JP4584341B2 - チタン板及びチタン板の製造方法 - Google Patents

チタン板及びチタン板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱交換器用の部材、カメラボディー、厨房機器などの民生品やオートバイ、自動車等の輸送機器部材、家電機器等の外装材などに使用されるチタン板及びチタン板の製造方法に関する。
チタン板は、耐食性に優れていることから、化学、電力及び食品製造プラントなどの熱交換器に使用されている。中でもチタン板を用いたプレート式熱交換器は、プレス成形によりチタン板を波目に加工して表面積を増やすことで熱交換効率を高めている。そのため、深い波目を付けるための成形性が必要である。また、カメラの筐体や家電製品の外装品、輸送用機器向け部材等へ加工するため優れた成形性が求められる。通常、成形性には板材そのものの加工性と潤滑性が要求される。
チタン板は、r値(一軸引張変形時の板厚方向の対数ひずみに対する板幅方向の対数ひずみの比)が高く、板材そのものの絞り成形性が高いにも関わらず、活性な金属であるため成形工程で成形金型と焼付きを発生し、これが成形限界を低くする要因となっている。そのため、絞り加工を重視する成形品については、工具との焼付きを防止すること、すなわち、耐焼付き性を向上させることで成形性を向上させることができると一般的に言われている。
例えば、特許文献1には、表面に0.1μm以上、1.0μm以下の厚さの窒化チタン層を有し、その下層に窒素の拡散層を有することを特徴とするチタン薄板が記載されており、特許文献2には、表面に窒素富化層を有し、その厚さが0.5μm以上、5μm以下であることを特徴とする成形加工用チタン薄板が記載されており、特許文献3には、素地チタンの表層にTiC含有層が存在し、且つ該TiC含有層の厚さが300Å以上であることを特徴とするプレス成形性及び表面光沢に優れたチタン板が記載されている。
特許文献1〜3によれば、表面に硬化層を形成させることで耐焼付き性と成形性を改善できる旨が記載されている。
また、特許文献4には、チタン薄板の表面にて、荷重50gfのビッカース硬さ;HVS0.05が180〜280、荷重200gfのビッカース硬さ;HVS0.2が170以下であり、JIS Z 2247 B法に準拠したエリクセン値が11.5mm以上であることを特徴とする工業用純チタン薄板が記載されている。
特許文献4によれば、特許文献1〜3のチタン板よりも表面硬さを適度に下げることができる旨が記載されている。
さらに、特許文献5には、圧延方向と平行な方向における表面の算術平均粗さが0.25μm以上2.5μm以下であり、表面における試験荷重4.9Nによるビッカース硬さよりも試験荷重0.098Nによるビッカース硬さの方が20以上高く、かつ、試験荷重4.9Nによるビッカース硬さが180以下であることを特徴とするチタン板が記載されている。
特許文献5によれば、チタン板の表面の粗さをある程度粗くすることによって、プレス成形時におけるチタン板と成形金型の間への潤滑剤の引き込み量を増大させて焼付きを防止し、プレス成形後の焼付き疵を低減することができる旨が記載されている。
また、特許文献6には、重量割合で、Fe、Ni及びCrの含有率が100ppm≦Fe≦700ppm、100ppm≦Ni+Cr≦700ppm、及び200ppm≦Fe+Ni+Cr≦1100ppmを満足し、かつO(酸素)の含有率が900ppm以下で、残部がTi及び不可避不純物からなる純チタン材に、冷間圧延を施し、次いで600〜850℃の温度で焼鈍処理を施して純チタン板の平均結晶粒径を20〜80μmとし、その後2重量%≦弗酸≦7重量%、4重量%≦硝酸≦20重量%、及び1重量%≦硝酸/弗酸≦5重量%を満足する硝弗酸水溶液で酸洗処理を施すことを特徴とする純チタン板の製造方法が記載されている。
特許文献6によれば、プレス等の加工の際に焼付きが生じ難く、プレス等の成形性が良好で、表面が清浄であり、しかも安価な純チタン板を製造することができる旨が記載されている。
他方、従来一般的に行われている張出成形評価として、エリクセン試験(JIS B 7729)があり、このエリクセン試験で規定された公知の技術が数多く存在する。このような公知の技術の場合、加工Rが比較的大きい(ポンチφ20)ため表面の割れの問題が顕在化し難く、表面の耐焼付き性を向上させることで成形性を向上させることができる場合があった。
特開平10−60620号公報 特開平10−204609号公報 特開2006−291362号公報 特許第3600792号明細書 特開2002−3968号公報 特開平10−30160号公報
しかし、特許文献1〜3には、表面に硬化層が形成されているので、耐焼付き性を重視する加工を施す製品への適用は好ましいが、張出成形や曲げ成形を重視する成形では逆に表面の割れが発生し易くなり成形性が劣化するという問題があった。
