JP2011001211A - Iii族窒化物結晶の成長方法 - Google Patents

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昌紀 森下
Shinsuke Fujiwara
伸介 藤原
Yusuke Mori
勇介 森
Yasuo Kitaoka
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Abstract

【課題】成長させる結晶全体の転位密度が低減するIII族窒化物結晶の成長方法を提供する。
【解決手段】III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5を溶解させた溶液6をIII族窒化物種結晶1に接触させることにより、III族窒化物種結晶1からIII族窒化物結晶10を成長させるIII族窒化物結晶10の成長方法であって、III族窒化物種結晶1は、(000−1)N原子表面1nである上面を有し、結晶成長容器23の内面23iに接触するよう配置された下面を有し、III族窒化物種結晶1の実質的に側表面1s上に(000−1)N原子表面1n,10nに平行な方向にIII族窒化物結晶10を成長させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、液相法、特にフラックス法によるIII族窒化物結晶の成長方法に関する。
III族窒化物結晶は、各種半導体デバイスの基板などに広く用いられている。近年、高特性の各種半導体デバイスを製造するために、転位密度の低いIII族窒化物結晶が求められている。
III族窒化物結晶を成長させる方法としては、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法などの気相法、高窒素圧溶液法、フラックス法などの液相法などがある。ここで、液相法は、気相法に比べて、その結晶成長において有毒なガスを使用しないため環境保護の面で優れている。
かかる液相法において転位密度の低いIII族窒化物結晶を成長させる方法として、たとえば特開2005−350291号公報(特許文献1)は、種結晶を準備する工程と、フラックス法などの液相法により種結晶に第1のIII族窒化物結晶を成長させる工程と、を含み、第1のIII族窒化物結晶を成長させる工程において、種結晶の主面である(0001)Ga原子表面に平行な方向の結晶成長速度が、(0001)Ga原子表面に垂直な方向の結晶成長速度より大きいことを特徴とするIII族窒化物結晶の成長方法を開示する。
特開2005−350291号公報
しかし、特開2005−350291号公報(特許文献1)に開示された成長方法では、種結晶の主面である(0001)Ga原子表面に平行な方向に成長する結晶の転位密度を低減することができるが、(0001)Ga原子表面に垂直な方向に成長する結晶の転位密度を低減することが困難であった。また、(0001)Ga表面に平行な方向への結晶の成長速度が低かった。このため、特開2005−350291号公報(特許文献1)に開示されたIII族窒化物結晶の成長方法においては、結晶の転位密度の低減は、その範囲および程度が限定的なものであった。
本発明は、成長させる結晶全体の転位密度が低減するIII族窒化物結晶の成長方法を提供することを目的とする。
本発明は、III族金属とアルカリ金属とを含む融液に窒素原料ガスを溶解させた溶液をIII族窒化物種結晶に接触させることにより、III族窒化物種結晶からIII族窒化物結晶を成長させるIII族窒化物結晶の成長方法であって、III族窒化物種結晶は、(000−1)N原子表面である上面を有し、結晶成長容器の内面に接触するよう配置された下面を有し、III族窒化物種結晶の実質的に側表面上に(000−1)N原子表面に平行な方向にIII族窒化物結晶を成長させることを特徴とするIII族窒化物結晶の成長方法である。
本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法において、アルカリ金属はNaおよびLiの少なくともいずれかを含むことができる。また、成長させるIII族窒化物結晶をGaN結晶とすることができる。
本発明によれば、成長させる結晶全体の転位密度が低減するIII族窒化物結晶の成長方法を提供することができる。
III族窒化物結晶の成長に用いられる結晶成長装置の一例を示す概略断面図である。 本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法の一例を示す概略断面図である。 従来のIII族窒化物結晶の成長方法の一例を示す概略断面図である。 III族窒化物結晶の成長におけるシーケンス制御の一例を示すチャートである。
