本発明は、基材と、少なくとも2つの個体構造体と、ばね要素とから構成され、上記ばね要素によって、上記個体構造体は上記基材に連結すると共に互いにも連結しており、力伝播体とタップとをさらに含み、上記構成は、上記力伝播体によって励起できる励起モードと、上記タップによって測定できる検知モードとを含み、上記検知モードは、励起された上記励起モードにおいて、受感軸を中心として回転する際のコリオリの力に基づいて励起されるコリオリジャイロに関する。
コリオリジャイロ(コリオリ振動型ジャイロスコープ)は用いられる振動モードに応じて2種類に分けることができる。
1.形状及び屈曲振動(例えば、ワイングラス型(半球共振ジャイロスコープ:HRG)、リング型及びバー型)
2.ばね−質量系(例えば、Lin−Rot、Rot−Rot及びLin−Linであり、Lin−Rotでは、上記励起モードは直線運動(「Lin」)を含み、上記検知モードは回転運動(「Rot」)を含むことを意味する。Rot−Rot及びLin−Linは、同様の方法で定義される。)
上記の2種類には、振動及び加速度の感度の面で、特有の長所及び短所がある。
1.形状及び屈曲振動
長所:外部閉鎖型有用モード(励起モード及び検知モード)が通常用いられる。これらのモードは、いかなる力及びモーメントをも外部には伝播しない。従って、これらのモードは、(線形及び/または回転構成要素による)直線加速度によっても、振動によっても、励起されることはない。「外部」とは、上記基材の「周辺領域」を表わす(質量要素または個体構造体の運動の結果、上記基材自体に力またはモーメントが局所的に作用することはあるが、これらは全体として互いに相殺される)。上記基材は、接着またははんだ付けなどによって、筐体またはセラミック(一般に「マウント(mount)」と呼ばれる)に搭載される。閉鎖型モードにおいては、このマウントには、力もモーメントも全く伝播されない。しかしながら、これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。
短所:公知の構造の大部分が、柔軟な緩衝装置を必要とする(例えば、リング及びバー;例外の1つに、上記のいわゆる半球共振ジャイロスコープ(HRG)があるが、これは、その「真の三次元」構造に起因する複雑な製作工程が求められる)。従って、上記の構造では、加速度及び振動が起こった時に偏角する程度が比較的大きく、またこれが多くの力伝播体(例えば、静電気力伝播体)及びタップ(例えば、容量タップ)における誤りへと繋がる。さらに、上記の必要とする力が過度に大きいため、直交性補償、つまり作動要素を用いた上記構造の「釣り合い」は、事実上不可能である。
2.ばね−質量系
長所:P.Greiff、B.Boxenhorn、T.King及びL.Niles、「シリコン・モノリシック・マイクロメカニカル・ジャイロスコープ(Silicon Monolithic Micromechanical Gyroscope)」、Tech.Digest、固体センサ及びアクチュエータ(Solid−State Sensors and Actuators)に関する第6回国際会議(トランスデューサ(Transducers)’91)、サンフランシスコ、CA、USA、1991年6月、pp.966−968;J.Bernstein、S.Cho、A.T.King、A.Kourepins、P.Maciel及びM.Weinberg、「マイクロ機械加工櫛型駆動部音叉レートジャイロスコープ(A Micromachined Comb−Drive Tuning Fork Rate Gyroscope)」、IEEEマイクロ電気機械システムワークショップ(IEEE Micro Electromechanical Systems Workshop;MEMS’93)報告書、フォートローダーデール、FL、USA、1993年2月、pp.143−148;及びDE 196 41 284 C1に、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得る他のモードの共振周波数よりも、上記有用モードの共振周波数を大幅に低くすることができる構造が開示されている。重大な誤り信号を生じるモードとは、特に、検知運動の測定信号に影響を与えるモードである。通常、励起運動の測定に影響を与えるモードの引き起こす損害は、上記モードよりも少ない。
短所:振動、及び直線加速度によっても頻繁に、有用モードの1つまたは両方が励起されることがあり、従って誤り信号を生じ得る。
従って、本発明は、加速度及び振動に対して感度のより低い、ばね−質量系に基づく回転数センサを具体的に定義することを目的とする。
本発明によると、上記目的は請求項1の特徴を有するコリオリジャイロによって達成される。両方の有用モード(励起モード及び検知モード)がいずれも閉鎖型である、この種類の構造は提案されている。上記有用モードは、加速度及び振動によって励起させることはできず、誤り信号は生じない。これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。上記コリオリジャイロは、基材並びに複数の個体構造体(少なくとも2つ)及びばね要素を含んでいる。上記ばね要素によって、上記個体構造体のいくつかは上記基材に接続され、いくつかは互いに接続されている。この結果、上記構成は少なくとも2つの閉鎖型固有モードを含み、そのうちの1つは上記励起モードとして用いることができ、もう一方を上記検知モードとして用いることができる。上記励起モードは、力伝播体によって励起させることができる。上記コリオリジャイロがその受感軸を中心として回転する場合、上記励起振動の結果、コリオリの力が生じ、これが上記検知モードを励起させる。上記検知モードにおける運動は、タップによって測定することができる。これによる振動の振幅は測定変数として用いることできる。
請求項2に記載の効果的な改良によると、上記コリオリの力は、力伝播体によってリセットすることができる。これによって、上記個体構造体によるそれがなくなるので、より正確な評価に繋がる。力伝播体は、この目的のために必要であり、この力伝播体によってモーメント及び力を上記検知モードに加えることができる。よって、リセットに用いるモーメントまたはリセットに用いる力の振幅は、角速度の大きさとなる。
上記励起モードの運動は、請求項3に記載されるように、タップを用いて容易に確認することができる。
請求項4に記載されるような、直交性補償のための作動要素及び/または請求項5に記載されるような、周波数調整のための作動要素は、設けられることによって効果をもたらし、それぞれが設定または制御できるように作られている。マイクロ技術を用いて製造される高精度コリオリジャイロでは、直交性補償及び周波数調整は効果的である。レーザトリミングによって両方ともを実現することが可能ではあるが、このようなプロセスは高価である。作動要素によって、上記調整プロセス自体に費用がほとんどかからないという有利な点がもたらされる。
請求項6に記載の効果的な改良には、上記有用なモードの共振周波数が、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得るモードの共振周波数よりも大幅に低くすることができる構造が開示されている。従って、振動に依存する誤りがさらに軽減される。これらの構造には、上記「形状及び屈曲振動」の種類と、上記「ばね−質量系」の種類との長所を備えており、よってそれぞれの欠点を避けることができる。
次に、上記長所を定量化するために用いられる2つの状況について説明する。
第1の場合(閉鎖型検知モードの利点)
上記検知モードは、線形振動によって、または、上記励起モードが動作される周波数(一般的に、上記励起モードにおける上記共振周波数であり、同調させた共振周波数を用いた場合、上記検知モードの共振周波数でもある)において音響的に正確である場合に励起される。作用する上記加速の振幅は、a0である。これは、以下の記述において、「g」という単位で表わされる。説明を簡単にするために、外乱力の位相及び上記コリオリの力の位相は同一であるものとする。
第1の変形例:上記検知モードは「単純」線形振動である(逆位相線形振動ではない)。よって、上記加速度はコリオリ加速度と区別することができず、誤り信号Ωvを生じる。共振周波数がf0=ω0/(2π)=10kHzで、上記励起モードの振幅が10μmである場合、以下のようになる。
第2の変形例:上記検知モードは、単純回転振動である。質量の不均衡は、k2=1%である。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第3の変形例:上記検知モードは、一対の回転振動の差動モードに対応する(閉鎖型モード)。それ以外に関しては第2の変形例の条件と同様の条件において、質量の不均衡はおよそ100倍少ない(k3=100ppm)ものとすることができる。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第2の場合(請求項6に記載の発明の利点)
上記振動における回転加速度部分は、以下に記載される共振周波数よりも大幅に低い周波数のレベルで考慮される。
変形例1:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl1は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも低く、例えば以下のように表わされる。
変形例2:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl2は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも高く、例えば以下のように表わされる。
上記の励起によって、上記変形例1及び2の上記共通モードにおける、結果としての偏角の比率は、以下のとおりである。
上記共通モードにおける上記励起によって生じる誤りは、上記共通モードにおける上記偏角、または上記偏角の二乗に比例するので、変形例2における上記誤りは、因数9から81によって通分される。
請求項7に記載されるように、上記構造は、上記有用モードにおける上記共振周波数が、他のいかなるモードにおける共振周波数よりも大幅に低くなり、これらのモードでの励起における誤りが減少するように、作られている。
請求項8に記載される、利点をもたらす例示された改良は、閉鎖型励起モードとしての、互いにも逆位相である、一対の逆位相線形振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果であり(Lin−Rot)。また請求項14に記載される、閉鎖型励起モードとしての、一対の逆位相回転振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果である(Rot−Rot)。請求項15に記載される、とりわけ効果的な改良では、3つの閉鎖型固有モードがあり、互いに異なる受感軸を中心とする回転のために、そのうちの1つの固有モードは、例えば励起モードとして用いることができ、他の2つの固有モードは検知モードとして用いることができる。
請求項13に記載の、好適な改良によると、振動は上記基材の表面に平行して起こり、運動を検知する必要がなく、上記基材の表面に対して直角の運動も必要ないため、上記コリオリジャイロを容易に製造することができる。
請求項18の効果的な改良によると、上記個体構造体が、励起部及びサンプル質量体を含む分断された構造の形式である。これによって、以下の利点が得られる。
1.上記励起部は、概して理想的に誘導される。上記励起部の駆動と、上記励起モードとの間の角度にどのような誤りがあっても、概して上記検知モードの励起には繋がらず、よって誤り信号も生じない。
2.上記検知モードの偏角は、上記励起部に働く駆動力の変化には概して繋がらない。
3.つまり、上記励起部に対する励起力と、上記検知モードにおける運動との間の、望ましくない相互作用は、その大部分が抑制されるということである。
請求項19には、励起部と、コリオリ要素と、検知部とからなる二重に分断された構造が記載されている。これはさらに、「ピックオフ分断」へと繋がるが、これはつまり、上記検知部の上記タップと、上記励起部の運動との間の角度にどのような誤りがあっても、概して誤り信号を生じることはないことを示す。
請求項22に記載の効果的な改良によると、4つの個体構造体が設けられる。これらによって、上記閉鎖型有用モードを容易に実現できる。
下記に、本発明に係る上記コリオリジャイロの例示的な実施態様を、以下の図面を参照して説明する。
励起モードにて線形振動をし、検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第2の例示的な実施態様における、第1の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの上記第2の例示的な実施態様における、第2の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第3の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第4の例示的な実施態様の概略図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの第5の例示的な実施態様における、第1の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第2の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第3の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第4の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第5の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第6の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第7の変形例の模式的平面図を示す。
場合によっては、明確さを保つため、上記図中において、同一の部材でも同一の参照符号が付されていないものもあるが、図示される相称及び同一の図面に基づけば、上記図中のいずれの部材がいずれの参照符号に属するかは、当業者にとって明らかであろう。
図1から図4において、薄い灰色で示される要素は全て、個体構造体としての動く「質量要素」であり、この個体構造体は、概して極めて堅固なものであると考えることができる。濃い灰色(黒)で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。
図1に、第1の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第1質量要素(mass element)61を4つ備えている。第1質量要素61は、第1x連結ばね要素1a及び連結ばね要素2を介して互いに連結されるとともに、第2x連結ばね要素1b、接続要素4、及び第1基材ばね要素3を介して基材5(本実施態様においては固定部のみ)に連結されている。互いに逆位相である上記質量要素61による、二対の逆位相線形振動は、励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロが受感軸Ωを中心として回転する場合、検知モード8が励起される。これは、y軸を中心とする一対の逆位相回転振動として表わすことができる。上記y軸は、上記受感軸Ωに対して平行であり、上記x方向に対して直角である(Lin−Rot)。上記x連結ばね要素1a及び1bは、x方向において柔軟であり、それ以外の方向において堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。上記第1基材ばね要素3は、上記y軸を中心とする回転に対して柔軟であり、それ以外の回転に対して堅固である。本コリオリジャイロにおいては、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。また、基本的に、上記励起モードと上記検知モードとは互いに入れ替え可能である。つまり、上記した、上記y軸を中心とする一対の逆位相回転振動は上記励起モードとして用いることができ、またこれら一対の逆位相線形振動は上記検知モードとして用いることができる。
図2aに、第2の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第2質量要素62を2つ備えている。第2質量要素62は、連結ばね要素2を介して互いに連結されており、第2基材ばね要素21を介して基材5(本実施態様においては固定部22のみ)に連結されている。z方向を軸とする、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による、一対の逆位相回転振動は、上記励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロがその受感軸Ωを中心として回転している間、上記検知モードとして、y軸を中心とする、一対の逆位相回転振動が励起される(Rot−Rot)。この一対の逆位相回転振動は、上記受感軸Ωに対して直角であり、上記励起モード7における上記回転軸zに対して直角である。上記第2基材ばね要素21は、上記z軸及びy軸を中心とする回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図2bに、図2aの上記コリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、励起モード7が上記と同様である。すなわち、上記z方向を軸とし、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による一対の逆位相回転振動が用いられる。別の第2基材ばね要素21aは、上記z軸、x軸及びy軸を中心とした回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記に示したコリオリジャイロは第2閉鎖型検知モード8_2を有する。これは上記コリオリジャイロによる第2受感軸Ω2を中心とした回転の間に励起され、x軸を中心とした、一対の逆位相回転振動からなる。従って、上記に示したコリオリジャイロは「2軸」ジャイロと見なすこともできる。よって、このコリオリジャイロには閉鎖型モードが3つあり、これらは励起モードとして用いることができ、また上記受感軸によっては検知モードとして用いることができる。
図3に、第3の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第3質量要素63を4つ備えている。第3質量要素63は、xy連結ばね要素23を介して互いと、そして基材5(本実施態様においては固定部24のみ)とに連結されている。上記質量要素63による、上記x方向及び上記y方向に対して45°の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記に示した例では、斜め方向に向かい合う2つの第3質量要素63が互いから離れるように動くとき、向かい合う他の2つの第3質量要素63はそれぞれ互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する第3質量要素63が上記y方向において互いから離れるように動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いに向かって動く。上記y方向において隣接する上記第3質量要素63が上記y方向において互いに向かって動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いから離れるように動く。上記xy連結ばね要素23は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図4に、第4の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第4質量要素64を4つ備えている。第4質量要素64は、別のxy連結ばね要素25を介して互いと、基材5(本実施態様においては固定部26のみ)とに連結されている。上記x方向における上記第4質量要素64の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記x方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は上記x方向において互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は互いに向かって動く。上記別のxy連結ばね要素25は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
下記の図5から図11に、第1から第7の変形例に基づいて、第5の例示的な実施態様をより詳細に示す。本発明は、この第5の例示的な実施態様には限定されず、当業者は本明細書の記載に基づいて、進歩的な技術を用いることなく、上記第1から第4の例示的な実施態様の具体的な変形例を見出すことができるであろう。
上記第1から第7の変形例において、上記受感軸Ωは各図面の平面に対して直角である。
薄い灰色で示される要素は全て、動く「質量要素」であり、この質量要素は、概して極めて堅固なものであると見なすことができる。濃い灰色で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。線は、ばね要素の構成要素として用いられる曲げ梁(bending beams)を示す。これらの曲げ梁は、長手方向において概して極めて堅固である。上記z方向における曲げ梁の長さが、上記長手方向に直角の、図の面方向の長さよりも大幅に大きい場合、上記曲げ梁は、上記長手方向に直角の、図の面方向における軸の方向よりも、上記z方向の方が大幅に堅固である。ばね構造体の一部である上記曲げ梁及び上記質量要素はともに、その質量/慣性モーメントを、多くの場合、概して無視することができる。
以下の記載において、上記の「慨して」という表現は、例えば「本質的に」と表現される。
特にマイクロ技術を用いた方法などの、様々な製造方法が上記変形例の製造に適している。上記の全変形例は、例えば、出願日及び出願人が本願と同一である未公開のドイツ特許出願「Method for Production of a Component,and a Component(部品の製造方法及び部品)」に記載の上記マイクロ技術を用いた製造方法、または「conventional surface−micromechanical processes(従来の表面マイクロメカニカルプロセス)」(例えばRobert Bosch GmbH、Analog Devices)を用いて、製造することができる。
図5に示す上記第1の変形例は、基材(図示せず)と、第1個体構造体500と、第2個体構造体600と、第3個体構造体700と、第4個体構造体800とによって構成されている。上記第1個体構造体500は第1励起部510を含み、第1励起部510は第1xばね要素511を介して第1固定点513において上記基材に取り付けられている。第1コリオリ要素520は、第1yばね要素521を介して上記第1励起部510に接続されている。第1検知部530は、第1x回転ばね要素531を介して上記第1コリオリ要素520に接続されている。
上記第2個体構造体600、第3個体構造体700、及び第4個体構造体800はそれぞれ、上記と同様に、第2励起部610、第3励起部710、及び第4励起部810、第2xばね要素611、第3xばね要素711、及び第4xばね要素811、第2固定点613、第3固定点713、及び第4固定点813、第2yばね要素621、第3yばね要素721、及び第4yばね要素821、第2コリオリ要素620、第3コリオリ要素720、及び第4コリオリ要素820、第2x回転ばね要素631、第3x回転ばね要素731、及び第4x回転ばね要素831、第2検知部630、第3検知部730、及び第4検知部830から構成されている。
上記第1励起部510は上記第2励起部610に、また同様に上記第3励起部710は上記第4励起部810に、それぞれ第1連結ばね要素561及び781によって直接連結されている。上記第1励起部510と第4励起部810、及び上記第2励起部610と第3励起部710は、それぞれ第2連結ばね要素58及び67によって直接連結されている。上記第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部730と第4検知部830は、それぞれ第3連結ばね要素564及び784によって直接連結されており、第1及び第2連結検知部を形成する。第1連結検知部530、630は、上記第4連結ばね要素5678を介して直接、上記第2連結検知部730、830に連結されている。
