた傾斜面303Dの間の隙間にも表面張力により保持される。軸受が回転中であれば、オイル304に遠心力が作用しオイル漏れが防止される。上カバー305の内径は、軸301の小径部301Aに対向しており、軸301の外径より小さく設けられている。このためオイル304に作用する遠心力は十分に発揮される。また、この隙間のオイル304は、傾斜面303Dの働きにより、オイルは表面張力により隙間が小さい外周部に移動しようとする。このため、オイル304は、縦溝303Eにも流入しやすくなり、軸受内部を移動し易くなる。これにより、軸受内部にオイル不足や油膜切れが起ころうとした場合に、オイル304は縦溝303Eを通って移動し必要な箇所に供給される。また、図17に示すように、軸301の下端部301Bも軸301の外径より細く構成されており、下カバー306の内径も軸301の外径より小さく構成されている。このため、オイル304に働く遠心力は十分に発揮され強力なオイルシール効果が得られる。
図17に示すように、スリーブ303は圧粉成型金属焼結体素材の多孔質表面に四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成している。圧粉成型に用いる金属粉末については、真鍮など銅系のものでもよいが、モータの回転軸との熱線膨張係数差を小さくするためには鉄成分を全体の80重量%以上を占める成分からなる鉄系の粉末または純鉄が好ましい。この場合、鉄粉が圧粉成型された後、これを焼結して軸受用の焼結体素材が得られる。
図20に示すように、スリーブ303の表面の残留空孔は、四三酸化鉄(Fe34)皮膜によって閉鎖されている。このため、オイル304がその空孔に入ってしまい、軸受隙間のオイル304が枯渇する心配がない。また、オイル304がスリーブ303の内部の残留空孔を通過してスリーブ303の外へ漏洩する問題も生じない。
図21は、図示しないビーカに十分な量のオイルを入れ、スリーブ303を単品で浸漬して80℃で放置し、1000時間後に総重量の変化量を測定し、多孔質材料に染み込んだオイル重量を求めたデータである。スリーブ303は圧粉成型金属焼結体素材の多孔質材料であるが、本件発明者は、その体積密度が85%未満では表面にいくら四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成しても表面が充分には封孔されず、図21に示すようにオイルの染込み重量が増加することを発見した。また体積密度が85%以上であればスリーブ303の表面に残留する空孔は四三酸化鉄(Fe34)皮膜を施す事で封止されスリーブ303はオイル315を吸い込まないため、1000時間後も重量変化がなく良好である事を発見した。
また、良好な結果を得たスリーブ303の四三酸化鉄(Fe34)皮膜の厚さは2〜10〔μm〕である事を発見した。厚さが2〔μm〕以下では多孔質表面を封孔する効果が不足し、また10〔μm〕以上の厚さの場合は四三酸化鉄(Fe34)皮膜が剥離したり、割れたりする欠陥が生じた。この四三酸化鉄(Fe34)皮膜の厚さについては、その厚さが2〜10〔μm〕の厚さであれば多孔質材料の体積密度が85%以上の条件との組み合わせ効果により表面が封孔され、オイルが染込まない事を発見した。このようにして作られたスリーブ303により、多孔質材料の表面が完全に封孔され動圧流体軸受の圧力発生効果を高めることができる。
図22は本発明の体積密度85%以上の圧粉成型金属焼結体素材の多孔質表面に四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成してなるスリーブ303を80℃のオイル中に3000時間浸漬し重量変化を測定したデータである。図22から、3000時間放置後もスリーブ303は重量変化がなく、オイルが内部に吸い込まれたりしていない事が分かる。このような表面が完全に封孔されたスリーブ303を用いる事で、図17に示す流体軸受装置において、回転時の圧力低下が無いので高性能、高剛性であり、オイルがスリーブ303の内部に染込んで軸受隙間のオイル304が枯渇して軸受が焼け付いたり、またオイルがスリーブ303の外部に流出して軸受装置の周辺がオイルのガスで汚染されたりする心配がない。