図1および2を参照して、本発明にかかるIII族窒化物結晶の成長方法の一実施形態は、III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5を溶解させた溶液6をIII族窒化物種結晶1に接触させることにより、III族窒化物種結晶1からIII族窒化物結晶10を成長させるIII族窒化物結晶の成長方法であって、III族窒化物種結晶1は、(000−1)N原子表面1nである上面を有し、結晶成長容器23の内面23iに接触するよう配置された下面を有し、III族窒化種物結晶1の実質的に側表面1s上に(000−1)N原子表面1nに平行な方向にIII族窒化物結晶10を成長させることを特徴とするIII族窒化物結晶の成長方法である。
本発明者らは、液相法、特に、III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5を溶解させた溶液6をIII族窒化物種結晶1に接触させてIII族窒化物結晶10を成長させるフラックス法において、III族窒化物種結晶1を、その上面を(000−1)N原子表面として、その下面が結晶成長容器23の内面23iに接触するように配置することにより、III族窒化物種結晶1の(000−1)N原子表面1n上にIII族窒化物結晶10がほとんど成長せず、実質的に側表面1s上にIII族窒化物結晶10が成長することを見出し、本発明を完成した。
<結晶成長装置>
図1および2を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法に用いられる結晶成長装置は、たとえば、外容器29と、外容器29の内部に配置された断熱材27と、断熱材27の内部に配置されたヒータ25と、ヒータ25の内側に配置された内容器21とを備える。この内容器21内には、その中でIII族窒化物結晶10を成長させるための結晶成長容器23が配置されている。また、結晶成長容器23の開口部が蓋24で覆われていてもよい。
ここで、結晶成長容器23および蓋24の材料は、融液3および窒素原料ガス5と反応せず、機械的強度および耐熱性が高いものであれば特に制限はないが、pNB(熱分解窒化硼素)、Al23(酸化アルミニウム、アルミナともいう)などが好ましい。また、内容器21の材料は、機械的強度および耐熱性の高いものであれば特に制限はないが、ステンレス、耐熱鋼などが好ましい。また、外容器29の材料は、機械的強度および耐熱性の高いものであれば特に制限はないが、ステンレスなどが好ましい。また、断熱材27の材料は、機械的強度、耐熱性および断熱性の高いものであれば特に制限はないが、ウール状のグラファイトなどが好ましい。
また、本実施形態で用いられる結晶成長装置は、第1の配管41によって内容器21に繋がれている窒素原料ガス供給装置31と、第2の配管43によって外容器29に繋がれている加圧用ガス供給装置33と、第3の配管45によって外容器29に繋がれている真空排気装置35とを備える。ここで、第1の配管41には、窒素原料ガス5の供給流量を調節するためのバルブ41vが設けられ、バルブ41vより内容器21側の部分41aには第1の圧力計41pが設けられている。また、第2の配管43には、加圧用ガス7の供給流量を調節するためのバルブ43vが設けられ、バルブ43vより外容器29側の部分43aには第2の圧力計43pが設けられている。また、第3の配管45には、排気流量を調節するためのバルブ45vが設けられている。
さらに、第1の配管41のバルブ41vより内容器21側の部分41aと第3の配管45のバルブ45vより外容器29側の部分45aとを繋ぐ第4の配管47が設けられている。この第4の配管47にはバルブ47vが設けられている。なお、図1には、参考のため、第1の配管41のバルブ41vより窒素原料ガス供給装置31側の部分41b、第2の配管43のバルブ43vより加圧用ガス供給装置33側の部分43b、第3の配管45のバルブ45vより真空排気装置35側の部分45bも図示した。
<結晶成長方法>
本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法は、特に制限はないが、たとえば表面の1つが(000−1)N原子表面1nであるIII族窒化物種結晶1を準備する工程と、III族窒化物種結晶1をその上面が(000−1)N原子表面1nであり、その下面が結晶成長容器23の内面23iに接触するように配置する工程と、III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5を溶解させた溶液6をIII族窒化物種結晶1に接触させることにより、III族窒化物種結晶の実質的に側表面1s上に(000−1)N原子表面に平行な方向にIII族窒化物結晶10を成長させる工程と、を備える。