上記xばね要素511、611、711及び811は、上記x方向において柔軟であり、上記y及びz方向において極めて堅固である。これらは、誘導性を向上させるために、固体要素512、612、712及び812に接続されている。上記yばね要素521、621、721及び821は、上記y方向において柔軟であり、上記x及びz方向において極めて堅固である。上記yばね要素521、621、721及び821は、図11に示す別のyばね要素551、651、751及び851に対応するように、一端に形成されてもよい。上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記x方向と、(図中では、それぞれ別のばね要素の上方に配置される2つのばね要素の)対称軸12、13、14及び15を中心として上記z方向においてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と上記検知部530、630、730及び830との間の相対的回転と、上記x方向における距離の変化とをともに可能にする結合部としての特性を有する。
上記第1連結ばね要素561及び781は、上記x方向において柔軟であり、上記z及びy方向において堅固になるように作られている。上記第3連結ばね要素564及び784は、曲げ梁565及び785と、基材566及び786の固定部とによって構成されている。上記第3連結ばね要素564及び784は、上記z方向10及び11における、それぞれの対称軸を中心としたねじれに対して柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記第3連結ばね要素564及び784は回転ばね要素と見なすこともできる。
上記第2連結ばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であり、上記z方向において堅固になるように作られている。上記の全ばね構造体の場合のように、上記図面は設計例を示す。一例として、上記第2連結ばね要素58及び67の代わりに、図10に示すばね141及び241に対応する、変形連結ばねを用いることも可能である。
上記第4連結ばね要素5678は、上記y方向と、上記z方向16における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。上記第4連結ばね要素5678は、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げる。
上記励起モードは、上記第1励起部510及び第2励起部610と上記第1コリオリ要素520及び第2コリオリ要素620とのそれぞれ、並びに上記第3励起部710及び第4励起部810と上記第3コリオリ要素720及び第4コリオリ要素820とのそれぞれによる、上記x軸方向における2つの線形の逆位相振動に対応する。これら2つの逆位相振動は、さらに互いに逆位相である。上記励起モードの上記共振周波数は、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820の質量と、上記ばね要素511、611、711及び811、上記別のばね要素531、631、731及び831、上記第1連結ばね要素561及び781、並びに上記第2連結ばね要素58及び67のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記検知モードは、回転振動と線形振動とが複合したモードに対応する。これらは、上記第1検知部530及び第2検知部630による、対称軸10を中心とした、上記z方向における回転振動と、上記第3検知部730及び第4検知部830による、対称軸11を中心とした、上記z方向における回転振動との、2つの回転振動である。これら2つの回転振動は、互いに逆位相である。この場合、上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、「ある種の回転振動」を行う。これらは、上記第1yばね要素521と第2yばね要素621、及び上記第3yばね要素721と第4yばね要素821によって、上記第1励起部510と第2励起部610、及び上記第3励起部710と第4励起部810に対して、それぞれ上記y方向において誘導される。上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、上記第1x回転ばね要素531と第2x回転ばね要素631、及び上記第3x回転ばね要素731と第4x回転ばね要素831によって、対応する第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部と第4検知部830に対して、それぞれ回転することができる。上記検知モードの上記共振周波数は、上記コリオリ要素520、620、720及び820、並びに上記検知部530、630、730及び830の質量/慣性モーメントと、上記第4連結ばね要素5678、上記第3連結ばね要素564及び784、上記x回転ばね要素531、631、731及び831、並びに上記yばね要素521、621、721及び821のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4力伝播体514、614、714及び814を備えており、これらによって上記励起モードは励起される。これらの力伝播体514、614、714及び814は、上記励起振動のタップとして作られているか、または別のタップを備えることができる。上記に示した例では、力伝播体514、614、714及び814として、いわゆる櫛形駆動部が示してある。
本明細書で用いられる「櫛形駆動部」及び「平面コンデンサ構成」という表現は、本願においては以下のように解釈するものとする。
・「櫛形駆動部」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、「ディッピング(dipping)」電極を用いている。つまり、上記電極の重なりが変化する。ディッピング電極の両側においては、通常同一の電極分離が選択される。
・「平面コンデンサ構成」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、電極分離が運動の間に変化する。これは、1つの移動電極の両側において異なる電極分離を選択すること(上記周波数だけを不適切に調整することが目的である場合、同一の電極分離を選択してもよい)、または逆に移動電極の両側において互いに電位の異なる静止電極を用いることによって、実現することができる。
図5の上記櫛形駆動部は、上記励起部510、610、710及び810と一体化した移動電極515、615、715及び815と、上記基材に固定されている電極516、616、716及び816とを備える。櫛形駆動部は、同時に、力伝播体としてもタップとしても用いることができる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4タップ534、634、734及び834を備えており、これらによって上記検知振動は検知される。これらのタップは、リセットモードにおいて、コリオリの力を補償するために、力伝播体としても機能するように作られているか、または、必要であれば、別の力伝播体を備えることができる。上記に示した例では、平面コンデンサ構成はタップとして示されており、平面分離は、上記検知運動の間に変化する。上記タップはそれぞれ、検知部530、630、730及び830とそれぞれ一体化した第1〜第4移動電極535、65、735及び835と、上記基材に固定されている第1〜第4電極536、636、736及び836とを備えている。平面コンデンサ構成は、同時に、力伝播体としても、タップとしても用いることができる。
上記検知部は上記励起運動を行わないため、櫛形駆動部は上記検知振動のタップ(及び/または力伝播体)としても用いることができる点が重要である。上記検知振動のタップとしての、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成には、印加電圧によって上記検知モードにおける上記共振周波数が変化するという特性がある。これは一方で、上記周波数を(二重共鳴に)設定するために意図的に用いることができる。また一方で、一例として、上記共振周波数は上記タップ機能のために変調信号によって、または(回転数に依存する)リセット電圧によって変調される。櫛形駆動部には、この不利な点がない。櫛形駆動部を用いるとき、上記周波数調整を可能にするために、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成をさらに一体化させることができる。
なお、周波数同調体(frequency tuning)524、624、724及び824のための別の力伝播体、タップ及び/または装置を、それぞれのコリオリ要素に備えることもできる。上記に示した例は、上記平面分離の変化する平面コンデンサ構成に関する。これらの構成は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と一体化した移動電極と、上記基材に固定された電極526、626、726及び826(記載の各箇所に電極は1つのみ)とを含む。
上記第1の変形例の構造には、上記x方向における直線加速度及び上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいては、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
上記第1の変形例において、各箇所の2つの検知部はともに回転振動を行う。つまり、静止電極536、636、736及び836を有するタップ534、634、734及び834を含む上記に示した例では、上記平面コンデンサ構成における上記平面分離の上記変化は位置に依存する。これによって、設計及び線形近似の複雑さが増す結果になる。例えば、上記櫛形駆動部がタップ/力伝播体として用いられ、上記周波数調整が上記装置524、624、724及び824によって行われる場合、上記のように複雑さが増すことはない。
さらに、上記検知部の線形振動は、上記x方向と、上記z方向における対称軸を中心とする回転とにおいて柔軟であり、それ以外の回転に対しては極めて堅固な増設ばね541、641、741及び841、並びに、上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては極めて堅固なばね要素542、642、742及び842を介した、上記基材上の上記検知部530、630、730及び830の付加的な固定によってもたらすことができる(図6の上記第5の例示的な実施態様の上記第2の変形例参照)。上記検知部530、630、730及び830を上記コリオリ要素520、620、720及び820に接続する上記ばね要素531b、631b、731b及び831bは、「結合特性」を全く必要としないため、端を2つ備えるように作ることができる。
図7の上記第3の変形例は、概して上記第1の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第4励起部510及び810、並びに上記第2及び第3励起部610及び710を接続するばね要素58b及び67bは、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向における直線加速度によって、上記x方向においてほとんど偏角することがないように変更されている。
上記第3の変形例では、その構造には、上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいて、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
図8の上記第4の変形例は、概して上記第3の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第2励起部510及び610、並びに上記第3及び第4励起部710及び810を連結する上記ばね要素561b及び781bは、上記z軸を中心とする回転加速度によって上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向においてほとんど偏角することがないようにも変更されている。この場合、上記変更されたばね要素561b及び781bは、(上記z方向における)対称軸を中心とする回転、並びに上記y方向における偏角に対して柔軟であり、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固なy回転ばね要素562及び782と、上記回転ばね564及び784に対応する方法で作られた回転ばね563及び783とを含む。
図9に、概して上記第1の変形例に対応する第5の変形例を示す。ばね5678aは、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げず、上記共通モードと上記差動モードとの間の周波数分離を実現するだけである。この場合、上記有用モードの上記共振周波数は、加速度及び/または振動によって励起され得る上記モードの上記共振周波数よりも依然として大幅に低くはなく、重大な誤り信号を生じさせる。
図10に、第6の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体100、200、300及び400はそれぞれ簡易な第1〜第4振動構造体110、210、310及び410からのみ構成される。上記振動構造体110、210、310及び410は、上記閉鎖型励起モード及び検知モードを実現するためにxyばね要素141及び241によって連結されている。xyばね要素141及び241は、xy面においては柔軟であるが、それ以外の面においては極めて堅固である。さらに、上記検知モードは、y回転ばね1234によって連結させることができる。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第6の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、2つの逆位相回転振動と見なすことができる。
図11に、第7の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800はそれぞれ、第1〜第4励起部510、610、710及び810と、第1〜第4サンプル質量体550、650、750及び850とからなる、簡易に分断された構造体から構成される。上記閉鎖型励起モードへの連結は、xyばね要素58及び67によって実現される。当該xyばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であるが、それ以外の方向においては極めて堅固である。上記閉鎖型検知モードは、xy回転ばね5678aによって実現される。当該xy回転ばね5678aは、上記x及びy方向と、上記z方向における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいては柔軟であるが、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固である。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第7の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、複合したモードと見なすことができる。
本発明は、基材と、少なくとも2つの個体構造体と、ばね要素とから構成され、上記ばね要素によって、上記個体構造体は上記基材に連結すると共に互いにも連結しており、力伝播体とタップとをさらに含み、上記構成は、上記力伝播体によって励起できる励起モードと、上記タップによって測定できる検知モードとを含み、上記検知モードは、励起された上記励起モードにおいて、受感軸を中心として回転する際のコリオリの力に基づいて励起されるコリオリジャイロに関する。
コリオリジャイロ(コリオリ振動型ジャイロスコープ)は用いられる振動モードに応じて2種類に分けることができる。
1.形状及び屈曲振動(例えば、ワイングラス型(半球共振ジャイロスコープ:HRG)、リング型及びバー型)
2.ばね−質量系(例えば、Lin−Rot、Rot−Rot及びLin−Linであり、Lin−Rotでは、上記励起モードは直線運動(「Lin」)を含み、上記検知モードは回転運動(「Rot」)を含むことを意味する。Rot−Rot及びLin−Linは、同様の方法で定義される。)
上記の2種類には、振動及び加速度の感度の面で、特有の長所及び短所がある。
1.形状及び屈曲振動
長所:外部閉鎖型有用モード(励起モード及び検知モード)が通常用いられる。これらのモードは、いかなる力及びモーメントをも外部には伝播しない。従って、これらのモードは、(線形及び/または回転構成要素による)直線加速度によっても、振動によっても、励起されることはない。「外部」とは、上記基材の「周辺領域」を表わす(質量要素または個体構造体の運動の結果、上記基材自体に力またはモーメントが局所的に作用することはあるが、これらは全体として互いに相殺される)。上記基材は、接着またははんだ付けなどによって、筐体またはセラミック(一般に「マウント(mount)」と呼ばれる)に搭載される。閉鎖型モードにおいては、このマウントには、力もモーメントも全く伝播されない。しかしながら、これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。
短所:公知の構造の大部分が、柔軟な緩衝装置を必要とする(例えば、リング及びバー;例外の1つに、上記のいわゆる半球共振ジャイロスコープ(HRG)があるが、これは、その「真の三次元」構造に起因する複雑な製作工程が求められる)。従って、上記の構造では、加速度及び振動が起こった時に偏角する程度が比較的大きく、またこれが多くの力伝播体(例えば、静電気力伝播体)及びタップ(例えば、容量タップ)における誤りへと繋がる。さらに、上記の必要とする力が過度に大きいため、直交性補償、つまり作動要素を用いた上記構造の「釣り合い」は、事実上不可能である。
2.ばね−質量系
長所:P.Greiff、B.Boxenhorn、T.King及びL.Niles、「シリコン・モノリシック・マイクロメカニカル・ジャイロスコープ(Silicon Monolithic Micromechanical Gyroscope)」、Tech.Digest、固体センサ及びアクチュエータ(Solid−State Sensors and Actuators)に関する第6回国際会議(トランスデューサ(Transducers)’91)、サンフランシスコ、CA、USA、1991年6月、pp.966−968;J.Bernstein、S.Cho、A.T.King、A.Kourepins、P.Maciel及びM.Weinberg、「マイクロ機械加工櫛型駆動部音叉レートジャイロスコープ(A Micromachined Comb−Drive Tuning Fork Rate Gyroscope)」、IEEEマイクロ電気機械システムワークショップ(IEEE Micro Electromechanical Systems Workshop;MEMS’93)報告書、フォートローダーデール、FL、USA、1993年2月、pp.143−148;及びDE 196 41 284 C1に、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得る他のモードの共振周波数よりも、上記有用モードの共振周波数を大幅に低くすることができる構造が開示されている。重大な誤り信号を生じるモードとは、特に、検知運動の測定信号に影響を与えるモードである。通常、励起運動の測定に影響を与えるモードの引き起こす損害は、上記モードよりも少ない。
短所:振動、及び直線加速度によっても頻繁に、有用モードの1つまたは両方が励起されることがあり、従って誤り信号を生じ得る。
EP1515119A1に、それぞれが、逆位相で線形に振動する二対の個体センサを含む、線形の検知モードを持つ回転数センサが開示されている。
従って、本発明は、加速度及び振動に対して感度のより低い、ばね−質量系に基づく回転数センサを具体的に定義することを目的とする。
本発明によると、上記目的は請求項1の特徴を有するコリオリジャイロによって達成される。両方の有用モード(励起モード及び検知モード)がいずれも閉鎖型である、この種類の構造は提案されている。上記有用モードは、加速度及び振動によって励起させることはできず、誤り信号は生じない。これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。上記コリオリジャイロは、基材並びに複数の個体構造体(少なくとも2つ)及びばね要素を含んでいる。上記ばね要素によって、上記個体構造体のいくつかは上記基材に接続され、いくつかは互いに接続されている。この結果、上記構成は少なくとも2つの閉鎖型固有モードを含み、そのうちの1つは上記励起モードとして用いることができ、もう一方を上記検知モードとして用いることができる。上記励起モードは、力伝播体によって励起させることができる。上記コリオリジャイロがその受感軸を中心として回転する場合、上記励起振動の結果、コリオリの力が生じ、これが上記検知モードを励起させる。上記検知モードにおける運動は、タップによって測定することができる。これによる振動の振幅は測定変数として用いることできる。
請求項2に記載の効果的な改良によると、上記コリオリの力は、力伝播体によってリセットすることができる。これによって、上記個体構造体によるそれがなくなるので、より正確な評価に繋がる。力伝播体は、この目的のために必要であり、この力伝播体によってモーメント及び力を上記検知モードに加えることができる。よって、リセットに用いるモーメントまたはリセットに用いる力の振幅は、角速度の大きさとなる。
上記励起モードの運動は、請求項3に記載されるように、タップを用いて容易に確認することができる。
請求項4に記載されるような、直交性補償のための作動要素及び/または請求項5に記載されるような、周波数調整のための作動要素は、設けられることによって効果をもたらし、それぞれが設定または制御できるように作られている。マイクロ技術を用いて製造される高精度コリオリジャイロでは、直交性補償及び周波数調整は効果的である。レーザトリミングによって両方ともを実現することが可能ではあるが、このようなプロセスは高価である。作動要素によって、上記調整プロセス自体に費用がほとんどかからないという有利な点がもたらされる。
請求項6に記載の効果的な改良には、上記有用なモードの共振周波数が、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得るモードの共振周波数よりも大幅に低くすることができる構造が開示されている。従って、振動に依存する誤りがさらに軽減される。これらの構造には、上記「形状及び屈曲振動」の種類と、上記「ばね−質量系」の種類との長所を備えており、よってそれぞれの欠点を避けることができる。
次に、上記長所を定量化するために用いられる2つの状況について説明する。
第1の場合(閉鎖型検知モードの利点)
上記検知モードは、線形振動によって、または、上記励起モードが動作される周波数(一般的に、上記励起モードにおける上記共振周波数であり、同調させた共振周波数を用いた場合、上記検知モードの共振周波数でもある)において音響的に正確である場合に励起される。作用する上記加速の振幅は、a0である。これは、以下の記述において、「g」という単位で表わされる。説明を簡単にするために、外乱力の位相及び上記コリオリの力の位相は同一であるものとする。
第1の変形例:上記検知モードは「単純」線形振動である(逆位相線形振動ではない)。よって、上記加速度はコリオリ加速度と区別することができず、誤り信号Ωvを生じる。共振周波数がf0=ω0/(2π)=10kHzで、上記励起モードの振幅が10μmである場合、以下のようになる。
第2の変形例:上記検知モードは、単純回転振動である。質量の不均衡は、k2=1%である。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第3の変形例:上記検知モードは、一対の回転振動の差動モードに対応する(閉鎖型モード)。それ以外に関しては第2の変形例の条件と同様の条件において、質量の不均衡はおよそ100倍少ない(k3=100ppm)ものとすることができる。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第2の場合(請求項6に記載の発明の利点)
上記振動における回転加速度部分は、以下に記載される共振周波数よりも大幅に低い周波数のレベルで考慮される。
変形例1:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl1は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも低く、例えば以下のように表わされる。
変形例2:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl2は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも高く、例えば以下のように表わされる。
上記の励起によって、上記変形例1及び2の上記共通モードにおける、結果としての偏角の比率は、以下のとおりである。
上記共通モードにおける上記励起によって生じる誤りは、上記共通モードにおける上記偏角、または上記偏角の二乗に比例するので、変形例2における上記誤りは、因数9から81によって通分される。
