JP2010280938A - チタン板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な耐焼付き性および耐割れ性を有することで、優れたプレス成形性を発揮するチタン板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】チタン素材1の表面に、硬質層2が部分的に形成されたチタン板10であって、硬質層2は、チタン板10の表面を複数のマス目状の観察画像上で観察した際において、各マス目Mの各辺(各辺の長さW)が10μmであるときに、チタン板10の表面における1mmあたりの面積において、マス目Mを構成する直線Sが硬質層2のそれぞれの表面を横切る位置における硬質層2の長さの全平均が、5〜200μmとなるように形成されていることを特徴とする。チタン板10の製造方法は、チタン素材1の表面に硬質層2を形成する硬質層形成工程と、硬質層2を部分的に除去する硬質層除去工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、プレス成形性に優れたチタン板およびその製造方法に関する。
チタン板は耐食性に優れていることから、化学・電力および食品製造プラント等の熱交換器の部材、カメラボディー、厨房機器等の民生品や、オートバイ、自動車等の輸送機器部材や、家電機器等の外装材等に使用されている。熱交換器の中でもプレート式熱交換器は、プレス成形によりチタン薄板を波目に加工して表面積を増やすことで熱交換効率を高めており、深い波目を付けるための成形性が必要である。また、カメラの筐体や、家電製品の外装品や、輸送用機器向け部材等へ加工するため、優れた成形性(プレス成形性)が求められる。成形性には素材そのものの加工性と潤滑性、および工具に対する耐焼付き性が要求される。
チタン板は、r値(一軸引張変形時の板厚方向の対数ひずみに対する板幅方向の対数ひずみの比)が高く、素材そのものの絞り成形性が高いにも関わらず、活性な金属であるため、成形工程において金型との焼付きが発生し、これが成形限界を低くする要因となる。そのため、絞り加工を重視する成形品については、一般的に、工具との焼付きを防止することで成形性を向上させることができると言われている。
そこで、工具との焼付きを防止し、成形性を向上させるため、例えば、特許文献1〜3には、表面に、窒化チタン層、窒素富化層、TiC含有層等の硬質層を形成させることが提案されている。しかし、本文献で明示されている硬質層が形成されたチタン板は、耐焼き付き性を重視する加工を施す製品への適用には好ましいが、張出成形や曲げ成形を重視する成形では、逆に表面の割れが発生し易くなり、成形性が劣化するという問題があった。そのため、例えば、特許文献4には、前記のチタン板よりも表面硬さを適度に下げたチタン板が提案されている。また、例えば、特許文献5には、粒界に偏析する不純物元素を所定に規定し、焼鈍処理と硝弗酸による酸洗処理の条件を規定することで表面に凹凸を形成させて、工具との焼付きの防止を図ったチタン板の製造方法が提案されている。
特開平10−60620号公報 特開平10−204609号公報 特開2006−291362号公報 特許第3600792号公報 特開平10−30160号公報
しかしながら、従来のチタン板およびその製造方法では、以下のような問題がある。
特許文献1〜4に記載のチタン板は、張出成形評価として、エリクセン試験(JIS B 7729)が実施されることが多く、この場合、加工Rが比較的大きい(ポンチφ20mm)ため、表面の割れの問題が顕在化し難く、表面の耐焼付き性を向上させることで成形性が向上する場合がある。しかし、プレート式熱交換器部材等、加工Rが小さく、成形深さが深い形状(深く細い溝形状)に成形する場合、R部近傍で割れが発生し易く、硬質層が成形限界を決める主要因となることが明らかとなった。つまり、耐焼付き性向上のために厚い酸化皮膜や窒化皮膜等の硬質層を形成すると、逆に割れが発生し易くなり、成形性を劣化させることが明らかとなった。
また、特許文献4に記載のチタン板は、特許文献1〜3のチタン板に比べて、表面硬さを適度に下げてはいるものの、変形の大きな厳しい形状になった場合、割れの発生を抑制することができず、割れが発生し易いという問題がある。特許文献5に記載のチタン板は、表面に硬質層が形成されていないため、絞り加工等、長い摺動距離が必要な加工の場合、焼付きが発生し易いという問題がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な耐焼付き性および耐割れ性を有することで、優れたプレス成形性を発揮するチタン板およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、以下の事項について検討を行った。
