JP2011017944A - 表示装置用Al合金膜、表示装置およびAl合金スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【課題】バリアメタル層を省略して透明画素電極と直接接続させた場合にも低コンタクト抵抗を示し、且つ、表示装置の製造過程における現像液耐食性や剥離液耐食性も高められた表示装置用Al合金膜を提供する。
【解決手段】表示装置の基板上で、透明導電膜と直接接続されるAl合金膜であって、Al合金膜は、グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)とを含有する。
【選択図】図1
【解決手段】表示装置の基板上で、透明導電膜と直接接続されるAl合金膜であって、Al合金膜は、グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)とを含有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、表示装置用Al合金膜、表示装置およびAl合金スパッタリングターゲットに関するものであり、特に、剥離液洗浄における耐食性(以下、剥離液耐食性と呼ぶ場合がある。)や現像液耐食性、および耐熱性に優れたAl合金膜、該Al合金膜が薄膜トランジスタに用いられた表示装置、並びに該Al合金膜の形成に有用なAl合金スパッタリングターゲットに関するものである。
液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)は、中小型のものが携帯電話やモバイル端末のディスプレイ、PCモニタなどに使用され、また近年では、大型化が進んで大型TVなどにも用いられている。液晶表示装置は、単純マトリクス型とアクティブマトリクス型とに分けられ、薄膜トランジスタ(TFT)基板や対向基板と、それらの間に注入された液晶層と、更にカラーフィルタや偏光板などの樹脂フィルム、バックライトなどから構成される。上記TFT基板には、半導体で培われた微細加工技術を駆使してスイッチング素子や画素、更には、この画素に電気信号を伝えるための走査線や信号線が形成されている。
前記走査線や信号線に用いられる配線材料には、電気抵抗率が小さく、微細加工が容易であるなどの理由により、純AlまたはAl−NdなどのAl合金が汎用されている。この純AlまたはAl合金からなる配線と透明画素電極の間には、Mo、Cr、Ti、W等の高融点金属からなるバリアメタル層が通常設けられている。この様に、バリアメタル層を形成する理由は、耐熱性の確保や、純AlまたはAl合金からなる配線を透明画素電極と直接接続させた場合の電気伝導性を確保するためである。
しかし、バリアメタル層を形成するには、前記配線の形成に必要な成膜チャンバーを有する装置に、バリアメタル層形成用の成膜チャンバーを余分に装備しなければならない。液晶表示装置の大量生産に伴った低コスト化が進むにつれて、バリアメタル層の形成に伴う製造コストの上昇や生産性の低下は軽視できなくなっている。
そこで、バリアメタル層の形成を省略できるダイレクトコンタクト技術が提案されている。例えば、特許文献1および2には、バリアメタル層の形成を省略してAl合金配線を透明画素電極に直接接続したとしてもコンタクト抵抗が低く(以下、この様な特性を「低コンタクト抵抗」ということがある。)、Al合金配線自体の電気抵抗率も小さく、更には耐熱性にも優れたダイレクトコンタクト技術が提案されている。具体的には、Ni,Ag,Zn,Coなどの元素を所定量添加することにより、透明画素電極とのコンタクト抵抗が低く、且つ、配線自体の電気抵抗率も低く抑えられることが記載されている。また、La,Nd,Gd,Dyなどの希土類元素の添加によって、耐熱性を改善できる旨が記載されている。更に特許文献3には、透明画素電極層或いは半導体層と直接接続された構造を有する表示装置の配線材料として、Al−Ni合金に、所定量のBを含有させたものを用いれば、直接接続した際のコンタクト抵抗の増加や接続不良が生じない旨記載されている。
ところで上記引用文献1〜3に示される通りバリアメタル層を省略する場合、Al合金膜には透明画素電極との優れたコンタクト性(低コンタクト抵抗)や低い電気抵抗率と共に、より優れた耐食性も兼ね備えていることが求められている。特に、TFT基板の製造工程では複数のウェットプロセスを通るが、Alよりも貴な金属が合金元素として含まれていると、ガルバニック腐食の問題が現れ、耐食性が劣化してしまう。
例えば、フォトリソグラフィの工程で形成したフォトレジスト(樹脂)を剥離する洗浄工程では、アミン類を含む有機剥離液を用いて連続的に水洗が行なわれている。ところがアミン類と水が混合するとアルカリ性溶液になるため、短時間でAlを腐食させてしまうという問題が生じる。ところでAl合金膜は、剥離洗浄工程よりも以前に熱履歴を受けており、この熱履歴の過程で合金元素を含むAl系析出物がAlマトリクス中に形成される。このAl系析出物とAlマトリクスの電位差が大きいため、剥離洗浄工程にて、有機剥離液の成分であるアミン類が水と接触した瞬間に前記ガルバニック腐食が生じて、電気化学的に卑であるAlがイオン化して溶出し、ピット状の孔食(以下、「黒点」と記載する場合がある。)が形成されてしまう、といった問題がある。黒点が発生すると透明画素電極(ITO膜)が不連続になり、外観検査で欠陥として認識される場合があり、歩留まりの低下を招く恐れがある。