請求項7に記載されるように、上記構造は、上記有用モードにおける上記共振周波数が、他のいかなるモードにおける共振周波数よりも大幅に低くなり、これらのモードでの励起における誤りが減少するように、作られている。
いくつかの改良は、閉鎖型励起モードとしての、互いにも逆位相である、一対の逆位相線形振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果であり(Lin−Rot)、また、閉鎖型励起モードとしての、一対の逆位相回転振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果である(Rot−Rot)。他の改良では、3つの閉鎖型固有モードがあり、互いに異なる受感軸を中心とする回転のために、そのうちの1つの固有モードは、例えば励起モードとして用いることができ、他の2つの固有モードは検知モードとして用いることができる。
請求項10に記載の、好適な改良によると、振動は上記基材の表面に平行して起こり、運動を検知する必要がなく、上記基材の表面に対して直角の運動も必要ないため、上記コリオリジャイロを容易に製造することができる。
請求項11の効果的な改良によると、上記個体構造体が、励起部及びサンプル質量体を含む分断された構造の形式である。これによって、以下の利点が得られる。
1.上記励起部は、概して理想的に誘導される。上記励起部の駆動と、上記励起モードとの間の角度にどのような誤りがあっても、概して上記検知モードの励起には繋がらず、よって誤り信号も生じない。
2.上記検知モードの偏角は、上記励起部に働く駆動力の変化には概して繋がらない。
3.つまり、上記励起部に対する励起力と、上記検知モードにおける運動との間の、望ましくない相互作用は、その大部分が抑制されるということである。
請求項12には、励起部と、コリオリ要素と、検知部とからなる二重に分断された構造が記載されている。これはさらに、「ピックオフ分断」へと繋がるが、これはつまり、上記検知部の上記タップと、上記励起部の運動との間の角度にどのような誤りがあっても、概して誤り信号を生じることはないことを示す。
請求項15に記載の効果的な改良によると、4つの個体構造体が設けられる。これらによって、上記閉鎖型有用モードを容易に実現できる。
下記に、本発明に係る上記コリオリジャイロの例示的な実施態様を、以下の図面を参照して説明する。
励起モードにて線形振動をし、検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第2の例示的な実施態様における、第1の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの上記第2の例示的な実施態様における、第2の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第3の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第4の例示的な実施態様の概略図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの第5の例示的な実施態様における、第1の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第2の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第3の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第4の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第5の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第6の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第7の変形例の模式的平面図を示す。
場合によっては、明確さを保つため、上記図中において、同一の部材でも同一の参照符号が付されていないものもあるが、図示される相称及び同一の図面に基づけば、上記図中のいずれの部材がいずれの参照符号に属するかは、当業者にとって明らかであろう。
図1から図4において、薄い灰色で示される要素は全て、個体構造体としての動く「質量要素」であり、この個体構造体は、概して極めて堅固なものであると考えることができる。濃い灰色(黒)で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。
図1に、第1の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第1質量要素(mass element)61を4つ備えている。第1質量要素61は、第1x連結ばね要素1a及び連結ばね要素2を介して互いに連結されるとともに、第2x連結ばね要素1b、接続要素4、及び第1基材ばね要素3を介して基材5(本実施態様においては固定部のみ)に連結されている。互いに逆位相である上記質量要素61による、二対の逆位相線形振動は、励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロが受感軸Ωを中心として回転する場合、検知モード8が励起される。これは、y軸を中心とする一対の逆位相回転振動として表わすことができる。上記y軸は、上記受感軸Ωに対して平行であり、上記x方向に対して直角である(Lin−Rot)。上記x連結ばね要素1a及び1bは、x方向において柔軟であり、それ以外の方向において堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。上記第1基材ばね要素3は、上記y軸を中心とする回転に対して柔軟であり、それ以外の回転に対して堅固である。本コリオリジャイロにおいては、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。また、基本的に、上記励起モードと上記検知モードとは互いに入れ替え可能である。つまり、上記した、上記y軸を中心とする一対の逆位相回転振動は上記励起モードとして用いることができ、またこれら一対の逆位相線形振動は上記検知モードとして用いることができる。
図2aに、第2の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第2質量要素62を2つ備えている。第2質量要素62は、連結ばね要素2を介して互いに連結されており、第2基材ばね要素21を介して基材5(本実施態様においては固定部22のみ)に連結されている。z方向を軸とする、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による、一対の逆位相回転振動は、上記励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロがその受感軸Ωを中心として回転している間、上記検知モードとして、y軸を中心とする、一対の逆位相回転振動が励起される(Rot−Rot)。この一対の逆位相回転振動は、上記受感軸Ωに対して直角であり、上記励起モード7における上記回転軸zに対して直角である。上記第2基材ばね要素21は、上記z軸及びy軸を中心とする回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図2bに、図2aの上記コリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、励起モード7が上記と同様である。すなわち、上記z方向を軸とし、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による一対の逆位相回転振動が用いられる。別の第2基材ばね要素21aは、上記z軸、x軸及びy軸を中心とした回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記に示したコリオリジャイロは第2閉鎖型検知モード8_2を有する。これは上記コリオリジャイロによる第2受感軸Ω2を中心とした回転の間に励起され、x軸を中心とした、一対の逆位相回転振動からなる。従って、上記に示したコリオリジャイロは「2軸」ジャイロと見なすこともできる。よって、このコリオリジャイロには閉鎖型モードが3つあり、これらは励起モードとして用いることができ、また上記受感軸によっては検知モードとして用いることができる。
図3に、第3の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第3質量要素63を4つ備えている。第3質量要素63は、xy連結ばね要素23を介して互いと、そして基材5(本実施態様においては固定部24のみ)とに連結されている。上記質量要素63による、上記x方向及び上記y方向に対して45°の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記に示した例では、斜め方向に向かい合う2つの第3質量要素63が互いから離れるように動くとき、向かい合う他の2つの第3質量要素63はそれぞれ互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する第3質量要素63が上記y方向において互いから離れるように動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いに向かって動く。上記y方向において隣接する上記第3質量要素63が上記y方向において互いに向かって動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いから離れるように動く。上記xy連結ばね要素23は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図4に、第4の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第4質量要素64を4つ備えている。第4質量要素64は、別のxy連結ばね要素25を介して互いと、基材5(本実施態様においては固定部26のみ)とに連結されている。上記x方向における上記第4質量要素64の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記x方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は上記x方向において互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は互いに向かって動く。上記別のxy連結ばね要素25は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
下記の図5から図11に、第1から第7の変形例に基づいて、第5の例示的な実施態様をより詳細に示す。本発明は、この第5の例示的な実施態様には限定されず、当業者は本明細書の記載に基づいて、進歩的な技術を用いることなく、上記第1から第4の例示的な実施態様の具体的な変形例を見出すことができるであろう。
上記第1から第7の変形例において、上記受感軸Ωは各図面の平面に対して直角である。
薄い灰色で示される要素は全て、動く「質量要素」であり、この質量要素は、概して極めて堅固なものであると見なすことができる。濃い灰色で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。線は、ばね要素の構成要素として用いられる曲げ梁(bending beams)を示す。これらの曲げ梁は、長手方向において概して極めて堅固である。上記z方向における曲げ梁の長さが、上記長手方向に直角の、図の面方向の長さよりも大幅に大きい場合、上記曲げ梁は、上記長手方向に直角の、図の面方向における軸の方向よりも、上記z方向の方が大幅に堅固である。ばね構造体の一部である上記曲げ梁及び上記質量要素はともに、その質量/慣性モーメントを、多くの場合、概して無視することができる。
以下の記載において、上記の「慨して」という表現は、例えば「本質的に」と表現される。
特にマイクロ技術を用いた方法などの、様々な製造方法が上記変形例の製造に適している。上記の全変形例は、例えば、出願日及び出願人が本願と同一である未公開のドイツ特許出願「Method for Production of a Component,and a Component(部品の製造方法及び部品)」に記載の上記マイクロ技術を用いた製造方法、または「conventional surface−micromechanical processes(従来の表面マイクロメカニカルプロセス)」(例えばRobert Bosch GmbH、Analog Devices)を用いて、製造することができる。
図5に示す上記第1の変形例は、基材(図示せず)と、第1個体構造体500と、第2個体構造体600と、第3個体構造体700と、第4個体構造体800とによって構成されている。上記第1個体構造体500は第1励起部510を含み、第1励起部510は第1xばね要素511を介して第1固定点513において上記基材に取り付けられている。第1コリオリ要素520は、第1yばね要素521を介して上記第1励起部510に接続されている。第1検知部530は、第1x回転ばね要素531を介して上記第1コリオリ要素520に接続されている。
上記第2個体構造体600、第3個体構造体700、及び第4個体構造体800はそれぞれ、上記と同様に、第2励起部610、第3励起部710、及び第4励起部810、第2xばね要素611、第3xばね要素711、及び第4xばね要素811、第2固定点613、第3固定点713、及び第4固定点813、第2yばね要素621、第3yばね要素721、及び第4yばね要素821、第2コリオリ要素620、第3コリオリ要素720、及び第4コリオリ要素820、第2x回転ばね要素631、第3x回転ばね要素731、及び第4x回転ばね要素831、第2検知部630、第3検知部730、及び第4検知部830から構成されている。
上記第1励起部510は上記第2励起部610に、また同様に上記第3励起部710は上記第4励起部810に、それぞれ第1連結ばね要素561及び781によって直接連結されている。上記第1励起部510と第4励起部810、及び上記第2励起部610と第3励起部710は、それぞれ第2連結ばね要素58及び67によって直接連結されている。上記第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部730と第4検知部830は、それぞれ第3連結ばね要素564及び784によって直接連結されており、第1及び第2連結検知部を形成する。第1連結検知部530、630は、上記第4連結ばね要素5678を介して直接、上記第2連結検知部730、830に連結されている。
上記xばね要素511、611、711及び811は、上記x方向において柔軟であり、上記y及びz方向において極めて堅固である。これらは、誘導性を向上させるために、固体要素512、612、712及び812に接続されている。上記yばね要素521、621、721及び821は、上記y方向において柔軟であり、上記x及びz方向において極めて堅固である。上記yばね要素521、621、721及び821は、図11に示す別のyばね要素551、651、751及び851に対応するように、一端に形成されてもよい。上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記x方向と、(図中では、それぞれ別のばね要素の上方に配置される2つのばね要素の)対称軸12、13、14及び15を中心として上記z方向においてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と上記検知部530、630、730及び830との間の相対的回転と、上記x方向における距離の変化とをともに可能にする結合部としての特性を有する。
上記第1連結ばね要素561及び781は、上記x方向において柔軟であり、上記z及びy方向において堅固になるように作られている。上記第3連結ばね要素564及び784は、曲げ梁565及び785と、基材566及び786の固定部とによって構成されている。上記第3連結ばね要素564及び784は、上記z方向10及び11における、それぞれの対称軸を中心としたねじれに対して柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記第3連結ばね要素564及び784は回転ばね要素と見なすこともできる。
上記第2連結ばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であり、上記z方向において堅固になるように作られている。上記の全ばね構造体の場合のように、上記図面は設計例を示す。一例として、上記第2連結ばね要素58及び67の代わりに、図10に示すばね141及び241に対応する、変形連結ばねを用いることも可能である。
上記第4連結ばね要素5678は、上記y方向と、上記z方向16における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。上記第4連結ばね要素5678は、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げる。
上記励起モードは、上記第1励起部510及び第2励起部610と上記第1コリオリ要素520及び第2コリオリ要素620とのそれぞれ、並びに上記第3励起部710及び第4励起部810と上記第3コリオリ要素720及び第4コリオリ要素820とのそれぞれによる、上記x軸方向における2つの線形の逆位相振動に対応する。これら2つの逆位相振動は、さらに互いに逆位相である。上記励起モードの上記共振周波数は、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820の質量と、上記ばね要素511、611、711及び811、上記別のばね要素531、631、731及び831、上記第1連結ばね要素561及び781、並びに上記第2連結ばね要素58及び67のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記検知モードは、回転振動と線形振動とが複合したモードに対応する。これらは、上記第1検知部530及び第2検知部630による、対称軸10を中心とした、上記z方向における回転振動と、上記第3検知部730及び第4検知部830による、対称軸11を中心とした、上記z方向における回転振動との、2つの回転振動である。これら2つの回転振動は、互いに逆位相である。この場合、上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、「ある種の回転振動」を行う。これらは、上記第1yばね要素521と第2yばね要素621、及び上記第3yばね要素721と第4yばね要素821によって、上記第1励起部510と第2励起部610、及び上記第3励起部710と第4励起部810に対して、それぞれ上記y方向において誘導される。上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、上記第1x回転ばね要素531と第2x回転ばね要素631、及び上記第3x回転ばね要素731と第4x回転ばね要素831によって、対応する第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部と第4検知部830に対して、それぞれ回転することができる。上記検知モードの上記共振周波数は、上記コリオリ要素520、620、720及び820、並びに上記検知部530、630、730及び830の質量/慣性モーメントと、上記第4連結ばね要素5678、上記第3連結ばね要素564及び784、上記x回転ばね要素531、631、731及び831、並びに上記yばね要素521、621、721及び821のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4力伝播体514、614、714及び814を備えており、これらによって上記励起モードは励起される。これらの力伝播体514、614、714及び814は、上記励起振動のタップとして作られているか、または別のタップを備えることができる。上記に示した例では、力伝播体514、614、714及び814として、いわゆる櫛形駆動部が示してある。
本明細書で用いられる「櫛形駆動部」及び「平面コンデンサ構成」という表現は、本願においては以下のように解釈するものとする。
・「櫛形駆動部」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、「ディッピング(dipping)」電極を用いている。つまり、上記電極の重なりが変化する。ディッピング電極の両側においては、通常同一の電極分離が選択される。
・「平面コンデンサ構成」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、電極分離が運動の間に変化する。これは、1つの移動電極の両側において異なる電極分離を選択すること(上記周波数だけを不適切に調整することが目的である場合、同一の電極分離を選択してもよい)、または逆に移動電極の両側において互いに電位の異なる静止電極を用いることによって、実現することができる。
図5の上記櫛形駆動部は、上記励起部510、610、710及び810と一体化した移動電極515、615、715及び815と、上記基材に固定されている電極516、616、716及び816とを備える。櫛形駆動部は、同時に、力伝播体としてもタップとしても用いることができる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4タップ534、634、734及び834を備えており、これらによって上記検知振動は検知される。これらのタップは、リセットモードにおいて、コリオリの力を補償するために、力伝播体としても機能するように作られているか、または、必要であれば、別の力伝播体を備えることができる。上記に示した例では、平面コンデンサ構成はタップとして示されており、平面分離は、上記検知運動の間に変化する。上記タップはそれぞれ、検知部530、630、730及び830とそれぞれ一体化した第1〜第4移動電極535、65、735及び835と、上記基材に固定されている第1〜第4電極536、636、736及び836とを備えている。平面コンデンサ構成は、同時に、力伝播体としても、タップとしても用いることができる。
上記検知部は上記励起運動を行わないため、櫛形駆動部は上記検知振動のタップ(及び/または力伝播体)としても用いることができる点が重要である。上記検知振動のタップとしての、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成には、印加電圧によって上記検知モードにおける上記共振周波数が変化するという特性がある。これは一方で、上記周波数を(二重共鳴に)設定するために意図的に用いることができる。また一方で、一例として、上記共振周波数は上記タップ機能のために変調信号によって、または(回転数に依存する)リセット電圧によって変調される。櫛形駆動部には、この不利な点がない。櫛形駆動部を用いるとき、上記周波数調整を可能にするために、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成をさらに一体化させることができる。
なお、周波数同調体(frequency tuning)524、624、724及び824のための別の力伝播体、タップ及び/または装置を、それぞれのコリオリ要素に備えることもできる。上記に示した例は、上記平面分離の変化する平面コンデンサ構成に関する。これらの構成は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と一体化した移動電極と、上記基材に固定された電極526、626、726及び826(記載の各箇所に電極は1つのみ)とを含む。
上記第1の変形例の構造には、上記x方向における直線加速度及び上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいては、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
上記第1の変形例において、各箇所の2つの検知部はともに回転振動を行う。つまり、静止電極536、636、736及び836を有するタップ534、634、734及び834を含む上記に示した例では、上記平面コンデンサ構成における上記平面分離の上記変化は位置に依存する。これによって、設計及び線形近似の複雑さが増す結果になる。例えば、上記櫛形駆動部がタップ/力伝播体として用いられ、上記周波数調整が上記装置524、624、724及び824によって行われる場合、上記のように複雑さが増すことはない。