特許文献4には、表面硬度が高く割れが発生し易いと共に、表面形態が適切でなく焼付きが発生し易いという問題があった。つまり、厳しい形状になった場合、割れの発生を抑制できないという問題があった。さらに、焼付き防止のためにチタン板の表面に酸化皮膜を形成した場合、その厚さによっては光の干渉が生じ、意匠性を損なうという問題があった。
特許文献5は、耐焼付き性向上のために表面の硬度を上げることを主眼にしているため、表面の割れが発生し易く、成形性を劣化させる問題があった。また、表面粗さを高くすることでプレス成形時の保油性を向上させているが、表面粗さの管理をRaのみで実施しているために十分な保油性を発揮できない場合があり、焼付きを防止するためには比較的厚い(つまり、割れ易い)酸化皮膜を形成する必要があった。また、この特許文献5では、表面粗さの制御方法としてショットブラストを実施しているが、その後の熱処理でチタン板の反りが発生し易く、その矯正が必要となり生産性が悪いという問題があった。さらに、粗研磨を施した圧延ロールを用いてチタン板に冷間圧延を施すことも実施されているが、この手法でチタン板の表面を粗面に調整した場合には、チタン板の表面に鋭部(凸部)が多く存在することになる。そのため、各鋭部の面圧が上昇するため工具と焼付き易く、また、凹凸が一方向に揃っているため、一度焼付きが発生した場合に焼付きが途切れることなく、不良品を発生し易いという問題があった。
また、特許文献6には、添加した元素が結晶粒の成長を阻害し、所望の粒径を得るには長時間の熱処理が必要になるため生産性を落とすとともに、所望の粒径を得た場合にも成形性そのものが悪いという問題があった。また、粒界に元素を偏析させた後、酸洗工程で粒界部を優先的に溶解させているため、粒界に沿って鋭い切り欠きの様な凹部が多数形成され易い。従って、張出成形や曲げ成形を重視する場合は割れ発生の起点となり易く、成形性を劣化させるという問題があった。
そして、従来公知の技術では、プレート式熱交換器部材のように加工Rが小さく、成形深さが深い形状(深く細い溝形状)に成形する場合、R部で割れが発生し易いことが分かった。これは、耐焼付き性向上のために厚い酸化皮膜や窒化皮膜を形成すると、逆に割れが発生し易くなって成形性を劣化させることによるものであり、厚い酸化皮膜や窒化皮膜の形成が成形限界を決める主要因となることが分かった。
本発明はこのような背景のもとになされたものであり、良好な耐焼付き性、耐割れ性を有することで優れたプレス成形性を発揮するチタン板及びチタン板の製造方法を提供することを課題とする。
チタン表面を割れ難くするためには酸化皮膜などの硬化層を取り除くことが有効である。しかし、硬化層が取り除かれたチタン表面は一般的に成形金型の表面と焼付き易くなる。焼付きが発生すると、割れの起点となるほか、割れに発展しない場合であっても成形金型にチタンが付着するため成形金型を研磨する必要が生じ、生産性を低下させる問題がある。そのため、硬化層の除去と耐焼付き性の両立が課題であった。
本発明者らは鋭意研究した結果、表面の凹凸の形態をより適切化することでプレス成形時のプレス油の潤滑効果を最大限に発揮させて耐焼付き性を向上させることによって、表面の割れ防止と、チタン板と成形金型の焼付き防止との両立を図ることができ、これによって前記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(1)前記課題を解決した本発明に係るチタン板は、算術平均粗さ(Ra)が0.15〜1.5μmの範囲であり、最大高さ(Rz)が1.5〜9.0μmの範囲であり、ひずみ度(Rsk)が−3.0〜−0.5の範囲であり、且つ表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差が45以下であることを特徴としている。
このように、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)をそれぞれ特定の数値範囲とすることによって、保油性を発揮することができるとともに、切欠効果による割れを誘発し難くすることができる。また、ひずみ度(Rsk)を特定の数値範囲とすることによって、平滑部への面圧が上昇することを防止することができるので、局部塑性変形と焼付きを防止することができる。そして、表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差を45以下とすること、つまり、表面に硬化層を形成させないようにすることで、成形時の表面割れを発生し難くしている。
(2)本発明に係るチタン板は、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径が、平均切片長さで20〜80μmの範囲であるのが好ましい。
JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径の平均切片長さをこのような特定の数値範囲とすれば、酸洗工程によってチタン板表面の凹凸が適度に粗くなるためより優れた保油性を得ることができる。
(3)本発明に係るチタン板は、板厚が1.0mm以下であるのが好ましい。