また、フォトリソグラフィ工程では、例えばTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)を含むアルカリ性の現像液を使用するが、ダイレクトコンタクト構造の場合、バリアメタル層を省略しているためAl合金膜がむき出しとなり、現像液工程におけるAl合金膜のエッチングレート(溶解速度)が著しく速くなり、現像液によるダメージ(Al合金膜の減肉)を受けやすい。現像工程でのAl合金膜のエッチングは、添加元素の濃化に伴うガルバニック腐食で促進することが知られており、特にNiやCoなどのAlより電気化学的に貴な元素を添加した場合はその傾向が顕著に表れる。現像工程でのエッチングレートが大きくなると、配線のリワークが困難になる他、製造時の歩留まりが低下するといった問題が生じる。
上記特許文献1〜3のうち、特許文献1、3はAl合金膜の耐食性に着目して十分に検討されたものではない。また特許文献2については、アルカリ性現像液に対する耐食性を改良できる旨記載されているが、有機剥離液に対する耐食性も含め、耐食性を十分に高めることまでは検討されていない。
本発明は上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、バリアメタル層を省略して透明画素電極と直接接続させた場合にも低コンタクト抵抗を示し、且つ、表示装置の製造過程における現像液耐食性や剥離液耐食性も高められた表示装置用Al合金膜および表示装置を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明に係る剥離液耐食性および現像液耐食性に優れた表示装置用Al合金膜は、表示装置の基板上で、透明導電膜と直接接続されるAl合金膜であって、前記Al合金膜は、グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)とを含有するところに要旨を有するものである。
好ましい実施形態において、上記表示装置用Al合金膜は、前記グループAに属する元素としてNiを0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、前記グループBに属する元素としてYを1〜3原子%とを含有する。
好ましい実施形態において、上記表示装置用Al合金膜は、前記グループBに属する元素の含有量(β)と前記グループAに属する元素の含有量(α)との比(β/α)が0.5以上7以下を満足する。
好ましい実施形態において、上記表示装置用Al合金膜は、前記グループBに属する元素の含有量(β)と前記グループAに属する元素の含有量(α)との比(β/α)が7超を満足する。
好ましい実施形態において、上記表示装置用Al合金膜は、熱処理後の析出物の円相当直径(以下、「粒径」と呼ぶ場合がある。)が100nmを超え、且つ、AlとNiのみから構成される析出物(代表的にはAl3Ni)および/またはAlとCoのみから構成される析出物(代表的にはAl9Co2)の個数が100μm2当たり4.0個以下に抑制されているものである。
好ましい実施形態において、上記表示装置用Al合金膜は、更にLa、Nd、およびGdよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)含有する。
本発明の表示装置は、上記のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜が薄膜トランジスタに用いられているものである。
また、本発明には、表示装置の基板上で、透明導電膜と直接接続されるAl合金膜の形成に用いられるAl合金スパッタリングターゲットも本発明の範囲内に包含される。ここで、前記Al合金は、グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)とを含有し、残部Alおよび不可避不純物であるところに要旨を有している。
好ましい実施形態において、前記Al合金は、前記グループAに属する元素としてNiを0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、前記グループBに属する元素としてYを1〜3原子%とを含有し、残部Alおよび不可避不純物である。
好ましい実施形態において、前記Al合金は、更にLa、Nd、およびGdよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)含有する。
本発明によれば、バリアメタル層を介在させずに、Al合金膜を透明画素電極(透明導電膜、酸化物導電膜)と直接接続することができ、アルカリ現像液耐食性や剥離液耐食性に優れた表示装置用Al合金膜を提供できる。従って、本発明のAl合金膜を表示装置に適用すれば、TFT基板の製造工程で生じるITO膜の不連続を抑制でき、信頼性の高い表示装置を提供できる。