尚、本実施例において軸301及びフランジ302の材質はステンレス鋼、高マンガンクロム鋼、または炭素鋼が用いられている。軸301のラジアル軸受面の表面粗さは0.01〜0.8〔μm〕の範囲に加工により仕上げた材料が使用されている。
尚、本実施例の流体軸受式回転装置は軸301の両端が固定可能で、スリーブ303が回転する軸受構造を示したが、図25に示すように、軸が回転する構成の動圧流体軸受装置において、さらには金属切削で製作したスリーブよりも本スリーブは表面粗さが粗いので、スリーブとロータを接着で固定する場合は接着強度が高くなり、接着溝を設ける必要がなく、またスリーブを他の部材を介さずベースに直接接着固定しても本発明は適用できるものである。
尚、本実施例の流体軸受式回転装置は軸301の両端が固定可能で、スリーブ303が回転する軸受構造を示したが、例えば日本特許第3155529号(流体動圧軸受を備えたモータ及びこのモータを備えた記録ディスク駆動装置)の図18にされる流体軸受装置においても本発明は適用できる。具体的には、この流体軸受装置は、軸の上側にロータが固定され軸の下側にリング形状の部材が取り付けられ、このリング形状の部材周辺がラジアル軸受面に隣接するオイル溜まりを有し、ロータの下面とスリーブの上面が対向してスラスト軸受面が形成されている。
〔第6実施形態〕
図17に示すスリーブ303は焼結体素材の多孔質であるために、これを動圧流体軸受装置として用いた場合には動圧漏れによる圧力低下を招く。このため、サイジング処理を経た金属焼結軸受素材に対し、少なくともその内周面のモータ軸と摺接する部分に四三酸化鉄(Fe34)皮膜が形成されている流体軸受装置であってもよい。具体的には、本発明の第6実施形態に係る流体軸受装置では、圧粉成型金属焼結体素材からなるスリーブ303に水蒸気処理を施して多孔質表面に四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成するようにしている。また、圧粉成型金属焼結体素材に対し、400〜700℃の雰囲気温度内において水蒸気処理を施すことにより、多孔質表面に四三酸化鉄(Fe34)皮膜を形成するようにしている。
水蒸気処理は、一般的に飽和水蒸気中に通した水素ガスを供給することにより酸化させるなどの手法により、これまではせいぜい230℃以下の比較的低温雰囲気で木材の成分分離や変形の永久固定、木質ボード類の寸法安定性付与、あるいは食品類についての安定化手段として知られているものである。しかし、本件発明者は、処理温度および処理時間を変えることにより金属焼結軸受材に転用することに成功した。
水蒸気処理に用いるのは耐圧構造の熱処理炉が好ましく、内部に金属焼結軸受素材と水とを入れて施蓋により内部を密封した後、400〜700℃の高温度まで加熱する。加熱によって内部の水が蒸発し、チャンバー内の圧力が上昇して金属焼結軸受素材の熱処理が開始される。炉内温度にもよるが概ね水蒸気処理時間が25〜80分経過すると、金属焼結軸受素材表面にスピネル相酸化物である四三酸化鉄(Fe34)の緻密で安定的な酸化皮膜が生成される。因みにこの場合の皮膜厚は2〜10〔μm〕程度であり、軸受の寸法精度への影響は殆どない。
尚、水蒸気処理の雰囲気温度については、400℃未満では軸受素材に対する四三酸化
鉄(Fe34)の十分な皮膜生成が行われない。また、反対に700℃を超えても四三酸化鉄(Fe34)の生成に変化はない。また、熱処理炉が高価となるため、400〜700℃の範囲内、さらに好ましくは600〜700℃の範囲内が生産性と生成する皮膜の緻密さの観点からみて理想的である。
また水蒸気処理に要する時間についても、雰囲気温度が上記したように400〜700
℃の範囲内であるとした場合に四三酸化鉄(Fe34)の5〔μm〕程度の皮膜厚を得るためには雰囲気温度600℃でおよそ25分間、550℃の場合でおよそ40分間、450℃の場合でおよそ65分間、400℃の場合でおよそ80分間程度である。このため、処理時間としては、25〜80分間の範囲内であるのが好ましい。