このような板厚とすれば、熱交換器用の部材として好適に使用することができるようになる。
(4)本発明に係るチタン板の製造方法は、冷間圧延後のチタン板を結晶粒径が20〜80μmとなるように大気焼鈍を行う大気焼鈍工程と、前記大気焼鈍工程後のチタン板を硝酸/フッ酸比が1以上10以下の酸洗浴中で酸洗する酸洗工程と、前記酸洗工程後のチタン板を圧下率が0.2〜1.0%のスキンパス圧延を行うスキンパス圧延工程とを含むことを特徴としている。
このように、冷間圧延後に行う大気焼鈍工程によって結晶粒径を所望の大きさにすることができる。そして、大気焼鈍工程によって結晶粒径を所望の大きさにしたチタン板に対して行う酸洗工程及びスキンパス圧延工程をそれぞれ特定条件とすることによって、チタン板表面の凹凸を所望の状態、すなわち、所望の算術平均粗さ(Ra)と最大高さ(Rz)とひずみ度(Rsk)とにすることができる。
本発明に係るチタン板によれば、良好な耐焼付き性及び耐割れ性を有することで優れたプレス成形性を発揮することができる。
また、本発明に係るチタン板の製造方法によれば、良好な耐焼付き性及び耐割れ性を有することで優れたプレス成形性を発揮するチタン板を製造することができる。
本発明に係るチタン板の製造方法のフローを説明するフローチャートである。 (a)は、成形性の評価を行うための成形金型の形状を示す平面図であり、(b)は、(a)のF−F線断面図である。 (a)は、試験体No.7の表面のSEM像であり、(b)は、試験体No.7の圧延方向に対して垂直方向に測定した粗さ曲線を示すグラフである。 (a)は、試験体No.10の表面のSEM像であり、(b)は、試験体No.10の圧延方向に対して垂直方向に測定した粗さ曲線を示すグラフである。
本発明の趣旨は、表面の凹凸の形態と硬さの制御に着目し、耐焼付き性と耐割れ性を両立できるチタン板とすることによって優れた成形性を発揮するようにしたことにある。また、本発明の趣旨は、かかるチタン板を製造するチタン板の製造方法としたことにある。
ここで、本発明における成形性とは、板材の加工性の他、プレス工具との潤滑性及び工具に対する耐焼付き性を総称したものをいう。
本発明に係るチタン板は、算術平均粗さ(Ra)が0.15〜1.5μmの範囲であり、最大高さ(Rz)が1.5〜9.0μmの範囲であり、ひずみ度(Rsk)が−3.0〜−0.5の範囲であり、且つ表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差が45以下となるようにしている。なお、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)及びひずみ度(Rsk)は、JIS B 0601:2001に準拠している。
本発明に係るチタン板は、基本的に表面に硬化層が形成されておらず、表面に対して、X線源をCu−Kαとする入射角1°の薄膜法によるX線回折を行った際に、TiC、TiNのピークが殆ど検出されない。ここで、硬化層とは雰囲気制御条件下での熱処理で意図的に形成した皮膜をいい、例えば、酸化皮膜、窒化物皮膜、炭化物皮膜、並びにこれらを1種以上含む皮膜が該当する。なお、酸洗処理で形成される酸化皮膜や、室温で大気中に放置しておくことにより自然に形成される自然酸化皮膜は不動態皮膜というが、このような不動態皮膜は硬化層とはいわない。硬化層の厚さは、ビッカース硬度で規定する。これについては後記する。
そして、本発明に係るチタン板では、直径10μm以上の凹部が表面上に不連続に形成されている。凹部は、油溜まりとして働き、保油性を向上させる。また凹部が不連続に形成されているため、仮に、ある凸部や平滑部で焼付きが発生したとしても凹部で焼付きが止まり、大きな焼付きに発展することを防止することができる。また、凹部の深さを凹部の直径よりも小さくしているため、凹部が切り欠きとして作用(切欠効果)しないようにすることもでき、さらに、凹部のサイズ(大きさ、深さ)、頻度を規定するには、一般的に管理指標として用いられている算術平均粗さ(Ra)のみでは不十分であることを解明したため、凹部の深さを規定する最大高さ(Rz)、及び凹部の頻度を規定するひずみ度(Rsk)を管理指標として、これらを特定の数値範囲に規定している。なお、凹部のサイズはSEM(走査型電子顕微鏡)によりチタン板の表面を観察することにより判断することができる。
このように、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)をそれぞれ特定の数値範囲とすることによって、保油性を発揮することができるとともに、切欠効果による割れを誘発し難くすることができる。また、ひずみ度(Rsk)を特定の数値範囲とすることによって、平滑部への面圧が上昇することを防止することができるので、局部塑性変形と焼付きを防止することができる。そして、表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差を45以下とすること、つまり、表面に硬化層を形成させないようにすることで、成形時の表面割れを発生し難くしている。