さらに、上記検知部の線形振動は、上記x方向と、上記z方向における対称軸を中心とする回転とにおいて柔軟であり、それ以外の回転に対しては極めて堅固な増設ばね541、641、741及び841、並びに、上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては極めて堅固なばね要素542、642、742及び842を介した、上記基材上の上記検知部530、630、730及び830の付加的な固定によってもたらすことができる(図6の上記第5の例示的な実施態様の上記第2の変形例参照)。上記検知部530、630、730及び830を上記コリオリ要素520、620、720及び820に接続する上記ばね要素531b、631b、731b及び831bは、「結合特性」を全く必要としないため、端を2つ備えるように作ることができる。
図7の上記第3の変形例は、概して上記第1の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第4励起部510及び810、並びに上記第2及び第3励起部610及び710を接続するばね要素58b及び67bは、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向における直線加速度によって、上記x方向においてほとんど偏角することがないように変更されている。
上記第3の変形例では、その構造には、上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいて、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
図8の上記第4の変形例は、概して上記第3の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第2励起部510及び610、並びに上記第3及び第4励起部710及び810を連結する上記ばね要素561b及び781bは、上記z軸を中心とする回転加速度によって上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向においてほとんど偏角することがないようにも変更されている。この場合、上記変更されたばね要素561b及び781bは、(上記z方向における)対称軸を中心とする回転、並びに上記y方向における偏角に対して柔軟であり、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固なy回転ばね要素562及び782と、上記回転ばね564及び784に対応する方法で作られた回転ばね563及び783とを含む。
図9に、概して上記第1の変形例に対応する第5の変形例を示す。ばね5678aは、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げず、上記共通モードと上記差動モードとの間の周波数分離を実現するだけである。この場合、上記有用モードの上記共振周波数は、加速度及び/または振動によって励起され得る上記モードの上記共振周波数よりも依然として大幅に低くはなく、重大な誤り信号を生じさせる。
図10に、第6の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体100、200、300及び400はそれぞれ簡易な第1〜第4振動構造体110、210、310及び410からのみ構成される。上記振動構造体110、210、310及び410は、上記閉鎖型励起モード及び検知モードを実現するためにxyばね要素141及び241によって連結されている。xyばね要素141及び241は、xy面においては柔軟であるが、それ以外の面においては極めて堅固である。さらに、上記検知モードは、y回転ばね1234によって連結させることができる。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第6の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、2つの逆位相回転振動と見なすことができる。
図11に、第7の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800はそれぞれ、第1〜第4励起部510、610、710及び810と、第1〜第4サンプル質量体550、650、750及び850とからなる、簡易に分断された構造体から構成される。上記閉鎖型励起モードへの連結は、xyばね要素58及び67によって実現される。当該xyばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であるが、それ以外の方向においては極めて堅固である。上記閉鎖型検知モードは、xy回転ばね5678aによって実現される。当該xy回転ばね5678aは、上記x及びy方向と、上記z方向における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいては柔軟であるが、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固である。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第7の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、複合したモードと見なすことができる。
本発明は、基材と、少なくとも2つの個体構造体と、ばね要素とから構成され、上記ばね要素によって、上記個体構造体は上記基材に連結すると共に互いにも連結しており、力伝播体とタップとをさらに含み、上記構成は、上記力伝播体によって励起できる励起モードと、上記タップによって測定できる検知モードとを含み、上記検知モードは、励起された上記励起モードにおいて、受感軸を中心として回転する際のコリオリの力に基づいて励起されるコリオリジャイロに関する。
コリオリジャイロ(コリオリ振動型ジャイロスコープ)は用いられる振動モードに応じて2種類に分けることができる。
1. 形状及び屈曲振動(例えば、ワイングラス型(半球共振ジャイロスコープ:HRG)、リング型及びバー型)
2. ばね−質量系(例えば、Lin−Rot、Rot−Rot及びLin−Linであり、Lin−Rotでは、上記励起モードは直線運動(「Lin」)を含み、上記検知モードは回転運動(「Rot」)を含むことを意味する。Rot−Rot及びLin−Linは、同様の方法で定義される。)
上記の2種類には、振動及び加速度の感度の面で、特有の長所及び短所がある。
1. 形状及び屈曲振動
長所:外部閉鎖型有用モード(励起モード及び検知モード)が通常用いられる。これらのモードは、いかなる力及びモーメントをも外部には伝播しない。従って、これらのモードは、(線形及び/または回転構成要素による)直線加速度によっても、振動によっても、励起されることはない。「外部」とは、上記基材の「周辺領域」を表わす(質量要素または個体構造体の運動の結果、上記基材自体に力またはモーメントが局所的に作用することはあるが、これらは全体として互いに相殺される)。上記基材は、接着またははんだ付けなどによって、筐体またはセラミック(一般に「マウント(mount)」と呼ばれる)に搭載される。閉鎖型モードにおいては、このマウントには、力もモーメントも全く伝播されない。しかしながら、これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。
短所:公知の構造の大部分が、柔軟な緩衝装置を必要とする(例えば、リング及びバー;例外の1つに、上記のいわゆる半球共振ジャイロスコープ(HRG)があるが、これは、その「真の三次元」構造に起因する複雑な製作工程が求められる)。従って、上記の構造では、加速度及び振動が起こった時に偏角する程度が比較的大きく、またこれが多くの力伝播体(例えば、静電気力伝播体)及びタップ(例えば、容量タップ)における誤りへと繋がる。さらに、上記の必要とする力が過度に大きいため、直交性補償、つまり作動要素を用いた上記構造の「釣り合い」は、事実上不可能である。
2. ばね−質量系
長所:P.Greiff、B.Boxenhorn、T.King及びL.Niles、「シリコン・モノリシック・マイクロメカニカル・ジャイロスコープ(Silicon Monolithic Micromechanical Gyroscope)」、Tech.Digest、固体センサ及びアクチュエータ(Solid−State Sensors and Actuators)に関する第6回国際会議(トランスデューサ(Transducers)’91)、サンフランシスコ、CA、USA、1991年6月、pp.966−968;J.Bernstein、S.Cho、A.T.King、A.Kourepins、P.Maciel及びM.Weinberg、「マイクロ機械加工櫛型駆動部音叉レートジャイロスコープ(A Micromachined Comb−Drive Tuning Fork Rate Gyroscope)」、IEEEマイクロ電気機械システムワークショップ(IEEE Micro Electromechanical Systems Workshop;MEMS’93)報告書、フォートローダーデール、FL、USA、1993年2月、pp.143−148;及びDE 196 41 284 C1に、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得る他のモードの共振周波数よりも、上記有用モードの共振周波数を大幅に低くすることができる構造が開示されている。重大な誤り信号を生じるモードとは、特に、検知運動の測定信号に影響を与えるモードである。通常、励起運動の測定に影響を与えるモードの引き起こす損害は、上記モードよりも少ない。
短所:振動、及び直線加速度によっても頻繁に、有用モードの1つまたは両方が励起されることがあり、従って誤り信号を生じ得る。
EP1515119A1に、それぞれが、逆位相で線形に振動する二対の個体センサを含む、線形の検知モードを持つ回転数センサが開示されている。WO95/34798に、2つの振動性質量体と、当該2つの振動性質量体の回転振動に基づく検知モードとを持つコリオリジャイロが開示されている。
従って、本発明は、加速度及び振動に対して感度のより低い、ばね−質量系に基づく回転数センサを具体的に定義することを目的とする。
本発明によると、上記目的は請求項1の特徴を有するコリオリジャイロによって達成される。両方の有用モード(励起モード及び検知モード)がいずれも閉鎖型である、この種類の構造は提案されている。上記有用モードは、加速度及び振動によって励起させることはできず、誤り信号は生じない。これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。上記コリオリジャイロは、基材並びに複数の個体構造体(少なくとも2つ)及びばね要素を含んでいる。上記ばね要素によって、上記個体構造体のいくつかは上記基材に接続され、いくつかは互いに接続されている。この結果、上記構成は少なくとも2つの閉鎖型固有モードを含み、そのうちの1つは上記励起モードとして用いることができ、もう一方を上記検知モードとして用いることができる。上記励起モードは、力伝播体によって励起させることができる。上記コリオリジャイロがその受感軸を中心として回転する場合、上記励起振動の結果、コリオリの力が生じ、これが上記検知モードを励起させる。上記検知モードにおける運動は、タップによって測定することができる。これによる振動の振幅は測定変数として用いることできる。
請求項2に記載の効果的な改良によると、上記コリオリの力は、力伝播体によってリセットすることができる。これによって、上記個体構造体によるそれがなくなるので、より正確な評価に繋がる。力伝播体は、この目的のために必要であり、この力伝播体によってモーメント及び力を上記検知モードに加えることができる。よって、リセットに用いるモーメントまたはリセットに用いる力の振幅は、角速度の大きさとなる。
上記励起モードの運動は、請求項3に記載されるように、タップを用いて容易に確認することができる。
請求項4に記載されるような、直交性補償のための作動要素及び/または請求項5に記載されるような、周波数調整のための作動要素は、設けられることによって効果をもたらし、それぞれが設定または制御できるように作られている。マイクロ技術を用いて製造される高精度コリオリジャイロでは、直交性補償及び周波数調整は効果的である。レーザトリミングによって両方ともを実現することが可能ではあるが、このようなプロセスは高価である。作動要素によって、上記調整プロセス自体に費用がほとんどかからないという有利な点がもたらされる。
請求項6に記載の効果的な改良には、上記有用なモードの共振周波数が、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得るモードの共振周波数よりも大幅に低くすることができる構造が開示されている。従って、振動に依存する誤りがさらに軽減される。これらの構造には、上記「形状及び屈曲振動」の種類と、上記「ばね−質量系」の種類との長所を備えており、よってそれぞれの欠点を避けることができる。
次に、上記長所を定量化するために用いられる2つの状況について説明する。
第1の場合(閉鎖型検知モードの利点)
上記検知モードは、線形振動によって、または、上記励起モードが動作される周波数(一般的に、上記励起モードにおける上記共振周波数であり、同調させた共振周波数を用いた場合、上記検知モードの共振周波数でもある)において音響的に正確である場合に励起される。作用する上記加速の振幅は、a0である。これは、以下の記述において、「g」という単位で表わされる。説明を簡単にするために、外乱力の位相及び上記コリオリの力の位相は同一であるものとする。
第1の変形例:上記検知モードは「単純」線形振動である(逆位相線形振動ではない)。よって、上記加速度はコリオリ加速度と区別することができず、誤り信号Ωvを生じる。共振周波数がf0=ω0/(2π)=10kHzで、上記励起モードの振幅が10μmである場合、以下のようになる。
第2の変形例:上記検知モードは、単純回転振動である。質量の不均衡は、k2=1%である。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第3の変形例:上記検知モードは、一対の回転振動の差動モードに対応する(閉鎖型モード)。それ以外に関しては第2の変形例の条件と同様の条件において、質量の不均衡はおよそ100倍少ない(k3=100ppm)ものとすることができる。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第2の場合(請求項6に記載の発明の利点)
上記振動における回転加速度部分は、以下に記載される共振周波数よりも大幅に低い周波数のレベルで考慮される。
変形例1:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl1は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも低く、例えば以下のように表わされる。
変形例2:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl2は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも高く、例えば以下のように表わされる。
上記の励起によって、上記変形例1及び2の上記共通モードにおける、結果としての偏角の比率は、以下のとおりである。
上記共通モードにおける上記励起によって生じる誤りは、上記共通モードにおける上記偏角、または上記偏角の二乗に比例するので、変形例2における上記誤りは、因数9から81によって通分される。
請求項7に記載されるように、上記構造は、上記有用モードにおける上記共振周波数が、他のいかなるモードにおける共振周波数よりも大幅に低くなり、これらのモードでの励起における誤りが減少するように、作られている。
いくつかの改良は、閉鎖型励起モードとしての、互いにも逆位相である、一対の逆位相線形振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果であり(Lin−Rot)、また、閉鎖型励起モードとしての、一対の逆位相回転振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果である(Rot−Rot)。他の改良では、3つの閉鎖型固有モードがあり、互いに異なる受感軸を中心とする回転のために、そのうちの1つの固有モードは、例えば励起モードとして用いることができ、他の2つの固有モードは検知モードとして用いることができる。
請求項9に記載の、好適な改良によると、振動は上記基材の表面に平行して起こり、運動を検知する必要がなく、上記基材の表面に対して直角の運動も必要ないため、上記コリオリジャイロを容易に製造することができる。
請求項10の効果的な改良によると、上記個体構造体が、励起部及びサンプル質量体を含む分断された構造の形式である。これによって、以下の利点が得られる。
1. 上記励起部は、概して理想的に誘導される。上記励起部の駆動と、上記励起モードとの間の角度にどのような誤りがあっても、概して上記検知モードの励起には繋がらず、よって誤り信号も生じない。
2. 上記検知モードの偏角は、上記励起部に働く駆動力の変化には概して繋がらない。
3. つまり、上記励起部に対する励起力と、上記検知モードにおける運動との間の、望ましくない相互作用は、その大部分が抑制されるということである。
請求項12には、励起部と、コリオリ要素と、検知部とからなる二重に分断された構造が記載されている。これはさらに、「ピックオフ分断」へと繋がるが、これはつまり、上記検知部の上記タップと、上記励起部の運動との間の角度にどのような誤りがあっても、概して誤り信号を生じることはないことを示す。
請求項15に記載の効果的な改良によると、4つの個体構造体が設けられる。これらによって、上記閉鎖型有用モードを容易に実現できる。
下記に、本発明に係る上記コリオリジャイロの例示的な実施態様を、以下の図面を参照して説明する。
励起モードにて線形振動をし、検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの上記第2の例示的な実施態様における、第2の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第3の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第4の例示的な実施態様の概略図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの第5の例示的な実施態様における、第1の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第2の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第3の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第4の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第5の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第6の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第5の例示的な実施態様における、第7の変形例の模式的平面図を示す。
場合によっては、明確さを保つため、上記図中において、同一の部材でも同一の参照符号が付されていないものもあるが、図示される相称及び同一の図面に基づけば、上記図中のいずれの部材がいずれの参照符号に属するかは、当業者にとって明らかであろう。
図1から図4において、薄い灰色で示される要素は全て、個体構造体としての動く「質量要素」であり、この個体構造体は、概して極めて堅固なものであると考えることができる。濃い灰色(黒)で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。
図1に、第1の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第1質量要素(mass element)61を4つ備えている。第1質量要素61は、第1x連結ばね要素1a及び連結ばね要素2を介して互いに連結されるとともに、第2x連結ばね要素1b、接続要素4、及び第1基材ばね要素3を介して基材5(本実施態様においては固定部のみ)に連結されている。互いに逆位相である上記質量要素61による、二対の逆位相線形振動は、励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロが受感軸Ωを中心として回転する場合、検知モード8が励起される。これは、y軸を中心とする一対の逆位相回転振動として表わすことができる。上記y軸は、上記受感軸Ωに対して平行であり、上記x方向に対して直角である(Lin−Rot)。上記x連結ばね要素1a及び1bは、x方向において柔軟であり、それ以外の方向において堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。上記第1基材ばね要素3は、上記y軸を中心とする回転に対して柔軟であり、それ以外の回転に対して堅固である。本コリオリジャイロにおいては、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。また、基本的に、上記励起モードと上記検知モードとは互いに入れ替え可能である。つまり、上記した、上記y軸を中心とする一対の逆位相回転振動は上記励起モードとして用いることができ、またこれら一対の逆位相線形振動は上記検知モードとして用いることができる。
図2aに、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第2質量要素62を2つ備えている。第2質量要素62は、連結ばね要素2を介して互いに連結されており、第2基材ばね要素21を介して基材5(本実施態様においては固定部22のみ)に連結されている。z方向を軸とする、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による、一対の逆位相回転振動は、上記励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロがその受感軸Ωを中心として回転している間、上記検知モードとして、y軸を中心とする、一対の逆位相回転振動が励起される(Rot−Rot)。この一対の逆位相回転振動は、上記受感軸Ωに対して直角であり、上記励起モード7における上記回転軸zに対して直角である。上記第2基材ばね要素21は、上記z軸及びy軸を中心とする回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図2bに、図2aの上記コリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、励起モード7が上記と同様である。すなわち、上記z方向を軸とし、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による一対の逆位相回転振動が用いられる。別の第2基材ばね要素21aは、上記z軸、x軸及びy軸を中心とした回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記に示したコリオリジャイロは第2閉鎖型検知モード8_2を有する。これは上記コリオリジャイロによる第2受感軸Ω2を中心とした回転の間に励起され、x軸を中心とした、一対の逆位相回転振動からなる。従って、上記に示したコリオリジャイロは「2軸」ジャイロと見なすこともできる。よって、このコリオリジャイロには閉鎖型モードが3つあり、これらは励起モードとして用いることができ、また上記受感軸によっては検知モードとして用いることができる。
図3に、第3の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第3質量要素63を4つ備えている。第3質量要素63は、xy連結ばね要素23を介して互いと、そして基材5(本実施態様においては固定部24のみ)とに連結されている。上記質量要素63による、上記x方向及び上記y方向に対して45°の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記に示した例では、斜め方向に向かい合う2つの第3質量要素63が互いから離れるように動くとき、向かい合う他の2つの第3質量要素63はそれぞれ互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する第3質量要素63が上記y方向において互いから離れるように動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いに向かって動く。上記y方向において隣接する上記第3質量要素63が上記y方向において互いに向かって動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いから離れるように動く。上記xy連結ばね要素23は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図4に、第4の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第4質量要素64を4つ備えている。第4質量要素64は、別のxy連結ばね要素25を介して互いと、基材5(本実施態様においては固定部26のみ)とに連結されている。上記x方向における上記第4質量要素64の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記x方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は上記x方向において互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は互いに向かって動く。上記別のxy連結ばね要素25は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