上記の水蒸気処理をおこなった金属焼結軸受素材については、その後必要に応じて再度サイジング処理を施すことにより、さらなる精度の向上をはかることができる。水蒸気処理を施したスリーブ303は、耐蝕性や耐摩耗性、さらに機械的強度が向上するばかりでなく、表面が金属により覆われることになる。このため、水蒸気処理は、メッキの下地処理としても優れ、とくに空孔が埋まることにより表面粗さがなくなりことにより、動圧流体軸受装置として最適に利用しうる。
これらの諸点について具体的に説明をすると、圧粉成型金属焼結体の多孔質素材からなるスリーブ303に400〜700℃の雰囲気温度内において水蒸気処理を施すことにより、空孔を小さくすることが可能である。また、水蒸気処理により、樹脂表面に対するメッキ付着の困難性が減少し、その後のメッキ処理の効果を良好にできる。また、処理条件によっては通気性をほぼゼロにすることが可能となり、動圧漏れによる圧力低下をなくし、軸受の剛性および回転精度を向上させることができる。またそれに加えて、メッキ液の浸入を防いで耐蝕性を良好にすることができる。
さらに生成される四三酸化鉄(Fe34)の皮膜厚についても自在に調整が可能であり、また標準膜厚が5〔μm〕程度であるために、金型を用いた再圧縮による寸法矯正も可能となる。
水蒸気処理をおこなう場合においては、個々の軸受材同士を衝突させることなく処理作業を進めることができるので製品に打痕を生ずることがなく、また処理前に内部に残留した加工油を高温処理して除去することができるため、余分な洗浄工程を必要としない。さらに生成された四三酸化鉄(Fe34)皮膜は耐久性も良好である。
図23はスリーブ303に400〜700℃の温度条件で水蒸気処理を各時間について実施し、各処理時間のスリーブを80℃のオイルに500時間放置後に重量変化を測定したデータである。設定した温度の400〜700℃の範囲は広いためバラツキが多く生じたため、図23のデータは平均値を示しているが、この実験の結果で水蒸気処理時間は25〜80分が良好であった。25分以下では表面の封孔が不十分であり、一方80分を越えると封孔は行えるが、四三酸化鉄(Fe34)の皮膜が後のサイジング工程等で剥離し易いこと、及び経済的で無い等の問題を発生した。
図24は、スリーブ303に600〜700℃の温度条件で水蒸気処理を各時間について実施し、各処理時間のスリーブを80℃のオイルに500時間放置後に重量変化を測定したデータである。600〜700℃における実験結果によれば水蒸気処理時間は15〜50分が良好であった。15分以下では表面の封孔が不十分であり、50分以上であれば充分に封孔が行えた。一方50分を越えると封孔は行えるが、必ずしも経済的ではなく、四三酸化鉄(Fe34)の皮膜が後で剥離し易い等の問題を極稀に発生した。
また600℃以下で水蒸気処理を行うのに比べて、600〜700℃の温度条件で水蒸気処理を行うと、処理時間が短縮できて生産性が良好であるばかりか、多孔質材料表面温度が上昇して活性度が高まっているために、多孔質層と四三酸化鉄(Fe34)層の密着性が高く、また四三酸化鉄(Fe34)層に不安定な酸化鉄であるFeOが表面に残留せず、純度が高く均質な四三酸化鉄(Fe34)層が生成でき、回転時に高い圧力を発生させる動圧流体軸受装置のスリーブ303にとって最適である。
また、四三酸化鉄(Fe34)層の表面にさらにニッケルを含む無電解メッキやDLC皮膜を形成する場合にも密着性が良くなりこれら薄膜の剥離強度が20%程度良くなることを発見した。特に四三酸化鉄(Fe34)層と同等の膜厚が5〔μm〕程度が望ましい。スリーブ303と軸301の隙間は5μm程度に設定されるのであるが、サイジングを施すことにより適正な隙間を確保でき、メッキをすることで磨耗粉の流出を抑えることができる。さらにモータの回転軸との熱線膨張係数差の少ないニッケルを含む無電解メッキやDLC皮膜を施した鉄系の焼結体は最適であり、水蒸気処理とメッキ処理を組合わせると、図22の潤滑流体の染込み量がさらに改善される。
