本発明は各種ヒト腫瘍細胞又は癌細胞により発現される細胞表面抗原を特異的に認識してこれと結合するモノクローナル抗体とその結合フラグメントを提供する。表面抗原は癌細胞に単に存在しているだけの場合と高度に発現される場合があるが、発生的に近縁の細胞には存在しないか、又は発現度もしくは提示度が高くない。新規に発見されたIGF−1R特異抗体は潜在的治療薬として有用であると共に、診断及び細胞精製目的でも有用になろう。
定義及び一般技術
GenBankデータベース配列のアクセション番号を含めて本明細書に引用する参考資料、特許、特許出願及び科学文献は当業者の知識を証明するものであり、各々を具体的に個々に援用すると記載すると同程度までその開示内容全体を本明細書に援用する。本明細書に引用する資料と本明細書の個々の教示が矛盾する場合には、後者を優先する。同様に、単語又は表現の当分野で認識されている定義と本明細書に具体的に教示する単語又は表現の定義とが矛盾する場合には、後者を優先する。同様に当然のことながら、本明細書で使用する術語は特定態様の記載のみを目的とし、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみに限定される。
なお、本明細書と特許請求の範囲で使用する単数形の「a」、「an」、および「the」はもし文脈が明らかに別のものを指定していなければ、複数形も含む。従って、例えば「遺伝子改変」と言う場合には複数のこのような改変を含み、「プローブ」と言う場合には1個以上のプローブと当業者に公知のその等価物を含み、他の用語についても同様である。
本明細書に引用する全刊行物は刊行物の引用に関連する方法及び/又は材料を開示及び記載するために本明細書に援用する。本明細書に引用する刊行物は本願の出願日前のそれらの開示について引用している。この場合、本発明者らが本発明以前の優先権主張日又は先行日により刊行物よりも以前の日付を主張する権利がないと認めるものと解釈すべきではない。更に、実際の刊行物の日付は表示されている日付と異なる場合もあり、個々に確認が必要であると思われる。
本明細書に特に定義しない限り、本発明に関して使用する科学技術用語は当業者に通常理解されている意味をもつ。更に、内容からその必要がない限り、単数形の用語は複数形も含み、複数形の用語は単数形も含む。一般に、本明細書に記載する細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学並びに蛋白質及び核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用する命名法とその技術は当分野で周知の広く使用されているものである。本発明の方法及び技術は一般に当分野で周知の従来の方法に従い、特に指定しない限り、本明細書の随所に引用及び記載する各種一般及び特定文献に記載されているように実施される。例えば本明細書に援用するSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)参照。酵素反応と精製技術は当分野で一般に実施されている方法又は本明細書に記載する方法で製造業者の仕様書に従って実施する。本明細書に記載する分析化学、合成有機化学及び医薬化学に関して使用する命名法とその実験室手順及び技術は当分野で一般に使用されている周知のものである。化学合成、化学分析、医薬製造、製剤化及び送達、並びに患者の治療には標準技術を使用する。
以下の用語は特に指定しない限り、以下の意味をもつのもとする。
本明細書の趣旨では、組織サンプルの「切片」とは組織サンプルの1部分又は1片、例えば組織サンプルから切断した組織又は細胞の薄片を意味する。当然のことながら、組織サンプルの複数の切片を取得し、本発明に従って分析してもよい。
「癌」又は「悪性腫瘍」は同義語として使用し、無制御で異常な細胞増殖、疾患細胞が局所に拡大するか又は血流とリンパ系を通って体内の他の部分に拡大する(即ち転移する)能力並びに多数の特徴的な構造及び/又は分子特徴のいずれかを特徴とする多数の疾患のいずれかを意味する。「癌性」又は「悪性細胞」とは特定の構造特性をもち、分化せず、浸潤と転移が可能な細胞とみなされる。癌の例は腎臓癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌及び肝臓癌である(De Vita,V.et al.(eds.),2001,CANCER PRINCIPLES AND PRACTICE OF ONCOLOGY,第6版,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,Pa.参照;本文献はその開示内容全体を全目的で本明細書に援用する)。より詳細には、癌とは正常に対するIGF−1Rの発現に関連する癌を意味するものと想定する。
単数形又は複数形で使用する「癌性細胞」又は「癌細胞」なる用語は宿主生物に対して病的な状態にする悪性形質転換を受けた細胞を意味する。悪性形質転換は細胞の遺伝子構成及び/又は遺伝子発現プロファイルの変化を部分的に伴う1段階又は多段階プロセスである。悪性形質転換は自然発生する場合もあるし、薬剤ないし化学療法、放射線、他の細胞との融合、ウイルス感染又は特定遺伝子の活性化もしくは不活性化等のイベント又はイベント組合せにより発生する場合もある。悪性形質転換はインビボでもインビトロでも発生し、必要に応じて実験により誘導することもできる。悪性細胞は明確な腫瘍塊内に存在する場合もあるし、他の物理的位置に転移している場合もある。
癌細胞の特徴は宿主により制御不能に増殖する傾向であるが、特定癌に関連する病態はあらゆる形態をとり得る。原発癌細胞(即ち、悪性形質転換部位の近傍から得られる細胞)は確立した病理技術、特に組織検査により非癌性細胞から容易に区別することができる。本明細書で使用する癌細胞の定義は原発癌細胞のみならず、癌細胞原型から誘導される任意細胞も含む。これは転移癌細胞と、癌細胞から誘導されるインビトロ培養物及び細胞株も含む。
細胞株−「細胞株」又は「細胞培養物」とはインビトロ増殖又は維持された高等真核細胞を意味する。当然のことながら、細胞の子孫は(形態、遺伝子型又は表現型に関して)親細胞と完全に一致しない場合がある。「未培養」と記載する細胞は生体から直接得られ、細胞が実質的に複製するために十分な時間又は条件下ではなく、生体から分離後に限られた時間しか維持されていない。
本明細書で使用する「サンプル」なる用語は新生細胞を含むか又は潜在的に含む任意体液、細胞、組織、臓器又はその一部を意味し、例えば新生細胞を含むか又は含む疑いのある結腸、直腸、***、卵巣、前立腺、腎臓、肺、血液、脳又は他の臓器もしくは組織に由来する細胞等が挙げられる。この用語は個体に存在するサンプルに加え、個体から採取されるか又は由来するサンプルを含む。例えば、サンプルは生検により得られた検体の組織切片、又は組織培養物に添加もしくは適応させた細胞とすることができる。サンプルは更に亜細胞フラクションもしくは抽出液、又は粗製もしくは実質的に純粋な核酸分子もしくは蛋白質調製物とすることができる。
臨床サンプルとは対象から得られ、例えばIGF−1R発現レベルを測定又は検出する診断又は監視試験等の本発明の方法で有用な各種サンプル種を意味する。この定義は外科的切除により得られた固体組織サンプル、病理検体、保存サンプル又は生検検体、組織培養物又はそれから誘導される細胞及びその子孫、並びにこれらの起源のいずれかから作製された切片又は塗抹標本を包含する。非限定的な例は***組織、リンパ節、結腸、膵臓、前立腺等から得られたサンプルである。この定義は更に生体由来の液体サンプルも包含し、これに懸濁した細胞もしくは細胞フラグメント、又は液体媒体とその溶質を意味する場合もある。
本願で使用する病変の「診断」とは、例えばIGF−1Rの発現に関連又は介在される病的過増殖性腫瘍性疾患の診断又は検出、病変の進行の監視、及びIGF−1Rの発現に関連する疾患の指標となる細胞又はサンプルの同定を含むものとする。診断、検出、同定等の用語は本明細書では同義に使用する。
「診断法」としては、限定されないが、腫瘍の転移能の判定又はIGF−1R介在性腫瘍の発見後の患者の予後の判定が挙げられる。このような診断法はIGF−1Rの存在を伴う癌もしくは他の病変を治療するために使用される治療レジームの有効性を判定するため又はIGF−1R発現レベルを検出/判定するために使用することもできる。「診断法」又は「監視法」なる用語は同義に使用されることが多い。
本明細書で使用する「示差的結果」は一般に癌性細胞株と対照細胞株又は癌性組織と対照組織等の2種類の異なるアッセイサンプルの結果を比較するアッセイで得られる。従って、例えば、IGF−1R等のマーカー蛋白質の「示差的レベル」はある組織サンプル中のIGF−1Rレベルが別のサンプルよりも高い場合に認められる。
「無病生存」とは監視する病変をもたない生体を意味する。例えば、この蛋白質IGF−1Rに介在される癌(例えば乳癌)を診断又は監視するためにIGF−1R発現レベルを使用する場合には、無病生存とは検出可能な乳癌をもたないことを意味する。
転移能−「転移」とは癌が発生臓器から患者の他の部位に拡大する病態を意味する。従って、例えば膵臓癌等のIGF−1R介在性腫瘍性疾患に関して「転移能」とは局在病変から播種性転移性病変に進行する危険とみなすことができる。
「監視法」としては限定されないが、IGF−1Rに介在される腫瘍性疾患(例えば***腫瘍)の発見後に患者の進行又は治療レジームに対する応答を追跡する方法が挙げられる。このような監視法は癌又はIGF−1Rの存在を伴う他の病変を治療するために使用される治療レジームの有効性を判定するために使用することもできる。このような治療的処置の1例は抗IGF−1R特異抗体の使用である。「診断法」又は「監視法」なる用語は同義に使用することが多い。
本明細書で使用する「病態」−癌細胞により宿主内に誘発される「病態」は宿主の健康又は正常な生理機能を損なう任意状態である。これは限定されないが、癌細胞の異常もしくは無制御な増殖、転移、IGF−1R含有細胞の発現レベルの上昇もしくは不適切なレベルの他の産物、その生理環境に不適切な機能の発現、隣接細胞の正常な機能の妨害、炎症性もしくは免疫応答の悪化もしくは抑制、又は望ましくない化学物質もしくは浸潤性生物の存在を意味する。
本願で使用する「予後」とは病変の回復の可能性又は病変の推定発生もしくは転帰の予測を意味する。例えば、IGF−1Rに介在される腫瘍性疾患(例えば乳癌)をもつ患者に由来するサンプルがIGF−1Rに対する抗体による核染色に陽性である場合に、その患者の「予後」はサンプルがIGF−1R染色に陰性だった場合よりも良好である。抗体染色レベルの0〜4のスケールでサンプルのIGF−1R発現レベルをスコアリングすることができ、0は陰性であり、1〜4は強度が上がるにつれて半定量的な4段階の陽性染色を意味する。各陽性スコアはスコア0(陰性)に比較した場合の再発性及び致命的病変の危険の有意低下に関連付けることができるので、スコア1〜4を陽性スコアとして記録することができるが、陽性スコアの強度が増加するにつれて危険低減が増す場合もある。IGF−1Rの予後値を推定するには従来の任意ハザード分析法を使用することができる。代表的な分析法としては、打ち切り例の存在下で生存又はイベントまでの時間をモデル化するセミパラメトリック法であるコックス回帰分析が挙げられる(Hosmer and Lemeshow,1999;Cox,1972)。他の生存分析(例えば生命表ないしカプラン・マイヤー法)と異なり、コックス法は予測変数(共変量)をモデルに加えることができる。従来の分析法(例えばコックス法)を使用し、原発性腫瘍におけるIGF−1R発現状態と病変再発の発生までの期間(無病生存期間又は転移病変までの期間)、又は病変から死亡までの期間(総生存期間)の相関に関する仮定を試験することができる。コックス回帰分析はコックス比例ハザード分析としても知られる。この方法は患者生存期間について腫瘍マーカーの予後値を試験するための標準である。多変量モードで使用する場合には、個々の予後値をもつ個々の共変量即ち最も有用なマーカーを同定できるように数個の共変量の効果を並行して試験する。腫瘍の陽性又は陰性「TGF−1R状態」なる用語は夫々スコア0又はスコア1〜4を意味する。
スコアリング−乳癌の診断又は監視中にサンプルを「スコアリング」することができる。その最も単純な形式では、スコアリングは免疫組織化学によりサンプルの目視試験により判断した場合に陰性又は陽性に分類することができる。より定量的なスコアリングは、サンプリングする染色(「陽性」)細胞の染色強度と比率との2個のパラメーターを判断する。Allredら(Allred,Harvey et al.1998)はこれを実施する1つの方法として、両方のパラメーターを0(陰性)〜4のスケールでスコアリングし、個々のパラメーターのスコアを総スコアにまとめる方法を記載している。この結果、0、2、3、4、5、6、7又は8の可能なスコアからなるスケールが得られる(なお、Allredのスケールではスコア1はあり得ない)。多少簡単なスコアリング法は核染色強度と染色核を示す細胞の比率を0〜4の合算スコアに合算する。実際に、Allredのスケールのスコア7及び8は簡易スケールでは4に対応する。同様に、スコア5及び6は3に対応し、スコア3及び4はスコア2に対応し、スコア2は1に対応し、0はどちらのスケールでも0に対応する。どちらのスコアリング法も細胞核における活性化Stat5の染色の強度と比率のスコアリングに適用することができる。本明細書で使用する腫瘍の陽性又は陰性「IGF−1R状態」なる用語は簡易スケールの夫々スコア0又は1〜4に対応するIGF−1Rレベルを意味する。
一般に、本発明による試験又はアッセイの結果は各種フォーマットのいずれかで表すことができる。定性的に結果を表すことができる。例えば、試験報告は恐らく検出限界の指示と共に、特定ポリペプチドが検出された否かのみを示すことができる。半定量的に結果を表すこともできる。例えば、種々の範囲を定義することができ、所定程度の定量情報を提供するスコア(例えば1+〜4+)に範囲を割り当てることができる。このようなスコアは種々の因子、例えばIGF−1Rが検出される細胞数、(IGF−1Rの発現レベル又はIGF−1R細胞を指示することができる)シグナルの強度等を反映することができる。例えばポリペプチド(IGF−1R)が検出される細胞の百分率として、結果を蛋白質濃度として定量的に表すこともできる。当業者に自明の通り、試験により提供される出力の種類は試験の技術的制約とポリペプチドの検出に関連する生物学的重要性により異なる。例えば、所定のポリペプチドの場合には、純定性的出力(例えばポリペプチドが所定検出レベルで検出されるか否か)が有意情報を提供する。他の場合には、より定量的な出力(例えば被験サンプル中のポリペプチドの発現レベルと正常レベルの比)が必要である。
個体又は細胞の「治療」は個体又は細胞の非治療過程を変更しようとする任意型の介入である。例えば、個体の治療は個体に含まれる癌に起因する病態を減少又は制限するように実施することができる。治療としては限定されないが、a)IGF−1R特異的mAbを含有する医薬組成物等の組成物の投与、b)外科的処置(例えば乳腺腫瘤摘出術や変形定型的***切除術)の適用、又はc)放射線療法の適用が挙げられ、予防的に実施してもよいし、病変イベントの開始又は病因物質との接触後に実施してもよい。
「バイオマーカー」とは組織又は細胞中の発現レベルが正常又は健康細胞又は組織に比較して変化している任意遺伝子又は蛋白質である。本発明の趣旨では、バイオマーカーはIGF−1Rである。従って、IGF−1Rの発現レベルはIGF−1Rに関連する基礎腫瘍性疾患に選択的である。IGF−1Rの発現に関連する疾患に関して「選択的に過剰発現」又は「発現」とは、該当バイオマーカー(IGF−1R)が選択疾患では過剰発現されるが、異形成が存在しない状態、未成熟化生細胞、及び臨床疾患とみなされない他の状態では過剰発現されないことを意味する。従って、IGF−1Rの検出は良性増殖、初期ステージ又は軽度異形成を示すサンプルに由来する癌等の特定腫瘍性疾患をもつ傾向を示すサンプルの分化を可能にする。「初期ステージ」とは臨床介入を必要とする病変ステージまで進行していない病態を意味する。本発明の方法は更に高グレード病変を示す細胞を正常細胞、未成熟化生細胞及び臨床病変を示さない他の細胞から区別する。こうして、本発明の方法は従来の診断法では誤って正常として分類された患者(「偽陰性」)でも、IGF−1Rの発現に関連する高グレード病的過増殖性腫瘍性疾患又はIGF−1Rの発現に関連する腫瘍性疾患の正確な同定を可能にする。所定態様において、IGF−1Rの発現に関連する腫瘍性疾患(例えば結腸癌)の診断方法は異常ないし非定型結腸内視鏡検査結果に対して実施される。即ち、本発明の方法は結腸癌の場合には結腸内視鏡検査で異常であった患者に対して実施することができる。本発明の他の側面では、前記方法は現在実施されている従来の結腸内視鏡検査やマンモグラムと全く同様に、一般集団でIGF−1Rの発現に関連する腫瘍性疾患の一次スクリーニング試験として実施される。
「相関する」又は「相関」とは何らかの方法で第1の分析の成績及び/又は結果を第2の分析の成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第2の分析を実施する際に第1の分析の結果を使用してもよいし、及び/又は第2の分析を実施すべきか否かを判断するために第1の分析の結果を使用してもよいし、及び/又は第1の分析の結果を第2の分析の結果と比較してもよい。免疫組織化学(IHC)分析に属する態様では、正常な組織切片の面積及び/又は癌性面積を測定するために、染色で得られた結果を使用することができる。
本明細書において「一次抗体」なる用語は組織サンプル中の標的蛋白質抗原と特異的に結合する抗体(例えば12B1)を意味する。一次抗体は一般に免疫組織化学法で使用される第1の抗体である。1態様において、一次抗体はIHC法で使用される唯一の抗体である。
本明細書において「二次抗体」なる用語は一次抗体と特異的に結合することにより、一次抗体と存在する場合にはその後の試薬との間に橋を形成する抗体を意味する。二次抗体は一般に免疫組織化学法で使用される二次抗体である。
本発明に関して「形質転換」なる用語は正常細胞が悪性になるにつれて受ける変化を意味する。真核生物では、「形質転換」なる用語は細胞培養における正常細胞から悪性細胞への変換を表すために使用することができる。
「予防」なる用語は生体が異常状態に罹患又は発症する確率の低下を意味する。
「治療」なる用語は治療効果をもつこと及び生体における異常状態を少なくとも部分的に緩和又は排除することを意味する。治療は腫瘍増殖の抑制、腫瘍増殖抑制の維持及び寛解の誘導を含む。
本明細書で使用する「約」なる用語は許容可能な範囲内の指定値の近似値を意味する。好ましくは、範囲は指定値の±5%である。
内容からそうでないことが明白な場合を除き、「又は」なる用語は本明細書では「及び/又は」なる用語の意味で使用し、これと同義に使用する。
「健康」、「正常」及び「非新生物」なる用語は本明細書では同義に使用し、IGF−1Rの細胞表面発現の増加に関連する新生物等の病変状態を(少なくとも検出限界まで)もたない対象又は特定細胞もしくは組織を意味する。本明細書ではこれらの用語を癌由来組織及び細胞について使用することが多い。従って、本願の趣旨では、重篤な心臓疾患をもつが、IGF−1Rに関連又は介在される病変をもたない患者を「健康」と言う。
「ポリペプチド」なる用語は天然又は人工蛋白質、蛋白質フラグメント及び蛋白質配列のポリペプチドアナログを包含する。
「単離蛋白質」又は「単離ポリペプチド」なる用語はその由来起源により、(1)その天然状態でこれに付随する天然結合成分に結合しておらず、(2)同一種に由来する他の蛋白質を含まず、(3)別の種に由来する細胞により発現され、又は(4)天然には存在しない蛋白質又はポリペプチドである。従って、化学的に合成されるポリペプチド又は天然でその起源となる細胞以外の細胞系で合成されるポリペプチドはその天然結合成分から「単離」されることになる。当分野で周知の蛋白質精製法を使用して単離により蛋白質が天然結合成分を実質的に含まないようにすることもできる。
サンプルの少なくとも約60%〜75%が単一種のポリペプチドを示すときに蛋白質又はポリペプチドは「実質的に純粋」、「実質的に均一」又は「実質的に精製状態」である。ポリペプチド又は蛋白質は単量体でも多量体でもよい。実質的に純粋なポリペプチド又は蛋白質は一般に蛋白質サンプルの約50%、60%、70%、80%又は90%W/W、より一般には約95%を含み、好ましくは99%を上回る純度となる。蛋白質純度又は均一度は蛋白質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動後に当分野で周知の色素によるゲルの染色により単一ポリペプチドバンドを可視化する等の当分野で周知の多数の手段により示すことができる。所定目的では、HPLC又は当分野で周知の他の精製手段を使用することにより高分解能を提供することができる。
本明細書で使用する「ポリペプチドアナログ」なる用語はあるアミノ酸配列の一部に対して実質的な一致度をもち、以下の性質の少なくとも1種、即ち(1)適切な結合条件下でIGF−IRと特異的に結合する性質、(2)IGF−I又はIGF−IIがIGF−IRと結合するのを阻止することができる性質、あるいは(3)IGF−IR細胞表面発現又はチロシンリン酸化をインビトロ又はインビボで低減する性質をもつ少なくとも25アミノ酸のセグメントから構成されるポリペプチドを意味する。一般に、ポリペプチドアナログは天然配列に対して保存アミノ酸置換(又は挿入又は欠失)を含む。アナログは一般に少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50、60、70、80、90、100、150又は200アミノ酸長以上であり、多くの場合には全長天然ポリペプチドと同程度の長さとすることができる。
好ましいアミノ酸置換は(1)蛋白分解感受性を低減するもの、(2)酸化感受性を低減するもの、(3)蛋白質複合体を形成するための結合親和性を変化させるもの、(4)結合親和性を変化させるもの、及び(4)このようなアナログの他の物理化学的もしくは機能的性質を付与又は改変するものである。アナログは天然ペプチド配列以外の配列の各種変異蛋白質を含むことができる。例えば、天然配列(好ましくは分子間接触を形成する領域の外側のポリペプチドの部分)に1又は複数のアミノ酸置換(好ましくは保存アミノ酸置換)を行うことができる。保存アミノ酸置換は親配列の構造的特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば置換アミノ酸は親配列に存在する螺旋を切断する傾向又は親配列を特徴付ける他の型の二次構造を破壊する傾向があってはならない)。当分野で認められているポリペプチド二次及び三次構造の例は各々本明細書に援用するProteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));及びThornton et at.Nature 354:105(1991)に記載されている。
本明細書で使用する20種類の標準アミノ酸とその略語は従来の用法に従う。Immunology−A Synthesis(2nd Edition,E.S.Golub and D.R.Gren,Eds.,Sinauer Associates,Sunderland,Mass.(1991))参照。20種類の標準アミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)、α,α−ジ置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸及び他の非標準アミノ酸等の非天然アミノ酸も本発明のポリペプチドの適切な成分として使用することができる。非標準アミノ酸の例としては、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチメルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、s−N−メチルアルギニン並びに他の同様のアミノ酸及びイミノ酸(例えば4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で使用するポリペプチド表記では、標準用法及び慣例に従い、左側方向がアミノ末端方向であり、右側方向がカルボキシ末端方向である。
医薬産業では鋳型ペプチドに類似の性質をもつ薬剤として非ペプチドアナログが広く使用されている。これら型の非ペプチド化合物を「ペプチドミメティクス」と言う。本明細書に援用するFauchere,J.Adv.Drug Res.15:29(1986);Veber and Freidinger TINS p.392(1985);及びEvans et al.J.Med.Chem.30:1229(1987)。このような化合物は多くの場合にはコンピュータ支援分子モデリングにより開発される。治療薬として有用なペプチドに構造的に類似するペプチドミメティクスを使用して同等の治療又は予防効果を生じることができる。一般に、ペプチドミメティクスはヒト抗体等のパラダイムポリペプチド(即ち所望の生化学的性質又は薬理活性をもつポリペプチド)と構造的に類似しているが、当分野で周知の方法により、1個以上のペプチド結合が場合により−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シス及びトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−及び−CH2SO−から構成される群から選択される結合により置換されている。より安定なペプチドを作製するために、コンセンサス配列の1個以上のアミノ酸を同一型のD−アミノ酸(例えばL−リジンの代わりにD−リジン)で合成置換する方法も使用できる。更に、例えばペプチドを環化する分子内ジスルフィド橋を形成することが可能な内部システインを付加することにより、コンセンサス配列又は実質的に一致するコンセンサス配列変異を含む拘束性ペプチドも当分野で公知の方法により作製することができる(本明細書に援用するRizo and Gierasch Ann.Rev.Biochem.61:387(1992))。
本明細書で使用する「ポリペプチドフラグメント」なる用語はアミノ末端及び/又はカルボキシ末端欠失をもつが、その他のアミノ酸配列は天然配列における対応位置と一致するポリペプチドを意味する。フラグメントは一般に少なくとも5、6、8又は10アミノ酸長、好ましくは少なくとも14アミノ酸長、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長、通常では少なくとも50アミノ酸長、更により好ましくは少なくとも70、80、90、100、150又は200アミノ酸長である。
「IGF1R」、「IGFR1」、「インスリン様成長因子受容体−I」及び「I型インスリン様成長因子受容体」は当分野で周知である。IGF−1Rは任意生物に由来するものでよいが、動物、より好ましくは哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ヒツジ又はイヌ)、最も好ましくはヒトに由来するものが好ましい。典型的なヒトIGF−1R前駆体のヌクレオチド及びアミノ酸配列はGenbankから入手可能である(例えばGene ID 3480又はNM000875)。(例えばアミノ酸710及び711間で)前駆体を開裂すると、αサブユニットとβサブユニットとなり、会合して成熟受容体を形成する。
「免疫グロブリン」は四量体分子である。天然免疫グロブリンにおいて、各四量体は各々1本の軽鎖(約25kDa)と1本の重鎖(約50〜70kDa)をもつ同一の2対のポリペプチド鎖から構成される。各鎖のアミノ末端部分は主に抗原認識に関与する約100〜110アミノ酸以上の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は主にエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。ヒト軽鎖はκ軽鎖とλ軽鎖に分類される。重鎖はμ、δ、γ、α又はεに分類され、夫々抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして規定する。軽鎖及び重鎖内では、可変領域と定常領域は約12アミノ酸以上の「J」領域により相互に結合され、重鎖は更に約10アミノ酸以上の「D」領域を含む。一般に(その開示内容全体を全目的で本明細書に援用する)Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))参照。各軽鎖/重鎖対の可変領域は無傷の免疫グロブリンが2個の結合部位をもつように抗体結合部位を形成する。
免疫グロブリン鎖は3個の超可変領域(別称相補性決定領域ないしCDR)により結合された比較的保存度の高いフレームワーク領域(FR)からなる同一の一般構造を示す。各対の2本の鎖からのCDRは特定エピトープと結合できるようにフレームワーク領域により整列される。N末端からC末端に向かって、軽鎖と重鎖はいずれもFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4ドメインを含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当てはKabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987 and 1991))、又はChothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901 917(1987);Chothia et al.Nature 342:878 883(1989)の定義に従う。
「抗体」とは無傷の免疫グロブリン又は特異的結合に関して無傷の抗体と競合するその抗原結合部分を意味する。抗原結合部分はDNA技術又は無傷の抗体の酵素もしくは化学開裂により作製することができる。抗原結合部分としては特にFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)フラグメント、1本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、並びにポリペプチドに対する特異的抗原結合性を付与するために十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。