チタン板表面を割れ難くするためには、表面の硬質層を取り除くことが有効である。しかし、硬質層が取り除かれたチタン板表面は、一般的に金型表面と焼付き易くなる。焼付きが発生すると割れの起点となる他、割れに発展しない場合にもチタン板表面に傷が発生し、不良の原因となる。また、金型にチタンが付着するため、金型を研磨する必要が生じ、生産性を低下させるという問題がある。一方で、チタン板表面の焼付き発生を抑えるためには、表面に硬質層を形成することが有効であるが、硬質層は変形能に乏しいため、割れが発生し易いという問題がある。そのため、耐焼付き性と耐割れ性の両立が課題であった。そこで、本発明者らは、チタン板の表面上に耐焼付き性に優れた硬質層を部分的に形成することで、プレス成形時の割れの発生を防ぐと共に、耐焼付き性を向上させ、耐焼付き性と耐割れ性の両立を図ることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、プレス成形性(以下、適宜、成形性という)に優れたチタン板表面に、耐焼付き性に優れた硬質層を部分的に凸部として形成させることで、耐焼付き性と耐割れ性を両立させた。この場合、プレス成形時に最表面に形成された硬質層が金型と接触するため、摺動距離が長くても、焼付きを発生しない。一方、硬質層は変形能に乏しいが、本発明のチタン板では、表面に部分的にしか硬質層が形成されておらず、硬質層がチタン板のマクロな変形に追従する必要が無く、割れ発生の起点となり難い。なお、本発明でいう成形性とは、素材の加工性の他、プレス工具との潤滑性および工具に対する耐焼付き性を総称したものである。
すなわち、本発明に係るチタン板は、チタン素材の表面に、硬質層が部分的に形成されたチタン板であって、前記硬質層は、前記チタン板の表面を複数のマス目状の観察画像上で観察した際において、前記各マス目の各辺が10μmであるときに、前記チタン板の表面における1mmあたりの面積において、前記マス目を構成する直線が前記硬質層のそれぞれの表面を横切る位置における前記硬質層の長さの全平均(以下、適宜、硬質層のサイズという)が、5〜200μmとなるように形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、硬質層を形成することで、耐焼付き性が向上し、さらにこの硬質層を部分的に、所定のサイズで凸部として形成することで、耐割れ性が向上する。
本発明に係るチタン板は、前記チタン板の全表面に対する前記硬質層の全面積率が、20〜90%であることが好ましい。
このような構成によれば、プレス成形の際に、凹部のチタン素材と金型とが接触しにくくなり、耐焼付き性が向上すると共に、変形の際に割れが生じにくくなる。
本発明に係るチタン板は、前記チタン板の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.15〜1.5μmであることが好ましい。また、前記チタン板の表面の最大高さ(Rz)が1.5〜9.0μmであることが好ましい。
これらのような構成によれば、凹部のチタン素材と金型とが接触しにくくなり、耐焼付き性が向上すると共に、成形性が劣化しにくくなる。
本発明に係るチタン板の製造方法は、前記記載のチタン板の製造方法であって、チタン素材の表面に硬質層を形成する硬質層形成工程と、前記硬質層を部分的に除去する硬質層除去工程と、を含むことを特徴とする。
このような製造方法によれば、チタン素材の表面に硬質層を形成した後、硬質層を部分的に除去することで、本発明のチタン板を製造することができる。
本発明に係るチタン板の製造方法は、前記硬質層除去工程において、350℃以上に加熱したソルト炉に浸漬することにより、前記硬質層を部分的に除去することが好ましい。
このような製造方法によれば、チタン板を所定条件のソルト炉に浸漬することで、温度が急激に上昇することにより、チタン板に急激な温度変化が与えられ、硬質層全体に細かいクラックが生じ、硬質層が部分的に剥離する。
本発明に係るチタン板の製造方法は、前記硬質層除去工程において、硝酸を5質量%以上、フッ酸を1質量%以上含有し、かつ、前記硝酸と前記フッ酸の質量比(フッ酸/硝酸)が、0.1以上の酸洗浴中で酸洗することにより、前記硬質層を部分的に除去することが好ましい。
このような製造方法によれば、所定の溶液で酸洗することで、硬質層が部分的に剥離する。
本発明に係るチタン板の製造方法は、前記硬質層除去工程において、350℃以上に加熱したソルト炉に浸漬した後、硝酸を5質量%以上、フッ酸を1質量%以上含有し、かつ、前記硝酸と前記フッ酸の質量比(フッ酸/硝酸)が、0.1以上の酸洗浴中で酸洗することにより、前記硬質層を部分的に除去することが好ましい。
このような製造方法によれば、ソルト炉への浸漬の後、硬質層の一部がチタン素材の表面に残存した場合にも、この残存した硬質層が酸洗により除去される。
本発明に係るチタン板は、良好な耐焼付き性、耐割れ性を有しているため、プレス成形性に優れたものとなる。
本発明に係るチタン板の製造方法は、プレス成形性に優れたチタン板を製造することができる。