尚、スリーブ303は鉄系粉末を圧粉した後、これを焼結し、さらにサイジングを施して3種類の軸受用素材を得、これを耐圧構造の熱処理炉〔***処理工業(株)のバッチ式ホモ処理炉〕内に入れ、550℃まで水蒸気加熱した後、これを55分間維持して水蒸気処理を実施した。その結果各軸受用素材表面に平均5.0〔μm〕厚の四三酸化鉄(Fe34)皮膜層が形成された。なおこの場合に使用する熱処理炉については、上記のものに限らず、このほかにも例えばサンレー冷熱株式会社製の工業用過熱水蒸気処理炉(ST炉)やあるいはビット炉と蒸気発生装置の組み合わせなどであってもよい。
尚、本発明における圧粉成型金属焼結体の多孔質素材に対する水蒸気処理として400〜700℃の雰囲気温度内であることを条件としたが、このほかにも無酸化(不活性)条件での加熱加工を容易に行うことができる過熱水蒸気処理に遠赤外線加熱を併用することにより、上記の雰囲気温度範囲よりも低い低エネルギー負荷型の過熱水蒸気処理装置を用いてより低い温度条件により同様の四三酸化鉄(Fe34)皮膜形成をおこなうことも可能である。過熱水蒸気処理では伝熱速度は高いが熱効率が低い欠点を有するため、上記の無酸素加熱加工処理法によれば、過熱水蒸気処理の長所に加えて極めて高い熱効率を実現することができ、軸受品質の向上のほか、処理時間の短縮化とコストの低減をはかることができる。
〔第7実施形態〕
前述の第2実施形態では、スリーブへの染み込み量が所定量以下になるようにスチーム処理の後にメッキ処理が行われているが、スチーム処理のみであっても、染み込み量が実用上問題ない場合がある。それは、潤滑油が軸受内を循環する構造を有する場合である。(図16参照)このような潤滑油循環構造を有する軸受は潤滑油溜まり(図16においては第1油室261)を有している。スリーブへの染み込み量が多少多くても、この潤滑油溜まりの潤滑油が減少するだけなので、動圧溝部には常に潤滑油が供給されているので、焼き付き等の不具合が起こりにくくなっている。具体的には図25に示すように、第7実施形態に係るスリーブ442は、主に小型の流体軸受装置に用いられるスリーブであり、スチーム処理領域448dと、スチーム処理領域448dを覆うスチーム処理層(酸化物皮膜層)448bとから構成されている。スチーム処理層448bは、前述の第2実施形態と同様にスチーム処理によりスチーム処理領域448dの表面に形成された酸化物を含む層である。スチーム処理領域448dは、スチーム処理層448bの内部にまで高温蒸気が入り込んで、焼結用金属粉末の各粒子の表面に酸化物が形成されている領域である。このため、スチーム処理領域448dの粒子間の気孔には酸化物が入り込んでいる。
また図26に示すように、この場合の製造方法のフローは、充填工程S421と、成形工程S422と、焼結工程S423と、サイジング処理工程S424と、スチーム処理工程S425とから構成されている。前述の第2実施形態のフローに比べて、このフローでは2次成形体のメッキ処理工程S26に対応する工程が省略されており、またサイジング処理工程S424の後にスチーム処理工程S425が行われている。
この場合、気孔を通ってラジアル軸受部の支持圧が抜けるのを防止することができ、軸受剛性の低下を確実に防止することができる。また、スチーム処理層448bは、比較的硬い層であるため、前述の第2実施形態とほぼ同程度の耐摩耗性が得られる。
なお、図27に示すように、スリーブ442の寸法や形状によっては、スチーム処理領域448dの内部に、前述の第2実施形態において説明した内部領域148aに対応する焼結金属からなる内部領域448a(スチーム処理が行きわたらない領域)が残る場合がある。この場合でも図25に示すスリーブ442と同様の効果が得られる。
〔第8実施形態〕
前述の第7実施形態では、スチーム処理層448bによりスリーブ442が覆われており、封孔効果およびメッキ処理時とほぼ同程度の耐摩耗性が得られる。しかし、スチーム処理層448bは、硬い反面、衝撃に弱く、衝撃が加わって亀裂が生じると、軸受の使用中に剥離するおそれがある。スチーム処理層448bが剥離すると、その剥離片によりシャフトの摩耗が促進されるため、好ましくない。そこで、スチーム処理工程S424の後に少なくとも一部のスチーム処理層448bを除去する実施形態も考えられる。