本発明者らは、バリアメタル層を省略しても、透明画素電極と直接接続させた場合のコンタクト抵抗を十分に低減させることができ、更には、表示装置の製造過程における現像液耐食性や剥離液耐食性(以下、薬液耐食性で代表される場合がある。)にも優れたAl合金膜を提供するため、検討を行なってきた。特に本発明では、透明導電膜とのコンタクト抵抗の低減性能に優れるNiおよび/またはCoと、同様にコンタクト抵抗の低減化に寄与するGeと、を含むAl−(Niおよび/またはCo)−Ge合金膜における耐食性を一層促進させるため、剥離洗浄工程における腐食(黒点)の基点となる粗大なAl系析出物に着目して検討を進めてきた。その結果、上記のAl−(Niおよび/またはCo)−Ge合金膜に、所定量のYおよび/またはZrの元素を添加すれば、粒径100nm超の粗大なAlとNi/Coと、のみからなる析出物(代表的にはAl3Niおよび/またはAl9Co2の析出物であり、腐食の主な起因物質)の個数が低減し、当該析出物に更に上記のYやZrを含む微細なAl系複合析出物(腐食低減に有用な物質)の個数が多くなるため、当該複合析出物周りに生じる黒点も視認できないサイズに微細化されて剥離液耐食性が向上することを見出し、本発明を完成した。
具体的には、上記のAl3Niおよび/またはAl9Co2で代表される析出物に関し、個々の析出物の粒径(析出物の面積を画像解析で算出した円相当直径)を観察したときに、好ましくは、粒径が100nmを超える上記析出物が100μm2当たり4.0個以下を満足するものは、結果的に黒点密度も小さく抑えられ、剥離液耐食性が向上することが判明した。上記析出物の100μm2当たりの個数(析出物密度)は少ない程良く、1.0個以下がより好ましい。厳密には、析出物の好ましい個数は析出物の組成によっても相違し、上記析出物が、Al3Niで代表されるAlとNiのみからなる場合は、100μm2当たり4.0個以下が好ましく、Al9Co2で代表されるAlとCoのみからなる場合は、100μm2当たり1.0個以下が好ましい。
本発明によって薬液耐食性が向上する詳細な理由は不明であるが、YやZrを含む上記組成のAl合金膜を用いることにより、Al3NiやAl9Co2などの、(Alに比べて)電気化学的に貴な析出物ではなく、これらにYやZrが更に結合したAl−Ni−Y、Al−Ni−Zr、Al−Co−Y、Al−Ni−Zrといった電気化学的に卑な複合析出物が生成するため、Alマトリクスとの電位差が小さくなって剥離液洗浄工程でのガルバニック腐食が抑制され、腐食速度が遅くなるためと思料される。
ここで、剥離液耐食性の向上に有用な上記複合析出物は、少なくとも、グループAの元素(Ni/Co)とグループBの元素(Y/Zr)の両方を含んでいることが必要である。すなわち、腐食を引き起こすAl3NiやAl9Co2などの析出物中のNi/Coを、Al−(Ni/Co)−(Y/Zr)の複合析出物に消費させることによって、結果的に、Al3NiやAl9Co2の析出物の個数が少なくなり、剥離液耐食性が向上する。上記複合析出物は、後記する希土類元素を更に含んでいても良い。上記の定義規定より、グループAの元素を含まない析出物(例えば、後記する図1(a)の記号3のようなAl−Ge−Y−La析出物)は、腐食の起点とならないため、上記複合析出物には含まれない。
一方、「Al3NiやAl9Co2」に代表される析出物[Alと、グループA(Ni/Co)のみから構成され、グループBの元素や、希土類元素などの他の元素を含まない]を、単に「析出物」と呼び、上記の複合析出物と区別する。
本発明によれば、剥離液耐食性の向上に有用なYまたはZr含有の複合析出物が析出することを、図1(a)および(b)の平面TEM(透過電子顕微鏡、倍率30万倍)写真を参照しながら説明する。図1(a)および(b)はそれぞれ、後記する実施例に用いた表1のNo.15(Al−0.21%Ni−0.34%Ge−1.52%Y−0.18%La)およびNo.18(Al−0.19%Ni−0.31%Ge−0.71%Zr−0.12%La)のAl合金膜を320℃で30分間加熱処理した後の写真(TEM観察像、倍率30万倍)である。各図の下には、記号1〜8の各析出物の組成をEDX法により分析した結果(残部:Alおよび不可避不純物)を併記している。参考のため、図2に、YやZrを含有しない表1のNo.22(Al−0.20%Ni−0.50%Ge−0.50%La)のTEM写真およびEDX分析結果を示す。
まず、図1(a)(Y添加例)の平面TEM写真を参照する。ここには、記号1〜2のようにAl−Ni−Ge−Y−La析出物や、記号3のようにAl−Ge−Y−La析出物を始めとして、粒径100nm以下の微細な析出物が多く観察されている。このうち記号1および2の組成をみると、いずれもNi:Yの比は概ね1:1であり、GeやLaはNiやYに比べて著しく少ないことから、記号1および2の各析出物は、Al4NiY(Al3NiにAlとYが更に結合した複合析出物)であると考えられる。このような複合析出物の電位を溶液中で直接測定する技術は確立されていないが、Alは勿論のことYも、Al3Niに比べて電気化学的に卑な元素であるため、これらの元素がAl3Niに化合した上記の複合析出物は、Al3Niに比べて電気化学的に卑になると考えられる。また、記号3の析出物も、電気化学的に卑なYを多く含んでおり、上記記号1や2の析出物と同様に、Al3Niに比べて電気化学的に卑になると考えられる。
実際のところ、上記図1(a)のNo.15は、Yを含有しない図2のNo.22に比べ、後記する実施例の表1に示すように、100μm超の析出物が0.1個以下/100μm2、黒点密度が0.2個/100μm2と著しく少なくなった。これは、Y添加により、Al3Niに比べて電気化学的に卑なY含有Al系複合析出物(Al4NiYなど)が多く形成され、Alマトリクスとの電位差が小さくなってガルバニック腐食が抑制されたためであると思料される。