<III族窒化物種結晶を準備する工程>
図2を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法は、表面の1つが(000−1)N原子表面1nであるIII族窒化物種結晶1を準備する工程を備える。かかるIII族窒化物種結晶1を準備して、その種結晶上に、フラックス法を用いてIII族窒化物種結晶1の(000−1)N原子表面1nに平行な方向にIII族窒化物結晶10を成長させると、結晶全体の転位密度が低いIII族窒化物結晶10を得ることが可能となる。なお、結晶の転位密度の測定は、特に制限はないが、CL(カソードルミネッセンス)法、EPD(エッチピット密度)法などに行なうことができる。
ここで、準備されるIII族窒化物種結晶1は、(000−1)N原子表面1nを有するものであれば特に制限は無いが、表面の1つが(000−1)N原子表面1nであると、その反対側の表面は(0001)Ga原子表面1gであり、それらの表面を繋ぐ側平面1sがある。ここで、側表面1sは(000−1)N原子表面1nに対して垂直でなくともよい。また、成長させるIII族窒化物結晶10との間の結晶格子および格子定数を整合させてIII族窒化物結晶10の転位密度をさらに低減する観点から、III族窒化物結晶10と同じ化学組成を有することが好ましい。III族窒化物結晶と化学組成が同じとは、結晶を構成する原子の種類および比率が同じことをいう。
<III族窒化物種結晶を配置する工程>
図2を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法は、III族窒化物種結晶1をその上面が(000−1)N原子表面1nであり、その下面が結晶成長容器23の内面23iに接触するように配置する工程を備える。かかる工程により、結晶成長容器23内において、III族窒化物種結晶1は、その上面を(000−1)N原子表面1nとして、その下面が結晶成長容器23の内面23iに接触するように配置される。
ここで、III族窒化物種結晶1の上面が(000−1)N原子表面であることから、III族窒化物種結晶1の下面は、通常(0001)Ga原子表面である。すなわち、(0001)Ga原子表面は、結晶成長容器23の内面23iと接触しているため、結晶成長容器23の内に配置されるIII族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5を溶解させた溶液6と接触することができず、その上にIII族窒化物結晶10が成長することができない。また、(000−1)N原子表面は、III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5を溶解させた溶液6と接触しても、その上にIII族窒化物結晶10はほとんど成長しない。したがって、上記のようにIII族窒化物種結晶1を配置することにより、III族窒化物種結晶1の実質的に側表面1s上に、(000−1)N原子表面と平行な方向に、III族窒化物結晶10を成長させることが可能となる。
<III族窒化物結晶を成長させる工程>
図2を参照して、本実施形態のIII族窒化物結晶の成長方法は、III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5を溶解させた溶液6をIII族窒化物種結晶1に接触させることにより、III族窒化物種結晶の実質的に側表面1s上に(000−1)N原子表面に平行な方向にIII族窒化物結晶10を成長させる工程を備える。
フラックス法においては、III族窒化物種結晶1について、(000−1)N原子表面1n上にほとんどIII族窒化物結晶10が成長しないことから、上記の工程により実質的に側表面1s上のみにIII族窒化物結晶10が(000−1)N原子表面1nに平行な方向に成長する。このとき、III族窒化物結晶10の転位は、結晶の成長方向、すなわち、(000−1)N原子表面1n,10nに平行な方向に伝搬する。したがって、III族窒化物結晶10は、(000−1)N原子表面10nおよび(0001)Ga原子表面10gにおける転位密度が低くなる。このようにして、転位密度が低いIII族窒化物結晶10が得られる。
ここで、側表面1sは、その上にIII族窒化物結晶10を(000−1)N原子表面に平行な方向に成長させることにより、III族窒化物結晶10の(000−1)N原子表面および(0001)Ga原子表面の転位密度を下げることができる観点から、(000−1)N原子表面1nに平行でなければ足り、垂直でなくてもよい。しかし、上記の転位密度を効果的に低減する観点から、側表面1sは(000−1)N原子表面1nに垂直であることが好ましい。