以下、これらを規定したことについて詳細に説明する。
(組成)
本発明に係るチタン板は、特定の組成のチタン板に限定されるものではないが、母材の成形性確保の観点から以下の組成範囲であることが好ましい。
Oを1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下に抑制し、Feを1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下に抑制し、Hを130ppm以下に抑制し、Cを800ppm以下に抑制し、Nを300ppmに抑制し、その他残部はTiであるのが好ましい。なお、これらのO、Fe、N、C、Hは純チタンに含まれる一般的な不純物元素(積極的に添加しない元素)、つまり、不可避不純物である。
(表面粗さ)
板材表面の平均的な摩擦係数に影響を与えるために算術平均粗さ(Ra)を規定するが、算術平均粗さ(Ra)では凹部の深さを表現することができないため最大高さ(Rz)も併せて規定する。
また、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)とも粗さの高さ方向(縦方向)のみの情報を定量化したものであり、横方向(面内)の形状の情報が含まれていない。そのため、表面の凹部の面内の形状及び分布状態を定量化するためにひずみ度(Rsk)を規定する。
(算術平均粗さ(Ra))
算術平均粗さ(Ra)は前記したように、板材表面の平均的な摩擦係数に影響を与えるために規定するものである。
算術平均粗さ(Ra)が0.15μm未満であると、保油性を発揮できない。一方で、算術平均粗さ(Ra)が1.5μmを超えると、切欠効果による割れを誘発し、成形性を劣化させる可能性がある。また、摩擦係数が大きくなるので板材の流動を阻害し、局所変形が起こり易くなるため割れが発生し易くなる。さらに、プレス荷重を増大させるため好ましくない。
従って、算術平均粗さ(Ra)は、0.15〜1.5μmの範囲とする必要がある。なお、算術平均粗さ(Ra)は、0.2〜1.5μmの範囲とするのが好ましく、0.2〜1.0μmの範囲とするのがより好ましい。
(最大高さ(Rz))
最大高さ(Rz)は前記したように、凹部の深さを規定するものである。
最大高さ(Rz)が1.5μm未満であると、凹部の深さが不十分で良好な保油性を発揮できないため、成形中に焼付きが発生し易くなる。一方で、最大高さ(Rz)が9.0μmを超えると、切欠効果により割れの起点と成り得る。
従って、最大高さ(Rz)は、1.5〜9.0μmの範囲とする必要がある。なお、最大高さ(Rz)は、1.8〜9.0μmの範囲とするのが好ましく、1.8〜6.0μmの範囲とするのがより好ましい。
(ひずみ度(Rsk))
ひずみ度(Rsk)は、凹部の頻度・面積率に相当するものである。
ひずみ度(Rsk)が−3.0未満であると、平滑部の面積が減り、平滑部への面圧が上昇するため、局部塑性変形、及び焼付きが発生し易くなる。一方で、ひずみ度(Rsk)が−0.5を超えると、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)が規定の範囲であっても凸部若しくは角部が多い表面となる場合が多い。そのため、成形時に成形金型が凸部若しくは角部を摺動するため、凸部への面圧が上昇し、表面の局部塑性変形、焼付きが発生し易くなる。その結果、板材の流入が妨げられ、流入が妨げられる2点間で引張変形が起こり、破断が生じ易くなる。
従って、ひずみ度(Rsk)は、−3.0〜−0.5の範囲とする必要がある。なお、ひずみ度(Rsk)は、−3.0〜−1.0の範囲とするのが好ましい。
ここで、ひずみ度(Rsk)とは、振幅分布曲線の中心線に対する対象性パラメータであり、下記式(1)で算出される。
ひずみ度(Rsk)は、粗さ曲線から求めた確率密度関数が正規分布(上下方向が対象)の場合にRskは0となり、平滑面に凹部が分布している場合に負(−)の値、平滑面に凸部が分布している場合に正(+)の値を取る。
前記した表面形態を達成するため、チタン板の製造方法において、チタン板の結晶粒径と酸洗条件を制御し、所定範囲の軽圧下率のスキンパス圧延を施すことが必要となる。詳細は後記する。
(表面硬さ)
チタン表面に硬化層が形成されると硬さが向上するが、硬さが向上することによって表面の割れを促進させ易くなる。表面の割れ発生を促進させないようにするため、表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さと、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さを測定し、これらの差を所定の閾値以下となるように規定した。
ここで、測定荷重0.098N(10g)でのビッカース硬さは、最表面の硬さを評価することができ、測定荷重4.9N(200g)でのビッカース硬さは、材質内部の硬さを評価することができる。また、これらの差を取って、硬化層の形成度合いを評価することができる。