上記図1(a)のNo.15は、Y添加Al合金の例であるが、図1(a)で考察したのと同様の傾向は、Yの代わりにZrを含有するZr添加Al合金を用いた図1(b)のNo.18でも見られた。
まず、図1(b)(Zr添加例)の平面TEM写真を参照する。ここには、記号4〜8のAl−Ni−Ge−Zr−Laの析出物を始めとして、粒径100nm以下の微細な複合析出物が多く観察され、粒径100μm超の析出物が0.7個/100μm2と少なくなっている。上記記号の複合析出物は、Ni、Ge、Zr、Laの各含有量は相違するものの、いずれも、Al3Niに比べて電気化学的に卑なZrを多く含んでいるため、これらの複合析出物は、Al3Niに比べて電気化学的に卑になると考えられる。実際のところ、上記図1(b)のNo.18は、黒点密度が4.4個以下/100μm2と著しく少なくなった。
これに対し、YやZrを含有しないNo.22のAl合金膜を用いたときは、図2の平面TEM写真の記号9、10に示すように、粒径100nm超の粗大な析出物が4.3個/100μm2と多く観察された。実際のところ、No.22の黒点密度は8.6個/100μm2と高く、剥離液腐食性が低下した(表1を参照)。なお、No.22は、剥離液耐食性向上元素であるYやZrを含有していないが、現像液耐食性向上元素であるLaを多く含んでいるため、現像液腐食速度が◎になり、現像液耐食性は良好である。
以下、本発明のAl合金膜を構成する各元素について詳しく説明する。
(1)グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)
グループAに属するNiおよびCoは、透明導電膜とのコンタクト抵抗の低減に有用な元素である。すなわち、Al合金膜中に合金成分としてNiやCoを含有させれば、低い熱処理温度でも、Al合金膜と透明導電膜との界面に導電性のNi/Co含有析出物またはNi/Co含有濃化層が形成され易く、上記界面にAl酸化物の絶縁層が生成するのを防止でき、その結果、Al合金膜と透明画素電極(例えばITO)との間で、上記の析出物または濃化層を通して大部分のコンタクト電流が流れ、コンタクト抵抗を低く抑えることができるものと思われる。
グループAに属するNiおよびCoは、透明導電膜とのコンタクト抵抗の低減に有用な元素である。すなわち、Al合金膜中に合金成分としてNiやCoを含有させれば、低い熱処理温度でも、Al合金膜と透明導電膜との界面に導電性のNi/Co含有析出物またはNi/Co含有濃化層が形成され易く、上記界面にAl酸化物の絶縁層が生成するのを防止でき、その結果、Al合金膜と透明画素電極(例えばITO)との間で、上記の析出物または濃化層を通して大部分のコンタクト電流が流れ、コンタクト抵抗を低く抑えることができるものと思われる。
本発明では、グループAに属するNiおよびCoを、単独で用いても良いし、両方を併用しても良い。グループAに属する元素の含有量(単独の場合は単独量であり、両方を含む場合は合計量である。)をα(原子%)とすると、上記作用を有効に発揮させるため、αを0.05原子%以上とすることが好ましい。より好ましいαは0.08原子%以上である。但し、過剰に添加しても上記作用が飽和するほか、現像工程での耐食性(現像液耐食性)が阻害されるため、上記αの上限を0.5原子%とした。αの好ましい上限は0.3原子%である。
(2)Geを0.2〜2.0原子%
Geも、上記のNi/Coと同様、低コンタクト抵抗の確保に有用な元素である。Geが結晶粒界に偏析することで、Al合金膜と透明画素電極(例えばITO膜)との間で、上記Geの偏析部分を通して大部分のコンタクト電流が流れ、コンタクト抵抗が低く抑えられるものと思われる。また、Geが結晶粒界に偏析することで、Al結晶粒の微細化にも有効に作用し、結果として、析出物の微細化にも寄与するものと思われる。このような効果を十分発揮させるには、Geを0.2原子%以上(好ましくは0.3原子%以上)含有させる。一方、Ge量が多すぎると、Al合金膜自体の電気抵抗率が高くなる。よって、Ge量は2.0原子%以下とする。好ましくは1.0原子%以下である。
Geも、上記のNi/Coと同様、低コンタクト抵抗の確保に有用な元素である。Geが結晶粒界に偏析することで、Al合金膜と透明画素電極(例えばITO膜)との間で、上記Geの偏析部分を通して大部分のコンタクト電流が流れ、コンタクト抵抗が低く抑えられるものと思われる。また、Geが結晶粒界に偏析することで、Al結晶粒の微細化にも有効に作用し、結果として、析出物の微細化にも寄与するものと思われる。このような効果を十分発揮させるには、Geを0.2原子%以上(好ましくは0.3原子%以上)含有させる。一方、Ge量が多すぎると、Al合金膜自体の電気抵抗率が高くなる。よって、Ge量は2.0原子%以下とする。好ましくは1.0原子%以下である。
(3)グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)