本明細書で使用する「抗IGF−1R抗体」なる用語は本明細書に開示するか又は12B1から誘導されるか又は本発明の方法を使用して同定された抗IGF−1R抗体を総称する。
FabフラグメントはVL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される1価フラグメントであり;F(ab’)2フラグメントはヒンジ領域でジスルフィド橋により結合した2個のFabフラグメントからなる2価フラグメントであり;FdフラグメントはVHドメインとCH1ドメインから構成され;Fvフラグメントは抗体の1本のアームのVLドメインとVHドメインから構成され;dAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341:544 546,1989)はVHドメインから構成される。
1本鎖抗体(scFv)は、1本鎖蛋白質としての作製を可能にする合成リンカーを介してVL領域とVH領域を対合させて1価分子を形成する抗体である(Bird et al.,Science 242:423 426,1988及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879 5883,1988)。ダイアボディはVH領域とVL領域を1本のポリペプチド鎖で発現させるが、非常に短いリンカーを使用するため、同一鎖で2領域を対合させることができず、これらの領域は別の鎖の相補性領域と対合し、2個の抗原結合部位を形成する2価の二重特異性抗体である(例えばHolliger,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444 6448,1993、及びPoljak,R.J.,et al.,Structure 2:1121 1123,1994参照)。イムノアドヘジンにするために1個以上のCDRを共有的又は非共有的に分子に組込んでもよい。イムノアドヘジンはより大きいポリペプチド鎖の一部としてCDRを組込んでもよいし、CDRを別のポリペプチド鎖と共有的に結合してもよいし、CDRを非共有的に組込んでもよい。CDRはイムノアドヘジンを特定該当抗原と特異的に結合させることができる。
抗体は1個以上の結合部位をもつことができる。結合部位か2個以上の場合には、結合部位は相互に同一でもよいし、異なっていてもよい。例えば、天然免疫グロブリンは2個の同一の結合部位をもち、1本鎖抗体又はFabフラグメントは1個の結合部位をもち、「二重特異性」又は「二官能性」抗体は2個の異なる結合部位をもつ。
「単離抗体」とは(1)その天然状態でこれに付随する他の天然結合成分を含む天然結合成分に結合しておらず、(2)同一種に由来する他の蛋白質を含まず、(3)別の種に由来する細胞により発現され、又は(4)天然には存在しない抗体である。単離抗体の例としては、IGF−IRを使用してアフィニティー精製された抗IGF−IR抗体、ハイブリドーマ又は他の細胞株によりインビトロ合成された抗IGF−IR抗体、及びトランスジェニックマウスから誘導されたヒト抗IGF−IR抗体が挙げられる。
「ヒト抗体」なる用語はヒト免疫グロブリン配列に由来する1個以上の可変領域及び定常領域をもつ全抗体を包含する。好ましい1態様において、全可変領域及び定常領域はヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全ヒト抗体)。これらの抗体は以下に記載するような各種方法で作製することができる。
ヒト化抗体、関連フラグメント又は抗体結合構造は抗原結合部位又はその周囲に非ヒト由来アミノ酸配列をもつヒト由来免疫グロブリン配列の構造フレームワークから主に構成されるポリペプチドである(相補性決定領域ないしCDR;CDRグラフティングとして知られ、この技術は多少のフレームワーク変異も伴うことが多い。下記実施例参照)。適切な手法は例えばWO91/09967、EP0328404及びQueen et al.Proc Natl Acad Sci 86,10029,Mountain and Adair(1989)Biotechnology and Genetic Engineering Reviews 10,1(1992)に詳細に記載されているが、抗体等の代替ヒト化方法も考えられる。ヒト化抗体の作製方法の例は米国特許第6,054,297号、5,886,152号及び5,877,293号に記載されている。
特に、齧歯類抗体を単独又はコンジュゲートとして男性に反復インビボ投与すると、齧歯類抗体に対する免疫応答、所謂HAMA応答(Human Anti Mouse Antibody:ヒト抗マウス抗体)がレシピエントに発生する。反復投与が必要な場合にはHAMA応答は薬剤の有効性を制限する可能性がある。ポリエチレングリコール等の親水性ポリマーで抗体を化学的に修飾するか又は抗体結合構造をよりヒト様にする遺伝子操作法を使用することにより、抗体の免疫原性を低減することができる。例えば、CEAと結合する齧歯類抗体の可変領域の遺伝子配列をヒトミエローマ蛋白質の可変領域に置換し、組換えキメラ抗体を作製することができる。これらの手法はEP194276、EP0120694、EP0125023、EP0171496、EP0173494及びWO86/01533に詳細に記載されている。あるいは、CEAと結合する齧歯類抗体のCDRの遺伝子配列を単離又は合成し、相同ヒト抗体遺伝子の対応する配列領域に置換し、元の齧歯類抗体の特異性をもつヒト抗体を作製することもできる。これらの手法はEP023940、WO90/07861及びWO91/09967に記載されている。あるいは、齧歯類抗体の可変領域の多数の表面残基を相同ヒト抗体に通常存在する残基に変更し、残基の表面「ベニア」をもち、従ってヒト身体により自己認識される齧歯類抗体を作製することができる。このアプローチはPadlan et.al.(1991)Mol.Immunol.28,489により立証されている。
「中和抗体」ないし「阻害抗体」とは過剰の抗IGF−IR抗体がIGF−IRと結合したIGF−Iの量を少なくとも約20%低減するときに、IGF−IRとIGF−Iの結合を阻害する抗体である。好ましい1態様において、抗体はIGF−IRと結合したIGF−Iの量を少なくとも40%、より好ましくは60%、更により好ましくは80%、又は更により好ましくは85%低減する。結合低減は例えばインビトロ競合結合アッセイで測定するなど、当業者に公知の任意手段により測定することができる。
抗体のフラグメント又はアナログは本明細書の教示に従って当業者が容易に作製することができる。フラグメント又はアナログの好ましいアミノ及びカルボキシ末端は機能的領域の境界付近に存在する。構造的及び機能的領域はヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データを公共又は企業の配列データベースと比較することにより同定することができる。好ましくは、コンピュータ比較法を使用し、既知構造及び/又は機能の他の蛋白質に存在する配列モチーフ又は予想蛋白質立体配座領域を同定する。既知三次元構造に折り畳まれる蛋白質配列の同定方法は公知である。Bowie et al.Science 253:164(1991)。
本明細書で使用する「表面プラズモン共鳴法」なる用語は例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden及びPiscataway,NJ.)を使用してバイオセンサーマトリックス内の蛋白質濃度の変化の検出によりリアルタイム生物特異的相互作用の分析を可能にする光学現象である。詳細については、Jonsson,U.,et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19 26;Jonsson,U.,et al.(1991)Biotechniques 11:620 627;Johnsson,B.,et al.(1995)J.Mol.Recognit.8:125 131;及びJohnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem.198:268 277参照。
「Koffoff」なる用語は抗体が抗体/抗原複合体から解離する解離速度定数を意味する。
「Kd」なる用語は特定抗体−抗原相互作用の解離定数を意味する。
「エピトープ」なる用語は免疫グロブリン又はT細胞受容体と特異的に結合することが可能な任意蛋白質決定基を意味する。エピトープ決定基は通常はアミノ酸や糖側鎖等の化学的に活性な表面分子群から構成され、通常は特定の三次元構造特性と特定の電荷特性をもつ。抗体は解離定数が≦1μM、好ましくは≦100nM、最も好ましくは≦10nMのときに抗原と特異的に結合すると言う。
ポリペプチドに関して「実質的一致」なる用語は、例えばデフォルトギャップ重みを使用してGAP又はBESTFITプログラムにより最適に整列させたときに、2個のペプチド配列が少なくとも75%又は80%の配列一致度、好ましくは少なくとも90%又は95%の配列一致度、更により好ましくは少なくとも98%又は99%配列一致度をもつことを意味する。好ましくは、一致しない残基位置は保存アミノ酸置換だけ相違する。「保存アミノ酸置換」とは類似の化学的性質(例えば電荷又は疎水性)をもつ側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基でアミノ酸残基を置換する置換である。一般に、保存アミノ酸置換は蛋白質の機能的性質を実質的に変化させない。2個以上のアミノ酸配列が保存置換だけ相互に異なる場合には、置換の保存性に合わせて補正するように配列一致度百分率又は類似度百分率を上方に調整することができる。この調整を行う手段は当業者に周知である。例えば本明細書に援用するPearson,Methods Mol.Biol.24:307 31(1994)参照。類似する化学的性質をもつ側鎖を有するアミノ酸群の例としては、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;2)脂肪族−ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン及びヒスチジン;並びに6)硫黄含有側鎖:システイン及びメチオニンが挙げられる。好ましい保存アミノ酸置換基はバリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸及びアスパラギン−グルタミンである。
あるいは、保存置換は本明細書に援用するGonnet et al.,Science 256:1443 45(1992)に開示されているPAM250対数尤度マトリックスの正の値の任意変化である。「中度保存」置換はPAM250対数尤度マトリックスの負以外の値の任意変化である。
本明細書で使用する「ラベル」又は「標識」なる用語は抗体に別の分子を組込むことを意味する。1態様において、ラベルは検出可能なマーカーであり、例えば放射性標識アミノ酸の組込み又は標識アビジン(例えば光学法又は比色法により検出可能な蛍光マーカー又は酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出可能なビオチニル部分をポリペプチドに結合する方法である。別の態様において、ラベル又はマーカーは治療薬、例えば薬剤コンジュゲート又は毒素とすることができる。ポリペプチド及び糖蛋白質の各種標識方法が当分野で公知であり、利用できる。ポリペプチドのラベルの例としては限定されないが、放射性同位体ないし放射性核種(例えば3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光ラベル(例えばFITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素ラベル(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定ポリペプチドエピトープ(例えばロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁性物質(例えばガドリニウムキレート)、毒素(例えば百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン)及びそのアナログ又はホモログが挙げられる。所定態様では、潜在的立体障害を低減するために種々の長さのスペーサーアームによりラベルを結合する。
「患者」なる用語はヒト及び動物対象を含む。
抗体
本発明の抗体はインスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)と特異的に結合する。本発明の好ましい抗体は上記7C10と結合するエピトープとは異なるIGF−1R上のエピトープと結合する。また、本発明の好ましい抗体は抗体依存性細胞傷害性応答(ADCC)をもたない。IGF−1R含有細胞の例としては限定されないが、卵巣、肺、***、結腸直腸、膵臓及び前立腺細胞等が挙げられる。
本発明の抗体としては、タイプIgA、IgG、IgE、IgD、IgM(及びそのサブタイプ)を含む任意アイソタイプの無傷の免疫グロブリンが挙げられる。抗体は好ましくは無傷のIgG、より好ましくはIgG1を含む。免疫グロブリンの軽鎖はκでもλでもよい。軽鎖はκが好ましい。
本発明の抗体としては抗原結合特異性を維持する無傷の抗体の部分、例えばFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、F(v)フラグメント、重鎖単量体又は二量体、軽鎖単量体又は二量体、重鎖1本と軽鎖1本から構成される二量体等が挙げられる。従って、抗原結合フラグメントと上記抗体から誘導される全長二量体又は三量体ポリペプチド自体が有用である。
本発明によると、本発明のモノクローナル抗体のフラグメントはペプシンもしくはパパイン等の酵素消化及び/又は化学的還元によるジスルフィド結合の開裂等の方法により、上記のように作製されたモノクローナル抗体から得ることができる。あるいは、本発明に含まれるモノクローナル抗体はApplied Biosystems,Multiple Peptide Systems等から市販されている自動ペプチド合成器を使用して合成することもできるし、当分野で周知の技術を使用して手動式に作製することもできる。本明細書に援用するGeysen,et al.J.Immunol.Methods 102:259−274(1978)参照。
「キメラ抗体」は組換えDNA技術により作製される抗体であり、免疫グロブリン軽鎖、重鎖又は両方のヒンジ領域と定常領域の全部又は一部を別の動物の免疫グロブリン軽鎖又は重鎖に由来する対応する領域に置換したものである。こうして、親モノクローナル抗体の抗原結合部分を別の種の抗体のバックボーンにグラフトする。EP0239400(Winter et al)に記載の1つのアプローチはある種の相補性決定領域(CDR)を別の種のCDRに置換すること、例えばヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン可変領域ドメインに由来するCDRをマウス可変領域ドメインに由来するCDRで置換することを記載している。これらの改変抗体をその後、ヒト免疫グロブリン定常領域と結合し、抗原に特異的な置換マウスCDR以外はヒトである抗体を形成することができる。抗体のCDR領域をグラフトする方法は例えばRiechmann et al.(1988)Nature 332:323−327及びVerhoeyen et al.(1988)Science 239:1534−1536に記載されている。更に、フレームワーク領域は同一の抗IGF−IR抗体の1個に由来するものでもよいし、ヒト抗体等の1種以上の異なる抗体に由来するものでもよいし、ヒト化抗体に由来するものでもよい。
齧歯類モノクローナル抗体(MAb)をヒト治療剤として直接使用すると、齧歯類由来抗体で治療した有意数の患者でヒト抗齧歯類抗体(「HARA」)(例えば、ヒト抗マウス抗体(「HAMA」))応答が発生した。(Khazaeli,et al.,(1994)Immunother.15:42−52)。少数のマウスアミノ酸配列を含むキメラ抗体はヒトに免疫応答を誘発する問題を解決すると考えられる。
HARA応答の問題を回避するために抗体を改良した結果、「ヒト化抗体」が開発された。ヒト化抗体は組換えDNA技術により作製され、抗原結合に不要ないヒト免疫グロブリン軽鎖又は重鎖のアミノ酸の少なくとも1個を非ヒト哺乳動物免疫グロブリン軽鎖又は重鎖に由来する対応するアミノ酸に置換している。例えば、免疫グロブリンがマウスモノクローナル抗体である場合には、対応するヒト抗体上でこの位置に存在するアミノ酸を使用して抗原結合に必要ない少なくとも1個のアミノ酸を置換する。特定作用理論に結び付ける意図はないが、モノクローナル抗体の「ヒト化」は外来免疫グロブリン分子に対するヒト免疫反応性を阻害すると考えられる。
非限定的な1例として、相補性決定領域(CDR)グラフティングを実施する方法は、標的抗原(例えばIGF−1R)と結合する該当抗体のマウス重鎖及び軽鎖を配列決定し、CDR DNA配列を遺伝子組換えし、これらのアミノ酸配列を部位特異的突然変異誘発により対応するヒトV領域に加えることにより実施することができる。所望アイソタイプのヒト定常領域遺伝子セグメントを加え、「ヒト化」重鎖及び軽鎖遺伝子を哺乳動物細胞で同時に発現させ、可溶性ヒト化抗体を産生させる。典型的な発現細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。キメラ抗体の適切な作製方法は例えばJones et al.(1986)Nature 321:522−525;Riechmann(1988)Nature 332:323−327;Queen et al.(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:10029;及びOrlandi et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3833に記載されている。
Queen et al.(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:10029−10033及びWO90/07861はヒト化抗体の作製について記載している。ヒト及びマウス可変領域フレームワーク領域を最適蛋白質配列相同に選択した。マウス可変領域の三次構造をコンピュータモデル化し、アミノ酸残基とマウスCDRの最適な相互作用を示すように相同ヒトフレームワークに重ねた。この結果、抗原に対する結合親和性を改善した抗体が開発された(一般にCDRグラフトキメラ抗体を作製すると、親和性は低下する)。ヒト化抗体作製の代替アプローチも当分野で公知であり、例えば、Tempest(1991)Biotechnology 9:266−271に記載されている。
「1本鎖抗体」とは、組換えDNA技術により形成され、アミノ酸の組換え配列を介して免疫グロブリン重鎖及び軽鎖フラグメントをFv領域に連結した抗体を意味する。1本鎖抗体の各種作製方法が公知であり、米国特許第4,694,778号;Bird(1988)Science 242:423−442;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;Ward et al.(1989)Nature 334:54454;Skerra et al.(1988)Science 242:1038−1041に記載されている方法が挙げられる。
本明細書に記載するアッセイはIGF−1R発現レベルの測定を伴う。本発明の各種方法を実施する際には多数の方法でIGF−1Rレベルを測定することができる。例えば、遺伝子によりコードされるメッセンジャーRNA(mRNA)の量もしくは合成速度、遺伝子によりコードされる所与アミノ酸配列に対応するポリペプチドの量もしくは合成速度、又は細胞に蓄積した生化学的形態の分子の量もしくは合成速度(例えばポリペプチド、核酸又は小分子等の分子の特定の合成後修飾の量)によりIGF−1Rレベルを表すことができる。これらの測定値は絶対量で表してもよいし、経時的な増加又は減少百分率として表してもよい。IGF−1Rレベルの測定の1例はIGF−1Rの絶対レベルの測定である。これは、例えば組織サンプル中の細胞100個当たりのIGF−1R陽性細胞数として表すことができる。IGF−1Rレベルの別の測定はIGF−1Rレベルの経時的変化の測定である。更に別の測定はサンプル中のIGF−1Rを発現する癌性細胞数の測定である。
対照細胞又はサンプルのレベル(「参照レベル」とも言う)に対してIGF−1R発現レベルを比較又は測定すると有利である。「参照レベル」及び「対照」は本明細書では同義に使用する。広義には、「対照レベル」とは一般に無病の同等の対照細胞で測定された別個の基線レベルを意味する。これは同一個体に由来するものでもよいし、正常個体又は病変サンプルもしくは試験サンプルを採取したと同一の病変を示さない別の個体に由来するものでもよい。本発明に関連して、「参照レベル」なる用語は患者の癌細胞含有サンプル中のIGF−1Rの発現の試験レベルを評価するために使用されるIGF−1Rの発現の「対照レベル」を意味する。例えば、患者の生体サンプル中のIGF−1RレベルがIGF−1Rの参照レベルよりも高い場合には、細胞はIGF−1Rの発現レベルが高いか、過剰発現又は発現しているとみなされる。得られる参照レベルが、参照レベルよりも低いIGF−1Rレベルをもつ第2の患者群とは生存確率の異なる第1の患者群がこのレベルを上回るようなIGF−1Rレベルを正確に提供するのであれば、参照レベルは複数の方法により決定することができる。従って、発現レベルはIGF−1R含有細胞あるいはIGF−1Rを発現する細胞数から独立したIGF−1Rの発現レベルを規定することができる。従って、各患者の参照レベルはIGF−1Rの参照比により規定することができ、参照比は本明細書に記載する参照レベル決定方法のいずれかにより決定することができる。
例えば、対照は所定値とすることができ、各種形態をとることができる。中央値や平均値等の単一カットオフ値とすることができる。「参照レベル」は各患者に個々に等しく適用可能な単一数でもよいし、参照レベルは患者の特定亜集団により異なっていてもよい。従って、例えば、同一の癌でも高齢男子は若年男子と参照レベルが異なり、同一の癌でも女性は男性と参照レベルが異なる。あるいは、「参照レベル」は被験新生細胞の組織と同一組織に由来する非腫瘍性癌細胞におけるIGF−1Rの発現レベルを測定することにより決定することができる。同様に、「参照レベル」は同一患者内の非腫瘍細胞におけるIGF−1Rレベルに対する患者の新生細胞におけるIGF−1Rの所定比でもよい。「参照レベル」はインビトロ培養細胞のIGF−1Rレベルでもよく、腫瘍細胞をシミュレートするように操作することもできるし、参照レベルを正確に決定する発現レベルを生じる他の任意方法で操作することもできる。他方、IGF−1Rレベルが上昇していない群とIGF−1Rレベルが上昇している群等の比較群に基づいて「参照レベル」を設定することもできる。比較群の別の例は特定病変、病態又は症状をもつ群と、病変をもたない群である。従って、例えば、結腸癌を示す患者の「参照レベル」を設定したい場合には、比較群は結腸癌を示す患者と示さない患者から構成することができる。別の比較群は例えば乳癌等の病態の家族歴をもつ群とこのような家族歴をもたない群である。所定値を設定することができ、例えば試験集団を低リスク群、中リスク群及び高リスク群又は4段階又は5段階等の群に等分(不等分)し、4段階又は5段階の最低段階が最低リスク又は最高量のIGF−1Rをもつ個体とし、4段階又は5段階の最高段階が最高リスク又は最低量のIGF−1Rをもつ個体とする。
参照レベルは同一癌をもつ患者集団におけるIGF−1Rレベルの比較により決定することもできる。これは例えばヒストグラム分析により実施することができ、患者全体のコホートをグラフで表し、第1の軸にIGF−1Rレベルを示し、第2の軸にその新生細胞が所与レベルのIGF−1Rを発現するコホートにおける患者数を示す。同一又は類似のIGF−1Rレベルをもつコホートのサブセット集団の同定により2群以上の別個の患者群を測定することができる。その後、これらの別個の群を最良に区別するレベルに基づいて参照レベルの決定を行うことができる。参照レベルは一方をIGF−1Rとする2個以上のマーカーのレベルを表すこともできる。例えば各マーカーのレベルの値の比により2個以上のマーカーを表すことができる。
同様に、明白な健康集団は例えば結腸癌等のIGF−1Rの発現に関連する病態をもつことが分かっている集団とは異なる「正常」範囲をもつ。従って、選択した所定値は個体が該当する分類を考慮することができる。適切な範囲と分類は単なる日常的実験で当業者が選択することができる。「上昇」、「増加」とは選択した対照に対して高いことを意味する。一般に、対照は適切な年齢層の明白な健常個体に基づく。
同様に当然のことながら、本発明の対照は所定値に加え、実験材料と並行して試験する材料のサンプルでもよい。例としては同一対象から同一時点で採取した組織又は細胞が挙げられ、例えば、単一生検の複数の部分、又は対象に由来する単一細胞サンプルの複数の部分が挙げられる。
本発明の抗体は例えば共有結合によって抗体とそのエピトープの結合を妨げないように任意種の分子と抗体の共有結合により修飾された誘導体を含む。適切な誘導体の例としては限定されないが、フコシル化抗体及びフラグメント、グリコシル化抗体及びフラグメント、アセチル化抗体及びフラグメント、ペグ化抗体及びフラグメント、リン酸化抗体及びフラグメント、並びにアミド化抗体及びフラグメントが挙げられる。本発明の抗体とその誘導体自体を公知保護/ブロッキング基、蛋白分解開裂、細胞リガンド又は他の蛋白質との結合等により誘導体化することができる。本発明の所定態様において、抗体の少なくとも1本の重鎖はフコシル化されている。所定態様において、フコシル化はN結合型である。好ましい所定態様において、抗体の少なくとも1本の重鎖はフコシル化N結合型オリゴ糖を含む。
本発明の抗体は本発明の抗体の生物学的性質(例えばIGF−1Rとの結合、結合親和性、アビディティ)を維持する1もしくは多重アミノ酸置換、欠失、付加又は置換を有する変異体を含む。当業者は1もしくは多重アミノ酸置換、欠失、付加又は置換を有する変異体を作製することができる。これらの変異体としては、特に(a)1個以上のアミノ酸を保存又は非保存アミノ酸で置換した変異体、(b)1個以上のアミノ酸をポリペプチドに付加又はポリペプチドから欠失させた変異体、(c)1個以上のアミノ酸が置換基を含む変異体、及び(d)融合パートナー、蛋白質タグ又はポリペプチドに有用な性質を付与することができる他の化学部分(例えば抗体のエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分等)とポリペプチドを融合した変異体が挙げられる。本発明の抗体はある種に由来するアミノ酸残基を保存又は非保存位置で別の種の対応する残基に置換した変異体を含むことができる。別の態様では、非保存位置のアミノ酸残基を保存又は非保存残基に置換する。これらの変異体を獲得する技術としては遺伝子技術(抑圧、欠失、突然変異等)、化学技術及び酵素技術等が当業者に公知である。本発明の抗体は更に抗体フラグメントを含む。「フラグメント」とは、好ましくは少なくとも約40、より好ましくは少なくとも約50まで、より好ましくは少なくとも約60、より好ましくは少なくとも約70、より好ましくは少なくとも約80、より好ましくは少なくとも約90、より好ましくは少なくとも約100アミノ酸長であり、全長配列の所定の生物活性又は免疫活性、例えばIGF−1Rとの結合性を維持するポリペプチド配列を意味する。
本発明の抗体は単独で使用してもよいし、細胞傷害性物質との免疫コンジュゲートとして使用してもよい。所定態様において、前記物質は化学療法剤である。所定態様において、前記物質は限定されないが、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨウ素−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨウ素−123、ヨウ素−125、臭素−77、インジウム−111等の放射性同位体と、ホウ素−10やアクチニド等の核***性核種である。他の態様において、前記物質は毒素又は細胞傷害性薬剤であり、限定されないが、リシン、修飾型シュードモナスエンテロトキシンA、カリケアマイシン、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル等が挙げられる。抗体及び抗体フラグメントとこのような物質の結合方法は文献公知である。
本発明は更に卵巣癌、乳癌、直腸癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌又は脳腫瘍患者の末梢血単核球に由来するもの等の完全ヒト抗体を包含する。このような細胞をミエローマ細胞と融合し、例えばIGF−1Rに対する完全ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を形成することができる。
抗体誘導体
本発明の抗体又は抗体結合部分は誘導体化又は別の分子(例えば別のペプチド又は蛋白質)と結合することができる。一般に、抗体又はその部分はIGF−IR結合が誘導体化又は標識により悪影響を受けないように誘導体化される。従って、本発明の抗体及び抗体部分とは本明細書に記載するヒト抗IGF−IR抗体の無傷の形態と修飾形態の両者を含むものとする。例えば、(化学結合、遺伝子融合、非共有的結合又は他の手段により)本発明の抗体又は抗体部分を1個以上の他の分子部分と機能的に結合することができ、このような部分としては、別の抗体(例えば二重特異性抗体又はダイアボディ)、検出剤、細胞傷害性物質、薬剤、及び/又は抗体もしくは抗体部分と別の分子の結合を媒介することができる蛋白質もしくはペプチド(例えばストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグ)が挙げられる。