本発明に係るチタン板を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)は、(a)のX−X断面図である。 本発明に係るチタン板の硬質層のサイズを説明するための平面模式図である。 硬質層によって、チタン板に割れが生じるしくみについて説明するための説明図であり、(a)は従来のチタン板についての説明図、(b)は本発明に係るチタン板についての説明図である。 実施例において、成形性の評価を行なうための成形金型の形状を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は、(a)のF−F断面図である。 実施例における試験体の表面のSEM写真である。
次に、図面を参照して、本発明に係るチタン板およびその製造方法について詳細に説明する。
≪チタン板≫
図1(a)、(b)に示すように、本発明に係るチタン板10は、チタン素材1の表面に、硬質層2が部分的に形成されたものであり、この部分的に形成された硬質層2のサイズを所定に規定したものである。なお、ここでの「表面」とは、チタン素材1の両面を意味する。また、図1(a)、(b)では、便宜上、硬質層2を見やすく図示している。
以下、各構成について説明する。
<組成>
本発明は、特定の組成のチタン板に限定されるものではないが、チタン素材(母材)1の成形性確保の観点から、チタン板は、チタンおよび不可避不純物からなるものが好ましい。不可避不純物としては、純チタンに含まれる一般的な不純物元素(積極的に添加しない元素)、具体的には、O、Fe、H、C、N等が挙げられ、Oは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下に抑制され、Feは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下に抑制され、Hは130ppm以下に抑制され、Cは800ppm以下に抑制され、Nは300ppmに抑制されることが好ましい。このようなチタン板として、例えば、JIS−1種の冷間圧延板を使用することができる。
<硬質層>
本発明のチタン板10は、チタン素材1の表面に、硬質層2が凸部として部分的に形成されている。そして、表面の残りの部分はチタン素材1からなっており、凹部を形成している。ここで硬質層2とは、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタンの少なくとも一種以上を含む層を指し、ナノインデンターで測定したときの硬さが、10GPa程度以上を示すものをいう。この硬質層2は、同等の方法で3GPa程度の硬さを示す自然酸化皮膜とは明確に区別される。すなわち、本発明において、自然酸化皮膜は、硬質層2に含まれないものとする。
<硬質層のサイズ:5〜200μm>
図2に示すように、硬質層2は、チタン板10の表面を複数のマス目状の観察画像上で観察した際において、各マス目Mの各辺(各辺の長さW)が10μmであるときに、チタン板10の表面における1mmあたりの面積において、マス目Mを構成する直線Sが硬質層2のそれぞれの表面を横切る位置における硬質層2の長さL,L,L・・・Lの全平均((L+L+L+・・・+L)/8)を、5〜200μmとする(図2では、直線Sと硬質層2が交差する位置が8つの場合について図示している)。すなわち、チタン板10の表面のどの位置(任意の観察画像上)においても、1mmあたりの面積において、硬質層2のサイズは、5〜200μmとする。なお、図2では、便宜上、硬質層2のサイズについて説明しやすいように、図示している。
硬質層2のサイズの下限値は、基板であるチタン部(チタン素材1)との密着性が得られる限り特に定めはないが、5μm以上であれば所望の効果を得ることができる。一方、200μmを超えると、プレス成形による変形の際に硬質層2を起点とした割れが発生し易くなり、耐割れ性が低下する。したがって、硬質層2のサイズは、5〜200μmとする。なお、より好ましくは、10〜200μm、さらに好ましくは、20〜150μmである。
硬質層2のサイズの測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて、チタン板10の表面の一辺1mm×1mmの領域(面積)を100倍の倍率で観察した写真を用意し、表面上の任意の方向に直線Sを引き、さらにその直線Sに平行および垂直に、格子間隔を10μmとして直線Sを格子状(マス目状)に引いた状態となるように画像解析を行い、部分的に形成された各硬質層2の表面を直線Sが横切るそれぞれの長さの全平均を計算することで行えばよい。
ここで、図面を参照して、割れが生じるしくみについて説明する。