具体的には図28に示すように、第8実施形態に係るスリーブ542は、前述の第7実施形態のスリーブ442の内径にあるスチーム処理層(酸化物皮膜層)448bが除去されたものであり、スチーム処理領域548dのみから構成されている。
また、この場合の製造方法は、図29に示すように、充填工程S521と、成形工程S522と、焼結工程S523と、スチーム処理工程S524と、皮膜除去工程S525と、サイジング処理工程S526とから構成されている。前述の第7実施形態のフローに比べて、このフローではスチーム処理工程S524の後に皮膜除去工程S525が追加されている。皮膜除去工程S525は、スチーム処理工程S524において表面に形成されたスチーム処理層を除去する工程である。スチーム処理層の除去方法としては、例えばショットブラスト、バレル研磨あるいは切削加工などが挙げられる。図28のように表面全体のスチーム処理層(酸化物皮膜層)を除去するには、ショットブラストがよい。また、ラジアル軸受やスラスト軸受に相当する部分だけ除去するときは、リーマ加工や旋盤加工などの切削加工で行なう。
このような実施形態であっても、スチーム処理領域548dにより、染み込み量が実用上問題なく適用できる場合がある。また、スチーム処理層が剥離することがないため、剥離片によるシャフトの摩耗促進を防止することができる。染み込み量が多少多くなっても実用上問題ない構造を有する軸受の場合は、剥離による不具合要因が除去され信頼性が向上する効果は大きい。
なお、スチーム処理領域548dは、スチーム処理層448bに比べて耐摩耗性が低下するが、酸化物が存在しているため軸受として問題ないレベルの耐摩耗性を確保することができる。また、皮膜除去工程S525の後のサイジング処理工程S526は、寸法精度や表面精度の向上を目的としており、封孔効果の観点では省略することができる。また、前述の第7実施形態と同様に、スチーム処理領域548dの内部に焼結金属からなる内部領域(スチーム処理が行きわたらない領域)が残っていてもよい。
〔第9実施形態〕
前述の第2実施形態では、スチーム処理層148bの上からメッキ処理を行っているが、前述の第8実施形態で説明するようにスチーム処理層148bを除去してから、前述の第2実施形態のようにメッキ処理を行ってもよい。
具体的には図30に示すように、このスリーブ642は、スチーム処理領域648dと、スチーム処理領域648dを覆うメッキ処理層648cとから構成されている。前述の第8実施形態と同様に、スチーム処理領域648dは、蒸気が内部まで入り込んで焼結金属の粒子間の気孔に酸化物が入り込んでいる。前述の第2実施形態と同様に、メッキ処理層648cは、無電解ニッケルメッキ処理などにより形成された層であり、スチーム処理領域648dを覆っている。これにより、第8実施例の耐摩耗性の向上や封孔効果の向上を図ることができる。
この場合の製造方法は、図31に示すように、充填工程S621と、成形工程S622と、焼結工程S623と、スチーム処理工程S624と、皮膜除去工程S625と、サイジング処理工程S626と、メッキ処理工程S627とから構成されている。前述の第8実施形態のフローに比べて、サイジング処理工程S626の後にメッキ処理工程S627が追加されている。
この場合であっても、前述の第2実施形態と同様の封孔効果を得ることができる。また、それに加えて、スチーム処理層が除去されているため、スチーム処理層によるメッキ処理のバラツキを抑えることができる。
〔その他の実施形態〕
その他の実施形態としては、例えば以下のような実施形態が考えられる。
前述の第1〜第3実施形態では、シャフトの端部にスラストフランジが設けられているが、スラストフランジがないタイプの流体軸受装置にも適用可能である。
また、前述の実施形態では、作動流体を潤滑油として記載しているが、高流動性グリスやイオン性液体等であってもよい。
本発明の流体軸受装置用スリーブ、それを用いた流体軸受装置、スピンドルモータおよびその製造方法は、軸受剛性の低下を防止できるため有用である。