下記の図5から図11に、第1から第7の変形例に基づいて、第5の例示的な実施態様をより詳細に示す。本発明は、この第5の例示的な実施態様には限定されず、当業者は本明細書の記載に基づいて、進歩的な技術を用いることなく、上記第1から第4の例示的な実施態様の具体的な変形例を見出すことができるであろう。
上記第1から第7の変形例において、上記受感軸Ωは各図面の平面に対して直角である。
薄い灰色で示される要素は全て、動く「質量要素」であり、この質量要素は、概して極めて堅固なものであると見なすことができる。濃い灰色で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。線は、ばね要素の構成要素として用いられる曲げ梁(bending beams)を示す。これらの曲げ梁は、長手方向において概して極めて堅固である。上記z方向における曲げ梁の長さが、上記長手方向に直角の、図の面方向の長さよりも大幅に大きい場合、上記曲げ梁は、上記長手方向に直角の、図の面方向における軸の方向よりも、上記z方向の方が大幅に堅固である。ばね構造体の一部である上記曲げ梁及び上記質量要素はともに、その質量/慣性モーメントを、多くの場合、概して無視することができる。
以下の記載において、上記の「慨して」という表現は、例えば「本質的に」と表現される。
特にマイクロ技術を用いた方法などの、様々な製造方法が上記変形例の製造に適している。上記の全変形例は、例えば、出願日及び出願人が本願と同一である未公開のドイツ特許出願「Method for Production of a Component,and a Component(部品の製造方法及び部品)」に記載の上記マイクロ技術を用いた製造方法、または「conventional surface−micromechanical processes(従来の表面マイクロメカニカルプロセス)」(例えばRobert Bosch GmbH、Analog Devices)を用いて、製造することができる。
図5に示す上記第1の変形例は、基材(図示せず)と、第1個体構造体500と、第2個体構造体600と、第3個体構造体700と、第4個体構造体800とによって構成されている。上記第1個体構造体500は第1励起部510を含み、第1励起部510は第1xばね要素511を介して第1固定点513において上記基材に取り付けられている。第1コリオリ要素520は、第1yばね要素521を介して上記第1励起部510に接続されている。第1検知部530は、第1x回転ばね要素531を介して上記第1コリオリ要素520に接続されている。
上記第2個体構造体600、第3個体構造体700、及び第4個体構造体800はそれぞれ、上記と同様に、第2励起部610、第3励起部710、及び第4励起部810、第2xばね要素611、第3xばね要素711、及び第4xばね要素811、第2固定点613、第3固定点713、及び第4固定点813、第2yばね要素621、第3yばね要素721、及び第4yばね要素821、第2コリオリ要素620、第3コリオリ要素720、及び第4コリオリ要素820、第2x回転ばね要素631、第3x回転ばね要素731、及び第4x回転ばね要素831、第2検知部630、第3検知部730、及び第4検知部830から構成されている。
上記第1励起部510は上記第2励起部610に、また同様に上記第3励起部710は上記第4励起部810に、それぞれ第1連結ばね要素561及び781によって直接連結されている。上記第1励起部510と第4励起部810、及び上記第2励起部610と第3励起部710は、それぞれ第2連結ばね要素58及び67によって直接連結されている。上記第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部730と第4検知部830は、それぞれ第3連結ばね要素564及び784によって直接連結されており、第1及び第2連結検知部を形成する。第1連結検知部530、630は、上記第4連結ばね要素5678を介して直接、上記第2連結検知部730、830に連結されている。
上記xばね要素511、611、711及び811は、上記x方向において柔軟であり、上記y及びz方向において極めて堅固である。これらは、誘導性を向上させるために、固体要素512、612、712及び812に接続されている。上記yばね要素521、621、721及び821は、上記y方向において柔軟であり、上記x及びz方向において極めて堅固である。上記yばね要素521、621、721及び821は、図11に示す別のyばね要素551、651、751及び851に対応するように、一端に形成されてもよい。上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記x方向と、(図中では、それぞれ別のばね要素の上方に配置される2つのばね要素の)対称軸12、13、14及び15を中心として上記z方向においてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と上記検知部530、630、730及び830との間の相対的回転と、上記x方向における距離の変化とをともに可能にする結合部としての特性を有する。
上記第1連結ばね要素561及び781は、上記x方向において柔軟であり、上記z及びy方向において堅固になるように作られている。上記第3連結ばね要素564及び784は、曲げ梁565及び785と、基材566及び786の固定部とによって構成されている。上記第3連結ばね要素564及び784は、上記z方向10及び11における、それぞれの対称軸を中心としたねじれに対して柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記第3連結ばね要素564及び784は回転ばね要素と見なすこともできる。
上記第2連結ばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であり、上記z方向において堅固になるように作られている。上記の全ばね構造体の場合のように、上記図面は設計例を示す。一例として、上記第2連結ばね要素58及び67の代わりに、図10に示すばね141及び241に対応する、変形連結ばねを用いることも可能である。
上記第4連結ばね要素5678は、上記y方向と、上記z方向16における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。上記第4連結ばね要素5678は、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げる。
上記励起モードは、上記第1励起部510及び第2励起部610と上記第1コリオリ要素520及び第2コリオリ要素620とのそれぞれ、並びに上記第3励起部710及び第4励起部810と上記第3コリオリ要素720及び第4コリオリ要素820とのそれぞれによる、上記x軸方向における2つの線形の逆位相振動に対応する。これら2つの逆位相振動は、さらに互いに逆位相である。上記励起モードの上記共振周波数は、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820の質量と、上記ばね要素511、611、711及び811、上記別のばね要素531、631、731及び831、上記第1連結ばね要素561及び781、並びに上記第2連結ばね要素58及び67のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記検知モードは、回転振動と線形振動とが複合したモードに対応する。これらは、上記第1検知部530及び第2検知部630による、対称軸10を中心とした、上記z方向における回転振動と、上記第3検知部730及び第4検知部830による、対称軸11を中心とした、上記z方向における回転振動との、2つの回転振動である。これら2つの回転振動は、互いに逆位相である。この場合、上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、「ある種の回転振動」を行う。これらは、上記第1yばね要素521と第2yばね要素621、及び上記第3yばね要素721と第4yばね要素821によって、上記第1励起部510と第2励起部610、及び上記第3励起部710と第4励起部810に対して、それぞれ上記y方向において誘導される。上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、上記第1x回転ばね要素531と第2x回転ばね要素631、及び上記第3x回転ばね要素731と第4x回転ばね要素831によって、対応する第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部と第4検知部830に対して、それぞれ回転することができる。上記検知モードの上記共振周波数は、上記コリオリ要素520、620、720及び820、並びに上記検知部530、630、730及び830の質量/慣性モーメントと、上記第4連結ばね要素5678、上記第3連結ばね要素564及び784、上記x回転ばね要素531、631、731及び831、並びに上記yばね要素521、621、721及び821のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4力伝播体514、614、714及び814を備えており、これらによって上記励起モードは励起される。これらの力伝播体514、614、714及び814は、上記励起振動のタップとして作られているか、または別のタップを備えることができる。上記に示した例では、力伝播体514、614、714及び814として、いわゆる櫛形駆動部が示してある。
本明細書で用いられる「櫛形駆動部」及び「平面コンデンサ構成」という表現は、本願においては以下のように解釈するものとする。
・「櫛形駆動部」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、「ディッピング(dipping)」電極を用いている。つまり、上記電極の重なりが変化する。ディッピング電極の両側においては、通常同一の電極分離が選択される。
・「平面コンデンサ構成」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、電極分離が運動の間に変化する。これは、1つの移動電極の両側において異なる電極分離を選択すること(上記周波数だけを不適切に調整することが目的である場合、同一の電極分離を選択してもよい)、または逆に移動電極の両側において互いに電位の異なる静止電極を用いることによって、実現することができる。
図5の上記櫛形駆動部は、上記励起部510、610、710及び810と一体化した移動電極515、615、715及び815と、上記基材に固定されている電極516、616、716及び816とを備える。櫛形駆動部は、同時に、力伝播体としてもタップとしても用いることができる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4タップ534、634、734及び834を備えており、これらによって上記検知振動は検知される。これらのタップは、リセットモードにおいて、コリオリの力を補償するために、力伝播体としても機能するように作られているか、または、必要であれば、別の力伝播体を備えることができる。上記に示した例では、平面コンデンサ構成はタップとして示されており、平面分離は、上記検知運動の間に変化する。上記タップはそれぞれ、検知部530、630、730及び830とそれぞれ一体化した第1〜第4移動電極535、65、735及び835と、上記基材に固定されている第1〜第4電極536、636、736及び836とを備えている。平面コンデンサ構成は、同時に、力伝播体としても、タップとしても用いることができる。
上記検知部は上記励起運動を行わないため、櫛形駆動部は上記検知振動のタップ(及び/または力伝播体)としても用いることができる点が重要である。上記検知振動のタップとしての、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成には、印加電圧によって上記検知モードにおける上記共振周波数が変化するという特性がある。これは一方で、上記周波数を(二重共鳴に)設定するために意図的に用いることができる。また一方で、一例として、上記共振周波数は上記タップ機能のために変調信号によって、または(回転数に依存する)リセット電圧によって変調される。櫛形駆動部には、この不利な点がない。櫛形駆動部を用いるとき、上記周波数調整を可能にするために、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成をさらに一体化させることができる。
なお、周波数同調体(frequency tuning)524、624、724及び824のための別の力伝播体、タップ及び/または装置を、それぞれのコリオリ要素に備えることもできる。上記に示した例は、上記平面分離の変化する平面コンデンサ構成に関する。これらの構成は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と一体化した移動電極と、上記基材に固定された電極526、626、726及び826(記載の各箇所に電極は1つのみ)とを含む。
上記第1の変形例の構造には、上記x方向における直線加速度及び上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいては、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
上記第1の変形例において、各箇所の2つの検知部はともに回転振動を行う。つまり、静止電極536、636、736及び836を有するタップ534、634、734及び834を含む上記に示した例では、上記平面コンデンサ構成における上記平面分離の上記変化は位置に依存する。これによって、設計及び線形近似の複雑さが増す結果になる。例えば、上記櫛形駆動部がタップ/力伝播体として用いられ、上記周波数調整が上記装置524、624、724及び824によって行われる場合、上記のように複雑さが増すことはない。
さらに、上記検知部の線形振動は、上記x方向と、上記z方向における対称軸を中心とする回転とにおいて柔軟であり、それ以外の回転に対しては極めて堅固な増設ばね541、641、741及び841、並びに、上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては極めて堅固なばね要素542、642、742及び842を介した、上記基材上の上記検知部530、630、730及び830の付加的な固定によってもたらすことができる(図6の上記第5の例示的な実施態様の上記第2の変形例参照)。上記検知部530、630、730及び830を上記コリオリ要素520、620、720及び820に接続する上記ばね要素531b、631b、731b及び831bは、「結合特性」を全く必要としないため、端を2つ備えるように作ることができる。
図7の上記第3の変形例は、概して上記第1の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第4励起部510及び810、並びに上記第2及び第3励起部610及び710を接続するばね要素58b及び67bは、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向における直線加速度によって、上記x方向においてほとんど偏角することがないように変更されている。
上記第3の変形例では、その構造には、上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいて、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
図8の上記第4の変形例は、概して上記第3の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第2励起部510及び610、並びに上記第3及び第4励起部710及び810を連結する上記ばね要素561b及び781bは、上記z軸を中心とする回転加速度によって上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向においてほとんど偏角することがないようにも変更されている。この場合、上記変更されたばね要素561b及び781bは、(上記z方向における)対称軸を中心とする回転、並びに上記y方向における偏角に対して柔軟であり、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固なy回転ばね要素562及び782と、上記回転ばね564及び784に対応する方法で作られた回転ばね563及び783とを含む。
図9に、概して上記第1の変形例に対応する第5の変形例を示す。ばね5678aは、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げず、上記共通モードと上記差動モードとの間の周波数分離を実現するだけである。この場合、上記有用モードの上記共振周波数は、加速度及び/または振動によって励起され得る上記モードの上記共振周波数よりも依然として大幅に低くはなく、重大な誤り信号を生じさせる。
図10に、第6の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体100、200、300及び400はそれぞれ簡易な第1〜第4振動構造体110、210、310及び410からのみ構成される。上記振動構造体110、210、310及び410は、上記閉鎖型励起モード及び検知モードを実現するためにxyばね要素141及び241によって連結されている。xyばね要素141及び241は、xy面においては柔軟であるが、それ以外の面においては極めて堅固である。さらに、上記検知モードは、y回転ばね1234によって連結させることができる。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第6の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、2つの逆位相回転振動と見なすことができる。
図11に、第7の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800はそれぞれ、第1〜第4励起部510、610、710及び810と、第1〜第4サンプル質量体550、650、750及び850とからなる、簡易に分断された構造体から構成される。上記閉鎖型励起モードへの連結は、xyばね要素58及び67によって実現される。当該xyばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であるが、それ以外の方向においては極めて堅固である。上記閉鎖型検知モードは、xy回転ばね5678aによって実現される。当該xy回転ばね5678aは、上記x及びy方向と、上記z方向における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいては柔軟であるが、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固である。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第7の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、複合したモードと見なすことができる。
本発明は、基材と、少なくとも2つの個体構造体と、ばね要素とから構成され、上記ばね要素によって、上記個体構造体は上記基材に連結すると共に互いにも連結しており、力伝播体とタップとをさらに含み、上記構成は、上記力伝播体によって励起できる励起モードと、上記タップによって測定できる検知モードとを含み、上記検知モードは、励起された上記励起モードにおいて、受感軸を中心として回転する際のコリオリの力に基づいて励起されるコリオリジャイロに関する。
コリオリジャイロ(コリオリ振動型ジャイロスコープ)は用いられる振動モードに応じて2種類に分けることができる。
1.形状及び屈曲振動(例えば、ワイングラス型(半球共振ジャイロスコープ:HRG)、リング型及びバー型)
2.ばね−質量系(例えば、Lin−Rot、Rot−Rot及びLin−Linであり、Lin−Rotでは、上記励起モードは直線運動(「Lin」)を含み、上記検知モードは回転運動(「Rot」)を含むことを意味する。Rot−Rot及びLin−Linは、同様の方法で定義される。)
上記の2種類には、振動及び加速度の感度の面で、特有の長所及び短所がある。
1.形状及び屈曲振動
長所:外部閉鎖型有用モード(励起モード及び検知モード)が通常用いられる。これらのモードは、いかなる力及びモーメントをも外部には伝播しない。従って、これらのモードは、(線形及び/または回転構成要素による)直線加速度によっても、振動によっても、励起されることはない。「外部」とは、上記基材の「周辺領域」を表わす(質量要素または個体構造体の運動の結果、上記基材自体に力またはモーメントが局所的に作用することはあるが、これらは全体として互いに相殺される)。上記基材は、接着またははんだ付けなどによって、筐体またはセラミック(一般に「マウント(mount)」と呼ばれる)に搭載される。閉鎖型モードにおいては、このマウントには、力もモーメントも全く伝播されない。しかしながら、これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。
短所:公知の構造の大部分が、柔軟な緩衝装置を必要とする(例えば、リング及びバー;例外の1つに、上記のいわゆる半球共振ジャイロスコープ(HRG)があるが、これは、その「真の三次元」構造に起因する複雑な製作工程が求められる)。従って、上記の構造では、加速度及び振動が起こった時に偏角する程度が比較的大きく、またこれが多くの力伝播体(例えば、静電気力伝播体)及びタップ(例えば、容量タップ)における誤りへと繋がる。さらに、上記の必要とする力が過度に大きいため、直交性補償、つまり作動要素を用いた上記構造の「釣り合い」は、事実上不可能である。
2.ばね−質量系
長所:P.Greiff、B.Boxenhorn、T.King及びL.Niles、「シリコン・モノリシック・マイクロメカニカル・ジャイロスコープ(Silicon Monolithic Micromechanical Gyroscope)」、Tech.Digest、固体センサ及びアクチュエータ(Solid−State Sensors and Actuators)に関する第6回国際会議(トランスデューサ(Transducers)’91)、サンフランシスコ、CA、USA、1991年6月、pp.966−968;J.Bernstein、S.Cho、A.T.King、A.Kourepins、P.Maciel及びM.Weinberg、「マイクロ機械加工櫛型駆動部音叉レートジャイロスコープ(A Micromachined Comb−Drive Tuning Fork Rate Gyroscope)」、IEEEマイクロ電気機械システムワークショップ(IEEE Micro Electromechanical Systems Workshop;MEMS’93)報告書、フォートローダーデール、FL、USA、1993年2月、pp.143−148;及びDE 196 41 284 C1に、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得る他のモードの共振周波数よりも、上記有用モードの共振周波数を大幅に低くすることができる構造が開示されている。重大な誤り信号を生じるモードとは、特に、検知運動の測定信号に影響を与えるモードである。通常、励起運動の測定に影響を与えるモードの引き起こす損害は、上記モードよりも少ない。
短所:振動、及び直線加速度によっても頻繁に、有用モードの1つまたは両方が励起されることがあり、従って誤り信号を生じ得る。
EP1515119A1に、それぞれが、逆位相で線形に振動する二対の個体センサを含む、線形の検知モードを持つ回転数センサが開示されている。WO95/34798に、2つの振動性質量体と、当該2つの振動性質量体の回転振動に基づく検知モードとを持つコリオリジャイロが開示されている。
従って、本発明は、加速度及び振動に対して感度のより低い、ばね−質量系に基づく回転数センサを具体的に定義することを目的とする。