本実施形態のIII族窒化物結晶を成長させる工程においては、III族金属と、アルカリ金属とを含む融液3が用いられる。融液3には、III族金属に加えてアルカリ金属が含まれているため、III族金属を含み不純物濃度(たとえば融液全体に対して1モル%未満の濃度)以上にはアルカリ金属を含まない融液に比べて、III族窒化物結晶の結晶成長温度および/または結晶成長圧力を低減することができる。これは、融液3に含まれているアルカリ金属が、融液3への窒素原料ガス5の溶解を促進させるためと考えられる。
アルカリ金属は、特に制限はないが、III族窒化物結晶10の結晶成長温度および/または結晶成長圧力を低減する効果が大きい観点から、NaおよびLiの少なくともいずれかを含むことが好ましく、NaおよびLiの少なくともいずれかであることがより好ましい。
融液3に含まれるIII族金属MIIIとアルカリ金属MAとのモル比は、III族窒化物結晶の結晶成長温度および/または結晶成長圧力を低減させ、転位の増殖を抑制して転位密度の低いIII族窒化物結晶を成長させるのに適正な結晶成長速度(たとえば、0.1μm/hr以上2μm/hr以下)とする観点から、たとえば、MIII:MA=90:10〜10:90が好ましく、MIII:MA=50:50〜20:80がより好ましい。MIII:MA=90:10よりIII族金属MIIIのモル比が大きくても、MIII:MA=10:90よりアルカリ金属MAのモル比が大きくても、結晶成長速度が低下しすぎてしまう。
また、結晶成長に必要な温度および圧力が得られやすい観点から、成長させるIII族窒化物結晶10は、GaN結晶であることが好ましい。
本実施形態のIII族窒化物結晶を成長させる工程は、とくに制限は無いが、たとえば、以下の複数のサブ工程を含むことができる。
(融液原料配置サブ工程)
次に、図2を参照して、融液原料配置サブ工程として、結晶成長容器23に、III族金属およびアルカリ金属を配置する。高純度のIII族窒化物結晶10を成長させる観点から、III族金属の純度は、99モル%以上が好ましく、99.999モル%以上がより好ましい。また、同様の観点から、アルカリ金属の純度は、99モル%以上が好ましく、99.99%以上がより好ましい。
ここで、融液原料(III族金属およびアルカリ金属)の量は、特に制限はないが、液化したときの融液3の深さがIII族窒化物種結晶1の(000−1)N原子表面1nから1mm以上50mm以下であることが好ましい。かかる深さが1mmより小さいと融液3の表面張力のためIII族窒化物種結晶1の露出面((000−1)N原子表面1nおよび側表面1s)の全面を融液3が覆わない恐れがあり、50mmより大きいと融液3の液面からの窒素原料ガス5の供給が不足してしまうためである。
(昇温サブ工程)
次に、図2および4を参照して、昇温サブ工程S1として、III族窒化物種結晶および融液原料(III族金属およびアルカリ金属)が配置された結晶成長容器23内に窒素原料ガス5を供給することにより雰囲気圧力を所定圧力P1として、ヒータ25を用いて雰囲気温度を室温T0から所定温度Tまで所定時間H1をかけて昇温する。かかる昇温サブ工程において、融液原料が融解してIII族金属とアルカリ金属とを含む融液3が形成され、さらに、かかる融液3に窒素原料ガス5が溶解した溶液6が形成される。かかる溶液6は、III族窒化物種結晶1の(000−1)N原子表面1nおよび側表面1s(側表面1sは好ましくは(000−1)N原子表面1nに対して垂直)に接触する。
また、昇温サブ工程においては、雰囲気圧力および雰囲気温度(所定圧力P1および所定温度T)は、III族窒化物結晶が成長しない条件を満たすものとする。
なお、昇温サブ工程中は、内容器21への窒素原料ガス5の供給量および外容器29への加圧用ガス7の供給流量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
ここで、内容器21内に供給される窒素原料ガス5は、III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に溶解してIII族窒化物結晶10を成長させることができるものであれば特に制限はなく、窒素ガス、アンモニアガスなどが用いられる。また、高純度のIII族窒化物結晶10を成長させる観点から、窒素原料ガスの純度は、99.999モル%以上が好ましく、99.9999モル%以上がより好ましい。一方、外容器29に供給される加圧用ガス7は、外容器29内の圧力維持のために用いられ、III族窒化物結晶の成長に用いられるものではないため、窒素を含むガスでなくともよい。ただし、外容器29内にはヒータ25が配置されているため、加圧用ガス7には、ヒータ25により反応を起こさない不活性ガス、たとえば窒素ガス、アルゴンガスなどが好ましく用いられる。