グループBの元素は、Al−Ni/Co合金膜の剥離液耐食性および現像液耐食性の向上に有用な元素である。詳細には、グループBの元素を少なくとも一種添加することによって当該元素を含む析出物電位が卑になり、Alマトリクスとの電位差が小さくなってガルバニック腐食速度が低下し、剥離液耐食性が向上すると考えられる。また、上記元素は、Al合金膜の表面にも濃化するため、剥離液水に曝されたときのAl合金膜の溶解速度を小さくして腐食発生までの時間を延長させ、剥離液耐食性が向上すると考えられる。更に、上記元素は、現像工程での腐食量軽減作用を有し、現像液耐食性にも寄与する。
グループBの元素は、Al−Ni/Co合金膜の剥離液耐食性および現像液耐食性の向上に有用な元素である。詳細には、グループBの元素を少なくとも一種添加することによって当該元素を含む析出物電位が卑になり、Alマトリクスとの電位差が小さくなってガルバニック腐食速度が低下し、剥離液耐食性が向上すると考えられる。また、上記元素は、Al合金膜の表面にも濃化するため、剥離液水に曝されたときのAl合金膜の溶解速度を小さくして腐食発生までの時間を延長させ、剥離液耐食性が向上すると考えられる。更に、上記元素は、現像工程での腐食量軽減作用を有し、現像液耐食性にも寄与する。
本発明では、グループBに属するYおよびZrを、単独で用いても良いし、両方を併用しても良い。グループBに属する元素の含有量(単独の場合は単独量であり、両方を含む場合は合計量である。)をβ(原子%)とすると、上記の薬液耐食性向上作用を有効に発揮させるため、βは0.05原子%以上とすることが好ましい。より好ましいβは0.2原子%以上であり、更に好ましくは0.4原子%以上である。但し、過剰に添加すると、熱処理後のAl合金膜自体の電気抵抗率が増加するため、上限を3原子%とする。電気抵抗率は、添加元素の種類や含有量(合計量)に大きく依存し、一般に、添加元素の合計量が多くなると大きくなる傾向にある。よって、低い電気抵抗率を実現するためには、βはできるだけ少ない方が良く、1原子%以下に制御することが好ましい。具体的にはAl合金膜の用途などに応じ、βを適宜決定すればよく、例えば腐食抑制防止など剥離液耐食性を重視する場合には含有量を多くし、一方、電気抵抗率の低減化を重視する場合には含有量をできるだけ少なく制御すれば良い。
厳密には、グループBの好ましい含有量は、元素の種類によっても若干相違する。図3および図4は、後記する実施例に用いたAl合金膜[Al−(Ni/Co)−Ge−La合金膜]中のグループBの含有量(β)と、黒点密度との関係をグラフ化したものであり、図3では横軸にY量(原子%)を、図4では横軸にZr量(原子%)をとっている。黒点密度が小さい程、剥離液耐食性に優れている。これらの図を対比すると明らかなように、概して、YはZrに比べて少量添加で高い黒点密度抑制効果が得られる傾向にある。
なお、Y添加による黒点密度抑制効果は、Y量が1原子%以上になると顕著に向上し、黒点密度を1個以下/100μm2にまで著しく低減することができる。しかも、このように多量のYを添加しても、電気抵抗率は実操業上問題のないレベルに低く抑えられており(表1を参照)、高い剥離液耐食性と低い電気抵抗率を両立させることができた。上記の効果は、Zr量が1原子%以上のときも同様に見られる。従って、黒点密度抑制などの観点からすると、Y量および/またはZr量を、好ましくは1原子%以上(より好ましくは1.5原子%以上)に制御する。
上記グループBに属する元素の含有量(β)と上記グループAに属する元素の含有量(α)との比(β/α)を適切に制御することによって、用途などに応じて作用効果を有効に発揮させることができる。
例えば剥離液耐食性を一層高めるためには、上記のようにグループBの元素を多くすれば良く、上記の比(β/α)を7超に制御することが好ましい態様である。なお、その上限は、β、αのそれぞれの好ましい含有量から適宜決定され得るが、おおむね、10であることが好ましい。
一方、上記の比(β/α)が0.5以上7以下を満足するものは、電気抵抗率と剥離液耐食性のバランスに優れている。上記作用を更に向上させるためには、β/αは、0.8以上3以下であることがより好ましい。
本発明のAl合金膜は、上記(1)〜(3)の元素を含み、残部:Alおよび不可避不純物である。
更に、本発明のAl合金膜は、希土類元素群(好ましくはLa、Nd、Gd)から選ばれる少なくとも1種の元素を0.5原子%以下含有しても良い。希土類元素は、熱処理工程におけるヒロック(コブ状の突起物)の発生を抑制し、Al合金膜の耐熱性向上に有用な耐熱性向上元素である。また、現像液工程でのエッチングレートを抑制して現像液耐食性向上に寄与する現像液耐食性向上元素でもある。このような作用を有効に発揮させるためには、上記の少なくとも一種を合計で0.1原子%以上含有させることが好ましい。しかし、含有量が多くなると、熱処理後のAl合金膜自体の電気抵抗率が増大する。そこで希土類元素(好ましくはLa、Nd、Gd)の総量を、0.5原子%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.3原子%以下である。
以上、本発明のAl合金膜について説明した。
上記Al合金膜は、スパッタリング法にてスパッタリングターゲット(以下「ターゲット」ということがある)を用いて形成することが望ましい。イオンプレーティング法や電子ビーム蒸着法、真空蒸着法で形成された薄膜よりも、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成できるからである。