図3(a)に示すように、硬質層2がチタン素材1の表面に連続的に(すなわち、表面全体に)形成されていると、プレス成形による変形の際の負荷によるひずみが、硬質層2全体に生じるため、ひずみが大きくなり、割れが生じ易くなる(図3(a)、(b)中、矢印の長さがひずみの大きさを示す)。一方、図3(b)に示すように、硬質層2がチタン素材1の表面に不連続的に(すなわち、部分的に)形成されていると、プレス成形による変形の際の負荷によるひずみが、部分的に形成された硬質層2ごとに生じるため、硬質層2個々にかかるひずみが小さくなり、割れが生じにくくなる。
このように、硬質層2を部分的に、所定のサイズで形成することで、耐割れ性を向上させることができ、チタン板10の成形性が向上する。
チタン板は、さらに、硬質層2の面積率、表面粗さ(算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz))、表面硬さ、結晶粒径等を所定に規定することが好ましい。
<硬質層の面積率:20〜90%>
硬質層2の面積率は、耐割れ性を向上させると共に、チタン板10の良好な耐焼付き性を発揮させるため、チタン板10の全表面に対して、20〜90%とすることが好ましい。
硬質層2の面積率が20%未満では、プレス成形の際に、凹部のチタン素材1と金型とが接触し易くなり、焼付きが発生する虞がある。一方、90%を超えると、変形の際に割れの基点となる虞がある。したがって、硬質層2の面積率は、20〜90%とすることが好ましい。なお、より好ましくは、35〜80%である。
硬質層2の面積率の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いて100倍の倍率で観察した写真を用意し、これを画像解析することで行えばよい。
<算術平均粗さ(Ra):0.15〜1.5μm>
チタン板10の表面の算術平均粗さ(Ra)は、チタン板10の表面の平均的な摩擦係数に影響を与える。算術平均粗さ(Ra)が0.15μm未満では、凹部のチタン素材1と金型とが接触し易くなるため、成形中に焼付きが発生し易くなる。一方、1.5μmを超えると、切り欠き効果による割れを誘発して成形性を劣化させる虞があり、また、プレス荷重を増大させるため好ましくない。したがって、算術平均粗さ(Ra)は、0.15〜1.5μmとすることが好ましい。なお、より好ましくは、0.2〜1.5μm、さらに好ましくは、0.2〜1.0μmである。
<最大高さ(Rz):1.5〜9.0μm>
チタン板10の表面の最大高さ(Rz)は、凹部の深さを示すものであり、成形性に影響を与える。最大高さ(Rz)が1.5μm未満では、凹部の深さが不十分であり、凹部のチタン素材1と金型とが接触し易くなるため、成形中に焼付きが発生し易くなる。一方、9.0μmを超えると、切り欠き効果により割れの起点となる虞がある。したがって、最大高さ(Rz)は、1.5〜9.0μmとすることが好ましい。なお、より好ましくは、1.8〜6.0μmである。
算術平均粗さ(Ra)と、最大高さ(Rz)の測定は、例えば、表面粗さ形状測定機を使用し、JIS B 0601:2001に準拠した方法で行えばよい。その際、測定距離と測定速度を所定の値に設定し、圧延方向に平行方向と垂直方向を各5点測定し、その平均値を測定値とする。
<表面硬さ>
チタン板10の表面硬さは、焼付きの発生を抑制するため、測定荷重が0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重が4.9Nでのビッカース硬さの差が、40〜900であることが好ましい。ビッカース硬さは、後記する冷間圧延および熱処理の条件を調整してチタン板10の表面状態を所定に規定することにより、制御する。
ここで、測定荷重0.098N(10g)でのビッカース硬さは、チタン板最表面の硬さを評価することができ、測定荷重4.9N(200g)でのビッカース硬さは、材質内部の硬さを評価することができる。また、これらの差を取って硬質層2の形成度合いを評価することができる。
チタン板10表面に硬質層2が形成されると、その厚さに比例してビッカース硬さも上昇する。そして、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さの差([測定荷重0.098Nでのビッカース硬さ]−[測定荷重4.9Nでのビッカース硬さ])が40未満では、工具との焼付きが発生する場合がある。一方、900を超えると、成形時に表面の割れが発生し易くなり、成形性が劣化する場合がある。従って、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さの差は、40〜900とすることが好ましい。なお、より好ましくは、40〜500である。
ビッカース硬さの測定は、例えば、測定面をチタン板表面とし、JIS Z 2244に準拠した方法で行えばよい。その際、測定荷重を4.9Nおよび0.098Nとして各測定荷重について10点測定し、その平均値を測定値として用いる。測定荷重4.9Nの測定には、マイクロビッカース硬さ試験機を、測定荷重0.098Nの測定には、超マイクロビッカース硬さ試験機を用いる。そして、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さと、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さとの差を算出する。