ある種の誘導体化抗体は(同一型又は例えば二重特異性抗体を作製するためには異なる型の)2個以上の抗体を架橋することにより作製される。適切な架橋剤としては適当なスペーサーにより分離された2個の明確に反応性の基をもつヘテロ二官能性架橋剤(例えばm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性架橋剤(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)が挙げられる。このようなリンカーはPierce Chemical Company,Rockford,111から市販されている。
1側面では、当業者に公知の技術及び方法を使用して抗体誘導体を作製するために本明細書に記載する核酸分子を使用することができる。
ヒト化抗IGF−IR抗体及びその特性決定
ヒト化抗体はマウス又はラット可変領域及び/又は定常領域をもつ抗体に付随する問題の一部を回避する。このようなマウス又はラット由来配列の存在は抗体の迅速なクリアランスをもたらしたり、抗体に対する免疫応答を患者に発生させる可能性がある。従って、本発明の1態様はヒト化抗IGF−IR抗体を提供する。ヒト化抗体の使用は反復抗体投与が必要であると思われる癌等の慢性及び再発性ヒト病変の治療に実質的な利点を提供すると予想することができる。
ヒト化技術と適切なライブラリーを使用するディスプレイ技術を使用してある程度まで免疫原性低下を達成することができる。当然のことながら、当分野で周知の技術を使用してマウス抗体又は他の種に由来する抗体をヒト化又は霊長類化することができる。例えばWinter and Harris Immunol.Today 14:43 46(1993)及びWright et al.Crit.Reviews in Immunol.12125 168(1992)参照。CH1、CH2、CH3、ヒンジ領域及び/又はフレームワーク領域を対応するヒト配列で置換するように組換えDNA技術により該当抗体を操作することができる(WO92/02190並びに米国特許第5,530,101号、5,585,089号、5,693,761号、5,693,792号、5,714,350号及び5,777,085号参照)。好ましい1態様では、重鎖、軽鎖、又は重鎖と軽鎖の両方の全CDRを維持しながら、CH1、CH2、CH3、ヒンジ領域及び/又はフレームワーク領域を対応するヒト配列で置換することにより、本明細書に記載する抗IGF−IR抗体をヒト化することができる。
ヒト化抗体の一般的な作製方法は(齧歯類宿主に免疫することにより作製した)MAbに由来するCDR配列をヒトIgバックボーンにグラフトし、キメラ遺伝子をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクトし、CHO細胞により分泌される機能的Abを産生させる方法である(Shields,R.L.,et al.(1995)Anti−IgE monoclonal antibodies that inhibit allergen−specific histamine release.Int Arch.Allergy Immunol.107:412−413)。本明細書に記載する方法は齧歯類細胞株、植物、酵母及び原核生物等の宿主細胞内にトランスフェクトしたIg遺伝子又はキメラIg内に遺伝子改変を生じるためにも有用である。(Frigerio L,et al.(2000)Assembly,secretion,and vacuolar delivery of a hybrid immunoglobulin in plants.Plant Physiol.123:1483−1494)。
突然変異抗体
別の態様では、核酸分子、ベクター及び宿主細胞を使用して突然変異抗IGF−IR抗体を作製することができる。抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変領域を突然変異させて抗体の結合性を変化させた後に、IGF−1Rとの結合能を試験し、本明細書に開示する抗体と同一のエピトープと結合するか否かを試験する。例えば、IGF−IRに対する抗体のKdを増減させるため、Koffを増減させるため、又は抗体の結合特異性を変化させるためにCDR領域の1個以上に突然変異を導入してもよい。部位特異的突然変異誘発技術は当分野で周知である。例えばSambrook et al.及びAusubel et al.,前出参照。本発明の1態様では、抗IGF−IR抗体の可変領域の生殖細胞系列に比較して変化していることが分かっているアミノ酸残基に突然変異を導入する。所定態様では、本発明の抗IGF−IR抗体(12B1)の可変領域又はCDR領域の生殖細胞系列に比較して変化していることが分かっているアミノ酸残基に1個以上の突然変異を導入する。
あるいは、本明細書に記載するアミノ酸配列をもつ可変領域又はCDR領域の生殖細胞系列に比較して変化していることが分かっているアミノ酸残基に1個以上の突然変異を導入する。
別の態様では、フレームワーク領域の1個以上で核酸分子を突然変異させる。抗IGF−IR抗体の半減期を延ばすためにフレームワーク領域又は定常領域に突然変異を導入することができる。例えば本明細書に援用するWO00/09560(公開日2000年2月24日)参照。1態様では、1、3又は5カ所の点突然変異と、10カ所以下の点突然変異を導入することができる。抗体の免疫原性を変化させるため、別の分子との共有もしくは非共有的結合部位を提供するため、又は補体結合等の性質を変化させるためにフレームワーク領域又は定常領域に突然変異を導入してもよい。単一の突然変異抗体のフレームワーク領域と定常領域と可変領域の各々に突然変異を導入してもよい。あるいは、単一の突然変異抗体のフレームワーク領域、可変領域又は定常領域の1個のみに突然変異を導入してもよい。
1態様では、突然変異前の抗IGF−IR抗体に比較して突然変異抗IGF−IR抗体のVH又はVL領域に10カ所以下のアミノ酸置換が存在する。より好ましい態様では、突然変異抗IGF−IR抗体のVH又はVL領域に5カ所以下のアミノ酸置換が存在し、より好ましくは3カ所以下のアミノ酸置換が存在する。別の態様では、定常領域に15カ所以下のアミノ酸置換、より好ましくは10カ所以下のアミノ酸置換、更により好ましくは5カ所以下のアミノ酸置換が存在する。
修飾抗体
12b1抗体から誘導されるか又はこれに関連する修飾抗体も提供する。別の態様では、本発明の抗IGF−IR抗体の全部又は一部を別のポリペプチドに連結した融合抗体又はイムノアドヘジンを作製することができる。所定態様では、抗IGF−IR抗体の可変領域のみをポリペプチドに連結する。別の態様では、抗IGF−IR抗体のVH領域を第1のポリペプチドに連結し、VH領域とVL領域が相互作用して抗体結合部位を形成することができるように、第1のポリペプチドと結合する第2のポリペプチドに抗IGF−IR抗体のVL領域を連結する。別の態様では、VH領域とVL領域が相互作用できるようにリンカーによりVH領域をVL領域から分離する(下記1本鎖抗体の項参照)。次にVH−リンカー−VL抗体を該当ポリペプチドに連結する。融合抗体はポリペプチドをIGF−IR発現細胞又は組織に誘導するために有用である。ポリペプチドは毒素、成長因子又は他の調節蛋白質等の治療剤でもよいし、容易に可視化可能な酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)等の診断剤でもよい。更に、2個(以上)の1本鎖抗体を相互に連結した融合抗体も作製できる。これは単一ポリペプチド上に2価又は多価抗体を作製したい場合や、二重特異性抗体を作製したい場合に有用である。
1本鎖抗体(scFv)を作製するためには、VH配列とVL配列を連続する1本鎖抗体として発現させるように、VHとVLをコードするDNAフラグメントを、フレキシブルリンカーをコードする別のフラグメントに機能的に連結し、VL領域とVH領域をフレキシブルリンカーにより結合する(例えばBird et al.(1988)Science 242:423 426;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879 5883;McCafferty et al.,Nature(1990)348:552 554参照)。VHとVLを1個だけ使用する場合には1本鎖抗体は1価とすることができ、2個のVHとVLを使用する場合には2価とすることができ、3個以上のVHとVLを使用する場合には多価とすることができ。
別の態様では、抗IGF−IRをコードする核酸分子を使用して他の修飾抗体を作製することができる。例えば、本明細書の教示に従って標準分子生物学技術を使用して「κ体」(Ill et al.,Protein Eng.10:949 57(1997))、「ミニボディ」(Martin et al.,EMBO J 13:5303 9(1994))、「ダイアボディ」(Holliger et al.,PNAS USA 90:6444 6448(1993))、又は「ジャヌシン」(Traunecker et al.,EMBO J 10:3655 3659(1991)及びTraunecker et al.“Janusin:new molecular design for bispecific reagents”Int.J Cancer Suppl.7:51 52(1992))を作製することができる。
第1の結合領域を介してIGF−IRと特異的に結合し、第2の結合領域を介して第2の分子と特異的に結合する二重特異性抗体を作製することができる。二重特異性抗体は組換え分子生物学技術により作製することもできるし、物理的に結合してもよい。更に、IGF−IRと別の分子に特異的に結合する2個以上のVHとVLを含む1本鎖抗体を作製することもできる。このような二重特異性抗体は周知技術を使用して作製することができ、例えば、(i)及び(ii)については例えばFanger et al.Immunol Methods 4:72 81(1994)及びWright and Harris,前出を参照し、(iii)については例えばTraunecker et al.Int.J.Cancer(Suppl.)7:51 52(1992)を参照されたい。好ましい1態様において、二重特異性抗体はIGF−IRと癌又は腫瘍細胞上に高レベルで発現される別の分子(例えばerbB2受容体、VEGF、CD20又はEGF−R)とに結合する。
別の態様では、アミノ酸配列を配列番号1〜8で表し、核酸配列を配列番号9〜16で表す可変領域の1個以上又はCDR領域の1個以上を使用して修飾抗体を作製する。
標識抗体
別の型の誘導体化抗体は標識抗体である。本発明の抗体又は抗体部分を誘導体化することができる有用な検出剤としては上記に挙げた各種化合物が挙げられる。本明細書の別の箇所に記載するように、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ等の検出に有用な酵素で抗体を標識してもよい。抗体を検出可能な酵素で標識する場合には、酵素が識別可能な反応生成物を生成するために使用する他の試薬を加えることにより検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合には、過酸化水素とジアミノベンジジンを加えると、着色反応生成物が生じ、検出可能である。抗体をビオチンで標識し、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接測定により検出してもよい。下記のようにガドリニウム等の磁性物質で抗体を標識してもよい。二次受容体により認識される所定ポリペプチドエピトープ(例えばロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合領域、エピトープタグ)で抗体を標識してもよい。所定態様では、潜在的な立体障害を低減するために各種長さのスペーサーアームによりラベルを結合する。
放射性標識アミノ酸で抗IGF−IR抗体を標識してもよい。放射性標識は診断目的にも治療目的にも使用できる。
ポリエチレングリコール(PEG)、メチルもしくはエチル基、又は糖鎖基等の化学基で抗IGF−IR抗体を誘導体化してもよい。これらの基は抗体の生物学的特性を改善するため、例えば半減期を延長するため又は組織結合を増加するために有用であると思われる。
核酸、ベクター、宿主細胞及び抗体の組換え作製方法
本発明は更に本発明の抗IGF−1R抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸を含む。本明細書で使用する「核酸」又は「核酸分子」とは1本鎖又は2本鎖の任意DNA又はRNA分子を意味し、1本鎖の場合には直鎖又は環状のその相補的配列の分子である。核酸分子について記載する際には、本明細書では5’→3’方向に配列を記載する標準慣例に従って特定核酸分子の配列又は構造を記載することができる。本発明の所定態様において、核酸は「単離」されている。この用語をDNAに適用する場合には、起源である生物の天然ゲノムですぐに隣接する配列から分離されたDNA分子を意味する。例えば、「単離核酸」はプラスミドやウイルスベクター等のベクターに挿入されるか又は原核細胞もしくは真核細胞もしくは宿主生物のゲノムDNAに組込まれたDNA分子を含むことができる。RNAに適用する場合には、「単離核酸」なる用語は主に上記に定義したような単離DNA分子によりコードされるRNA分子を意味する。あるいは、この用語はその天然状態(即ち細胞又は組織中)で結合している他の核酸から十分に分離されたRNA分子を意味する。単離核酸(DNA又はRNA)は更に生物学的又は合成手段により直接作製され、その作製中に存在する他の成分から分離された分子を意味する場合もある。
本発明の核酸は本発明の核酸のフラグメントも含む。「フラグメント」とは好ましくは少なくとも約10核酸長、より好ましくは約40核酸長、最も好ましくは約100核酸長の核酸配列を意味する。「フラグメント」とは、1箇所以上の欠失、挿入又は置換を含む少なくとも約100個の連続するヌクレオチドの配列を意味する場合もある。「フラグメント」とは更に遺伝子の完全コーディング配列を意味する場合もあり、5’及び3’非翻訳領域を含む場合もある。
コードされる抗体軽鎖は好ましくは配列番号1、2又は3のアミノ酸配列を含む。コードされる抗体重鎖は好ましくは配列番号4、5又は6のアミノ酸配列を含む。
本発明の所定態様において、抗体の重鎖は配列番号16:
本発明の所定態様において、IGF−1R抗体の軽鎖は配列番号15:
所定態様において、本発明は本発明の抗体の重鎖と軽鎖の両者をコードする核酸を提供する。例えば、本発明の核酸は配列番号1、2又は3のアミノ酸配列をコードする核酸配列と、配列番号4、5又は6のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むことができる。
本発明の核酸は本発明の核酸に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約98%の相同度をもつ核酸を含む。特定配列に関して「類似度百分率」、「一致度百分率」及び「相同度百分率」なる用語はUniversity of Wisconsin GCGソフトウェアプログラムに記載されているように使用される。本発明の核酸は更に相補的核酸を含む。場合により、整列させたときに、配列は完全に相補的になる(ミスマッチがない)。他の例では、配列に約20%までのミスマッチが存在していてもよい。
本発明は更に、本明細書に記載する軽鎖(VL)の可変領域をコードする核酸分子に加え、本明細書に記載するVLをコードするアミノ酸配列の1種、特に配列番号1、2又は3の1種のアミノ酸配列を含むVLと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%一致するアミノ酸配列も提供する。本発明は更に、配列番号9、10又は11の1種の核酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%一致する核酸配列も提供する。別の態様において、VLをコードする核酸分子は高ストリンジェント条件下で上記のようなVLをコードする核酸配列とハイブリダイズするものである。
本発明は更に、本明細書に記載する重鎖(VH)の可変領域をコードする核酸分子に加え、本明細書に記載するVHをコードするアミノ酸配列の1種、特に配列番号4、5又は6の1種のアミノ酸配列を含むVHと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%一致するアミノ酸配列も提供する。本発明は更に、配列番号12、13又は14の1種の核酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%一致する核酸配列も提供する。別の態様において、VHをコードする核酸分子は高ストリンジェント条件下で上記のようなVHをコードする核酸配列とハイブリダイズするものである。
「選択的にハイブリダイズする」なる用語は本明細書では検出可能且つ特異的に結合することを意味する。本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びそのフラグメントは非特異的核酸との検出可能な結合の感知可能な量を最小限にするハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で核酸鎖と選択的にハイブリダイズする。当分野で公知の本明細書に記載する選択ハイブリダイゼーション条件を達成するためには「高ストリンジェンシー」又は「高ストリンジェント」条件を使用することができる。「高ストリンジェンシー」又は「高ストリンジェント」条件の1例はポリヌクレオチドを別のポリヌクレオチドと共にインキュベートし、6×SSPE又はSSC、50%ホルムアミド、5×デンハルト試薬、0.5% SDS、100μg/ml変性断片化サケ***DNAのハイブリダイゼーション緩衝液中で42℃のハイブリダイゼーション温度にて12〜16時間後、1×SSC、0.5% SDSの洗浄用緩衝液を使用して55℃で2回洗浄することにより一方のポリヌクレオチドを膜等の固体表面に結合する方法である。Sambrook et al.,前出,pp.9.50 9.55も参照。
抗IGF−IR抗体の完全な重鎖及び軽鎖のいずれかもしくは両方又はその可変領域をコードする核酸分子は抗IGF−IR抗体を産生する任意起源から得ることができる。抗体をコードするmRNAの単離方法は当分野で周知である。例えばSambrook et al.参照。抗体遺伝子のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はcDNAクローニング用のcDNAを作製するためにmRNAを使用することができる。本発明の1態様において、核酸分子は上記のように抗IGF−IR抗体を発現するハイブリドーマ、好ましくはXENOMOUSE(登録商標)等のヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニック動物細胞、非ヒトマウストランスジェニック動物又は非ヒト非マウストランスジェニック動物をその融合パートナーの一方とするハイブリドーマから得られる。別の態様において、ハイブリドーマは例えばヒト化抗体に使用することができる非ヒト非トランスジェニック動物から誘導される。
重鎖の可変領域又はその抗原結合領域をコードする核酸分子を重鎖の定常領域と融合することにより、本明細書に開示する抗IGF−IR抗体の完全重鎖をコードする核酸分子、例えば配列番号16を構築することができる。同様に、軽鎖の可変領域又はその抗原結合領域をコードする核酸分子を軽鎖の定常領域と融合することにより、本発明の抗IGF−IR抗体の軽鎖をコードする核酸分子、例えば配列番号15を構築することができる。VHセグメントがベクター内で重鎖定常領域(CH)セグメントと機能的に連結され、VLセグメントがベクター内で軽鎖定常領域(CL)セグメントと機能的に連結されるように、夫々既に重鎖定常領域と軽鎖定常領域をコードする発現ベクターに挿入することにより、VH及びVL鎖をコードする核酸分子を全長抗体遺伝子に変換することができる。あるいは、標準分子生物学技術を使用してVH鎖をコードする核酸分子を、CH鎖をコードする核酸分子と結合(例えばライゲーション)することにより、VH又はVL鎖をコードする核酸分子を全長抗体遺伝子に変換する。VL鎖とCL鎖をコードする核酸分子を使用しても同様の結果が得られる。ヒト重鎖及び軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知である。例えばKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.,NIH Publ.No.91 3242,1991参照。その後、全長重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸分子を導入した細胞からこれらの分子を発現させ、抗IGF−IR抗体を単離することができる。
別の態様では、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現し、IGF−IR抗原で免疫された非ヒト非マウス動物から抗IGF−IR抗体の重鎖もしくはその抗原結合領域又は抗IGF−IR抗体の軽鎖もしくはその抗原結合領域をコードする核酸分子を単離することができる。換言するならば、抗IGF−IR抗体を産生する非トランスジェニック動物又はヒト患者に由来する抗IGF−IR抗体産生細胞から核酸分子を単離することができる。抗IGF−IR抗体産生細胞からmRNAを単離する方法は、標準技術により単離し、クローニングし、及び/又はPCR及びライブラリー構築技術を使用して増幅し、標準プロトコルを使用してスクリーニングし、抗IGF−IR重鎖及び軽鎖をコードする核酸分子を得ることができる。
核酸分子は以下のように大量の抗IGF−IR抗体を組換え発現させるために使用することができる。核酸分子は以下に詳述するように、キメラ抗体、1本鎖抗体、イムノアドヘジン、ダイアボディ、突然変異抗体及び抗体誘導体を作製するために使用することもできる。核酸分子が非ヒト非トランスジェニック動物に由来する場合には、同じく以下に記載するように核酸分子を抗体ヒト化に使用することができる。
別の態様では、本発明の核酸分子を特異抗体配列のプローブ又はPCRプライマーとして使用することができる。例えば、核酸分子プローブを診断法で使用してもよいし、特に抗IGF−IR抗体の可変領域の作製用の核酸配列を単離するために使用することができるDNAの領域を増幅するために核酸分子PCRプライマーを使用してもよい。好ましい1態様において、核酸分子はオリゴヌクレオチドである。より好ましい態様において、オリゴヌクレオチドは該当抗体の重鎖及び軽鎖の高度可変領域に由来する。更に好ましい態様において、オリゴヌクレオチドはCDRの1個以上の全部又は一部をコードする。
本発明の核酸をベクターにクローニングすることができる。「ベクター」とは結合した配列又はエレメントの複製を生じるように別の遺伝子配列又はエレメント(DNA又はRNA)を挿入することができるプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工染色体(BAC,YAC)又はウイルス等のレプリコンである。「レプリコン」とは主にそれ自体の制御下で複製可能な任意遺伝子エレメントであり、例えばプラスミド、コスミド、バクミド、ファージ、人工染色体(BAC,YAC)又はウイルスである。レプリコンはRNAでもDNAでもよく、1本鎖でも2本鎖でもよい。所定態様において、発現ベクターは構成的に活性なプロモーターセグメント(限定されないが、CMV、SV40、延長因子又はLTR配列)又は誘導プロモーター配列(例えばステロイド誘導pINDベクター(Invitrogen))を含み、核酸の発現を調節することができる。発現ベクターはトランスフェクションにより細胞に導入することができる。
抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組換え発現ベクターは宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列をもつ。当業者に自明の通り、調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は形質転換する宿主細胞の選択、所望の蛋白質発現レベル等の因子により異なる。哺乳動物宿主細胞発現に好ましい調節配列としては哺乳動物細胞に高レベルの蛋白質発現を誘導するウイルスエレメントが挙げられ、例えばレトロウイルスLTRに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)(例えばCMVプロモーター/エンハンサー)、サルウイルス40(SV40)(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ及び強力哺乳動物プロモーター(例えば天然免疫グロブリン及びアクチンプロモーター)が挙げられる。ウイルス調節因子とその配列に関する詳細な記載については、例えば米国特許第5,168,062号(Stinski)、米国特許第4,510,245号(Bell et al.)及び米国特許第4,968,615号(Schaffner et al.)参照。
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加え、本発明の組換え発現ベクターは宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)や、選択マーカー遺伝子等の他の配列を含むことができる。選択マーカー遺伝子はベクターを導入した宿主細胞の選択を容易にする(例えばいずれもAxel et al.の米国特許第4,399,216号、4,634,665号及び5,179,017号参照)。例えば、一般に選択マーカー遺伝子はベクターを導入した宿主細胞にG418、ハイグロマイシン又はメトトレキセート等の薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては(メトトレキセート選択/増幅したdhfr−宿主細胞用として)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子と(G418選択用として)neo遺伝子が挙げられる。
本発明の抗体又は抗体部分を発現させるためには、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に機能的に連結されるように、上記のように得られた部分又は全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入する。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソーム等が挙げられる。ベクター内の転写及び翻訳制御配列が抗体遺伝子の転写と翻訳を調節するその所期機能を発揮するように、抗体遺伝子をベクターにライゲーションする。発現ベクターと発現制御配列は使用する発現宿主細胞と適合可能となるように選択される。抗体軽鎖遺伝子と抗体重鎖遺伝子は別々のベクターに挿入することができる。好ましい1態様では、両方の遺伝子を同一の発現ベクターに挿入する。標準方法(例えば抗体遺伝子フラグメントとベクターの相補的制限部位のライゲーション、又は制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)により抗体遺伝子を発現ベクターに挿入する。
本明細書で使用する「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)なる用語は組換え発現ベクターが導入された細胞を意味する。当然のことながら、このような用語は特定対象細胞のみならず、このような細胞の子孫も意味する。突然変異又は環境の影響により後世代に所定の変異が生じる場合があるので、このような子孫は実際には親細胞と同一でない場合もあるが、やはり本明細書で使用する「宿主細胞」なる用語の範囲に含む。
「機能的に連結された」配列は該当遺伝子に隣接する発現制御配列と、該当遺伝子を制御するためにトランス又は所定の距離で作用する発現制御配列の両方を含む。本明細書で使用する「発現制御配列」なる用語はこれらの配列がライゲーションされるコーディング配列の発現とプロセシングを行うために必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;スプライシング及びポリアデニル化シグナル等の効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を強化する配列(即ちコザックコンセンサス配列);蛋白質安定性を強化する配列;並びに所望により、蛋白質分泌を強化する配列が挙げられる。このような制御配列の種類は宿主生物により異なり、原核生物ではこのような制御配列としては一般にプロモーター、リボソーム結合部位及び転写終結配列が挙げられ、真核生物では、一般にこのような制御配列としてはプロモーターと転写終結配列が挙げられる。「制御配列」なる用語は最低限でその存在が発現とプロセシングに不可欠の全成分を含むものとし、更にその存在が有利である他の成分、例えばリーダー配列や融合パートナー配列を含む場合もある。
適切なベクターは機能的に完全なヒトCH及びCL免疫グロブリン配列をコードするものであり、上記のように任意VH又はVL配列を容易に挿入及び発現できるように適切な制限部位を操作されている。このようなベクターでは、通常は挿入されたJ領域のスプライスドナー部位とヒトC領域の前のスプライスアクセプター部位の間でスプライシングが生じるが、更にヒトCHエキソン内に存在するスプライス領域でも生じる。コーディング領域の下流の天然染色体部位でポリアデニル化と転写終結が生じる。組換え発現ベクターは宿主細胞からの抗体鎖の分泌を助長するシグナルペプチドをコードすることもできる。シグナルペプチドを抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレーム連結するように抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドでも異種シグナルペプチド(即ち非免疫グロブリン蛋白質に由来するシグナルペプチド)でもよい。