また、上記スパッタリング法で上記Al合金膜を形成するには、上記ターゲットとして、前述した(1)〜(3)の元素を含むもの(好ましくは、希土類元素を含むもの)であって、所望のAl合金膜と同一組成のAl合金スパッタリングターゲットを用いれば、組成ズレの恐れがなく、所望の成分組成のAl合金膜を形成することができるのでよい。
従って、本発明には、前述したAl合金膜と同じ組成のスパッタリングターゲットも本発明の範囲内に包含される。詳細には、上記ターゲットは、グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)とを含有し、残部Alおよび不可避不純物である。また、好ましい態様として、(ア)上記グループAに属する元素としてNiを0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、上記グループBに属する元素としてYを1〜3原子%とを含有し、残部Alおよび不可避不純物であるターゲットや、(イ)更に、La、Nd、およびGdよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)含有するターゲットが挙げられる。
上記ターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
上記ターゲットの製造方法としては、溶解鋳造法や粉末焼結法、スプレイフォーミング法で、Al基合金からなるインゴットを製造して得る方法や、Al基合金からなるプリフォーム(最終的な緻密体を得る前の中間体)を製造した後、該プリフォームを緻密化手段により緻密化して得られる方法が挙げられる。
本発明は、上記Al合金膜が、薄膜トランジスタに用いられていることを特徴とする表示装置も含むものであり、その態様として、前記Al合金膜が、薄膜トランジスタのソース電極および/またはドレイン電極並びに信号線に用いられ、ドレイン電極が透明導電膜に直接接続されているものや、ゲート電極および走査線に用いられているものなどが挙げられる。
また前記ゲート電極および走査線と、前記ソース電極および/またはドレイン電極ならびに信号線が、同一組成のAl合金膜であるものが態様として含まれる。
本発明の透明画素電極としては、酸化インジウム錫(ITO)または酸化インジウム亜鉛(IZO)が好ましい。
本発明のAl合金膜を備えた表示装置を製造するにあたっては、表示装置の一般的な工程を採用することができ、例えば、前述した特許文献1や2に記載の製造方法を参照すれば良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す種々の合金組成のAl合金膜(膜厚=300nm)を、DCマグネトロン・スパッタ法[基板=ガラス基板(コーニング社製Eagle2000)、雰囲気ガス=アルゴン、圧力=2mTorr、基板温度=25℃(室温)]によって成膜した。
尚、上記種々の合金組成のAl合金膜の形成には、真空溶解法で作製した種々の組成のAl合金スパッタリングターゲットを用いた。
また実施例で用いた種々のAl合金膜における各合金元素の含有量は、ICP発光分析(誘導結合プラズマ発光分析)法によって求めた。
上記のようにして成膜したAl合金膜を用いて、熱処理後のAl合金膜自体の電気抵抗率、Al合金膜を透明画素電極に直接接続したときのITOとのコンタクト抵抗(以下、「コンタクト抵抗」と略記する。)、および耐食性としてアルカリ現像液耐食性と剥離液耐食性を、それぞれ下記に示す方法で測定した。
(1)熱処理後のAl合金膜自体の電気抵抗率
上記Al合金膜に対し、10μm幅のラインアンドスペースパターンを形成し、不活性ガス雰囲気中、5℃/分の昇温速度で加熱し、320℃で30分間の熱処理を施してから、4端子法で電気抵抗率を測定した。そして下記基準で、熱処理後のAl合金膜自体の電気抵抗率の良否を判定した。
(判定基準)
○:6.5μΩ・cm以下
×:6.5μΩ・cm超
上記Al合金膜に対し、10μm幅のラインアンドスペースパターンを形成し、不活性ガス雰囲気中、5℃/分の昇温速度で加熱し、320℃で30分間の熱処理を施してから、4端子法で電気抵抗率を測定した。そして下記基準で、熱処理後のAl合金膜自体の電気抵抗率の良否を判定した。
(判定基準)
○:6.5μΩ・cm以下
×:6.5μΩ・cm超
(2)透明画素電極とのコンタクト抵抗
Al合金膜と透明画素電極を直接接触したときのコンタクト抵抗は、透明画素電極(ITO;酸化インジウムに10原子%の酸化スズを加えた酸化インジウムスズ)を、下記条件でスパッタリングすることによって図5に示すケルビンパターン(コンタクトホールサイズ:10μm角)を作製し、4端子測定(ITO−Al合金膜に電流を流し、別の端子でITO−Al合金間の電圧降下を測定する方法)を行なった。具体的には、図5のI1−I2間に電流Iを流し、V1−V2間の電圧Vをモニターすることにより、コンタクト部Cのコンタクト抵抗Rを[R=(V2−V1)/I2]として求めた。そして下記基準で、コンタクト抵抗の良否を判定した。なお、純Al合金膜のコンタクト抵抗は15,000Ωである。
(透明画素電極の成膜条件)
・雰囲気ガス=アルゴン
・圧力=0.8mTorr