(結晶成長準備サブ工程)
次に、図2および図4を参照して、結晶成長準備サブ工程S2として、結晶成長容器23への窒素原料ガス5の供給流量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定圧力P2かつ雰囲気温度を所定温度Tで所定時間H2保持する。ここで、所定圧力P2は所定圧力P1より高い。これにより、III族窒化物種結晶1と、融液3に窒素原料ガス5が溶解した溶液6の状態を一定にして、結晶開始の初期条件を一定にすることができる。
この結晶成長準備サブ工程における雰囲気圧力(所定圧力P2)および雰囲気温度(所定温度T)は、III族窒化物結晶10が成長しない条件を満たすものとする。
なお、結晶成長準備サブ工程中においても、内容器21への窒素原料ガス5の供給流量および外容器29への加圧用ガス7の供給流量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
(結晶成長サブ工程)
次に、図2および4を参照して、結晶成長サブ工程S3として、結晶成長容器23への窒素原料ガス5の供給流量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定圧力P3かつ雰囲気温度を所定温度Tで所定時間H3保持して、III族窒化物結晶10を成長させる。ここで、所定圧力P3は所定圧力P2より高い。
かかる結晶成長サブ工程においては、III族金属とアルカリ金属とを含む融液3に窒素原料ガス5が溶解した溶液6が、III族窒化物種結晶1の(000−1)N原子表面1nおよび側表面1s(側表面1は好ましくは(000−1)N原子表面1nに対して垂直)に接触している。しかし、(000−1)N原子表面1n上には、III族窒化物結晶10は、ほとんど成長しない。このため、III族窒化物結晶10は、実質的にすべてIII族窒化物種結晶1の側表面1s上に、(000−1)N原子表面1nに平行な方向に成長する。このとき、III族窒化物結晶10の転位は、結晶の成長方向、すなわち、(000−1)N原子表面1nおよび10nに平行な方向に伝搬する。したがって、III族窒化物結晶10は、(000−1)N原子表面10nおよび(0001)Ga原子表面10gにおける転位密度が低くなる。このようにして、転位密度が低いIII族窒化物結晶10が得られる。
なお、結晶成長サブ工程中においても、内容器21への窒素原料ガス5の供給量および外容器29への加圧用ガス7の供給量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
(降温サブ工程)
次に、図2および4を参照して、降温サブ工程S4として、結晶成長容器23へのヒータ25による加熱量を調節して、結晶成長容器23内の雰囲気圧力を所定圧力P3で保持するとともに、雰囲気温度を所定温度Tから室温T0まで所定時間H4をかけて降温する。
なお、降温サブ工程中においても、内容器21への窒素原料ガス5の供給流量および外容器29への加圧用ガス7の供給流量を調節して、内容器21の内圧が外容器29の内圧に比べて0.01MPa以上0.1MPa以下の範囲で大きくなるようにすることが好ましい。すなわち、0.01MPa≦{(内容器の内圧)−(外容器の内圧)}≦0.1MPaとなるようにすることが好ましい。外容器29内の加圧用ガス7が内容器21内に混入するのを防止して、内容器21内の窒素の純度を高く維持するためである。
さらに、結晶成長容器23を所定圧力P3から大気圧に減圧して、III族窒化物種結晶1の側表面1s上に成長したIII族窒化物結晶10を取り出すことができる。
(実施例1)
1.III族窒化物種結晶の準備
図1および図2を参照して、III族窒化物種結晶1として、HVPE法で作製した、主面が互いに平行な(0001)Ga原子表面1gおよび(000−1)N原子表面1nであり、(000−1)N原子表面1nに対して垂直な側表面1sを有する、直径が3mmで厚さが0.4mmのGaN種結晶を準備した。GaN種結晶(III族窒化物種結晶1)の(0001)Ga原子表面1gにおける転位密度は、CL(カソードルミネッセンス)法により測定したところ、5×105cm-2であった。
2.III族窒化物種結晶の配置
図2を参照して、GaN種結晶(III族窒化物種結晶1)を、その(000−1)N原子表面1nを上に向けて、内径30mmで深さ20mmのAl23製の坩堝(結晶成長容器23)の底に配置した。このとき、GaN種結晶は、(0001)Ga原子表面が、坩堝の底面(内面)に接触しており、(000−1)N原子表面および側表面が露出していた。
3.III族窒化物結晶の成長