IGF−1Rに対する抗体の作製方法
本発明は更にIGF−1Rと特異的に結合するモノクローナル抗体の作製方法を提供する。蛋白質を単離精製するための各種周知技術を使用して細胞又は組換えシステムからIGF−1Rを精製することができる。例えば、限定されないが、蛋白質をSDS−PAGEゲル上に泳動させ、蛋白質を膜にブロットすることにより蛋白質の見掛けの分子量に基づいてIGF−1Rを単離することができる。その後、IGF−1Rに対応する適切なサイズバンドを膜から切断し、直接又は先に蛋白質を膜から抽出もしくは溶出させることにより動物で免疫原として使用することができる。代替例として、サイズ排除クロマトグラフィーを単独又は他の単離精製手段と併用して蛋白質を単離することもできる。他の精製手段はZola,MONOCLONAL ANTIBODIES:PREPARATION AND USE OF MONOCLONAL ANTIBODIES AND ENGINEERED ANTIBODY DERIVATIVES(BASICS:FROM BACKGROUND TO BENCH)Springer−Verlag Ltd.,New York,2000;BASIC METHODS IN ANTIBODY PRODUCTION AND CHARACTERIZATION,Chapter 11,“Antibody Purification Methods,”Howard and Bethell,Eds.,CRC Press,2000;ANTIBODY ENGINEERING(SPRINGER LAB MANUAL.),Kontermann and Dubel,Eds.,Springer−Verlag,2001等の標準教科書に記載されている。
IGF−1Rに対する抗体を作製するための1つのストラテジーはIGF−1Rを動物に免疫する方法である。所定態様では、IGF−1Rを動物に免疫する。こうして免疫した動物は蛋白質に対する抗体を産生する。モノクローナル抗体を作製するための標準方法は公知であり、限定されないが、ハイブリドーマ法(Kohler & Milstein,(1975)Nature 256:495−497参照);トリオーマ法;ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al.(1983)Immunol.Today 4:72参照)及びヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBVハイブリドーマ法(Cole,et al.in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,1985,pp.77−96参照)が挙げられる。
本発明の抗体はインビボでもインビトロでも作製することができる。インビボ抗体作製では、一般にIGF−1R又はIGF−1Rの免疫原性部分を動物に免疫する。一般に抗原にアジュバントを加え、免疫原性を促進する。アジュバントは免疫に使用する種により異なる。アジュバントの例としては限定されないが、フロイント完全アジュバント(「FCA」)、フロイント不完全アジュバント(「FIA」)、無機物ゲル(例えば水酸化アルミニウム)、表面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン)、ペプチド、油エマルション、キーホールリンペットヘモシアニン(「KLH」)、ジニトロフェノール(「DNP」)、及び潜在的に有用なヒトアジュバント(例えばカルメット・ゲラン桿菌(「BCG」)及びコリネバクテリウム・パルバム)が挙げられる。このようなアジュバントも当分野で周知である。
免疫は周知手順を使用して実施することができる。用量と免疫レジメンは免疫する哺乳動物種、その免疫状態、体重及び/又は表面積計算値等により異なる。一般に、免疫した哺乳動物から血清をサンプリングし、例えば下記のような適切なスクリーニングアッセイを使用して抗IGF−1R抗体についてアッセイする。
当分野で公知の各種技術を使用してIGF−1Rに対する抗体をインビトロで作製することもできる。例えば、限定されないが、インビトロプライミングしたヒト脾細胞を使用してIGF−1Rに対する完全ヒトモノクローナル抗体を作製することができる(Boerner et al.(1991)J.Immunol.147:86−95)。
(抗体産生B細胞を含む)脾細胞をミエローマ株等の不死細胞株と融合することにより、免疫した動物からの脾細胞を不死化することができる。一般に、ミエローマ細胞株は脾細胞ドナーと同一種に由来する。1態様において、不死細胞株はヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する培地(「HAT培地」)に感受性である。所定態様において、ミエローマ細胞はエプスタイン・バール・ウイルス(EBV)感染に陰性である。好ましい態様において、ミエローマ細胞はHAT感受性、EBV陰性及びIg発現陰性である。任意の適切なミエローマを使用することができる。マウスミエローマ細胞株(例えばP3−NS1/1−Ag4−1,P3−x63−Ag8.653又はSp2/O−Ag14ミエローマ株)を使用してマウスハイブリドーマを作製することができる。これらのマウスミエローマ株はATCCから入手可能である。ポリエチレングリコール(「PEG」)、好ましくは1500分子量ポリエチレングリコール(「PEG 1500」)を使用してこれらのミエローマ細胞をドナー脾細胞と融合する。未融合のミエローマ細胞と非生産的に融合したミエローマ細胞を死滅させるHAT培地中で融合から得られたハイブリドーマ細胞を選択する。未融合の脾細胞は短時間の培養で死滅する。所定態様において、ミエローマ細胞は免疫グロブリン遺伝子を発現しない。
例えば以下に記載するもの等のスクリーニングアッセイにより検出される所望の抗体を産生するハイブリドーマを使用し、培養液又は動物中に抗体を産生させることができる。例えば、ハイブリドーマ細胞がモノクローナル抗体を培地に分泌するために十分な条件と時間にわたってハイブリドーマ細胞を栄養培地で培養することができる。これらの技術と培地は当業者に周知である。あるいは、非免疫動物の腹腔にハイブリドーマ細胞を注入してもよい。細胞は腹腔内で増殖し、抗体を分泌し、抗体は腹水として蓄積する。高濃度のモノクローナル抗体源として腹水を腹腔からシリンジで採取することができる。
ヒト抗体の別の非限定的な作製方法は米国特許第5,789,650号に記載されており、それ自体の同種免疫グロブリン遺伝子を不活性化して別の種(例えばヒト)の抗体を産生するトランスジェニック哺乳動物を記載している。異種抗体の遺伝子はヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされる。再構成していない免疫グロブリンをコードする領域を含むトランスジーンを非ヒト動物に導入する。得られたトランスジェニック動物はトランスジェニック免疫グロブリン配列を機能的に再構成し、ヒト免疫グロブリン遺伝子によりコードされる各種アイソタイプの抗体のレパートリーを産生することができる。次にトランスジェニック動物に由来するB細胞を不死性細胞株(例えばミエローマ細胞)との融合を含む各種方法のいずれかにより不死化することができる。
代表的な1態様はヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部又は全部を含む非ヒト動物にIGF−IR抗原を免疫することを想定する。代表的な非ヒト動物はヒト免疫グロブリン遺伝子座の大きなフラグメントを含み、マウス抗体産生能を欠損する遺伝子組換えマウス系列であるXENOMOUSE(登録商標)である。例えばGreen et al.Nature Genetics 7:13 21(1994)並びに米国特許第5,916,771号、5,939,598号、5,985,615号、5,998,209号、6,075,181号、6,091,001号、6,114,598号及び6,130,364号参照。WO91/10741(公開日1991年7月25日)、WO94/02602(公開日1994年2月3日)、WO96/34096及びWO96/33735(いずれも公開日1996年10月31日)、WO98/16654(公開日1998年4月23日)、WO98/24893(公開日1998年6月11日)、WO98/50433(公開日1998年11月12日)、WO99/45031(公開日1999年9月10日)、WO99/53049(公開日1999年10月21日)、WO00 09560(公開日2000年2月24日)及びWO00/037504(公開日2000年6月29日)も参照。XENOMOUSE(登録商標)は完全ヒト抗体の成人様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトMabを生じる。第2世代XENOMOUSE(登録商標)はヒト重鎖遺伝子座とκ軽鎖遺伝子座のメガベースサイズの生殖細胞系列構造YACフラグメントの導入によりヒト抗体レパートリーの約80%を含む。その開示内容を本明細書に援用するMendez et al.Nature Genetics 15:146 156(1997),Green and Jakobovits J.Exp.Med.188:483 495(1998)参照。これらの特許に開示されている方法は米国特許第5,994,619号に記載されているように改変することができる。好ましい1態様において、非ヒト動物はラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ又はウマとすることができる。
あるいは、例えば、本発明の抗体は「レパートリークローニング」(Persson et al.(1991)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 88:2432−2436;及びHuang and Stollar(1991)J.Immunol.Methods 141:227−236)により作製することができる。更に、米国特許第5,798,230号はエプスタイン・バール・ウイルス核抗原2(EBNA2)を発現するエプスタイン・バール・ウイルスの感染により不死化したヒトB抗体産生B細胞からヒトモノクローナル抗体を作製する方法を記載している。その後、不死化に必要なEBNA2を不活性化すると、抗体力価が上昇する。
別の態様では、末梢血単核球(「PBMC」)のインビトロ免疫によりIGF−1Rに対する抗体を形成する。これは例えば文献に記載の方法の使用等の当分野で公知の任意手段により実施することができる (Zafiropoulos et al.(1997)J.Immunological Methods 200:181−190)。
本発明の抗体産生細胞の作製方法は更に宿主細胞の保存ミスマッチ修復(MMR)プロセスを利用することにより超突然変異性抗体産生細胞を開発する方法を含む。このような遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子を細胞又はトランスジェニック動物に導入すると、DNA修復効力を低下させることにより自然突然変異率を増加し、従って、細胞又は動物を超変異性にすることができる。限定されないが、ハイブリドーマ;Ig軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子をトランスフェクトした哺乳動物細胞;1本鎖抗体をコードする遺伝子をトランスフェクトした哺乳動物細胞;Ig遺伝子をトランスフェクトした真核細胞等の抗体産生細胞におけるMMRをブロックすると、これらの細胞内の突然変異率を増加することができ、抗体産生を強化したクローン、抗原結合の増加等の生化学的性質を強化した遺伝子改変抗体を含む細胞、実質的に本発明の抗体のみを含む抗体を産生する細胞、及び/又はIGF−1R結合競合物質を実質的に含まない細胞が得られる。MMR法(別称ミスマッチプルーフリーディング)は細菌から哺乳動物細胞に至る細胞中で蛋白質複合体により実施される。MMR遺伝子はこのようなミスマッチ修復複合体の蛋白質の1つをコードする遺伝子である。特定の作用機序理論に結び付ける意図はないが、MMR複合体はヌクレオチド塩基の非相補的対合に起因するDNA螺旋の歪みを検出すると考えられる。新たなDNA鎖上の非相補的塩基を切り出し、切り出した塩基を前のDNA鎖に相補的な適切な塩基で置換する。こうして、細胞はDNA複製ミスの結果として生じる多数の突然変異を排除する。
ドミナントネガティブ対立遺伝子は同一細胞に野生型遺伝子が存在する場合でもMMR欠損表現型をもたらす。MMR遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子の1例はコドン134に短縮突然変異をもつヒト遺伝子hPMS2−134である。突然変異の結果、この遺伝子の産物は134番目のアミノ酸の位置で異常に終結し、その結果、N末端133アミノ酸を含む短縮ポリペプチドとなる。このような突然変異の結果、DNA複製後に細胞に蓄積する突然変異率が増加する。ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子の結果、野生型対立遺伝子の存在下でもミスマッチ修復活性が損なわれる。本発明ではこのような作用を生じる任意対立遺伝子を使用することができる。MMR遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子はヒト、動物、酵母、細菌又は他の生物の細胞から得ることができる。このような対立遺伝子は欠損MMR活性について細胞をスクリーニングすることにより同定することができる。癌をもつ動物又はヒトの細胞を欠損ミスマッチ修復についてスクリーニングすることができる。結腸癌患者に由来する細胞は特に有用であると思われる。MMR蛋白質をコードする任意細胞に由来するゲノムDNA、cDNA又はmRNAを野生型配列からの変異について分析することができる。MMR遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子は例えばhPMS2−134対立遺伝子又は他のMMR遺伝子の変異体を作製することにより人工的に作製することもできる。各種部位特異的突然変異技術を使用することができる。天然又は人工に関係なく、超突然変異性細胞又は動物の作製用としてのこのような対立遺伝子の適性は1個以上の野生型対立以上の存在下で対立遺伝子に起因するミスマッチ修復活性を試験し、ドミナントネガティブ対立遺伝子であるか否かを判定することにより評価することができる。ミスマッチ修復蛋白質と、マウスPMS2、ヒトPMS2、ヒトPMS1、ヒトMSH2、ヒトMLH1及びヒトPMS2−134をコードする核酸配列の例は、その開示内容全体を本明細書に援用する公開特許出願第US2005−0232919号(シリアル番号11/056,776、出願日2/11/2005)に開示されている。
ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子を導入した細胞は超突然変異性になる。これは、このような細胞又は動物の自然突然変異率がこのような対立遺伝子をもたない細胞又は動物に比較して上昇していることを意味する。自然突然変異率の上昇の程度は正常細胞又は動物の少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍又は1000倍とすることができる。自然突然変異率をMMR欠損自体の10〜100倍に増加するために、限定されないが、スルホン酸メタン、スルホン酸ジメチル、06−メチルベンザジン、MNU、ENU等の化学的突然変異原をMMR欠損細胞で使用することができる。
従って、ドミナントネガティブ形のMMR蛋白質をコードするポヌクレオチドを細胞に導入する。好ましくは、細胞は抗IGF−1R抗体を産生する。所定態様において、細胞は配列番号4、5又は6のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号1、2又は3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗体を産生する。好ましい所定態様において、細胞は配列番号7のヌクレオチド配列及び/又は配列番号8のヌクレオチド配列を含む核酸を含む。ドミナントネガティブMMR遺伝子はMMR複合体の一部である蛋白質をコードする任意のドミナントネガティブ対立遺伝子、例えば、PMS2、PMS1、MLH1又はMSH2とすることができる。ドミナントネガティブ対立遺伝子は天然に存在するものでもよいし、実験室で作製したものでもよい。ポリヌクレオチドはゲノムDNA、cDNA、RNA又は化学的に合成されたポリヌクレオチドの形態とすることができる。
ポリヌクレオチドは構成的に活性なプロモーターセグメント(限定されないが、例えばCMV、SV40、延長因子又はLTR配列)又は誘導プロモーター配列を含む発現ベクター(例えばステロイド誘導pINDベクター(Invitrogen))にクローニングすることができ、ドミナントネガティブMMR遺伝子の発現を調節することができる。ポリヌクレオチドはトランスフェクションにより細胞に導入することができる。
本発明の別の側面によると、免疫グロブリン(Ig)遺伝子、1組のIg遺伝子又はIg遺伝子の全部もしくは部分を含むキメラ遺伝子をMMR欠損細胞宿主にトランスフェクトすることができ、細胞を増殖させ、新規表現型及び/又は遺伝子型をもつクローンについてスクリーニングする。MMR欠損細胞はヒト、霊長類、哺乳動物、齧歯類、植物、酵母又は原核生物界に由来することができる。新規表現型又は遺伝子型をもつ細胞のIgをコードする遺伝子を夫々のクローンから単離し、遺伝的に安定な細胞(即ち正常MMRをもつ細胞)に導入すると、安定的にIgを産生するクローンが得られる。Ig遺伝子の単離方法は当分野で公知の任意方法とすることができる。Igをコードする単離ポリヌクレオチドの導入は当分野で公知の任意方法を使用して実施することもでき、限定されないが、Igをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターのトランスフェクションが挙げられる。Ig遺伝子、1組のIg遺伝子又はIg遺伝子の全部もしくは部分を含むキメラ遺伝子をMMR欠損細胞宿主にトランスフェクトする代わりに、ドミナントネガティブミスマッチ修復遺伝子をコードする遺伝子と同時にこのようなIg遺伝子を遺伝的に安定な細胞にトランスフェクトし、細胞を超突然変異性にすることもできる。
トランスフェクションはポリヌクレオチドを細胞に導入する任意方法である。トランスフェクション法は例えば遺伝子治療用ベクターを使用して生きた動物で実施してもよいし、例えば1個以上の培養単離細胞の懸濁液を使用してインビトロで実施してもよい。細胞は任意型の真核細胞とすることができ、例えばヒト又は他の霊長類、哺乳動物又は他の動物、無脊椎動物及び単細胞生物(例えば原生動物、酵母又は細菌)から単離された細胞が挙げられる。
一般に、トランスフェクションは細胞懸濁液又はシングルセルを使用して実施されるが、トランスフェクトした細胞を増殖及び利用できるように治療細胞又は組織の十分なフラクションがポリヌクレオチドを組込む限り、他の方法も適用できる。ポリヌクレオチドの蛋白質産物は細胞で一過的又は安定的に発現させることができる。トランスフェクション技術は周知である。ポリヌクレオチドを導入するために利用可能な技術としては限定されないが、エレクトロポレーション、形質導入、細胞融合、塩化カルシウムの使用及び該当細胞との融合用脂質と共にポリヌクレオチドをパッケージングする方法が挙げられる。細胞にMMR遺伝子をトランスフェクトした後、細胞を培養で増殖及び再生させることができる。遺伝子が多数の細胞世代に一貫したレベルで発現されるようにトランスフェクションが安定的な場合には、細胞株が得られる。
所望の表現型又は形質が同定されたら、その後、生物を遺伝的に安定化することができる。細胞が遺伝的に安定になり、突然変異を異常に高率で蓄積しなくなるように、ドミナントネガティブ対立遺伝子を遮断したり、誘導性の場合には細胞から除去する等の意味でドミナントネガティブ対立遺伝子を発現する細胞を「治癒」することができる。
本明細書に記載する抗体特異性の判定方法に従って実質的に本発明の抗IGF−1R抗体のみを産生する細胞又はIGF−1R結合競合物質を実質的に含まない細胞をクローニング及び増殖用に選択する。このような方法の1例は抗葉酸抗体について詳述している出願公開第US2005−0232919号,前出の図4に示されている。
本発明の抗体をコードする核酸は組換え発現させることができる。本発明の発現細胞としては任意の公知昆虫発現細胞株(例えばSpodoptera frugiperda細胞)が挙げられる。発現細胞株は例えばSaccharomyces cerevisiaeやSchizosaccharomyces pombe細胞等の酵母細胞株でもよい。発現細胞は例えばハイブリドーマ細胞(例えばNS0細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ベビーハムスター腎細胞、ヒト胎児腎細胞株293、正常イヌ腎細胞株、正常ネコ腎細胞株、サル腎サル、アフリカミドリザル腎細胞、COS細胞及び非腫瘍マウス筋芽細胞G8細胞、線維芽細胞株、ミエローマ細胞株、マウスNIH/3T3細胞、LMTK31細胞、マウスセルトリ細胞、ヒト子宮頸癌細胞、バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳腺腫瘍細胞、TRI細胞、MRC5細胞及びFS4細胞等の哺乳動物細胞でもよい。本発明の核酸は例えばトランスフェクションにより導入することができる。組換え発現抗体は例えば細胞の増殖培地から回収することができる。
本発明の1態様では、PMS1、PMS2、PMS2−134、PMSR2、PMSR3、MLH1、MLH2、MLH3、MLH4、MLH5、MLH6、PMSL9、MSH1及びMSH2等のミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子を脾細胞の融合後にハイブリドーマ細胞に導入するか、又は融合前にミエローマに導入してハイブリドーマ細胞を指向進化させることによりインビトロ免疫法を補完する。ドミナントネガティブ突然変異体を含む細胞は超突然変異性になり、トランスフェクトしていない対照細胞よりも高率で突然変異を蓄積する。例えばFR−α結合競合物質を実質的に含まないクローン、高親和性抗体を産生するクローン、高力価抗体を産生するクローン、又は単に所定条件下で迅速もしくは良好に増殖するクローンについて、突然変異細胞のプールをスクリーニングすることができる。ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子を使用して超突然変異性細胞を作製する技術は例えば米国特許第6,808,894号に記載されている。あるいは、NicolaidesらによりWO02/054856“Chemical Inhibitors of Mismatch Repair”(公開日2002年7月18日)に記載されているミスマッチ修復の化学阻害剤を使用してミスマッチ修復を阻害することもできる。ミスマッチ修復遺伝子のドミナントネガティブ対立遺伝子又はミスマッチ修復の化学阻害剤を使用して抗体を強化する技術はクローニングした免疫グロブリン遺伝子を発現する哺乳動物発現細胞にも適用できる。細胞がもう一度遺伝的に安定になり、突然変異を異常に高率で蓄積しなくなるように、ドミナントネガティブ対立遺伝子を遮断したり、誘導性の場合には細胞から除去する等の意味でドミナントネガティブ対立遺伝子を発現する細胞を「治癒」することができる。
更に、多数の公知技術を使用して産生細胞株からの本発明の抗体(又はこれに由来する他の部分)を強化することができる。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現システム(GSシステム)は所定条件下の発現を強化する一般アプローチである。GSシステムについてはヨーロッパ特許第0 216 846号、0 256 055号及び0 323 997号とヨーロッパ特許出願第89303964.4号との関連で全体又は一部を記載する。
異なる細胞株又はトランスジェニック動物で発現される抗体はグリコシル化が相互に異なると思われる。しかし、本明細書に記載する核酸分子によりコードされる全抗体、又は本明細書に記載するアミノ酸配列を含む全抗体は抗体のグリコシル化に関係なく、本発明の一部である。
発現後、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等の当分野の標準手法に従って本発明の完全抗体、その二量体、個々の軽鎖及び重鎖又は他の免疫グロブリン形態を精製することができる(一般に、R.Scopes,“Protein Purification”,Springer−Verlag,New York(1982)参照)。均一度が少なくとも約90〜95%の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、医薬用途には98〜99%又はそれ以上の均一度が最も好ましい。所望により部分的又は均一に精製後、治療用(体外を含む)又はアッセイ手順の開発及び実施、免疫蛍光染色等にポリペプチドを使用することができる(一般にImmunological Methods,Vols.I and II,Lefkovits and Pernis,eds.,Academic Press,New York,N.Y.(1979 and 1981)参照)。
本発明の抗IGF−IR抗体又はその抗原結合部分の作製方法としてはファージディスプレイライブラリーが挙げられる。本方法はファージ上でヒト抗体のライブラリーを合成する段階と、IGF−IR又はその一部でライブラリーをスクリーニングする段階と、IGF−IRと結合するファージを単離する段階と、ファージから抗体を得る段階を提案する。抗体ライブラリーを作製する1つの方法はヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト宿主動物にIGF−IR又はその抗原部分を免疫し、免疫応答を発生させる段階と、抗体産生に関与する細胞を宿主動物から抽出する段階と、抽出した細胞からRNAを単離する段階と、RNAを逆転写し、cDNAを作製する段階と、プライマーを使用してcDNAを増幅する段階と、抗体がファージ上に発現されるようにcDNAをファージディスプレイベクターに挿入する段階を含む。こうして本発明の組換え抗IGF−IR抗体を得ることができる。
本発明の組換え抗IGF−IRヒト抗体はヒトリンパ球に由来するmRNAから作製したヒトVL及びVH cDNAを使用して作製された組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくはscFvファージディスプレイライブラリーのスクリーニングにより単離することができる。このようなライブラリーの作製及びスクリーニング方法は当分野で公知である。ファージディスプレイライブラリーの作製用キットが市販されている(例えばPharmacia Recombinant Phage Antibody System,カタログ番号27 9400 01;及びStratagene SurfZAP(登録商標)ファージディスプレイキット,カタログ番号240612)。他の方法及び試薬も抗体ディスプレイライブラリーの作製と単離に使用できる(例えばLadner et al.米国特許第5,223,409号;Kang et al.PCT公開第WO92/18619号;Dower et al.PCT公開第WO91/17271号,Winter et al.PCT公開第WO92/20791号;Markland et al.PCT公開第WO92/15679号;Breitling et al.PCT公開第WO93/01288号;McCafferty et al.PCT公開第WO92/01047号;Garrard et al.PCT公開第WO92/09690号;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370 1372;Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81 85;Huse et al.(1989)Science 246:1275 1281;McCafferty et al.,Nature(1990)348:552 554;Griffiths et al.(1993)EMBO J 12:725 734;Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889 896;Clackson et al.(1991)Nature 352:624 628;Gram et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576 3580;Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373 1377;Hoogenboom et al.(1991)Nuc.Acid Res.19:4133 4137;及びBarbas et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978 7982参照)。
あるいは、Hoogenboom et al.,PCT公開第WO93/06213号に記載されているエピトープ刷込法に従って所望の特徴をもつ抗IGF−1R抗体を作製することもできる。この方法で使用される抗体ライブラリーは好ましくはMcCafferty et al.,PCT公開第WO92/01047号,McCafferty et al.,Nature(1990)348:552 554;及びGriffiths et al.,(1993)EMBO J 12:725 734に記載されているように作製及びスクリーニングされたscfvライブラリーである。scFv抗体ライブラリーはヒトIGF−IRを抗原として使用してスクリーニングすることが好ましい。上記に引用した各文献はその開示内容全体を本明細書に援用する。