<結晶粒径>
チタン板10は、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径を、平均切片長さで20〜80μmの範囲内とすることが好ましい。結晶粒径の平均切片長さが20μm未満では、加工硬化指数が低く、優れた張出成形性が得られない場合がある。一方、結晶粒径の平均切片長さが80μmを超えると、材料強度が低下する場合がある。従って、結晶粒径の平均切片長さは、チタン板10の成形性と強度特性の観点から前記範囲内とすることが好ましい。なお、より好ましくは、35〜80μmである。結晶粒径の制御は、後記する熱間圧延、冷間圧延時の加熱温度・冷却速度等によって行う。
≪チタン板の製造方法≫
次に、本発明に係るチタン板の製造方法について説明する。
本発明に係るチタン板の製造方法は、前記記載のチタン板10の製造方法であり、硬質層形成工程と、硬質層除去工程と、を含む。
以下、各工程について説明する。
<硬質層形成工程>
硬質層形成工程は、チタン素材の表面に硬質層を形成する工程である。
硬質層形成工程では、まず、従来公知の方法、例えば、原料金属を溶解、鋳造して鋳塊とし、熱間圧延した後、冷間圧延を施して作製されたチタン素材を準備する。次に、このチタン素材を熱処理することで、チタン素材の表面に硬質層を形成する。
硬質層の種類や厚さは、熱処理の雰囲気と温度・時間で制御することができる。熱処理の温度は、600〜800℃が好ましい。熱処理温度が600℃未満では、冷間圧延後の組織の再結晶が十分に起こらない虞がある。一方、800℃を超えると、熱処理中にβ相が析出し、冷却後に結晶粒が微細になり、数分の処理でも、硬質層の厚さが20μm以上となることで、成形性が低下する虞がある。また、処理時間は、熱処理温度との兼ね合いで調整すればよい。すなわち、この範囲の所定の温度で、熱処理雰囲気および時間を制御することにより、所望の種類と厚さの硬質層を得ることができる。例えば、大気中において600℃、1時間の熱処理を行うことで、厚さ100nm程度の酸化チタンが得られる。なお、窒化チタン、炭化チタンを形成する場合も、熱処理の雰囲気を変えることで同様の構造の硬質層を形成することができる。また、硬質層の厚さについては、良好な耐焼付き性が得られる範囲であればよく、好ましくは、5〜250nmである。
また、硬質層を形成したチタン板は、常温(例えば、20℃±15℃程度)まで冷却する。特に、後記するように、硬質層除去工程で酸先処理のみを行う場合には、100℃/min以上の速度で常温まで冷却する。熱処理後の冷却方法としては、炉冷、空冷、水冷等が挙げられるが、空冷や水冷を用いると必然的に上記の冷却速度を満たす。一方、硬質層除去工程でソルト炉浸漬を行う場合は、硬質層を形成したチタン板を100℃/min以上の速度で冷却してもよいし、100℃/min以上の速度で冷却しなくてもよい。
<硬質層除去工程>
硬質層除去工程は、前記硬質層を部分的に除去する工程である。
すなわち、チタン板の表面を複数のマス目状の観察画像上で観察した際において、各マス目の各辺が10μmであるときに、チタン板の表面における1mmあたりの面積において、マス目を構成する直線が硬質層のそれぞれの表面を横切る位置における硬質層の長さの全平均が、5〜200μmとなるように、部分的に除去する。
硬質層を部分的に除去する方法としては、350℃以上に加熱したソルト炉に浸漬することにより、硬質層を部分的に除去する方法(ソルト炉浸漬処理)や、硝酸を5質量%以上、フッ酸を1質量%以上含有し、かつ、前記硝酸と前記フッ酸の質量比(フッ酸/硝酸)が、0.1以上の酸洗浴中で酸洗することにより、硬質層を部分的に除去する方法(酸洗処理)を用いることができる。
[ソルト炉浸漬処理]
熱処理後、チタン板を350℃以上に加熱したソルト炉に浸漬することで、硬質層を部分的に除去することができる。具体的には、350℃以上に加熱したソルト炉に30〜60秒程度浸漬することで、温度が急激に上昇することにより、チタン板に急激な温度変化が与えられ、硬質層全体に細かいクラックが生じ、硬質層が部分的に剥離する。ソルト炉の保持温度が350℃未満では、クラックが十分に入らない。なお、ソルト炉の保持温度は400℃以上が好ましく、また、ソルトは、350℃以上で溶融するものを選択すればよい。このように、ソルト炉浸漬により硬質層を除去する場合、与える温度変化の度合いにより、硬質層に入るクラックの大きさが変化するが、350℃以上のソルト炉に所定時間浸漬することで、硬質層のサイズを5〜200にすることができる。