本発明によると、上記目的は請求項1の特徴を有するコリオリジャイロによって達成される。両方の有用モード(励起モード及び検知モード)がいずれも閉鎖型である、この種類の構造は提案されている。上記有用モードは、加速度及び振動によって励起させることはできず、誤り信号は生じない。これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。上記コリオリジャイロは、基材並びに複数の個体構造体(少なくとも2つ)及びばね要素を含んでいる。上記ばね要素によって、上記個体構造体のいくつかは上記基材に接続され、いくつかは互いに接続されている。この結果、上記構成は少なくとも2つの閉鎖型固有モードを含み、そのうちの1つは上記励起モードとして用いることができ、もう一方を上記検知モードとして用いることができる。上記励起モードは、力伝播体によって励起させることができる。上記コリオリジャイロがその受感軸を中心として回転する場合、上記励起振動の結果、コリオリの力が生じ、これが上記検知モードを励起させる。上記検知モードにおける運動は、タップによって測定することができる。これによる振動の振幅は測定変数として用いることできる。
請求項2に記載の効果的な改良によると、上記コリオリの力は、力伝播体によってリセットすることができる。これによって、上記個体構造体によるそれがなくなるので、より正確な評価に繋がる。力伝播体は、この目的のために必要であり、この力伝播体によってモーメント及び力を上記検知モードに加えることができる。よって、リセットに用いるモーメントまたはリセットに用いる力の振幅は、角速度の大きさとなる。
上記励起モードの運動は、請求項3に記載されるように、タップを用いて容易に確認することができる。
請求項4に記載されるような、直交性補償のための作動要素及び/または請求項5に記載されるような、周波数調整のための作動要素は、設けられることによって効果をもたらし、それぞれが設定または制御できるように作られている。マイクロ技術を用いて製造される高精度コリオリジャイロでは、直交性補償及び周波数調整は効果的である。レーザトリミングによって両方ともを実現することが可能ではあるが、このようなプロセスは高価である。作動要素によって、上記調整プロセス自体に費用がほとんどかからないという有利な点がもたらされる。
請求項6に記載の効果的な改良には、上記有用なモードの共振周波数が、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得るモードの共振周波数よりも大幅に低くすることができる構造が開示されている。従って、振動に依存する誤りがさらに軽減される。これらの構造には、上記「形状及び屈曲振動」の種類と、上記「ばね−質量系」の種類との長所を備えており、よってそれぞれの欠点を避けることができる。
次に、上記長所を定量化するために用いられる2つの状況について説明する。
第1の場合(閉鎖型検知モードの利点)
上記検知モードは、線形振動によって、または、上記励起モードが動作される周波数(一般的に、上記励起モードにおける上記共振周波数であり、同調させた共振周波数を用いた場合、上記検知モードの共振周波数でもある)において音響的に正確である場合に励起される。作用する上記加速の振幅は、a0である。これは、以下の記述において、「g」という単位で表わされる。説明を簡単にするために、外乱力の位相及び上記コリオリの力の位相は同一であるものとする。
第1の変形例:上記検知モードは「単純」線形振動である(逆位相線形振動ではない)。よって、上記加速度はコリオリ加速度と区別することができず、誤り信号Ωvを生じる。共振周波数がf0=ω0/(2π)=10kHzで、上記励起モードの振幅が10μmである場合、以下のようになる。
第2の変形例:上記検知モードは、単純回転振動である。質量の不均衡は、k2=1%である。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第3の変形例:上記検知モードは、一対の回転振動の差動モードに対応する(閉鎖型モード)。それ以外に関しては第2の変形例の条件と同様の条件において、質量の不均衡はおよそ100倍少ない(k3=100ppm)ものとすることができる。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第2の場合(請求項6に記載の発明の利点)
上記振動における回転加速度部分は、以下に記載される共振周波数よりも大幅に低い周波数のレベルで考慮される。
変形例1:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl1は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも低く、例えば以下のように表わされる。
変形例2:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl2は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも高く、例えば以下のように表わされる。
上記の励起によって、上記変形例1及び2の上記共通モードにおける、結果としての偏角の比率は、以下のとおりである。
上記共通モードにおける上記励起によって生じる誤りは、上記共通モードにおける上記偏角、または上記偏角の二乗に比例するので、変形例2における上記誤りは、因数9から81によって通分される。
請求項7に記載されるように、上記構造は、上記有用モードにおける上記共振周波数が、他のいかなるモードにおける共振周波数よりも大幅に低くなり、これらのモードでの励起における誤りが減少するように、作られている。
いくつかの例は、閉鎖型励起モードとしての、互いにも逆位相である、一対の逆位相線形振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果であり(Lin−Rot)、また、閉鎖型励起モードとしての、一対の逆位相回転振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果である(Rot−Rot)。他の例では、3つの閉鎖型固有モードがあり、互いに異なる受感軸を中心とする回転のために、そのうちの1つの固有モードは、例えば励起モードとして用いることができ、他の2つの固有モードは検知モードとして用いることができる。
請求項9に記載の、好適な改良によると、振動は上記基材の表面に平行して起こり、運動を検知する必要がなく、上記基材の表面に対して直角の運動も必要ないため、上記コリオリジャイロを容易に製造することができる。
請求項10の効果的な改良によると、上記個体構造体が、励起部及びサンプル質量体を含む分断された構造の形式である。これによって、以下の利点が得られる。
1.上記励起部は、概して理想的に誘導される。上記励起部の駆動と、上記励起モードとの間の角度にどのような誤りがあっても、概して上記検知モードの励起には繋がらず、よって誤り信号も生じない。
2.上記検知モードの偏角は、上記励起部に働く駆動力の変化には概して繋がらない。
3. つまり、上記励起部に対する励起力と、上記検知モードにおける運動との間の、望ましくない相互作用は、その大部分が抑制されるということである。
請求項11には、励起部と、コリオリ要素と、検知部とからなる二重に分断された構造が記載されている。これはさらに、「ピックオフ分断」へと繋がるが、これはつまり、上記検知部の上記タップと、上記励起部の運動との間の角度にどのような誤りがあっても、概して誤り信号を生じることはないことを示す。
請求項14に記載の効果的な改良によると、4つの個体構造体が設けられる。これらによって、上記閉鎖型有用モードを容易に実現できる。
下記に、本発明に係る上記コリオリジャイロの例示的な実施態様を、以下の図面を参照して説明する。
励起モードにて線形振動をし、検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第2の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第2の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第3の例示的な実施態様の概略図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの第4の例示的な実施態様における、第1の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第2の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第3の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第4の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第5の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第6の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第7の変形例の模式的平面図を示す。
場合によっては、明確さを保つため、上記図中において、同一の部材でも同一の参照符号が付されていないものもあるが、図示される相称及び同一の図面に基づけば、上記図中のいずれの部材がいずれの参照符号に属するかは、当業者にとって明らかであろう。
図1から図4において、薄い灰色で示される要素は全て、個体構造体としての動く「質量要素」であり、この個体構造体は、概して極めて堅固なものであると考えることができる。濃い灰色(黒)で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。
図1に、第1の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第1質量要素(mass element)61を4つ備えている。第1質量要素61は、第1x連結ばね要素1a及び連結ばね要素2を介して互いに連結されるとともに、第2x連結ばね要素1b、接続要素4、及び第1基材ばね要素3を介して基材5(本実施態様においては固定部のみ)に連結されている。互いに逆位相である上記質量要素61による、二対の逆位相線形振動は、励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロが受感軸Ωを中心として回転する場合、検知モード8が励起される。これは、y軸を中心とする一対の逆位相回転振動として表わすことができる。上記y軸は、上記受感軸Ωに対して平行であり、上記x方向に対して直角である(Lin−Rot)。上記x連結ばね要素1a及び1bは、x方向において柔軟であり、それ以外の方向において堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。上記第1基材ばね要素3は、上記y軸を中心とする回転に対して柔軟であり、それ以外の回転に対して堅固である。本コリオリジャイロにおいては、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。また、基本的に、上記励起モードと上記検知モードとは互いに入れ替え可能である。つまり、上記した、上記y軸を中心とする一対の逆位相回転振動は上記励起モードとして用いることができ、またこれら一対の逆位相線形振動は上記検知モードとして用いることができる。
図2aに、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第2質量要素62を2つ備えている。第2質量要素62は、連結ばね要素2を介して互いに連結されており、第2基材ばね要素21を介して基材5(本実施態様においては固定部22のみ)に連結されている。z方向を軸とする、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による、一対の逆位相回転振動は、上記励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロがその受感軸Ωを中心として回転している間、上記検知モードとして、y軸を中心とする、一対の逆位相回転振動が励起される(Rot−Rot)。この一対の逆位相回転振動は、上記受感軸Ωに対して直角であり、上記励起モード7における上記回転軸zに対して直角である。上記第2基材ばね要素21は、上記z軸及びy軸を中心とする回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図2bに、図2aの上記コリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、励起モード7が上記と同様である。すなわち、上記z方向を軸とし、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による一対の逆位相回転振動が用いられる。別の第2基材ばね要素21aは、上記z軸、x軸及びy軸を中心とした回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記に示したコリオリジャイロは第2閉鎖型検知モード8_2を有する。これは上記コリオリジャイロによる第2受感軸Ω2を中心とした回転の間に励起され、x軸を中心とした、一対の逆位相回転振動からなる。従って、上記に示したコリオリジャイロは「2軸」ジャイロと見なすこともできる。よって、このコリオリジャイロには閉鎖型モードが3つあり、これらは励起モードとして用いることができ、また上記受感軸によっては検知モードとして用いることができる。
図3に、第2の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第3質量要素63を4つ備えている。第3質量要素63は、xy連結ばね要素23を介して互いと、そして基材5(本実施態様においては固定部24のみ)とに連結されている。上記質量要素63による、上記x方向及び上記y方向に対して45°の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記に示した例では、斜め方向に向かい合う2つの第3質量要素63が互いから離れるように動くとき、向かい合う他の2つの第3質量要素63はそれぞれ互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する第3質量要素63が上記y方向において互いから離れるように動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いに向かって動く。上記y方向において隣接する上記第3質量要素63が上記y方向において互いに向かって動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いから離れるように動く。上記xy連結ばね要素23は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図4に、第3の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第4質量要素64を4つ備えている。第4質量要素64は、別のxy連結ばね要素25を介して互いと、基材5(本実施態様においては固定部26のみ)とに連結されている。上記x方向における上記第4質量要素64の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記x方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は上記x方向において互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は互いに向かって動く。上記別のxy連結ばね要素25は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
下記の図5から図11に、第1から第7の変形例に基づいて、第4の例示的な実施態様をより詳細に示す。本発明は、この第4の例示的な実施態様には限定されず、当業者は本明細書の記載に基づいて、進歩的な技術を用いることなく、上記第1から第3の例示的な実施態様の具体的な変形例を見出すことができるであろう。
上記第1から第7の変形例において、上記受感軸Ωは各図面の平面に対して直角である。
薄い灰色で示される要素は全て、動く「質量要素」であり、この質量要素は、概して極めて堅固なものであると見なすことができる。濃い灰色で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。線は、ばね要素の構成要素として用いられる曲げ梁(bending beams)を示す。これらの曲げ梁は、長手方向において概して極めて堅固である。上記z方向における曲げ梁の長さが、上記長手方向に直角の、図の面方向の長さよりも大幅に大きい場合、上記曲げ梁は、上記長手方向に直角の、図の面方向における軸の方向よりも、上記z方向の方が大幅に堅固である。ばね構造体の一部である上記曲げ梁及び上記質量要素はともに、その質量/慣性モーメントを、多くの場合、概して無視することができる。
以下の記載において、上記の「慨して」という表現は、例えば「本質的に」と表現される。
特にマイクロ技術を用いた方法などの、様々な製造方法が上記変形例の製造に適している。上記の全変形例は、例えば、出願日及び出願人が本願と同一である未公開のドイツ特許出願「Method for Production of a Component,and a Component(部品の製造方法及び部品)」に記載の上記マイクロ技術を用いた製造方法、または「conventional surface−micromechanical processes(従来の表面マイクロメカニカルプロセス)」(例えばRobert Bosch GmbH、Analog Devices)を用いて、製造することができる。
図5に示す上記第1の変形例は、基材(図示せず)と、第1個体構造体500と、第2個体構造体600と、第3個体構造体700と、第4個体構造体800とによって構成されている。上記第1個体構造体500は第1励起部510を含み、第1励起部510は第1xばね要素511を介して第1固定点513において上記基材に取り付けられている。第1コリオリ要素520は、第1yばね要素521を介して上記第1励起部510に接続されている。第1検知部530は、第1x回転ばね要素531を介して上記第1コリオリ要素520に接続されている。
上記第2個体構造体600、第3個体構造体700、及び第4個体構造体800はそれぞれ、上記と同様に、第2励起部610、第3励起部710、及び第4励起部810、第2xばね要素611、第3xばね要素711、及び第4xばね要素811、第2固定点613、第3固定点713、及び第4固定点813、第2yばね要素621、第3yばね要素721、及び第4yばね要素821、第2コリオリ要素620、第3コリオリ要素720、及び第4コリオリ要素820、第2x回転ばね要素631、第3x回転ばね要素731、及び第4x回転ばね要素831、第2検知部630、第3検知部730、及び第4検知部830から構成されている。
上記第1励起部510は上記第2励起部610に、また同様に上記第3励起部710は上記第4励起部810に、それぞれ第1連結ばね要素561及び781によって直接連結されている。上記第1励起部510と第4励起部810、及び上記第2励起部610と第3励起部710は、それぞれ第2連結ばね要素58及び67によって直接連結されている。上記第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部730と第4検知部830は、それぞれ第3連結ばね要素564及び784によって直接連結されており、第1及び第2連結検知部を形成する。第1連結検知部530、630は、上記第4連結ばね要素5678を介して直接、上記第2連結検知部730、830に連結されている。
上記xばね要素511、611、711及び811は、上記x方向において柔軟であり、上記y及びz方向において極めて堅固である。これらは、誘導性を向上させるために、固体要素512、612、712及び812に接続されている。上記yばね要素521、621、721及び821は、上記y方向において柔軟であり、上記x及びz方向において極めて堅固である。上記yばね要素521、621、721及び821は、図11に示す別のyばね要素551、651、751及び851に対応するように、一端に形成されてもよい。上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記x方向と、(図中では、それぞれ別のばね要素の上方に配置される2つのばね要素の)対称軸12、13、14及び15を中心として上記z方向においてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と上記検知部530、630、730及び830との間の相対的回転と、上記x方向における距離の変化とをともに可能にする結合部としての特性を有する。
上記第1連結ばね要素561及び781は、上記x方向において柔軟であり、上記z及びy方向において堅固になるように作られている。上記第3連結ばね要素564及び784は、曲げ梁565及び785と、基材566及び786の固定部とによって構成されている。上記第3連結ばね要素564及び784は、上記z方向10及び11における、それぞれの対称軸を中心としたねじれに対して柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記第3連結ばね要素564及び784は回転ばね要素と見なすこともできる。
上記第2連結ばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であり、上記z方向において堅固になるように作られている。上記の全ばね構造体の場合のように、上記図面は設計例を示す。一例として、上記第2連結ばね要素58及び67の代わりに、図10に示すばね141及び241に対応する、変形連結ばねを用いることも可能である。
上記第4連結ばね要素5678は、上記y方向と、上記z方向16における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。上記第4連結ばね要素5678は、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げる。
上記励起モードは、上記第1励起部510及び第2励起部610と上記第1コリオリ要素520及び第2コリオリ要素620とのそれぞれ、並びに上記第3励起部710及び第4励起部810と上記第3コリオリ要素720及び第4コリオリ要素820とのそれぞれによる、上記x軸方向における2つの線形の逆位相振動に対応する。これら2つの逆位相振動は、さらに互いに逆位相である。上記励起モードの上記共振周波数は、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820の質量と、上記ばね要素511、611、711及び811、上記別のばね要素531、631、731及び831、上記第1連結ばね要素561及び781、並びに上記第2連結ばね要素58及び67のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記検知モードは、回転振動と線形振動とが複合したモードに対応する。これらは、上記第1検知部530及び第2検知部630による、対称軸10を中心とした、上記z方向における回転振動と、上記第3検知部730及び第4検知部830による、対称軸11を中心とした、上記z方向における回転振動との、2つの回転振動である。これら2つの回転振動は、互いに逆位相である。この場合、上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、「ある種の回転振動」を行う。これらは、上記第1yばね要素521と第2yばね要素621、及び上記第3yばね要素721と第4yばね要素821によって、上記第1励起部510と第2励起部610、及び上記第3励起部710と第4励起部810に対して、それぞれ上記y方向において誘導される。上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、上記第1x回転ばね要素531と第2x回転ばね要素631、及び上記第3x回転ばね要素731と第4x回転ばね要素831によって、対応する第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部と第4検知部830に対して、それぞれ回転することができる。上記検知モードの上記共振周波数は、上記コリオリ要素520、620、720及び820、並びに上記検知部530、630、730及び830の質量/慣性モーメントと、上記第4連結ばね要素5678、上記第3連結ばね要素564及び784、上記x回転ばね要素531、631、731及び831、並びに上記yばね要素521、621、721及び821のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4力伝播体514、614、714及び814を備えており、これらによって上記励起モードは励起される。これらの力伝播体514、614、714及び814は、上記励起振動のタップとして作られているか、または別のタップを備えることができる。上記に示した例では、力伝播体514、614、714及び814として、いわゆる櫛形駆動部が示してある。