初期ヒトVL及びVHセグメントの選択後、初期選択されたVL及びVHセグメントの種々の対をIGF−IR結合についてスクリーニングする「ミックスアンドマッチ」実験を実施し、好ましいVL/VH対の組合せを選択する。更に、抗体の品質を更に改善するために、自然免疫応答中の抗体の親和性成熟に関与するインビボ体細胞突然変異プロセスに類似する方法で好ましいVL/VH対のVL及びVHセグメントを好ましくはVH及び/又はVLのCDR3領域内でランダムに突然変異させる。このインビトロ親和性成熟は夫々VH CDR3又はVL CDR3に相補的なPCRプライマーを使用してVH及びVL領域を増幅することにより実施することができ、前記プライマーは得られるPCR産物がランダム突然変異をVH及び/又はVL CDR3領域に導入したVH及びVLセグメントをコードするように所定位置を4個のヌクレオチド塩基のランダム混合物で「スパイク」しておく。これらのランダムに突然変異させたVH及びVLセグメントをIGF−IRとの結合について再スクリーニングすることができる。
組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリーから本発明の抗IGF−IR抗体をスクリーニング及び単離後、選択した抗体をコードする核酸を(例えばファージゲノムに由来する)ディスプレイパッケージから回収し、標準組換えDNA技術により他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。所望により、下記のように、本発明の他の抗体形態を作製するように核酸を更に操作することができる。組換えコンビナトリアルライブラリーのスクリーニングにより単離した組換えヒト抗体を発現させるためには、上記のように、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターにクローニングし、哺乳動物宿主細胞に導入する。
抗体特異性のスクリーニング
抗体作製技術については上述した通りである。更に所望に応じて所定の生物学的特徴をもつ抗体を選択することができる。従って、抗体を産生後、IGF−1Rに対するその結合親和性についてスクリーニングすることができる。IGF−1Rと特異的に結合する抗体のスクリーニングはマイクロタイタープレートにIGF−1Rをコーティングする酵素抗体法(ELISA)を使用して実施することができる。所定態様では、陽性反応クローンに由来するIGF−1Rと結合する抗体をELISAアッセイで他のIGF−1Rアイソォームに対する反応性についてスクリーニングすることができ、例えば他のIGF−1Rアイソォームをコーティングしたマイクロタイタープレートを使用してIGF−1Rに対する反応性についてスクリーニングする。IGF−1Rの別のアイソォームに対して反応性の抗体を産生するクローンを排除し、IGF−1Rのみに対して反応性の抗体を産生するクローンをその後の増殖及び発生用に選択することができる。IGF−1Rに対する抗体の反応性の確認は例えば、卵巣癌、乳癌、直腸癌、結腸直腸癌、肺癌、子宮内膜癌又は脳腫瘍細胞に由来する蛋白質と精製IGF−1R及び他のIGF−1RアイソォームをSDS−PAGEゲル上に泳動させた後に膜にブロットするウェスタンブロットアッセイを使用して実施することができる。その後、推定抗IGF−1R抗体で膜をプローブすることができる。IGF−1Rに対して反応性であり、別のインスリン様受容体アイソォームに対して非反応性であるならば、IGF−1Rに対する反応性の特異性が確認される。
抗IGF−IR抗体のクラス及びサブクラス
本明細書に詳細に記載する抗IGF−IR抗体のクラス及びサブクラスは当分野で公知の任意方法により決定することができる。クラス及びサブクラスはELISA、ウェスタンブロット及び他の技術により決定することができる。あるいは、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の定常領域の全部又は一部を配列決定し、そのアミノ酸配列を免疫グロブリンの各種クラス及びサブクラスの既知配列と比較し、抗体のクラス及びサブクラスを決定することにより、クラス及びサブクラスを決定することもできる。一般に、抗体のクラス及びサブクラスは抗体の特定クラス及びサブクラスに特異的な抗体を使用して決定することができる。このような抗体は市販されている。
種及び分子選択性
その結合フラグメントを含めた本発明の抗IGF−IR抗体は種及び分子の両者の選択性を示す。1側面において、本発明の抗IGF−IR抗体はヒトIGF−IRと結合する。本明細書の教示に従い、当分野で周知の方法を使用して抗IGF−IR抗体に対する種選択性を決定することができる。例えば、ウェスタンブロット、FACS、ELISA又はRIAを使用して種選択性を決定することができる。好ましい1態様では、ウェスタンブロットを使用して種選択性を決定することができる。
同様に、本明細書の教示に従い、当分野で周知の方法を使用してIGF−IRに対する抗IGF−IR抗体の選択性を決定することができる。例えば、ウェスタンブロット、FACS、ELISA又はRIAを使用して選択性を決定することができる。好ましい1態様では、ウェスタンブロットを使用して分子選択性を決定することができる。
IGF−IRに対する抗IGF−IRの結合親和性
所定態様では、抗IGF−1R抗体の結合親和性を測定する。本発明の抗体は好ましくはIGF−1Rに対する結合親和性(Kd)が少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、最も好ましくは少なくとも約1×10−10Mである。本発明の好ましい抗体産生細胞は実質的にIGF−1Rに対する結合親和性が少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、最も好ましくは少なくとも約1×10−10Mの抗体のみを産生する。本発明の好ましい組成物は実質的にIGF−1Rに対する結合親和性が少なくとも約1×10−7M、より好ましくは少なくとも約1×10−8M、より好ましくは少なくとも約1×10−9M、最も好ましくは少なくとも約1×10−10Mの抗体のみを含有する。
本発明の別の側面において、上記方法に従って作製された本発明の抗体は前出の「7C10」と呼ぶ抗体と実質的に同一のKdでIGF−IRと結合する。代替態様において、本発明の抗体は配列番号1、2、3、4、5、6、7又は8から選択されるアミノ酸配列の1種を含む抗体と実質的に同一のKdでIGF−IRと結合する。別の態様において、抗体は配列番号1、2、3、4、5又は6から選択されるアミノ酸配列の1種を含む抗体に由来する1個以上のCDRを含む抗体と実質的に同一のKdでIGF−IRと結合する。
本発明の抗IGF−IR抗体又は本明細書に開示する方法を使用して同定された抗IGF−IR抗体は解離速度が低い。1態様において、抗IGF−IR抗体はKoffが1×10−4以下、好ましくはKoffが5×10−5以下である。別の態様において、本発明の抗体又は本発明の方法を使用して同定もしくは作製された抗体は本明細書に開示する1個以上のCDRを含む抗体と実質的に同一のKoffでIGF−IRと結合する。
IGF−IRに対する抗体の結合親和性と解離速度は当分野で公知の任意方法により測定することができる。例えば、結合親和性は競合的ELISA、RIA又は表面プラズモン共鳴法(例えばBIAcore)により測定することができる。解離速度も表面プラズモン共鳴法により測定することができる。あるいは、結合親和性と解離速度を表面プラズモン共鳴法により測定する。更に、BIAcoreを使用して結合親和性と解離速度を測定する。
抗IGF−IR抗体により認識されるIGF−IRエピトープの同定
更に他の態様において、本明細書に開示するようなIGF−1Rに対する抗体又は上記に詳述した方法により作製された抗体は前出の「7C10」と呼ぶ抗体により認識されるエピトープとは異なるエピトープでIGF−1Rと結合する。
当分野で公知の各種方法を使用して本発明の抗体から誘導された抗IGF−IR抗体又は上記方法に従って作製された抗IGF−IR抗体が12B1又は7C10と同一の抗原と結合するか否かを判定することができる。例えば、抗IGF−IR抗体を使用して抗IGF−IR抗体と結合することが分かっている抗原(例えばIGF−IR)を捕捉し、抗体から抗原を溶出させた後に、試験抗体が溶出した抗原と結合するか否かを判定することにより、抗IGF−IR抗体が同一抗原と結合するか否かを判定することができる。
飽和条件下で抗IGF−IR抗体をIGF−IRと結合させた後に、試験抗体がIGF−IRと結合する能力を測定することにより、試験抗体が抗IGF−IR抗体と同一エピトープと結合するか否かを判定することができる。試験抗体(例えば12B1から誘導されるか又は本発明の方法に従って同定された抗IGF−IR抗体)は参照抗IGF−IR抗体と同時にIGF−IRと結合した後、試験抗体は抗IGF−IR抗体とは異なるエピトープと結合する。しかし、試験抗体が同時にIGF−IRと結合できない場合には、試験抗体はヒト抗IGF−IR抗体と同一のエピトープと結合する。この実験はELISA、RIA又は表面プラズモン共鳴法を使用して実施することができる。好ましい1態様では、表面プラズモン共鳴法を使用して実験を実施する。より好ましい態様では、BIAcoreを使用する。抗IGF−IR抗体が参照抗IGF−IR抗体と交差競合するか否かを判定することもできる。例えば、抗IGF−IR抗体が別の抗IGF−IR抗体と同一のエピトープと結合できるか否かを測定するために使用する方法と同一方法を使用することにより、試験抗IGF−IR抗体が別の抗体と交差競合するか否かを判定することができる。
抗体の非治療用途
細胞表面増殖受容体蛋白質、特にその発現が腫瘍性疾患に相関するもの(例えばIGF−1R)が薬剤候補又は腫瘍(例えば癌)治療の優れたターゲットであることは広く認められている。最新技術によると、このような蛋白質は診断及び予後診断用にも利用できると推定される。従って、本発明は診断及び予後診断剤としての本明細書に開示する抗IGF−1R抗体の使用を提案する。提案する使用では、(i)その抗原結合フラグメントを含めた本発明の抗IGF−1R抗体は高親和性でIGF−1Rと特異的に結合し、(ii)本発明の抗体と結合した標的受容体は癌性細胞で高度に発現されるという見解を利用する。従って、1側面において、本明細書に詳細に記載する抗体又はその結合フラグメントは、生検組織等の組織サンプル、液体又は半液体サンプルを含めてどのような種類の「サンプル」中に存在するかに関係なく、当業者がIGF−1Rの発現レベルを有効に定量できるようにすることにより、癌診断及び予後診断で非常に有用になろう。
上記によると、本発明のモノクローナル抗体又はその結合フラグメントは診断環境で多数の用途があり、このような用途としては、(例えばELISA又はウェスタンブロットで)IGF−1Rのインビトロ検出、監視、診断及び定量や、他の細胞の精製における1段階として混合細胞集団からIGF−1R発現細胞を死滅及び排除させるために細胞からのIGF−1Rの精製又は免疫沈降が挙げられる。このような診断法は患者からの細胞サンプル(例えば血液サンプル、リンパ節生検又は組織)を使用してインビトロで実施することもできるし、インビボ撮影により実施することもできる。本発明の抗IGF−1R抗体はIGF−1Rを発現する癌を(例えば放射線撮影法で)ステージングするためにも有用であると思われる。前記抗体は単独で使用してもよいし、他のIGF−1R関連癌マーカーと併用してもよい。本発明の抗体の診断用途は原発腫瘍及び癌に加え、転移にも及ぶ。前記抗原を含む他の癌及び腫瘍もこれらの診断及び撮影法に適用可能である。
一般的に言うならば、本発明のモノクローナル抗体又はその結合フラグメントは癌細胞上のIGF−1Rの存在を定量的又は定性的に検出するために使用することができる。これは例えば蛍光標識抗体を利用する免疫蛍光技術を光学顕微鏡、フローサイトメトリー又は蛍光検出と組合せることにより実施することができる。更に、本発明の抗体又はその結合フラグメントは監視、診断又は検出アッセイ用等の細胞上の癌特異抗原のin situ検出用として免疫蛍光、免疫電子顕微鏡分析又は非免疫アッセイ等で組織学的に利用することもできる。例えば、Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147 158(CRC Press,Inc.1987)参照。
非治療用途(例えば診断及び予後診断)では、抗体としては、全長ないし無傷抗体、抗体フラグメント、天然配列抗体又はアミノ酸変異体、ヒト化抗体、キメラ抗体又は融合抗体、免疫コンジュゲート及び機能的そのフラグメントが挙げられる。融合抗体では、抗体配列を異種ポリペプチド配列と融合する。所望のエフェクター機能を提供するように抗体のFc領域を修飾することができる。
診断及び撮影用途では、本発明の抗体を標識することができる。物理的結合、化学的結合等により抗体と結合してその検出を可能にするものであれば、本発明でどのような標識物質を使用できるかについて特に制限はない。ラベルを抗体又はそのフラグメントに直接結合してもよいし、間接的に結合してもよい。実際に、蛋白質分子を検出可能に標識する多数の方法が当分野で公知であり、実施されている。蛋白質をラベルに間接結合する手段も周知である。ラベルを抗体に間接結合するには、例えば、小さいハプテン(例えばジゴキシン)と結合することにより実施することができ、本明細書に記載する種々の型のラベルの1種を抗ハプテン抗体突然変異体(例えば抗ジゴキシン抗体)と結合する。例えば、本明細書に援用するWagner et al.,J.Nucl.Med.20:428(1979)及びSaha et al.,J.Nucl.Med.6:542(1976)参照。
標識物質の特定例としては酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジン、放射性同位体等が挙げられる。蛍光標識抗体に適切な波長の光を照射すると、その存在を蛍光により検出することができる。本明細書に詳述する放射性同位体と蛍光物質は独立して検出可能なシグナルを発生するが、酵素、化学発光物質、ビオチン及びアビジンは独立して検出可能なシグナルを発生せず、少なくとも1種の他の物質と反応すると、検出可能なシグナルを発生する。例えば、酵素の場合には少なくとも基質が必要であり、酵素活性の測定方法(比色法、蛍光法、生物発光法又は化学発光法)に応じて各種基質を使用する。ビオチンの場合には、一般に少なくともアビジン又は酵素修飾アビジンを反応させる。必要に応じて基質に応じて各種色素も使用することができる。
最も広く使用されている蛍光標識化合物としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ及び他の酵素、フルオレセインイソチオシアネート、フィコビリン蛋白質、希土類金属キレート、ダンシルクロライド、テトラメチルローダミンイソチオシアネート及び他の蛍光物質が挙げられる。152Euや他のランタニド系列等の検出可能に標識した蛍光発光金属を使用してその後の検出のために抗体又はその結合フラグメントを標識することができる。例えば、In−111及びTc−99mについてKhaw et al.(Science 209:295[1980])により記載され、Scheinberg et al.(Science 215:1511[1982])にも記載されているように、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等の金属キレート基により金属を抗体にカップリングすることができる。例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の他のキレート剤も使用できるが、1−(p−カルボキシメトキシベンジル)EDTAとDTPAのカルボキシ炭酸無水物を使用すると抗体の免疫反応性を実質的に変化させずに結合できるので有利である。グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、過ヨウ素酸法等の公知任意方法を使用して標識物質を抗体に結合することができる。
抗体を化学発光化合物にカップリングすることにより検出可能に標識することもできる。その後、化学反応中に発生する発光の存在を検出することにより化学発光標識抗体の存在を判定する。特に有用な化学発光標識化合物の例としては限定されないが、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及び蓚酸エステルが挙げられる。同様に、生物発光化合物を使用して本発明の抗体を標識してもよい。生物発光は触媒蛋白質が化学発光反応の効率を増加する生物系に認められる1種の化学発光である。発光の存在を検出することにより生物発光蛋白質の存在を判定する。有用な生物発光標識化合物としてはルシフェリン、ルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。
他の各種免疫アッセイもIGF−1Rの検出に利用可能である。例えば、抗体又はその結合フラグメントを放射性同位体で標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)を使用して癌特異的抗原を検出することができる(例えばCurrent Protocols in Immunology,Volumes 1 and 2,Coligen et al.,Ed.Wiley−Interscience,New York,N.Y.,Pubs.(19910,Colcher et al.,1981,Cancer Research,41,1451 1459;Weintraub,“Principles of Radioimmunoassays”,Seventh Training Course on Radioligand Techniques,The Endocrine Society,March,1986)。ガンマカウンターもしくはシンチレーションカウンターの使用又は放射線撮影により放射性同位体ラベルを検出することができる。代表的な放射性同位体としては、35S、14C、125I、3H及び131Iが挙げられる。生体物質を放射性同位体で標識する手順は当分野で一般に知られている。トリチウム標識法は本明細書に援用する米国特許第4,302,438号に記載されている。特にマウスモノクローナル抗体に適したヨウ素化法、トリチウム標識法及び35S標識法が周知である。抗体、その結合部分、プローブ又はリガンド等の生体物質の他のヨウ素化法は本明細書に援用するHunter and Greenwood,Nature 144:945(1962),David et al.,Biochemistry 13:1014−1021(1974)、並びに米国特許第3,867,517号及び4,376,110号に記載されている。生体物質のヨウ素化法は本明細書に援用するGreenwood,F.et al.,Biochem.J.89:114−123(1963);Marchalonis,J.,Biochem.J.113:299−305(1969);及びMorrison,M.et al.,Immunochemistry,289−297(1971)に記載されている。99mTc標識法は本明細書に援用するRhodes,B.et al.in Burchiel,S.et al.(eds.),Tumor Imaging:The Radioimmunochemical Detection of Cancer,New York:Masson 111−123(1982)とその引用文献に記載されている。生体物質の111In標識に適した方法は本明細書に援用するHnatowich,D.J.et al.,J.Immul.Methods,65:147−157(1983),Hnatowich,D.et al.,J.Applied Radiation,35:554−557(1984)、及びBuckley,R.G.et al.,F.E.B.S.166:202−204(1984)に記載されている。
本発明の抗体の別の標識方法は例えば酵素免疫測定法(EIA)用として抗体を酵素に結合する方法である(A.Voller et al.,1978,“The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)”,Diagnostic Horizons,2:1 7;,Microbiological Associates Quarterly Publication,Walkersville,Md.;A.Voller et al.,1978,J.Clin.Pathol.,31:507 520;J.E.Butler et al.,1981,Meths.Enzymol.,73:482 523;Enzyme Immunoassay,1980,(Ed.)E.Maggio,CRC Press,Boca Raton,FIa.;Enzyme Immunoassay,1981,(Eds.)E.Ishikawa et al.,Kgaku Shoin,Tokyo,Japan)。抗体と結合した酵素は適切な基質、好ましくは発色基質と反応し、例えば分光測光手段、蛍光手段又は目視検出手段により検出可能な化学部分を発生する。抗体を検出可能に標識するめに使用することができる酵素の非限定的な例としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、Δ5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。検出は酵素の発色基質を利用する比色法、又は同様に作製した標準もしくは対照に比較した基質の酵素反応の程度の目視比較により実施される。多数の他の酵素−基質組合せも当業者に利用可能である。これらの一般概要については、米国特許第4,275,149号及び4,318,980号参照。
酵素を抗体に結合する技術はO’Sullivan et al.,Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay,in Methods in Enzym.(ed J.Langone & H.Van Vunakis),Academic press,New York,73:147−166(1981)に記載されている。
酵素−基質組合せの例としては、例えば、
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)と、基質としての水素ペルオキシダーゼ(ここで、水素ペルオキシダーゼは色素前駆体(例えばオルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する);
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と、発色基質としてのパラ−ニトロフェニルリン酸;及び
(iii)β−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と発色基質(例えばp−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)又は蛍光基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼ。
所定態様では、抗体を標識する必要はなく、抗体突然変異体と結合する標識抗体を使用してその存在を検出することができる。
適切な対象としては、任意過増殖性腫瘍性疾患の病理作用の危険があると疑われる対象が挙げられ、特にIGF−1Rに介在される癌及び肉腫が本発明の検出、診断及び予後診断パラダイムに適している。癌病歴のある対象が特に適切である。診断及び予後診断に適したヒト対象は臨床基準により区別可能な2群に分けられる。「進行病変」又は「高腫瘍負荷」患者は臨床的に測定可能な腫瘍をもつ患者である。臨床的に測定可能な腫瘍とは腫瘍重量に基づいて検出することができる腫瘍である(例えば触診、CATスキャン又はX線;陽性の生化学的又は組織病理学的マーカーだけではこの集団を同定するには不十分な場合がある)。
第2群の適切な対象は「アジュバント群」として当分野で知られる。これらは癌病歴をもつが、別の治療方式に応答性であった個体である。過去の治療としては限定されないが、外科的切除、放射線療法及び従来の化学療法が挙げられる。その結果、これらの個体は臨床的に測定可能な腫瘍をもたない。しかし、元の腫瘍部位の近傍又は転移により病変の進行の危険があると疑われる。
この群を更に高リスク個体と低リスク個体に細分することができる。細分は初期治療前後に観察された特徴に基づいて実施される。これらの特徴は臨床分野で公知であり、個々の癌毎に適切に定義されている。高リスクサブグループの典型的な特徴は腫瘍が隣接組織に浸潤している対象、又はリンパ節の障害を示す対象である。
別の適切な群の対象は癌の遺伝的素因をもつが、まだ癌の臨床兆候を示していない対象である。例えば乳癌の家族暦をもつが、まだ妊娠可能年齢の女性の***組織をIGF−1Rの発現レベルについて試験することができ、試験が陽性の者、例えばIGF−1Rの正常発現レベルよりも高い者は乳癌の発現の監視を希望することができ、あるいは、従来のIGF−1R特異的モノクローナル治療による予防処置を利用することができる。
IGF−1R又はその誘導体を検出するための一般方法
本発明の抗体又はその結合フラグメントを使用してIGF−1Rを検出するアッセイ方法は特に限定されない。被験液体中の抗原量(例えばIGF−1Rのレベル)に対応する抗体、抗原又は抗体−抗原複合体の量を化学的又は物理的手段により検出し、既知量の抗原を含有する標準溶液から作成した標準曲線から抗原の量を計算することができる限り、任意アッセイ方法を使用することができる。本発明に含まれる代表的なイムノアッセイとしては限定されないが、米国特許第4,367,110号(二重モノクローナル抗体サンドイッチアッセイ);Wide et al.,Kirkham and Hunter,eds.Radioimmunoassay Methods,E.and S.Livingstone,Edinburgh(1970);米国特許第4,452,901号(ウェスタンブロット);Brown et al.,J.Biol.Chem.255:4980−4983(1980)(標識リガンドの免疫沈降);及びBrooks et al.,Clin.Exp.Immunol.39:477(1980)(免疫細胞化学)に記載されている方法;蛍光標識抗体を利用する免疫蛍光技術と光学顕微鏡、フローサイトメトリー又は蛍光検出の組合せ等が挙げられる。Immunoassays for the 80’s,A.Voller et al.,eds.,University Park,1981,Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.1987)も参照。
(1)サンドイッチアッセイは検出しようとする蛋白質の異なる免疫原性部分又はエピトープと各々結合することが可能な2種の抗体を使用する。サンドイッチアッセイでは、試験サンプル検体を固体支持体に固定化された第1の抗体と結合させた後に、第2の抗体が検体と結合し、こうして不溶性3部分複合体を形成する。例えば米国特許第4,376,110号参照。検出可能な部分で二次抗体自体を標識してもよいし(直接サンドイッチアッセイ)、検出可能な部分で標識した抗免疫グロブリン抗体を使用して測定してもよい(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、1種のサンドイッチアッセイはELISAアッセイであり、その場合には、検出可能な部分は酵素である。
サンドイッチアッセイでは、本発明の固定化抗体を試験液と反応させ(一次反応)、次に本発明の抗体の標識体と反応させ(二次反応)、固定化担体上の標識剤の活性を測定することにより、試験液中のIGF−1Rレベルを定量することができる。一次反応と二次反応は同時に実施してもよいし、多少の時間間隔をあけて実施してもよい。標識法と固定化法は上記方法の変法により実施することができる。サンドイッチアッセイによるイムノアッセイでは、固定化又は標識抗体に使用する抗体は必ずしも1つの種に由来せず、測定感度等を増加するように2種以上の抗体の混合物を使用してもよい。サンドイッチアッセイによりIGF−1Rをアッセイする方法では、例えば一次反応に使用する抗体がIGF−1RのC末端領域の部分ペプチドを認識する場合には、二次反応で使用する抗体はC末端領域以外(即ちN末端領域)の部分ペプチドを認識するものが好ましい。一次反応に使用する抗体がIGF−1RのN末端領域の部分ペプチドを認識する場合には、二次反応で使用する抗体はN末端領域以外(即ちC末端領域)の部分ペプチドを認識する抗体を利用することが好ましい。
同様にIGF−1Rの検出に有用であると思われる他の型の「サンドイッチ」アッセイは所謂「同時」アッセイと「リバース」アッセイである。同時アッセイはインキュベーション段階が1段階であり、固体支持体に結合した抗体と標識抗体の両方を被験サンプルに同時に添加する。インキュベーションの完了後、固体支持体を洗浄し、液体サンプルの残渣と複合体化していない標識抗体を除去する。その後、従来の「フォワード」サンドイッチアッセイと同様に、固体支持体に結合した標識固体の存在を判定する。
「リバース」アッセイでは、段階的添加を利用し、先ず標識抗体の溶液を液体サンプルに添加した後に、適切なインキュベーション時間後に固体支持体に結合した未標識抗体を添加する。第2のインキュベーション後に、固相を従来通りに洗浄し、被験サンプルの残渣と未反応標識抗体の溶液を除去する。その後、「同時」及び「フォワード」アッセイと同様に固体支持体に結合した標識固体を判定する。1態様では、別個のエピトープに特異的な本発明の抗体の組合せを使用して感受性3部位免疫放射定量アッセイを構成することができる。
この型のアッセイも、どのような「サンプル」中に存在するかに関係なく、IGF−1R発現を定量するために使用することができる。従って、所定側面において、サンドイッチアッセイとしては以下の方法が挙げられる:
(i)試験液中のIGF−1Rの発現レベルの定量方法として、担体に固定化したIGF−1RのN末端領域で部分ペプチドと特異的に反応する抗体と、C末端領域で部分ペプチドと特異的に反応する抗体の標識体と、試験液とを反応させる段階と、ラベルの活性を測定する段階を含む方法;又は