つまり、表面に窒化物等の硬化層が形成されると硬さの差が45を超え、成形時に表面の割れが発生し易くなり成形性が劣化する。
従って、これらのビッカース硬さの差は45以下とする必要がある。なお、これらのビッカース硬さの差は36以下とするのが好ましく、35以下とするのがより好ましい。
なお、ビッカース硬さは一般的に、均質な材料であっても荷重が低いほど高い硬さが得られる傾向がある。例えば、後記する本発明の実施例に係る試験体では、十分な厚さ(片面50μm)の表面部を化学的に除去した板材に対して測定したところ、測定荷重0.098Nでのビッカース硬さの測定値は、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さの測定値よりも平均で12高い値を示した。
(結晶粒径の範囲)
本発明に係るチタン板は、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径が、平均切片長さで20〜80μmの範囲とするのが好ましい。
JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径の平均切片長さを20〜80μmの範囲とすれば、酸洗工程によって結晶粒径のサイズを反映して表面の凹凸が形成されるためチタン板表面の凹凸が適度に粗くなり、優れた保油性を得ることができる。
JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径の平均切片長さが20μm未満であると、酸洗工程後の表面の凹凸が浅くなってしまい、所望の粗さを得ることができない。
一方で、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径の平均切片長さが80μmを超えると、酸洗工程を行っても表面に形成される凹凸が浅く、また各凹部の間隔が広くなり過ぎるので所望の粗さを得ることができない。そのため、優れた保油性が得られず焼付きを起こし易くなる。さらに、一度焼付きが生じるとそれが中断され難くなる。
従って、前記したように、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径の平均切片長さは、20〜80μmの範囲とする必要がある。なお、JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径の平均切片長さは20〜65μmの範囲とするのが好ましく、35〜65μmの範囲とするのがより好ましい。
本発明に係るチタン板の厚さは、取り扱い性や、使用用途に応じて適宜決定することができ、特に限定されない。本発明に係るチタン板を熱交換器用の部材、例えば、放熱板として好適に使用する場合は、板厚が1.0mm以下であることが好ましい。
また、本発明に係るチタン板の使用用途は前記した熱交換器用の部材に限定されるものではなく、例えば、カメラボディー、厨房機器などの民生品やオートバイ、自動車等の輸送機器部材、家電機器等の外装材などにも使用することができる。
以上、本発明に係るチタン板について詳細に説明した。かかるチタン板によれば、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)、ひずみ度(Rsk)によって表面の粗さを適切に制御したので優れた保油性を得ることができる。そのため、プレス成形時のプレス油の潤滑効果を最大限に発揮させることができる結果、良好な耐焼付き性を得ることが可能となる。また、このように表面の粗さを適切に制御したので切欠効果を防止することができ、表面の割れの発生を防止することが可能である。さらに、チタン板の表面に硬化層が形成されていないため、成形時の表面割れを発生し難くすることができる。よって、本発明に係るチタン板は、優れたプレス成形性を発揮することができる。なお、本発明に係るチタン板は、耐焼付き性が良好であるので成形金型にチタンが付着し難く、成形金型を研磨する頻度を減らすことが可能である。そのため、生産性を向上させることができる。
以上に説明したチタン板は、次に説明する本発明に係るチタン板の製造方法によって好適に製造することができる。
ここで、本発明に係るチタン板の製造方法について具体的に説明する前に、冷間圧延後のチタン板の代表的な製造工程を2つ紹介する。
一つ目は、冷間圧延後に真空焼鈍を行うものであり、二つ目は、冷間圧延後に大気焼鈍を行い、その後に酸洗するものである。
前者の場合、冷間圧延並びにその後の真空焼鈍時に、チタン板の表面に硬化層が形成され易い。真空焼鈍の雰囲気を不活性雰囲気として、酸素、窒素分圧を下げた場合にも冷間圧延時の潤滑油がチタン板表面に残存している場合などは表面に炭化チタンが形成され表面に硬化層が形成される。そのため、プレス形成時に表面の割れが発生し易いチタン板が製造される虞がある。
後者の場合、酸洗後のチタン板は表面の硬化層が除去されるため、プレス成形性に優れたチタン板を製造するには好適である。しかしながら、従来のチタン板表面の形態並びに製造方法の管理では、成形金型との耐焼付き性が不十分であり、容易に焼付きを起こす虞があった。