なお、ソルト炉浸漬処理により硬質層を部分的に除去することができるが、ソルト炉浸漬処理後に酸洗処理してもよい。これにより、硬質層の一部がチタン素材の表面に残存した場合にも、この残存した硬質層を酸洗により除去することができるため、より確実に硬質層を除去することができる。また、チタン板は、ソルト炉に浸漬しているため、大気とは遮断されており、表面に現れた未硬質層が酸化される等して、新たな硬質層を形成することは無い。
[酸洗処理]
熱処理後、酸洗処理を行うことで、硬質層を部分的に除去することができる。なお、酸洗処理の前に、前記したソルト炉浸漬を行うのが簡便であるが、熱処理後、直接酸洗処理を行っても所望の表面状態を得ることができる。ソルト炉浸漬を行わずに、酸洗のみで硬質層を除去する場合、硬質層の形成(熱処理)後、チタン板を冷却する際に生じる熱クラックが、酸洗により硬質層が除去される起点となる(急冷により、チタン板表面の硬質層は収縮しようとするが、内部は冷却が遅いため、表面にクラックが生じる)。硬質層を形成したチタン板を、100℃/min以上の速度で常温まで冷却することにより、後の酸洗処理後に残留する硬質層のサイズが5〜200となるクラックを入れることが可能となる。
酸洗処理に用いる溶液は、硝酸を5質量%以上、フッ酸を1質量%以上含有し、かつ、前記硝酸と前記フッ酸の質量比(フッ酸/硝酸)が、0.1以上のものとする。いずれも、この数値以下の条件では、酸洗速度が遅く、生産性が悪い。なお、ソルト炉浸漬なしで、硬質層の形成後に直接酸洗を行う場合には、酸の濃度を高くすることにより短時間で硬質層を部分的に剥離(除去)することができる。例えば、硝酸:7.5質量%、フッ酸:4.8質量%、硝酸とフッ酸の質量比(フッ酸/硝酸):0.64である。また、酸洗温度は特に規定しないが、浴温が室温から70℃までの範囲で、生産ラインの構成から決定される酸洗時間に応じて温度を設定すれば良い(温度を変えると酸洗速度が変わる)。
酸洗により硬質層を除去する場合、一般に硬質層が除去され易い部分とされにくい部分に分かれる。従来のチタン板の製造方法では、酸洗時間を長くすることにより硬質層を全て除去していたが、酸洗時間を短くすることにより、硬質層が部分的に残留した構造を形成することが可能となる。なお、硬質層の厚さ、酸洗温度、酸洗溶液の組成により、最適な酸洗時間が変化する。酸洗時間が長すぎると、硬質層が必要以上に除去されてしまうので、適宜調整する必要がある。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更することができる。
例えば、硬質層の除去においては、チタン板の表面に新たな硬質層が生成しない条件において急激な温度変化を与え、硬質層にクラックを入れる、またはこれを剥離させることができる処理であれば、その方法はソルト炉浸漬に制限されるものではなく、例えば、オイルバス等を用いてもよい。
また、ソルト炉浸漬処理や酸洗の他、ショットブラストにより硬質層を除去してもよく、ソルト炉浸漬、酸洗、ショットブラストのうち、2つ以上の組み合わせによって硬質層を部分的に除去してもよい。
さらには、チタン板表面に、前記したような、硬質層を部分的に除去する方法の他、チタン板表面に、硬質層を部分的に形成する方法を用いてもよい。
また、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、例えば、チタン素材を洗浄するチタン素材洗浄工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程や、チタン板を乾燥させるチタン板乾燥工程等、他の工程を含めてもよい。
次に、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを対比して、本発明の効果を説明する。本試験では、JIS−1種相当のチタン材を用いて行なったが、本発明の効果は、JIS−2種相当のチタン材をはじめ、他のグレードの純チタン材やチタン合金材を用いたチタン板についても同様の効果を発揮することはいうまでもない。
素材としては、工業用純チタン板(JIS−1種、冷間圧延板)を使用した。化学組成は、O:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、残部:Tiと不可避不純物である。当該チタン板は、チタン原料に当業者に周知の溶解工程、鋳造工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程を施して得られたものである。
この純チタン板材に、所定温度・所定時間で大気焼鈍(熱処理)を施し、常温まで空冷した。その後、一部については、1分間のソルト炉浸漬処理を施し、一部については、60℃に加熱した所定濃度のフッ酸硝酸混合液を用いて酸洗処理を行い、さらに一部については、1分間のソルト炉浸漬処理を施した後、60℃に加熱した所定濃度のフッ酸硝酸混合液を用いて酸洗処理を行った。これらの条件を表1に示す。