本発明の第1実施形態としてのスリーブを採用した流体軸受装置を備えたスピンドルモータ1の縦断面概略図。 流体軸受装置4の縦断面概略図。 焼結金属の平均密度と潤滑油の染み込み量との関係を示す図。 ショットブラスト処理を施した場合の焼結金属の平均密度と潤滑油染み込み量との関係を示す図。 樹脂含浸処理を施した場合の焼結金属の平均密度と潤滑油染み込み量との関係を示す図。 ショットブラスト処理および樹脂含浸処理を併用した場合の焼結金属の平均密度と潤滑油の染み込み量との関係を示す図。 スリーブ42の縦断面概略図(左半分)。 本発明の第1実施形態(変形例1含む)としてのスリーブの製造方法のフロー図。 本発明の第1実施形態の変形例2としてのスリーブの製造方法のフロー図。 スチーム処理を施した場合の平均密度と潤滑油染み込み量との関係を示す図。 メッキ処理を施した場合の焼結金属の平均密度と潤滑油の染み込み量との関係を示す図。 スチーム処理およびメッキ処理を併用した場合の平均密度と潤滑油の染み込み量との関係を示す図。 本発明の第2実施形態としてのスリーブ142の縦断面概略図(左半分)を示す図。 本発明の第2実施形態としてのスリーブの製造方法のフロー図。 本発明の第3実施形態としての製造方法のサイジング処理の概略図。 本発明の第4実施形態としての流体軸受装置204の縦断面概略図を示す図。 本発明の第5実施形態としての流体軸受装置の断面図。 流体軸受装置におけるスリーブの説明図。 流体軸受装置におけるロータの説明図。 流体軸受装置におけるスリーブ断面の拡大図。 流体軸受装置における体積密度の影響についての説明図。 流体軸受装置におけるスリーブ重量変化説明図。 流体軸受装置におけるスチーム処理時間説明図。 流体軸受装置におけるスチーム処理時間説明図。 本発明の第7実施形態としてのスリーブ442の縦断面概略図(左半分)を示す図。 本発明の第7実施形態としてのスリーブの製造方法のフロー図。 本発明の第7実施形態の変形例。 本発明の第8実施形態としてのスリーブ442の縦断面概略図(左半分)を示す図。 本発明の第8実施形態としてのスリーブの製造方法のフロー図。 本発明の第9実施形態としてのスリーブ442の縦断面概略図(左半分)を示す図。 本発明の第9実施形態としてのスリーブの製造方法のフロー図。 従来の流体軸受装置の断面図。 従来の流体軸受装置におけるスリーブの説明図。 従来の流体軸受装置におけるスリーブ重量変化説明図。
符号の説明
1 スピンドルモータ
2 ベースプレート
3 ロータ
4 流体軸受装置
41 シャフト
42 スリーブ
43 スラストフランジ
44 スラストプレート
46 潤滑油
71a、71b 第1動圧発生用溝
72a 第2動圧発生用溝
73a 第3動圧発生用溝
48a、148a 内部領域
48b 表面変形領域
148b スチーム処理層
148c メッキ処理層
242g 循環溝
242h 第1溝部
242i 第2溝部
242j 第3溝部
S1 充填工程
S2 成形工程
S3 焼結工程
S4 ショットブラスト処理工程
S5 サイジング処理工程
S6 樹脂含浸処理工程
S7 最終処理工程
S24 スチーム処理工程
S26 メッキ処理工程

Claims (26)

  1. 焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる内部領域と、
    前記内部領域の表面を覆い、焼結用金属粉末からなる表面変形領域とを備え、
    前記表面変形領域の焼結用金属粉末部分の平均密度は、前記内部領域の焼結用金属粉末部分の平均密度よりも大きい、
    流体軸受装置用スリーブ。
  2. 焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる内部領域と、
    前記内部領域の表面を覆い、焼結用金属粉末からなる表面変形領域とを備え、
    前記表面変形領域の焼結用金属粉末部分の密度は、前記内部領域側から表面側にかけて徐々に大きくなる、
    流体軸受装置用スリーブ。
  3. 焼結用金属粉末と含浸用樹脂とからなる内部領域と、
    前記内部領域の表面を覆い、ショットブラスト処理により形成された表面変形領域と、