(ii)試験液中のIGF−1R発現レベルの定量方法として、担体に固定化したIGF−1RのC末端領域で部分ペプチドと特異的に反応する抗体と、IGF−1Rの標識体のN末端領域で部分ペプチドと特異的に反応する抗体と、試験液とを反応させる段階と、ラベルの活性を測定する段階を含む方法。
(2)競合的結合アッセイは標識標準が制限量の抗体との結合について試験サンプル検体と競合する能力に依存する。試験サンプル中のIGF−1R蛋白質の量は抗体に結合される標準の量に反比例する。結合される標準の量の測定を容易にするために、競合前後に一般に抗体を不溶化し、標準と抗体に結合する検体を標準と未結合検体から適切に分離できるようにする。
IGF−1R発現レベルを定量するために、当業者は本発明の抗体又はそのフラグメントと、試験液と、IGF−1Rの標識体を混合及び/又は競合反応させ、抗体又はそのフラグメントに結合した標識IGF−1Rの比を測定し、試験液中のIGF−1Rを定量することができる。
(3)免疫測定アッセイ
免疫測定アッセイでは、試験液中の抗原と固相抗原を所定量の本発明の抗体の標識体と競合反応させた後、液相から固相を分離するか;又は試験液中の抗原と過剰量の本発明の抗体の標識体を反応させた後、固相抗原を加え、本発明の抗体の未反応標識体を固相と結合させた後、固相を液相から分離する。その後、相のいずれかの標識量を測定し、試験液中の抗原レベルを求める。
典型的な好ましい免疫測定アッセイとしては、固相に結合した抗体を先ず被験サンプルと接触させ、2元固相抗体−IGF−1R複合体の形成によりサンプルからIGF−1Rを抽出する「フォワード」アッセイが挙げられる。適切なインキュベーション時間後、固体支持体を洗浄し、場合により未反応IGF−1Rを含む液体サンプルの残渣を除去した後、(「レポーター分子」として機能する)既知量の標識抗体を含有する溶液と接触させる。未反応抗体を介して固体支持体に結合したIGF−1Rと標識抗体を複合体化させる第2のインキュベーション時間後に、抗体支持体に2回目の洗浄を実施し、未反応標識抗体を除去する。この型のフォワードサンドイッチアッセイはIGF−1Rの有無を判定する単純な「イエス/ノー」アッセイでもよいし、既知量のIGF−1Rを含有する標準サンプルで得られた測定値と標識抗体の測定値を比較することにより定量的に実施してもよい。このような「2サイト」ないし「サンドイッチ」アッセイはWide(Radioimmune Assay Method,Kirkham,ed.,Livingstone,Edinburgh,1970,pp.199 206)により記載されている。
(4)ネフロメトリー
ネフロメトリーでは、ゲル又は溶液中で抗原−抗体反応の結果として生成される不溶性沈渣の量を測定する。試験液中の抗原の量が少なく、少量しか沈渣が得られない場合には、レーザー散乱法を利用するレーザーネフロメトリーを適切に使用することができる。
標識剤を使用する上記アッセイ方法(1)〜(4)で使用することができる標識剤の例としては、放射性同位体(例えば125I、131I、3H、14C、32P、33P、35S等)、蛍光物質(例えばシアニン蛍光色素(例えばCy2,Cy3,Cy5,Cy5.5,Cy7)、フルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネート等)、酵素(例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ等)、発光物質(例えばルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、ビオチン、ランタニド等が挙げられる。更に、ビオチン−アビジン系も抗体を標識剤と結合するのに使用することができる。
抗原又は抗体の固定化には、物理的吸着を使用することができる。あるいは、蛋白質、酵素等の固定化に従来使用されている化学結合も使用できる。担体の例としては不溶性多糖類(例えばアガロース、デキストラン、セルロース等)、合成樹脂(例えばポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコーン等)又はガラス等が挙げられる。
別の態様において、本発明は血液、血清、血漿、唾液等の体液中のIGF−1Rレベルの同定及び測定により癌及び腫瘍の診断を支援する。IGF−1Rが正常に存在し、腫瘍性疾患の発生が異常量の細胞表面受容体(IGF−1R)、例えば正常に対する発現に起因する場合には、アッセイは生体サンプル中のIGF−1Rレベルを同一細胞種の正常な非腫瘍組織で予想される範囲と比較する。従って、対照対象又は対象の基線に対して対象中のIGF−1R含有細胞量又はIGF−1R発現レベルの統計的に有意な増加は腫瘍性疾患が進行中であるか又はこのような疾患の危険があるという診断を可能にする因子となり得る。同様に、癌の転移の可能性を示す高レベルのIGF−1Rの存在を検出することもできる。本発明の抗体(例えばIGF−1R)により認識される抗原を発現する癌では、抗原を検出できると、早期診断が可能になり、早期治療の機会が得られる。初期ステージの診断が困難な癌では、早期検出は特に重要である。
更に、血液等の体液サンプル中で検出及び測定された抗原レベルは癌又は腫瘍の治療過程を監視するために手段となり、このような治療としては限定されないが、外科手術、化学療法、放射線療法、本発明の治療法及びその併用が挙げられる。体液中の抗原レベルを病変の重篤度に相関させることにより、このような抗原のレベルを使用して例えば原発腫瘍、癌及び/又は転移の除去の成功を示すと共に、他の治療の有効性を経時的に指示及び/又は監視することができる。例えば、癌又は腫瘍特異抗原のレベルの経時的低下は患者の腫瘍負荷の低下を示す。他方、抗原レベルが経時的に変化しない場合又は増加する場合には、治療が無効であるか、又は腫瘍もしくは癌の増殖が続いていると判断される。
腫瘍が潜在的に癌性である(高レベルのIGF−1Rを発現する場合)か又は良性である(低レベルのIGF−1Rを発現する場合)かを判定するために診断法を使用することもできる。従って、例えば、IGF−1Rに介在される腫瘍性疾患を示す疑いのある患者から採取した生体サンプルについて、IGF−1R発現細胞の存在をアッセイすることができる。
上記のように、本発明の抗IGF−1R抗体は組織中又は組織に由来する細胞中のIGF−1Rレベルを測定するために使用することができる。好ましい1態様において、組織は病変組織である。より好ましい態様において、組織は腫瘍又はその生検である。前記方法の好ましい1態様では、組織又はその生検を患者から切除する。その後、組織又は生検をイムノアッセイで使用し、本明細書に記載する方法により、例えばIGF−1Rレベル、IGF−1Rの細胞表面レベル、IGF−1Rのチロシンリン酸化レベル、又はIGF−1Rの局在を測定する。前記方法はIGF−1Rを発現する腫瘍を判定するために使用することができる。
1関連態様において、本発明は好ましくは対照サンプル中の同一種の細胞、組織又は体液におけるレベルに比較して細胞、組織又は体液中のIGF−1Rレベルの変化をアッセイすることによる癌の診断方法を提供する。対照に対する患者のIGF−1Rレベルの変化、特に増加は癌の存在に結び付けられる。一般に、定量的診断アッセイでは、被験患者が癌をもつと判断される陽性結果は、細胞、組織又は体液中のIGF−1Rレベルが対照の同一細胞、組織又は体液中の抗原レベルの少なくとも2倍、好ましくは3〜5倍又はそれ以上の場合である。正常対照としては、癌をもたないヒト及び/又は患者に由来する非癌性サンプルが挙げられる。
インビトロ診断法としては、当業者に公知の任意方法が挙げられ、(例えばヒト組織上、又は切除した腫瘍検体から分離した細胞上の)腫瘍細胞の免疫組織学的もしくは免疫組織化学的検出、又は(例えば血液サンプル又は他の体液中の)腫瘍関連抗原の血清学的検出が挙げられる。免疫組織化学的方法は、組織検体等の生体検体を本発明の抗体の1種以上で染色した後、コグネイト抗原に結合した抗体を含む抗体−抗原複合体の存在を検体上で検出する。このような抗体−抗原複合体の形成は組織中の癌の存在を示唆する。
検体上の抗体の検出は免疫酵素法、例えば免疫ペルオキシダーゼ染色法、又はアビジン−ビオチン法、又は免疫蛍光法等の当分野で公知の技術を使用して実施することができる(例えばCiocca et al.,1986,“Immunohistochemical Techniques Using Monoclonal Antibodies”,Meth.Enzymol.,121:562 79及びIntroduction to Immunology,Ed.Kimball,(2nd Ed),Macmillan Publishing Company,1986,pp.113 117参照)。当業者は日常的な実験により操作条件及び最適アッセイ条件を決定することができる。
IGF−1Rを検出するための典型的なインビトロイムノアッセイは、IGF−1Rと選択的に結合することが可能な検出可能に標識した本発明の抗IGF−1R抗体又は抗原結合フラグメントの存在下で生体サンプルをインキュベートする段階と、サンプル中で結合した標識フラグメント又は抗体を検出する段階を含む。抗体と細胞又はその部分の結合後に細胞又はその部分(過形成、異形成及び/又は癌性細胞から放出された例えばIGF−1R又はそのフラグメント)の検出を可能にするために有効なラベルと抗体を結合する。生体サンプル中に細胞又はその部分が存在するならば、ラベルの検出により検出される。
細胞、細胞粒子、膜又は可溶性蛋白質を固定化することが可能なニトロセルロース等の固相支持体もしくは担体又は他の固体支持体もしくはマトリックスに生体サンプルを接触させ、固定化することができる。その後、支持体を適切な緩衝液で洗浄した後、検出可能に標識した抗IGF−1R抗体で処理する。その後、緩衝液で固相支持体の2回目の洗浄を行い、未反応抗体を除去する。その後、固体支持体に結合したラベルの量を従来の手段により検出することができる。従って、本発明の別の態様では、本明細書に記載するような固相支持体に結合したモノクローナル抗体又はその結合フラグメントを含有する組成物を提供する。
「固相支持体」又は「担体」とはペプチド、抗原又は抗体と結合することが可能な任意支持体を意味する。周知支持体又は担体としてはガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び改質セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース並びにマグネタイトが挙げられる。担体の種類は本発明の目的にはある程度可溶性でもよいし、不溶性でもよい。支持体材料は結合した分子がIGF−1R又は抗IGF−1R抗体と結合できる限り、ほぼ任意の可能な構造的構成をとることができる。従って、支持体構成はビーズのように球形でもよいし、試験管の内面やロッドの外面のように円筒形でもよい。あるいは、表面はシート、培養皿、試験ストリップ等のように平坦でもよい。好ましい支持体としてはポリスチレンビーズが挙げられる。当業者は抗体、ペプチド又は抗原と結合するための多数の他の適切な担体を認識し、あるいは日常的実験により確認することができる。
本発明によるインビトロアッセイとしては更に、組換えIGF−1R、IGF−1Rのリガンド結合セグメントを含む可溶性フラグメント、又は固相支持体に結合したフラグメントを発現する細胞から単離した膜の利用が挙げられる。これらのアッセイは結合セグメント突然変異及び変異、又はリガンド突然変異及び変異(例えばリガンドアナログ)の作用の診断判定を可能にする。
所定態様では、IGF−1Rに対する結合親和性について化合物をスクリーニングするように設計されたインビトロアッセイで本発明のモノクローナル抗体及びその結合フラグメントを使用することができる。本明細書に援用するFodor et al.Science 251:767−773(1991)参照。この目的によると、本発明は本発明のモノクローナル抗体又はそのフラグメントがIGF−1Rとの結合について試験化合物と競合する競合的薬剤スクリーニングアッセイを想定する。こうして、モノクローナル抗体及びそのフラグメントを使用し、IGF−1Rの1個以上の結合部位を共有し、他の場合には抗体により占有される受容体上の結合部位を占有するために使用することができる任意ポリペプチドの存在を検出する。
所定態様では、各種化合物で細胞を処理後の細胞表面のIGF−1Rのチロシンリン酸化、チロシン自己リン酸化及び/又はIGF−1Rの量を測定するために本発明の抗IGF−1R抗体を使用することができる。この方法はIGF−1Rを活性化又は阻害するために使用可能な化合物を試験するために使用することができる。この方法では、ある細胞サンプルを試験化合物で一定時間処理し、別のサンプルを未処理のままにする。チロシン自己リン酸化を測定しようとする場合には、細胞を溶解させ、ELISA等の本明細書に記載するイムノアッセイを使用してIGF−1Rのチロシンリン酸化を測定する。IGF−1Rの総レベルを測定しようとする場合には、細胞を溶解させ、上記イムノアッセイの1種を使用して総IGF−1Rレベルを測定する。
IGF−1Rチロシンリン酸化を測定又は総IGF−1Rレベルを測定するために好ましいイムノアッセイはELISA又はウェスタンブロットである。IGF−1Rの細胞表面レベルのみを測定しようとする場合には、細胞を溶解させずに、当業者に公知のアッセイの1種以上、例えば本明細書に記載するイムノアッセイの1種を使用してIGF−1Rの細胞表面レベルを測定する。IGF−1Rの細胞表面レベルを測定するための好ましいイムノアッセイは細胞表面蛋白質をビオチンや125I等の検出可能なラベルで標識する段階と、IGF−1Rを抗IGF−1R抗体で免疫沈降させる段階と、その後、標識したIGF−1Rを検出する段階を含む。IGF−1Rの局在、例えば細胞表面レベルを測定するための別の好ましいイムノアッセイは免疫組織化学の使用である。
上記診断法はIGF−1Rに関連又は介在される腫瘍が抗IGF−1R抗体(例えば7C10)又は本明細書に開示する抗IGF−1R抗体12B1と競合しない他の任意の従来の抗IGF−1R抗体による治療に良好に応答するか否かを判定するために使用することもできる。更に、上記診断法はより低レベルのIGF−1Rを腫瘍に発現させること、及び/又はより低レベルのチロシン自己リン酸化を発現させることにより、抗IGF−1R抗体による治療が有効であるか否かを判定するために使用することもでき、従って、治療が成功するか否かを判定するために使用することができる。
本発明は従来の抗IGF−1R抗体が標的腫瘍組織又は細胞上のIGF−1R発現を低下させるか否かを判定する方法も提供する。「従来のIGF−1Rアンタゴニスト」、「IGF−1R分子による従来の治療」なる用語は同義に使用し、IGF−1R発現を特異的に標的とし、本発明の抗体と同一のエピトープに結合しない現在入手可能なIGF−1R特異的モノクローナル抗体を意味する。代表的な治療プロトコルは米国シリアル番号2005/0084906に記載されている7C10抗IGF−1Rモノクローナル抗体の使用を含む。本発明の別の側面は個体がIGF−1Rに介在される癌を発症する感受性の評価である。前記方法は該当細胞又は組織中のIGF−1Rの発現レベルを測定する段階と、細胞又は組織を抗IGF−1R抗体又はその抗原結合部分と共にインキュベートする段階と、その後、細胞又は組織中の本発明の抗IGF−1R抗体又は抗原結合フラグメントによりIGF−1R発現レベルを再測定する段階を含む。あるいは、上記例でIGF−1Rのチロシンリン酸化を測定してもよい。患者が従来の抗IGF−1R抗体レジメンによる治療に応答していると予測するために、IGF−1Rレベルが低いという診断を使用する。逆に、従来の抗IGF−1R抗体による治療後にIGF−1Rレベルが変化しないか又はIGF−1Rの発現が増加する場合には、現在の治療プロトコルに応答していないか又は従来の抗IGF−1R抗体で更に治療しても応答する可能性がないと判断され、早期介入が可能になる。本発明の抗IGF−1R抗体は従来のIGF−1R抗体の投与と同時又は従来の抗IGF−1Rの投与後に上記診断アッセイで使用することができる。好ましくは、従来のIGF−1R抗体はIGF−1R蛋白質との結合について本発明の抗IGF−1R抗体と競合しない。更に、本発明のIGF−1R抗体はADCC活性をもたない。従来の抗IGF−1R抗体に基づく治療プロトコルの治療効力を評価するために上記アッセイを所定期間にわたって反復して実施することができる。こうして、本発明の抗IGF−1R抗体を「陰性バイオマーカー」として使用し、従来の抗IGF−1R抗体に基づく治療の治療及び治療プロトコルを評価することができる。
XX 染色及び/又は検出レベルをスコアリングするために本明細書に記載する抗体を使用することも考えられる。現在広く認められている充実癌の診断方法は外科的に生検又は切除した組織における異常細胞形態の組織学的判定である。組織を採取後、固定液に保存し、パラフィン蝋に包埋し、厚さ5μmの切片に切断し、核をヘマトキシリン、細胞質をエオジンの2種類の色素で染色する(「H&E染色」)。このアプローチは簡単で迅速で確実で廉価である。組織病理学は各種組織及び細胞種の診断を可能にする。腫瘍「グレード」(細胞分化/組織アーキテクチャ)及び「ステージ」(臓器侵入深度)の推定を提供することにより、予後診断も可能になる。腫瘍切片の免疫組織化学染色は異種組織における蛋白質の変性を推定する確実な方法であることが分かっている。免疫組織化学(IHC)技術は一般に発色法又は蛍光法により細胞抗原をin situでプローブ及び可視化するために抗体を利用する。免疫組織化学(IHC)では、その可視又は蛍光色の強度と面積を通常通りに分類する。あるいは、従来の光学顕微鏡を単色光フィルター及びコンピュータソフトウェアプログラムと組合せて使用する顕微鏡細胞撮影を利用してもよい。光フィルターの波長を抗体染色及び細胞対比染色の色にマッチさせる。フィルターにより、顕微鏡使用者は組織切片の免疫染色部分を透過した光の特定色の光学密度の差を確認し、分類した後、測定することができる。これらの方法の腫瘍蛋白質測定への応用については、いずれも本明細書に援用する米国特許第5,235,522号及び5,252,487号参照。更に他の細胞撮影システム(イメージサイトメーター)は輪郭の自動認識が可能であり、輪郭面積の自動計算、自動校正及び平均と積分(ΣOD)光学密度の自動計算を兼備する(例えばいずれも本明細書に援用する米国特許第5,548,661号、5,787,189号参照)。
染色を強度と陽性染色細胞の百分率について評価した実証済みのスコアリング法(Dhanasekaran et al.,2001,Nature 412,822−826;Rubin et al.,2002,前出;Varambally et al.,2002,Nature 419,624−629)を使用して蛋白質発現を判定することができる。良性組織と癌が存在する場合には、一方又は他方の組織種のみを分析目的に評価する。本発明の方法はいずれも0から4のスケールを使用することにより分析をスコアリングすることができ、ここで0は陰性であり(IGF−1Rを検出できないか又は対照サンプルと同一の発現レベル)、4は大半の細胞における高強度の染色である。所定態様では、診断又は予後診断目的にスコアリングを使用することができる。例えば、陽性スコアのときのスコア1は例えばスコア3又は4よりも良好な予後を示すと考えられる。
本発明に従って収集した情報は医師がIGF−1R介在性腫瘍性疾患を示す患者の治療コースを決定するのにも役立つであろう。例えば、乳癌の場合には、低スコアはそれ以上の外科手術が是認されないことを意味すると思われる。
従って、例えば、本発明はIGF−1R発現に関連する腫瘍性疾患に関連する予後の一般的な検出又は監視方法を提供する。前記方法は、a)癌の診断又は監視を必要とする個体から組織サンプルを採取する段階は;b)前記サンプル中のIGF−1Rポリペプチドレベルを検出する段階と;c)前記サンプルをIGF−1R発現レベルについてスコアリングする段階と;d)前記スコアリングを対照組織サンプルから得られたスコアリングと比較し、前記癌に関連する予後を判定する段階を提案する。診断又はモニターすることができる癌としては限定されないが、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、皮膚癌、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫及び骨肉腫が挙げられる。
所定態様において、本発明の方法は該当サンプルをIGF−1Rに対する抗体と接触させることを提案する。所定態様において、検出は免疫組織化学又は免疫細胞化学により組織切片又は細胞プレパラートで実施される。同様に、IGF−1Rの検出はイムノブロッティング又は蛍光励起細胞ソーティング(FACS)により実施することもできる。
本発明はIGF−1R発現に関連する腫瘍性疾患をもつ患者の無病生存及び総生存の予測方法にも関し、a)腫瘍性疾患を示す個体から病変又は癌組織のサンプルを採取する段階と、b)サンプルの癌細胞又は癌組織中のIGF−1R発現細胞のレベルを検出する段階と、c)サンプルをIGF−1Rの発現レベルについてスコアリングする段階と;d)スコアリングを対照サンプルから得られたスコアリングと比較し、無病生存とIGF−1Rに関連する総生存の可能性を判定する段階を含む。好ましくは、スコアリングは0から4のスケールを使用し、0は陰性(IGF−1Rを検出できないか又は対照レベルと同等のIGF−1Rレベル)であり、4は大半の細胞における高強度染色であり、1から4のスコア(即ち陽性スコア)は前記疾患をもつ患者の無病及び総生存の予後不良を指示する。
更に別の態様はIGF−1R介在性癌の治療方法を提供し、a)前記癌の治療を必要とする患者から病変組織のサンプルを採取する段階と;b)組織サンプルにおけるIGF−1Rの発現レベルを測定する段階と;c)サンプルをIGF−1Rの発現レベルについてスコアリングする段階と;d)前記スコアリングを対照サンプルから得られたスコアリングと比較することによりスコアを相関させ、IGF−1Rアンタゴニストによる治療が有効であると思われる患者を同定する段階と、e)特定癌の予後を改善することが分かっている治療レジームで前記患者を治療する段階を含む。所定態様において、前記方法は更に、f)段階「a」及び「b」を反復する段階と、g)癌の予後を改善することが分かっている治療レジームを調節する段階と;h)適切であるとみなされる頻度で段階a〜fを反復する段階を提案する。
別の態様において、本発明はIGF−1R介在性疾患の緩和用治療レジメンの効果の判定方法を提供し、レジメンはIGF−1Rアンタゴニストの使用を含み、前記方法は、a)治療レジメンを受けている個体から細胞又は組織サンプルを採取する段階と、b)細胞又は組織サンプル中のIGF−1Rレベルを測定する段階と;c)サンプルをIGF−1R蛋白質レベルについてスコアリングする段階と、d)レベルを対照サンプルのレベルと比較し、治療レジメンに対するIGF−1R介在性疾患の応答性を予測する段階を含む。従って、低スコア、例えば0又は経時的なスコアの低下はIGF−1Rアンタゴニスト(例えばIGF−1R特異抗体)含む治療が腫瘍負荷又はIGF−1R発現細胞又はIGF−1R発現レベルの低減に有効であることを示唆する。
充実腫瘍の転移能のスクリーニング方法も提供する。前記方法は、a)充実腫瘍の転移能のスクリーニングを必要とする個体から腫瘍組織サンプルを採取する段階と;b)IGF−1Rに対する抗体を患者に由来する腫瘍組織と反応させる段階と;c)抗体と組織の結合程度を検出する段階と、d)抗原の結合程度をその転移能と相関させる段階を含む。XX
本発明は更に腫瘍性疾患を示すIGF−1R発現細胞の存在を可視化するのに有用なインビボ撮影法を包含する。このような技術は不快な生検や他の侵襲的診断法を使用せずに診断を可能にする。投与する本発明の検出可能に標識した抗IGF−1R抗体の濃度は、IGF−1R抗原をもつか又は発現する細胞との結合がバックグラウンドに比較して検出可能になるように十分な濃度とすべきである。更に、最良の標的対バックグラウンドシグナル比が得られるように、本発明の検出可能に標識した抗IGF−1R抗体を循環系から迅速に排出できることが望ましい。
撮影分析は医療分野で周知であり、限定されないが、x線分析、磁気共鳴画像法(MRI)又はコンピュータ断層撮影法(CE)が挙げられる。上記のように、好ましくは、インビボ(及びインビトロ)診断法で使用されるIGF−1R抗体は患者で撮影可能な検出可能な物質/ラベルで直接又は間接的に標識される。適切な検出可能な物質としては各種酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質が挙げられる。原則として、インビボ診断用の本発明の検出可能に標識した抗IGF−1R抗体の用量はある程度患者特異的であり、年齢、性別及び病変の程度等の因子により異なる。用量は例えば所与注射回数、腫瘍負荷及び当業者に公知の他の因子によっても異なる場合がある。例えば、シアニン標識Mabを使用して腫瘍をインビボ標識している。Ballou et al.(1995)Cancer Immunol.Immunother.41:257 263。
放射性標識生体物質の場合には、生体物質を患者に投与し、生体物質が反応する抗原を含む腫瘍に局在させ、例えばガンマカメラ又はエミッショントモグラフィーを使用する放射性核種スキャン等の公知技術を使用してインビボで検出ないし「撮影」する。例えば本明細書に援用するA.R.Bradwell et al.,“Developments in Antibody Imaging”,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwin et al.,(eds.),pp.65−85(Academic Press 1985)参照。あるいは、Brookhaven National Laboratoryに所在のPet VIと呼ばれるもの等のポジトロン放射体軸断層撮影スキャナーを使用することができ、この場合には放射性ラベルがポジトロンを放出する(例えば11C,18F,15O及び13N)。
従って、所定態様において、本発明は具体的にIGF−1Rを発現又はIGF−1R発現細胞(例えば癌)を含有する組織を検出及び可視化できるようにすることにより、癌診断におけるIGF−1R抗体の使用を提供する。前記方法は、(i)抗体とIGF−1Rの相互作用が生じるような条件下でIGF−1Rと特異的に結合する診断有効量の本発明の検出可能に標識した抗IGF−1R抗体もしくはその抗原結合フラグメント又は本発明の抗体もしくはその結合フラグメントを活性成分として含有するその医薬組成物を対象(及び場合により対照対象)に投与する段階と;(ii)結合剤を検出し、例えばIGF−1R発現組織を特定又は他の方法でIGF−1R発現細胞を同定する段階を含む。「診断有効」なる用語は新生物の検出を可能にするために十分な量の本発明の検出可能に標識した抗IGF−1R抗体を投与することを意味する。
所定態様では、x線分析に使用可能なバリウム等の造影剤、又はMRIもしくはCEに使用可能なガドリニウムキレート等の磁気造影剤で本発明の抗体を標識することができる。
前記方法の別の態様では、該当組織がIGF−1Rを発現するか否かを判定するために、患者を画像分析するのでなく、患者から生検を採取する。
放射性標識抗体又は免疫コンジュゲートは診断撮影に有用なγ線放出放射性同位体又はポジトロン放出物質を含むことができる。使用するラベルは選択する撮影法により異なる。インビボ診断用の抗体の使用は当分野で周知である。Sumerdon et al.,(Nucl.Med.Biol 17:247−254(1990))はインジウム−111をラベルとして使用する腫瘍のラジオイムノシンチグラフィー撮影用の最適化抗体−キレート剤を記載している。Griffin et al.,(J Clin Onc 9:631−640[1991])は再発性結腸直腸癌をもつ疑いのある患者で腫瘍を検出するのにこの物質を使用することを記載している。
本発明の方法はインビボ検出目的で常磁性同位体を使用することもできる。磁気共鳴画像法用ラベルとして常磁性イオンをもつ同様の物質を使用することも当分野で公知である(Lauffer,Magnetic Resonance in Medicine 22:339−342[1991])。
平面スキャン又は単一光子放射断層撮影(SPECT)にはインジウム−111、テクネチウム−99m又はヨウ素−131等の放射性ラベルを使用することができる。ポジトロン放射断層撮影法(PET)にはフッ素−19等のポジトロン放出ラベルを使用することもできる。MRIには、ガドリニウム(III)又はマンガン(II)等の常磁性イオンを使用することができる。
インビボ診断撮影法では、入手可能な検出機器の種類が所与の放射性同位体を選択する際の重要な因子である。選択される放射性同位体は所与型の機器で検出可能な型の崩壊でなければならない。インビボ診断用に放射性同位体を選択する際に重要な更に別の因子は、放射性同位体の半減期を標的による最大取込み時にも検出可能であるように十分に長く、且つ個体に対する有害な放射線を最小限にするために十分に短くするという点である。理想的には、インビボ撮影に使用される放射性同位体は粒子放出しないが、従来のガンマカメラにより容易に検出できるように、140〜250keV範囲の多数の光子を発生する。
スカンジウム−47(3.5日)、ガリウム−67(2.8日)、ガリウム−68(68分)、テクネチウム−99m(6時間)及びインジウム−111(3.2日)等の半減期が1時間〜3.5日の放射性金属が抗体修飾に利用可能であり、このうち、ガリウム−67、テクネチウム−99m及びインジウム−111はガンマカメラ撮影に好ましく、ポジトロン放射断層撮影法にはガリウム−68が好ましい。平面スキャンや単一光子放射断層撮影(SPECT)にはインジウム−111、テクネチウム−99m又はヨウ素−131等のラベルを使用することができる。
特異抗体に結合した放射性金属の場合には、同様に、その免疫特異性を損なわず抗体分子にできるだけ高い比率の放射性ラベルを導入することが望ましい。抗体上の抗原結合部位が保護されるように確保するように、本発明の特異的癌マーカーの存在下で放射性標識を実施することにより更に改善を達成することができる。標識後に抗原を分離する。