本明細書で用いられる「櫛形駆動部」及び「平面コンデンサ構成」という表現は、本願においては以下のように解釈するものとする。
・「櫛形駆動部」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、「ディッピング(dipping)」電極を用いている。つまり、上記電極の重なりが変化する。ディッピング電極の両側においては、通常同一の電極分離が選択される。
・「平面コンデンサ構成」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、電極分離が運動の間に変化する。これは、1つの移動電極の両側において異なる電極分離を選択すること(上記周波数だけを不適切に調整することが目的である場合、同一の電極分離を選択してもよい)、または逆に移動電極の両側において互いに電位の異なる静止電極を用いることによって、実現することができる。
図5の上記櫛形駆動部は、上記励起部510、610、710及び810と一体化した移動電極515、615、715及び815と、上記基材に固定されている電極516、616、716及び816とを備える。櫛形駆動部は、同時に、力伝播体としてもタップとしても用いることができる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4タップ534、634、734及び834を備えており、これらによって上記検知振動は検知される。これらのタップは、リセットモードにおいて、コリオリの力を補償するために、力伝播体としても機能するように作られているか、または、必要であれば、別の力伝播体を備えることができる。上記に示した例では、平面コンデンサ構成はタップとして示されており、平面分離は、上記検知運動の間に変化する。上記タップはそれぞれ、検知部530、630、730及び830とそれぞれ一体化した第1〜第4移動電極535、65、735及び835と、上記基材に固定されている第1〜第4電極536、636、736及び836とを備えている。平面コンデンサ構成は、同時に、力伝播体としても、タップとしても用いることができる。
上記検知部は上記励起運動を行わないため、櫛形駆動部は上記検知振動のタップ(及び/または力伝播体)としても用いることができる点が重要である。上記検知振動のタップとしての、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成には、印加電圧によって上記検知モードにおける上記共振周波数が変化するという特性がある。これは一方で、上記周波数を(二重共鳴に)設定するために意図的に用いることができる。また一方で、一例として、上記共振周波数は上記タップ機能のために変調信号によって、または(回転数に依存する)リセット電圧によって変調される。櫛形駆動部には、この不利な点がない。櫛形駆動部を用いるとき、上記周波数調整を可能にするために、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成をさらに一体化させることができる。
なお、周波数同調体(frequency tuning)524、624、724及び824のための別の力伝播体、タップ及び/または装置を、それぞれのコリオリ要素に備えることもできる。上記に示した例は、上記平面分離の変化する平面コンデンサ構成に関する。これらの構成は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と一体化した移動電極と、上記基材に固定された電極526、626、726及び826(記載の各箇所に電極は1つのみ)とを含む。
上記第1の変形例の構造には、上記x方向における直線加速度及び上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいては、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
上記第1の変形例において、各箇所の2つの検知部はともに回転振動を行う。つまり、静止電極536、636、736及び836を有するタップ534、634、734及び834を含む上記に示した例では、上記平面コンデンサ構成における上記平面分離の上記変化は位置に依存する。これによって、設計及び線形近似の複雑さが増す結果になる。例えば、上記櫛形駆動部がタップ/力伝播体として用いられ、上記周波数調整が上記装置524、624、724及び824によって行われる場合、上記のように複雑さが増すことはない。
さらに、上記検知部の線形振動は、上記x方向と、上記z方向における対称軸を中心とする回転とにおいて柔軟であり、それ以外の回転に対しては極めて堅固な増設ばね541、641、741及び841、並びに、上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては極めて堅固なばね要素542、642、742及び842を介した、上記基材上の上記検知部530、630、730及び830の付加的な固定によってもたらすことができる(図6の上記第4の例示的な実施態様の上記第2の変形例参照)。上記検知部530、630、730及び830を上記コリオリ要素520、620、720及び820に接続する上記ばね要素531b、631b、731b及び831bは、「結合特性」を全く必要としないため、端を2つ備えるように作ることができる。
図7の上記第3の変形例は、概して上記第1の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第4励起部510及び810、並びに上記第2及び第3励起部610及び710を接続するばね要素58b及び67bは、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向における直線加速度によって、上記x方向においてほとんど偏角することがないように変更されている。
上記第3の変形例では、その構造には、上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいて、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
図8の上記第4の変形例は、概して上記第3の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第2励起部510及び610、並びに上記第3及び第4励起部710及び810を連結する上記ばね要素561b及び781bは、上記z軸を中心とする回転加速度によって上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向においてほとんど偏角することがないようにも変更されている。この場合、上記変更されたばね要素561b及び781bは、(上記z方向における)対称軸を中心とする回転、並びに上記y方向における偏角に対して柔軟であり、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固なy回転ばね要素562及び782と、上記回転ばね564及び784に対応する方法で作られた回転ばね563及び783とを含む。
図9に、概して上記第1の変形例に対応する第5の変形例を示す。ばね5678aは、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げず、上記共通モードと上記差動モードとの間の周波数分離を実現するだけである。この場合、上記有用モードの上記共振周波数は、加速度及び/または振動によって励起され得る上記モードの上記共振周波数よりも依然として大幅に低くはなく、重大な誤り信号を生じさせる。
図10に、第6の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体100、200、300及び400はそれぞれ簡易な第1〜第4振動構造体110、210、310及び410からのみ構成される。上記振動構造体110、210、310及び410は、上記閉鎖型励起モード及び検知モードを実現するためにxyばね要素141及び241によって連結されている。xyばね要素141及び241は、xy面においては柔軟であるが、それ以外の面においては極めて堅固である。さらに、上記検知モードは、y回転ばね1234によって連結させることができる。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第6の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、2つの逆位相回転振動と見なすことができる。
図11に、第7の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800はそれぞれ、第1〜第4励起部510、610、710及び810と、第1〜第4サンプル質量体550、650、750及び850とからなる、簡易に分断された構造体から構成される。上記閉鎖型励起モードへの連結は、xyばね要素58及び67によって実現される。当該xyばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であるが、それ以外の方向においては極めて堅固である。上記閉鎖型検知モードは、xy回転ばね5678aによって実現される。当該xy回転ばね5678aは、上記x及びy方向と、上記z方向における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいては柔軟であるが、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固である。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第7の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、複合したモードと見なすことができる。
本発明は、基材と、少なくとも4つの個体構造体と、ばね要素とから構成され、上記ばね要素によって、上記個体構造体は上記基材に連結すると共に互いにも連結しており、力伝播体とタップとをさらに含み、上記構成は、上記力伝播体によって励起できる励起モードと、上記タップによって測定できる検知モードとを含み、上記検知モードは、励起された上記励起モードにおいて、受感軸を中心として回転する際のコリオリの力に基づいて励起されるコリオリジャイロに関する。
コリオリジャイロ(コリオリ振動型ジャイロスコープ)は用いられる振動モードに応じて2種類に分けることができる。
1.形状及び屈曲振動(例えば、ワイングラス型(半球共振ジャイロスコープ:HRG)、リング型及びバー型)
2.ばね−質量系(例えば、Lin−Rot、Rot−Rot及びLin−Linであり、Lin−Rotでは、上記励起モードは直線運動(「Lin」)を含み、上記検知モードは回転運動(「Rot」)を含むことを意味する。Rot−Rot及びLin−Linは、同様の方法で定義される。)
上記の2種類には、振動及び加速度の感度の面で、特有の長所及び短所がある。
1.形状及び屈曲振動
長所:外部閉鎖型有用モード(励起モード及び検知モード)が通常用いられる。これらのモードは、いかなる力及びモーメントをも外部には伝播しない。従って、これらのモードは、(線形及び/または回転構成要素による)直線加速度によっても、振動によっても、励起されることはない。「外部」とは、上記基材の「周辺領域」を表わす(質量要素または個体構造体の運動の結果、上記基材自体に力またはモーメントが局所的に作用することはあるが、これらは全体として互いに相殺される)。上記基材は、接着またははんだ付けなどによって、筐体またはセラミック(一般に「マウント(mount)」と呼ばれる)に搭載される。閉鎖型モードにおいては、このマウントには、力もモーメントも全く伝播されない。しかしながら、これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。
短所:公知の構造の大部分が、柔軟な緩衝装置を必要とする(例えば、リング及びバー;例外の1つに、上記のいわゆる半球共振ジャイロスコープ(HRG)があるが、これは、その「真の三次元」構造に起因する複雑な製作工程が求められる)。従って、上記の構造では、加速度及び振動が起こった時に偏角する程度が比較的大きく、またこれが多くの力伝播体(例えば、静電気力伝播体)及びタップ(例えば、容量タップ)における誤りへと繋がる。さらに、上記の必要とする力が過度に大きいため、直交性補償、つまり作動要素を用いた上記構造の「釣り合い」は、事実上不可能である。
2.ばね−質量系
長所:P.Greiff、B.Boxenhorn、T.King及びL.Niles、「シリコン・モノリシック・マイクロメカニカル・ジャイロスコープ(Silicon Monolithic Micromechanical Gyroscope)」、Tech.Digest、固体センサ及びアクチュエータ(Solid−State Sensors and Actuators)に関する第6回国際会議(トランスデューサ(Transducers)’91)、サンフランシスコ、CA、USA、1991年6月、pp.966−968;J.Bernstein、S.Cho、A.T.King、A.Kourepins、P.Maciel及びM.Weinberg、「マイクロ機械加工櫛型駆動部音叉レートジャイロスコープ(A Micromachined Comb−Drive Tuning Fork Rate Gyroscope)」、IEEEマイクロ電気機械システムワークショップ(IEEE Micro Electromechanical Systems Workshop;MEMS’93)報告書、フォートローダーデール、FL、USA、1993年2月、pp.143−148;及びDE 196 41 284 C1に、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得る他のモードの共振周波数よりも、上記有用モードの共振周波数を大幅に低くすることができる構造が開示されている。重大な誤り信号を生じるモードとは、特に、検知運動の測定信号に影響を与えるモードである。通常、励起運動の測定に影響を与えるモードの引き起こす損害は、上記モードよりも少ない。
短所:振動、及び直線加速度によっても頻繁に、有用モードの1つまたは両方が励起されることがあり、従って誤り信号を生じ得る。
EP1515119A1に、それぞれが、逆位相で線形に振動する二対の個体センサを含む、線形の検知モードを持つ回転数センサが開示されている。WO95/34798に、2つの振動性質量体と、当該2つの振動性質量体の回転振動に基づく検知モードとを持つコリオリジャイロが開示されている。
従って、本発明は、加速度及び振動に対して感度のより低い、ばね−質量系に基づく回転数センサを具体的に定義することを目的とする。
本発明によると、上記目的は請求項1の特徴を有するコリオリジャイロによって達成される。両方の有用モード(励起モード及び検知モード)がいずれも閉鎖型である、この種類の構造は提案されている。上記有用モードは、加速度及び振動によって励起させることはできず、誤り信号は生じない。これは、正確には、考慮すべき製作公差が全くない場合にのみ当てはまる。上記コリオリジャイロは、基材並びに複数の個体構造体(少なくとも2つ)及びばね要素を含んでいる。上記ばね要素によって、上記個体構造体のいくつかは上記基材に接続され、いくつかは互いに接続されている。この結果、上記構成は少なくとも2つの閉鎖型固有モードを含み、そのうちの1つは上記励起モードとして用いることができ、もう一方を上記検知モードとして用いることができる。上記励起モードは、力伝播体によって励起させることができる。上記コリオリジャイロがその受感軸を中心として回転する場合、上記励起振動の結果、コリオリの力が生じ、これが上記検知モードを励起させる。上記検知モードにおける運動は、タップによって測定することができる。これによる振動の振幅は測定変数として用いることできる。
請求項2に記載の効果的な改良によると、上記コリオリの力は、力伝播体によってリセットすることができる。これによって、上記個体構造体によるそれがなくなるので、より正確な評価に繋がる。力伝播体は、この目的のために必要であり、この力伝播体によってモーメント及び力を上記検知モードに加えることができる。よって、リセットに用いるモーメントまたはリセットに用いる力の振幅は、角速度の大きさとなる。
上記励起モードの運動は、請求項3に記載されるように、タップを用いて容易に確認することができる。
請求項4に記載されるような、直交性補償のための作動要素及び/または請求項5に記載されるような、周波数調整のための作動要素は、設けられることによって効果をもたらし、それぞれが設定または制御できるように作られている。マイクロ技術を用いて製造される高精度コリオリジャイロでは、直交性補償及び周波数調整は効果的である。レーザトリミングによって両方ともを実現することが可能ではあるが、このようなプロセスは高価である。作動要素によって、上記調整プロセス自体に費用がほとんどかからないという有利な点がもたらされる。
請求項6に記載の効果的な改良には、上記有用なモードの共振周波数が、加速度及び/または振動によって励起され得る、重大な誤り信号を生じ得るモードの共振周波数よりも大幅に低くすることができる構造が開示されている。従って、振動に依存する誤りがさらに軽減される。これらの構造には、上記「形状及び屈曲振動」の種類と、上記「ばね−質量系」の種類との長所を備えており、よってそれぞれの欠点を避けることができる。
次に、上記長所を定量化するために用いられる2つの状況について説明する。
第1の場合(閉鎖型検知モードの利点)
上記検知モードは、線形振動によって、または、上記励起モードが動作される周波数(一般的に、上記励起モードにおける上記共振周波数であり、同調させた共振周波数を用いた場合、上記検知モードの共振周波数でもある)において音響的に正確である場合に励起される。作用する上記加速の振幅は、a0である。これは、以下の記述において、「g」という単位で表わされる。説明を簡単にするために、外乱力の位相及び上記コリオリの力の位相は同一であるものとする。
第1の変形例:上記検知モードは「単純」線形振動である(逆位相線形振動ではない)。よって、上記加速度はコリオリ加速度と区別することができず、誤り信号Ωvを生じる。共振周波数がf0=ω0/(2π)=10kHzで、上記励起モードの振幅が10μmである場合、以下のようになる。
第2の変形例:上記検知モードは、単純回転振動である。質量の不均衡は、k2=1%である。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第3の変形例:上記検知モードは、一対の回転振動の差動モードに対応する(閉鎖型モード)。それ以外に関しては第2の変形例の条件と同様の条件において、質量の不均衡はおよそ100倍少ない(k3=100ppm)ものとすることができる。よって上記誤り信号は、概して以下に対応する。
第2の場合(請求項6に記載の発明の利点)
上記振動における回転加速度部分は、以下に記載される共振周波数よりも大幅に低い周波数のレベルで考慮される。
変形例1:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl1は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも低く、例えば以下のように表わされる。
変形例2:上記検知モードは、2つの逆位相回転振動に対応する。上記一対の回転振動の共通モードにおける共振周波数ωgl2は、上記一対の回転振動の差動モード(すなわち上記検知モード)における共振周波数ω2よりも高く、例えば以下のように表わされる。
上記の励起によって、上記変形例1及び2の上記共通モードにおける、結果としての偏角の比率は、以下のとおりである。
上記共通モードにおける上記励起によって生じる誤りは、上記共通モードにおける上記偏角、または上記偏角の二乗に比例するので、変形例2における上記誤りは、因数9から81によって通分される。
請求項7に記載されるように、上記構造は、上記有用モードにおける上記共振周波数が、他のいかなるモードにおける共振周波数よりも大幅に低くなり、これらのモードでの励起における誤りが減少するように、作られている。
いくつかの例は、閉鎖型励起モードとしての、互いにも逆位相である、一対の逆位相線形振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果であり(Lin−Rot)、また、閉鎖型励起モードとしての、一対の逆位相回転振動と、閉鎖型検知モードとしての、一対の逆位相回転振動との結果である(Rot−Rot)。他の例では、3つの閉鎖型固有モードがあり、互いに異なる受感軸を中心とする回転のために、そのうちの1つの固有モードは、例えば励起モードとして用いることができ、他の2つの固有モードは検知モードとして用いることができる。
請求項9に記載の、好適な改良によると、振動は上記基材の表面に平行して起こり、運動を検知する必要がなく、上記基材の表面に対して直角の運動も必要ないため、上記コリオリジャイロを容易に製造することができる。
請求項10の効果的な改良によると、上記個体構造体が、励起部及びサンプル質量体を含む分断された構造の形式である。これによって、以下の利点が得られる。
1.上記励起部は、概して理想的に誘導される。上記励起部の駆動と、上記励起モードとの間の角度にどのような誤りがあっても、概して上記検知モードの励起には繋がらず、よって誤り信号も生じない。
2.上記検知モードの偏角は、上記励起部に働く駆動力の変化には概して繋がらない。
3.つまり、上記励起部に対する励起力と、上記検知モードにおける運動との間の、望ましくない相互作用は、その大部分が抑制されるということである。
請求項11には、励起部と、コリオリ要素と、検知部とからなる二重に分断された構造が記載されている。これはさらに、「ピックオフ分断」へと繋がるが、これはつまり、上記検知部の上記タップと、上記励起部の運動との間の角度にどのような誤りがあっても、概して誤り信号を生じることはないことを示す。
請求項14に記載の効果的な改良によると、4つの個体構造体が設けられる。これらによって、上記閉鎖型有用モードを容易に実現できる。
下記に、本発明に係る上記コリオリジャイロの例示的な実施態様を、以下の図面を参照して説明する。
励起モードにて線形振動をし、検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第1の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて回転振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第2の変形例の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第2の例示的な実施態様の概略図を示す。
上記励起モード及び上記検知モードにて線形振動をする、閉鎖型ばね−質量系コリオリジャイロの第3の例示的な実施態様の概略図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの第4の例示的な実施態様における、第1の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第2の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第3の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第4の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第5の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第6の変形例の模式的平面図を示す。
本発明に係るコリオリジャイロの上記第4の例示的な実施態様における、第7の変形例の模式的平面図を示す。
場合によっては、明確さを保つため、上記図中において、同一の部材でも同一の参照符号が付されていないものもあるが、図示される相称及び同一の図面に基づけば、上記図中のいずれの部材がいずれの参照符号に属するかは、当業者にとって明らかであろう。
図1から図4において、薄い灰色で示される要素は全て、個体構造体としての動く「質量要素」であり、この個体構造体は、概して極めて堅固なものであると考えることができる。濃い灰色(黒)で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。