また、比較のため、真空焼鈍を行ってサンプルを作製した。前記と同じ工業用純チタン板を使用し、チタン板表面を脱脂洗浄した後、真空焼鈍(熱処理)を行った。真空焼鈍として、一旦、チャンバー内の圧力を5×10−3Paまで減圧して650℃まで炉内を加熱した後、所定の圧力になるまで酸素ガスを導入し、2時間後に常温まで空冷した。熱処理時の圧力は5×10−3Paの条件で実施した(表1のNo.8)。
これらのチタン板について、以下の特性を測定すると共に、耐焼付き性および成形性の評価を行った。
(硬質層のサイズの測定)
硬質層のサイズは、走査型電子顕微鏡を用いて、チタン板の表面の一辺1mm×1mmの領域(面積)を100倍の倍率で観察した写真(図5参照(なお、図5は、試験体No.1のものである))を用意し、表面上の任意の方向に直線を引き、さらにその直線に平行および垂直に、格子間隔を10μmとして直線を格子状(マス目状)に引いた状態となるように画像解析を行い、部分的に形成された各硬質層の表面を直線が横切るそれぞれの長さの全平均を計算した。なお、図5において、硬質部である硬質層(酸化チタン)と軟質部であるチタン素材は、EDX分析における酸素濃度の違いから区別した。
(硬質層面積率の測定)
硬質層の面積率は、走査型電子顕微鏡を用いて100倍の倍率で観察した写真(図5参照)を用意し、この写真について画像解析を行い、チタン板の全表面に対する硬質層の全面積率を測定した。
(表面粗さの測定)
各試験体の算術平均粗さ(Ra)と、最大高さ(Rz)を測定した。測定には、表面粗さ形状測定機(東京精密社製サーフコム1400D)を使用し、JIS B 0601:2001に準拠した方法で測定した。その際、測定距離は7mm、測定速度は0.3mm/secとし、圧延方向に平行方向と垂直方向を各5点測定し、その平均値を測定値とした。
(ビッカース硬さの測定)
ビッカース硬さの測定は、測定面を試験体表面とし、JIS Z 2244に準拠した方法で実施した。測定荷重を4.9N(200g)および0.098N(10g)として各測定荷重について10点測定し、その平均値を測定値として用いた。測定荷重4.9Nの測定には、マイクロビッカース硬さ試験機(MATSUZAWA SEIKI DMH−1)を、測定荷重0.098Nの測定には、超マイクロビッカース硬さ試験機(AKASHI MVK−G3)を用いた。また、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さと、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さとの差([測定荷重0.098Nでのビッカース硬さ]−[測定荷重4.9Nでのビッカース硬さ])を算出した。
(結晶粒径の測定)
結晶粒径の測定は、各試験体をJIS G 0552の切断法に準拠した方法で切断し、その断面組織を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径を測定することで行なった。なお、結晶粒は等軸状を呈していた。
(耐焼付き性の評価)
各試験体に対して耐焼付き性を評価した。新東科学(HEIDON)製表面性状測定装置(TRIBOGEAR TYPE:14FW)を用い、φ9.525mmの鋼球(材質:SKD11、表面硬さ:HRC60)を相手材に用い、チタン板の上に所定の一定荷重を負荷して10往復させる際の摩擦係数の変化を測定した。負荷する荷重を10、20、50、100gとし、往復距離を20mm、速さを120mm/minとした。摩擦係数μが初めて0.15を超えたときを焼付きの発生とみなし、10回の往復後も摩擦係数μが0.15以下を保つ最大荷重を耐焼付き荷重とした。耐焼付き荷重が50g以上の場合を、耐焼付き性が良好とし、50g未満の場合を耐焼付き性が不良とした。
(成形性の評価)
成形性の評価は、各試験体に対してプレート式熱交換器の熱交換部分を模擬した成形金型を用いたプレス試験を行い、成形性を評価した。図4(a)に示すように、成形金型の形状は、成形部が100mm×100mmで、ピッチが10mm、最大高さ(Rz)が4mmの綾線部を有し、各綾線部は、頂点にR=0.4,0.6,0.8,1.0,1.4,1.8の6種のR形状を有している。なお、図4(b)に示す通り、測定位置Cは、金型中央を通る線の山側であり、測定位置C’は、金型中央を通る線の谷側である。
この成形金型を用いて80t油圧プレス機にてプレス成形を行なった。プレス成形は、160mm×160mmに切断した各試験体の両面に動粘度34mm/s(温度40℃)のプレス油を塗布し、各試験体の圧延方向が図4(a)の上下方向と一致するように下金型上に配置し、プレス速度1mm/s、押し込み深さ3.6mmの条件で実施した。そして、成形性の評価は、プレス成形後に各試験体に認められる割れの数で評価した。具体的な評価方法は以下の通りである。