    を備えた流体軸受装置用スリーブ。
  4. 焼結用金属粉末を含む内部領域と、
    前記内部領域の表面を覆う酸化鉄を含むスチーム処理層と、
    を備えた流体軸受装置用スリーブ。
  5. 前記スチーム処理層の厚みは、2〔μm〕以上である、
    請求項4に記載の流体軸受装置用スリーブ。
  6. 前記内部領域の焼結用金属粉末部分の平均密度は、6.8〔g/cm3〕以上である、
    請求項4または5に記載の流体軸受装置用スリーブ。
  7. 前記酸化鉄は、Fe34を含んでいる、
    請求項4から6のいずれかに記載の流体軸受装置用スリーブ。
  8. 前記スチーム処理層の表面を覆うメッキ処理層をさらに備えた、
    請求項4から7のいずれかに記載の流体軸受装置用スリーブ。
  9. 前記スチーム処理層の厚みは、2〔μm〕以上であり、
    前記メッキ処理層の厚みは、2〔μm〕以上である、
    請求項8に記載の流体軸受装置用スリーブ。
  10. 焼結用金属粉末と、
    前記焼結用金属粉末の粒子間に酸化鉄が形成されたスチーム処理領域と、
    を備えた流体軸受装置用スリーブ。
  11. 流体軸受装置のシャフトが挿入されるスリーブであって、
    焼結用金属粉末を含む内部領域と、
    前記内部領域の表面を覆うように形成された酸化鉄を含むスチーム処理層とを備え、
    少なくとも動圧を発生する領域では、前記スチーム処理層が除去されている、
    流体軸受装置用スリーブ。
  12. 流体軸受装置のシャフトが挿入されるスリーブであって、
    焼結用金属粉末と、
    前記焼結用金属粉末の粒子間に酸化鉄が形成されたスチーム処理領域と、
    前記スチーム処理領域の表面を覆うように形成された酸化鉄を含むスチーム処理層とを備え、
    少なくとも動圧を発生する表面領域では、前記スチーム処理層が除去されている、
    流体軸受装置用スリーブ。
  13. 静止部材に対して回転部材を回転自在に支持するための流体軸受装置であって、
    前記静止部材および回転部材のうち一方に固定された請求項4から12のいずれかに記載のスリーブと、
    前記静止部材および回転部材のうち他方に固定され、前記スリーブの内周側に相対回転自在に設けられたシャフトと、
    前記スリーブおよびシャフトの間に充填された作動流体と、前記スリーブ内周面およびシャフト外周面のいずれか一方に形成された少なくとも1つの第1動圧発生用溝とを有するラジアル軸受部と、
    を備えた流体軸受装置。
  14. 静止部材に対して回転部材を回転自在に支持するための流体軸受装置であって、
    前記静止部材に固定された請求項4から12のいずれかに記載のスリーブと、
    前記回転部材に固定され、前記スリーブの内周側に相対回転自在に設けられたシャフトと、
    前記スリーブおよびシャフトの間に充填された作動流体と、前記スリーブ内周面およびシャフト外周面のいずれか一方に形成された少なくとも1つの第1動圧発生用溝とを有するラジアル軸受部と、
    前記スリーブの外周側に挿嵌された筒状のカバー部材と、
    を備えた流体軸受装置。
  15. 焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、
    前記1次成形体を焼結する焼結工程と、
    前記焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、
    前記2次成形体に樹脂含浸処理を施す樹脂含浸処理工程と、
    前記樹脂含浸処理を施された2次成形体にショットブラスト処理を施すショットブラスト処理工程と、
    を含む流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  16. 焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、
    前記1次成形体を焼結する焼結工程と、