本発明では、後者の製造工程をベースにして、潤滑油の保油性を向上させるように表面の凹凸を形成させ、その形態を制御するために結晶粒径と酸洗条件を特定の条件とし、酸洗後に特定の条件のスキンパス圧延を実施することとした。このようにすることによって、硬化層を用いずに耐焼付き性を向上させることができる。
以下に、本発明に係るチタン板の製造方法について具体的に説明する。
本発明に係るチタン板の製造方法は、図1に示すように、大気焼鈍工程S1と、酸洗工程S2と、スキンパス圧延工程S3とを含み、各工程をこの手順で行うものである。
なお、冷間圧延までの工程は、本発明に係るチタン板の表面の形態に大きな影響を及ぼすものではないので、通常行われる条件で鋳造工程、均熱工程、熱間粗圧延工程、熱間仕上工程、巻上工程、冷間圧延工程等を行えばよい。
以下に、本発明のチタン板の製造方法の各工程について説明する。
(大気焼鈍工程)
大気焼鈍工程S1は、冷間圧延後のチタン板を結晶粒径が20〜80μmとなるように大気焼鈍を行う工程である。大気焼鈍工程S1によって冷間圧延後のチタン板の結晶粒径を20〜80μmとすると、後工程の酸洗工程S2によって表面に適度な大きさ(深さ)及び分布状態をもって凹凸を形成させることができるようになる。なお、表面の凹部の深さは最大高さ(Rz)に影響を与え、凹部の分布状態はひずみ度(Rsk)に影響を与える。
大気焼鈍工程S1は、連続焼鈍(処理時間は30秒から5分程度)を実施する。一般的な大気焼鈍は700〜800℃で実施されるが、本発明においては、結晶粒径を所望の範囲とするために750〜850℃とするのが生産性の点で好ましい。
なお、結晶粒径は、焼鈍温度と焼鈍時間に依存し、再結晶温度以上(600℃以上)の温度であれば750℃未満の温度域でも長時間の大気焼鈍を行うことによって所望の結晶粒径を得ることが可能である。
大気焼鈍工程S1を750℃から850℃の温度域で行う場合、焼鈍時間を一定とすれば焼鈍温度の上昇に伴って結晶粒径を大きくすることができる。一方で、焼鈍温度が850℃を超えると焼鈍中にβ相が析出するため冷却後に結晶粒が微細になり、数分間の処理を行うと20μm以下となる虞がある。そのため大気焼鈍工程S1の焼鈍温度は850℃以下とする必要がある。
(酸洗工程)
酸洗工程S2は、大気焼鈍工程S1後のチタン板を硝酸/フッ酸比が1以上10以下の酸洗浴中で酸洗する工程である。かかる酸洗工程S2は、前記した組成範囲内の酸洗浴を使用した場合、液温65℃で約60秒の処理で片面約20μm除去を行うことが可能である。このような酸洗を行うことでチタン板の表面に所望の形態で凹凸を形成することができるとともに、表面に形成された硬化層を除去することができる。このようにすれば、表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差を45以下とすることができる。
硝酸/フッ酸比が1未満であると、表面の凹凸が細かくなり過ぎてしまい(つまり、小さく、浅い凹凸が沢山形成されてしまい)、保油性効果が得られない。一方で、硝酸/フッ酸比が10を超えると、酸洗速度が遅くなりスケールを除去し難くなると共に、平滑に酸洗される。そのため、酸洗後に形成される凹凸が小さくなったり、凹凸が形成されなかったりするため、優れた保油性を得ることができない。
酸洗温度は特に限定されるものではない。温度を変えることにより酸洗速度が変わるので、浴温が室温から70℃までの範囲で、生産ラインの構成から決定される酸洗時間に応じて温度を設定すればよい。
酸洗工程S2によるチタン板の表面の除去量は、片面1μm以上が好ましい。除去量の上限は特に限定されるものではないが、生産性と歩留まりの観点から片面20μm以下とするのが好ましい。
(スキンパス圧延工程)
スキンパス圧延工程S3は、酸洗工程S2後のチタン板を圧下率が0.2〜1.0%のスキンパス圧延を行う工程である。スキンパス圧延工程S3は、室温で行うことができ、これにより、表面に形成された凸部を均して適度な平滑部と凹部を具備したチタン板とすることができる。このように、表面に適度な平滑部を具備させることで局所的な面圧を下げることができるとともに、摩擦係数を小さくする効果がある。
かかるスキンパス圧延工程S3を行うことにより、チタン板表面の平均的な摩擦係数を示す算術平均粗さ(Ra)を0.15〜1.5μmの範囲とすることができ、凹部の深さを示す最大高さ(Rz)を1.5〜9.0μmの範囲とすることができ、凹部の分布状態を示すひずみ度(Rsk)を−3.0〜−0.5の範囲とすることができる。
但し、スキンパス圧延自体が塑性変形なので、スキンパス圧延の圧下率が高くなるほど板材の伸びが減少するとともに、表面の凹部の面積が減少するため、ひずみ度(Rsk)が0に近づき、保油性が減少してしまう。一方、あまりにスキンパス圧延の圧下率が低くなり過ぎると表面に適度な平滑部を具備させることができない。
従って、スキンパス圧延工程S3の圧下率は0.2〜1.0%とすることを必要とする。なお、スキンパス圧延工程S3の圧下率は0.3〜0.8%とするのが好ましい。