図4(a)に示す稜線部と点線(山側5つ、谷側1つ)の交点計36箇所について、各試験体の割れの有無を目視で観察した。そして、割れの起点となる測定位置A、C、C’、Eについては、割れが認められない場合を2点、くびれが認められた場合を1点、割れが認められた場合を0点として点数を付けた。また、その他の測定位置B、Dについては、割れが認められない場合を1点、くびれが認められた場合を0.5点、割れが認められた場合を0点として点数を付けた。そして、各点数に加工Rの逆数を掛けて割れの状態を数値化し、その合計を求めた。この合計値を、完全に割れ、くびれが認められない場合を100として規格化し、下記式(1)によって成形性スコアとして算出した。成形性スコアの算出方法は以下の通りである。
成形性スコア=ΣE(ij)/R(j)/(ΣA,C,C’,E2/R(j)+ΣB,D1/R(j))×100 ・・・式(1)
ここで、式(1)において、
A、C、C’、Eの場合は、E(ij)=1.0×(割れなし;2、くびれ;1、割れ;0)とし、
B、Dの場合は、E(ij)=0.5×(割れなし;2、くびれ;1、割れ;0)として算出した。
成形性スコアは、70点以上を成形性が良好とし、70点未満を成形性が不良とした。
これらの結果を表1に示す。なお、表1において、測定等ができないものは、「−」で示す。
表1に示すように、No.1〜6は、本発明の範囲を満たすため、耐焼付き性および成形性が良好であった。
一方、No.7、9、10は、成形性は比較的良好であるが、表面に硬質層が形成されていないため、耐焼付き性に劣った。
No.8は、真空焼鈍処理中に生じた硬質層が表面に連続的に形成されているため、成形性に劣った。
ここで、試験体No.1の表面のSEM写真を図5に示す。図5に示すように、表面に凹凸が形成され、硬質層が凸部として形成していることがわかる。凸部として形成された硬質層が、耐焼付き性を発揮し、凹部の未硬化部であるチタン素材が高い成形能を発揮することにより、優れた耐焼付き性とプレス成形性を有すると考えられる。
以上、本発明に係るチタン板およびその製造方法について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されるものではない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することができることはいうまでもない。
1 チタン素材
2 硬質層
10 チタン板
S 直線
〜L 硬質層長さ
M マス目
W マス目の辺の長さ

Claims (8)

  1. チタン素材の表面に、硬質層が部分的に形成されたチタン板であって、
    前記硬質層は、前記チタン板の表面を複数のマス目状の観察画像上で観察した際において、前記各マス目の各辺が10μmであるときに、前記チタン板の表面における1mmあたりの面積において、前記マス目を構成する直線が前記硬質層のそれぞれの表面を横切る位置における前記硬質層の長さの全平均が、5〜200μmとなるように形成されていることを特徴とするチタン板。
  2. 前記チタン板の全表面に対する前記硬質層の全面積率が、20〜90%であることを特徴とする請求項1に記載のチタン板。
  3. 前記チタン板の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.15〜1.5μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン板。
  4. 前記チタン板の表面の最大高さ(Rz)が1.5〜9.0μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のチタン板。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のチタン板の製造方法であって、
    チタン素材の表面に硬質層を形成する硬質層形成工程と、
    前記硬質層を部分的に除去する硬質層除去工程と、を含むことを特徴とするチタン板の製造方法。
  6. 前記硬質層除去工程において、350℃以上に加熱したソルト炉に浸漬することにより、前記硬質層を部分的に除去することを特徴とする請求項5に記載のチタン板の製造方法。
  7. 前記硬質層除去工程において、硝酸を5質量%以上、フッ酸を1質量%以上含有し、かつ、前記硝酸と前記フッ酸の質量比(フッ酸/硝酸)が、0.1以上の酸洗浴中で酸洗することにより、前記硬質層を部分的に除去することを特徴とする請求項5に記載のチタン板の製造方法。
  8. 前記硬質層除去工程において、350℃以上に加熱したソルト炉に浸漬した後、硝酸を5質量%以上、フッ酸を1質量%以上含有し、かつ、前記硝酸と前記フッ酸の質量比(フッ酸/硝酸)が、0.1以上の酸洗浴中で酸洗することにより、前記硬質層を部分的に除去することを特徴とする請求項5に記載のチタン板の製造方法。
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