    前記焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、
    前記1次成形体または2次成形体を高温蒸気に接触させるスチーム処理工程と、
    前記スチーム処理工程において前記1次成形体または2次成形体の表面に形成された酸化鉄皮膜の少なくとも一部を除去する皮膜除去工程と、
    を含む流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  17. 焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、
    前記1次成形体を焼結する焼結工程と、
    前記焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、
    前記1次成形体または2次成形体を高温蒸気に接触させるスチーム処理工程と、
    前記スチーム処理工程において処理された前記1次成形体または2次成形体に表面処理を施す表面処理工程と、
    を含む流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  18. 前記表面処理工程では、前記1次成形体または2次成形体に無電解ニッケルメッキ処理またはDLC膜コーティング処理が施される、
    請求項17に記載の流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  19. 前記2次成形体の焼結用金属粉末部分の平均密度は、6.8〔g/cm3〕以上である、
    請求項16から18のいずれかに記載の流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  20. 前記2次成形体の焼結用金属粉末部分の体積密度は、85%以上である、
    請求項16から18のいずれかに記載の流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  21. 前記1次成形体は、筒状のスリーブ本体と、前記スリーブ本体から軸方向に突出する筒状突出部とを有し、
    前記サイジング処理工程では、前記スリーブ本体の寸法変化率よりも前記筒状突出部の寸法変化率が大きい、
    請求項16から20のいずれかに記載の流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  22. 焼結用金属粉末から1次成形体を成形する成形工程と、
    前記1次成形体を焼結する焼結工程と、
    前記焼結された1次成形体にサイジング処理を施し2次成形体を成形するサイジング処理工程と、
    前記1次成形体または2次成形体を600〜700℃の雰囲気温度内において15〜50分の時間で高温蒸気に接触させるスチーム処理工程と、
    を含む流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  23. 前記2次成形体の焼結用金属粉末部分の平均密度は、6.8〔g/cm3〕以上である、
    請求項22に記載の流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  24. 前記2次成形体の焼結用金属粉末部分の体積密度は、85%以上である、
    請求項22に記載の流体軸受装置用スリーブの製造方法。
  25. 外周側に形成され軸方向に延びる少なくとも1つの溝部を有する、
    請求項4から12のいずれかに記載の流体軸受装置用スリーブ。
  26. 前記静止部材としてのベースプレートと、
    前記ベースプレートに固定されステータコイルが巻回される環状のステータと、
    ロータマグネットを有する前記回転部材としてのロータと、
    前記ベースプレート対して前記ロータを回転自在に支持するための請求項13または14に記載の流体軸受装置と、
    を備えたスピンドルモータ。

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