以上に説明した本発明に係るチタン板の製造方法によれば、前述した本発明に係るチタン板を好適に製造することができる。
次に、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを対比して本発明の効果を説明する。
本発明の効果の検証は、JIS−1種相当のチタン材を用いて行った。本発明の効果はJIS−2種相当のチタン材を始め、他のグレードの純チタン材やチタン合金材を用いたチタン板に対しても同様の効果を発揮することは言うまでもない。
工業用純チタン(JIS−1種)の冷間圧延板を使用した。化学組成はO:450ppm、Fe:250ppm、N:40ppm、その他残部はTiと不可避不純物である。
まず、通常の条件で冷間圧延を施した冷間圧延板を750℃から850℃の温度で大気焼鈍した。結晶粒径は、この大気焼鈍の焼鈍条件で制御した。焼鈍条件を表1に示す。
その後、60℃に加熱した、表1に示す濃度のフッ酸硝酸混合液にチタン板を浸し、除去量が片面10μmの酸洗を行うことで表面の凹凸を形成させた試験体1〜18を得た。酸洗速度は、硝酸/フッ酸比によって変わるため、各配合比の溶液における酸洗速度を予備実験で求め、所定の除去量となるように酸洗時間を設定した。
また、試験体1〜18の一部に対して表1に示す圧下率のスキンパス圧延を行った。スキンパス圧延は、試験体の両側に引張のテンションを掛け、冷間、潤滑条件で実施した。製造条件を後記する各評価項目の評価結果とともに表1に示す。
また比較のため、冷間圧延後に真空焼鈍を行った試験体を作製した。冷間圧延工程までは前述の通りであり、その後、チタン板表面を脱脂洗浄後、真空焼鈍を行った。真空焼鈍として、一旦、チャンバー内の圧力を1.3×10-3Paまで減圧後、650℃まで炉内を加熱し、6.7×10-3Paになるまで酸素ガスを導入し、2時間保持後、冷却を行った。得られた試験体を試験体19とした。
(結晶粒径の測定)
結晶粒径の測定は、各試験体をJIS G 0552に規定の切断法により切断し、その断面組織を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径を測定することで行った。なお、結晶粒は等軸状を呈していた。
(ビッカース硬さの測定)
ビッカース硬さの測定は、測定面を試験体表面とし、JIS Z 2244に準拠した方法で実施した。測定荷重を4.9N(200g)及び0.098N(10g)として各測定荷重について10点測定し、その平均値を測定値として用いた。
測定荷重が4.9Nの測定にはマイクロビッカース硬さ試験機(MATSUZAWA SEIKI DMH−1)を用い、測定荷重0.098Nの測定には超マイクロビッカース硬さ試験機(AKASHI MVK−G3)を用いた。測定荷重4.9Nの測定値と、測定荷重0.098Nと測定荷重4.9Nの差を表1に示した。
(表面粗さの測定)
表面粗さの測定は、表面粗さ形状測定機(東京精密社製サーフコム1400D)を使用し、JIS B 0601:2001に準拠した方法で測定した。この際、測定距離を7mm、測定速度を0.3mm/secとし、圧延方向に平行方向と垂直方向を各5点測定し、その平均値を表面粗さとした。
(成形性の評価)
成形性の評価は、各試験体に対してプレート式熱交換器の熱交換部分を模擬した成形金型を用いたプレス成形を行い、成形性を評価した。
図2(a)に示すように、成形金型の形状は、成形部が100mm×100mmで、ピッチ10mm、最大高さ4mmの綾線部を6本有し、各綾線部は頂点に、図2(a)の上から下に向かって順にR=0.4、1.8、0.8、1.0、1.4、0.6の6種のR形状を有している。
この成形金型を用いて80ton油圧プレス機によってプレス成形を行った。プレス成形は、各試験体の両面に動粘度34mm2/s(40℃)のプレス油を塗布し、各試験体の圧延方向が図2(a)の上下方向と一致するように下金型上に配置してフランジ部を板押さえで拘束した後、プレス速度1mm/s、押し込み深さ3.8mmの条件で実施した。
成形性の評価は、プレス成形後に各試験体に認められる割れの数で評価した。具体的な評価方法を以下に説明する。
図2(a)に示す稜線部と、測定位置A、B、C、C’、D、Eの点線との交点計36箇所について試験体の割れの有無を目視で観察した。なお、測定位置C’は、図2(b)に示すように、隣接する稜線部の間に位置する谷部である。
割れの起点となる測定位置A、C、C’、Eについては、割れもくびれも認められない場合を2点、くびれが認められれば1点、割れが認められれば0点と点数を付け、測定位置B、Dについては、割れもくびれも認められない場合を1点、くびれが認められれば0.5点、割れが認められれば0点と点数を付け、さらに各点数に加工Rの逆数を掛けて割れの状態を数値化し、その合計を求めた。この合計値を完全に割れ、くびれが認められない場合を100として規格化した後、温度(T)、潤滑油粘度(μ)、試験片板厚(t)に依存する関数F(T,μ,t)、ならびに金型の綾線の角度(α)、ピッチ(p)に依存する関数G(α,p)を掛け合わせて、成形性スコアとして算出した。なお、FならびにGは0から1の値を取る。以上の成形性スコア算出方法は下記式(2)によって表される。