(融液原料の配置)
図2を参照して、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内に、純度99.9999モル%の金属Gaと純度99.99モル%の金属Na(融液原料)を、金属Ga(III族金属MIII)と金属Na(アルカリ金属MA)のモル比がMIII:MA=3:7の割合で、溶融したときの融液3の表面から坩堝の底面までの深さが5mmになる量を入れた。
次いで、GaN種結晶(III族窒化物種結晶1)ならびに金属Gaおよび金属Na(融液原料)が収容されたAl23製の坩堝(結晶成長容器23)を内容器21内に配置した。次いで、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)の上にAl23製の蓋24を配置した。ここで、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)は内容器21との通気が確保されており、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力は内容器21内の雰囲気圧力と等しくなる。また、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)は内容器21内に配置されているため、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気温度は内容器21内の雰囲気温度と等しくなる。
(真空排気)
次に、図1を参照して、真空ポンプ(真空排気装置35)を用いて、内容器21および外容器29の内部を真空排気した。真空排気後の内容器21および外容器29の真空度は、1×10-3Paであった。
(昇温サブ工程)
次に、図1、図2および図4を参照して、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ1MPa(所定圧力P1)および0.95MPaとなるように、それぞれ窒素原料ガス5および加圧用ガス7を供給して、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を1MPa(所定圧力P1)とした。内容器21内に供給される窒素原料ガス5には、純度が99.99999モル%の高純度の窒素ガスを用いた。一方、外容器29に供給される加圧用ガス7には、純度が99.9999モル%の窒素ガスを用いた。次いで、図1、図2および図4を参照して、抵抗加熱方式のヒータ25を用いて、内容器21および外容器29の内部を2時間(所定時間H1)加熱して、内容器21内の雰囲気温度を30℃(室温T0)から865℃(所定温度T)に昇温した(昇温サブ工程S1)。
かかる昇温サブ工程S1において、金属Gaおよび金属Naが融解したGa−Na融液(融液3)が形成され、かかるGa−Na融液(融液3)に高純度の窒素ガス(窒素原料ガス5)が溶解した溶液6が形成され、かかる溶液6はGaN種結晶の(000−1)N原子表面1nおよび(000−1)N原子表面1nに対して垂直な側表面1sに接触した。ここで、雰囲気圧力が1MPa(所定圧力P1)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。
(結晶成長準備サブ工程)
次に、図1、図2および図4を参照して、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ2MPa(所定圧力P2)および1.95MPaとなるように、それぞれ窒素原料ガス5および加圧用ガス7を供給して、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を2MPa(所定圧力P2)かつ雰囲気温度を865℃(所定温度T)で50時間(所定時間H2)保持した(結晶成長準備サブ工程S2)。ここで、雰囲気圧力が2MPa(所定圧力P2)かつ雰囲気温度が865℃(所定温度T)の条件は、結晶成長が起こらない条件である。
(結晶成長サブ工程)
次に、図1、図2および図4を参照して、GaN種結晶(III族窒化物種結晶1)のGaN種結晶の(000−1)N原子表面1nおよび(000−1)N原子表面1nに対して垂直な側表面1sに溶液6が接触した状態で、内容器21および外容器29内に、内容器21および外容器29内の雰囲気圧力がそれぞれ3MPa(所定圧力P3)および2.95MPaとなるように、それぞれ窒素原料ガス5および加圧用ガス7を供給して、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)かつ雰囲気温度を865℃(所定温度T)で200時間(所定時間H3)保持して、GaN結晶(III族窒化物結晶10)を成長させた(結晶成長サブ工程S3)。