・基板温度=25℃(室温)
(判定基準)
○:1000Ω未満
×:1000Ω以上
Al合金膜と透明画素電極を直接接触したときのコンタクト抵抗は、透明画素電極(ITO;酸化インジウムに10原子%の酸化スズを加えた酸化インジウムスズ)を、下記条件でスパッタリングすることによって図5に示すケルビンパターン(コンタクトホールサイズ:10μm角)を作製し、4端子測定(ITO−Al合金膜に電流を流し、別の端子でITO−Al合金間の電圧降下を測定する方法)を行なった。具体的には、図5のI1−I2間に電流Iを流し、V1−V2間の電圧Vをモニターすることにより、コンタクト部Cのコンタクト抵抗Rを[R=(V2−V1)/I2]として求めた。そして下記基準で、コンタクト抵抗の良否を判定した。なお、純Al合金膜のコンタクト抵抗は15,000Ωである。
(透明画素電極の成膜条件)
・雰囲気ガス=アルゴン
・圧力=0.8mTorr
・基板温度=25℃(室温)
(判定基準)
○:1000Ω未満
×:1000Ω以上
(3)剥離液耐食性
剥離液洗浄後に生じる黒点(正確にはクレーター腐食密度)を観察し、剥離液耐食性を評価した。この黒点は、前述したように析出物を基点とし、析出物周りに発生するものである。
剥離液洗浄後に生じる黒点(正確にはクレーター腐食密度)を観察し、剥離液耐食性を評価した。この黒点は、前述したように析出物を基点とし、析出物周りに発生するものである。
詳細には、上記熱処理を施して得られたサンプルに対し、東京応化工業製のアミン系レジスト剥離液(TOK106)を用い、(pH=10.5に調整した剥離液水溶液に1分間浸漬)→(pH=9.5に調整した剥離液水溶液に5分間浸漬)→(純水で水洗)→(乾燥)の順に処理を行った。剥離液洗浄処理後のサンプルを光学顕微鏡で倍率1000倍にて観察(8600μm2程度)し、画像解析を行って黒点密度(個数/100μm2)を測定した。
(判定基準)
○:7個以下/100μm2
×:7個超/100μm2
(判定基準)
○:7個以下/100μm2
×:7個超/100μm2
(4)現像液耐食性
成膜状態(その後の熱処理なし)のAl合金膜の一部をマスキングし、30℃に保持した現像液(TMAH2.38質量%を含む溶液)に1分浸漬した後、純水で1分間洗浄し、N2ガスを吹き付けて乾燥した。その後、マスキングを剥離し、試験部とマスキング部(非試験部)の段差を、触診式段差計を用いて3ヶ所測定し、その平均値をエッチング量としてエッチング速度(nm/分)を算出した。そして下記基準でAl合金膜の現像液耐食性を評価した。
◎:50nm未満/分
○:50nm以上100nm以下/分
×:100nm超/分
成膜状態(その後の熱処理なし)のAl合金膜の一部をマスキングし、30℃に保持した現像液(TMAH2.38質量%を含む溶液)に1分浸漬した後、純水で1分間洗浄し、N2ガスを吹き付けて乾燥した。その後、マスキングを剥離し、試験部とマスキング部(非試験部)の段差を、触診式段差計を用いて3ヶ所測定し、その平均値をエッチング量としてエッチング速度(nm/分)を算出した。そして下記基準でAl合金膜の現像液耐食性を評価した。
◎:50nm未満/分
○:50nm以上100nm以下/分
×:100nm超/分
(5)析出物の測定
成膜後の試料に対し、TFT基板作成時に加わる熱履歴を模擬した熱処理(窒素フロー中にて320℃で30分間加熱)を施して析出物を析出させた。
成膜後の試料に対し、TFT基板作成時に加わる熱履歴を模擬した熱処理(窒素フロー中にて320℃で30分間加熱)を施して析出物を析出させた。
この様にして析出した析出物を、平面TEM(倍率30万倍)で観察し、AlとNiのみから構成される析出物および/またはAlとCoのみから構成される析出物(加速電圧1keV(表面近傍)で見えた析出物)の円相当直径を算出し、これを析出物の粒径とした。1万倍の反射SEM観察(10μm×12.5μm/視野を合計3視野)中に観察される粒径が100nm超の析出物の個数を求め、100μm2当たりの個数に換算した。ここでは、AlとNiのみから構成される析出物としてAl3Niの個数を、また、AlとCoのみから構成される析出物としてAl9Co2の個数を求め、換算した。
前述したように、この析出物と上記(3)に記載の黒点とは特に密接に関連している。詳細には、黒点密度の合格基準(7個以下/100μm2)は、Al3Niの個数(個/100μm2)≦4.0個、またはAl9Co2の個数(個/100μm2)≦1.0個と、ほぼ対応している。
これらの結果を表1に示す。表1に記載の各Al合金膜の組成において、残部はAlおよび不可避的不純物である。
表1の結果から、以下のように考察することができる。
はじめに、グループAの元素としてCoを含有するNo.1〜10について考察する。
このうち、グループBの元素を更に含むNo.1〜6は、ITOとのコンタクト抵抗の低減化(表には示していないが、すべて○)、熱処理後の電気抵抗率の低減化を達成できただけでなく、現像液耐食性および剥離液耐食性の両方に優れていることが分かる。詳細には、No.1、3、4はグループBとしてYを含む例;No.2、5、6はグループBとしてZrを含む例であり、いずれの元素を用いた場合でも、良好な薬液耐食性が得られた。また、No.3〜6は、希土類元素を更に添加した例であり、熱処理後に生じるヒロックの発生も防止できた(表には示さず)。