成形性スコア=F×G×ΣE(ij)/R(j)/(ΣA, C, C’,E 2/R(j)+ΣB, D 1/R(j))×100
・・・式(2)
ここで、式(2)において、
A、C、C’、Eの場合は、E(ij)=1.0×(割れなし;2、くびれ;1、割れ;0)とし、
B、Dの場合は、E(ij)=0.5×(割れなし;2、くびれ;1、割れ;0)として算出した。
また、本実施例では温度(T)、潤滑油粘度(μ)、試験片板厚(t)、金型の綾線の角度(α)、およびピッチ(p)を一定としたため、F×Gを便宜的に1としてスコアを算出した。
各試験体の成形性スコアを表1に示す。成形性スコアは、70点以上を成形性が良いとし、70点未満を成形性が悪いとした。
表1に示すように、試験体1〜7は成形性が良かった(実施例)。これは、表面粗さが良好な形態で形成されたため保油性が良くなり、耐焼付き性及び耐割れ性が良好になったためと思われる。
一方で、試験体19は、表面硬度(ビッカース硬さ)が高いので成形時に表面の割れが発生し易くなり、成形後の割れ発生量が多くなった結果、成形性が悪くなったと思われる(比較例)。
また、試験体8〜11、15〜17は、表面硬度(ビッカース硬さ)は低かったものの、優れた成形性を示さなかった(比較例)。これは、試験体の表面粗さが良好な形態で形成されなかったため、凹凸が浅くなったこと及び凹部間の間隔が広くなったことのうちの少なくとも一方により、保油性が悪くなったことが原因であると思われる。
試験体14は、結晶粒径は本発明の要件を満たしていたが、成形性が悪かった(比較例)。これは、酸洗工程後に行ったスキンパス圧延の圧下率が高過ぎたため、酸洗工程で試験体14の表面に形成された良好な凹凸が壊れて平滑な表面となり、保油性が悪くなったためと思われる。また、成形前に加える塑性変形量が大きいためプレス成形での塑性変形量が減少したため、優れた成形性が得られなかったと思われる。
試験体18は、酸洗条件が適切でなかったため、表面の凹凸が小さくなり保油性が悪くなった結果、成形性が悪くなったと思われる(比較例)。
そして、試験体12、13は、結晶粒径が小さ過ぎるため、酸洗工程で得られる表面の凹凸が浅くなり、保油性が悪くなった結果、成形性が悪くなったと思われる(比較例)。
ここで、試験体7の表面のSEM像と粗さ曲線を図3に、試験体10の表面のSEM像と粗さ曲線を図4にそれぞれ示している。
図3(a)に示すように、試験体7の表面は、平滑部に複数の凹部が分散されていることが分かる。このような凹みが油溜まり部として作用することで保油性に優れ、酸洗したままの表面にも係わらず良好な耐焼付き性及び耐割れ性を得ることができ、成形性に優れる結果になったものと考えられる。
また、図3(b)に示すように、試験体7の表面の任意の位置における3mmの幅において、表面に凹部が適度な分布状態をもって分散して形成されていることと、凸部がほとんど形成されていないことが分かる。
これに対し、図4(a)に示すように、試験体10の表面は、凹部がほとんど形成されていないことが分かる。そのため、保油性が悪くなって耐焼付き性及び耐割れ性が悪くなった結果、成形性に劣る結果になったと考えられる。
また、図4(b)に示すように、試験体10の表面の任意の位置における3mmの幅において、凹部がほとんど形成されていないこと、及び凸部が多く形成されていることが分かる。
S1 大気焼鈍工程
S2 酸洗工程
S3 スキンパス圧延工程

Claims (4)

  1. 算術平均粗さ(Ra)が0.15〜1.5μmの範囲であり、
    最大高さ(Rz)が1.5〜9.0μmの範囲であり、
    ひずみ度(Rsk)が−3.0〜−0.5の範囲であり、且つ
    表面における測定荷重0.098Nでのビッカース硬さが、測定荷重4.9Nでのビッカース硬さよりも高く、その差が45以下である
    ことを特徴とするチタン板。
  2. JIS G 0552に規定の切断法により切断した断面を光学顕微鏡で観察した場合における結晶粒径が、平均切片長さで20〜80μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のチタン板。
  3. 板厚が1.0mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチタン板。
  4. 冷間圧延後のチタン板を結晶粒径が20〜80μmとなるように大気焼鈍を行う大気焼鈍工程と、
    前記大気焼鈍工程後のチタン板を硝酸/フッ酸比が1以上10以下の酸洗浴中で酸洗する酸洗工程と、
    前記酸洗工程後のチタン板を圧下率が0.2〜1.0%のスキンパス圧延を行うスキンパス圧延工程と、
    を含むことを特徴とするチタン板の製造方法。
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