(降温サブ工程)
次に、図1、図2および図4を参照して、ヒータ25による加熱を止めて、Al23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)に保持しながら雰囲気温度を865℃(所定温度T)から30℃(室温T0)まで、8時間(所定時間H4)かけて降温した(降温サブ工程S4)。次いで、内容器21内のAl23製の坩堝(結晶成長容器23)内の雰囲気圧力を3MPa(所定圧力P3)から大気圧に低減して、GaN種結晶(III族窒化物種結晶1)上に成長したGaN結晶(III族窒化物結晶10)を取り出した。このとき、外容器29内の雰囲気圧力は、内容器21内の雰囲気圧力に比べて、0〜0.05MPa低くなるように調整した。
(GaN結晶)
取り出された上記GaN結晶(III族窒化物結晶10)はGaN種結晶(III族窒化物種結晶1)を含めて直径9mm×厚さ0.4mmであった。すなわち、GaN結晶は、GaN種結晶の(000−1)N原子表面1n上では(000−1)N原子表面1nに垂直な方向にはほとんど成長せず、実質的にすべて側表面1s上のみに(000−1)N原子表面1nに平行な方向に3mmの厚さに成長していた。かかるGaN結晶およびGaN種結晶の(0001)Ga原子表面10gおよび1gから0.1mmの深さの面10cまで研磨して、成長したGaN結晶において(0001)Ga表面として現れる面10cにおける転位密度は、CL法により測定したところ、1×105cm-2と低かった。
(比較例1)
図1、図3および図4を参照して、実施例1と同様のGaN種結晶(III族窒化物種結晶1)を、その(000−1)N原子表面1gがAl23製の坩堝(結晶成長容器23)の底面に接触させて、その(0001)Ga原子表面1gおよび側表面1sが露出するように配置したこと以外は、実施例1と同等にして、GaN結晶を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶10)はGaN種結晶(III族窒化物種結晶1)を含めて直径5mm×厚さ1.4mmであった。すなわち、GaN結晶は、GaN種結晶の(0001)Ga原子表面1g上に(0001)Ga原子表面1gに垂直な方向に1mm成長し、側表面1s上に(0001)Ga原子表面1gに平行な方向に1mm成長していた。かかるGaN結晶の(0001)Ga原子表面10gから、0.1mmの深さの面10a、および1.1mmの深さの面10bまで研磨して、成長したGaN結晶において(0001)Ga表面として現れる面10aおよび面10bにおける転位密度は、CL法により測定したところ、それぞれ8×106cm-2および1×105cm-2であった。
実施例1および比較例1を対比すると明かなように、実施例1においては、GaN結晶(III族窒化物結晶10)は、実質的にすべてGaN種結晶(III族窒化物種結晶1)の側表面1s上のみに成長させたことにより、結晶全体の転位密度を低減することができた。これに対して、比較例1においては、GaN結晶は、GaN種結晶の(0001)Ga原子表面1gおよび側表面1sに成長させたため、(0001)Ga原子表面1g上に成長させた結晶部分の転位密度が低減せず、結晶全体の転位密度を低減することができなかった。
(実施例2)
融液原料として、純度99.9999モル%の金属Ga、純度99.99モル%の金属Naおよび純度99.99モル%の金属Liを、金属Ga(III族金属MIII)と金属Na(アルカリ金属MA)のモル比がMIII:MA=3:7、金属Na(Na金属MNa)と金属Li(Li金属MLi)のモル比がMNa:MLi=97:3の割合で坩堝(結晶成長容器)に配置したこと、結晶成長準備工程および結晶成長工程における雰囲気温度(所定温度T)を875℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶10)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶10)はGaN種結晶(III族窒化物種結晶1)を含めて直径10mm×厚さ0.4mmであった。すなわち、GaN結晶は、GaN種結晶の(000−1)N原子表面1n上では(000−1)N原子表面1nに垂直な方向にはほとんど成長せず、実質的にすべて側表面1s上のみに(000−1)N原子表面1nに平行な方向に3.5mmの厚さに成長していた。かかるGaN結晶およびGaN種結晶の(0001)Ga原子表面10g,1gから0.1mmの深さの面10cまで研磨して、成長したGaN結晶において(0001)Ga表面として現れる面10cにおける転位密度をCL法により測定したところ、2×105cm-2と低かった。