特に60〜4,000keVのエネルギー範囲で適切な放射性同位体としては、51Cr、57Co、58Co、59Fe、131I、121I、124I、86Y、62Cu、64Cu、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、18F、11C、13N、15O、75Br、75Se、97Ru、99mTc、111In、114mIn、123I、125I、131I、169Yb、197Hg及び201Tl等が挙げられる。例えば撮影目的用として18F、68Ga、94mTc等のポジトロン放出物質を開示しており、その開示内容全体を本明細書に援用する米国特許出願(発明の名称“Labeling Targeting Agents with Gallium−68”−発明者G.L.Griffiths及びW.J.McBride)(米国予備出願第60/342,104号)参照。特に有用な診断/検出用放射性核種としては限定されないが、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94mTc、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、154−158Gd、32P、90Y、188Re及び175Luが挙げられる。
有用なγ線放出放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは20〜2000kdV、より好ましくは60〜600kdV、最も好ましくは100〜300kdVである。
ポジトロン放射断層撮影に有用な放射性核種としては限定されないが、18F、1Mn、2mMn、52Fe、55Co、62Cu、64Cu、68Ga、72As、75Br、76Br、82mRb、83Sr、86Y、89Zr、94mTc、110In、120I及び124Iが挙げられる。有用なポジトロン放出放射性核種の総崩壊エネルギーは好ましくは<2,000keV、より好ましくは<1,000keV、最も好ましくは<700keVである。
本発明は診断剤としての非放射性物質の使用も想定する。適切な非放射性診断剤は磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影又は超音波に適した造影剤である。磁気造影剤としては例えばマンガン、鉄及びガドリニウム等の非放射性金属が挙げられ、本発明の抗体と併用する場合には2−ベンジル−DTPAとそのモノメチル及びシクロヘキシルアナログを含む金属−キレートと組合せと錯形成している。その開示内容全体を本明細書に援用する米国シリアル番号09/921,290(出願日2001年10月10日)参照。
二重特異性抗体もターゲティング方法で有用であり、対象に2種類の診断剤を送達するのに好ましい方法を提供する。その開示内容全体を本明細書に援用する米国シリアル番号09/362,186及び09/337,756は二重特異性抗体を使用するプレターゲティング方法を開示しており、この方法では二重特異性抗体を251Iで標識して対象に送達した後に99mTcで標識した2価ペプチドを添加している。プレターゲティング方法は同様にいずれもその開示内容全体を本明細書に援用する米国特許第6,962,702号(Hansen et al.)、米国シリアル番号10/150,654(Goldenberg et al.)、及びシリアル番号10/768,707(McBride et al.)にも記載されている。送達の結果、125Iと99mTcの優れた腫瘍/正常組織比が得られ、2種類の放射性同位体の有用性が明らかである。抗体を標識するためには公知診断剤の任意組合せを使用することができる。MAbコンジュゲートの抗体成分の結合特異性、治療剤又は診断剤の効力及び抗体のFc部分のエフェクター活性はコンジュゲートの標準試験により測定することができる。
ジスルフィド結合形成により還元抗体成分のヒンジ領域に診断剤を付加することができる。別法として、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシニル(SPDP)等のヘテロ二官能性架橋剤を使用してこのようなペプチドを抗体成分と結合することができる。Yu et al.,Int.J.Cancer 56:244(1994)。このような結合の一般技術は当分野で周知である。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING(CRC Press 1991);Upeslacis et al.,“Modification of Antibodies by Chemical Methods,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birch et al.(eds.),pages 187 230(Wiley−Liss,Inc.1995);Price,“Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritter et al.(eds.),pages 60 84(Cambridge University Press 1995)参照。
抗体糖鎖を介してペプチドを抗体成分に結合する方法も当業者に周知である。例えば、いずれもその開示内容全体を本明細書に援用するShih et al.,Int.J.Cancer 41:832(1988);Shih et al.,Int.J.Cancer 46:1101(1990);及びShih et al.,米国特許第5,057,313号参照。一般方法は少なくとも1個の遊離アミン官能基をもち、複数のペプチドを組込んだ担体ポリマーと、酸化糖鎖部分をもつ抗体成分を反応させる段階を含む。この反応の結果、初期シッフ塩基(イミン)結合を生じ、二次アミンへの還元により安定化して最終コンジュゲートを形成することができる。
免疫コンジュゲートの抗体成分として使用される抗体が抗体フラグメントである場合には、Fc領域は存在しない。しかし、全長抗体又は抗体フラグメントの軽鎖可変領域に糖鎖部分を導入することは可能である。例えば、いずれもその開示内容全体を本明細書に援用するLeung et al.,J.Immunol.154:5919(1995);Hansen et al.,米国特許第5,443,953号(1995),Leung et al,米国特許第6,254,868号参照。組換え糖鎖部分を使用して治療剤又は診断剤に付加する。
患者から組織検体を採取し、本発明の標識抗体の組合せをこのような検体に提供することによりIn situ検出を実施することができる。標識抗体(又はフラグメント)を生体サンプルに添加又は重層することにより抗体(又はフラグメント)を提供することが好ましい。このような手法を使用することにより、試験組織中のIGF−1Rの存在のみならず、IGF−1Rの分布を調べることもできる。本発明を使用し、このようなin situ検出を達成するために多様な組織学的方法(例えば染色法)の任意のものを改変できることが当業者に容易に認識されよう。
更に、本明細書に記載する抗IGF−1R抗体はアフィニティ精製剤として使用することもできる。この方法では、当分野で周知の方法を使用してSephadex樹脂や濾紙等の固相に抗体を固定化する。精製しようとするIGF−1R蛋白質(又はそのフラグメント)を含有するサンプルと固定化抗体を接触させた後、固定化抗体に結合したIGF−1R蛋白質以外のサンプル中の実質的に全材料を除去する適切な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、IGF−1R蛋白質を抗体から放出させる別の適切な溶媒(例えばグリシン緩衝液,pH5.0)で支持体を洗浄する。
本発明はリアルタイムルシフェラーゼを利用するインビボバイオフォトン撮影法(Xenogen,Almeda,Calif.)も提供する。ルシフェラーゼ遺伝子を(例えば本発明のマーカーとの融合蛋白質として)細胞、微生物及び動物に導入する。活性な場合には、発光反応を生じる。CCDカメラ及びソフトウェアを使用して画像を取込み、分析する。
別の態様では、抗IGF−1R抗体を標識せず、抗IGF−1R抗体と結合することができる検出可能な第2の抗体又は他の分子を投与することにより撮影する。限定されないが、放射性核種撮影法、ポジトロン放射断層撮影法、コンピュータ体軸断層撮影法、X線又は磁気共鳴画像法、蛍光検出及び化学発光検出等の公知方法を使用して特異的に結合した標識抗体を患者で検出することができる。
IGF−1Rに介在される腫瘍性疾患を示す疑いのある患者の病態の予後評価を行うためにインビボ撮影法を使用することもできる。
治療用使用法
別の態様において、本発明はその必要のある患者に抗IGF−IR抗体を投与することによりIGF−IR活性を阻害するための方法を提供する。本明細書に記載する抗体から誘導される抗体のいずれか1種以上(例えばヒト化抗体、キメラ抗体等)を治療用に最適化することができる。好ましい1態様において、抗IGF−IR抗体はヒト抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。別の好ましい態様において、IGF−IRはヒトであり、患者はヒト患者である。あるいは、患者は抗IGF−IR抗体と交差反応するIGF−IRを発現する哺乳動物でもよい。獣医学用又はヒト病変の動物モデルとして、抗体と交差反応するIGF−IRを発現する非ヒト哺乳動物(即ち霊長類又はカニクイザル又はアカゲザル)に抗体を投与することができる。このような動物モデルは本発明の抗体の治療効力を評価するために有用であると思われる。
本発明の抗IGF−IR抗体誘導体はIGF−IRを発現する腫瘍をもつ患者に投与することができる。腫瘍は充実腫瘍でもよいし、リンパ腫等の非充実腫瘍でもよい。より好ましい態様では、癌性のIGF−IR発現腫瘍をもつ患者に抗IGF−IR抗体を投与することができる。
別の好ましい態様では、不適切に高レベルのIGF−Iを発現する患者に抗IGF−IR抗体を投与することができる。IGF−Iの高レベル発現が種々の一般的な癌につながることは当分野で公知である。
更に当然のことながら、本明細書に記載する特異的モノクローナル抗体又はその結合フラグメントの混合物等の各種モノクローナル抗体のカクテルを必要又は所望に応じて癌治療用に投与することができる。実際に、癌細胞上の数種の抗原又は異なるエピトープを標的とするようにカクテル状のモノクローナル抗体又はその結合フラグメントの混合物を使用する方法は、特に抗原の1種のダウンレギュレーションによる腫瘍細胞及び/又は癌細胞の回避を妨ぐために有利なアプローチである。
1態様において、前記方法は脳腫瘍、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、十二指腸癌、前立腺癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、婦人科癌又は甲状腺癌等の癌の治療に関する。本発明の方法に従って本発明の化合物で治療することができる患者としては、例えば肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚及び眼球メラノーマ、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、結腸癌、乳癌、婦人科腫瘍(例えば子宮肉腫、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌又は外陰癌)、ホジキン病、十二指腸癌、小腸癌、内分泌系癌(例えば甲状腺、副甲状腺又は副腎癌)、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、慢性もしくは急性白血病、小児充実性腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管癌(例えば腎細胞癌、腎盂癌)、又は中枢神経系の新生物(例えば原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹グリオーマ又は下垂体腺癌)をもつと診断された患者が挙げられる。
別の側面において、抗IGF−IR抗体はその必要のある患者に特定細胞のアポトーシスを誘導するために治療薬として使用することができる。多くの場合、アポトーシスの標的細胞は癌細胞又は腫瘍細胞である。この目的によると、本発明の1態様はアポトーシスの誘導を必要とする患者に治療有効量の抗IGF−IR抗体を投与することによりアポトーシスを誘導する方法を提供する。好ましい1態様において、抗体は本明細書に詳細に記載する抗体又は抗原結合フラグメントを含むその誘導体である。
本発明の抗体は治療薬、放射線を放出する化合物、植物、真菌又は細菌由来分子、生体蛋白質及びその混合物等の各種細胞傷害性薬剤を送達するために使用することができる。細胞傷害性薬剤は例えば、短距離高エネルギーα放射体等の短距離放射線放射体等の細胞内作用性細胞傷害性薬剤とすることができる。
酵素活性毒素とそのフラグメントの例としては、例えばジフテリア毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、所定のシナアブラギリ(Aleurites fordii)蛋白質、所定のジアンチン蛋白質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)蛋白質(PAP,PAPII及びPAP−S)、ツルレイシ(Morodica charantia)インヒビター、クルシン、クロチン、サボンソウ(Saponaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、ミトギリン、レストリクトシン、フェノマイシン及びエノマイシンが挙げられる。イムノトキシンの酵素活性ポリペプチドの作製方法は本明細書に援用するWO84/03508及びWO85/03508に記載されている。所定の細胞傷害性部分は例えばアドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキセート、ネオカルチノスタチン及び白金から誘導される。
生体物質と細胞傷害性物質の結合方法は従来記載されている。本明細書に援用するFlechner,I,European Journal of Cancer,9:741−745(1973);Ghose,T.et al.,British Medical Journal,3:495−499(1972);及びSzekerke,M.,et al.,Neoplasma,19:211−215(1972)にはクロラムブシルと抗体の結合方法が記載されている。本明細書に援用するHurwitz,E.et al.,Cancer Research,35:1175−1181(1975)及びArnon,R.et al.Cancer Surveys,1:429−449(1982)にはダウノマイシンとアドリアマイシンを抗体に結合する方法が記載されている。本明細書に援用する米国特許第4,414,148号及びOsawa,T.,et al.Cancer Surveys,1:373−388(1982)とその引用文献には抗体−リシンコンジュゲートの作製方法が記載されている。カップリング法も本明細書に援用するEP86309516.2に記載されている。
あるいは、腫瘍部位に局在すると、数個の細胞直径を死滅させる高エネルギー放射線放射体、例えば131I、γ放射体等の放射性同位体と本発明の抗体をカップリングすることもできる。例えば本明細書に援用するS.E.Order,“Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy”,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwin et al.(eds.),pp 303−316(Academic Press 1985)参照。他の適切な放射性同位体としては、212Bi、213Bi及び211At等のα放射体と、186Re及び90Y等のβ放射体が挙げられる。前立腺癌は比較的放射線感受性の腫瘍であるため、放射線療法が特に有効であると予想される。
本発明の抗体、特に本明細書に記載する抗体の誘導体を予防用に使用することを含む殺滅又はアブレーション方法も本発明に含まれる。例えば、前立腺癌の発生又は進行を予防又は遅延させるためにこれらの材料を使用することができる。
医薬製剤
所望の純度をもつ抗体を最適な医薬的に許容可能なキャリヤー、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することにより、本発明に従って使用されるIGF−1R結合抗体の治療用製剤を凍結乾燥製剤又は水溶液として保存用に製造する。許容可能なキャリヤー、賦形剤又は安定剤は使用する用量及び濃度でレシピエントに非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸やメチオニン等の酸化防止剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンズアルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチルアルコール又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等の蛋白質;ポリビニルピロリドン等の疎水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;単糖類、二糖類及び他の糖質(グルコース、マンノース又はデキストリンを含む);EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn−蛋白質錯体);及び/又はTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
製剤は治療する特定兆候の必要に応じて2種以上の活性化合物、好ましくは相互に悪影響を与えない相補的活性をもつ化合物を更に含有することができる。例えば、細胞傷害性物質、化学治療剤、サイトカイン又は免疫抑制剤(例えばシクロスポリン等のT細胞に作用するもの又はT細胞と結合する抗体、例えばLFA−1と結合するもの)を更に加えると望ましい場合がある。このような他の物質の有効量は製剤中に存在する抗体の量、病変もしくは疾患又は治療の種類、及び他の上記因子により異なる。
従って、所定態様では、抗体を化学治療剤又は細胞傷害性物質と結合する。適切な化学治療剤又は細胞傷害性物質としては限定されないが、鉛−212、ビスマス−212、アスタチン−211、ヨウ素−131、スカンジウム−47、レニウム−186、レニウム−188、イットリウム−90、ヨウ素−123、ヨウ素−125、臭素−77、インジウム−111等の放射性同位体と、ホウ素−10やアクチニド等の核***性核種が挙げられる。他の態様において、前記物質は毒素又は細胞傷害性薬剤であり、限定されないが、リシン、修飾型シュードモナスエンテロトキシンA、カリケアマイシン、アドリアマイシン、5−フルオロウラシル等が挙げられる。本発明の医薬組成物は抗葉酸化合物を含有することができ、限定されないが、5−フルオロ−2’−デオキシウリジン−5’−一リン酸(FdUMP)、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、ZD1649、MTA、GW1843U89、ZD9331、AG337及びPT523が挙げられる。
本発明の医薬組成物は医薬的に許容可能なキャリヤー又は媒体で製剤化することができる。適切な医薬的に許容可能なキャリヤーとしては水、PBS、塩類溶液(例えばリンゲル液)、アルコール、油類、ゼラチン及び糖質(例えばラクトース、アミロース又は澱粉)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース並びにポリビニルピロリドンが挙げられる。このような製剤は滅菌することができ、所望により滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧作用性塩、緩衝剤及び着色剤等の添加剤と混合することができる。本発明で使用するのに適した医薬キャリヤーは当分野で公知であり、例えば、Pharmaceutical Sciences(17th Ed.,Mack Pub.Co.,Easton,Pa.)に記載されている。
例えばコアセルベーション技術又は界面重合法により作製されたマイクロカプセルに活性成分を封入してもよく、例えば夫々コロイド状薬剤送達システム(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマイクロエマルションにおけるヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルが挙げられる。このような技術はRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
持続放出製剤を製造してもよい。持続放出製剤の適切な例としては、成形品(例えばフィルム又はマイクロカプセル)状の固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスにアンタゴニストを加えたものが挙げられる。持続放出マトリックスの例としてはポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とL−グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドから構成される注射用マイクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
インビボ投与用製剤は無菌でなければならない。これは滅菌濾過膜で濾過することにより容易に実施される。
製品
本発明の別の態様では、IGF−1Rの発現増加に関連する腫瘍性疾患の治療及び/又は検出に有用な材料を含む製品が提供される。製品は容器と容器に貼付又は付属したラベル又はパッケージインサートを含む。適切な容器としては、例えばビン、バイアル、シリンジ、試験管等が挙げられる。容器はガラスやプラスチック等の各種材料から形成することができる。容器は病態の治療に有効な組成物を保持し、無菌入口を備えることができる(例えば容器は静脈内溶液バッグ又は皮下注射針により穿孔可能なストッパー付きのバイアルとすることができる)。組成物中の少なくとも1種の活性剤はIGF−1R特異抗体、例えば本発明の12B1である。容器に貼付又は付属したラベルは組成物が選択病態の診断又は治療用であることを指示する。製品は更にリン酸緩衝食塩水、リンゲル液及びグルコース溶液等の医薬的に許容可能な緩衝液を収容する第2の容器を含むことができる。更に他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ及び使用説明入りパッケージインサート等の商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料も含むことができる。
パッケージインサートとは治療製品の商品パッケージに慣習的に同梱される説明書を意味し、各治療の使用に関する適応症、用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む。1態様において、パッケージインサートは組成物が結腸癌、卵巣癌又は膵臓癌等のIGF−1R介在性疾患の治療用であることを指示する。
更に、製品は注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液等の医薬的に許容可能な緩衝液を収容する第2の容器を更に含むことができる。更に他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針及びシリンジ等の商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料も含むことができる。
診断キット
便宜のために、所定量の試薬と診断アッセイを実施するための説明書のパッケージセット、例えばキットも本発明の範囲に含まれる。キットは例えばELISA又はウェスタンブロットでIGF−1Rをインビトロ検出及び定量するための抗体を含む。本発明の抗体は例えばELISA又はウェスタンブロットでIGF−1Rをインビトロ検出及び定量するためのキットとして提供することができる。抗体を酵素で標識する場合には、キットは基質と酵素が必要とする補因子(例えば検出可能なクロモフォア又はフルオロフォアを提供する基質前駆体)を含む。更に、安定剤、緩衝液(例えばブロック緩衝液又は溶解緩衝液)等の他の添加剤も加えることができる。このようなキットは本発明の別個の成分を保持する容器等の1個以上の容器(例えばバイアル、チューブ等)を受容するように区画されたレセプタクルを含むことができる。例えば、第1の容器には不溶性又は部分可溶性キャリヤーに結合した第1の抗体を収容することができる。第2の容器には凍結乾燥又は溶液状の可溶性の検出可能な標識した第2の抗体を収容することができる。レセプタクルは更に凍結乾燥又は溶液状の検出可能に標識した第3の抗体を保持する第3の容器を含むことができる。この種のキットは本発明のサンドイッチアッセイで使用することができる。ラベル又はパッケージインサートは組成物の性状と、所期インビトロ又は診断用の使用説明を提供することができる。
各種試薬の相対量はアッセイの感度を実質的に最適にする溶液中の試薬濃度となるように広い範囲をとることができる。特に、溶解すると適切な濃度の試薬溶液となる賦形剤を含む通常は凍結乾燥状の乾燥粉末として試薬を提供することができる。
本発明の更に別の側面では、上記抗原をもつ細胞を診断又は同定するために、例えばキットにパッケージングして使用できるように、本明細書に詳述するモノクローナル抗体又はその結合フラグメントを検出可能な部分で標識して提供する。このようなラベルの非限定的な例としては、フルオレセインイソチオシアネート等のフルオロフォア、クロモフォア、放射性核種又は酵素が挙げられる。このような標識抗体又は結合フラグメントは例えば抗原の組織学的局在、ELISA、細胞ソーティング、及びIGF−1Rとこの抗原を含む細胞を検出又は定量するための他の免疫技術に使用することができる。
細胞からのIGF−1Rの精製又は免疫沈降用にアポトーシスアッセイの陽性対照として有用なキットも提供する。IGF−1Rの単離精製のために、キットはビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合した本明細書に記載する抗体(12B1)又はその結合フラグメントを含むことができる。例えばELISA又はウェスタンブロットでIGF−1Rのインビトロ検出及び定量用に抗体を含むキットを提供することができる。製品と同様に、キットは容器と、容器に貼付又は付属したラベル又はパッケージインサートを含む。容器は本発明の少なくとも1種の抗IGF−1R抗体又はその結合フラグメントを含有する組成物を保持する。例えば希釈剤及び緩衝液、対照抗体を収容する他の容器も含むことができる。ラベル又はパッケージインサートは組成物の性状と所期インビトロ又は診断用の使用説明を提供することができる。
以下の実施例は例証として記載するものであり、限定的ではない。以下の実施例はマウス12B1抗体について記載するが、IGF−1Rのエピトープと結合する他のモノクローナル抗体に由来するCDRを使用してIGF−1Rに対して高い結合親和性をもつヒト化抗体を作製することも考えられると理解されよう。上記に詳述した他の誘導体化抗体も考えられる。
本明細書に言及する全刊行物は例えば刊行物に記載されている構築物及び手法のうちで本明細書に記載する発明に関連して使用することができるものを記載及び開示する目的で本明細書に援用する。上記及び明細書の随所に記載する刊行物は本願の出願日以前の開示のみについて引用している。本発明者らが先発明によりこのような開示よりも以前の日付を主張する権利がないと認めるものと解釈すべきではない。
マウスモノクローナル抗体(MAb)の作製及び選択
抗体、特にIRと交差反応しないIGF−IRに特異的なモノクローナル抗体を作製する目的で、4段階のスクリーニング段階を含むプロトコルを実施した。プロトコルは、
−ハイブリドーマを作製するためにマウスにヒト組換えIGF−IRを免疫する段階と、
−免疫に使用したヒト組換え蛋白質でELISAにより細胞培養上清をスクリーニングする段階と、
−MCF−7腫瘍細胞で過剰発現される天然受容体でこの第1回目のELISAから得られたハイブリドーマの全陽性上清を試験する段階と、
−夫々IGF−IR又はIRを発現するバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞でIRに対するIGF−IRの示差的認識に関して最初の2回のスクリーニングで陽性のハイブリドーマの上清を評価する段階から構成した。
上記に概説した各種段階を以下に詳述する。
免疫段階では、マウスにヒト組換えIGF−IRを皮下注射した。脾細胞とミエローマ細胞(Sp20Ag14)の融合の3日前に、ヒト組換え受容体の静注によりマウス免疫応答を刺激した。融合から14日後に、ヒト組換えIGF−IRで感作したプレート上でハイブリドーマ上清をELISAによりスクリーニングした。上清が陽性であったハイブリドーマを選択し、増幅後、FACScan分析により試験し、産生された抗体も天然IGF−IRを認識できることを確認した。これを実施するために、IGF−IRを過剰発現するエストロゲン依存性***腫瘍に由来するMCF−7細胞をELISAにより選択されたハイブリドーマにより産生された各培養上清と共にインキュベートした。フルオロクロムとカップリングした二次抗種抗体により細胞の表面の天然/MAb受容体複合体が検出された。図1は非染色細胞、二次抗体のみと共にインキュベートした細胞又はアイソタイプ対照MAbで標識した細胞と比較して、ハイブリドーマ12B1の上清で得られた代表的なヒストグラムを示す。12B1ハイブリドーマからの上清はIGF−1Rを認識し、細胞単独又は二次抗体単独もしくは無関係なハイブリドーマ上清+二次抗体(無関係なハイブリドーマ上清と二次抗体の組合せ)と共にインキュベートした細胞で染色は認められなかった。