これに対し、グループBの元素を含まないNo.7〜10は、いずれも、黒点密度が高くなって剥離液耐食性が低下した。
また、No.8および9は、Ge無添加の例であり、Ge添加例に比べてコンタクト抵抗が増加した(表には示さず)。
上記と同様の傾向(グループBの元素添加による薬液耐食性向上効果)は、グループAの元素として、Coの代わりにNiを含有するNo.11〜22についても認められた。
すなわち、グループBの元素を更に含むNo.11〜20は、ITOとのコンタクト抵抗の低減化(表には示していないが、すべて○)、熱処理後のAl合金の電気抵抗率の低減化を達成できただけでなく、現像液耐食性および剥離液耐食性の両方に優れている。詳細には、No.11、13〜16、19、20はグループBとしてYを更に含有する例;No.12、17、18はグループBとしてZrを更に含有する例であり、いずれの元素を用いた場合でも、良好な薬液耐食性が得られた。また、No.13〜20は、希土類元素を更に添加した例であり、ヒロックの発生も防止できた(表には示さず)。
上記例のなかでも、Yを1原子%以上含有し、グループBに属する元素の含有量(β)とグループAに属する元素の含有量(α)との比(β/α)が7超のNo.11、15、16、19および20はいずれも、黒点密度が0.2個以下/100μm2、析出物の個数が0.1個以下/100μm2)と、他の例に比べて著しく低減されており、剥離液耐食性に極めて優れていることが分かる。しかも、これらの例は電気抵抗率も良好に低く維持されている。従って、1〜3原子%のYを含有するAl−Ni−Ge合金膜は、特に黒点密度抑制効果に優れた表示装置用Al合金膜として極めて有用であることが確認された。これと同様の効果は、Niの代わりにCoを用いた場合にも同様に見られ、1〜3原子%のYを含有するAl−Co−Ge合金膜についても、極めて良好な黒点密度抑制効果が得られた(表には示さず。)。
これに対し、グループBの元素を含まないNo.21、22は、NiとGeの添加によってITO(透明画素電極)とのコンタクト抵抗を低減できる(表には示さず)が、いずれも、黒点密度が上昇して剥離液耐食性が低下した。
Claims (10)
- 表示装置の基板上で、透明導電膜と直接接続されるAl合金膜であって、
前記Al合金膜は、グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)とを含有することを特徴とする剥離液洗浄における耐食性および現像液耐食性に優れた表示装置用Al合金膜。 - 前記グループAに属する元素としてNiを0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、前記グループBに属する元素としてYを1〜3原子%とを含有するものである請求項1に記載の表示装置用Al合金膜。
- 前記グループBに属する元素の含有量(β)と前記グループAに属する元素の含有量(α)との比(β/α)が0.5以上7以下を満足するものである請求項1または2に記載の表示装置用Al合金膜。
- 前記グループBに属する元素の含有量(β)と前記グループAに属する元素の含有量(α)との比(β/α)が7超を満足するものである請求項1または2に記載の表示装置用Al合金膜。
- 円相当直径が100nmを超え、且つ、AlとNiのみから構成される析出物および/またはAlとCoのみから構成される析出物の個数が100μm2当たり4.0個以下である請求項1〜4のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
- 更に、La、Nd、およびGdよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)含有する請求項1〜5のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置用Al合金膜が、薄膜トランジスタに用いられていることを特徴とする表示装置。
- 表示装置の基板上で、透明導電膜と直接接続されるAl合金膜の形成に用いられるAl合金スパッタリングターゲットであって、前記Al合金は、グループAに属するNiおよび/またはCoの元素を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、グループBに属するYおよび/またはZrの元素を3原子%以下(0原子%を含まない。)とを含有し、残部Alおよび不可避不純物であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
- 前記グループAに属する元素としてNiを0.5原子%以下(0原子%を含まない。)と、Geを0.2〜2.0原子%と、前記グループBに属する元素としてYを1〜3原子%とを含有し、残部Alおよび不可避不純物である請求項8に記載のスパッタリングターゲット。
- 更に、La、Nd、およびGdよりなる群から選択される少なくとも一種を0.5原子%以下(0原子%を含まない。)含有する請求項8または9に記載のスパッタリングターゲット。
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2009
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