(比較例2)
融液原料として、純度99.9999モル%の金属Ga、純度99.99モル%の金属Naおよび純度99.99モル%の金属Liを、金属Ga(III族金属MIII)と金属Na(アルカリ金属MA)のモル比がMIII:MA=3:7、金属Na(Na金属MNa)と金属Li(Li金属MLi)のモル比がMNa:MLi=97:3の割合で坩堝(結晶成長容器)に配置したこと、結晶成長準備工程および結晶成長工程における雰囲気温度(所定温度T)を875℃としたこと以外は、実施例2と同様にしてGaN結晶(III族窒化物結晶10)を成長させた。
得られたGaN結晶(III族窒化物結晶10)はGaN種結晶(III族窒化物種結晶1)を含めて直径5.4mm×厚さ1.6mmであった。すなわち、GaN結晶は、GaN種結晶の(0001)Ga原子表面1g上に(0001)Ga原子表面1gに垂直な方向に1.2mm成長し、側表面1s上に(0001)Ga原子表面1gに平行な方向に1.2mm成長していた。かかるGaN結晶の(0001)Ga原子表面10gから、0.1mmの深さの面10a、および1.3mmの深さの面10bまで研磨して、成長したGaN結晶において(0001)Ga表面として現れる面10aおよび面10bにおける転位密度は、CL法により測定したところ、それぞれ7×106cm-2および2×105cm-2であった。
実施例2および比較例2を対比すると明かなように、実施例2においては、GaN結晶(III族窒化物結晶10)は、実質的にすべてGaN種結晶(III族窒化物種結晶1)の側表面1s上のみに成長させたことにより、結晶全体の転位密度を低減することができた。これに対して、比較例2においては、GaN結晶は、GaN種結晶の(0001)Ga原子表面1gおよび側表面1sに成長させたため、(0001)Ga原子表面1g上に成長させた結晶部分の転位密度が低減せず、結晶全体の転位密度を低減することができなかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
本発明にかかる成長方法により得られたIII族窒化物結晶およびこの結晶を基板として他の成長方法により得られるIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(高電子移動度トランジスタ)などの電子素子、微小電子源(エミッタ)、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視-紫外光検出器などの半導体センサ、SAW(表面弾性波)デバイス、振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、圧電アクチュエータなどのデバイス用の基板として広く用いられる。
1 III族窒化物種結晶、1g,10g (0001)Ga原子表面、1n,10n (000−1)N原子表面、1s 側表面、3 融液、5 窒素原料ガス、6 溶液、7 加圧用ガス、10 III族窒化物結晶、10a,10b,10c 面、21 内容器、23 結晶成長容器、24 蓋、25 ヒータ、27 断熱材、29 外容器、31 窒素原料ガス供給装置、33 加圧用ガス供給装置、35 真空排気装置、41 第1の配管、41a バルブより内容器側の部分、41b バルブより窒素原料ガス供給装置側の部分、41p,43p 圧力計、41v,43v,45v,47v バルブ、43 第2の配管、43a,45a バルブより外容器側の部分、43b バルブより加圧用ガス供給装置側の部分、45 第3の配管、45b バルブより真空排気装置側の部分、47 第4の配管。

Claims (3)

  1. III族金属とアルカリ金属とを含む融液に窒素原料ガスを溶解させた溶液をIII族窒化物種結晶に接触させることにより、前記III族窒化物種結晶からIII族窒化物結晶を成長させるIII族窒化物結晶の成長方法であって、
    前記III族窒化物種結晶は、(000−1)N原子表面である上面を有し、結晶成長容器の内面に接触するよう配置された下面を有し、
    前記III族窒化物種結晶の実質的に側表面上に前記(000−1)N原子表面に平行な方向に前記III族窒化物結晶を成長させることを特徴とするIII族窒化物結晶の成長方法。
  2. 前記アルカリ金属は、NaおよびLiの少なくともいずれかを含む請求項1に記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
  3. 前記III族窒化物結晶は、GaN結晶である請求項1または請求項2に記載のIII族窒化物結晶の成長方法。
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