選択プロセスのこの段階では、組換え受容体と天然受容体の両方を認識したモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマのみを選択し、クローニングし、産生後に精製し、その後、2種類の受容体の両方を認識するハイブリドーマを排除するために、IGF−IR又はIRを発現するSf9昆虫細胞で上記方法に従ってFACScan分析により試験した。図2は夫々IGF−1R(αIR3)及びIRに対する市販抗体で実施した非感染及び感染Sf9細胞の特性決定を示す。左パネル(2A)では、夫々非感染細胞+二次抗体(1)、αIR3で標識した非感染細胞+二次抗体(2)及び抗IR抗体で標識した非感染細胞+二次抗体(3)に対応するヒストグラム1,2,3の完全な重複が認められる。
図2Aのこのデータから明らかなように、非感染Sf9細胞の表面に検出可能なIGF−IR及びIRは存在しない。図2BはIGF−IRを発現するバキュロウイルスによる感染細胞の標識を示す。この2番目の図面では、陽性対照として使用したαIR3 MAbから明らかなように、これらの細胞はIGF−1Rを発現する(ピーク2)。他方、抗IR MAbで染色すると、予想通り、IR発現に対応するシグナルは認められなかった(ピーク3)。最後に、図2Cは標識抗IGF−1R抗体により示される良好な染色を実証している(ピーク3)。他方、IGF−IRに特異的であるとして文献に記載されているαIR3も同様にIRを認識するようであり(ピーク2)、予想外であった。
第3のスクリーニングシステムで得られた結果を表1にまとめるが、同表から明らかなように、12B1抗体はIGF−1R上のエピトープを認識するが、インスリン受容体(IR)と特異的に結合することができない。12B1抗体のアイソタイピングによると、IgG1であることが判明した。
ウェスタンブロット分析
材料及び手法
蛋白質及び膜抽出物
組換えヒトインスリン受容体(IR)及びインスリン様成長因子I受容体(IGF−1R)細胞外領域(ECD)はR&D Systems(Lille,France)から購入した。IGF−1Rを過剰発現するNIH 3T3細胞の膜抽出物は以下に詳述するように取得した。要約すると、10mM Tris−HCl pH7.5緩衝液中で細胞溶解後、4℃にて1時間105,000gで遠心することにより全細胞膜を集めた。150mM NaCl,0.5% IGEPAL,0.5% Triton X−100,0.25%デオキシコール酸ナトリウム及びプロテアーゼインヒビターを添加した50mM Tris−HCl pH7.5緩衝液にペレットを再懸濁し、+4℃で一晩撹拌した。+4℃にて10分間10,000gで遠心することによりhIGF−1Rを含有する可溶性抽出物から不溶性材料を分離した。ビシンコニン酸アッセイにより可溶性膜抽出物の蛋白濃度を分析した。
電気泳動とウェスタンブロット
還元条件と非還元条件下にCriterion7%均一ポリアクリルアミドゲル(BioRad,Marnes la Coquette,France)でSDS−PAGE電気泳動により蛋白質を分析した。純組換えIR及びIGF−1R ECDには4、20及び100ngの等量をロードしたが、膜抽出物でIGF−1Rをウェスタンブロットにより検出するためにはもっと多量の0.2〜6μgの蛋白質が必要であった。蛋白質をニトロセルロース膜に転写した。0.1% Tween 20を添加したTris緩衝食塩水中、1%無脂肪乳で室温にて1時間ブロッキング後、膜を一晩4℃にて抗体12B1(ブロッキング緩衝液中0.05μg/ml)でプローブした。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgGポリクローナル抗体(Amersham Biosciences,3,000倍希釈液)と共に室温で1時間インキュベーションし、十分に洗浄後に蛋白質を更に化学発光(ECL,Amersham Biosciences,Orsay,France)により検出した。
図3に示すように、モノクローナル抗体「12B1」は非還元条件下でSDS−PAGE分析後にウェスタンブロットによると、IGF−1Rの天然α2β2(アルファ2ベータ2)四量体、即ち組換えIGF−1R ECDとNIH 3T3 IGF−1R+細胞に由来する全長IGF−1Rを特異的に検出することが明らかである。同一条件下でIR ECDに対する反応性が認められないことから、IGF−1Rに対する12B1の特異性が確認された。
更に、IGF−1Rの完全還元体で12B1の反応性が認められなかったため、そのエピトープは非直鎖状であり、立体配座的であると結論される。
モノクローナル抗体(mAb)12B1の重鎖及び軽鎖可変領域をコードする遺伝子のクローニングストラテジー
(供給業者SIGMA,T9424の指示に従って)TRI REAGENT(登録商標)を使用することにより抗体12B10を分泌するハイブリドーマの細胞107個から全RNAを抽出した。Amersham−Pharmaciaの「第1鎖cDNA合成」キット(#27−9621−01,供給業者の指示に従う)を利用して第1鎖cDNAを合成した。2本の鎖について、キットに同梱されたオリゴヌクレオチドNot I−d(T)18で反応をプライミングした。
12B1 mAbの重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子のPCR増幅にこうして得られたcDNA:mRNAハイブリッドを使用した。マウス免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖(κ)に特異的なオリゴヌクレオチドの組合せを使用することによりPCRを実施した。5’末端に対応するプライマーはシグナルペプチドに対応する領域にハイブリダイズする(重鎖は表2,軽鎖は表2)。これらのプライマーはデータバングに含まれる多数のマウス抗体配列から構築した(Jones S.T.et al.,Bio/Technology 9:88−89,1991)。3’末端に対応するプライマーは重鎖(V−C連結部から遠くないサブクラスIgG1のCH1領域,MHC−1プライマー、表4)と軽鎖(V−C連結部から遠くないκ領域,MKCプライマー、表4)の定常領域にハイブリダイズする。
マウス12B1ハイブリドーマからクローニングした免疫グロブリン配列
上記実施例3に記載した増幅ストラテジーに従い、「pGEM−T Easy Vector system」(Promega)を使用することにより、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域に対応するPCR産物をクローニングした。
12B1 VLでは、マウスκ遺伝子の定常領域の3’末端に対応するMKCプライマー(上記表4参照)とMKV−5A(上記表3参照)の組合せでPCR産物が得られた。
12B1 VHでは、マウスγ遺伝子の定常領域CH1の3’末端に対応するMHC−1プライマー(上記表4参照)とMHV−6(上記表2参照)の組合せでPCR産物が得られた。
PCR産物を十分に配列決定した処、各軽鎖及び重鎖にユニークな1個の配列が判明した。これらは機能的マウス免疫グロブリン部分の可変領域の特徴を示す。
12B1 VLをコードするcDNAのDNA配列とアミノ酸配列を表5に示す。12B1 VHをコードするcDNAのDNA配列とアミノ酸配列を表5に示す。
[125I]−IGF−1結合阻害実験
材料及び方法
蛋白質及び膜抽出物
標識ヒト組換え[125I]−IGF−1(比活性:2,500 Ci/mmole)はPerkin Elmer(Boston,MA,USA)から購入した。非放射性標識組換えヒトIGF−1とインスリンはSigma(Saint Quentin Fallavier,France)から入手した。抗hIGF−1Rモノクローナル抗体17−69(mAb 17−69)はNeomarkers(Fremont,CA,USA)から入手した。
IGF−1Rを過剰発現するNIH 3T3細胞の膜抽出物は次のように得た。10mM Tris−HCl pH7.5緩衝液中で細胞溶解後、4℃にて1時間105,000gで遠心することにより全細胞膜を集めた。150mM NaCl,0.5% IGEPAL,0.5% Triton X−100,0.25%デオキシコール酸ナトリウム及びプロテアーゼインヒビターを添加した50mM Tris−HCl pH7.5緩衝液にペレットを再懸濁し、+4℃で一晩撹拌した。+4℃にて10分間10,000gで遠心することによりhIGF−IRを含有する可溶性抽出物から不溶性材料を分離した。ビシンコニン酸アッセイにより可溶性膜抽出物の蛋白濃度を分析した。
125I−IGF−1結合アッセイ
先ずMAb17−69をProtein A FlashPlate(登録商標)96ウェルマイクロプレートにコーティングした。20μg/ml mAbのPBS溶液2000μlを各ウェルに加え、一晩+4℃でインキュベートした。蛋白質Aに結合しない残留mAb17−69を含有する緩衝液を吸引により除去した。更に100μg/mlの膜溶解液200μlを加え、2時間室温でインキュベートし、IGF−1Rを固定化した。捕捉されなかった蛋白質を吸引により除去した。競合アッセイのために、50mM Hepes pH7.6,150mM NaCl,0.05% Tween 20,1%ウシ血清アルブミン及び1mM PMSFを含有する結合用緩衝液中で1pM〜1μMの各種濃度の抗hIGF−1Rモノクローナル抗体12B1及び7C10又はリガンドIGF−1、IGF−2並びにインスリンの存在下に100pMの125I−IGF−1と固定化IGF−1Rの結合を測定した。プレートを室温で2時間インキュベート後、Packard Top Count Microplate Scintillation Counterで計数した。1μMのIGF−1の存在下で非特異的結合は測定されなかった。hIGF−1Rに特異的ではないが、大腸菌蛋白質を特異的に認識するモノクローナル抗体9G4をマウスIgG1アイソタイプ対照として使用した。
結果
全特異的125I−IGF−1結合の百分率を半対数グラフにリガンド濃度の関数としてプロットした。得られたS字型競合曲線から放射性リガンド結合を50%阻害するために必要な各種阻害剤の濃度(IC50)をグラフにより求めた(図4)。
モノクローナル抗体12B1は100nM未満の濃度では固定化hIGF−1Rとの125I−IGF−1結合を阻害することができなかった。最大試験濃度1μMで特異的125I−IGF−1結合の40%阻害が認められた。抗体12B1で得られた競合曲線は対照非IGF−1ブロッキング抗体9G4で得られた曲線と同様であった(図4)。モノクローナル抗体7C10は0.2nMのIC50で125I−IGF−1結合を効率的に排除し、この値は夫々非放射性標識IGF−1及びIGF−2について測定したIC50値の約10分の1と100分の1である(図4)。データから明らかなように、抗体12B1及び7C10は異なるIGF−1結合阻害特性を示す。
2種の抗IGF−1Rマウスモノクローナル抗体7C10及び12B1のエピトープマッピング
抗体と抗原の結合は特異的結合部位又はエピトープを規定し、同一又は近接する結合部位をもつ別の抗体との結合を立体的に妨害する可能性がある。1対の抗体の特異性は抗原とのそれらの同時結合を試験することにより容易に判定することができる。両方の抗体の並行結合により明確な結合部位を同定することができるが、同一又は近接する結合部位は第2の抗体の結合を妨げる。特定抗体のエピトープ特異性パターンを同定及び決定するために、未標識モノクローナル抗体のパネルを有効に試験することができる生体分子間相互作用解析(Biomolecular Interaction Analysis:「BIA」)によりエピトープマッピングを実施することができる。例えばSjolander and Urbaniczky(1991)Anal.Chem.63:2338 2345及びSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699 705)参照。「BIA」又は「表面プラズモン共鳴法」は相互作用物質(例えばBIAcore)を標識せずにリアルタイムで生物特異的相互作用を検出する。(結合イベントを示す)結合表面の質量変化の結果、表面の近傍の光の屈折率が変化し(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、その結果、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用可能な検出可能なシグナルが得られる。
BIA技術を使用し、IGF−1R蛋白質の細胞外領域でマウスモノクローナル抗体7C10及び12B1の各々により認識されるエピトープを判定するように実験を設計した。2種の抗体の各々はIGF−1Rの細胞外領域の別個のエピトープと結合することがデータにより確認された。
材料及び方法
材料/機器−BIAcore X機器、CM4バイオセンサーチップ、HBS−EP緩衝液、pH5及びpH4酢酸緩衝液、グリシン、HCl pH1.5緩衝液、アミンカップリングキットはBIAcoreから入手した。可溶性ヒトIGF−1RはR&D Systems(ref 305−GR−CF)から入手した。
抗体溶液:精製7C10の4.12mg/ml溶液と精製12B1の1.85mg溶液をストック溶液として使用した。
Biacoreアッセイ
センサーチップ作製:製造業者の指示に従い、本実験はHBS−EP緩衝液を流速5μl/minでランニングバッファーとして使用して25℃で実施した。
アミンカップリングキットからのNHS溶液とEDC溶液の50/50(v/v)混液を使用してフローセル2(FC2)の活性化後、酢酸緩衝液(pH5.0)で調製したIGF−1R細胞外領域の3μg/ml溶液を1分間に2回注入した。結合したIGF−1Rの量は十分でなかったため、pH4.0酢酸緩衝液でIGF−1Rの3μg/ml溶液を調製した。この溶液を1分間に1回と3分間に2回注入した。アミンカップリングキットからのエタノールアミン溶液を使用して飽和後、439RUのIGF−1RがFC2に結合した。NHSとEDCを7分間注入することにより参照フローセル(FC1)を活性化し、脱活性化した(エタノールアミンを7分間注入)。2005年10月20日に作製したこのセンサーチップを3か月以上4℃で乾燥保存した。
抗体のワーキング溶液
7C10の8.24μg/ml溶液(ストック溶液の500倍HBS−EP希釈液に対応)と12B1の7.4μg/ml溶液(ストック溶液の250倍HBS−EP希釈液に対応)を調製した。各溶液を5分間注入後、180RUの7C10と146RUの12B1がセンサーチップに捕捉された。理論上では、439RUの結合したIGF−1Rは(439/365)×160=192RUの抗体を捕捉することができる。
エピトープマッピング実験
HBS−EP緩衝液を流速10μl/minで25℃にてランニングバッファーとして使用した。5分間の注入でFC2の結合部位の飽和を助長するように両方の抗体のワーキング濃度を決定した。一方の抗体で飽和後、飽和を確認するために同一溶液を1分間注入後、第2の抗体を1分間注入した。再生後、抗体の注入順序を変えることにより同一実験を実施した。
結果−7C10と12B1の同時結合
7C10(5分)、7C10(1分)及び12B1(系列1)と、12B1(5分)、12B1(1分)及び7C10(1分)(系列2)の順次注入により得られたセンサーグラムを図5に報告する。この実験はその注入位置に関係なくどちらの抗体も同様にIGF−1R分子と結合できることを明白に示している。
上記実験は12B1及び7C10の結合部位が立体障害なしに両者の同時結合を可能にするために十分な距離にあることを明白に示している。
ビオチン化モノクローナル抗体(mAbs)の阻害
MCF−7細胞をトリプシン処理し、細胞1 106個を96ウェルプレートの各ウェルでFACS緩衝液(リン酸緩衝食塩水+10% FCS)に撒いた。終濃度10μg/mlの13F5、2D10、7A4、7C10、12B1又は13G5非染色抗体の存在下に細胞を30分間4℃でインキュベートした。次に、各非染色抗体を全抗体と競合させるように、ビオチン化抗体(終濃度12μg/ml)をウェルに加えた。FACS緩衝液中に4℃で保存したMCF−7細胞を陰性対照として維持し、各ビオチン化抗体のみで染色した細胞を陽性対照として使用した(各被験抗体の最大シグナル)。ストレプトアビジンAlexa Fluor 488コンジュゲートを4℃で20分間加えることによりビオチン化抗体の結合を検出した。次に細胞を洗浄し、FACS緩衝液に懸濁し、フローサイトメトリーにより分析した。試験した2種類の抗体(染色抗体と非染色抗体)が同一又は重複するエピトープを認識した場合には、得られたシグナルはビオチン化抗体単独で観察されたシグナルに比較して低下する。他方、試験した2種類の抗体が重複しないエピトープに特異的な場合には、単独で使用した染色抗体のシグナルに比較してシグナルの変化は認められなかたった。図6では、非競合抗体を記号(−)で表し、競合抗体をシグナル変動に応じて記号(+)、(++)、(+++)で表す。
免疫組織化学試験(IHC)
細胞株のパラフィン包埋及びIHC染色手順
細胞回収及びパラフィン包埋−コンフルエントT225フラスコをトリプシン処理し(HyClone SH30236−01)、得られた細胞懸濁液を1200rpmで10分間遠心によりペレット化した。培地を吸引し、バラバラにした各細胞ペレットに加温したHistogel(Richard−Allan Scientific HG−4000−012)3〜4滴を加えた。Histogelペレットを混合し、2〜8℃に60分間冷却し、10%ホルマリンに16〜24時間浸した。Histogelペレットに70%エタノール、95%エタノール、100%エタノール、キシレン及びパラフィンを一晩浸透させた(Sakura VIP5A−F1)。次にHistogelペレットをパラフィン(Sakura TEC5EMA−15101)に包埋し、5μmに切断し、Superfrost plusスライド(Fisher 12−550−15)にマウントした。
免疫組織化学−切片を脱パラフィン処理し、再水和し、熱誘導エピトープ回収用のDecloaking Chamber(Biocare Medical DC2002)でTarget Retrieval Buffer 1X(Dako S 1699)に125℃で30秒間浸した。Peroxidase Blocking Reagent(Dako K4007)を使用して内在ペルオキシダーゼ活性を10分間ブロックした。切片をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、IGF−1Rマウスモノクローナル抗体(0.3μg/ml,クローン12B1,Pierre Fabre)又は陰性対照としてマウスIgG1/κ(0.3μg/ml,クローンNCG02,Lab vision)と共に室温で30分間インキュベートした。切片をPBSで洗浄し、Envision+ポリマーと共に室温で30分間インキュベートし、PBSで洗浄し、ジアミノベンジジンを使用して茶色い反応生成物を発色させた(Dako K4007)。スライドをヘマトキシリンに30秒間浸漬し、対比染色した(Sigma MHS32)。
図7に示すように、IGF−1Rマウスモノクローナル抗体クローン12B1は各種細胞株の細胞膜を示差的に染色する。この免疫組織化学法では、茶色い反応生成物は細胞膜の陽性染色に相関し、茶色い反応生成物の不在は細胞膜の陰性染色と非可視化に相関する。IgG対照マウスIgG1/κはアイソタイプをマッチさせた対照である。
図7に関して、(A)はIGF−IR遺伝子を標的破壊したNIH 3T3マウス胚繊維芽細胞であり、従ってIGF−1Rを発現しないR細胞と呼ぶ陰性対照を表す。染色の不在はIGf−IR発現細胞の不在に相関する。(B)はヒト***上皮腺癌であるMCF7細胞を表す。対照IgG細胞に対する陽性染色はIGF−1R発現細胞の存在を示唆している。(C)ヒト結腸上皮結腸直腸腺癌であるHT29細胞も陽性染色される。(D)同様に、ヒト肺上皮癌であるA549細胞も陽性染色され、パネル(E)に示すヒト盲腸上皮結腸直腸癌であるLS411N細胞も同様である。他方、パネル(F)に示すようなSW403細胞(ヒト結腸上皮結腸直腸腺癌)は染色しなかったため、IGF−1R発現細胞に陰性であるか、又はこのような細胞の濃度が著しく低いとみなされた。パネル(G)に詳細に示すようなヒト結腸上皮結腸直腸腺癌であるLS123細胞でも同様である。図面から明らかなように、各細胞株のパネル(H−N)IgG対照は陰性である。原画倍率40倍。
ヤギポリクローナル抗体及びマウスクローン12B1によるFFPEヒト組織中のIGF−1Rの免疫組織化学検出(IHC)
ヒト組織におけるIGF−1Rの検出用免疫組織化学(IHC)アッセイを開発及び検証するために、12B1抗体をR&D Systemsから市販されているヤギポリクローナル抗体と併用して各種試験を実施した。
目的は乳癌、結腸癌、肺癌及び膵臓癌を含む一連のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ヒト腫瘍でこれらの抗体を試験することであった。扁桃を陽性対照として試験した。正常皮膚のサンプルも試験した。
方法:
材料−抗体−(i)IGF−1R特異的ヤギポリクローナル抗体及び(ii)12B1マウスモノクローナル抗体。多数の条件下で抗体を試験し、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍及び正常組織における最適反応性を調べた。ヤギIgGとマウスIgGを陰性対照として並行して試験した。
組織前処理:厚さ4ミクロンの切片を多数の異なるヒト組織から作製した。4、5分間キシレンの交換後、等級アルコール系列から蒸留水まで置換することにより組織切片を脱ロウした。多数の前処理を試みた。数種の異なるSHIER溶液と共に蒸気熱誘導エピトープ回収法(SHIER)を使用した。更に、多数の酵素消化法も試験した。Black and Decker Steamerの上部チャンバーのキャピラリーギャップ内で加熱を実施した。詳細な記載については、Ladner et al,Cancer Res.,60:3493−3503,2000)参照。
最適前処理及び希釈
R&DヤギIGF−1R:SHIER2+酵素(1:40);腫瘍には1.0μg/ml(1時間一次)、皮膚には2.0μg/ml(1時間一次)
12B1クローン:SHIER2+酵素(1:40);腫瘍及び皮膚に0.75μg/ml(一晩)
免疫組織化学プロトコル:
アビジン−ビオチン系組織染色システムをIGF−1R抗体の検出に使用した。西洋ワサビペルオキシダーゼをレポーター酵素として使用し、DABを発色基質として使用した。
ヤギポリクローナルIGF−1RのIHC手順(プロトコルMIPE−1時間一次インキュベーション):
1.ブロッキング試薬15分(正常ウサギ血清)
2.プロテイナーゼK消化(1:40)10分
3.一次抗体1時間室温でインキュベーション(R&D製品IGF−1R)
4.二次抗体25分(ビオチン化ウサギ抗ヤギIgG)
5.内在ペルオキシダーゼブロッキング3×2.5分
6.ABC(アビジン−ビオチン複合体)/西洋ワサビペルオキシダーゼ25分
7.DAB発色基質3×5分(茶色い反応生成物)
8.ヘマトキシリン対比染色1分。
マウスモノクローナル(クローン12B1)IGF−1RのIHC手順(プロトコルMIPE−ONインキュベーション):
1.ブロッキング試薬15分(正常ヤギ血清)
2.プロテイナーゼK消化(1:40)10分
3.一次抗体−一晩室温(Merck製品IGF−1R,クローン12B1)
4.二次抗体25分(ビオチン化ウサギ抗ヤギIgG)
5.内在ペルオキシダーゼブロッキング3×2.5分
6.ABC(アビジン−ビオチン複合体)/西洋ワサビペルオキシダーゼ25分
7.DAB発色基質3×5分(茶色い反応生成物)
8.ヘマトキシリン対比染色1分。
上記手順はTechMate 500及び1000 Automated IHC Instruments(BioTek Solutions/Ventana Medical Systems)を使用して完全に自動化した。
染色後にスライドを無水エタノールまでのアルコール系列で脱水後、キシレンでリンスした。スライドに永久的にガラスカバースリップとパーマウントを載せた。各調製後にスライドを顕微鏡試験し、染色を調べ、改良試験を決定した。陽性染色は発色基質(DAB−HRP反応生成物)として見える濃茶色により示される(図面に「暗色部」染色として認められる)。ヘマトキシリン対比染色は青色核染色を生じ(「明色部」として見える)、細胞及び組織形態を評価する。オリンパス製ビデオカメラを使用して代表的染色のデジタル画像を撮影した。画像を圧縮jpegsとして保存し、本文書にインポートした。
ホルマリン固定パラフィン包埋組織はQualTekのヒト組織バンクから入手した。
結果と考察
FFPE扁桃で多数の組織前処理を試験後に、両方の標識IGF−1R抗体で原形質膜反応性が得られた。ヤギポリクローナル(対照)とマウス12B1クローンは同様の細胞種を染色し、扁桃で同様の亜細胞局在であった(図8A)。上皮陰窩の細胞ではどちらの抗体でも強い膜染色が検出された。拡散性細胞質染色は原形質膜染色を伴うことが多い。どちらの抗体も扁桃上皮の基底細胞を優先的に染色し、原形質膜局在である。マウスIgG又はヤギIgG陰性対照ではいずれも同様の染色は検出されなかった(図8B)。
肺癌と結腸癌でもIHCプロトコルを試験した。各抗体の最適IHCアッセイ条件は下記に詳述する抗体仕様書に記載する。扁桃(n=1)、乳癌(n=2)、肺腺癌(n=2)、肺扁平上皮癌(n=2)、結腸癌(n=3)、膵臓癌(n=2)及び正常皮膚(n=5)を含む一連の組織で各抗体の最適プロトコルを異なる2時点で試験した。各抗体の染色の結果を下記反応性の表に詳細に示す。組織種の各々について最適化プロトコルによる代表的なIHC染色のデジタル顕微鏡写真と図面見出しを図9〜16に示す。
乳癌におけるIGF−1R反応性
2個の異なる乳癌を12B1及び対照ヤギポリクローナル抗体の各抗体で試験した。2種の抗体を比較すると、ほぼ同一の染色が観察された。乳癌の一方は弱〜中程度の原形質膜局在で染色/標識され、他方の乳癌は強い原形質膜局在で染色された(図9A)。強く明色に染色される腫瘍が一般に2種の抗体の反応性の良好な指標とみなされる。データから明らかなように、乳癌では抗体は同様の強度と百分率の陽性腫瘍細胞と反応し、特異性と感受性の一致が示唆された。どちらの陰性対照でも殆ど〜全く染色は検出されなかった(図9B)。
結腸癌におけるIGF−1R反応性
3個の異なる結腸癌をIGF−1R特異抗体、12B1モノクローナル抗体及びヤギIGF−1Rポリクローナル抗体の各々で試験した。扁桃と乳癌で認められたほぼ同一の染色パターンと異なり、結腸癌は2種の抗体の各々に対して異なる反応性を示した。どちらの抗体も腫瘍細胞のサブセットを原形質膜局在で染色し、12B1は一般に強いゴルシ様粒状/球状細胞質パターンで染色した。この染色は多くの場合には核周囲であり、細胞の先端の内腔側の部分に向かって極局在であった(図10A及び11)。この染色パターンは陰性対照では認められなかった(図10B)。ヤギポリクローナルは12B1に比較してやや高い百分率の細胞を原形質膜パターンで染色するようであった。強いゴルシ様染色は12B1膜染色を陽性腫瘍の所定領域で目立たなくしているように見えた。
上記染色はヤギポリクローナルIGF−1Rでは検出されなかったため、特異的であったか否かを調べようとして12B1抗体を更に試験した。非ビオチン系検出システムを試験し(Dako Envision and Neomarkers UltraVision)、染色が潜在的に内在ビオチンに起因するか否かを調べた。どちらの検出システムでもゴルジ様染色が持続しているようであったため、染色はビオチンの非特異的結合の結果ではないと思われた(データは示さず)。正常ヤギ血清がこの染色の原因であるか否かを調べるために、IHC検出試薬中で正常ヤギ血清の存在下と不在下の結腸癌も試験した。やはり、ヤギ血清の不在下でもゴルジ様パターンが持続した(データは示さず)。まとめると、データはゴルジ様染色が12B1抗体に特異的であることを裏付けているようである。
肺癌におけるIGF−1R反応性
肺腺癌
2個の異なる肺腺癌を両方のIGF−1R抗体で試験した。これらのサンプルの一方ではどちらの抗体でもほぼ同一の染色が認められ、両方の抗体に対する大半の腫瘍細胞の強い原形質膜反応性が実証された(図12−左画像)。第2のサンプルでもほぼ同一の原形質膜反応性が認められたず、12B1抗体はゴルジ様細胞質染色も示した(図12−右画像)。このサンプルで認められた不均一原形質膜染色はどちらの抗体でもほぼ同一であった。基質側の細胞における腫瘍の基底領域でも原形質膜染色が検出されたが、組織の他の領域で検出された膜染色は少なかった。抗体はこの不均一染色を反映しているようであり、それらの反応性の類似性が更に加わった。
肺扁平上皮癌
2個の異なる扁平上皮肺癌をIGF−1R抗体の各々で試験した。図13に示すようにほぼ同一の染色パターンが認められた。試験したどちらの腫瘍でも腫瘍細胞の大部分は両方の抗体で染色され、強い原形質膜局在であった。どちらの抗体でも同様の基質染色も検出された。基質染色は他の検出システムでも認められた(図示せず)。
膵臓癌におけるIGF−1R反応性
2個の異なる膵臓癌を両方のIGF−1R抗体で試験した。抗体の各々で同様の染色パターンが認められた(図14)。両方の抗体、例えば対照と12B1は腫瘍細胞の明色の断続的な原形質膜染色を示すようであった。両方の抗体は膵島細胞も原形質膜局在で染色した(図示せず)。12B1抗体では僅かに強い染色が観察された。患者の1人は12B1抗体による腫瘍細胞の粒状細胞質染色を示した。この染色はヤギポリクローナル抗体では検出されなかった(図14)。
正常皮膚におけるIGF−1R反応性
5個の異なる正常皮膚サンプルを両方のIGF−1R抗体で試験した。2種の抗体を比較すると、ほぼ同一の染色が明らかである。上皮の基底細胞はどちらの抗体でも全組織で明色の多くの場合には不完全な原形質膜パターンで染色された。毛嚢周辺の上皮細胞はどちらの抗体でもより強く、より完全な原形質膜染色を示した(図15)。汗腺の上皮細胞はどちらの抗体ども原形質膜局在で染色された。
皮膚でより良好な反応性を得るために、ヤギポリクローナルIGF−1R抗体の濃度を扁桃と腫瘍で設定した1.0μg/mlから2.0μg/mlに増加した。皮膚における12B1の濃度は他の組織で使用した濃度と同一とした。