図1に、第1の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第1質量要素(mass element)61を4つ備えている。第1質量要素61は、第1x連結ばね要素1a及び連結ばね要素2を介して互いに連結されるとともに、第2x連結ばね要素1b、接続要素4、及び第1基材ばね要素3を介して基材5(本実施態様においては固定部のみ)に連結されている。互いに逆位相である上記質量要素61による、二対の逆位相線形振動は、励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロが受感軸Ωを中心として回転する場合、検知モード8が励起される。これは、y軸を中心とする一対の逆位相回転振動として表わすことができる。上記y軸は、上記受感軸Ωに対して平行であり、上記x方向に対して直角である(Lin−Rot)。上記x連結ばね要素1a及び1bは、x方向において柔軟であり、それ以外の方向において堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。上記第1基材ばね要素3は、上記y軸を中心とする回転に対して柔軟であり、それ以外の回転に対して堅固である。本コリオリジャイロにおいては、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。また、基本的に、上記励起モードと上記検知モードとは互いに入れ替え可能である。つまり、上記した、上記y軸を中心とする一対の逆位相回転振動は上記励起モードとして用いることができ、またこれら一対の逆位相線形振動は上記検知モードとして用いることができる。
図2aに、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第2質量要素62を2つ備えている。第2質量要素62は、連結ばね要素2を介して互いに連結されており、第2基材ばね要素21を介して基材5(本実施態様においては固定部22のみ)に連結されている。z方向を軸とする、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による、一対の逆位相回転振動は、上記励起モード7として用いられる。上記コリオリジャイロがその受感軸Ωを中心として回転している間、上記検知モードとして、y軸を中心とする、一対の逆位相回転振動が励起される(Rot−Rot)。この一対の逆位相回転振動は、上記受感軸Ωに対して直角であり、上記励起モード7における上記回転軸zに対して直角である。上記第2基材ばね要素21は、上記z軸及びy軸を中心とする回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記連結ばね要素2は、等方的に柔軟であってよい。つまり、いかなる負荷に対しても柔軟であってよい。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図2bに、図2aの上記コリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、励起モード7が上記と同様である。すなわち、上記z方向を軸とし、上記基材固定部22を中心とした、上記質量要素62による一対の逆位相回転振動が用いられる。別の第2基材ばね要素21aは、上記z軸、x軸及びy軸を中心とした回転に対して柔軟であるが、それ以外の回転に対しては極めて堅固である。上記に示したコリオリジャイロは第2閉鎖型検知モード8_2を有する。これは上記コリオリジャイロによる第2受感軸Ω2を中心とした回転の間に励起され、x軸を中心とした、一対の逆位相回転振動からなる。従って、上記に示したコリオリジャイロは「2軸」ジャイロと見なすこともできる。よって、このコリオリジャイロには閉鎖型モードが3つあり、これらは励起モードとして用いることができ、また上記受感軸によっては検知モードとして用いることができる。
図3に、第2の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第3質量要素63を4つ備えている。第3質量要素63は、xy連結ばね要素23を介して互いと、そして基材5(本実施態様においては固定部24のみ)とに連結されている。上記質量要素63による、上記x方向及び上記y方向に対して45°の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記に示した例では、斜め方向に向かい合う2つの第3質量要素63が互いから離れるように動くとき、向かい合う他の2つの第3質量要素63はそれぞれ互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する第3質量要素63が上記y方向において互いから離れるように動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いに向かって動く。上記y方向において隣接する上記第3質量要素63が上記y方向において互いに向かって動くとき、上記x方向において隣接する上記第3質量要素63は、上記x方向において互いから離れるように動く。上記xy連結ばね要素23は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
図4に、第3の例示的な実施態様に係る、ばね−質量系に基づくコリオリジャイロを模式的に示す。本コリオリジャイロは、第4質量要素64を4つ備えている。第4質量要素64は、別のxy連結ばね要素25を介して互いと、基材5(本実施態様においては固定部26のみ)とに連結されている。上記x方向における上記第4質量要素64の線形振動が、上記励起モード7として用いられる。この場合、上記x方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は上記x方向において互いに向かって動く。上記受感軸Ωは、上記x方向及び上記y方向に対して直角(従って、上記z方向に対して平行)であるが、この上記受感軸Ωを中心として上記コリオリジャイロが回転する間、線形振動が上記検知モードとして励起され、上記励起モードに対して移動する(Lin−Lin)。この場合、上記y方向において隣接する2つの第4質量要素64が互いから離れるように動くとき、他の2つの第4質量要素64は互いに向かって動く。上記別のxy連結ばね要素25は、上記x方向及び上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては堅固である。本コリオリジャイロにおいても、上記有用モード(すなわち上記励起モード7及び検知モード8)は閉鎖型である。
下記の図5から図11に、第1から第7の変形例に基づいて、第4の例示的な実施態様をより詳細に示す。本発明は、この第4の例示的な実施態様には限定されず、当業者は本明細書の記載に基づいて、進歩的な技術を用いることなく、上記第1から第3の例示的な実施態様の具体的な変形例を見出すことができるであろう。
上記第1から第7の変形例において、上記受感軸Ωは各図面の平面に対して直角である。
薄い灰色で示される要素は全て、動く「質量要素」であり、この質量要素は、概して極めて堅固なものであると見なすことができる。濃い灰色で示される領域は、概して上記基材に対して動くことができないものである。線は、ばね要素の構成要素として用いられる曲げ梁(bending beams)を示す。これらの曲げ梁は、長手方向において概して極めて堅固である。上記z方向における曲げ梁の長さが、上記長手方向に直角の、図の面方向の長さよりも大幅に大きい場合、上記曲げ梁は、上記長手方向に直角の、図の面方向における軸の方向よりも、上記z方向の方が大幅に堅固である。ばね構造体の一部である上記曲げ梁及び上記質量要素はともに、その質量/慣性モーメントを、多くの場合、概して無視することができる。
以下の記載において、上記の「慨して」という表現は、例えば「本質的に」と表現される。
特にマイクロ技術を用いた方法などの、様々な製造方法が上記変形例の製造に適している。上記の全変形例は、例えば、出願日及び出願人が本願と同一である未公開のドイツ特許出願「Method for Production of a Component,and a Component(部品の製造方法及び部品)」に記載の上記マイクロ技術を用いた製造方法、または「conventional surface−micromechanical processes(従来の表面マイクロメカニカルプロセス)」(例えばRobert Bosch GmbH、Analog Devices)を用いて、製造することができる。
図5に示す上記第1の変形例は、基材(図示せず)と、第1個体構造体500と、第2個体構造体600と、第3個体構造体700と、第4個体構造体800とによって構成されている。上記第1個体構造体500は第1励起部510を含み、第1励起部510は第1xばね要素511を介して第1固定点513において上記基材に取り付けられている。第1コリオリ要素520は、第1yばね要素521を介して上記第1励起部510に接続されている。第1検知部530は、第1x回転ばね要素531を介して上記第1コリオリ要素520に接続されている。
上記第2個体構造体600、第3個体構造体700、及び第4個体構造体800はそれぞれ、上記と同様に、第2励起部610、第3励起部710、及び第4励起部810、第2xばね要素611、第3xばね要素711、及び第4xばね要素811、第2固定点613、第3固定点713、及び第4固定点813、第2yばね要素621、第3yばね要素721、及び第4yばね要素821、第2コリオリ要素620、第3コリオリ要素720、及び第4コリオリ要素820、第2x回転ばね要素631、第3x回転ばね要素731、及び第4x回転ばね要素831、第2検知部630、第3検知部730、及び第4検知部830から構成されている。
上記第1励起部510は上記第2励起部610に、また同様に上記第3励起部710は上記第4励起部810に、それぞれ第1連結ばね要素561及び781によって直接連結されている。上記第1励起部510と第4励起部810、及び上記第2励起部610と第3励起部710は、それぞれ第2連結ばね要素58及び67によって直接連結されている。上記第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部730と第4検知部830は、それぞれ第3連結ばね要素564及び784によって直接連結されており、第1及び第2連結検知部を形成する。第1連結検知部530、630は、上記第4連結ばね要素5678を介して直接、上記第2連結検知部730、830に連結されている。
上記xばね要素511、611、711及び811は、上記x方向において柔軟であり、上記y及びz方向において極めて堅固である。これらは、誘導性を向上させるために、固体要素512、612、712及び812に接続されている。上記yばね要素521、621、721及び821は、上記y方向において柔軟であり、上記x及びz方向において極めて堅固である。上記yばね要素521、621、721及び821は、図11に示す別のyばね要素551、651、751及び851に対応するように、一端に形成されてもよい。上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記x方向と、(図中では、それぞれ別のばね要素の上方に配置される2つのばね要素の)対称軸12、13、14及び15を中心として上記z方向においてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記x回転ばね要素531、631、731及び831は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と上記検知部530、630、730及び830との間の相対的回転と、上記x方向における距離の変化とをともに可能にする結合部としての特性を有する。
上記第1連結ばね要素561及び781は、上記x方向において柔軟であり、上記z及びy方向において堅固になるように作られている。上記第3連結ばね要素564及び784は、曲げ梁565及び785と、基材566及び786の固定部とによって構成されている。上記第3連結ばね要素564及び784は、上記z方向10及び11における、それぞれの対称軸を中心としたねじれに対して柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。従って、上記第3連結ばね要素564及び784は回転ばね要素と見なすこともできる。
上記第2連結ばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であり、上記z方向において堅固になるように作られている。上記の全ばね構造体の場合のように、上記図面は設計例を示す。一例として、上記第2連結ばね要素58及び67の代わりに、図10に示すばね141及び241に対応する、変形連結ばねを用いることも可能である。
上記第4連結ばね要素5678は、上記y方向と、上記z方向16における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいて柔軟であり、他のいかなる負荷に対しても堅固になるように作られている。上記第4連結ばね要素5678は、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げる。
上記励起モードは、上記第1励起部510及び第2励起部610と上記第1コリオリ要素520及び第2コリオリ要素620とのそれぞれ、並びに上記第3励起部710及び第4励起部810と上記第3コリオリ要素720及び第4コリオリ要素820とのそれぞれによる、上記x軸方向における2つの線形の逆位相振動に対応する。これら2つの逆位相振動は、さらに互いに逆位相である。上記励起モードの上記共振周波数は、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820の質量と、上記ばね要素511、611、711及び811、上記別のばね要素531、631、731及び831、上記第1連結ばね要素561及び781、並びに上記第2連結ばね要素58及び67のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記検知モードは、回転振動と線形振動とが複合したモードに対応する。これらは、上記第1検知部530及び第2検知部630による、対称軸10を中心とした、上記z方向における回転振動と、上記第3検知部730及び第4検知部830による、対称軸11を中心とした、上記z方向における回転振動との、2つの回転振動である。これら2つの回転振動は、互いに逆位相である。この場合、上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、「ある種の回転振動」を行う。これらは、上記第1yばね要素521と第2yばね要素621、及び上記第3yばね要素721と第4yばね要素821によって、上記第1励起部510と第2励起部610、及び上記第3励起部710と第4励起部810に対して、それぞれ上記y方向において誘導される。上記第1コリオリ要素520と第2コリオリ要素620、及び上記第3コリオリ要素720と第4コリオリ要素820は、上記第1x回転ばね要素531と第2x回転ばね要素631、及び上記第3x回転ばね要素731と第4x回転ばね要素831によって、対応する第1検知部530と第2検知部630、及び上記第3検知部と第4検知部830に対して、それぞれ回転することができる。上記検知モードの上記共振周波数は、上記コリオリ要素520、620、720及び820、並びに上記検知部530、630、730及び830の質量/慣性モーメントと、上記第4連結ばね要素5678、上記第3連結ばね要素564及び784、上記x回転ばね要素531、631、731及び831、並びに上記yばね要素521、621、721及び821のばねの硬さと、によって本質的に決まる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4力伝播体514、614、714及び814を備えており、これらによって上記励起モードは励起される。これらの力伝播体514、614、714及び814は、上記励起振動のタップとして作られているか、または別のタップを備えることができる。上記に示した例では、力伝播体514、614、714及び814として、いわゆる櫛形駆動部が示してある。
本明細書で用いられる「櫛形駆動部」及び「平面コンデンサ構成」という表現は、本願においては以下のように解釈するものとする。
・「櫛形駆動部」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、「ディッピング(dipping)」電極を用いている。つまり、上記電極の重なりが変化する。ディッピング電極の両側においては、通常同一の電極分離が選択される。
・「平面コンデンサ構成」はコンデンサを複数の板状に配置したもので、電極分離が運動の間に変化する。これは、1つの移動電極の両側において異なる電極分離を選択すること(上記周波数だけを不適切に調整することが目的である場合、同一の電極分離を選択してもよい)、または逆に移動電極の両側において互いに電位の異なる静止電極を用いることによって、実現することができる。
図5の上記櫛形駆動部は、上記励起部510、610、710及び810と一体化した移動電極515、615、715及び815と、上記基材に固定されている電極516、616、716及び816とを備える。櫛形駆動部は、同時に、力伝播体としてもタップとしても用いることができる。
上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800は、それぞれ第1〜第4タップ534、634、734及び834を備えており、これらによって上記検知振動は検知される。これらのタップは、リセットモードにおいて、コリオリの力を補償するために、力伝播体としても機能するように作られているか、または、必要であれば、別の力伝播体を備えることができる。上記に示した例では、平面コンデンサ構成はタップとして示されており、平面分離は、上記検知運動の間に変化する。上記タップはそれぞれ、検知部530、630、730及び830とそれぞれ一体化した第1〜第4移動電極535、65、735及び835と、上記基材に固定されている第1〜第4電極536、636、736及び836とを備えている。平面コンデンサ構成は、同時に、力伝播体としても、タップとしても用いることができる。
上記検知部は上記励起運動を行わないため、櫛形駆動部は上記検知振動のタップ(及び/または力伝播体)としても用いることができる点が重要である。上記検知振動のタップとしての、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成には、印加電圧によって上記検知モードにおける上記共振周波数が変化するという特性がある。これは一方で、上記周波数を(二重共鳴に)設定するために意図的に用いることができる。また一方で、一例として、上記共振周波数は上記タップ機能のために変調信号によって、または(回転数に依存する)リセット電圧によって変調される。櫛形駆動部には、この不利な点がない。櫛形駆動部を用いるとき、上記周波数調整を可能にするために、上記平面分離に変化のある平面コンデンサ構成をさらに一体化させることができる。
なお、周波数同調体(frequency tuning)524、624、724及び824のための別の力伝播体、タップ及び/または装置を、それぞれのコリオリ要素に備えることもできる。上記に示した例は、上記平面分離の変化する平面コンデンサ構成に関する。これらの構成は、上記コリオリ要素520、620、720及び820と一体化した移動電極と、上記基材に固定された電極526、626、726及び826(記載の各箇所に電極は1つのみ)とを含む。
上記第1の変形例の構造には、上記x方向における直線加速度及び上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいては、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
上記第1の変形例において、各箇所の2つの検知部はともに回転振動を行う。つまり、静止電極536、636、736及び836を有するタップ534、634、734及び834を含む上記に示した例では、上記平面コンデンサ構成における上記平面分離の上記変化は位置に依存する。これによって、設計及び線形近似の複雑さが増す結果になる。例えば、上記櫛形駆動部がタップ/力伝播体として用いられ、上記周波数調整が上記装置524、624、724及び824によって行われる場合、上記のように複雑さが増すことはない。
さらに、上記検知部の線形振動は、上記x方向と、上記z方向における対称軸を中心とする回転とにおいて柔軟であり、それ以外の回転に対しては極めて堅固な増設ばね541、641、741及び841、並びに、上記y方向において柔軟であり、それ以外の方向においては極めて堅固なばね要素542、642、742及び842を介した、上記基材上の上記検知部530、630、730及び830の付加的な固定によってもたらすことができる(図6の上記第4の例示的な実施態様の上記第2の変形例参照)。上記検知部530、630、730及び830を上記コリオリ要素520、620、720及び820に接続する上記ばね要素531b、631b、731b及び831bは、「結合特性」を全く必要としないため、端を2つ備えるように作ることができる。
図7の上記第3の変形例は、概して上記第1の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第4励起部510及び810、並びに上記第2及び第3励起部610及び710を接続するばね要素58b及び67bは、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向における直線加速度によって、上記x方向においてほとんど偏角することがないように変更されている。
上記第3の変形例では、その構造には、上記z軸を中心とする回転加速度によって励起され得る上記有用モードに近似した共振周波数に対応するモードがある。このモードにおいて、上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820は上記x方向に動く。しかしながら、上記検知部が上記y方向に動く寄生モードと比較して、結果としての加速度及び振動に依存する誤りは小さい。
図8の上記第4の変形例は、概して上記第3の変形例に対応し、次の変更点を含む。
・上記第1及び第2励起部510及び610、並びに上記第3及び第4励起部710及び810を連結する上記ばね要素561b及び781bは、上記z軸を中心とする回転加速度によって上記励起部510、610、710及び810、並びに上記コリオリ要素520、620、720及び820が、上記x方向においてほとんど偏角することがないようにも変更されている。この場合、上記変更されたばね要素561b及び781bは、(上記z方向における)対称軸を中心とする回転、並びに上記y方向における偏角に対して柔軟であり、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固なy回転ばね要素562及び782と、上記回転ばね564及び784に対応する方法で作られた回転ばね563及び783とを含む。
図9に、概して上記第1の変形例に対応する第5の変形例を示す。ばね5678aは、上記検知部530及び630並びに730及び830の同位相回転を妨げず、上記共通モードと上記差動モードとの間の周波数分離を実現するだけである。この場合、上記有用モードの上記共振周波数は、加速度及び/または振動によって励起され得る上記モードの上記共振周波数よりも依然として大幅に低くはなく、重大な誤り信号を生じさせる。
図10に、第6の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体100、200、300及び400はそれぞれ簡易な第1〜第4振動構造体110、210、310及び410からのみ構成される。上記振動構造体110、210、310及び410は、上記閉鎖型励起モード及び検知モードを実現するためにxyばね要素141及び241によって連結されている。xyばね要素141及び241は、xy面においては柔軟であるが、それ以外の面においては極めて堅固である。さらに、上記検知モードは、y回転ばね1234によって連結させることができる。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第6の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、2つの逆位相回転振動と見なすことができる。
図11に、第7の変形例を示す。この場合、上記第1〜第4個体構造体500、600、700及び800はそれぞれ、第1〜第4励起部510、610、710及び810と、第1〜第4サンプル質量体550、650、750及び850とからなる、簡易に分断された構造体から構成される。上記閉鎖型励起モードへの連結は、xyばね要素58及び67によって実現される。当該xyばね要素58及び67は、上記x及びy方向において柔軟であるが、それ以外の方向においては極めて堅固である。上記閉鎖型検知モードは、xy回転ばね5678aによって実現される。当該xy回転ばね5678aは、上記x及びy方向と、上記z方向における対称軸を中心としてねじれた場合とにおいては柔軟であるが、それ以外の回転及び偏角に対しては極めて堅固である。上記に示した簡易な連結では、上記有用モードよりも低い共振周波数に対応するモードが存在することになる。それ以外に関しては、上記第7の変形例は上記第1の変形例に対応する。上記検知モードは、複合したモードと見なすことができる。